JP6922147B2 - 吸収式冷凍機 - Google Patents

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Description

本発明は吸収式冷凍機に関し、特に必要な能力を確保しつつ小型化を図ることができる吸収式冷凍機に関する。
吸収液と冷媒との吸収サイクルによって冷水の冷却又は温水の加熱を行う吸収式冷凍機は、再生器への入熱量(加熱用流体導入量又は燃焼量)を調節することにより、出力調節が行われる。吸収式冷凍機は、通常、定格の100%を超えて再生器に熱が投入されないように入熱が制御される(例えば、特許文献1参照。)。
特許第3630775号公報
吸収式冷凍機は、通常、定格の100%で運転したときに、処理する最大熱負荷に対応できるように容量を選定する。しかしながら、最大熱負荷を処理する機会は運転時間の約1%といわれており、部分負荷運転がそのほとんどを占める。わずかな機会のために、定格運転で最大熱負荷を処理できる容量を選定することは、効率的とはいえない。
本発明は上述の課題に鑑み、必要な能力を確保しつつ小型化を図ることができる吸収式冷凍機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1に示すように、加熱源Hが供給されることによって構成される吸収液Sと冷媒Vとの吸収サイクルにより温度調節対象流体Cの冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機1であって;吸収式冷凍機1に供給される加熱源Hの単位時間あたりの量を調節する入熱量調節装置33と;入熱量調節装置33を制御する制御装置60とを備え;制御装置60は、吸収式冷凍機1に供給される加熱源Hの単位時間あたりの量の上限値として、定格条件における定格上限値と、定格上限値よりも大きい過大上限値とが記憶されていると共に、平常時は定格上限値の範囲内で入熱量調節装置33を制御し、定格条件における定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに過大上限値の範囲内で入熱量調節装置33を制御するように構成されている。
このように構成すると、過大上限値の範囲内で入熱量調節装置を制御したときに最大熱負荷を処理可能な容量を選定することができ、必要な能力を確保しつつ吸収式冷凍機の小型化を図ることができる。
また、本発明の第2の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る吸収式冷凍機1において、冷媒Veを吸収した吸収液Swを加熱源Hで加熱し、吸収液Swから冷媒Vgを離脱させて濃度が上昇した濃溶液Saを生成する再生器30と;吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swを生成する吸収器10と;吸収器10から流出する希溶液Swの流量を直接又は間接的に調節する希溶液流量調節装置19とを備え;吸収液Sw、Saが再生器30及び吸収器10を通って循環するように構成され;制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、吸収器10から流出する希溶液Swの流量を定格条件における運転時よりも増加させるように希溶液流量調節装置19を制御する。
このように構成すると、定格出力よりも大きい出力で運転したときに、吸収液が過度に濃くなることを抑制することができると共に再生器内部圧力の上昇を抑制することができ、運転を継続できなくなる事態の発生を抑制することができる。
また、本発明の第3の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様に係る吸収式冷凍機1において、冷媒Veを吸収した吸収液Swを加熱源Hで加熱し、吸収液Swから冷媒Vgを離脱させて濃度が上昇した濃溶液Saを生成する再生器30と;吸収液Saが冷媒の蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swを生成する吸収器10と;再生器30から流出する濃溶液Saの流量を直接又は間接的に調節する濃溶液流量調節装置15とを備え;吸収液Sw、Saが再生器30及び吸収器10を通って循環するように構成され;制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、再生器30から流出する濃溶液Saの流量を定格条件における運転時よりも増加させるように濃溶液流量調節装置15を制御する。
このように構成すると、定格出力よりも大きい出力で運転したときに、吸収液が過度に濃くなることを抑制することができると共に再生器内部圧力の上昇を抑制することができ、運転を継続できなくなる事態の発生を抑制することができる。
また、本発明の第4の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、吸収式冷凍機1から流出する温度調節対象流体Cの温度の目標値を、吸収式冷凍機1に導入された温度調節対象流体Cの温度との差が小さくなる方向に変更する。
このように構成すると、定格出力よりも大きい出力で運転したときに、吸収液が過度に濃くなることを抑制することができ、運転を継続できなくなる事態の発生を抑制することができる。
また、本発明の第5の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、冷媒Veを吸収した吸収液Swを加熱源Hで加熱して吸収液Swから冷媒Vgを離脱させて濃度が上昇した濃溶液Saを生成する再生器30から離脱した冷媒の蒸気Vgを導入し、冷却水Dで冷媒の蒸気Vgを冷却凝縮させて冷媒液Vfを生成する凝縮器40を備え;制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、凝縮器40に導入する冷却水Dの流量を定格条件における運転時よりも増加させるように、冷却水Dの流量を調節する冷却水流量調節装置91を制御する。
このように構成すると、定格出力よりも大きい出力で運転したときに、吸収液が過度に濃くなることを抑制することができ、運転を継続できなくなる事態の発生を抑制することができる。
また、本発明の第6の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第5の態様に係る吸収式冷凍機1において、制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、凝縮器40に導入する冷却水Dの温度を定格条件における運転時よりも低下させるように、冷却水Dの温度を調節する冷却水温度調節装置93を制御する。
