JP6915596B2 - 潤滑皮膜を有する鋼板およびその製造方法 - Google Patents

潤滑皮膜を有する鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、潤滑皮膜を有する鋼板およびその製造方法に関する。本発明は、特に、プレス成形性に優れた潤滑皮膜を有する鋼板およびその製造方法に関する。
冷延鋼板および熱延鋼板は自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用され、そのような用途では、プレス成形を施されて使用に供される。また、近年のCO排出規制強化の観点から、車体軽量化の目的で高強度鋼板の使用比率が増加する傾向にある。
しかし、特に引張強度(TS)が440MPaを超える高強度鋼板は、強度上昇に伴い、プレス成形時の面圧が上昇するため、また、鋼板の硬さが金型の硬さに近づくため、型カジリが発生しやすいという課題を有している。すなわち、連続プレス成形時に金型の摩耗が激しく、成形品の外観を損なうなど、自動車の生産性に深刻な悪影響を及ぼしている。さらに、そのような高強度鋼板は強度上昇に伴い、材料の伸びが劣る傾向にあるため、プレス成形時に鋼板の破断が起こりやすい。
また、比較的強度の低い鋼板に対しても、部品の一体化や意匠性の向上のため、より複雑な成形を可能とする必要がある。以上のように、更なるプレス成形性の向上が必要である。
冷延鋼板および熱延鋼板のプレス成形性を向上させる方法として、金型への表面処理が挙げられる。金型への表面処理は広く用いられる方法ではあるが、この方法では、金型へ表面処理を施した後、金型の調整を行えないという問題がある。さらに、コストが高くなるという問題もある。従って、鋼板自身のプレス成形性が改善されることが強く要請されている。
鋼板自身のプレス成形性を改善させる方法としては、鋼板の表面に潤滑皮膜を形成させる技術が挙げられる。
例えば、特許文献1には、皮膜形成成分であるアルカリ金属ホウ酸塩と、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛とワックスの混成物を含有する潤滑皮膜を鋼板上に形成させる技術が開示されている。
特許文献2には、リチウムシリケートを皮膜成分として、これにワックスと金属石鹸からなる潤滑剤が配合されて構成される潤滑皮膜を鋼板上に形成させる技術が開示されている。
特許文献3には、シラノール基を含有するポリウレタン樹脂、または、樹脂の鎖伸張剤中に水酸基を含有するポリウレタン樹脂を主成分とする潤滑性皮膜を1〜15μmの厚さで鋼板表面に形成させた、高面圧加工による連続成形性に優れた潤滑処理鋼板が開示されている。
特許文献4には、エポキシ樹脂中に潤滑剤を添加したアルカリ可溶型有機皮膜を鋼板上に形成させる技術が開示されている。
また、特に過酷な条件下で加工される冷間鍛造分野においては、鋼板表面に潤滑皮膜としてリン酸亜鉛皮膜を形成した後にステアリン酸ナトリウムを塗布するボンデ・ボンダリューベ処理を施したのちに加工することが一般的に行われている。
特開2007-275706号公報 特開2002-307613号公報 特開2001-234119号公報 特開2000-167981号公報
しかしながら、特許文献1、2では、潤滑剤としてワックスや難溶性の金属石鹸を含有するため、耐カジリに対しては有効であるが、脱膜性(アルカリ脱脂による除去性)が十分でない場合があった。その結果、アルカリ脱脂で除去されなかった潤滑剤の成分が、りん酸亜鉛処理等が施される塗装工程に持ち込まれ、そこで除去されることで、りん酸亜鉛処理液を汚染してしまい、正常な塗装皮膜が得られなくなる場合があった。また、アルカリ脱脂により除去されたとしても、アルカリ脱脂液中に固体成分が混合することでアルカリ脱脂液を汚染する場合があった。さらに、特許文献1、2の技術では、深絞り成形や張出成形に関して要求特性を十分に満足するものではなかった。
また、特許文献3、4はポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂を使用しており、溶接性や脱膜性が十分ではない場合があった。さらに、ボンデ・ボンダリューベ処理では処理工程の増加によるコスト増や、廃液処理の問題等があり、自動車車体用のプレス成形には適さない。自動車用鋼板は、プレス成形した後に、溶接・接着、脱膜(脱脂)、化成処理、電着塗装を施されて使用されるため、このような後工程を阻害しないことが同時に重要である。さらに、自動車用鋼板は、プレス成形した後に、溶接・接着によりボディの組み立てが行われるが、この際、接着性が劣ると、溶接性が劣る場合と同様に、ボディ組み立て後の車体強度に悪影響を及ぼすため、接着性に優れることが求められる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、プレス成形性に優れ、かつ、脱膜性、接着性に優れる潤滑皮膜を有する鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋼板の表面処理に関して種々の検討を行った。その結果、鋼板表面に、アルキル硫酸エステル塩を含有する潤滑皮膜を形成することで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]鋼板表面の少なくとも片面に、アルキル硫酸エステル塩を含有する潤滑皮膜を有し、
