JP6902655B2 - 多孔質シリカ系粒子、及び洗浄用化粧料 - Google Patents

多孔質シリカ系粒子、及び洗浄用化粧料 Download PDF

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本発明は、洗浄用化粧料にスクラブ剤として含まれる多孔質シリカ系粒子、およびその製造方法に関する。
洗浄用化粧料には、物理的作用により古い角質層を剥ぎ落とすスクラブ剤が含まれている。スクラブ剤として、微細なプラスチック粒子(例えば、ポリエチレン粒子)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。プラスチック粒子は、殺虫剤などの化学物質を吸収し易く、また、軽いため下水処理場で除去し難い。そのため、河川、海洋、池沼等に流れ込み、魚介類に蓄積し、これらを通して人体にも影響する虞がある。
そこで、環境に影響を及ぼすプラスチック粒子の代りに、スクラブ剤としてシリカゲル粒子を用いることが知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2には、特定のシリカゲル粒子からなるスクラブ剤は、使用時のスクラブ感が良好であるとともに、対象物への刺激が低いことが開示されている。このようなスクラブ剤により、使用後のヒリヒリ感が少ない洗浄用化粧料が実現した。
特開2001−278778号公報 特開2011−225548号公報
しかしながら、使用後のヒリヒリ感が少ないスクラブ剤には、使用中に所望のスクラブ感を得るために強い押込圧でスクラブ剤を塗擦してしまい、微視的には角質層に洗浄痕等の微小な傷が生じて、角質層のバリア機能や水分保持機能の低下を招く虞があった。
そこで、本発明の目的は、弱い塗擦力(押込圧)で擦り込んでも十分なスクラブ感が得られ、かつヒリヒリ感が抑えることができ、さらにソフトな使用感と、洗い上がり後に肌へのしっとり感を付与することができる洗浄用化粧料を実現するために必要な多孔質シリカ系粒子を提供することにある。
そこで、多孔質シリカ系粒子に天然由来の高分子を1〜50重量%含ませることとした。すなわち、本発明の多孔質シリカ系粒子は、以下の5つの特性を備えている。
(i)天然由来高分子の含有量が1〜50質量%
(ii)細孔容積(Pv)が0.1≦Pv<2.0ml/g
(iii)メジアン径(D50)が100〜1000μm
(iv)最大粒子径(D100)とメジアン径(D50)の比(D100/D50)が3.0以下
(v)1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が5〜40μm、最大粒子径(DR100)が15〜200μm、あるいは、メジアン径(DR50)が100〜1000μm、最大粒子径(DR100)が150〜3000μm
ここで、(v)の特性が、メジアン径(DR50)5〜40μm、最大粒子径(DR100)15〜200μmの場合、多孔質シリカ系粒子は摩耗性であり、メジアン径(DR50)が100〜1000μm、最大粒子径(DR100)150〜3000μmの場合、多孔質シリカ系粒子は非摩耗性である。
また、多孔質シリカ系粒子の5重量%の上澄み水溶液のCOD値が200mg/L以下であることが好ましい。
さらに、比表面積が5〜60m2/cm3の範囲にあると、多孔質シリカ系粒子はナノマテリアルに該当することはない。
本発明の多孔質シリカ系粒子によれば、弱い塗擦力(押込圧)で擦り込んでも十分なスクラブ感と滑らか感が得られ、かつヒリヒリ感も抑えることができ、さらにソフトな使用感と、洗い上がり後に肌へのしっとり感を付与できる洗浄用化粧料が実現する。したがって、皮膚の損傷、および角質層のバリア機能や水分保持機能の低下を招く虞がある角質層への線状痕等の微小な傷付を抑制することができる。
多孔質シリカ系粒子に加わる圧縮力と変位の関係の一例を示す図表である。 多孔質シリカ系粒子に加わる圧縮力と変位の関係の一例を示す図表である。 多孔質シリカ系粒子に加わる圧縮力と変位の関係の一例を示す図表である。
本発明の多孔質シリカ系粒子は、(i)天然由来高分子の含有量が1〜50質量%の範囲にあり、(ii)細孔容積(Pv)が0.1≦Pv<2.0ml/g、(iii)メジアン径(D50)が100〜1000μm、(iv)最大粒子径(D100)とメジアン径(D50)の比(D100/D50)が3.0以下である。そして、(v)1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が5〜40μm、最大粒子径(DR100)が15〜200μm、あるいは、メジアン径(DR50)が100〜1000μm、最大粒子径(DR100)が150〜3000μmである。含有される天然由来高分子は、多孔質シリカ系粒子の粒子表面、および1次粒子間に存在する。このような多孔質シリカ系粒子であれば、塗擦時に天然由来高分子が肌との接点に常に存在することとなり、ソフトな使用感と、洗い上がりの肌へのしっとり感を付与する洗浄用化粧料が得られる。また、天然由来高分子の含有量が50%を超えるとスクラブ感が得られないため、適していない。
