以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る光偏向システムおよび故障判定方法の実施形態を詳細に説明する。
まず、図1〜図4を参照して、本発明の実施形態に係る駆動装置を適用した光走査システムについて詳細に説明する。
図1に、光走査システムの一例の概略図を示す。図1に示すように、光走査システム10は、駆動装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を光偏向器13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。
光走査システム10は、駆動装置11、光源装置12、反射面14を有する光偏向器13により構成される。
駆動装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。光偏向器13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
駆動装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12および光偏向器13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12および光偏向器13に駆動信号を出力する。
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向または2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた駆動装置11の制御によって、光偏向器13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光を偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。なお、光偏向器の詳細および本実施形態の駆動装置による制御の詳細については後述する。
次に、図2を参照して、光走査システム10の一例のハードウェア構成について説明する。図2は、光走査システム10の一例のハードウェア構成図である。図2に示すように、光走査システム10は、駆動装置11、光源装置12および光偏向器13を備え、それぞれが電気的に接続されている。
[駆動装置]
このうち、駆動装置11は、CPU20、RAM(Random Access Memory)21
、ROM(Read Only Memory)22、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26を備えている。CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、駆動装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。
RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25および光偏向器ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
光源装置ドライバ25は、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。光偏向器ドライバ26は、入力された制御信号に従って光偏向器13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
駆動装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、駆動装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、駆動装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。本実施形態に係る駆動装置11は、CPU20の命令および図2に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
[駆動装置の機能構成]
次に、図3を参照して、光走査システム10の駆動装置11の機能構成について説明する。図3は、光走査システムの駆動装置の一例の機能ブロック図である。図3に示すように、駆動装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、制御手段を構成し、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。
駆動信号出力部31は、印加手段を構成し、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または光偏向器13に駆動信号を出力する。駆動信号出力部31(印加手段)は、例えば、駆動信号を出力する対象ごとに設けられてもよい。
駆動信号は、光源装置12または光偏向器13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、光偏向器13においては、光偏向器13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。なお、駆動装置は、光源装置12や受光装置等の外部装置から光源の照射タイミングや受光タイミングを取得し、これらを光偏向器13の駆動に同期するようにしてもよい。
[光走査処理]
次に、図4を参照して、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について説明する。図4は、光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および光偏向器13に出力する。
ステップS14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12および光偏向器13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。なお、上記光走査システム10では、1つの駆動装置11が光源装置12および光偏向器13を制御する装置および機能を有しているが、光源装置用の駆動装置および光偏向器用の駆動装置と、別体に設けてもよい。
また、上記光走査システム10では、一つの駆動装置11に光源装置12および光偏向器13の制御部30の機能および駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した駆動装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した光偏向器13と駆動装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
[画像投影装置]
