JP6912122B2 - 経皮投与製剤 - Google Patents

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本発明は、有効成分としてフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を含有する経皮投与製剤に関する。
近年、有効成分としてフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を含む貼付型の経皮投与製剤が、がん疼痛の鎮痛剤として使用されている。例えば、特許文献1では、支持体と、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩(以下、塩の場合も含めて、「フェンタニル」と総称することがある)、粘着剤及び酢酸ナトリウムを含有する粘着層とを有する貼付剤が開示されている。
がん疼痛の場合、患者の痛みを長期間に亘って抑える必要がある。そのため、現在、市販されているフェンタニルを含有する貼付型の経皮投与製剤は、患者の皮膚に1日に1回、又は3日に1回の頻度で貼り替えて反復投与することにより、長期間に亘って連続して使用されている(以下、1日に1回貼り替えが必要な経皮投与製剤を「1日用経皮投与製剤」、3日に1回貼り替えが必要な経皮投与製剤を「3日用経皮投与製剤」とも称する)。一般的に貼付型の経皮投与製剤として、3日用経皮投与製剤は、1日用経皮投与製剤と比較した場合、経皮投与製剤を貼り替える頻度を低下させて患者や介護者への負担を軽減させることができる利点を有する。また、1日用経皮投与製剤は、貼り替える時点で有効成分の残存率が3日用経皮投与製剤と比較して大きくなることが多く、有効成分であるフェンタニルの有効活用上不利である。
特開平10−45570号公報
しかしながら、従来のフェンタニルを含有する3日用経皮投与製剤では、貼付から3日目に鎮痛効果が低下して、しばしば痛みが悪化する患者が出現することがあった。そのため、フェンタニルを含有する貼付型の経皮投与製剤において、貼付から3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減した3日用経皮投与製剤の開発が患者や医療現場から求められていた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、貼付から3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減したフェンタニル含有経皮投与製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、フェンタニルを含有する貼付型の経皮投与製剤において、薬剤制御膜と薬剤含有粒子を組み合わせることにより、3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るフェンタニル含有経皮投与製剤は以下の通りである。
[1]支持体と、当該支持体上に積層された薬剤含有層と、当該薬剤含有層上に積層され且つ薬剤透過性で薬剤の放出を制御する薬剤制御膜と、当該薬剤制御膜上に積層された粘着層と、を有する3日間貼付型の経皮投与製剤において、
当該薬剤含有層は、粘着剤と、当該粘着剤中に分散された、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩及び溶解剤を含む薬剤含有粒子とを含み、
当該経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合に、当該経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が0.2ng/mL以上であり、下記式(I)で算出されるAUC48-72の変動係数(CV値)が35%以下であることを特徴とする経皮投与製剤。
AUC48-72の変動係数[%]=100×σ1/AUC48-72 式(I)
(式(I)中、AUC48-72は当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度−時間曲線下面積(h・ng/mL)を示し、σ1は当該AUC48-72の標準偏差を示す。)
[2]支持体と、当該支持体上に積層された薬剤含有層と、当該薬剤含有層上に積層され且つ薬剤透過性で薬剤の放出を制御する薬剤制御膜と、当該薬剤制御膜上に積層された粘着層と、を有する3日間貼付型の経皮投与製剤において、
当該薬剤含有層は、粘着剤と、当該粘着剤中に分散された、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩及び溶解剤を含む薬剤含有粒子とを含み、
当該経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合に、当該経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が0.2ng/mL以上であり、下記式(I)で算出されるAUC48-72の変動係数(CV値)が35%以下であると共に、
AUC48-72の変動係数[%]=100×σ1/AUC48-72 式(I)
(式(I)中、AUC48-72は当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度−時間曲線下面積(h・ng/mL)を示し、σ1は当該AUC48-72の標準偏差を示す。)
下記式(II)で算出されるCmaxの変動係数(CV値)が60%以下であることを特徴とする経皮投与製剤。
maxの変動係数[%]=100×σ2/Cmax 式(II)
(式(II)中、Cmaxは当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最高血中濃度(ng/mL)を示し、σ2は当該Cmaxの標準偏差を示す。)
[3]支持体と、当該支持体上に積層された薬剤含有層と、当該薬剤含有層上に積層され且つ薬剤透過性で薬剤の放出を制御する薬剤制御膜と、当該薬剤制御膜上に積層された粘着層と、を有する3日間貼付型の経皮投与製剤において、
当該薬剤含有層は、粘着剤と、当該粘着剤中に分散された、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩及び溶解剤を含む薬剤含有粒子とを含み、
当該経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合に、当該経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が0.2ng/mL以上であり、下記式(I)で算出されるAUC48-72の変動係数(CV値)が35%以下であると共に、
