JP6918333B2 - 細胞性免疫に認識されるペプチド、及びそれを利用した医薬薬剤 - Google Patents

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Description

本発明は、癌疾患とりわけ腎細胞癌の予防又は治療のための有効成分として好適でそれの細胞性免疫に認識されるペプチド、それをコードする核酸分子及びそれのベクター、癌疾患とりわけ腎細胞癌(以下、「腎性細胞癌」と称することあり)の予防又は治療に用いられる医薬製剤、並びに前記ペプチドとヒト白血球抗原−A24との複合体を細胞表面に提示した抗原提示細胞又は細胞癌反応性細胞傷害性T細胞が含有された生物製剤に関するものである。
腎細胞癌(renal cell carcinoma:以下、RCCともいう)は、高齢者ほど罹患し易く、尿細管の細胞が癌化したものであり、初期段階で特徴的な症状が認められ難いので、しばしば転移してから他の疾患の精密検査のときに偶然に見つかる。
転移性腎細胞癌(metastatic RCC:以下、mRCCともいう)の治療方法として、癌原発巣の摘出治療法や化学療法や放射線療法のような汎用の癌治療法のほか、癌の血管新生を目的とする分子治療法が、一般的になってきている。しかし、これらの治療方法では、ある程度の抗癌効果があるにも関わらず、十分な治療効果が得られないので完治に至らない。そのため、癌の進行に応じ、免疫療法などの他の治療方法と併用することが、不可欠となっている。インターロイキン(以下、ILともいう)−2のようなIL類やインターフェロン(以下、IFNともいう)−αのようなIFN類などのサイトカインを用いた免疫療法が、これら転移性腎細胞癌患者に施されているが、依然として限定的な治療効果しか得られていない。
このような状況下、腎細胞癌関連抗原と、ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:以下、HLAともいう)クラスI制限性及び腎細胞癌反応性の細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球:cytotoxic T lymphocytes:以下、CTLsともいう)を誘導する可能性があるそれらのペプチドは、今までに幾つか同定されており、既に臨床試験に用いられている。これらの抗原のうち、カルボニックアンヒドラーゼ9(以下、CA9ともいう)は、全腎細胞癌タイプの略90%で過剰発現しているので、癌ワクチン候補として注目を集めている。本発明者らは、非特許文献1及び2で、腎細胞癌に対するペプチドワクチンとして、CA9抗原由来ペプチド、血管内皮細胞増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor 1:以下、VEGFR1ともいう)由来ペプチドを、提案している。さらに、腎癌に対して、そのペプチドを用いたワクチン開発に着手し、そのペプチドワクチンであるCA9ワクチン及びVEGFR1ワクチンを利用した臨床研究を行い、その安全性、有用性について報告している。
これらペプチドワクチンによるワクチン療法の臨床経験から、個々の患者の免疫状態の多様性と治療ターゲットである癌の多様性との所為で、癌反応性の細胞傷害性T細胞反応などの免疫応答が多彩であること、一旦有効であっても免疫逃避又は寛容により無効になる症例があることが、明らかとなった。ワクチン接種された腎細胞癌患者の一部にのみ臨床効果が認められ、限定的であるが臨床症例での有効性を示したが、このワクチン療法のような治療方法は、さらに改良が必要であることが、示唆された。
このような現状を鑑みると、1つの決まった抗原をターゲットにするのではなく、腎癌の発生、分化、増殖に立脚した複数の分子をターゲットにし、それぞれ異なった性質の癌を担癌した宿主に合ったテーラーメイドワクチン療法のような治療方法が必要であると、考えられる。
このように、癌免疫療法が、転移性腎細胞癌のような癌疾患の有望な治療方法の一つである。中でも、癌反応性の細胞傷害性T細胞が、各種免疫細胞に最も有効な作動因子の一つであると考えられてきている。癌細胞と細胞傷害性T細胞とにおいて、抗プログラム死1(programmed death 1:以下、PD−1ともいう)タンパクとそのリガンドであるプログラム死1リガンド(「プログラム細胞死リガンド1)」と同義。以下、PD−L1ともいう)との相互作用がある各種免疫抑制機構によって、癌反応性の細胞傷害性T細胞が阻害されてしまう。このことは、PD−L1が抗癌免疫療法の有望な目標となり得ることを示している。
また、免疫チェックポイント分子を標的とする癌免疫療法のために、抗体治療が開発されてきており、腎細胞癌患者に対するPD−L1をターゲットにすることによる癌ワクチン療法に有用なペプチドの開発が強く求められている。
H Uemura, K Fujimoto, M Tanaka, et al.、 "A phase I trial of vaccination of CA9-derived peptides for HLA-A24-positive patients with cytokine-refractory metastatic renal cell carcinoma."、Clinical Cancer Research、 2006;12(6) March 15、 2006、 p.1768-1775 K Yoshimura, T Minami, M Nozawa, H Uemura、 "Phase I clinical trial of human vascular endothelial growth factor receptor 1 peptide vaccines for patients with metastatic renal cell carcinoma."、British Journal of Cancer, (2013) 108、 p.1260-1266
本発明者らは、HLA−A24陽性(陽性を「」と表記することもある)腎性細胞癌患者のための抗癌ワクチンとして適用可能なPD−L1由来ペプチドを探索して、活性の強いペプチドを見出し、その有効性を検討して、本発明を完成させた。
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、PD−L1由来ペプチドやそれの改変ペプチドであってHLA−A24分子に結合し細胞性免疫に認識され簡便に調製でき腎性細胞癌のような癌疾患の治療や予防に有用なペプチド、それをコードする核酸分子及びそれのベクター及びその形質変換体、腎細胞癌等の癌疾患の予防用又は治療用の医薬製剤、並びに前記ペプチドとヒトHLA−A24との複合体を細胞表面に提示した抗原提示細胞又は腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞が含有された腎細胞癌予防用又は治療用の生物製剤を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされたペプチドは、三文字表記で示している配列表の配列番号1のアミノ酸配列(一文字表記ではTYWHLLNAF:PD−L1の11〜19番目のアミノ酸配列に相当)又は配列番号2のアミノ酸配列(同表記KFPVEKQLDL:PD−L1の41〜50番目のアミノ酸配列に相当)と、それらの配列のうち1個又は2個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加した改変アミノ酸配列との何れかで示される骨格からなり、細胞性免疫に認識されるものである。
このペプチドは、前記アミノ酸配列及び前記改変アミノ酸配列中、N末端側から第二位アミノ酸残基がチロシン(一文字表記では表記Y)又はフェニルアラニン(同表記F)であり、N末端側から第九位若しくは第十位アミノ酸残基又はC末端のアミノ酸残基がロイシン(同表記L)、フェニルアラニン(同表記F)、イソロイシン(同表記I)又はトリプトファン(同表記W)である。
このペプチドは、HLA−A24分子に結合して、例えば腎性細胞癌の前記細胞性免疫に認識されるものである。
また、このペプチドは、プログラム死リガンド1由来ペプチドである。
本発明のために、前記ペプチドをコードする塩基配列を有する核酸分子を用いてもよい。
