JP6903479B2 - 固結抑制リン酸肥料とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、吸湿性が高く、バルクブレンド肥料において固結抑制機能を発揮するリン酸肥料に関する。
バルクブレンド肥料(以下BB肥料)は、リン安、硫安、塩安、尿素、重過リン酸石灰、塩化カリ、硫酸カリなどの粒状肥料原料を、所望の成分になるように、2種類以上配合した固形配合肥料であり、粒状配合肥料とも云われている。
BB肥料について、従来から肥料の固結が問題になっている。肥料の固結は肥料粒子が塊状に固まることであり、従来から品質劣化の問題として提起されてきたが、機械による施肥が発達した現在においては、固結性に対する許容域が狭まり、軽い程度の固結でも施肥作業に支障をきたすため、従来に増して肥料の流動性が求められており、肥料の固結防止の要請が高まっている。
肥料の固結防止手段として、肥料粒子を被覆することや、固結防止剤を添加することが従来から知られている。肥料粒子の被覆については、透湿度が特定範囲の膜を用いるもの(特許文献1)、糖類で被覆するもの(特許文献2)、樹脂で被覆するもの(特許文献3)、鉱産物粉末とポリオール化合物で被覆処理するもの(特許文献4)、鉱産物粉末とリン酸液等で被覆処理するもの(特許文献5)などが知られている。しかし、肥料粒子を被覆するのは製造に手間がかかり、製造コストが嵩む問題がある。また、固結防止効果も限定的である。
固結防止剤の使用については、ゲル状シリカを用いるもの(特許文献6、7)が知られており、また固結防止剤として、無機系のシリカゲルのほかに、滑石粉末、クレー、シリカヒュームや、有機系の界面活性剤が尿素、硝安、化成肥料に対してよく使われている。
しかし、BB肥料に使用できる固結防止剤は、法令(肥料取締法)によって種類が制限されており、シリカゲル、滑石粉末、クレー、珪石粉末、珪藻土、シリカヒューム、パーライト、および潤滑油に限られており、その添加量は、シリカゲルは6%以下、その他の粉末は3%以下、潤滑油は滑石粉末、クレー、珪藻土またはパーライトと併用されたものであって、0.3%以下に制限されている。そのため、固結防止剤による固結防止効果は十分ではない。さらに、粉末固結防止剤添加による肥料有効成分の低下、施肥時の粉塵飛散という問題が生じる場合がある。また、シリカゲルは高価であるため、この使用は肥料のコスト高になると云う問題もある。
特開2015−10029号公報 特開2013−163625号公報 特開2006−327841号公報 特開2006−265061号公報 特開2002−316888号公報 特開2000−95587号公報 特開平10−167864号公報
本発明は、従来の上記課題を解決したものであり、バルクブレンド肥料において優れた固結抑制機能を発揮し、それ自体がリン酸肥料であって肥料効果が低下することのないリン酸肥料を提供する。
本発明は、以下の構成によって上記課題を解決した、固結抑制リン酸肥料とその製造方法である。
〔1〕水溶性リン酸8.0〜21.0質量%、水溶性酸化マグネシウム2.0〜6.5質量%、水溶性酸化カルシウム1.0〜3.2質量%、および水溶性酸化ナトリウム0.4〜1.3質量%を含有し、該水溶性酸化マグネシウムと該水溶性酸化ナトリウムの%比〔(W-MgO%):(W-Na O%)〕が2.44:1.03〜6.11:0.55の範囲であって、さらにリン酸一苦土、リン酸一石灰、およびリン酸二水素ナトリウムからなる固結抑制成分を6.0〜50.0質量%含有することを特徴とする固結抑制リン酸肥料。
〔2〕固結抑制成分が、(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOの式によって表され、該固結抑制成分が、相対湿度40%の平衡水分が10%以上であって、相対湿度50%の平衡水分が15%以上である吸湿性を有する上記[1]に記載する固結抑制リン酸肥料。