このように構成すると、定格出力よりも大きい出力で運転したときに、吸収液が過度に濃くなることを抑制することができ、運転を継続できなくなる事態の発生を抑制することができる。
また、本発明の第7の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、冷媒Veを吸収した吸収液Swを加熱源Hで加熱して吸収液Swから冷媒Vgを離脱させて濃度が上昇した濃溶液Saを生成する再生器30から離脱した冷媒の蒸気Vgを導入し、冷却水Dで冷媒の蒸気Vgを冷却凝縮させて冷媒液Vfを生成する凝縮器40を備え;制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、凝縮器40に導入する冷却水Dの温度を定格条件における運転時よりも低下させるように、冷却水Dの温度を調節する冷却水温度調節装置93を制御する。
このように構成すると、定格出力よりも大きい出力で運転したときに、吸収液が過度に濃くなることを抑制することができ、運転を継続できなくなる事態の発生を抑制することができる。
また、本発明の第8の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1を参照して示すと、上記本発明の第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令がなくなったとき、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けてから所定の時間が経過したとき、又は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けた時間の累計が所定の累計時間を超えたときに、定格上限値の範囲内で入熱量調節装置33を制御するように構成されている。
このように構成すると、定格出力での運転時よりも効率が低下する、定格出力よりも大きい出力での運転を所定の時間又は所定の累計時間内に抑制するので、効率の低下を抑制することができる。
また、本発明の第9の態様に係る吸収式冷凍機は、例えば図1に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第8の態様のいずれか1つの態様に係る吸収式冷凍機1において、基準位置における温度調節対象流体Cの温度を検出する温度調節対象流体温度検出部54と;吸収式冷凍機1の適切な運転を行うために監視する1つ以上の物理量を検出する監視物理量検出部16、25、45、51、53、55と;監視物理量検出部16、25、45、51、53、55で検出した値が許容される上限値を超えたときに吸収式冷凍機1の運転を停止させる又は吸収式冷凍機1に供給される加熱源Hの単位時間あたりの量を所定の量に制限する安全制御手段65とを備え;制御装置60は、温度調節対象流体温度検出部54で検出した温度をあらかじめ設定された温度とするときに導入すべき加熱源Hの単位時間あたりの量と、監視物理量検出部16、25、45、51、53、55で検出した値が安全制御手段65において定められた上限値となるときに導入すべき加熱源Hの単位時間あたりの量と、を算出し、算出した加熱源Hの単位時間あたりの量のうちの最小の量を吸収式冷凍機1に導入するように入熱量調節装置33を制御する。
このように構成すると、監視物理量検出部で検出した値が許容される上限値以下となるように制御されることとなり、吸収式冷凍機を継続して運転させることができる。
本発明によれば、過大上限値の範囲内で入熱量調節装置を制御したときに最大熱負荷を処理可能な容量を選定することができ、必要な能力を確保しつつ吸収式冷凍機の小型化を図ることができる。
本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機の模式的系統図である。 安全制御部の指令に基づく吸収冷凍機の停止を極力回避する制御を説明するフローチャートである。 安全制御部の指令に基づく吸収冷凍機の停止を極力回避する制御を説明するタイムチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
本明細書において、「吸収式冷凍機」は、再生器に加熱源を供給することによって、再生器、凝縮器、吸収器、蒸発器などによる吸収サイクルを構成し、温度調節対象流体の冷却又は加熱を行う吸収式熱源機の総称であり、加熱源を再生器に供給して吸収冷凍サイクルを構成し、冷水(冷却された温度調節対象流体)を供給する機械である吸収冷凍機、加熱源を再生器に供給して吸収サイクルを構成し、冷水(冷却された温度調節対象流体)及び/又は温水(加熱された温度調節対象流体)を供給する機械である吸収冷温水機、及び加熱源を再生器に供給して吸収ヒートポンプサイクルを構成し、蒸発器で熱源水から熱を回収することによって、少なくとも吸収器で加熱された温度調節対象流体を供給する機械である吸収ヒートポンプを含むものである。以下、吸収式冷凍機は、その一形態である吸収冷凍機であるとして説明する。
まず図1を参照して、本発明の実施の形態に係る吸収冷凍機1を説明する。図1は、吸収冷凍機1の模式的系統図である。吸収冷凍機1は、吸収冷凍サイクルを行う主要構成機器として、吸収器10と、蒸発器20と、再生器30と、凝縮器40とを備えていると共に、制御装置60を備えている。吸収冷凍機1は、吸収液Sに対して冷媒Vが相変化をしながら循環することで熱移動を行わせ、温度調節対象流体である冷水Cの温度を低下させる機器である。以下の説明において、吸収液に関し、吸収冷凍サイクル上における区別を容易にするために、性状や吸収冷凍サイクル上の位置に応じて、「希溶液Sw」、「濃溶液Sa」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「吸収液S」ということとする。また、冷媒に関し、吸収冷凍サイクル上における区別を容易にするために、性状や吸収冷凍サイクル上の位置に応じて、「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「再生器冷媒蒸気Vg」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、吸収液S(吸収剤と冷媒との混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(HO)が用いられているが、これに限らず他の冷媒、溶液(吸収剤)の組み合わせで使用してもよい。
