(実施形態)
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、実施形態にかかる塗布装置1の概略図である。図2は、実施形態にかかる塗布対象物10(塗布装置1に供給される塗布対象物10)の拡大断面図である。
本実施形態の塗布対象物10は、図1及び図2に示すように、第1面11b及び第2面11cを有する帯状の基材11と、基材11の第1面11b上に基材11の長さ方向LD(図2においてに左右方向)に間隙を空けて塗布された長さ方向LDに延びる複数の塗膜13とを有する。
なお、図2では、塗布対象物10のうち、1つの塗膜13が塗布されている部分を拡大して示している。また、図1に示すように、本実施形態の塗布対象物10では、基材11の第1面11b上に形成されている複数の塗膜13の長さ(長さ方向LDにかかる寸法)は、一定とされておらず、複数種類の異なる長さとされている。また、塗布対象物10の塗膜13は、基材11の第1面11b上に塗布した塗料12の膜を乾燥させたものである。
本実施形態では、塗料12として、全固体電池の電極材料である電極活物質と、溶媒と、を含む電極活物質ペースト、を用いている。また、基材11として、集電箔(金属箔)を用いている。従って、塗布対象物10の塗膜13は、電極活物質層であり、後述する塗膜15も、電極活物質層となる。
本実施形態の塗布装置1は、上述した塗布対象物10のうち基材11の第2面11c上に、第1面11b上の塗膜13と同様に、基材11の長さ方向LDに間隙を空けて、塗料12を膜状に塗布するための装置である。この塗布装置1は、図1に示すように、搬送装置20と、塗布部30と、第1センサ41と、第2センサ42と、制御装置50とを備える。
このうち、搬送装置20は、図1に示すように、バックアップロール21と、ガイドロール22,23とを有する。この搬送装置20は、図示しない駆動モータによってバックアップロール21がその中心軸周りに回転することで、塗布対象物10を搬送方向CDに、一定の搬送速度で搬送する。より具体的には、ガイドロール22、23によって塗布対象物10を支持しつつ、バックアップロール21の外周面に沿うようにして、塗布対象物10を搬送方向CDに搬送する。
なお、搬送方向CDは、塗布対象物10の長さ方向LDに一致している。また、塗布対象物10は、バックアップロール21の外周面に沿って搬送方向CDに移動する際に、基材11の第2面11cが径方向外側を向くようにして(すなわち、基材11の第1面11bがバックアップロール21の外周面に対向するようにして)、搬送装置20によって搬送される。この搬送装置20は、塗布対象物10が搬送される搬送ライン25を構成している(図1参照)。
また、塗布部30は、図1に示すように、ダイ31と、塗料12を収容するタンク32と、ダイ31とタンク32との間を連結してタンク32からダイ31へ塗料12を供給する塗料供給管33と、塗料供給管33の中間部(ダイ31とタンク32との間)に設けられたバルブ34とを有する。この塗布部30は、搬送装置20によって搬送方向CDに搬送される塗布対象物10のうち基材11の第2面11cに対し、搬送ライン25上の塗布位置PAにおいて塗料12を塗布する。より具体的には、塗膜13と同様に、基材11の長さ方向LDに間隙を空けつつ、基材11の第2面11c上に、断続的に塗料12を塗布する。
詳細には、バルブ34を開くと、ダイ31の吐出口31bから塗料12が吐出すると共に、タンク32からダイ31へ塗料12が連続的に供給される。なお、ダイ31の吐出口31bは、塗布位置PAに配置されている。従って、バルブ34を開くことにより、搬送方向CDに搬送されている塗布対象物10のうち基材11の第2面11cに対し、塗布位置PAにおいて塗料12を塗布することができる。一方、バルブ34を閉じると、ダイ31の吐出口31bからの塗料12の吐出が停止すると共に、タンク32からダイ31への塗料12の供給も停止する。従って、バルブ34を閉じることにより、基材11の第2面11cに対する塗料12の塗布を停止することができる。なお、バルブ34は、ケーブル53を通じて、制御装置50に接続している。
第1センサ41は、搬送ライン25上の第1検出位置P1において、搬送装置20によって搬送方向CDに搬送される塗布対象物10のうち基材11の第1面11b上の塗膜13の厚みを、一定時間毎(例えば、50ミリ秒毎)に検出する。なお、第1検出位置P1は、図1に示すように、搬送方向CDについて塗布位置PAよりも上流側(搬送ライン25の上流側)に位置している。従って、第1センサ41は、搬送装置20によって搬送されている塗布対象物10が第1検出位置P1を通過してゆくとき、一定時間毎に、第1検出位置P1における第1面11b上の塗膜13の厚みを検出する。なお、第1センサ41は、ケーブル51を通じて、制御装置50に接続している。この第1センサ41としては、例えば、レーザ変位計を用いることができる。
第2センサ42は、搬送ライン25上の第2検出位置P2において、搬送装置20によって搬送方向CDに搬送される塗布対象物10のうち基材11の第1面11b上の塗膜13の厚みを、一定時間毎(例えば、50ミリ秒毎)に検出する。なお、第2検出位置P2は、図1に示すように、搬送方向CDについて塗布位置PAよりも上流側(搬送ライン25の上流側)であって第1検出位置P1よりも下流側(搬送ライン25の下流側)に位置している。従って、第2センサ42は、搬送装置20によって搬送されている塗布対象物10が第2検出位置P2を通過してゆくとき、一定時間毎に、第2検出位置P2における第1面11b上の塗膜13の厚みを検出する。なお、第2センサ42は、ケーブル52を通じて、制御装置50に接続している。この第2センサ42としては、例えば、レーザ変位計を用いることができる。
制御装置50は、図示しないCPU等を有し、第1センサ41によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値(検出値)に基づいて、長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ各々の塗膜13について、塗膜13の下流側端部13b(塗膜13の長さ方向LDにかかる2つの端部のうち搬送方向CDの下流側に位置する端部。換言すれば、搬送方向CDについて前方の端部である前方端部。図1及び図2参照)が、第1検出位置P1に到達したか否かを判定する。
本実施形態では、塗膜13の下流側端部13bを検出するために、下流側端部13bの厚み寸法にかかる閾値(第1閾値Th1とする)を予め設定しておき、第1閾値Th1(図2参照)の値を制御装置50に記憶させている。さらに、制御装置50には、第1センサ41によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が、ケーブル51を通じて入力される。
