この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
実施の形態1.
図1から図8は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は感情判定装置を備えた空気調和装置の外観斜視図、図2は感情判定装置を備えた空気調和装置の縦断面図、図3は感情判定装置が備える人体センサの検出範囲を説明する図、図4は感情判定装置の奥行き方向における人体センサの検出範囲を説明する図、図5は感情判定装置の水平方向における人体センサの検出範囲を説明する図、図6は感情判定装置を備えた空気調和装置の制御系統の構成を示すブロック図、図7は感情判定装置の制御装置の機能的な構成を示すブロック図、図8は感情判定装置の動作の流れを示すフロー図である。
この発明の実施の形態1に係る感情判定装置は、図1及び図2に示すような空気調和装置100に搭載されている。なお、空気調和装置100は、感情判定装置が搭載される機器の一例である。この発明の実施の形態1における感情判定装置を備えた空気調和装置100は、例えば、空気調和機の室内機である。したがって、空気調和装置100は、室内の壁面又は天井面に設置されている。ここでは、空気調和装置100は、室内の壁面に設置されているとする。
図1及び図2に示すように、空気調和装置100は、筐体110を備えている。空気調和装置100の筐体110は、横長で前面から下面にかけては滑らかな曲面となった略直方体状に形成されている。筐体110の上面部には、吸込口111が形成されている。吸込口111は、外部から筐体110の内部に空気を取り込むための開口である。筐体110の前面下部には、吹出口112が形成されている。吹出口112は、筐体110の内部から外部へと空気を排出するための開口である。筐体110の前面上部は、前面パネル113に覆われている。
吹出口112には、上下風向板131、132、141、142が設けられている。これらの上下風向板は、吹出口112から吹き出す空気の上下方向の吹き出し角度を調整するためのものである。
上下風向板は、空気調和装置100の正面に向かって手前側と奥側とにそれぞれ設置されている。また、手前側と奥側の各上下風向板は、それぞれ左右に分割されている。すなわち、手前側の上下風向板は、空気調和装置100の正面に向かって左側の左手前側上下風向板131と、右側の右手前側上下風向板132とに分割されている。また、奥側の上下風向板は、空気調和装置100の正面に向かって左側の左奥側上下風向板141と、右側の右奥側上下風向板142とに分割されている。
それぞれの上下風向板が左右に分割される位置は、空気調和装置100の正面に向かって長手方向(吹出口112の左右方向)のほぼ中央である。左手前側上下風向板131と右手前側上下風向板132との間には、僅かな隙間が形成されている。同様に、左奥側上下風向板141と右奥側上下風向板142との間にも、僅かな隙間が形成されている。
左手前側上下風向板131、右手前側上下風向板132、左奥側上下風向板141及び右奥側上下風向板142は、それぞれ、吹出口112の左右方向に細長く延びた板状の部材である。また、これらの上下風向板131、132、141、142は、それぞれ、長手方向に垂直な断面が円弧状となるように湾曲している。
上下風向板131、132、141、142は、それぞれが図示しない支持腕を介して筐体110に取り付けられている。それぞれの支持腕は筐体110に対して回転可能に取り付けられている。各支持腕が筐体110に対して回転することで、それぞれの上下風向板の向きを変えることができるようになっている。そして、上下風向板の向きを変えることで、空気調和装置100は、送風方向を上下に変更可能である。
上下風向板のそれぞれの支持腕は、上下風向板用ステッピングモータの駆動により角度を調節できるように設けられている。具体的にここでは、左手前側上下風向板131及び左奥側上下風向板141の向きが、左側上下風向板用ステッピングモータ161により変更される。右手前側上下風向板132及び右奥側上下風向板142の向きが、右側上下風向板用ステッピングモータ162により変更される。
このようにして、吹出口112の左側から吹き出す空気の上下方向の吹き出し角度(送風方向)と、吹出口112の右側から吹き出す空気の上下方向の吹き出し角度(送風方向)とは、別々に調整することができる。なお、左側上下風向板用ステッピングモータ161及び右側上下風向板用ステッピングモータ162は、図1及び図2では図示を省略している。
吹出口112における上下風向板131、132、141、142の奥側には、左右風向板150が設けられている。左右風向板150は、吹出口112から吹き出す空気の左右方向の吹き出し角度を調整するためのものである。左右風向板150は、空気調和装置100の正面に向かって長手方向(吹出口112の左右方向)にわたって並べられた複数の板材により構成されている。左右風向板150は、上下風向板131、132、141、142と同様に、左右風向板用ステッピングモータ163(図1及び図2では図示省略)の駆動により角度を調節できるようにして取り付けられている。
筐体110の内部には、吸込口111から吹出口112へと通じる風路が形成されている。風路における吸込口111の風下側には、熱交換器121が設置されている。熱交換器121は、風路を流れる空気と熱交換して、風路を流れる空気を加熱又は冷却する。空気を加熱するか冷却するかは、空気調和装置100が暖房運転であるか冷房運転であるかによる。具体的には、暖房運転時には熱交換器121は空気を加熱する。一方、冷房運転時には熱交換器121は空気を冷却する。
熱交換器121は、風路を流れる空気を加熱又は冷却することで、当該空気の温度、湿度等を調整し、調和空気を生成する。熱交換器121は、このようにして、吸込口111から吸い込まれた空気と熱交換して調和空気を生成する。なお、暖房運転時には、調和空気として温風が生成され、冷房運転時には、調和空気として冷風が生成される。
