以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
[光走査システム]
まず、図面を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置を適用した光走査システムについて詳細に説明する。図1は、光走査システムの一例の概略図である。
図1に示すように、光走査システム10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を光偏向器13が有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。光偏向器13により光走査可能な領域である走査可能領域16は、有効走査領域17を含む。被走査面15には、走査可能領域16内、かつ、有効走査領域17外に、第1の受光器18と第2の受光器19が設けられている。第1の受光器18と第2の受光器19の配置の詳細については後述する。
光走査システム10は、制御装置11,光源装置12、光偏向器13、第1の受光器18、第2の受光器19により構成される。
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。光源装置12は、例えばレーザ光を照射するレーザ装置である。光偏向器13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。被走査面15は、例えばスクリーンである。第1の受光器18および第2の受光器19は、例えば光を受光して受光信号を出力するPD(Photo Diode)である。
制御装置11は、外部装置等から取得した光走査情報に基づいて光源装置12および光偏向器13の制御信号を生成し、制御信号に基づいて光源装置12および光偏向器13に駆動信号を出力する。また、光源装置12から出力される信号、光偏向器13から出力される信号、第1の受光器18から出力される第1の受光信号、第2の受光器19から出力される第2の受光信号に基づいて、光源装置12と光偏向器13の同期や制御信号の生成を行う。
光源装置12は、制御装置11から入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。
光偏向器13は、制御装置11から入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向(一次元方向)または2軸方向(二次元方向)の少なくともいずれかに可動させ、光源装置12からの光を偏向する。なお、駆動信号は、所定の駆動周波数を有する信号である。光偏向器13は、所定の固有振動数(共振周波数ともよぶ)を有している。
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御装置11の制御によって、光偏向器13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光を偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。
なお、光偏向器13の詳細および制御装置11による制御の詳細については後述する。
次に、図2を参照して、光走査システムの一例のハードウェア構成について説明する。図2は、光走査システムの一例のハードウェア構成図である。図2に示すように、光走査システム10は、制御装置11、光源装置12、光偏向器13、第1の受光器18、第2の受光器19を備え、それぞれが電気的に接続されている。その中でも制御装置11の詳細について以下に説明する。
[制御装置]
制御装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26を備えている。
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25および光偏向器ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。また、光源装置ドライバ25および光偏向器ドライバ26を介して光源装置12および光偏向器13の出力信号を取得し、さらに第1の受光器18および第2の受光器19から受光信号を取得し、出力信号および受光信号に基づいて制御信号を生成する。
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、車車間通信、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
光源装置ドライバ25は、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
光偏向器ドライバ26は、入力された制御信号に従って光偏向器13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
制御装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
ここで、光走査情報とは、光源装置12と光偏向器13により被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
本実施形態に係る制御装置11は、CPU20の命令および図2に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
[制御装置の機能構成]
次に、図3を参照して、光走査システム10の制御装置11の機能構成について説明する。図3は、光走査システムの制御装置の一例の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現される制御手段であり、光走査情報や各デバイスからの信号を取得し、それらに基づいて制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。
例えば、制御部30は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。また、制御部30は、駆動信号出力部31を介して光源装置12、光偏向器13の各出力信号を取得し、各出力信号に基づいて制御信号を生成する。さらに、制御部30は、第1の受光器18および第2の受光器19の各受光信号を取得し、各受光信号に基づいて制御信号を生成する。
駆動信号出力部31は、光源装置ドライバ25、光偏向器ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または光偏向器13に駆動信号を出力する。駆動信号出力部31は例えば駆動電圧を光源装置12または光偏向器13に印加する印加手段として機能する。駆動信号出力部31は、駆動信号を出力する対象ごとに設けられてもよい。
なお、駆動信号は、光源装置12または光偏向器13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、光偏向器13においては、光偏向器13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。
[光走査処理]
次に、図4を参照して、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について説明する。図4は、光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。また、制御部30は、駆動信号出力部31を介して光源装置12、光偏向器13の各出力信号をそれぞれ取得し、第1の受光器18および第2の受光器19の各受光信号をそれぞれ取得する。
