JP6908179B2 - フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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    • C21D9/46Heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering, adapted for particular articles; Furnaces therefor for sheet metals

Description

本発明は、Cr含有鋼に係り、とくに自動車やオートバイの排気管やコンバータケース、火力発電プラントの排気ダクト等の高温下で使用される排気系部材に用いて好適な、優れた耐酸化性、熱疲労特性、高温疲労特性および加工性を有するフェライト系ステンレス鋼に関するものである。
自動車のエキゾーストマニホールドや排気パイプ、コンバータケースおよびマフラー等の排気系部材には、優れた耐酸化性、熱疲労特性および高温疲労特性(以下、これらをまとめて耐熱性と記すこともある。)が要求されている。熱疲労とは、排気系部材が、エンジンの始動および停止に伴って加熱および冷却を繰り返し受けることで生じる低サイクル疲労現象である。このとき、周辺の部品によって拘束されることにより、上記排気系部材の熱膨張および収縮が制限されて、熱ひずみが発生し蓄積することで破壊に繋がる。一方、高温疲労とは、加熱された状態で振動を受け続けることで亀裂が生じる高サイクル疲労現象のことであり、上記の熱疲労とは全く異なる現象である。さらに、これらの部品は複雑な形状に加工されるため、室温での加工性も優れていることが求められる。
上記の耐酸化性、熱疲労特性および高温疲労特性が求められる部材に用いられる素材としては、現在、NbとSiを添加したType429(14%Cr−0.9%Si−0.4%Nb系)のようなCr含有鋼が多く使用されている。しかし、エンジン性能の向上に伴い、排ガス温度が900℃を超えるような温度まで上昇してくると、Type429では特に、熱疲労特性を十分に満たすことができなくなってきている。
この問題に対応できる素材として、例えば、NbとMoを添加して高温耐力を向上させたCr含有鋼、JIS G4305に規定されるSUS444(19%Cr−0.4%Nb−2%Mo)、Nb、Mo、およびWを添加したフェライト系ステンレス鋼等が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、昨今における排ガス規制強化対応や燃費の向上を目的として、排ガス温度はますます高温化する趨勢にあるため、SUS444等でも耐熱性が不足する場合があり、SUS444を超える耐熱性を有する材料の開発が要求されるようになってきている。
SUS444を超える耐熱性を有する材料としては、例えば、特許文献2〜8に、SUS444にCuを添加し、Cuの析出強化を活用し熱疲労特性を高めた材料が開示されている。
一方、Alを積極的に添加することによって耐熱性の向上を図る技術も提案されている。例えば、特許文献9〜13には、Alの添加によって高温強度や耐酸化性を高めたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献14および15には、AlおよびCo、あるいはさらにCuの添加によって耐酸化性と熱疲労特性を高めたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
また、特許文献16〜18には、Al添加により耐熱性向上を図った鋼が開示されている。
特開2004−018921号公報 特開2010−156039号公報 特開2001−303204号公報 特開2009−215648号公報 特開2011−190468号公報 特開2012−117084号公報 特開2012−193435号公報 特開2012−207252号公報 特開2008−285693号公報 特開2001−316773号公報 特開2005−187857号公報 特開2009−68113号公報 特開2011−162863号公報 特開2015−96648号公報 特開2014−214321号公報 国際公開第2014/050016号 特開2011−202257号公報 特許第6123964号公報
本発明者らの研究によれば、特許文献2〜8に開示されたMoを含有した鋼では、熱疲労特性は向上するものの、鋼自身の耐酸化性が不足するため、排ガス温度が高温化した場合の熱疲労特性向上効果において改善の余地がある。また、Moを含有した鋼で850℃を超える熱疲労試験を行った場合、MoとCrを含む第二相(σ相)が粗大に析出し、却って熱疲労寿命が低下してしまうという課題も有している。
また、特許文献9〜13に開示されたAlを添加した鋼は、高い高温強度や優れた耐酸化性を有しているが、鋼の熱膨張係数が大きいため、昇温と降温が繰り返される熱疲労特性は不十分となるという問題がある。
また、特許文献14および15には、AlおよびCo、あるいはさらにCuの添加によって耐酸化性や熱疲労特性を向上させた鋼が開示されているが、熱疲労特性向上効果が十分に発揮されておらず、改善の余地がある。
また、特許文献16および17には、Al添加により耐熱性向上を図った鋼が開示されているが、高温強度が不十分であり、排ガス温度が高温化した際の熱疲労特性は不十分である。特許文献18では、熱疲労特性については議論されているが、高温疲労特性と加工性については検討がされていない。
