JP6902215B1 - イオン注入装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】注入条件を変えて複数回のイオン注入処理をウエハに施す高温注入用のイオン注入装置で、ウエハの歪み(反り)による処理不良やウエハ割れの発生割合を低減する。【解決手段】イオン注入装置IMは、高温に加熱されたウエハWに対して複数回イオン注入条件を変えてイオン注入処理を実施するイオン注入装置IMで、ウエハWを搬送する搬送装置Va、Vb、Aa、Abと、ウエハWを注入位置で支持する支持装置Pと、ウエハWの温度を昇温または降温する温度調整装置H、Coとを備え、ウエハWの反り情報D1、D2に応じて、搬送装置Va、Vb、Aa、Abと支持装置Pまたは温度昇温装置H、Coを制御する制御装置Cを備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、高温に加熱されたウエハに対して複数回イオン注入条件を変えてイオン注入処理を実施するイオン注入装置に関する。
イオン注入装置では、多段注入やチェーンインプラと呼ばれる注入技術が使用されている。
この技術は、イオンビームのエネルギーやイオン注入量などの注入条件を異ならせて、1枚のウエハに対して複数回のイオン注入を行う技術である。
特許文献1には高温のウエハに対して異なるエネルギーで複数回のイオン注入を実施するイオン注入装置が述べられている。
特許文献1に記載のイオン注入装置について具体的に説明する。
ウエハ(炭化ケイ素ウエハ)へのイオン注入処理に先だって、処理室でウエハを支持するプラテンに備えられたヒータや真空予備室に配置されたヒータで、ウエハ温度は数百度に昇温される。
高温に加熱されたウエハにイオン注入処理を施した後、ウエハを処理室から排出し、カセットに戻す。注入条件(イオンビームのエネルギー)を変更した後、再びウエハを処理室に入れてウエハへイオン注入処理を施す。
イオン注入処理が施されるウエハやイオン注入処理が施されたウエハには歪み(反り)が生じる。イオン注入処理が施されるウエハの歪みは、イオン注入処理以前の前工程でウエハに生じた歪みである。一方、イオン注入処理で生じるウエハの歪みは、イオン注入処理やヒータによるウエハ温度の昇温化でウエハに生じる歪みである。
こうした歪みが軽微なものであれば、処理室とカセット間でのウエハの搬送、ウエハへのイオン注入処理、イオン注入処理の後工程などでの影響は無視できるが、歪みが大きくなれば各処理を行うにあたっての影響は大きくなり、処理不良やウエハ割れを引き起こす要因となりうる。
特に、特許文献1のごとく1枚のウエハに対して複数回イオン注入処理を行う場合、上述した歪みが最初は軽微なものであっても、イオン注入処理が複数回行われることで軽微な歪みが積算されてウエハの歪みが大きくなることもある。
また、特許文献1のごとく注入処理に先立ってウエハ温度を高温にし、高温のウエハに対してイオン注入処理を施し、注入処理後にウエハ温度を低温に戻す、いわゆる高温注入用のイオン注入装置では、ウエハの歪みは他の用途で使用されるイオン注入装置と比べて大きくなる傾向にある。
特開2014−120596
本発明では、注入条件を変えて複数回のイオン注入処理をウエハに施す高温注入用のイオン注入装置で、ウエハの歪み(反り)による処理不良やウエハ割れの発生割合を低減することを主たる目的とする。
イオン注入装置は、
高温に加熱されたウエハに対して複数回イオン注入条件を変えてイオン注入処理を実施するイオン注入装置で、
前記ウエハを搬送する搬送装置と、
前記ウエハを注入位置で支持する支持装置と、
前記ウエハの温度を昇温または降温する温度調整装置とを備え、
前記ウエハの反り情報に応じて、前記搬送装置、前記支持装置または前記温度昇温装置を制御する制御装置を備えている。
ウエハの反り情報に応じて注入不良やウエハ割れが発生しやすい部位を制御するようにしたので、ウエハの反りを要因とした注入不良やウエハ割れの発生割合を低減することが可能となる。
また、前記ウエハの反り情報を測定する反り測定器を備えていてもよい。
イオン注入装置が反り測定器を備えていれば、装置内でウエハの反りを測定することが可能となる。これより、装置外部にウエハを排出し、排出されたウエハの反りを測定する構成に比べて、反り測定に応じた各部の制御を速やかに実施することができる。
反り測定器の測定について、