風路における熱交換器121の風下側には、送風ファン122が設置されている。送風ファン122は、吸込口111から吹出口112へと向かう空気流を風路中に生成するためのものである。
送風ファン122が動作すると、吸込口111から吹出口112へと向かう空気流が風路中に生成され、吸込口111から空気が吸い込まれ、吹出口112から空気が吹き出される。吸込口111から吸い込まれた空気は、空気調和装置100の内部の風路を、熱交換器121、送風ファン122の順に通過する空気流となり、吹出口112から吹き出す。この際、送風ファン122の風下側に配置された上下風向板131、132、141、142及び左右風向板150により、吹出口112から吹き出される風の方向(送風方向)が調整(変更)される。
送風ファン122、上下風向板131、132、141、142、左右風向板150、上下風向板用ステッピングモータ161、162、及び、左右風向板用ステッピングモータ163は、筐体110に設けられた送風機構を構成している。このように構成された送風機構は、吸込口111から空気を吸い込み吹出口112から調和空気を吹き出す空気流を生成するとともに、吹出口112から吹き出す調和空気の風向を変更可能である。
空気調和装置100の前面中央には、人体センサ170が取り付けられている。ただし、人体センサ170の取付位置は、空気調和装置100の前面中央に限られない。人体センサ170を、例えば、筐体110の左側又は右側の端部等に取り付けるようにしてもよい。
人体センサ170は、例えば、上下方向に並べた複数の赤外線センサ(受光素子)を備えている。ここでは、人体センサ170は例えば8個の赤外線センサ(受光素子)を備えているとする。これら8個の赤外線センサのそれぞれは、赤外線の受光及び温度の検出を個別に実行可能な検出素子である。これらの赤外線センサ(受光素子)は、例えば、図3に示すように、円筒状の金属缶171の内部に上下方向に直線状に並んで配置されている。これにより、人体センサ170は、室内の温度を互いに高さが異なる8個のエリアに区分して検出する機能を備えている。
これら8個の赤外線センサのそれぞれの検出範囲は、図3に示すように、互いに大きさが等しい四角形状のエリアとして設定されている。また、1個の赤外線センサの配光視野角は、例えば上下方向における縦配光視野角が7°に設定され、左右方向の横配光視野角が8°に設定されている。
それぞれの赤外線センサの配光視野角を合わせた人体センサ170全体の配光視野角173は、上下方向に細長いエリアとして設定されている。なお、それぞれの赤外線センサの配光視野角(検出範囲)は、同じ形状、同じ大きさでなくともよい。また、縦配光視野角及び横配光視野角の具体的な値についても、前述した例示に限定されるものではない。さらに、赤外線センサ(受光素子)の個数は8個に限定されるものではなく、人体センサ170は、7個以下または9個以上となる任意の個数の赤外線センサ(受光素子)を備えるようにしてもよい。
そして、人体センサ170は、センサ用ステッピングモータ172(図1及び図2では図示省略)により上下に並んだ複数の赤外線センサを、予め設定された角度範囲内において左右に向きを変えることができる。このようにすることで、上下に並んだ複数の赤外線センサのそれぞれを左右方向に走査させて、空気調和装置100前方の予め設定された検出範囲(以下、「温度検出対象範囲」という)内について表面温度を検出することができる。
人体センサ170は、このような構成により、温度検出対象範囲内を走査して当該範囲内の表面温度分布(熱画像)を非接触で取得する。すなわち、人体センサ170は、予め設定された検出範囲内の表面温度を非接触で検出する温度検出部を構成している。
人体センサ170の検出結果、すなわち、人体センサ170により取得した表面温度分布(熱画像)データを、後述する制御装置180等で処理することで、例えば背景との温度差から、室内における人を含む熱源の有無及びその位置、人体の表面温度、人の身体の部位(肌の露出部と非露出部、頭部等)等を検出することができる。
また、人体センサ170の検出結果に基づいて、室内の人の体感温度も得ることができる。この場合、肌を露出している人体ほど体感温度を検出しやすい。なお、人体センサ170に用いる受光素子の画素数が多いほど、人体センサ170の検出精度は高くなる。具体的に例えば、30画素以上の画素数を有する受光素子を用いれば、室内の人の位置及び人体センサ170から当該人までの距離を精度よく検出することができる。
人体センサ170は、温度検出対象範囲を左右に走査しながら温度検出対象の温度を検出する。なお、ここでの左右は、空気調和装置100側から見た場合の左右である。室内の壁及び床の熱画像データ(温度分布データ)を取得する場合、例えば、人体センサ170の向きをセンサ用ステッピングモータ172により左右方向に動かし、センサ用ステッピングモータ172の回転(すなわち、人体センサ170の向きの回転)を一定角度毎に一定時間だけ停止させる。この際の一定角度は例えば1〜5°とする。また、この際の一定時間は例えば0.1〜0.2秒とする。そして、人体センサ170の向きの変更を停止した後、前記の一定時間(0.1〜0.2秒)よりも短い時間だけ待って、人体センサ170の8個の受光素子の検出結果(熱画像データ)を取り込む。
人体センサ170による検出結果の取り込み終了後、再びセンサ用ステッピングモータ172を前記一定角度だけ回転して再度停止し、同様の動作で人体センサ170の検出結果(熱画像データ)を取り込む。このような動作を繰り返し行って、検出範囲内における左右方向の例えば90〜100箇所で人体センサ170の検出結果を取得する。そして、取得した人体センサ170の検出結果から、温度検出対象範囲の熱画像データ(温度分布データ)を得ることができる。