なお、図2に示すように、塗膜13の下流側端部13bは、搬送方向CDの下流側(図2において右側)に向かうにしたがって厚みが減少してゆく形状を有している。換言すれば、塗膜13の下流側端部13bは、搬送方向CDの上流側(図2において左側)に向かうにしたがって厚みが増加してゆく形状を有している。従って、本実施形態では、制御装置50は、第1センサ41によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が、0から正の値に変化し(その後、厚みの値が増加してゆき)、その後、第1閾値Th1以上の値になったとき、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達したと判定する。
さらに、制御装置50は、第2センサ42によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値に基づいて、長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ各々の塗膜13について、塗膜13の上流側端部13c(塗膜13の長さ方向LDにかかる2つの端部のうち搬送方向CDの上流側に位置する端部。換言すれば、搬送方向CDについて後方の端部である後方端部。図1及び図2参照)が、第2検出位置P2に到達したか否かを判定する。
本実施形態では、塗膜13の上流側端部13cを検出するために、上流側端部13cの厚み寸法にかかる閾値(第2閾値Th2とする)を予め設定しておき、第2閾値Th2(図2参照)の値を制御装置50に記憶させている。さらに、制御装置50には、第2センサ42によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が、ケーブル52を通じて入力される。
なお、図2に示すように、塗膜13の上流側端部13cは、搬送方向CDの下側(図2において右側)に向かうにしたがって厚みが増加してゆく形状を有している。換言すれば、塗膜13の上流側端部13cは、搬送方向CDの上流側(図2において左側)に向かうにしたがって厚みが減少してゆく形状を有している。従って、本実施形態では、制御装置50は、第2センサ42によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が、一定時間毎に減少(正の値を維持したまま減少)してゆき、その後、第2閾値Th2以下となったとき、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したと判定する。
また、図2に示すように、本実施形態の塗布対象物10では、塗膜13の下流側端部13bと上流側端部13cとの形状が異なる(長さ方向LDについて両者が対称な形状ではなく、表面の勾配が異なる)という特徴を有している。このため、本実施形態では、塗膜13の下流側端部13bと上流側端部13cとを1つのセンサで検出するのではなく、下流側端部13b用の第1センサ41と上流側端部13c用の第2センサ42とを別個に設けて、2つのセンサによって検出するようにしている。そして、下流側端部13bを検出するための閾値(第1閾値Th1)と、上流側端部13cを検出するための閾値(第2閾値Th2)とを、別個に設定している。このようにすることで、下流側端部13bと上流側端部13cとを精度良く検出することが可能となる。
さらに、制御装置50は、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から起算して、当該下流側端部13bが塗布位置PAに到達するまでに要する第1時間t1が経過したか否かを判定する。そして、第1時間t1が経過したと判定した時、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始させる。具体的には、第1時間t1が経過したと判定した時、塗布部30のバルブ34を開放して、ダイ31の吐出口31bから塗料12を吐出させる。このようにすることで、基材11の第1面11b上に形成されている塗膜13の下流側端部13bが、塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始することができる。
なお、第1時間t1は、搬送装置20による第1検出位置P1から塗布位置PAまでの塗布対象物10の搬送距離(第1検出位置P1から塗布位置PAまでの搬送ライン25の長さ)と、搬送装置20による塗布対象物10の搬送速度とに基づいて、予め算出しており、当該算出した第1時間t1を制御装置50に記憶させてある。
このような処理を、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成されている各々の塗膜13について行うことで、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15(基材11の厚み方向について第1面11b上の塗膜13と対向するように形成された塗膜15)との間で、長さ方向LDにかかる下流側端部13b,15bの位置ずれを小さくする(長さ方向LDについて下流側端部13b,15bの位置を同等または近接させる)ことができる(図1及び図5参照)。すなわち、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDにかかる一方端部(図5において右端部)の位置ずれを小さくする(長さ方向LDにかかる一方端部の位置を同等または近接させる)ことができる。
ところで、従来(特許文献1)の塗布装置では、第1センサによって基材の第1面上の塗膜の先端部(下流側端部)が検出された時から起算して、当該塗膜の先端部が塗布位置に到達するまでに要する第1時間が経過したと判定した時に、塗布部による第2面への塗料の塗布を開始させ、その後、予め設定した一定の長さの塗料が第2面に塗布された時、塗布部による塗料の塗布を停止させる。従来(特許文献1)の塗布装置では、このような処理を、基材の第1面上に基材の長さ方向に間隙を空けて形成されている各々の塗膜について行うことで、第1面上と同等に、基材の第2面上に基材の長さ方向に間隙を空けて塗料を膜状に塗布するようにしている。
ところが、本実施形態のように、基材の第1面上に基材の長さ方向に間隙を空けて形成されている複数の塗膜の長さが一定でなく、大きく異なっている場合には、従来(特許文献1)のように、塗布部によって第2面に塗料の塗布を開始した後、予め設定した一定の長さの塗料が第2面に塗布された時に塗料の塗布を停止させる方法では、基材の第1面上の塗膜の長さと第2面上の塗膜の長さとが、大きく異なってしまうことなる。
