JP6902362B2 - ボイラ火炉の位置測定システム及び位置測定方法 - Google Patents

ボイラ火炉の位置測定システム及び位置測定方法 Download PDF

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Description

本開示は、ボイラ火炉における位置測定を行うための位置測定システム、及び、位置測定方法に関する。
例えば火力発電所で用いられるボイラ火炉では、製造時や運用開始後の検査時に、内部に作業者が入り込んで、修理や点検等の保守作業が実施される。このような保守作業は、作業の実施位置を明確に管理しながら遂行される必要があるが、この種のボイラ火炉は規模の大きな構造物であるため、精度のよい位置管理は容易ではない。特に高所位置では作業員がアクセスするための足場をボイラ火炉の内部に架設しながら作業が行われるため、多大な労力、コスト及び所要期間を要している。
このような保守作業の負担を軽減するために、例えば特許文献1には、ボイラ火炉等の構造物の内部を遠隔操作により浮遊して移動可能な無人浮遊機を用いた屋内監視システムが開示されている。このシステムでは、無人浮遊機で測定される構造物の内壁面との距離や機体姿勢に基づいて、遠隔操作される無人浮遊機の位置情報が取得されている。
特開2016−15628号公報
上記特許文献1では、構造物の内壁面との距離や機体姿勢に基づいて無人浮遊機の位置情報が求められる。そのため構造物の内壁面との距離や機体姿勢の測定精度によって、位置情報の精度には限界があった。また実際の構造物には、運転時に熱膨張等の影響によって当初の設計データから乖離している場合があり、このような影響を加味しながら、精度のよい位置情報を扱うことは困難であった。また上記特許文献1では、位置情報は数値的データとして得られるが、このような数値的な位置情報は実際に設計図面や実機を参照しながら保守作業を行う作業員にとって現場との照合が難しく、取り扱いに手間がかかるという事情もある。
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、作業員にとって容易に把握が可能な態様で、精度のよい位置測定が可能なボイラ火炉の位置測定システム及び位置測定方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るボイラ火炉の位置測定システムは上記課題を解決するために、ボイラ火炉の内部空間を移動しながら、前記ボイラ火炉の三次元点群データを測定する移動体と、前記移動体から前記三次元点群データを取得する三次元点群データ取得部と、前記ボイラ火炉の設計データを取得する設計データ取得部と、前記三次元点群データの各点と前記設計データとの対応関係を設定する対応関係設定部と、前記対応関係設定部で設定された前記対応関係に基づいて、前記三次元点群データの各点を前記設計データに対応付けたマッピングデータを作成するマッピングデータ作成部と、前記マッピングデータ上で選択された測定位置について、前記設計データに含まれる構成要素を基準とした相対的位置によって位置情報を算出する位置情報算出部と、を備える。
上記(1)の構成によれば、移動体で測定された三次元測定データを設計データと対応付けることにより、マッピングデータが作成される。このようなマッピングデータ上で選択された測定位置は、設計データに含まれる構成要素を基準とした相対的位置によって算出されるため、作業員にとって容易に把握が可能である。また実測結果である三次元測定データに基づいて位置情報が算出されるため、運転時に熱膨張等の影響によって当初の設計データから乖離している場合であっても、精度のよい位置測定が可能である。
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、前記構成要素は、前記ボイラ火炉の隔壁上で所定方向に沿って配列された複数の伝熱管を含む。
上記(2)の構成によれば、測定位置を伝熱管を基準とした相対的位置として算出することで、マッピングデータを参照する作業員が位置情報を容易に把握でき、取り扱いに有利である。
(3)幾つかの実施形態では上記(2)の構成において、前記複数の伝熱管の各々には予め識別番号が付与されており、前記相対的位置は前記識別番号を用いて表される。
上記(3)の構成によれば、伝熱管の識別番号を用いて作業員が感覚的に把握が容易な態様で位置情報を精度よく算出できる。
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一構成において、前記構成要素は、前記ボイラ火炉の隔壁上に設けられた特徴点を含む。
上記(4)の構成によれば、位置情報を表すための相対的位置を、隔壁上の特徴点を基準とすることで、作業員にとって容易に把握可能な態様で位置測定が可能となる。
