JP6919891B2 - Epstein−Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤 - Google Patents

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Description

本発明は、Epstein-Barrウイルス(EBV)関連癌に特異的な抗腫瘍剤、EBV関連癌の抑制物質をスクリーニングする方法、EBV感染細胞にアポトーシスを誘導する方法等に関する。
Epstein-Barr ウイルス(EBV)はヒトヘルペスウイルス4型とも言い、ヒトのリンパ球、上皮細胞などに長期間潜伏持続感染し(潜伏感染)、感染細胞の増殖を刺激することによって、細胞を腫瘍化する。EBVは、多くは潜伏感染を成立させて感染細胞内で持続的に維持されるが、ごく一部が再活性化し、溶解感染を引き起こして子孫ウイルスを産生する。
EBV陽性癌細胞においてもウイルスは基本的に潜伏状態にあり、一部のウイルス遺伝子を発現してEBV関連癌の形成と腫瘍細胞の増殖をサポートする(図1)。
EBV関連癌のうち、EBV 関連胃癌は低分化型の腺癌が大部分を占め、胃癌全体の 5-15%を占めている。また手術による胃摘出後に発生する残胃癌において、EBV 関連胃癌は 30%以上を占めている。EBV 関連胃癌は抗がん剤に対する応答性が高いため他の胃癌と比べて予後は良いが、腹膜内への転移を引き起こした場合、他の胃癌と同程度に予後が悪い。
他方、上咽頭癌は、中国南部、台湾、東南アジアの男性に高頻度に発生し、腫瘍発見時にはリンパ節転移をきたしていることが多い。EBV 関連胃癌、及び上咽頭癌ではウイルス RNA のうち非翻訳性の BamHI-A Rightward Transcripts (BART)及びそのイントロンにコードされているBART miRNA が高発現している(図2)。
miRNA は、二本鎖 RNAの前駆体から酵素によって切断され、20-25 塩基程度の一本鎖 RNA となる。miRNA は、RNA 誘導サイレンシング複合体(RISC)へ取り込まれ、mRNA の3’UTR と結合することにより、mRNAからの翻訳を抑制する(図2)。
BART miRNA には 40 個近くの miRNA が含まれており、1つの標的遺伝子を複数のmiRNA が抑制している(Kanda T et al. J Virol, 2014)。BART miRNA の知られている機能は、1)アポトーシスの抑制、2)潜伏感染を維持し、ウイルス抗原の発現を抑え、宿主免疫機構からの回避を行うことなどである。
ところで、DNAウイルス由来のmiRNAについては、核酸類を用いた DNA ウイルス由来 miRNA 阻害剤の開発に関する研究(US 20050221490)、EBV miRNA のうち 20 個を阻害したときの細胞死誘導に関する研究(WO 2013187612)などがなされている。
また、アポトーシス抑制ついては、以下の研究がなされている。
アポトーシス関連遺伝子を標的としたアポトーシス抑制作用(Kang D et al. PLoS Pathog, 2015.)
EBV miR-BART20-5p によるアポトーシス及び溶解感染の抑制(Kim H et al. Cancer Lett, 2015.)
BART領域の削除による溶解感染亢進(Lin X et al. PLoS Pathog, 2015.)
さらに、ETV1 阻害剤YK-4-279は、ETV1 を標的とすることが知られている(Rahim S et al. PLoS One, 2011.)。
米国特許出願公開US 2005/0221490号公報 国際公開WO2013/187612号パンフレット
Kang D et al. PLoS Pathog, 2015, Vol. 11, e1004979 Kim H et al. Cancer Lett, 2015, Vol. 356, p733-742 Lin X et al. PLoS Pathog, 2015, Vol. 11, e1005344 Rahim S et al. PLoS One, 2011, Vol. 9, e114260
本発明は、EBV感染細胞に対する抗腫瘍剤及び当該細胞にアポトーシスを誘導する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために検討を行った結果、BART 遺伝子5’UTR 領域に存在する E26 transformation specific (ETS) 転写因子結合配列が、転写制御に重要であることを見出した。この知見に基づいて、EBV感染によって上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害することにより抗アポトーシス作用及び溶解感染抑制を持つウイルスmiRNAの発現を抑制し、EBウイルス関連癌の腫瘍細胞の増殖を抑制することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質を含む、Epstein-Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤。
(2)ETSファミリー転写因子が、ETV1、ETV5、ETS2及びEHFからなる群から選ばれる少なくとも1つである(1)に記載の抗腫瘍剤。
(3)Epstein-Barrウイルス関連癌が、上皮性のものである、(1)又は(2)に記載の抗腫瘍剤。
(4)Epstein-Barrウイルス関連癌がEpstein-Barrウイルス関連胃癌又は上咽頭癌である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の抗腫瘍剤。
