以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電池パック700に用いられる電池セル100を示す図である。このような電池セル100としては、リチウムイオンが負極と正極とを移動することにより充放電が行われるリチウムイオン二次単位電池が用いられる。
電池セル100の電池本体部110は、複数のシート状正極と複数のシート状負極とがセパレーターを介して積層された電極積層体、および電解液(いずれも図示しない)が、平面視で矩形のラミネートフィルム外装材103内に収容された構造となっている。そして、電池本体部110の第1端部111からは、正極引き出しタブ120及び負極引き出しタブ130が引き出されている。
正極引き出しタブ120及び負極引き出しタブ130は、いずれも平板状で、ラミネートフィルム外装材103内において、それぞれ、シート状正極、シート状負極と直接またはリード体などを介して接続されている。ラミネートフィルム外装材103は、電池内側となる面に熱融着樹脂層を有する金属ラミネートフィルムにより構成されている。より具体的には、例えば2枚の金属ラミネートフィルムが重ねられてラミネートフィルム外装材103を構成し、シート状正極、シート状負極およびセパレーターを有する電極積層体や電解液を、内部に収容した状態でラミネートフィルム外装材の外周辺(第1端部111、第2端部112、2つの側端部113)が熱シールされることで、その内部が密閉されている。
シート状正極からは導電箔部(不図示)が延在しており、これらは正極引き出しタブ120に接続されている。また、シート状負極から導電箔部(不図示)が延在しており、これらは負極引き出しタブ130に接続されている。以上のような導電箔部(不図示)は、ラミネートフィルム外装材103内に収容されている。
ここで、正極引き出しタブ120や負極引き出しタブ130などのラミネートフィルム外装材103よりなる電池本体部110から引き出される金属片は、「引き出しタブ」と称することとし、ラミネートフィルム外装材103の内側でセパレーターや電解液などを介して積層されているシート状正極やシート状負極を「電極」と称する。
なお、電極積層体には、上記のように複数のシート状正極と複数のシート状負極とがセパレーターを介して積層したものの他に、シート状正極とシート状負極とがセパレーターを介し積層したものを巻回し、これが圧縮されることにより積層体をなすものも含まれる。
上記のような電池セル100においては、正極引き出しタブ120の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が、また、負極引き出しタブ130の材質としては、ニッケル、他の金属にニッケルメッキを施した材料(ニッケルメッキ材。例えば、ニッケルメッキをした銅など)、ニッケルと他の金属のクラッド(ニッケルクラッド材。例えば、ニッケル−銅クラッドなど)が一般的に用いられている。すなわち、電池セル100としては、アルミニウムを含む正極引き出しタブ120と、ニッケルを含む負極引き出しタブ130とを有する構成となっている。本実施形態においては、アルミニウム製の正極引き出しタブ120が、また、ニッケル製の負極引き出しタブ130がそれぞれ用いられている。
電池セル100のアルミニウムを含む正極引き出しタブ120と、他の導電性金属を直接的に接続させる構成では、金属間の電位差の問題により所定の年月が経過した後の導電性が劣化する可能性がある。
そこで、本発明においては、電池セル100の正極引き出しタブ120には、ニッケルを含む正極継ぎ足しタブ部材125を抵抗溶接或いは超音波溶着により接合しておき、電位差の問題による導電性劣化の問題を解決するようにしている。
このための構成についてより説明する。図1に示すように、電池連結構造体500を構成する上では、電池セル100におけるアルミニウム製の正極引き出しタブ120は第1端部111から長さaとされ、ニッケル製(或いはニッケルを含む材料製)の負極引き出しタブ130は第1端部111から長さb(b>a)とされる。
次に、長さaのアルミニウム製の正極引き出しタブ120に対しては、第1端部111からの長さがbとなるように、ニッケル製の正極継ぎ足しタブ部材125が抵抗溶接或いは超音波溶着などによって接合され、継ぎ足される(図2、図3参照)。
