[実施形態1]
以下に、本発明に係る第一のレーザ表面加工装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
図1は、実施形態1に係るレーザ表面加工装置を模式的に示す概略構成図である。図2は、実施形態1に係るレーザ表面加工装置のノズル周辺を示す斜視図である。図3は、実施形態1に係るレーザ表面加工装置のノズル周辺を示す側面図である。図4は、実施形態1に係るレーザ表面加工装置のノズル周辺を模式的に示す平面図である。
レーザ表面加工装置10は、加工対象物60の表面にレーザ光(以下、レーザという)Lを照射して、加工対象物60の表面を溶融し除去する。レーザ表面加工装置10は、移動機構となるマニピュレータ11と、レーザ照射装置12と、アシストガス供給装置13と、補助アシストガス供給装置14と、回収機構15と、制御装置16と、を備える。
マニピュレータ11は、例えば、6軸マニピュレータであり、その先端部には、支持フレーム18が取り付けられている。支持フレーム18には、レーザ照射装置12の一部である後述するレーザ照射ヘッド23が保持されている。このマニピュレータ11は、制御装置16に接続され、制御装置16によって動作が制御されることで、レーザ照射装置12から照射されるレーザLの照射方向及び照射位置を変化させることができる。本実施形態のマニピュレータ11は、加工対象物60に対してレーザ照射装置12のレーザ照射ヘッド23を移動方向70に移動させる。つまり、移動方向70は、加工対象物60に対してレーザ照射位置が移動する方向となる。また、本実施形態では、マニピュレータ(移動機構)11でレーザ照射ヘッド23等を加工対象物60に対して移動させたが、加工対象物60とレーザ照射ヘッド23等とを相対移動させればよく、加工対象物60を移動させても、加工対象物60とレーザ照射ヘッド23等との両方を移動させてもよい。
レーザ照射装置12は、加工対象物60にレーザLを照射する。レーザ照射装置12は、レーザ発振器21と、伝送ケーブル22によってレーザ発振器21に接続されるレーザ照射ヘッド23とを有する。レーザ発振器21は、レーザLを照射し、制御装置16に接続されている。レーザ発振器21は、制御装置16によってレーザLの照射が制御されることで、所定の出力となるレーザLを照射する。伝送ケーブル22は、レーザ発振器21から照射されたレーザLを、レーザ照射ヘッド23へ向けて導光する。レーザ照射ヘッド23は、伝送ケーブル22により導光されたレーザLを、加工対象物60へ向けて照射している。このレーザ照射ヘッド23は、支持フレーム18によって保持されている。
ここで、レーザ照射装置12から照射されたレーザLは、加工対象物60に照射される。具体的には、レーザ照射装置12は、図3に示すように、レーザ中心線Lcが、加工対象物60の表面に垂直な線に対して移動方向70の上流側に傾斜した向きとなる状態で、レーザLを照射する。
アシストガス供給装置13は、加工対象物60にアシストガスG1を噴射する。アシストガス供給装置13は、アシストガス供給部31と、アシストガス供給ライン32によってアシストガス供給部31に接続されるアシストガス供給ヘッド33とを有する。アシストガス供給ヘッド33は、アシストガス噴射ノズル33aを有する。アシストガス供給部31は、例えば、不活性ガス(N2、Ar、He、CO2)や、支燃性ガス(O2)を供給し、制御装置16に接続されている。アシストガスの種類は、加工対象や加工雰囲気に応じて設定すればよい。アシストガス供給部31は、制御装置16によって不活性ガスの供給が制御されることで、所定の供給量で不活性ガスを供給する。アシストガス供給ライン32は、アシストガス供給部31から供給された不活性ガスを、アシストガス供給ヘッド33へ向けて流通させる。アシストガス供給ヘッド33は、支持部材48を介して、支持フレーム18によって保持されている。アシストガス噴射ノズル33aは、レーザLが照射される加工位置へ向けてアシストガスG1を噴射する。
ここで、アシストガス供給装置13は、アシストガス噴射ノズル33aが、レーザ照射ヘッド23よりも移動方向70の上流側に配置されている。従って、本実施形態のアシストガス供給装置13は、アシストガス中心線G1cがレーザ中心線Lcよりも加工対象物60の表面に近い位置でアシストガスG1を噴射する。