吸収器10は、蒸発器20で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを濃溶液Saで吸収する機器である。吸収器10は、冷却水Dを流す冷却水流路としての冷却管11と、濃溶液Saを冷却管11の外面に向けて散布する濃溶液散布ノズル12とを、吸収器缶胴17の内部に有している。濃溶液散布ノズル12は、散布した濃溶液Saが冷却管11に降りかかるように、冷却管11の上方に配設されている。吸収器10は、散布された濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収することで濃度の低下した希溶液Swを吸収器缶胴17の下部の貯留部13に貯留すると共に、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した際に発生した吸収熱を冷却水Dが奪うように構成されている。吸収器10は、貯留部13内の希溶液Swの液位を検出する希溶液位計16を有している。
蒸発器20は、冷水Cの熱で冷媒液Vfを蒸発させて蒸発器冷媒蒸気Veを発生させることにより冷水Cを冷却する機器である。蒸発器20は、冷水Cを流す冷水流路としての蒸発管21と、冷媒液Vfを蒸発管21の外面に向けて散布する冷媒液散布ノズル22とを、蒸発器缶胴27の内部に有している。冷媒液散布ノズル22は、散布した冷媒液Vfが蒸発管21に降りかかるように、蒸発管21の上方に配設されている。蒸発器20は、蒸発器缶胴27の下部の貯留部23に貯留されている冷媒液Vfを冷媒液散布ノズル22に導く冷媒液管28と、冷媒液管28内の冷媒液Vfを冷媒液散布ノズル22に送る冷媒ポンプ29とを有している。また、蒸発器20は、貯留部23内の冷媒液Vfの液位を検出する蒸発器冷媒液位計25を有している。蒸発器20は、蒸発管21の外面に散布された冷媒液Vfが蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなるための気化熱を、蒸発管21内を流れる冷水Cから奪うことで冷水Cを冷却し、散布された冷媒液Vfのうち蒸発しなかった冷媒液Vfが蒸発器缶胴27の貯留部23に貯留されるように構成されている。
本実施の形態では、吸収器10と蒸発器20とは隣接して配置されており、吸収器缶胴17の上部と蒸発器缶胴27の上部とが連通している。このような構成により、蒸発器缶胴27の内部で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器缶胴17の内部に導くことができるようになっている。冷却管11には、冷却水Dを導入する冷却水入口管11aが一端に接続されている。冷却管11の他端には、冷却水連絡管58が接続されている。冷却水入口管11aには、吸収冷凍機1外の冷却水往管98が接続される。冷却水往管98は、吸収冷凍機1外の冷却塔93に接続されている。冷却塔93は、ファンの回転速度が可変に構成されており、ファンの回転速度を適宜変更して冷却水Dの温度を変えることができるようになっている。冷却塔93は、冷却水温度調節装置に相当する。冷却水往管98には、吸収冷凍機1外の冷却水ポンプ91が配設されている。冷却水ポンプ91は、回転速度が可変に構成されており、回転速度を適宜変更して吐出される冷却水Dの流量を変えることができるようになっている。冷却水ポンプ91は、冷却水流量調節装置に相当する。吸収冷凍機1は、冷却水ポンプ91の稼働により、冷却管11内を冷却水Dが流動するように構成されている。蒸発管21には、冷水Cを導入する冷水入口管21aが一端に接続され、冷水Cを流出させる冷水出口管21bが他端に接続されている。本実施の形態では、冷水出口管21bに、温度調節対象流体温度検出部としての冷水温度計54が設けられている。つまり、本実施の形態では、吸収冷凍機1の出口が基準位置となる。冷水入口管21aには、吸収冷凍機1外の冷水還管95が接続される。冷水還管95には、吸収冷凍機1外の冷水ポンプ92が配設されている。吸収冷凍機1は、冷水ポンプ92の稼働により、蒸発管21内を冷水Cが流動するように構成されている。冷水出口管21bには、吸収冷凍機1外の冷水往管96が接続される。
再生器30は、希溶液Swを導入し、加熱することで、希溶液Sw中の冷媒Vを離脱させ、濃溶液Saを生成する機器である。再生器30において、希溶液Swから離脱した冷媒Vは蒸気の状態であり、この冷媒Vの蒸気を再生器冷媒蒸気Vgということとする。再生器30は、希溶液Swを加熱する加熱部31と、導入した吸収液Sを貯留する再生器缶胴37とを有している。加熱部31は、再生器缶胴37の内部に配設されている。加熱部31は、典型的には、バーナーの燃焼熱、外部から導入した蒸気や温水等の熱で、吸収液Sを加熱することができるように構成されている。加熱部31には、加熱源としての加熱源流体Hを流す加熱源流体管32が接続されている。加熱源流体Hは、典型的には、加熱部31がバーナーの燃焼熱を発生する場合はガスや油等の燃料流体が用いられ、加熱部31において外部から導入した流体が保有する熱が放出される場合は蒸気や温水等の加熱流体が用いられる。加熱源流体管32には、加熱部31に流入する加熱源流体Hの流量を調節する加熱源調節弁33が配設されている。加熱源調節弁33は、入熱量調節装置に相当する。再生器30には、再生器缶胴37の内部の気相部の圧力を検出する再生器圧力計55が設けられている。再生器缶胴37には、希溶液Swを導入する希溶液管18が底部に、生成された濃溶液Saを流出する濃溶液管38が上部側面に、それぞれ接続されている。再生器30は、再生器缶胴37の底部から流入した希溶液Swが、加熱部31で加熱されて上昇しながら徐々に濃縮して濃溶液Saとなり、濃溶液管38の液位に達した濃溶液Saが再生器缶胴37から流出するように構成されている。再生器30として、貫流式再生器や煙管型再生器、液管型再生器等を用いることができる。
凝縮器40は、再生器30で希溶液Swから蒸発した再生器冷媒蒸気Vgを導入し冷却して凝縮させ、蒸発器20に送る冷媒液Vfを生成する機器である。凝縮器40は、冷却水Dの流路を形成する部材である凝縮管41を、凝縮器缶胴47の内部に有している。凝縮器40は、生成した冷媒液Vfを、凝縮器缶胴47の下部の貯留部43に貯留するように構成されている。凝縮器40は、貯留部43内の冷媒液Vfの液位を検出する凝縮器冷媒液位計45を有している。凝縮管41の一端には、一端が冷却管11に接続されている冷却水連絡管58の他端が接続されている。凝縮管41の他端には、冷却水Dを流出させる冷却水出口管41bが接続されている。冷却水出口管41bには、吸収冷凍機1外の冷却水還管99が接続される。冷却水還管99は、吸収冷凍機1外の冷却塔93に接続されている。このような構成により、冷却水還管99を流れる冷却水Dは、冷却塔93で冷却されて冷却水往管98に供給されるように構成されている。
