以下、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る椅子は、オフィスや家庭にて好適に使用することができる事務用回転椅子と称されるものである。
当該椅子は、図1〜図8に示すように、床面から立設される脚1と、この脚1の上方に設けられた座3と、この座3に一体的に形成されている背4とを主に有している。
脚1は、平面視放射状に形成された脚羽根11と、この脚羽根11の下側に取り付けられ床面に転動可能に接地するキャスタ12と、脚羽根11の中央から立設される脚支柱13と、この脚支柱13に内装されて座3を昇降可能に支持する上下昇降機構であるガススプリング14と、脚支柱13の上端近傍において、脚支柱13に対しガススプリング14のロッドを相対回転可能として座3を水平回転可能に支持する回転支持機構16とを有している。ガススプリング14上端に設けられたプッシュボタン17を操作レバー17aで押圧することにより、ガススプリング14を伸縮させて座3の上下位置を調節することが可能とされている。
座3は、本実施形態では背4と一体的に形成された板状をなす座本体30を主体とし、この座本体30の上面を座面3aとしつつ、下面側が後述する座受22tに取り付けられる。
ここで本実施形態に係る椅子は、脚1と座3との間に介在した支持装置2が、座3の下方に配置され、少なくとも前後方向の2箇所及び前後方向に延びる1つの軸mによって所定の軌跡に沿って座3を移動可能に支持する。また、座3が移動するに従い座3の移動方向先端側を下向きに傾斜させる座傾斜機能たる座傾斜機構Qを備え、図6及び図9に示す座3の基準位置Sから図7及び図8に示す前後方向又は図10に示す左右方向に移動した座3を基準位置Sへ戻す方向の復帰力を移動量に応じて発生させる復帰力発生装置P(P1、P2)をさらに備える。
支持装置2は、脚1の上端部分に配した支持基部10と座3の下面との間に構成されている。具体的には、支持基部10および座3の間に介在する左右揺動部21および前後揺動部22と、支持基部10と左右揺動部21の間に構成されて座3を左右方向に動作可能に支持する前後に一対の左右支持機構23と、座3と左右揺動部21の間に構成されて座3を前後方向に動作可能に支持する左右一対の前後支持機構24(F、R)とを備える。すなわちこれら左右支持機構23および前後支持機構24は平面視重複する位置に重ねられ且つそれぞれ独立して別体に構成されている。そして本実施形態では前後支持機構24が左右支持機構23の上に位置していることから、この前後支持機構24によって前後に揺動する前後揺動部22に座3及び背4が取り付けられている。すなわち、前後揺動部22は左右の側壁22sの上端間に座受22tが取り付けられており、この座受22tに座3の下面が取り付けられている。勿論、後述する他の実施形態のように左右支持機構が前後支持機構の上に位置している場合は、左右支持機構によって左右に揺動する左右揺動部に座及び背が取り付けられてもよい。
左右支持機構23は、座3を図4および図5に示すように左右方向に傾斜可能に支持するためのものであり、図2〜図4等に示すように、左右揺動部21の下半分の領域に突出させた突出部21aと支持基部10の前後壁10aとを、各々に設けた穴21b、10bを前後方向の軸mを構成する軸部材たる軸部材V10を用いて左右方向の中心位置で接続することにより構成されている。このように、左右支持機構23は前後2箇所に分かれており、支持基部10内においてその間の空間に上下昇降機構であるガススプリング14の上端部が挿入されている。すなわち、側面視において前後2箇所の左右支持機構23、23の間に上下昇降機構であるガススプリング14が配置されている。
前後支持機構24は、座3を図6〜図8に示すように前方へ8°程度、後方へ10°程度傾斜させ得るよう支持するもので、座3の前部を支持する前支持部24(F)と、座3の後部を支持する後支持部24(R)とから構成される。
前支持部24(F)は、左右揺動部21に取り付けられるフォロワ21cと、前後揺動部22の左右の立壁22sに形成されるガイド孔22aとを備え、ガイド孔22aとフォロワ21cを相対移動させるように構成される。このフォロワ21cは、本実施形態ではベアリングが採用してある。ガイド孔22aにおいてフォロワ21cに接する面がガイド面である。そしてガイド面は、あらかじめ設定された所定の軌跡に沿うべく上向きの山形形状をなしている。ガイド面は必ずしも孔のように閉じているものに限らず、貫通していない穴状のものであっても構わない。
一方、後支持部24(R)は、前後揺動部21に左右揺動部22を懸吊支持させるための後リンク24aによって構成されている。後リンク24aには、上端部を左右揺動部21の後部に枢着されるための上懸吊軸24bと、下端部を前後揺動部22の後部に枢着されるための下揺動軸24cとが設けられている。そして、図6に示す座3の基準位置Sでは揺動可能な後リンク24aは下揺動軸24cの接続先である座3や背4といった椅子の上側の部分の自重を受け、スライド可能なフォロア21cはガイド孔22aにおける適宜の遊動位置にあって、これら前支持部24(F)と後支持部24(R)によって支持された状態で座3及び背4を含む可動部の重心位置Omは最も低い位置となる。
