JP6911300B2 - 運転支援装置 - Google Patents

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Description

本発明は、転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータを操作対象とする運転支援装置に関する。
たとえば特許文献1には、転舵アクチュエータに内蔵された電動機のトルクを、ユーザによるステアリングの操作と車両の進行方向の情報とに基づき操作するいわゆるレーンキープ処理を実行する装置が記載されている。具体的には、この装置では、ステアリングに入力されるトルクである操舵トルクの検出値に基づきアシストトルクを設定し、アシストトルクと操舵トルクの検出値とに基づき、転舵角指令値を設定する。また、この装置では、レーンキープ処理のために転舵角指令値の補正値を算出し、この補正値によって転舵角指令値を補正する。そして、補正された転舵角指令値に転舵角の検出値をフィードバック制御するための操作量によってアシストトルクを補正し、電動機のトルクが補正されたアシストトルクとなるように制御する。
特開2015−42527号公報
上記装置の場合、車両を車線に沿って走行させるための転舵角指令値の補正量は、ユーザによる意思とは独立に算出されるものであるため、ユーザの意思に応じた適切な制御とはならないおそれがある。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両を車線に沿って走行させるために転舵角指令値を補正する処理を実行するものにおいて、転舵角指令値の補正量をユーザの意思に応じたより適切な値にできるようにした運転支援装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.運転支援装置は、ユーザがステアリングに加えるトルクである操舵トルクの検出値を入力とし、転舵輪の転舵角の指令値である転舵角指令値を設定する転舵角指令値設定処理と、車両の進行方向の情報および前記転舵角の検出値を入力とし、前記車両を車線に従って走行させるために前記転舵角指令値を補正する支援量を算出する支援量算出処理と、前記支援量を支援補正量によって補正する支援量補正処理と、前記支援量補正処理のなされた前記支援量を用いて前記転舵角指令値を補正する指令値補正処理と、前記指令値補正処理にて補正された前記転舵角指令値に前記転舵角の検出値をフィードバック制御するために、前記転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータに操作信号を出力する操作処理と、を実行し、前記支援量補正処理は、前記転舵角の検出値または前記支援量と前記操舵トルクとを入力とし、ユーザによる前記ステアリングの操作による操舵と前記支援量算出処理による操舵との整合性が低い場合、高い場合と比較して、前記支援補正量を、前記支援量の絶対値を小さい値に減少補正する量に算出する支援補正量算出処理を含む。
上記構成では、支援量によって補正された転舵角指令値となるように転舵アクチュエータが操作されるため、車両を車線に従って走行させる支援をすることができる。しかも、ユーザによるステアリングの操作による操舵と支援量算出処理による操舵との整合性が低い場合には、支援量の絶対値を小さい値に補正するため、ユーザによる操舵を尊重することができる。このため、車両を車線に沿って走行させるために転舵角指令値を補正する処理を実行するものにおいて、転舵角指令値の補正量をユーザの意思に応じたより適切な値にできる。
2.上記1記載の運転支援装置において、前記支援量補正処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが逆となって且つ、前記支援量の極性および前記検出値の極性が反転したことを検知することを条件に、前記支援補正量による補正に加えてパターン補正量によって前記支援量を補正することによって、前記支援補正量単独で前記支援量算出処理によって算出された前記支援量を補正した場合と比較して補正後の前記支援量の絶対値を減少させるパターン検出時補正処理を含む。
支援量の極性と操舵トルクの検出値の極性とが逆となる場合は、同一となる場合と比較して、ユーザによるステアリングの操作による操舵と支援量算出処理による操舵との整合性が低いため、支援補正量によって支援量の絶対値が減少補正される。ここで、操舵トルクの検出値の極性が反転する場合は、車両を右旋回側および左旋回側のいずれかに操舵する状態から逆側に操舵する状態に変化する場合であると考えられる。そしてその場合であっても、支援量の極性と操舵トルクの検出値の極性とが逆となるのであれば、上記整合性がいっそう低い状態であると考えられる。その場合、上記構成では、パターン補正量によって、支援補正量単独で支援量算出処理によって算出された支援量を補正した場合と比較して補正後の支援量の絶対値を減少させることによって、ステアリングの操作による操舵をいっそう尊重することができる。
