以下に、本発明の実施形態に係る農作業支援システムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、下記の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
先ず、農作業支援システムの概略について、図1〜図2Bを参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る農作業支援システムの概略を示す構成図であり、図2Aは、実施形態に係る農作業支援システムの概略を示すブロック図、図2Bは、実施形態に係る情報処理装置の概略を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る農作業支援システム100(図2A参照)は、例えば、作業車両10と、作業車両10の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得装置としてのGNSS(Global Navigation Satellite System)制御装置120と、作業車両10に持ち込み可能な情報処理装置としてのタブレット端末140を携帯端末として備える。GNSS制御装置120は、上空を周回している航法衛星123からの電波を受信して測位および計時することができる。なお、タブレット端末140に代えて、作業車両10に搭載された情報処理装置であってもよい。
タブレット端末140は、図2Aに示すように、インターネット等の通信ネットワーク110に接続可能であり、通信ネットワーク110を介して、少なくとも1つの情報処理端末130と互いに接続可能な状態で構築される。すなわち、本実施形態に係る農作業支援システム100は、いわゆるクラウドコンピューティング(Cloud Computing)が可能なシステムである。
情報処理端末130は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、さらには入出力装置が設けられたコンピュータ等である。ここでは、情報処理端末130として、所定のサーバ装置130aやパーソナルコンピュータ130bが通信ネットワーク110を介してタブレット端末140と接続可能としている。なお、図1においては、1つの情報処理端末130(農作業支援用のサーバ装置130aあるいはパーソナルコンピュータ130b)が、例えば圃場A,B,Cの所有者の家屋、あるいは管理者の建屋等の建造物H内に設置されている。
作業車両10は、圃場A,B,Cを走行可能な走行車体1と作業装置2とを備えており、かかる作業装置2としては、例えば、作業車両10が苗移植機であれば苗植付装置、施肥機であれば施肥装置、トラクタであれば耕耘ロータリ等である。また、作業車両10が、例えばコンバインであれば、刈取り部や脱穀部等の作業装置である。上述した例は一例であり、圃場A,B,Cにおいて農作業を行うための作業装置であれば特に限定されるものではない。
走行車体1は、動力源であるエンジン(不図示)と、このエンジンの動力を駆動輪と作業装置2とに伝える動力伝達装置(不図示)とを備え、農道Rや圃場A,B,Cの内部を自由に走行することができる。なお、エンジンには、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
タブレット端末140は、構成的には上述した情報処理端末130と同様なコンピュータの一種であり、図2Bに示すように、制御部143と、これにそれぞれ接続する記憶部141と、情報を表示する表示部および各種の入力操作を行う操作部が一体となったタッチパネル142と、GNSSアンテナ121とを備える。
記憶部141には、個々に圃場識別情報200a〜200iが付与された圃場A,B,Cの場所を示す圃場地図情報に関連付けて、圃場関連情報、作業関連情報および作業車両位置情報が、複数の圃場A,B,C毎の独立情報として記憶される。すなわち、地区別に区分された圃場A,B,Cそれぞれに、区画された複数の区画圃場A0〜A2、B0〜B3、C0,C1に関する必要情報が、データベース化されて記憶部141に記憶されている。なお、以下では、特に区別する必要のない場合、各地区における区画圃場A0〜A2、B0〜B3、C0,C1についても圃場A,B,Cと記す場合がある。