ここで、細孔容積が0.1ml/g未満であると、粒子自体の多孔性が低いことから、粒子強度が高く、肌に塗擦した際に粒子が摩耗せず、皮膚の損傷や角質層への微小な傷が発生することが懸念される。また、細孔容積が2.0ml/g未満の場合、多孔性が高過ぎることはなく、適度な粒子強度となる。そのため、皮膚に触れた瞬間に適度な刺激(スクラブ感)を与えることができる。
また、多孔質シリカ系粒子を含む懸濁液から測定されるCOD(化学的酸素要求量)値は200mg/L以下が好ましい。COD値は以下のように測定する。多孔質シリカ系粒子の粉体5gを、純水95gに投入し、マグネティックスターラーで30分間攪拌し、固形分5質量%の懸濁液を得る。この懸濁液を、100mlビーカー中で一晩静置する。静置後に得られる上澄み部分を採取しCOD測定用試料とする。このCOD測定用試料50mlに、蒸留水を投入し液量を100mlとする。これに、硫酸(1+2)10ml、硝酸銀水溶液(200g/L)5ml、および過マンガン酸カリウム水溶液(5mmol/L)10mlを加え、混合溶液を調製する。この混合溶液を、沸騰水浴中に浸け、30分間加熱する。この加熱溶液にシュウ酸ナトリウム水溶液(12.5mmol/L)10mlを加えたのち、過マンガン酸カリウム水溶液(5mmol/L)にて滴定する。COD値は以下の式1によって算出する。
(式1) COD(mg/L)=(a−b)×f×1000/V×0.2
ここで、aは滴定に要した過マンガン酸カリウム溶液量(ml)、bは蒸留水を用いた試験の滴定に要した過マンガン酸カリウム溶液量(ml)、fは過マンガン酸カリウム溶液のファクター(ファクター=評定液で求めた真の濃度/調製した際の表示濃度)、およびVは使用したCOD測定用試料の量(ml)である。
本発明に用いられる天然由来高分子は、天然由来の高分子であれば、特に限定されるものではない。天然由来高分子は、天然物から抽出される高分子、微生物による発酵で得られる高分子などをいい、一般にバイオポリマーとも呼ばれる。具体的には、アルキルセルロース誘導体、ポリアミノ酸、多糖類などが挙げられる。このような高分子を含有することにより、粉体の感触特性を変化させることができる。特に、天然由来高分子として生分解性高分子が好ましい。天然由来の生分解性高分子は、有限資源である石油を使わないこと、また土壌や水中の微生物により生分解され、環境中の二酸化炭素を増やさないことから環境に負荷を与えない。なお、生分解性高分子とは、生分解性が国際標準分析法に基づいた生分解速度で60%以上の物である。この国際標準分析法は、JIS規格(例えばJIS K6950、JIS K6951、JIS K6953−1、JIS K6953−2、JIS K6955)で定められている。
また、天然由来高分子は架橋した粒子状であることが好ましい。架橋粒子状であれば、洗浄用化粧料中に天然由来高分子が多孔質シリカ系粒子内からブリードする懸念が少なくなる。このとき、そのメジアン径(D50)が0.1〜10μmの範囲であることが好ましい。
また、天然由来高分子として平均直径が1〜1000nmのセルロースナノファイバーが好ましい。セルロースナノファイバーは結晶セルロースからなる繊維で、生分解性である。
本発明の多孔質シリカ系粒子に圧縮力が加わった時に、発生する変位が以下のようになることが好ましい。すなわち、0.5gfの圧縮力f1が加えられると、0.5〜3μmの変位が発生する。あるいは、2.5gfの圧縮力f2が加えられるとd2(μm)の変位量が生じ、圧縮変位の傾き(2.5/d2)が0.3〜2.5の範囲にある。あるいは、多孔質シリカ系粒子に、0.21gf/secの割合で増加させて2.5gfまで圧縮力を加えると、0.01〜1.0μmの階段状変位が5回以上発生する。また、0.21gf/secの割合で増加する圧縮力が加えられると、複数回の階段状変位が発生する。さらに、10μm以上の変位量が最初に生じる圧縮力f3が5〜40gfの範囲にある。この圧縮力f3(gf)における10μm以上の圧縮変位を起こす前の変位量をd3(μm)としたとき、圧縮変位の傾き(f3/d3)は0.3〜1.25の範囲にある。
また、多孔質シリカ系粒子は、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、群青、紺青、および有機顔料の少なくとも一つを含む微粒子を0.1〜5質量%含んでいてもよい。この範囲内であれば、多孔質シリカ系粒子の内部に当該微粒子を均一に含むことができる。酸化鉄としては、酸化第二鉄、α−オキシ水酸化鉄、四酸化三鉄が例示できる。当該微粒子の平均粒子径は、シリカ系微粒子と同等であることが望ましい。すなわち、平均粒子径は100nm〜1000nmの範囲である。当該微粒子を含有することで、着色した多孔質シリカ系粒子を得ることができる。
また、上述の特徴(ii)〜(v)を備える多孔質シリカ系粒子は、以下の観点で分類できる。
[A:摩耗性か非摩耗性か]
(A1)摩耗性の多孔質シリカ系粒子
摩耗性の多孔質シリカ粒子とは、塗擦中の肌との摩擦により、摩耗して粒子径が小さくなる粒子である。その摩擦力で肌を擦ることで、マイルドな角質層のピーリング効果が得られる。そして、皮膚の損傷、角質層への線状痕等の微小な傷を防ぐことができる。摩耗性多孔質シリカ系粒子の各特性値は以下の通りである。
(ii)細孔容積(Pv)が0.1≦Pv<2.0ml/g