(5)ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質を含む、Epstein-Barrウイルス関連癌細胞に特異的なアポトーシス誘導剤。
(6)ETSファミリー転写因子が、ETV1、ETV5、ETS2及びEHFからなる群から選ばれる少なくとも1つである(5)に記載のアポトーシス誘導剤。
(7)Epstein-Barrウイルス関連癌がEpstein-Barrウイルス関連胃癌又は上咽頭癌である(5)又は(6)に記載のアポトーシス誘導剤。
(8)Epstein-Barrウイルス感染によって上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害することを特徴とする、当該ウイルス感染細胞に特異的にアポトーシスを誘導する方法。
(9)Epstein-Barrウイルスが感染した上皮細胞に候補物質を接触させ、当該上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害する物質を選択することを特徴とする、Epstein-Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤のスクリーニング方法。
(10)Epstein-Barrウイルスが感染した上皮細胞に候補物質を接触させ、当該上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害する物質を選択することを特徴とする、Epstein-Barrウイルス関連癌細胞に特異的なアポトーシス誘導剤のスクリーニング方法。
本発明により、EBV関連癌に特異的な抗腫瘍剤、EBV関連癌の抑制物質をスクリーニングする方法、及びEBV感染細胞にアポトーシスを誘導する方法が提供される。
本発明によりスクリーニングされた物質は、EBV関連癌、中でもEBウイルス関連胃癌及び上咽頭癌などの上皮性腫瘍に対する抗腫瘍剤として使用することが可能となった。
EBV感染からEBV関連癌発生までの過程を示す図である。 EBVがコードするmiRNAを示す図である。 ETV1 阻害剤の作用機序を示す図である。 BARTプロモーター上のETSファミリー結合領域を示す図である。 EBV-, EBV+ 細胞株におけるETSファミリー遺伝子の発現プロファイルを示す図である。 ETV1、ETV5、ETS2 siRNA処理によるBARTプロモーター活性の抑制を示す図である。 ETV1、ETV5及びETS2のsiRNA処理によるBART転写産物の発現抑制を示す図である。 ETV1欠損株におけるmiR-BARTの発現低下を示す図である。 溶解感染刺激剤を添加した細胞株における溶解感染遺伝子(BRLF1、BZLF1)、並びにBART及びETV1の発現上昇を示す図である。 ETV1欠損株における、溶解感染誘導剤添加後のBART、BRLF1及びBZLF1の発現を示す図である。 ETV1阻害剤YK-4-279処理によるBART転写産物の発現抑制を示す図である。 YK-4-279処理によるEBV感染細胞株のアポトーシス誘導を示す図である。
本発明は、EBVに感染した上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害することにより、ウイルスmiRNAの発現を抑制し、EBV感染細胞にアポトーシスを誘導する方法を提供する。本発明においては、ウイルス感染によって発現誘導される宿主タンパク質を標的にすることで、細胞毒性を発揮する。すなわち、本発明は、ETSファミリー転写因子の活性を阻害する物質を含む、EBV陽性上皮性腫瘍(EBV関連癌、上咽頭癌)に対する抗腫瘍剤、及びEBV陽性腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導剤を提供する。
1.概要
本発明者は、 BART プロモーターをルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入し、BART 遺伝子5’UTR 領域に存在する E26 transformation specific (ETS) 転写因子結合配列が転写制御に重要であることを見出した。ETS 転写因子は、27 個の遺伝子からなるファミリーを形成し、その多くは血管新生、細胞増殖など癌の悪性化に関わっていることが知られている。
BART プロモーター活性は、EBV 感染細胞で高いことから、EBV 感染細胞における ETS ファミリーの発現を測定した。その結果、EBV 感染上皮細胞腫にのみ発現誘導される遺伝子を同定した。これらの遺伝子に対してsiRNAで処理すると、BART プロモーター活性が低下し、BART の発現も低下した。中でも、ETV1はsiRNA による BART 発現抑制が最も強い転写因子である。そこで ETV1 の遺伝子欠損株を作製したところ、BART miRNA の発現が顕著に低下した。
BART miRNA は、ウイルス溶解感染、及びウイルス感染細胞のアポトーシスを抑制することが報告されている。これより、溶解感染誘導剤を添加した場合の、ETSファミリーの発現量を測定すると、ETV1 の発現が顕著に上昇し、BART の発現も増加していた。また、EBV 感染 ETV1 欠損株に溶解感染誘導剤を添加すると、野生型に比べて ETV1 欠損細胞では、BART の発現は低下し、溶解感染誘導スイッチ遺伝子 BZLF1 の発現は上昇していた。これらの結果は、ETV1 が BART の発現を正に制御し、BZLF1 発現抑制を介してウイルス溶解感染の抑制に働くことを示している。
