本発明は、鉄道車両を所定の停止位置に停止させる際に用いることができる指標であって、前記従来の停止方法に比べて、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることを可能にする指標を形成することができる指標形成装置及び指標形成システム、並びに、このような指標を用いた鉄道車両の停止方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることができるように支援することができる鉄道車両の停止支援装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段として、以下の各態様を提示する。第1の態様による指標形成装置は、鉄道車両の現在位置を示す指標を、前記鉄道車両の運転士が直接的に視認し得るようにあるいは前記運転士が前記鉄道車両に設けられた撮像手段により撮像される画像のモニタ画像を介して視認し得るように、前記鉄道車両の車外に形成する指標形成装置であって、前記鉄道車両に設けられ前記鉄道車両の現在位置に応じて定まる車外の局所的な領域へ向けて光束を照射する照射部を備え、前記光束により照射される局所的な被照射領域を前記指標とするものである。
この第1の態様によれば、鉄道車両に設けられた前記照射部が、前記鉄道車両の現在位置に応じて定まる車外の局所的な領域へ向けて光束を照射し、前記光束により照射される局所的な被照射領域が、前記鉄道車両の運転士が直接的に又は前記モニタ画像を介して視認し得るように車外に形成された前記鉄道車両の現在位置を示す指標とされる。
前記第1の態様によれば、このように鉄道車両側から発せられた光束による車外の局所的な被照射領域が鉄道車両の現在位置を示す指標とされるので、運転士はこの指標を直接的に又は前記モニタ画像を介して見ることで、前記鉄道車両の現在位置を容易に確認することができる。
したがって、運転士は、鉄道車両を所定の停止位置に停止させるに際して、前記第1の態様による指標形成装置により形成される前記指標を用いれば、前記従来の鉄道車両の停止方法のように、運転士自身の位置や運転台の窓枠の位置や窓を通して見える鉄道車両の構造物の位置を鉄道車両の現在位置を示す指標として用いる場合に比べて、鉄道車両の現在位置を容易かつ正確に確認することができ、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
第2の態様による指標形成装置は、前記第1の態様において、前記光束の横断面形状はライン状であるものである。
この第2の態様によれば、前記光束の横断面形状はライン状であるので、鉄道車両の現在位置を示す指標の視認性を高めつつ、鉄道車両の現在位置を正確に認識し易くなる。もっとも、前記第1の態様では、前記光束の横断面形状は、ライン状に限らず、例えば、正方形状や円形状などでもよい。
第3の態様による指標形成装置は、前記第2の態様において、前記光束は、所定の水平面に到達する際に、前記水平面において前記鉄道車両の進行方向と略直交する方向に延びるライン状をなすものである。前記所定の水平面は、前記光束の被照射面でもよいし、前記光束の被照射面に至る途中で通過する水平面でもよい。
この第3の態様によれば、前記光束の被照射面がプラットホームの床面などのように水平面又はこれに近い面であれば、鉄道車両の現在位置を示す指標をなす前記局所的な被照射領域が、前記鉄道車両の進行方向と略直交する方向に延びるライン状をなすことなる。したがって、前記第3の態様によれば、鉄道車両の現在位置をより正確に認識し易くなる。もっとも、前記第2の態様では、前記第3の態様に限定されるものではない。
第4の態様による指標形成装置は、前記第1乃至第3のいずれかの態様において、前記被照射領域は、プラットホームの床面の一部の領域、プラットホームの壁面の一部の領域、プラットホームの天井面の一部の領域、及び、地上面の一部の領域のうちの1つ以上を含むものである。
この第4の態様は、前記被照射領域の例を挙げたものであるが、前記第1乃至第3の態様では、前記被照射領域はこれらの例に限らない。
第5の態様による指標形成装置は、前記第1乃至第4のいずれかの態様において、前記照射部による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われるように前記照射部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記鉄道車両が所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるように、前記照射部を制御するものである。
この第5の態様によれば、前記照射部による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われるので、運転士は特別な操作を要さずに便利であり、また、前記光束が常時照射されるわけではないので、省電力化を図ることができるとともに、近隣への迷惑光となる可能性も低減することができる。
そして、前記第5の態様によれば、前記鉄道車両が所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるので、運転士が前記鉄道車両を停止させる際に前記指標を用いることができる。
なお、前記第1乃至第4のいずれかの態様では、例えば、前記照射部による前記光束の照射のオンオフは、運転士が手動スイッチ等による手動操作で行うようにしてもよい。
第6の態様による指標形成装置は、前記第1乃至第5のいずれかの態様において、前記光束を前記鉄道車両の車外の所定位置で検出する検出手段と、前記検出手段からの検出信号に基づいて、前記鉄道車両が所定の停止位置へ向かう状況及び/又は前記鉄道車両が前記所定の停止位置へ到着した旨を、前記鉄道車両の運転士に報知する報知手段と、を備えたものである。
前記鉄道車両が所定の停止位置へ向かう前記状況としては、前記所定の停止位置の手前の所定位置に到達したか否かやそこに到達したときの速度などを挙げることができる。この点は、後述する第17の態様についても同様である。
この第6の態様によれば、運転士には、前記鉄道車両が所定の停止位置へ向かう状況及び/又は前記鉄道車両が前記所定の停止位置へ到着した旨が報知されるので、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
なお、本願明細書において、「及び/又は」は、両方又はいずれか一方の意味である。
第7の態様による指標形成システムは、前記第1乃至第6のいずれかの態様による指標形成装置を2つ備え、一方の前記指標形成装置は、前記指標を前記鉄道車両に対して横方向の一方側に形成し、他方の前記指標形成装置は、前記指標を前記鉄道車両に対して横方向の他方側に形成するものである。
この第7の態様では、横方向の一方側用の指標形成装置及び横方向の他方側用の指標形成装置を備えているので、鉄道車両に対する横方向のいずれの側にも前記指標を形成することができる。したがって、前記第7の態様によれば、鉄道車両の停止位置によっては前記指標を鉄道車両の右側に形成すべき場合と左側に形成すべき場合とがある場合であっても、前記指標を適切に形成することができる。例えば、プラットホームに対して前記指標を形成する場合において停車駅によってプラットホームが鉄道車両の右側に位置する場合と左側に位置する場合があっても、前記指標を適切に形成することができる。