(iii)メジアン径(D50)が100〜1000μm
(iv)最大粒子径(D100)とメジアン径(D50)の比(D100/D50)が3.0以下
(v)1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が5〜40μm、最大粒子径(DR100)が15〜200μm
(A2)非摩耗性の多孔質シリカ粒子
一次粒子の結合が密である多孔性シリカ系粒子は、塗擦中によっても摩耗しにくく、粒子径があまり小さくならない。
非摩耗性の多孔質シリカ粒子の各特性値は以下の通りである。
(ii)細孔容積(Pv)が0.1≦Pv<2.0ml/g
(iii)メジアン径(D50)が100〜1000μm
(iv)最大粒子径(D100)とメジアン径(D50)の比(D100/D50)が3.0以下
(v)1.0〜1.4KPaの荷重で30秒間塗擦した後のメジアン径(DR50)が100〜1000μm、最大粒子径(DR100)が150〜3000μm
[B: 多孔質シリカ系粒子の形状]
(B1)球状の多孔質シリカ系粒子
球状の多孔質シリカ系粒子では、平均円形度が0.7〜1.0の範囲にある。平均円形度の高い粒子は肌に点で接触するために、使用者は塗擦開始時に瞬間的に滑らか且つ硬いスクラブ感を得ることができる。このため、使用者はスクラブ感を得るために強い塗擦力(押込圧力)で洗浄用化粧料を擦り込む必要がない。すなわち、自然と弱い塗擦力で擦り込むようになり、塗擦によるヒリヒリ感が抑えられ、また、皮膚の損傷や角質層への微小な傷が防げることとなる。そのため、角質層のバリア機能や水分保持機能の低下を防止できる。このように、上述の多孔質シリカ系粒子をスクラブ剤に適用することにより、スクラブ剤を使用しているという感触と滑らかさの両方を満たす洗浄用化粧料が得られる。また、粒子は塗擦により摩耗するので、強く擦り込みすぎた場合でも皮膚の損傷を抑制できる。
(B2)破砕状(不定形状)の多孔質シリカ系粒子
破砕状の多孔質シリカ系粒子では、平均円形度は0.1〜0.5の範囲にある。平均円形度の小さな多孔質シリカ系粒子は、その外形に稜が形成されやすい。塗擦開始時に、粒子の稜が肌に接触すると滑らか感は得られずに瞬間的に硬いスクラブ感が得られる。そのため、強い塗擦力(押込圧力)で洗浄することを防ぐことができる。
[C:ナノマテリアルに該当するかどうか]
欧州委員会より2011年10月18日付けの勧告で、1〜100nmの粒度分布が50個数%を超えるもの、単位体積当たりの比表面積(SA)が60m2/cm3を超えるもの(シリカの比重を2.2g/cm3とすると、単位重量当たりの比表面積が27m2/gを超えるもの)、のいずれかを満たすものがナノマテリアルに該当すると定義された。ナノマテリアルが、直ちに環境、健康、安全上、重大な問題を生じると確認された訳ではないが、使用者、消費者から、ナノマテリアルに該当する粒子の使用を避けることが求められる場合がある。
(C1)ナノマテリアル該当の多孔質シリカ系粒子
比表面積(SA)が60m2/cm3以上の多孔質シリカ系粒子は、ナノサイズの細孔と高い比表面積を持つ粒子であり、ナノマテリアルに該当する。
(C2)ナノマテリアル非該当の多孔質シリカ系粒子
多孔質シリカ系粒子の比表面積が5〜60m2/cm3の範囲にあると、ナノマテリアルには該当しない。
このように、多孔質シリカ系粒子は各特性の値が変わると、異なる分類の多孔質シリカ系粒子となりうる。
以下、各特性値の測定・評価法について詳細に説明する。
(1)平均円形度、メジアン径(D50)、最大粒子径(D100)、およびD100/D50
これらの値は、多孔質シリカ系粒子群のSEM(走査型電子顕微鏡)写真(倍率:100倍)を撮影し、SEM用画像解析ソフトウェア((株)オリンパス製Scandium)を用いて、無作為に選択した粒子100〜200個の画像データより求めた。
(2)形状
前述のSEM写真を観察し、形状を判断する。
(3)比表面積
多孔質シリカ系粒子の粉体を磁性ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、105℃の温度で2時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次に、サンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、比表面積(m2/g)をBET法にて測定し、シリカの比重2.2g/cm3で単位質量当たりの比表面積(m2/cm3)に換算した。
(4)細孔容積
多孔質シリカ系粒子の粉体10gをルツボに取り、105℃の温度で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却する。次いで、よく洗浄したセルに1g試料を取り、窒素吸着装置を用いて窒素を吸着させ、以下の式から細孔容積を算出した。
細孔容積(ml/g)=(0.001567×(V−Vc)/W)
上記の式で、Vは圧力735mmHgにおける標準状態の吸着量(ml)、Vcは圧力735mmHgにおけるセルブランクの容量(ml)、Wは試料の質量(g)を表す。また、窒素ガスと液体窒素の密度の比は0.001567とした。