なお、以下、正極継ぎ足しタブ部材125が接合されて形成された引き出しタブ全体を、「正極引き出しタブ」と称することもある。図3に示すように、正極引き出しタブ120に、正極継ぎ足しタブ部材125が継ぎ足されることで、正極引き出しタブ全体としては、第1端部111からの長さがbとなる。
正極引き出しタブ120と、この正極引き出しタブ120に継ぎ足されている正極継ぎ足しタブ部材125とからなる正極の引き出しタブ全体は、本発明に係る電池パック700においては、電位検知タブ部材200と当接された状態で、電池連結構造体500が構成される。この電位検知タブ部材200は、ニッケル、又はニッケルを含む材料によって製造されている。
このように本発明に係る電池パック700においては、複数の電池セル100を直列に電気接続する上では、ニッケルを含む部材同士(継ぎ足しタブ部材125、電位検知タブ部材200)が接触するようにして、引き出しタブ同士が連結されているので、隣り合う単位電池(電池セル100)同士の電気接続部は、同種の金属材料による電気接続となり、電位差の問題がなく、年月の経過による導電性の劣化が発生することがほとんどなくなる。
次に、以上のように構成される電池セル100を複数積層し、隣接する電池セル100を電気的に接続した電池連結構造体500となし、これにより電池パック700を製造する方法について説明する。
以下、本実施形態では7つの電池セル100を積層して、これらを直列接続し電池連結構造体500となす場合を例に挙げ説明するが、本発明がこの場合に限定されるものではなく、本発明で電池セル100を積層する数は任意である。また、本発明で、電池セル100同士を電気接続する際、接続形態を直列接続とするか、並列接続するかなども適宜選択することができる。
図4は本発明の実施形態に係る電池パック700の製造工程を示す図である。図4は、7つ積層する電池セル100のうちの最初の電池セル100を準備する工程を示している。
図4は本発明の実施形態に係る電池パック700の製造工程を示す図である。図9は、7つ積層する電池セル100のうちの最初の電池セル100を準備する工程を示している。
図4の工程では、セル保護用の絶縁部材310を電池セル100の第1端部111側に配する。これにより、電池セル100を絶縁部材310により保護するようにしている。絶縁部材310としては、難燃性及び電気絶縁性を有するテープなどを用いることができる。電池セル100は、後述するようにタブ同士を、抵抗溶接などにより接合する工程を経るが、このとき絶縁部材310によって、ラミネートフィルム外装材103を有する電池セル100が保護される。
上記のように絶縁部材310取り付けた後、続いて、正極引き出しタブ120と負極引き出しタブ130との間において、タブ間保護緩衝部材314を設けるようにする。タブ間保護緩衝部材314は、正極引き出しタブ120と負極引き出しタブ130との間のラミネートフィルム外装材103を、挟み込むように2つ取り付けられる。タブ間保護緩衝部材314は直方体状の絶縁性の樹脂部材であり、材質としてはクロロプレンゴムが好適である。また、タブ間保護緩衝部材314を取り付ける際には、両面テープやアクリル系粘着材などの固定手段を用いることができる。
図5は絶縁部材310とタブ間保護緩衝部材314とが取り付けられた電池セル100の上面図である。また、図6は電池セル100にタブ間保護緩衝部材314が取り付けられる前(図6(A))と後(図6(B))の断面を示す図である。図6は、図5のx−x’断面を示している。
本発明に係る電池パック700において、特に、タブ間保護緩衝部材314と電極積層体とでラミネートフィルム外装材103が挟まれるように、タブ間保護緩衝部材314が配されていることが重要である。タブ間保護緩衝部材314が電池セル100に取り付けられた図6(B)には、タブ間保護緩衝部材314と電極積層体とでラミネートフィルム外装材103が挟まれた様子が示されている。
電極積層体を構成するシート状正極、シート状負極からは、導電箔部(不図示)が延在しており、これららは各極の引き出しタブに接続されている。本発明に係る電池パック700のように、タブ間保護緩衝部材314が設けられていると、導電箔部(不図示)に対する応力を緩和することができることを本発明者らは確認した。
