JP6898108B2 - 揮発性薬剤含有フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

揮発性薬剤含有フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は揮発性薬剤含有フィルムおよびその製造方法に関する。
抗菌剤、防虫剤、香料などの常温で揮発する薬剤をフィルムに含有させ、薬剤を徐放させることで薬剤の効能を発揮させる揮発性薬剤含有フィルムが知られている。
例えば、食品の鮮度を保持し、抗菌性を付与することを目的として、揮発性の抗菌剤を含有させたフィルムが食品の包装材や食品上に載せるフィルムとして用いられている。このような抗菌剤として、カラシやワサビに含まれるイソチオシアン酸アリルが用いられている。
イソチオシアン酸アリルは液状薬剤である。このような液状薬剤をフィルムに担持させるために、特許文献1では、基材上に粘着剤層を形成した後に、粘着剤層にイソチオシアン酸エステル類を含浸させる手段を採用している(特許文献1の[0012])。
特開平6−211276号公報
イソチオシアン酸エステルは液状薬剤であるため、粘着剤、特に溶剤型アクリル系粘着剤に混ぜて使用すると粘着剤の粘度が低下し、塗工性が著しく低下するという問題がある。一方で、特許文献1に記載の方法のように、粘着剤層を形成した後に、イソチオシアン酸アリルを含浸させることで、粘着性が維持されるとともに、高濃度のイソチオシアン酸アリルを保持させることができるという利点がある。
ところで、このような揮発性薬剤含有フィルムにおいては、実際に使用される前には、揮発性薬剤が揮発しないように揮発性薬剤を透過しないフィルムで表面が保護されたり、アルミ袋で密閉されたりする。このため、薬剤は使用時までフィルム上に保持されているものと考えられてきた。したがって、特許文献1においては、長期間経過後に薬剤が残存しているか否かという観点では検討されていない。しかしながら、例えば、物品を輸入・輸出などする際には輸送に長時間を要する場合があり、また、保管環境が高温に暴露される場合もある。本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の揮発性薬剤含有フィルムでは、長期間、特に高温保管後にイソチオシアン酸エステル類の薬効が著しく低減することが判明した。
そこで本発明の目的は、長期間イソチオシアン酸エステル類の薬効を発現させることができる揮発性薬剤含有フィルムを提供することである。また、本発明の他の目的は、高温環境下においてもイソチオシアン酸エステル類の薬効を発現させることができる揮発性薬剤含有フィルムを提供することである。
本発明は、基材と、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルが保持された揮発性薬剤層と、を有し、粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、粘着剤組成物がアクリル系共重合体および架橋剤を含み、アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られ、混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が2質量%以下であり、架橋剤は前記架橋性官能基と反応しうる官能基を有する、揮発性薬剤含有フィルムである。
本発明のフィルムによれば、長期間経過後であっても薬剤の効能が維持される揮発性薬剤含有フィルムとなる。
本発明の揮発性薬剤含有フィルムの一態様を示す断面模式図である。 本発明の揮発性薬剤含有フィルムの他の態様を示す断面模式図である。 本発明の一形態に係るロール状の揮発性薬剤含有フィルムの斜視模式図である。 図3Aに示す揮発性薬剤含有フィルムのB−B線に沿った拡大概略断面図である。
本発明の第一実施形態は、基材と、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルが保持された揮発性薬剤層と、を有し、粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、粘着剤組成物がアクリル系共重合体および架橋剤を含み、アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られ、混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が2質量%以下であり、架橋剤は架橋性官能基と反応しうる官能基を有する、揮発性薬剤含有フィルムである。
上述したように、特許文献1に記載のように粘着剤層を形成した後に、イソチオシアン酸エステルを含浸させることで、高濃度の薬剤をフィルム中に保持させることができる。特許文献1の[0015]では、粘着剤として、アクリル酸2−エチルヘキシル97質量%およびアクリル酸3質量%からなるアクリル酸系共重合体を粘着剤として用いることが記載されている。液状のイソチオシアン酸エステルを粘着剤層に含浸させると、粘着剤の粘着性および凝集力が低下するため、イソチオシアン酸エステルを含浸させる前の粘着剤の粘着性および凝集力は高いものである必要がある。主剤であるアクリル酸エステルに対してアクリル酸を添加することで、粘着性の向上および凝集力の向上が図れるため、液状のイソチオシアン酸エステルを粘着剤層に含浸させる系においては、主剤に対してアクリル酸をある程度多く含有させていると考えられる。実際、アクリル酸をある程度含む共重合体を用いて形成された粘着剤層にイソチオシアン酸エステルを含浸させると、高い凝集力が担保される(後述の比較例2、3参照)。また、かような系においては、通常の環境下(例えば、室温保存)では、イソチオシアン酸エステルの薬効は維持される。