第8の態様による指標形成システムは、前記第7の態様において、前記2つの指標形成装置の前記照射部による前記光束の照射のオンオフがそれぞれ同時にオンされないという条件下で自動的に行われるように前記2つの指標形成装置の前記照射部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記2つの指標形成装置のうち前記鉄道車両の所定の停止位置付近において鉄道車両の横方向のいずれの側に前記指標を形成すべきかを示す情報に応じて選択された1つの指標形成装置について、前記鉄道車両が前記所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるように、前記照射部を制御するものである。
鉄道車両の所定の停止位置付近において鉄道車両の横方向のいずれの側に前記指標を形成すべきかを示す情報としては、前記所定の停止位置を示す指標が鉄道車両の横方向のいずれの側に存在するかの情報、例えば、前記所定の停止位置を示す指標がプラットホームに対して設けられている場合には、前記所定の停止位置付近のプラットホームが鉄道車両の横方向のいずれの側に位置するか(ひいては、いずれの扉が開くことになるか)の情報を挙げることができる。
前記第8の態様によれば、前記2つの指標形成装置の前記照射部による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われるので、運転士は特別な操作を要さずに便利であり、また、前記光束が常時照射されるわけではないので、省電力化を図ることができるとともに、近隣への迷惑光となる可能性も低減することができる。
また、前記第8の態様によれば、前記2つの指標形成装置の前記照射部の照射が同時にオンされずに択一的にオンされるので、より省電力化を図ることができるとともに、近隣への迷惑光となる可能性もより低減することができる。
そして、前記第8の態様によれば、前記鉄道車両が所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、選択された1つの指標形成装置の前記照射部による前記光束の照射が行われるので、運転士が前記鉄道車両を停止させる際に前記指標を用いることができる。
第9の態様による鉄道車両の停止方法は、運転士が鉄道車両を所定の停止位置に停止させる鉄道車両の停止方法であって、前記運転士が、第1乃至第6のいずれかの態様による指標形成装置により形成される前記指標あるいは前記第7又は第8の態様による指標形成システムにより形成される前記指標を、直接的に見ることであるいは前記鉄道車両に設けられた撮像手段により撮像される画像のモニタ画像を介して見ることで、前記鉄道車両の現在位置を確認しつつ、前記所定の停止位置に停止させるものである。
この第9の態様によれば、鉄道車両の現在位置を示す前記指標が用いられるので、前記従来の鉄道車両の停止方法のように、運転士自身の位置や運転台の窓枠の位置や窓を通して見える鉄道車両の構造物の位置を鉄道車両の現在位置を示す指標として用いる場合に比べて、鉄道車両の現在位置を容易かつ正確に確認することができ、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
第10の態様による指標形成装置は、鉄道車両の停止目標位置を示す指標を形成する指標形成装置であって、地上側に設けられ地上側の所定の局所的な領域へ向けて光束を照射する照射部を備え、前記光束により照射される局所的な被照射領域を前記指標とするものである。
この第10の態様によれば、地上側に設けられた前記照射部から発せられた光束による地上側の局所的な被照射領域が前記鉄道車両の停止目標位置を示す指標とされる。したがって、この指標は、前記従来の停止位置目標に比べて周囲が暗かったり雨が降ったりしても見やすく、また、雪が降っても前記従来の停止位置目標のように雪に埋もれて見えなくなってしまうようなことがない。さらに、前記第10の態様による指標形成装置により形成される指標は、光束による被照射領域であり、前記従来の停止位置目標のような標識板ではないため、前記従来の停止位置目標に比べて大きさや配置等の制約が少なくなることから、視認性を高めるための大きさや配置等を採用し易い。
このように、前記第10の態様による指標形成装置により形成される指標は、前記従来の停止位置目標に比べて見やすい。したがって、運転士は、鉄道車両を所定の停止位置に停止させるに際して、前記第10の態様による指標形成装置により形成される前記指標を用いれば、従来の停止位置目標を用いる場合に比べて、鉄道車両の停止目標位置を容易かつ正確に確認することができ、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
第11の態様による指標形成装置は、前記第10の態様において、前記光束の横断面形状はライン状であるものである。
この第11の態様によれば、前記光束の横断面形状はライン状であるので、鉄道車両の停止目標位置を示す指標の視認性を高めつつ、鉄道車両の停止目標位置を正確に認識し易くなる。もっとも、前記第11の態様では、前記光束の横断面形状は、ライン状に限らず、例えば、正方形状や円形状などでもよい。
第12の態様による指標形成装置は、前記第11の態様において、前記光束は、所定の水平面に到達する際に、前記水平面において前記鉄道車両の進行方向と略直交する方向に延びるライン状をなすものである。前記所定の水平面は、前記光束の被照射面でもよいし、前記光束の被照射面に至る途中で通過する水平面でもよい。
この第12の態様によれば、前記光束の被照射面がプラットホームの床面などのように水平面又はこれに近い面であれば、鉄道車両の停止目標位置を示す指標をなす前記局所的な被照射領域が、前記鉄道車両の進行方向と略直交する方向に延びるライン状をなすことなる。したがって、前記第12の態様によれば、鉄道車両の停止目標位置をより正確に認識し易くなる。もっとも、前記第11の態様では、前記第12の態様に限定されるものではない。
第13の態様による指標形成装置は、前記第10乃至第12のいずれかの態様において、前記被照射領域は、プラットホームの床面の一部の領域、プラットホームの壁面の一部の領域、プラットホームの天井面の一部の領域、及び、地上面の一部の領域のうちの1つ以上を含むものである。
この第13の態様は、前記被照射領域の例を挙げたものであるが、前記第10乃至第12の態様では、前記被照射領域はこれらの例に限らない。
第14の態様による指標形成装置は、前記第10乃至第13のいずれかの態様において、前記照射部による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われるように前記照射部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記鉄道車両が前記停止目標位置の手前の所定位置に位置するときから前記停止目標位置付近で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるように、前記照射部を制御するものである。