凝縮器缶胴47は、再生器缶胴37に近接して配設されている。本実施の形態では、再生器缶胴37の上部と凝縮器缶胴47の上部とは、再生器冷媒蒸気流路35を介して連通している。凝縮器40は、再生器冷媒蒸気流路35を介して再生器30から再生器冷媒蒸気Vgを導入し、凝縮管41を流れる冷却水Dに再生器冷媒蒸気Vgの熱を奪わせて、再生器冷媒蒸気Vgを凝縮させて冷媒液Vfにするように構成されている。本実施の形態では、凝縮器缶胴47及び再生器缶胴37は、蒸発器缶胴27及び吸収器缶胴17の上方に配設されている。凝縮器缶胴47の貯留部43と蒸発器缶胴27とは、凝縮冷媒液管48で接続されており、凝縮器缶胴47内の冷媒液Vfを位置ヘッド及び両者の内圧の差で蒸発器缶胴27内に導くことができるように構成されている。
吸収器缶胴17の貯留部13と、再生器缶胴37とは、希溶液管18で接続されている。希溶液管18には、溶液ポンプ19が配設されている。溶液ポンプ19は、回転速度が可変に構成されており、回転速度を適宜変更して吐出される希溶液Swの流量を変えることができるようになっている。吐出される希溶液Swの流量を変えることができる溶液ポンプ19は、希溶液流量調節装置に相当する。吸収冷凍機1は、溶液ポンプ19により、吸収器缶胴17の希溶液Swを再生器缶胴37内に搬送することができるように構成されている。再生器缶胴37内では、導入された希溶液Swが、入口から出口に移動するに連れて希溶液Sw中から冷媒Vが離脱して濃度が上昇するようになっている。
再生器缶胴37の濃溶液Saが流出する部分と、吸収器10の濃溶液散布ノズル12とは、濃溶液管38で接続されている。吸収冷凍機1は、溶液ポンプ19によって希溶液Swが再生器缶胴37に搬送され、再生器缶胴37内で冷媒Vが離脱して生成された濃溶液Saが、濃溶液管38を介して濃溶液散布ノズル12に導入されるように構成されている。つまり、溶液ポンプ19は、吸収器10と再生器30との間で吸収液Sを循環させることができる。濃溶液管38には、濃溶液散布ノズル12に導入される濃溶液Saの流量を調節する濃溶液調節弁15と、再生器30の出口の濃溶液Saの温度を検出する濃溶液温度計51と、再生器30の出口の濃溶液Saの濃度を検出する濃溶液濃度計53とが設けられている。濃溶液調節弁15は、濃溶液流量調節装置に相当する。希溶液管18及び濃溶液管38には、希溶液管18を流れる希溶液Swと濃溶液管38を流れる濃溶液Saとの間で熱交換を行わせる溶液熱交換器81が挿入されて配置されている。
制御装置60は、吸収冷凍機1の動作を制御する機器である。制御装置60は、溶液ポンプ19、冷媒ポンプ29、冷却水ポンプ91、冷水ポンプ92、冷却塔93と、それぞれ有線又は無線で電気的に接続されており、これらの発停を制御することができるように構成されている。また、制御装置60は、希溶液位計16、蒸発器冷媒液位計25及び凝縮器冷媒液位計45と、それぞれ有線又は無線で電気的に接続されており、検出された液位を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置60は、濃溶液温度計51及び冷水温度計54と、それぞれ有線又は無線で電気的に接続されており、検出された温度を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置60は、濃溶液濃度計53と有線又は無線で電気的に接続されており、検出された濃度を信号として受信することができるように構成されている。また、制御装置60は、再生器圧力計55と有線又は無線で電気的に接続されており、検出された圧力を信号として受信することができるように構成されている。
また、制御装置60は、濃溶液調節弁15及び加熱源調節弁33と、それぞれ有線又は無線で電気的に接続されており、これらの弁の開度を調節することができるように構成されている。また、制御装置60には、加熱部31に供給される加熱源流体Hの流量に関して、定格上限値と過大上限値との2種類の上限値が記憶されている。定格上限値は、定格条件における吸収冷凍機1の運転の際に加熱部31に供給される加熱源流体Hの上限値であり、典型的には定格の100%のときの流量である。定格条件は、吸収冷凍機1の仕様に応じて適宜決まる、吸収冷凍機1を適正に動作させるための条件である。定格の100%の運転は、最も効率よく運転できる状態である。過大上限値は、吸収冷凍機1を定格出力よりも大きい出力で運転する際に加熱部31に供給される加熱源流体Hの上限値であり、定格上限値よりも大きい値である。一般に、吸収冷凍機1を定格出力よりも大きい出力で運転すると定格条件のときの運転よりも効率は落ちるが、熱負荷の増加等により一時的に大きな出力が必要な場合に有効である。定格出力よりも大きな出力で運転するために加熱部31における発熱量を増加させると、例えば吸収液Sの濃縮等により吸収冷凍機1の適切な運転が阻害されるおそれが生じるため、加熱部31に供給する加熱源流体Hの流量の上限値(過大上限値)を定めている。このように、吸収冷凍機1は、過大上限値の範囲で運転することによって定格出力よりも大きい出力で運転することが可能になるため、最大熱負荷を、定格上限値における運転では十分に処理することが困難であるが、過大上限値における運転で処置できる容量のものを選定することができ、定格運転で最大熱負荷を処理できる容量のものを選定するよりも、小型化(典型的には外形寸法及び/又は設置面積を小さくすること)を図ることができ、導入コスト削減にも寄与する。定格出力よりも大きな出力での運転は、吸収冷凍機1の適切な運転が阻害されることを抑制するため、1回あたりの運転時間及び/又は累積運転時間を制限することが好ましい。制御装置60は、加熱部31に供給される加熱源流体Hの流量が、定格上限値又は過大上限値の範囲内となるように、加熱源調節弁33の開度を制御する。
また、制御装置60は、本実施の形態では、安全制御部65を有している。安全制御部65は、吸収冷凍機1の適切な運転を行うために特定の物理量を監視し、監視している物理量が許容される上限値を超えたときに吸収冷凍機1の運転を停止させる指令を出すものである。安全制御部65が監視する物理量として、本実施の形態では、吸収液Sの温度、吸収液Sの濃度、再生器30の内部圧力、吸収器10の貯留部13の液位、蒸発器20の貯留部23の液位、凝縮器40の貯留部43の液位を採用している。なお、本実施の形態では、安全制御部65を、機能の観点から概念的に制御装置60の中で区別して表現しているが、安全制御部65が制御装置60内に渾然一体に構成されていてもよく、安全制御部65が制御装置60に対して物理的に別体に構成されていてもよい。このような安全制御部65を含む制御装置60は、後述する吸収冷凍機1の作用で説明するような吸収冷凍機1の制御を行うことができるように構成されている。