AUC48-72の変動係数[%]=100×σ1/AUC48-72 式(I)
(式(I)中、AUC48-72は当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度−時間曲線下面積(h・ng/mL)を示し、σ1は当該AUC48-72の標準偏差を示す。)
下記式(II)で算出されるCmaxの変動係数(CV値)が60%以下であり、
maxの変動係数[%]=100×σ2/Cmax 式(II)
(式(II)中、Cmaxは当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最高血中濃度(ng/mL)を示し、σ2は当該Cmaxの標準偏差を示す。)
当該経皮投与製剤貼付3日後における鎮痛の数値的評価スケール(NRS)値が1.1〜1.5且つ当該NRS値の標準偏差が1.1〜1.6であることを特徴とする経皮投与製剤。
[4]貼付3日目のヒト又は動物における痛みの悪化する頻度が低減された、[1]〜[3]のいずれかに記載の経皮投与製剤。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の経皮投与製剤を貼付したヒト又は動物においては、貼付3日目の痛みの悪化の発生する頻度が低減される旨を示す説明書、添付文書、製品ラベル、包装、パンフレット、カタログ又はリーフレット。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の経皮投与製剤を貼付したヒト又は動物においては、貼付3日目の痛みの悪化の発生する頻度が低減される旨を標榜することを含む該製剤のプロモーション方法。
[7]ヒト又は動物の疼痛を、[1]〜[4]のいずれかに記載の経皮投与製剤を使用して軽減する方法。
本発明によれば、貼付から3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減することが可能なフェンタニル含有経皮投与製剤を提供することができる。このような経皮投与製剤を3日毎に貼り替えながら複数回貼付(反復投与)して使用することにより、長期間に亘って優れた鎮痛効果を維持することができる。
本発明の経皮投与製剤の好適な実施形態を示す模式断面図である。 本発明の経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合における、フェンタニルの血中濃度の推移を示すグラフである。 がん疼痛患者に対する本発明の経皮投与製剤への切り替え試験において、第3回目貼付1〜3日後における各患者の持続痛(NRS値)の変化を示すグラフである。
本発明は、支持体と、前記支持体上に積層された薬剤含有層と、前記薬剤含有層上に積層され且つ薬剤透過性薬剤の放出を制御する薬剤制御膜と、前記薬剤制御膜上に積層された粘着層と、を含む経皮投与製剤を提供する。
図1に、本発明の経皮投与製剤の好適な実施形態を示す模式断面図を示す。本発明の経皮投与製剤は、図1に示すように、支持体10の一方の面に、薬剤含有層20、薬剤制御膜30、及び粘着層40がこれらの順で積層された構造を有する。薬剤含有層20は、粘着剤11を含み、更に薬剤含有粒子12が分散された状態で含まれている。この薬剤含有粒子12には、図示しないが、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩と、溶解剤とが含まれている。
〔支持体〕
本発明に用いられる支持体としては、特に制限されないが、薬剤が支持体へ移行し難く、且つ皮膚の動きに追随することができる柔軟性を有したものが好ましい。支持体の形態として、具体的には、織布、編布、不織布、不織紙、フィルム、及びこれらの積層体等が挙げられる。また、支持体の材質としては、酢酸セルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート−エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、ナイロン、ポリウレタン、及びレーヨン等の合成樹脂が挙げられる。
支持体は、皮膚に貼付するものであるから曲げ剛性が0.02〜0.10g・cm2/cm程度であることが好ましい。支持体の厚さは、特に制限されないが、通常は10〜1000μmであり、好ましくは20〜700μm、より好ましくは50〜500μmである。
〔薬剤含有層〕
本発明における薬剤含有層は、粘着剤と、薬剤としてフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩とを少なくとも含む。
(粘着剤)
粘着剤は、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ビニルエステル系粘着剤、及びポリエステル系粘着剤が挙げられる。なお、粘着剤は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着剤として好ましいのは、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤又はシリコーン系粘着剤である。これらの粘着剤は、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の溶解度が低いので、薬剤含有層に含まれるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の多くを薬剤含有粒子内に含有させることができる。
アクリル系粘着剤としては、例えば、アクリル酸・アクリル酸−2−エチルヘキシル共重合体、アクリル酸−2−エチルへキシル・メタクリル酸−2−エチルへキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体、アクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸オクチル共重合体、アクリル酸・アクリル酸−2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸・アクリル酸n−ブチル共重合体、メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体等が挙げられる。市販されている商品としては、「DURO−TAK」(ヘンケルジャパン社製)、「オイドラギット」(エボニックインダストリー社製)、「GELVA」(モンサント社製)等の各シリーズ商品が挙げられる。