前記反り測定器は、前記ウエハの周方向の異なる位置で反り量を測定することが望ましい。
反りのあるウエハの形状は、ウエハ面内での歪みに応じて3つ(凸型、凹型、ポテトチップ型)に大別することができる。
ウエハの周方向で異なる位置の反り量を測定することで、これらの形状を判別することが可能となる。
具体的には、前記反り測定器による測定点は4点以上であり、前記ウエハの周方向で略等間隔に離れていることが望ましい。
上記構成であれば、ウエハの形状判別にかかる正確性が向上する。
反り測定器の具体的な構成としては、
前記反り測定器は、
前記ウエハを支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記ウエハを回転する回転部とを備え、
前記支持部で支持されていない領域で前記ウエハの反りを測定する、構成であることが望ましい。
上記構成であれば、反り測定に用いるセンサの個数を低減し、反り測定にかかる正確性が向上する。
より望ましい反り測定器の構成としては、
前記ウエハの搬送途中で、前記ウエハの周方向での向きを揃えるアライナーを備え、
前記アライナーは、前記ウエハを支持する支持部と前記支持部に支持された前記ウエハを回転する回転部とを備え、
前記反り測定器の前記支持部と前記回転部が、前記アライナーの前記支持部と前記回転部と兼用されることが望ましい。
上記構成であれば、アライナーと反り測定器の部材を兼用しているため、安価な部材費用と省スペース化が実現できる。
ウエハのイオン注入処理時のウエハ把持については、
イオン注入処理位置で前記ウエハを把持する静電チャックとメカニカルクランプを備え、
前記ウエハの反り情報に応じて、前記静電チャックと前記メカニカルクランプとを選択的に使い分ける構成とすることが望ましい。
上記構成であれば、適切な把持手段を選択的に用いることにより、注入不良やウエハ割れの発生を低減することができる。
ウエハの反り情報に応じて注入不良やウエハ割れが発生しやすい部位を制御するようにしたので、ウエハの反りを要因とした注入不良やウエハ割れの発生割合を低減することが可能となる。
イオン注入装置の全体構成を示す模式的平面図 ウエハ反り情報に応じた第1の制御例 ウエハ反り情報に応じた第2の制御例 ウエハ反り情報に応じた第3の制御例 ウエハ反り情報に応じた第4の制御例 ウエハ反り情報に応じた第5の制御例 ウエハ反り情報に応じた第6の制御例 ウエハ反り情報に応じた第7の制御例 ZX平面でのウエハ反り測定器についての説明図 XY平面でのウエハ反り測定器についての説明図 ウエハ反り測定での基準位置設定にかかるフローチャート ZX平面での別のウエハ反り測定器についての説明図 XY平面での別のウエハ反り測定器についての説明図 制御装置についての説明図
図1は、イオン注入装置の全体構成を示す模式的平面図である。同図をもとにイオン注入装置の構成について説明し、図2乃至図8を用いてウエハ反り情報に応じた具体的な制御についての説明を行う。
図1において、イオン注入装置IMは、イオン源1からスポット状のイオンビームIBを引き出して、分析電磁石2と分析スリット3を通過させることで、イオンビーム中に含まれている不要なイオンを分析する。
質量分析後、磁場あるいは電場のスキャナー4でイオンビームIBを一方向に走査して、コリメータマグネット5を通過させることでイオンビームの進行方向を一方向に揃え、平行なイオンビームとして処理室6に導入する。
処理室6では、プラテンPに支持されたウエハW(炭化ケイ素ウエハ)が、図示されない駆動機構によって、図のY方向へイオンビームを横切るように機械的に走査されることで、ウエハWへのイオン注入処理が実施される。
プラテンPへのウエハWの受け渡し時、図示されない回転機構によってプラテンPは図のX方向を回転軸として回転されて、ウエハWを把持したプラテンPのウエハ把持面が上向き(Y方向に垂直)となる。
処理室6に隣接した真空予備室7a、7bは、真空大気間でウエハWの搬送を行う部屋である。真空予備室7aの室内あるいはその外部には、室内に搬送されたウエハWの温度を昇温するためのヒータHが備えられている。
一方、真空予備室7bには室内に搬送されたウエハWの温度を冷やすための冷却機構Cо(例えば、窒素ガスをウエハ側面から送風するガス送風機構)が備えられている。
