しかしながら、ヒレ状部分を介して枠体を躯体開口枠に取り付けた場合には、躯体開口枠の見付け面から枠体の一部が室外側に突出した状態となる。このため、躯体開口枠の室内に臨む見付け面から枠体の室外に臨む見付け面までの寸法が増大することとなる。しかも、枠体の重心位置についても室外側となるため、経年によって下枠が垂れ下がる等の問題を生じるおそれがある。
本発明は、上記実情に鑑みて、躯体開口枠の室内に臨む見付け面からの見込み方向に沿った寸法を削減し、かつ経年によって下枠が垂れ下がる等の事態を防止することのできる枠体の取付構造及び壁面ユニットを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る枠体の取付構造は、躯体開口枠に建具の枠体を取り付ける枠体の取付構造であって、前記躯体開口枠の内周側部分には、前記枠体との見込み方向に沿った位置決めを行う位置決め部が設けられ、前記位置決め部に前記枠体を係合させた状態で前記躯体開口枠に前記枠体が取り付けられていることを特徴とする。
この発明によれば、躯体開口枠と枠体との位置決めが躯体開口枠の内周側部分となるため、枠体の一部が躯体開口枠の見付け面から突出することなく躯体開口枠に対して枠体を取り付けることが可能となり、見込み方向に沿った寸法を削減し、かつ経年によって下枠が垂れ下がる事態を防止することが可能となる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記躯体開口枠は、複数の躯体枠要素によって矩形状に構成されたものであり、前記躯体枠要素の少なくとも1つには、前記位置決め部として前記枠体の見付け面に当接する当接部が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、躯体開口枠に設けた当接部に枠体の見付け面を当接させることにより、躯体開口枠に対する枠体の見付け方向に沿った位置を規定することができる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記躯体枠要素には、前記当接部において少なくとも前記枠体の見付け面が当接する部位にシール材が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、枠体の見付け面を当接部に当接させることにより、枠体と躯体開口枠との間にシール材が介在することになり、躯体開口枠と枠体との隙間から室外側の水が室内側に浸入する事態を防止することができる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記当接部は、前記躯体枠要素に対して位置決め部材を着脱可能に取り付けることによって構成されていることを特徴とする。
この発明によれば、躯体枠要素から位置決め部材を取り外すことにより、躯体開口枠に対して任意の方向に枠体を引き出すことが可能となる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記枠体の見付け面から前記躯体開口枠の見付け面にわたる部位の少なくとも一部には、互いの間を覆うように防水部材が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、防水部材によって枠体と躯体開口枠との隙間が覆われるため、枠体と躯体開口枠との隙間に水が浸入する事態を防止することができる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記枠体には、下枠において前記躯体開口枠に対向する見込み面の両側縁部にそれぞれ長手方向に沿って係合突条が設けられ、前記躯体開口枠は、複数の躯体枠要素によって矩形状に構成されたものであり、前記躯体開口枠において前記下枠に対応する躯体枠要素には、前記位置決め部として前記係合突条の相互間に配置される受け部材が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、下枠に設けた係合突条の相互間に受け部材を配置させることにより、下枠と躯体開口枠との間をネジや釘によって連結することなく、躯体開口枠に対する下枠の見込み方向に沿った移動を制限することができる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記下枠に対応する躯体枠要素には、前記受け部材よりも室内側となる部位に前記下枠との間に介在されるシール材が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、シール材によって受け部材の周