以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
<光学膜形成装置>
光学膜形成装置は、基板上に光学膜を形成する。光学膜としては、1/4波長膜(λ/4膜)や直線偏光膜などが挙げられれる。1/4波長膜と直線偏光膜とで、円偏光膜が構成される。円偏光膜は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの外光反射の抑制に用いられる。
基板は、樹脂基板、ガラス基板、半導体基板、金属基板などのいずれでもよく、フレキシブル性向上の観点から樹脂基板であることが好ましい。基板は、フレキシブル性向上と水分透過性低下の観点から、樹脂基板とガラス基板の積層基板でもよい。
基板上には、予め有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)が形成済みであってもよい。OLEDの光取り出し方式は、トップエミッション方式、ボトムエミッション方式のいずれでもよい。尚、光学膜が形成される基板上には予めOLEDが形成済みではなくてもよく、光学膜が形成される基板はOLEDが形成される基板とは別に用意され貼り合わされてもよい。
基板上には、予めタッチセンサなどが形成済みであってもよい。タッチセンサは、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどの画面に対する指などの物体の接触または近接を検出する。タッチセンサの検出方式は、特に限定されないが、例えば静電容量方式であってよい。静電容量方式としては、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式などがある。投影型静電容量方式としては、自己容量方式、相互容量方式等がある。相互容量方式を用いると、同時多点検出が可能となるため好ましい。尚、光学膜が形成される基板上には予めタッチセンサが形成済みではなくてもよく、光学膜が形成される基板はタッチセンサが形成される基板とは別に用意され貼り合わされてもよい。
光学膜形成装置は、塗布装置、減圧乾燥装置、加熱処理装置、膜定着装置、及び膜除去装置を有する。以下、これらの装置の構成について説明する。なお、以下に示す図面においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。また、Z軸方向に垂直な断面を横断面とも呼び、Y軸方向に垂直な断面を縦断面とも呼ぶ。
<塗布装置>
図1は、一実施形態による塗布装置を示す横断面図である。図2は、一実施形態による塗布装置を示す縦断面図である。図3は、一実施形態による塗布ノズルを示す斜視図である。塗布装置10は、基板G上に、光学膜を形成する液晶分子などの材料と当該材料を溶かす溶媒とを含む塗布液を塗布する。
塗布装置10は、処理容器11を有する。処理容器11の側面には基板Gの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられる。
塗布装置10は、処理容器11の内部に、基板Gを保持する保持部としてのステージ20を有する。ステージ20は、基板Gの塗布液を塗布する面を上に向けて、基板Gの下面を吸着保持する。また、ステージ20は、平面視において基板Gよりも小さい形状を有する。
塗布装置10は、ステージ20をX軸方向に移動させるステージ移動機構21を有する。ステージ移動機構21は、例えばX軸方向に延伸する一対のレールを有し、レールに沿ってステージ20を移動させる。レールのX軸方向寸法は、基板GのX軸方向寸法の2倍以上であってよい。基板Gは、平面視において重ならない2つの位置A1(図1および図2に実線で示す位置)と位置A2(図1および図2に破線で示す位置)の間を移動する。
塗布装置10は、ステージ20の上方に、当該ステージ20に保持された基板Gに塗布液を塗布する塗布ノズル30を有する。塗布ノズル30は、ステージ20に保持された基板Gの移動方向(X軸方向)と同じ方向に延伸する長尺状のスリットノズルである。
図3に示すように塗布ノズル30の下端面には、基板Gに塗布液を吐出する吐出口31が形成されている。図1に示すように吐出口31は、スリット状に形成される。吐出口31のX軸方向寸法は、基板GのX軸方向の移動範囲よりも長い範囲であってよく、基板GのX軸方向寸法の2倍以上であってよい。
塗布装置10は、塗布ノズル30をY軸方向に移動させる塗布ノズル移動機構32を有する。塗布ノズル30は、ステージ20をY方向に挟む2つの位置B1(図1に実線で示す位置)と位置B2(図1に破線で示す位置)の間を移動する。なお、塗布ノズル移動機構32は、塗布ノズル30をZ軸方向にも移動させてよい。
ステージ移動機構21と塗布ノズル移動機構32とで、ステージ20と塗布ノズル30とを互いに直交する第1方向(例えばX軸方向)および第2方向(例えばY軸方向)に相対的に移動させる移動機構が構成される。
尚、移動機構の構成は特に限定されない。例えば、ステージ移動機構21が、ステージ20をX軸方向およびY軸方向の両方向に移動させてもよい。同様に、塗布ノズル移動機構32が、塗布ノズル30をX軸方向およびY軸方向の両方向に移動させてもよい。
ステージ20のX軸方向の移動速度と塗布ノズル30のY軸方向の移動速度を変更することで、基板Gに塗布される塗布液のせん断応力の作用方向を変更でき、塗布液に含まれる液晶分子の配向方向を変更できる。塗布液は、例えば、リオトロピック液晶分子やサーモトロピック液晶分子などの液晶分子を含む。