よって、図6の状態から座3等が図7の方向に移動しても図8の方向に移動しても、重心位置Of、Obは基準位置Sにおける重心位置Omよりも高くなり、重力に反する動作となる。つまり、座3の動作時には自ずと基準位置Sへ戻す方向の重力による復帰力が掛かる。すなわち本実施形態ではフォロア21c、ガイド孔22a及び後リンク24aが、復帰力発生装置Pのうち後方向へ移動した位置から基準位置に向かって前方向に復帰する復帰力を発生する前方向復帰機構および前方向へ移動した位置から基準位置に向かって後方向に復帰する復帰力を発生する後方向復帰機構を兼ねた前後方向復帰機構P1であり、基準位置(S)からの座3の動作に伴い座3の重心Gを上昇させる重心移動機構によって実現されている。加えて同図において前後に動作した座面3aは、動作先端側が下降する姿勢となっている。これは後リンク24aの姿勢および当該後リンク24aの前側でフォロワ21cと相対動作するガイド孔22aの形状に起因するものである。すなわち本実施形態では、フォロア21c、ガイド孔22aおよび後リンク24aが、座傾斜機構Qの役割を担っている。
そして本実施形態では、斯かるガイド孔22aの上向きの山形形状を、図6に示すように基準位置Sを含む一定の動作範囲を第1領域22a1とし、その動作範囲を超えて動作端近傍に至る範囲を第2領域22a2とした場合に、第1領域22a1では基準位置Sから座3及び背4が前後に移動してもフォロワ21cを介し後リンク24aと協働して座3の高さ方向への重心移動を小さく抑えつつ(したがって基準位置Sへの復帰力を小さく抑えつつ)座3を基準位置Sから離れる方向へガイドし、図7及び図8に示す第2領域22a2に入るとフォロワ21cを介し後リンク24aと協働して座3の高さ方向への重心移動をより大きくしつつ(したがって基準位置Sへの復帰力をより高めつつ)座3を基準位置Sから離れる方向へガイドするように設定されている。すなわち本実施形態では、これら第1領域22a1から第2領域22a2へとフォロワ21cが従動するに従い、座3の動き易さが復帰力の増大により徐々に緩慢になるように構成することにより、緩慢部を構成している。換言すれば、前記緩慢部は、第1領域22a1と第2領域22a2の境界位置から当該第2領域22a2に亘る部分からなる。第1領域22a1及び第2領域22a2は連続性のものであるため境界位置は明示し難いが、座3の高さ方向への重心移動率が低から高へ切り替わる位置をもって境界位置と捉えることができる。
重心移動の軌跡から見ても、仮に重心が図7の下図に破線で示す軌跡を辿ると、最初に重心移動が大きいために動きにくく、途中から重心移動が小さくなって動きやすくなるため、着座していて移動終端付近で怖い印象を受けることも考えられるが、本実施形態では同図に実線で示す軌跡を辿るように構成してあり、最初に重心移動が小さく途中から重心移動が大きくなるため、移動終端近傍で着座者の安心感を得ることができる。図8の下図も同様である。
なお本実施形態ではガイド孔22aの前後の動作端においては座3の傾斜角度をほぼ一定に保ちながら急峻に座3を持ち上げるように案内することで、前フォロワ21cが前後ガイド孔22aの端面に接触して生じる衝撃を防ぐショックレス部Rを構成している。これにより、動作端での動作エネルギーは位置エネルギーに変換され、前フォロワ21cとガイド孔22aの端面との衝突を回避せしめている。
ショックレス部Rを構成するかわりにゴム等弾性部材を追加して接触による衝撃を吸収するようにしても良い。
なお、後支持部24Rを前支持部24Fとともにガイド孔とフォロワによって構成してもよく、前支持部24Fを後支持部24Rとともにリンクによって構成することもできる。
すなわち本実施形態では、前後左右に自由に動作する座3の動作距離について、図6〜図8に示す前後方向の距離が図4及び図5に示す左右方向の距離よりも大きくなるように設定している。更に具体的には座3の前後方向の動作角度に関し、図7に示す前方向の角度よりも図8に示す後方向の方が大きくなるように設定している。
これにより前後左右方向の座面3aの動きが、あらかじめ設定された所定の軌跡に沿うように構成されている。この所定の軌跡とは、本実施形態では基準位置Sを中心として座3が前方へ8°、後方へ10°傾斜し得る動作範囲に沿って形成される。
一方、復帰力発生装置Pのうち基準位置Sから左右方向に移動した座3を基準位置Sに復帰させるための左右方向復帰機構P2は、図2及び図9に示すように一対の弾性体すなわちコイルバネ25、25を用いた弾性体復帰機構が用いられている。具体的には、支持基部10は上方に開放された箱体状のもので、この支持基部10の側壁10c、10c間にコイルバネ25、25が伸縮方向に沿って直列に圧縮状態で内装され、コイルバネ25、25間に一対のリテーナ25R、25Rが接続部25cに接続された状態で介在されている。一方、左右揺動部21からは押圧部21xが内向きに突設されてリテーナ25R、25R間に挿入されている。すなわち、コイルバネ25、25は伸縮方向の一端が支持基部10の側壁10cに当接し他端がリテーナ25Rに当接した状態となるように圧縮状態で配されており、図9に示すように、左右揺動部21が基準位置Sにあるときに、左右のコイルバネ25、25は同等に圧縮された状態となるように構成されている。