真空側でのウエハWの搬送については、独立旋回可能な2つの搬送アームVa、Vbを用いて、真空予備室7a、7bとプラテンPとの間でウエハWの受け渡しが行われる。独立旋回可能な2つの搬送アームVa、Vbは、その下端にウエハWの外周端を支持する把持爪Ca、Cbを備えている。
なお、これらの把持爪に代えて、搬送時のウエハの固定に静電チャックを用いてもよい。
大気側でのウエハWの搬送については、2つの大気ロボットAa、Abを用いて、真空予備室7a、7bとカセット10a〜10dとの間でウエハWの受け渡しが行われる。大気ロボットAa、Abは、ウエハWの下面を真空吸着するか、静電吸着してウエハWを把持するハンドを備えている。
真空予備室7a、7bとカセット10a〜10dの間には、ノッチやオリフラを基準にしてウエハWの周方向での位置合わせを行うアライナー8が配置されている。また、図1の構成例では、反り測定器9もアライナー8と同じ場所に設けられている。
プラテンPには図示されないヒータが内蔵されている。ウエハWの昇温については、プラテンPのヒータと真空予備室7aのヒータHの両方あるいはいずれかを用いて行われる。
上記構成のもと、制御装置Cがウエハの反りデータD1やD2を受信して、イオン注入装置IMの各部の制御を行う。
具体的な制御対象は、ウエハWを搬送する搬送装置(搬送アームVa、Vbや大気ロボットAa、Ab)やウエハWを注入位置で支持する支持装置(プラテンP)やウエハWの温度を昇温または降温する温度調整装置(プラテンPに内蔵されたヒータ、ヒータH、冷却機構Cо)となる。これら制御対象の全てあるいはいずれかを制御する。
上に挙げた制御対象は、いずれも注入不良やウエハ割れが発生しやすい部位である。
制御装置Cに送信されるウエハの反りデータは2種類ある。
1つはイオン注入装置IMの外部で測定された反りデータD1である。この反りデータD1はイオン注入装置IMに外付けで設けられた図示されない反り測定器やイオン注入装置の前工程を実施する装置内に設けられた反り測定器で測定されたデータである。
もう1つはイオン注入装置IMに設けられた反り測定器9で測定されたデータD2である。
本発明では、上記データD1、D2の両方あるいはいずれかのデータが制御装置Cに送信される。これらのデータには、例えば、ウエハの反り量やウエハの形状などのデータが含まれている。
イオン注入装置IMの内部に反り測定器9を設けておき、制御装置CにデータD2を送信するようにしておけば、例えば、イオン注入処理の終了後、ウエハWをプラテンPからカセット10a〜dに戻す際に、ウエハの反りが測定できる。このため、装置外部にウエハを排出し、排出されたウエハの反りを測定する構成に比べて、各部の制御を速やかに実施することができるという点でメリットがある。
図2乃至図8は、搬送装置(搬送アームVa、Vb、大気ロボットAa、Ab)、支持装置(プラテンP)、温度調整装置(プラテンP、ヒータH、冷却機構Cо)に関する7つの制御例を示すフローチャートである。各図のフローチャートに従い、具体的な制御について説明する。
なお、各フローチャートで符号が共通する処理は同一の処理である。
図2は、ウエハ反り情報に応じた第1の制御例である。まず、制御装置Cがウエハの反りデータを受信する(処理S1)。このデータは図1で説明したデータD1やデータD2である。
反りデータを受信した制御装置Cは、予め制御装置C内に記憶されている基準値1と受信したデータに含まれる反り量との比較を行う(処理S2)。
ここで言う反り量とは、ウエハに反りがないときの平坦な平面を基準とし、基準平面からどれほどのズレが生じているのかを表す値である。
ウエハ面内での反り量は場所により違いがあるため、この反り量としての値は、ウエハ面内での平均値を用いるか、特定の場所での値を用いている。
ここで基準値1よりも反り量が大きければ、注入不良や搬送途中でのウエハ割れが発生する確率が高いとして、カセットからのウエハの取り出しを行わずにウエハの搬送を停止するか、搬送途中であればウエハをカセットに戻すように搬送装置を制御する(処理S3)。
一方、反り量が基準値1以下であれば、イオン注入処理を続行するように搬送装置や支持装置、温度調整装置を制御する(処理S4)。
図3は、ウエハ反り情報に応じた第2の制御例である。処理S2までの処理は図2の制御例と同一である。
ここでは、反り量が基準値1よりも大きいと判断した場合には、ウエハ搬送の途中でウエハが脱落してウエハ割れが発生しないよう、搬送装置や支持装置でのウエハ把持力を通常に比べて強くしている(処理S5)。