3.上記1記載の運転支援装置において、前記支援量補正処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが同一となって且つ、前記支援量の極性および前記検出値の極性が反転したことを検知することを条件に、前記支援補正量による補正に加えてパターン補正量によって前記支援量を補正することによって、前記支援補正量単独で前記支援量算出処理によって算出された前記支援量を補正した場合と比較して補正後の前記支援量の絶対値を増加させるパターン検出時補正処理を含む。
支援量の極性と操舵トルクの検出値の極性とが同一となる場合は、逆となる場合と比較して、ユーザによるステアリングの操作による操舵と支援量算出処理による操舵との整合性が高いため、逆となる場合と比較して、支援補正量によって補正された支援量の絶対値が大きくなる。ここで、操舵トルクの検出値の極性が反転する場合は、車両を右旋回側および左旋回側のいずれかに操舵する状態から逆側に操舵する状態に変化する場合であると考えられる。そしてその場合であっても、支援量の極性と操舵トルクの検出値の極性とが同一となるのであれば、支援量算出処理による操舵が転舵アクチュエータの操作に顕著に反映されているにもかかわらず、ステアリングによる操舵が必要とされていると考えられる。そこで上記構成では、パターン補正量によって、支援補正量単独で支援量算出処理によって算出された支援量を補正した場合と比較して補正後の支援量の絶対値を大きくすることによって、ステアリングに入力されるトルクを大きくしなくてもユーザの意思に沿った操舵がなされるようにすることができる。
4.上記1記載の運転支援装置において、前記支援量補正処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが逆である第1状態から同一である第2状態に移行することを条件に、前記第2状態において前記支援補正量による補正に加えてパターン補正量によって前記支援量を補正することによって、前記支援補正量単独で前記支援量算出処理によって算出された前記支援量を補正した場合と比較して補正後の前記支援量の絶対値を増加させるパターン検出時補正処理を含む。
第1状態から第2状態に移行する場合、ステアリングの操作による操舵は、支援量算出処理による操舵に対して遅れた状態から追従する状態に移行するものであると考えられる。ここで、第1状態から第2状態に移行する場合、ユーザによるステアリングの操作による操舵と支援量算出処理による操舵との整合性は高まっている。そして、第2状態においては、支援補正量によって補正された支援量の絶対値が大きくなっているにもかかわらず、支援量の極性と操舵トルクの検出値の極性とが同一となる。これは、支援量算出処理による操舵が転舵アクチュエータの操作に顕著に反映されているにもかかわらず、ステアリングによる操舵が必要とされていると考えられる。そこで上記構成では、パターン補正量によって、支援補正量単独で支援量算出処理によって算出された支援量を補正した場合と比較して補正後の支援量の絶対値を大きくすることによって、ステアリングに入力されるトルクを大きくしなくてもユーザの意思に沿った操舵がなされるようにすることができる。
5.上記1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置において、前記支援補正量算出処理は、前記転舵角の検出値による前記操舵トルクの検出値の微分値が大きい場合に小さい場合よりも前記整合性が低いとして、前記支援補正量を、前記支援量を減少させる量とする処理を含む。
上記微分値が大きい場合には、転舵角を変化させるのに要する操舵トルクが大きいことを意味する。これは、支援補正量による操舵の支援によってステアリングの操舵をあまり支援できていない状態であると考えられる。このため、上記構成では、その場合に整合性が低いとして支援補正量を支援量を減少させる量とする。
6.上記1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置において、前記支援補正量算出処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが逆である場合に同一である場合よりも前記整合性が低いとして、前記支援補正量を、前記支援量を減少させる量とする処理を含む。