そこで、ETV1 阻害剤であるYK-4-279を EBV 感染細胞へ添加すると、BART の発現は容量依存的に低下した。そして、野生型 EBV 感染細胞ではアポトーシスが増加したが、BZLF1 欠損 EBV 株感染細胞では増加しなかった。
以上の知見により、ETV1 阻害剤の作用機序は図3に示すことができる。EBV 感染により発現誘導された ETV1 は、 BART miRNA の転写を誘導する。ETV1を阻害すれば、溶解感染遺伝子 BZLF1 の発現が上昇し、アポトーシスが誘導されることとなる(図3)。
従って、本発明は EBV 関連胃癌及び上咽頭癌などの EBV 感染上皮性腫瘍に特異的な抗腫瘍剤の開発を行うものである。
2.抗腫瘍剤及びアポトーシス誘導剤
本発明者らは、ETSファミリーに属する転写因子がBART miRNAの発現を誘導することによりEpstein-Barrウイルス関連癌の癌細胞がアポトーシスに陥ることを抑制する機能を有していることを見出した(図3)。
従って、ETSファミリーに属する転写因子の機能を阻害して、腫瘍細胞のアポトーシス細胞死を誘導することにより、Epstein-Barrウイルス関連癌の形成を抑制及び予防することが可能である。
すなわち、本発明は、ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質を含む、Epstein-Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤を提供する。
また本発明は、ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質を含む、Epstein-Barrウイルス関連癌細胞に特異的なアポトーシス誘導剤を提供する。
(1)ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質
「ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質」としては、ETSファミリー遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現量を低下させる物質、例えば、核酸、低分子化合物等が挙げられ、1つの実施態様では、ETSファミリー遺伝子の機能又は発現を抑制する核酸である。
このような核酸の例として、本発明はマイクロRNA(miRNA)を用いてETSファミリー遺伝子の発現を阻害することができる。miRNAとは、細胞内に存在する長さ20〜25塩基ほどの1本鎖RNAであり、他の遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられているncRNA(non coding RNA)の一種である。miRNAは、RNAに転写された際にプロセシングを受けて生じ、標的配列の発現を抑制するヘアピン構造を形成する核酸として存在する。
また本発明では、RNA干渉(RNAi)用のsiRNA(Small interfering RNA)を生じさせる、ヘアピン状のshRNA(Short Hairpin RNA)、二本鎖RNA(Double Stranded RNA: dsRNA)、アンチセンス核酸、デコイ核酸、又はアプタマーなどを用いることもできる。
これらの阻害性核酸により、上記ETSファミリー遺伝子の発現を抑制することが可能である。阻害の対象となるETSファミリー遺伝子としては、以下のものが挙げられ、これらの中から単独で、又は2つ以上を適宜組み合わせて選択することができる。
GABPA、EHF、ERF、ERG、ELF1、ELF2、ELF3、ELF4、ELF5、FLI1、ELK1、ELK3、ELK4、ETS1、ETS2、ETV1、ETV2、ETV3、ETV4、ETV5、ETV6、ETV7、FEV、SPDEF、SPI1、SPIB、SPIC
本発明においては、上記ETSファミリー遺伝子のうち、ETV1、ETV5、ETS2及びEHFからなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
(i) RNA干渉
RNAi は、複数の段階を経て行われるマルチステッププロセスである。最初に、RNAi発現ベクターから発現したdsRNA又はshRNAが Dicerによって認識され、21〜23 ヌクレオチドの siRNAs に分解される。次に、siRNAs は RNA 誘導型サイレンシング複合体 (RNA-Induced Silencing Complex: RISC) と呼ばれるRNAi 標的複合体に組み込まれ、RISC とsiRNAsとの複合体がsiRNAの配列と相補的な配列を含む標的mRNAに結合し、mRNAを分解する。標的mRNAは、siRNAに相補的な領域の中央で切断され、最終的に標的mRNAが速やかに分解されてタンパク質発現量が低下する。
siRNA分子は、当分野において周知の基準によって設計できる。例えば、標的mRNAの標的セグメントは、好ましくはAA、TA、GA又はCAで始まる連続する15〜30塩基、好ましくは19〜25塩基のセグメントを選択することができる。siRNA分子のGC比は、30〜70%である。siRNAを細胞に導入するには、合成したsiRNAをプラスミドDNAに連結してこれを細胞に導入する方法、2本鎖RNAをアニールする方法などを採用することができる。
また、本発明は、RNAi効果をもたらすためにshRNAを使用することもできる。shRNA とは、ショートヘアピンRNAと呼ばれ、一本鎖の一部の領域が他の領域と相補鎖を形成するためにステムループ構造を有するRNA分子である。shRNAは、その一部がステムループ構造を形成するように設計することができる。例えば、ある領域の配列を配列Aとし、配列Aに対する相補鎖を配列Bとすると、配列A、スペーサー、配列Bの順でこれらの配列が一本のRNA鎖に存在するように連結し、全体で45〜60塩基の長さとなるように設計する。スペーサーの長さも特に限定されるものではない。