この第14の態様によれば、前記照射部による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われ、前記光束が常時照射されるわけではないので、省電力化を図ることができる。
そして、前記第14の態様によれば、前記鉄道車両が所定の停止目標位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止目標位置付近で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるので、運転士が前記鉄道車両を停止させる際に前記指標を用いることができる。
第15の態様による指標形成システムは、前記第10乃至第13のいずれかの態様による指標形成装置を複数備え、前記複数の指標形成装置は互いに異なる停止目標位置を示す指標をそれぞれ形成し、前記複数の指標形成装置の前記照射部による前記光束の照射のオンオフがそれぞれ同時にオンされないという条件下で自動的に行われるように前記複数の指標形成装置の前記照射部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記複数の指標形成装置のうちいずれかの前記目標停止位置に停止しようとする鉄道車両に応じて選択された1つの指標形成装置について、前記光束の照射が行われるように、前記照射部を制御するものである。
同じ線路上で同じプラットホームに対して停止する鉄道車両であっても、鉄道車両の種別や編成数によって停止目標位置が互いに異なる場合がある。前記第15の態様では、互いに異なる停止目標位置を示す指標をそれぞれ形成する前記複数の指標形成装置のうちいずれかの目標停止位置に停止しようとする鉄道車両に応じて選択された1つの指標形成装置のみの照射部の照射が択一的にオンされ、他の指標形成装置の照射部の照射はオフされるので、運転士は自車用の停止目標位置を示す指標のみが形成される。したがって、前記第15の態様によれば、互いに異なる停止目標位置を示す複数の指標が同時に形成される場合に比べて、自分が使用すべき指標が一目瞭然となり、誤った停止目標位置に停止させてしまうおそれがなくなり、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
第16の態様による鉄道車両の停止方法は、運転士が鉄道車両を所定の停止位置に停止させる鉄道車両の停止方法であって、前記運転士が、前記第10乃至第14の態様による指標形成装置により形成される前記指標あるいは前記第15の態様による指標形成システムにより形成される前記指標を、直接的に見ることであるいは前記鉄道車両に設けられた撮像手段により撮像される画像のモニタ画像を介して見ることで、前記鉄道車両の目標停止位置を確認しつつ、前記所定の停止位置に停止させるものである。
この第16の態様によれば、車両の停止目標位置を示す指標として、従来の停止位置目標に比べて見やすい前記指標が用いられるので、前記従来の鉄道車両の停止方法のように従来の停止位置目標を用いる場合に比べて、鉄道車両の目標停止位置を容易かつ正確に確認することができ、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
第17の態様による鉄道車両の停止支援装置は、前記鉄道車両に設けられ前記鉄道車両の現在位置に応じて定まる車外の局所的な領域へ向けて光束を照射する照射部と、前記光束を前記鉄道車両の車外の所定位置で検出する検出手段と、前記検出手段からの検出信号に基づいて、前記鉄道車両が所定の停止位置へ向かう状況及び/又は前記鉄道車両が前記所定の停止位置へ到着した旨を、前記鉄道車両の運転士に報知する報知手段と、を備えたものである。
この第17の態様によれば、前記鉄道車両が所定の停止位置へ向かう状況及び/又は前記鉄道車両が前記所定の停止位置へ到着した旨が、前記鉄道車両の運転士に報知されるので、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることができるように支援することができる。
本発明によれば、鉄道車両を所定の停止位置に停止させる際に用いることができる指標であって、前記従来の停止方法に比べて、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることを可能にする指標を形成することができる指標形成装置及び指標形成システム、並びに、このような指標を用いた鉄道車両の停止方法を提供することができる。
また、本発明によれば、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることができるように支援することができる鉄道車両の停止支援装置を提供することができる。
以下、本発明による指標形成装置、指標形成システム、鉄道車両の停止方法及び鉄道車両の停止支援装置について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態による指標形成装置1で用いられる照射部11の要部を光射出側から見た概略正面図である。図2は、図1中のA−A’線に沿った概略断面図である。図3は、図1中のB−B’線に沿った概略断面図である。図4は、本発明の第1の実施の形態による指標形成装置1で用いられる照射部11を示す概略断面図である。図4は図2と同じ断面を示しているが、図4では、ルーバー18も示している。図1乃至図3では、図4で示しているルーバー18の図示は省略している。図2及び図3では、LED12からの光線の様子も示している。なお、図2では、Y軸方向の中央のLED12からの光線のみを図示し、他のLED12からの光線の図示は省略している。
図1乃至図4に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を定義する。X軸方向のうち矢印の向きを+X方向又は+X側、その反対の向きを−X方向又は−X側と呼び、Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。Z軸方向がシリンドリカルレンズ15の光軸方向となっている。
本実施の形態による指標形成装置1は、鉄道車両の現在位置を示す指標を、前記鉄道車両の運転士が直接的に視認し得るように、前記鉄道車両の車外に形成するものであり、前記鉄道車両に設けられ前記鉄道車両の現在位置に応じて定まる車外の局所的な領域へ向けて光束を照射する照射部11を備え、前記光束により照射される局所的な被照射領域を前記指標とするものである。
本実施の形態では、照射部11は、X軸方向に一列に並んだ光源としての複数のLED12及びそれらを駆動する駆動回路19(図2乃至図4では図示せず。後述する図8参照。)が搭載されたプリント配線板13と、プリント配線板13が搭載されその放熱を行うヒートシンク14と、シリンドリカルレンズ15と、シリンドリカルレンズ15と一体に構成されその前側に配置されたレンチキュラーレンズ16と、ヒートシンク14に対して固定されレンズ15,16を支持してLED12に対して位置決めするレンズ鏡筒17と、シリンドリカルレンズ15の後側に配置されたルーバー18とを有している。