ゴム系粘着剤としては、例えば、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブテン、及びスチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体(例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、及び天然ゴム等が挙げられる。
シリコーン系粘着剤としては、例えば、オルガノポリシロキサン骨格を有するポリマー等及びその誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルポリシロキサン、及びジフェニルシロキサン等が挙げられる。市販されている商品としては、例えば、「Bio−PSA」(ダウコーニング社製)のシリーズ商品等が挙げられる。
薬剤含有層中における粘着剤の含有量は、通常は10〜98質量%、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
粘着剤の含有量が前記下限値未満である場合、薬剤含有層に十分な凝集力を付与することができない場合がある。他方、粘着剤の含有量が前記上限値を超えると、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の皮膚透過量が減少する場合がある。
(軟化剤)
本発明における薬剤含有層は、軟化剤を含んでいても良い。軟化剤により、経皮投与製剤の粘着性を調整することができる。軟化剤としては、例えば、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリイソブチレン等の液状ゴム;流動パラフィン等のパラフィン油;シリコーン油;ラノリン;スクワラン;スクワレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等の植物系オイルを挙げることができる。これにより、粘着剤層に適度な皮膚接着力やタックを付与することができる。なお、軟化剤は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。
軟化剤の種類は、製剤物性や粘着剤との相性により適宜選択できる。例えば、粘着剤としてゴム系粘着剤を用いる場合には、軟化剤としては流動パラフィン等が好適に用いられる。流動パラフィンとしては、例えば、「モレスコホワイト」(モレスコ社製)、「ハイコール」(カネダ社製)、「コスモホワイト」(コスモ石油社製)等のシリーズ商品が販売されている。粘着剤としてシリコーン系粘着剤を用いる場合には、軟化剤としてはシリコーン油等が好適に用いられる。シリコーン油としては、例えば、メチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン等が挙げられる。
薬剤含有層中における軟化剤の含有量は、適宜設定することができるが、通常は1〜10質量%程度である。
(薬剤含有粒子)
本発明に係る経皮投与製剤における薬剤含有層は、上述した粘着剤中に分散された薬剤含有粒子を含み、この薬剤含有粒子は、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩と、溶解剤とを含む。
(フェンタニル)
本発明において、フェンタニル(化学名:N−(1−フェネチルピペリジン−4−イル)−N−フェニルプロパンアミド)は、遊離塩基(フリー体)又はその薬学的に許容される塩の形態として用いられる。フェンタニルの塩としては、特に限定されず、無機塩であっても有機塩であってもよく、例えば、硫酸塩、硫化水素塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、及び酒石酸塩等を挙げることができる。
従来の経皮投与製剤では、3日間という長期間に亘って貼付し続ける場合、貼付後3日目においても必要十分な薬効を得るために、多量のフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を薬剤含有層に使用する必要があった。しかしながら、本発明の経皮投与製剤では、薬剤含有層中において薬剤としてフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を薬剤含有粒子中に含ませると共に、薬剤含有層上に薬剤制御膜を配設することによって、経皮投与製剤から薬剤を安定して放出することができる。これにより、薬剤含有層中におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量を従来の製剤と比較して低くしても、貼付後3日目における鎮痛効果の低下を低減することができる。
薬剤含有層中におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、薬剤含有層の単位面積あたりの質量として、特に制限はないが、通常は0.2〜0.5mg/cm2、好ましくは0.3〜0.4mg/cm2である。フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量[mg/cm2]が前記下限値未満であると、鎮痛効果の持続性が十分ではなく、経皮投与製剤を貼付してから3日目に痛みの悪化の発現頻度が高くなる場合がある。他方、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量[mg/cm2]が前記上限値を超えると過剰の薬剤が無駄となる場合がある。
薬剤含有層中におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、特に制限はないが、薬剤含有層の全質量に対して、通常は0.1〜10質量%、より好ましくは1〜6質量%である。フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量[質量%]が前記下限値未満であると、鎮痛効果の持続性が十分ではなく、経皮投与製剤を貼付してから3日目に痛みが発生する場合がある。他方、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量[質量%]が前記上限値を超えると過剰の薬剤が無駄となる場合がある。
(溶解剤)