このように、従来の技術では、排ガス温度が高温化した際にも耐酸化性と熱疲労特性に優れ、さらには高温疲労特性に優れるとともに、加工性が十分であるフェライト系ステンレス鋼を得ることはできていなかった。
そこで、本発明はかかる課題を解決し、耐酸化性、熱疲労特性、高温疲労特性および加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
なお、本発明の「耐酸化性に優れる」とは、大気中1100℃で200時間保持されても異常酸化(酸化増量≧50g/m)も酸化スケールの剥離も起こさない耐連続酸化性と、大気中1100℃と200℃以下の温度間を400サイクル繰り返し昇温・降温したときに異常酸化も酸化スケールの剥離も起こさない耐繰り返し酸化性の両方を兼ね備えることを言う。
また、「熱疲労特性に優れる」とは、SUS444より優れた特性を有することであり、具体的には、200〜950℃間で昇温と降温を繰り返したときの熱疲労寿命がSUS444より優れていることをいう。
また、「高温疲労特性に優れる」とは、SUS444より優れた特性を有することであり、950℃で50MPaの曲げ応力を繰り返し負荷した時の破断サイクル数が1.0×10サイクル以上であることをいう。
また、「加工性に優れる」とは、室温における伸びが三方向(圧延方向に対し0°、45°および90°)平均で26%以上であることを言う。
本発明者らは、耐酸化性、熱疲労特性および高温疲労特性がいずれもSUS444より優れるとともに、優れた加工性を有するフェライト系ステンレス鋼を開発するべく、種々の元素の耐酸化性、熱疲労特性、高温疲労特性および加工性への影響について鋭意検討を重ねた。
その結果、質量%で、Nbを0.40〜0.80%、Moを1.0〜4.0%の範囲で含有することによって、室温での加工性を低下させることなく幅広い温度域で高温強度が上昇し、優れた熱疲労特性と高温疲労特性が得られることを見出した。また、熱疲労特性には耐酸化性と耐クリープ性の両方が影響することを見出した。そして、Alを1.0〜4.0%の範囲で含有することによって、加工性を低下させることなく特に高温域における耐クリープ性が向上して、熱疲労特性を著しく向上させることを見出した。
さらに、Al含有による熱膨張係数の増加は適正量のCoを含有することにより抑制できること、Mo含有による第二相(σ相)の析出はAlを含有することにより抑制できることを見出した。
さらに、Ti含有量を制限することにより、より高温疲労特性が向上することを見出した。
以上の知見を踏まえ、Nb、Mo、Al、Coの全てを適量含有するとともに、Ti含有量を厳しく制限し、さらにはCrを適量含有することで本発明を完成するに至った。上記元素のうち1つでも適量含有しない場合には、本発明の所期する優れた耐酸化性、熱疲労特性、高温疲労特性および加工性は得られない。
本発明は、以下を要旨とするものである。
[1]質量%で、C:0.020%以下、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、P:0.050%以下、S:0.010%以下、Al:1.0〜4.0%、N:0.020%以下、Cr:12.0〜25.0%、Nb:0.40〜0.80%、Ti:0.01%未満、Mo:1.0〜4.0%、Co:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼。
[2]質量%で、さらに、B:0.0002〜0.0050%、Zr:0.01〜1.00%、V:0.01〜1.00%、Cu:0.01〜3.00%、W:0.01〜5.00%、Sb:0.01〜3.00%、Sn:0.01〜3.00%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する前記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[3]質量%で、さらに、Ca:0.0002〜0.0050%、Mg:0.0002〜0.0050%のうちから選ばれる1種または2種を含有する前記[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
本発明によれば、優れた耐酸化性、熱疲労特性および高温疲労特性を有するとともに、加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼を提供することができる。したがって、本発明の鋼は、自動車等の排気系部材に好適に用いることができる。
図1は、高温平面曲げ疲労試験片を説明する図である。 図2は、熱疲労試験片を説明する図である。 図3は、熱疲労試験における温度および拘束条件を説明する図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.020%以下、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.05〜2.00%、P:0.050%以下、S:0.010%以下、Al:1.0〜4.0%、N:0.020%以下、Cr:12.0〜25.0%、Nb:0.40〜0.80%、Ti:0.01%未満、Mo:1.0〜4.0%、Co:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる。