(5)塗擦後の最大粒子径(DR100)とメジアン径(DR50
電子天秤((株)AND製HF4000)上にウレタンエラストマー製の人工皮膚(株式会社ビューラックス製、バイオスキンプレート、品番P001-001#20、195×130×5Tmm)をセットし、人工皮膚の中央部に多孔質シリカ系粒子の粉体0.2gに純水3.8gを加えたスラリーを垂らした。続いて指4本を使用して1.0〜1.4KPaの荷重で円弧状に30秒間塗擦した。この人工皮膚の中央部のスラリーを採取し、SEM(走査型電子顕微鏡)写真(倍率:100倍)を撮影し、無作為に選択した粒子100〜200個の画像データから、前述のSEM用画像解析ソフトウェアを用いて最大粒子径(DR100)とメジアン径(DR50)を計測する。
これらの特性値以外にも、以下の特性値を測定して、後述する各実施例の多孔質シリカ系粒子を評価した。
(6)平均粒子径
平均粒子径は、レーザー回折法により測定された粒度分布から求めることができる。ここでは、粒子径分布測定装置LA-950(株式会社堀場製作所製)を用いて粒度分布を測定した。
(7)SiO濃度
多孔質シリカ系粒子の粉体0.2gを白金皿で精秤し、硫酸10mlと弗化水素酸10mlを加えて、砂浴上で硫酸の白煙が出るまで加熱する。冷却後、水約50mlを加えて加温溶解する。冷却後、水200mlに希釈しこれを試験溶液とする。この試験溶液について誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)を使用し、多孔質シリカ系粒子のSiO濃度を求める。
(8)圧縮変位
多孔質シリカ系粒子に圧縮力を加えた時に生じる圧縮変位を、微小圧縮試験機「MCT−210」(島津製作所社製)を用いて測定する。圧子は「FLAT200」(島津製作所社製)を使用する。測定例を図1〜図3に示す。図1は、0から0.5gfの圧縮力を圧縮速度0.21gf/secで加えたときの多孔質シリカ系粒子の変位を示すグラフである。圧縮力0.5gf(圧縮力f1)における変位量を求めることができる。本図では約1.0μmである。
図2は、0から2.5gfの圧縮力を圧縮速度0.21gf/secで加えたときの多孔質シリカ系粒子の変位を示すグラフである。この時、階段状の変位が複数回発生している。グラフ上で、圧縮力が変化していないのに変位が増えている箇所が階段状の変位である。図中、階段状の変位の開始点を▼で示している。ここでは、階段状の変位が13回出現している。このとき、それぞれの変位量は0.01〜1.0μmである。圧縮力2.5gf(圧縮力f2)における変位d2(μm)を求め、圧縮変位の傾き(f2/d2)を算出する。圧縮変位の傾き(f2/d2)は0.5〜2.5の範囲が適している。本図では0.9である。
さらに、多孔質シリカ系粒子に圧縮力を加え続ける。ここでも圧縮力は0.21gf/secの割合で増加して加えられる。圧縮力が大きくなると、10μm以上の階段状変位が発生する。図3は、10μm以上の階段状変位が出現するまで圧縮力を加えた時の、多孔質シリカ系粒子の変位を示すグラフである。10μm以上の階段状変位が現れた時の圧縮力をf3とする。ここで圧縮力は0.21gf/secの割合で増加しながら加えられる。圧縮力f3における変位d3(μm)を求め、圧縮変位の傾き(f3/d3)を算出する。ここで、変位d3は10μm以上の階段状変位が始まった時点で測定された変位である。圧縮変位の傾き(f3/d3)は0.3〜1.25の範囲が好ましい。本図では圧縮力f3は9.8gfであり、圧縮変位の傾き(f3/d3)は1.0である。
圧縮力f3が5gf未満の場合、すなわち、10μm以上の階段状変位が最初に出現する圧縮力が5gf未満の場合、この多孔質シリカ系粒子は崩壊性があると言える。一方、圧縮力f3が5〜40gfの場合には、非崩壊性の多孔質シリカ系粒子である。この範囲では、非崩壊性ではあるが、摩耗性は備えている。また、崩壊性の多孔質シリカ系粒子は細孔容積が大きい。すなわち、崩壊性の多孔質シリカ粒子は細孔容積(ml/g)が2.0以上であり、非崩壊性の多孔質シリカ粒子は細孔容積(ml/g)が1.0以上2.0未満である。
[多孔質シリカ系粒子の製造方法]
以下に、多孔質シリカ系粒子の製造方法の一例を説明する。
(スラリーの調製工程)
この工程で、シリカゲルのスラリーを用意する。はじめに、珪酸ソーダ(水硝子)に酸を加えて酸性条件にして、珪酸液を得る。この珪酸液にアンモニアを添加してゲル化を起こさせ、シリカゲルのスラリーを得る。添加する酸の温度は40℃程度が好ましい。所望する粒子の組成に応じて、アルミニウム、ジルコニウム、チタンなどの酸化物を珪酸液に添加してもよい。このとき、珪酸液の濃度は、6〜15質量%が適している。より好ましくは7〜12質量%である。この範囲の濃度だと、アンモニアを添加した際にゲル化が起こりやすい。次いで、このシリカゲルのスラリーに天然由来高分子の分散液を添加し、高分子を含有したシリカゲルスラリーを得る。
(脱水工程)
前工程で得られた高分子を含有したシリカゲルスラリーを、濾過、遠心分離など公知の脱水手段を用いて脱水し、シリカゲルのケーキを作製する。無機塩等の不純物を除くために、ケーキを純水で洗浄することが好ましい。
(乾燥工程)
