JP6909146B2 - ゴム部材の取付方法、及び、タイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
ところで、上記のセンサモジュールを直接インナーライナーに固定する方法では、タイヤへの入力が大きいと、ゴムの変形が大きくなり、その結果、長距離の走行で、センサモジュールが、インナーライナーから剥がれてしまうといった問題点があった。
そこで、センサモジュールとインナーライナーのゴム部材との間に作用する応力を緩和するため、図7(a)に示すように、タイヤ10の内面側であるインナーライナー11の表面に、ゴム台座31を、クロロプレン系接着剤などのゴム用接着剤を用いて接着・固定し、このゴム台座31にセンサモジュール32を搭載した構成のタイヤ情報取得装置30や、図7(b)に示すような、センサモジュール42の把持部42mに連結された取付部42nを挿脱するための出入口となる開口部41pと、インナーライナー11の表面に接着される底部41aとこの底部41aと開口部41pとを繋ぐ側壁部41bとにより囲まれて、前記取付部42nを収納する収納凹部41qとを有するゴム台座41にセンサモジュール42を収納した形態のタイヤ情報取得装置40が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
そこで、通常は、有機溶剤を用いてインナーライナー11の表面を洗浄することで、上記の離型剤塗布層を除去する方法が行われているが、有機溶剤による洗浄には時間がかかるだけでなく、リッジ付近の離型剤を除去することが困難であるため、ゴム台座31やゴム台座41の接着性が十分とはいえなかった。
また、バフ研磨やサンドブラズト処理により離型剤塗布層を除去する方法も考えられるが、この場合も、離型剤塗布層を十分に除去するには時間がかかるだけでなく、インナーライナー11のゴム部材まで削れてしまうなど、インナーライナー11の損傷が大きいといった問題点がある。
これにより、離型剤塗布層を確実に除去できるとともに、ステップ(b)のレーザー光照射でダメージを受けて接着性が低下したインナーライナー表面のゴム層を除去できるので、タイヤの内面にゴム部材を確実にかつ強固に取付けることができる。
また、前記ステップ(b)におけるレーザー光の照射エネルギーをP1、照射回数をn回とし、前記ステップ(c)におけるレーザー光の照射エネルギーをP2、照射回数をm回としたとき、前記P2を、P2×m>P1×nであっても、前記離型剤塗布層の除去ができない大きさとしたので、インナーライナー表面のゴム層のうち、ダメージを受けた表面のゴム層のみを効果的に除去することができる。
また、これにより、タイヤの情報を取得するセンサを備えたセンサモジュールが収納されたゴム台座や、タイヤの情報を取得するセンサを備えたセンサモジュールと前記インナーライナーとの間に配設されるゴム台座をタイヤ内面に確実に取付けることができる。
また、上記方法により取付けられたゴム部材に収納、搭載されたセンサモジュールを備えたタイヤを用いれば、タイヤ内圧やタイヤ内温度、あるいは、タイヤに入力する振動やタイヤの変形状態などの走行中のタイヤの情報を、安定して取得することができる。
本実施の形態に係るゴム台座の取付方法について、図1のフローチャートを参照して説明する。
まず、図2(a),(b)に示すように、タイヤ10のインナーライナー11のタイヤ内面側に、ゴム台座31を取付けるための取付箇所Aを特定(ステップS11)した後、この取付箇所の上部であるタイヤ内面側にレーザー装置20とこのレーザー装置20を移動させる図示しない移動手段とを設置する(ステップS12)。
本例では、ゴム台座31として、図7(a)に示すような、センサモジュール32とインナーライナー11との間に配設されるゴム台座31を用いた。
次に、図3(a)に示すように、インナーライナー11のタイヤ内面側に形成されている離型剤塗布層であるシリコーン層12をレーザー加工により除去するシリコーン除去処理を行う(ステップS13)。
なお、インナーライナー11を構成するゴム部材の厚さは約1mmで、シリコーン層12の厚さは約10〜100μmである。