支援量算出処理による操舵は、支援量の極性に反映され、ステアリングの操作による操舵は、操舵トルクの検出値の極性に反映される。このため、上記構成では、それらの極性が同一であるか否かに応じて、整合性を把握する。
第1の実施形態にかかる運転支援装置およびその操作対象の構成を示す図。 同実施形態にかかる制御装置の実行する処理の一部を示す図。 同実施形態にかかるゲイン算出処理部の処理の手順を示す流れ図。 第2の実施形態にかかるゲインの設定手法を示す図。 第3の実施形態にかかるゲイン算出処理部の処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる支援量の推移と操舵トルクの推移とを例示するタイムチャート。
<第1の実施形態>
以下、運転支援装置にかかる第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態にかかる操舵機構においては、ステアリングホイール(ステアリング10)が、ステアリングシャフト12に固定されており、ステアリングシャフト12の回転に応じてラック軸20が軸方向に往復動する。なお、ステアリングシャフト12は、ステアリング10側から順にコラム軸14、中間軸16、およびピニオン軸18を連結することにより構成されている。
ピニオン軸18は、ラック軸20と所定の交叉角をもって配置されており、ラック軸20に形成された第1ラック歯20aとピニオン軸18に形成されたピニオン歯18aとが噛合されることで第1ラックアンドピニオン機構22が構成されている。また、ラック軸20の両端には、タイロッド24が連結されており、タイロッド24の先端は転舵輪26が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。したがって、ステアリング10の操作に伴うステアリングシャフト12の回転が第1ラックアンドピニオン機構22によりラック軸20の軸方向変位に変換され、この軸方向変位がタイロッド24を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪26の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
上記ラック軸20は、ピニオン軸28と所定の交叉角をもって配置されており、ラック軸20に形成された第2ラック歯20bとピニオン軸28に形成されたピニオン歯28aとが噛合されることで第2ラックアンドピニオン機構30が構成されている。
ピニオン軸28は、ウォームアンドホイール等の減速機構32を介して、電動機34の回転軸34aに接続されている。電動機34には、電動機34の各端子に電圧を印加するインバータ36が接続されている。なお、図1においては、破線にて囲われた、ラック軸20、ピニオン軸28、減速機構32、電動機34、およびインバータ36が転舵アクチュエータPSAを構成する。
制御装置50は、中央処理装置(CPU52)およびメモリ54を備えており、メモリ54に記憶されたプログラムをCPU52が実行することにより、各種センサの検出値に基づき、インバータ36を操作することによって、電動機34の制御量(トルク)を制御する。各種センサとしては、たとえば、ピニオン軸18に設けられたトーションバー60の捩れに基づきピニオン軸18に加わるトルク(操舵トルクTrqs)を検出するトルクセンサ62や、回転軸34aの回転角度θmを検出する回転角度センサ64がある。また、インバータ36の出力線電流(電流iu,iv,iw)を検出する電流センサ66、車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ68がある。
制御装置50は、ユーザがステアリング10を操作することによりステアリング10に入力される操舵トルクTrqsに基づき、操舵をアシストするために転舵アクチュエータPSAを操作するアシスト処理を実行する。ただし、制御装置50は、アシスト処理に際して、カメラ70による画像データに基づき車両を車線に従って走行させるために、転舵アクチュエータPSAに対する操作信号MStを、単なるアシスト処理によって要請されるものに対して補正したものとする。
図2に、メモリ54に記憶されたプログラムをCPU52が実行することにより実現される処理の一部を示す。
ベーストルク算出処理部M10は、車速Vと操舵トルクTrqsとに基づき、ステアリング10の操舵をアシストするアシストトルクのベース値(ベーストルクTrqa)を算出して出力する。ベーストルク算出処理部M10は、操舵トルクTrqsの大きさ(絶対値)が大きい場合に小さい場合よりもベーストルクTrqaの大きさ(絶対値)を大きい値に算出する。また、ベーストルク算出処理部M10は、操舵トルクTrqsが同一であっても車速Vが低い場合に高い場合よりもベーストルクTrqaの大きさを大きい値に設定する。
