以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る下水道環境監視システムの機能構成の例を示すブロック図である。図1に示される下水道環境監視システムは、マンホール蓋10−1〜10−n、及び処理サーバ20を具備する。マンホール蓋10−1〜10−nと、処理サーバ20とは、通信ネットワークNを介して接続されている。
マンホール蓋10−1〜10−nは、下水道管渠Pに連通するマンホールHの上端開口部を閉塞している。マンホール蓋10−1〜10−nは、下水道管渠P内の水位に関する情報を取得する。マンホール蓋10−1〜10−nは、取得した水位に関する情報を表示すると共に、通信ネットワークNを介して処理サーバ20へ送信する。なお、本実施形態に係るマンホール蓋10は、すべてのマンホールに設けられる必要は無い。例えば、歩行者が通らない車道に設けられているマンホール、及び隣接するマンホール間の距離が狭いマンホールには、通常のマンホール蓋が設置されていても構わない。処理サーバ20は、マンホール蓋10−1〜10−nから送信される情報を利用して下水道管渠P内の状態を監視する。
マンホール蓋10−1〜10−nと、処理サーバ20と間で用いられる通信プロトコル、及びマンホール蓋10−1〜10−nと、処理サーバ20との間で送受信されるデータのデータフォーマット等は既存の技術を利用して構わない。また、通信ネットワークNは、クラウドサービス、インターネット回線、及び専用回線により実現されても構わない。
なお、マンホール蓋10−1〜10−nの構成は同様であるため、以下では、マンホール蓋10と称して説明する。
図2乃至図4は、本実施形態に係るマンホール蓋10を説明する図である。図2は、図1に示される、マンホールHに設置されるマンホール蓋10の模式図を表す図である。図3は、図2に示されるマンホール蓋10の構造の例を表す模式図である。図3(a)は、マンホール蓋10の表側を表し、図3(b)は、マンホール蓋10の裏側を表す。図4は、図2、及び図3に示されるマンホール蓋10の機能構成の例を表す図である。
図2乃至図4に示されるマンホール蓋10の蓋本体11は、例えば、鋳鉄から成り、円盤状に形成されている。蓋本体11は、マンホールHの上端開口部31に設置された受枠と蝶番により、開閉自在に連結される。なお、蓋本体11の形状は円盤状には限定されず、四角形状等の形状であっても構わない。
蓋本体11の裏側には、図3(b)で示されるように、補強リブ17が格子状に立設されている。補強リブ17が格子状に立設されることにより、蓋本体11の裏側は、例えば、「3×3」の升目状に仕切られている。図3(b)において、補強リブ17により仕切られた中央の空間には、第1筐体14が実装され、中央の空間に対して右側の空間には、第2筐体15が実装され、中央の空間に対して上側の空間には、第3筐体16が実装されている。なお、蓋本体11の裏側に立設された補強リブ17の配置形状は、格子状に限定されない。補強リブ17は、例えば、円形状、及び放射線状等に立設されてもよい。また、補強リブ17は、種々の配置形状を組み合わるように立設されてもよい。
蓋本体11の表側には、発光部12−1〜12−3、及びアンテナ部13が実装されている。発光部12−1〜12−3は、例えば、LED等の光源と、光源から発せられた光を散乱させる散乱板等とを有する。図3に示される例によれば、発光部12−1〜12−3毎に、複数のLEDが、予め設定される規則に則って整列されている。発光部12−1〜12−3は、第3筐体16に格納される後述のCPU161からの指示に従って発光する。
アンテナ部13は、アンテナと、蓋本体11の表側に形成されてアンテナを格納する断面凹状のアンテナ格納部とを有する。アンテナ部13は、第3筐体16に格納される後述の通信部162から出力される信号を空間へ送信する。また、アンテナ部13は、到来する信号を受信し、通信部162へ出力する。
第1筐体14乃至第3筐体16は、例えば、蓋本体11と同材質の鋳鉄製であり、略直方体形状を有している。第1筐体14は、計測センサ141を収納している。第2筐体15は、電源部151を収納している。第3筐体16は、CPU(Central Processing Unit)161、及び通信部162を収納している。
計測センサ141は、下水道管渠P内の状態を監視するために必要なデータを計測するセンサである。本実施形態では、計測センサ141は、下水道管渠P内の下水の液面の位置を計測するセンサ、すなわち水位センサである。水位センサは、任意の方式により下水道管渠P内の下水の液面の位置を計測することが可能である。例えば、水位センサは、電波式レベルメータ、フロート式レベルスイッチ、フリクト式レベルスイッチ、電極式レベルスイッチ、近接センサ、及び光電センサ等により実現される。