(5)幾つかの実施形態では上記(4)の構成において、前記特徴点はデスラッガである。
上記(5)の構成によれば、特徴点としてデスラッガが使用される。尚、このような特徴点の他の例としては、例えばボイラ火炉に備えられる覗き窓、バーナー、エアポート、溶接線等の構成要素も採用可能である。
(6)幾つかの実施形態では上記(1)から(5)のいずれか一構成において、前記位置情報算出部は、前記位置情報に対応する前記ボイラ火炉の外部側位置を算出する。
上記(6)の構成によれば、ボイラ火炉の内部空間に対してアクセスが困難である場合であっても、内部空間側の位置情報に対応する外部側位置を算出できる。これにより、作業員はボイラ火炉の外部にいながら直接視認が困難な内部空間側を容易に把握できる。
(7)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか一構成において、前記移動体は、前記ボイラ火炉の前記内部空間を飛行可能な飛行体であり、前記ボイラ火炉の隔壁には、前記移動体の離発着ポートが設けられており、前記離発着ポートは、前記隔壁に開口された開口部と、前記移動体を格納可能な格納部を先端に有し、前記格納部を前記開口部を介して前記内部空間に挿入可能に構成されたロッド部と、を備え、前記格納部は、前記内部空間に挿入された際に、前記開口部より広く展開可能に構成されている。
上記(7)の構成によれば、移動体はコンパクトに折りたたまれた格納部に格納された状態で、開口部を介して内部空間に挿入されるため、開口部が小さく済み、開口部が設けられることによるボイラ火炉の基本的性能への影響を抑えることができる。また格納部は内部空間で広く展開することで、移動体の離発着を安定的に行うことができる。
(8)幾つかの実施形態では上記(7)の構成において、前記離発着ポートは、前記飛行体の離発着面に形成された視覚パターンを有し、前記飛行体は、前記視覚パターンを認識しながら前記離発着面への着陸動作を自動的に行う。
上記(8)の構成によれば、測定後に飛行体が離発着ポートに帰還する際に、離発着ポートの離発着面に形成された視覚パターンを認識しながら、飛行体の着陸動作が自動的に行われる。限られたスペースの離発着ポートへの着陸動作は、仮にユーザ自身によって行おうとすると、閉空間内を飛行する飛行体に対して細心の注意を払いながら煩雑な操作を伴ってしまう。本構成では、飛行体で離発着面の視覚パターンを認識することよって、離発着面に対する飛行体の相対的位置を把握することができ、煩雑な操作を伴うことのない自動的な着陸動作を安定的に実施できる。
(9)幾つかの実施形態では上記(7)の構成において、前記離発着ポートは、前記飛行体に対して信号を発信可能な信号発信部を有し、前記飛行体は、前記信号発信部から発信された前記信号を受信することにより、前記離発着ポートへの着陸動作を自動的に行う。
上記(9)の構成によれば、測定後に飛行体が離発着ポートに帰還する際に、離発着ポートの信号発信部からの信号を受信することにより、離発着ポートに対する飛行体の相対的位置を把握することができ、煩雑な操作を伴うことのない自動的な着陸動作を安定的に実施できる。
(10)本発明の少なくとも一実施形態に係るボイラ火炉の位置測定方法は上記課題を解決するために、ボイラ火炉の内部空間を移動しながら、前記ボイラ火炉の三次元点群データを測定する工程と、前記移動体から前記三次元点群データを取得する工程と、前記ボイラ火炉の設計データを取得する工程と、前記三次元点群データの各点と前記設計データとの対応関係を設定する工程と、前記対応関係に基づいて、前記三次元点群データの各点を前記設計データに対応付けたマッピングデータを作成する工程と、前記マッピングデータ上で選択された測定位置について、前記設計データに含まれる構成要素を基準とした相対的位置によって位置情報を算出する工程と、を備える。
上記(10)の方法は、上述のボイラ火炉の位置測定システム(上記各種態様を含む)により公的に実施可能である。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、作業員にとって容易に把握が可能な態様で、精度のよい位置測定が可能なボイラ火炉の位置測定システム及び位置測定方法を提供できる。