塗布装置10は、ステージ20及び塗布ノズル30の下方に、塗布液を回収する回収部40を有する。回収部40は、上方に開放した箱状に形成され、塗布液を一時的に貯留する。回収部40のX軸方向寸法は、塗布ノズル30の吐出口31のX軸方向寸法よりも長い。また、回収部40のY軸方向寸法は、塗布ノズル30のY軸方向の移動範囲より長い。
回収部40の下面には、回収した塗布液を排出する排出管41が設けられる。塗布ノズル30から吐出され、基板Gに塗布されずに下方に落下する塗布液は、回収部40に回収され、排出管41から排出される。回収された塗布液は、次以降に処理される基板Gに再利用される。
塗布装置10は、制御部50を有する。制御部50は、例えばコンピュータで構成され、図1に示すようにCPU(Central Processing Unit)51と、メモリなどの記憶媒体52と、入力インターフェース53と、出力インターフェース54とを有する。制御部50は、記憶媒体52に記憶されたプログラムをCPU51に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御部50は、入力インターフェース53で外部からの信号を受信し、出力インターフェース54で外部に信号を送信する。
制御部50のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
尚、制御部50は、塗布装置10以外の装置をも制御してよい。
<減圧乾燥装置>
図4は、一実施形態による減圧乾燥装置を示す縦断面図である。減圧乾燥装置100は、塗布装置10で塗布された塗布液の液膜を減圧乾燥する。これにより、液膜に含まれる固形分の溶媒が蒸発し、1/4波長膜や直線偏光膜などの光学膜が形成される。
減圧乾燥装置100は、処理容器101を有する。処理容器101は、蓋体102と本体103を有する。蓋体102は、昇降機構(図示せず)によって昇降される。処理容器101に基板Gを搬入出する際には、蓋体102は本体103から上方に分離する。一方、処理容器101の内部で減圧乾燥処理を行う際には、蓋体102と本体103が一体となって、密閉された空間を形成する。
減圧乾燥装置100は、処理容器101の内部に、基板Gを載置する載置台110を有する。載置台110は、基板Gの液膜が形成された面を上に向けて、基板Gの下面を支持する。
減圧乾燥装置100は、処理容器101の底部に、ガス供給部120と排気部121を有する。ガス供給部120と排気部121は、載置台110を挟んで対向して配置される。
ガス供給部120から供給された不活性ガスは、基板Gの上方に、基板Gと平行な気流を形成し、排気部121から排気される。また、排気部121によって、処理容器101の内部を減圧雰囲気とすることができる。
尚、減圧乾燥装置100は、図4の構成には限定されない。
<搬送領域>
図5は、一実施形態による塗布装置、減圧乾燥装置および搬送領域の配置を示す平面図である。図5に示すように、塗布装置10と減圧乾燥装置100は、搬送領域200を介して隣接して配置される。搬送領域200には、基板Gを搬送する搬送装置201が設けられる。搬送領域200の内部において、ダウンフローは形成されず、無風状態で基板Gが搬送される。
<加熱処理装置>
図6は、一実施形態による加熱処理装置を示す縦断面図である。加熱処理装置300は、減圧乾燥装置100で減圧乾燥された光学膜を加熱処理する。これにより、光学膜に残留する溶媒などが蒸発する。
加熱処理装置300は、処理容器301を有する。処理容器301は、蓋体302と本体303を有する。蓋体302は、昇降機構(図示せず)によって昇降される。処理容器301に基板Gを搬入出する際には、蓋体302は本体303から上方に分離する。一方、処理容器301の内部で加熱処理を行う際には、蓋体302と本体303が一体となって、密閉された空間を形成する。蓋体302の上面中央部には、排気部304が設けられる。処理容器301の内部は排気部304から排気される。
加熱処理装置300は、処理容器301の内部に、基板Gを載置して加熱する熱板310を有する。熱板310は、基板Gの光学膜が形成された面を上に向けて、基板Gの下面を支持する。熱板310には、給電により発熱するヒータ311が内蔵されている。
尚、加熱処理装置300の構成は、図6の構成には限定されない。
<膜定着装置>
図7は、一実施形態による膜定着装置を示す断面図である。膜定着装置400は、加熱処理装置300で加熱処理された光学膜を基板Gに定着させる定着液を、基板Gの所定領域に選択的に塗布する。定着液が塗布される領域は、OLEDなどの画素が複数形成される領域(以下、「画素エリア」とも呼ぶ。)であってよい。
膜定着装置400は、処理容器401を有する。処理容器401の側面には基板Gの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられる。
膜定着装置400は、処理容器401の内部に、基板Gを保持するステージ410を有する。ステージ410は、基板Gの定着液を塗布する面を上に向けて、基板Gの下面を吸着保持する。
膜定着装置400は、ステージ410をX軸方向に移動させるステージ移動機構411を有する。ステージ移動機構411は、例えばX軸方向に延伸する一対のレールを有し、レールに沿ってステージ410を移動させる。レールのX軸方向寸法は、基板GのX軸方向寸法の2倍以上であってよい。基板Gは、平面視において重ならない2つの位置C1(図7に実線で示す位置)と位置C2(図7に破線で示す位置)の間を移動する。