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報、各出力信号、各受光信号から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。このとき、起動時は各出力信号、各受光信号を取得できない場合があるため、起動時は別ステップにより所定動作を行ってもよい。
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および光偏向器13に出力する。
ステップS14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、光偏向器13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12および光偏向器13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
なお、上記光走査システム10では、1つの制御装置11が光源装置12および光偏向器13を制御する装置および機能を有しているが、光源装置用の制御装置と光偏向器用の制御装置を別体に設けてもよい。
また、上記光走査システム10では、一つの制御装置11に光源装置12および光偏向器13の制御部30の機能および駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。
[光偏向器の詳細]
次に、図5〜図7を参照して、光偏向器について詳細に説明する。図5は、2軸方向に光偏向可能な両持ちタイプの光偏向器の平面図である。図6は、図5のP−P’断面図である。図7は図5のQ−Q’断面図である。
図5に示すように、光偏向器13は、入射した光を反射するミラー部101と、ミラー部に接続され、ミラー部をY軸に平行な第1軸周りに駆動する第1駆動部110a、110bと、ミラー部および第1駆動部を支持する第1支持部120と、第1支持部に接続され、ミラー部および第1支持部をX軸に平行な第2軸周りに駆動する第2駆動部130a、130bと、第2駆動部を支持する第2支持部140と、第1駆動部および第2駆動部および制御装置に電気的に接続される電極接続部150と、を有する。
光偏向器13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板上に反射面14や第1圧電駆動部112a、112b、第2圧電駆動部131a〜131f、132a〜132f、電極接続部150等を形成した後にエッチング処理等で基板を成形することで、各構成部が一体的に形成されている。なお、上記の各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる第1のシリコン層の上に酸化シリコン層162が設けられ、その酸化シリコン層162の上にさらに単結晶シリコンからなる第2のシリコン層が設けられている基板である。以降、第1のシリコン層をシリコン支持層161、第2のシリコン層をシリコン活性層163とする。なお、SOI基板は、焼結してシリコン活性層163の表面に酸化シリコン層164を形成した後に使用される。
シリコン活性層163は、X軸方向またはY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163、またはシリコン活性層163と酸化シリコン層164で構成された部材は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。なお、本実施形態では、シリコン活性層163と下部電極201の電気的接触を抑制するために酸化シリコン層164を設けているが、酸化シリコン層164は絶縁性を有する別の材質に置き換えてもよい。
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば光偏向器13の形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
ミラー部101は、例えば、円形状のミラー部基体102と、ミラー部基体の+Z側の面上に形成された反射面14とから構成される。ミラー部基体102は、例えば、シリコン活性層163と酸化シリコン層164から構成される。
反射面14は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成される。また、ミラー部101は、ミラー部基体102の−Z側の面にミラー部補強用のリブが形成されていてもよい。
リブは、例えば、シリコン支持層161および酸化シリコン層162から構成され、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制することができる。
第1駆動部110a、110bは、ミラー部基体102に一端が接続し、第1軸方向にそれぞれ延びてミラー部101を可動可能に支持する2つのトーションバー111a、111bと、一端がトーションバーに接続され、他端が第1支持部の内周部に接続される第1圧電駆動部112a、112bと、から構成される。
図6に示すように、トーションバー111a、111bはシリコン活性層163と酸化シリコン層164から構成される。また、第1圧電駆動部112a、112bは、弾性部であるシリコン活性層163と酸化シリコン層164の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。第一圧電駆動部112
上部電極203および下部電極201は、例えば金(Au)または白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
図5に戻り、第1支持部120は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163、酸化シリコン層164から構成され、ミラー部101を囲うように形成された矩形形状の支持体である。
第2駆動部130a、130bは、例えば、折り返すように連結された複数の第2圧電駆動部131a〜131f、132a〜132fから構成されており、第2駆動部130a、130bの一端は第1支持部120の外周部に接続され、他端は第2支持部140の内周部に接続されている。このような蛇行状構造をミアンダ構造とよぶ。また、第2圧電駆動部のように1つの梁と駆動力を有する部材で構成されている構造を駆動カンチレバーともよぶ。
このとき、第2駆動部130aと第1支持部120の接続箇所および第2駆動部130bと第1支持部120の接続箇所、さらに第2駆動部130aと第2支持部140の接続箇所および第2駆動部130bと第2支持部140の接続箇所は、反射面14の中心に対して点対称となっている。
図7に示すように、第2駆動部130a、130bは、弾性部であるシリコン活性層163、酸化シリコン層164の+Z側の面上に下部電極201、圧電部202、上部電極203の順に形成されて構成される。上部電極203および下部電極201は、例えば金(Au)または白金(Pt)等から構成される。圧電部202は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
図5に戻り、第2支持部140は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163、酸化シリコン層164から構成され、ミラー部101、第1駆動部110a、110b、第1支持部120および第2駆動部130a、130bを囲うように形成された矩形の支持体である。
電極接続部150は、例えば、第2支持部140の+Z側の面上に形成され、第1圧電駆動部112a、112b、第2圧電駆動部131a〜131fの各上部電極203および各下部電極201,および制御装置11にアルミニウム(Al)等の電極配線を介して電気的に接続されている。