補助アシストガス供給装置14は、加工対象物60に補助アシストガスG2を噴射する。補助アシストガス供給装置14は、本実施形態ではアシストガス供給装置13の構成を併用して構成されている。従って、補助アシストガス供給装置14は、補助アシストガス供給部(アシストガス供給部)31と、補助アシストガス供給ライン(アシストガス供給ライン)32によって補助アシストガス供給部(アシストガス供給部)31に接続される補助アシストガス供給ヘッド(アシストガス供給ヘッド)33とを有する。補助アシストガス供給ヘッド(アシストガス供給ヘッド)33は、補助アシストガス噴射ノズル33bを有する。補助アシストガス噴射ノズル33bは、図2から図4に示すように、アシストガス噴射ノズル33aを中央において、アシストガス噴射ノズル33aから噴射されるアシストガスG1の噴射方向に対して交差する方向に向けて設けられ、アシストガスG1の側部であってレーザLが照射される加工位置の側部から補助アシストガスG2を噴射する。
なお、図には明示しないが、補助アシストガス供給装置14は、アシストガス供給装置13の構成とは別に、補助アシストガス供給部と、補助アシストガス供給ラインによって補助アシストガス供給部に接続される補助アシストガス供給ヘッドとを有してもよい。この場合、補助アシストガス供給部は、アシストガス供給部31とは独立して制御装置16によって不活性ガスの供給が制御されることで、所定の供給量で不活性ガスを供給する。
回収機構15は、加工対象物60から溶融された溶融物を回収する。回収機構15は、受け部51と、吸引ライン52と、吸引ポンプ53と、を有する。受け部51は、レーザ照射ヘッド23の移動方向70の下流側に配置されている。受け部51は、加工時に加工対象物60の近傍に配置されている。受け部51は、支持フレーム18と一体で移動する。吸引ライン52は、受け部51と吸引ポンプ53に接続されている。吸引ポンプ53は、吸引ライン52を介して受け部51の空気を吸引する。回収機構15は、受け部51の空気を吸引ポンプ53で吸引することで、受け部51内の物質を吸引し、回収する。
制御装置16は、マニピュレータ11、レーザ照射装置12、アシストガス供給装置13、補助アシストガス供給装置14及び回収機構15の動作を制御する。
ここで、レーザ照射ヘッド23、アシストガス供給ヘッド33、受け部51は、支持フレーム18及び支持部材48によって一体に支持されることから、相対的な位置関係が固定される。このため、マニピュレータ11は、支持フレーム18(及び支持部材48)を移動させることで、レーザ照射装置12によるレーザLの照射方向及び照射位置、アシストガス供給ヘッド33のアシストガス噴射ノズル33aによるアシストガスの供給方向及び供給位置、アシストガス供給ヘッド33の補助アシストガス噴射ノズル33bによるアシストガスの供給方向及び供給位置、受け部51の位置を、一体に移動させることができる。
このレーザ表面加工装置10は、図3に示すように、アシストガス噴射ノズル33aからアシストガス中心線G1cのアシストガスG1を加工対象物60に噴射しつつ、レーザ照射ヘッド23からレーザ中心線LcのレーザLを加工対象物60に照射する。アシストガスG1は、加工対象物60のレーザLが照射されている照射領域La(図3および図4参照)に向けて噴射される。加工対象物60は、レーザLが照射される位置が加熱され、溶融し、一部が溶融物64となる。溶融物64は、アシストガスG1により吹き飛ばれる。アシストガスG1で吹き飛ばされた溶融物64は、移動方向70の下流側に移動して受け部51に回収される。レーザ表面加工装置10は、マニピュレータ11でレーザ照射ヘッド23、アシストガス噴射ノズル33a、受け部51を移動方向70に移動させつつ、加工対象物60の表面を溶融し、溶融物64を生成し、溶融物64をアシストガスG1で吹き飛ばし、受け部51で回収することで、加工対象物60の表面の一部を除去する。
ここで、アシストガス供給装置13は、加工対象物60にある溶融物64の表面張力の2倍以上の衝突力で加工対象物60にアシストガスG1を噴射する。衝突力Fi[N]は、アシストガス流速v[m/s]、アシストガス密度ρ[kg/m
3]、有効アシストガス流量Q[m