〔3〕リン酸原料としてリン鉱石、リン酸液、焼成リン肥を用い、その他の原料として苦土原料および硫酸を用い、これらの原料粉体を、生成後のリン酸肥料中で、水溶性リン酸量8.0〜21.0質量%、水溶性酸化マグネシウム2.0〜6.5質量%、水溶性酸化カルシウム1.0〜3.2質量%、および水溶性酸化ナトリウム0.4〜1.3質量%であって、該水溶性酸化マグネシウムと該水溶性酸化ナトリウムの%比〔(W-MgO%):(W-Na O%)〕が2.44:1.03〜6.11:0.55の範囲であり、さらに (5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOの式によって表される固結抑制成分が6.0〜50.0質量%になる配合にし、まず、リン鉱石とリン酸液および硫酸をスラリー状態で加熱することにより反応させた後に、このスラリーと焼成リン肥および苦土原料を転動造粒機中にて造粒させながら反応させることによって固結抑制リン酸肥料を製造する方法。
本発明のリン酸肥料は、水溶性リン酸8.0〜21.0質量%、水溶性酸化マグネシウム2.0〜6.5質量%、水溶性酸化カルシウム1.0〜3.2質量%、および水溶性酸化ナトリウム0.4〜1.3質量%を含有し、該水溶性酸化マグネシウムと該水溶性酸化ナトリウムの%比〔(W-MgO%):(W-Na O%)〕が2.44:1.03〜6.11:0.55の範囲であって、さらにリン酸一苦土、リン酸一石灰、およびリン酸二水素ナトリウムからなる固結抑制成分を6.0〜50.0質量%含有することを特徴とする固結抑制リン酸肥料である。本発明のリン酸肥料は、該固結抑制成分を含むことによって、相対湿度40%の平衡水分が10%以上であって相対湿度50%の平衡水分が15%以上である高い吸湿性を有するので、周囲の環境下の水分を吸収して効果的に固結を抑制し防止することができる。
また、本発明のリン酸肥料に含まれる固結抑制成分は、リン酸一苦土、リン酸一石灰、およびリン酸二水素ナトリウムからなるリン酸肥料であり、従来のようなシリカゲルや非肥料成分の被膜を有するものではないので、肥料効果を低下させることが無い。
さらに、本発明のリン酸肥料は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、および焼成リン肥などのリン酸肥料原料を所定の割合になるように配合して反応させて製造することができ、シリカゲルなどの固結防止剤の添加や被膜形成を行う必要が無いので、低コストで容易に製造することができる。
本発明のリン酸肥料は、優れた吸湿性を有するので、BB肥料に配合すると、肥料の固結を効果的に抑制することがきる。また、それ自体がリン酸肥料であるので、BB肥料に配合しても肥料成分量が低下しない。さらに、シリカゲルなどの固結防止剤の添加や被膜形成を行う必要が無いので、低コストで容易に製造することができる。
試料1〜7のX線回折チャート。 試料No.11〜16の相対湿度に対する平衡水分を示すグラフ。
以下、本発明を実施例と共に具体的に説明する。なお、%は質量%である。
肥料の固結は、肥料粒子表面に水分(遊離水)が存在することにより起こる。この水分は、製造時の乾燥が不十分な場合や、梅雨や夏季のような高温多湿の条件で製造した場合に高くなりやすい。肥料粒子表面に遊離水が存在すると、肥料成分を溶解した飽和溶液となり、粒子間に液架橋を形成し、その後に温度や湿度の変化により水分が蒸発して再結晶が起こると、液架橋が固架橋に変化して肥料粒子が接着して固結する。単肥や化成肥料は主にこのようなメカニズムによって肥料粒子の固結が発生するが、BB肥料の場合は、上記メカニズムに加えて原料間の化学反応による反応生成物も固結を引き起こすので、単一の肥料に比べて問題はより深刻である。