ボイラ火炉の全体構成を示す模式図である。 図1の隔壁の水平方向に沿った断面図である。 図1の内壁を移動体によって位置測定する様子を示す模式図である。 図1の移動体を拡大して示す斜視図である。 保守作業に用いられる作業装置を伝熱管の軸方向から示す模式図である。 図5の作業装置を伝熱管の側方から示す模式図である。 離発着ポートへの自動着陸制御の一態様を示す模式図である。 図7の離発着面に形成された視覚パターンを示す平面図である。 離発着ポートへの自動着陸制御の他の態様を示す模式図である。 図1の解析装置の内部構成を機能的に示すブロック図である。 図10の解析装置によって実施される位置測定を工程毎に示すフローチャートである。 対応関係に基づくマッピングデータの作成手順を概念的に示す模式図である。 図11のステップS104で作成されるマッピングデータの他の例である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
以下の実施形態では、例えば火力発電所等で利用される比較的大きな構造物であるボイラ火炉1において、検査や修理を含む保守作業を実施する際に、ボイラ火炉1の内部空間に対して位置測定を行う場合を例に説明する。図1はボイラ火炉1の全体構成を示す模式図であり、図2は図1の隔壁6の水平方向に沿った断面図であり、図3は図1の内壁6aを移動体14によって位置測定する様子を示す模式図である。
ボイラ火炉1は、内部に燃焼室を形成する内部空間2を有する中空状の構造体からなる。図1では、ボイラ火炉1の構造のうち、保守作業の際に位置測定の対象となる内部空間2を外部空間4に対して隔離する隔壁6が代表的に示されているが、例えば燃料を燃焼するためのバーナー等の一般的なボイラ設備に備えられている各種構成要素が設けられている。
内部空間2の隔壁6は、図2及び図3に示されるように、フィン8によって互いに接合された複数の伝熱管10によって構成されている。複数の伝熱管10は鋼材からなる中空状の管状部材であって、本実施形態では、鉛直(高さ)方向に沿って互いに略平行に延在している。各伝熱管10はフィン8に対して溶接によって接合されている。
伝熱管10の内部には、冷却水又は蒸気等の流体媒体12が流れている。隔壁6のうち内部空間2に面する内壁6a側では複数の伝熱管10が露出しており、内部空間2で燃焼により熱量が発生すると、伝熱管10を介して流体媒体12が加熱される。
このような構成を有するボイラ火炉1では、検査や修理を目的とする保守作業が適宜実施される。この種の保守作業は、以下に説明する位置測定システム100によって作業の実施箇所の位置を測定しながら、管理・遂行される。
位置測定システム100は、ボイラ火炉1の内部空間2を移動可能な移動体14を備える。ここで図4は図1の移動体14を拡大して示す斜視図である。本実施形態では、移動体14は、本体14aに移動用の浮力及び推力を得るための動力手段である複数のプロペラ14bが設けられた飛行体である。移動体14は、外部と通信可能な通信部(不図示)を備えており、外部から受信する操作信号に基づいて遠隔操作可能に構成されている(図1では、ボイラ火炉1の外部にいる作業員によって操作されるコントローラ16によって、内部空間2にある移動体14が遠隔操作される様子が示されている)。
移動体14には、三次元点群データを取得するための三次元点群データ測定部14cが搭載されている。三次元点群データ測定部14cは、移動体14によって移動しながら三次元点群データを測定可能な移動測定装置である。具体的には、例えば広範囲を高密度で測定可能なレーザスキャナが用いられており、位相差方式及び飛行時間差方式のいずれでもよい。一般的な移動測定では、レーザスキャナで測定した座標を、GPS及びIMUで測定した位置と姿勢で変換することで点群データが得られるが、ボイラ火炉1の内部空間2では、GPS信号を受信できないため、例えばターゲットとする基準点の位置を移動しながら連続確認することで、座標変換が行われる。図3では、移動体14に搭載された三次元点群データ測定部14cから、隔壁6の内壁6aに対してレーザ照射が行われることで、三次元点群データが取得される様子が示されている。
尚、三次元点群データ測定部14cで測定された三次元点群データは、通信部を介して、位置測定に関する各種演算が行われる解析装置50に対して随時送信される。また用途によっては、三次元点群データ測定部14cで測定された三次元点群データを、移動体14に搭載された記憶装置に蓄積し、後で取り出し可能に構成してもよい。
このような移動体14は、図4に示されるように、ボイラ火炉1の隔壁6に設けられた離発着ポート18を拠点に、内部空間2を移動しながら測定を行う。離発着ポート18は、ボイラ火炉1の隔壁6に開口された開口部18aを有する。開口部18aは、通常時(保守作業が行われない場合)には閉じられており、ボイラ火炉1の内部空間2が外部に対して閉鎖されるように構成されているが、保守作業時には不図示の開閉機構によって開放されることで、移動体14の導入に用いられる。
移動体14は、開口部18aが開放された際に、開口部18aを出入可能なロッド部18bの先端に設けられた格納部18cに格納された状態で、内部空間2に導入される。移動体14が格納された格納部18cは、内部空間2に導入された後、図4の矢印のように展開される。これにより、格納部18cに格納された移動体14が、内部空間2に対して露出され、離陸可能な状態となる。