また、前記核酸分子が、組み込まれているベクターを用いてもよい。
また、前記ベクターが宿主細胞に導入されて成る形質転換体を用いてもよい。
本発明の医薬製剤は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と、それらの配列のうち1個又は2個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加した改変アミノ酸配列との少なくとも何れかで示されるペプチドを有効成分として含有するものである。
この医薬製剤は、細胞癌反応性細胞傷害性T細胞への誘導剤として用いられてもよい。
また、この医薬製剤は、CD8陽性T細への誘導剤として用いられてもよい。
さらに、この医薬製剤は、HLA−A24陽性細胞癌の治療薬又は予防薬として用いられてもよい。
この医薬製剤は、前記有効成分が、前記ペプチドであることによって、癌ワクチンとして用いられてもよい。
本発明の抗原提示細胞は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と、それらの配列のうち1個又は2個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加した改変アミノ酸配列との少なくとも何れかで示されるペプチドを、HLA−A24陽性の細胞癌の患者から採取された抗原提示能を有する細胞に、導入して誘導し、前記ペプチドとHLA−A24との複合体を細胞表面に提示したものである。
本発明の細胞癌反応性細胞傷害性T細胞は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と、それらの配列のうち1個又は2個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加した改変アミノ酸配列との少なくとも何れかで示されるペプチドを、HLA−A24陽性の細胞癌の患者から採取された末梢血単核細胞に、接触させて誘導したものである。
本発明の生物製剤は、配列番号1又2のアミノ酸配で示されるペプチドを、HLA−A24陽性の細胞癌の患者から採取された末梢血単核細胞に導入させて誘導し、前記ペプチドとHLA−A24との複合体を細胞表面に提示した抗原提示細胞からなる誘導細胞と、前記ペプチドを、前記採取された末梢血単核細胞に接触させて誘導した細胞癌反応性細胞傷害性T細胞からなる誘導細胞とから選ばれる少なくとも何れかの誘導細胞が、含有されているものである。
本発明のペプチドは、HLA−A24アレルに結合できそれにより癌患者とりわけHLA−A24陽性腎性細胞癌患者の細胞性免疫に認識されるので、癌疾患とりわけ腎性細胞癌の治療や予防に有用である。このペプチドによれば、HLA拘束性に腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導することができる。このペプチドは、生体に存するPD−L1に由来し又はその骨格に基づいて改変し又は誘導されたもので、生体内での所望のバインドサイトに結合し作用効果を発現するものであるから、副作用が少なくて信頼性が高く、安全である。
このペプチドの配列を利用し、それをコードする核酸分子及びそれのベクター及びその形質変換体を作製して、ペプチドを生体外で製造したり生体内で産生したりするのに用いることができる。
また、このペプチドやそれをコードする核酸分子を利用して、腎細胞癌の予防用又は治療用の医薬製剤、例えば細胞癌反応性細胞傷害性T細胞への誘導剤、CD8陽性T細への誘導剤、HLA−A24陽性細胞癌の治療薬又は予防薬、癌ワクチンとして、癌治療、とりわけHLA−A24陽性細胞癌治療に供することができる。
さらにこのペプチドとヒトHLA−A24との複合体を細胞表面に提示した抗原提示細胞又は腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞が含有された腎細胞癌予防用又は治療用の生物製剤を調製したりして、HLA−A24陽性腎細胞癌患者の治療に役立てることができる。
これら本発明によれば、現在までいくつかの癌ワクチン候補ペプチドが同定されているHLA−A24陽性腎細胞癌患者の治療において、癌増殖に関与しているPD−L1をターゲットに加えることにより、さらなる治療効果の向上に寄与することが期待される。
本発明を適用するPD−L1由来ペプチドを用い、PD−L1発現を検討するためのフローサイトメトリー分析の結果を示す図である。 本発明を適用するPD−L1由来ペプチドで刺激した末梢血単核細胞からの精製CD8陽性T細胞について、Cr放出試験による細胞傷害活性の試験結果を示す図である。 KPK−13細胞におけるPD−L1発現でのIFN−γ処理の効果と、本発明を適用するPD−L1由来ペプチドに対する感受性との結果を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
〔本発明のペプチド〕
本発明を適用するペプチドの詳細は、以下の通りである。
本発明の好ましい形態のペプチドは、PD−L1由来ペプチドであり、配列表の配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列で示されるもので、細胞性免疫に認識されるものである。このペプチドは、HLA−A24アレルに結合できるものである。
「細胞性免疫に認識される」とは、ペプチドが特異的な細胞傷害性T細胞に認識されること、即ち、ペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導することができることを意味する。「ペプチドがHLA−A24分子に結合できる」とは、ペプチドがHLA−A24分子と複合体を形成し細胞表面に提示され得ることを意味する。
配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列で示されるペプチドは、HLA−A24陽性腎細胞癌患者に対する新たなPD−L1ペプチド候補としてスクリーニングされたものである。そのスクリーニングの結果、HLA−A24陽性腎細胞癌患者の末梢血単核細胞(以下、PBMCsともいう)からペプチド特異的で腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導する可能性を有する二つのPD−L1ペプチドであるPD−L111−19(一文字表記でTYWHLLNAF:配列番号1)及びPD−L141−50(同表記でKFPVEKQLDL:配列番号2)を同定した。これらのペプチドは、HLA−A24分子に結合するアミノ酸予測モチーフ、即ち、N末端側から第二位配列位置でのアミノ酸残基がY又はF残基であり、N末端側から第九位配列位置又は第十位配列位置若しくはC末端配列位置でのアミノ酸残基がL,F,I又はW残基であると極めて相性が良い。
このことから、これらPD−L1由来ペプチドが、HLA−A24陽性腎細胞癌患者に対するペプチド由来抗癌ワクチンの有効成分として、応用可能である。
PD−L1は、腎細胞癌を含む幾つかのタイプの癌に発現するので、この分子が癌免疫療法の有益なターゲットとなり得る。実際、PD−L1由来ペプチドのうちPD−L115−23(配列番号1)は、HLA−A2陽性腎細胞癌患者からのペプチド特異的及び癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導できるペプチドとして、同定されている。そのため、これらPD−L1由来ペプチドは、様々なタイプの癌にも有効であることが示唆され、とりわけ腎細胞癌に有効である。
配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列で示されるPD−L1由来ペプチドは、数多のペプチドの中から、ペプチドワクチン療法に用いることができるように、HLA−A24陽性腎細胞癌患者に対する癌ワクチン療法に有用なPD−L1由来ペプチドとして、具体的には、以下のようにして選択され、同定された。