前記アルキル硫酸エステル塩の鋼板片面あたりの付着量が0.20g/m以上3.00g/m以下である、潤滑皮膜を有する鋼板。
[2]前記アルキル硫酸エステル塩の1分子中の炭素原子数が8以上18以下である、[1]に記載の潤滑皮膜を有する鋼板。
[3]さらに、前記潤滑皮膜の表面に、防錆油を塗布してなり、
前記防錆油の鋼板片面あたりの塗布量が0.2g/m以上3.0g/m以下である、[1]または[2]に記載の潤滑皮膜を有する鋼板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の潤滑処理鋼板の製造方法であって、
アルキル硫酸エステル塩を含有する溶液を、鋼板の少なくとも片面に塗布した後、乾燥して、該鋼板の表面に潤滑皮膜を形成する、潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
[5]前記アルキル硫酸エステル塩を含有する溶液が、アルキル硫酸エステル塩を含有するアルコール溶液である、[4]に記載の潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
[6]前記アルコール溶液の温度が、50℃以上、かつ、前記アルコール溶液の沸点以下である、[5]に記載の潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
[7]前記アルコール溶液を鋼板に塗布する時の鋼板の温度が、50℃以上、かつ、前記アルコール溶液の沸点以下である、[5]または[6]に記載の潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
なお、本発明における鋼板には、熱延鋼板、冷延鋼板が含まれる。また、本発明の潤滑皮膜を有する鋼板を、「潤滑処理鋼板」ともいう。
本発明によれば、プレス成形性に優れ、かつ、脱膜性、接着性に優れる潤滑処理鋼板が得られる。
本発明によれば、潤滑処理鋼板と金型等との摩擦係数が顕著に低下する。このため、プレス成形時の面圧が上昇する高強度鋼板において、プレス成形時の割れ危険部位での摺動抵抗が小さく、面圧が高く型カジリの発生が想定される部位において優れたプレス成形性を有する潤滑処理鋼板が得られる。また、複雑な成形を施される比較的強度の低い鋼板に対して、安定的に優れたプレス成形性を有する潤滑処理鋼板が得られる。さらに、本発明により得られる潤滑処理鋼板は、脱膜性に優れるため、脱膜後の化成処理、塗装工程などの後工程を阻害することもない。また、接着性に優れるため、接着剤により接合して使用される部品に適用可能である。
摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。 実施例の条件1で使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。 実施例の条件2で使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。 外観ムラを評価するための評価基準を示した模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
本発明の潤滑処理鋼板は、基材となる鋼板の表面に、アルキル硫酸エステル塩を含有した潤滑皮膜を有することを特徴とする。
アルキル硫酸エステル塩による潤滑メカニズムは以下のように考えられる。摺動時には、金型と鋼板の間には高い面圧が生じ、潤滑油が排除され、金型と鋼板には直接的に接触する部分が生じる。さらに金型と鋼板の直接的な接触による凝着力から鋼板の表面にはせん断応力が生じる。このような場合において、アルキル硫酸エステル塩は、金型と鋼板の直接的な接触を抑制する凝着抑制力がある。また、アルキル硫酸エステル塩は、アルキル硫酸エステル塩に含まれる硫酸エステル基が摺動時に鋼板表面と化学反応を起こし、強度な潤滑膜を形成することで、潤滑性を向上させると考えられる。また、アルキル硫酸エステル塩以外の硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等)の場合、潤滑効果が十分に発揮されない。この原因は明らかではないが、分子構造が複雑となると鋼板上で皮膜化した場合の配列が乱れ、潤滑膜としての強度が低下し得ることが一因として考えられる。
このような効果により高強度鋼板のプレス成形時の高面圧条件や比較的強度の低い鋼板の複雑成形時においても、優れたプレス成形性を有することが可能となると考えられる。