本発明では、このような成分組成とすることで、優れた加工性を確保しつつ、耐酸化性と熱疲労特性および高温疲労特性のいずれもがSUS444より優れたフェライト系ステンレス鋼を得ることができる。上記成分組成が1つでも範囲外となる場合は、所期した耐酸化性と熱疲労特性、高温疲労特性および加工性の全てを同時には得られない。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の成分組成について説明する。以下、鋼の成分を示す%は、質量%である。
C:0.020%以下
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、0.020%を超えてCを含有すると、靭性および成形性の低下が顕著となる。よって、C含有量は0.020%以下とする。なお、C含有量は、成形性を確保する観点からは0.010%以下とすることが好ましい。また、排気系部材としての強度を確保する観点からは、C含有量は0.001%以上とすることが好ましい。より好ましくは、C含有量は0.003%以上とする。また、より好ましくは、C含有量は0.008%以下とする。
Si:0.05〜2.00%
Siは、耐酸化性向上のために必要な元素である。高温の排ガス中での耐酸化性を確保するためには0.05%以上のSiの含有が必要である。一方、2.00%を超える過剰のSiの含有は、室温における加工性を低下させるのみならず、却って酸化スケールが剥離しやすくなるため、Si含有量の上限は2.00%とする。好ましくは、Si含有量は0.10%以上とする。また、好ましくは、Si含有量は0.85%以下とする。また、より好ましくは、Si含有量は0.65%以下とする。さらに好ましくは、Si含有量は0.20%以下とする。
Mn:0.05〜2.00%
Mnは、酸化スケールの耐剥離性を高める効果を有する。この効果を得るためには、0.05%以上のMnの含有が必要である。一方、Mnの2.00%を超える過剰な含有は、酸化スケールが異常に成長しやすくなり耐酸化性を低下させる。また、常温において鋼を硬質化させるため、加工性も低下させる。よって、Mn含有量は0.05〜2.00%とする。好ましくは、Mn含有量は0.10%以上とする。また、好ましくは、Mn含有量は1.00%以下とする。また、より好ましくは、Mn含有量は0.20%以下とする。
P:0.050%以下
Pは、鋼の靭性を低下させる有害な元素であり、可能な限り低減することが望ましい。よって、P含有量は0.050%以下とする。好ましくは、P含有量は0.040%以下である。より好ましくは、P含有量は0.030%以下である。P含有量の下限については特に限定されるものではないが、過度の脱Pはコストの増加を招く。そのため、P含有量の下限は0.010%とすることが好ましい。
S:0.010%以下
Sは、伸びやr値を低下させ、成形性に悪影響を及ぼすとともに、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を低下させる有害元素でもあるため、できる限り低減することが望ましい。よって、本発明では、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは、S含有量は0.005%以下である。S含有量の下限については特に限定されるものではないが、過度の脱Sはコストの増加を招く。そのため、S含有量の下限は0.0005%とすることが好ましい。
Al:1.0〜4.0%
Alは、高温変形(クリープ)を抑制し、熱疲労特性と高温疲労特性を向上させるのに必要不可欠な元素である。使用温度が高温になるほど高温変形により熱疲労特性および高温疲労特性が低下するため、排ガス温度が高温化する趨勢においてAlは重要な要素である。また、Alは鋼の耐酸化性を向上させる効果も有する。さらに、本発明のようにMoを含有する鋼においては、Alは高温でのMoを含む第二相(σ相)の析出を抑制して高温疲労特性を向上させる効果も有する。第二相が析出すると、固溶Mo量の減少により、後述するような固溶強化効果が得られなくなるのみならず、短時間で第二相が粗大化して亀裂発生の起点となってしまい、高温疲労特性が低下する。これらの効果を得るためにAlは1.0%以上の含有が必要である。一方、4.0%を超えてAlを含有すると、鋼が著しく硬質化して加工性が低下してしまう。これらより、Al含有量は1.0〜4.0%とする。好ましくは、Al含有量は1.5%以上である。より好ましくは、Al含有量は2.0%以上である。また、好ましくは、Al含有量は3.2%以下である。より好ましくは、Al含有量は2.8%以下である。
N:0.020%以下
Nは、鋼の靭性および成形性を低下させる元素であり、0.020%を超えて含有すると、靭性および成形性の低下が顕著となる。よって、N含有量は0.020%以下とする。なお、Nは、靭性、成形性を確保する観点からは、できるだけ低減することが好ましく、N含有量は0.010%未満とすることが望ましい。N含有量の下限については特に限定されるものではないが、過度の脱Nはコストの増加を招く。そのため、N含有量の下限は0.001%とすることが好ましい。
Cr:12.0〜25.0%
Crは、ステンレス鋼の特長である耐食性、耐酸化性を向上させるのに有効な重要元素である。Cr含有量が12.0%未満では、高温の排ガス中で十分な耐酸化性が得られない。耐酸化性が不十分であると、酸化の進行が速くなり早期に素材の断面積が減少し、熱疲労特性も低下する。また、酸化スケールが増大することにより、き裂が発生しやすくなるため、高温疲労特性も低下する。一方、Crは、室温において鋼を固溶強化し、加工性を低下させる元素であり、Cr含有量が25.0%を超えると、この弊害が顕著となるため、Cr含有量の上限は25.0%とする。好ましくは、Cr含有量は15.0%以上である。より好ましくは、Cr含有量は18.0%以上である。また、好ましくは、Cr含有量は21.0%以下である。より好ましくは、Cr含有量は20.0%以下である。さらに好ましくは19.0%以下である。