転舵角算出処理部M12は、電動機34の回転軸34aの回転角度θmに基づき、転舵輪26の転舵角θpを算出する。
転舵角指令値設定処理部M14は、操舵トルクTrqsとベーストルクTrqaとに基づき、操舵トルクTrqsにとって理想的な転舵角である転舵角指令値θp1*を算出して出力する。本実施形態では、以下の式(c1)に基づき、転舵角指令値θp1*を算出する。
Trqs+Trqa=K・θp1*+C・θp1´+J・θp1´´ …(c1)
上記の式(c1)は、トルクに対する理想的な転舵角指令値θp1*を定めるモデルである。上記の式において、ばね係数Kは、ステアリング10の操作時にユーザが感知する操舵感のうち、特に、サスペンションやホイールアライメントの仕様、転舵輪26のグリップ力に起因した弾性に関する操舵感を定める。また、粘性係数Cは、ステアリング10の操作時にユーザが感知する操舵感のうち、特に、操舵装置の摩擦に起因した操舵感を定める。また、慣性係数Jは、ステアリング10の操作時にユーザが感知する操舵感のうち、特に、操舵装置の慣性に起因した操舵感を定める。
支援量算出処理部M16は、カメラ70による車両の進行方向前方等の画像データに基づき、車両を車線に従って走行させるための転舵角指令値θp1*の補正量(支援量Δp1*)を算出して出力する。詳しくは、支援量算出処理部M16は、画像データに基づき、車両が車線に従って走行する際の理想的な軌跡である目標走行軌跡を算出する。そして、支援量算出処理部M16は、目標走行軌跡と転舵角θpとに基づき、転舵角θpを、目標走行軌跡を走行するうえで適切な値に近づけるための支援量Δθp1*を算出する。
ゲイン算出処理部M18は、転舵角θpと操舵トルクTrqsとを入力とし、ユーザによる操舵の意思に応じて、支援量Δθp1*を補正するゲインGm*を算出して出力する。補正量補正処理部M20は、支援量Δθp1*にゲインGm*を乗算した値(支援量Δθp*)を、補正後の支援量Δθp*として出力する。
転舵角補正処理部M22は、転舵角指令値θp1*に支援量Δθp*を加算することによって、転舵角指令値θp*を算出して出力する。
転舵角フィードバック処理部M24は、転舵角θpを転舵角指令値θp*にフィードバック制御するための操作量として、トルク補正量ΔTrqを算出して出力する。トルク補正処理部M26は、ベーストルクTrqaに、トルク補正量ΔTrqを加算することによって、トルク指令値Trq*を算出して出力する。操作信号出力処理部M28は、電動機34のトルクをトルク指令値Trq*とするための操作信号MStを算出してインバータ36に出力する。
図3に、ゲイン算出処理部M18の処理の手順を示す。図3に示す処理は、CPU52により、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
図3に示す一連の処理において、CPU52は、まず、操舵トルクTrqsと転舵角θpとを取得する(S10)。次に、CPU52は、転舵角θpによる操舵トルクTrqsの1階微分値であるインピーダンスIを算出する(S12)。この処理は、実際には、所定時間当たりの転舵角θpの変化量によって、所定時間当たりの操舵トルクTrqsの変化量を除算した値を求める処理とすればよい。インピーダンスIは、ユーザによる操舵の意思を定量化したパラメータである。すなわち、インピーダンスIは、値が大きい場合に小さい場合よりもユーザがステアリング10を操作して操舵をする意思が大きいことを意味する。すなわち、たとえばユーザの操舵が支援量Δθp1*による操舵と整合している場合、ステアリング10に大きなトルクを入力する必要がないため、転舵角θpが変化したとしても操舵トルクTrqsの変化量は小さくなり、インピーダンスIは小さい値となる。一方、ユーザの操舵が支援量Δθp1*による操舵と整合していない場合、ユーザがステアリング10に大きなトルクを入力することとなり、転舵角θpの変化量の割に操舵トルクTrqsが大きくなるためインピーダンスIは大きい値となる。
次に、CPU52は、インピーダンスIに基づきゲインGm*を算出する(S14)。ゲインGm*は、ゼロ以上「1」以下の値であり、インピーダンスIが小さい場合に大きい場合よりも大きい値となる。CPU52は、ゲインGm*を算出すると、図2に示した補正量補正処理部M20にゲインGm*を出力する(S16)。
なお、CPU52は、ステップS16の処理が完了する場合、図3に示す一連の処理を一旦終了する。
ここで本実施形態の作用を説明する。