なお、本実施形態では、圧電部202が弾性部であるシリコン活性層163、酸化シリコン層164の一面(+Z側の面)のみに形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面(例えば−Z側の面)に設けても良いし、弾性部の一面および他面の双方に設けても良い。
また、ミラー部101を第1軸周りまたは第2軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は実施形態の形状に限定されない。例えば、トーションバー111a、111bや第1圧電駆動部112a、112bが曲率を有した形状を有していてもよい。
さらに、第1駆動部110a、110bの上部電極203の+Z側の面上、第1支持部の+Z側の面上、第2駆動部130a、130bの上部電極203の+Z側の面上、第2支持部の+Z側の面上の少なくともいずれかに酸化シリコン膜からなる絶縁層が形成されていてもよい。このとき、絶縁層の上に電極配線を設け、また、上部電極203または下部電極201と電極配線とが接続される接続スポットに、開口部として部分的に絶縁層を除去または絶縁層を形成しないことにより、第1駆動部110a、110b、第2駆動部130a、130bおよび電極配線の設計自由度をあげ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。なお、絶縁層は絶縁性を有する部材であればよく、また、薄膜化等により反射防止材としての機能を備えさせてもよい。
[制御装置による光偏光器の制御の詳細]
次に、光偏向器の第1駆動部および第2駆動部を駆動させる制御装置の制御の詳細について説明する。
第1駆動部110a、110b、第2駆動部130a、130bが有する圧電部202は、分極方向に正または負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形(例えば、伸縮)が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第1駆動部110a,110b,第2駆動部130a、130bは、上記の逆圧電効果を利用してミラー部101を可動させる。
このとき、ミラー部101の反射面14に入射した光束が偏向される角度を振れ角とよぶ。振れ角は偏向器13による偏向度合いを示している。圧電部202に電圧を印加していないときの振れ角をゼロとし、その角度よりも偏向角度が大きい場合を正の振れ角、小さい場合を負の振れ角とする。
まず、第1駆動部110a、110bを駆動させる制御装置11の制御について説明する。第1駆動部110a、110bでは、第1圧電駆動部112a、112bが有する圧電部202に、上部電極203および下部電極201を介して駆動電圧が並列に印加されると、それぞれの圧電部202が変形する。この圧電部202の変形による作用により、第1圧電駆動部112a、112bが屈曲変形する。
その結果、2つのトーションバー111a、111bのねじれを介してミラー部101に第1軸周りの駆動力が作用し、ミラー部101が第1軸周りに可動する。第1駆動部110a、110bに印加される駆動電圧は、制御装置11によって制御される。
このとき、制御装置11によって、第1駆動部110a、110bが有する第1圧電駆動部112a、112bに所定の正弦波形の駆動電圧を並行して印加することで、ミラー部101を、第1軸周りに所定の正弦波形の駆動電圧の周期で可動させることができる。
さらに、例えば、正弦波形電圧の周波数がトーションバー111a、111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合、トーションバー111a、111bのねじれによる共振が生じるのを利用して、ミラー部101を約20kHzで共振振動させることができる。
次に、図8を参照して、第2駆動部を駆動させる制御装置の制御について説明する。
図8は、光偏向器の第2駆動部130bの駆動を模式的に表した模式図である。斜線で表されている領域がミラー部101等である。
第2駆動部130aが有する複数の第2圧電駆動部131a〜131fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(131a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部131b、131d、131fを圧電駆動部群A(第1アクチュエータともよぶ)とする。
また、さらに第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a〜132fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて奇数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部132a、132c、132eを同様に圧電駆動部群Aとする。圧電駆動部群Aは、駆動電圧が並行に印加されると、図8(i)に示すように、圧電駆動部群Aが同一方向に屈曲変形し、正の振れ角となるようにミラー部101が第2軸周りに可動する。
また、第2駆動部130aが有する複数の第2圧電駆動部131a〜131fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(131a)から数えて奇数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部131a、131c、131eを圧電駆動部群B(第2アクチュエータともよぶ)とする。
また、さらに第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a〜132fのうち、最もミラー部に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち、132b、132d、132fを同様に圧電駆動部群Bとする。圧電駆動部群Bは、駆動電圧が並行に印加されると、図8(iii)に示すように、圧電駆動部群Bが同一方向に屈曲変形し、負の振れ角となるようにミラー部101第2軸周りに可動する。
また、図8(ii)に示すように、電圧が印加されていない、または、電圧印加による圧電駆動部群Aによるミラー部101の可動量と電圧印加による圧電駆動群Bによるミラー部101の可動量が釣り合っている時は、振れ角はゼロとなる。
図8(i)、(iii)に示すように、第2駆動部130aまたは130bでは、圧電駆動部群Aが有する複数の圧電部202または圧電駆動部群Bが有する複数の圧電部202を屈曲変形させることにより、屈曲変形による可動量を累積させ、ミラー部101の第2軸周りの振れ角を大きくすることができる。また、図8(i)〜図8(iii)を連続的に繰り返すように第2圧電駆動部に駆動電圧を印加することにより、ミラー部を第2軸周りに駆動させることができる。
[駆動信号]
第2駆動部130a、130bに印加される駆動信号(駆動電圧)は、制御装置11によって制御される。
図9を参照して、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧A)、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧B)について説明する。また、駆動電圧A(第1駆動電圧)を印加する印加手段を第1印加手段、駆動電圧B(第2駆動電圧)を印加する印加手段を第2印加手段とする。
図9(a)は、光偏向器の圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形の一例である。図9(b)は、光偏向器の圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧の波形Bの一例である。図9(c)は、駆動電圧Aの波形と駆動電圧Bの波形を重ね合わせた図である。