一般に、HLA−A24分子に結合するペプチドは、HLAの型に依存する規則性ある特有のアミノ酸配列を有することが知られている。このような規則性ある特有のアミノ酸配列は、結合モチーフと呼ばれる。HLA−A24分子に対し、任意のペプチドが結合できるか否かは、例えば、ウェブサイトBIMAS(Bioinformatics and Molecular Analysis Section、 Computational Bioscience and Engineering Laboratory、 Division of Computer Research & Technology、 NIH、http://www-bimas.cit.nih.gov/)を用いたコンピュータ解析により予測することができる。
ペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導することができるか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、HLA−A24陽性腎細胞癌患者から採取した血液から、末梢血単核細胞を取り出し、ペプチドで刺激した末梢血単核細胞が、このペプチドをパルスした抗原提示細胞に反応してIFN−γなどのサイトカインを産生するか否かを測定することにより確認する方法などが挙げられる。このサイトカインを測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:ELISA)などで測定することができる。
また、誘導された細胞傷害性T細胞の細胞傷害活性を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、51Cr放出試験により確認する方法などが挙げられる。
本発明のペプチドは、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列で示されるPD−L1由来ペプチドであることが好ましいが、それらの配列のうち1個又は2個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加した改変アミノ酸配列との何れかで示される骨格からなり、細胞性免疫に認識され、HLA−A24アレルに結合できるPD−L1由来ペプチドの誘導体であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
1個又は2個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加する位置としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記置換としては、ペプチドの性質を変化させない点で、同族アミノ酸の間で置換することが好ましい。同族アミノ酸は、例えば、極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸などの観点で、適宜選択することができる。
前記欠失、置換、及び付加は、HLA−A24分子の結合モチーフである点で、ペプチドのアミノ酸配列のN末端から2番目のアミノ酸がチロシン又はフェニルアラニンであり、N末端から2番目又は10番目のアミノ酸若しくはC末端のアミノ酸がロイシン、フェニルアラニン、イソロイシン又はトリプトファンとなるように行うことが好ましい。
前記ペプチドを構成するための置換又は付加するアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、アミノ酸アナログであってもよい。即ち、前記ペプチド骨格を有し細胞性免疫に認識されるという効果を損なわない限り、アミノ酸アナログによって、アミノ基やカルボキシル基等の官能基が修飾又は保護されていてもよい。アミノ酸アナログとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ酸のN−アシル化物、O−アシル化物、エステル化物、酸アミド化物、アルキル化物などが挙げられる。例えば、N末端や遊離のアミノ基にホルミル基、アセチル基、t−ブトキシカルボニル基等を結合するものや、C末端や遊離のカルボキシル基にメチル基、エチル基、t−ブチル基、ベンジル基等を結合したものなどが挙げられる。
前記ペプチドは、細胞性免疫と液性免疫の両方に認識されるペプチドであることが好ましい。このペプチドは、免疫原性が高く、細胞傷害性T細胞誘導能、とりわけ腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導能に優れると期待される点で、液性免疫にも認識されることが好ましい。「液性免疫に認識される」とは、ペプチドに特異的な免疫グロブリン(Ig)Gが生体内に存在する、即ち、ペプチド特異的IgGが血漿から検出されることをいう。血漿中の特異的IgGを測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ELISAなどで測定することができる。
さらに、前記ペプチドは、前記ペプチドとHLA−A24との複合体を細胞表面に提示した抗原提示細胞誘導能にも優れている。そのため、癌ワクチン、とりわけHLA−A24陽性腎性細胞癌ワクチンの有効成分として、有用である。
前記ペプチドの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、アミノ酸のアミノ保護基(Fmoc基:9-fluorenylmethyloxycarbonyl基)を用いるFmoc法によるペプチド固相合成法、バッチ式で保護アミノ酸同士を縮合剤でカップリングしていくペプチド液相合成法、それらを利用した市販の自動ペプチド合成装置を用いた合成法などが、挙げられる。
前記ペプチドは、そのアミノ酸配列を含むポリペプチドが細胞内で断片化されることで生じるものであってもよい。前記ポリペプチドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ペプチドは、癌増殖やプログラム死1に関与するとされるPD−L1由来ペプチドであり、HLA−A24分子に結合でき、かつ細胞性免疫に認識されるので、例えば、HLA−A24分子陽性腎細胞癌患者の癌ワクチン療法に好適に用いることができる。このペプチドは、プログラム細胞死リガンド1由来ペプチドである。
〔本発明の核酸分子〕
本発明を適用する核酸分子の詳細は、以下の通りである。
その核酸分子は、核酸分子としては、配列番号1又は配列番号2の前記ペプチドをコードする塩基配列からなるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ペプチドをコードする本発明の核酸分子により、生体内で産生されるものであってもよい。
この核酸分子は、形質変換体を形成するためのベクターに好適に利用可能である。
この核酸分子は、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。例えば、ホスホロアミダイト法を利用した市販の核酸合成装置を用いた化学的合成法や、ポリメラーゼによる複製や転写反応を利用した酵素的合成法などが、挙げられる。
〔本発明のベクター〕
本発明を適用するベクターの詳細は、以下の通りである。
本発明のベクターは、配列番号1又は配列番号2のペプチドをコードする核酸分子を少なくとも組み込んで含み、必要に応じて更にその他の要素を含む。
前記ベクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが挙げられる。前記ウイルスベクターの具体例としては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどが挙げられる。
前記ベクターの調製方法としては、特に制限はなく、遺伝子組み換えなどの公知の方法を適宜選択して調製することができる。
〔本発明の形質転換体〕
本発明を適用する形質転換体の詳細は、以下の通りである。
前記ベクターは、抗原提示細胞のような宿主細胞に導入されると、前記ペプチドを発現する。そして、前記抗原提示細胞は、前記ペプチドと、HLA−A24分子との複合体を細胞表面に提示する。前記抗原提示細胞は、ペプチド特異的に腎細胞癌細胞を傷害する細胞傷害性T細胞を効率的に増殖させることができる。
前記ペプチドや前記ベクターは、腎細胞癌の予防又は治療用医薬製剤や、抗原提示細胞又は腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞へと誘導された誘導細胞を含有する生物製剤に、好適に利用可能である。
〔本発明の医薬製剤〕
本発明を適用する医薬製剤の詳細は、以下の通りである。