保守作業時には、隔壁6の内壁6aに沿って移動可能な作業装置20によって保守作業を実施しながら、移動体14によって作業装置の位置が測定される。ここで図5は保守作業に用いられる作業装置20を伝熱管10の軸方向から示す模式図であり、図6は図5の作業装置20を伝熱管10の側方から示す模式図である。作業装置20は、測定素子である探触子22が搭載された本体部20aと、本体部20aを測定対象である内壁6aに支持するための支持部20bとを備える。本体部20aに搭載された探触子22は超音波等の電磁波を内壁6aに対して照射し、その反射波を検知することで内壁6aの状態を検査するための素子である。
尚、本実施形態では一形態として検査用の探触子22を搭載した場合を例示しているが、保守作業の用途・目的に応じて他の素子等を搭載してもよい。
支持部20bは、本体部20aの両側に設けられており、検査対象である内壁6aにある伝熱管10に対して、幅方向に両側から把持するように構成されている。特に、支持部20bは本体部20aに対して不図示のバネ部材によって内側に付勢されている。これにより、作業装置20は当該バネ部材による付勢力によって、伝熱管10に対して安定的に支持される。
また支持部20bの先端には、周方向に沿った車輪24が設けられている。支持部20bは、伝熱管10からフィン8が保守作業のために撤去された際に、伝熱管10を少なくとも部分的に囲む位置に車輪24が配置されるように構成されている(図5を参照)。これにより、作業装置20は不図示の駆動機構によって車輪24が駆動されることにより、探触子22が搭載された本体部20aを周方向に沿って回転移動することで、全周検査が可能になっている。
また本体部20aと支持部20bとの間には、伝熱管の延在方向に沿った隙間26が設けられている。これにより、本体部20a及び支持部20bは、不図示の駆動機構によって、隙間26の分だけ伝熱管10の長手方向に沿った位置調整もできるように構成されている。
保守作業では、このような作業装置20の位置を移動体14によって測定しながら、作業装置20を内壁6a上で移動させながら作業を実施する。作業装置20で取得した検査結果は、図1の解析装置50に送られ、移動体14で測定された位置情報と紐付けられることによって、管理される。このとき移動体14によって測定された三次元点群データに基づく位置測定の詳細については、後述することとする。
保守作業が完了すると、内部空間2の移動体14は、コントローラ16による遠隔操作によって離発着ポート18に帰還するように制御される。このような帰還動作では、離発着ポート18の近傍まではコントローラ16からの指令に従って移動した後、自動的に着陸制御がなされる。着陸時には予め離発着ポート18が、図4の矢印で示されるように、着陸可能な面積が広くなるように展開する。このとき離発着ポート18の表面には、例えば着陸目標となる所定パターンが表示されており、移動体14は当該パターンを認識しながら着陸動作が自動的に行われるようになっている。
ここで移動体14の離発着ポート18への着陸動作について、具体的に説明する。図7は離発着ポート18への自動着陸制御の一態様を示す模式図であり、図8は図7の離発着面18aに形成された視覚パターン19を示す平面図である。
離発着ポート18のうち移動体14の着陸目標地点を含む離発着面18aには、所定の視覚パターン19が形成されている。視覚パターン19は、図8に示されるように、例えば、着陸地点17を中心とする複数の同心円からなるパターンとして形成されているが、飛行している移動体14から視認可能な任意のパターンを採用可能である。
移動体14には、視覚パターン19を視認するための視覚センサ(例えばCCDカメラや赤外線カメラ等)21が搭載されており、視覚センサ21によって離発着面18a上の視覚パターン19を認識するとともに、当該認識した視覚パターン19が、着陸目標地点に移動体14が着陸した際に視認される視覚パターン(画像認識技術により予め学習して記憶しておいた視覚パターン)19´に合致するように移動体14の動作を自動的に制御することで、移動体14と離発着ポート18との相対的位置関係を認識しながら自動的な着陸動作が実現される。本来、このような離発着ポート18への着陸動作はユーザ自身によってマニュアル的に行おうとすると、閉空間内を飛行する移動体14の飛行姿勢に対して細心の注意を払う必要があり、走査が非常に煩雑となるが、このような自動制御によって、安定的な着陸動作を実施できる。