膜定着装置400は、ステージ410の上方に、当該ステージ410に保持されている基板Gに定着液を塗布する塗布ノズル420を有する。塗布ノズル420は、例えばインクジェットノズルであり、基板Gの所定領域に定着液を選択的に塗布する。尚、塗布ノズル420は、移動機構(図示せず)によって鉛直方向に移動自在に構成されてよい。
塗布ノズル420から吐出される定着液は、基板Gの所定領域に光学膜を定着させるものであればよい。定着液は、光学膜の末端の官能基(例えばOH基などの水溶性の官能基)を別の官能基に置換すること、縮合反応(例えばOH基などの脱水縮合反応)によって高分子化させることなどにより、後述の洗浄液に対し光学膜を不活性化(不溶化)させてもよい。
尚、膜定着装置400の構成は、図7の構成には限定されない。例えば、膜定着装置400は、マスクを用いて、基板Gの所定領域のみに定着液を塗布してもよい。
<膜除去装置>
図8は、一実施形態による膜除去装置を示す縦断面図である。膜除去装置500は、膜定着装置400で定着液が部分的に塗布された光学膜に対し洗浄液を供給し、光学膜の定着液が塗布されなかった部分を選択的に除去する。
膜除去装置500は、処理容器501を有する。処理容器501の側面には基板Gの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられる。
膜除去装置500は、処理容器501の内部に、基板Gを保持するスピンチャック510を有する。スピンチャック510は、基板Gの洗浄液を供給する面を上に向けて、基板Gの下面を吸着保持する。また、スピンチャック510は、例えばモータなどのチャック駆動部511によって回転する。
膜除去装置500は、スピンチャック510の周囲に、基板Gから飛散又は落下する洗浄液を回収するカップ520を有する。カップ520の下面には、回収した洗浄液を排出する排液管521と、カップ520の内部を排気する排気管522が接続されている。
膜除去装置500は、スピンチャック510の上方に、当該スピンチャック510に保持されている基板Gに洗浄液を供給する洗浄ノズル530を有する。洗浄ノズル530は、移動機構531によって水平方向及び鉛直方向に移動自在に構成される。
洗浄ノズル530から供給される洗浄液は、塗布装置10で塗布される塗布液の溶媒に応じた材料が用いられる。例えば、塗布液の溶媒が水であれば、洗浄液には水が用いられる。また、塗布液の溶媒が有機溶剤であれば、洗浄液には有機溶剤が用いられる。
光学膜の一部は、洗浄液に対し不溶化されているため、洗浄液によって型崩れしない。一方、1光学膜の残部は、洗浄液に対し不溶化されていないため、洗浄液で溶かされ、除去される。
尚、膜除去装置500の構成は、図8には限定されない。洗浄液は洗浄槽に貯えられ、洗浄槽の洗浄液に基板Gを浸漬することで、光学膜の一部を残しつつ、第1光学膜の残部を溶かして除去してもよい。洗浄槽の洗浄液は、撹拌翼などで撹拌されてもよい。
洗浄液と接触するため、洗浄液で溶かされ、除去される。
また、膜除去装置500は、レーザアブレーション法で光学膜の一部を選択的に除去してもよい。さらに、膜除去装置500は、フォトリソグラフィー法およびエッチング法で光学膜の一部を選択的に除去してもよい。
<光学膜形成方法>
次に、上記構成の光学膜形成装置を用いて行われる光学膜形成方法について説明する。図9は、一実施形態による光学膜形成方法を示すフローチャートである。本実施形態では、光学膜として、1/4波長膜と直線偏光膜を、その偏光軸が45度で交差するように基板Gに積層して形成する。
図9のステップS101〜ステップS105では、1/4波長膜を形成する。
先ず、ステップS101では、塗布装置10が基板Gに塗布液P1を塗布する。塗布液P1は、1/4波長膜を形成する液晶分子などの有機材料と、当該有機材料を溶かす溶媒とを含む。
図10は、一実施形態による塗布装置が1/4波長膜用の塗布液を塗布する動作を示す平面図である。図10(a)は、塗布開始時の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図10(b)は、塗布途中の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図10(c)は、塗布終了時の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図11は、図10(b)の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図12は、図10(c)の塗布ノズルと基板を示す側面図である。
図10〜図12に示すように、塗布装置10は、基板Gを位置A1から位置A2に移動させると共に、塗布ノズル30を位置B1から位置B2に移動させる。このとき、基板GのX軸方向の移動速度と塗布ノズル30のY軸方向の移動速度は同じである。そのため、塗布ノズル30から吐出される塗布液P1には、X軸方向およびY軸方向に対し斜め45度の方向にせん断応力が加えられる。また、基板Gの移動速度と塗布ノズル30の移動速度を制御することで、塗布液P1に十分なせん断応力を加えることができる。その結果、塗布液P1中の液晶分子を一方向(斜め45度の方向)に配向させることができる。塗布液P1の液膜が塗布された基板Gは、搬送領域200を介して減圧乾燥装置100に搬入される。
続くステップS102では、減圧乾燥装置100が塗布液P1の液膜を減圧乾燥させて、1/4波長膜P2を形成する。図13は、一実施形態による塗布液の液膜の乾燥により形成された1/4波長膜を示す側面図である。図13において乾燥前の塗布液P1の液膜を破線で示す。