この医薬製剤は、癌、とりわけ腎細胞癌の予防用又は治療用医薬組成物であり、前記ペプチド、前記核酸分子、及び前記ベクターの少なくとも何れかを含み、必要に応じて更にその他の添加成分を含む。
この医薬製剤における前記ペプチド、前記核酸分子、及び前記ベクターの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。この医薬製剤中、前記ペプチド、及び前記ベクターの何れかの有効成分のみからなるものであってもよい。この医薬製剤中、前記ペプチド、前記核酸分子、及び前記ベクターは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記ペプチド、及び前記ベクターのそれぞれについても、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記医薬製剤における、前記添加成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬上許容され得る担体などが挙げられる。前記添加成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記担体の具体例としては、セルロース、重合アミノ酸、アルブミンなどが挙げられる。前記添加成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
この医薬製剤は、他の有効成分を共存させた態様で使用されてもよい。また、この医薬製剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
腎細胞癌患者の細胞傷害性T細胞は、様々な癌抗原ペプチドを認識する細胞の集合であるため、前記医薬製剤は、例えば、CA9抗原由来ペプチド、VEGFR1由来ペプチドと組み合わせて使用してもよい。
この医薬製剤の剤形としては、特に制限はなく、公知の剤形を適宜選択することができ、例えば、固形剤、半固形剤、液剤などが挙げられる。これらの剤形の医薬製剤は、常法に従い製造することができる。
この医薬製剤は、癌反応性細胞傷害性T細胞、とりわけ細胞癌反応性細胞傷害性T細胞への誘導剤として、又はCD8陽性T細への誘導剤として、癌の予防・治療に用いてもよい。
この医薬製剤は、癌ワクチンとして使用することが好ましい。
この医薬製剤は、癌とりわけ腎細胞癌の予防又は治療用として、その投与方法、投与量、投与時期、投与間隔、及び投与対象に、特段制限がなく、目的に応じて適宜選択することができる。
この医薬製剤は、免疫応答が効果的に成立するように、従来からワクチン投与に用いられることが知られているアジュバントとともに投与することが好ましく、投与方法としては、例えば、皮内投与、皮下投与などが挙げられる。
前記投与量としては、特に制限はなく、投与対象の個体の疾患の状態、年齢、体重、体質、他の成分を有効成分とする医薬製剤の投与の有無などを考慮して適宜選択することができる。
この医薬製剤が、前記ペプチドを含む場合の投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペプチド量として、0.0001mg〜1,000mgで例示される。
この医薬製剤が、前記核酸分子又は前記ベクターを含む場合の投与量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA量として、0.1μg〜100mgなどが挙げられる。投与方法としては、静脈注射、皮下投与、皮内投与などが挙げられる。
前記投与時期、及び投与間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単回投与してもよく、数日おきに1回、数週から数ヶ月に1回、1年間〜3年間継続して投与するなどが挙げられる。
前記投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒトが挙げられる。
〔本発明の抗原提示細胞〕
本発明を適用する抗原提示細胞の詳細は、以下の通りである。
この抗原提示細胞は、前記ペプチド、及び/又は前記ベクターを、HLA−A24陽性の腎性細胞癌の患者から採取された抗原提示能を有する細胞に、in vitroで導入して誘導したもので、前記ペプチドとHLA−A24との複合体を細胞表面に提示したものである。
なお、前記ペプチドを有する前記医薬製剤を、患者、とりわけ腎性細胞癌患者に投与して、前記ペプチドとHLA−A24との複合体を細胞表面に提示するように、抗原提示細胞を誘導する治療法として、用いてもよい。
〔抗原提示細胞の誘導方法〕
前記抗原提示細胞を誘導する方法は、前記ペプチド、及び/又は前記ベクターを、HLA−A24陽性の腎性細胞癌の患者から採取された抗原提示能を有する細胞に、接触工程により接触させて、前記ペプチドとHLA−A24との複合体を細胞表面に提示するというものである。前記抗原提示細胞を誘導する方法は、例えば、接触工程により、及びペプチド及び/又は前記ベクターを導入する工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。より具体的には、その接触工程は、採取された抗原提示能を有する細胞に、in vitroで、直に接触させてもよく、遺伝子導入して接触させてもよく、前記ペプチドの存在下でその細胞を培養してもよい。その接触工程により、抗原提示細胞へと誘導される。この方法は、接触工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記接触工程により調製された、前記ペプチドとHLA−A24分子との複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞は、HLA−A24分子陽性腎細胞癌細胞を傷害する細胞傷害性T細胞を誘導し得る。
前記抗原提示細胞を誘導する方法には、前記ペプチドのみを有効成分とし、又はさらに必要に応じて他の成分を含んでいる抗原提示細胞誘導剤が医薬製剤として、用いられる。前記抗原提示細胞を誘導する方法には、前記ベクターのみを有効成分とし、又はさらに必要に応じて他の成分を含んでいる抗原提示細胞誘導剤が医薬製剤として、用いられてもよい。
前記抗原提示細胞を誘導する方法中、前記ペプチド及び前記ベクターの少なくとも何れかを前記抗原提示能を有する細胞導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記抗原提示細胞は、例えば、HLA−A24分子陽性腎細胞癌患者由来の抗原提示能を有する細胞を前記ペプチドと共に培養することにより得られる。または、例えば、前記ベクターをHLA−A24分子陽性腎細胞癌患者由来の抗原提示能を有する細胞に導入し、前記ペプチドを発現させることにより得られる。
前記抗原提示能を有する細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹状細胞などが挙げられる。前記樹状細胞の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、患者より採取した末梢血単核細胞から培養プレートに接着する細胞を分離し、その細胞をインターフェロン(IL)−4及び顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)の存在下で約1週間培養する方法などが挙げられる。
前記抗原提示細胞の調製方法で得られた抗原提示細胞は、例えば、末梢血単核細胞を採取した個体の体内に戻し、体内での腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導を促進し、腎性細胞癌を抑制するために好適に用いることができる。
〔抗原提示細胞誘導剤〕
この抗原提示細胞誘導剤は、前記ペプチド及び/又は前記ベクターを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。前記ペプチド、及び前記ベクターは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記ペプチド、及び前記ベクターのそれぞれについても、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。この抗原提示細胞誘導剤は、前記ペプチドと、HLA−A24分子との複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製するためのものである。