配列Aは、標的となるETSファミリー遺伝子の一部の領域の配列であり、標的領域は特に限定されるものではなく、任意の領域を候補にすることが可能である。そして配列Aの長さは19〜25塩基である。
miRNAも、RNAiに基づく阻害性核酸であるため、shRNA又はsiRNAに準じて設計し合成することができる。
RNAi用の発現ベクターは、市販のプラスミド、ベクター等をベースに、市販の合成装置を用いて作製することができる。
(ii) アンチセンス核酸
本発明の別の態様において、ETSファミリー遺伝子の発現を阻害するためにアンチセンス核酸を使用することができる。アンチセンス核酸は、ETSファミリー遺伝子のmRNA又はDNA配列に結合できる一本鎖核酸配列(RNA又はDNAのいずれか)である。アンチセンス核酸配列の長さは、少なくとも15ヌクレオチドであり、例えば15〜40ヌクレオチドである。アンチセンス核酸は、上記遺伝子配列に結合して二重鎖を形成し、ETSファミリー遺伝子の転写又は翻訳を抑制する。
アンチセンス核酸も、例えば、一般的に用いられるDNA合成装置を用いた核酸合成法を使用することができる。
(iii) デコイ核酸
本発明の別の態様では、デコイ核酸と呼ばれるおとり核酸を使用することにより、ETSファミリー遺伝子の発現を阻害することができる。
デコイ核酸は、ETSファミリー遺伝子の転写因子に結合してプロモーター活性を抑制することにより、ETSファミリー遺伝子発現を抑制する核酸であって、転写因子の結合部位を含む短いおとり核酸を意味する。この核酸が癌細胞内に導入されると、転写因子がこの核酸に結合する。これにより、転写因子のゲノム結合部位への結合が競合的に阻害され、その結果、転写因子の発現が抑制される。デコイ核酸は、ETSファミリー遺伝子のプロモーター配列をもとに、1本鎖又は2本鎖として設計することができる。デコイ核酸の長さは特に限定されるものではなく、15〜60塩基、例えば20〜40塩基である。
本発明で用いられるデコイ核酸は、当分野で公知の化学合成法又は生化学合成法を用いて製造することができる。また、鋳型となる塩基配列を単離又は合成した後に、PCR法又はクローニングベクターを用いた遺伝子増幅法を使用することもできる。さらに、細胞内でより安定なデコイ核酸を得るために、塩基等にアルキル化、アシル化等の化学修飾を付加することができる。
なお、デコイ核酸を使用した場合のプロモーターの転写活性の解析は、一般的に行なわれるルシフェラーゼアッセイ、RT-PCR等を採用することができる。
(iv) アプタマー
さらに、本発明は、アプタマーを用いてETSファミリー遺伝子の発現を阻害することができる。
アプタマーとは、特異的に標的物質に結合する能力を持つ合成DNA又はRNA分子及びペプチド性分子であり、試験管内において化学的に短時間で合成することができる。従って、ETSファミリー遺伝子の塩基配列を基準にして、あるいは、in vitro selection法又はSELEX法として知られている進化工学的手法により得ることができる。
(v)低分子化合物
本発明において、ETSファミリー転写因子の活性を抑制する活性を有するものであれば、低分子化合物も用いることができる。
このような低分子化合物としては、例えばBRD32048(CAS No. 433694-46-3)、YK-4-279などが挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
(2)抗腫瘍剤
本発明においては、上記ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質を抗腫瘍剤又はアポトーシス誘導剤として使用することができる。
本発明の抗腫瘍剤及びアポトーシス誘導剤の対象となる腫瘍の種類は、Epstein-Barrウイルス関連癌であって上皮性のものであれば特に限定されるものではなく、良性でも悪性でもよい。
「上皮性」とは、体表面や管腔臓器の粘膜及び分泌腺を構成する細胞を意味し、Epstein-Barrウイルス関連上皮性の腫瘍の例としては、Epstein-Barrウイルス関連胃癌、上咽頭癌が挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤を医薬組成物として使用する場合、その投与経路は、上皮性癌に対する薬剤の投与に一般的に採用されている経路であれば特に限定されるものではなく、例えば経口、舌下、経消化管、経皮、点眼、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、局所注射が挙げられ、好ましくは経口である。
本発明の抗腫瘍剤(医薬組成物)は、カプセル、錠剤、粉末等の固形剤であってもよく、溶液、懸濁液若しくは乳液等の液剤、又は軟膏、クリーム若しくはペースト等の半液体製剤であってもよい。
本発明の抗腫瘍剤(医薬組成物)の適切な剤形の例としては、懸濁液又は溶液が挙げられる。懸濁液又は剤形は、前記物質(例えば、RNAiを利用する核酸、低分子化合物等)の構造維持に適した緩衝剤、生理食塩水、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を含んでいてもよい。