シリンドリカルレンズ15は、X軸方向に屈折力を持つ一方でY軸方向に屈折力を持たないように配置されている。レンチキュラーレンズ16は、小さいシリンドリカルレンズを多数Y軸方向に並べたものであり、これらの多数のシリンドリカルレンズは、X軸方向に屈折力を持たない一方でY軸方向に屈折力を持つように配置されている。LED12は、ほぼシリンドリカルレンズ15の焦点面に配置され、LED12からの光は、図3に示すように、Y軸方向から見てほぼ平行光となる。射出光束の横断面(例えば、XY平面と平行な平面)での形状がライン状(幅を持った直線状)となり、Y軸方向から見た平行光のX軸方向の幅が、当該ライン状の幅を定めることになる。レンチキュラーレンズ16によってX軸方向から見て拡散され、X軸方向から見た拡散によるY軸方向の拡がりが、射出光束の横断面形状のライン状の長さを定めることになる。
ルーバー18は、図4から理解できるように、射出光束の+Y側への拡がりを抑制することで、後述する図5に示すように、プラットホーム22上に立っている人の眼に到達しないようにして当該人に眩しさを与えないようになっている。もっとも、ルーバー18は必ずしも設ける必要はない。
本実施の形態では、シリンドリカルレンズ15及びレンチキュラーレンズ16によって、LED12からの光束をその横断面形状をライン状(帯状)に整形して射出する照射光学系が構成されている。もっとも、このような光学系は、本実施の形態の構成に限らず、例えば、レンチキュラーレンズ16を取り除いてもよいし、シリンドリカルレンズ15に代えてトーリックレンズを用いてもよい。また、必要に応じて、シリンドリカルレンズ15の後側に、射出される光束を偏向させる部材(例えば、フレネル状のプリズム)を配置してもよい。
図5は、本実施の形態による指標形成装置1で用いられる照射部11及びそこから照射される光束、鉄道車両21並びにプラットホーム22を、鉄道車両21の先頭側から見て模式的に示す概略正面図である。図6は、鉄道車両21がプラットホーム22に進入して来たが所定の停止位置の手前を走行している状態を模式的に示す、図5中のC−C’矢視図である。図7は、鉄道車両21がプラットホーム22の所定の停止位置で停止している状態を模式的に示す、図5中のC−C’矢視図である。図6及び図7中の矢印Wは、鉄道車両21の進行方向を示す。図5乃至図7において、22aはプラットホーム22の床面、22bはプラットホーム22の壁面、22cはプラットホーム22の天井面を示す。プラットホーム22の床面22aは、略水平面となっている。
本実施の形態では、鉄道車両21の先頭における進行方向Wを見て左側の角部のやや下寄りの位置において、透明な光照射用の窓部材(図示せず)が設けられ、照射部11は前記窓部材の内側に配置されている。そして、照射部11は、照射部11から射出される光束がプラットホーム22においてはプラットホーム22の床面22aの局所的なライン状の領域Rを照射するように、照射部11の向き(すなわち、X軸、Y軸及びZ軸)が鉄道車両21に対して設定されている。
本実施の形態では、ライン状の被照射領域Rは、鉄道車両21の進行方向Wと略直交する方向に延びている。本実施の形態では、ライン状の被照射領域Rの進行方向Wの位置は、鉄道車両21の先頭の位置よりも例えば0m〜3.5m程度前方の位置であってもよい。ライン状の被照射領域Rの幅は例えば20cm程度にしてもよい。図示の例は、ライン状の被照射領域Rの長さは、ほぼプラットホーム22の床面22aの幅と同じになっているが、本発明ではこれに限らない。
本実施の形態では、プラットホーム22の床面22a上のライン状の被照射領域Rが鉄道車両21の現在位置を示す指標となっている。ライン状の被照射領域Rの少なくとも一部は鉄道車両21の運転士が直接的に視認し得るようになっている。
照射部11から照射される光束の色は、例えば視認性の高い緑色にすることが好ましい。もっとも、運転士がプラットホーム22の床面22a上の被照射領域Rを非照射領域から識別することができれば、照射部11から照射される光束の色や強度等は特に限定されるものではない。
図6及び図7に示す例では、鉄道車両21の種別や編成数に応じて互いに異なる3つの停止目標位置があるものとしている。図6及び図7に示す例では、これらの停止目標位置をそれぞれ示す指標として、進行方向Wと略直交する方向に延びるライン状の表記L1,L2,L3が、プラットホーム22の床面22a上に塗装等によって記載されている。ライン状の被照射領域Rがライン状の表記L1に重なるときの鉄道車両21の位置が1つの停止目標位置となり、被照射領域Rがライン状の表記L2に重なるときの鉄道車両21の位置が他の1つの停止目標位置となり、被照射領域Rがライン状の表記L3に重なるときの鉄道車両21の位置が残りの1つの停止目標位置となるように、表記L1,L2,L3の位置が定められている。図7は、表記L2に対応する停止目標位置で鉄道車両21が停止した状態を示している。表記L1,L2,L3は互いに色を変えることによって、運転士が自車の停止目標位置を対応する表記L1,L2,L3で認識し得るようにしてもよいし、それに代えて又はそれに加えて、当該表記L1,L2,L3に対応する車両種別や編成数等を表記L1,L2,L3の近くにそれぞれ記載してもよい。なお、1つの駅での停止目標位置の数は、1つのみでもよいし、2つ以上の任意の数でもよい。
図8は、本実施の形態による指標形成装置1を示す概略ブロック図である。本実施の形態による指標形成装置1は、照射部11の他に、照射部11による前記光束の照射のオンオフ(LED12の点灯・消灯)が自動的に行われるように照射部11を制御する制御部31を備えている。
制御部31は、鉄道車両21が所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるように、照射部11を制御する。
具体的には、制御部31は、例えば、所定信号として、鉄道車両21に搭載されている車内表示装置(図示せず)からのまもなく次の駅に到着する旨の表示開始信号と、鉄道車両21の停止している(速度がゼロである)ことを示す信号と、鉄道車両21の扉の開閉信号とを受け取り、これらの信号に基づいて、まもなく次の駅に到着する旨の表示開始信号を受けたときにLED12の点灯を開始し、鉄道車両21が停止しかつ鉄道車両21の扉が開いたときにLED12を消灯させる。
なお、制御部31は、CPUを用いて構成したり論理回路を用いて構成したりしてもよい。また、鉄道車両21に搭載されているCPU等に制御部31としての機能を担わせてもよい。
なお、本発明では、制御部31で照射部11を自動的にオンオフする代わりに、運転士が手動スイッチ等による手動操作で照射部11をオンオフするようにしてもよい。
本実施の形態によれば、鉄道車両21に設けられた照射部11が、鉄道車両21の現在位置に応じて定まる車外の局所的な領域へ向けて光束を照射し、前記光束により照射される局所的な被照射領域Rが、鉄道車両21の運転士が直接的に視認し得るように車外に形成された鉄道車両21の現在位置を示す指標とされる。