電池パック700が衝撃や振動を受けることで、電池セル100のラミネートフィルム外装材103の中の電極積層体が移動し、この電極積層体の移動に伴い、導電箔部(不図示)が損傷を受ける可能性が高まる。これに対して、本発明によるタブ間保護緩衝部材314は、効率的に電極積層体の動きを抑制することができ、前記の導電箔部(不図示)に対する応力を緩和し、導電箔部近傍における保護をより確実に行うことが可能となる。また、タブ間保護緩衝部材314に用いる材質の硬度は、このような目的のために適切なものが選定される。タブ間保護緩衝部材314の硬度については後述する。
本発明に係る電池パック700は、前記正極引き出しタブ120前記と負極引き出しタブ130との間に、前記ラミネートフィルム外装材103と接触するタブ間保護緩衝部材314が配されており、このような本発明に係る電池パック700によれば、電池セル100におけるラミネートフィルム外装材103内の導電箔部近傍における保護をより確実に行うことが可能となり、電池パック700自体が耐振動性や耐衝撃性を向上させることができる。
上記のような絶縁部材310とタブ間保護緩衝部材314とが取り付けられた電池セル100は、電池パック700を構成する個数分準備されるが、偶数段に積層される電池セル100については、図7に示すものが用いられる。図5(奇数段溶)に示すものと、図7に示すもの(偶数段用)とでは、絶縁部材310が取り付けられる面が、異なっている。
次に、積層される電池セル100同士の電気接続について説明する。図8は本発明の実施形態に係る電池パック700の製造で用いるワイヤーハーネスの斜視図である。
図8に示すワイヤーハーネスのうち、電位検知タブ部材200は、電池セル100の引き出しタブと抵抗溶接などによって電気・物理接続されるものである。電位検知タブ部材200の全てには、当該電位検知タブ部材200自体の電位情報を取り出すために用いられる信号リード線230が接続されている。信号リード線230の電位検知タブ部材200が接続されていない方の端部には、コネクタ部材260が取り付けられており、コネクタ部材260から前記の電位情報が取り出せるようになっている。
また、積層される電池セル100のうち、最初の電池セル100の引き出しタブと、最後の電池セル100の引き出しタブに接続される電位検知タブ部材200には、電源線240が取り付けられており、直列接続された複数の電池セル100の電力が、当該電源線240から取り出せるようになっている。電源線240の電位検知タブ部材200が接続されていない方の端部には、電源端子部245が取り付けられており、電源端子部245から前記の電力が取り出せるようになっている。また、2つの電源線240のうち、高い電位で用いられる電源線の途中には、ヒューズ部243が挿入されている。
なお、以下、図面が煩雑となることを避けるために、電位検知タブ部材200における信号リード線230、電源線240を図示省略することがある。
電池パック700の製造手順に戻る。図9は本発明の実施形態に係る電池パック700の製造工程を示す図である。
これまで説明したように、電池セル100に絶縁部材310とタブ間保護緩衝部材314と、が付されると、次に、正極引き出しタブ120と正極継ぎ足しタブ部材125の上に、電位検知タブ部材200が載置される。図9に示す工程では、信号リード線230と電源線240とが半田接続された電位検知タブ部材200が用いられる。
図9で示す正極引き出しタブ120と正極継ぎ足しタブ部材125と電位検知タブ部材200とは、7つの電池セル100が直列接続された電池連結構造体500自体の正極となる。電源線240は電池連結構造体500の正極用のリード線として機能する。一方、信号リード線230は電池セル100の電位を検知するために利用される。
ここで、電位検知タブ部材200についてより詳しく説明する。図10は電池連結構造体500を製造する際に用いる電位検知タブ部材200を説明する図である。
図10(A)は電位検知タブ部材200のみを抜き出して示す図であり、図10(B)は信号リード線230と電源線240とが半田接続された電位検知タブ部材200を示す図であり、図10(C)は信号リード線230が半田接続された電位検知タブ部材200を示す図である。