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の駆動装置を適用した画像投影装置について詳細に説明する。図5は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、図6はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
図5に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザである観察者(運転者402)に向かう。
これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザに虚像を視認させる構成にしてもよい。
図6に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメータレンズ502,503,504と、2つのダイクロイックミラー505,506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する光偏向器13にて偏向される。
そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R,501G,501B、コリメータレンズ502,503,504、ダイクロイックミラー505,506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。レーザ光源501R,501G,501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ502,503,504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505,506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する光偏向器13によって二次元走査される。光偏向器13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
光偏向器13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この光偏向器13の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した光偏向器13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。
例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
[光書込装置]
次に、図7及び図8を参照して、本実施形態の駆動装置11を適用した光書込装置について詳細に説明する。図7は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、図8は、光書込装置の一例の概略図である。
図7に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
図8に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメータレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する光偏向器13により1軸方向または2軸方向に偏向される。
そして、光偏向器13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射ミラー部602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。また、光源装置12および反射面14を有する光偏向器13は、駆動装置11の制御に基づき駆動する。このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。
また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。上記光書込装置に適用される反射面14を有した光偏向器13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。
また、光偏向器13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また光偏向器13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
[物体認識装置]
次に、図9及び図10を参照して、上記本実施形態の駆動装置を適用した物体認識装置について詳細に説明する。
図9は、物体認識装置の一例であるレーザレーダ装置を搭載した自動車の概略図である。また、図10はレーザレーダ装置の一例の概略図である。物体認識装置は、対象方向の物体を認識する装置であり、例えばレーザレーダ装置である。
図9に示すように、レーザレーダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702を認識する。
図10に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する光偏向器13で1軸もしくは2軸方向に走査される。そして、投射光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12および光偏向器13は、駆動装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。すなわち、反射光は受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。
信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、または受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
反射面14を有する光偏向器13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。このようなレーザレーダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。
上記物体認識装置では、一例としてのレーザレーダ装置700の説明をしたが、物体認識装置は、反射面14を有した光偏向器13を駆動装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702を認識する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
[パッケージング]
次に、図11を参照して、本実施形態の駆動装置により制御される光偏向器のパッケージングについて説明する。図11は、パッケージングされた光偏向器の一例の概略図である。