引き続き図1を参照して、吸収冷凍機1の作用を説明する。まず、吸収冷凍機1の定常運転時の作用を説明する。吸収冷凍機1の定常運転時は、制御装置60からの指令により、溶液ポンプ19、冷媒ポンプ29、冷却水ポンプ91、冷水ポンプ92、冷却塔93がそれぞれ稼働している。冷媒V側のサイクルについて見ると、再生器冷媒蒸気流路35を介して再生器30から凝縮器40に導入された再生器冷媒蒸気Vgは、凝縮管41を流れる冷却水Dに冷却されて凝縮し、冷媒液Vfとなって凝縮器缶胴47の貯留部43に貯留される。再生器冷媒蒸気Vgを冷却した冷却水Dは、温度が上昇して冷却水還管99から流出し、冷却塔93に供給される。凝縮器缶胴47内の冷媒液Vfは、凝縮冷媒液管48を介して蒸発器缶胴27内に導入される。
凝縮器缶胴47から蒸発器缶胴27に導入された冷媒液Vfは、冷媒液散布ノズル22から散布されて蒸発しなかった冷媒液Vfと混合して蒸発器缶胴27の貯留部23に貯留される。蒸発器缶胴27内の冷媒液Vfは、冷媒ポンプ29により、冷媒液管28を流れて冷媒液散布ノズル22に至る。冷媒液散布ノズル22に至った冷媒液Vfは、蒸発管21に向けて散布され、蒸発管21を流れる冷水Cの熱を得て一部が蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなり、吸収器缶胴17に導入される。散布された冷媒液Vfに熱を奪われた冷水Cは、温度が低下して冷水往管96から流出し、空気調和機等の冷水Cの利用場所に供給される。冷媒液散布ノズル22から散布されて蒸発しなかった冷媒液Vfは、凝縮器缶胴47から導入された冷媒液Vfと混合して蒸発器缶胴27の貯留部23に貯留される。
次に吸収冷凍機1の溶液S側のサイクルを見ると、吸収器缶胴17内の貯留部13に貯留されている希溶液Swは、溶液ポンプ19により、希溶液管18を流れ、溶液熱交換器81で温度が上昇した後に、再生器缶胴37に導入される。再生器缶胴37に導入された希溶液Swは、加熱部31によって加熱され、冷媒Vが離脱して濃溶液Saとなる。他方、希溶液Swから離脱した冷媒Vは、再生器冷媒蒸気Vgとして、再生器冷媒蒸気流路35を介して凝縮器缶胴47内に送られる。再生器缶胴37内で生成された濃溶液Saは、濃溶液管38を流れ、溶液熱交換器81において希溶液Swと熱交換して温度が低下したうえで濃溶液散布ノズル12に至る。
濃溶液散布ノズル12に至った濃溶液Saは、冷却管11に向けて散布され、蒸発器20から導入された蒸発器冷媒蒸気Veを吸収し濃度が低下して希溶液Swとなる。吸収器缶胴17内において、濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際には吸収熱が発生する。この発生した吸収熱は、冷却水往管98から導入されて冷却管11を流れる冷却水Dによって除去される。冷却管11を流れる冷却水Dは、吸収熱を奪って温度上昇して冷却水連絡管58に流出し、凝縮器40の凝縮管41に供給される。吸収器缶胴17内で生じた希溶液Swは、吸収器缶胴17内の貯留部13に貯留される。
上述のような吸収冷凍機1の運転を行っている際、制御装置60は、平常時は、冷水温度計54で検出した温度が設定済の温度になるように、定格上限値の範囲内で加熱源調節弁33の開度を調節することで加熱部31における加熱量を調節する。定格上限値の範囲内で加熱源調節弁33の開度を大きくすると、加熱部31に供給される加熱源流体Hの流量が増加し、加熱部31における加熱量が増大して、再生器30で生成される濃溶液Saの濃度が上昇する。この濃度が上昇した濃溶液Saが吸収器10に搬送されて散布されると、濃溶液Saに吸収される蒸発器冷媒蒸気Veの流量が増加し、蒸発器20における蒸発器冷媒蒸気Veの生成量が増加して、冷水Cから奪われる熱量が増大する結果、冷水Cの温度は低下する。反対に、加熱源調節弁33の開度を小さくすると、加熱部31における加熱量が減少し、濃溶液Saの濃度が低下して、濃溶液Saに吸収される蒸発器冷媒蒸気Veの流量が減少することに伴って蒸発器冷媒蒸気Veの生成量が減少する結果、冷水Cから奪われる熱量が減少して冷水Cの温度は上昇する。
そして、定格条件での吸収冷凍機1の運転中、冷水Cの供給先における熱負荷が増大した等により、定格出力よりも大きい出力での吸収冷凍機1の運転が求められることがある。制御装置60は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、これまで定格上限値の範囲内で行っていた加熱源調節弁33の開度の調節を、過大上限値の範囲内で行うように切り換える。過大上限値の範囲内で加熱源調節弁33の開度を調節することとすると、定格上限値の範囲内で行っていた場合に比べて、加熱部31に供給される加熱源流体Hの流量を増加させることができ、蒸発器20において冷媒Vが冷水Cから奪う熱量を増加させることができて、定格出力よりも大きい出力で運転することができる。なお、吸収冷凍機1を定格出力よりも大きい出力で運転する場合に、加熱源調節弁33の開度を大きくするほか、以下に列挙するものの1つ以上を併せて行うとよい。
第1に、制御装置60は、濃溶液調節弁15の開度を大きくして、濃溶液Saの循環流量を増大させる。濃溶液Saの循環流量を増大させると、濃溶液Saの濃度が過度に濃くなることを抑制することができると共に、再生器缶胴37内の圧力の上昇を抑制することができる。なお、濃溶液Saの循環流量を増大させた場合は、吸収器10に流入する吸収液Sの流量が増加するため、吸収器缶胴17の貯留部13の液位を安定させるために、吸収器10から流出する希溶液Swの流量を増加させることが好ましい。
第2に、制御装置60は、溶液ポンプ19の回転速度を上昇させて、吸収器10から再生器30へ搬送される希溶液Swの流量を増加させる。希溶液Swの流量を増加させると、吸収液Sの濃度が過度に濃くなることを抑制することができると共に、再生器缶胴37内の圧力の上昇を抑制することができる。なお、吸収器10から再生器30へ搬送される希溶液Swの流量が増加すると、再生器缶胴37内における吸収液Sの液位上昇速度も上昇するため、再生器缶胴37から流出する濃溶液Saの流量が増加し、結果として濃溶液Saの循環流量が増大することとなる。
第3に、制御装置60は、冷水温度計54で検出される温度の目標値を、設定されている温度よりも上げる。つまり、蒸発器20に対する冷水Cの入口温度と出口温度との差が小さくなるように冷水Cの出口温度の設定値を変更する。典型的には、設定温度の変更分は、概ね0.3〜0.5℃程度である。冷水温度計54で検出される温度の目標値を設定温度よりも上げると、吸収液Sの濃度が過度に濃くなることを抑制することができる。
第4に、制御装置60は、冷却水ポンプ91の回転速度を上昇させて、吸収器10及び凝縮器40に供給される冷却水Dの流量を増加させる。冷却水Dの流量を増加させると、吸収器10における吸収熱及び凝縮器40における凝縮熱の除去する量を増加させることができ、吸収液Sと冷媒Vとの吸収冷凍サイクルを適切に行わせることができて、吸収液Sの濃度が過度に濃くなることを抑制することができる。