本実施の形態によれば、このように鉄道車両21側から発せられた光束による車外の局所的な被照射領域Rが鉄道車両21の現在位置を示す指標とされるので、運転士はこの指標Rを直接的に見ることで、鉄道車両21の現在位置を容易に確認することができる。
したがって、運転士は、鉄道車両21を所定の停止位置に停止させるに際して、本実施の形態による指標形成装置1により形成される前記指標Rを用いれば、前記従来の鉄道車両の停止方法のように、運転士自身の位置や運転台の窓枠の位置や窓を通して見える鉄道車両の構造物の位置を鉄道車両の現在位置を示す指標として用いる場合に比べて、鉄道車両21の現在位置を容易かつ正確に確認することができ、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両21を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
具体的には、運転士が鉄道車両21を所定の停止位置に停止させる場合、運転士は、指標Rを直接的に見ることで鉄道車両の現在位置を確認しつつ、前記所定の停止位置に停止させる。このとき、運転士は、ライン状の被照射領域Rを、ライン状の表記L1〜L3のうち自車に応じたライン状の表記に合わせて鉄道車両21を停止させることで、極めて容易に所定の停止位置に停止させることができる。
また、本実施の形態によれば、前記光束の横断面形状はライン状であるので、鉄道車両の現在位置を示す指標の視認性を高めつつ、鉄道車両の現在位置を正確に認識し易くなる。もっとも、本発明では、照射部11が発する光束の横断面形状は、ライン状に限らず、例えば、正方形状や円形状などでもよい。
本実施の形態では、照射部11からの光束は、所定の水平面に到達する際に、前記水平面において前記鉄道車両の進行方向と略直交する方向に延びるライン状をなす。したがって、本実施の形態では、照射部11からの光束の被照射面が略水平面であるプラットホーム22の床面22aであるので、鉄道車両21の現在位置を示す指標をなす局所的な被照射領域Rが、鉄道車両21の進行方向Wと略直交する方向に延びるライン状をなすことなる。したがって、本実施の形態によれば、鉄道車両21の現在位置をより正確に認識し易くなる。
さらに、本実施の形態によれば、照射部11による光束の照射のオンオフが自動的に行われるので、運転士は特別な操作を要さずに便利であり、また、光束が常時照射されるわけではないので、省電力化を図ることができるとともに、近隣への迷惑光となる可能性も低減することができる。
そして、本実施の形態によれば、鉄道車両21が所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるので、運転士が鉄道車両21を停止させる際に指標Rを用いることができる。
[第2の実施の形態]
図9は、本発明の第2の実施の形態による指標形成装置を模式的に示す図であり、図6に対応している。図9において、図6中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、前記第1の実施の形態では、プラットホーム22の床面22a上のライン状の被照射領域Rが、鉄道車両21の先頭の位置よりも前方に形成されるように、照射部11の向きが定められているのに対し、本実施の形態では、プラットホーム22の床面22a上のライン状の被照射領域Rが、鉄道車両21の先頭の位置よりも後方の、運転士の真横の位置に形成されている点である。鉄道車両21の位置を基準にした被照射領域Rの進行方向の位置の変更に伴って、図9では図6に比べてプラットホーム22の床面22a上のライン状の表記L1〜L3の位置も変更している。
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
[第3の実施の形態]
図10は、本発明の第3の実施の形態による指標形成装置で用いられる照射部11及びそこから照射される光束、鉄道車両21並びにプラットホーム22を、鉄道車両21の先頭側から見て模式的に示す概略正面図であり、図5に対応している。図10において、図5中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、照射部11が発する光束のライン状の横断面形状の長さが延ばされ、照射部11が発する光束が、プラットホーム22の床面22a上の一部の領域、壁面22bの一部の領域及び天井面22cの一部の領域を照射するようになっている点である。
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
なお、本発明では、照射部11が発する光束は、プラットホーム22の床面22a上の一部の領域、壁面22bの一部の領域、天井面22cの一部の領域、及び、地上面の一部の領域のうちのいずれか1つ以上を照射してもよい。
[第4の実施の形態]
図11は、本発明の第4の実施の形態による指標形成システム41で用いられる左右両側の合計2つの照射部11、鉄道車両21の進行方向Wを見て右側の照射部11から照射される光束、鉄道車両21及び右側のプラットホーム22を、鉄道車両21の先頭側から見て模式的に示す概略正面図であり、図5に対応している。図12は、本発明の第4の実施の形態による指標形成システム41を示す概略ブロック図であり、図8に対応している。図11及び図12において、図5及び図8中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
本実施の形態による指標形成システム41が前記第1の実施の形態による指標形成装置1と異なる所は、前記第1の実施の形態による指標形成装置1では進行方向Xを見て鉄道車両21における左側に照射部11が設けられているのみであるのに対し、本実施の形態による指標形成システム41では、鉄道車両21における左側の照射部11に加えて鉄道車両21における右側の照射部11が追加されている点と、制御部31に代えて制御部42を備えている点である。
右側の照射部11は、左側の照射部11の光束による左側のプラットホーム22の床面22a上の局所的なライン状の被照射領域Rに相当する局所的なライン状の被照射領域を、右側の照射部11の光束によって右側のプラットホーム22の床面22a上において形成するように、当該右側の照射部11の向きが定められている。図面には示していないが、右側のプラットホーム22の床面22a上には、左側のプラットホーム22の床面22a上に記載されたライン状の表記L1〜L3に相当する3つのライン状の表記が記載されている。
本実施の形態では、制御部42は、左右両側の合計2つの照射部11による前記光束の照射のオンオフ(LED12の点灯・消灯)がそれぞれ同時にオンされないという条件下で自動的に行われるように前記2つの照射部11を制御する。