図10では、左右のコイルバネ25、25の弾性力が拮抗する所定の基準位置Sから左方向に動作したときの座3の挙動を示している。図10に示すように、着座者が左右に重心を移動させると、左右支持機構23により座3が左に動作し、左側のコイルばね25に復帰方向の弾性力が蓄積される。このとき、左右支持機構23の軸m回りに座3が回動しているため座3が倒れようとするモーメントが増加するが、そのモーメントに対して蓄積されたコイルバネ25の弾性力が抗力となって吊り合うように構成される。すなわち本実施形態では、左右のコイルバネ25、25が復帰力発生機構のうち左右方向の復帰力を発生させる左右方向復帰機構P2を構成する。また、回転に伴って動作先端側が下降するため、本実施形態では左右支持機構23が、座傾斜機構Qの役割も担っている。また、回転支点となる前後方向の軸mは座3から遠い位置にあるため、座3が左方向に進みながら傾斜するので、座3の左右位置が変わらないまま傾斜する場合と比べ、足がつかえることのないスムーズな動作を実現できる。所定の基準位置Sから右方向に動作したときも同様である。
図7及び図8では、座3が、ガイド面を形成するガイド孔22aとフォロワ21c、後リンク24aにより設定された所定の基準位置(S)にあるときと、この基準位置(S)から前方向又は後方向に動作したときの当該座3の挙動を示している。同図に示すように、前後支持機構24により座面3aが前後に動作したとき、前後の支持点すなわちフォロワ21cの位置と後リンク24aの支持点すなわち下揺動軸24cの間にある座3の重心位置が基準位置(S)にあるときの重心位置Omから前方向へ移動した際の重心位置Ofにおいても後方向に移動した際の重心位置Obにおいても若干上昇するように、ガイド孔22aの位置や形状、後リンク24aの長さや角度が調整されている。加えて同図において前後に動作した座面3aは、動作先端側よりも動作基端側の方が相対的に上になるようにガイド面22aの位置および形状、リンクの長さおよび角度が調整されており、その結果、動作先端側が下向きに傾斜する姿勢となっている。すなわち本実施形態ではこのガイド孔22aおよびフォロワ21c、リンク25bが、座傾斜機構Qの役割も担っている。
続いて図11及び図12では、座3の前傾時における着座者の特に下半身の挙動について説明する。通常着座者が着座時に椅子を前傾(或いは後傾)させると、同図に示すように膝NE、足首AN、臀部近傍HPのうち、特に足首ANを主たる回動支点として動こうとする。しかしながら従来の椅子では、座3が前傾する際に前後位置がほぼ変わらないので、下腿(NE−AN)の角度も垂直のままとなり、座3と地面との間で下腿がつかえて膝NEを下げることができないため前傾姿勢をスムーズにとることができなかった。
そこで本実施形態に係る椅子は、同図に示すように座3の前傾時に座3が前に進みながら前傾する動作としたため、着座者の足が足首AN、膝NEで屈曲することで膝NEが下がり、座と地面との間で下腿がつかえることなく前傾姿勢をスムーズにとることができる。
なお、図5に示す肘Nを取り付けるにあたり、左右揺動部21に前後揺動部22が支持されていることに鑑みて、肘Nを支持基部10に取り付けて固定するようにしている。
以上のように、本実施形態に係る椅子は、床面から立設される脚1と、脚1の上方に設けられた座3と、脚1と座3との間に介在する支持装置2とを備え、支持装置2が、座3の下方に配置され、座3を少なくとも前後方向の2箇所で所定の軌跡に沿って移動可能に支持する前後支持機構24と、座3の下方に配置され、座3を少なくとも左右方向に正面視で左右中央位置に設けた前後方向の1つの軸m回りに回動可能に支持する左右支持機構23とを有し、支持機構24、23の何れも座3が所定の基準位置Sから移動するに従い座3の移動方向先端側を下向きに傾斜させる座傾斜機能を備えるとともに、基準位置Sから後方向又は左右方向に移動した座3を基準位置Sへ戻す方向の復帰力を移動量に応じて発生させる復帰力発生装置Pをさらに備えたことを特徴とする。
このようなものであれば、着座時の着座者の姿勢を好適に維持するのみならず、着座中の着座者の動きをも好適にサポートし得るものとなる。
具体的には、着座者が後ろに重心を移動させると座3は後ろに移動しながら後傾し、着座者が前に重心を移動させると座3は前に移動しながら前傾するが、前後方向の2箇所で移動可能に支持されているため、バランスがとれず倒れてしまうこともなく、足で踏ん張ってバランスをとる必要がない。
着座者が左右に重心を移動させると、左右中央位置に設けた前後方向の1つの軸m回りに座3が回動するため座3が倒れようとするモーメントが増加するが、基準位置Sへ戻す復帰力も同時に増加するため、それを抗力としてバランスさせる設計が容易となる。
しかも、座3が前後方向の2箇所に設けた支持箇所の間に重心が位置する限り、前後方向と左右方向にそれぞれ適した軌跡でガタツキ無く動作させることができるため、執務椅子のように前への動作と後ろへの動作で着座者の体の動きが異なっても、或いは前後への動作と左右への動作で着座者の体の動きが異なっても、着座者の体の動きに適切に対応したサポート状態を実現することができる。
また、着座者が足で踏ん張ってバランスをとる必要性がないため、足の負担が軽減するとともに、脚1の下端がキャスタ12で支持されていてもキャスタ12が逃げるおそれがなく、椅子の安定した利用が可能となる。
さらに、かかる支持装置2であれば、着座者が着座する度に座及び脚が沈み込むこといった不具合を生じることもなく、支柱の下端を床に接地させて回動させる場合のような不都合を伴うこともない。