前記抗原提示細胞誘導剤における前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくとも何れかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記抗原提示細胞誘導剤は、前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくとも何れかのみからなるものであってもよい。
前記抗原提示細胞誘導剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、緩衝液などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記抗原提示細胞誘導剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
〔抗原提示細胞誘導用キット〕
前記抗原提示細胞の誘導方法は、抗原提示細胞誘導用キットを用いて行われてもよい。この抗原提示細胞誘導用キットは、前記ペプチドとHLA−A24分子との複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製するための抗原提示細胞誘導用キットであって、前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の要素を含む前記その他の要素としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、緩衝液などが挙げられる。前記その他の要素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記抗原提示細胞誘導用キットは、上述した抗原提示細胞の調製方法に好適に用いることができる。
前記抗原提示細胞の誘導方法で得られた前記抗原提示細胞は、例えば、抗原提示能を有する細胞を採取した個体の体内に戻し、体内で前記抗原提示細胞によって腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導を促進し、腎性細胞癌を抑制するために好適に用いることができる。
〔本発明の腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞〕
本発明を適用する腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞の詳細は、以下の通りである。
この腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞は、前記ペプチドを、HLA−A24陽性の腎性細胞癌の患者から採取された末梢血単核細胞に、接触させて誘導したものである。
なお、前記ペプチドを有する前記医薬製剤を、患者、とりわけ腎性細胞癌患者に投与して、生体内の末梢血単核細胞に接触させて、腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導する治療法として、用いてもよい。
〔腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法〕
前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導する方法は、前記ペプチドを、HLA−A24陽性の腎性細胞癌の患者から採取された末梢血単核細胞に、接触工程により接触させて、腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導するというものである。前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導する方法は、例えば、その接触工程により、採取された末梢血単核細胞を有する細胞に、in vitroで、直に接触させてもよく、前記ペプチドの存在下で細胞を培養してもよい。その接触工程により、HLA−A24分子陽性腎細胞癌細胞を傷害する細胞傷害性T細胞を誘導することができる。この方法は、接触工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記細胞傷害性T細胞が「腎細胞癌反応性」であるとは、前記細胞傷害性T細胞が、腎細胞癌細胞上の癌抗原ペプチドと、HLA分子との複合体を認識し、その細胞を傷害する能力を有することをいう。
前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導する方法には、前記ペプチドのみを有効成分とし、又はさらに必要に応じて他の成分を含んでいる腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤である医薬製剤が、用いられる。
得られた前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞は、例えば、末梢血単核細胞を採取したHLA−A24陽性の腎性細胞癌の個体の体内に戻し、腎性細胞癌を抑制するために好適に用いることができる。
〔腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤〕
この腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤は、前記ペプチドを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。前記ペプチドは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤における前記ペプチドの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記腎細胞癌反応性傷害性T細胞誘導剤は、前記ペプチドのみからなるものであってもよい。
前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、緩衝液などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
〔腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導用キット〕
前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法は、腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導用キットを用いて行われてもよい。この腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導用キットは、前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の要素を含む。前記その他の要素としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、緩衝液などが挙げられる。前記その他の要素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞誘導用キットは、前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法に好適に用いることができる。
前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法で得られた腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞は、例えば、末梢血単核細胞を採取した個体の体内に戻して腎細胞癌細胞を傷害する養子免疫療法に好適に用いることができる。
〔本発明の生物製剤〕
本発明を適用する生物製剤は、前記の抗原提示細胞及び/又は腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞からなる誘導細胞を、含有するもので、患者、とりわけ腎性細胞癌患者に投与して、癌予防や癌治療に用いられる。