制御部42は、左右両側の合計2つの照射部11のうち鉄道車両21の所定の停止位置付近において鉄道車両21の左右いずれの側(横方向のいずれの側)に前記指標を形成すべきか(本実施の形態では、左右いずれの側のプラットホーム22の床面22aにライン状の被照射領域Rを形成すべきか)を示す情報に応じて選択された1つの照射部11について、鉄道車両21が前記所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、前記光束の照射が行われるように、前記照射部11を制御する。
具体的には、制御部42は、例えば、所定信号として、鉄道車両21に搭載されている車内表示装置(図示せず)からのまもなく次の駅に到着する旨の表示開始信号と、前記車内表示装置からの次の駅で開く扉は左右いずれの扉であるかを示す信号と、鉄道車両21の停止している(速度がゼロである)ことを示す信号と、鉄道車両21の扉の開閉信号とを受け取り、これらの信号に基づいて、まもなく次の駅に到着する旨の表示開始信号を受けたときに次の駅で開く方の扉の側の照射部11のLED12の点灯を開始し、鉄道車両21が停止しかつ鉄道車両21の扉が開いたときに当該照射部11のLED12を消灯させる。
なお、制御部42は、CPUを用いて構成したり論理回路を用いて構成したりしてもよい。また、鉄道車両21に搭載されているCPU等に制御部42としての機能を担わせてもよい。
なお、本発明では、制御部42で2つの照射部11を自動的にオンオフする代わりに、運転士が手動スイッチ等による手動操作で照射部11をオンオフするようにしてもよい。
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
また、本実施の形態では、左右両側の合計2つの照射部11を備えているので、鉄道車両21に対する左右いずれの側にも前記指標を形成することができる。したがって、本実施の形態によれば、プラットホーム22に対して前記指標を形成する場合において停車駅によってプラットホーム22が鉄道車両21の右側に位置する場合と左側に位置する場合があっても、前記指標を適切に形成することができる。
また、本実施の形態によれば、前記2つの照射部11による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われるので、運転士は特別な操作を要さずに便利であり、また、前記光束が常時照射されるわけではないので、省電力化を図ることができるとともに、近隣への迷惑光となる可能性も低減することができる。
また、本実施の形態によれば、前記2つの照射部11の照射が同時にオンされずに択一的にオンされるので、より省電力化を図ることができるとともに、近隣への迷惑光となる可能性もより低減することができる。
そして、本実施の形態によれば、鉄道車両21が所定の停止位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止位置で停止するまでの間は少なくとも、選択された1つの照射部11による前記光束の照射が行われるので、運転士が鉄道車両21を停止させる際に前記指標を用いることができる。
[第5の実施の形態]
図13は、本発明の第5の実施の形態による指標形成装置で用いられる照射部11及びそこから照射される光束、停止位置目標51、鉄道車両21並びにプラットホーム22を、鉄道車両21の先頭側から見て模式的に示す概略正面図であり、図5に対応している。図13において、図5中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、本実施の形態では、鉄道車両21の先頭における進行方向Wを見て左側の角部の上部の位置において、透明な光照射用の窓部材(図示せず)が設けられ、照射部11は前記窓部材の内側に配置され、照射部11からの光束は、プラットホーム22の天井面22cの局所的なライン状の領域を照射し、この被照射領域を、鉄道車両21の現在位置を示す指標とする点である。
また、図13に示す例では、プラットホーム22の天井面22c付近に設けられた停止位置目標51に前記光束によるライン状の被照射領域が重なるときの鉄道車両21の位置が停止目標位置となる。
なお、本実施の形態では、プラットホーム22の天井面22cに到達する前に途中で到達する水平面において、照射部11が鉄道車両の進行方向と略直交する方向に延びるライン状をなすようになっている。この水平面内において、光束がなすライン状は、鉄道車両21の前方の位置に形成されてもよいし、運転士の真横の位置に形成されてもよい。
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
なお、前記第1の実施の形態を変形して第4の実施の形態を得たのと同様の変形を、本実施の形態に対して適用してもよい。
[第6の実施の形態]
図14は、本発明の第6の実施の形態による指標形成装置で用いられる照射部11及びそこから照射される光束、停止位置目標52、鉄道車両21並びにプラットホーム22を、鉄道車両21の先頭側から見て模式的に示す概略正面図であり、図5に対応している。図15は、鉄道車両21がプラットホーム22の所定の停止位置で停止している状態を模式的に示す、図14中のD−D’矢視図であり、図7に対応している。図14及び図15において、図5及び図7中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
本実施の形態が前記第1の実施の形態と異なる所は、本実施の形態では、照射部11は、照射部11から射出される光束が地上面の局所的なライン状の領域Rを照射するように、照射部11の向き(すなわち、X軸、Y軸及びZ軸)が鉄道車両21に対して設定されている点である。ライン状の被照射領域Rは、鉄道車両21の進行方向に対して略直交しており、鉄道車両21の現在位置を示す指標とされている。鉄道車両21の前方の地上面には、図示しない枕木や線路や砕石が存在するので、ライン状の被照射領域Rには、実際には凹凸が存する。
なお、本実施の形態では、鉄道車両21の前方の地上面に到達する前に途中で到達する水平面において、照射部11が鉄道車両の進行方向と略直交する方向に延びるライン状をなすようになっている。
また、図14及び図15に示す例では、線路の枕木(図示せず)上に設けられた停止位置目標52に前記光束によるライン状の被照射領域Rが重なるときの鉄道車両21の位置が停止目標位置となる。
本実施の形態によっても、前記第1の実施の形態と同様の利点が得られる。
なお、本実施の形態では、鉄道車両21が停止位置においてプラットホーム22が鉄道車両21の左右のいずれの側に存在しても無関係である。したがって、前記第1の実施の形態を変形して第4の実施の形態を得たのと同様の変形は、本実施の形態に対して適用する必要がない。
[第7の実施の形態]
図16は、前記第1の実施の形態による指標形成装置1で用いられる照射部11及びそこから照射される光束、本発明の第7の実施の形態による指標形成システム61で用いられる照射部71,72,73及びそこから照射される光束、鉄道車両21並びにプラットホーム22を、鉄道車両21の先頭側から見て模式的に示す概略正面図であり、図5に対応している。図17は、鉄道車両21がプラットホーム22に進入して来たが所定の停止位置の手前を走行している状態を模式的に示す、図16中のE−E’矢視図であり、図6に対応している。図18は、鉄道車両21がプラットホーム22の所定の停止位置で停止している状態を模式的に示す、図16中のE−E’矢視図であり、図7に対応している。図19は、図16中のF−F’矢視図である。図16乃至図19において、図5乃至図7中の要素と同一又は対応する要素には同一符号を付し、その重複する説明は省略する。