水位センサが電波式レベルメータである場合、電波を発振する発振部、及び液面からの反射波を受信する受信部が第1筐体14に設けられている。この場合、発振部から下水道管渠Pの水面へ向けて電波が予め設定された周期で出力され、液面で反射された反射波が受信部で受信される。水位センサは、計測した液面の位置に関する情報をCPU161へ出力する。
水位センサがフロート式レベルスイッチ、及びフリクト式レベルスイッチである場合、水位センサは、複数のセンシングデバイスが互いに所定の間隔を開けて一列に配列されて成る。このセンシングデバイス群は、第1筐体14からマンホール内へ投入されている。また、水位センサが電極式レベルスイッチ、近接センサ、及び光電センサ等である場合、水位センサは、所定の水位毎に対応した複数の長さのセンシングデバイスから成る。複数のセンシングデバイスは第1筐体14からぶら下がるように設けられている。水位センサは、各センシングデバイスが液面と接触するとCPU161へ検出信号を出力する。以下では、電波式レベルメータのように、常時稼働している水位センサにより、下水道管渠P内の液面の位置が計測される場合を例に説明を進める。
電源部151は、例えば、一次電池、又は充電可能な二次電池により実現される。電源部151は、第1筐体14に収納される計測センサ141、並びに、第3筐体16に収納されるCPU161、及び通信部162へ電源を供給する。二次電池は、例えば、太陽光発電デバイス等の発電デバイスにより充電されてもよいし、マンホールの点検時に保守員により充電されてもよい。
CPU161は、ROM(Read Only Memory)に格納された各種プログラムを、RAM(Random Access Memory)を利用して実行することにより所定の機能を実現する。例えば、CPU161は、所定のプログラムを実行することで、下水道管渠Pの水位を判定する水位判定部1611、発光部12−1〜12−3を制御する照光制御部1612、及び通信部162を制御する通信制御部1613を有する。
水位判定部1611は、計測センサ141から出力される下水道管渠Pの液面の位置に関する情報に基づき、下水道管渠P内の液面の位置についての定性的な評価を判定する。例えば、下水道管渠P内の液面の位置を3段階で評価する場合、水位判定部1611は、危険な順に「警報レベル」、「注意レベル」、及び「安全レベル」との指標を予め有する。
より具体的には、例えば、計測センサ141から出力される情報により、図2に示されるように、液面の位置がマンホールHの上端開口部31からH1以上の位置にあると表される場合、水位判定部1611は、液面の位置が「警報レベル」にあると評価する。また、計測センサ141から出力される情報により、液面の位置がマンホールHの上端開口部31からH2以上の位置、かつ、H1より低い位置にあると表される場合、水位判定部1611は、液面の位置が「注意レベル」にあると評価する。また、計測センサ141から出力される情報により、液面の位置がマンホールHの上端開口部31からH2より低い位置にあると表される場合、水位判定部1611は、液面の位置が「安全レベル」にあると評価する。
なお、水位判定部1611で評価される液面の位置は、3段階に限られない。発光部により下水道管渠Pの状態を表示可能であるならば、段階数に制限はない。例えば、2段階であっても、4段階以上であっても構わない。
照光制御部1612は、水位判定部1611で判定された評価に基づき、発光部12−1〜12−3を制御する。具体的には、照光制御部1612は、水位判定部1611で判定された評価に応じ、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定する。発光部12−1〜12−3の照光の仕方には、例えば、発光させる発光部12−1〜12−3の数、発光させる発光部12−1〜12−3の色、発光させる発光部12−1〜12−3の位置、及び明滅させる発光部12−1〜12−3の頻度等が想定される。
より具体的には、照光制御部1612は、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を、水位判定部1611で判定された評価が変化する度に判定する。例えば、照光制御部1612は、所定の検出周期で水位判定部1611により判定された評価をRAM等のメモリに記憶する。照光制御部1612は、液面位置の評価が判定されると、RAMに記憶されている前回の検出周期において判定されたた評価と、新たに判定された評価とを比較し、評価が変化していれば、照光判定を実施する。
照光制御部1612は、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を、照光判定時に水位判定部1611により判定されている評価に基づいて決定する。