前工程で得られたケーキを乾燥させる。この乾燥工程では、スプレードライヤーによる噴霧乾燥が適している。この噴霧乾燥は、市販のスプレードライヤー(ディスク回転式やノズル式等がある)を用いた従来公知の方法で行うことができる。例えば、熱風気流中に0.1〜3リットル/分の速度で噴霧液を噴霧することによって行われる。この際、熱風の温度は、入口温度で70〜400℃、出口温度で40〜60℃の範囲にあることが好ましい。ここで、入口温度が70℃未満であると、分散液中に含まれる固形分の乾燥が不充分となる。また400℃を超えると、噴霧乾燥時に粒子の形状が歪んでしまう。また、出口温度が40℃未満であると、固形分の乾燥度合いが悪くて装置内に付着してしまう。より好ましい入口温度は、100〜300℃の範囲である。
このようにして得られた多孔質シリカ系粒子の含水率が高い場合には、250〜1000℃で焼成することが好ましい。
(篩分け工程)
噴霧乾燥工程の後に篩分け工程が設けられる。多孔質シリカ系粒子の乾燥粉体あるいは焼成粉体を篩分けすることにより、多孔質シリカ系粒子の粒径分布が適切な範囲になる。所望の粒径分布に応じて篩の目開き(メッシュ数)を選択すればよい。
次に、多孔質シリカ系粒子の製造方法の他の例を説明する。
(スラリーの調製工程)
はじめに、シリカゾルと珪酸溶液を用意する。シリカゾルはシリカ系微粒子を固形分濃度で25〜50質量%含んでいる。シリカ系微粒子の平均粒子径は100超〜1000nmの範囲にある。この大きさのシリカ系微粒子を一次粒子とする多孔質シリカ系粒子は、塗擦によって一次粒子が脱落しても、ナノマテリアルに該当することはない。なお、平均粒子径は、レーザー回折法により測定された粒度分布から求める。
珪酸溶液は珪酸成分を固形分濃度で1〜40質量%含んでいる。次に、シリカゾルと珪酸溶液を混合してスラリーを作製する。このとき、シリカ系微粒子成分と珪酸成分との質量比(シリカ/珪酸)が90/10〜98/2の範囲になるように混合される。このスラリーには、珪酸成分が固形分濃度(二酸化珪素換算)で1.5〜7.0質量%含まれている。このようなスラリーを乾燥させると、スラリー内部の珪酸成分のゲル化が乾燥初期に起こり、シリカゾルを構成する一次粒子(シリカ系微粒子)が疎なパッキング構造(凝集構造)を成し、略球状の多孔質シリカ系粒子が形成される。そのため、比表面積が小さい割には細孔容積が大きい多孔質シリカ系粒子が得られる。このような多孔質シリカ系粒子には、適度な塗擦力によって摩耗するという特性がある。スラリー中の珪酸成分の固形分濃度が1.5質量%未満の場合には、シリカ系微粒子が密なパッキング構造をとりやすくなる。そのため、細孔容積の大きな多孔質シリカ系粒子を得ることが困難となる。一方、7.0質量%を超えると、珪酸成分の安定性が低下し、経時によって微細なゲル状、または粒子状のシリカが生成される。そのため、比表面積が増加してしまい好ましくない。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定法(GPC)を用いて、珪酸溶液中の珪酸の重量平均分子量を測定する。重量平均分子量は600未満が好ましい。重量平均分子量が600以上であると珪酸溶液中にゲル状や粒子状のシリカが生成しやすくなり、且つ、バインダー力が低下する虞がある。シリカゾルと珪酸溶液を混合した場合には、なおさら珪酸溶液のゲル化が起こりやすくなる。なお、重量平均分子量の測定方法には、光散乱測定法(例えば、大塚電子株式会社製ダイナミック光散乱光度計、DLS-7000)も知られている。
珪酸溶液には、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩等の珪酸塩溶液を利用できる。アルカリ金属珪酸塩として、珪酸ナトリウムや珪酸カリウムが、有機塩基の珪酸塩として第4級アンモニウムシリケートが挙げられる。さらに、この硅酸塩溶液を脱アルカリ処理することが好ましい。特に、珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を陽イオン交換樹脂で脱アルカリ処理(Naイオンの除去等)して得られる溶液が適している。脱アルカリ処理後の溶液のpHは1〜8が好ましく、1.5〜4が適している。
ここで、脱アルカリ処理後、24時間以内に次工程の処理を行うことが望ましい。すなわち、珪酸塩溶液を脱アルカリ処理した後、24時間以内にシリカゾルと混合しスラリーを作製することが望ましい。あるいは、シリカゾルと珪酸塩溶液の混合溶液に対して脱アルカリ処理を行ってもよい。この場合、脱アルカリ処理後24時間以内に後述する噴霧乾燥工程を行うことが望ましい。24時間を超えると、溶液中に微細なゲル状または粒子状のシリカが生成しやすくなり、比表面積が大きくなる虞がある。
シリカゾルと珪酸溶液を混合して得られたスラリーに天然由来高分子の分散液を添加し、高分子を含有したスラリーを得る。
(噴霧乾燥工程)