〔本発明の医薬製剤・抗原提示細胞/腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を含有する生物製剤を用いた癌の予防又は治療方法〕
前記ペプチド、前記核酸分子並びに前記ベクター、及びそれらのいずれかを含有する医薬製剤は、個体に投与することにより、個体における癌とりわけ腎細胞癌の発症を予防したり、腎細胞癌を患っている個体を治療したりすることができる。したがって、この医薬製剤を用いて癌とりわけ腎細胞癌を予防又は治療する方法は、個体に、前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくともいずれかを、投与することにより行われる。
また、前記腎細胞癌の予防又は治療方法は、誘導して調製した前記腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞や抗原提示細胞を含む生物製剤を、個体に投与することにより行ってもよい。
以下、本発明を適用する実施例について詳細に説明する。
(試験例1:PD−L1由来ペプチドの結合モチーフからの探索)
先ず、ペプチドワクチン療法の選択肢を増やすためにHLA−A24陽性腎細胞癌患者に対する癌ワクチン療法に有用なPD−L1由来ペプチドを探索した。具体的には、PD−L1由来ペプチドであって、HLA−A24分子に結合でき、かつ細胞性免疫に認識されるペプチドを探索した。
Parker KC, Bednarek MA, Coligan JE. “Scheme for ranking potential HLA-A2 binding peptides based on independent binding of individual peptide side-chains.”、Journal of Immunology 1994 (152), p.163-175、及びAbiko K, Mandai M, Hamanishi J, Yoshioka Y, Matsumura N, Baba T, et al. “PD-L1 on tumor cells is induced in ascites and promotes peritoneal dissemination of ovarian cancer through CTL dysfunction.”、Clinical Cancer Research 2012 (19), p.1363-1374の記載に準拠してHLA−A24アレルに対する結合モチーフに基づき、コンピュータ解析を行った。その概要を略記する。BIMASを用いて、HLAクラスI分子から解離予測半減期に基づき計算された結合スコアを基準に、結合スコアの最も高い5種類のペプチドを選択した。結合スコアが高い程、コンピュータ解析上、結合モチーフに強く結合し活性を発現する可能性があると、予測される。その計算結果を表1に示す。
Figure 0006918333
(試験例2:末梢血単核細胞から細胞傷害性T細胞の誘導)
表1の5種類のPD−L1由来ペプチドが、HLA−A24陽性腎細胞癌患者の末梢血単核細胞からペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導できるかについて調べた。
〔患者と健常人との提供者からの試料〕
この試験のための末梢血単核細胞は、同意書を提出してもらった腎細胞癌患者と健常人との提供者から得た。提供者には、HLA−A24陽性患者が含まれているが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者はいなかった。30mlの末梢血を採血し、末梢血単核細胞は、フィコール−コンライ密度勾配遠心分離法により、調製した。全試料は、使用するまで凍結保存した。この試験は、近畿大学の研究倫理審査委員会の承認を受けて行った。
〔細胞株〕
C1R−A24は、HLA-A*24:02遺伝子を安定に発現するC1Rリンパ腫亜系細胞株である。SKRC−1細胞、KPK−13細胞、及びKK−RCC6細胞は、全てRCC細胞株ある。SKRC−1細胞は愛知医科大学の吉川和宏博士から、KPK−13細胞は大阪大学医学部の三股浩光博士から、KK−RCC6細胞は香川大学医学系研究科の筧善行博士から、夫々快く提供されたものである。全ての細胞株は、RPMI 1640培地(Invitrogen社製)を用いて10%ウシ胎児血清(FCS)中で培養した。
〔ペプチド〕
表1の5種類のペプチドを用いた。なお、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)由来ペプチド(一文字表記でTYGPVFMSL:配列番号6)と、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来ペプチド(同表記RYLRDQQLL:配列番号7)とを、HLA−A24分子に結合した対照群ペプチドとして用いた。なお、表1の5種類のペプチドと対照群ペプチドとの全ペプチドは、夫々、ユーロフィンジェノミクス株式会社で作製したものを購入し、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して10mg/ml溶液として用いた。
〔末梢血単核細胞からのペプチド特異的細胞傷害性T細胞の誘導方法〕
HLA−A24分子に対する結合モチーフに基づいて作製した表1中の5種のPD−L1由来ペプチドのうち何れが、HLA−A24陽性腎細胞癌患者から採取した末梢血単核細胞からペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導するか測定した。被験ペプチドとしてこれら5種類のPD−L1由来ペプチド及び対照ペプチドとしてEBV由来ペプチドを用いたペプチド特異的細胞傷害性T細胞の検出方法は、Brahmer JR, Tykodi SS, Chow LQM, Hwu WJ, Topalian SL, Hwu P, et al. “Safety and activity of anti-PD-L1 antibody in patients with advanced cancer.”、The New England Journal of Medicine, 2012 (366), p.2455-2464に準拠しつつ次のように改良して行った。
U底型の96ウェル(穴)マイクロ培養プレート(Nunc社製)中で、末梢血単核細胞(5×10細胞/ウェル)を各PD−L1由来ペプチドの10μg/mlと共に、100μl培養培地中で、インキュベートした。培養培地は、45% RPMI 1640培地(Invitrogen社製)、45% AIM−V培地(Gibco社製)、10%ウシ胎児血清、MEM非必須アミノ酸溶液(GibcoBRL社製)の100倍希釈液、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンからなる。8ウェルを各ペプチド用とした。培養開始の翌日に、50U/mlのIL−2を含む培養培地100μlを添加した。培養8日目に、100μlの培地を取り去り、対応するPD−L1由来ペプチド(10μg/ml)を含む新たな培地を100μl補充し、培養9日目に、50U/mlのIL−2を含む培地100μlを添加した。培養17日目に、新たな培地に入れ替えて培養された細胞を、1ウェルから4ウェルに取り分けた。うち2ウェルは対応するPD−L1由来ペプチドでパルス処理したC1R−A24細胞用、他の2ウェルは、HIVペプチドでパルス処理したC1R−A24細胞(対照)用である。18時間インキュベートした後、上清を集め、IFN−γ産生レベルを、ELISA法で測定した。ペプチド特異的細胞傷害性T細胞の誘導は、次の二つの基準を満たすときにのみ、活性発現ありと判断した。基準(i)は、対応するPD−L1ペプチドで刺激した二つのウェルとも50pg/ml以上であることであり、基準(ii)は、対応する各PD−L1ペプチドで刺激した二つのウェルとも、対照のHIVペプチドで刺激した二つのウェルの平均値よりも1.2倍以上であるというものである。