3/s]、レーザ照射幅L[m]、有効幅b[m]に基づいて下記式で算出する。
これにより、溶融層の底部、つまり溶融物64と加工対象物60の境界を露出させるもしくは残存する溶融層厚を極力小さくすることができ、レーザLによる加工を効率よく行うことができる。
また、同時に、レーザ表面加工装置10は、図2から図4に示すように、補助アシストガス噴射ノズル33bから補助アシストガスG2を、照射領域Laに向けて照射されるアシストガスG1の側部から噴射する。すると、照射領域Laに向けて照射されるアシストガスG1により吹き飛ばされる溶融物64を、側部から噴射される補助アシストガスG2により飛ぶ方向が強制的に所定方向に制御される。この制御された溶融物64の飛ぶ方向は、受け部51を配置した方向であり、当該受け部51に溶融物64が回収される。この補助アシストガス噴射ノズル33bから噴射される補助アシストガスG2は、アシストガスG1により吹き飛ばされる溶融物64の飛ぶ方向を制御するものであるから、アシストガスG1程の衝突力は必要ない。
このように、本実施形態のレーザ表面加工装置10は、加工対象物60にレーザLを照射するレーザ照射装置12と、加工対象物60のレーザLが照射されている照射領域Laに向けてアシストガスG1を噴射するアシストガス噴射ノズル33aを有するアシストガス供給装置13と、照射領域Laに向けてアシストガス供給装置13により供給されるアシストガスG1の側部から補助アシストガスG2を噴射する補助アシストガス噴射ノズル33bを有する補助アシストガス供給装置14と、レーザ照射装置12と加工対象物60とを相対移動させる移動機構11と、レーザLが照射され溶融した加工対象物60の溶融物64を回収する回収機構15と、を有し、補助アシストガス噴射ノズル33bは、アシストガス噴射ノズル33aの向く方向に対して交差する方向に向けて配置される。
このレーザ表面加工装置10によれば、アシストガスG1で吹き飛ばされる加工対象物60の溶融物64の飛ぶ方向を補助アシストガスG2により回収機構15に向くように制御する。この結果、レーザLにより溶融された溶融物64の回収効率を向上することができる。
図5から図10は、実施形態1のレーザ表面加工装置の他の例のノズル周辺を模式的に示す平面図である。
図4に示すレーザ表面加工装置10では、アシストガス噴射ノズル33aを中央として補助アシストガス噴射ノズル33bをアシストガス噴射ノズル33aの両側方に配置している。そして、アシストガス噴射ノズル33aがアシストガスG1を噴射する方向に対して直交する方向に向けて補助アシストガス噴射ノズル33bが設けられている。これに対し、図5および図6に示すレーザ表面加工装置10では、アシストガス噴射ノズル33aがアシストガスG1を噴射する方向に対して傾斜する方向であってレーザLの照射領域Laに向けて補助アシストガス噴射ノズル33bが設けられている。図6に示すレーザ表面加工装置10は、図5に示すレーザ表面加工装置10と比較して、補助アシストガスG2がレーザLの照射領域Laに近い位置から補助アシストガスG2を噴射するように設けられている。
そして、図4から図6に示すレーザ表面加工装置10では、アシストガス噴射ノズル33aを設けた位置に対してアシストガス噴射ノズル33aによるアシストガスG1の噴射方向の下流側に張り出した平面に沿って補助アシストガス噴射ノズル33bを配置している。
また、図7および図8に示すレーザ表面加工装置10では、アシストガス噴射ノズル33aを中央として補助アシストガス噴射ノズル33bをアシストガス噴射ノズル33aの両側方に配置している。そして、アシストガス噴射ノズル33aがアシストガスG1を噴射する方向に対して傾斜する方向であってレーザLの照射領域Laに向けて補助アシストガス噴射ノズル33bが設けられている。特に、図7および図8に示すレーザ表面加工装置10では、アシストガス噴射ノズル33aを設けた位置に対してアシストガス噴射ノズル33aによるアシストガスG1の噴射方向の下流側に張り出した曲面に沿って補助アシストガス噴射ノズル33bを配置している。また、図8に示すレーザ表面加工装置10は、図7に示すレーザ表面加工装置10と比較して、補助アシストガスG2がレーザLの照射領域Laに近い位置から補助アシストガスG2を噴射するように設けられている。