車両が車線からはずれるような走行をする場合、支援量算出処理部M16は、車両を車線に沿って走行させるように支援量Δθp1*を算出する。そして、転舵角指令値θp*が、支援量Δθp1*に基づき算出される場合、車両を車線に沿って走行させるアシストを行うことができる。
一方、ゲイン算出処理部M18では、ユーザによる操舵の意思が大きい場合には、ゲインGm*を小さい値に算出するため、ゲインGm*によって補正された支援量Δθp1*である支援量Δθp*は、その絶対値が小さい値となる。このため、ユーザによる操舵の意思が大きい場合に、支援量Δθp1*がユーザによる操舵の意思に干渉する事態が生じることを抑制することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
上記実施形態では、CPU52は、インピーダンスIに基づきゲインGm*を算出したが、本実施形態では、支援量算出処理部M16が出力する支援量Δθp*と、操舵トルクTrqsとの類似度に基づき、ゲインGm*を算出する。
図4に、パターンPA〜PHのそれぞれについて、支援量Δθp*と、操舵トルクTrqsとの類似度およびゲインGm*を示す。図4において、右肩上がりの矢印と右肩下がりの矢印とは、互いに極性が逆であることを示し、また、水平方向の矢印は、その大きさ(絶対値)が小さくゼロに近いことを示す。詳しくは、水平方向の矢印は、大きさが規定値以下であることを示し、右肩上がりの矢印は、大きさが規定値よりも大きく且つ右旋回側の値であることを示し、右肩下がりの矢印は、大きさが規定値よりも大きく且つ左旋回側の値であることを示す。なお、図4には、操舵トルクTrqsの変化速度を参考として記載している。
図4に示すパターンPA,PBは、いずれも支援量Δθp*の極性と操舵トルクTrqsの極性とが逆となる場合を示している。図4に示すパターンPC,PD,PE,PFは、いずれも支援量Δθp*と操舵トルクTrqsとのいずれか一方の大きさ(絶対値)が小さい場合を示す。また、図4に示すパターンPG,PHは、いずれも支援量Δθp*の極性と操舵トルクTrqsの極性とが同一となる場合を示している。
パターンPA,PBの場合、類似度は小さいとして、ゲインGm*を小さい値とする。換言すれば、ステアリング10の操作と支援量算出処理部M16が車両を車線に沿って走行させるための操舵との類似度が小さいとして、ゲインGm*を小さい値とする。一方、パターンPC,PD,PE,PFは、いずれも支援量Δθp*と操舵トルクTrqsとのいずれか一方の大きさ(絶対値)が小さいために、パターンPA,PBと比較すると類似度が大きい場合であるが、パターンPG,PHと比較すると類似度が小さい。このため、類似度は、中程度であるとして、ゲインGm*を、パターンPA,PBのものよりも大きいがパターンPG,PHのものよりも小さい値に設定する。これに対し、パターンPG,PHは、いずれも支援量Δθp*の極性と操舵トルクTrqsの極性とが同一となる場合であるため、類似度が大きいとして、ゲインGm*を大きい値に設定する。
なお、たとえば、パターンPA,PBにおいても、ゲインGm*の値を1つに定める代わりに、互いの大きさの和が大きい場合に小さい場合よりも小さい値とするなどしてもよい。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、インピーダンスIに基づき設定されたゲインGm*を、走行パターンに基づき補正する。
図5に、ゲイン算出処理部M18の処理の手順を示す。図5に示す処理は、CPU52により、たとえば所定周期で繰り返し実行される。なお、図5において、図3に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付してその説明を省略する。
図5に示す一連の処理において、CPU52は、インピーダンスIを算出すると、インピーダンスIに基づきゲインGm*を算出する(S14a)。ここで、CPU52は、インピーダンスIが大きい場合に小さい場合よりもゲインGm*を小さい値とし且つ、ゲインGm*の最小値を「0」よりも大きい値とし、最大値を「1」よりも小さい値とする。CPU52は、ゲインGm*を算出すると、支援量Δθp*および操舵トルクTrqsの時系列データに基づき、図4に示したパターンPA,PBが繰り返されるPABパターンであるか否かを判定する(S20)。換言すれば、CPU52は、支援量Δθp*の極性と操舵トルクTrqsの極性とが逆となって且つ、支援量Δθp*の極性および操舵トルクTrqsの極性が反転したことを検知したか否かを判定する。