ここで、レーザー装置20を最大出力としたときのレーザー光の照射エネルギーである最大照射エネルギーをP0とする。最大照射エネルギーP0は、図6のグラフに示すように、3回の照射でインナーライナーのゴムを約58μm除去することができる照射エネルギー(約10W)である。なお、照射エネルギーをP1=0.8×P0とした場合には、3回の照射でインナーライナーのゴムを約37μm除去することができ、照射エネルギーをP2=0.6×P0とした場合には、3回の照射でインナーライナーのゴムを約30μm除去することができる。また、照射エネルギーをP1=0.4×P0とした場合には、3回の照射でインナーライナーのゴムを約22μm除去することができる。
図4の表に示すように、レーザー光の照射エネルギーをP1=0.8×P0とすると、2回の照射でシリコーン層12をほぼ除去することができる。なお、照射回数を3回とすれば、シリコーン層12を完全に除去することができる。
なお、同表の「印加総エネルギー」は、(照射エネルギーP)×(照射回数n)で、照射エネルギーがP1で、照射回数が3回の場合を1とした指標で表している。
一方、レーザー光の照射エネルギーをP2=0.4×P0とした場合には、印加総エネルギーが1を超えても、シリコーン層12は除去できなかった。
これは、レーザー光の照射エネルギーが、P2<Ps<P1であるPs以上であれば、インナーライナー11のゴム部材に含まれているC/B(カーボン)が発熱し、この発熱により、シリコーンが溶融・蒸発するからと考えられる。
これに対して、レーザー光の照射エネルギーが、Ps未満である場合には、C/Bを発熱させることができないので、印加総エネルギーが1を超えても、シリコーンが溶融・蒸発せず、その結果、シリコーン層12が除去できなかったと考えられる。
そこで、本例では、図3(c),(d)に示すように、再度、レーザー加工を行って、ゴム部材の表面に残留しているシリコーンブリード物11aを取り除くとともに、インナーライナー11のゴム部材の表面の変質層11bを除去することで、シリコーン層12を付着させる前のゴム部材と同等の接着力を確保するようにしている。
すなわち、ステップS14では、レーザー装置30の出力をP2=0.4×P0とし、ステップS13と同様に、シリコーン層12が除去された取付箇所Aに、一様にレーザー光を3回照射するゴム層表面除去処理を行う。
レーザー光の照射エネルギーP2は低エネルギー(P2<Ps)であるので、C/Bの発熱はなく、ゴム部材を少しずつ除去することができる。したがって、に示すように、インナーライナー11のゴム部材にダメージを与えることなく、ブリード物やゴム部材の表面の変質層を確実に除去することができるので、インナーライナー11のゴム部材の表面の状態を、シリコーン層12を付着させる前のゴム部材とほぼ同じ状態とすることができる。
最後に、に示すように、ゴム層表面除去処理された取付箇所Aに接着剤を塗布(ステップS15)した後、図3(e)に示すように、センサモジュール22が搭載されたゴム台座21を、インナーライナー11の表面に接着する(ステップS16)。なお、同図において、符号14は接着層である。
タイヤ内面側にシリコーン層が形成されているインナーライナーの表面にレーザー光を照射した後のシリコーン除去性とゴム接着性について調べた結果を図5の表に示す。
レーザー光の移動ピッチは60μm、移動速度は4000mm/sである。
実施例1は、シリコーン除去処理時の照射エネルギーをP1=0.8×P0、照射回数をn1=3回とし、ゴム層表面除去処理時の照射エネルギーをP2=0.6×P0、照射回数をn2=3回としたものである。
実施例2は、ゴム層表面除去処理時の照射回数をn2=6回とした以外は実施例1と同じである。
実施例3は、ゴム層表面除去処理時の照射エネルギーをP2=0.4×P0、照射回数をn2=3回とした以外は実施例1と同じである。
実施例4は、ゴム層表面除去処理時の照射エネルギーをP2=0.4×P0、照射回数をn2=6回とした以外は実施例1と同じである。
実施例5は、ゴム層表面除去処理時の照射エネルギーをP2=0.4×P0、照射回数をn2=10回とした以外は実施例1と同じである。
比較例1は、シリコーン除去処理時の照射エネルギーをP1=0.4×P0、照射回数をn1=6回とし、ゴム層表面除去処理を行わなかったものである。
比較例2は、シリコーン除去処理時の照射エネルギーをP1=0.8×P0、照射回数をn1=3回とし、ゴム層表面除去処理を行わなかったものである。