次に、図4及び図5を参照しながら、以上のように構成された人体センサ170の検出範囲について説明する。まず、図4は、空気調和装置100から見た奥行き方向における人体センサ170の検出範囲を説明する図である。この図4は、空気調和装置100が設置された室内を水平方向から見た状態を示している。この図4では、空気調和装置100が1800mm程度の高さに設置され、空気調和装置100から人体までの距離が3600mm程度の状態を例示している。
人体センサ170の検出範囲は、奥行き方向において、赤外線センサ(受光素子)の個数(ここでは8)と等しい複数の領域に区分されている。すなわち、室内の空間は、奥行き方向において、各受光素子の配光視野角に対応する8個の領域に区分されている。そして、区分された個々の領域の広さは、配光視野角の上下方向の広がり角度に応じて設定される。
人体センサ170の最も下側の受光素子は、空気調和装置100に最も近い手前側の領域における人体を検出する。そして、人体センサ170の上側の受光素子ほど、遠方の領域における人体を検出するように構成されている。
次に、図5は、空気調和装置100から見た左右方向における人体センサ170の検出範囲を説明する図である。この図5は、空気調和装置100が設置された室内を上方から見た状態を示している。人体センサ170の検出範囲は、左右方向において、人体センサ170をセンサ用ステッピングモータ172により回転させる際の前記一定角度に対する複数の領域に区分されている。
この図5では、人体センサ170の左右方向における検出範囲を90°程度に設定する場合を例示している。人体センサ170の左右方向における検出範囲は、この角度に限られず、例えば、センサ用ステッピングモータ172により人体センサ170を完全に1回転させることができるように構成し、検出範囲を360°に設定してもよい。
なお、人体センサ170を他のステッピングモータ等により上下方向にもスイングさせるようにしてもよい。人体センサ170の向きを上下方向にも変えることができるようにすることで、水平方向だけでなく上下方向についても詳細な熱画像データを取得することができる。
また、人体センサ170は、赤外線センサと、他の検出機器を併用する構成としてもよい。具体例を挙げると、カメラ、超音波センサ等を用いて人体の位置、形状及び人体までの距離を検出する構成としてもよい。すなわち、人体センサ170として、赤外線センサの他に、例えば、物体を検出可能な超音波センサをさらに備えるようにしてもよい。このようにすることで、人体センサ170による人体の位置及び距離の検出精度を向上させることができる。又は、フレネルレンズを用いた焦電センサを用いて、室内の左右方向及び空気調和装置100からみた奥行き方向(前後方向)における人体の位置を検出する構成としてもよい。
次に、図6を参照しながら、空気調和装置100の制御系統の構成について説明する。空気調和装置100は、制御装置180及び操作表示部190を備えている。制御装置180は、例えばマイクロコンピュータ等を備えた電気回路により構成されている。制御装置180がマイクロコンピュータを備えている場合、制御装置180は、プロセッサ181及びメモリ182を備えている。メモリ182には、制御用のプログラムが記憶されている。プロセッサ181は、メモリ182に記憶されているプログラムを読み出して実行する。
プロセッサ181が制御用のプログラムを実行することで、制御装置180は予め設定された処理を実行して空気調和装置100の動作を制御する。また、特に、メモリ182に記憶されているプログラムをプロセッサ181が実行することで、後述する人体検出部183、部位特定部184、感情判定部186及び送風制御部187の各部の機能が実現される。
制御装置180の入力側には、人体センサ170等を含むセンサ系統が接続されている。制御装置180の出力側には、送風ファン122、左側上下風向板用ステッピングモータ161、右側上下風向板用ステッピングモータ162、左右風向板用ステッピングモータ163、センサ用ステッピングモータ172等を含む各種のアクチュエータが接続されている。
操作表示部190は、使用者が各種の設定値を入力するためのものであるとともに、使用者に対し各種の情報を表示するためのものである。操作表示部190は、例えば、リモートコントローラ(リモコン)等である。操作表示部190は、制御装置180と相互通信可能に接続されている。使用者は、操作表示部190を操作することにより、電源のON/OFF、暖房運転と冷房運転の切換、温度、風向、風量等の設定等を行うことができる。また、操作表示部190は、各種情報を表示する例えば液晶ディスプレイ等の表示装置を備えている。操作表示部190の表示装置には、例えば、運転モード、温度、風向、風量等の設定内容が表示される。
制御装置180は、センサ系統及び操作表示部190からの入力に基づいて各アクチュエータを駆動し、空気調和装置100の動作を制御する。制御装置180により実行される制御には、例えば、冷房運転、暖房運転、送風動作、人体センサ170の走査動作等の制御が含まれる。すなわち、制御装置180は、例えば、温度検出部である人体センサ170の検出結果に応じた前記送風機構の制御等を行う。
図7に示すように、制御装置180は、人体検出部183、部位特定部184、記憶部185、感情判定部186、送風制御部187及び計数部188を備えている。人体検出部183は、温度検出部である人体センサ170の検出結果に基づいて、人体センサ170の温度検出対象範囲内に存在する人体を検出する。人体の検出は、例えば、人体センサ170により検出された表面温度が予め設定された基準温度以上の各領域の形状、分布(相対位置関係)、面積等を用いて行うことができる。この際の基準温度は、人の体温を考慮して具体的に例えば30℃等に設定される。
部位特定部184は、人体検出部183が検出した人体の判定部位を特定する。判定部位とは、感情判定部186が当該人体の対象者の感情の判定に用いるための人体の部位である。人体のどの部位を判定部位とするかは、予め指定しておく。判定部位は1箇所以上が予め指定される。この判定部位の特定は、まず、人体の全体の形状を特定した後に、人体の全体の形状から判定部位を特定するようにしてもよいし、直接的に判定部位を特定するようにしてもよい。