溶解剤は、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を溶解することができると共に、薬剤含有層に含まれている粘着剤と非相溶であることが好ましい。これにより、粘着剤中に薬剤含有粒子が分散された薬剤含有層を形成することができる。このような薬剤含有層は、粘着剤を含む連続相中に薬剤含有粒子を含む相が分散された相分離構造を有する。
更に、溶解剤に対するフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の溶解度は、粘着剤に対するフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の溶解度よりも高いことが好ましい。これにより、薬剤含有層に含まれているフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の多くを薬剤含有粒子中に含ませることができる。
溶解剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、2−ピロリドン、及びN−メチルピロリドンが挙げられる。なかでも、粘着剤に対する非相溶性及びフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の溶解性の観点から、ジプロピレングリコールが好ましい。なお、溶解剤は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。
薬剤含有層中における溶解剤の含有量は、特に制限はないが、通常は0.05〜30質量%、好ましくは1〜25質量%である。溶解剤の含有量が前記下限値未満であると、薬剤含有粒子を十分に含む薬剤含有層が得られない場合がある。他方、溶解剤の含有量が前記上限値を超えると皮投与製剤の接着性が低下し、皮膚への十分な付着力が得られない場合がある。
(粘着付与剤)
薬剤含有層には、粘着力向上のために粘着付与剤をさらに適量含有させてもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン等のロジン誘導体、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、マレイン酸レジン、カルナウバロウ、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、キトサン、グリセリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質無水ケイ酸、酢酸ベンジル、タルク、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリビニルアルコール等が挙げられる。市販されている商品としては、「アルコン」(荒川化学社製)、「パインクリスタル」(荒川化学社製)、「クリアロン」(ヤスハラケミカル社製)、「YSレジン」(ヤスハラケミカル社製)等の各シリーズ商品が挙げられる。粘着付与剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
薬剤含有層は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、更に、可塑剤、充填剤、溶解剤、安定化剤等を含んでいてもよい。
薬剤含有層における薬剤含有粒子の平均直径は、特に制限はないが、通常100μm以下である。
薬剤含有層の厚さは、特に制限はないが、通常は20〜300μm、好ましくは25〜150μmである。薬剤含有層の厚さが前記下限値未満である場合、十分な量のフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を薬剤含有層中に含ませることができない場合がある。他方、薬剤含有層の厚さが前記上限値を超えると、経皮投与製剤の保存中や貼付中に薬剤含有層が型崩れやコールドフローを起こす場合がある。
〔薬剤制御膜〕
本発明の経皮投与製剤は、薬剤制御膜を含む。この薬剤制御膜は、薬剤含有層と粘着層との間に設けられる。薬剤制御膜は、薬剤含有層から粘着層へのフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の移行速度を調節し、これにより経皮投与製剤がフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を安定した速度で徐々に放出することを可能とする。
薬剤制御膜としては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、公知の薬剤制御膜を使用することができる。薬剤制御膜としては、好ましくは高分子を含む膜が挙げられる。高分子としては、シリコーン、ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレン共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、及びポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの高分子を含む薬剤制御膜によれば、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を安定した速度で徐々に放出することが可能な経皮投与製剤を提供できる。
薬剤制御膜は、薬剤含有層と粘着層との間に設けられ、薬剤含有層から粘着層への薬剤成分の移行速度を調節する。薬剤制御膜は、細孔を含む多孔質であっても、細孔を含まない非多孔質であってもよい。多孔質の薬剤制御膜では、形成される孔の大きさは、所望とする薬剤成分の移行速度を考慮して適宜決定すればよい。非多孔質の薬剤制御膜は、高分子の分子運動により形成される分子鎖間隙内を薬剤が拡散することにより、薬剤含有層から粘着層への薬剤の移行速度を調節し、これにより薬剤を安定した速度で徐々に放出させることが可能である。
薬剤制御膜の厚さは、特に制限はないが、通常20〜150μmである。薬剤制御膜の厚さは経皮投与製剤を貼付してから3日目に痛みが発生しないように適宜調節できる。
〔粘着層〕
本発明の経皮投与製剤は、上述した薬剤制御膜上に配設された粘着層を含む。この粘着層を皮膚に直接貼り付けることにより、経皮投与製剤を皮膚へ貼付することができる。
(粘着剤)