本実施の形態による指標形成システム61は、鉄道車両21の互いに異なる3つの停止目標位置を示す3つの指標を形成するものであり、車両21側ではなく地上側に設けられた3つの照射部71,72,73を備えている。本実施の形態では、各照射部71,72,73は、前記照射部11と同様に構成され、横断面形状がライン状の光束を照射する。図17及び図18においては、図6及び図7と異なり、プラットホーム22の床面22a上には、ライン状の表記L1,L2,L3は記載されていない。
本実施の形態では、照射部71,72,73は、プラットホーム22の床面22aの上方に設けられている。照射部71は、プラットホーム22の床面22a上において、照射部71から射出される光束がライン状の表記L1が記載されていたライン状の領域L1’を照射するように、設置されている。照射部71からの光束が照射されるライン状の被照射領域L1’は、ライン状の表記L1と同様に、鉄道車両21の1つの停止目標位置を示す指標となる。照射部72は、プラットホーム22の床面22a上において、照射部72から射出される光束がライン状の表記L2が記載されていたライン状の領域L2’を照射するように、設置されている。照射部72からの光束が照射されるライン状の被照射領域L2’は、ライン状の表記L2と同様に、鉄道車両21の他の1つの停止目標位置を示す指標となる。照射部73は、プラットホーム22の床面22a上において、照射部73から射出される光束がライン状の表記L3が記載されていたライン状の領域L3’を照射するように、設置されている。照射部73からの光束が照射されるライン状の被照射領域L3’は、ライン状の表記L3と同様に、鉄道車両21の残りの1つの停止目標位置を示す指標となる。
図20は、本発明の第7の実施の形態による指標形成システム61を示す概略ブロック図である。本実施の形態による指標形成システム61は、照射部71,72,73の他に、制御部74も備えている。制御部74は、照射部71,72,73による光束の照射のオンオフ(LED12の点灯・消灯)がそれぞれ同時にオンされないという条件下で自動的に行われるように照射部71,72,73を制御する。
そして、制御部74は、運行管理装置などの地上装置が保有している運行管理情報あるいは停止しようとする鉄道車両21から得た情報を所定信号として受け取り、それに基づいて、前記3つの停止目標位置のうちのいずれかに停止しようとする鉄道車両21の種類や編成数に応じて照射部71,72,73のうちから選択した1つの照射部から光束の照射が行われるように、照射部71,72,73を制御する。換言すれば、停止しようとする鉄道車両21がいずれの停止目標位置に停止すべきかを示す信号を所定信号として、地上装置又は当該鉄道車両21から受け取り、これに基づいて、照射部71,72,73のうち停止すべき停止目標位置を示す指標を形成する照射部のみを択一的にオンする。
本実施の形態では、制御部74は、鉄道車両21の種類や編成数に応じて照射部71,72,73のうちから選択した1つの照射部について、当該照射部による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われるように当該照射部を制御し、当該鉄道車両21が当該停止目標位置の手前の所定位置に位置するときから当該停止目標位置付近で停止するまでの間は少なくとも、当該照射部による前記光束の照射が行われるように、当該照射部を制御する。このような制御のために必要な情報は、所定信号として、地上側の管理装置や当該車両側から得たり各種のセンサ等から得ることができる。
本実施の形態では、運転士が鉄道車両21を所定の停止位置に停止させる場合、運転士は、指標Rを直接的に見ることで鉄道車両の現在位置を確認しつつ、更に、目標停止位置を示す指標であるライン状の被照射領域L1’,L2’,L3’のいずれかを直接的に見ることで鉄道車両21の目標停止位置を確認しつつ、前記所定の停止位置に停止させる。このとき、運転士は、ライン状の被照射領域Rを、ライン状の被照射領域L1’,L2’,L3’のうち択一的に照射して形成されたライン状の被照射領域に合わせて鉄道車両21を停止させることで、極めて容易に所定の停止位置に停止させることができる。
本実施の形態によれば、地上側に設けられた照射部71,72,73から発せられた光束による地上側の局所的な被照射領域L1’,L2’,L3’が鉄道車両21の停止目標位置を示す指標とされる。したがって、この指標は、前記従来の停止位置目標やライン状の表記L1,L2,L3に比べて周囲が暗かったり雨が降ったりしても見やすく、また、雪が降っても前記従来の停止位置目標やライン状の表記L1,L2,L3のように雪に埋もれて見えなくなってしまうようなことがない。さらに、本実施の形態による指標形成システム61により形成される指標は、光束による被照射領域であり、前記従来の停止位置目標のような標識板ではないため、前記従来の停止位置目標に比べて大きさや配置等の制約が少なくなることから、視認性を高めるための大きさや配置等を採用し易い。
このように、本実施の形態による指標形成システム61により形成される指標は、前記従来の停止位置目標やライン状の表記L1,L2,L3に比べて見やすい。したがって、運転士は、鉄道車両を所定の停止位置に停止させるに際して、本実施の形態による指標形成システム61により形成される前記指標を用いれば、従来の停止位置目標やライン状の表記L1,L2,L3を用いる場合に比べて、鉄道車両の停止目標位置を容易かつ正確に確認することができ、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
また、本実施の形態によれば、前記光束の横断面形状はライン状であるので、鉄道車両21の停止目標位置を示す指標の視認性を高めつつ、鉄道車両の停止目標位置を正確に認識し易くなる。もっとも、本実施の形態では、前記光束の横断面形状は、ライン状に限らず、例えば、正方形状や円形状などでもよい。
なお、本実施の形態では、目標停止位置の指標となる前記被照射領域は、プラットホームの床面の一部の領域、プラットホームの壁面の一部の領域、プラットホームの天井面の一部の領域、及び、地上面の一部の領域のうちの1つ以上を含むものであればよい。
また、本実施の形態によれば、照射部71,72,73による前記光束の照射のオンオフが自動的に行われ、前記光束が常時照射されるわけではないので、省電力化を図ることができる。
そして、本実施の形態によれば、鉄道車両21が所定の停止目標位置の手前の所定位置に位置するときから前記所定の停止目標位置付近で停止するまでの間は少なくとも、照射部71,72,73による前記光束の照射が行われるので、運転士が鉄道車両21を停止させる際に前記指標を用いることができる。