人体の全体の形状を特定する場合には、部位特定部184は、まず、人体検出部183が検出した人体が存在する領域を特定する。人体が存在する領域は、例えば、表面温度が一定温度以上の各領域の形状、分布(相対位置関係)、面積、各領域の温度の相対的な大小関係等を用いて特定することができる。なお、人体が存在する領域を特定すると、当該領域の形状も特定され、すなわち、人体の形状を特定することができる。
また、人体の全体の形状を特定する場合に、部位特定部184は、人体が存在する領域全体を一度に特定してもよいし、人体が存在する領域を、当該人体の部位毎に個別に特定してもよい。人体の部位毎に存在する領域を個別に特定する場合、部位特定部184は、例えば、人体の頭部、胸部、腕部、上脚部、下脚部、手及び足の各部位について、各部位が存在する領域をそれぞれ特定する。なお、ここでいう「手」とは、手首よりも先端側の部分を指している。また、ここでいう「足」とは、足首よりも先端側の部分を指している。
この際、部位特定部184は、特に、人体センサ170より検出された表面温度が予め設定された温度以上である部分を、当該人体の頭部、胸部及び腹部の少なくともいずれかが存在する領域として特定するようにしてもよい。また、部位特定部184は、人体の各部位が存在する領域を特定する際に、それぞれの部位の温度、位置及び着衣状態についても特定するようにしてもよい。「着衣状態」とは、当該部位の肌が衣服等により覆われているのか、それとも露出されているのかに関する状態のことである。
なお、人体センサ170として表面温度を検出する赤外線センサに加えて超音波センサも備えている場合には、部位特定部184は、赤外線センサの検出結果及び超音波センサの検出結果に基づいて、人体を検出し、検出した人体が存在する領域を特定するようにするのがよい。
次に、再び図4を参照しながら、部位特定部184による人体の各部位が存在する領域の特定について、具体例を挙げて説明する。図4に示す例では、最も上側から4番目までの4つの受光素子の検出領域内で、人体が検出される状態になっている。
具体的には、まず、最も上側の受光素子が人体の頭部を検出している。頭部は露出している上に、人体の他の部分よりも皮膚温度が高く、例えば30℃以上の皮膚温度を有している。したがって、部位特定部184は、人体センサ170により取得した熱画像データに基づいて、人体の頭部が属する領域を識別することができる。より詳しく述べると、部位特定部184は、最も上側の受光素子が水平方向の走査により取得した熱画像データを分析する。そして、水平方向において検出温度が30℃以上である熱源の形状が予め記憶されている人体頭部の形状(例えば、円形状)と合致する場合に、この熱源を頭部として特定する。
また、上から2番目の受光素子は、人体の胸部及び腕部を検出している。胸部はほとんどの場合で衣服により覆われており、肌が露出していることは稀である。腕部は、肌が露出している場合と、露出していない場合がある。部位特定部184は、人体センサ170により検出した表面温度に基づいて、腕部が露出しているか否かを判定することができる。具体的には、腕部の肌が露出している場合には、腕部に相当する位置で頭部と同等か、やや低い皮膚温度が検出される。腕部は、頭部よりも冷えている場合があり、この場合には腕部の温度が頭部よりも低い温度として検出されるためである。
上から3番目の受光素子は、人体の上脚部を検出している。上脚部は、衣服により覆われている場合がほとんどである。このため、上脚部に相当する位置では、衣服の表面温度が検出される。衣服の表面温度は、皮膚の温度よりも低い。また、手が上脚部の脇に下ろされている場合等には、手の位置で頭部と同等以下の温度が検出される。なお、手は、頭部よりも冷えている場合がある。この場合には、手の位置で頭部よりも低い温度が検出される。
上から4番目の受光素子は、人体の下脚部を検出している。当該人体が靴下等の衣類を着用している場合には、下脚部の位置で衣類の表面温度が検出される。また、足が冷えている場合には、衣類を着用しているか否かに関係なく、下脚部に相当する位置で衣類の表面温度よりもさらに低い温度が検出される。
なお、人体の胸部、腕部、上脚部、下脚部、手及び足の各部位についても、人体の頭部のときと同様に、部位特定部184は、一定温度以上の領域の形状と予め記憶しておいた各部位の形状とを比較照合等することにより、各部位の存在する領域を特定する。
ここで、人体センサ170が検知可能な温度幅は0.5℃以下であることが好ましい。人間等の哺乳類は体温を一定に保つ能力の高い恒温動物である。このため、定常状態の環境において、人体表面温度、特に頭部や体幹部などはほとんど温度が変化しない。したがって、人体センサ170が検知可能な温度幅を小さくすることで、人体センサ170が取得する熱画像データの解像度を向上することができる。したがって、頭部、腹等の体幹部、手、足等の高さ方向の人体表面温度、また、例えば左手、左胸、右胸、右手などの左右方向の人体表面温度の違いを詳細に検出することができる。そして、部位特定部184による人体の部位の特定精度を向上することが可能である。
以上のようにして、温度検出部である人体センサ170、人体検出部183及び部位特定部184は、部位温度検出手段を構成している。部位温度検出手段とは、対象者の人体の予め指定された1箇所以上の判定部位の表面温度を、対象者の人体とは非接触で、検出する手段である。
再び図7を参照しながら説明を続ける。感情判定部186及び記憶部185は、対象者の人体の1箇所以上の判定部位の表面温度に基づいて、当該対象者の感情を判定する感情判定手段を構成している。感情判定部186は、対象者の人体の1箇所以上の判定部位の表面温度に基づいて、当該対象者の感情を判定する。人体の判定部位は、当該人体の部位のうちで部位特定部184が判定部位として特定した部位である。人体の判定部位の表面温度は、ここでは、人体センサ170が検出したものを用いる。すなわち、感情判定手段での対象者の感情を判定には、前述の部位温度検出手段により検出された対象者の人体の1箇所以上の判定部位の表面温度が用いられる。