上記構成を備える農作業支援システム100では、地図情報により視覚的に識別できる複数の圃場A,B,Cそれぞれにおいて、圃場関連情報、作業関連情報および作業車両10の位置情報を一元的に管理することができる。そのため、互いの各情報を関連付けて、例えばタブレット端末140のタッチパネル142に画面表示することができるため、視覚的に確認しやすくなる。また、圃場関連情報、作業関連情報および作業車両10の位置情報が関連付けられた必要情報は、圃場A,B,Cから離れた情報処理端末130によっても共有できるため、今後の農作業計画を立案すること等が容易に行える。
農作業支援システム100を上記構成としたため、圃場A,B,Cに存在するタブレット端末140を介して、圃場関連情報、作業関連情報および位置情報について、サーバ装置130aに逐次アップロードすることにより、農作業計画や、作業経路情報はクラウドコンピューティングを利用してサーバ装置130aやパーソナルコンピュータ130bでも作成することが可能となる。このように、本実施形態に係る農作業支援システム100によれば、より多角的な見地からの農作業支援が期待できる。
また、本実施形態においては、かかる必要情報を用いて、図1に示すように、作業車両10を自動運転させるための作業経路300を示す作業経路情報の生成が容易に行えるようになる。こうして生成された作業経路情報は、作業内容や圃場A,B,Cの状態等に見合ったきめ細かなものとなる。
そのため、例えば、作業車両10が自動運転される場合の作業経路300は、圃場Aの中を単調に進行するようなものではなく、後述するように、例えば一時停止したり、圃場Aの畔際へ移動したりする行程までを含ませることが可能となり、極めて有効な農作業支援を行うことができる。
ここで、図3を参照して、本農作業支援システム100について、より具体的に説明する。図3は、実施形態に係る農作業支援システム100におけるタブレット端末140と作業車両10のコントローラ150とを中心としたブロック図である。
本実施形態に係る農作業支援システム100における作業車両10は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、作業車両10には、図3に示すコントローラ150が走行車体1(図1参照)に設けられている。また、タブレット端末140は走行車体1に持ち込み可能、あるいは着脱自在に備えられており、タブレット端末140とコントローラ150とは、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信規格により接続可能である。なお、タブレット端末140とコントローラ150とは、有線により接続可能な構成であっても構わない。
図3に示すように、作業車両10に搭載されて農作業支援システム100を構成するコントローラ150は、これも上述の情報制御装置と同様に、CPU等を有する処理装置や、ROM、RAM、HDD等の記憶装置、および入出力装置が設けられており(図示省略)、これらは互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。
また、コントローラ150には、エンジン制御装置であるECU(Engine Control Unit)11、自動運転選択スイッチ18、各種センサ160、例えば、電動モータ、油圧シリンダ等の各種アクチュエータ170が接続されるとともに、GNSS制御装置120や自動操舵装置180が接続される。
また、コントローラ150には、タブレット端末140と通信を行うための車体通信部151が接続される。なお、コントローラ150に接続する各種センサ160としては、例えば、圃場A,B,Cの水深を検出する水深センサ、圃場A,B,Cの作土深を検出する作土深センサ、圃場A,B,Cの肥料濃度を検出する肥沃度センサ、収穫物である籾等の重さを検出したり苗の重量を検出したりするロードセル等の重量センサ、後輪の回転数を検出する回転センサ、走行車体1の傾きを検出する傾きセンサ、あるいは作業クラッチセンサや温度センサ等、様々なセンサがある。
また、各種アクチュエータ170としては、例えば、作業装置2を昇降させる昇降シリンダ等の様々なシリンダや、圃場A,B,Cへの給排水口102となる水戸口(図6参照)に設けられる水門を開閉するモータや水深センサ等を回動させるモータ、エンジンの吸気量を調節するスロットルモータ等の電動モータ等、様々なモータがある。