より具体的には、塗布部による塗料の塗布を停止させる場合に、基材の第1面上の塗膜の後端部(上流側端部)を検出することなく、全ての塗膜について、一律に、予め設定した一定の長さ(長さ方向にかかる寸法)の塗料が第2面に塗布された時に塗布を停止するようにしているので、基材の第1面上に基材の長さ方向に間隙を空けて形成した各々の塗膜と、基材の第2面上に基材の長さ方向に間隙を空けて形成した各々の塗膜との間で、上流側端部(後端部)の位置が大きくずれることがあった。その結果、従来(特許文献1)の方法では、基材の第1面上に形成した各々の塗膜と第2面上に形成した各々の塗膜との間で、塗膜の長さ(長さ方向の寸法)の差が大きくなることがあった。
これに対し、本実施形態では、制御装置50が、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から起算して、当該上流側端部13cが塗布位置PAに到達するまでに要する第2時間t2が経過したか否かを判定する。そして、第2時間t2が経過したと判定した時、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止させる。具体的には、第2時間t2が経過したと判定した時、塗布部30のバルブ34を閉塞して、ダイ31の吐出口31bからの塗料12の吐出を停止させる。このようにすることで、基材11の第1面11b上に形成されている塗膜13の上流側端部13cが、塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止することができる。
なお、第2時間t2は、搬送装置20による第2検出位置P2から塗布位置PAまでの塗布対象物10の搬送距離(第2検出位置P2から塗布位置PAまでの搬送ライン25の長さ)と、搬送装置20による塗布対象物10の搬送速度とに基づいて、予め算出しており、当該算出した第2時間t2を制御装置50に記憶させてある。
このような処理を、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成されている各々の塗膜13について行うことで、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成されている複数の塗膜13の長さが一定でなく、大きく異なっている場合でも、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15と(基材11の厚み方向について第1面11b上の塗膜13と対向するように形成された塗膜15)の間で、長さ方向LDにかかる上流側端部13c,15cの位置ずれを小さくする(長さ方向LDについて上流側端部13c,15cの位置を同等または近接させる)ことができる(図1及び図5参照)。すなわち、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDにかかる他方端部(図5において左端部)の位置ずれを小さくする(長さ方向LDにかかる他方端部の位置を同等または近接させる)ことができる。
上述したように、本実施形態の塗布装置1では、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15(基材11の厚み方向について第1面11b上の塗膜13と対向するように形成された塗膜15)との間で、長さ方向LDについて下流側端部13b,15bの位置ずれを小さくすることができ、且つ、長さ方向LDについて上流側端部13c,15cの位置ずれも小さくすることができるので、基材11の第1面11b上に形成した各々の塗膜13と第2面11c上に形成した各々の塗膜15との間で、塗膜長さ(長さ方向LDの寸法)の差も小さくすることができる。
ところで、図2では、基材11の第1面11b上に塗料12を塗布した直後の塗膜13の端部(下流側端部13bと上流側端部13c)の外形線を二点鎖線で示しており、乾燥させた後の塗膜13(すなわち、塗布装置1に供給される塗布対象物10の塗膜13)の端部(下流側端部13bと上流側端部13c)の外形線を実線で示している。図2に示すように、塗膜13の下流側端部13bと上流側端部13cは、基材11の第1面11b上に塗膜13(膜状の塗料12)が塗布された後、基材11の第1面11b上において濡れ拡がってゆき、塗布した直後に比べて、長さ方向LDに拡大している。このことは、基材11の第2面11c上に塗料12を塗布して形成する塗膜15についても同様となる。
具体的には、基材11の第2面11c上に塗料12を塗布して塗膜15を形成した直後の塗膜15の端部(下流側端部15bと上流側端部15c)の外形は、図4に実線で示すような形状となる。しかしながら、塗膜15の下流側端部15bと上流側端部15cは、基材11の第2面11c上に塗膜15(膜状の塗料12)が塗布された後、基材11の第2面11c上において濡れ拡がってゆき、塗布した直後に比べて長さ方向LDに拡大して、図4に二点鎖線で示すような形状となる。なお、図4には、基材11の第1面11b上に塗膜13を形成した直後の塗膜13の端部(下流側端部13bと上流側端部13c)の外形を二点鎖線で示し、乾燥させた後の塗膜13(すなわち、塗布装置1に供給される塗布対象物10の塗膜13)の端部(下流側端部13bと上流側端部13c)の外形を実線で示している。
このため、仮に、塗膜13の下流側端部13bのうち最も下流側(図4において右端)に位置する下流端13b1が塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始するようにした場合には、その後、基材11の第2面11c上において塗料12が濡れ拡がってゆき、塗布した直後に比べて、塗膜15の下流側端部15bが長さ方向LDに拡大することによって、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDについて下流側端部13b,15bの位置ずれが発生する。
同様に、仮に、塗膜13の上流側端部13cのうち最も上流側(図4において左端)に位置する上流端13c1が塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止するようにした場合には、その後、基材11の第2面11c上において塗料12が濡れ拡がってゆき、塗布した直後に比べて、塗膜15の上流側端部15cが長さ方向LDに拡大することによって、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDについて上流側端部13c,15cの位置ずれが発生する。
これに対し、本実施形態では、「基材11の第2面11c上に塗料12を塗布した後、基材11の第2面11c上において塗料12が濡れ拡がってゆき、塗布した直後に比べて、塗膜15の上流側端部15c及び下流側端部15bが長さ方向LDに拡大する」ことを考慮して、最終的に(塗膜15が濡れ拡がって乾燥した後に)、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDについて、下流側端部13b,15bの位置と上流側端部13c,15cの位置が略同等になるように、第1閾値Th1と第2閾値Th2を設定している。