従来から、ある種のリン酸肥料はBB肥料に配合すると固結を抑制する作用があることが経験的に知られていた。この作用は、乾燥剤のシリカゲルと同じように、リン酸肥料は水分吸着力が大きく、肥料袋中の湿度を低下させることから、固結が抑制されると考えられていた。しかし、リン酸肥料中のどの成分がそのような作用を有するのかは必ずしも明確ではなかった。
本発明は、リン酸肥料の固結抑制作用について検討を進め、リン酸一苦土、リン酸一石灰、およびリン酸二水素ナトリウムの組合せが優れた固結抑制作用を有することを見出し、これらの3成分を含む固結抑制成分を含有させたリン酸肥料を提供する。
具体的には、本発明のリン酸肥料は、水溶性リン酸、水溶性酸化マグネシウム、水溶性酸化カルシウム、および水溶性酸化ナトリウムを含有し、さらにリン酸一苦土、リン酸一石灰、およびリン酸二水素ナトリウムからなる固結抑制成分を6.0質量%以上含有することを特徴とする固結抑制リン酸肥料である。
上記固結抑制成分は、(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOの式によって表される高吸湿性を有するリン酸成分である。
本発明のリン酸肥料は、好ましくは、表1に示すように、水溶性リン酸量8.0〜21.0質量%、水溶性酸化マグネシウム2.0〜6.5質量%、水溶性酸化カルシム1.0〜3.2質量%、および水溶性酸化ナトリウム0.4〜1.3質量%を含有する。
本発明のリン酸肥料は、好ましくは、表5に示すように、(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOの式によって表される固結抑制成分を6.0〜50.0質量%含有する。上記式によって表される固結抑制成分は、図2に示すように、例えば、相対湿度40%の平衡水分が10%以上であって相対湿度50%の平衡水分が15%以上である高い吸湿性を有する。この高い吸湿性によって肥料の固結を効果的に抑制する。
〔製造方法〕
本発明のリン酸肥料は、原料としてリン酸原料の他に、苦土原料、および焼成リン肥等のナトリウムを含む原料を用い、リン酸一苦土〔Mg(HPO)〕、リン酸一石灰〔Ca(HPO)〕、およびリン酸二水素ナトリウム〔NaHPO〕からなる固結抑制成分を含有するように配合して製造することができる。
具体的には、例えば、リン酸原料としてリン鉱石、リン酸液、焼成リン肥を用い、その他の原料として苦土原料および硫酸を用い、これらの原料粉体を、生成後のリン酸肥料中で、水溶性リン酸量8.0〜21.0質量%、水溶性酸化マグネシウム2.0〜6.5質量%、水溶性酸化カルシム1.0〜3.2質量%、および水溶性酸化ナトリウム0.4〜1.3質量%であって、(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOの式によって表される固結抑制成分が6.0〜50.0質量%になる配合にし、
まず、リン鉱石とリン酸液および硫酸をスラリー状態で加熱することにより反応させ、このスラリーと焼成リン肥および苦土原料を転動造粒機中にて造粒させながら反応させることによって固結抑制リン酸肥料を製造することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。
〔試料No.A〜Hの調製〕
本発明のリン酸肥料について、リン酸原料としてリン鉱石、リン酸液、および焼成リン肥を用い、その他の成分として苦土原料および硫酸を用い、表1に示す肥料成分を有する試料A〜Eを調製した。具体的な製造方法としては、まず、リン鉱石とリン酸液および硫酸をスラリー状態で加熱することにより反応させ、このスラリーと焼成リン肥および苦土原料を転動造粒機中にて造粒させながら反応させて粒状肥料とした。苦土原料は橄欖岩、ニッケルスラグ、マグネシア、水酸化マグネシウム等である。比較試料Fについては、上記試料A〜Eと同様な製造方法にて、苦土原料を原料として用いずに製造した。比較試料Gについては、フェロニッケルスラグを硫酸とリン酸の混酸で分解し、そのスラリーに苦土原料と重過石を添加、造粒することで製造した。比較試料Hについては、リン鉱石にリン酸液および硫酸を混和することで製造した。