発光させる発光部12−1〜12−3の数で液面の位置を表す場合、例えば、「警報レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を発光させ、「注意レベル」の評価に対しては発光部12−1,12−2を発光させ、かつ、「安全レベル」の評価に対しては発光部12−1を発光させる。
また、発光させる発光部12−1〜12−3の色で液面の位置を表す場合、例えば、「警報レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を赤く発光させ、「注意レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を黄色く発光させ、かつ、「安全レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を青く発光させる。
また、発光させる発光部12−1〜12−3の位置で液面の位置を表す場合、例えば、「警報レベル」の評価に対しては発光部12−3を発光させ、「注意レベル」の評価に対しては発光部12−2を発光させ、かつ、「安全レベル」の評価に対しては発光部12−1を発光させる。
また、明滅させる発光部12−1〜12−3の頻度で液面の位置を表す場合、例えば、「警報レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を第1の周期で明滅させ、「注意レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を第1の周期よりも長い第2の周期で明滅させ、かつ、「安全レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を点灯させる。
なお、上記例示した発光部12−1〜12−3の照光の仕方は、それぞれが組み合わされても構わない。例えば、「警報レベル」の評価に対しては発光部12−1〜12−3を赤く発光させ、「注意レベル」の評価に対しては発光部12−1,12−2を黄色く発光させ、かつ、「安全レベル」の評価に対しては発光部12−1を青く発光させるようにしても構わない。
照光制御部1612は、照光判定時に水位判定部1611により判定されている評価に加え、水位判定部1611で判定された評価の時系列変化に基づいて発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定してもよい。具体的には、例えば、照光制御部1612は、RAMに記憶した、前回の検出周期で判定された評価と、次の検出周期で判定される評価とを比較する。照光制御部1612は、変化の傾向に基づいて発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定する。
発光させる発光部12−1〜12−3の数で液面の位置を表している場合には、例えば、評価レベルの減少については、発光部を青色で発光させ、若しくは発光部を点灯させる。また、評価レベルの増大については、発光部を赤色で発光させ、若しくは発光部を明滅させる。なお、発光部12−1〜12−3の照光の仕方の組み合わせは、ここで例示したものに限られない。
なお、図2乃至図4では、発光部12−1〜12−3が、中央が突出するように傾斜しながら配列された光源により形成される場合を例に説明している。しかしながら、これに限定されない。光源により形成される発光部の形状は、例えば、数字を表現可能な形状であっても構わない。また、例えば、発光部の数は、3つよりも少なくても、多くても構わない。また、例えば、発光部は、図5、及び図6に示されるように設けられていても構わない。図5では、蓋本体11の表側の縁に沿って円状に、LED等の光源が配置されている。照光制御部1612は、図5に示される発光部に対しても、水位判定部1611で判定された評価に応じ、例えば、発光させる光源の数、発光させる光源の色、発光させる光源の位置、及び明滅させる光源の頻度等を決定する。また、図6では、蓋本体11の表側の略全面に、LED等の光源が配置されている。照光制御部1612は、図6に示される発光部に対しても、水位判定部1611で判定された評価に応じ、例えば、発光させる光源の数、発光させる光源の色、発光させる光源の位置、及び明滅させる光源の頻度等を決定する。
また、上記では、照光制御部1612が発光部12−1〜12−3の照光の仕方を、水位判定部1611で判定された評価が変化する度に判定する場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。照光制御部1612は、予め設定される周期で照光判定を実施するようにしてもよい。このとき、照光判定の周期は、計測センサ141が下水の液面を検出する際の検出周期と同じであってもよいし、長くても構わない。
また、照光制御部1612は、処理サーバ20から送信されるオフ信号に従い、発光部12−1〜12−3を消灯させるようにしてもよい。