図13に示すように、塗布液P1の液膜から溶媒が除去され、1/4波長膜P2が形成される。これにより、液晶分子の配向が適切に維持される。1/4波長膜P2が形成された基板Gは、加熱処理装置300に搬入される。
尚、上記ステップS102の減圧乾燥の代わりに、自然乾燥や加熱乾燥、風乾燥などを行ってもよい。但し、減圧乾燥は、自然乾燥よりも、処理時間を短縮できる。また、減圧乾燥は、加熱乾燥や風乾燥に比べて、液膜の対流を抑制でき、液晶分子の配向の乱れを抑制できる。
続くステップS103では、加熱処理装置300が基板Gに形成された1/4波長膜P2を加熱処理する。1/4波長膜P2に残留する溶媒が完全に除去される。尚、上記ステップS102の減圧乾燥によって溶媒を完全に除去できる場合には、ステップS103の加熱処理は省略してもよい。
続くステップS104では、膜定着装置400が1/4波長膜P2の一部P3を基板Gに対し定着させる。例えば膜定着装置400は、基板Gの所定領域に定着液Fを選択的に塗布する。定着液Fは、1/4波長膜P2を不活性化(不溶化)する。例えば、定着液Fは、1/4波長膜P2におけるOH基などの水溶性の末端を、別の官能基に置換する。
図14は、一実施形態による一部不溶化された1/4波長膜を示す側面図である。図15は、一実施形態による一部不溶化された1/4波長膜を示す平面図である。図14および図15に示すように、1/4波長膜P2の一部P3は、定着液Fによって不活性化され、基板Gに対し定着される。以下、定着液Fで定着される1/4波長膜P2の一部P3を、「1/4波長膜P3」とも称する。
続くステップS105では、膜除去装置500が1/4波長膜P2の一部P3を残しながら1/4波長膜P2の残部を選択的に除去する。図16は、一実施形態による不溶化されていない部分が除去された1/4波長膜を示す側面図である。図17は、一実施形態による不溶化されていない部分が除去された1/4波長膜を示す平面図である。
図16および図17に示すように、基板Gの画素エリアのみに1/4波長膜P3が形成される。画素エリア以外の領域に1/4波長膜が形成されると、画素エリアの周囲に設けられた端子が適切に機能しないおそれがあるためである。尚、画素エリアの数は、図17では20個であるが、特に限定されない。
上記ステップS101では、せん断応力を加えながら塗布液P1を塗布するため、画素エリアのみに塗布液P1を塗布するのは困難である。従って、上記ステップS104の定着および上記ステップS105の洗浄を行い、画素エリアに選択的に1/4波長膜P3を形成することは有用である。
一方、図9のステップS106〜ステップS110では、直線偏光膜を形成する。
先ず、ステップS106では、塗布装置10が基板Gに塗布液Q1を塗布する。塗布液Q1は、直線偏光膜を形成する液晶分子などの有機材料と、当該有機材料を溶かす溶媒とを含む。塗布液Q1は不溶化された1/4波長膜P3上に塗布されるため、塗布液Q1と1/4波長膜P3とが混ざることは無い。
図18は、一実施形態による塗布装置が直線偏光膜用の塗布液を塗布する動作を示す平面図である。図18(a)は、塗布開始時の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図18(b)は、塗布途中の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図18(c)は、塗布終了時の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図19は、図18(b)の塗布ノズルと基板を示す側面図である。図20は、図18(c)の塗布ノズルと基板を示す側面図である。
図18〜図20に示すように、塗布装置10は、基板Gを位置A1で停止させたまま移動させずに、塗布ノズル30を位置B1から位置B2に移動させる。そのため、塗布ノズル30から吐出される塗布液Q1には、Y軸方向にせん断応力が加えられる。また、塗布ノズル30の移動速度を制御することで、塗布液Q1に十分なせん断応力を加えることができる。その結果、塗布液Q1中の液晶分子を一方向(Y軸方向)に配向させることができる。塗布液Q1の液膜が塗布された基板Gは、搬送領域200を介して減圧乾燥装置100に搬入される。
続くステップS107では、減圧乾燥装置100が塗布液Q1の液膜を減圧乾燥させて、直線偏光膜Q2を形成する。図21は、一実施形態による塗布液の液膜の乾燥により形成された直線偏光膜を示す側面図である。図21において乾燥前の塗布液Q1の状態を破線で示す。
図21に示すように、塗布液Q1の液膜から溶媒が除去され、直線偏光膜Q2が形成される。これにより、液晶分子の配向が適切に維持される。直線偏光膜Q2が形成された基板Gは、加熱処理装置300に搬入される。
尚、上記ステップS107の減圧乾燥の代わりに、自然乾燥や加熱乾燥、風乾燥などを行ってもよい。但し、減圧乾燥は、自然乾燥よりも、処理時間を短縮できる。また、減圧乾燥は、加熱乾燥や風乾燥に比べて、液膜の対流を抑制でき、液晶分子の配向の乱れを抑制できる。
続くステップS108では、加熱処理装置300が基板Gに形成された直線偏光膜Q2を加熱処理する。直線偏光膜Q2に残留する溶媒が完全に除去される。尚、上記ステップS107の減圧乾燥によって溶媒を完全に除去できる場合には、ステップS108の加熱処理は省略してもよい。
続くステップS109では、膜定着装置400が直線偏光膜Q2の一部Q3を基板Gに対し定着させる。例えば、膜定着装置400は、基板Gの所定領域に定着液Fを選択的に塗布する。定着液Fは、直線偏光膜Q2を不活性化(不溶化)する。例えば、定着液Fは、直線偏光膜Q2におけるOH基などの水溶性の末端を、別の官能基に置換する。