本発明において、電池連結構造体500を組み立てる際には、電位検知タブ部材200としては、既に信号リード線230や電源線240が半田接続されている図10(B)や図10(C)に示すものが用いられる。これは、引き出しタブに電位検知タブ部材200を接合した後の工程で、信号リード線230や電源線240を半田接続すると、電池セル100内の活物質や電解液(いずれも不図示)に悪影響を及ぼしてしまうからである。
電位検知タブ部材200を構成する材料としては、ニッケル、他の金属にニッケルメッキを施した材料(ニッケルメッキ材。例えば、ニッケルメッキをした銅など)、ニッケルと他の金属のクラッド(ニッケルクラッド材。例えば、ニッケル−銅クラッドなど)が用いられる。
電位検知タブ部材200は平板の部材であり、電池連結構造体500の組み立て工程において、引き出しタブと重畳されることが想定されている基部210と、この基部210から突出する突出部220とを有している。
電位検知タブ部材200が引き出しタブと重畳される際、引き出しタブがラミネートフィルム外装材103から引き出されている方向と、平行な方向を基部210の長手方向として定義する。突出部220は、基部210の長手方向に対して、垂直に突出するようになっている。また、基部210の幅の長さ(長手方向に垂直な方向の長さ)は、各引き出しタブの幅の長さと、同じとされている。また、基部210の長手方向の長さは、一方の端部が、正極継ぎ足しタブ部材125の端部と揃って重ねられたとき、他方の端部が絶縁部材310と重なる程度の長さとされる。基部210の他方の端部が絶縁部材310と重なっている状態は図6に示されている。
電位検知タブ部材200の基部210は、正極引き出しタブ120と正極継ぎ足しタブ部材125とからなる正極のタブ全体と重ねられたり、或いは、負極引き出しタブ130と重ねられたり、或いは、正極のタブ全体と負極引き出しタブ130の両方と重ねられたりして、それらと抵抗溶接などによって電気的・物理的に接合される。
一方、電位検知タブ部材200の突出部220は、信号リード線230や電源線240との導電接続部として利用される。
電位検知タブ部材200の突出部220と接続されていない方の信号リード線230の端部は、コネクタ部材260の不図示の導電部と接続されている。
また、電位検知タブ部材200の突出部220と接続されていない方の電源線240の端部が、電池連結構造体500の正極の電源線として用いられる場合には、ヒューズ部243を介して電源端子部245と接続される。
また、電位検知タブ部材200の突出部220と接続されていない方の電源線240の端部が、電池連結構造体500の負極の電源線として用いられる場合には、直接電源端子部245と接続される。
電池連結構造体500の製造工程において、電位検知タブ部材200は、接合された各引き出しタブと共に、折り返されるようになっている。図10(B)、(C)には、組み立て工程で折り返される予定のラインが、点線にて示されている。引き出しタブや、電位検知タブ部材200を折り返す工程については後述する。
なお、本発明で用いるような電位検知タブ部材200を省略して組電池を製造しようとすると、単電池に予めリードが接続された状態になるので、積層する際に、リードが単電池の容器や異極と接触する可能性がある。また、それを防ぐには長いリードを取りまとめながら単電池を積層する必要があるため、生産性が低下してしまう。このようなことを防ぐためにも、電位検知タブ部材200が用いられたワイヤーハーネスを、電池パック700の組み立てに採用することが好ましい。
続く図11に示す工程では、正極引き出しタブ120と正極継ぎ足しタブ部材125の上に載置された電位検知タブ部材200が、正極継ぎ足しタブ部材125と抵抗溶接されて接合された状態となる。本実施形態では、タブ同士の接合に、抵抗溶接を用いたが、超音波溶接などのその他の接合方法を用いることもできる。
また、クッション部材として機能する第1端側セル間保護緩衝部材330が、正極引き出しタブ120、正極継ぎ足しタブ部材125、電位検知タブ部材200の下に、また、正極引き出しタブ120の上下に載置される。第1端側セル間保護緩衝部材330は、電気絶縁性、クッション性を備え、難燃性であることが好ましい。また、第1端側セル間保護緩衝部材330は、後述するb−cに相当する空間を埋めることがないようにする。