図11に示すように、光偏向器13は、パッケージ部材801の内側に配置される取付部材802に取り付けられ、パッケージ部材801の一部が透過部材803で覆われて、密閉されることでパッケージングされる。さらに、パッケージ内は窒素等の不活性ガスが密封されている。これにより、光偏向器13の酸化による劣化が抑制され、さらに温度等の環境の変化に対する耐久性が向上する。
次に、以上に説明した光偏向システム、光走査システム、画像投影装置、光書込装置、物体認識装置に使用される光偏向器の詳細および本実施形態の駆動装置による制御の詳細について説明する。
[光偏向器の詳細]
まず、図12〜図14を参照して、光偏向器について詳細に説明する。図12は、2軸方向に光偏向可能な両持ちタイプの光偏向器の平面図である。図13は、図12のP−P’断面図である。図14は図12のQ−Q’断面図である。
図12に示すように、光偏向器13は、入射した光を反射するミラー部101と、ミラー部101に接続され、ミラー部101をY軸に平行な第1軸周りに駆動する第1駆動部110a、110bと、ミラー部101および第1駆動部110を支持する第1支持部120と、第1支持部120に接続され、ミラー部101および第1支持部110をX軸に平行な第2軸周りに駆動する第2駆動部130a、130bと、第2駆動部130を支持する第2支持部140と、第1駆動部110および第2駆動部130および駆動装置11に電気的に接続される電極接続部150と、を有する。
光偏向器13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理等により成形し、成形した基板上に反射面14や第1圧電駆動部112a、112b、第2圧電駆動部131a〜131f、132a〜132f、電極接続部150等を形成することで、各構成部が一体的に形成されている。なお、上記の各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる第1のシリコン層の上に酸化シリコン層162が設けられ、その酸化シリコン層の上にさらに単結晶シリコンからなる第2のシリコン層が設けられている基板である。以降、第1のシリコン層をシリコン支持層161、第2のシリコン層をシリコン活性層163とする。
シリコン活性層163は、X軸方向またはY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163のみで構成された部材は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば光偏向器13の形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
ミラー部101は、例えば、円形状のミラー部基体102と、ミラー部基体の+Z側の面上に形成された反射面14とから構成される。ミラー部基体102は、例えば、シリコン活性層163から構成される。反射面14は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成される。また、ミラー部101は、ミラー部基体102の−Z側の面にミラー部補強用のリブが形成されていてもよい。リブは、例えば、シリコン支持層161および酸化シリコン層162から構成され、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制することができる。
第1駆動部110a、110bは、ミラー部基体102に一端が接続し、第1軸方向にそれぞれ延びてミラー部101を可動可能に支持する2つのトーションバー111a、111bと、一端がトーションバーに接続され、他端が第1支持部120の内周部に接続される第1圧電駆動部112a、112bと、から構成される。
図13に示すように、トーションバー111a、111bはシリコン活性層163から構成される。また、第1圧電駆動部112a、112bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203および下部電極201は、例えば金(Au)または白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
図12に戻り、第1支持部120は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、ミラー部101を囲うように形成された矩形形状の支持体である。
第2駆動部130a、130bは、例えば、折り返すように連結された複数の第2圧電駆動部131a〜131f、132a〜132fから構成されており、第2駆動部130a、130bの一端は第1支持部120の外周部に接続され、他端は第2支持部140の内周部に接続されている。このとき、第2駆動部130aと第1支持部120の接続箇所および第2駆動部130bと第1支持部120の接続箇所、さらに第2駆動部130aと第2支持部140の接続箇所および第2駆動部130bと第2支持部140の接続箇所は、反射面14の中心に対して点対称となっている。
図14に示すように、第2圧電駆動部130a、130bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203および下部電極201は、例えば金(Au)または白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
図12に戻り、第2支持部140は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、ミラー部101、第1駆動部110a、110b、第1支持部120および第2駆動部130a、130bを囲うように形成された矩形の支持体である。
電極接続部150は、例えば、第2支持部140の+Z側の面上に形成され、第1圧電駆動部112a、112b、第2圧電駆動部131a〜131fの各上部電極203および各下部電極201,および駆動装置11にアルミニウム(Al)等の電極配線を介して電気的に接続されている。なお、上部電極203または下部電極201は、それぞれが電極接続部150と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。
なお、本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層163の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば−Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面および他面の双方に設けても良い。
また、ミラー部101を第1軸周りまたは第2軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。例えば、トーションバー111a、111bや第1圧電駆動部112a、112bが曲率を有した形状を有していてもよい。