具体的には、基材11の第1面11b上に塗料12を塗布して塗膜13を形成した直後の塗膜13の下流側端部13b(図4において二点鎖線で示す)の端面13b2の厚みを予め把握しておき、この厚みを第1閾値Th1に設定している。そして、塗布装置1において、第1センサ41によって検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が第1閾値Th1以上の値になったとき、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達したと判定するようにしている。さらに、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から起算して、当該下流側端部13bが塗布位置PAに到達するまでに要する第1時間t1が経過したと判定した時、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始させるようにしている。
従って、本実施形態では、基材11の第1面11b上に塗料12を塗布して塗膜13を形成した直後に塗膜13の下流側端部13b(図4において二点鎖線で示す)の端面を成していたと推定される端面13b2(仮想端面)が塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始することができる。これにより、図5に示すように、最終的に(塗膜15が濡れ拡がって乾燥した後に)、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDについて、下流側端部13b,15bの位置を同等にすることができる。
なお、図5は、乾燥した塗膜13,15を有する塗布物60の拡大断面図である。塗布物60は、基材11と、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて塗布された長さ方向LDに延びる複数の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて塗布された長さ方向LDに延びる複数の塗膜15とを有する。図5に示す塗布物60は、塗布装置1によって、塗布対象物10のうち基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて複数の塗膜15を塗布した後、図示しない乾燥装置によって塗膜15を乾燥させたものである。
本実施形態では、塗布装置1によって塗膜15を塗工した後、乾燥させて、長さ方向LDに間隙を空けて形成された複数の塗膜13,15を有する塗布物60を製造する。その後、この塗布物60を、長さ方向LDについて塗膜13,15が形成されていない各々の部位(基材11のみからなる部位)の所定位置(例えば、搬送方向CDの上流側端部)で切断することで、複数の電極板が作製される。
さらに、本実施形態では、基材11の第1面11b上に塗料12を塗布して塗膜13を形成した直後の塗膜13の上流側端部13c(図4において二点鎖線で示す)の端面13c2の厚みを予め把握しておき、この厚みを第2閾値Th2に設定している。そして、塗布装置1において、第2センサ42によって検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が第2閾値Th2以下の値になったとき、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したと判定するようにしている。さらに、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から起算して、当該上流側端部13cが塗布位置PAに到達するまでに要する第2時間t2が経過したと判定した時、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止させるようにしている。
従って、本実施形態では、基材11の第1面11b上に塗料12を塗布して塗膜13を形成した直後に塗膜13の上流側端部13c(図4において二点鎖線で示す)の端面を成していたと推定される端面13c2(仮想端面)が塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止することができる。これにより、図5に示すように、最終的に(塗膜15が濡れ拡がって乾燥した後に)、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDについて、上流側端部13c,15cの位置を同等にすることができる。
次に、実施形態にかかる塗布装置1による塗布方法の流れを説明する。図3は、実施形態にかかる塗布装置1による塗布の流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、基材11の長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ複数の塗膜13のそれぞれについて、図3に示す一連の処理を行う。
図1に示すように、塗布装置1の搬送装置20によって塗布対象物10が搬送方向CDに一定の搬送速度で搬送されてゆく状態で、まず、ステップS1において、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達したか否かを判定する。具体的には、制御装置50が、第1センサ41によって一定時間毎に検出される塗膜13の厚みの値(検出値)をチェックし、第1センサ41によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が、0から正の値に変化し(その後、厚みの値が増加してゆき)、その後、第1閾値Th1以上の値になったとき、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達した(YES)と判定する。一方、第1センサ41の検出値が、上記のようにして第1閾値Th1以上の値になるまでは、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達していない(NO)と判定して、ステップS1の処理を繰り返し行う。
ステップS1において、塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達した(YES)と判定したら、ステップS2に進み、制御装置50は、第1時間t1(塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から起算して、当該下流側端部13bが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)の計測を開始する。