粘着層は、粘着剤を含む。粘着剤は、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ビニルエステル系粘着剤、及びポリエステル系粘着剤が挙げられる。なお、粘着剤は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着剤として好ましいのは、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤である。これらの粘着剤は、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の溶解度が低いので、薬剤含有層から拡散移行してきたフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を、更に粘着層中でその皮膚接触面へと拡散移行させることができる。なお、粘着層に含まれるアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤の具体的な説明については、上述した薬剤含有層に含まれるアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤と同様であるため、重複する部分は省略する。なお、粘着層に含まれるシリコーン系粘着剤は、固体状であることが好ましい。
粘着層中における粘着剤の含有量は、特に制限はないが、通常は80〜100質量%である。
〔剥離ライナー〕
本発明の経皮投与製剤は、剥離ライナーを更に有していてもよい。剥離ライナーは、粘着層上に積層される。剥離ライナーとしては、公知のものを適宜採用でき、プラスチックフィルム、紙、及びこれらの積層体等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等が挙げられる。剥離ライナー表面には、フッ素樹脂、フルオロシリコーン樹脂、シリコーン樹脂等による離型処理が施されていてもよい。剥離ライナーの厚さは、特に制限はないが、通常は2〜300μm、好ましくは10〜150μmである。
本発明の経皮投与製剤では、この経皮投与製剤を皮膚に貼付してからの時間が48〜72時間の間において、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が0.2ng/mL以上となるものとする。フェンタニル含有経皮投与製剤では、鎮痛効果を発揮するために、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最小有効血中濃度は0.2ng/mLとされている。本発明の経皮投与製剤では、上述した通り、薬剤含有層中において薬剤としてフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を薬剤含有粒子中に含ませると共に、薬剤含有層上に薬剤制御膜を配設することによって、経皮投与製剤から薬剤を徐々に放出することができる。これにより、本発明経皮投与製剤では、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度を0.2ng/mL以上に維持して、貼付から3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減することができる。
本発明の経皮投与製剤において、この経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合の、前記経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間における、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度は、0.2ng/mL以上であるが、好ましくは0.2〜8.0ng/mL、より好ましくは0.2〜1.5ng/mLである。血中濃度が前記下限値未満であると、経皮投与製剤を貼付してから3日目に痛みが発生する場合がある。他方、血中濃度が前記上限値を超えると、過剰のフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩によって副作用が発生する場合がある。
フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度の具体的な測定方法は、次の通りである。先ず、経皮投与製剤を試験片に切断し、この試験片を健康成人男性(例えば、各用量18人)の上腕にそれぞれ貼付する。健康成人男性は、最後の投与から本測定までに、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を摂取していない状態が1週間以上続いている者とする。試験片は、これを貼付してから72時間後に剥離する。試験片を貼付してから6、12、18、24、30、36、48、60、72、78、84、96、108、120及び144時間後に各健康成人男性から採血を行い、高速液体クロマトグラフ法により血液中のフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の量を測定する。これにより、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の各健康成人男性における血中濃度を得る。そして、採血を行った時間毎に、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度の相加平均値を算出することにより、本発明の経皮投与製剤のフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が得られる。
本発明の経皮投与製剤では、上述した通り、薬剤含有層中において薬剤としてフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を薬剤含有粒子中に含ませると共に、薬剤含有層上に薬剤制御膜を配設することによって、経皮投与製剤から薬剤を徐々に放出する。これにより、後述するフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩のAUC48-72の変動係数及びCmaxの変動係数を小さくすることができ、経皮投与製剤を貼付してから3日目に痛みが発生する頻度を低減することができる。
本発明の経皮投与製剤は、この経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合における、下記式(I)で算出されるAUC48-72の変動係数(CV値)が、35%以下であるが、好ましくは15〜30%であり、より好ましくは20〜30%である。
AUC48-72の変動係数[%]=100×σ1/AUC48-72 式(I)
(式(I)中、AUC48-72はフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度−時間曲線下面積[h・ng/mL]を示し、σ1は前記AUC48-72の標準偏差を示す。) なお、他社のフェンタニル含有3日用経皮投与製剤では、AUC48-72は37.4(30症例の平均値)%程度であった。
フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩のAUC(血中濃度−時間曲線下面積)の具体的な測定方法は、次の通りである。先ず、上述したフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度の測定方法と同様にして、血中濃度を得る。次に、縦軸をフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度[ng/mL]とし、横軸を経皮投与製剤を貼付してから経過した時間[h(時間)]として血中濃度−時間曲線を作成する。この血中濃度−時間曲線における0時間〜144時間の積分値を算出することにより、AUC(血中濃度−時間曲線下面積)を得る。そして、健康成人男性(例えば、各用量18人)について、前記と同様にして、AUCを算出し、これらの相加平均値を本発明の経皮投与製剤のAUCとする。また、本発明の経皮投与製剤のAUCの標準偏差は、前記の通りにして、健康成人男性(例えば、各用量18人)について測定した全てのAUCに基づいて算出された値とする。また、AUC48-72は、試験片を貼付後48〜72時間の間のAUCである。
本発明の経皮投与製剤は、この経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合における、下記式(II)で算出されるCmaxの変動係数(CV値)が60%以下であるが、好ましくは55%以下であり、より好ましくは20〜55%であり、さらに好ましくは20〜50%である。
maxの変動係数[%]=100×σ2/Cmax 式(II)
(式(II)中、Cmaxは、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最高血中濃度[ng/mL]を示し、σ2は前記Cmaxの標準偏差を示す。)
フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩のCmax(最高血中濃度)の具体的な測定方法は、次の通りである。先ず、上述したAUCの測定方法と同様にして、血中濃度−時間曲線を作成する。この血中濃度−時間曲線からフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最高血中濃度(Cmax)を読み取る。これと同様の要領にて、健康成人男性(例えば、各用量18人)について、血中濃度−時間曲線からフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最高血中濃度(Cmax)を読み取り、これらの相加平均値を本発明の経皮投与製剤におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩のCmaxとする。また、本発明の経皮投与製剤のCmaxの標準偏差は、前記の通りにして、健康成人男性(例えば、各用量18人)について測定した全てのCmaxに基づいて算出された値とする。
本発明の経皮投与製剤の製造は、公知の方法に準じて行うことができ、特に制限されない。例えば、次の要領で行うことができる。
先ず、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩、及び溶解剤を混合することにより、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩を溶解させて、薬剤含有粒子組成物を得る。薬剤含有粒子組成物は、粘着付与剤を更に含んでいてもよい。他方、粘着剤、軟化剤、及び溶媒を混合することにより、粘着剤組成物(I)を得る。粘着剤組成物(I)は、可塑剤、充填剤、溶解剤、安定化剤を更に含んでいてもよい。次に、薬剤含有粒子組成物と粘着剤組成物(I)とを混合及び攪拌することにより、粘着剤組成物(I)中に薬剤含有粒子組成物が分散された塗工用混合物を得る。この際に攪拌条件を調整して薬剤含有粒子組成物の分散の程度を調整することにより、最終的に得られる薬剤含有層中に含まれる薬剤含有粒子の粒径を調整することができる。次に、塗工用混合物を支持体の一面に塗工し、必要に応じて加熱して溶媒を乾燥除去することにより、支持体上に積層された薬剤含有層を得る。その後、薬剤含有層上に薬剤制御膜を積層する。
次に、粘着剤、軟化剤、及び溶媒を混合することにより、粘着層を形成するための粘着剤組成物(II)を得る。この粘着剤組成物(II)を、薬剤制御膜の一面に塗工し、必要に応じて加熱して溶媒を乾燥除去することにより、薬剤制御膜上に積層された粘着層を得る。これにより、本発明の経皮投与製剤が得られる。
また、粘着剤組成物(II)を、剥離ライナーの一面に塗工し、必要に応じて加熱して溶媒を乾燥除去することにより、剥離ライナー上に粘着層を形成することもできる。この場合、粘着層が形成された剥離ライナーを、粘着層と薬剤制御膜とが接触するようにして、薬剤制御膜上に積層することにより、本発明の経皮投与製剤が得られる。
粘着剤組成物(I)及び粘着剤組成物(II)に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、シクロヘキサン、及びヘプタン等が挙げられる。溶媒は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の経皮投与製剤は、上述した通り、貼付から3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減することができる。このような経皮投与製剤は、3日間に亘って貼り続けて使用できるため、3日に1回貼り替えが必要な3日用経皮投与製剤として好適に用いられる。経皮投与製剤を3日に1回貼り替えながら複数回貼付(反復投与)して使用することにより、長期間に亘って優れた鎮痛効果を発揮することができる。したがって、本発明の経皮投与製剤によれば、がん患者など、長期間に亘って痛みの緩和が必要とされる患者に、長期間に亘って継続して投与する上で有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