位置情報取得装置として作業車両10の位置情報を取得するGNSS(Global Navigation Satellite System)制御装置120は、走行車体1に設けられた受信アンテナ122と、タブレット端末140に設けられたGNSSアンテナ121とを備え、かかるGNSSアンテナ121や受信アンテナ122によって航法衛星123からの電波を受信し、所定時間毎にGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得することができる。
そして、GNSS制御装置120が取得する位置情報と、圃場A,B,Cに関する圃場関連情報と、位置毎の作業関連情報とを、圃場A,B,Cの場所を示す圃場地図情報とに互いに関連付けて記録したテーブルを、各圃場A,B,C毎の独立情報として生成するようにしている。
自動操舵装置180は、GNSS制御装置120が取得する位置情報に基づきコントローラ150により制御されるもので、走行車体1に設けられた操縦ハンドル(不図示)を自動操作して、走行車体1を自動運転することができる。自動操舵装置180は、任意の回転力を付与して操縦ハンドルを回転させる操舵モータ181と、操縦ハンドルの回転角度を検知するハンドルポテンショメータ182とを備える。
また、図3に示すように、本実施形態に係る農作業支援システム100では、所謂ドローンと呼ばれる無人飛行体900を備えている。かかる無人飛行体900には撮像装置としてのカメラ910が搭載されるとともに、GNSS制御装置120の一部を構築可能なアンテナ920を備えている。
かかる無人飛行体900は、タブレット端末140との通信が可能であり、作業者は、タッチパネル142により所定の操作を行うことにより、無線によってカメラ910の操作を含む無人飛行体900の全ての動作制御を行うことができる。例えば、圃場A,B,Cに植付けた作物の生育状態等を上空から撮影することができるとともに、撮像した位置がGNSS制御装置120により圃場地図情報と関連付けることが可能である。
コントローラ150同様に農作業支援システム100の主要部をなすタブレット端末140は、前述したように、制御部143と、これにそれぞれ接続する記憶部141と、情報を表示する表示部および各種の入力操作を行う操作部が一体となったタッチパネル142と、GNSSアンテナ121とを備えるとともに、走行車体1側の車体通信部151に対応する端末通信部144が設けられている。なお、この端末通信部144を介して無人飛行体900との通信が可能となっている。
タブレット端末140の記憶部141は、制御部143による制御処理に必要な各種プログラムのほか、各種情報が記憶されている。すなわち、記憶部141は、圃場データベース(DB)1411、作業データベース(DB)1412、経路データベース(DB)1413、さらには各種プログラムが格納されたプログラム部1414が区画生成されている。
プログラム部1414には、例えば、作業車両10を自動運転する際の作業経路情報を生成する作業経路生成プログラムや、生成された作業経路情報にしたがって、作業車両10を自動運転するための自動操舵プログラム等、作業車両10の動作全般を制御するコンピュータプログラムが格納される。なお、作業経路生成プログラムや自動操舵プログラム等を含む各種コンピュータプログラムは、走行車体1に搭載されたコントローラ150の記憶部に格納されていてもよい。
圃場データベース(DB)1411には、図2Bに示すように圃場地図情報が記憶されている。圃場地図情報は、圃場A,B,Cの位置を地図上で示す画像データに、圃場A,B,Cを特定する圃場識別情報200a〜200i、作業車両10の位置情報、圃場関連情報、作業関連情報等が紐づけされている。
ここで、図4A〜図8を参照しながら、各種情報およびこれらが紐づけられた地図情報について、より具体的に説明する。図4Aは、圃場関連情報テーブルを示す図であり、図4Bは、作業関連情報テーブルを示す図である。また、図5は、圃場地図情報の一例を示す図、図6は、圃場地図情報に関連付けられた周辺地理情報を示す図、図7は、周辺地理情報を模式的に示す平面図、そして、図8は、圃場地図情報に関連付けられた作業関連情報の一例を示す図である。
すなわち、圃場地図情報に関連付けられる圃場識別情報200a〜200iは、地図情報に紐づけられて、例えば、タブレット端末140のタッチパネル142上には、図5に示すように、地図上において、区画された複数の区画圃場A0〜A2、B0〜B3、C0,C1の位置が明示される。タッチパネル142には、圃場A,B,Cを中心としてその周辺の地図までも表示されるため、農業従事者となる作業者や農業管理者は、農作業支援が実行される該当圃場の位置や形状、広さ等を視覚的に明確に把握することができる。