次いで、ステップS3に進み、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したか否かを判定する。具体的には、制御装置50が、第2センサ42によって一定時間毎に検出される塗膜13の厚みの値(検出値)をチェックし、第2センサ42によって一定時間毎に検出された塗膜13の厚みの値(検出値)が、一定時間毎に減少(正の値を維持したまま減少)してゆき、その後、第2閾値Th2以下となったとき、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したと判定する。一方、第2センサ42の検出値が、上記のようにして第2閾値Th2以下の値になるまでは、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達していない(NO)と判定して、ステップS3の処理を繰り返し行う。
ステップS3において、塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達した(YES)と判定したら、ステップS4に進み、制御装置50は、第2時間t2(塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から起算して、当該上流側端部13cが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)の計測を開始する。
その後、ステップS5に進み、制御装置50は、第1時間t1(塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から起算して、当該下流側端部13bが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)が経過したか否かを判定する。第1時間t1が経過していない(NO)と判定した場合は、第1時間t1が経過した(YES)と判定するまで、ステップS5の処理を繰り返し行う。
ステップS5において第1時間t1が経過した(YES)と判定したら、制御装置50は、ステップS6において、第1時間t1の計測を終了すると共に、ステップS7において、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始させる。具体的には、塗布部30のバルブ34を開放して、ダイ31の吐出口31bから塗料12を吐出させる。このようにすることで、基材11の第1面11b上に形成されている塗膜13の下流側端部13bが塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始することができる。
次に、ステップS8に進み、制御装置50は、第2時間t2(塗膜13の上流側端部13cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から起算して、当該上流側端部13cが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)が経過したか否かを判定する。第2時間t2が経過していない(NO)と判定した場合は、第2時間t2が経過した(YES)と判定するまで、ステップS8の処理を繰り返し行う。
ステップS8において第2時間t2が経過した(YES)と判定したら、ステップS9に進み、制御装置50は、第2時間t2の計測を終了すると共に、ステップS10において、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止させる。具体的には、塗布部30のバルブ34を閉塞して、ダイ31の吐出口31bからの塗料12の吐出を停止させる。このようにすることで、基材11の第1面11b上に形成されている塗膜13の上流側端部13cが、塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止することができる。
上述したステップS1〜S10の処理を、塗布対象物10の長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ複数の塗膜13のそれぞれについて行うことで、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜13と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜15との間で、長さ方向LDについて下流側端部13b,15bの位置ずれを小さくすることができ、且つ、長さ方向LDについて上流側端部13c,15cの位置ずれも小さくすることができる。その結果、基材11の第1面11b上に形成した各々の塗膜13と、第2面11c上に形成した各々の塗膜15との間で、塗膜長さ(長さ方向LDの寸法)の差も小さくすることができる。
なお、塗布装置1の制御装置50は、塗布装置1が駆動している間は、一定時間毎に(例えば、50ミリ秒毎に)、ステップS1の処理を繰り返し行っている。具体的には、1つの塗膜13について、ステップS1において塗膜13の下流側端部13bが第1検出位置P1に到達した(YES)と判定したら、当該塗膜13についてはステップS2の処理に進むが、引き続き、当該塗膜13の上流側に間隙を空けて隣接する次の塗膜13に対し、ステップS1の処理を開始する。このようにして、上述したステップS1〜S10の処理を、塗布対象物10の長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ複数の塗膜13のそれぞれについて行うようにしている。
(変形形態)
次に、本発明の変形形態について説明する。本変形形態の塗布対象物110では、実施形態の塗布対象物10と異なり、長さ方向LDに間隙を空けて基材11の第1面11bに形成されている複数の塗膜113の長さ(長さ方向LDの寸法)が、いずれも等しくされている。また、本変形形態の塗布装置101は、実施形態の塗布装置1と比較して、制御装置(詳細には、制御プログラム)が異なり、その他は同様である。従って、ここでは、実施形態と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
図6は、変形形態にかかる塗布装置101の概略図である。塗布装置101は、図6に示すように、実施形態と同等の搬送装置20と、実施形態と同等の塗布部30と、実施形態と同等の第1センサ41と、実施形態と同等の第2センサ42と、実施形態とは異なる制御装置150とを備える。