次の構成を有する経皮投与製剤を作製した。すなわち、この経皮投与製剤は、支持体として、ポリエステルフィルムを含んでいる。この支持体の一面上には、アクリル系粘着剤70.65質量%、パラフィン油8質量%、フェンタニル5質量%、ジプロピレングリコール16質量%、及び粘着付与剤としてヒドロキシエチルセルロース0.35質量%を含有する薬剤含有層が一体的に積層されている。また、薬剤含有層の一面上には、ポリエチレンを含む膜からなる薬剤制御膜が一体的に積層されている。更に、薬剤制御膜の一面上には、アクリル系粘着剤100質量%を含有する粘着層が一体的に積層されている。
〔実施例2〕
次の構成を有する経皮投与製剤を作製した。すなわち、この経皮投与製剤は、支持体として、ポリ塩化ビニルを含んでいる。この支持体の一面上には、シリコーン系粘着剤65質量%、オリーブ油3.5質量%、フェンタニル8質量%、ジエチレングリコールジエチルエーテル23質量%、及び粘着付与剤としてマレイン酸レジン0.5質量%を含有する薬剤含有層が一体的に積層されている。また、薬剤含有層の一面上には、イソブチレン・イソプレン共重合体を含む膜からなる薬剤制御膜が一体的に積層されている。更に、薬剤制御膜の一面上には、アクリル系粘着剤95質量%及びひまし油5質量%を含有する粘着層が一体的に積層されている。
〔実施例3〕
次の構成を有する経皮投与製剤を作製した。すなわち、この経皮投与製剤は、支持体として、酢酸セルロースを含んでいる。この支持体の一面上には、ゴム系粘着剤76.5質量%、流動パラフィン6質量%、フェンタニル3.5質量%、1,3−ブタンジオール13質量%、及び粘着付与剤としてポリアクリル酸ナトリウム1質量%を含有する薬剤含有層が一体的に積層されている。また、薬剤含有層の一面上には、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む膜からなる薬剤制御膜が一体的に積層されている。更に、薬剤制御膜の一面上には、ゴム系粘着剤98質量%及びラノリン2質量%を含有する粘着層が一体的に積層されている。
実施例で作製した経皮投与製剤のひとつについて、フェンタニルを1.38mg、2.75mg、5.5mg、8.25mg又は11.0mg含有する経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合の、貼付後144時間後までのフェンタニルの血中濃度を、上述した要領にて測定した。その結果、前記経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間における、フェンタニルの血中濃度は0.2ng/mL以上であった。
更に、実施例1の経皮投与製剤について、この経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合における、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩のAUC48-72、前記AUC48-72の標準偏差σ1及び前記AUC48-72の変動係数、Cmax、前記Cmaxの標準偏差σ2及び前記Cmaxの変動係数変動係数[%]を上述した要領にて測定した。これらの結果を表1及び図1に示す。
Figure 0006912122
〔実施例4〕
既にオピオイド鎮痛薬による治療で安定して疼痛コントロールが良好になされているがん疼痛患者89例を対象に、フェンタニルを1.38mg、2.75mg、5.5mg、8.25mg又は11.0mg含有する経皮投与製剤に鎮痛治療を切り替え、疼痛コントロールが維持できるか否かを確認した。経皮投与製剤の1回の貼付は3日間(約72時間)とし、同一患者に計3回、胸部、腹部、上腕部、大腿部などに貼付した。疼痛に関しては、数値的評価スケールであるNRS(Numerical Rating Scale)法により測定した。1日(過去24時間)のうちの大半(12時間以上)を占める痛みに関して、痛みなどの症状の程度が0(痛みがない)から10(これ以上の強い痛みは考えられない、又は、死ぬほど痛い)までの11段階のどのあたりにあるかを患者自身に判断してもらい、記録してもらった。これらの結果を表2に示す。
Figure 0006912122
NRS値(3日間の期間平均値)は、経皮投与製剤の貼付期間を通じて明らかな上昇は認められず、持続痛に対する経皮投与製剤の鎮痛効果は貼付期間を通して維持された。また、貼付2日目から貼付3日目までの持続痛に対する鎮痛効果の推移は、良好に維持されたことから、貼付から3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減することが確認された。本発明の経皮投与製剤を貼付して3日後の前記NRS値は1.1〜1.5であり、好ましくは1.2〜1.4である。また、当該NRS値の標準偏差は1.1〜1.6であり、好ましくは1.2〜1.5である。
上記のがん疼痛患者に対する実施例1の経皮投与製剤への切り替え試験において、第3回目貼付1〜3日後における各患者の持続痛(NRS値)が前日と比較して減少した場合を「改善」、変わらない場合を「不変」、増加した場合を「悪化」に分類し、その変化を評価した。結果を図3に示す。
持続痛のNRS値が1以上悪化した症例の割合は貼付1日後で12%(11/89例)、貼付2日後で8%(7/89例)、貼付3日後で11%(10/89例)であった。また、その中でもNRS値が2以上悪化した症例は、貼付1日後で3例(3.4%)、貼付2日後で2例(2.2%)、貼付3日後で1例(1.1%)であった。このように、本発明の経皮投与製剤を貼付した患者は、3日目においても鎮痛効果の低下が非常に起こり難いことが認められた。他社の3日用経皮投与製剤では10〜25%の患者に貼付3日目の痛みの悪化(NRS値が1以上悪化)がみられた。
本発明によれば、貼付から3日目に発生する鎮痛効果の低下を低減することが可能なフェンタニル含有経皮投与製剤を提供することができる。これにより、この経皮投与製剤を貼付した患者においては3日間にわたり痛みが適切にコントロールされ、患者の苦痛や介護者の負担を軽減することが可能となる。
10 支持体
11 粘着剤
12 薬剤含有粒子
20 薬剤含有層
30 薬剤制御膜
40 粘着層

Claims (6)

  1. 支持体と、当該支持体上に積層された薬剤含有層と、当該薬剤含有層上に積層され、薬剤透過性で薬剤の放出を制御し且つ高分子を含む膜からなる薬剤制御膜と、当該薬剤制御膜上に積層された粘着層と、を有する3日間貼付型の経皮投与製剤において、
    当該薬剤含有層は、粘着剤と、当該粘着剤を含む連続相中に分散された、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩及びジプロピレングリコールを含む溶解剤を含む薬剤含有粒子を含む相とを含み、当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、薬剤含有層の全質量に対して、0.1〜10質量%で、当該溶解剤の含有量は、薬剤含有層の全質量に対して、0.05〜30質量%であり、