また、圃場関連情報としては、図4Aに示すように、圃場面耕耘情報と運転経路情報と、周辺地理情報とがふくまれる。また、周辺地理情報としては、車両進入位置情報、水戸口位置情報、障害物位置情報、消耗資材補給地点情報、収穫物移送地点情報、畦畔情報等が含まれる。
これらの周辺地理情報は、具体的には、図6に示すように、地図情報に紐づけられてタッチパネル142上に表示される。なお、図6では、互いに隣接する区画圃場A0〜A2が例示されている。
図6(a)には、車両進入位置情報に対応する車両進入口101が、区画圃場A0,A1,A2毎に定められた位置に重ねて表示される。ここでは、車両進入口101が、それぞれ矩形形状に区画された区画圃場A0,A1,A2の農道R(図1参照)に面した短辺側に設けられていることが分かる。
図6(b)には、収穫物移送地点情報に対応する籾排出トラック位置105が、区画圃場A0、A1,A2毎に定められた位置に重ねて表示される。ここでは、車両進入口101に近接した位置に設定されていることが分かる。なお、籾排出トラック位置105は、例えば、コンバインにより収穫物となる籾を排出オーガを介してトラックに移す際に、農道Rにおいてトラックを停める位置である。
図6(c)には、障害物位置情報に対応する電柱等の障害物103の位置が、例えば、区画圃場A0に重ねて表示される。ここでは、障害物103は、矩形形状に区画された区画圃場A0の長辺側に位置していることが分かる。なお、ここでは障害物103を電柱としたが、その他にも、例えば、標識、構造物(その壁)、自然災害や工事等人為的に生じた穴等、作業車両10が圃場A,B,C内の外周縁近傍を通る際に、あるいは農道Rを通る際に、走行阻害要素となるものを指す。
図6(d)には、消耗資材補給地点情報に対応する苗補給地点104が、車両進入口101や籾排出トラック位置105が設けられている区画圃場A0,A1,A2の短辺側に位置するように表示される。ここでは、例えば、作業車両10がマット苗やポット苗を移植する苗移植機の場合の苗の補充位置を例示したが、籾を直播するタイプの場合等も消耗資材補給地点情報として補給地点が表示される。また、消耗資材としては、例えば、肥料等も含まれるため、肥料の補給地点等も表示されることになる。
図6(e)には、水戸口位置情報に対応する給排水口102の位置が、車両進入口101や苗補給地点104や籾排出トラック位置105とは反対の短辺側であって、各区画圃場A0、A1,A2の角部に表示される。かかる給排水口102に設けられる水門等は、通常手動で開門するが、例えばタブレット端末140の操作による遠隔操作で開門可能な構成とすることもできる。
図6(f)には、畦畔情報に対応して、区画圃場A0、A1,A2を囲うように盛土された畦畔部分が、土のままの裸地畦畔R1とコンクリートが打設された被覆畦畔R2とが視覚的に識別できるように表示される。ここでは、車両進入口101や苗補給地点104や籾排出トラック位置105が設けられる側は被覆畦畔R2であり、それ以外は裸地畦畔R1としている。
一方、作業関連情報としては、図4Bに示すように、作業機種別情報、作業種別情報、作業幅情報、作業機奥行情報、作業結果情報、生育測定情報、作土深情報、施肥情報、肥沃度情報、作業機姿勢情報、および機械情報等が含まれる。
作業種別情報は、耕耘、播種、苗植付、施肥、刈取・脱穀等の農作業の種類を示す情報であって、識別情報が付与された圃場A、B,Cの圃場地図情報に紐づけられた独立情報である。
作業機種別情報は、耕耘ロータリー、播種機、苗植付装置、施肥装置、刈取装置、脱穀装置等の作業装置2の種別を示す情報であって、識別情報が付与された圃場A、B,Cの圃場地図情報に紐づけられた独立情報である。
作業幅情報は、作業幅を示す情報であり、例えば、作業車両10が苗移植機であれば、4条、5〜7条、8条、10条というように、走行しながら実行される作業幅が異なる。そこで、識別情報が付与された圃場A、B,Cの圃場地図情報に紐づけられた独立情報として、作業幅を示す情報についても作業関連情報に含ませている。また、作業機奥行情報は、作業装置2の奥行長を示す情報である。