また、上記の前後支持機構24によって支持された座3は、着座者が前に重心を移動させると座3が前に進みながら前傾するため、座3の前後位置が変わらないまま前傾する場合と比べて、着座者の下脚が膝関節で屈曲することができ、足がつかえることのないスムーズな動作を実現できる。
以上によりこの椅子は、座面3aが傾くと傾いた方向に座3が移動するため、着座者の体の動きに極めて良好にフィットし、着座時の着座者の人体の構造に起因する動作傾向を踏まえた上で当該動作を好適にサポートし得る椅子を構成することができる。その結果本実施形態によれば、着座者が長時間着座していても快適な着座感を得ることができ、ひいては高い作業効率を安定して維持し得る椅子を提供することができる。
また、座3が移動するに従い当該座3を基準位置Sに戻そうとする復帰力が働くため、着座者はロッキングチェアに着座しているがごとくゆらゆらとした心地良さを得ることができる。
以上において左右支持機構23は、前後2箇所に分かれて配置されているため、昇降機構13を構成するガススプリング14等の周辺機構部品との干渉を極力回避しつつ簡素な構成を実現するとともに、軸mを極力低い位置に、すなわち座3から遠い位置に設定することができ、座3が左右に進みながら傾斜するので、座3の左右位置が変わらないまま傾斜する場合と比べて、着座者の足がつかえることのないスムーズな動作を実現する。
また左右方向復帰機構P2が、基準位置Sからの座3の動作に伴い弾性力を蓄積する弾性体たるコイルバネ25を用いた弾性体復帰機構であるため、簡素な構造を通じて移動量に応じた復帰力を蓄積するとともに、左右揺動部21を軸mの周りに円滑に揺動させつつ座3を基準位置Sに復帰させることができる。
また、前方への復帰力を発生させる前後方向復帰機構P1を、基準位置Sからの座3の動作に伴い座3の重心を上昇させる重心移動機構によって実現しているため、前後方向の復帰力発生機構をより簡素な構成にて実現することができる。この場合、発生する復帰力は着座者の体重に応じて変化する為、着座者にとって好適な復帰力を得ることができる。すなわち、体重が軽ければ小さい復帰力が得られ、体重が重ければ大きい復帰力が得られるという体重感知機能を備えることになる。この実施形態では、基準位置Sから前方向に移動した座3を基準位置Sへ戻す際の後方向への復帰力を前記前後方向復帰機構P1が発生させる際も同様である。
また、本実施形態では座3の上下昇降機構としてガススプリング14を採用しているが、座3がガススプリング14の上方に設けられて、支持装置2がガススプリング14と座3との間に介在しているため、かかる支持装置をガススプリング14と融合した複雑な構造とせずにコンパクトに構成することができる。
また支持装置2を、所定の軌跡に沿って座3を少なくとも前後方向および左右方向にそれぞれ独立して動作可能に支持するようにしているため、座3の前後左右の動作をそれぞれよりスムーズかつ適切に行い得るようにすることができる。
また座3の動作距離を、後方向が左右方向よりも大きくなるように設定したり、前傾方向よりも後傾方向の方が大きくなるように設定しているため、着座者の動きに座3の動きを適切に対応させることができる。
ここで、動作距離は、動作範囲内での最大移動距離をいう。以下同様である。
また、脚1に対し座3を水平方向に回転可能に支持する回転支持機構16を設けているため、作業中の着座者の動作により好適に追従し得るようにすることができる。
また、前後支持機構24と左右支持機構23が別体に構成され、復帰力発生装置Pを、後方向から基準位置Sへの復帰は勿論のこと前後方向から基準位置Sへの復帰力を発生させる前後方向復帰機構P1および当該前後方向復帰機構P1とは別体に構成された左右方向の復帰力を発生させる左右方向復帰機構P2を有するものとしているため、着座者の快適な着座姿勢を維持する支持装置2を具体的に実現することができる。
また、前後支持機構24および左右支持機構23を平面視重複する位置に重ねて設けているため、椅子全体を平面視においてよりコンパクトに構成することができる。
また、左右方向よりも前後方向への動作量の変化が大きく、且つ動作を頻繁に行う着座者の挙動に鑑み、前後支持機構23を左右支持機構24よりも上に設けて、より着座者に近く位置付け、この前後支持機構23によって前後方向に揺動する前後揺動部22に座3及び背4を取り付けるようにしているため、簡素な構成で背の傾動機構を構成することができ、ひいては着座者の動きに対してより自然に追随させ得るようにすることができる。この場合、前後支持機構24が左右支持機構23よりも上方であるとは、構造的な上下関係を言う場合のほか、支持する側を下、支持される側を上という支持関係の主従を言う場合がある。
また前後支持機構22を、所定の軌跡に沿ってガイド面が形成されるガイド孔22aと、このガイド孔22aのガイド面に追従した相対動作を行うフォロワ21cとを有したものしているため、正確且つ安定した動作をし得る前後支持機構22を構成することができる。
また前後支持機構24を、フォロワ21cの動作端に近接するに従いフォロワ21cの動作を緩慢にする緩慢部を有したものにしているため、座3の急な動作によって着座者に不要な「怖さ」や違和感を与えることを防止することができる。