囲が等圧空間となり、室内側への水の浸入を防止することができる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記躯体開口枠には、下枠に対応する躯体枠要素の室外に臨む開口縁部に、室内側に位置する内周側の見込み面よりも外周側に位置する拡大見込み面が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、下枠に対応する躯体枠要素の室外に臨む開口縁部に拡大見込み面が設けられているため、例えば、下枠に対応する躯体枠要素に防水シートを配設した際に室外に臨む開口縁部においては防水シートが室外に向けて漸次下方となるように傾斜して配設されることになる。従って、室外への排水性の点で有利となる。
また本発明は、上述した枠体の取付構造において、前記躯体開口枠は、複数の躯体枠要素によって矩形状に構成されたものであり、前記位置決め部は、前記躯体開口枠の2つの躯体枠要素に設けられ、前記位置決め部を設けていない2つの躯体枠要素の見込み面には、前記枠体の対応する見込み面との間に介在するシール材が設けられていることを特徴とする。
この発明によれば、縦枠の見込み面と躯体枠要素の見込み面との間に介在するシール材によって室内側に水が浸入する事態を防止することができる。
また本発明に係る壁面ユニットは、上述した取付構造を適用して前記躯体開口枠と前記枠体とがユニット化され、前記躯体開口枠を介して建築物の躯体に取り付けられることを特徴とする。
この発明によれば、躯体開口枠と枠体との位置決めが躯体開口枠の内周側部分となるため、枠体の一部が躯体開口枠の見付け面から突出することなく躯体開口枠に対して枠体を取り付けることが可能となり、見込み方向に沿った寸法を削減することが可能となる。これにより、壁面ユニットを運搬する際の効率を向上させることができるようになる。
本発明によれば、躯体開口枠と枠体との位置決めが躯体開口枠の内周側部分となるため、枠体の一部が躯体開口枠の見付け面から突出することなく躯体開口枠に対して枠体を取り付けることが可能となり、見込み方向に沿った寸法を削減し、かつ経年によって下枠が垂れ下がる事態を防止することが可能となる。
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る枠体の取付構造及び壁面ユニットの好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態である枠体の取付構造を適用した壁面ユニットを示したものである。ここで例示する壁面ユニット1は、建築物に取り付ける際に単一の構造体として取り扱うもので、建具2及び躯体開口枠3を備えている。
建具2は、枠体10の内部に障子20を支持させたものである。本実施の形態では建具2として、枠体10と障子20との間に介在させたヒンジHによって障子20が室内側に開くように構成した内開き窓を例示している。枠体10は、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13を四周枠組みすることによって構成したものである。本実施の形態では、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13として、同一の断面形状を有した枠材Wを適用している。上枠11、下枠12及び左右の縦枠13を構成する枠材Wは、アルミニウム合金等の金属、あるいは樹脂を材料として成形された押し出し形材であり、図3に示すように、略矩形の中空状を成す枠本体部W1と、枠本体部W1の室外側に位置する内周部から内周側に突出した戸当たり部W2とが一体に成形してある。戸当たり部W2の突出縁部において室内に臨む部位には、図1及び図2に示すように、障子20との間をシールするシール材W3が設けてある。枠本体部W1の外周側において見込み方向に沿った面には、図3に示すように、長手方向に沿って凹部W4が設けてある。凹部W4は、見込み方向のほぼ中央となる部位に設けてあり、室外側及び室内側にそれぞれ枠材Wの長手方向に沿って延在する係合突条W5を構成している。
ここで、上述した見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具2の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った平面については、見込み面と称する場合がある。また、本実施の形態では、見付け方向という用語も用いる。見付け方向とは、上枠11や下枠12のように左右に沿った部材の場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向であり、縦枠13のように上下に沿った部材の場合、見込み方向に直交した左右に沿う方向である。見付け方向に沿った平面については、見付け面と称する場合がある。