作業結果情報は、区画圃場A0,A1,A2内で所定の作業を行った後の結果を示す種々の情報であり、例えば、図8に示すように、地区別に区分された圃場A,B,Cがさらに区画された複数の区画圃場A0〜A2、B0〜B3、C0,C1について、A地区の区画圃場A0〜A2については所定の作業が完了しており、B地区の区画圃場B0については現在作業中でることが視覚的に容易に認識可能に表示される。ここでは、便宜上、ハッチング等で示したが、タブレット端末140のタッチパネル142では色分けされて表示されるようにするとよい。
このように、本農作業支援システム100では、最新の情報を次回の作業に活かすことができるように、作業未着手情報、作業中情報、および作業完了情報を、圃場A,B,C毎に取得可能であり、かつ作業車両10を用いて実際に作業している間に更新可能としている。
また、作業結果情報としては、圃場A0,A1,A2内で作業で消費した消耗資材(苗や籾や肥料等)の量、収穫作業であれば収量等が含まれる。また、作業車両10が例えばコンバインであれば、作業中に、区画圃場A0,A1,A2における穀稈の倒伏状況を撮像し、区画圃場A0,A1,A2内の位置情報と倒伏状態とを関連付けて記憶した情報等も作業結果情報に含まれる。
生育測定情報は、一定期間ごとの作物の大きさや、害虫や病原菌等に起因する病害状況等を数値化した情報、あるいは画像情報等である。これらの情報は、作業車両10に搭載した各種センサ160やカメラ等によって取得することができる。また、画像情報としては、例えば、作物が稲であれば、その生育過程を無人飛行体900に搭載したカメラ910で撮像し、区画圃場A0,A1,A2内の位置情報と撮像した画像情報とを関連付けて記憶した情報も含まれる。
作土深情報とは、耕耘によって攪拌された圃場面において、下層よりも膨軟な状態となっている部分の深さを数値化した情報である。また、施肥情報とは、区画圃場A0,A1,A2において施肥した際の肥料の種類および施肥量に関する情報であり、追肥した場合はその分についても含まれる。そして、肥沃度情報とは、施肥した際の区画圃場A0,A1,A2において測定した肥料濃度に関する情報である。
作業機姿勢情報とは、例えば、区画圃場A0,A1,A2における作業装置2の走行中の上下移動の変化や傾きの変化等を、作業車両10の位置情報と紐づけて記憶された情報であり、圃場面の硬さや荒れ具合等の状態を推定することができる。
機械情報は、走行車体1や作業装置2の稼働時間に関する情報と、走行距離、燃料消費量や水温、作動油等の油圧や油温、バッテリの電圧等、作業に用いられる機械に関する様々な情報であるが、少なくとも、作業車両10の位置に対応付けられた、作業中の作業車両10の瞬時速度情報、作業車両10のエンジンの負荷率情報および回転数情報のうちの一つは含まれるようにしておくとよい。
上述した独立情報、すなわち、圃場地図情報に関連付けられた、圃場関連情報および作業関連情報に基づいて、タブレット端末140の制御部143は、作業車両10を自動運転によって走行させる作業経路情報を生成することができる。
すなわち、タブレット端末140の制御部143には、図3に示すように、作業経路生成部1432が設けられており、作業経路生成部1432は、GNSS制御装置120を有する作業車両10のコントローラ150と協働して位置情報と圃場関連情報および作業関連情報に基づき作業経路情報を自動生成することができる。そして、生成された作業経路情報は、経路DB1413に、圃場A0〜A2、B0〜B3、C0,C1にそれぞれ1対1で対応して記憶される。
また、タブレット端末140の制御部143には、作業情報取得部1431が設けられている。この作業情報取得部1431は、作業車両10が備える各種センサ160が検出した情報を、逐次受信し、受信した情報が圃場関連情報であるのか、あるいは作業関連情報であるのかを判別し、判別結果に応じて圃場DB1411、あるいは作業DB1412に格納する。
すなわち、作業情報取得部1431には、周辺地理情報等のGNSS座標が、位置情報として圃場地図情報に関連付けられて格納されており、作業経路生成部1432は、かかる周辺地理情報等の位置情報を参照しながら作業経路情報を生成する。
例えば、作業車両10が、例えばトラクタ10Aであり、作業経路生成部1432により生成された作業経路情報に従って、自動運転により例えば耕耘作業等の所定の作業を行う場合、トラクタ10Aは、図7(a)に示すように、車両進入口101から圃場A0へ進入し、圃場A0内に設定された所定の作業経路300(図1参照)を走行しながら耕耘作業を行い、作業終了後は再び車両進入口101から農道R(図1参照)へ退出することができる。