図9(a)に示すように、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形は、例えば、ノコギリ波状の波形であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Aの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrA、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfAとしたとき、例えば、TrA:TfA=8.5:1.5となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTrAの比率を駆動電圧Aのシンメトリという。
図9(b)に示すように、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bの波形は、例えば、ノコギリ波状の波形であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Bの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrB、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfBとしたとき、例えば、TfB:TrB=8.5:1.5となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTfBの比率を駆動電圧Bのシンメトリという。
また、図9(c)に示すように、例えば、駆動電圧Aの波形の周期TAと駆動電圧Bの波形の周期TBは、同一となるように設定されている。このとき、駆動電圧Aと駆動電圧Bは位相差dを有している。
なお、上記の駆動電圧Aおよび駆動電圧Bのノコギリ波状の波形は、例えば、正弦波の重ね合わせによって生成される。また、駆動電圧Aおよび駆動電圧Bの周波数(駆動周波数fs)は、光偏向器13の最低次の固有振動数(f(1))の半整数倍であることが望ましい。例えば、fsをf(1)の1/5.5倍、1/6.5倍、1/7.5倍のいずれかにするのが望ましい。これにより、半整数倍にすることで駆動周波数の高調波成分による振動を抑制できる。このような光走査にとって悪影響をおよぼす振動を不要振動とよぶ。
また、本実施形態では、駆動電圧A、Bとしてノコギリ波状の波形の駆動電圧を用いているが、これに限らず、ノコギリ波状の波形の頂点を丸くした波形の駆動電圧や、ノコギリ波状の波形の直線領域を曲線とした波形の駆動電圧など、光偏向器のデバイス特性に応じて波形を変えることも可能である。この場合、シンメトリは、一周期に対する立ち上がり時間の比率、または一周期に対する立ち下がり時間の比率となる。このとき、立ち上がり時間、立ち下がり時間のどちらを基準にするかは、任意に設定してもよい。
[光走査方式]
図10を参照して、光走査システム10による光走査方式について説明する。図10は、光走査システムによる光走査を説明する図である。
光走査システム10は、光源装置12からの光を光偏向器13によって2方向に光を偏向し、図10に示すように被走査面15上の有効走査領域17を含む走査可能領域16を光走査する。上述したように、2方向のうち、1方向(以下、X軸方向)には正弦波駆動信号によって光偏光器の反射面を共振による高速駆動を用いて光走査し、もう1方向(以下、Y軸方向)にはノコギリ波状駆動信号によって光偏向器の反射面を非共振による低速駆動を用いて光走査する。このような2方向の光走査によりジグザグに光走査する駆動方式はラスタースキャン方式ともよばれる。
上記駆動方式においては、有効走査領域17ではY軸方向は一定の速度で光走査できることが望ましい。これは、Y軸方向の走査速度が一定でないと、例えば光走査による画像投影を行う際に、投影画像の輝度ムラや揺らぎ等が生じ、投影画像の劣化を招くためである。このようなY軸方向の走査速度は、光偏向器13の反射面14の第2軸周りの可動速度、すなわち、反射面14の第2位軸周りの振れ角の時間変化を有効走査領域17において一定にすることが求められる。
次に図11を参照して、光偏向器の反射面の第2軸周りの振れ角の時間変化と、振れ角の時間変化による投影画像の変化について説明する。
図11(a)は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)である場合の反射面の第2軸周りの振れ角(光走査角度)の時間変化を示す図である。図11(b)は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)である場合の投影画像イメージを示す図である。図11(c)は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)ではない場合の反射面の第2軸周りの振れ角(光走査角度)の時間変化を示す図である。図11(d)は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)ではない場合の反射面の投影画像イメージを示す図である。なお、投影画像イメージは、一面同じ輝度となる一色の画像を光走査システム10により被走査面15に投影した際のイメージ画像である。
反射面14の第2軸周りの振れ角の時間変化、すなわち反射面14の第2軸周りの可動速度は、図11(a)に示すように直線的であることが望ましい。つまり、反射面14の第2軸周りの可動速度に変動が生じさせずに駆動することが望ましい。これにより、図11(b)の投影画像イメージのように輝度ムラや走査歪みを生じさせずに画像投影が可能となる。このような駆動を実現するため、第2軸周りの駆動は、駆動電圧波形Aと駆動電圧波形Bの相対的な位相やシンメトリを調整し、ノコギリ波状駆動電圧に含まれる高調波成分による光偏向器13の共振励起等による不要振動を抑制している。例えば、駆動電圧波形Aの高調波成分により生じる振動と、駆動電圧波形Bの高調波成分により生じる振動は、駆動電圧波形Aと駆動電圧波形Bの相対的な位相差を調整することで相殺することが可能であり、これにより不要振動を抑制することができる。
また、例えば、低周波側からN番目の励起を抑制したい光偏向器13の固有振動数f(N)が、以下の数式(1)で求められる周波数fn(以下、ヌル周波数)近傍に含まれるように、駆動周波数fs、駆動電圧波形A、駆動電圧波形BのシンメトリSを調整することで、不要振動を抑制することが可能である。
不要振動を抑制可能な理由を以下に説明する。ノコギリ波状駆動信号の周波数スペクトル(駆動信号をフーリエ変換して周波数成分に分解したもの)に一定間隔の「谷(理論上信号強度がゼロまで低減される点)」が存在する。また、この「谷」近傍の周波数領域は、信号強度が低減される。この「谷」をヌル周波数、「谷」周辺の周波数領域を周波数低減領域とよぶ。この「谷」近傍の周波数領域とは、例えば、ヌル周波数から周波数が±10%程度の周波数領域である。
このとき、光偏向器の任意の固有振動数f(N)が周波数低減領域に含まれるようにシンメトリSを調整することで、固有振動の励起を抑制し、不要振動を抑制することができる。このとき、光偏向器の最低次の固有振動数f(1)が周波数低減領域に含まれるようにシンメトリSを調整することで最も不要振動を抑制することができる。
また、各駆動電圧の電圧値を調整することで、上記の位相差の調整による不要振動の抑制をより強くすることができる。これは、圧電駆動部の駆動電圧に対する感度が設計や製造誤差により異なるため、駆動電圧を調整することで駆動電圧Aと駆動電圧Bに発生する高調波成分により生じる振動の大きさを揃え、相殺度合いを高めることができるためである。