このように末梢血単核細胞を、in vitroにて、PD−L1由来ペプチドの夫々で刺激し、又はEBV由来ペプチドで刺激し、末梢血単核細胞が、対応するペプチドをパルスしたC1R−A24細胞に反応してIFN−γを産生するかについて、検討した。これによるHLA−A24陽性腎細胞癌患者の末梢血単核細胞からのペプチド特異的細胞傷害性T細胞の誘導結果を、活性発現ありと判断したものについて、下記表2に示す。
Figure 0006918333
表2に示すように、PD−L111−19とPD−L141−50とPD−L155−64とPD−L180−88とPD−L1117−126の各PD−L1由来ペプチドは、HLA−A24陽性腎細胞癌患者10人からの検体中、夫々4検体、3検体、2検体、1検体及び2検体で末梢血単核細胞からの対応ペプチド反応性細胞傷害性T細胞を誘導した。対照であるEBVペプチドは、同患者10人からの検体中、4検体で末梢血単核細胞からペプチド特異的細胞傷害性T細胞を誘導した。PD−L111−19ペプチド(配列番号1に対応)とPD−L141−50ペプチド(配列番号2に対応)とが、IFN−γを産生する活性発現比率3/10〜4/10と多かった。この知見に基づき、これら二つのペプチドは、HLA−A24陽性腎細胞癌患者の末梢血単核細胞からペプチド特異的細胞傷害性T細胞を最も産生する可能性が極めて高いと判断した。なお、HLAクラスI分子から解離予測半減期に基づき計算された結合スコアが高いものが、活性が高いというわけではないことが分かった。
(試験3:PD−L1発現検討のためのフローサイトメトリー(FACS)分析)
細胞傷害活性試験を行うに先立ち、RCC細胞株でのPD−L1の発現を検討した。その細胞を、ポリエチレン(PE)担持抗PD−L1モノクローナル抗体(eBioscience社製)で染色した。イソタイプ適合PE担持マウスIgG(BD Bioscience社製)を、対照として用いた。HLA−A24分子の発現を検討するために、細胞を、抗HLA−A24モノクローナル抗体(One Lambda社製)に引き続きFITC担持ヤギ抗マウスIgG (H+L)抗体(KPL社製)で染色した。FACS Calibur(BD Biosciences社製)を用いて分析した。その結果を図1に示す。
図1は、PD−L1分子及びHLA−A24分子の発現を示すものである。同図(a)に、3種のRCC細胞株でのPD−L1と、フィトヘムアグルチニン(PHA)刺激T細胞芽細胞との細胞表面発現を、フローサイトメトリーで分析した結果を示し、背景白のものは、対照のPE担持抗体を用いて染色した結果である。同図(b)に、HLA−A24の細胞表面発現を、フローサイトメトリーで分析した結果を示す。背景白のものは、抗HLA−A24モノクローナル抗体を用いずに染色した結果である。
その結果、図1(a)に示すように、SKRC−1及びKK−RCC6細胞株は、明らかにPD−L1陽性であったが、KPK−13細胞でのPD−L1発現は極めて僅かであった。さらに同図(b)に示すように、SKRC−1及びKPK−13の両株は、明らかにHLA−A24分子に対し陽性であったが、KK−RCC6株は、HLA−A24分子に対し陰性であった。これらの結果に基づき、PD−L1及びHLA−A24RCC細胞としてSKRC−1細胞を選択し、PD−L1及びHLA−A24RCC細胞としてKK−RCC6細胞を選択することにした。PD−L1及びHLA−A24RCC細胞は、入手不能であったので、PD−L1low及びHLA−A24RCC細胞をKPK−13細胞として用いることにした。PD−L1及びHLA−A24正常細胞として、PHA刺激T細胞芽細胞を用いることにした。
(試験4:細胞傷害活性試験)
次に、in vitroでPD−L111−19又はPD−L141−50刺激によって誘導した細胞傷害性T細胞が、HLA−A24陽性及びPD−L1発現腎細胞癌細胞に対して細胞傷害活性を示すかについて、測定した。7人のHLA−A24陽性腎細胞癌患者からの末梢血単核細胞を、in vitroでこれらPD−L1ペプチドの何れかで刺激し、CD8陽性T細胞の精製後、SKRC−1、KPK−13、KK−RCC6、及びHLA−A24陽性PHA刺激T細胞芽細胞に対する細胞傷害活性について、検討した。
具体的には、標準的な6時間51Crリリースアッセイ(放出試験)による細胞傷害性T細胞の細胞傷害活性試験を行うために、以下のようにして、ペプチド刺激末梢血単核細胞から、CD8陽性T細胞を、調製した。ペプチド刺激末梢血単核細胞を、先ず抗CD56モノクローナル抗体(mIgG1:DIACLONE, Besancov Cedex社製)で染色し、引き続きDynabeads抗マウスIgG(Invitrogen社製)、Dynabeads抗CD19(Invitrogen社製)、及びDynabeads抗CD4(Invitrogen社製)で処理した。Dynabeads結合細胞は、磁化し、及びネガティブ分離した。CD4陽性T細胞、B細胞、及びNK細胞を取り除いた後、CD8陽性T細胞の百分率は、試験中、約80〜85%であった(データ示さず)。PHA活性化T細胞をHLA−A24陽性ノーマルターゲットのネガティブコントロールとして用いた。
ターゲット細胞として、HLA−A24分子陽性腎細胞癌細胞株であるSKRC−1細胞やKPK−13細胞と、HLA−A24分子陰性腎細胞癌細胞株であるKK−RCC6細胞と、HLA−A24分子陽性幼弱化T細胞であるPHA−blastとを用い、これらに対する前記CD8陽性T細胞(エフェクター細胞ともいう)の細胞傷害活性を以下のようにして、試験した。丸底型96ウェルのプレートで、1ウェル当たり2000個の51Crターゲット細胞を、エフェクター細胞と共に、所定のエフェクター細胞/ターゲット細胞比で、培養した。51Cr放出は、次式に従って算出した。
溶解(%)=(被検体での放出−自然放出)×100/(最大放出−自然放出)
「自然放出」は、エフェクター細胞なしで51Cr標識したターゲット細胞をインキュベートした場合の上清から決定し、「最大放出」は、エフェクター細胞なしで、1%Triton X(和光純薬工業株式会社製)と51Cr標識したターゲット細胞とをインキュベートした場合の上清から決定した。
なお、細胞傷害活性試験の統計学的有意性は、両側スチューデントt検定を用いて判断した。P値が0.05未満であると、統計学的に有意差ありと見做した(P<0.05)。細胞傷害活性試験が陽性である結果のみをまとめて図2に示す。図2中、縦軸は溶解(%)を示し、横軸はエフェクター細胞と、ターゲット細胞との比(E/T:エフェクター細胞/ターゲット細胞)を示す。
図2(a)は、HLA−A24陽性腎細胞癌患者のPD−L111−19ペプチド刺激末梢血単核細胞からの精製CD8陽性T細胞について、6時間51Cr放出試験による4種の異なるターゲットに対する細胞傷害活性の試験結果である。同図(b)は、HLA−A24陽性腎細胞癌患者のPD−L141−50 ペプチド刺激末梢血単核細胞からの精製CD8陽性T細胞について、6時間51Cr放出試験による4種の異なるターゲットに対する細胞傷害活性の試験結果である。
図2から明らかな通り、患者間で細胞傷害活性レベルは、ばらついていたが、4人のHLA−A24陽性腎細胞癌患者からのPD−L111−19ペプチド刺激末梢血単核細胞由来のCD8陽性T細胞は、KPK−13細胞、KK−RCC6細胞、及びHLA−A24陽性PHA芽細胞に対してよりも、SKRC−1細胞に対しての方が、細胞傷害活性のレベルが高かった(同図(a)参照)。さらに3人のHLA−A24陽性腎細胞癌患者からのPD−L141−50ペプチド刺激末梢血単核細胞由来のCD8陽性T細胞も同様に、他のターゲット細胞よりもSKRC−1細胞に対しての方が、細胞傷害活性のレベルが高かった(同図(b)参照)。
これらの結果は、PD−L111−19及びPD−L141−50ペプチドが、HLA−A24陽性PD−L1発現RCC細胞に対して特異的に細胞傷害性T細胞を誘導する能力があることを示している。したがって、これらPD−L1由来ペプチド又はその等価体誘導体にて刺激された末梢血単核細胞は、腎細胞癌細胞に対してHLA−A24拘束性に細胞傷害活性を発揮することを示す。また、これらPD−L1由来ペプチド又はその等価体誘導体が、HLA−A24陽性腎細胞癌患者において腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導でき特異的免疫療法、特に癌ワクチン療法に有用であることを示す。