アルキル硫酸エステル塩の付着量は、鋼板片面の付着量として0.20g/m以上3.00g/m以下とする。0.20g/m未満では十分なプレス成形性が得られない。一方、3.00g/mを超えると接着性が劣化する場合がある。アルキル硫酸エステル塩の付着量は、鋼板片面の付着量として0.50g/m以上が好ましく、1.00g/m以上がより好ましい。また、アルキル硫酸エステル塩の付着量は、鋼板片面の付着量として2.50g/m以下が好ましく、2.00g/m以下がより好ましい。
アルキル硫酸エステル塩の1分子中の炭素原子数は8以上18以下であることが好ましい。アルキル硫酸エステル塩の炭素原子数が8以上であると、摺動特性向上効果、すなわち、プレス成形性向上効果がより高められやすくなる。一方、アルキル硫酸エステル塩の炭素原子数が18以下であると、脱膜性がより高められ、自動車製造の際に重要となる化成処理性をより向上しやすくなる。
アルキル硫酸エステル塩は、脱膜性がより高められる点から、アルキル硫酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、もしくはその両方が好ましい。
潤滑皮膜は、アルキル硫酸エステル塩以外の成分を含有してもよい。ただし、脱膜性がより高められる点等から、アルキル硫酸エステル塩以外の成分を含有しないことが好ましい。すなわち、潤滑皮膜は、アルキル硫酸エステル塩のみで形成されることが好ましい。この場合、潤滑皮膜を製造する際に用いた溶媒(水、アルコール等)が乾燥後に潤滑皮膜中に残存してもよい。
また、潤滑皮膜の表面(上層)に、防錆油を0.2g/m以上3.0g/m以下塗布することが好ましい。アルキル硫酸エステル塩は、水溶性が高く、脱膜性に優れる反面、保管や輸送時などに結露等で水滴が付いた場合に脱落する可能性がある。そこで潤滑皮膜の表面に防錆油を塗布することで、潤滑皮膜が保護され、耐水性が向上し、保管や輸送時などでの潤滑皮膜の脱落を防止することができる。また、防錆油を塗布することにより潤滑処理鋼板の防錆効果を高めることができる。
なお、アルキル硫酸エステル塩の付着量は下記の方法で分析することが可能である。
アルキル硫酸エステル塩の付着量は、アセトニトリル/水=1/1溶液で鋼板表面の潤滑皮膜を溶解し、液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計(LC/MS/MS)により定性および定量分析することができる。予め、既知の量の潤滑皮膜成分(アルキル硫酸エステル塩)を含有するアセトニトリル/水=1/1溶液を用いて検量線を作成しておき、上記のようにして溶解した溶液中のアルキル硫酸エステル塩をLC/MS/MSにより測定し検量線法により鋼板表面に付着した潤滑皮膜成分(アルカリ硫酸エステル塩)の付着量を定量分析することができる。なお、防錆油塗布後のアルカリ硫酸エステル塩の付着量についても、トルエンを用いて防錆油を脱脂した後、液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計(LC/MS/MS)により定量分析することができる。
次に、潤滑皮膜の形成方法について説明する。
本発明の潤滑皮膜は、前記アルキル硫酸エステル塩の溶液を鋼板の少なくとも片面に塗布し、乾燥することで形成することができる。前記アルキル硫酸エステル塩の溶液としては、水溶液、アルコール溶液が挙げられる。また、乾燥する際には、加熱乾燥することが好ましい。乾燥過程でムラ(潤滑皮膜成分が凝集して生じる斑点など)が生じやすいため、ムラを抑制する点から5秒以内に乾燥することが好ましい。
また、潤滑皮膜のムラを改善する方法として、アルキル硫酸エステル塩のアルコール溶液を用いることが好ましい。アルキル硫酸エステル塩をアルコールに溶解し、このアルコール溶液を鋼板の少なくとも片面に塗布し、乾燥することでより均一な潤滑皮膜の形成が可能となる。この理由としては、アルコールは表面張力が水に比べて低くかつ脂肪酸塩を溶解可能であるため、鋼板表面に均一に広がることで乾燥後に均一皮膜が得られると考えられる。前記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられるが特にこれらに限定されない。
アルキル硫酸エステル塩のアルコールへの溶解度を高めるため、アルコール溶液を50℃以上に加熱することが好ましい。アルコール溶液の場合は水溶液よりも乾燥過程でのムラは生じにくいが、より均一な皮膜とするためには、アルコール溶液を用いた場合にも5秒以内に乾燥することが好ましい。なお、アルコール溶液の加熱温度は、アルコール溶液の沸点以下であることが好ましい。
また、前記アルコール溶液を鋼板に塗布する時の鋼板の温度を50℃以上としてもよい。前記アルコール溶液を鋼板に塗布する際の鋼板の温度を50℃以上とすることで、乾燥過程でのムラをより抑制しやすくなる。アルコール溶液を鋼板に塗布する時の鋼板の温度は、前記アルコール溶液の沸点以下であることが好ましい。