このように、図4から図8に示すレーザ表面加工装置10によれば、アシストガス噴射ノズル33aを中央として補助アシストガス噴射ノズル33bをアシストガス噴射ノズル33aの両側方に配置している。これにより、アシストガスG1で吹き飛ばされる加工対象物60の溶融物64の飛ぶ方向を補助アシストガスG2により収束させる。この結果、レーザLにより溶融された溶融物64の回収効率を向上することができる。
また、図9に示すレーザ表面加工装置10では、図5に示すレーザ表面加工装置10のアシストガス噴射ノズル33aおよび補助アシストガス噴射ノズル33bの配置に対し、レーザ照射装置12がレーザLの照射領域Laの形状を各ノズル33a,33bの配置に沿う形状に合わせている。また、図10に示すレーザ表面加工装置10では、図7に示すレーザ表面加工装置10のアシストガス噴射ノズル33aおよび補助アシストガス噴射ノズル33bの配置に対し、レーザ照射装置12がレーザLの照射領域Laの形状を各ノズル33a,33bの配置に沿う形状に合わせている。
このように、図9および図10に示すレーザ表面加工装置10によれば、レーザLの照射領域Laの形状を各ノズル33a,33bの配置に沿う形状に合わせることで、溶融部の形状が各ノズル33a,33bの配置に合った形状になるため、溶融物64に効率的にアシストガスG1および補助アシストガスG2を照射させることができ、溶融物64が加工対象物60側に残存する量を最小化できる。この結果、レーザLにより溶融された溶融物64の回収効率を向上することができる。
ところで、本実施形態のレーザ表面加工装置10では、アシストガス噴射ノズル33aの両側部に補助アシストガス噴射ノズル33bを配置した例を示しているがこれに限定されない。例えば、アシストガス噴射ノズル33aの一側部に補助アシストガス噴射ノズル33bを配置した構成であってもよく、多側部に補助アシストガス噴射ノズル33bを配置した構成であってもよい。また、本実施形態のレーザ表面加工装置10では、アシストガス噴射ノズル33aと補助アシストガス噴射ノズル33bをアシストガス供給ヘッド33に一体に設けた構成を示しているが別の供給ヘッドにそれぞれ設けられていてもよい。また、本実施形態のレーザ表面加工装置10では、補助アシストガスG2を移動方向70の上流側から照射する例を示しているが、補助アシストガスG2を移動方向70の下流側から照射してもよい。すなわち、本実施形態のレーザ表面加工装置10は、アシストガスG1で吹き飛ばされる加工対象物60の溶融物64の飛ぶ方向を補助アシストガスG2により回収機構15に向くように制御する構成であればよい。
なお、上述した実施形態のレーザ表面加工装置10において、例えば、図2、図4、図8に示すように、補助アシストガス噴射ノズル33bがレーザLの照射領域Laにおける範囲外の側部にも補助アシストガスG2を噴射するように構成されていてもよい。このレーザLの照射領域Laにおける範囲外の側部に噴射される補助アシストガスG2は、アシストガスG1に交差するように照射領域Laに近づく方向に噴射されても、アシストガスG1と平行に噴射されてもよい。
[実施形態2]
以下に、本発明に係る第二のレーザ表面加工装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
図11は、実施形態2に係るレーザ表面加工装置を模式的に示す概略構成図である。図12は、図11に示すレーザ表面加工装置のノズル周辺を示す正面図である。
本実施形態において加工対象物160は、配管など管状のもので長尺に延在するものである。レーザ表面加工装置110は、この加工対象物160の内周面にレーザ光(以下、レーザという)Lを照射して、加工対象物160の内周面を溶融し除去する。レーザ表面加工装置110は、移動機構となるマニピュレータ111と、レーザ照射装置112と、アシストガス供給装置113と、旋回流発生部114と、回収機構115と、制御装置116と、を備える。