しかしながら、このアクリル酸系共重合体を粘着剤として用いた場合、通常の環境下(例えば、室温保存)では、イソチオシアン酸エステルの薬効は維持されるものの、長期間、特に高温保管後にイソチオシアン酸エステルの薬効が著しく低減することが判明した(後述の比較例2、3参照)。一方で、本発明の構成とすることで、高い凝集力が維持されるとともに、長期保管安定性が向上する。
本発明の構成により上記効果が奏される詳細な理由は不明であるが、以下のように考えられる。なお、本発明の技術的範囲は以下のメカニズムに何ら拘束されるものではない。
本発明者は、アクリル酸系共重合体を粘着剤として用いた場合、長期間保存後にイソチオシアン酸エステルの残存量が低減する理由について種々検討した結果、粘着剤に含まれるカルボキシル基がイソチオシアン酸エステル中のイソチオシアネート基(−N=C=S)を分解するために、薬剤の効果が低減すると仮定した。このようなカルボキシル基は例えばイソシアネート系架橋剤のような架橋剤で架橋されることにより消費される。しかしながら、比較例2、3のように過剰量の架橋剤を添加した場合であっても、通常の粘着剤では問題とならない微量に残存するカルボキシル基が粘着剤層内に共存するイソチオシアン酸エステルに影響を及ばすものと考えられる。一方で、アクリル酸系共重合体を構成する単量体成分として、カルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量を2質量%以下とすることで、イソチオシアン酸エステルの分解が低減し、ゆえに、イソチオシアン酸エステルの残存率が高くなると考えられる。
さらに、本発明の構成によれば、積層体からラベルを抜き加工する際に、粘着剤のはみ出しが少なく、加工性が良好となる。これは、本発明の組成とすることで、粘着性および凝集力のバランスが良好であるためであると考えられる。なお、凝集力の低下は、積層体をロール状に巻回したときに、端部から粘着剤が染み出す一要因となると考えられる。
以下、添付した図面を参照しながら、本実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性の測定等は、室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。また、揮発性薬剤含有フィルムを単にフィルムと称する場合もある。
図1は、本発明の揮発性薬剤含有フィルムの一態様を示す断面模式図である。図1において、揮発性薬剤含有フィルム10は、基材11、揮発性薬剤層12および剥離ライナー13から構成される。基材11および剥離ライナー13は薬剤不透過性である。剥離ライナー13は、粘着性を有する揮発性薬剤層が被着体に貼付されるまで、揮発性薬剤層にごみなどの付着物が付着することを防止するために形成される。ゆえに、剥離ライナー13は、被着体にフィルムを貼付する際には剥離される。かような形態とすることで、食品の包装体などにフィルムを貼付することができる。
図2は、本発明の揮発性薬剤含有フィルムの他の態様を示す断面模式図である。図2において、揮発性薬剤含有フィルム20は、基材11、揮発性薬剤層12および揮発性薬剤透過性層14から構成される。基材11は薬剤不透過性である。このような形態とすることで、揮発性薬剤透過性層面から薬剤を放出させることができる。本態様においては、基材11を薬剤透過性層として両面から薬剤を放出させる形態であってもよい。
揮発性薬剤含有フィルムは、本発明の効果が奏される限り、基材上、基材および揮発性薬剤層の間、および揮発性薬剤層上に他の層を有していてもよい。かような他の層としては、印刷層などが挙げられる。
以下、揮発性薬剤含有フィルムを構成する各構成について説明する。なお、フィルムの概念には、テープ、ラベル、シート等と称されるものが包含される。
[基材]
基材は特に限定されるものではなく、揮発性薬剤透過性であっても、揮発性薬剤不透過性であってもよい。
揮発性薬剤不透過性の基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデンなどの樹脂フィルム;樹脂フィルムに金属(例えば、アルミニウムなど)、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムなど)などの蒸着層を設けたもの、金属箔などが挙げられる。加工性や軽量性の観点からは基材は樹脂フィルムであることが好ましく、中でも、寸法安定性の観点から、基材は、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。揮発性薬剤不透過性の基材は、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよく、工程材料を用いてキャスティング法等で形成したものであってもよい。
ここで、揮発性薬剤不透過性とは、薬剤の1日あたりの透過量が30℃で0.1g/m以下(下限0g/m)であることが好ましく、0.01g/m以下(下限0g/m)であることがより好ましい。
揮発性薬剤透過性の基材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸などの生分解性樹脂、塩化ビニルなどの樹脂フィルム、紙、不織布、布、合成紙、そしてそれらの複合体などが挙げられる。