また、図6(c)に示したように、電柱等が通行の邪魔になる場合、作業経路生成部1432は、障害物103の手前で操舵モータ181(図3参照)を駆動して所定の操舵角で電柱を回避して通行可能な作業経路情報を生成する。したがって、作業車両10は、たとえ無人の自動運転による走行であっても、安全に走行し、課せられた所定の作業を行うことができる。
このとき、作業関連情報には、作業装置2の種別に応じた作業機種別情報や作業幅情報が含まれているため、作業経路生成部1432は、かかる情報を加味して、電柱を回避する作業経路情報を生成することができる。すなわち、作業経路生成部1432は、作業経路情報を生成する際に、作業装置2の種別情報および作業幅情報を参照する。なお、作業関連情報には、作業機奥行情報についても含まれているため、かかる作業機奥行情報についても加味することによって、安全面について、より精度の高い作業経路情報の生成が可能となる。
また、作業車両10が、例えば苗移植機10Bであり、作業経路情報に従って、自動運転により苗植付作業等の所定の作業を行う場合、苗移植機10Bは、図7(b)に示すように、車両進入口101から圃場A0へ進入し、圃場A0内に設定された所定の作業経路300(図1参照)を走行しながら苗植付作業を行い、作業終了後は再び車両進入口101から農道R(図1参照)へ退出することができる。このとき、苗移植機10Bは、予め設定されている苗補給地点104において一次停止し、苗の補給を受けることができる。
また、作業車両10が、例えばコンバイン10Cであって、作業経路情報に従って、自動運転により刈取・脱穀作業を行う場合、コンバイン10Cは、圃場A0内に設定された所定の作業経路300(図1参照)を走行しながら刈取・脱穀作業を行うとともに、作業経路300の中途から籾排出トラック位置105へと自動的に移動し、図7(c)に示すように、籾排出トラック位置105において貯留していた籾をトラック(不図示)へと移すことができる。
また、作業経路生成部1432が作業経路情報を生成する際に、例えば、熟練した作業者の手動運転により走行した走行路に関する運転経路情報を参照するようにしてもよい。すなわち、作業関連情報として、作業者による運転経路情報を含ませておくのである。こうして、作業経路生成部1432は、かかる運転経路情報と、作業装置2の種別情報とを参照することで、熟練者のような作業を自動で行うことができる。また、自動運転ならずとも、設定された作業経路情報にしたがってマニュアル操作をした場合でも、例えば農作業経験の浅い若年等であっても作業内容に応じ、熟練者のような無駄のない作業を実現することができる。
上述した構成により、タブレット端末140の作業経路生成部1432は、圃場A,B,C毎に一元管理された圃場関連情報、作業関連情報および作業車両10の位置情報を利用して、図9に示すような作業経路情報を作成することができる。図9は、業経路図の一例を示す模式図である。
図9において、圃場A0は、a−b、b−c、c−d、d−eで結ばれる外縁を有する矩形形状をしており、外縁よりも所定幅(枕地旋回3工程分)だけ内側に、一点鎖線で示す耕耘エリア201が設定されている。すなわち、耕耘エリア201は、例えば、トラクタ10A(図7(a)参照)による耕耘作業によって形成されるエリアであり、作業車両10による実質的な作業エリアとなる。
かかる耕耘エリア201において、作業開始地点204からトラクタ10Aが直進し、枕地106で旋回して直進し、さらに反対側の枕地106で旋回して直進するという、略2往復分の作業経路情報を生成する場合について説明する。
タブレット端末140の作業経路生成部1432は、トラクタ10Aが自動走行できるように、作業経路情報を生成するのであるが、先ず、自動運転の基準となる経路として、圃場A0の外縁a−bラインに平行な運転経路基準ライン202を設定する。この運転経路基準ライン202は、枕地旋回3工程分だけ内側になるように設定される。すなわち、耕幅200cmから隣接する幅同士でオーバーラップさせるラップ幅20cmを減じた値を3倍し、それに耕幅の半分となる100cmを加えた長さだけ、圃場A0の外縁a−bラインよりも内側に設定される。
次に、互いに隣接する運転経路隣接ライン203を設定するのであるが、これは、運転経路基準ライン202に平行であり、進行方向については前工程の進行方向とは180度逆向きにする。そして、運転経路隣接ライン203は、運転経路基準ライン202に対して、耕幅200cmからラップ幅20cmを減じた位置を通るように順次設定する。