一般的な肥料と同様に、肥料粒子の粒度は1mm以上〜4mm未満とした。ク溶性リン酸(C−P)、水溶性リン酸(W−P)等の肥料成分は、肥料分析法に基づき分析した。また、水溶性カルシウム(W−CaO)と水溶性ナトリウム(W−NaO)は、水溶性リン酸の供試液を用いて、原子吸光光度法により分析した。
Figure 0006903479
〔堆積試験〕
調製したリン酸肥料(No.A〜H)について、BB肥料に対する固結抑制効果を把握するために堆積試験を行った。この堆積試験は、BB肥料の成分を、硫安、リン酸二安(DAP)、および塩化カリとし、これら各肥料成分の粒状原料を各225g混合して、あらかじめ30℃、75%RHの条件で重量増が3.5gになるまで吸湿させた。この吸湿原料に、乾燥させた表1のリン酸肥料(No.A〜H)を75g混合し、ポリエチレン製袋(200×150×0.15mm)に封入した(試料No.1〜8)。また、比較試料9として、シリカゲルの粉末(粒径250〜1000μm)7.5gを固結抑制剤として用いた。さらに対照として、試料No.A〜Hおよびシリカゲル粉末を混合しない水準を設けた。
これらの肥料袋を1水準について1袋用意し、4段積みにして60kgの加重を掛け(200g/cm)、常温常湿の室内にて30日間静置した。堆積試験終了後、袋を解袋し、固結が生じた肥料については、固結部分を手でより分けて重量割合を測定した。また、固結部分については山中式土壌硬度計にて5ヵ所の硬度を測定し、その平均値を固結強度とした。BB肥料の成分配合量と、使用したリン酸肥料の種類(No.A〜H)と配合量、固結割合および固結強度を表2に示す。
表2に示すように、本発明のリン酸肥料(No.A〜E)を配合した試料No.1〜5は、固結割合が76%未満、固結強度が2.1kg/cm未満であり、対照試験に比べて固結割合が低く、また固結強度は大幅に小さく、しかも固結強度はシリカゲルを用いた試料No.9よりも格段に小さく、優れた固結抑制効果が確認された。
本発明のリン酸肥料の成分であるMg(HPO)、Ca(HPO)、NaHPOは全て水溶性であり、肥料の水溶性成分のW−MgOがMg(HPO)に、W−CaOがCa(HPO)に、W−NaOがNaHPOによって供給される。また、本発明のリン酸肥料は、表1の試料A〜Eに示すように、W−MgOを2.44%以上、W−CaOを1.11%以上、W−NaOを0.41%以上含有しており、吸湿性能の高いMg(HPO)とCa(HPO)とNaHPOとの3成分を含有するので、高い吸湿性を有している。
一方、表1の試料Fは、W−MgOが0.80%と低く、Mg(HPO)の含有量が少ない。試料Gは、W−NaOが0.12%と低く、NaHPOの含有量が少ない。試料Hは、W−MgOが0.79%、W−NaOが0.22%と低く、Mg(HPO)およびNaHPOの何れも少なく、吸湿性が低い。
これらのリン酸肥料(No.F、G、H)を配合した試料No.6、7、8は何れも対照試験より固結割合が多く、試料No.7、8は固結強度も大きく、固結抑制効果は認められない。
Figure 0006903479
〔吸湿試験〕