Nb:0.40〜0.80%
Nbは、CおよびNと炭窒化物を形成して固定し、耐食性、成形性および溶接部の耐粒界腐食性を高める効果を有するとともに、さらに、固溶強化により高温強度を上昇させて熱疲労特性と高温疲労特性を向上させる効果も有し、本発明に重要な元素である。本発明のように排ガス温度が高温化した場合にこのような効果を得るには、0.40%以上のNbの含有が必要となる。Nb含有量が0.40%未満の場合は、高温における強度が不足し、優れた高温疲労特性が得られない。しかし、0.80%を超えるNbの含有では、硬質化し加工性が低下する。よって、Nb含有量は0.40%以上0.80%以下とする。好ましくは、Nb含有量は0.50%以上である。また、好ましくは、Nb含有量は0.70%未満である。さらに好ましくは、0.60%未満である。
Ti:0.01%未満
Tiを含有すると、TiがNbよりも優先的にCおよびNと結びつき、粗大な析出物として鋼中に析出する。粗大なTiNやTiCが析出していると、き裂の起点となり高温疲労特性が低下する。さらに、高温での使用中にTiNやTiCの周囲にNbCやNbNが析出して、NbCやNbNの析出が促進される。これにより、鋼中のNb固溶量が低下し、上述したNbの固溶強化効果が十分に得られなくなる。より優れた高温疲労特性を得るためには、き裂の起点となる粗大なTiNやTiCの析出を防止するとともに、Nbの固溶量を維持するために鋼中Ti量を低減することが重要となる。従って、本発明ではTi含有量を0.01%未満に規制する必要がある。好ましくは、Ti含有量は0.005%未満である。
このようにTi含有量を規制するためには、Tiを原料として添加しないだけでは不十分で、溶解原料のTi含有量を厳しく規制する。スクラップを用いる場合は、Tiを含有していないスクラップを用いなければならない。さらに、出鋼する際の炉の状態を厳しく管理する。本発明のようにAl含有量が1.0%以上の鋼を出鋼する場合、炉内(炉壁)にTi酸化物が残留していると、溶鋼中のAlがTi酸化物を還元してしまい、溶鋼中にTiが0.01%以上不可避的に含まれてしまうことがある。炉壁のTi酸化物は、Ti含有鋼(おおよそ0.1%以上)を出鋼する際に生成する。そのため、本発明鋼を出鋼する際は、Ti含有鋼を出鋼したことが無い炉を使用するか、またはその直前にTiを含有しない鋼(0.1%未満)を出鋼した後に出鋼する必要がある。本発明鋼の出鋼のために毎回新しい炉を使用することは工業上現実的ではないため、本発明鋼の出鋼の直前にはTi含有鋼を出鋼しないこととする。直前の出鋼がTi含有鋼でなければ、鋼中に取り込まれるTi量は0.01%未満に抑制することが出来る。好ましくは二回以上Tiを含有しない鋼を出鋼した後に出鋼する。
Mo:1.0〜4.0%
Moは、鋼中に固溶し鋼の高温強度を向上させることで熱疲労特性および高温疲労特性を向上させる。本発明のように排ガス温度が高温化した場合にその効果を得るには1.0%以上のMoの含有が必要である。Mo含有量が1.0%未満の場合は高温強度が不十分となり、優れた高温疲労特性が得られない。一方、過剰なMoの含有は、鋼を硬質化させて加工性を低下させてしまう。よって、Mo含有量の上限は4.0%とする。好ましくは、Mo含有量は1.5%以上である。また、好ましくは、Mo含有量は3.0%以下である。より好ましくは、Mo含有量は2.5%以下である。
Co:0.01〜1.00%
Coは、Al含有により増加した熱膨張係数を低減して、熱疲労特性を向上させる。この効果を得るためには、Co含有量は0.01%以上とする。一方、過剰なCoの含有は鋼の靭性を却って低下させるのみならず、加工性を低下させてしまうため、Co含有量の上限は1.00%とする。好ましくは、Co含有量は0.01%以上0.30%未満である。さらに好ましくは、Co含有量は0.03%以上0.10%未満である。
Ni:0.01〜1.00%
Niは、鋼の靭性および耐酸化性を向上させる元素である。これらの効果を得るためには、Ni含有量は0.01%以上とする。耐酸化性が不十分であると、酸化スケールの生成量が多くなることによる素材断面積の減少や、酸化スケールの剥離により、熱疲労特性も低下する。しかし、Niは、強力なγ相形成元素であるため、高温でγ相を生成し、耐酸化性と熱疲労特性を低下させる。また、耐酸化性が低下することにより、酸化スケールが増大してき裂の起点となるため、もしくは酸化スケールが剥離してき裂の起点となるため、高温疲労特性も低下する。よって、Ni含有量の上限は1.00%とする。好ましくは、Ni含有量は0.05%超えである。また、好ましくは、Ni含有量は0.50%未満である。より好ましくは、Ni含有量は0.20%未満である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼では、残部はFeおよび不可避的不純物からなる。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記必須成分に加えて、さらに、B、Zr、V、Cu、W、Sb、Snのうちから選ばれる1種または2種以上を、下記の範囲で含有することができる。