通信制御部1613は、水位判定部1611で判定された評価を表す情報を、通信部162にアンテナ部13から送信させるための制御信号を生成する。具体的には、例えば、通信制御部1613は、水位判定部1611で判定された評価が変化する度に、アンテナ部13から評価を表す情報を送信させる。例えば、通信制御部1613は、所定の検出周期で水位判定部1611により判定された評価をRAM等のメモリに記憶する。通信制御部1613は、液面位置の評価が判定されると、RAMに記憶されている前回の検出周期において判定された評価と、新たに判定された評価とを比較し、評価が変化していれば、アンテナ部13から評価を表す情報を送信させる。なお、通信制御部1613は、予め設定された周期で、評価を表す情報をアンテナ部13から送信させるようにしても構わない。このとき、通信制御の周期は、計測センサ141が下水の液面を検出する際の検出周期と同じであってもよいし、長くても構わない。また、通信制御の周期は、照光制御部1612が照光の仕方を判定する際の判定周期と同じであっても、長くても、短くてもよい。
なお、通信制御部1613は、水位判定部1611で判定された評価を表す情報と共に、計測センサ141から出力される液面の位置に関する情報を、通信部162にアンテナ部13から送信させるようにしてもよい。
なお、水位判定部1611、照光制御部1612、及び通信制御部1613は、CPU161によるソフトウェア処理のみにより実現されるものではない。水位判定部1611、照光制御部1612、及び通信制御部1613は、例えば、CPUと、FPGA(Field Programmable Gate Array)とにより実現されても構わない。
通信部162は、CPU161からの通信制御に従い、所定の情報を、予め設定される通信プロトコル、及びデータフォーマット等に則った形式に変換する。通信部162は、変換した情報をアンテナ部13から送信する。送信された情報は、通信ネットワークNを介し、処理サーバ20へ送信される。
図1に示される処理サーバ20は、マンホール蓋10−1〜10−nから送信される情報を受信し、受信した情報を管理すると共に、管理する情報に基づいて下水道管渠P内の状態を監視する。図7は、図1に示される処理サーバ20の機能構成の例を示すブロック図である。図7に示される処理サーバ20は、信号処理部21、入力部22、出力部23、通信部24、及び記憶部25を有する。信号処理部21、入力部22、出力部23、通信部24、及び記憶部25は、例えば、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
信号処理部21は、例えば、CPU、並びにROM、及びRAM等のCPUが処理を実行するためのプログラムやデータの格納領域等により実現される。信号処理部21は、処理サーバ20の中枢として機能する。信号処理部21は、ROM等に記憶されている処理プログラムを、RAMで展開させることにより、当該プログラムに対応する機能を実現する。
入力部22は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパネル等により実現される。入力部22は、操作者からの入力指示を電気信号へ変換し、電気信号を信号処理部21へ出力する。なお、入力部22は、マウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、処理サーバ20とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を信号処理部21へ出力する回路も入力部22の例に含まれる。
出力部23は、例えば、表示機器、及び印刷機器等により実現される。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等、任意のディスプレイが適宜利用可能である。表示機器は、表示対象についての画像データを表示する。印刷機器は、例えば、プリンタである。印刷機器は、印刷対象についての画像データを所定用紙に印刷する。なお、出力部23は、表示機器、及び印刷機器等の物理的な出力部品を備えるものだけに限られない。例えば、処理サーバ20とは別体に設けられた外部の出力機器へ画像データを送信する回路も出力部23の例に含まれる。
通信部24は、通信ネットワークNを介して接続されたマンホール蓋10−1〜10−nとの間でデータ通信を行う。
記憶部25は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、及び集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、記憶部25は、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。記憶部25は、本実施形態に係る処理プログラム等を記憶している。