    当該粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤を含み、
    当該経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合に、当該経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が0.2ng/mL以上であり、下記式(I)で算出されるAUC48-72の変動係数(CV値)が35%以下であることを特徴とする経皮投与製剤。
    AUC48-72の変動係数[%]=100・σ1/AUC48-72 式(I)
    (式(I)中、AUC48-72は当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度−時間曲線下面積(h・ng/mL)を示し、σ1は当該AUC48-72の標準偏差を示す。)
  2. 支持体と、当該支持体上に積層された薬剤含有層と、当該薬剤含有層上に積層され、薬剤透過性で薬剤の放出を制御し且つ高分子を含む膜からなる薬剤制御膜と、当該薬剤制御膜上に積層された粘着層と、を有する3日間貼付型の経皮投与製剤において、
    当該薬剤含有層は粘着剤と、当該粘着剤を含む連続相中に分散された、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩及びジプロピレングリコールを含む溶解剤を含む薬剤含有粒子を含む相とを含み、当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、薬剤含有層の全質量に対して、0.1〜10質量%で、当該溶解剤の含有量は、薬剤含有層の全質量に対して、0.05〜30質量%であり、
    当該粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤を含み、
    当該経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合に、当該経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が0.2ng/mL以上であり、下記式(I)で算出されるAUC48-72の変動係数(CV値)が35%以下であると共に、
    AUC48-72の変動係数[%]=100・σ1/AUC48-72 式(I)
    (式(I)中、AUC48-72は当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度−時間曲線下面積(h・ng/mL)を示し、σ1は当該AUC48-72の標準偏差を示す。)
    下記式(II)で算出されるCmaxの変動係数(CV値)が60%以下であることを特徴とする経皮投与製剤。
    maxの変動係数[%]=100・σ2/Cmax 式(II)
    (式(II)中、Cmaxは当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最高血中濃度(ng/mL)を示し、σ2は当該Cmaxの標準偏差を示す。)
  3. 支持体と、当該支持体上に積層された薬剤含有層と、当該薬剤含有層上に積層され、薬剤透過性で薬剤の放出を制御し且つ高分子を含む膜からなる薬剤制御膜と、当該薬剤制御膜上に積層された粘着層と、を有する3日間貼付型の経皮投与製剤において、
    当該薬剤含有層は、粘着剤と、当該粘着剤を含む連続相中に分散された、フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩及びジプロピレングリコールを含む溶解剤を含む薬剤含有粒子を含む相とを含み、当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、薬剤含有層の全質量に対して、0.1〜10質量%で、当該溶解剤の含有量は、薬剤含有層の全質量に対して、0.05〜30質量%であり、
    当該粘着剤が、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤を含み、
    当該経皮投与製剤を72時間に亘って皮膚に貼付した場合に、当該経皮投与製剤の貼付から経過した時間が48〜72時間の間におけるフェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度が0.2ng/mL以上であり、下記式(I)で算出されるAUC48-72の変動係数(CV値)が35%以下であると共に、
    AUC48-72の変動係数[%]=100・σ1/AUC48-72 式(I)
    (式(I)中、AUC48-72は当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の血中濃度−時間曲線下面積(h・ng/mL)を示し、σ1は当該AUC48-72の標準偏差を示す。)
    下記式(II)で算出されるCmaxの変動係数(CV値)が60%以下であり、
    maxの変動係数[%]=100・σ2/Cmax 式(II)
    (式(II)中、Cmaxは当該フェンタニル又はその薬学的に許容可能な塩の最高血中濃度(ng/mL)を示し、σ2は当該Cmaxの標準偏差を示す。)
    当該経皮投与製剤貼付3日後における鎮痛の数値的評価スケール(NRS)値が1.1〜1.5且つ当該NRS値の標準偏差が1.1〜1.6であることを特徴とする経皮投与製剤。
  4. 貼付3日目のヒト又は動物における痛みの悪化する頻度が低減された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の経皮投与製剤。
  5. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の経皮投与製剤と、当該経皮投与製剤を貼付したヒト又は動物においては、貼付3日目の痛みの悪化の発生する頻度が低減される旨を示す説明書、添付文書、製品ラベル、包装、パンフレット、カタログ又はリーフレットと、を含む製品。
  6. 動物(ヒトを除く)の疼痛を、請求項1乃至のいずれか一項に記載の経皮投与製剤を使用して軽減する方法。
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