また前後支持機構24の緩慢部の端部Rが、動作端におけるガイド孔22aのガイド面の端部とフォロワ21cとの衝突による衝撃を回避または吸収するショックレス部としても機能することになるため、座の急な動作に起因する不要な衝撃や騒音を着座者に与えないようにすることができる。
また前後支持機構24を、所定の軌跡に沿って動作端が動作し得るリンク部材たる後リンク24aを有したものにしているため、着座者の動作に応じたスムーズな動作を実現することができる。
また脚1は、床面に転動可能に接地するキャスタ12を有しているため、椅子の移動のし易さを実現することができる。つまり特表平10−513374号公報のように着座時に床面に対して摩擦力によりグリップしてしまう要素が接地してしまうものであると、座ったまま移動することができないという問題があったが、本実施形態では、着座時において座3が傾斜した状態であってもキャスタ12には水平方向の力が加わり難いことから別途床面に対し摩擦力を発生させるものも必要がなく、その結果、所要のときには着座者は座ったまま移動することができる。
また、肘Nを取り付けるにあたり、左右揺動部23に前後揺動部22が支持されていることに鑑みて肘Nを支持基部Nに取り付けて固定するようにしているので、肘Nが左右に揺れることで着座者に不安を与えることを回避することができる。
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、図13〜図16を参照して説明する。
この椅子も、床面から立設される脚101と、脚101の上方に設けられた座103と、脚101と座103との間に介在する支持装置102とを備え、支持装置102が、座103の下方に配置され、座103を少なくとも前後方向の2箇所で所定の軌跡に沿って移動可能に支持する前後支持機構124(F、R)と、座103の下方に配置され、座103を少なくとも左右方向に正面視で左右中央位置に設けた前後方向の1つの軸m2の回りに回動可能に支持する左右支持機構123とを有し、何れの支持機構124、123も座103が図13及び図14に示す所定の基準位置S2から移動するに従い当該座103の移動方向先端側を下向きに傾斜させる座傾斜機能たる座傾斜機構Q2を備えるとともに、基準位置S2から前後方向又は左右方向に移動した座103を基準位置S2へ戻す方向の復帰力を移動量に応じて発生させる復帰力発生装置P´をさらに備えている。
前後支持機構124のうち前支持部124(F)はガイド面を形成するガイド孔122aとフォロア121cの係合構造である点、後支持部124(R)は後リンク124aを用いたものである点、復帰力発生装置P´を構成する左右方向復帰機構P102がコイルバネやウレタン等の弾性体125に弾性力を蓄積する弾性体復帰機構である点、前後方向への復帰力を発生する前後方向復帰機構P101が基準位置S2からの座103の動作に伴い図14に示すように座103の重心位置をOmからOf、Obという具合に上昇させる重心移動機構である点で第一実施形態と同様である。
ただしこの実施形態では、前後支持機構124が左右支持機構123よりも下に設けられており、左右支持機構123によって左右に揺動する左右揺動部121に背104と一体をなす座103が取り付けられている。
具体的には、支持基部110に前後支持機構124を介して前後揺動部122が取り付けられ、前後揺動部122に左右支持機構123を介して左右揺動部121が取り付けられている。前後支持機構124の前支持部124(F)を構成するフォロア121cは支持基部110に取り付けられ、このフォロア121cに、前後揺動部122に設けたガイド孔122aのガイド面が接している。また、後支持部124(R)を構成する後リンク124aの上懸吊軸124bは支持基部110に取り付けられ、下揺動軸124cが前後揺動部122を吊り下げ支持している。
一方、左右支持機構123は、前後揺動部122より上方に突出した前後一対のブラケット123a、123aと、これらのブラケット123aに軸m2を構成する軸部材123bを介して前後壁部123c、123cを軸支された可動座受123dとからなり、軸部材123bは分離しておらずブラケット123a、123a間で連続して1本で構成され、この可動座受123dに座103の下面が取り付けられている。
すなわち、左右支持機構123の軸m2を構成する軸部材123bが前記実施形態に比べて座103に近い高さ位置にあり、同じ回転角度でも座103の水平方向移動量が小さい。逆を言えば、僅かな移動で座103の左右方向への傾動角度が大きく変わる。このことから、左右方向へ揺れた際の着座感は前記第一実施形態とは異なるものになり、目的・用途に応じて採用される他の形態である。
なお、弾性体125は、この実施形態では前後方向の軸m2を構成する軸部材123bから右方向に変位した図示の位置と左方向に変位した図示しない位置において、伸縮方向の一端をブラケット123と一体をなす板部123aに当接させ他端を左右揺動部121の可動座受123dに当接させて配置されている。
したがって、着座者がいないとき又は着座者が左右均等な位置に着座しているときは弾性体125の反発力が吊り合って座103が基準位置に保持され、座103が左右何れの方向に傾くと、座103の位置が低くなった側の弾性体125が弾性力を蓄積しながら圧縮されて基準位置への復帰力を高める。