図7に示される信号処理部21は、記憶部25に記憶されている処理プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、信号処理部21は、処理プログラムを実行することで、解析部211、及び制御処理部212を有する。
解析部211は、記憶部25に記憶されている下水道管渠Pの水位を表す情報を解析することで、処理サーバ20の利用者が、下水道管渠Pの状況を把握可能な情報を生成する。解析部211は、生成した情報を出力部23からオペレータに対して表示する。または、解析部211は、生成した情報を、通信部24から、ユーザが所持する通信端末へ、通信ネットワークを介して送信する。
制御処理部212は、解析部211で生成された解析情報に基づき、下水道管渠P内の環境を改善するための種々の制御、例えば、ポンプ制御、及び下水処理場の制御等を実施する。
次に、以上のように構成された下水道環境監視システムにおけるマンホール蓋10の動作を説明する。図8は、図2乃至図4に示されるマンホール蓋10が、下水道管渠Pの水位を表す情報を発光部12−1〜12−3により表示する際の動作の例を表すフローチャートである。
まず、電波式レベルメータである計測センサ141は、予め設定される周期で下水道管渠Pへ電波を照射する。計測センサ141は、下水道管渠P内の液面で反射された反射波を受信する。計測センサ141は、検出した情報をCPU161へ出力する。
CPU161は、計測センサ141から出力された検出データを受信する(ステップS81)。CPU161は、検出データを受信すると水位判定部1611として機能する。水位判定部1611は、受信した検出データに基づき、下水道管渠P内の液面の位置についての定性的な評価を判定する(ステップS82)。すなわち、水位判定部1611は、受信した検出データに基づき、例えば、現状の水位が「警報レベル」、「注意レベル」、及び「安全レベル」のいずれであるかを判定する。水位判定部1611は、判定結果を表すデータを、時間に関する情報、例えば、タイムスタンプを付してRAM等のメモリへ記憶する(ステップS83)。
CPU161は、液面の位置についての定性的な評価がなされると、照光制御部1612として機能する。照光制御部1612は、直前に判定された評価結果をRAMから読み出す。なお、直前に判定された評価結果とは、一つ前の周期で取得された検出データに基づいて判定された評価を意味する。照光制御部1612は、水位判定部1611で判定された評価が、読み出した評価と異なっているか否かを判定する(ステップS84)。水位判定部1611で判定された評価が、読み出した評価と異なっている場合(ステップS84のYes)、照光制御部1612は、水位判定部1611で判定された評価の危険度が、直前に判定された評価よりも増大しているか否かを判定する(ステップS85)。水位判定部1611で判定された評価が、読み出した評価と同じである場合(ステップS84のNo)、照光制御部1612は、処理を終了させる。
ステップS85において、危険度が増大している場合(ステップS85のYes)、照光制御部1612は、水位判定部1611で判定された評価と、危険度が増大している旨とに基づき、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定する(ステップS86)。危険度が増大していない、すなわち、危険度が減少している場合(ステップS85のNo)、照光制御部1612は、水位判定部1611で判定された評価と、危険度が減少している旨とに基づき、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定する(ステップS87)。照光制御部1612は、ステップS86、又はステップS87において決定した照光の仕方で発光するように発光部12−1〜12−3を制御し(ステップS88)、処理を終了させる。
なお、図8では、ステップS85において、水位判定の評価結果の変化傾向を考慮する場合を例に説明した。しかしながら、ステップS85の処理は、無くても構わない。この場合、照光制御部1612は、ステップS54において、水位判定部1611で判定された評価が、読み出した評価と異なっていると判定すると、水位判定部1611で判定された評価に基づき、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定する。
図9は、図2乃至図4に示されるマンホール蓋10が、下水道管渠Pの水位を表す情報を処理サーバ20へ送信する際の動作の例を表すフローチャートである。