さらに、第1駆動部110a、110bの上部電極203の+Z側の面上、第1支持部120の+Z側の面上、第2駆動部130a、130bの上部電極203の+Z側の面上、第2支持部140の+Z側の面上の少なくともいずれかに酸化シリコン膜からなる絶縁層が形成されていてもよい。
このとき、絶縁層の上に電極配線を設け、また、上部電極203または下部電極201と電極配線とが接続される接続スポットに、開口部として部分的に絶縁層を除去または絶縁層を形成しないことにより、第1駆動部110a、110b、第2駆動部130a、130bおよび電極配線の設計自由度をあげ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。なお、絶縁層は絶縁性を有する部材であればよく、また、反射防止材としての機能を備えさせてもよい。
[駆動装置の制御の詳細]
次に、光偏向器の第1駆動部および第2駆動部を駆動させる駆動装置の制御の詳細について説明する。
第1駆動部110a、110b、第2駆動部130a、130bが有する圧電部202は、分極方向に正または負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば、伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第1駆動部110a,110b,第2駆動部130a、130bは、上記の逆圧電効果を利用してミラー部101を可動させる。
このとき、ミラー部101の反射面14に入射した光束が偏向される角度を振れ角とよぶ。圧電部に電圧を印加していないときの振れ角をゼロとし、その角度よりも偏向角度が大きい場合を正の振れ角、小さい場合を負の振れ角とする。
まず、第1駆動部110a、110bを駆動させる駆動装置11の制御について説明する。第1駆動部110a、110bでは、第1圧電駆動部112a、112bが有する圧電部202に、上部電極203および下部電極201を介して駆動電圧が並列に印加されると、それぞれの圧電部202が変形する。この圧電部202の変形による作用により、第1圧電駆動部112a、112bが屈曲変形する。
その結果、2つのトーションバー111a、111bのねじれを介してミラー部101に第1軸周りの駆動力が作用し、ミラー部101が第1軸周りに可動する。第1駆動部110a、110bに印加される駆動電圧は、駆動装置11によって制御される。
そこで、駆動装置11によって、第1駆動部110a、110bが有する第1圧電駆動部112a、112bに所定の正弦波形の駆動電圧を並行して印加することで、ミラー部101を、第1軸周りに所定の正弦波形の駆動電圧の周期で可動させることができる。
特に、例えば、正弦波形電圧の周波数がトーションバー111a、111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合、トーションバー111a、111bのねじれによる機械的共振が生じるのを利用して、ミラー部101を約20kHzで共振振動させることができる。
次に、図15および図16を参照して、第2駆動部130a、130bを駆動させる駆動装置11の制御について説明する。
図15は、光偏向器13の第2駆動部130の駆動を模式的に表した模式図である。斜線で表されている領域がミラー部101等である。
第2駆動部130aが有する複数の第2圧電駆動部131a〜131fのうち、最もミラー部101に距離が近い第2圧電駆動部(131a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部131b、131d、131fを圧電駆動部群Aとする。また、さらに第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a〜132fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて奇数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部132a、132c、132eを同様に圧電駆動部群Aとする。圧電駆動部群Aは、駆動電圧が並行に印加されると、図15(i)に示すように、圧電駆動部群Aが同一方向に屈曲変形し、正の振れ角となるようにミラー部101が第2軸周りに可動する。
また、第2駆動部130aが有する複数の第2圧電駆動部131a〜131fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(131a)から数えて奇数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部131a、131c、131eを圧電駆動部群Bとする。
また、さらに第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a〜132fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち、第2圧電駆動部132b、132d、132fを同様に圧電駆動部群Bとする。圧電駆動部群Bは、駆動電圧が並行に印加されると、図15(iii)に示すように、圧電駆動部群Bが同一方向に屈曲変形し、負の振れ角となるようにミラー部101が第2軸周りに可動する。
図15(i)、(iii)に示すように、第2駆動部130aまたは130bでは、圧電駆動部群Aが有する複数の圧電部202または圧電駆動部群Bが有する複数の圧電部202を屈曲変形させることにより、屈曲変形による可動量を累積させ、ミラー部101の第2軸周りの振れ角を大きくすることができる。
例えば、図12に示すように、第2駆動部130a、130bが、第1支持部の中心点に対して第1支持部に点対称で接続されている。そのため、圧電駆動部群Aに駆動電圧を印加すると、第2駆動部130aでは第1支持部と第2駆動部130aの接続部に+Z方向に動かす駆動力が生じ、第2駆動部130bでは第1支持部と第2駆動部130bの接続部に−Z方向に動かす駆動力が生じ、可動量が累積されてミラー部101の第2軸周りの振れ角度を大きくすることができる。
また、図15(ii)に示すように、電圧が印加されていない、または、電圧印加による圧電駆動部群Aによるミラー部101の可動量と電圧印加による圧電駆動群Bによるミラー部101の可動量が釣り合っている時は、振れ角はゼロとなる。
図15(i)〜図15(iii)を連続的に繰り返すように第2圧電駆動部に駆動電圧を印加することにより、ミラー部を第2軸周りに駆動させることができる。
[駆動電圧]
第2駆動部130a、130bに印加される駆動電圧は、駆動装置11によって制御される。図16を参照して、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧Aまたは第1駆動電圧と称する場合がある)、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧Bまたは第2駆動電圧と称する場合がある)について説明する。また、駆動電圧A(第1駆動電圧)を印加する印加手段を第1印加手段、駆動電圧B(第2駆動電圧)を印加する印加手段を第2印加手段とする。