(試験5:KPK−13におけるPD−L1発現でのIFN−γ処理の効果評価と、PD−L1ペプチドに対する感受性評価)
前記培養方法中、24時間IFN−γ(500U/ml)を加えたこと以外は、同様の処置を行い、IFN−γ処理の効果を評価した。
図3は、KPK−13細胞におけるPD−L1発現でのIFN−γ処理の効果と、そのPD−L1ペプチド刺激細胞傷害性T細胞に対する感受性との結果を示す図である。
同図(a)は、24時間IFN−γ処理(500U/ml)後、KPK−13細胞におけるHLA−A24及びPD−L1の発現をフローサイトメトリーで測定した結果である。背景白のものは、図1と同様に、対照のPE担持抗体での染色の結果、又は抗HLA−A24モノクローナル抗体を用いずに染色した結果である。
同図(b)は、24時間IFN−γ処理(500U/ml)後、KPK−13細胞について、一人の健常人又は二人のLA−A24陽性腎細胞癌患者からのPD−L111−19ペプチド刺激末梢血単核細胞の精製CD8陽性T細胞の感受性の試験の結果である。
IFN−γは、癌細胞でのPD−L1の発現を増強することができる。このことは、PD−L1lowKPK−13細胞がin vitroでそれのPD−L1発現を増強し、その細胞がPD−L1ペプチド反応性細胞傷害性T細胞の有益なターゲットになるということである。図3(a)に示すように、24時間のIFN−γ(500U/ml)処理では、HLA−A24分子の発現における明確な効果は見られないが、IFN−γ処理は、PD−L1発現をある程度まで増加させた。
さらにPD−L111−19ペプチド刺激及びCD8陽性T細胞に対してIFN−γ処理又は未処理のKPK−13細胞の感受性について検討した。その結果、IFN−γ処理は、患者(被験者番号Pt#18)におけるPD−L1ペプチド刺激及びCD8陽性T細胞に対して、KPK−13細胞の感受性を増大させたが、健常人(同番号#1)及び患者(同番号#17)における結果は、逆であった。
前述のように詳細に説明した試験1〜5の結果から、以下の通り本発明の有用性が示された。
癌細胞とT細胞との夫々のPD−1とそのリガンドPD−L1との相互作用を阻害する抗体治療は、癌免疫療法の飛躍的な発展をもたらしているが、この免疫チェックポイントを阻害する療法は、抗癌細胞傷害性T細胞を誘導せず、むしろ癌患者に先在する抗癌細胞傷害性T細胞の機能を復元してしまう。その反面、様々なタイプの癌でPD−L1が発現するので、PD−L1は有望な標的抗原となり得る。
細胞傷害性T細胞は、様々な免疫細胞の中でも最も有効な抗癌作動因子である。ペプチド由来ワクチンは、癌患者への抗癌細胞傷害性T細胞の誘導に有用な治療手段である。腎細胞癌でのPD−L1発現は、患者の予後不良として現れ、癌悪性度の指標となり、この分子が重要な治療上の標的となり得ることを示唆している。そのため、本発明は、HLA−A24陽性腎細胞癌患者での抗癌ワクチン等の医薬製剤として、腎細胞癌の治療や予防に、用いることができることが示された。
PD−L1は、癌細胞のみならず様々な免疫細胞にも発現する。このことから、PD−L1反応性細胞傷害性T細胞が樹枝状細胞を死滅させ、その結果、抗癌性T細胞反応の阻害を引き起こし得ることを示唆している。PD−L1反応性細胞傷害性T細胞が、PD−L1発現樹枝状細胞を死滅させることができることが知られている。PD−1の重要な役割は、炎症反応中にT細胞の活性化を制限し、自己免疫を制限することである。一方、PD−L1反応性細胞傷害性T細胞は、PD−L1発現免疫制御細胞を死滅させ、抗癌性T細胞反応の増大を誘導する。これらPD−L1ペプチドを用いた癌ワクチン療法は、臨床的に、有効となり得る。
IFN−γは、癌細胞におけるPD−L1発現を誘導でき増加できることが知られている。このことは、IFN−γが癌抗原性薬剤としてPD−L1発現を増加できるが、癌細胞において増加したPD−L1が癌反応性細胞傷害性T細胞に対して抑制シグナルを与えてしまう事になるかもしれないことを、意味している。
PD−L1lowKPK−13細胞を用いてこの可能性について検討したところ、IFN−γ処理でPD−L1発現がある程度増加したが、それらのPD−L1ペプチド刺激細胞傷害性T細胞に対する感受性については一貫していないという結果であった。細胞傷害性T細胞に対する感受性の増加が、腎細胞癌患者において認められたが、腎細胞癌患者及び健常人において細胞傷害性T細胞感受性が減少した。
HLA−A24陽性腎細胞癌患者からの末梢血単核細胞をペプチドで二度刺激して17日間培養したところ、この培養方法が、従来のような患者の末梢血単核細胞の限定的にしか効かないのを、克服できることが、明らかとなった。患者の末梢血単核細胞の有効性が制限された時に、この培養系が有用であると考えられる。
本発明の二つのPD−L1ペプチドは、HLA−A24陽性腎細胞癌患者に対するペプチド由来抗癌ワクチンのような医薬製剤の有効成分として有用である。これらPD−L1ペプチドは、腎細胞癌患者のペプチド由来抗癌ワクチンのような治療乃至予防の一助になり得る。PD−L1の発現が、様々なタイプの上皮癌に広く認められるので、これらPD−L1ペプチドが、腎細胞癌に対してのみならず、他のタイプの悪性腫瘍に対しても、治療乃至予防に適用できる。
本発明のPD−L1由来ペプチドやその等価体誘導体、それをコードする核酸分子及びそれのベクター、腎細胞癌の予防又は治療に用いられる医薬製剤、並びに前記ペプチドとHLA−A24との複合体を細胞表面に提示した抗原提示細胞又は腎性細胞癌反応性細胞傷害性T細胞が含有された生物製剤は、腎細胞癌の予防又は治療に好適で、特にHLA−A24陽性腎細胞癌患者において腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導でき特異的免疫療法、特に癌ワクチン療法に有用であることを示す。
本発明により、HLA−A24陽性腎細胞癌患者に対するペプチド基盤免疫療法、特に癌ワクチン療法の選択肢が広がった。本発明により、現在までいくつかの癌ワクチン候補ペプチドが同定されているHLA−A24陽性腎細胞癌患者の治療において癌増殖に関与するとされるPD−L1をターゲットに加えることによりさらなる治療効果の向上に寄与することが期待される。

Claims (8)

  1. 配列番号1又は2で示される、細胞性免疫に認識されるペプチドを有効成分として含有する医薬製剤であって、該ペプチドは、ヒト白血球抗原−A24陽性腎細胞癌の前記細胞性免疫に認識されるプログラム細胞死リガンド1由来ペプチドであることを特徴とする、医薬製剤。
  2. 細胞癌反応性細胞傷害性T細胞への誘導剤であることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
  3. CD8陽性T細胞への誘導剤であることを特徴とする請求項1に記載の医薬製剤。
  4. ヒト白血球抗原−A24陽性腎細胞癌の治療薬又は予防薬であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の医薬製剤。
  5. 前記有効成分が前記ペプチドであって、癌ワクチンであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の医薬製剤。
  6. 配列番号1又は2で示されるペプチドを、ヒト白血球抗原−A24陽性の腎細胞癌の患者から採取された抗原提示能を有する細胞に接触させて誘導たものであることを特徴とする抗原提示細胞。
  7. 配列番号1又は2で示されるペプチドを、ヒト白血球抗原−A24陽性の細胞癌の患者から採取された末梢血単核細胞に接触させて誘導したものであることを特徴とする、腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞。
  8. 配列番号1又は2で示されるペプチドを、ヒト白血球抗原−A24陽性の細胞癌の患者から採取された末梢血単核細胞に接触させて誘導た抗原提示細胞からなる誘導細胞と、
    前記ペプチドを、前記採取された末梢血単核細胞に接触させて誘導した腎細胞癌反応性細胞傷害性T細胞からなる誘導細胞と
    から選ばれる少なくとも何れかの誘導細胞が、含有されていることを特徴とする生物製剤。
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