以上のように、駆動信号の各パラメータを調整することで光偏向器の不要振動を抑制し、第2軸周りの可動速度の均一性を保とうとしている。しかしながら、実際には、図11(c)に示すように、環境温度変化や経時変化により、反射面14の第2軸周りの可動速度に揺れが生じてしまい、可動速度の均一性を保つことができない。このとき、図11(d)に示すように、投影画像にはY軸方向に輝度ムラが生じる。
これは、環境温度変化や経時変化により圧電材料の状態が変化し、駆動電圧波形Aと駆動電圧波形Bの相対的な位相やシンメトリ、電圧値の最適値がずれることが原因であると考えられる。
図12に環境温度変化による圧電定数の電圧依存性のグラフの一例を示す。図12は、縦軸が圧電定数、横軸が印加電圧であり、30度(実線)、60度(破線)、90度(一点鎖線)において圧電定数の電圧依存性を測定した結果を示している。
図12に示すように、圧電定数は環境温度によって、所定の電圧を印加した際の圧電部の応答性を示す電圧依存性が変化する。すなわち、環境温度が変化すると圧電部の応答性が変化するため、均一な反射面14の可動速度を維持するためには、駆動電圧を最適な波形となるように調整する必要がある。例えば、上記光偏光器の場合は、環境変化に合わせて駆動電圧波形Aと駆動電圧波形Bの相対的な位相やシンメトリ、電圧値等を最適値に調整する必要がある。
この最適値の調整のためには、第2軸周りの可動速度の揺れを検出する必要がある。すなわち、輝度ムラや走査歪み等の走査状態を観測することで、観測結果に合わせて調整が可能となる。
そこで、本実施形態では、第1の受光器18と第2の受光器19との間のY軸方向の距離を、光偏向器の固有振動数により定まる距離に基づいて設定する。
この結果、輝度ムラや走査歪み等の走査状態を観測可能となる。これにより、輝度ムラや走査歪み等が生じたことを検出して第2軸周りの駆動電圧を調整することで、可動速度の均一性を保つことができる。
以下、図13を参照して、本実施形態により輝度ムラや走査歪み等の走査状態を観測可能になる理由について詳細に説明する。
図13(a)は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)でない場合の反射面の第2軸周りの振れ角(光走査角度)の時間変化における節を表すグラフである。図13(b)は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)でない場合に輝度ムラが生じている投影画像イメージである。
図13(a)に示すように、反射面14の第2軸周りの可動速度の均一性が保たれていないとき、反射面14の振れ角が最も負側から最も正側へ変位する際に、可動速度は振動するように揺れていることがわかる。これは、可動速度の揺れが、ノコギリ波状駆動電圧に含まれる高調波成分によって光偏向器13の固有振動数が励起されて生じる振動に由来しているためである。
このように光偏向器13が不要振動をすることで可動速度の均一性が保たれていないとき、図13(b)に示すようなY軸方向の輝度ムラ(明暗の縞)が一定法則で生じることを実験から見出した。
以下に見出した一定法則について説明する。上述したように、反射面14の第2軸周りの可動速度の均一性が保たれていないとき、反射面14の振れ角が最も負側から最も正側へ変位する際に、可動速度は振動するように揺れている。この揺れはある程度の周期性を有しており、その周期は、光偏向器13の固有振動数f(N)の逆数によって定まることが実験的に判明した。これは、上述のように反射面の第2軸周りの可動速度の振動は、所定の駆動周波数のノコギリ波状駆動電圧に含まれる高調波成分によって光偏向器13の固有振動数が励起されているためである。
可動速度の揺れの最も変位が大きい点を腹とし、隣通しの腹の中間を節とし、第2軸周りの可動の一周期において時間的にk番目に生じる節を節(k)とする。このとき、節(k)がY軸方向の明暗の縞に対応していることが実験的に判明している。
例えば、図13(b)の投影画像のY軸方向において、上から暗a、明a、暗b、明b、…、と明暗の縞が生じているとき、節(1)が暗a、節(2)が明a、節(3)が暗b、節(4)が明bに対応している。これは、可動速度が節(1)において速いために走査時間が短くなるので暗くなり、節(2)において遅いために走査時間が長くなるので明るくなるためであると考えられる。
光偏向器の固有振動数は、温度変化や経時変化ではわずかにしか変化しない。よって、駆動周波数を固定にすれば、Y軸方向の輝度ムラは走査可能領域に対して一定の割合で発生することになる。
以上より、一軸方向(一次元方向)の輝度ムラの発生周期には法則がある。そこで、この法則に基づいて、第1の受光器18と第2の受光器19を配置し、第1の受光器18と第2の受光器19の各受光信号を取得することで、輝度ムラを観測可能にすることができる。すなわち、第2軸周りの反射面の可動により走査されるY軸方向において、第1の受光器18と第2の受光器19の距離を光偏向器の固有振動数に基づいて定め、輝度ムラの発生度合いが異なる箇所に配置する。これにより、輝度ムラが生じている場合において、各受光器の受光する光量や受光タイミングが異なるようになるため、各受光信号を比較することで輝度ムラを検出することが可能となる。
従来技術は、複数の受光器を置き、複数の受光器の受光信号に基づいて光偏向器の駆動電圧を制御しているものの、上記法則を見出していない。そのため、有効走査領域に対して対称となるように2つの受光器を配置し、それぞれの受光量が一定量を超えたか否かにより光走査されたか否かのみを判断している。すなわち、上記法則に基づいた2つの受光器の配置や各受光信号の比較を行っていない。これは、従来では、輝度ムラはランダムに生じると考えられていたためであり、また、ランダムと想定した場合は2つの受光器を用いて輝度ムラを観測できる場合とできない場合が時間的に混在するため、2つの受光器を用いて輝度ムラを観測するという思想が生じえなかったものと考えられる。
本実施形態では、上述のように、上記一定法則を鑑みて、第2軸周りの反射面の可動により走査されるY軸方向において、第1の受光器18と第2の受光器19の距離を光偏向器の固有振動数に基づいて定まる距離に設定する。特に、光偏向器の最低次の固有振動に基づいて設定するとよい。
具体例を、図14を参照して説明する。図14は、光偏向器の固有振動数に基づいて第1の受光器18と第2の受光器19の配置を定めた一例の図である。
固有振動数f(N)としたとき、Y軸方向の輝度ムラの周期Tmは、以下の数式(2)で求められる。
このとき、最低次の固有振動数f(1)を励起することによる振動の寄与率が最も大きい場合には、数式(2)はTm=1/f(1)に近似が可能である。
駆動電圧の駆動周波数fsを1/6.5倍に設定し、光偏向器13の最低次の固有振動数f(1)が周波数低減領域に含まれるように駆動電圧のシンメトリをTrA:TfA=8.5:1、TfB:TrB=8.5:1と設定する。
このとき、輝度ムラ(明暗縞)の周期性は、最低次の固有振動f(1)の周期に依存する。すなわち、明るい縞、もしくは暗い縞が、走査可能領域に対して最低次の固有振動数f(1)の逆数の周期で現れることとなる。
そこで、第1の受光器18と第2の受光器19のY軸方向の距離をLとしたとき、f(1)の逆数の半整数倍、すなわち、時間を距離に換算する以下の数式(3)を満たすL付近に第1の受光器18と第2の受光器19を設置する。これにより、図14に示すように、第1の受光器18と第2の受光器19が、明暗度合いが異なる縞に配置される。なお、L付近は、Lから±20%以内の値であることが望ましい。