BB肥料の堆積試験において、固結抑制効果を有する試料No.A〜Eはその高い水分吸収能力によって肥料袋中の相対湿度を低下させ、それにより固結を抑制したと考えられる。そこで、試料No.A〜Eに含まれるどの成分が吸湿能力を発揮したのかを明らかにするために、吸湿試験を行った。一般に成分固有の臨界湿度を越えると吸湿を開始し、吸湿が進むとその表面に遊離水を生じて濡れた状態になる。遊離水には吸湿した成分が溶解し、その成分の飽和溶液となる。すなわち、その吸湿液の成分は、吸湿に関与している成分であることから、吸湿液の成分を調べることにより、試料No.A〜Eに含まれる水分吸収能力の高い成分を特定することができる。
試料No.A、B、C、D、Eと、比較試料F、G、Hについて、各10.0gを粒状のまま秤量瓶に計り取り、蓋を開けた状態で25℃、90%RHの恒温恒湿槽中で20時間吸湿させた。次に、ガラス濾過器に網を設置して網上に吸湿した肥料粒子を置き、(1+1)エタノール100mlで洗浄した。この洗浄後の溶液を加熱濃縮してエタノールを揮散除去した後に、肥料分析法に従って溶液中に含まれるP、CaO、MgO、NaOを分析した。吸湿させていない肥料粒子についても同様な操作を行い、空試験とした。試験は各肥料について2回ずつ行い、その平均を分析値とした。この結果を表3に示す。なお、表中の吸湿液濃度は、空試験の値を補正した数値である。また、吸湿液の成分のモル比は、モル濃度が一番低いCaのモル濃度を基準としたモル比である。
表3に示すように、試料No.A、B、C、Dについて、吸湿液のモル比はほぼ等しく、Mg:Ca:Naモル比は、概ね5:1:1.2〜3である。試料No.Eについては、Ca:Naのモル比は試料No.A、B、C、Dとほぼ同じであるが、Mgのモル比は13.1であり格段に大きい。
一方、Mgをほとんど含まない試料No.Fの吸湿液は組成が大きく異なり、Mg:Ca:Naのモル比は概ね1:1:2である。また、Naをほとんど含まない試料No.Gの吸湿液のMg:Ca:Naのモル比は5.6:1.0:0.1であり、MgとNaをほとんど含まない試料No.Hの吸湿液のMg:Ca:Naのモル比は0.6:1.0:0.1である。
ここで、固結抑制効果の高い試料No.A〜Eの(2Mg+2Ca+Na)/Pモル比はほぼ1であり、一方、比較試料No.F〜Hは固結抑制効果が殆ど無いことから、吸湿性の高い成分は、リン酸一苦土〔Mg(HPO)〕、リン酸一石灰〔Ca(HPO)〕、およびリン酸二水素ナトリウム〔NaHPO〕の3成分であると考えられる。これらのことから、試料No.A、B、C、D、Eについて、高い吸湿性能を有する成分は、その肥料中に含有される(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOによって表される成分であると考えられる。
Figure 0006903479
〔吸湿性の確認〕
本発明のリン酸肥料は、上記検討に基づき、リン酸一苦土〔Mg(HPO)〕、リン酸一石灰〔Ca(HPO)〕、およびリン酸二水素ナトリウム〔NaHPO〕の各成分を特定の割合で含有することによって、高い吸湿性によって優れた固結抑制機能を有すると考えられる。そこで、これら3種類の純物質を合成し、どの成分あるいは組み合わせが最も吸湿性に優れているのかを明らかにするための試験を行った。
〔試料No. 11〜16の調製〕
試薬のMg(OH)、Ca(OH)、NaOH、焼成リン肥、HPOを表4に示す割合で配合した粉体原料に水を加えて全体をスラリーにし、常温で85%HPOを表4に示す割合で添加、撹拌して反応させた。反応後はウォーターバス上で濃縮し、その後110℃で乾燥して試料11〜16を調製した。
試料11〜16の分析結果を表4に示した。モル比はCaを基準にしたモル比である。また、X線回折の結果を図1に示す。試料No.11はMg(HPO)が同定され、ピークもシャープに現れている。試料12〜16については、Mg(HPO)、Ca(HPO)・HO、NaHPO・2HO、および縮合塩などの種々の物質が同定された。