CPU161は、液面の位置についての定性的な評価がなされると、通信制御部1613として機能する。通信制御部1613は、直前に判定された評価結果をRAMから読み出す。通信制御部1613は、水位判定部1611で判定された評価が、読み出した評価と異なっているか否かを判定する(ステップS91)。水位判定部1611で判定された評価が、読み出した評価と異なっている場合(ステップS91のYes)、通信制御部1613は、計測センサ141から出力された検出データと、水位判定部1611で判定された評価を表すデータとを送信するように通信部162を制御し(ステップS92)、処理を終了させる。通信部162は、検出データと、判定結果を表すデータとを、時間に関する情報、例えば、タイムスタンプを付してアンテナ部13から送信する。水位判定部1611で判定された評価が、読み出した評価と同じである場合(ステップS91のNo)、通信制御部1613は、処理を終了させる。
なお、マンホール蓋10の照光制御、及び通信制御は、液面の位置についての評価が変更された場合のみに実施されるものではない。図10は、マンホール蓋10の照光制御、及び通信制御が所定の周期で実施される場合の動作の例を説明する図である。
まず、電波式レベルメータである計測センサ141は、予め設定される第1の周期で下水道管渠Pへ電波を照射する。計測センサ141は、下水道管渠P内の液面で反射された反射波を受信する。計測センサ141は、検出したデータをCPU161へ出力する(ステップS101)。
CPU161は、計測センサ141から出力された検出データを受信すると水位判定部1611として機能する。水位判定部1611は、受信した検出データに基づき、下水道管渠P内の液面の位置についての定性的な評価を判定する(ステップS102)。水位判定部1611は、検出データ、及び判定結果を表すデータを、時間に関する情報、例えば、タイムスタンプを付してRAM等のメモリへ記憶する。
CPU161は、通信制御部1613として機能する。通信制御部1613は、予め設定される第2の周期で、RAMに記憶されている検出データ、及び判定結果を表すデータを読み出し、読み出した検出データ、及び判定結果を表すデータを、処理サーバ20へ送信するように通信部162を制御する(ステップS103)。なお、図10の説明では、第2の周期は、第1の周期よりも長いものとする。
CPU161は、照光制御部1612として機能する。照光制御部1612は、予め設定される第3の周期で、RAMに記憶されている判定結果を表すデータを読み出し、読み出した判定結果に基づき、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定する(ステップS104)。なお、照光制御部1612は、読み出した判定結果に対してさらに一つ前の判定結果、すなわち、読み出した判定結果より第1の周期だけ前に記憶された判定結果を読み出し、読み出した2つの判定結果から認識される変化の傾向も、照光の仕方を決定する際に利用しても構わない。照光制御部1612は、決定した照光の仕方で発光するように発光部12−1〜12−3を制御する(ステップS105)。なお、図10の説明では、第3の周期は、第1、及び第2の周期よりも長いものとする。
続いて、処理サーバ20で実施される解析処理について説明する。処理サーバ20は、マンホール蓋10−1〜10−nから送信される、下水道管渠P内の液面についての検出データ、及び液面の位置についての定性評価の判定結果を表すデータを受信する。処理サーバ20は、受信した検出データ、及び判定結果を表すデータを記憶部25に記憶する。処理サーバ20の信号処理部21により実現される解析部211は、記憶部25に記憶されるデータを解析する。
例えば、解析部211は、記憶部25に記憶される最新のデータに基づき、現状の下水道管渠Pの状況を表す解析情報を生成する。図11は、現在の下水道管渠Pの状況を表す解析情報の表示例を表す図である。図11において、マンホール蓋は円により表され、下水道管渠Pは線により表される。そして、図11に表される円のうち、左上方に2段の記入欄が付された円が本実施形態に係るマンホール蓋10を表す。下段の記入欄は、最新の判定結果を表すデータに基づいて記載され、定性的に評価された現状の水位を表す。この記入欄では、定性的に評価された水位が、例えば、「レベル1」、「レベル2」、及び「レベル3」のように記載される。このとき、解析部211は、例えば、「警報レベル」を「レベル3」とし、「注意レベル」を「レベル2」とし、かつ、「安全レベル」を「レベル1」と変換する。上段の記入欄は、最新の検出データに基づいて記載され、現状における実際の水位を表す。この記入欄では、実際の水位が、例えば、「○○m」のように記載される。現在の定性的な状況を表す解析情報が生成されることで、オペレータは、遠方の下水道管渠Pの状況を直感的、かつ、迅速に把握することが可能となる。