また図9は離発着ポート18への自動着陸制御の他の態様を示す模式図である。この態様では、離発着ポート18の離発着面18aには、移動体14に対して通信用の信号を発信可能な信号発信部23が設けられている。移動体14には信号を受信するための信号受信センサ25が搭載されており、信号発信部23から発信された信号を受信する。これにより、離発着ポート18に対する移動体14の相対的位置を把握しながら、移動体14の着陸動作を自動制御できる。これもまた、ユーザ側の煩雑な操作が不要であり、安敵的な着陸動作を実施できる。
このような着陸制御によって移動体14が離発着ポート18に着陸すると、離陸時とは逆に、格納部18cは図4の矢印に示されるように折りたたまれた後、開口部18aを介して外部に搬出される。その後、開口部18aは不図示の開閉機構によって閉じられ、ボイラ火炉1の内部空間2は閉鎖状態に戻される。
このように離発着ポート18は、格納部18cが開口部18aを入出する際にコンパクトに折りこみ可能な形状を有することによって、開口部18aの開口径が小さく済み、離発着ポート18を設けることによるボイラ火炉1の基本的性能への影響を抑えることができる。また格納部18cはボイラ火炉1の内部空間2に挿入された後に広く展開可能に構成されることで、移動体14の安定した離発着動作が可能となっている。
続いて移動体14によって測定された三次元点群データを用いた、位置測定制御について詳しく説明する。図10は図1の解析装置50の内部構成を機能的に示すブロック図であり、図11は図10の解析装置50によって実施される位置測定を工程毎に示すフローチャートである。
解析装置50は、位置測定システム100の演算処理ユニットであり、例えばコンピュータのような電子演算装置によって構成される。典型的には、各種情報を入力可能な入力デバイス、各種情報を記憶可能な記憶デバイス、各種情報を演算可能な演算デバイス、各種情報を出力可能な出力デバイスを含んで構成されるが、これら電子演算装置の一般的構成については公知の例に倣うこととし、ここでは詳しい説明は省略する。このような解析装置50は、予め記憶デバイスに記憶されたプログラムに従って動作することにより、本発明の少なくとも一実施形態に係る位置測定方法を実施するように構成されている。
解析装置50は、図10に示されるように、移動体14から三次元測定データを取得する三次元点群データ取得部52と、ボイラ火炉1の設計データを取得する設計データ取得部54と、三次元点群データの各点と設計データとの対応関係を設定する対応関係設定部56と、対応関係設定部56で設定された対応関係に基づいて、三次元点群データの各点を設計データに対応付けたマッピングデータを作成するマッピングデータ作成部58と、マッピングデータ上で選択された測定位置について、設計データに含まれる構成要素を基準とした相対的位置によって位置情報を算出する位置情報算出部60と、位置情報算出部60で算出された位置情報をマッピングデータとともに表示する表示部62と、測定位置を入力するための入力部64と、を備える。
まず解析装置50では、三次元点群データ取得部52によって、移動体14で測定された三次元点群データが取得される(ステップS101)。続いて設計データ取得部54は、外部に用意された設計データベース70にアクセスすることにより、予め設計データベース70に格納されている設計データを取得する(ステップS102)。設計データは保守作業の対象であるボイラ火炉1に関する設計内容が規定されており、製造当初の設計内容をはじめ、その後の改造、修復、検査等の履歴・変更内容が含まれていてもよい。設計データには、例えば、ボイラ火炉1を構成する上述のフィン8や伝熱管10の仕様(材質、サイズ、配置等)が含まれる。
続いて対応関係設定部56は、三次元点群データ取得部52で取得された三次元点群データの各点を、設計データ取得部54で取得された設計データに対応付けるための対応関係を設定する(ステップS103)。続いてマッピングデータ作成部58は、対応関係設定部56によって設定された対応関係に基づいて、三次元点群データの各点の三次元座標を設計データに対応付けたマッピングデータ80を作成する(ステップS104)。
ここで図12は対応関係に基づくマッピングデータ80の作成手順を概念的に示す模式図である。三次元点群データ取得部52で取得される三次元点群データは、図3に示されるようにレーザが照射される内壁6aを構成する三次元座標点の点群データである。図12の例では、三次元点群データに含まれるデータ例として、点A(x1、y1、z1)、点B(x2、y2、z2)、・・・が代表的に示されている。一方、設計データには保守対象であるボイラ火炉1に含まれる各構造物に関する詳細仕様が規定されている。