障子20は、図1及び図2に示すように、矩形状を成す面材21の四周に上框22、下框23及び左右の縦框24を装着したもので、四周の室外に臨む見付け面が枠体10の戸当たり部W2に同時に当接することのできる大きさに構成してある。本実施の形態では、室内側から見て右側に位置する縦框24と縦枠13との間にヒンジHを設け、上下に沿ったヒンジ軸を中心として障子20が室内側に開くように構成してある。室内側から見て左側に位置する縦框24には、室内に臨む見付け面にハンドル25が設けてある。なお、図中の符号26は、それぞれの框22,23,24との間に面材21を挟持する押縁である。また、本実施の形態では、障子20を構成する上框22、下框23及び左右の縦框24として、枠体10と同様、同一の断面形状を有する框材によって構成したものを適用している。
躯体開口枠3は、図4及び図5に示すように、左右の縦材(縦枠13に対応する躯体枠要素)31の間の上下にまぐさ(上枠11に対応する躯体枠要素)32及び窓台(下枠12に対応する躯体枠要素)33を設けることによって構成した矩形の枠状を成すものである。縦材31、まぐさ32及び窓台33は、見込み方向に沿った寸法d1が互いに同一で、上述した枠体10の見込み方向に沿った寸法d2よりも大きく設定してある。
躯体開口枠3において、まぐさ32よりも上方となる部位及び窓台33よりも下方となる部位には、それぞれ横材34が設けてある。横材34は、見込み方向に沿った寸法d1が縦材31等と同一であり、まぐさ32との間及び窓台33との間にそれぞれ隙間を確保した状態で縦材31の間に設けてある。まぐさ32と横材34との間の隙間及び窓台33と横材34との間の隙間には、それぞれ断熱材35が配設してある。上述のまぐさ32、窓台33、縦材31及び横材34は、それぞれ構造材となるもので、例えば木材によって構成してある。この躯体開口枠3には、内周側となる部分に当接面3A,3B及び逃げ面3Cが設けてある一方、室外に臨む見付け面に表面材40が配設してある。
当接面3A,3Bは、まぐさ32及び窓台33に設けた見付け方向に沿う平面である。本実施の形態では、まぐさ32及び窓台33の内周側となる見込み面32a,33aにおいて、室内側に位置する部分に、それぞれ別体の位置決め部材51,52を設けることにより室外に臨むように当接面3A,3Bが構成してある。位置決め部材51,52は、断面が矩形の角柱状に構成したものであり、ネジ51a,52aを螺合することによって、まぐさ32、窓台33に対してそれぞれが着脱可能に取り付けてある。図からも明らかなように、まぐさ32に設けた当接面(以下、上方当接面(当接部)3Aという)は、窓台33に設けた当接面(以下、下方当接面3Bという)よりも室内側に位置し、かつまぐさ32の室外に臨む見付け面32bからの距離d3が枠材Wの見込み方向に沿った寸法d2よりも小さくなるように構成してある。より具体的に説明すると、上方当接面3Aは、枠材Wに設けた係合突条W5の見込み方向に沿った寸法d4分だけ下方当接面3Bよりも室内側に位置し、まぐさ32の室外に臨む見付け面32bからの距離d3は枠材Wの見込み方向に沿った寸法d2に対して後述する表面材40の板厚t分だけ小さくなるように構成してある。上方当接面3Aの見付け方向に沿った寸法d5は、下方当接面3Bの見付け方向に沿った寸法d6よりも小さく構成してある。
まぐさ32の位置決め部材51と、窓台33の位置決め部材52との間は、枠体10の上下に沿った寸法d7よりもわずかに小さくなるように相互間距離d8が設定してある。これに対し、まぐさ32の見込み面32aと、窓台33の見込み面33aとの間は、枠体10の上下に沿った寸法d7よりも大きくなるように相互間距離d9が設定してある。
逃げ面3Cは、左右の縦材31に設けた見付け方向に沿う平面である。本実施の形態では、室内側に位置する見込み面(以下、内方見込み面31aという)の相互間距離d10を、室外側に位置する見込み面(以下、外方見込み面31bという)の相互間距離d11よりも大きく設定することによって室内に臨むように逃げ面3Cが構成してある。縦材31の外方見込み面31bは、相互間距離d11が枠体10の左右方向に沿った寸法d12よりもわずかに大きく設定してある。逃げ面3Cを設ける位置は、上方当接面3Aと同じ見込み位置である。