次に、高分子を含有したスラリーを噴霧乾燥させ乾燥粉体を得る。この乾燥工程では、スプレードライヤーによる噴霧乾燥が適している。噴霧乾燥により、所定の特性を有する乾燥紛体が得られる。噴霧乾燥は、市販のスプレードライヤー(ディスク回転式やノズル式等がある)を用いた従来公知の方法で行うことができる。例えば、熱風気流中に0.1〜3リットル/分の速度で噴霧液を噴霧することによって行われる。この際、熱風の温度は、入口温度で70〜400℃、出口温度で40〜60℃の範囲にあることが好ましい。ここで、入口温度が70℃未満であると、分散液中に含まれる固形分の乾燥が不充分となる。また400℃を超えると、噴霧乾燥時に粒子の形状が歪んでしまう。また、出口温度が40℃未満であると、固形分の乾燥度合いが悪くて装置内に付着してしまう。より好ましい入口温度は、100〜300℃の範囲である。
スラリーの乾燥時間は、10分以内とする。1分以内であることが好ましい。10分以上だと、珪酸に由来する100nm以下の微粒子が発生し、比表面積が増大してしまう。乾燥の終了を数値で表すことは出来ないが、スラリーの乾燥開始から乾燥粉体採取開始までの時間を乾燥時間とみなす。
さらに、乾燥工程の後に焼成工程を設けてもよい。すなわち、乾燥粉体を焼成し、焼成粉体とする。焼成により多孔質シリカ系粒子の圧縮強度を高くすることができる。具体的には、乾燥粉体を200〜800℃で、1〜24時間焼成する。焼成温度が200℃未満、あるいは焼成時間が1時間未満では、多孔質シリカ系粒子を構成する一次粒子同士のシロキサン結合が十分でないため、圧縮強度の向上が期待できない。焼成温度が800℃を超えると、粒子の焼結により粒子内の細孔が消失し、所望の多孔性が得られない。さらに、結晶性シリカ(クオーツ等)が生成することがあるので好ましくない。また、焼成時間が24時間を超えても、格別の効果が得られないので、経済的ではない。
(篩分け工程)
噴霧乾燥工程の後に篩分け工程が設けられる。多孔質シリカ系粒子の乾燥粉体あるいは焼成粉体を篩分けすることにより、多孔質シリカ系粒子の粒径分布が適切な範囲になる。所望の粒径分布に応じて篩の目開き(メッシュ数)を選択すればよい。
[洗浄用化粧料]
上述した多孔質シリカ系粒子と、以下に述べる各種洗浄用化粧料成分とを配合して洗浄用化粧料が得られる。
各種洗浄用化粧料成分として、公知の成分を適宜含有することができる。例えば、非イオン系、カチオン系、アニオン系または両性の各種界面活性剤、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、エタノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等のアルコール類、アラビアガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、アルギン酸、グアーガム、アルブミン、プルラン、カルボキシビニルポリマー、セルロース及びその誘導体、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等の各種高分子、増粘剤、湿潤剤、着色料、防腐剤、感触向上剤、香料、殺菌剤、消炎剤、体質顔料、紫外線吸収剤等を用いることができる。
さらに、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、Fourteenth Edition 2014)等に収載されている化粧料成分を使用することができる。
本発明による洗浄用化粧料は、従来公知の方法で製造することが可能であり、高度な配合技術を駆使することは、必ずしも必要ない。
このようにして得られる洗浄用化粧料は、ペースト状、液状、ゲル状等の形態であり、具体的には、ボディ用洗浄化粧料、足用洗浄化粧料、顔用洗浄化粧料等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
[実施例1]
(スラリー調製工程)
JIS3号珪酸ソーダ20.3g(シリカ濃度29重量%)と純水49.1gを混合して、珪酸ソーダ水溶液(シリカ濃度8.5重量%)を得る。この珪酸ソーダ水溶液に、40℃に加温した硫酸水溶液(硫酸濃度25重量%)10.0gを加えて、pH4.0のスラリーAを調製する。スラリーAに、アンモニア水(アンモニア濃度15重量%)0.4gを添加し、pH7.0、珪酸ソーダ由来の珪酸濃度が7.4重量%のスラリーBを調製する。スラリーBに、セルロースナノファイバー(第一工業製薬(株)製レオクリスタ、固形分2%)32.7gと純水32.7gを混合した高分子分散液を添加し、スラリーCを調製する。
(脱水工程)
得られたスラリーCを、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械(株)製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋(株)製No.2)で濾過する。その後、純水で繰り返し洗浄し、ケーキ状物質を得る。
(乾燥・粉砕工程)
得られたケーキ状物質を、120℃で12時間乾燥する。この乾燥粉体をジューサーミキサー(日立製作所(株)製)で10秒間粉砕して、粉体を得る。
(ふるい工程)
次に、この粉体を26mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、多孔質シリカ系粒子の粉体を得る。篩分けすることにより、多孔質シリカ系粒子の粒径分布が適切な範囲になる。所望の粒径分布に応じて篩の目開き(メッシュ数)を選択すればよい。