B:0.0002〜0.0050%
Bは、鋼の加工性、特に二次加工性を向上させるために有効な元素である。このような効果は、0.0002%以上のBの含有で得ることができる。一方、過剰なBの含有は、BNを生成して加工性を低下させる。よって、Bを含有する場合は、B含有量は0.0002〜0.0050%とする。好ましくは、B含有量は0.0005%以上である。また、好ましくは、B含有量は0.0020%以下である。より好ましくは、B含有量は0.0010%以下である。
Zr:0.01〜1.00%
Zrは耐酸化性を向上させる元素であり、本発明では、必要に応じて含有することができる。この効果を得るためには、Zr含有量を0.01%以上とすることが好ましい。しかし、Zr含有量が1.00%を超えると、Zr金属間化合物が析出して、鋼を脆化させる。よって、Zrを含有する場合は、Zr含有量は0.01〜1.00%とする。好ましくは、Zr含有量は0.03%以上である。より好ましくは、Zr含有量は0.05%以上である。また、好ましくは、Zr含有量は0.50%以下である。より好ましくは、Zr含有量は0.15%以下である。
V:0.01〜1.00%
Vは、鋼の加工性の向上とともに、耐酸化性の向上にも有効な元素である。これらの効果は、V含有量が0.01%以上で顕著となる。しかし、1.00%を超える過剰なVの含有は、粗大なV(C、N)の析出を招き、靭性を低下させるのみならず、表面性状を低下させる。よって、Vを含有する場合は、V含有量は0.01〜1.00%とする。好ましくは、V含有量は0.03%以上である。より好ましくは、V含有量は0.05%以上である。また、好ましくは、V含有量は0.50%以下である。より好ましくは、V含有量は0.15%以下である。
Cu:0.01〜3.00%
Cuは鋼の耐食性や600℃近傍の高温強度を向上させる効果を有する元素であり、それぞれ必要な場合に含有する。その効果は0.01%以上のCuの含有で得られる。一方で3.00%を超えてCuを含有すると、酸化スケールが剥離しやすくなり、耐繰り返し酸化特性が低下する。そのため、Cuを含有する場合は、Cu含有量は0.01〜3.00%とする。好ましくは、Cu含有量は0.30%以上である。より好ましくは、Cu含有量は1.00%以上である。また、好ましくは、Cu含有量は2.00%以下である。また、より好ましくは、Cu含有量は1.50%以下である。
W:0.01〜5.00%
Wは、Moと同様に固溶強化により高温強度を大きく向上させる元素である。この効果は0.01%以上のWの含有で得られる。一方、過剰な含有は鋼を著しく硬質化するのみならず、製造時の焼鈍工程において強固なスケールが生成するため、酸洗時の脱スケールが困難になる。よって、Wを含有する場合は、W含有量は0.01〜5.00%とする。好ましくは、W含有量は0.30%以上である。より好ましくは、W含有量は1.0%以上である。また、好ましくは、W含有量は4.00%以下である。より好ましくは、W含有量は3.00%以下である。
Sb:0.01〜3.00%
Sbは、鋼の靭性を向上させる効果を有する元素であり、本発明のように合金元素が多い場合、合金元素が多くなるほど鋼の靭性が低下し、部品への加工時等に割れが生じてしまう場合があるため、必要に応じて含有する。その効果は0.01%以上の含有で得られる。好ましくは、0.03%以上である。一方、過剰な添加は却って靭性を低下させるため、Sb含有量は3.00%を上限とする。好ましくは、1.00%以下である。より好ましくは0.50%以下である。
Sn:0.01〜3.00%
Snは、鋼の耐食性や高温強度を向上させる効果を有する元素であり、必要に応じて含有する。その効果は0.01%以上の含有で得られる。好ましくは、0.03%以上である。一方、過剰な添加は鋼の加工性を低下させるため、Sn含有量は3.00%を上限とする。好ましくは、1.00%以下である。より好ましくは、0.50%以下である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、さらに、Ca、Mgのうちから選ばれる1種または2種を、下記の範囲で含有することができる。
Ca:0.0002〜0.0050%
Caは、連続鋳造の際に発生しやすい介在物析出によるノズルの閉塞を防止するのに有効な成分である。Ca含有量が0.0002%以上でその効果が得られる。一方、表面欠陥を発生させず良好な表面性状を得るためには、Ca含有量は0.0050%以下とする必要がある。従って、Caを含有する場合は、Ca含有量は0.0002〜0.0050%とする。好ましくは、Ca含有量は0.0005%以上である。また、好ましくは、Ca含有量は0.0030%以下である。より好ましくは、Ca含有量は0.0020%以下である。
Mg:0.0002〜0.0050%
Mgは、スラブの等軸晶率を向上させ、加工性や靭性の向上に有効な元素である。さらに、本発明のようにNbを含有する鋼においては、MgはNbの炭窒化物の粗大化を抑制する効果も有する。その効果は0.0002%以上のMgの含有で得られる。Nb炭窒化物が粗大化すると、Nbの鋼中固溶量が低下するため、熱疲労特性の低下に繋がる。一方、Mg含有量が0.0050%超えとなると、鋼の表面性状を悪化させてしまう。よって、Mgを含有する場合は、Mg含有量は0.0002〜0.0050%とする。好ましくは、Mg含有量は0.0002%以上である。より好ましくは、Mg含有量は0.0004%以上である。また、好ましくは、Mg含有量は0.0030%以下である。より好ましくは、Mg含有量は0.0020%以下である。