表面材40は、合板から成る平板状部材であり、上下の横材34の室外に臨む見付け面34a及び左右の縦材31の室外に臨む見付け面31cを覆うことのできる外形寸法の矩形状に構成してある。表面材40の板厚tは、まぐさ32に設けた上方当接面3Aから表面材40の表面40aまでの距離d13が上枠11の見込み方向に沿った寸法d2と等しくなるように設定してある。表面材40の中央部分には、矩形状の開口40bが設けてある。開口40bの左右方向に沿った寸法d11は、縦材31における外方見込み面31bの相互間距離d11と等しくなるように構成してある。これに対して開口40bの上下方向に沿った寸法d14は、まぐさ32の見込み面32aと窓台33の見込み面33aとの相互間距離d9よりも大きく構成してある。この表面材40は、開口40bの上縁をまぐさ32の見込み面32aに合致させるとともに、開口40bの左右縁をそれぞれ縦材31の外方見込み面31bに合致させ、かつ開口40bの下縁面(拡大見込み面)40cが窓台33の見込み面33aよりも下方となる状態で躯体開口枠3に取り付けてある。例えば、表面材40は、開口40bの下縁面40cが窓台33の見込み面33aに対して表面材40の板厚t分だけ下方となるように躯体開口枠3に取り付けてある。
上述の構成を有した躯体開口枠3に対して枠体10を取り付けて壁面ユニット1を構成するには、まず、図4の(a)及び図4の(b)に示すように、窓台33の内周側部分から表面材40の表面40aにわたる部位に防水シート41を配設し、さらに防水シート41によって覆われた窓台33の見込み面33aに受け部材42を設ける。
防水シート41は、遮水性及び可撓性を有した薄膜部材であり、位置決め部材52の上面、下方当接面3B、窓台33の見込み面33a及び表面材40の表面40aにおいて開口40bよりも下方となる部分を連続して覆うように配設してある。ここで、上述したように、表面材40に設けた開口40bの下縁面40cは、窓台33の見込み面33aよりも下方に位置している。従って、窓台33の見込み面33aから表面材40の表面40aに至る防水シート41は、室外に向けて漸次下方となるように傾斜して配設されることになる。
受け部材42は、木材等の比較的硬質部材によって断面がほぼ正方形の角柱状に構成したものであり、2つの側面が防水シート41を介して見込み面33a及び下方当接面3Bに当接した状態で、ネジ(図示せず)を螺合することにより窓台33に取り付けてある。受け部材42は、上下に沿った寸法d15が下方当接面3Bの見付け方向に沿った寸法d6よりも大きく構成してある。受け部材42の見込み方向に沿った寸法d16は、枠材Wに設けた凹部W4に嵌合できるように、係合突条W5の相互間距離d17(図3参照)よりもわずかに小さくなるように構成してある。位置決め部材52の上面からの受け部材42の突出寸法d18は、枠材Wに設けた係合突条W5の突出寸法d19とほぼ一致している。なお、図には明示していないが、受け部材42としては必ずしも窓台33の全長に渡って一連となる長尺のものを適用する必要はなく、短尺状に構成したものを適宜間隔を確保して直線状に配設しても構わない。
次いで、図4の(b)及び図5の(a)に示すように、上方当接面3A及び位置決め部材52の上面にそれぞれ気密性及び水密性を有したシール材43を配設するとともに、縦材31の外方見込み面31bに気密性及び水密性を有したシール材44を配設する。上方当接面3Aのシール材43、位置決め部材52のシール材43及び縦材31のシール材44は、予め成形された帯状を成すもので、それぞれ長手方向の全長にわたって配設してある。上方当接面3A及び位置決め部材52に配設したシール材43は、両側縁部が互いに平行となるように構成してある。これに対して縦材31に配設したシール材44には、室外側となる縁部分に傾斜面44aが形成してある。傾斜面44aは、室内に向けて漸次内方となるように傾斜している。位置決め部材52の上面に対しては、下方当接面3Bからシール材43を配設している。シール材43の幅d20は、少なくとも下方当接面3Bと上方当接面3Aとの間の見込み方向に沿った寸法と同じとなる範囲である。縦材31の外方見込み面31bに対しては、室内側に位置する縁部から少なくとも枠材Wに設けた係合突条W5の見込み方向に沿った寸法d4に対応する範囲にシール材44を配設している。このとき、傾斜面44aが室外側となるように、シール材44の向きを設定しておく。図には明示していないが、上方当接面3Aのシール材43、位置決め部材52のシール材43及び縦材31のシール材44は、端部が互いに接続(圧接)された状態にある。