このとき、第1の受光器が最も明るい縞の位置に、第2の受光器が最も暗い縞の位置になるように配置するのが好ましい。すなわち、どちらかの受光器を走査可能領域のY軸方向において、走査開始地点から1/f(1)の整数倍になる位置に設けることが好ましい。これにより、最も明暗差が大きくなる位置に各受光器を配置できるため、各受光信号の差が大きくなり、比較が行いやすくなる効果を奏する。
また、輝度ムラが生じるとき、詳細は後述するが走査の歪みも生じている。よって、輝度ムラを通じて走査歪みも検出可能である。
以上より、第1の受光器18と第2の受光器19のY軸方向の距離を固有振動数に基づいて定めることによって、輝度ムラや走査歪み等の走査状態を観測可能となる。これにより、輝度ムラや走査歪み等が生じたことを検出して第2軸周りの駆動信号を調整することで、可動速度の均一性を保つことができる。駆動信号の調整は、例えば、駆動電圧Aと駆動電圧Bの位相差の調整や、各駆動電圧のシンメトリの調整である。
図15は、第1の受光器18と第2の受光器19の光量差に基づいて位相を調整した一例を示す図である。黒丸で示されているのが初期温度の位相−光量差相関である。また、黒三角で示されているのが、温度変化後の位相−光量差相関である。
第1の受光器18、第2の受光器19の最大輝度をPmax、最小輝度をPminとしたとき、光量差は、Pmax−Pminで求められる。この光量差は輝度ムラの度合いと同様である。図15に示すように、初期温度で光量差が最も低くなる位相差(約180度)に調整していても、温度変化によって光量差が大きくなることがわかる。そこで、2つの受光器の光量差が所定値(例えば0.04)よりも小さくなるように位相を再調整することで、光量差を小さくできる。すなわち、輝度ムラを小さくすることができる。
[駆動信号の調整処理1]
次に、図16を用いて、各受光信号に基づいた駆動信号の調整処理1について説明する。図16は、駆動信号の調整処理1のフローチャートである。
駆動信号の調整処理1は、図3で示した制御装置11の制御部30で行われる。図16に示すように、ステップS21では、制御部30は、第1の受光器18および第2の受光器19から、各受光信号を取得する。
ステップS22では、制御部30は、各受光信号の光量差を算出する。なお、光量差は、複数周期分の各受光信号の差を積算することで算出しても良いし、1周期毎に算出しても良い。
ステップS23では、制御部30は、ステップS22で算出した光量差が、予め定めた所定の値よりも大きいか否かを判定する。光量差が所定の値よりも大きいと判定した場合はステップS24に進み、所定の値よりも小さいと判定した場合は調整処理1を終了する。
ステップS24では、制御部30は、駆動電圧Aと駆動電圧Bの位相差を調整する。位相調整量は、予め定めた量である。なお、ステップS22で算出した光量差に基づいて、駆動電圧Aと駆動電圧Bの位相調整量を算出してもよい。また、予め定めた光量差に基づいた位相調整量をデータテーブルとして記憶し、そのデータテーブルから算出してもよいし、予め定めた所定の式によって光量差から位相調整量を算出してもよい。さらに、外部の温度センサから温度情報を取得し、その温度情報に基づいて位相調整量を定めてもよいし、調整回数をカウントしてカウントに基づいて予め定めた量を変化させても良い。
ステップS25では、制御部30は、位相調整後の各受光信号を取得し、各受光信号の光量差が所定の値より小さいか否かを判定する。光量差が所定の値より小さい場合は調整処理1を終了し、否の場合はステップS24に戻る。
以上より、各受光信号の光量差に基づいて駆動信号を調整することが可能となる。これにより、環境温度変化は経時変化による第2軸周りの可動速度の均一性の変化を検出し、均一性が保たれるように駆動信号を調整することで、安定した光走査が可能となる。
なお、上記フローの開始は、光走査の開始と同時でも良いし、光偏向器の駆動時間や外部の温度センサ等の外部装置からの出力信号に基づいて開始しても良い。
駆動信号の調整の際は、各受光器に光が入射するように光走査する必要がある。そこで例えば、図17に示すように、制御装置11は、予め記憶した検出用画像1000を被走査面に投影するように光源装置12と光偏向器13を制御する。
図17は、検出用画像の一例を示した図である。検出用画像は、第1の受光器18、第2の受光器19の全面に照射され、かつ、有効走査領域外にのみ投影することが好ましい。これにより、ユーザーに検出用画像を認識させずに駆動信号の調整が可能となる。
また、上記では光量差に基づいて各駆動信号の位相を調整する場合について説明したが、光量差に基づいて各駆動信号のシンメトリや電圧値を調整する場合は、図16の調整処理1のステップS24「位相調整」を「シンメトリ調整」または「電圧値調整」に置き換えて行う。
なお、位相調整、シンメトリ調整においては、駆動電圧A、駆動電圧Bのうち、1周期に対する立ち上がり時間比率が大きい方を調整するのが好ましい。これは、調整直後に急激な立ち上がりが生じると、不要振動が生じる場合があるためである。また、電圧値調整においては、1周期に対する立ち上がり時間比率が小さい方を調整するのが好ましい。これは、立ち上がりが急な方が圧電駆動部の感度が大きく、調整量が少なく済むためである。
<第2実施形態>
次に第2実施形態について図18〜図20を参照して説明する。第2実施形態は、駆動信号の調整処理以外は、上記第1実施形態と同様である。第1実施形態では受光信号の大きさ(光量差)に基づいて駆動信号を調整していたのに対し、第2実施形態では受光信号の受光タイミングに基づいて駆動信号を調整する。
図18(a)は、第2軸周りの可動速度の均一性が保たれているときの検出用画像の一例を示す図である。図18(b)は、第2軸周りの可動速度の均一性が保たれていないときの検出用画像の一例を示す図である。
第1実施形態で説明したように、反射面14の第2軸周りの可動速度の均一性が保たれていないとき、輝度ムラ(例えばY軸方向の明暗縞)が生じる。この輝度ムラは、Y軸方向の走査位置のズレと同義である。すなわち、輝度ムラは、走査位置が本来走査予定の場所と異なる走査位置へ光走査してしまうために生じる現象であり、同時に投影画像にもズレや歪みが生じている。
このとき、第1の受光器18と第2の受光器19の受光タイミングの差を用いることで、輝度ムラや走査歪み等の画像状態を観測可能にすることができる。
以下、図19を参照して、各受光器の受光タイミングを用いることで輝度ムラを観測できる理由を説明する。図19(a)は、第2軸周りの可動速度の均一性が保たれているときの光源装置の照射タイミングと各受光器の受光タイミングの一例を示す図である。図19(b)は、第2軸周りの可動速度の均一性が保たれていないときの光源装置の照射タイミングと各受光器の受光タイミングの一例を示す図である。
第2軸周りの可動速度の均一性が保たれていないとき、本来は図18(a)のように表示される検出用画像が、図18(b)に示すように走査位置ズレと走査位置ズレによる歪みが生じ、検出用画像が図18(a)とは異なる位置、かつ、異なるサイズで表示される。
このとき、光源装置の照射タイミングと、各受光器の受光タイミングは図19(a)、(b)で示すように変化する。検出用画像1001aを表示するための光源照射開始タイミングをta1、光源照射終了タイミングをta2とし、検出用画像1001bを表示するための光源照射開始タイミングをtb1、光源照射終了タイミングをtb2とする。
図19(a)に示すように、第2軸回りの可動速度の均一性が保たれているとき、第1の受光器18は、光源照射開始タイミングta1からΔta後に受光信号を出力する。また、第2の受光器は、光源照射開始タイミングtb1からΔtb後に受光信号を出力する。このとき、理想的には、すなわち可動速度の均一性が高いときは、ΔtaやΔtbの値は一定である。また、Δta―Δtbの値の差も一定である。