乾燥方法は特に限定されないが、IH(誘導加熱)や熱風による鋼板の加熱により乾燥させることができる。
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
板厚0.8mmの冷延鋼板A(TS:270MPa)および板厚1.2mmの高強度冷延鋼板B(TS:590MPa)を用い、表1に示す処理液(アルキル硫酸エステル塩の溶液)をバーコーターで塗布し、熱風乾燥器で乾燥して、前記鋼板の表面に潤滑皮膜を形成した。
Figure 0006915596
上記により得られた潤滑処理鋼板に対して、鋼板表面の潤滑皮膜成分(アルキル硫酸エステル塩)の付着量を測定した。また、プレス成形性を評価する手法として摩擦係数の測定を実施し摺動特性を評価した。さらに脱膜性を評価する方法としてアルカリによる脱膜性を評価した。また、外観ムラ、耐水性、接着性についても評価を実施した。アルキル硫酸エステル塩の付着量(皮膜付着量)、プレス成形性(摺動特性)、脱膜性、外観ムラ、耐水性、接着性の評価方法は以下の通りである。
(1)潤滑皮膜組成および付着量分析
鋼板に形成された潤滑皮膜組成および付着量の測定には液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計(LC/MS/MS)を使用した。30mm角に採取した潤滑処理鋼板の試料をビーカーに入れ、アセトニトリル/水=1/1を40mL加えて30分間超音波抽出した。これを2回繰り返し、100mLに定容した溶液を測定に用いた。そして、予め作成しておいた検量線から、潤滑皮膜成分(アルキル硫酸エステル塩)の付着量(皮膜付着量)を求めた。
(2)プレス成形性(摺動特性)の評価方法
プレス成形性を評価するために、潤滑処理鋼板の各供試材の摩擦係数μを以下のようにして測定した。
図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1(以下、試料1という)が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押し付け力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部でレール9の上方に取付けられている。なお、潤滑油として、スギムラ化学工業(株)製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを試料1の表面に塗布して試験を行った。
図2、図3は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料1の摺動方向長さ5mm、摺動方向両端の下部は曲率1.0mmRの曲面で構成され、試料1が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。図3に示すビード6の形状は幅10mm、試料1の摺動方向長さ59mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料1が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ50mmの平面を有する。
摩擦係数測定試験は以下に示す2条件で行った。
[条件1]
図2に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):100cm/minとした。
[条件2]
図3に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):20cm/minとした。
供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。この摩擦係数μが小さい程、プレス成形性に優れると評価できる。具体的には、条件1での摩擦係数μが0.120以下で、かつ、条件2での摩擦係数μが0.140以下を、プレス成形性に優れるとして評価合格とした。
なお、この試験で評価合格であれば、高面圧条件や複雑成形時においても優れたプレス成形性を有すると評価できる。条件1での摩擦係数μは、0.100以下が好ましく、0.090以下がより好ましい。条件2での摩擦係数μは、0.120以下が好ましく、0.110以下がより好ましい。
(3)脱膜性の評価方法
脱膜性は、供試材をアルカリ脱脂液(FC−E6403、日本パーカライジング(株)製)に30秒間浸漬し、その後純水で30秒間水洗した後の鋼板表面に残存する潤滑皮膜成分(アルキル硫酸エステル塩)の付着量(皮膜残存量)で評価した。皮膜残存量が少ない程、脱膜性に優れると評価できる。
(4)外観ムラの評価方法
外観ムラは目視により評価した。図4に示す外観見本を基準として、直径3mm超の斑点(潤滑皮膜成分が凝集した部分)が存在せず均一な潤滑皮膜を○(評価合格:外観に特に優れる)、直径3mm超の斑点がまばらに多数存在する潤滑皮膜を×(評価不合格:外観に劣る)として評価した。