なお、上記任意成分として説明したB、Zr、V、Cu、W、Sb、Sn、Ca、Mgの含有量が下限値未満の場合、その成分は不可避的不純物として含まれるものとする。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
本発明のステンレス鋼の製造方法は、基本的にフェライト系ステンレス鋼の通常の製造方法であれば好適に用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、転炉または電気炉等公知の溶解炉で鋼を溶製し、あるいはさらに取鍋精錬または真空精錬等の二次精錬を経て上述した本発明の成分組成を有する鋼とし、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼片(スラブ)とし、その後、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上げ焼鈍および酸洗等の各工程を経て冷延焼鈍板とする製造工程で製造することができる。このとき、精錬を行う炉は新しく炉壁を張り替えたもの、または一回以上Tiを含有しない鋼(0.1%未満)を出鋼した後の炉を使用する。上記冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延としてもよく、また、冷間圧延、仕上げ焼鈍および酸洗の各工程は、繰り返して行ってもよい。さらに、熱延板焼鈍は省略してもよく、鋼板の表面光沢や粗度調整が要求される場合には、冷間圧延後あるいは仕上げ焼鈍後、スキンパス圧延を施してもよい。用途によっては熱延焼鈍板をそのまま用いることも可能である。
上記製造方法における、好ましい製造条件について説明する。
鋼を溶製する製鋼工程は、転炉あるいは電気炉等で溶解した鋼をVOD法等により二次精錬し、上記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼とすることが好ましい。このとき、精錬を行う炉は新しく炉壁を張り替えたもの、または一回以上Tiを含有しない鋼(0.1%未満)を出鋼した後の炉を使用する。溶製した溶鋼は、公知の方法で鋼素材とすることができるが、生産性および品質面からは、連続鋳造法によることが好ましい。鋼素材は、その後、好ましくは1050〜1250℃に加熱され、熱間圧延により所望の板厚の熱延板とされる。もちろん、板材以外に熱間加工することもできる。上記熱延板は、その後必要に応じて900〜1150℃の温度で連続焼鈍を施した後、酸洗等により脱スケールし、熱延製品とすることが好ましい。上記焼鈍は省略しても良い。なお、必要に応じて、酸洗前にショットブラストやブラシ研削によりスケール除去してもよい。
さらに、上記熱延焼鈍板または熱延板を、冷間圧延等の工程を経て冷延製品としてもよい。この場合の冷間圧延は、1回でもよいが、生産性や品質上の観点から中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延としてもよい。1回または2回以上の冷間圧延の総圧下率は50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。冷間圧延した鋼板は、その後、好ましくは900〜1150℃、さらに好ましくは950〜1100℃の温度で連続焼鈍(仕上げ焼鈍)し、酸洗し、冷延製品とすることが好ましい。さらに用途によっては、仕上げ焼鈍後、スキンパス圧延等を施して、鋼板の形状、表面粗度および材質の調整を行ってもよい。上記酸洗前にはブラシ研削を行っても良い。
上記のようにして得た熱延製品あるいは冷延製品は、その後、それぞれの用途に応じて、切断や曲げ加工、張出し加工および絞り加工等の加工と必要に応じて溶接を施して、自動車やオートバイの排気管、触媒外筒材、火力発電プラントの排気ダクトあるいは燃料電池関連部材、例えばセパレータ、インタコネクターあるいは改質器等に成形される。これらの部材を溶接する方法は、特に限定されるものではなく、MIG(Metal Inert Gas)、MAG(Metal Active Gas)、TIG(Tungsten Inert Gas)等の通常のアーク溶接や、スポット溶接、シーム溶接等の抵抗溶接、および電縫溶接などの高周波抵抗溶接、高周波誘導溶接等を適用することができる。
[実施例1]
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
表1に示したNo.1〜42の成分組成を有する鋼を真空溶解炉で溶製し、鋳造して50kg鋼塊とし、1170℃で加熱後熱間圧延により35mm厚のシートバーとした。このシートバーから200mm長を切り出し、1150℃に加熱後熱間圧延により板厚4mmの熱延板とし、1000〜1150℃の範囲の温度で焼鈍後、研削し熱延焼鈍板とした。続いて、圧下率50%の冷間圧延を行い、1000〜1150℃の温度で仕上げ焼鈍を行った後、板厚が2mmの冷延焼鈍板として、酸化試験(大気中連続酸化試験および大気中繰り返し酸化試験)、高温疲労試験および室温引張試験に供した。なお、参考として、SUS444(No.28)についても、上記と同様にして冷延焼鈍板を作製し、酸化試験、高温疲労試験および室温引張試験に供した。焼鈍温度については、上記温度範囲内で組織を確認しながら各鋼について温度を決定した。
<大気中連続酸化試験>