比較例3は、シリコーン除去処理時の照射エネルギーと照射回数と、ゴム層表面除去処理時の照射エネルギーと照射回数とを、いずれも、P1=0.8×P0、n1=3回としたものである。
また、シリコーン除去処理時に照射エネルギーがP1の高エネルギーを照射した場合には、シリコーン層は除去できるものの、接着性が向上しなかった。
これにより、ゴム層表面除去処理を行わない場合には、接着性が向上しないことが確認された。
また、高エネルギーのレーザー光でゴム層表面除去処理を行った場合も、接着性が向上しなかった。
これに対して、実施例1,2のように、高エネルギーのレーザー光でシリコーン除去処理時を行い、低エネルギーのレーザー光でゴム層表面除去処理を行った場合には、シリコーンを十分に除去できるだけでなく、処理後の接着性が向上していることが確認された。
また、実施例3〜5のように、ゴム層表面除去処理時の照射エネルギーP2を、上記実施例1,2の0.6×P0から0.4×P0としても、インナーライナーのゴム部材の表面の状態を、シリコーン層を付着させる前のゴム部材とほぼ同じ、接着性が良好な状態とすることができることがわかった。
なお、実施例1,2、及び、実施例3〜5を比較してわかるように、ゴム層表面除去処理においては、照射回数を増加させるほど接着性が向上することから、P1ゴム層表面除去処理で除去するゴムの厚さとしては、シリコーン除去処理時の印加総エネルギーの大きさにもよるが、60μm程度とすることが好ましいことが分かった。
また、P0についも、タイヤ種等により、適宜決定すればよい。
また、前記実施の形態では、ゴム層表面除去処理された取付箇所Aに接着剤を塗布した後に、ゴム台座21をインナーライナー11の表面に接着したが、ゴム台座21の底面に接着剤を塗って、ゴム台座21をインナーライナー11に接着してもよい。
また、前記実施の形態では、ゴム台座として、図7(a)に示すような、センサモジュール32とインナーライナー11との間に配設されるゴム台座31を用いたが、図7(b)に示すような、センサモジュール42を収納するゴム台座41を用いてもよい。
30 タイヤ情報取得装置、31 ゴム台座、32 センサモジュール。
Claims (5)
- タイヤの内面にゴム部材を取付ける方法であって、
前記ゴム部材の取付箇所を特定するステップ(a)と、
前記取付箇所にレーザー光を照射して、前記取付箇所のインナーライナーを構成するゴム層の表面に形成されている離型剤塗布層を除去するステップ(b)と、
前記離型剤塗布層が除去された箇所に、前記ステップ(b)のレーザー光よりも照射エネルギーの小さなレーザー光を照射して、前記取付箇所のゴム層の表面を除去するステップ(c)と、
前記取付箇所に前記ゴム部材を接着するステップ(d)と、
を備えることを特徴とするゴム部材の取付方法。 - 前記ステップ(b)におけるレーザー光の照射エネルギーをP1、照射回数をn回とし、前記ステップ(c)におけるレーザー光の照射エネルギーをP2、照射回数をm回としたとき、
前記P2は、P2×m>P1×nであっても、前記離型剤塗布層の除去ができない大きさであることを特徴とする請求項1に記載のゴム部材の取付方法。 - 前記ゴム部材が、タイヤの情報を取得するセンサを備えたセンサモジュールが収納されたゴム台座であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム部材の取付方法。
- 前記ゴム部材が、タイヤの情報を取得するセンサを備えたセンサモジュールと、前記インナーライナーとの間に配設されるゴム台座であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム部材の取付方法。
- 内面にゴム部材が取り付られたタイヤの製造方法であって、
前記ゴム部材の取付箇所を特定するステップ(a)と、
前記取付箇所にレーザー光を照射して、前記取付箇所のインナーライナーを構成するゴム層の表面に形成されている離型剤塗布層を除去するステップ(b)と、
前記離型剤塗布層が除去された箇所に、前記ステップ(b)のレーザー光よりも照射エネルギーの小さなレーザー光を照射して、前記取付箇所のゴム層の表面を除去するステップ(c)と、
前記取付箇所に前記ゴム部材を接着するステップ(d)と、
を備えることを特徴とするタイヤの製造方法。
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