また、図9における符号205a,205bは、作業経路情報における旋回ラインを示すもので、運転経路隣接ライン203が耕耘エリア201と交差する位置から次工程の運転経路隣接ライン203とつながるように旋回できるように操舵モータ181(図3参照)を駆動する。
こうして、生成された作業経路情報に従って設定された作業経路300を、トラクタ10Aは、無人であっても自動運転しながら所定の耕耘作業を行うことができる。
ところで、本実施形態に係る農作業支援システム100では、図9に示す耕耘エリア201のように、圃場A,B,Cの最外縁から所定距離だけ内側に設けられた第1の領域を通る第1の作業経路情報のみならず、当該第1の作業経路情報と圃場A,B,Cの外縁との間に設けられた第2の領域を通る第2の作業経路情報とを生成可能である。
第2の作業経路情報を生成する場合、例えば、その中途に障害物103が存在する場合、作業経路生成部1432は、かかる障害物103を回避する作業経路302となるように第2の作業経路情報を生成する。また、例えば作業車両10が苗移植機10Bであった場合、苗補給地点104では一時停止する作業経路301となるような第2の作業経路情報を生成する。
なお、図3に示したように、作業車両10は、上述の第1の作業経路情報および第2の作業経路情報のうち、いずれの作業経路情報を用いて自動運転するかを択一的に選択する自動運転選択スイッチ18を備えている。したがって、作業者は、いずれの作業経路情報を利用するかについて、任意に選択することができる。
上述した実施形態を通して、以下の農作業支援システムが実現し、それに応じた特有な効果を奏する。
(1)作業装置2を備えて圃場A,B,Cを走行可能な作業車両10と、作業車両10の位置を示す位置情報を取得するGNSS制御装置120と、個々に識別情報200a〜200iが付与された圃場A、B,Cの場所を示す圃場地図情報に関連付けて、圃場関連情報、作業関連情報および位置情報を、圃場A,B,C毎の独立情報として記憶可能な情報処理装置としての携帯端末であるタブレット端末140とを備える農作業支援システム100。
(2)上記(1)において、圃場関連情報は、作業装置2の種別および作業内容の種別に応じた情報が、それぞれ独立して圃場A,B,C毎に記憶される農作業支援システム100。
(3)上記(2)において、圃場関連情報は、地理的に圃場A,B,Cの周辺に位置する周辺地理情報をさらに含む農作業支援システム100。
(4)上記(3)において、周辺地理情報は、圃場A,B,Cにおける車両侵入口101、給排水口102、および障害物103の各位置情報、または畦畔の位置および高さ等の畦畔情報のうち、少なくとも一つを含む農作業支援システム100。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、タブレット端末140は、作業車両10による作業に関し、作業未着手情報、作業中情報、および作業完了情報等の作業経過情報を圃場A,B,C毎に取得可能であり、かつこの作業経過情報を作業中に更新可能とした農作業支援システム100。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、作業関連情報には、圃場A,B,C毎の作業結果情報および生育測定情報のいずれか一方または両方が含まれる農作業支援システム100。
(7)上記(6)において、カメラ910を備えた無人飛行体900をさらに備え、無人飛行体900により空撮した画像情報から生育測定情報を取得可能とした農作業支援システム100。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、作業関連情報は、作土深情報、肥沃度情報、施肥情報、および収量情報のうちの少なくとも一つの情報を含む農作業支援システム100。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、タブレット端末140は、サーバ装置130aを含む複数の情報処理端末130と互いに通信ネットワーク110を介して接続しており、圃場関連情報、作業関連情報および位置情報を、このタブレット端末140を介してサーバ装置130aにアップロード可能とする農作業支援システム100。