マニピュレータ111は、例えば、6軸マニピュレータであり、その先端部には、レーザ照射装置112の一部である後述するレーザ照射ヘッド123が保持されている。このマニピュレータ111は、制御装置116に接続され、制御装置116によって動作が制御されることで、レーザ照射装置112から照射されるレーザLの照射方向及び照射位置を変化させることができる。本実施形態のマニピュレータ111は、加工対象物160に対してレーザ照射装置112のレーザ照射ヘッド123を移動方向170に移動させる。つまり、移動方向170は、加工対象物160に対してレーザ照射位置が移動する方向となる。また、本実施形態では、マニピュレータ(移動機構)111でレーザ照射ヘッド123等を加工対象物160に対して移動させたが、加工対象物160とレーザ照射ヘッド123等とを相対移動させればよく、加工対象物160を移動させても、加工対象物160とレーザ照射ヘッド123等との両方を移動させてもよい。
レーザ照射装置112は、加工対象物160にレーザLを照射する。レーザ照射装置112は、レーザ発振器121と、伝送ケーブル122によってレーザ発振器121に接続されるレーザ照射ヘッド123とを有する。レーザ発振器121は、レーザLを照射し、制御装置116に接続されている。レーザ発振器121は、制御装置116によってレーザLの照射が制御されることで、所定の出力となるレーザLを照射する。伝送ケーブル122は、レーザ発振器121から照射されたレーザLを、レーザ照射ヘッド123へ向けて導光する。レーザ照射ヘッド123は、伝送ケーブル122により導光されたレーザLを、加工対象物160へ向けて照射している。
レーザ照射装置112は、レーザ照射ヘッド123が加工対象物160の中心に配置されている。レーザ照射装置112は、リング状でレーザLを照射する。レーザ照射装置112は、レーザを回転させて、リング状に照射しても、リング状のレーザを照射してもよい。
マニピュレータ111は、レーザ照射装置112をリング状のレーザLの中心を通り、レーザLの進行方向と平行な方向に移動させる。つまり、移動機構111は、レーザ照射ヘッド123を加工対象物160の延在する軸方向に沿って移動させる。
アシストガス供給装置113は、加工対象物160にアシストガスGを噴射する。アシストガス供給装置113は、アシストガス供給部131と、アシストガス供給ライン132によってアシストガス供給部131に接続されるアシストガス噴射ノズル133とを有する。アシストガス供給部131は、例えば、不活性ガス(N2、Ar、He、CO2)や、支燃性ガス(O2)を供給し、制御装置116に接続されている。アシストガスの種類は、加工対象や加工雰囲気に応じて設定すればよい。アシストガス供給部131は、制御装置116によって不活性ガスの供給が制御されることで、所定の供給量で不活性ガスを供給する。アシストガス供給ライン132は、アシストガス供給部131から供給された不活性ガスを、アシストガス噴射ノズル133へ向けて流通させる。アシストガス噴射ノズル133は、レーザLが照射される加工位置へ向けてアシストガスGを噴射する。
アシストガス供給装置113は、アシストガス噴射ノズル133が加工対象物160の内部であって、レーザ照射装置112のレーザ照射ヘッド123に対面する位置に配置されている。アシストガス噴射ノズル133は、レーザ照射装置112及び、レーザLの照射位置よりもレーザ照射ヘッド123の移動方向170の下流側に配置されている。そして、アシストガス噴射ノズル133は、リング状に照射されるレーザLの中央からアシストガスGを噴射する。
旋回流発生部114は、リング状に照射されるレーザLに沿ってアシストガスGに旋回流を生じさせる。旋回流発生部114は、図11および図12に示すように、アシストガス噴射ノズル133に対向する対向面141aを有する円盤状の固定部材141と、固定部材141の対向面141aの中央から径方向外側に設けられた螺旋部141bと、を有する。対向面141aは、中央に螺旋部141bを有する円錐径状の突面141aaが形成されている。螺旋部141bは、対向面141aおよび突面141aaの中央から径方向外側に螺旋状に延在する凸条または凹条により形成される。この旋回流発生部114は、固定部材141の対向面141aがアシストガス噴射ノズル133に対向しており、その外周縁とアシストガス噴射ノズル133との隙間がアシストガスGを噴射する噴射口133aとして加工対象物160の内周面の全周に開口したリング形状に形成されている。旋回流発生部114は、アシストガスGの流れを阻害しないようにアシストガス噴射ノズル133の管内に固定された支持部材184aと、当該支持部材184aからアシストガス噴射ノズル133の先端に向けて延在する支持棒184bとによりアシストガス噴射ノズル133の先端部で支持されている。