図16(a)は、光偏向器の圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形の一例である。図16(b)は、光偏向器の圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bの波形の一例である。図16(c)は、駆動電圧Aの波形と駆動電圧Bの波形を重ね合わせた図である。
図16(a)に示すように、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形は、例えば、ノコギリ波状の波形であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Aの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrA、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfAとしたとき、例えば、TrA:TfA=9:1となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTrAの比率を駆動電圧Aのシンメトリという。
図16(b)に示すように、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bの波形は、例えば、ノコギリ波状の波形であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Bの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrB、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfBとしたとき、例えば、TfB:TrB=9:1となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTfBの比率を駆動電圧Bのシンメトリという。また、図16(c)に示すように、例えば、駆動電圧Aの波形の周期TAと駆動電圧Bの波形の周期TBは、同一となるように設定されている。
なお、上記の駆動電圧Aおよび駆動電圧Bのノコギリ波状の波形は、例えば、正弦波の重ね合わせによって生成される。また、本実施形態では、駆動電圧A、Bとしてノコギリ波状の波形の駆動電圧を用いているが、これに限らず、ノコギリ波状の波形の頂点を丸くした波形の駆動電圧や、ノコギリ波状の波形の直線領域を曲線とした波形の駆動電圧など、光偏向器のデバイス特性に応じて波形を変えることも可能である。この場合、シンメトリは、一周期に対する立ち上がり時間の比率、または一周期に対する立ち下がり時間の比率となる。このとき、立ち上がり時間、立ち下がり時間のどちらを基準にするかは、任意に設定してもよい。
ここで、図17に示すように、本実施形態の光偏向器13には、圧電部材の一例である圧電部202の故障を検知する機能を有する駆動装置11が接続されている。ここでは、光偏向器13と、駆動装置11とを含んで本発明の光偏光システムの一例である光偏光システム2000が構成される。
以下では、圧電駆動部群Aに含まれる複数の圧電部202の各々を「第1の圧電部202A(「第1の圧電部材」に相当)」と称し、圧電駆動部群Bに含まれる複数の圧電部202の各々を「第2の圧電部202B(「第2の圧電部材」に相当)」と称する。以下では両者を区別しない場合は、単に「圧電部202」と称する。本実施形態では、第1の圧電部202Aおよび第2の圧電部202Bの各々には、それぞれ独立した駆動電圧(第1駆動電圧、第2駆動電圧)が印加され、それぞれのグランド側は共通のグランド配線に接続されている。説明の便宜上、図17では、第1の圧電部202Aおよび第2の圧電部202Bは1つずつ示されているが、実際には、それぞれが複数個ずつ存在する。
図18は、圧電部202と配線構造を模式的に示す図である。副走査方向において第1の圧電部202Aおよび第2の圧電部202Bの各々へ給電するには、図に示すA−GNDの各端子からの配線が接続された第1の圧電部202A、および、B−GNDの各端子からの配線が接続された第2の圧電部202Bの各々へ駆動電圧を印加する。ここでは、GNDの端子から配線されるグランド配線は、第1の圧電部202Aおよび第2の圧電部202Bに対して共通の配線となる。
圧電部202は誘電層であり、通常は高い抵抗値(絶縁抵抗)を有するが、経年劣化によって内部に欠陥が発生し圧電部がショートして動作不良を引き起こす可能性がある。これらの不良は高温環境で加速されることが知られており、100℃以上を想定する車載環境においてとくに懸念される。
不良のモードとしては、圧電部202を構成する圧電材料内部のイオン移動や粒界抵抗の低下、電極と圧電部202の密着性が低下することで圧電部202にかかる応力が不均一になること、微小な初期不良クラックが存在し圧電部202が伸縮を繰り返すことでクラックが成長すること、分極の不均一性により動作時の内部応力が増大することなどが考えられる。また、配線と圧電部202への電極を通電している接合部は電流が集中するため発熱量が大きくなり配線をショートさせ動作停止につながる。
図17の説明を続ける。前述したように、光偏光器13は、光源装置12(光源)からの光を反射する反射面14を有するミラー部101(「ミラー」として機能)、ミラー部101を支持する第1支持部120(「可動枠」として機能)、第1支持部120を回転駆動するための第2駆動部130a、130b(「カンチレバー」として機能)を備える。そして、第駆動部130a、130bには、第1支持部120を回転駆動する駆動力を発生させるための複数の圧電部202が設けられている。
また、図17の例では、駆動装置11の構成として本発明に関する構成を主に例示しているが、実際には駆動装置11は前述の光源装置ドライバ25などを有している。
図17に示すように、駆動装置11は、光偏向器ドライバ26と、電流検知部1010と、故障検知部1020と、を備える。この例では、電流検知部1010および故障検知部1020の各々の機能は、CPU20やFPGA23等により実現される。なお、これらの機能は専用のハードウェア回路(例えば半導体集積回路等)で実現されてもよいし、CPU20がROM22等に格納されたプログラムを実行することにより実現されてもよい。
光偏光器ドライバ26は、「駆動部」の一例であり、第1の圧電部202Aおよび第2の圧電部202Bの各々に駆動電圧を印加する。図17の例では、光偏光器ドライバ26は、第1駆動電圧を発生する第1駆動電圧発生装置260Aと、第2駆動電圧を発生する第2駆動電圧発生装置260Bと、を含む。