上記有効成分は、単独で使用してもよく、又は薬理学的に許容可能な他の成分と共に調合してもよい。薬理学的に許容可能な他の成分の例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、保存剤、補助剤、滑沢剤、甘味剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の抗腫瘍剤は、有効成分であるETSファミリー遺伝子阻害物質を治療上有効量で含む。ここで、「治療上有効量」とは、その量の有効成分を対象に投与することにより、腫瘍細胞の増殖率を低下させることが可能な量を意味する。例えば、静脈内注射剤の場合、治療上有効量は、0.5〜5重量%であり、例えば1〜2重量%である。
本発明の抗腫瘍剤の投与量及び投与頻度は、対象の種、体重、性別、年齢、腫瘍疾患の進行度、投与経路といった種々の要因に依存して変化するが、医師等の当業者であれば、それぞれの要因を考慮して投与量を決定することができる。
例えば、本発明の抗腫瘍剤を体重60kgの成人に局所投与する場合、毎日1〜3回、好ましくは1又は2回投与してもよく、1回あたりの投与量は、0.5〜50mg/kgであり、好ましくは10〜20mg/kgである。
上記の治療上有効量、投与量及び投与頻度は、典型的な数値を列挙したものであり、これを超える数値又は下回る数値であっても腫瘍細胞の増殖率が低下する場合もある。従って、上記の治療上有効量、投与量及び投与頻度を超える数値又は下回る数値であっても、本発明の抗腫瘍剤の治療上有効量、投与量及び投与頻度として包含される。
本発明のアポトーシス誘導剤の剤型、用法及び用量も、抗腫瘍剤に準じて適宜設定することができる。また、本発明のアポトーシス誘導剤をインビトロで使用する場合は、癌細胞培養培地に、DMSOに溶解した本発明のアポトーシス誘導剤を添加することで、アポトーシスを誘導することができる。
3.スクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法は、Epstein-Barrウイルスが感染した上皮細胞に候補物質を接触させ、当該上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害する物質を選択することを特徴とし、Epstein-Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤、又はEpstein-Barrウイルス関連癌細胞に特異的なアポトーシス誘導剤をスクリーニングすることができる。
候補物質は特に限定されず、既存の薬剤(例えば既存の抗癌剤であるか否かを問わない)でもよく、その他に、例えばペプチド、低分子化合物、高分子化合物、これらの塩又は前駆体等のあらゆる形態であってもよい。
本発明は、具体的には以下の工程を含む。
(a)Epstein-Barrウイルスが感染した上皮細胞に候補物質を接触させる工程
(b)当該上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を検査する工程
本発明において「接触」とは、上皮細胞の培養培地に候補物質を添加する態様、上皮細胞と候補物質とを混合してその混合物を培養する態様などがある。
工程(b)において、ETSファミリー転写因子の活性を検査する方法は、ETSファミリー遺伝子の発現プロファイルを測定する方法、ETSファミリー標的遺伝子の発現を測定する方法などが挙げられる。
上記検査により、ETSファミリー遺伝子の発現が、例えば対照と比較して低下した(抑制された)場合は、候補物質は、Epstein-Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤、又はEpstein-Barrウイルス関連癌細胞に特異的なアポトーシス誘導剤として選択することができる。
実施例
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
細胞培養
胃がん細胞株AGSは、RPMI1640培地に10%FCS、100 U/mLペニシリン、100 μg/mLストレプトマイシン添加を添加した培地で培養した。AGSには、eGFP及びネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだ組換えEpstein-Barrウイルス(Burkittリンパ腫Akataに由来するウイルス株)を感染させ、200 μg/mLのG418存在下で培養した。感染の有無は、eGFPの蛍光強度により判定した(AGS-rEBV細胞)。
ルシフェラーゼアッセイ
AGS-rEBV細胞由来DNAよりBARTプロモーター(BARTp)の137,486 から138,639領域(NC_007605.1) をPCR法によってクローニングした。クローニングしたプロモーターは、firefly luciferase 遺伝子の上流に組み込んだ(pGL4.18-BARTp)。さらに、BARTpを5’側から232 bp, 502 bp, 915 bp削除したプロモーター変異体を作成した。これらのプラスミドベクター 200 ngと、renilla luciferaseを発現するpGL4.75 100 ngを、24 well プレートに1x105細胞/wellで調整したAGS-rEBV細胞またはAGS細胞にLipofectamine 2000を用いて遺伝子導入し、48時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。測定は、Dual Luciferase Kitを用いた。ETS結合部位は、GNNAAまたは、GNAAをCNNCGまたは、CNCGへ置換した。
siRNAによるETS遺伝子の発現抑制