また、解析部211は、例えば、記憶部25に記憶される過去のデータに基づき、下水道管渠Pの状況の遷移を表す解析情報を生成する。図12は、下水道管渠Pの状況の遷移を表す解析情報の表示例を表す図である。図12は、yy年mm月dd日からyy年mm月dd日までの状況の遷移を表している。図12において、図11と同様に、マンホール蓋は円により表され、下水道管渠Pは線により表される。そして、図12に表される円のうち、左方に5段の記入欄が付された円が本実施形態に係るマンホール蓋10を表す。
下から1段目から4段目の記入欄は、例えば、設定された期間内における第1時期から第4時期の判定結果を表すデータに基づいて記載される。第1時期乃至第4時期の選定はオペレータからの要望に従い任意に設定可能である。下から1段目から4段目の記入欄では、定性的に評価された水位が、例えば、「レベル1」、「レベル2」、及び「レベル3」のように記載される。最上段の記入欄は、設定された期間内に検出された最高の水位を表す。最上段の記入欄は、例えば、「○○m」のように記載される。下水道管渠Pの状況の遷移を定性的に表す解析情報が生成されることで、オペレータは、問題が発生しやすいエリアを直感的に把握することが可能となる。
また、解析部211は、例えば、記憶部25に記憶される過去のデータに基づき、マンホール蓋10毎の状態を抽出した解析情報を生成する。図13乃至図15は、所定のレベル、例えば、「レベル3」に到達した回数をマンホール蓋10毎に表す解析情報の表示例を表す図である。図13は、所定の期間においてマンホール蓋10−1〜10−nで所定レベルが判定される回数の例を表す図である。図14は、マンホール蓋10−1で所定レベルが判定される回数の例を月毎に表す図である。図15は、所定の降水量下においてマンホール蓋10−1〜10−nで所定レベルが判定される回数の例を表す図である。マンホール蓋10毎の状況を定性的に表す解析情報が生成されることで、オペレータは、所望の条件下で問題が発生し得るマンホール蓋10を直感的に検索することが可能となる。
以上のように、上記実施形態では、マンホール蓋10は、計測センサ141により下水道管渠P内の状態、例えば、水位を計測する。そして、マンホール蓋10は、計測した下水道管渠P内の状態、例えば、水位に基づき、発光部12−1〜12−3を発光させるようにしている。これにより、下水道管渠Pの現在の状態を報知することが可能となる。
したがって、本実施形態に係るマンホール蓋10によれば、歩行者は下水道管渠Pの現在の状態を把握することができる。また、下水道管渠Pの現在の状態を光により報知することで、夜間、及び地表がある程度水没した場合であっても視認性を維持することができる。また、マンホール蓋10に下水道管渠P内の状態を表示することで、下水道が市民の生活に貢献していることを伝えることに繋がり、市民にとって下水道がより身近な存在となることが期待できる。
また、上記実施形態では、マンホール蓋10は、電源部151を備える。そして、マンホール蓋10の各構成要素は、電源部151から供給される電源により駆動されるようにしている。これにより、一般的なマンホール蓋を、本実施形態に係るマンホール蓋10に交換するだけで、マンホール蓋10は上記の動作を実施することができるため、ケーブル敷設等の必要は無く、早期導入が可能となる。
また、上記実施形態では、マンホール蓋10は、水位判定部1611により、下水道管渠P内の水位を定性的に評価する。そして、マンホール蓋10は、照光制御部1612により、定性的な評価に基づいて発光部12−1〜12−3を発光させるようにしている。これにより、下水道管渠Pの状態が、危険であるか否かを表す直感的な情報を報知することが可能となる。このため、歩行者は、マンホール蓋10の発光部12−1〜12−3を目視するだけで、安全、注意、警報等により評価される安全度を確認することができる。
また、上記実施形態では、マンホール蓋10は、照光制御部1612により、直前に判定された評価からの変化に基づいて発光部12−1〜12−3を発光させるようにしている。これにより、下水道管渠Pの状態が、危険な状態へ遷移しているのか、安定な状態へ向かっているのかを直感的に表す情報を報知することが可能となる。
また、上記実施形態では、マンホール蓋10は、水位判定部1611により判定された水位についての定性的な評価が変化した場合、照光制御部1612により、変化後の評価に基づき、発光部12−1〜12−3を制御するようにしている。これにより、下水道管渠Pの状態をよりリアルタイムに近い情報で報知することが可能となる。
また、上記実施形態では、マンホール蓋10は、水位判定部1611により判定された水位についての定性的な評価を、通信部162により処理サーバ20へ送信するようにしている。これにより、処理サーバ20では、マンホール蓋10により判定された定性的な評価に基づいて、下水道管渠Pの状態を監視することが可能となる。