本変形形態の制御装置150は、実施形態の制御装置50と同様に、第1センサ41によって一定時間毎に検出された塗膜113の厚みの値(検出値)に基づいて、長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ各々の塗膜113について、塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したか否かを判定する。さらに、本変形形態の制御装置150は、実施形態の制御装置50と同様に、第2センサ42によって一定時間毎に検出された塗膜113の厚みの値に基づいて、長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ各々の塗膜113について、塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したか否かを判定する。
さらに、本変形形態の制御装置150は、実施形態の制御装置50と同様に、塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から起算して、当該下流側端部113bが塗布位置PAに到達するまでに要する第1時間t1が経過したか否かを判定する。そして、第1時間t1が経過したと判定した時、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始させる。
本変形形態でも、このような処理を、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成されている各々の塗膜113について行うので、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜113と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜115(基材11の厚み方向について第1面11b上の塗膜113と対向するように形成された塗膜115)との間で、長さ方向LDにかかる下流側端部113b,115bの位置ずれを小さくする(長さ方向LDについて下流側端部113b,115bの位置を同等または近接させる)ことができる(図1及び図5参照)。
さらに、本変形形態の制御装置150は、実施形態の制御装置50と同様に、塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から起算して、当該上流側端部113cが塗布位置PAに到達するまでに要する第2時間t2が経過したか否かを判定する。そして、第2時間t2が経過したと判定した時、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止させる。
本変形形態でも、このような処理を、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成されている各々の塗膜113について行うので、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜113と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜115(基材11の厚み方向について第1面11b上の塗膜113と対向するように形成された塗膜115)との間で、長さ方向LDにかかる上流側端部113c,115cの位置ずれを小さくする(長さ方向LDについて上流側端部113c,115cの位置を同等または近接させる)ことができる(図1及び図5参照)。
ところで、本変形形態の制御装置150は、実施形態の制御装置50と異なり、長さ方向LDに隣り合う2つの塗膜113の間隙寸法(塗膜間距離D1とする)を測定する。具体的には、長さ方向LDに隣り合う2つの塗膜113のうち、搬送方向CDの下流側に位置する塗膜113(下流側塗膜113Aとする)の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時(時刻)と、搬送方向CDの上流側に位置する塗膜113(上流側塗膜113Bとする)の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時(時刻)とに基づいて、塗膜間距離D1を算出する。
より具体的には、「一定の搬送速度で長さ方向LDに搬送されている塗布対象物110が、下流側塗膜113Aの上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から、上流側塗膜113Bの下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時までに移動する距離」に、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送距離(搬送方向CDにかかる二点間距離、すなわち、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送ライン25の長さ)を加えた値を、塗膜間距離D1として算出する。
さらに、本変形形態の制御装置150は、算出した塗膜間距離D1が規定範囲内であるか否かを判定する。塗膜間距離D1が規定範囲内であると判定した場合は、当該塗膜間距離を構成する2つの塗膜113のうち上流側塗膜113Bについて、上述した処理を行うようにする。すなわち、基材11のうち上流側塗膜113Bが形成されている部位に含まれる第2面11cに、塗料12を塗布して、塗膜115を形成する(図8参照)。
なお、図8は、塗膜113,115を有する塗布物160の拡大断面図である。塗布物160は、基材11と、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて塗布された長さ方向LDに延びる複数の塗膜113と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて塗布された長さ方向LDに延びる複数の塗膜115とを有する。
一方、塗膜間距離D1が規定範囲内でないと判定した場合は、当該塗膜間距離を構成する2つの塗膜113のうち上流側塗膜113Bについて、上述した処理を行わないようにする。すなわち、基材11のうち上流側塗膜113Bが形成されている部位に含まれる第2面11cには、塗料12を塗布しないようにして、塗膜115を形成しないようにする(図9参照)。
さらに、本変形形態の制御装置150は、実施形態の制御装置50と異なり、長さ方向LDに間隙を空けて形成されている各々の塗膜113について、その長さ(長さ方向LDの寸法)を測定する。具体的には、各々の塗膜113について、下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時(時刻)と、上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時(時刻)とに基づいて、長さL1(長さ方向LDの寸法)を算出する。