試料No.11の成分はMg(HPO)単独であり、Ca(HPO)、NaHPOが加わった試料No.13、14では、試料No.11に比べて、Mg(HPO)のピークの強度が大幅に低下している。
〔吸湿試験〕
試料No.11〜16について吸湿試験を行い、平衡水分を測定して平衡水分曲線を求めた。測定試料2.0gを秤量瓶に精秤し、30℃、相対湿度30%(以下30%RHという)に設定した恒温恒湿槽に入れ、恒量に達するまで静置し(19日間)、重量を測定した。その後、30℃、40%RH、50%RH、60%RH、70%RH、80%RHについて、順次同じ操作を繰り返し(吸湿時間は10日〜30日間)、重量増から含水率(平衡水分)を計算して平衡水分曲線を作成した。この結果を図2に示す。また、比較として、試薬のMg(HPO)、肥料の固結抑制剤として用いられているシリカゲルの平衡水分曲線を示した。
図2に示すように、試料No.12〜15は、40%RH〜80%RHの全域にかけて、シリカゲルより平衡水分が高く、特に試料No.12、13はシリカゲルの1.5倍〜2倍の平衡水分を示し、きわめて高い吸湿能力を示した。一方、試料No.11は、60%RH〜80%RHの領域では平衡水分が急激に上昇してシリカゲルよりも高くなるが、30%RH〜50%RHの領域では平衡水分がシリカゲルよりも低い。この結果から、40%RH〜80%RHの全域にかけて高い吸湿性を有するには、試料No.12〜15のように、Mg(HPO)の他に、Ca(HPO)、NaHPOを含有するものが好ましい。また、試料No.16は、Mg(HPO)およびCa(HPO)を含有するが、試料No.12〜15よりもMgのモル比が少なく、30%RH〜70%RHの領域でシリカゲルよりも平衡水分が少なく吸湿性が低い。
比較のために、試薬のMg(HPO)について平衡水分曲線を測定したところ、図2に示すように、60%RHまでは1%未満の平衡水分であり、吸湿性は極端に低い。ところが、合成した試料No.11はMg(HPO)でも、試薬のMg(HPO)に比べるとかなり高い吸湿性を有している。一方、前述のように、試料No.11よりも試料No.12,13はさらに高い吸湿性を有している。ここで、試料No. 13と試料No.11のX線回折チャートを比較すると、試料No. 13は、Mg(HPO)のピーク強度は試料No.11の約17分の1であり、結晶性が非常に低い。試料No. 13はMg(HPO)と共にCa(HPO)、およびNaHPOを含有することと、結晶性が非常に低いことも高い吸湿性を有する原因であるように推察される。
これらの結果から、40%RH〜80%RHの全域にかけて高い吸湿性を有するには、Ca1モルに対して、Mgを2.0〜14.0モル、およびNaを1〜3.0モル含有するものが好ましく、Mg5.0〜14.0モル、およびNa1.0〜3.0モルの範囲がより好ましいことが確認された。このことから、(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOによって表される組成の成分を含有するリン酸肥料は、高い吸湿性能を有することが確かめられた。
Figure 0006903479
このように、本発明のリン酸肥料に含まれる高い吸湿性能を有する成分のMg、Na、Caのモル比は、Ca1モルに対して、Mg2.0〜14.0モル、およびNa1.0〜3.0モルの範囲が好ましく、Mg5.0〜14.0モル、およびNa1.0〜3.0モルの範囲がより好ましい。Ca1モルに対して、Mgが2.0モル未満であるとリン酸一苦土の含有量が少なくなるので吸湿性が低下し、Mgが14.0モルを超えると相対的にリン酸一石灰およびリン酸二水素ナトリウムの含有量が少なくなり、Naが1.0モル未満ではリン酸二水素ナトリウムの含有量が少なくなり、Naが3.0モルを超えると相対的にリン酸一苦土やリン酸一石灰の含有量が少なくなり、何れの場合も吸湿性が低下するので好ましくない。