このようにしても、簡易構造でありながら前後左右に揺れる椅子を提供することができる。
このように、前後支持機構124を左右支持機構123よりも下に設けて、この左右支持機構123によって左右に揺動する左右揺動部121に座103及び背104を取り付けても、簡易な構成を通じて前後支持機構124と左右支持機構123を構成することができる。この場合も、前後支持機構124が左右支持機構123よりも下方であるとは、構造的な上下関係を言う場合のほか、支持する側を下、支持される側を上とする支持関係の主従を言う場合がある。そして、軸m2を1本で長尺に構成すると、軸m2が細径なもので構成できるため、機構部品のなかにコンパクトに組み込むことができるという利点が得られる。
なお、肘Nを取り付けるにあたり、前後揺動部122に左右揺動部121が支持されていることに鑑みて、肘Nは図示のように前後揺動部122に取り付けられるか、若しくは支持基部110に取り付けられる。このため、肘Nは前後にのみ揺動するか固定され、左右には揺動せず、着座者に安心感を与えることができる。
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態について、図17〜図19を参照して説明する。
上記実施形態のように座が前後に揺動する構造は、特段の操作を必要とせず重心の移動だけで前傾できる点で優れるが、背と座が一体である場合は後傾できる量は限られる。すなわち、無理やり背の後傾量を増やせば、座の後傾も大きくなるため、太腿部の裏が圧迫したり脚が浮いたりして座り心地を損ねることになる。そこで、背座を分離し、座が後ろにいくほど背座の挟み角を大きくなるよう、座の動作と連動し背が座に対して動作するシンクロロッキング構造を併用する。
この場合、単純に座が後ろにいくほど背座の挟み角を大きくなるよう背と座を連動動作させても良いが、そうすると、座が前にいくほど背座の挟み角が小さくなってしまう。すると、前傾時に背筋を十分に伸ばせなかったり、背の上端部から圧迫を受けてしまう。
そこで、背座を分離し、座の前後動作と連動し背が座に対して前後傾の動作するようにし、その動作途中に「座の前後動作があっても背座の挟み角がかわらない」プロセスを設け、そのプロセスより座が後ろまたは前にいくほど、背座の挟み角が大きくなるようにした。
以下具体的に説明する。図17〜図19に示す椅子の基本構造は前記第一実施形態の椅子と同様であるため、共通する部分には同一符合を付して説明を省略している。そして、そのうち背座を一体ではなく背204と座203に分離して設け、座203を第一実施形態と同様に前後左右に揺動可能に取り付けたもので、支持装置2、左右揺動部21、フォロワ21c、前後揺動部22、ガイド孔22a、左右支持機構23、前後支持機構24、後リンク24a、下揺動軸24c(C)、前支持部24(F)、後支持部24(R),復帰力発生装置P、前後方向復帰力発生機構P1、左右方向復帰力発生機構P2、軸m等を備える。
そして、背204は座203の前後揺動部22または当該座3の前後支持機構24に対して相対的に傾斜可能に取付けられ、座203の動作に連動機構200を介して連動するように構成される。その際、座203の後傾角度範囲よりも背204の後傾動角度範囲のほうが大きくなるように設定され、座203が基準位置Sから前傾又は後傾するときに座103は重心が上昇しながら前後方向に移動するように構成される。
以下、連動機構200について説明する。
この連動機構200は、背フレーム204aの下端よりもやや上方位置が前後揺動部22の側壁22sに枢着点Aを介して枢着され、後リンク24aを枢着する上側の枢着点Aと下側の枢着点Cのあいだに設定した中間の枢着点Dと背フレーム204aの下端部に設定した枢着点Eとの間が中間リンク200aによって接続されている。
ここで、前後揺動部22とともに移動する慣性系から見て、枢着点A−C間を固定リンクL1、枢着点C−D間を駆動リンクL2、枢着点A−E間を従動リンクL3、枢着点D−E間を中間リンクL4とする。固定リンクL1に対して駆動リンクL2は枢着点Cを支点に時計回り又は反時計回りに回転することで、中間リンクL4の枢着点Dを駆動し、これにより中間リンクL4は枢着点Eに作用して従動リンクL3を従動させる。つまり、図17に示す基準位置Sから図19に示すように座203が後傾すると、駆動リンクL2が枢着点Cを支点に反時計回りに回転して駆動リンクL2と中間リンクL4の挟み角θが次第に狭まり、これにより枢着点Cに枢着点Eを引き寄せて当該従動リンクL3を枢着点Aを支点に時計回りに回転させ、背204を座203に対して更に後傾させる。一方、図17に示す基準位置Sから図18に示すように座203が前傾すると、駆動リンクL2が枢着点Cを支点に時計回りに回転して駆動リンクL2と中間リンクL4のなす挟み角θが次第に大きくなり、これにより枢着点Cから枢着点Eを突き放して当該従動リンクL3を枢着点Aを支点に反時計回りに回転させて背204を座203に対して前傾させる。ただし、駆動リンクL2と中間リンクL4が図20に示す一直線となる状態を超えると、再び再び枢着点Cに枢着点Eを引き寄せて従動リンクL3を枢着点Aを支点に時計回りに回転させて背204を座203に対して後傾させる。
このように、4節リンクでリンクL2、L4同士が一直線になる状態を利用することで、背204が垂直よりも前側には倒れないような動作を実現することができる。