より具体的には、「一定の搬送速度で長さ方向LDに搬送されている塗布対象物110が、1つの塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から、当該塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時までに移動する距離」から、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送距離(搬送方向CDにかかる二点間距離、すなわち、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送ライン25の長さ)を差し引いた値を、当該塗膜113の長さL1(長さ方向LDの寸法)として算出する。
さらに、本変形形態の制御装置150は、算出した長さL1が規定範囲内であるか否かを判定する。長さL1が規定範囲内であると判定した場合は、当該長さL1を有する塗膜113について、上述した処理を行うようにする。すなわち、基材11のうち当該長さL1を有する塗膜113が形成されている部位の第2面11cに、塗料12を塗布して、塗膜115を形成する(図8参照)。
一方、長さL1が規定範囲内でないと判定した場合は、当該長さL1を有する塗膜113について、上述した処理を行わないようにする。すなわち、基材11のうち当該長さL1を有する塗膜113が形成されている部位に含まれる第2面11cには、塗料12を塗布しないようにして、塗膜115を形成しないようにする(図10参照)。図10では、搬送方向CD(図10において左右方向)に隣接する2つの塗膜113のうち、搬送方向CDの上流側(図10において左側)に位置する上流側塗膜113Bの長さL1が、規定範囲内でないと判定された場合を示している。
次に、変形形態にかかる塗布装置101による塗布方法の流れを説明する。図7は、変形形態にかかる塗布装置101による塗布の流れを示すフローチャートである。なお、本変形形態では、基材11の長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ複数の塗膜113のそれぞれについて、図7に示す一連の処理を行う。
図6に示すように、塗布装置101の搬送装置20によって塗布対象物110が搬送方向CDに一定の搬送速度で搬送されてゆく状態で、まず、制御装置150は、ステップT1において、塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したか否かを判定する。具体的な判定方法は、実施形態のステップS1と同様である。
ステップT1において、塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達した(YES)と判定したら、ステップT2に進み、塗膜間距離D1が規定範囲内であるか否かを判定する。具体的には、まず、「ステップT1において塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達した(YES)と判定した時(時刻)」と、「この塗膜113(上流側塗膜113Bとする)に対して搬送方向CDの下流側に隣接する塗膜113(下流側塗膜113Aとする)について行ったステップT4において、上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時(時刻)」とに基づいて、塗膜間距離D1を算出する。
より具体的には、「一定の搬送速度で長さ方向LDに搬送されている塗布対象物110が、下流側塗膜113Aの上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から、上流側塗膜113Bの下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時までに移動する距離」に、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送距離(搬送方向CDにかかる二点間距離、すなわち、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送ライン25の長さ)を加えた値を、塗膜間距離D1として算出する。
さらに、制御装置150は、ステップT2において、算出した塗膜間距離D1が規定範囲内であるか否かを判定する。ステップT2において、塗膜間距離D1が規定範囲内でない(NO)と判定した場合は、当該塗膜間距離D1を構成する2つの塗膜113のうち上流側塗膜113Bについて、一連の処理を終了する。すなわち、基材11のうち上流側塗膜113Bが形成されている部位に含まれる第2面11cには、塗料12を塗布しないようにして、塗膜115を形成しないようにする(図9参照)。
一方、ステップT2において、塗膜間距離D1が規定範囲内である(YES)と判定した場合は、ステップT3に進み、実施形態のステップS2と同様に、第1時間t1(塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から起算して、当該下流側端部113bが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)の計測を開始する。
次いで、ステップT4に進み、塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したか否かを判定する。具体的な判定方法は、実施形態のステップS3と同様である。
ステップT4において、塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達した(YES)と判定したら、ステップT5に進み、制御装置150は、当該塗膜113の長さL1(長さ方向LDの寸法)が規定範囲内であるか否かを判定する。具体的には、まず、制御装置150は、当該塗膜113の長さ(長さ方向LDの寸法)を算出する。より具体的には、当該塗膜113について、ステップT1において下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時(時刻)と、ステップT4において上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時(時刻)とに基づいて、長さL1(長さ方向LDの寸法)を算出する。