なお、上記実施形態では、マンホール蓋10の水位センサとして、電波式レベルメータが実装される場合における動作を詳細に説明した。水位センサとして、フロート式レベルスイッチ、フリクト式レベルスイッチ、電極式レベルスイッチ、近接センサ、及び光電センサ等が用いられる場合、マンホール蓋10は上記と一部異なる動作を実施する。水位センサとして、フロート式レベルスイッチ、フリクト式レベルスイッチ、電極式レベルスイッチ、近接センサ、及び光電センサ等が用いられる場合、水位センサは、センシングデバイスが液面に着水すると動作を開始し、センシングデバイスが液面から離水すると動作を停止させる。この場合、マンホール蓋10は、例えば、図16に示されるように動作する。
図16において、計測センサ141は、センシングデバイスが下水の液面に着水するまで動作を停止している。計測センサ141は、センシングデバイスが下水の液面に着水すると、液面を検出した旨の検出信号をCPU161へ出力する(ステップS161)。計測センサ141は、所定の高さ毎に設けられているセンシングデバイスが下水の液面を検知する度に、検出信号をCPU161へ出力する。また、計測センサ141は、センシングデバイスが離水する度に、出力している検出信号の出力を停止する。
CPU161の水位判定部1611は、検出信号を受信すると、受信した検出信号に基づき、下水道管渠P内の液面の位置についての定性的な評価を判定する(ステップS162)。水位判定部1611は、検出信号に関するデータ、及び判定結果を表すデータを、時間に関する情報、例えば、タイムスタンプを付してRAM等のメモリへ記憶する。
CPU161の通信制御部1613は、予め設定される第1の周期で、RAMに記憶されている検出信号に関するデータ、及び判定結果を表すデータを読み出し、読み出したデータを、処理サーバ20へ送信するように通信部162を制御する(ステップS163)。
CPU161の照光制御部1612は、予め設定される第2の周期で、RAMに記憶されている判定結果を表すデータを読み出し、読み出した判定結果に基づき、発光部12−1〜12−3の照光の仕方を決定する(ステップS164)。照光制御部1612は、決定した照光の仕方で発光するように発光部12−1〜12−3を制御する(ステップS165)。なお、図16の説明では、第2の周期は、第1の周期よりも長いものとして示しているが、これに限定されない。第2の周期は、第1の周期と同じであってもよいし、第1の周期よりも短くても構わない。
CPU161の照光制御部1612は、全ての検出信号が停止されると、照光を停止させる旨の制御信号を発光部12−1〜12−3へ出力する(ステップS166)。また、CPU161の通信制御部1613は、全ての検出信号が停止されると、処理サーバ20へのデータの送信制御を停止する。
このように、計測センサ141が下水の液面から離水している間は、発光部12−1〜12−3が発光せず、信号が処理サーバ20へ送信されることがない。そのため、安全な期間におけるマンホール蓋10の消費電力を抑えることが可能となる。
また、上記実施形態では、計測センサ141が水位センサである場合を例に説明したが、これに限定されない。計測センサ141には、水位センサに加え、pHセンサ、硫化水素センサ、濁度センサ、歪みゲージ、及び集音マイク等が設けられていても構わない。CPU161の水位判定部1611は、pHセンサ、硫化水素センサ、濁度センサ、歪みゲージ、及び集音マイクからの検出データに基づき、検出値の定性的な評価を判定してもよい。また、CPU161の照光制御部1612は、判定結果に基づき、下水道管渠P内の状態が把握可能なように発光部12−1〜12−3を制御してもよい。これにより、歩行者は、下水道管渠P内の水位以外の状態についても地上から把握することが可能となる。また、CPU161の通信制御部1613は、判定結果を表すデータ、及び検出データを処理サーバ20へ送信してもよい。これにより、処理サーバ20は、下水道管渠P内の水位以外の状態についても監視することが可能となる。
また、上記実施形態では、マンホール蓋10が発光部12−1〜12−3を備える場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されない。マンホール蓋10は、発光部12−1〜12−3以外の表示部を備えていても構わない。図17は、図1に示されるマンホール蓋10の表側の構造のその他の例を表す図である。図17によれば、マンホール蓋10は、下水道管渠P内の下水の水位を表すための表示部18を備える。表示部18は、LED、又は液晶ディスプレイ等により実現される。表示部18における表示データは、計測センサ141により検出される検出データに基づき、CPU161により作成される。この表示部18の表示により、下水道事業者は、地上から下水道管渠P内の下水の詳しい水位を認識することが可能となる。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。