AGS-rEBV細胞またはAGS細胞を、6 well プレートに3x105細胞/well まき、40 pMのsiRNAをLipofectamine 2000を用いて導入し、48時間後にRNAを抽出した。cDNAは、DNase処理後Superscript III及びrandom primerにて合成した。siRNAは、QIAGEN社から購入したFlexiTube siRNA(ETV5:SI03184657, EHF:SI03171077, ETS2:SI03097038, ETV1: SI04281109)を用いた。
定量的RT-PCRによる遺伝子発現量の解析
Total RNAはISOGEN(和光純薬)を用いて抽出し、RNA中の細胞ゲノムはDNaseI処理(Invitrogen)によって除去した。DNase I処理をしたtotal RNAは、Superscript III及びランダムヘキサマーを用いて逆転写反応を行い、cDNAを合成した。合成したcDNA中における遺伝子発現量は、定量的PCR(SSoAdvanced SYBR Green, 及びCFX Connect, Bio-Rad社)を用いて解析した。遺伝子の発現量は、β-actin(FW:5’- TTGCCGACAGGATGCAGAA -3’(配列番号1), RV: 5’- GCCGATCCACACGGAGTACT -3’ (配列番号2))または、5.8S rDNA(FW:5’- GTCTACGGCCATACCACCCT -3’ (配列番号3), RV: 5’- AAAGCCTACAGCACCCGGTA -3’ (配列番号4))を用いて補正した。ETS ファミリー遺伝子の発現は以下のプライマー(表1)により解析した。
Figure 0006919891
定量的RT-PCRによるmiRNA発現量の測定
cDNA は、total RNAからmiScript II RT kitを用いて合成した。miRNAの発現量は、miScript miRNA PCR primer (miR-BART1-5p, miR-BART7-3p)と、miScript SYBR Green PCR Kit を用いて測定した。発現量は、control miRTCで補正した。
ゲノム編集
ETV1の遺伝子破壊は、ゲノム編集によって行なった。組換えCas9タンパク質及び、Crispr RNA(5’-UGUCGUCGCAGAACCAAGA-3’(配列番号51)), Tracer RNA(IDT)の複合体をin vitroで形成させ、Lipofectamine 2000で遺伝子導入を行なった。遺伝子導入後、1,000細胞/10 cm dishの細胞密度で培養した。ゲノム編集クローンは、遺伝子破壊部位のシーケンス及びWestern Blotting法によって確定した。
EBV溶解感染の誘導及び溶解感染関連遺伝子の発現量測定 AGS-rEBV細胞は、5 nM 12-O-tetradecanoylphorbol 13-acetate (TPA)と、3 mM Sodium Butylateを処理後、48時間でRNAを回収した。cDNAを作成後、BZLF1、BRLF1, BART の発現量を、定量的PCR法によって解析した。発現量は、β-actinまたは、5.8S rDNAを用いて補正した。
使用したプライマーの塩基配列を表2に示す。
Figure 0006919891
アポトーシスアッセイAGS細胞またはAGS-rEBV細胞は、0-15 μMのYK-4-279(Cayman)(下記式)または、DMSOを処理し、48時間後にリン酸緩衝液で洗浄し、Annexin V (APC標識) と7-amino- actinomycin D (7-AAD)を含む500μL のAnnexin V 結合緩衝液(Annexin V Apoptosis Detection Kit APC; eBiosciences)でインキュベートした。室温で10分間インキュベーション後、細胞は FACS (FACS Canto II apparatus, BD Biosciences) で解析した。また、細胞はRNAを抽出し、BARTの発現を定量的PCRによって解析した。
YK-4-279の構造式を以下に示す。
Figure 0006919891
結果:
(1)BARTプロモーター上のETSファミリー結合領域
BART プロモーターをルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入し、ETS及び変異ETSを作製してそれぞれのルシフェラーゼ活性を測定した。
その結果、BART 遺伝子5’UTR 領域に存在する E26 transformation specific (ETS) 転写因子結合配列(NC_007605.01 138428 -138434、エンハンサー部分)が、転写制御に重要であることを見出した(図4)。
プロモーター活性はEBV感染細胞で高く、非感染細胞で低かったが、エンハンサー部位に変異を挿入すると、EBV感染によるルシフェラーゼ活性の誘導は認められなかった。この結果は、EBV感染により発現誘導されるETS遺伝子が、BARTプロモーター活性に重要であることを示している。
(2)ETSファミリー遺伝子の発現プロファイル
ETS 転写因子ファミリ ーは、27 個の遺伝子からなり、その多くは血管新生、細胞増殖など癌の悪性化に関わっていることが知られている。BART プロモーター活性はEBV 感染細胞で高いことから、EBV 感染細胞における ETS ファミリーの発現を測定した。その結果、EBV 感染上皮細胞腫にのみ発現誘導される遺伝子として ETV1、ETV5、ETS2、EHF を同定した(図5)。このうち、ETV1、ETV5、 ETS2 に対するsiRNA 処理によってBART プロモーター活性が低下し(図6)、 BART の発現も低下した(図7)。
図5は、EBV-, EBV+ 細胞株におけるETSファミリー遺伝子の発現プロファイルである。
赤:発現量強、黒:発現量中、緑:発現量低.