さらに、この成分の(2Mg+2Ca+Na)/Pモル比については、1前後であることが好ましい。その理由は、(2Mg+2Ca+Na)/Pモル比が1前後であれば、高い吸湿性を有するMg(HPO)、Ca(HPO)、NaHPOの三成分の組み合わせとなるからである。
〔固形抑制成分の含有量〕
上記(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOの式で表される固形抑制成分の肥料中の含有量について、吸湿性能が高い試料No.13を例にして試料A~Hに含まれる固形抑制成分No.13の含有量を算出した。
試料13の水溶性成分量は、W−P(62.79%)、W−MgO(13.62%)、W−CaO(3.30%)、W−NaO(2.33%)である。試料A〜Hの水溶性成分量は表1に示すとおりであるので、制限要素となるW−MgOを基準として、試料A〜Hの試料13含有量を計算する。例えば、試料AのW−MgOは2.44%であるので、試料Aに含まれる試料13の含有量は、2.44/13.62×100=17.9%である。同様にして算出した試料A〜F,Hに含まれる試料13含有量を表5に示す。なお、試料No.GはW−MgOが多く、W−NaOが少ないため、W−NaOを基準として計算した。
表5に示すように、本発明のリン酸肥料(試料No.A〜E)は、吸湿性が高い試料No.13を17%〜45%含有している。一方、比較試料F、G、Hに含まれる試料13の含量は5%台であり大幅に低い。このことから、本発明のリン酸肥料に含まれる固形抑制成分〔(5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPO〕の含有量は6.0〜50.0%が好ましいことがかわる。
Figure 0006903479

Claims (3)

  1. 水溶性リン酸8.0〜21.0質量%、水溶性酸化マグネシウム2.0〜6.5質量%、水溶性酸化カルシウム1.0〜3.2質量%、および水溶性酸化ナトリウム0.4〜1.3質量%を含有し、該水溶性酸化マグネシウムと該水溶性酸化ナトリウムの%比〔(W-MgO%):(W-Na O%)〕が2.44:1.03〜6.11:0.55の範囲であって、さらにリン酸一苦土、リン酸一石灰、およびリン酸二水素ナトリウムからなる固結抑制成分を6.0〜50.0質量%含有することを特徴とする固結抑制リン酸肥料。
  2. 固結抑制成分が、(5〜13)Mg(HPO) +Ca(HPO) +(1〜3)NaHPOの式によって表され、該固結抑制成分が、相対湿度40%の平衡水分が10%以上であって、相対湿度50%の平衡水分が15%以上である吸湿性を有する請求項1に記載する固結抑制リン酸肥料。
  3. リン酸原料としてリン鉱石、リン酸液、焼成リン肥を用い、その他の原料として苦土原料および硫酸を用い、これらの原料粉体を、生成後のリン酸肥料中で、水溶性リン酸量8.0〜21.0質量%、水溶性酸化マグネシウム2.0〜6.5質量%、水溶性酸化カルシウム1.0〜3.2質量%、および水溶性酸化ナトリウム0.4〜1.3質量%であって、該水溶性酸化マグネシウムと該水溶性酸化ナトリウムの%比〔(W-MgO%):(W-Na O%)〕が2.44:1.03〜6.11:0.55の範囲であり、さらに (5〜13)Mg(HPO)+Ca(HPO)+(1〜3)NaHPOの式によって表される固結抑制成分が6.0〜50.0質量%になる配合にし、まず、リン鉱石とリン酸液および硫酸をスラリー状態で加熱することにより反応させた後に、このスラリーと焼成リン肥および苦土原料を転動造粒機中にて造粒させながら反応させることによって固結抑制リン酸肥料を製造する方法。
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