回収機構115は、加工対象物160から溶融された溶融物を回収する。回収機構115は、受け部151と、吸引ライン152と、吸引ポンプ153と、を有する。受け部151は、レーザ照射ヘッド123の移動方向170の下流側に配置されている。受け部151は、加工時に加工対象物160の近傍に配置されている。吸引ライン152は、受け部151と吸引ポンプ153に接続されている。吸引ポンプ153は、吸引ライン152を介して受け部151の空気を吸引する。回収機構115は、受け部151の空気を吸引ポンプ153で吸引することで、受け部151内の物質を吸引し、回収する。
回収機構115は、受け部151が、加工対象物160の内周面に沿って加工対象物160の管内部に挿入されて加工対象物160の管状に沿って延在する筒状に形成され、その内部にアシストガス供給装置113のアシストガス供給ライン132が挿入される。受け部151は、レーザ照射装置112に対面する位置に開口して配置される。
制御装置116は、マニピュレータ111、レーザ照射装置112、アシストガス供給装置113及び回収機構115の動作を制御する。
ここで、レーザ照射ヘッド123、アシストガス噴射ノズル133、受け部151は、相対的な位置関係が固定されている。このため、マニピュレータ111は、レーザ照射ヘッド123を移動させることで、レーザ照射装置112によるレーザLの照射方向及び照射位置、アシストガス噴射ノズル133によるアシストガスの供給方向及び供給位置、受け部151の位置を、一体に移動させることができる。
このレーザ表面加工装置110は、図11に示すように、アシストガス噴射ノズル133からアシストガスGを加工対象物160の内周面に噴射しつつ、レーザ照射ヘッド123からレーザLを加工対象物160の内周面に照射する。アシストガスGは、加工対象物160のレーザLが照射されているリング状の照射領域Laに向けて噴射される。加工対象物160は、レーザLが照射される位置が加熱され、溶融し、一部が溶融物164となる。溶融物164は、アシストガスGにより吹き飛ばれる。アシストガスGで吹き飛ばされた溶融物164は、移動方向170の下流側に移動して受け部151に回収される。レーザ表面加工装置110は、マニピュレータ111でレーザ照射ヘッド123、アシストガス噴射ノズル133、受け部151を移動方向170に移動させつつ、加工対象物160の内周面を溶融し、溶融物164を生成し、溶融物164をアシストガスGで吹き飛ばし、受け部151で回収することで、加工対象物160の内周面の一部を除去する。
ここで、アシストガス供給装置113は、加工対象物160にある溶融物164の表面張力の2倍以上の衝突力で加工対象物160にアシストガスGを噴射する。衝突力Fi[N]は、アシストガス流速v[m/s]、アシストガス密度ρ[kg/m
3]、有効アシストガス流量Q[m
3/s]、レーザ照射幅L[m]、有効幅b[m]に基づいて下記式で算出する。
これにより、溶融層の底部、つまり溶融物164と加工対象物160の境界を露出させるもしくは残存する溶融層厚を極力小さくすることができ、レーザLによる加工を効率よく行うことができる。
本実施形態のレーザ表面加工装置110は、旋回流発生部114を有する。従って、アシストガス噴射ノズル133から噴射されるアシストガスGは、加工対象物160の管の中央から径方向外側(放射方向)に向かって旋回流となって加工対象物160の内周面に至る。これにより、アシストガスGの旋回成分により吹き飛ばした溶融物164を巻き込むようにして受け部151内に運ぶことになる。この結果、受け部151の開口部に溶融物164が堆積することを防止できる。しかも、溶融物164を加工対象物160の内周面から除去し易くすることができる。この結果、レーザにより溶融された溶融物の回収効率を向上することができる。
図13は、実施形態2に係るレーザ表面加工装置の他の例を模式的に示す概略構成図である。図14は、図13に示すレーザ表面加工装置のノズル周辺を示す正面図である。