以上のように、背204は座203の前後揺動部22または座203の前後支持機構24に対して相対的に後傾可能に取付けられて座203の動作と連動するように構成しているため、後傾時に背204と座203の適切な関係を保つことができる。
また、背204と座203は連動機構200を介して後傾動作可能とされ、座203の後傾角度範囲よりも背204の後傾動角度範囲のほうが大きくなるように設定しているため、座203の極端な後傾を伴わずに、背204に十分な倒れ角度を実現することができ太腿部の裏が圧迫したり脚が浮いたりして座り心地を損ねることがない。
また、座203が基準位置Sから後傾するときに座203は重心が上昇しながら後方移動し、基準位置Sから座203が前傾する時に座203は重心が上昇しながら前方移動するようにしているため、背204の急激な傾倒を防ぐとともに背座の基準位置Sへの復帰を適切に行うことができる。
また、座203が基準位置Sから後方向に移動するのみならず、前方向にも移動するように構成されていることに鑑み、復帰力発生装置Pは前方向に移動したときにも座203を基準位置へ戻す方向の復帰力を移動量に応じて発生させるようにしているので、前傾時の使用感や離着席時の便を適切に確保することができる。
また、背204と座203を分離し、座203の前後動作と連動して背204が座203に対して前後傾するようにし、その動作途中に、座203の前後動作があっても背204が座203に対して傾斜しないプロセスを設け、そのプロセスより座203が後ろまたは前にいくほど、背204と座203との挟み角が大きくなるようにしたので、背が垂直を超えて前傾することを防止することができ、座の前傾時に背筋を伸ばせなかったり背の上端部から圧迫を受けることがない。
以上のようにして、この実施形態においても簡易構造でありながら前後左右に揺れる椅子を提供することができる。
なお、このような座が左右に揺れる構造と背座がシンクロロッキングする構造を組み合わせた椅子は、後述する比較例のように左右支持機構が前後方向の1軸回りの構造でなくとも実現できる。ただし、背座がシンクロロッキングするための機構部品が増える分、左右支持機構を簡易に構成することが効果的である。
<第四実施形態>
以下、本発明の第四実施形態を、図21〜図23に基づいて説明する。
この実施形態は、一般的なシンクロロッキング機能を備えた椅子に1軸回りの座の左右揺動動作を組み合わせたものである。この椅子は、座303の基準位置S3から背304が後傾動作を行うように構成されたもので、床面から立設される脚301と、脚301の上方に設けられた座303と、脚301と座303との間に介在する支持装置302とを備え、支持装置302が、座303の下方に配置され、座303を少なくとも前後方向の2箇所で所定の軌跡に沿って移動可能に支持する前後支持機構324(F、R)と、座303の下方に配置され、座303を少なくとも左右方向に正面視で左右中央位置に設けた前後方向に沿った1つの軸m3の回りに回動可能に支持する左右支持機構323とを有し、前後支持機構324、左右支持機構323の何れも、座303が所定の基準位置S3から移動するに従い当該座303の移動方向先端側を下向きに傾斜させる座傾斜機能Q31、Q32を備えるとともに、基準位置S3から後方向又は左右方向に移動した座303を基準位置S3へ戻す方向の復帰力を移動量に応じて発生させる復帰力発生装置P301、P302をさらに備えたものである。
この椅子も、背304は座303の前後揺動部322または当該座303の前後支持機構324に対して相対的に後傾可能に取付けられることで、連動機構300を介して座303の動作と連動するもので、座303の後傾角度範囲よりも背304の後傾動角度範囲のほうが大きくなるように設定されている。
前後支持機構324のうちの前支持部324(F)は、支持基部310に設けた長孔状のガイド孔310aと座303の前後揺動部322に設けたフォロアである左右方向の軸322aとを前後方向に相対移動可能に係合させることによって構成されている。一方、支持基部310には左右方向の軸n1の回りに背フレーム304aが回転可能に取り付けられ、背フレーム304aの中間部と座303の後部を軸n2を介して係合させることによって後支持部324(R)を構成している。すなわち、座303が基準位置S3にあるときは軸322aはガイド孔310aの前端側に位置しており、この基準位置S3から座303が後傾する際には、先ず背フレーム304aが軸n1の回りに回動し、その際に座303と連結している軸n2を後下方に引き込むため、これに伴って軸322aをガイド孔310a内で後端側へ移動させながら座303が後方へ沈み込む。この際、座303の前支持箇所も後傾方向に移動するため、前支持箇所と後支持箇所を結ぶ角度は背フレーム304aの回動角度より小さくなり、その結果、座303に生じる角度よりも背304に生じる角度変化の方が大きくなる。
背フレーム304aの軸n2よりも前方には左右方向のピン304bを介してリテーナ304rが保持させてあり、このリテーナ304rと支持基部310のリテーナ面310rとの間に弾性体であるコイルバネ300Sが圧縮状態で介在させてある。すなわち、背フレーム304aが後傾するに伴ってリテーナ304rを前上方に押し出し、これによりコイルバネ300Sを圧縮して弾性力を蓄積するように構成されて、基準位置S3への前後方向復帰機構P301を構成している。