上記のようにして得た各種冷延焼鈍板から30mm×20mmの試験片を切り出し、上部に4mmφの穴をあけ、表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂後、1100℃に加熱保持した大気雰囲気の炉内に吊り下げて、200時間保持した。試験片の下には剥離した酸化スケールを回収するためのるつぼを設置した。試験後、試験片の質量を測定し、予め測定しておいた試験前の質量との差を求め、酸化増量(g/m)を算出した。なお、試験は各2回実施し、酸化増量が多い方の値で評価した。なお、酸化増量には剥離したスケール分を含めて、以下のように評価した。
耐酸化判定基準
○:異常酸化もスケール剥離も発生しなかったもの
△:異常酸化は発生しないが、スケール剥離が生じたもの
×:異常酸化(酸化増量≧50g/m)が発生したもの
得られた結果を表1に示す。○を合格、△と×を不合格とした(表1中の連続酸化1100℃参照)。
<大気中繰り返し酸化試験>
上記のようにして得た各種冷延焼鈍板から30mm×20mmの試験片を切り出し、上部に4mmφの穴をあけ、表面および端面を#320のエメリー紙で研磨し、脱脂後、大気中1100℃の炉内で20分保持と200℃以下で1分保持を繰り返す熱処理を400サイクル繰り返した。試験後、試験片の質量を測定し、予め測定しておいた試験前の質量との差を求め、酸化増量(g/m)を算出し、かつ酸化スケールの剥離の有無を目視で確認した。なお、試験は各2回実施し、酸化増量はその多い方の値で評価し、酸化スケールの剥離は2つのうち1つでも剥離が生じた場合は剥離有りと評価した。
耐酸化判定基準
○:異常酸化もスケール剥離も発生しなかったもの
△:異常酸化は発生しないが、スケール剥離が生じたもの
×:異常酸化(酸化増量≧50g/m)が発生したもの
得られた結果を表1に示す。○を合格、△と×を不合格とした(表1中の繰返酸化1100℃参照)。
<高温疲労試験>
上記のようにして作製した冷延焼鈍板から、機械加工により図1に示す形状の試験片を作製した。試験は950℃で行い、昇温後30分保持してから開始した。試験片に応力振幅50MPaを応力比−1で繰り返し付与し、破断までの曲げ回数を測定した。回転速度は1300rpm(22Hz)とした。結果は以下の通り評価した。
高温疲労判定基準
○:1.0×10回以上(合格)
×:1.0×10回未満(不合格)
得られた結果を表1に示す。○を合格、×を不合格とした(表1中の高温疲労950℃参照)。
<室温引張試験>
上記のように作製した冷延焼鈍板から、機械加工により長手方向が圧延方向に対して0°、45°、90°となるJIS13B号引張試験片をそれぞれ作製した。標点間距離は50mmとした。これを用い、室温で引張速度10mm/minで引張試験を行った。引張試験後、破断部を突き合わせ、標点間距離を測定し、試験前の標点間距離50mmとの差分を50mmで割った値を伸び値El(%)として記録した。三方向の伸び値について測定した後、三方向平均の値を(El0°+2El45°+El90°)/4として算出し、以下の通り評価した。
伸び判定基準
◎:30%以上(合格)
○:26%以上30%未満(合格)
×:26%未満(不合格)
得られた結果を表1に示す。◎と○を合格、×を不合格とした(表1中の室温伸び参照)。
<熱疲労試験>
次に、上記で使用した残りのシートバーから100mm長を切り出し、1100℃に加熱後熱間鍛造により30mm角の角棒とした。次いで、1000〜1150℃の温度で焼鈍後、機械加工し、図2に示す形状、寸法の熱疲労試験片に加工し、下記の熱疲労試験に供した。焼鈍温度は、成分毎に組織を確認し再結晶が完了した温度とした。ここで、再結晶が完了した温度とは、鍛造加工により導入されたひずみが解消し、等軸な結晶粒が形成される最も低い温度のことをいう。なお、参考として、SUS444の成分組成を有する鋼についても、上記と同様にして試験片を作製し、熱疲労試験に供した。
熱疲労試験は、図3に示すように、上記試験片を拘束率0.5で拘束しながら、200℃と950℃の間で昇温・降温を繰り返す条件で行った。このとき、昇温速度は7℃/秒とし、降温速度は7℃/秒とした。そして、200℃で1分間保持し、950℃で2分間保持した。なお、上記の拘束率については、図3に示すように、拘束率η=a/(a+b)として表すことができ、aは(自由熱膨張ひずみ量−制御ひずみ量)/2であり、bは制御ひずみ量/2である。また、自由熱膨張ひずみ量とは機械的な応力を一切与えずに昇温した場合のひずみ量であり、制御ひずみ量とは試験中に生じているひずみ量の絶対値を示す。拘束により材料に生じる実質的な拘束ひずみ量は、(自由熱膨張ひずみ量−制御ひずみ量)である。
また、熱疲労寿命は、200℃において検出された荷重を試験片均熱平行部(図2参照)の断面積で割って応力を算出し、初期のサイクル(試験が安定する5サイクル目)の応力値に対して応力値が75%まで低下したサイクル数とし、以下のように評価した。
熱疲労判定基準
◎:1200サイクル以上(合格)
○:800サイクル以上1200サイクル未満(合格)
×:800サイクル未満(不合格)
得られた結果を表1に示す。◎、○を合格、×を不合格とした(表1中の熱疲労寿命950℃参照)。
Figure 0006908179

表1より、本発明例の鋼No.1〜27は、いずれも2つの酸化試験において異常酸化も酸化スケールの剥離も起こらず、SUS444(鋼No.28)より格段に優れた熱疲労寿命、高温疲労特性を示している。室温伸びも26%以上とすることができた。