ここで、第1端側セル間保護緩衝部材330は、直方体状の絶縁性の樹脂部材であり、材質としてはクロロプレンゴムが好適である。タブ間保護緩衝部材314と同様の材質を用いることができる。また、必要に応じて、第1端側セル間保護緩衝部材330は、タブ間保護緩衝部材314とも一体化することができる。(タブ間保護緩衝部材314と第1端側セル間保護緩衝部材330とを一つの部材として、L字状やT字状の部材とすることもできる。)
図12に示す工程では、正極引き出しタブ120がラミネートフィルム外装材103から引き出されている方向と逆の方向に、正極引き出しタブ120、正極継ぎ足しタブ部材125、電位検知タブ部材200を折り返す工程を実施する。
図13に示すように、上記のような折り返し工程で、正極のタブ部材全体の長さは、第1端部111からcとなる。折り返された分のb−cに相当する空間が、以降の工程で電池セル100を積層する際に利用される。
前記折り返す工程で、正極引き出しタブ120、正極継ぎ足しタブ部材125、電位検知タブ部材200が折り返された際には、それぞれの先端部が、絶縁部材310に載置される程度となるように、各タブや絶縁部材310の寸法が規定されている。このような絶縁部材310により、引き出しタブやタブ部材等から、電池セル100のラミネートフィルム外装材103を保護することができる。
また、本発明に係る電池パック700においては、上記のような折り返し工程を、引き出しタブやタブ部材等に施すので、電池パック700の体積効率を向上させることができる。
また、本発明に係る電池パック700によれば、折り返し工程によって設けることができる空間によって、製造性も向上させることができ、歩留まりの向上を図ることもできる。
また、本発明に係る電池パック700においては、上記のような折り返し工程で、電位検知タブ部材200の突出部220の位置が折り返しにより変更されないように折り返しが実施される。(図10(B)、図10(C)の折り返し予定ラインも参照。)これにより、電位検知タブ部材200の折り返しによる、突出部220への応力などの影響がなく、従って、突出部220に接続されている信号リード線230や電源線240などへの影響もない。
また、図13を参照し、第1端側セル間保護緩衝部材330とタブ間保護緩衝部材314との間の配置関係をみてみる。タブ間保護緩衝部材314は、第1端側セル間保護緩衝部材330より、ラミネートフィルム外装材103中の電極積層体(不図示)に対して近接するようにして配置されている。より具体的には、図13に示す如く、タブ間保護緩衝部材314は、第1端側セル間保護緩衝部材330より、略dの長さ分、電極積層体(不図示)に対して近接している。このような配置によれば、前記の導電箔部(不図示)に対する応力を緩和し、導電箔部近傍における保護を行い得る。
図14に示す工程では、クッション部材として機能する第1端側セル間保護緩衝部材330を、正極引き出しタブ120、正極継ぎ足しタブ部材125、電位検知タブ部材200の上に載置する。
次に、電池セルを積層する工程を図15に示す。積層する電池セルにはプライム記号(’)を付して、1番目の電池セルと区別を図ることとする。
図15、図16に示す工程で、2番目の電池セル100’を、最初の電池セル100に積層する際には、ラミネートフィルム外装材103の本体部同士は、2条の両面接着テープ320を用いて固着する。
また、このとき、最初の電池セル100の正極引き出しタブ120の上には、2番目の電池セル100’の負極引き出しタブ130’がくるようにし、また、最初の電池セル100の負極引き出しタブ130の上には、2番目の電池セル100’の正極引き出しタブ120’と正極継ぎ足しタブ部材125’がくるようにする。
また、最初の電池セル100の負極引き出しタブ130と、2番目の電池セル100’の正極引き出しタブ120’、正極継ぎ足しタブ部材125’との間には、信号リード線(不図示)のみが半田接合されている電位検知タブ部材200’が配される。すなわち、3枚のタブ部材が鉛直方向から見て整列することとなる。なお、図15の3枚のタブ部材に示される×印は、抵抗溶接実施予定箇所を示している。