図19(b)に示すように、第2軸周りの可動速度の均一性が保たれていないとき、第1の受光器18は、ta1からΔtma後に受光信号を出力する。また、第2の受光器は、tb1からΔtmb後に受光信号を出力する。
このとき、可動速度の不均一性による走査位置ズレによって、ΔtaとΔtma、ΔtbとΔtmbは異なっている。
図19(a)に示すように、可動速度の均一性が保たれているときは、各受光器の受光タイミングと光源照射タイミングの差分であるΔta、Δtbは一定となっている。
しかし、図19(b)に示すように、可動速度の均一性が保たれていないときは、各受光器の受光タイミングと光源照射タイミングの差分であるΔtmaとΔtmbは、Δta、Δtbの値と異なっている。
よって、ΔtaとΔtma、ΔtbとΔtmbの値の変化を検出することで、画像の位置ズレを検出することが可能となる。なお、上記実施形態ではΔta=Δtbとなるように検出用画像を投影しているが、第1の受光器18と第2の受光器19の受光タイミングの差を定量化することが可能であればよい。例えば、光源の照射タイミングtb1と第1の受光器18の受光タイミング、tb1と第2の受光器19の受光タイミングの差を利用してもよい。また、各受光器の受光タイミングと光源照射タイミングの差分を用いて値の変化を検出してもよい。例えば、Δtma―Δtmbが所定値を超えた場合に、位置ズレが生じていると判定する構成としてもよい。これにより、過去のΔta、Δtmaを記録し続ける必要がなくなり、論理回路のみで判定を行うことが可能となる。
第1実施形態のように2つの受光器の光量差を用いると、輝度ムラが小さい場合は、検出が困難となる。そこで、第2実施形態のように2つの受光器の受光タイミングの差を利用することで、光量差よりも高精度に輝度ムラや走査歪み等の走査状態を観測することが可能となる。このとき、光走査角度の時間変化(微分)が輝度ムラの明暗に対応するため、明暗の中間の時間が、均一の場合と比較したときに光走査角度の位置の誤差が大きい。
[駆動信号の調整処理2]
次に、図20を用いて、受光タイミングの差に基づいた駆動信号の調整処理について説明する。図20は、受光タイミングに基づいた駆動信号の調整処理のフローチャートである。
駆動信号の調整は、図3で示した制御装置11の制御部30で行われる。図20に示すように、ステップS31では、制御部30は、第1の受光器18および第2の受光器19から、各受光信号を取得する。制御部30は、受光信号を取得する際に、受光タイミングを記録する。
ステップS32では、制御部30は、各受光信号の受光タイミングの差を算出する。なお、受光タイミングの差は、複数周期分の各受光信号の受光タイミングの差を積算することで算出しても良いし、1周期毎に算出しても良い。
ステップS33では、制御部30は、ステップS32で算出した受光タイミングの差が、予め定めた所定の値よりも大きいか否かを判定する。受光タイミングの差が所定の値よりも大きいと判定した場合はステップS34に進み、所定の値よりも小さいと判定した場合はフローを終了する。
ステップS34では、制御部30は、駆動電圧Aと駆動電圧Bの位相差を調整する。位相調整量は、予め定めた量である。なお、ステップS32で算出した光量差に基づいて、駆動電圧Aと駆動電圧Bの位相調整量を算出してもよい。また、予め定めた光量差に基づいた位相調整量をデータテーブルとして記憶し、そのデータテーブルから算出してもよいし、予め定めた所定の式によって光量差から位相調整量を算出してもよい。さらに、外部の温度センサから温度情報を取得し、その温度情報に基づいて位相調整量を定めてもよいし、調整回数をカウントしてカウントに基づいて予め定めた量を変化させても良い。
ステップS35では、制御部30は、位相調整後の各受光信号を取得し、各受光信号の受光タイミング差が所定の値より小さいか否かを判定する。光量差が所定の値より小さい場合は調整処理2を終了し、否の場合はステップS34に戻る。
以上より、各受光信号の受光タイミングの差に基づいて駆動信号を調整することが可能となる。これにより、環境温度変化は経時変化による第2軸周りの可動速度の均一性の変化を検出し、均一性が保たれるように駆動信号を調整することで、安定した光走査が可能となる。
なお、上記調整処理2の開始は、光走査を開始と同時でも良いし、光偏向器の駆動時間や外部の温度センサ等の外部装置からの出力信号に基づいて開始しても良い。
また、上記では受光タイミング差に基づいて各駆動信号の位相を調整する場合について説明したが、受光タイミング差に基づいて各駆動信号のシンメトリや電圧値を調整する場合は、図20の調整処理2のステップS34「位相調整」を「シンメトリ調整」または「電圧値調整」に置き換えて行う。
<第3実施形態>
[画像投影装置]
次に、図21及び図22を参照して、本実施形態の光走査システム10を適用した画像投影装置について詳細に説明する。
図21は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、図22はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
図21に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。
これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
図22に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメータレンズ502,503,504と、2つのダイクロイックミラー505,506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する光偏向器13にて偏向される。
そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。中間スクリーン510には第1の受光器18、第2の受光器19が設けられており、各受光信号を用いて光走査システム10の調整が行われる。
なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R,501G,501B、コリメータレンズ502,503,504、ダイクロイックミラー505,506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
光走査システムは、光源ユニット530、光偏向器13、制御装置11、第1の受光器18、第2の受光器19にて構成されている。
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
レーザ光源501R,501G,501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ502,503,504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505,506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する光偏向器13によって二次元走査される。光偏向器13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
光偏向器13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この光偏向器13の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した光偏向器13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。