感情判定手段は、喜怒哀楽等の基本的な感情を判定する。「喜・楽」は、嬉しい、楽しい等の正の感情である。対象者に正の感情が生じると人体全体の温度が上昇する。「怒」は、例えばイライラする、むしゃくしゃするといった感情である。この「怒」の感情が強いほど、対象者の例えば頭部の温度が上昇する。また、ちょっとした瞬間的なイライラ程度の場合には、対象者の人体の一部の温度のみが上昇する。「哀」は悲しい、寂しい、辛い等の負の感情である。対象者に負の感情が生じると人体全体の温度が低下する。
具体的に例えば、椅子座安静でパソコンを用いた事務作業中における、対象者の感情と人体部位の温度変化を実験した場合について次に説明する。例えば、パソコンソフトの不具合が発生して対象者が瞬間的にイライラしている時、激怒した時のように頭に血が上るような感覚を対象者が認識することはない。しかし、この時、対象者の手甲の温度変化が増加に転じることが観測される。一方、イライラには至らずに繰り返し作業にうんざりしている状態では、対象者の手甲の温度は変化しておらず、他の部位も温度変化は見られない。
そこで、この実施の形態1においては、感情判定部186は、対象者の人体の判定部位の表面温度の特に変化量に基づいて、当該対象者の感情を判定する。すなわち、この実施の形態1では、記憶部185は、対象者の人体の判定部位の表面温度の変化量と、当該対象者の感情とを対応付けて記憶している。ここでいう変化量とは、変化の絶対量でも変化率でもその両方でもよい。また、変化が増加、減少のいずれであるのか、すなわち、変化量の正負も考慮に入れることが望ましい。
感情判定部186は、記憶部185が記憶する情報を参照して、対象者の感情を判定する。感情判定部186は、まず、対象者の人体の1箇所以上の判定部位の表面温度についての部位温度検出手段による検出結果データを取得する。次に、感情判定部186は、検出結果データから、対象者の人体の判定部位における表面温度の変化量を求める。以下においては、検出結果データから求めた、対象者の人体の判定部位における表面温度の変化量を「検出変化量」という。そして、感情判定部186は、検出変化量と記憶部185が記憶する情報とを照合し、検出変化量の値に対応付けられて記憶部185に記憶されている感情が、当該対象者の感情であると判定する。
ここで、前述の部位温度検出手段による検出結果データを用いて検出変化量を求める方法例について説明する。感情判定手段は、前述の部位温度検出手段が検出した判定部位毎の表面温度データを一定時間毎に取得する。次に、取得した判定部位毎の表面温度データを例えば記憶部185等に記憶して蓄積する。そして、感情判定手段は、一定時間毎の判定部位毎の表面温度データに基づいて、判定部位毎の検出変化量を求めることができる。
具体的に例えば、部位温度検出手段の人体センサ170が検出範囲の全体を1回走査するのに30秒要する場合、前述の一定時間は30秒に設定される。したがって、30秒毎に判定部位毎の表面温度データを取得して記憶・蓄積する。この際、検出範囲の全体を1回走査して人体検出部183が人体の存在する範囲を検出した後は、人体センサ170は、検出範囲の全体でなく人体検出部183が検出した人体が存在する範囲内だけを走査するようにしてもよい。人体センサ170の走査範囲を人体が存在する範囲に狭めた後は、走査周期が短くなる(例えば、30秒が5秒に短縮される)。感情判定手段は、その短くなった走査周期毎に、判定部位毎の表面温度データを取得して記憶・蓄積するようにしてもよい。このようにすることで、より短い時間間隔で、人体の判定部位の表面温度の変化を検出することができる。
ただし、感情判定に用いるための対象者の人体の判定部位における表面温度の変化量を求める際の時間間隔は、必ずしも人体センサ170の走査周期に合わせる必要はない。例えば、数分間等の分単位、又は1日間等の日単位といったように、任意の時間間隔としてよい。
なお、感情判定手段の記憶部185は、人の作業量毎に、対象者の人体の判定部位の表面温度の変化量と、当該対象者の感情とを対応付けて記憶するようにしてもよい。ここでいう人の作業量とは、例えば、人の座位安静時、立位安静時、座位動作時、立位動作時等のことである。人の作業量によって代謝量が変化することで、同じ感情を抱いていても表面温度の変化量が異なる。そこで、感情の判定に対象者の作業量も考慮に入れることで、より正確に対象者の感情を判定することができる。
人の作業量は、例えば、部位温度検出手段の人体検出部183の検出結果から人体の姿勢、移動量等を検出することで求めることができる。人体検出部183が検出した人体が存在する範囲内だけを走査する構成とした場合には、この際の走査範囲の変化から人の作業量を求めることもできる。また、人体センサ170以外の例えば超音波センサ等を備えて、人の作業量を検出するようにしてもよい。
なお、人の作業量が一定の環境中に人体センサ170の検出範囲が設定されている場合には、感情の判定に対象者の作業量を考慮に入れる必要はない。具体的に例えば、オフィス、書斎等では、人が座位安静であることがほとんどであると考えられる。また、他に例えば、トレーニングジム等では、人が立位動作であることがほとんどであると考えられる。したがって、このような場所は、人の作業量が一定の環境であると考えることができる。
また、記憶部185は、夏季、冬季等の季節毎に、対象者の人体の判定部位の表面温度の変化量と、当該対象者の感情とを対応付けて記憶するようにしてもよい。人の代謝量は季節によって変化するため、同一の感情であっても表面温度の変化量が異なる。また、外気温によっても、同一の感情を抱いた際の表面温度の変化量が異なってくる。そこで、感情の判定に季節も考慮に入れることで、より正確に対象者の感情を判定することができる。なお、対象者の人体の判定部位の表面温度の変化量を、季節に応じて補正して用いるようにしてもよい。具体的に例えば、春、秋といった中間期を標準として夏季と冬季は季節係数を乗じることで補正することが考えられる。