定量的RT-PCRのデータを、解析ソフトを用いてヒートマップ化した。発現量は、β-actinの発現量で補正している。
上咽頭癌細胞株HONE1、胃癌細胞株MKN28, NUGC3, AGS、Bリンパ腫細胞株であるAkata、DaudiにeGFP陽性EBVを感染させ、感染、非感染細胞株におけるETSファミリーの遺伝子発現量を、定量的PCRによって解析した。その結果、ETV5、EHF、ETS2、ETV1の4つの遺伝子が、EBV感染上皮細胞腫において高発現していた。このような現象は、Bリンパ腫細胞では認められなかった。
図6は、ETV1、ETV5、ETS2 siRNA処理によるBARTプロモーター活性の抑制を示す図である。
白バー:control siRNA処理、赤バー:ETV1 siRNA処理、オレンジバー:ETV5 siRNA処理、緑バー:ETS2 siRNA処理、黒バー:EHF siRNA処理. 赤線:ETS結合部位. 赤枠白線:ETS変異導入.
AGS-rEBV細胞に、ETV1、ETV5、ETS2、EHFに対するsiRNAを導入し、導入後のBARTプロモーター活性を解析した。その結果、ETV1、ETV5、ETS2のsiRNA処理は、プロモーター活性を低下させた。このような現象は、エンハンサー部位に遺伝子変異を導入した場合、認められなかった。
図7は、ETV1、ETV5及びETS2のsiRNA処理によるBART転写産物の発現抑制を示す図である。
黒バー:BART転写産物発現量.
発現量は、β-actinの発現量で補正している。AGS-rEBV細胞に、ETV1、ETV5、ETS2、EHFに対するsiRNAを導入し、導入後のBART転写産物の発現を解析した結果、ETV1、ETV5、ETS2のsiRNA処理は、プロモーター活性と合致して、BART転写産物の発現を抑制した。
(3)ETV1 の遺伝子欠損株における試験
ETV1、ETV5、ETS2 の中でsiRNA による BART 発現抑制が最も強い、 ETV1 の遺伝子欠損株を作製したところ、BART miRNA の発現が顕著に低下した(図8)。
図8は、ETV1欠損株におけるmiR-BARTの発現低下を示す図である。
黒バー:miRNA発現量.
発現量は、control miRTCで補正している。上記siRNAのうち、最も発現抑制効果の高かったETV1の遺伝子破壊株をゲノム編集法によって作製した。ゲノム編集法は、肺炎球菌由来Cas9タンパク質と、標的とする遺伝子領域と相同的なguide RNAの複合体を作製し、これを細胞内に導入すると、任意の遺伝子を破壊できる技術である。
ETV1欠損株におけるmiR-BARTの発現を定量的PCRで解析した結果、miR-BARTクラスター1(miR-BART1-5p)、クラスター2(miR-BART7-3p)の発現は、ETV1欠損株で低下していた。これらの結果は、EBV感染上皮細胞株において、ETV1はmiR-BARTの発現に重要であることを示している。
(4)溶解感染誘導剤を使用したときのETSファミリーの発現
BART miRNA は、ウイルス溶解感染とウイルス感染細胞のアポトーシスを抑制することが報告されている。これより、溶解感染誘導剤を添加した場合の、ETV1、ETV5、ETS2 の発現量を測定すると、ETV1 の発現が顕著に上昇し、BART の発現も増加していた(図9)。また、EBV 感染 ETV1 欠損株に溶解感染誘導剤を添加すると、ETV1 欠損細胞では、野生型細胞株よりもBART の発現は低下し、溶解感染誘導スイッチ遺伝子 BZLF1 の発現は上昇していた(図10)。
図9は、溶解感染刺激剤を添加した細胞株における溶解感染遺伝子(BRLF1、BZLF1)、並びにBART及びETV1の発現上昇を示す図である。
白バー:DMSOのみ、黒バー:TPA, sodium butylate処理細胞.