ここで、正極継ぎ足しタブ部材125’の端部と、電位検知タブ部材200’の端部と、負極引き出しタブ130の端部とが鉛直方向から見てほぼ揃っている(すなわち、全ての端部が、第1端部111からの長さがほぼbとなる)ようにする。
また、最初の電池セル100と、2番目の電池セル100’とを積層する上では、第1端側セル間保護緩衝部材330が図示するように取り付けられる。
続く図17に示す工程では、鉛直方向に揃った3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)を、上下から、抵抗溶接装置1000のアンビル部1010と、ホーン部1020とで挟み込み抵抗溶接を実施する。
図18は3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)の抵抗溶接工程と、折り返し工程とを示す図である。 図18はいずれも、電池セルのラミネートフィルム外装材から引き出された引き出しタブと、電位検知タブ部材とを側面から見た図である。
図18(A)は、図17に示した、抵抗溶接を施される3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)が、アンビル部1010と、ホーン部1020と間にセットされた状態を示している。
図18(B)は、抵抗溶接装置1000による溶接動作を実行し、3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)を抵抗溶接した様子を示している。
図18(C)は、抵抗溶接された3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)を抵抗溶接装置1000から取り出した様子を示す図である。
図18(D)は、抵抗溶接された3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)を、引き出しタブがラミネートフィルム外装材から引き出される方向と逆の方向に、折り返される工程を示している。
このような折り返し工程で、抵抗溶接された3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)の長さは、第1端部111からcとなる。図に示す、折り返された分のb−cに相当する空間が、以降の工程で電池セル100を積層しタブ部材同士を抵抗溶接する際、抵抗溶接装置1000のアンビル部1010とホーン部1020とが入り込む空間として利用される。
図19は、抵抗溶接された3枚のタブ部材(負極引き出しタブ130、電位検知タブ部材200’、正極継ぎ足しタブ部材125’)に、折り返し工程を施した様子を示している。
ここで、本発明に係る電池パック700の製造の概略を簡単に振り返る。図20乃至図26は本発明の実施形態に係る電池パック700の製造工程を模式的に示す図である。
一連の図において、電池セル100には、積層していこう順番に、「第1の」や「第2の」といった序数を付した。また、電池セル100から引き出される正極引き出しタブ120と、これに継ぎ足される正極継ぎ足しタブ部材125には(+)の記号を、また、電池セル100から引き出される負極引き出しタブ130には(−)の記号を付した。模式図による製造工程の説明では、(+)タブ、(−)タブなどと称する。
電池セルを積層する積層工程、また、電池セルのタブ部材同士を抵抗溶接で接続する接続工程、また、接続工程の後の折り返し工程についても、「第1の」や「第2の」といった序数を付した。また、煩雑となるので、電位検知タブ部材については図示省略した。
図20は、第1の電池セルを準備する工程を示しいている。第1の電池セルの(+)タブに、不図示の電位検知タブ部材を接続して、これらを折り返す。
図21は、第1の電池セルの上に、第2の電池セルを積層する工程(第1積層工程)を実施し、さらに第1の電池セルの(−)タブと、第2の電池セルの(+)タブと、不図示の電位検知タブ部材とを接続する工程(第1接続工程)を実施した様子を示している。
続いて、図22に示すように、第1の電池セルの(−)タブと、第2の電池セルの(+)タブと、不図示の電位検知タブ部材とを折り返す工程(第1折り返し工程)を実施する。