図22は、一実施形態による一部不溶化された直線偏光膜を示す側面図である。図23は、一実施形態による一部不溶化された直線偏光膜を示す平面図である。図22および図23に示すように、直線偏光膜Q2の一部Q3は、定着液Fによって不活性化され、基板Gに対し定着される。以下、定着液Fで定着される直線偏光膜Q2の一部Q3を、「直線偏光膜Q3」とも称する。
続くステップS110では、膜除去装置500が直線偏光膜Q2の一部Q3を残しながら直線偏光膜Q2の残部を選択的に除去する。図24は、一実施形態による不溶化されていない部分が除去された直線偏光膜を示す側面図である。図25は、一実施形態による不溶化されていない部分が除去された直線偏光膜を示す平面図である。
図24および図25に示すように、基板Gの画素エリアのみに直線偏光膜Q3が形成される。画素エリア以外の領域に直線偏光膜が形成されると、画素エリアの周囲に設けられた端子が適切に機能しないおそれがあるためである。尚、画素エリアの数は、図25では20個であるが、特に限定されない。
上記ステップS106では、せん断応力を加えながら塗布液Q1を塗布するため、画素エリアのみに塗布液Q1を塗布するのは困難である。従って、上記ステップS109の定着および上記ステップS110の洗浄を行い、画素エリアに選択的に直線偏光膜Q3を形成することは有用である。
本実施形態によれば、図25に示すように、1/4波長膜P3および直線偏光膜Q3で構成される光学部材が、基板G上に間隔をおいて複数形成される。よって、光学部材の多面取りが可能である。また、光学部材は画素エリアに選択的に形成されるため、画素エリアの周囲に設けられた端子が適切に機能できる。
尚、図9〜図25では、基板G上に、1/4波長膜P3および直線偏光膜Q3をこの順で形成するが、その順序は逆でもよい。つまり、基板G上に、直線偏光膜Q3および1/4波長膜P3をこの順で形成してもよい。また、1/4波長膜P3と直線偏光膜Q3との間に中間膜が形成されてもよい。
上記実施形態では、有機ELディスプレイの円偏光膜を形成する場合について説明したが、本発明は他の用途にも適用できる。例えば、例えばLCDの円偏光膜を形成する場合にも、本発明を適用することができる。光学膜は、直線偏光膜や1/4波長膜には限定されず、例えば1/2波長膜などでもよい。
尚、図9に示す全てのステップが行われなくてもよい。例えば、光学膜の定着や洗浄を行うことは、光学膜を基板上に間隔をおいて複数形成する場合には有効であるが、光学膜を基板上に1つのみ形成する場合には省略してもよい。
また、図9に示すステップ以外のステップが行われてもよい。例えば、光学膜の形成の前に、基板に対する光学膜の密着性を改善するため、基板の光学膜が形成される面を表面改質する工程が行われてもよい。表面改質膜として、シランカップリング剤などの有機膜、または窒化珪素などの無機膜が形成されてよい。
<塗布装置の塗布液の調製>
図26は、一実施形態による塗布装置、原料液ボトル、および溶媒液ボトルを示す図である。尚、図26に図示される制御部50の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUにて実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
図26に示すように、塗布装置10は、基板G上に塗布液6を塗布する塗布ノズル30を有する。塗布液6は、互いに異なる色素を含む複数の原料液、および各原料液に含まれる固形分を溶かす溶媒液を、予め設定した混合比で混合したものである。尚、溶媒液を除く複数の原料液の混合比を、以下、原料液混合比と呼んで区別する。
塗布装置10は、複数の原料液ボトル2および溶媒液ボトル4が接続される複数のボトル接続部70を有する。複数の原料液ボトル2および溶媒液ボトル4は、互いに異なるボトル接続部70に取外し可能に接続され、交換可能とされる。
複数の原料液ボトル2は、互いに異なる色素を含む複数の原料液を別々に収容する。各原料液は、色素と、液晶分子と、溶媒とを含む。色素と液晶分子が固形分であり、溶媒は固形分を溶かすものである。溶媒としては、例えば水などが用いられる。
色素は、複数の原料液で異なるものである。各色素は、特定の色の光を吸収し、その余色の光を透過する。複数の色素の濃度に応じて、塗布液6の透過色が変化する。そのため、原料液混合比を変更することで、塗布液6の色合いを変更できる。
液晶分子は、本実施形態では複数の原料液で同じ共通のものであるが、複数の原料液で異なるものであってもよい。色素ごとに色素と液晶分子の相溶性が異なるため、各原料液の固形分濃度は異なってよい。
溶媒は、本実施形態では複数の原料液で同じ共通のものであるが、複数の原料液で異なるものであってもよい。溶媒は、溶媒と共に原料液ボトル2に収容される固形分を溶かすものであり、好ましくは、他の原料液ボトル2に収容される固形分も溶かすものである。
溶媒液ボトル4は、複数の原料液に含まれる固形分を溶かす溶媒液を収容する。溶媒液は、本実施形態では各原料液の溶媒と同じ共通のものであるが、各原料液の溶媒とは異なるものであってもよい。溶媒液は、複数の原料液に含まれる固形分を溶かすものであればよい。溶媒液としては、例えば水などが用いられる。
溶媒液は、塗布液6の固形分濃度を下げるために、塗布液6に含有される。原料液混合比を一定に維持することで塗布液6の色合いを維持しながら、溶媒液の含有量を変更することで塗布液6の色の濃さを変更できる。