そしてCPU52は、PABパターンであると判定する場合(S20:YES)、ゲインGm*に減少係数KL(<1)を乗算することによって、ゲインGm*を減少補正する(S22)。なお、減少係数KLは、正の値である。この処理は、ユーザによるステアリング10の操作をより尊重し、電動機34のトルクに対する支援量算出処理部M16による影響をより低減する処理である。すなわち、パターンPA,PBが繰り返される走行パターンの場合、ユーザは、支援量算出処理部M16が意図する操舵を信用してこれに操舵をゆだねる状態になく、支援量算出処理部M16が意図する操舵による転舵量を抑制するようにステアリング10に操舵トルクTrqsを入力している状態であると考えられる。このため、本実施形態では、ステアリング10の操作をより尊重する設定とした。
CPU52は、PABパターンではないと判定する場合(S20:NO)、図4に示したパターンPG,PHが繰り返されるPGHパターンであるか否かを判定する(S24)。換言すれば、CPU52は、支援量Δθp*の極性と操舵トルクTrqsの極性とが同一となって且つ、支援量Δθp*の極性および操舵トルクTrqsの極性が反転したことを検知したか否かを判定する。
そしてCPU52は、PGHパターンであると判定する場合(S24:YES)、ゲインGm*に増加係数KH(>1)を乗算することによって、ゲインGm*を増加補正する(S26)。これは、支援量算出処理部M16が車両を車線に従って走行させるうえで適切であるとした操舵を、電動機34のトルクにより大きく反映させるための設定である。すなわち、パターンPG,PHが繰り返される走行パターンの場合、支援量算出処理部M16による操舵と、ユーザの操舵とが整合しているのであるが、同パターンが繰り返される場合、路面からの外乱等によってユーザがステアリング10に入力する操舵トルクTrqsがある程度大きくなっている状態であると考えられる。このため、支援量算出処理部M16による操舵を、電動機34のトルクにより大きく反映させることによって、ユーザの負担の軽減を図る。
CPU52は、PGHパターンではないと判定する場合(S24:NO)、図4に示したパターンPAに続いてパターンPFを経てパターンPGが生じることと、パターンPBに続いてパターンPEを経てパターンPHが生じることとの論理和が真であるか否かを判定する(S28)。換言すれば、CPU52は、支援量Δθp*の極性と操舵トルクTrqsの極性とが逆である状態から同一である状態に移行したか否かを判定する。
そしてCPU52は、論理和が真であると判定する場合(S28:YES)、支援量Δθp*の極性と操舵トルクTrqsの極性とが同一である状態において、ゲインGm*に増加係数KH(>1)を乗算することによって、ゲインGm*を増加補正する(S30)。換言すれば、パターンPG,PHであるときにゲインGm*を増加補正する。これは、支援量算出処理部M16による操舵と、ユーザの操舵とが整合している場合に、支援量算出処理部M16による操舵を、電動機34のトルクにより大きく反映させるための設定である。すなわち、たとえばパターンPAに続いてパターンPFを経てパターンPGが生じる場合、ユーザによる操舵は、支援量算出処理部M16による操舵に対して遅延しつつも、それに整合した操舵へと移行している。そして、パターンPG,PHにおいては、整合しているにもかかわらず、ユーザがステアリング10に入力する操舵トルクTrqsがある程度大きくなっている状態であると考えられる。このため、支援量算出処理部M16による操舵を、電動機34のトルクにより大きく反映させることによって、ユーザの負担の軽減を図る。
CPU52は、S22,S26,S30の処理を完了する場合や、S28において否定判定する場合には、S16の処理に移行する。
ここで、本実施形態の作用を説明する。
図6に、走行パターンを例示する。図6に示すように、パターンPA,PBが生じる場合(図中、PAB)、CPU52は、ゲインGm*を、S14aにおいて設定した値に対して減少補正する。また、CPU52は、パターンPG,PHが生じる場合(図中、PGH)、ゲインGm*を、S14aにおいて設定した値に対して増加補正する。また、CPU52は、パターンPA,PFが生じた後(図中、PAF)、パターンPGとなる場合、ゲインGm*を、S14aにおいて設定した値に対して増加補正する。
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。