具体的には、大気ロボットAa、Abのハンドがウエハを真空吸着や静電吸着するものであれば、該当する吸着力を通常のものに比べて強くする。また、プラテンPが静電チャックでウエハWを吸着するものであれば、同様にウエハWの静電吸着力を通常のものよりも強くする。
一方、反り量が基準値1以下であれば、各部でのウエハの把持力は通常処理時に使用する把持力と同じにしておく(処理S6)。
図4は、ウエハ反り情報に応じた第3の制御例である。処理S1、S2、S3については図2の制御例と共通している。
処理S2で、反り量が基準値1以下である場合、基準値1よりも小さい別の基準値2との比較を行って(処理S7)、処理S5もしくは処理S6を実施する。このように、段階的に基準値を設けるようにしてもよい。
図5は、ウエハ反り情報に応じた第4の制御例である。
図5の制御例では、取り扱うウエハの厚みを比較する処理が追加されている。反り量が基準値1以下である場合でも、薄いウエハは厚いウエハに比べて割れやすいことから、ウエハの厚みが厚み基準値を超えているかどうかの判定を起こっている(処理S41)。
処理41で、厚みが基準値を超える場合、図4の制御例で挙げた処理S7、S5、S6の各処理を実行する。
一方、厚みが基準値以下であり、反り量が基準値2を超える場合には、反りの大きい薄いウエハを取り扱うことになるため、強引に吸着することでウエハが割れてしまうことが危惧される。このようなウエハ割れへの対策として、ここでは搬送装置などの把持力を弱くしている(処理S51)。
処理S51で把持力を弱くした場合、ウエハ割れは生じない代わりにウエハの搬送を正常に行うことができないことが考えられる。
この点については、後述する図6の制御例を併用し、ウエハを正常に搬送できるようにしてもよい。
図6は、ウエハ反り情報に応じた第5の制御例である。
処理S1、S2はこれまでの制御例と同一である。
処理S2で反り量が基準値1を超える場合、温度調整装置でウエハ加熱時間を通常よりも長くして、十分にウエハの反りを平坦化させている(処理S10)。その上で、ウエハの搬送を実行する。
一方、反り量が基準値1以下であれば、ウエハ加熱時間は通常の設定時間にする。
図6では反り量に応じて加熱時間を変更する例を説明したが、冷却によるウエハの降温についても同様にウエハの反り量に応じて冷却時間を変更するようにしてもよい。
また、加熱時間や冷却時間を通常よりも長くすることに代えて、昇温レートや降温レートを変更してもよい。
反りの大きいウエハに対して、急激な温度変化を加えることでウエハ割れが起こりうる。このようなウエハ割れの対策として、ウエハの反り量が大きい場合には、昇温レートや降温レートをなだらかにする。なお、昇温レートや降温レートをなだらかにすることで所定時間内に所定温度までウエハ温度が到達しない場合には、ウエハの加熱時間や冷却時間を通常の設定時間よりも延長してもよい。
温度調整装置でウエハを加熱してウエハの反りを平坦化する場合、ウエハの搬送途中でのウエハ割れを考慮すれば、反り測定と平坦化までの時間は短い方が望ましい。
例えば、カセット10a〜dから処理室6へウエハを搬送する場合、反り測定器9でウエハの反りが基準値よりも大きいことが判別されると、プラテンPよりも前段に設けられた真空予備室7aでウエハへの加熱処理を行って、ウエハの平坦化を実施する。
図7は、ウエハ反り情報に応じた第6の制御例である。
反りのあるウエハの形状は、ウエハ面内での歪みに応じて3つ(凸型、凹型、ポテトチップ型)に大別することができる。
凸型は、円形ウエハの中央が周辺よりも上方に突出した形状をしている。反対に、凹型は、円形ウエハの中央が周辺よりも下方に突出した形状をしている。ポテトチップ型は、凸型と凹型のいずれにも該当しない形状、つまり、ウエハ面内で凹凸箇所が分散している。
この制御例では、受信した反りデータから3つのウエハ形状のうち、いずれの形状をしているのかを特定している(処理S21)。
なお、この制御例における受信データはウエハ面内の複数位置での反り量のデータであり、ウエハ形状のデータは含まれていない。
独立制御可能な複数の環状パターンを有するヒータでウエハを加熱する場合、ウエハ形状が凸型でウエハの平坦化を目的とするならば、例えば、ウエハ中央に対応するヒータパターンの出力をウエハ周辺に対応するヒータパターンの出力よりも上げるようにヒータ出力を制御する(処理S31)。