次に、塗布液6の色合いや色の濃さの調整について説明する。塗布液6の具体例としては、1/4波長膜用の塗布液P1、直線偏光膜用の塗布液Q1などが挙げられる。尚、以下の説明において、nは、塗布装置10に接続されている原料液ボトル2の数であって、2以上の自然数である。
各原料液ボトル2には、原料液Li(iは1以上n以下の自然数)の特性を表す原料液特性情報が記録されてよい。原料液特性情報は、原料液Liに含まれる色素が吸収する光の波長λi、波長λiの光が原料液Liを透過する割合を示す透過率Ti、原料液Liに含まれる固形分の濃度Siなどの情報を含む。
原料液特性情報は、透過率Tiに代えて、または透過率Tiに加えて、吸光度を含んでもよい。吸光度は、透過率の逆数の常用対数である。透過率Tiは0以上、1以下であり、吸光度は0以上1以下である。尚、透過率Tiは、百分率で管理されてもよい。
透過率Tiや吸光度は、原料液Liに含まれる色素の濃度を表す。透過率Tiが小さいほど、色素の濃度は大きい。また、吸光度が大きいほど、色素の濃度は大きい。透過率Tiや吸光度を測定する光の波長λiは、例えば色素の吸光度が最大となる波長であって、色素ごとに設定される。
原料液特性情報は、例えば各原料液ボトル2に貼り付けられるラベルなどに印刷され、バーコードなどの1次元コードやQRコード(登録商標)などの2次元コードなどの形態で印刷されてよい。
制御部50は、各原料液ボトル2に記録された原料液特性情報を読み取る原料液特性情報読取部61を有する。原料液特性情報読取部61は、1次元コードリーダや2次元コードリーダなどを用いて原料液特性情報を読み取り、記憶媒体52に記憶する。これにより、原料液特性情報を簡単かつ正確に更新できる。
尚、本実施形態では、各原料液ボトル2に原料液特性情報が記録されているが、記録されていなくてもよい。この場合、原料液特性情報は、キーボードなどで入力され、記憶媒体52に記憶される。
図27は、一実施形態による記憶媒体に記憶されるn個の原料液特性情報と原料液混合比とを示す表である。原料液混合比Vi(iは1以上n以下の自然数である)は、体積比であって、0以上1以下である。原料液混合比Viの総和(V1+V2+・・・+Vn)は、1である。尚、原料液混合比Viは、百分率で表されてもよい。
原料液混合比Viは、塗布液6の色合いが、予め設定された色合いになるように定められる。例えば、予め設定された色合いが赤色に近いほど、赤色色素を含む原料液の混合比が大きく設定される。また、予め設定された色合いが青色に近いほど、青色色素を含む原料液の混合比が大きく設定される。さらに、予め設定された色合いが緑色に近いほど、緑色色素を含む原料液の混合比が大きく設定される。尚、塗布液6の色合いと原料液混合比Viとの関係は、予め試験などで求められ、記憶媒体52に記憶される。
図28は、一実施形態による塗布液の液膜の色の設定に用いられる設定画面を示す図である。設定画面80は、例えば色度図81における液膜の色度座標を点82で表示する。色度図81は、図28ではCIE(1931)XYZ表色系のxy色度図であるが、その他の表色系の色度図であってもよい。
ユーザは、設定画面80を見ながら、色度図81における点82の位置を変更する入力操作を行い、液膜の色合いや色の濃さを設定する。入力操作には、タッチパネルやキーボードなどの入力装置が用いられる。
色度図81における点82の位置は、制限された範囲内で変更可能とされてもよい。つまり、液膜の色合いや色の濃さは、制限された範囲内で変更可能とされてよい。ユーザによる不適当な入力操作を禁止できる。
尚、本実施形態の設定画面80は、色度図81における液膜の色度座標を点82で表示するが、カラーパレットにおける液膜の色合いや色の濃さを表示してもよい。
図29は、一実施形態による塗布液を塗布して形成される液膜の膜厚と透過率と固形分濃度との関係を示す図である。図29において、実線は膜厚tがt1である場合の透過率と固形分濃度との関係を示し、二点鎖線は膜厚tがt2(t2<t1)である場合の透過率と固形分濃度との関係を示す。
図29に示すように、液膜の膜厚tが一定である場合、液膜の固形分濃度が低いほど、液膜の透過率が大きくなり、液膜の色の濃さが薄くなる。また、液膜の固形分濃度が一定である場合、液膜の膜厚tが薄いほど、液膜の透過率が大きくなり、液膜の色の濃さが薄くなる。
塗布液6の液膜の透過率をx(x>0)倍にすることは、例えば、液膜の固定分濃度を維持しながら液膜の膜厚tを1/x倍にすること、または液膜の膜厚tを維持しながら液膜の固形分濃度をx倍にすることで実現可能である。
ところで、塗布液6の固形分濃度の上限値は、複数の原料液Liを原料液混合比Viで混ぜた原料混合液(以下、単に「原料混合液」とも呼ぶ。)の固形分濃度Sである。その原料混合液の固形分濃度Sは、原料液混合比Viなどで決まり、下記式(1)から求められる。
塗布液6の固形分濃度には上限値があるため、塗布液6の液膜の色の濃さを濃くする場合、つまり、液膜の透過率を小さくする場合、液膜の膜厚tを大きくしてよい。
一方、塗布液6の液膜の色の濃さを薄くする場合、つまり、液膜の透過率を大きくする場合、液膜の膜厚tを小さくすればよい。但し、液膜の膜厚tが小さすぎると、液膜の形成が難しくなる。そのため、液膜の膜厚tには下限値が設定されてもよい。
塗布液6の液膜の透過率を閾値(膜厚tの下限値に対応する値)よりも大きくする場合、液膜の膜厚tを小さくする代わりに、液膜の固形分濃度を低くする。具体的には原料混合液に溶媒液を添加する。
塗布液6の固形分濃度を原料混合液の固形分濃度のx(0<x<1)倍に希釈する場合、溶媒液の体積は原料混合液の体積の(1−x)/x倍とされる。