図19は、第1駆動電圧および第2駆動電圧の各々の駆動波形を示す図である。ここでは、第1駆動電圧および第2駆動電圧の各々の波形および位相は互いに異なる。この例では、駆動波形の形状は鋸形であり、第1駆動電圧および第2駆動電圧は、位相差が180℃の逆位相の電圧である。また、図20は、グランド配線で検知される電流の波形を示す図である。
圧電部202である誘電層は、印加電圧Vに対してI=C(dV/dt)<C:静電容量>の充放電電流を流すため、電流波形は正と負にピークを持つ。正方向の電流ピークが第1の圧電部202Aに流れる電流(以下、「第1の電流A」と称する)のピークであり、負方向の電流ピークが第2の圧電部202Bに流れる電流(以下、「第2の電流B」と称する)のピークである。図20に示す電流は誘電層の静電容量Cによるものなので、故障とは関係がなく、正常な動作をしているときの電流波形である。
一方、絶縁抵抗の低下があった場合はリーク電流が増加するため、電流波形はリーク電流分がオフセットされて表現される。図20において、充放電電流が流れる期間に対応する領域に対して左側の領域は第1の圧電部202Aへの駆動電圧(第1駆動電圧)が大きく、右側は第2の圧電部202Bへの駆動電圧(第2駆動電圧)が大きいので、左側の領域において、第1駆動電圧に対応する基準電流値から、実際に流れた第1の電流Aの電流値の差分を示すオフセット(以下、「第1のオフセット」と称する)が大きい場合は、第1の圧電部202Aのリークによる電流が増加していることを意味する。また、右側の領域において、第2駆動電圧に対応する基準電流値から、実際に流れた第2の電流Bの電流値の差分を示すオフセット(以下、「第2のオフセット」と称する)が大きい場合は、第2の圧電部202Bのリークによる電流が増加していることを意味する。つまり、電流の位相とオフセットを見ることで、第1の圧電部202Aまたは第2の圧電部202Bのリークによる電流の状態を検知することができる。図21は、第1の圧電部202Aのリークによる電流が増大していることを表す図である。なお、オフセットとは、基準となる電流値から実際に流れた電流値の差分である。
この例では、図22に示すように、第1駆動電圧と第2駆動電圧は、電圧上昇部の中間点の位相差にて同期をとる。つまり、中間点から電圧のピークまでの位相差を駆動信号として制御する(駆動電圧を印加する制御を行う)。したがって、リーク電流を検知する位相範囲は、駆動信号の設定値に応じて決定することができる。駆動電圧の駆動周波数が50Hz、デューティ比50%の第1駆動電圧の電圧上昇部が80%とすると、中間点からピーク電圧までの時間(位相差)は20msec×(80%/2)=8msecと算出できる。
図17に戻って説明を続ける。電流検知部1010は、第1の圧電部202Aおよび第2の圧電部202Bの各々が共通に接続されるグランド配線を流れる電流を検知する。この例では、グランドに設けられたセンス抵抗を流れる電流値(グランド配線を流れる電流の値に相当)は電圧波形を読み取ることで検知できる。この例では、波形と位相から電流値を検知するので、電流検知部1010はデジタイジング測定を行う。サンプリングレートとしては20μsec程度が必要であり、これを処理する性能が、電流検知部1010の機能を実現するCPU20またはFPGA23に要求される。例えば駆動電圧の駆動周波数を50Hzとした場合、一周期は0.02secであり、この区間のデータ点数を1000とすると、サンプリングレートは20μsecとなる。
故障検知部1020は、電流検知部1010により検知される電流の位相に基づいて、第1の圧電部202Aを流れる第1の電流Aと、第2の圧電部202Bを流れる第2の電流Bと、を識別し、第1の電流Aと第2の電流Bに基づいて、第1の圧電部202Aまたは第2の圧電部202Bの故障の発生を検知する。より具体的には、故障検知部1020は、第1のオフセットが閾値を超える場合は、第1の圧電部202Aの故障の発生を検知する。また、故障検知部1020は、第2のオフセットが閾値を超える場合は、第2の圧電部202Bの故障の発生を検知する。また、故障検知部1020は、第1の電流Aおよび第2の電流Bの履歴を記録するための記憶素子を有している。ここでは、故障検知部1020は、MEMSスキャナである光走査システム10を稼働しながら同時に故障検知を行うことができる。
故障検知部1020は、以上のようにして故障を検知した場合、その旨(アラ―ト)を出力(映像出力でもよいし音声出力でもよい)する制御を行うことができる。また、故障検知部1020は、MEMSスキャナである光走査システム10の動作を停止させる制御を行うこともできるし、圧電部202への負荷を減らす低負荷モードへ移行するための制御(例えば駆動電圧を低減して走査角を小さくする制御など)を行うこともできる。
図23は、第1の電流Aおよび第2の電流Bの各々の経時的変化の履歴の一例を示す図である。図23の例では、「×」の時点で第1の圧電部202Aの配線が断線して機能停止している。この例では、オフセットが1mA以上の場合は、いつ故障してもおかしくない状態であることが経験的に判明しているため、上記閾値として「1mA」が設定されている。なお、これに限らず、圧電部202の設計や圧電素子の材質によって故障を予見する判断値は変わってくるため、寿命評価の事前実験などによって電流値と故障の関係を明確にして閾値を設定することができる。また、例えば駆動電圧に応じて閾値を可変に設定することもできるし、温度センサによって検知された温度の変化に応じて閾値を可変に設定することもできる。要するに、閾値は設計条件等に応じて様々な値に設定可能である。
以上に説明したように、本実施形態では、複数の圧電部202に含まれる第1の圧電部202A(圧電駆動部群Aに含まれる圧電部202)および第2の圧電部202B(圧電駆動部群Bに含まれる圧電部202)の各々が共通に接続されるグランド配線で検知される電流の位相に基づいて、第1の圧電部202Aを流れる第1の電流Aと、第2の圧電部202Bを流れる第2の電流Bと、を識別する。そして、第1の電流Aと第2の電流Bに基づいて、第1の圧電部202Aまたは第2の圧電部202Bの故障の発生を検知する。これにより、誤検知のリスクを抑えつつ故障を予見することができるという有利な効果を達成できる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、上述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
また、上述した実施形態の光走査システム10で実行されるプログラム(CPU20が実行するプログラム)は、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよいし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、各種プログラムを、ROM等の不揮発性の記録媒体に予め組み込んで提供するように構成してもよい。