一方、ウエハ形状が凸型でウエハの割れ防止を目的とするならば、例えば、ウエハ中央に対応するヒータパターンの出力をウエハ周辺に対応するヒータパターンの出力よりも下げるようにヒータ出力を制御する(処理S31)。
なお、ヒータパターンについては、上述した複数の環状パターンに限定されるものではなく、格子状や櫛歯状など種々の構成を採用してもよい。
図8は、ウエハ反り情報に応じた第7の制御例である。
プラテンPで静電チャック(ESC)とメカニカルクランプ(MC)の両方を用いてウエハWを把持する場合、ウエハの反り量に応じて適切な把持手段を選択的に用いて、注入不良やウエハ割れの発生を低減するようにしてもよい。
処理2でウエハの反り量が基準値1よりも大きい場合には、例えば、メカニカルクランプのみでウエハを把持する(処理S8)。一方、ウエハの反り量が基準値1以下である場合には、静電チャックとメカニカルクランプの両方を用いてウエハを把持する(処理S9)。
プラテンPにはヒータが備えられており、イオン注入前にウエハ温度をヒータで加熱して高温にするが、反りの大きいウエハを静電チャックで強固に固定してしまうと高温化されたウエハに内在する熱歪の逃げ場がなくなり、注入不良やウエハ割れが発生してしまうことがある。
メカニカルクランプによるウエハの把持力は、ウエハがプラテンから脱落しない程度のものであり、静電チャックに比べて弱い。このことから、メカクランプで把持されたウエハは僅かではあるが移動することができるので、高温化されたウエハが熱で歪んだとしても、熱歪みによるウエハの伸びを吸収することができる。
上述した第1乃至第7の制御例では、ウエハの反り情報に応じて注入装置内の搬送装置(搬送アームVa、Vbや大気ロボットAa、Ab)、支持装置(プラテンP)、温度調整装置(プラテンPや真空予備室7aのヒータ、真空予備室7bの冷却機構)を制御しているので、ウエハの反りを要因とした注入不良やウエハ割れの発生割合を低減することが可能となる。
上述した各制御例はあくまで一例であって、本発明はこれらの制御例に限定されるものではない。
例えば、第4の制御例で述べたウエハ厚みと厚み基準値とを比較する処理を、第1乃至第3、第5乃至第8の他の制御例に取り入れてもよい。また、搬送装置の把持力を制御することに代えて、反り量に応じて搬送装置の搬送速度を制御するようにしてもよい。例えば、反り量が大きいと搬送装置から脱落することが起こりえるので、通常よりも低速でウエハの搬送を行うようにしてもよい。
さらに、各制御例を適宜組み合わせ、複数装置を制御対象にしてもよい。
また、各制御例のフローチャートでは、共通する基準値として基準値1、基準値2を挙げて説明したが、制御対象ごとに異なる基準値を採用してもよい。
上述した制御例では、基準値と反り量とを比較して、把持力や加熱時間等の制御パラメータを段階的に変化させる構成が想定されているが、制御パラメータを線形的あるいは曲線的に変化させてもよい。
例えば、ウエハの反り量に追従して制御パラメータが変化するように、予め制御パラメータを変化させる関数を制御装置Cに登録しておき、反りデータを受け取った制御装置Cが関数を用いて制御パラメータの値を導出し、導出された値を用いて制御対象を制御してもよい。
図9、図10は、これまでに説明した反り測定器9の具体例である。
これらの図では、反り測定器9xにウエハWが配置され、ウエハの反り測定が行われる様子が描かれている。
反り測定器9xは、ウエハWの中央近傍を支持する支持部11と、支持部11に支持されたウエハWを回転する回転部12(回転軸)とを備えている。
図示されるM1はレーザー変位計や静電容量変位計などの非接触型のセンサである。M2乃至M4はウエハW上の他の測定位置である。ウエハWを図の矢印方向へ回転させて、ウエハWに対するセンサM1の位置が他の測定位置M2乃至M4に位置したときに反り量の測定が行われる。
ウエハWには周方向での基準位置を記すオリフラO(ウエハによってはノッチ)が形成されている。センサM1による反り測定は、ウエハWの径方向でオリフラOよりも内側で、支持部11によって支持されるウエハWの中央領域よりも外側の場所で実施される。この理由は支持部11で支持された場所ではウエハ反り測定の正確性を欠くことにある。