図23は、第2の電池セルの上に、第3の電池セルを積層する工程(第2積層工程)を実施し、さらに第2の電池セルの(−)タブと、第3の電池セルの(+)タブと、不図示の電位検知タブ部材とを接続する工程(第2接続工程)を実施した様子を示している。
続いて、図24に示すように、第2の電池セルの(−)タブと、第3の電池セルの(+)タブと、不図示の電位検知タブ部材とを折り返す工程(第2折り返し工程)を実施する。
図25は、第3の電池セルの上に、第4の電池セルを積層する工程(第3積層工程)を実施し、さらに第3の電池セルの(−)タブと、第4の電池セルの(+)タブと、不図示の電位検知タブ部材とを接続する工程(第3接続工程)を実施した様子を示している。
ここで、実際には抵抗溶接装置1000を用いて、第3接続工程を実施するが、この際、抵抗溶接装置1000のアンビル部1010やホーン部1020が入り込む空間は、第1折り返し工程により生じた空間を活用することができる。
このような空間を設けるためにも、図26に示すように、第3の電池セルの(−)タブと、第4の電池セルの(+)タブと、不図示の電位検知タブ部材とを折り返す工程(第3折り返し工程)を実施する。
以上のような電池パック700の製造においては、上記の一連の模式図で示したように、順次折り返し工程を実施していくことにより、電池セル間を接続するための空間を確保でき、電池セル間を効率的に接続することが可能となる。このように、本発明に係る電池パック700では、電池セル間を接続するための基板などの余計な部品を要することもないし、また、余計な部品に伴う、製造上の手間やコストも削減することができる。
以上のような、積層工程→接続工程→折り返し工程を繰り返すことで、本実施形態においては、7番目の電池セル100を積層し、7番目の電池セル100の負極引き出しタブ130の上に、信号リード線230と電源線240とが半田接続された電位検知タブ部材200を載置する。
さて、図19に示すような折り返し工程が実施されると、続いて、図27に示すように、第1端側セル間保護緩衝部材330が取り付けられる。
続いて、本実施形態においては、3番目の電池セルが積層される前に、セル間補強部材370を介挿するようにしている。このセル間補強部材370には、比較的合成が高い合成樹脂製の絶縁部材を用いることができる。
電池セル100のラミネートフィルム外装材103は柔軟性があるために、電池セル100の積層数を増して重量を増加させると、耐振動性が大きく低下するおそれがある。そのため、セル間補強部材370を電池セルの間に設けるようにしている。
このようなセル間補強部材370は、電池セルの積層数で3層ごとか、または、3層以下の任意の間隔で設けられるようにすることが好ましい。また、セル間補強部材370は、電池セルの側面も保護できるように、側板部377を設けることも好ましい実施形態である。
本実施形態においては、セル間補強部材370は、電池セル100に狭持されるように配される平板部373と、この平板部373の対向する両側縁において、屈曲部375で折れ曲がり、平板部373から垂直に延在する2つの側板部377とを有する構造なっている。すなわち、本実施形態において、セル間補強部材370は断面コ字状をなすようになっている。この場合、積層方向の上側又は下側の電池セルの側面を、側板部377によって保護することができる。
一方、セル間補強部材370には断面H字状のものを採用してもよい。この場合、積層方向の上側及び下側の電池セルの側面を、側板部377によって保護することができる。
さて、上記のようなセル間補強部材370を2つ階層させ、図29及び図30に示すように、7つの電池セル100を積層して、電池連結構造体500の基本構造を得る。図20は第1端側セル間保護緩衝部材330の取り付けを示しており、図30は、電池パック700としてのマイナスの電源線240を含むタブ部材等の折り返し工程を示している。
図31に示す工程では、複数の電池セル100の第2端部112側には、難燃性を有するクッション部材である第2端側セル間保護緩衝部材340を複数取り付ける。この第2端側セル間保護緩衝部材340には、第1端側セル間保護緩衝部材330と同様の材質のものを用いることができる。