尚、xは、0よりも大きい数であればよく、例えば1であってもよい。xが1であることは、原料混合液を溶媒液で希釈しないことを意味し、塗布液6に占める溶媒液の含有量がゼロであることを意味する。
制御部50は、互いに異なる色素を含む複数の原料液Li、および各原料液Liに含まれる固形分を溶かす溶媒液の混合比を設定する混合比設定部62を有する。複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比は、例えば、原料液混合比Viおよび固形分濃度希釈倍率xで表される。
混合比設定部62は、設定画面80で設定された色合いになるように原料液混合比Viを設定する。また、混合比設定部62は、設定画面80で設定された色の濃さになるように固形分濃度希釈倍率xを設定する。
尚、詳しくは後述するが、原料液混合比Viおよび固形分濃度希釈倍率xは補正されるため、これらの初期値としては適当な値が設定されてもよい。
制御部50は、複数の原料液Liおよび溶媒液を予め設定された混合比で混合した塗布液6を、基板Gに塗布する塗布制御部63を有する。ボトル接続部70と塗布ノズル30とを接続する配管71の途中には、ボトル接続部70から塗布ノズル30に液体を送るポンプ72が設けられる。ポンプ72はボトル接続部70ごとに設けられる。塗布制御部63は、各ポンプ72による輸送量を制御することで、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比を制御したり、塗布液6の液膜の膜厚を制御する。
制御部50は、塗布液6の光学特性を測定する塗布液特性測定部64を有する。塗布液特性測定部64は、塗布液6の光学特性として、各色素の濃度を表す透過率と、固形分濃度を表す屈折率とを測定する。これにより、塗布液6の色合いや色の濃さと、予め設定された色合いや色の濃さとの比較が可能になり、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比(例えばViおよびx)の補正が可能になる。
塗布液特性測定部64は、塗布液6に含まれる各色素に特有の波長λiで、塗布液6の透過率を測定する。波長λiは、例えば各色素の吸光度が最大となる最大吸収波長である。波長λiでの透過率が小さいほど、最大吸収波長が波長λiである色素の濃度が高い。
塗布液特性測定部64は、複数の波長λiで、塗布液6の透過率を測定する。その測定には、例えば配管71の途中に設けられる透過率計73が用いられる。透過率計73としては、一般的なものが用いられ、例えば複数の波長λiでの透過率を測定できる分光透過率計が用いられる。
尚、塗布液特性測定部64は、波長λiでの塗布液6の透過率に代えて、または波長λiでの塗布液6の透過率に加えて、波長λiでの塗布液6の吸光度を測定してもよい。吸光度は、透過率の逆数の常用対数である。透過率は0以上、1以下であり、吸光度は0以上1以下である。尚、透過率は、百分率で管理されてもよい。
塗布液特性測定部64は、所定の波長(例えばナトリウムのD線の波長)で、塗布液6の屈折率を測定する。塗布液6の屈折率が大きいほど、塗布液6の固形分の濃度が高い。屈折率の測定には、例えば配管71の途中に設けられる屈折率計74が用いられる。屈折率計74としては、一般的なものが用いられる。
塗布液特性測定部64は、塗布液6の温度変化による測定値の誤差を低減するため、塗布液6の温度を調節する機能を有してもよい。例えば、塗布液特性測定部64は、配管71に取付けられる温調器を制御することで、塗布液6の温度を設定値に維持する。温調器としては、ヒータやクーラーなどが用いられる。
塗布液特性測定部64は、外乱(塗布液6の温度変化を含む)による測定値の誤差を低減するため、基準となる材料の測定値との相対値を測定してもよい。
尚、本実施形態の塗布液特性測定部64は、基板Gに塗布される前の塗布液6の光学特性を測定するが、基板Gに塗布された後の塗布液6の液膜の光学特性を測定してもよい。
制御部50は、塗布液特性測定部64で測定される塗布液6の光学特性の測定値と、塗布液6の光学特性の設定値との偏差を算出する偏差算出部65を有する。これにより、塗布液6の色合いや色の濃さと、予め設定された色合いや色の濃さとのずれを定量的に評価でき、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比(例えばViおよびx)の補正が可能になる。
波長λiでの塗布液6の透過率の設定値、および所定波長での塗布液6の屈折率の設定値は、設定画面80で設定された塗布液6の色合いや色の濃さに基づき設定される。例えば、塗布液6の色合いが赤色に近いほど、赤色色素の最大吸収波長での塗布液6の透過率が小さく設定される。また、塗布液6の色合いが青色に近いほど、青色色素の最大吸収波長での塗布液6の透過率が小さく設定される。さらに、塗布液6の色合いが緑色に近いほど、緑色色素の最大吸収波長での塗布液6の透過率が小さく設定される。さらにまた、塗布液6の色の濃さが濃いほど、塗布液6の所定波長での屈折率が大きく設定される。塗布液6の色合いや色の濃さと、塗布液6の各波長λiでの透過率や塗布液6の所定波長での屈折率との関係は、予め試験などで求められ、記憶媒体52に記憶される。
混合比設定部62は、制御部50は、偏差算出部65により算出される偏差に基づき、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比を補正する。混合比設定部62は、偏差算出部65により算出される偏差が小さくなるように、原料液混合比Viおよび固形分濃度希釈倍率xを補正する。原料液混合比Viを補正することで、塗布液6の色合いを補正できる。また、固形分濃度希釈倍率xを補正することで、塗布液6の色の濃さを補正できる。