(10)作業装置2を備えて圃場A,B,Cを走行する作業車両10と、個々に識別情報200a〜200iが付与された圃場A,B,Cの場所を示す圃場地図情報に関連付けて、圃場関連情報および作業関連情報を、圃場A,B,C毎に独立情報として記憶可能な情報処理装置としての携帯端末であるタブレット端末140とを備え、タブレット端末140は、独立情報に基づき生成した作業経路情報を、圃場A,B,C毎に記憶可能とした農作業支援システム100。
(11)上記(10)において、作業車両10の位置を示す位置情報を取得するGNSS制御装置120をさらに備え、タブレット端末140は、位置情報と圃場関連情報および作業関連情報に基づき、作業経路情報を自動生成する作業経路生成部1432を備える農作業支援システム100。
(12)上記(11)において、独立情報に含まれる圃場関連情報は、地理的に圃場A,B,Cの周辺に位置する周辺地理情報を含み、作業経路生成部1432は、作業経路情報を生成する際に、周辺地理情報を参照する農作業支援システム100。
(13)上記(12)において、周辺地理情報に、作業車両10の走行を阻害する走行阻害要素である障害物103が含まれる場合、作業経路生成部1432は、障害物103を回避した作業経路情報を生成する農作業支援システム100。
(14)上記(11)から(13)において、独立情報に含まれる作業関連情報は、作業装置2の種別情報および作業内容の種別情報が、それぞれ独立して圃場A,B,C毎に記憶されており、作業経路生成部1432は、作業経路情報を生成する際に、作業装置2の種別情報および作業内容の種別情報を参照する農作業支援システム100。
(15)上記(14)において、独立情報に含まれる作業関連情報は、苗、籾や肥料等を補給する消耗資材補給地点104を示す消耗資材補給地点情報を含み、作業経路生成部1432は、作業装置2の種別情報および消耗資材補給地点情報に基づき、作業経路情報に、消耗資材補給地点104で作業車両10を一時停止させる一時停止地点情報を設定する農作業支援システム100。
(16)上記(14)において、独立情報に含まれる作業関連情報は、例えば収穫物の移送地点である籾排出トラック位置105を示す収穫物移送地点情報を含み、作業経路生成部1432は、作業装置2の種別情報および収穫物移送地点情報に基づき、作業経路情報に、作業車両であるコンバイン10Cを籾排出トラック位置105へ移動させる車両移動情報を設定する農作業支援システム100。
(17)上記(14)において、作業関連情報は、作業装置2の種別に応じた作業幅情報を含み、作業経路生成部1432は、作業経路情報を生成する際に、作業装置2の種別情報および作業幅情報を参照する農作業支援システム100。
(18)上記(14)において、作業関連情報は、作業者の手動運転により走行した走行路に関する運転経路情報を含み、作業経路生成部1432は、作業経路情報を生成する際に、作業装置2の種別情報および運転経路情報を参照する農作業支援システム100。
(19)上記(14)において、作業関連情報には、圃場A,B,C内における作業車両10の位置に対応付けられて、作業中の作業装置2の高さ方向の変化を示す姿勢情報が含まれる農作業支援システム100。
(20)上記(14)において、作業関連情報には、圃場A,B,C内における作業車両10の位置に対応付けられて、作業中の作業車両10の瞬時速度情報、作業車両10のエンジンの負荷率情報および回転数情報のうち少なくとも一つが機械情報として含まれる農作業支援システム100。
(21)上記(11)から(20)のいずれかにおいて、作業経路生成部1432は、圃場A,B,Cの最外縁から所定距離だけ内側に設けられた第1の領域を通る第1の作業経路情報と、当該第1の作業経路情報と圃場A,B,Cの外縁との間に設けられた第2の領域を通る第2の作業経路情報とを生成可能であり、作業車両10は、第1の作業経路情報および第2の作業経路情報のうち、いずれの作業経路情報を用いて自動運転するかを択一的に選択する自動運転選択スイッチ18を備える農作業支援システム100。
(22)上記(10)から(21)のいずれかにおいて、タブレット端末140は、複数の情報処理端末130と通信ネットワーク110を介して互いに接続可能であり、圃場関連情報および作業関連情報は、作業車両10に搭載したタブレット端末140を介して、作業中に更新可能である農作業支援システム100。
なお、上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素等のスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。