第5に、制御装置60は、冷却塔93のファンの回転速度を上昇させて、吸収器10及び凝縮器40に供給される冷却水Dの温度を低下させる。冷却水Dの温度を低下させると、吸収器10における吸収熱及び凝縮器40における凝縮熱の除去する量を増加させることができ、吸収液Sと冷媒Vとの吸収冷凍サイクルを適切に行わせることができて、吸収液Sの濃度が過度に濃くなることを抑制することができる。
なお、定格出力よりも大きい出力での吸収冷凍機1の運転が求められたために、加熱源調節弁33の開度を大きくして加熱部31における加熱量を増大した場合は、吸収液Sの濃縮が促進されるため、上述の第1から第5の措置を講じた場合であっても、吸収冷凍機1の適切な運転を継続することが困難になる場合がある。吸収冷凍機1の適切な運転を継続することが困難になる要因として、例えば、吸収液Sが結晶するおそれが生じる程の吸収液Sの濃度及び/又は吸収液Sの温度の過度の上昇、吸収冷凍機1の圧力が最も高くなる部分の圧力の上昇等が挙げられる。本実施の形態では、吸収冷凍機1の適切な運転の継続の可否を判断するために、吸収液Sの濃度が最も高くなる再生器30出口の濃溶液Saの温度を検出する濃溶液温度計51及び濃度を検出する濃溶液濃度計53、吸収冷凍機1の圧力が最も高くなる再生器30の内部圧力を検出する再生器圧力計55、吸収器缶胴17内の希溶液Swの液位を検出する希溶液位計16、吸収冷凍機1内の冷媒液Vfの液位を検出する蒸発器冷媒液位計25及び凝縮器冷媒液位計45が設けられている。ここで、濃溶液温度計51、濃溶液濃度計53、再生器圧力計55、希溶液位計16、蒸発器冷媒液位計25、凝縮器冷媒液位計45は、それぞれ、監視物理量検出部に相当する。
本実施の形態では、安全制御部65が、各監視物理量検出部で検出した物理量が許容される上限値を超えたか否かを判断しており、各監視物理量検出部で検出した物理量のうちの1つ以上が、許容される上限値を超えたときに、安全制御部65が吸収冷凍機1の運転を停止させる指令を出し、制御装置60が吸収冷凍機1を停止させることで、吸収冷凍機1を保護することとしている。しかしながら、吸収冷凍機1が停止すると、冷水Cの供給も停止することとなり、冷水Cの供給先の熱負荷をまったく処理することができなくなってしまうため、吸収冷凍機1が停止することを極力回避することが好ましい。そこで、本実施の形態では、以下のような制御を行うこととしている。
図2は、安全制御部65の指令に基づく吸収冷凍機1の停止を極力回避する制御を説明するフローチャートである。制御装置60は、吸収冷凍機1の運転中、冷水温度計54で検出した温度をあらかじめ設定された温度とするときに加熱部31に導入する加熱源流体Hの流量を算出する(設定値に基づく加熱源流体H流量算出工程:S1)。また、制御装置60は、各監視物理量検出部で検出した物理量が上限値となるときに加熱部31に導入する加熱源流体Hの流量をそれぞれ算出する(各物理量が上限値となる加熱源流体H流量算出工程:S2)。なお、図2では、設定値に基づく加熱源流体H流量算出工程(S1)の後に、各物理量が上限値となる加熱源流体H流量算出工程(S2)を行うように示しているが、この順番を逆にして工程(S2)の後に工程(S1)を行うこととしてもよく、あるいは工程(S1)と工程(S2)とを並行して行うこととしてもよい。
設定値に基づく加熱源流体Hの流量と各物理量が上限値となる加熱源流体Hの流量とを算出したら、制御装置60は、算出した加熱源流体Hの流量のうちの最小の加熱源流体Hを加熱部31に導入するように、加熱源調節弁33の開度を調節する(加熱源調節弁33制御工程:S3)。このような制御を行うことにより、最小の加熱源流体H流量が設定値に基づく加熱源流体H流量の場合は、安全制御部65による吸収冷凍機1の停止指令が発令されずに冷水Cの温度を設定値にすることができる。また、最小の加熱源流体H流量が、各監視物理量検出部で検出した物理量のいずれかが上限値となる加熱源流体H流量の場合は、冷水Cの温度が設定値まで至らないものの、安全制御部65による吸収冷凍機1の停止指令が発令されるのを回避して吸収冷凍機1の適切な運転を継続することができる。
加熱源調節弁33の開度を調節したら(S3)、安全制御部65は、各監視物理量検出部で検出した物理量のいずれかが上限値を超えたか否かを判断する(S4)。加熱源調節弁33制御工程(S3)において、各監視物理量検出部で検出した物理量が上限値を超えないように加熱源調節弁33の開度を調節しているが、何らかの事情により上限値を超えた場合は吸収冷凍機1を保護する措置を講ずることができるように、この判断(S4)を行っている。安全制御部65は、いずれかの物理量が上限値を超えたと判断したら、制御装置60に吸収冷凍機1を停止させる指令を発令し、制御装置60は安全制御部65からの指令に基づいて吸収冷凍機1を停止させる(S6)。他方、どの物理量も上限値を超えていない場合、制御装置60は、通常運転における吸収冷凍機1の停止指令があったか否かを判断する(S5)。通常運転における停止とは、吸収冷凍機1の継続的な運転が可能な状態で、熱負荷が減少した等の冷水C利用側の都合によって行われる吸収冷凍機1の停止である。通常運転における停止指令があった場合、制御装置60は、吸収冷凍機1を停止させる(S6)。他方、通常運転における停止指令がない場合、再び設定値に基づく加熱源流体H流量算出工程(S1)に戻り、以降、上述のフローを繰り返す。
図3に、上述の制御の一例のタイムチャートを示す。図3は、時間を横軸に取り、算出された加熱源流体Hの流量を縦軸に取っている。図3中、実線Lrは設定値に基づく加熱源流体Hの流量を示しており、一点鎖線Lsは各監視物理量検出部で検出した物理量が上限値となる加熱源流体Hの流量のうち最小となるものを示している。図3に示す例では、時刻t1までは、実線Lrが一点鎖線Lsよりも小さいので、制御装置60は、設定値に基づいて算出された加熱源流体Hの流量を加熱部31に導入するように加熱源調節弁33の開度を制御している。時刻t1から時刻t2までは、一点鎖線Lsが実線Lrよりも小さいので、制御装置60は、検出した物理量が上限値となる加熱源流体Hの流量を加熱部31に導入するように加熱源調節弁33の開度を制御している。そして、時刻t2以降は、再び実線Lrが一点鎖線Lsよりも小さくなっているので、制御装置60は、設定値に基づいて算出された加熱源流体Hの流量を加熱部31に導入するように加熱源調節弁33の開度を制御している。なお、図3に示す例では、時刻t3において、制御装置60は、通常運転における停止指令を受けたので、加熱源調節弁33を全閉に向けて閉じ始め、加熱部31への加熱源流体Hの供給量を減らしている。このようにして、安全装置の作動を回避しつつ、冷水Cの温度ができるだけ設定値に近づくようにしている。