図13および図14に示すレーザ表面加工装置110は、図11および図12に示す上述したレーザ表面加工装置110に対し、アシストガス噴射ノズル233および旋回流発生部214の構成が異なる。従って、図13および図14に示すレーザ表面加工装置110の説明において、図11および図12に示す上述したレーザ表面加工装置110と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。
アシストガス噴射ノズル233は、レーザ照射ヘッド123の周り囲んでレーザ照射ヘッド123に取り付けられ、レーザ照射ヘッド123から照射されるレーザLのリング状に合わせてアシストガスGを噴射するようにリング状に形成されている。アシストガス噴射ノズル233は、レーザLのリング状に向けてアシストガスGを噴射する噴射口233aが設けられている。
旋回流発生部214は、リング状に形成されたアシストガス噴射ノズル233の内面に設けられた螺旋部をなす。螺旋部は、アシストガス噴射ノズル233の内面において噴射口233aに向けて螺旋状に延在する凸条または凹条により形成される。
レーザ表面加工装置110は、図13に示すように、アシストガス噴射ノズル233からアシストガスGを加工対象物160の内周面に噴射しつつ、レーザ照射ヘッド123からレーザLを加工対象物160の内周面に照射する。アシストガスGは、加工対象物160のレーザLが照射されているリング状の照射領域Laに向けて噴射される。加工対象物160は、レーザLが照射される位置が加熱され、溶融し、一部が溶融物164となる。溶融物164は、アシストガスGにより吹き飛ばれる。アシストガスGで吹き飛ばされた溶融物164は、移動方向170の下流側に移動して受け部151に回収される。レーザ表面加工装置110は、マニピュレータ111でレーザ照射ヘッド123、アシストガス噴射ノズル233、受け部151を移動方向170に移動させつつ、加工対象物160の内周面を溶融し、溶融物164を生成し、溶融物164をアシストガスGで吹き飛ばし、受け部151で回収することで、加工対象物160の内周面の一部を除去する。
図13および図14に示すレーザ表面加工装置110は、旋回流発生部214を有する。従って、アシストガス噴射ノズル233から噴射されるアシストガスGは、加工対象物160の管の内周面に沿ってリング状に噴射されると共に、当該リング状を渦巻きとする旋回流となって加工対象物160の内周面に至る。これにより、アシストガスGの旋回成分により吹き飛ばした溶融物164を巻き込むようにして受け部151内に運ぶことになる。この結果、受け部151の開口部に溶融物164が堆積することを防止できる。しかも、溶融物164を加工対象物160の内周面から除去し易くすることができる。この結果、レーザにより溶融された溶融物の回収効率を向上することができる。
図15および図16は、実施形態2に係るレーザ表面加工装置の他の例を模式的に示す概略構成図である。図17は、図15および図16に示すレーザ表面加工装置の回収機構を示す縦断面図である。
図15に示すレーザ表面加工装置110は、図11に示す上述したレーザ表面加工装置110に対し、回収機構115の受け部151の構成が異なる。また、同様に図16に示すレーザ表面加工装置110は、図13に示す上述したレーザ表面加工装置110に対し、回収機構115の受け部151の構成が異なる。従って、図15および図16に示すレーザ表面加工装置110の説明において、図11および図13に示す上述したレーザ表面加工装置110と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。
回収機構115の受け部151は、旋回流発生部314を有する。旋回流発生部314は、筒状に形成された受け部151の筒の内周面に設けられた螺旋部をなす。螺旋部は、受け部151の筒の延在方向に沿って螺旋状に延在する凸条または凹条により形成される。