本実施の形態によれば、互いに異なる停止目標位置を示す指標をそれぞれ形成する前記複数の指標形成装置のうちいずれかの目標停止位置に停止しようとする鉄道車両に応じて選択された1つの指標形成装置のみの照射部の照射が択一的にオンされ、他の指標形成装置の照射部の照射はオフされるので、運転士は自車用の停止目標位置を示す指標のみが形成される。したがって、本実施の形態によれば、互いに異なる停止目標位置を示す複数の指標が同時に形成される場合に比べて、自分が使用すべき指標が一目瞭然となり、誤った停止目標位置に停止させてしまうおそれがなくなり、ひいては、運転士がより容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることが可能となる。
なお、本発明では、1つのプラットホーム22に対して停止目標位置が1つだけあってもよい。この場合、複数の照射部を用いずに1つの照射部のみを用いればよい。
また、本実施の形態による指標形成システム61は、必ずしも前記第1の実施の形態による指標形成装置と組み合わせて使用する必要はない。運転士は、例えば、自分の真横にライン状の被照射領域L1’,L2’,L3のうちの択一的に形成された領域が来る位置で、鉄道車両21を停止させればよい。
[第8の実施の形態]
図21は、本発明の第8の実施の形態による指標形成装置を模式的に示す図であり、図6に対応している。図22は、本発明の第8の実施の形態による指標形成装置を構成する地上側装置81を示す概略ブロック図である。
本実施の形態による指標形成装置は、前記第1の実施の形態による指標形成装置1に対して、図22に示す地上側装置81を追加したものである。
地上側装置81は、センサ82〜84と、表示ランプ85〜87と、制御部88とを備えている。センサ82〜84は、プラットホーム22の床面22aにおいて、ライン状の表記L1,L2,L3の位置にそれぞれ設けられ、それらの位置で鉄道車両21の照射部11からの光束を検出する。表示ランプ85〜86は、ライン状の表記L1,L2,L3にそれぞれ対応して、プラットホーム22の壁面22bにおいて運転士が見やすい位置に設けられている。
制御部88は、停止しようとする鉄道車両21がライン状の表記L1,L2,L3のいずれが示す目標停止位置で停止させるべきかを示す所定信号を外部から受け取り、センサ82〜84のうち停止させるべき目標停止位置に対応するセンサから検出信号が得られたときに、表示ランプ85〜86のうち対応する表示ランプを点灯させる。したがって、当該表示ランプの点灯によって、停止させるべき目標停止位置に鉄道車両21が到着した旨が運転士に報知される。
したがって、本実施の形態によれば、運転士は、より容易かつ確実に、鉄道車両21が停止させるべき目標停止位置に到着したことを知ることができ、ひいては、より容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることができる。
[第9の実施の形態]
図23は、本発明の第9の実施の形態による指標形成装置を模式的に示す図であり、図6に対応している。図24は、本発明の第9の実施の形態による指標形成装置を構成する地上側装置91を示す概略ブロック図である。
本実施の形態による指標形成装置は、前記第1の実施の形態による指標形成装置1に対して、図24に示す地上側装置91を追加したものである。
地上側装置91は、センサ92〜100と、制御部101と、無線通信部102とを備えている。プラットホーム22の床面22aにおいて、センサ92はライン状の表記L1から1m手前の位置、センサ93はライン状の表記L1の位置から0.5m手前の位置、センサ94はライン状の表記L1の位置、センサ95はライン状の表記L2から1m手前の位置、センサ96はライン状の表記L2の位置から0.5m手前の位置、センサ97はライン状の表記L2の位置、センサ98はライン状の表記L3から1m手前の位置、センサ99はライン状の表記L3の位置から0.5m手前の位置、センサ100はライン状の表記L3の位置にそれぞれ設けられ、それらの位置で鉄道車両21の照射部11からの光束を検出する。前記1m及び0.5mは距離の例を挙げたものであり、これらに限定されるものではない。
制御部101は、停止しようとする鉄道車両21がライン状の表記L1,L2,L3のいずれが示す目標停止位置で停止させるべきかを示す所定信号を外部から受け取り、センサ92〜100のうち停止させるべき目標停止位置の1m手前のセンサ、その目標停止位置の0.5m手前のセンサ、その目標停止位置のセンサから検出信号が得られたときに、それらに応じた旨(1m手前位置へ到達の旨、0.5m手前位置へ到達の旨、その目標停止位置に到達した旨)を無線通信部102を介して鉄道車両21側の装置へ送る。1m手前位置へ到達の旨及び0.5m手前位置へ到達の旨は、鉄道車両21が所定の停止位置へ向かう状況である。無線通信部102で車両側へ送られてきた情報(所定の停止位置へ向かう状況及び鉄道車両21が所定の停止位置へ到着した旨)は、運転台の表示装置(図示せず)上に表示されて運転士に報知される。
したがって、本実施の形態によれば、運転士は、より容易かつ確実に、停止位置へ向かう状況や鉄道車両21が停止させるべき目標停止位置に到着したことを知ることができ、ひいては、より容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることができる。
[第10の実施の形態]
図25は、本発明の第10の実施の形態による鉄道車両の停止支援装置を模式的に示す図であり、図21に対応している。
本実施の形態による鉄道車両の停止支援装置は、前記第8の実施の形態による指標形成装置において、照射部11からの光束による照射領域Rをセンサ82〜84を通過し得る程度の長さに狭め、かつ、プラットホーム22の床面22aにおいて、ライン状の表記L1,L2,L3を取り除いたものである。
この停止支援装置によれば、鉄道車両21の運転士は照射領域Rを見て現在位置を確認することはできないものの、前記第8の実施の形態と同様に、表示ランプの点灯によって、停止させるべき目標停止位置に鉄道車両21が到着した旨が運転士に報知される。
したがって、本実施の形態による停止支援装置は、例えば従来の停止位置目標を用いた従来の停止方法において併用すれば、運転士は、より容易かつ確実に、鉄道車両21が停止させるべき目標停止位置に到着したことを知ることができ、ひいては、より容易に鉄道車両を所定の停止位置に正確に停止させることができる。
なお、前記第8の実施の形態による指標形成装置を変形して本実施の形態による支援装置を得たのと同様の変形を、前記第9の実施の形態に適用して、本発明の他の実施の形態による停止支援装置を得ることができる。
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
例えば、前述した第1乃至第9の実施の形態は、前記指標を運転士が直接的に視認し得る例を挙げたものであるが、本発明はこれに限らず、前記指標は運転士が直接的に視認し得なくても、例えば照射部の隣にデジタル動画カメラ等の撮像手段を設け、前記撮像手段により撮像される画像のモニタ画像を介して視認できればよい。