記憶部185は、対象者の年齢層毎に、対象者の人体の判定部位の表面温度の変化量と、当該対象者の感情とを対応付けて記憶するようにしてもよい。例えば、子どもと成人を比較した場合、子どもは成人に比べて皮膚温度が高いことが一般的に知られている。したがって、皮膚温度がもともと高い子どもは成人に比べて判定部位の表面温度の変化量(例えば変化率)が小さくなる可能性がある。そこで、感情の判定に対象者の年齢層も考慮に入れることで、より正確に対象者の感情を判定することができる。対象者の年齢層は、例えば、部位温度検出手段の人体検出部183の検出結果から人体の身長等を検出することで求めることができる。または、使用者が操作表示部190を操作することにより対象者の年齢層の情報を入力できるようにしてもよい。
記憶部185は、対象者の運動習慣の有無毎に、対象者の人体の判定部位の表面温度の変化量と、当該対象者の感情とを対応付けて記憶するようにしてもよい。運動習慣のある人とない人では基礎代謝量が異なるため、運動習慣のある人の方が皮膚温度が高いことが一般的に知られている。したがって、皮膚温度がもともと高い運動習慣のある人は運動習慣のない人に比べて判定部位の表面温度の変化量(例えば変化率)が小さくなる可能性がある。そこで、感情の判定に対象者の運動習慣の有無も考慮に入れることで、より正確に対象者の感情を判定することができる。この際、例えば、使用者が操作表示部190を操作することにより対象者の運動習慣の有無に関する情報を予め入力できるようにしておけば、対象者の運動習慣の有無を考慮した感情の判定が可能となる。
なお、対象者の人体の判定部位の表面温度の変化量を、当該対象者の基礎代謝量に応じて補正して用いるようにしてもよい。この際、対象者の基礎代謝量を検出する手段を備えるようにしてもよいし、使用者が操作表示部190を操作することにより対象者の基礎代謝量情報を予め入力できるようにしてもよい。
感情判定部186の判定結果は、操作表示部190に送信される。操作表示部190の表示装置は、感情判定部186の判定結果、すなわち、対象者が抱いていると推測される感情を表示する。操作表示部190は、対象者の人体の判定部位の表面温度に基づいて判定された当該対象者の感情に関する情報を出力する出力手段の一例である。すなわち、この実施の形態1においては、出力手段は、対象者の人体の判定部位の表面温度に基づいて判定された当該対象者の感情に関する情報として、感情判定部186の判定結果を出力する。そして、出力手段は、感情判定手段の判定結果を表示する表示部を備えている。
出力手段は、感情判定手段の判定結果を、文字、数値、色彩及び画像の1又は複数の組み合わせとして出力する。出力手段が感情判定手段の判定結果を文字として出力する場合、感情判定手段が判定した感情を、例えば「嬉しい」、「哀しい」、「寂しい」等の文字情報で表現する。出力手段が感情判定手段の判定結果を数値として出力する場合、感情判定手段が判定した感情を、予め設定した尺度のスケール数値で表現する。この際の尺度としては、例えば、前述した正の感情の強さの程度、又は、前述した負の感情の強さの程度を表す片側尺度、もしくは、正負両方の感情の強さの程度を表す両極尺度を用いることができる。
出力手段が感情判定手段の判定結果を色彩として出力する場合、感情判定手段が判定した感情を、例えば、赤、青、黄色、緑等の色彩で表現する。出力手段が感情判定手段の判定結果を画像として出力する場合、感情判定手段が判定した感情を、例えば、笑い顔、怒り顔、泣き顔等の顔の表情の画像で表現する。
なお、外気温の条件が同一であり、かつ、同一人物が全体的に辛い感情(負の感情)を抱いていた点でも共通するが、当該人物の体調が異なる複数の日において、当該人物の頭部温度を比較したところ、当該人物の体調が悪い日の頭部温度は、当該人物の体調がよい日の頭部温度よりも全体的に低い状態で推移した。そこで、特に感情判定手段の判定した感情を数値で表現する場合に、感情を当日のある時点、例えば感情判定装置の動作開始時を基準にした相対量として表すようにしてもよい。また、同一日の数分前を基準にして短時間での感情の変化を判定するようにしてもよい。
この実施の形態1においては、感情判定装置は、計数部188を備えている。計数部188は、対象者の感情が計数対象感情に該当した回数を計数する計数手段である。計数対象感情は、例えば、前述した負の感情、「寂しい」、「悲しい」、「辛い」等の気持ちの落ち込み等に予め設定される。
計数部188による計数結果は、記憶部185に記憶するようにしてもよい。このようにすることで、例えば、一定期間内に計数対象感情を抱いていると判定された回数等を集計することができる。そして、集計結果の過去の履歴を確認することが可能となる。特に気分の落ち込み等の「哀」に属する感情は、頻度が高いほど対象者の体調に悪化傾向が見られることもある。このため、感情判定対象者が、計数部188による計数結果を知ることで自身の体調管理にも活用することができる。
送風制御部187は、制御装置180は、センサ系統及び操作表示部190からの入力に基づいて各アクチュエータを駆動し、前述した送風機構の動作を制御する。空気調和装置100の動作を制御する。制御装置180により実行される制御には、例えば、冷房運転、暖房運転、送風動作、人体センサ170の走査動作等の制御が含まれる。
送風制御部187は、例えば、温度検出部である人体センサ170の検出結果に応じた前記送風機構の制御等を行う。すなわち、例えば、人体検出部183により検出された人体の位置に応じて、風向を人体に向けたり、あるいは、逆に風が直接人体に当たらないようにしたりする。また、送風制御部187は、人体センサ170の検出結果を用いて人の体感温度(温冷感)を算出し、体感温度に応じて送風する空気の温度を調節する。したがって、この実施の形態1では、人体センサ170は、対象者の感情判定に用いる目的と、空気調和装置100の送風制御に用いる目的の2つの目的を兼ねて設置されている。