このようにして得られた多孔質シリカ系粒子に関して、上述の物性を測定・評価した。各実施例・比較例での結果を表1にまとめた。
Figure 0006902655
[実施例2]
実施例1にて得られたケーキ状物質に、純水39gを加えて、全固形分濃度7質量%のスラリーを調製する。このスラリーを、2000rpmで回転中のロータリーアトマイザーに、40L/hrの流量で供給し、入口温度150℃、出口温度55℃のスプレードライヤー(大川原化工機社製、OC−16)にて乾燥させ、乾燥粉体を得る。この乾燥粉体を26mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、多孔質シリカ系粒子の粉体を得る。
[実施例3]
市販のシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SS−160、平均粒子径160nm、シリカ濃度20質量%)2kgをロータリーエバポレーターで濃縮して、シリカ濃度40質量%のシリカゾル1kgとする。このシリカゾルに、珪酸塩溶液としてJIS3号水硝子72.6g(シリカ濃度29質量%)を加える。さらに、陽イオン樹脂(三菱化成社製、SK−1B。以下同様)を一気に加えてpHを2.5とした後、陽イオン交換樹脂を分離する。これにより、脱アルカリ処理(Naイオンの除去等)がなされ、シリカ系微粒子濃度37.3質量%、水硝子由来の珪酸濃度2.0質量%、全固形分濃度39.3質量%のスラリーaが得られる。スラリーaに、セルロースナノファイバー(第一工業製薬(株)製レオクリスタ、固形分2%)2.3kgと純水2.3kgを混合した高分子分散液を添加し、スラリーbを調製する。
このスラリーbを、150℃、1.5rpmで回転中のドラムドライヤー(カツラギ工業(株)製、D−0405)に、10L/hrの流量で供給して乾燥させる。このとき、乾燥時間は40秒である。脱アルカリ処理から24時間以内に、この乾燥工程を行なった。その後、ジューサーミキサー(日立製作所(株)製)で10秒間粉砕して、乾燥粉体を得る。さらに、この乾燥粉体を26mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるい、多孔質シリカ系粒子の乾燥粉体を得た。
本実施例では、平均粒子径160nmのシリカゾルを原料として用いているため、多孔質シリカ系粒子は平均粒子径100〜1000nmのシリカ系微粒子で構成されている。この範囲のシリカ系微粒子を一次粒子とする多孔質シリカ系粒子の場合には、塗擦によって一次粒子が脱落したとしても、ナノマテリアルに該当することはない。
なお、シリカ系微粒子として、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニアなどの粒子が適用できる。シリカ系微粒子の組成の違いによって多孔質シリカ系粒子の製造条件を変更する必要はない。化粧料に配合することを考慮すると、非晶質シリカが好適である。
[実施例4]
実施例3にて得られたスラリーBを、2000rpmで回転中のロータリーアトマイザーに、40L/hrの流量で供給し、入口温度150℃のスプレードライヤー(大川原化工機社製、OC−25)により乾燥させ、乾燥粉体を得る。脱アルカリ処理から24時間以内に、この噴霧乾燥工程を行なった。さらに、この乾燥粉体を26mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるい、多孔質シリカ系粒子の乾燥粉体を作製する。
[実施例5]
実施例1にて得られたスラリーAに、セルロースナノファイバー(第一工業製薬(株)製レオクリスタ、固形分2%)32.7gと純水32.7gを混合した高分子溶液を添加し、スラリーC’を調製する。このスラリーC’を実施例1と同様に、洗浄工程、乾燥・粉砕工程、ふるい工程に供し、多孔質シリカ系粒子を作製した。
[実施例6]
高分子分散液として、セルロース・キサンタンガム複合体粒子(旭化成(株)製セオラス(登録商標)RC−N30)0.7gと純水6.3gを混合した高分子分散液を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製した。
[実施例7]
高分子分散液として、キトサン(大日精化工業(株)製ダイキトサンFP)0.7gと純水6.3gを混合した高分子分散液を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製した。
[実施例8]
高分子分散液として、カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム(株)製CMCダイセル1380)0.7gと純水63.0gを混合した高分子分散液を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製した。
[実施例9]
高分子分散液として、スクレロチウムガム(Alban Muller International製AMIGEL)0.7gと純水63.0gを混合した高分子分散液を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製した。
[実施例10]