ここで、揮発性薬剤透過性とは、薬剤の1日あたりの透過量が30℃で1g/m以上であることが好ましく、200g/m以下であることが好ましい。かような透過性を有することで、薬剤の効果が発揮されやすく、また、持続時間も適当になる。
なお、揮発性薬剤透過性の基材の揮発性薬剤層とは反対側の面に、揮発性薬剤不透過性フィルムからなる保護フィルムを積層することにより、揮発性薬剤含有フィルムの使用時まで揮発性薬剤が放出しないようにすることもできる。
基材は、単層であってもよいし、複数層であってもよい。また、基材が複数層から構成される場合は、各層の構成が異なるものであってもよい。
また、基材には、プライマー処理、コロナ処理などによる表面処理を施すことができる。上記プライマー処理に使用し得る液剤としては、特に制限はされず、例えばアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、シリコーン系、ゴム系などの従来公知のものを用いることができる。
基材の厚さ(複数層の場合はトータル厚み)は、薬剤徐放性や機械的強度を考慮して適宜設定されるが、5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。
[揮発性薬剤層]
揮発性薬剤層は、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルを保持してなり、薬剤であるイソチオシアン酸エステルを含有するとともに、粘着性を有する。
粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、粘着剤組成物はアクリル系共重合体および架橋剤を含む。
アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、および架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基は直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、粘着性能の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、および(メタ)アクリル酸ブチルであることが好ましい。
モノマー混合物中の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は60〜99.9質量%であることが好ましく、80〜99.7質量%であることがより好ましい。
架橋性官能基含有ビニルモノマーにおける架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基等が挙げられる。中でも、高い凝集力を確保できることから、架橋性官能基含有ビニルモノマーが、水酸基含有ビニルモノマーおよびアミド基含有ビニルモノマーの少なくとも一方から選択される架橋性官能基含有ビニルモノマーであることが好ましく、水酸基含有ビニルモノマーであることがより好ましい。
架橋性官能基含有ビニルモノマーは1種単独であっても、2種以上併用してもよい。
水酸基含有ビニルモノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ水酸基を有するものであれば特に限定されない。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合性の点からは、水酸基含有ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、および(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。中でも、架橋性の観点からは、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、および(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルを用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることがより好ましく、アクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることがさらに好ましい。
アミド基含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、架橋剤が水酸基およびアミド基と反応し得る架橋剤である場合、好適にはイソシアネート系架橋剤である場合、水酸基含有ビニルモノマーおよびアミド基含有ビニルモノマーを併用してもよい。
架橋性官能基含有ビニルモノマーは、モノマー混合物中、0.1〜20質量%であることが好ましい。架橋性官能基含有ビニルモノマーがこのような範囲にあることで、凝集力が高まり、ロール巻き取り時の糊の染み出しが抑制されるとともに、架橋密度が適当となり粘着性が維持される。架橋性官能基含有ビニルモノマーは、モノマー混合物中、0.5〜10質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、モノマー混合物中のカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量は2質量%以下であり、長期保存安定性が一層向上することから、1質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことが好ましい。ここで、「実質的にカルボキシル基含有ビニルモノマーを含まない」とは、不純物程度にカルボキシル基含有ビニルモノマーが含まれることは許容するものであり、具体的には、「実質的にカルボキシル基含有ビニルモノマーを含まない」とは、モノマー混合物質量中、0.01質量%以下、好ましくは0.005質量%以下含むことを指す(下限は0質量%)。
カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、およびオレイン酸などが挙げられる。
アクリル系共重合体を形成するために用いられるモノマー混合物には、上記成分の他、他の共重合可能なモノマーを用いてもよい。他の共重合可能なモノマーの例としては、2−メタクリロイルオキシエチルジフェニルホスファート(メタ)アクリレート、トリメタクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルホスファート(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するアクリルモノマー;スルホプロピル(メタ)アクリレートナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基を有するアクリルモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート等のウレタン基を有するアクリルモノマー;p−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、o−ビフェニル(メタ)アクリレート等のフェニル基を有するアクリルビニルモノマー;2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエチル)シラン、ビニルトリアセチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン基を有するビニルモニマー;(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリロイルピペリジン、フラニルアクリレート、チオフェニル(メタ)アクリレートなどの複素環式基を有するモノマー;スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。これらその他のモノマーは、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。
他の共重合可能なモノマーの含有量は、下記アクリル系共重合体のガラス転移温度などを考慮して適宜設定されるが、モノマー混合物に対して、0〜20質量%であることが好ましく、0〜15質量%であることがより好ましい。
アクリル系共重合体のガラス転移温度Tgは、−60〜−20℃であることが好ましい。アクリル系共重合体のガラス転移温度Tgを−60〜−20℃とすることで、粘着性を有するため好ましい。ガラス転移温度は、用いられるモノマー種、特に、主モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルエステルの種類、含有量を適宜調整することにより、調整することができる。
アクリル系共重合体のガラス転移温度は、以下のフォックス式に従って、共重合体を構成する各構成ポリマーのTgnから計算したものを採用する。
フォックス式:1/Tg=Σ(Wn/Tgn)
Tg:重合体の計算Tg(K)
Wn:モノマーnの重量分率
Tgn:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(K)
モノマーnのホモポリマーのTg値(Tgn)は、例えば、株式会社日本触媒、三菱化学株式会社、東亞合成株式会社などのモノマーメーカーの技術資料や高分子データハンドブック(培風館発行、高分子学会編(基礎編)、昭和61年1月初版)、Polymer Handbook 4th edition(J.Brandrup, E.H.Immergut, E.A.Grulke, 1999年発行、Wiley−Interscience)に記載されている。
アクリル系共重合体の製造方法は、特に制限されず、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。中でも重合開始剤を使用する溶液重合法が、分子量の調節が容易であり、また不純物も少なくできるために好ましい。例えば、溶剤として酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンなどを用い、モノマーの合計量100質量部に対して、重合開始剤を好ましくは0.01〜0.50質量部添加し、窒素雰囲気下で、例えば反応温度60〜90℃で、3〜10時間反応させることで得られる。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの無機過酸化物が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
また、アクリル系共重合体の分子量を適切に制御する目的で、モノマー溶液中に連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸オクチル、β−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、チオグリコール酸ブチル、プロパンチオール類、ブタンチオール類、チオホスファイト類等のチオール化合物や四塩化炭素などのハロゲン化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