この状態から、図4の(c)に示すように、ケンドン式で室外側から躯体開口枠3に枠体10を建て込む。すなわち、上枠11が先にまぐさ32の見込み面32aに近接するように枠体10を斜めに配置し、その後、図4の(d)に示すように、下枠12が窓台33の見込み面33aに対向するように枠体10を鉛直に沿った姿勢に戻す。このとき、上枠11の室内に臨む見付け面11aがシール材43を介して上方当接面3Aに当接し、枠体10に対する上枠11の見込み方向に沿った室内側の位置が規定される。また、縦材31との間においては、図5の(b)に示すように、縦枠13の外周側となる見込み面がシール材44を介して縦材31の外方見込み面31bに当接した状態となる。ここで、枠体10を鉛直姿勢に配置するには、縦材31に対して枠体10の縦枠13が見込み方向に沿って室内側に移動する。しかしながら、シール材44に傾斜面44aが設けてあるため、傾斜面44aの作用によってシール材44が見込み方向に圧縮され、縦枠13の見込み面と縦材31の外方見込み面31bとの間に介在することになる。
この状態から、躯体開口枠3に対して枠体10を下方に移動させると、図4の(e)に示すように、窓台33に設けた受け部材42が下枠12の凹部W4に嵌合されるとともに、下枠12の係合突条W5がシール材43を介して位置決め部材52の上面に当接した状態となる。
受け部材42が下枠12の凹部W4に嵌合された状態においては、受け部材42の2つの見込み面に対して下枠12の係合突条W5が近接して対向されるため、躯体開口枠3に対する下枠12の見込み方向に沿った移動が制限されることになる。つまり、枠体10は、上枠11の室内に臨む見付け面11aがまぐさ32の上方当接面3Aに当接し、かつ下枠12に設けた室外側の係合突条W5が受け部材42の室外に臨む見付け面に当接することにより、躯体開口枠3に対して室内側への移動が制限され、見込み方向に沿った位置が規定された状態となる。この状態から上枠11と窓台33との隙間に上方スペーサ45を介在させ、かつ縦枠13と縦材31との隙間にそれぞれ側方スペーサ46を介在させれば、躯体開口枠3に対する枠体10の見付け方向の移動が制限された状態となる。従って、上枠11及び上方スペーサ45を介してまぐさ32にネジSを螺合させるとともに、縦枠13及び側方スペーサ46を介してそれぞれの縦材31にネジSを螺合させれば、互いの位置を規定した状態で躯体開口枠3に枠体10が取り付けられる。なお、下枠12については、窓台33との間にネジSを螺合していないが、室内側の係合突条W5が受け部材42の室内に臨む見付け面に当接することで室外側への移動が制限されるため、窓台33に対して不用意に移動するおそれはない。
躯体開口枠3に取り付けられた枠体10に対しては、図1及び図2に示すように、上枠11の室外に臨む見付け面から表面材40の表面40aにわたる部位及び縦枠13の室外に臨む見付け面13aから表面材40の表面40aにわたる部位にそれぞれ防水テープ(防水部材)47を貼り付けるようにしている。防水テープ47は、遮水性及び可撓性を有した薄膜部材であり、躯体開口枠3と上枠11及び縦枠13との間の隙間を全長にわたって覆うように配設してある。
ここで、本実施の形態の壁面ユニット1によれば、上枠11がまぐさ32の内周側に設けた上方当接面3Aに当接するとともに、下枠12が窓台33の内周側に設けた受け部材42の見付け面に当接することによって躯体開口枠3に対する枠体10の見込み方向に沿った位置が規定されることになる。つまり、枠体10に対して外周側に突出するヒレ状部分を設ける必要がなく、躯体開口枠3との見込み方向に沿った位置を規定することが可能であるため、上枠11及び縦枠13の室外に臨む見付け面11b,13aと、躯体開口枠3の見付け面である表面材40の表面40aとを同一の平面上に位置させることができる。これにより、防水テープ47を配設する作業が極めて容易であるばかりでなく、防水テープ47に皺や隙間が生じ難いため、互いの間に高い水密性を確保することが可能となる。特に、上枠11に設けた防水テープ47と縦枠13に設けた防水テープ47との接合部分についても同一の平面に配設されるため、単に防水テープ47を重ねるだけでも、ピンホールが生じるおそれがなく、高い水密性を確保することが可能となる。
しかも、躯体開口枠3において互いに平行となるまぐさ32及び窓台33に枠体10との位置決め部、つまり上方当接面3A及び受け部材42を設けるようにしている。従って、躯体開口枠3に対して枠体10が傾斜した状態で取り付けられる事態を防止することができる。
さらに、窓台33においては、受け部材42よりも室内側となる部位において下枠12との間にシール材43を介在させるようにしているため、受け部材42の周囲が等圧空間となる。