図32は、上記のようにして完成した電池連結構造体500を示す図である。図32(A)は電池連結構造体500の上面図であり、図32(B)は電池連結構造体500の側面図である。
次に、以上のような電池連結構造体500を、電池パック700のケース体に収容する際には、電池連結構造体500を保護するようにこれを梱包した電池梱包体600となす。このような電池梱包体600の構成を図33により説明する。
電池連結構造体500において、第1端側セル間保護緩衝部材330の間で、タブ間保護緩衝部材314が配された箇所は、凹みのようになっているが、この凹みには、第1位置安定緩衝材501が配される。
この第1位置安定緩衝材501は直方体状の絶縁性の樹脂部材であり、材質としてはクロロプレンゴムが好適である。ただし、第1位置安定緩衝材501に用いる材質の硬度は、タブ間保護緩衝部材314に用いる材質の硬度より高く設定される。
タブ間保護緩衝部材314は、ラミネートフィルム外装材103内に収容されている導電箔部(不図示)の保護機能を主として期待しており、これに対して、第1位置安定緩衝材501には、保護機能の他に電池連結構造体500の位置決め的な機能も期待される。このために、(第1位置安定緩衝材501の硬度)>(タブ間保護緩衝部材314)とされる。
なお、後述する第2位置安定緩衝材552も、第1位置安定緩衝材501と同様の材質・機能であり、(第2位置安定緩衝材552)>(タブ間保護緩衝部材314)とされる。
すなわち、本発明に係る電池パック700においては、
(第1位置安定緩衝材501の硬度)=(第2位置安定緩衝材552)>
(タブ間保護緩衝部材314の硬度)=(第1端側セル間保護緩衝部材330の硬度)=(第2端側セル間保護緩衝部材340の硬度)
の関係で硬度の設定が行われ、実際、このような硬度の設定を行うと、電池パック700の耐衝撃性・耐振動性が向上することが確認された。
さて、電池梱包体600の構成に戻り、第1位置安定緩衝材501は両面接着テープ511を介して第1端側補強板521と固着される。また、第1端側補強板521は、ポリエステル基材からなる接着テープ531によって覆われるようにして固定される。また、接着テープ531の外方には第2位置安定緩衝材552が配される。
また、電池連結構造体500には、両面接着テープ515を介して、合成樹脂製の第1面側補強板525が貼着される。また、電池パック700のケース体に収容される際には、ポリカーボネート製の第1面側スペーサー545が配される。
また、電池連結構造体500には、両面接着テープ516(不図示)を介して、合成樹脂製の第2面側補強板526が貼着される。また、電池パック700のケース体に収容される際には、ポリカーボネート製の第2面側スペーサー546が配される。
また、電池連結構造体500には、両面接着テープ512(不図示)を介して、合成樹脂製の第2端側補強板522が貼着される。また、電池パック700のケース体に収容される際には、クロロプレン製の第2端側スペーサー542が配される。
また、電池連結構造体500の両側面は、ポリエステル基材からなる接着テープ533、534によって覆われるようにして固定される。また、電池連結構造体500の周囲は、絶縁樹脂製の環状包囲樹脂テープ567によって包囲され固定される。
図33は、概略、上記のように構成される電池梱包体600が、第1ケース体670及び第2ケース体680に収容されて、本発明に係る電池パック700とされる工程を図示している。
第1ケース体670には、BMU(バッテリーマネジメントユニット)基板690が取り付けられており、このBMU基板690に設けられている基板側電源端子部695と、電池梱包体600側の電源端子部245とが結合されて、電池梱包体600がケース体内に収容される。
以上のような本発明に係る電池パック700は、前記正極引き出しタブ120前記と負極引き出しタブ130との間に、前記ラミネートフィルム外装材103と接触するタブ間保護緩衝部材314が配されており、このような本発明に係る電池パック700によれば、電池セル100におけるラミネートフィルム外装材103内の導電箔部近傍における保護をより確実に行うことが可能となり、電池パック700自体が耐振動性や耐衝撃性を向上させることができる。