また、送風制御部187は、前述の送風機構の動作制御に、以上のようにして感情判定部186が判定した対象者の感情の情報を用いるようにしてもよい。
次に、図8を参照しながら、以上のように構成された感情判定装置を備えた空気調和装置100の感情判定動作の流れの一例を説明する。まず、感情判定動作を開始すると、人体センサ170は表面温度の検出を開始し、人体検出部183は、人体センサ170の検出結果に基づく人体の検出を開始する。そして、人体センサ170の検出結果に基づいて、人体検出部183が感情判定の対象者の人体を検出すると、ステップS1において、対象者の人体の判定部位の検出と判定部位の表面温度の検出を開始する。すなわち、このステップS1においては、まず、部位特定部184は、人体検出部183が検出した人体が存在する領域を特定する。そして、部位特定部184は、人体検出部183が検出した人体が存在する領域から、当該人体の各判定部位を特定する。ステップS1の後、処理はステップS2へと進む。
ステップS2においては、人体センサ170は、部位特定部184が各判定部位の表面温度の検出を開始する。人体センサ170は、各判定部位の表面温度を一定の時間間隔で検出する。人体センサ170が検出した各判定部位の表面温度は、記憶部185に時系列データとして記憶される。ステップS2の後、処理はステップS3へと進む。
ステップS3においては、まず、感情判定部186は、記憶部185に記憶した各判定部位の表面温度の時系列データに基づいて、各判定部位の表面温度の変化量を算出する。次に、感情判定部186は、算出した各判定部位のいずれかの表面温度の変化量すなわち前述の検出変化量が0でない、つまり、算出した各判定部位のいずれかの表面温度に変化があったか否かを確認する。各判定部位のいずれかの表面温度に変化がなければ、処理はステップS2へと戻る。一方、各判定部位のいずれかの表面温度に変化があれば、処理はステップS4へと進む。
ステップS4においては、感情判定部186は、表面温度に変化があった判定部位毎に、検出変化量と記憶部185に記載されている情報とを照合する。そして、処理はステップS5に進み、検出変化量と一致するものが記憶部185に記憶されている情報に存在しない場合、処理はステップS2へと戻る。一方、記憶部185に記憶されている情報中に検出変化量と一致するものが見付かった場合、処理はステップS6へと進む。
ステップS6においては、感情判定部186は、検出変化量と一致する判定部位の表面温度の変化量に対応付けられて記憶部185に記憶されている感情が、当該対象者の感情であると判定する。そして、感情判定部186は、感情判定結果を出力手段である操作表示部190に送信する。操作表示部190は、感情判定結果を表示装置に表示する。このステップS6の処理が完了すると、一連の感情判定動作は終了となる。
なお、以上においては、感情判定装置を空気調和装置100に設けた例について説明したが、感情判定装置の設置方法はこの例に限られない。ただし、部位温度検出手段が対象者の判定部位の表面温度を非接触で確実に検出できるようにするためには、部位温度検出手段の人体センサ170の検出範囲内に対象者の全身が入ることができるように感情判定装置の設置することが好ましい。
このような設置方法の他の例としては、家庭用のルームエアコンの他に、業務用のパッケージエアコン、ハウジングエアコン、自動車用エアコン等の熱交換器による調和空気の生成が可能な装置、テレビ等の映情装置、建築物の室内又は自動車室内の天井面に設置される照明機器等に、感情判定装置を組み込むようにしてもよい。このようにすることで、既存の装置の筐体を利用して感情判定装置を設置することができる。とはいえ、感情判定装置を単体の装置として構成することは妨げられない。
また、以上で説明した例では、部位温度検出手段及び感情判定手段は空気調和装置100の筐体110に設けられている。そして、出力手段である操作表示部190は、例えば、空気調和装置100のリモートコントローラに設けられている。リモートコントローラのケースは筐体110とは異なる筐体であると見なすことができる。したがって、部位温度検出手段、感情判定手段及び出力手段のそれぞれは、2以上の筐体のいずれかに設けられている。
感情判定装置の部位温度検出手段、感情判定手段及び出力手段を別個の筐体に設けることで、1つの筐体で構成するより省スペースな感情判定装置とすることができる。例えば、表面温度検出手段は空調装置又は照明機器等の人の全身が検出可能な位置に配置される装置への組み込み、感情判定手段及び出力手段をテレビ等の映情装置に組み込むこと等が考えられる。
ただし、これらの部位温度検出手段、感情判定手段及び出力手段は、同一の筐体に設けられるようにしてもよい。例えば、感情判定手段による感情判定結果を表示する表示装置を空気調和装置100の筐体110に設けるようにしてもよい。
以上のように構成された感情判定装置は、対象者の人体の予め指定された1箇所以上の判定部位の表面温度を検出する部位温度検出手段を構成する人体センサ170、人体検出部183及び部位特定部184と、対象者の人体の判定部位の表面温度に基づいて、当該対象者の感情を判定する感情判定手段を構成する記憶部185及び感情判定部186と、感情判定手段の判定結果を出力する出力手段を構成する操作表示部190と、を備えている。
このため、人体の特定部位の表面温度という非接触で取得できる生体情報に基づいて、対象者の感情状態を判定することができる。したがって、対象者は、生体情報を取得するための装置を着用する等の必要がない。そして、装置着用等に伴う心理的、身体的ストレスを対象者に強要せずに済み、かつ、簡易な構成で精度よく対象者の感情を判定することが可能である。
実施の形態2.