反りのあるウエハの形状は、ウエハ面内での歪みに応じて3つ(凸型、凹型、ポテトチップ型)に大別することができ、これらの判別にあたっては、測定位置の数を最小限にするには、ウエハWの周方向で略等間隔(等間隔となる位置から数度程度ずれているものも含む)に離間した4点で反り量の測定が行われることが望ましい。図9、図10の例では、90度ずつ異なるウエハ周方向の4点で反り測定を行っている。
より詳細な反りデータを得るには、4点に限らず、4点以上の測定点でウエハの反り測定を行うようにしてもよい。この場合、例えば、ウエハ周方向での測定点の数を増やすことや追加のセンサをウエハ径方向に配置して測定点を増やすようにしてもよい。
反り測定器9xとして回転部12を有する構成について説明したが、回転部12を排除し、センサM1の他にM2〜M4に対応する位置に追加のセンサを配置することで、図9、図10に示す反り測定器9xと同様の反り測定を実施することができる。しかしながら、ウエハWを回転させないとなれば、測定点の数だけセンサを設けなければならない点ではデメリットとなる。
アライナー8は、ウエハの周方向でウエハの向きを揃えるという機能上、ウエハを支持する支持部とウエハを回転させる回転部を備えている。アライナー8の支持部と回転部を、上述した反り測定器9xの支持部11、回転部12として利用することで、部材費用を低減し、省スペース化を図ることが可能となる。
もちろん、必ずしもアライナー8と反り測定器9xの部材を兼用させる必要はなく、両者を独立して設けるようにしてもよい。
反り測定にあたって、反り量を決める基準位置の設定方法については種々の方法が考えられる。
1つは、既存の値をもちいて算出する方法である。
反り測定器9xを構成するセンサの位置や反り測定器9xの支持部10の位置は予め決まっているので、各部の位置(高さ)から、支持部10にウエハWが支持されたときのおおよその位置を算出することができる。このとき、算出された値がウエハの厚みを考慮していないのであれば、実測する炭化ケイ素ウエハの平均厚み寸法を足し合わせてやれば、反り測定時の基準位置、換言すれば反りがない平坦な炭化ケイ素ウエハが支持部10に支持されたときのウエハ上面の位置が算出できる。
別の方法としては実測値を用いて基準位置を設定する方法である。
反り測定器9xを構成するセンサの位置や反り測定器9xの支持部10の位置は予め決まっているものの、各部材の取り付け位置や取り付け角度に多少のずれが生じていることが考えられる。このような取り付け精度の問題は、実測値を用いて基準位置を設定する方法により解消できる。
具体的には、図11に示すフローチャートに沿って基準位置が設定される。まず、出来るだけ平坦なウエハを用意する。例えば、シリコンのベアウエハを用意し、このウエハを反り計測器9xの支持部10に配置する(処理S10)。
次に、センサM1でウエハ上面までの距離を測定する(処理S11)。
イオン注入を行う対象である炭化ケイ素ウエハと先の距離測定に用いたシリコンのベアウエハとはウエハの厚み寸法が異なっている。シリコンのベアウエハの厚みは炭化ケイ素ウエハに比べて厚いため、両ウエハの厚み寸法差を先に実測した距離から差し引いておく(処理S12)。これにより反り測定時の基準位置を設定する。
実測によって基準位置を設定することで、取り付け精度の問題を解消することはできるが、処理S12の計算で用いるウエハの厚み寸法はウエハ面内での平均値が採用されるため、わずかながらではあるが誤差が含まれていると言える。このような誤差問題を解消するために、図12、図13に示す反り測定器9yを用いてもよい。
図12、図13に示す反り測定器9yと図9、図10に示す反り測定器9xとの違いは、ウエハ面に対するセンサM1の配置場所にある。反り測定器9yでは、センサM1をウエハWの下側に配置する構成を採用している。ウエハWの下側にセンサM1を配置する構成であれば、図11のフローチャートのごとく実測にて基準位置を設定する際、シリコンのベアウエハの下面位置までの距離を測定することになる。この位置は、反り測定の対象とする炭化ケイ素ウエハの下面位置と一致する。つまり、異種ウエハの厚み寸法の差を考慮する必要がないことから、より高精度に基準位置を設定することが可能となる。
制御装置Cは、図14に示すように記憶部21と制御部22を備えている。
記憶部21には制御例の実施形態で説明した基準値や制御パラメータの値を導出する際の関数あるいは段階的に切り替えられる制御パラメータの値などを記憶させておき、制御部22からの指令信号をもとに適宜読み出して使用する。