1.転舵角指令値設定処理は、ベーストルク算出処理部M10および転舵角指令値設定処理部M14によって転舵角指令値θp1*が設定される処理に対応する。支援量算出処理は、支援量算出処理部M16による支援量Δθp1*を算出する処理に対応し、支援量補正処理は、ゲイン算出処理部M18によりゲインGm*を算出する処理と、補正量補正処理部M20が支援量Δθp*を算出する処理とに対応する。指令値補正処理は、転舵角補正処理部M22が転舵角指令値θp*を算出する処理に対応する。操作処理部は、転舵角フィードバック処理部M24がトルク補正量ΔTrqを算出する処理と、トルク補正処理部M26がトルク指令値Trq*を算出する処理と、操作信号出力処理部M28が操作信号MStを出力する処理とに対応する。支援補正量算出処理は、ゲイン算出処理部M18がゲインGm*を算出する処理に対応し、支援補正量は、ゲインGm*に対応し、運転支援装置は、制御装置50に対応する。
2.パターン検出時補正処理は、S20,S22の処理に対応し、パターン補正量は、減少係数KLに対応する。
3.パターン検出時補正処理は、S24,S26の処理に対応し、パターン補正量は、増加係数KHに対応する。
4.パターン検出時補正処理は、S28,S30の処理に対応し、パターン補正量は、増加係数KHに対応する。
5.S14,S14aにおいて、インピーダンスIが大きい場合に小さい場合よりもゲインGm*を小さい値に設定する処理に対応する。
6.図4に示したゲインGm*の設定処理に対応する。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態の各事項の少なくとも1つを、以下のように変更してもよい。
・「操作処理について」
転舵角指令値設定処理部M14において、上記の式(c1)にて表現されるモデル式を用いて転舵角指令値θp1*を設定する代わりに、たとえば、粘性係数Cにて表現される項を削除するなど、別のモデルを用いてもよい。
ベーストルク算出処理部M10によって算出されたベーストルクTrqaにトルク補正量ΔTrqを加算した値をトルク指令値Trq*とすることは必須ではない。ベーストルクTrqaを算出しない場合、操舵トルクTrqsのみから転舵角指令値θp1*を算出し、転舵角θpを転舵角指令値θp*にフィードバック制御するための操作量を、トルク指令値Trq*とすればよい。
トルク指令値Trq*を算出することは必須ではない。たとえば、電動機34が表面磁石同期電動機であって、弱め界磁制御を行うことなく最小電流最大トルク制御のみを実行することを前提とするなら、q軸の電流指令値としてもよい。
・「ユーザによる操舵の意思の定量化手法について」
支援量Δθp1*と操舵トルクTrqsとの類似度や、インピーダンスIによって定量化するものに限らない。たとえば、図4に示した手法に代えて、操舵トルクTrqsの1階微分値と支援量Δθp1*の1階微分値との極性によって定量化するものであってもよい。すなわち、たとえば、双方の極性が同一である場合に異なる場合よりも整合性が高いとして、ゲインGm*を大きい値に設定すればよい。また、たとえば、図4に示した手法に代えて、操舵トルクTrqsの2階微分値と支援量Δθp1*の2階微分値との極性によって定量化するものであってもよい。すなわち、たとえば、双方の極性が同一である場合に異なる場合よりも整合性が高いとして、ゲインGm*を大きい値に設定すればよい。
・「パターン検出時補正処理について」
上記第3の実施形態では、インピーダンスIに基づき算出されたゲインGm*を補正したが、これに限らない。たとえば、支援量Δθp1*と操舵トルクTrqsとの類似度に基づき算出されたゲインGm*や、上記「ユーザによる操舵の意思の定量化手法について」の欄における他の変形例に基づき算出されたゲインGm*を補正する処理であってもよい。
また、パターン検出時補正処理としては、ゲインGm*を補正する処理に限らない。たとえば支援補正量にて支援量Δθp1*を補正した後に、補正後の値をパターン補正量によって補正したり、パターン補正量にて支援量Δθp1*を補正した後に、補正後の値を支援補正量にて補正したりしてもよい。
・「操舵装置について」
操舵角と転舵角との比である舵角比を電子制御によって可変とする舵角比可変アクチュエータを備えたものであってもよい。
ステアリング10が転舵輪26にトルクを伝達可能なものに限らない。たとえば、ステアリング10と転舵輪26とが機械的に遮断されているものであっても、ステアリング10が転舵輪26にトルクを伝達可能なものである場合にステアリング10に加わる反力トルクと、同一のトルクを反力アクチュエータによってステアリングに付与する制御を実行しているものにあっては、上記処理が有効である。
・「運転支援装置について」
運転支援装置が、CPUおよびメモリを備えて、上述した各種処理を全てソフトウェア処理するものに限らない。少なくとも一部の処理を実行する、たとえば特定用途向け集積回路(ASIC)等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。