このレーザ表面加工装置110は、図15および図16に示すように、アシストガス噴射ノズル133,233からアシストガスGを加工対象物160の内周面に噴射しつつ、レーザ照射ヘッド123からレーザLを加工対象物160の内周面に照射する。アシストガスGは、加工対象物160のレーザLが照射されているリング状の照射領域Laに向けて噴射される。加工対象物160は、レーザLが照射される位置が加熱され、溶融し、一部が溶融物164となる。溶融物164は、アシストガスGにより吹き飛ばれる。アシストガスGで吹き飛ばされた溶融物164は、移動方向170の下流側に移動して受け部151に回収される。レーザ表面加工装置110は、マニピュレータ111でレーザ照射ヘッド123、アシストガス噴射ノズル133,233、受け部151を移動方向170に移動させつつ、加工対象物160の内周面を溶融し、溶融物164を生成し、溶融物164をアシストガスGで吹き飛ばし、受け部151で回収することで、加工対象物160の内周面の一部を除去する。
図15および図16に示すレーザ表面加工装置110は、旋回流発生部314を有する。従って、アシストガス噴射ノズル233から噴射されるアシストガスGは、加工対象物160の管の内周面に沿ってリング状に噴射されると共に、当該リング状を渦巻きとする旋回流となって加工対象物160の内周面に至る。これにより、アシストガスGの旋回成分により吹き飛ばした溶融物164を巻き込むようにして受け部151内に運ぶことになる。この結果、受け部151の開口部に溶融物164が堆積することを防止できる。しかも、溶融物164を加工対象物160の内周面から除去し易くすることができる。この結果、レーザにより溶融された溶融物の回収効率を向上することができる。
また、図15から図17に示すようにレーザ表面加工装置110は、回収機構115の受け部151に旋回流発生部314を有する。従って、受け部151において溶融物164を回収する気流が旋回流となって溶融物164を巻き込むようにして受け部151内を通過することになる。この結果、受け部151内に溶融物164が堆積することを防止できる。そして、レーザにより溶融された溶融物の回収効率を向上することができる。
図18および図19は、実施形態2に係るレーザ表面加工装置の他の例を模式的に示す概略構成図である。
図18に示すレーザ表面加工装置110は、図11に示す上述したレーザ表面加工装置110に対し、旋回流発生部114が設けられておらず、回収機構115の受け部151の構成が異なる。また、同様に図19に示すレーザ表面加工装置110は、図13に示す上述したレーザ表面加工装置110に対し、旋回流発生部214が設けられておらず、回収機構115の受け部151の構成が異なる。従って、図18および図19に示すレーザ表面加工装置110の説明において、図11および図13に示す上述したレーザ表面加工装置110と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。
回収機構115の受け部151は、旋回流発生部314を有する。旋回流発生部314は、筒状に形成された受け部151の筒の内周面に設けられた螺旋部をなす。螺旋部は、受け部151の筒の延在方向に沿って螺旋状に延在する凸条または凹条により形成される(図17参照)。
このレーザ表面加工装置110は、図18および図19に示すように、アシストガス噴射ノズル133,233からアシストガスGを加工対象物160の内周面に噴射しつつ、レーザ照射ヘッド123からレーザLを加工対象物160の内周面に照射する。アシストガスGは、加工対象物160のレーザLが照射されているリング状の照射領域Laに向けて噴射される。加工対象物160は、レーザLが照射される位置が加熱され、溶融し、一部が溶融物164となる。溶融物164は、アシストガスGにより吹き飛ばれる。アシストガスGで吹き飛ばされた溶融物164は、移動方向170の下流側に移動して受け部151に回収される。レーザ表面加工装置110は、マニピュレータ111でレーザ照射ヘッド123、アシストガス噴射ノズル133,233、受け部151を移動方向170に移動させつつ、加工対象物160の内周面を溶融し、溶融物164を生成し、溶融物164をアシストガスGで吹き飛ばし、受け部151で回収することで、加工対象物160の内周面の一部を除去する。
図18および図19に示すレーザ表面加工装置110は、回収機構115の受け部151に旋回流発生部314を有する。従って、受け部151において溶融物164を回収する気流が旋回流となって溶融物164を巻き込むようにして受け部151内を通過することになる。この結果、受け部151内に溶融物164が堆積することを防止できる。そして、レーザにより溶融された溶融物の回収効率を向上することができる。