ところで、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受け、加熱源調節弁33の開度の調節を、定格上限値を超えて過大上限値の範囲内で行う場合は、吸収冷凍機1の効率が低下するため、極力避けることが好ましい。そこで、本実施の形態では、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けてから所定の時間が経過したとき、又は、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けた時間の累計が所定の累計時間を超えたときに、加熱源調節弁33の開度の調節を定格上限値の範囲内で行うように戻すこととしている。所定の累計時間は、ある定まった期間(例えば1月や1年等)が経過したときにリセットされることとしてもよい。このようにすることで、吸収冷凍機1の非効率な運転が長期化することを回避することができる。なお、加熱源調節弁33の開度の調節を過大上限値の範囲内で行っている際、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令がなくなったときに加熱源調節弁33の開度の調節を定格上限値の範囲内で行うように戻すことはいうまでもない。
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収冷凍機1によれば、定格出力よりも大きい出力で運転することができるので、定格運転時の容量が、処理すべき最大熱負荷よりも小さい機器を選定することができ、吸収冷凍機1の小型化を図ることができる。また、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、濃溶液Sa及び希溶液Swの循環流量を増大させるので、吸収液Sの濃度が過度に濃くなることを抑制することができると共に、再生器缶胴37内の圧力の上昇を抑制することができる。また、定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、蒸発器20に対する冷水Cの入口温度と出口温度との差が小さくなるように冷水Cの出口温度の設定値を変更し、吸収器10及び凝縮器40に供給される冷却水Dの流量を増加させ、吸収器10及び凝縮器40に供給される冷却水Dの温度を低下させることも、吸収液Sの濃度が過度に濃くなることを抑制することに寄与する。
以上の説明では、監視物理量検出部で検出されて安全制御部65が監視する物理量の一つとして再生器30の内部圧力を再生器圧力計55で検出することとしたが、これに代えて再生器30の内部圧力に関連する物理量を検出することとしてもよい。再生器30の内部圧力に関連する物理量として、例えば冷媒Vの露点温度に相当する再生器冷媒蒸気Vgの温度が挙げられる。なお、吸収式冷凍機が第2種吸収ヒートポンプである場合は、最も内部圧力が高くなる主要構成部材である吸収器の内部圧力又は吸収器の内部圧力に関連する物理量を検出するとよい。
以上の説明では、監視物理量検出部が、希溶液位計16、蒸発器冷媒液位計25、凝縮器冷媒液位計45、濃溶液温度計51、濃溶液濃度計53、再生器圧力計55を含んでいることとしたが、これらのうちの少なくとも1つを有していれば、使用しないものを省略してもよい。
以上の説明では、安全制御部65が、監視している物理量が許容される上限値を超えたときに、吸収冷凍機1の運転を停止させる指令を制御装置60に出すこととしたが、吸収冷凍機1の運転を停止させる指令を出すことに代えて、加熱部31に流入する加熱源流体Hの流量を所定の流量に制限する指令を出すこととしてもよい。所定の流量は、吸収冷凍機1の適切な運転を確実に行うことができる程度まで出力を低下させることとなる加熱源流体Hの流量である。安全制御部65が監視している物理量が許容される上限値を超えたときに加熱部31に流入する加熱源流体Hの流量を所定の流量に制限する指令を出す場合、図2に示すフローチャートでは、各監視物理量検出部で検出した物理量のいずれかが上限値を超えたか否かを判断する工程(S4)において、いずれかの物理量が上限値を超えたと判断したら、吸収冷凍機1を停止させる工程(S6)には進まずに、制御装置60が安全制御部65から受けた指令に基づいて加熱部31に流入する加熱源流体Hの流量を所定の流量に制限するように加熱源調節弁33の開度を制御し、その後、各監視物理量検出部で検出した物理量のいずれかが上限値を超えたか否かを判断する工程(S4)に戻るようにするとよい。
以上の説明では、加熱源が加熱源流体Hであるとしたが、加熱源は固形燃料等の固体であってもよい。
以上の説明では、基準位置を吸収冷凍機1の出口として、冷水温度計54(温度調節対象流体温度検出部)が冷水出口管21bに設けられているとしたが、基準位置を吸収冷凍機1の入口として冷水温度計54が冷水入口管21aに設けられることとしてもよい。また、温度調節対象流体温度検出部は、冷水Cの温度を直接検出する冷水温度計54に代えて、冷水Cの温度を間接的に検出するものであってもよい。
以上の説明では、冷却水Dが、吸収器11に導入された後に凝縮器40に導入される構成を例示したが、凝縮器40に導入された後に吸収器11に導入される構成であってもよく、吸収器10と凝縮器40とに並列に導入される構成であってもよい。
以上の説明では、冷却水ポンプ91及び冷水ポンプ92が吸収冷凍機1の構成要素ではないものとしたが、冷却水ポンプ91及び/又は冷水ポンプ92を吸収冷凍機1の構成要素として備えることとしてもよい。しかしながら、冷却水ポンプ91が流動させる冷却水D、及び冷水ポンプ92が流動させる冷水Cは、吸収冷凍機1が設置される場所等の条件によって供給先までの搬送距離や流量等が異なるのが一般的なため、冷却水ポンプ91及び冷水ポンプ92を吸収冷凍機1の構成要素とはせず、吸収冷凍機1の設置場所等に適した能力のものを選定できるようにするのが好ましい。
以上の説明では、理解の容易のために、吸収冷凍機1が単効用の構成であるとしたが、複数の再生器を有する多重効用の吸収冷凍機、あるいは、動作圧力の異なる複数の蒸発器/吸収器を有する吸収冷凍機にも適用することができる。
以上の説明では、吸収式冷凍機が吸収冷凍機であるとして説明したが、吸収冷温水機、吸収ヒートポンプ等、吸収液Sと冷媒Vとの吸収サイクルが行われる他の吸収式熱源機であってもよい。
1 吸収冷凍機
10 吸収器
15 濃溶液調節弁
19 溶液ポンプ
25 蒸発器冷媒液位計
30 再生器
33 加熱源調節弁
40 凝縮器
45 凝縮器冷媒液位計
51 濃溶液温度計
53 濃溶液濃度計
54 冷水温度計