上記のように構成した壁面ユニット1を家屋等の建築物に取り付けるには、図6の(a)に示すように、建築物に設けた柱や梁等の躯体100の間に配置し、躯体開口枠3の横材34や縦材31を介して躯体100に固定させれば良い。躯体開口枠3を躯体100に固定するには、横材34や縦材31を介して躯体100に釘を打ったり、ネジを螺合すれば良い。ここで、図6の(b)に示すように、従来工法では、建築現場において柱や梁等の躯体100に対してまぐさ32や窓台33を取り付けて躯体開口枠103を構成し、その後、この躯体開口枠103に対して建具2や断熱材35を建て込むようにしている。従って、躯体開口枠103を構成する際の寸法精度や建具2を取り付ける際の寸法精度については、現場作業員の技量に頼らざるを得ず、高い寸法精度を確保することが困難となる場合もある。これに対して、図6の(a)に示すように、躯体100に壁面ユニット1を取り付ける工法によれば、建築物に躯体開口枠3を構成する必要がなく、工場等の設備、環境が整った場所において予め壁面ユニット1を製造し、これを建築現場に搬送して躯体100に取り付けることが可能である。従って、現場作業員が高い技量を有していない場合であっても、高い寸法精度を有した壁面ユニット1を建築物に精度良く取り付けることが可能となり、壁面ユニット1を設けた建築物に対しても高い寸法精度を得ることが可能である。しかも、上述したように、躯体開口枠3の室内に臨む見付け面から枠体10の室外に臨む見付け面までの寸法が躯体開口枠3を超えて増大することがない。従って、複数の壁面ユニット1を重ねたとしても、躯体開口枠3が相互に当接するだけであり、枠体10が他のものに当接して損傷するおそれがなく、多数の壁面ユニット1を搬送する場合の効率の点でも極めて有利となる。
壁面ユニット1の建築物への取り付けについて、より具体的に説明すると、図7及び図8に示すように、まず、壁面ユニット1の上方及び左右においては、躯体100の表面から表面材40の表面40a及び防水テープ47の表面にわたる部位に透湿性を有した防水シート101を配設する。
これに対して壁面ユニット1の下方については、防水シート41を一旦まくり上げ、躯体100の表面から表面材40の表面40aにわたる部位に防水シート101を配設し、その後、まくり上げた防水シート41を元に戻して防水シート101の表面を覆うように配設する。防水シート101の表面には、適宜位置に胴縁102を配設する。
その後、窓台33に設けた受け部材42に水切り材104を取り付け、水切り材104の基端部分と下枠12の係合突条W5との間にシーリング材105を充填して硬化させる。また、胴縁102を介して建築物に外壁材106を設ける。壁面ユニット1の上方及び左右については、上枠11の室外に臨む見付け面11b及び縦枠13の室外に臨む見付け面13aを覆う位置まで外壁材106を配設する。外壁材106と上枠11及び縦枠13との間には、それぞれシーリング材107を充填して硬化させる。壁面ユニット1の下方については、水切り材104によって覆われる位置まで外壁材106を配設する。外壁材106と水切り材104との間についてもシーリング材107を充填して硬化させる。
一方、室内側においては、躯体開口枠3の室内に臨む見付け面を覆うように内装材108を配設する。まぐさ32については位置決め部材51の下面から、縦材31については見込み面31aから、それぞれの内装材108までの間を覆う部位にも見込み方向に沿って内装材108を配設している。窓台33については、位置決め部材52の上面から内装材108の端面までの間にわたって額縁材109を配設するようにしている。最後に枠体10の内部に障子20を建て込めば、建築物に対して建具2及び断熱材35(建具2の周囲のみ)の取り付けが終了する。なお、障子20を取り付ける手順としては必ずしも実施のものに限らず、例えば、壁面ユニット1の枠体10に予め障子20を建て込んでおいても構わない。
上記のようにして壁面ユニット1を取り付けた建築物によれば、躯体開口枠3に対して枠体10が室外側に突出していないため、建具2からの荷重が躯体開口枠3を介して躯体100で確実に受け止められることになり、経年によっても下枠12が垂れ下がる等の問題を招来するおそれがない。
枠体10と躯体開口枠3との間においては、上枠11とまぐさ32との間及び縦枠13と縦材31との間にそれぞれシール材43,44及び防水テープ47が介在し、かつ下枠12と窓台33との間にシール材43及び防水シート41が介在している。しかも、下枠12については、受け部材42によって室外側への移動を制限するようにしており、窓台33との間に釘やネジを用いていない。従って、枠体10と躯体開口枠3との間から室内側に水が浸入する事態を確実に防止することができる。特に、窓台33においては、受け部材42よりも室内側となる部位において下枠12との間にシール材43を介在させ、受け部材42の周囲が等圧空間となるため、水切り材104を超えて水が浸入したとしても、その水が室内側に至るおそれはない。