混合比設定部62による混合比(例えばViおよびx)の補正と、塗布制御部63による塗布液6の塗布と、塗布液特性測定部64による塗布液6の光学特性の測定と、偏差算出部65による偏差の算出とは、偏差算出部65によって算出される偏差が許容範囲に収まるまで、繰り返し行われてもよい。塗布液6の色合いや色の濃さと、設定画面80で設定された色合いや色の濃さとのずれを、許容範囲に収めることができる。
混合比設定部62は、過去の混合比と現在の混合比との変化によって生じる、偏差算出部65で算出される偏差の変化に基づき、次回の混合比を設定する。偏差に与える混合比の影響が分かるので、偏差が許容範囲に収まるまでの繰り返し回数を低減できる。
制御部50は、各原料液Liの光学特性を測定する原料液特性測定部66をさらに有する。原料液特性測定部66は、各原料液Liの光学特性として、色素の濃度を表す透過率と、固形分濃度を表す屈折率とを測定する。これにより、記憶媒体52に既に記憶されている原料液特性情報の正確性を確認することができ、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比(例えばViおよびx)の設定に役立てることができる。
原料液特性測定部66は、各原料液Liに含まれる色素に特有の波長λiで、各原料液Liの透過率Tiを測定する。波長λiは、例えば各色素の吸光度が最大となる最大吸収波長である。波長λiでの透過率Tiが小さいほど、最大吸収波長が波長λiである色素の濃度が高い。
原料液特性測定部66は、波長λiでの原料液Liの透過率Tiを測定する。その測定には、例えば配管71の途中に設けられる透過率計75が用いられる。透過率計75は、原料液ボトル2ごとに設けられる。透過率計75としては、一般的なものが用いられる。
尚、原料液特性測定部66は、透過率Tiに代えて、または透過率Tiに加えて、吸光度を測定してもよい。吸光度は、透過率Tiの逆数の常用対数である。透過率Tiは0以上、1以下であり、吸光度は0以上1以下である。尚、透過率Tiは、百分率で管理されてもよい。
原料液特性測定部66は、所定の波長(例えばナトリウムのD線の波長)で、原料液Liの屈折率を測定する。原料液Liの屈折率が大きいほど、原料液Liの固形分の濃度が高い。屈折率の測定には、例えば配管71の途中に設けられる屈折率計76が用いられる。屈折率計76は、原料液ボトル2ごとに設けられる。屈折率計76としては、一般的なものが用いられる。
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態によれば、塗布液特性測定部64は、塗布液6の光学特性として、各色素の濃度を表す吸光度および透過率の少なくとも1つと、固形分濃度を表す屈折率とを測定する。これにより、塗布液6の色合いや色の濃さと、予め設定された色合いや色の濃さとの比較が可能になり、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比の補正が可能になる。よって、塗布液6の色合いや色の濃さの調整が可能になる。尚、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比は、例えば、原料液混合比Viおよび固形分濃度希釈倍率xで表される。
本実施形態によれば、偏差算出部65は、塗布液特性測定部64で測定される塗布液6の光学特性の測定値と、塗布液6の光学特性の設定値との偏差を算出する。これにより、塗布液6の色合いや色の濃さと、予め設定された色合いや色の濃さとのずれを定量的に評価でき、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比(例えばViおよびx)の補正が可能になる。よって、塗布液6の色合いや色の濃さの調整が可能になる。
本実施形態によれば、混合比設定部62は、偏差算出部65で算出される偏差に基づき、複数の原料液および溶媒液の混合比を補正する。混合比設定部62は、偏差算出部65により算出される偏差が小さくなるように、原料液混合比Viおよび固形分濃度希釈倍率xを補正する。原料液混合比Viを補正することで、塗布液6の色合いを補正できる。また、固形分濃度希釈倍率xを補正することで、塗布液6の色の濃さを補正できる。
混合比設定部62による混合比(例えばViおよびx)の補正と、塗布制御部63による塗布液6の塗布と、塗布液特性測定部64による塗布液6の光学特性の測定と、偏差算出部65による偏差の算出とは、偏差算出部65によって算出される偏差が許容範囲に収まるまで、繰り返し行われてもよい。塗布液6の色合いや色の濃さと、設定画面80で設定された色合いや色の濃さとのずれを、許容範囲に収めることができる。
本実施形態によれば、混合比設定部62は、過去の混合比と現在の混合比との変化によって生じる、偏差算出部65で算出される偏差の変化に基づき、次回の混合比を設定する。偏差に与える混合比の影響が分かるので、偏差が許容範囲に収まるまでの繰り返し回数を低減できる。
本実施形態によれば、原料液特性測定部66は、各原料液の光学特性として、色素の濃度を表す吸光度および透過率の少なくとも1つと、固形分濃度を表す屈折率とを測定する。これにより、記憶媒体52に既に記憶されている原料液特性情報の正確性を確認することができ、複数の原料液Liおよび溶媒液の混合比(例えばViおよびx)の設定に役立てることができる。
<変形、改良>
以上、塗布装置や塗布方法などの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。