発現量は、5.8S rRNAの発現量で補正している。AGS-rEBV細胞にTPA, Sodium Butylate刺激を介して溶解感染を誘導すると、EBVの溶解感染関連遺伝子BZLF1及びBRLF1の発現が誘導される。同時にBART転写産物の発現も上昇する。この時、ETV1、ETV5、ETS2、EHFの発現を定量的PCRで解析すると、ETV1の発現だけ顕著に上昇していた。
図10は、ETV1欠損株における、溶解感染誘導剤添加後のBART、BRLF1及びBZLF1の発現を示す図である。
白バー:親株、黒バー:ETV1欠損細胞株. 発現量は、5.8S rRNAの発現量で補正している。ETV1欠損EBV感染株にTPA, Sodium Butylate刺激を行うと、親株と比較してBARTの発現は低下し、一方BZLF1の発現は上昇していた。この結果は、EBV感染上皮細胞株の溶解感染時におけるmiR-BARTの発現誘導は、ETV1を介して行われ、BZLF1の発現を抑制していることを示している。
これらの結果は、ETV1 が BART の発現を正に制御し、BZLF1 発現抑制を介してウイルス溶解感染の抑制に働くことを示している。
(5)ETV1阻害剤をEBV感染細胞に用いたときのBART発現
以上の結果に基づき、ETV1 阻害剤 YK-4-279(CAS No. 1037184-44-3)を EBV 感染細胞へ添加すると、BART の発現は容量依存的に低下し(図11)、野生型 EBV 感染細胞ではアポトーシスが増加したが、BZLF1 欠損 EBV 株感染細胞では増加しなかった(図12)。
図11は、ETV1阻害剤YK-4-279処理によるBART転写産物の発現抑制を示す図である。
黒バー:BART転写産物発現量. 0: DMSO処理。
発現量は、β-actinの発現量で補正している。ETV1阻害剤YK-4-279は、容量依存的にBART転写産物の発現量を低下させた。
図12は、YK-4-279処理によるEBV感染細胞株のアポトーシス誘導を示す図である。
EBV 野生型:Akata株、BZLF1Δ: BZLF欠損Akata株. 7AA:死細胞マーカー、Annexin V:アポトーシスマーカー。
YK-4-279処理は、野生型EBV 感染株にのみアポトーシスを引き起こした。この結果は、EBV感染胃癌細胞株においてBART転写を抑制すると、アポトーシスが誘導されることを示している。
YK-4-279 の作用機序を図3に記載した。EBV 感染により発現誘導されたETV1 は、 BART miRNA の転写を誘導する。これを阻害すれば、溶解感染遺伝子 BZLF1 の発現が上昇し、アポトーシスが誘導される(図3)。
配列番号1〜50:合成DNA
配列番号51:合成RNA
配列番号52〜57:合成DNA

Claims (8)

  1. ETV1及びETV5からなる群から選ばれるETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質を含む、Epstein-Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤であって、ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質が、当該転写因子に対するsiRNA、shRNA、miRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸及びアプタマー、並びにBRD32048及びYK-4-27からなる群から選ばれるいずれかの物質である、前記抗腫瘍剤
  2. Epstein-Barrウイルス関連癌が、上皮性のものである、請求項に記載の抗腫瘍剤。
  3. Epstein-Barrウイルス関連癌がEpstein-Barrウイルス関連胃癌又は上咽頭癌である請求項1又は2に記載の抗腫瘍剤。
  4. ETV1及びETV5からなる群から選ばれるETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質を含む、Epstein-Barrウイルス関連癌細胞に特異的なアポトーシス誘導剤であって、ETSファミリー転写因子の活性を抑制する物質が、当該転写因子に対するsiRNA、shRNA、miRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸及びアプタマー、並びにBRD32048及びYK-4-27からなる群から選ばれるいずれかの物質である、前記アポトーシス誘導剤
  5. Epstein-Barrウイルス関連癌がEpstein-Barrウイルス関連胃癌又は上咽頭癌である請求項に記載のアポトーシス誘導剤。
  6. Epstein-Barrウイルスが感染した上皮細胞の培養培地に、請求項4又は5に記載のアポトーシス誘導剤を添加することにより、Epstein-Barrウイルス感染によって上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性をインビトロで阻害することを特徴とする、当該ウイルス感染細胞に特異的にアポトーシスを誘導する方法。
  7. Epstein-Barrウイルスが感染した上皮細胞に候補物質を接触させ、当該上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害する物質を選択することを特徴とする、Epstein-Barrウイルス関連癌に特異的な抗腫瘍剤のスクリーニング方法であって、ETSファミリー転写因子が、ETV1及びETV5からなる群から選ばれるいずれかである、前記方法
  8. Epstein-Barrウイルスが感染した上皮細胞に候補物質を接触させ、当該上皮細胞に発現誘導されたETSファミリー転写因子の活性を阻害する物質を選択することを特徴とする、Epstein-Barrウイルス関連癌細胞に特異的なアポトーシス誘導剤のスクリーニング方法であって、ETSファミリー転写因子が、ETV1及びETV5からなる群から選ばれるいずれかである、前記方法
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