制御部22に機械学習で最適な制御パラメータを導出するための推論機能や学習機能を付加しておいてもよい。
制御部22は、過去データや制御後のデータを記憶部21に記憶する機能を備えている。具体的なデータとしては、各部の制御を実施する際の制御パラメータ、ウエハの厚み、ウエハの反り量、ウエハの形状、ウエハ割れや注入不良の発生データなどが関連付けられたデータとなる。このようなデータを教師データにして、制御部22の学習機能を強化する。
制御部22の推論機能は、ウエハの形状、ウエハの厚み、ウエハの反り量などのウエハ情報を説明変数として、制御対象とそれを制御するための最適制御パラメータを目的変数として導出し、導出された値をもとに各部の制御を実行する。
その他、上記実施形態では、搬送アームVa、Vbとして2つの独立旋回可能なアームを備えた構成について説明したが、イオン注入処理のスループットを考慮しないのであれば、搬送アームの本数は1つでもよい。
また、アライナー8を図1のY方向で上下に2段配置にしておき、各アライナー8に反り測定器9を取り付けるようにしておいてもよい。
多段注入として、変更する注入条件をイオンビームのエネルギーや注入量としたが、これ以外のパラメータ(例えば、ビーム電流やイオン種)を変更して、複数回のイオン注入を実施するようにしてもよい。注入条件の切り替えについては、1ロット単位や枚葉処理の度に切り替えるようにする。
また、イオン注入装置IMの構成として、イオン源1から処理室6に至る構成については従来から知られる他の構成を採用してもよい。例えば、スポットビームに代えてリボンビームを引き出し、これを質量分析した後でイオンビームの加減速と偏向とを実施して、処理室6へ導入する構成を採用してもよい。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
IM イオン注入装置
W ウエハ
Va、Vb 搬送アーム(搬送装置)
Aa、Ab 大気ロボット(搬送装置)
P プラテン(支持装置)
C 制御装置
8 アライナー
9、9x、9y 反り測定器

Claims (7)

  1. 高温に加熱されたウエハの全面に対してイオン注入条件を変えて複数回のイオン注入処理を実施するイオン注入装置で、
    前記ウエハを搬送する搬送装置と、
    前記ウエハを注入位置で支持する支持装置と、
    前記ウエハの温度を昇温または降温する温度調整装置とを備え、
    前記ウエハの反り情報に応じて、前記搬送装置、前記支持装置または前記温度調整装置を制御する制御装置を備え
    前記制御装置によって、前記ウエハのイオン注入位置を変化させずに、前記ウエハの搬送速度、把持力、把持手段または温度の少なくとも1つを制御する、イオン注入装置。
  2. 前記ウエハの反り情報を測定する反り測定器を備える請求項1記載のイオン注入装置。
  3. 前記反り測定器は、前記ウエハの周方向の異なる位置で反り量を測定する請求項2記載のイオン注入装置
  4. 前記反り測定器による測定点は4点以上であり、前記ウエハの周方向で略等間隔に離れている、請求項3記載のイオン注入装置。
  5. 前記反り測定器は、
    前記ウエハを支持する支持部と、
    前記支持部に支持された前記ウエハを回転する回転部とを備え、
    前記支持部で支持されていない領域で前記ウエハの反りを測定する、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のイオン注入装置。
  6. 前記ウエハの搬送途中で、前記ウエハの周方向での向きを揃えるアライナーを備え、
    前記アライナーは、前記ウエハを支持する支持部と前記支持部に支持された前記ウエハを回転する回転部とを備え、
    前記反り測定器の前記支持部と前記回転部が、前記アライナーの前記支持部と前記回転部と兼用される、請求項5記載のイオン注入装置。
  7. イオン注入処理位置で前記ウエハを把持する静電チャックとメカニカルクランプを備え、
    前記ウエハの反り情報に応じて、前記静電チャックと前記メカニカルクランプとを選択的に使い分ける請求項1乃至6記載のイオン注入装置。
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