詳細には、「ステップT1において当該塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から、ステップT4において当該塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時までに、塗布対象物110が移動する距離」から、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送距離(搬送方向CDにかかる二点間距離、すなわち、第1検出位置P1から第2検出位置P2までの搬送ライン25の長さ)を差し引いた値を、当該塗膜113の長さL1(長さ方向LDの寸法)として算出する。
さらに、制御装置150は、ステップT5において、算出した長さL1が規定範囲内であるか否かを判定する。ステップT5において、塗膜113の長さL1が規定範囲内でない(NO)と判定した場合は、当該塗膜113について一連の処理を終了する。すなわち、基材11のうち当該塗膜113が形成されている部位に含まれる第2面11cには、塗料12を塗布しないようにして、塗膜115を形成しないようにする(図10参照)。なお、図10では、搬送方向CD(図10において左右方向)に隣接する2つの塗膜113のうち、搬送方向CDの上流側(図10左側)に位置する上流側塗膜113Bの長さL1が、規定範囲内でないと判定された場合を示している。
一方、ステップT5において、塗膜113の長さL1が規定範囲内である(YES)と判定した場合は、ステップT6に進み、実施形態のステップS4と同様に、制御装置150は、第2時間t2(塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から起算して、当該上流側端部113cが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)の計測を開始する。
その後、ステップT7に進み、実施形態のステップS5と同様に、制御装置150は、第1時間t1(塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達したと判定した時から起算して、当該下流側端部113bが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)が経過したか否かを判定する。第1時間t1が経過していない(NO)と判定した場合は、第1時間t1が経過した(YES)と判定するまで、ステップT7の処理を繰り返し行う。
ステップT7において第1時間t1が経過した(YES)と判定したら、制御装置150は、ステップT8において、第1時間t1の計測を終了すると共に、ステップT9において、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始させる。具体的には、塗布部30のバルブ34を開放して、ダイ31の吐出口31bから塗料12を吐出させる。このようにすることで、基材11の第1面11b上に形成されている塗膜113の下流側端部113bが塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を開始することができる。
次に、ステップT10に進み、制御装置150は、実施形態のステップS8と同様に、第2時間t2(塗膜113の上流側端部113cが第2検出位置P2に到達したと判定した時から起算して、当該上流側端部113cが塗布位置PAに到達するまでに要する時間)が経過したか否かを判定する。第2時間t2が経過していない(NO)と判定した場合は、第2時間t2が経過した(YES)と判定するまで、ステップT10の処理を繰り返し行う。
ステップT10において第2時間t2が経過した(YES)と判定したら、制御装置150は、ステップT11において、第2時間t2の計測を終了すると共に、ステップT12において、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止させる。具体的には、塗布部30のバルブ34を閉塞して、ダイ31の吐出口31bからの塗料12の吐出を停止させる。このようにすることで、基材11の第1面11b上に形成されている塗膜113の上流側端部113cが、塗布位置PAに到達した時に、塗布部30による基材11の第2面11cへの塗料12の塗布を停止することができる。
上述したステップT1〜T12の処理を、塗布対象物110の長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ複数の塗膜113のそれぞれについて行うことで、基材11の第1面11b上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜113と、基材11の第2面11c上に長さ方向LDに間隙を空けて形成した各々の塗膜115との間で、長さ方向LDについて下流側端部113b,115bの位置ずれを小さくすることができ、且つ、長さ方向LDについて上流側端部113c,115cの位置ずれも小さくすることができる。その結果、基材11の第1面11b上に形成した各々の塗膜113と、第2面11c上に形成した各々の塗膜115との間で、塗膜長さ(長さ方向LDの寸法)の差も小さくすることができる。
しかも、本変形形態では、塗膜間距離D1が規定範囲内でない場合は、基材11のうち当該塗膜間距離D1を構成する2つの塗膜113のうち上流側塗膜113Bが形成されている部位の第2面11cには、塗膜115を形成しないようにしている。塗布対象物110(塗布物160)のうち当該塗膜間距離D1を構成する2つの塗膜113のうち上流側塗膜113Bが形成されている部位は、電極板として適切に使用できない不良品となるため、当該部位に塗膜115を形成しないようにすることで、塗料12の無駄を省くことができる。
さらに、本変形形態では、塗膜113の長さL1が規定範囲内でない場合は、基材11のうち当該塗膜113が形成されている部位の第2面11cには、塗膜115を形成しないようにしている。塗布対象物110(塗布物160)のうち当該塗膜113が形成されている部位は、電極板として適切に使用できない不良品となるため、当該部位に塗膜115を形成しないようにすることで、塗料12の無駄を省くことができる。
なお、塗布装置101の制御装置150は、塗布装置101が駆動している間は、一定時間毎に(例えば、50ミリ秒毎に)、ステップT1の処理を繰り返し行っている。具体的には、1つの塗膜113について、ステップT1において塗膜113の下流側端部113bが第1検出位置P1に到達した(YES)と判定したら、当該塗膜113についてはステップT2の処理に進むが、引き続き、当該塗膜113の上流側に間隙を空けて隣接する次の塗膜113に対し、ステップT1の処理を開始する。このようにして、上述したステップT1〜T12の処理を、塗布対象物110の長さ方向LDに間隙を空けて並ぶ複数の塗膜113のそれぞれについて行うようにしている。
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。