10…ステアリング、12…ステアリングシャフト、14…コラム軸、16…中間軸、18…ピニオン軸、18a…ピニオン歯、20…ラック軸、20a…第1ラック歯、20b…第2ラック歯、22…第1ラックアンドピニオン機構、24…タイロッド、26…転舵輪、28…ピニオン軸、28…ピニオン歯、30…第2ラックアンドピニオン機構、32…減速機構、34…電動機、34a…回転軸、36…インバータ、50…制御装置、52…CPU、54…メモリ、60…トーションバー、62…トルクセンサ、64…回転角度センサ、66…電流センサ、68…車速センサ、70…カメラ。

Claims (6)

  1. ユーザがステアリングに加えるトルクである操舵トルクの検出値を入力とし、転舵輪の転舵角の指令値である転舵角指令値を設定する転舵角指令値設定処理と、
    車両の進行方向の情報および前記転舵角の検出値を入力とし、前記車両を車線に従って走行させるために前記転舵角指令値を補正する支援量を算出する支援量算出処理と、
    前記支援量を支援補正量によって補正する支援量補正処理と、
    前記支援量補正処理のなされた前記支援量を用いて前記転舵角指令値を補正する指令値補正処理と、
    前記指令値補正処理にて補正された前記転舵角指令値に前記転舵角の検出値をフィードバック制御するために、前記転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータに操作信号を出力する操作処理と、を実行し、
    前記支援量補正処理は、ユーザによる前記ステアリングの操作による操舵と前記支援量算出処理による操舵との整合性を評価し、前記整合性が低い場合に高い場合と比較して、前記支援補正量を、前記支援量の絶対値を小さい値に減少補正する量に算出する支援補正量算出処理を含み、
    前記支援補正量算出処理は、
    前記転舵角の検出値および前記操舵トルクを前記整合性の評価のための入力とする、
    または、
    前記支援量および前記操舵トルクを前記整合性の評価のための入力とする、
    または、
    前記転舵角の検出値、前記支援量および前記操舵トルクを前記整合性の評価のための入力とする処理である運転支援装置。
  2. 前記支援量補正処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが逆となって且つ、前記支援量の極性および前記検出値の極性が反転したことを検知することを条件に、前記支援補正量による補正に加えてパターン補正量によって前記支援量を補正することによって、前記支援補正量単独で前記支援量算出処理によって算出された前記支援量を補正した場合と比較して補正後の前記支援量の絶対値を減少させるパターン検出時補正処理を含む請求項1記載の運転支援装置。
  3. 前記支援量補正処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが同一となって且つ、前記支援量の極性および前記検出値の極性が反転したことを検知することを条件に、前記支援補正量による補正に加えてパターン補正量によって前記支援量を補正することによって、前記支援補正量単独で前記支援量算出処理によって算出された前記支援量を補正した場合と比較して補正後の前記支援量の絶対値を増加させるパターン検出時補正処理を含む請求項1記載の運転支援装置。
  4. 前記支援量補正処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが逆である第1状態から同一である第2状態に移行することを条件に、前記第2状態において前記支援補正量による補正に加えてパターン補正量によって前記支援量を補正することによって、前記支援補正量単独で前記支援量算出処理によって算出された前記支援量を補正した場合と比較して補正後の前記支援量の絶対値を増加させるパターン検出時補正処理を含む請求項1記載の運転支援装置。
  5. 前記支援補正量算出処理は、前記転舵角の検出値による前記操舵トルクの検出値の微分値が大きい場合に小さい場合よりも前記整合性が低いとして、前記支援補正量を、前記支援量を減少させる量とする処理を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
  6. 前記支援補正量算出処理は、前記支援量の極性と前記操舵トルクの検出値の極性とが逆である場合に同一である場合よりも前記整合性が低いとして、前記支援補正量を、前記支援量を減少させる量とする処理を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
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