一方、前記支持基部310は前後方向の軸m3を介して昇降機構を構成するガススプリング314の上端部に設けた支持基部受け310Kに支持されており、支持基部受け310Kに対して支持基部310が左右に揺動し、その支持基部310に対して座303が背304とともに後傾するようになっている。そして、基準位置S3への左右方向復帰機構P302は、支持基部受け310Kに設けられた一対の弾性体であるコイルバネ325、325と、支持基部310とともに左右に揺動する位置に設けられて揺動した側のコイルバネ325を圧縮する図示しない押圧部とから構成されている。
このようにしても、簡易構造でありながら前後左右に揺れる椅子を提供することができる。
<比較例>
上記第三実施形態および第四実施形態では、座が左右に揺れる構造と背座がシンクロロッキングする構造を組み合わせた椅子を実現し、その際に左右支持機構に前後方向の1つの軸m回りの構造を採用したが、ここでは図24に示すように左右支持機構Gとして一対のリンクg、gを用いる構造や、図25に示すように左右支持機構Hとして一対のガイド孔h1とフォロアh2の組み合わせを用いる構造を、比較例1、2として挙げる。
先ず図1や図17に示す実施形態では、前後方向の1軸mの回りの左右支持機構23であったが、図24のものは図1に示す第一実施形態や図17に示す第三実施形態の支持基部10に一対のリンクg、gの上端側を枢着点g1において枢着し、当該リンクg、gの下端側に左右揺動部21のブラケット21aを枢着点g2において枢着する。このとき、一対のリンクg、gの上端側の枢着点g1、g1間の距離よりも、下端側の枢着点g2、g2間の距離の方が小さくなるようにしておく。
このようにすれば、左右揺動部21が最も低い位置に支持された位置を基準として、当該左右揺動部21が図24(b)に示すように左方向に移動することで移動側に位置する左側のリンクg1が起立姿勢に近づき、反移動側に位置する右側のリンクg1が水平姿勢に近づく。図示とは逆の方向に左右揺動部21が動いても同様である。その結果、左右揺動部21を介して図17の座203の移動先端側が低くなるようにガイドされるとともに、移動するにつれて重心位置が高くなるため、重力により基準位置へ復帰する復帰力発生機構は重力復帰機構によって実現されることになる。
そして、この左右揺動部21に第三実施形態と同様にして前後揺動部24を支持させれば、背座の左右方向への揺動動作と、背座のシンクロロッキング動作とを行い得る椅子を実現することができる。この際には第三実施形態と同様に背204が垂直を超えて前傾しないような動作も行い得る。
そして、このようにすると、第一実施形態で図12および図13に基づいて説明した前後方向の着座感に加え、座3の左右方向の動作に関してもこれに準じた動作を行い得る。それ故に着座者の足首ANを回動支点とした膝NE、臀部近傍HPの動作に準ずるかのように座3の前傾時に座が前に進みながら前傾する動作としたため、着座者の足が足首AN、膝NEで屈曲することで膝NEが下がり、座と地面との間で下腿がつかえることなく前傾姿勢をスムーズにとることができる。
また、図25に示す比較例2では、図24に示す一対のリンクg1、g1に代えて、ガイド面を有するガイド孔h1とフォロアh2を用いている。すなわち、例えば第一実施形態や第三実施形態の支持基部10に一対のガイド孔h1を形成し、このガイド孔h1に、左右揺動部21のブラケット21aに設けたフォロアh2を係合させる。この場合、ガイド孔h1のガイド面は基準位置において左右揺動部21を左右の支持箇所において最も安定した位置に保持し、この位置から左右揺動部21が左へ移動しても右へ移動しても、左右揺動部の21移動先端側が下がりつつ全体として重心位置が持ち上がるように、上に凸となる山形をなす左右一対のガイド孔h1のガイド面がフォロアh2を誘導し、重力により基準位置へ復帰する復帰力発生機構は重力復帰機構によって実現されるようになっている。
そして、この左右揺動部21に第三実施形態と同様にして前後揺動部24を支持させれば、背座の左右方向への揺動動作と、背座のシンクロロッキング動作とを行い得る椅子を実現することができる。この際には第三実施形態と同様に背204が垂直を超えて前傾しないような動作も行い得る。
なお、支持基部10側にフォロアを設け、左右揺動部21側にガイド孔を設けても構わない。この場合、ガイド孔のガイド面は下に凸となる谷形の形状として設けられる。
なお、基準位置から背が垂直よりも前に倒れないことが重要視されない場合は、上記比較例1、2の左右支持機構と第四実施形態で説明した通常のシンクロロッキング機構とを組み合わせても構わない。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
例えば、座の前部は基準位置から前方へ移動した前傾時に下方へ傾斜するようなベンディング構造を採用してもよい。このようにすることで、大腿部への圧迫を回避することができる。
また、前記第一実施形態では、側面視において前後2箇所に分かれた左右支持機構の間に昇降機構であるガススプリングを配置したが、前後2箇所に分かれた左右支持機構の間に前後支持機構を配置することで、左右支持機構と前後支持機構の干渉を防ぎつつ、機構部分の上下方向の寸法を抑えることができる。