高分子分散液として、ヒドロキシプロピルデンプリン酸(アグゾノーベル(株)製Structure XL)0.7gと純水63.0gを混合した高分子分散液を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質シリカ系粒子を作製した。
[比較例1]
ふるい工程を行わない以外は実施例1と同様にして多孔質シリカ系粒子を作製し、評価する。ふるい工程を経ていないため、粗大粒子が多く存在し、最大粒子径が大きくなる。そのため、弱い塗擦力であっても塗擦開始時に皮膚を損傷する虞がある。
[比較例2]
実施例3のスラリーaをスプレードライヤー(大川原化工機社製、OC−25)によって噴霧乾燥し、球状の多孔質シリカ系粒子を作製する。すなわち、入口温度は150℃、2000rpmのロータリーアトマイザーに10L/hrの流量でスラリーaを供給して噴霧乾燥する。本比較例では、粉砕やふるいを実施していない。
[比較例3]
粉砕時間を45秒間に、篩を281mesh篩(JIS試験用規格篩)に変更した以外は実施例1と同様にして多孔質シリカ系粒子を作製する。粉砕時間が長く、篩の目開きが小さいため、平均粒子径は小さい。そのため、塗擦してもスクラブ感が感じられず、スクラブ剤に適さない。
[比較例4]
実施例1のスラリーAに、アンモニア水2.1gを添加し、pHが9.0となったところで40℃のまま2時間攪拌し、珪酸ソーダ由来の珪酸濃度が7.3重量%のスラリーB’を調製する。これ以外は、実施例1と同様に多孔質シリカ系粒子を作製する。この多孔質シリカ系粒子は、細孔容積が大きく、塗擦によるスクラブ感が得られない。また、細孔容積が大きいため、小さい圧縮力でも変位量が大きい。表1に示すように、圧縮力2.0gfで10μm以上の階段状変位を生じている。
[比較例5]
比較例2にて得られた多孔質シリカ系粒子5gを、セルロースナノファイバー(第一工業製薬(株)製レオクリスタ、固形分2%)27.8gと純水27.8gを混合した高分子分散液に投入し、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械(株)製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋(株)製No.2)で濾過し、ケーキ状物質を得る。得られたケーキ状物質を、120℃で12時間乾燥する。この乾燥粉体をジューサーミキサー(日立製作所(株)製)で10秒間粉砕して、粉体を得る。次に、この粉体を26mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、多孔質シリカ系粒子の粉体を得る。このように調製された多孔質シリカ系粒子は、天然由来高分子が多孔質シリカ系粒子の最表面にのみ存在し、5質量%の上澄み水溶液のCOD値が200mg/Lを超える。これにより、本品を配合した洗浄様化粧料を、肌に塗擦した際に所望の効果が得られない。
[洗浄用化粧料の調製]
実施例1〜10または比較例1〜5で得られた多孔質シリカ系粒子を成分(1)として、表2に示す配合比率(質量%)となるように、各成分(2)〜(15)をビーカーに入れ、ホモジナイザーを使用して撹拌し、均一に混合した。これにより、実施例1〜10の多孔質シリカ系粒子を配合した化粧料A〜J、および比較例1〜5の多孔質シリカ系粒子を配合した化粧料a〜eが得られる。
Figure 0006902655
次いで、このようにして得られた化粧料A〜Jおよび化粧料a〜eの使用感(塗布中の感触と塗布後の感触)について、以下の試験法で評価した。
[洗浄用化粧料の使用感の評価]
多孔質シリカ系粒子を配合した洗浄用化粧料について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、スクラブ感、ヒリヒリ感のなさ、ソフトな触感、洗浄後の肌のつや、洗浄後の肌のくすみのなさ、洗浄後のヒリヒリ感のなさ、洗浄後の肌のしっとり感の7つの評価項目に関して聞き取り調査を行う。その結果を以下の評価点基準(a)に基づいて評価した。また、各人がつけた評価点を合計し、以下の評価基準(b)に基づき洗浄用化粧料の使用感に関する評価を行った。
評価点基準(a)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
その評価結果を表3に示す。化粧料A〜Jは、その使用感が洗浄中、洗浄後においても非常に優れていることが分かった。しかし、化粧料a〜eは、その使用感がよくないことが分かった。
Figure 0006902655

Claims (2)

  1. (i)生分解性高分子の含有量が1〜50質量%の範囲であり、
    (ii)細孔容積(Pv)が0.1≦Pv<2.0ml/gの範囲であり、
    (iii)メジアン径(D50)が100〜1000μmの範囲であり、
    (iv)最大粒子径(D100)とメジアン径(D50)との比(D100/D50)が3.0以下である、多孔質シリカ系粒子であって、
    粒子表面および1次粒子間に前記生分解性高分子が存在することを特徴とする多孔質シリカ系粒子。
  2. 請求項1に記載の多孔質シリカ系粒子と洗浄用化粧料成分とを含む洗浄用化粧料。
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