(5)耐水性の評価方法
耐水性は、防錆油を表3に示す塗布量で表面に塗布した供試材を、水道水中に30秒間浸漬した後に鋼板表面に残存する潤滑皮膜成分(アルキル硫酸エステル塩)の付着量(水浸漬後皮膜付着量)を求めることで評価した。なお、防錆油として、JXTGエネルギー(株)製の防錆油アンチラストP2000を用いて試験を行った。耐水性が良好な場合、水道水への浸漬前後で皮膜の付着量の変化が小さい。
(6)接着性の評価方法
潤滑処理鋼板を100×25mmのサイズに加工した試験片を防錆油に浸漬後24時間垂直に立て掛けて余分な油を除去したものを2枚使用し、25mm×13mmの部分にエポキシ系接着剤を0.2mm厚に均一に塗布後、クリップで重ね合わせて挟み、180℃で20分焼付けし、乾燥・硬化させた。冷却後、オートグラフ試験機によりせん断引張試験を行い、せん断接着力を測定した。潤滑皮膜を形成していない鋼板(原板)を2枚使用して同様のせん断引張試験を行った場合を基準として、接着力同等(90%以上)を○(評価合格、接着力に優れる)、劣るもの(90%未満)を×(評価不合格、接着力に劣る)として評価した。
以上より得られた結果を表2、3に示す
Figure 0006915596
Figure 0006915596
表2に示した結果から以下のことがわかる。No.2〜6、8〜12、15〜17、20〜24は、発明例であり、プレス成形性に優れ、かつ、脱膜性、接着性に優れる。アルキル硫酸エステル塩のアルコール溶液を用いて潤滑皮膜を形成したNo.8〜12、15〜17、20〜24は、外観ムラの評価にも優れる。
一方、潤滑皮膜なしの原板であるNo.1および19の比較例はプレス成形性に劣る。アルキル硫酸エステル塩以外の硫酸エステル塩を用いたNo.7、13は、プレス成形性に劣る。No.14は潤滑皮膜成分の付着量(皮膜付着量)が不足しているという点で比較例であり、プレス成形性に劣る。No.18は、皮膜付着量が3.00g/mを超えており、接着性に劣る。
また、表3に示した結果から以下のことがわかる。防錆油を塗布していないNo.31および防錆油の塗布量が不足しているNo.32は水浸漬後の潤滑皮膜成分の付着量(水浸漬後皮膜付着量)が元の皮膜付着量から大幅に減少しており、耐水性に劣る。一方、十分な防錆油が塗布されているNo.33〜36は耐水性に優れる。
本発明の潤滑処理鋼板はプレス成形性に優れることから、自動車車体用途を中心に広範な分野で適用できる。
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
9 レール
N 押付荷重
F 摺動抵抗力(引き抜き荷重)

Claims (8)

  1. 鋼板表面の少なくとも片面に、アルキル硫酸エステル塩を含有する潤滑皮膜を有し、
    前記アルキル硫酸エステル塩の鋼板片面あたりの付着量が0.20g/m以上3.00g/m以下である、潤滑皮膜を有する鋼板。
  2. 前記アルキル硫酸エステル塩の1分子中の炭素原子数が8以上18以下である、請求項1に記載の潤滑皮膜を有する鋼板。
  3. さらに、前記潤滑皮膜の表面に、防錆油を塗布してなり、
    前記防錆油の鋼板片面あたりの塗布量が0.2g/m以上3.0g/m以下である、請求項1または2に記載の潤滑皮膜を有する鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法であって、
    アルキル硫酸エステル塩を含有する溶液を、鋼板の少なくとも片面に塗布した後、乾燥して、該鋼板の表面に潤滑皮膜を形成する、潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
  5. 前記アルキル硫酸エステル塩を含有する溶液が、アルキル硫酸エステル塩を含有するアルコール溶液である、請求項4に記載の潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
  6. 前記アルコール溶液の温度が、50℃以上、かつ、前記アルコール溶液の沸点以下である、請求項5に記載の潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
  7. 前記アルコール溶液を鋼板に塗布する時の鋼板の温度が、50℃以上、かつ、前記アルコール溶液の沸点以下である、請求項5または6に記載の潤滑皮膜を有する鋼板の製造方法。
  8. 前記アルキル硫酸エステル塩が、アルキル硫酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、もしくはその両方である、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑皮膜を有する鋼板。
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