例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
<第4実施形態>
[光書込装置]
次に、図23及び図24を参照して、本実施形態の光走査システム10を適用した光書込装置について詳細に説明する。
図22は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、図23は、光書込装置の一例の概略図である。
図22に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
図23に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメータレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する光偏向器13により1軸方向または2軸方向に偏向される。
そして、光偏向器13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射ミラー部602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。このとき、第1の受光器18、第2の受光器19は、光偏向器の被走査面でもある走査光学系602に設けられる。
光源装置12および反射面14を有する光偏向器13、制御装置11、第1の受光器18,第2の受光器19は、光走査システム10として機能する。
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。
また、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
上記光書込装置に適用される反射面14を有した光偏向器13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。
また、光偏向器13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また光偏向器13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である
<第5実施形態>
[物体認識装置]
次に、図25及び図26を参照して、上記本実施形態の制御装置を適用した物体認識装置について詳細に説明する。
図25は、物体認識装置の一例であるレーザレーダ装置を搭載した自動車の概略図である。また、図26はレーザレーダ装置の一例の概略図である。
物体認識装置は、対象方向の物体を認識する装置であり、例えばレーザレーダ装置である。図25に示すように、レーザレーダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702を認識する。
図26に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する光偏向器13で1軸もしくは2軸方向に走査される。
そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。被走査面でもある投光レンズ705には、第1の受光器18,第2の受光器19が設けられている。このとき、光源装置12、光偏向器13、制御装置11、第1の受光器18,第2の受光器19は光走査システム10として機能する。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。
すなわち、反射光は受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、または受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
反射面14を有する光偏向器13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。
このようなレーダレーダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。
上記物体認識装置では、一例としてのレーザレーダ装置700の説明をしたが、物体認識装置は、反射面14を有した光偏向器13を制御装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702を認識する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
以上、本発明の実施形態1〜5について説明したが、上述した実施形態1〜5は本発明の一適用例を示したものである。本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。
例えば、上記各実施形態では、受光器を2つ設置する例で説明したが、受光器を3つ以上設置して制御を行ってもよい。図27に示すように、走査可能領域900、有効走査領域901が多角形であるとき、第1の受光器902、第2の受光器903、第3の受光器904を走査可能領域900内、かつ有効走査領域901外に設けてもよい。光走査が走査可能領域900の左下から始まるとする。このとき、第1の受光器902と第2の受光器903の距離を光偏向器の固有振動数に基づいて定め、第2の受光器と第3の受光器904の距離も同様に光偏向器の固有振動数に基づいて定めてもよい。これは、高調波成分による光偏向器の不要振動は、X軸方向の光走査にも影響を及ぼすためである。すなわち、2軸方向ともに受光器間の距離を光偏向器の固有振動数に基づいて定めることで2軸方向の輝度ムラや歪み等の走査状態を観測可能とできる。また、このとき、図27に示すように、第1の受光器902と第2の受光器903によりY軸方向の光走査を、第2の受光器903と第3の受光器904によりX軸方向の光走査を観測し、1つの受光器を共有にすることで、3つの受光器で2軸方向の光走査を観測することができる。
また、受光器としてPD(フォトダイオード)の変わりに、PSD(Position Sensitive Detector)、ラインCCDを用いてもよい。このとき、PDS、ラインCCDのサイズは、上記法則で求められる輝度ムラ周期性の1周期分以上あれば、PD2つと同様の受光器として使用可能である。
また、上記各実施形態では、制御装置11は圧電部に常に正の電圧値を有する波形の駆動電圧を印加しているが、圧電部に駆動電圧が印加されて圧電部の変形が生じる構成であれば、これに限られない。例として、制御装置11は、圧電部に常に負の電圧値を有する波形の駆動電圧を印加してもよいし、正の電圧値と負の電圧値を交互に印加してもよい。
また、上記各実施形態の光偏向器は、図28に示すように、光偏向器13の反射面14の入射光および反射先が透過可能な透過部材802と、光偏向器13を囲むパッケージ部材801によりパッケージング化されてもよい。
さらに上記各実施形態の光偏向器は、図5に示すように、トーションバー111a、111bから+X方向に向かって第1圧電駆動部112a、112bが延びる片持ちタイプの光偏向器を用いているが、電圧印加された圧電部により反射面14を可動させる構成であれば、これに限られない。
例えば、図29に示すように、トーションバー211a、211bから+X方向に向かって延びる第1圧電駆動部212a、212bおよび−X方向に向かって延びる第1圧電駆動部212c、212dを有する両持ちタイプの光偏向器を用いてもよい。また、1軸方向のみに反射面を可動させる場合は、図30に示すように、可動部220に反射面14を設ける構成としてもよい。このとき、反射面14は可動部220全面に設けてもよい。
また、第1の受光器18および第2の受光器19は、光偏向器13によって走査される被走査領域に存在していればよく、配置箇所は被走査面15上に限定されない。