加えて、上述の壁面ユニット1においては、まぐさ32及び窓台33に対してそれぞれ位置決め部材51,52を着脱可能に取り付けている。従って、壁面ユニット1から位置決め部材51,52を取り外しておけば、躯体開口枠3に対して建具2を室内側に引き出すことが可能となる。これにより、例えば建具2の交換が必要となった場合にも、建具2を室内側に引き出して交換することができ、作業の容易化を図ることが可能となる。
なお、上述した実施の形態では、建具2として縦枠13と縦框24との間にヒンジHを有した開き窓を適用しているため、ヒンジHとの干渉を防止するために躯体開口枠3の縦材31に逃げ面3Cを設けるようにしている。しかしながら、枠体に対する障子の開閉態様は必ずしも実施のものに限定されず、図9に示す変形例1や図10及び図11に示す変形例2のように、ヒンジHを必要としない建具2′を備えた壁面ユニット1′を構成することも可能である。この場合には、躯体開口枠3の縦材31にヒンジHのための逃げ面3Cを設ける必要がなくなる。このため、縦材31にも見付け方向に沿った当接面(当接部)3Dを設けて縦枠13との間にシール材43を介在させることが可能である。なお、図10及び図11に示す変形例2では、上述した当接面3A,3Bが躯体開口枠3に直接設けてある。すなわち、まぐさ32及び窓台33の室内側に位置する見込み面32a1,33a1に対して、室外側に位置する見込み面32a2,33a2の位置が外周側となるように構成することにより、別部品を要することなく当接面3A,3Bをまぐさ32及び窓台33に直接設けるようにしている。しかしながら、実施の形態と同様、位置決め部材51,52によって躯体開口枠3に当接面3A,3Bを設けるようにしてももちろん良い。また、建具2が躯体開口枠3の室外に臨む見付け面(表面材40の表面)40aから室外側に突出しないように壁面ユニット1を構成したが、図10及び図11に示す変形例2のように、躯体開口枠3の見付け面から建具2′の一部が室外側に突出するように構成しても構わない。なお、変形例1及び変形例2において実施の形態と同様の構成については、同一の符号が付してある。
さらに、上述した実施の形態では、位置決め部として枠体10の見付け面に当接する当接面3Aを躯体開口枠3に設けるようにしているが、必ずしもこれに限定されず、例えば躯体開口枠と枠体との間に互いに係合するように位置決め部を設けても良い。なお、位置決め部は、必ずしも上枠に対応する躯体枠要素と下枠に対応する躯体枠要素とに設ける必要はなく、左右の縦枠に対応する躯体枠要素に設けるようにしても良い。
また、上述した実施の形態及び変形例1、変形例2では、上枠11や縦枠13に対応する躯体枠要素32,31に当接部3A,3Dを設けるようにしているが、本発明はこれに限定されず、当接部3A,3Dに代えて、あるいは当接部3A,3Dに加えて、下枠12に対応する躯体枠要素33に当接部を設けるようにしても構わない。なお、当接部としては、必ずしも平面である必要はなく、当接することによって位置決めを行うことができれば、その他の形状のものであっても良い。
またさらに、上述した実施の形態及び変形例1、変形例2では、上枠11の室外に臨む見付け面から表面材40の表面40aにわたる部位及び縦枠13の室外に臨む見付け面13aから表面材40の表面40aにわたる部位にそれぞれ防水テープ47を貼り付けるようにしているが、例えば、下枠12から縦枠13に対応する躯体枠要素31にも防水部材を設けても良い。
また、上述した実施の形態及び変形例1、変形例2では、拡大見込み面である表面材40の下縁面40cが、窓台33の見込み面33aよりも下方に位置するように構成している。このため、窓台33の見込み面33aから表面材40の表面40aに至る防水シート41が室外に向けて漸次下方となるように傾斜して配設されることになり、排水性の点で有利となる。しかしながら、本発明は必ずしもこれに限定されず、表面材40の開口40bを躯体開口枠3の開口と合致させるようにしても良い。なお、拡大見込み面を設ける場合に上述した実施の形態では、表面材40に設けるようにしているが、必ずしも表面材40に設ける必要はなく、例えば表面材を有していない面材ユニットにおいては下枠に対応する躯体枠要素の室外側に位置する見込み面に拡大見込み面を設けるようにしても構わない。