60 制御装置
65 安全制御部
91 冷却水ポンプ
93 冷却塔
C 冷水
D 冷却水
H 加熱源
S 吸収液
Sa 濃溶液
Sw 吸収液
V 冷媒
Ve 蒸発器冷媒蒸気
Vf 冷媒液
Vg 再生器冷媒蒸気

Claims (8)

  1. 加熱源が供給されることによって構成される吸収液と冷媒との吸収サイクルにより温度調節対象流体の冷却又は加熱を行う吸収式冷凍機であって;
    前記吸収式冷凍機に供給される前記加熱源の単位時間あたりの量を調節する入熱量調節装置と;
    前記入熱量調節装置を制御する制御装置とを備え;
    前記制御装置は、前記吸収式冷凍機に供給される前記加熱源の単位時間あたりの量の上限値として、定格条件における定格上限値と、前記定格上限値よりも大きい過大上限値とが記憶されていると共に、平常時は前記定格上限値の範囲内で前記入熱量調節装置を制御し、前記定格条件における定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに前記過大上限値の範囲内で前記入熱量調節装置を制御するように構成され;
    前記制御装置は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、前記吸収式冷凍機から流出する前記温度調節対象流体の温度の目標値を、前記吸収式冷凍機に導入された前記温度調節対象流体の温度との差が小さくなる方向に変更する;
    吸収式冷凍機。
  2. 前記冷媒を吸収した前記吸収液を前記加熱源で加熱し、前記吸収液から前記冷媒を離脱させて濃度が上昇した濃溶液を生成する再生器と;
    前記吸収液が前記冷媒の蒸気を吸収して濃度が低下した希溶液を生成する吸収器と;
    前記吸収器から流出する前記希溶液の流量を直接又は間接的に調節する希溶液流量調節装置とを備え;
    前記吸収液が前記再生器及び前記吸収器を通って循環するように構成され;
    前記制御装置は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、前記吸収器から流出する前記希溶液の流量を前記定格条件における運転時よりも増加させるように前記希溶液流量調節装置を制御する;
    請求項1に記載の吸収式冷凍機。
  3. 前記冷媒を吸収した前記吸収液を前記加熱源で加熱し、前記吸収液から前記冷媒を離脱させて濃度が上昇した濃溶液を生成する再生器と;
    前記吸収液が前記冷媒の蒸気を吸収して濃度が低下した希溶液を生成する吸収器と;
    前記再生器から流出する前記濃溶液の流量を直接又は間接的に調節する濃溶液流量調節装置とを備え;
    前記吸収液が前記再生器及び前記吸収器を通って循環するように構成され;
    前記制御装置は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、前記再生器から流出する前記濃溶液の流量を前記定格条件における運転時よりも増加させるように前記濃溶液流量調節装置を制御する;
    請求項1に記載の吸収式冷凍機。
  4. 前記冷媒を吸収した前記吸収液を前記加熱源で加熱して前記吸収液から前記冷媒を離脱させて濃度が上昇した濃溶液を生成する再生器から離脱した前記冷媒の蒸気を導入し、冷却水で前記冷媒の蒸気を冷却凝縮させて冷媒液を生成する凝縮器を備え;
    前記制御装置は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、前記凝縮器に導入する前記冷却水の流量を前記定格条件における運転時よりも増加させるように、前記冷却水の流量を調節する冷却水流量調節装置を制御する;
    請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
  5. 前記制御装置は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、前記凝縮器に導入する前記冷却水の温度を前記定格条件における運転時よりも低下させるように、前記冷却水の温度を調節する冷却水温度調節装置を制御する;
    請求項に記載の吸収式冷凍機。
  6. 前記冷媒を吸収した前記吸収液を前記加熱源で加熱して前記吸収液から前記冷媒を離脱させて濃度が上昇した濃溶液を生成する再生器から離脱した前記冷媒の蒸気を導入し、冷却水で前記冷媒の蒸気を冷却凝縮させて冷媒液を生成する凝縮器を備え;
    前記制御装置は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けたときに、前記凝縮器に導入する前記冷却水の温度を前記定格条件における運転時よりも低下させるように、前記冷却水の温度を調節する冷却水温度調節装置を制御する;
    請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
  7. 前記制御装置は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令がなくなったとき、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けてから所定の時間が経過したとき、又は、前記定格出力よりも大きい出力で運転すべき指令を受けた時間の累計が所定の累計時間を超えたときに、前記定格上限値の範囲内で前記入熱量調節装置を制御するように構成された;
    請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
  8. 基準位置における前記温度調節対象流体の温度を検出する温度調節対象流体温度検出部と;
    前記吸収式冷凍機の適切な運転を行うために監視する1つ以上の物理量を検出する監視物理量検出部と;
    前記監視物理量検出部で検出した値が許容される上限値を超えたときに前記吸収式冷凍機の運転を停止させる又は前記吸収式冷凍機に供給される前記加熱源の単位時間あたりの量を所定の量に制限する安全制御手段とを備え;
    前記制御装置は、前記温度調節対象流体温度検出部で検出した温度をあらかじめ設定された温度とするときに導入すべき前記加熱源の単位時間あたりの量と、前記監視物理量検出部で検出した値が前記安全制御手段において定められた前記上限値となるときに導入すべき前記加熱源の単位時間あたりの量と、を算出し、算出した前記加熱源の単位時間あたりの量のうちの最小の量を前記吸収式冷凍機に導入するように前記入熱量調節装置を制御する;
    請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
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