図12に示されるようにマッピングデータ80は、三次元点群データの各点A、B、・・・が、設計データに含まれる構成要素である各伝熱管10−1、10−2、・・・に対応付けられた形で作成される。すなわちステップS103における設定関係の作成は、三次元点群データに含まれる各点が設計データに含まれる情報にリンクづけられることにより行われる。図12の例では、三次元点群データに含まれる点A(x1、y1、z1)が伝熱管10−2の高さz1の位置に対応し、三次元点群データの点B(x2、y2、z2)は伝熱管10−6の高さz2の位置に対応するように、実測値として測定された三次元点群データと、設計値から一義的に決められる三次元形状との対応関係が示されている。
尚、設計データの規定内容と実機との間に差異がない場合には、実測値として測定された三次元点群データと、設計値に基づく三次元形状とは理想的に一致するが、実際には修理・修復、改造などの設計変更、製造誤差、熱膨張等の影響によって少なからず差異が存在する。このような差異は、規模が大きいボイラ火炉1では無視できない大きさとなり、実機と設計値との間にずれをもたらす。ステップS103では、このように実機と設計値との間にズレがあったとしても、両者を対応付けることで、正確な位置特定が可能となる。
このように作成されたマッピングデータ80は、解析装置50の解析結果を表示するための表示部62(例えばディスプレイ等)に表示される(ステップS105)。そして表示部62に表示されたマッピングデータ80では、例えばマウスやポインタ等の入力部64で特定の位置が選択されると(ステップS106)、当該位置に対応する位置情報が表示される(ステップS107)。
ここで、ステップS107で表示される位置情報は、位置情報算出部60によって、マッピングデータ80上で選択された測定位置について、設計データに含まれる構成要素を基準とした相対的位置によって算出される。例えば、図12の例では、点Aを測定位置として選択すると、「点Aは、2番目の伝熱管10−2のz1の高さである」のように、設計データに含まれる構成要素である伝熱管10を基準とした相対的位置として表示されるように算出される。このような測定位置の表示は、図12に示されるように、マッピングデータ80に対応するグラフィック上に重ねて行われることにより、作業者は内壁6aの構成レイアウトを視覚的に容易に認識できるとともに、伝熱管10を基準とした感覚的な認識が可能となる。
尚、上述のステップS107では、測定対象の位置をマウスやポインタ等によって手動選択した場合を例示したが、例えば移動体14に搭載されたカメラ等の撮像装置の撮像内容に基づいて自動的に選択されるようにしてもよい。例えば、移動体14で内壁6a上の作業装置20を撮像し、当該画像に基づいて作業装置20を自動的に認識することで、内壁6a上の作業装置20の位置測定を自動的に行うようにしてもよい。この場合、作業装置20による保守作業の実施内容を位置測定と自動的に進めることで、保守作業で生じる大量のデータを位置情報と関連付けながら容易に蓄積でき、保守作業の効率化に効果的である。
また図13は、図11のステップS104で作成されるマッピングデータ80の他の例である。この例では、対応関係設定部56は三次元点群データと設計データとを対応付ける際に、基準位置となる特徴点90が特定される。この特徴点90は、測定対象において基準位置となり得る程度に特徴的構造を有する位置に対応するものであって、図13では、内壁6a上に設けられた複数のデスラッガ90aが示されている。
尚、特徴点90の他の例としては、例えばボイラ火炉に備えられる覗き窓、バーナー、エアポート、溶接線等もあるが、これに限定されるものではない。
そして表示部62では、図13に示されるように、特徴点90を含むマッピングデータ80上に、入力部64で選択された位置に関する位置情報が、当該特徴点90を基準とした相対的位置として示される。図13の例では、複数の特徴点90(デスラッガ90a−1、90a−2、・・・)が示されているので、測定位置の最寄りとなる2番目のデスラッガ90a−2を基準とする相対座標(X3、Z3)によって、位置情報が示されている。
また上述の実施形態では、内部空間2側にある内壁6a上における位置情報を示す場合について説明したが、このような内壁6a上の位置に対応する外部空間4側の位置情報を示すようにしてもよい。例えば伝熱管10は図2に示されるように内部空間2及び外部空間4の間に配置されているため、保守作業の内容によっては内部空間2側からの作業が困難であり、外部空間4側から作業を行わなければならない場合がある。このような場合、内部空間2で移動体14によって保守作業の対象位置を測定し、それに対応する外部空間4側の位置情報を示すことで、作業者は外部空間4にいながら保守作業の対象位置に対してアクセスすることができる。
以上説明したように本発明の少なくとも一実施形態によれば、作業員にとって容易に把握が可能な態様で、精度のよい位置測定が可能なボイラ火炉の位置測定システム及び位置測定方法を実現できる。