図9及び図10は、この発明の実施の形態2に係るもので、図9は感情判定装置の制御装置の機能的な構成を示すブロック図、図10は感情判定装置の動作の流れを示すフロー図である。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、出力手段は、感情判定手段の判定結果を外部機器に送信する通信部を備えるようにしたものである。以下、この実施の形態2に係る感情判定装置について、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
この実施の形態2においても、感情判定装置が空気調和装置100に備えられている例について説明する。感情判定装置を備える空気調和装置100の基本的な構成は、実施の形態1で示した図1から図6と同様である。
図9に示すのは、実施の形態2に係る感情判定装置が設けられた空気調和装置100が備える制御装置180の構成である。この実施の形態2においては、制御装置180は、通信部189を備えている。通信部189は、感情判定装置が外部機器200との通信を行うためのものである。
外部機器200は、感情判定装置と通信可能に設けられている。感情判定装置の通信部189と外部機器200とは、有線方式又は無線方式により、もしくは、これらの通信方式の組み合わせにより、直接的に又は例えばインターネット等の通信ネットワークを介して情報の通信を行う。
外部機器200は、感情判定の対象者とは別の他者と当該対象者との間での通信が可能な機器である。外部機器200は、具体的に例えば、スマートフォン等の携帯電話、固定電話、パソコン、タブレット端末等である。
通信部189は、感情判定部186の判定結果が、対象者の感情が報知対象感情に該当するものである場合に、外部機器200へと報知を行う。報知対象感情は、例えば、前述した負の感情、「寂しい」、「悲しい」、「辛い」等の気持ちの落ち込み等に予め設定される。報知対象感情は、実施の形態1で説明した計数対象感情と同じであってもよいし、異なってもよい。このようにして、感情判定装置の出力手段は、対象者の感情が報知対象感情に該当するという感情判定手段の判定結果である場合に、外部機器200に報知を行う。
この際、出力手段の通信部189が感情判定手段の判定結果を外部機器200に報知する形態は、実施の形態1で説明したように、文字、数値、色彩及び画像の1又は複数の組み合わせとするとよい。また、外部機器200は、前述の他者に対して、感情判定手段の判定結果の報知を行ってもよい。この際の報知の形態も、同様に文字、数値、色彩及び画像の1又は複数の組み合わせとするとよい。
外部機器200は、出力手段の通信部189からの報知を受けた場合に、前述の他者と感情判定の対象者との間での通信を開始するようにするとよい。この際の通信では、通話等の音声データ、動画又は静止画等の画像データ、及び、メール等の文字データ等の任意のデータを送信することが考えられる。
親孝行として親に喜ばれる行為の1つとして、会話が挙げられる。そして、対面しての会話はもちろんのこと、電話等の通信媒体を介した会話でも喜ばれるとの調査結果がある。したがって、特に感情判定対象者が独居高齢父母、外部機器200を有する前述の他者がその子ども、孫等の親類である場合、対象者と他者との直接的なコミュニケーションにより、独居高齢父母の負の感情によるストレスを緩和する効果が期待できる。
さらに、通信部189は、計数部188による計数結果、又は、その集計結果、又は、記憶部185に記憶されている集計結果の過去の履歴を外部機器200へと送信するようにしてもよい。このようにすることで、感情判定対象者を見守る前述の他者が、対象者の感情状態をより詳しく把握することができる。
次に、図10を参照しながら、以上のように構成された感情判定装置を備えた空気調和装置100の感情判定動作の流れの一例を説明する。まず、感情判定動作を開始すると、人体センサ170は表面温度の検出を開始し、人体検出部183は、人体センサ170の検出結果に基づく人体の検出を開始する。そして、人体センサ170の検出結果に基づいて、人体検出部183が感情判定の対象者の人体を検出すると、ステップS11において、対象者の人体の判定部位の検出と判定部位の表面温度の検出を開始する。すなわち、このステップS11においては、まず、部位特定部184は、人体検出部183が検出した人体が存在する領域を特定する。そして、部位特定部184は、人体検出部183が検出した人体が存在する領域から、当該人体の各判定部位を特定する。ステップS11の後、処理はステップS12へと進む。
ステップS12においては、人体センサ170は、部位特定部184が各判定部位の表面温度の検出を開始する。人体センサ170は、各判定部位の表面温度を一定の時間間隔で検出する。人体センサ170が検出した各判定部位の表面温度は、記憶部185に時系列データとして記憶される。ステップS12の後、処理はステップS13へと進む。
ステップS13においては、まず、感情判定部186は、記憶部185に記憶した各判定部位の表面温度の時系列データに基づいて、各判定部位の表面温度の変化量を算出する。次に、感情判定部186は、算出した各判定部位のいずれかの表面温度の変化量すなわち前述の検出変化量が0でない、つまり、算出した各判定部位のいずれかの表面温度に変化があったか否かを確認する。各判定部位のいずれかの表面温度に変化がなければ、処理はステップS12へと戻る。一方、各判定部位のいずれかの表面温度に変化があれば、処理はステップS14へと進む。
ステップS14においては、感情判定部186は、表面温度に変化があった判定部位毎に、検出変化量と記憶部185に記載されている情報とを照合する。そして、処理はステップS15に進み、検出変化量と一致するものが記憶部185に記憶されている情報に存在しない場合、処理はステップS12へと戻る。一方、記憶部185に記憶されている情報中に検出変化量と一致するものが見付かった場合、処理はステップS16へと進む。
ステップS16においては、感情判定部186は、検出変化量と一致する判定部位の表面温度の変化量に対応付けられて記憶部185に記憶されている感情が、当該対象者の感情であると判定する。そして、感情判定部186は、判定した当該対象者の感情が前述の報知対象感情であるか否かを確認する。当該対象者の感情判定結果が報知対象感情である場合、処理はステップS17へと進む。
ステップS17においては、通信部189は外部機器200に通信接続する。そして、処理はステップS18へと進み、感情判定部186は、感情判定結果を出力手段である通信部189に送信する。そして、通信部189は、外部機器200に感情判定結果を報知する。このステップS18の処理が完了すると、一連の感情判定動作は終了となる。
一方、ステップS16で、当該対象者の感情判定結果が報知対象感情でない場合、処理はステップS17を経由せずにステップS18へと進む。この場合には、感情判定部186は、感情判定結果を出力手段である操作表示部190に送信する。操作表示部190は、感情判定結果を表示装置に表示する。このステップS18の処理が完了すると、一連の感情判定動作は終了となる。
以上のように構成された感情判定装置も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。さらに、他者によって、感情判定の対象者と離れた場所にいても当該対象者の感情状態を見守ることが可能である。
なお、この発明に係る感情判定装置の感情判定対象は人間に限られない。他に、哺乳類等の感情を有する犬、猫等の恒温動物を感情判定対象とすることが可能である。