特に、これらの本発明例の鋼No.1〜27のうち、鋼No.1、4、5、7、11、14〜17、19、23、26、27では、Si含有量が0.85%以下であり、Mn含有量が1.00%以下であり、Al含有量が3.2%以下であり、Cr含有量が21.0%以下であり、Nb含有量が0.70%未満であり、Mo含有量が3.0%以下であり、Ni含有量が0.50%未満であり、Sn、Wを含有せず、かつCuは含有するとしても1.50%を超えないようにしたため、室温伸びを30%以上とすることができた。
一方、鋼No.29は、Si含有量が2.00%超えであり、耐繰り返し酸化性と室温伸びが不合格となった。鋼No.30は、Mn含有量が2.00%超えであり、耐酸化性がいずれも不合格となり、室温伸びも不合格となった。
鋼No.31は、Al含有量が4.0%超えであり、室温伸びが不合格となった。
鋼No.32は、Alが1.0%未満であり、高温疲労特性が不合格となった。
鋼No.33は、Ni含有量が1.00%超えであり、耐繰り返し酸化性と熱疲労特性と高温疲労特性が不合格となった。
鋼No.34は、Cr含有量が25.0%超えであり、室温伸びが不合格となった。
鋼No.35は、Cr含有量が12.0質量%未満であり、耐酸化性のいずれもが不合格となり、それに伴って熱疲労寿命、高温疲労特性も不合格となった。
鋼No.36は、Nb含有量が0.40%未満であり、高温疲労特性が不合格となった。鋼No.37は、Nb含有量が0.80%超えであり、室温伸びが不合格となった。
鋼No.38は、Tiの値が0.01%以上であり、高温疲労特性が不合格となった。
鋼No.39は、Mo含有量が1.0%未満であり、高温疲労特性が不合格となった。
鋼No.40は、Mo含有量が4.0%超えであり、室温伸びが不合格となった。
鋼No.41はCoが含有されておらず、熱疲労特性が不合格となった。
鋼No.42は、Co含有量が1.00%超えであり、室温伸びが不合格となった。
[実施例2]
次に、表1に示したNo.43および44の成分組成を有する鋼を容量約150トンの真空溶解炉(VOD)で溶製した。このとき、No.43の出鋼の直前にはTiを含有しない鋼としてType429(15%Cr−0.4%Nb)を、No.44の出鋼の直前にはTi含有鋼としてSUS439(18%Cr−0.3%Ti)を出鋼した。
まず、約200mm厚のスラブから35mm厚×100mm幅×100mm長を切り出し、1100℃で加熱後、熱間鍛造により30mm角の棒を作製した。次いで、1000〜1150℃の温度で焼鈍後、機械加工し、図2に示す形状、寸法の熱疲労試験片に加工し、上記と同様の熱疲労試験に供した。焼鈍温度は、成分毎に組織を確認し再結晶が完了した温度とした。
また、1170℃で加熱後熱間圧延により4mm厚の熱延板を作製し、1000℃で焼鈍後、酸洗し熱延焼鈍板とした。続いて、圧下率50%の冷間圧延を行い、1050℃の温度で仕上げ焼鈍を行った後、板厚が2mmの冷延焼鈍板として、上記と同様に酸化試験および高温平面曲げ疲労試験、室温引張試験に供した。結果を表1に示す。
直前にTiを含有しない鋼(Type429)を出鋼した鋼No.43は、Ti含有量が0.003%であり、本発明範囲を満たすため、耐酸化性、高温疲労特性、室温伸びのいずれもが合格となった。
一方、直前にTi含有鋼(SUS439)を出鋼した鋼No.44は、Ti含有量が0.014%と本発明の上限より高く、耐酸化性と室温伸びは合格となったが、高温疲労特性は不合格となった。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、自動車等の排気系部材用として好適であるだけでなく、同様の特性が要求される火力発電システムの排気系部材や固体酸化物タイプの燃料電池用部材としても好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.020%以下、
    Si:0.05〜0.65%、
    Mn:0.05〜2.00%、
    P:0.050%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:1.0〜2.8%、
    N:0.020%以下、
    Cr:15.0〜25.0%、
    Nb:0.50〜0.80%、
    Ti:0.01%未満、
    Mo:1.0〜4.0%、
    Co:0.01〜1.00%、
    Ni:0.01〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有するフェライト系ステンレス鋼。
  2. 質量%で、さらに、
    B:0.0002〜0.0050%、
    Zr:0.01〜1.00%、
    V:0.01〜1.00%、
    Cu:0.01〜3.00%、
    W:0.01〜5.00%、
    Sb:0.01〜3.00%、
    Sn:0.01〜3.00%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、さらに、
    Ca:0.0002〜0.0050%、
    Mg:0.0002〜0.0050%のうちから選ばれる1種または2種を含有する請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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