本発明の少なくとも一実施形態は、ボイラ火炉における位置測定を行うための位置測定システム、及び、位置測定方法に利用可能である。
1 ボイラ火炉
2 内部空間
4 外部空間
6 隔壁
8 フィン
10 伝熱管
12 流体媒体
14 移動体
16 コントローラ
18 離発着ポート
20 作業装置
22 探触子
24 車輪
26 隙間
50 解析装置
52 三次元点群データ取得部
54 設計データ取得部
56 対応関係設定部
58 マッピングデータ作成部
60 位置情報算出部
62 表示部
64 入力部
70 設計データベース
80 マッピングデータ
90 特徴点
100 位置測定システム

Claims (10)

  1. ボイラ火炉の内部空間を移動しながら、前記ボイラ火炉の三次元点群データを測定する移動体と、
    前記移動体から前記三次元点群データを取得する三次元点群データ取得部と、
    前記ボイラ火炉の設計データを取得する設計データ取得部と、
    前記三次元点群データの各点と前記設計データとの対応関係を設定する対応関係設定部と、
    前記対応関係設定部で設定された前記対応関係に基づいて、前記三次元点群データの各点を前記設計データに対応付けたマッピングデータを作成するマッピングデータ作成部と、
    前記マッピングデータ上で選択された測定位置について、前記設計データに含まれる構成要素を基準とした相対的位置によって位置情報を算出する位置情報算出部と、
    を備える、ボイラ火炉の位置測定システム。
  2. 前記構成要素は、前記ボイラ火炉の隔壁上で所定方向に沿って配列された複数の伝熱管を含む、請求項1に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  3. 前記複数の伝熱管の各々には予め識別番号が付与されており、
    前記相対的位置は前記識別番号を用いて表される、請求項2に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  4. 前記構成要素は、前記ボイラ火炉の隔壁上に設けられた特徴点を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  5. 前記特徴点はデスラッガである、請求項4に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  6. 前記位置情報算出部は、前記位置情報に対応する前記ボイラ火炉の外部側位置を算出する、請求項1から5のいずれか一項に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  7. 前記移動体は、前記ボイラ火炉の前記内部空間を飛行可能な飛行体であり、
    前記ボイラ火炉の隔壁には、前記移動体の離発着ポートが設けられており、
    前記離発着ポートは、
    前記隔壁に開口された開口部と、
    前記移動体を格納可能な格納部を先端に有し、前記格納部を前記開口部を介して前記内部空間に挿入可能に構成されたロッド部と、を備え、
    前記格納部は、前記内部空間に挿入された際に、前記開口部より広く展開可能に構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  8. 前記離発着ポートは、前記飛行体の離発着面に形成された視覚パターンを有し、
    前記飛行体は、前記視覚パターンを認識しながら前記離発着面への着陸動作を自動的に行う、請求項7に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  9. 前記離発着ポートは、前記飛行体に対して信号を発信可能な信号発信部を有し、
    前記飛行体は、前記信号発信部から発信された前記信号を受信することにより、前記離発着ポートへの着陸動作を自動的に行う、請求項7に記載のボイラ火炉の位置測定システム。
  10. ボイラ火炉の内部空間を移動しながら、前記ボイラ火炉の三次元点群データを測定する工程と、
    記三次元点群データを取得する工程と、
    前記ボイラ火炉の設計データを取得する工程と、
    前記三次元点群データの各点と前記設計データとの対応関係を設定する工程と、
    前記対応関係に基づいて、前記三次元点群データの各点を前記設計データに対応付けたマッピングデータを作成する工程と、
    前記マッピングデータ上で選択された測定位置について、前記設計データに含まれる構成要素を基準とした相対的位置によって位置情報を算出する工程と、
    を備える、ボイラ火炉の位置測定方法。
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