アクリル系共重合体の分子量は、特に制限されるものではないが、粘着性の観点からは、重量平均分子量(Mw)が30万〜150万であることが好ましく、凝集力がより高まることから、50万〜150万であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により標準ポリスチレン換算分子量として測定されたものを用いる。
架橋剤は架橋性官能基と反応しうる官能基を有する。好適には、架橋性官能基が水酸基である場合には、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であり、架橋性官能基がアミド基である場合には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤である。
イソシアネート系架橋剤としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;およびイソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;などのジイソシアネート化合物、ならびにジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物の二官能型などのイソシアネート誘導体が挙げられる。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどが挙げられる。
金属キレート系架橋剤には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテートなどが挙げられる。
本実施形態において、好適には、架橋性官能基含有ビニルモノマーが水酸基含有ビニルモノマーを含み、架橋剤がイソシアネート系架橋剤である。
上記架橋剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
架橋性官能基に対する架橋剤中の架橋性官能基と反応しうる官能基の当量は、架橋性官能基が十分に架橋し得る量であれば、特に限定されず、例えば、5〜500mol%である。イソチオシアン酸エステルがより残存しやすいことから、架橋性官能基に対する架橋剤中の架橋性官能基と反応しうる官能基の当量は、20mol%以上であることが好ましい。20mol%以上であることで、(架橋されずに)残存する架橋性反応基がより少なくなるため、イソチオシアン酸エステルに対する影響が少なくなり、イソチオシアン酸エステルの残存率がより高くなる。また、凝集力が高まり、フィルムの積層方向から圧力が付加された場合に粘着剤のはみ出しが低下し、イソチオシアン酸エステルのフィルム内の含浸量が維持される。架橋性官能基に対する架橋剤中の架橋性官能基と反応しうる官能基の当量は、20〜500mol%であることがより好ましく、50〜500mol%であることがさらに好ましく、60〜300mol%であることが最も好ましい。
粘着剤組成物は、従来公知のその他の添加剤をさらに含みうる。かような添加剤としては、例えば、粘着付与剤、充填剤、顔料、紫外線吸収剤などが挙げられる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂などの天然樹脂、C5系、C9系、ジシクロペンタジエン系などの石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。充填剤としては、例えば、亜鉛華、シリカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
上記粘着剤組成物を用いて粘着剤層が形成される。
粘着剤層の厚さは、イソチオシアン酸エステルの含有量を高くすることができることから、10μm以上であることが好ましく、粘着剤層のはみ出しを防ぐ観点から、100μm以下であることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。
イソチオシアン酸エステルとしては、イソチオシアン酸メチル、イソチオシアン酸エチル、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸イソブチル、イソチオシアン酸n−ブチル、イソチオシアン酸フェニル、イソチオシアン酸ベンジルなどが挙げられる。中でも、抗菌性の観点からは、イソチオシアン酸アリルであることが好ましい。イソチオシアン酸エステル類は1種単独であっても2種以上併用してもよい。
イソチオシアン酸エステル量はフィルム中、0.1g/m以上であることが好ましい。本実施形態では、かような高い量の薬剤を担持した場合であっても、高い粘着性および高い凝集力の両立が可能となる。また、本実施形態によれば粘着剤の凝集力が高いために、積層方向に圧力が付加されても粘着剤のはみ出しが抑制される。イソチオシアン酸エステル量は1〜10g/mであることがより好ましい。かような濃度とすることで、薬剤の効果が適切に発揮される。なお、イソチオシアン酸エステルは揮発性であるため、時間の経過とともに薬剤の含有量は低下する。
粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は、40%以上(上限100%)であることが好ましく、50%以上(上限100%)であることがより好ましく、75%以上(上限100%)であることがさらに好ましく、80%以上(上限100%)であることが特に好ましく、90%以上(上限100%)であることが最も好ましい。ゲル分率は、アクリル系重合体の分子量、架橋性官能基と架橋剤との当量などによって制御することができる。例えば、アクリル系重合体の重量平均分子量を大きくすることで、ゲル分率は高くなる方向に向かう。
ゲル分率は以下の方法により測定することができる。揮発性薬剤含有フィルムをナイロンメッシュ120で包み、酢酸エチル中に3日間浸漬した後、酢酸エチルを揮発させ、下記の計算式で算出する。
ゲル分率(%)={(浸漬後の粘着剤層の質量)/(浸漬前の粘着剤層の質量)}×100
[剥離ライナー]
剥離ライナーとしては、イソチオシアン酸エステルの揮発を防ぐために、薬剤不透過性であることが好ましい。薬剤不透過性の剥離ライナーとしては揮発性薬剤不透過性の基材の欄で述べたものと同様である。剥離ライナーの厚みは、通常10〜400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着性である揮発性薬剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01〜5μm程度である。
[製造方法]
第一実施形態の揮発性薬剤含有フィルムの製造方法は特に限定されないが、粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成し、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルを保持させることを有する、製造方法であることが好ましい。
粘着剤層を形成した後に、イソチオシアン酸エステルを保持させることで、粘着剤およびイソチオシアン酸エステルを混合することによる粘着剤の粘性低下を抑制することができるとともに、高濃度のイソチオシアン酸エステルをフィルムに保持させることができる。
粘着剤層の形成方法は、特に限定されるものではないが、基材上に粘着剤を直接塗工して形成してもよく、また、剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、これを基材と貼合してもよい。生産性の観点からは、剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、これを基材と貼合する方法が好ましい。具体的には、剥離ライナー上に粘着剤組成物を塗布し、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材に転写する方法が挙げられる。
粘着剤組成物の剥離ライナーへの塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。
形成された粘着剤層へのイソチオシアン酸エステルの保持方法は特に限定されるものではなく、グラビアコート、ワイヤーバーコート、スプレーコート、カーテンコートなどの塗布、ディッピング法などの浸漬などを挙げることができる。イソチオシアン酸エステルを塗布または含浸させることで、粘着剤が溶解または膨潤し、イソチオシアン酸エステルが粘着剤層に保持される。
また、イソチオシアン酸エステルの粘着剤層への保持は、粘着剤層が形成された後であればどの段階でもよく、フィルムの積層体を形成した後に、イソチオシアン酸エステルを含浸させてもよいし、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルを保持させた後に、他の層を積層させてもよい。
なお、粘着剤層へイソチオシアン酸エステルを保持させる場合には、雰囲気温度を室温(20〜25℃)または室温以下で行うことが好ましい。
このようにして得られた基材および揮発性薬剤層の積層体を長尺体とし、ロール状に巻回してもよい。すなわち、本発明の好適な実施形態は、ロール状である、揮発性含有フィルムである。また、本発明の他の好適な実施形態は、基材および揮発性薬剤層を有する積層体を、長尺体とし、該長尺体をロール状に巻回する、揮発性薬剤含有フィルムの製造方法である。
製品として製造する段階では、生産効率性の観点から、長尺体の積層体を製造し、ロールにて巻き取ることが行われている。ロール状に巻き取られた積層体においては、特に中心に近い場所において、巻き取り方向に力が加わる。油状の揮発性薬剤であるイソチオシアン酸エステルを用いる場合、印加された力によって、ロール中心に近い場所では特に端部からの粘着剤のはみ出しが顕著となる。粘着剤がはみ出すことによって、粘着剤層自体の厚みが薄くなるため、フィルムに担持されている薬剤の量が減少するという問題が生ずる。一方で、本実施形態によれば、粘着剤の凝集力が高いため、粘着剤の端部からのはみ出しが抑制される。ゆえにフィルム上に薬剤が高量担持される。
巻き取りにおいて、得られた積層体はロール状に巻回される。巻き取り装置としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。巻回回数としては、特に制限されず、適宜設定される。また、ロール状に巻回される際には、積層体は巻き芯を用いずに巻回されることでロール状のフィルムを形成されていてもよいし、円筒状の巻き芯を用いて、当該巻き芯を中心として巻回されていてもよい。
図3(A)は、本発明の一形態に係るフィルム、または本発明の一形態に係るフィルムの製造方法によって製造されうるフィルムのその他の一例である、ロール状の揮発性薬剤含有フィルムの斜視模式図である。ロール状の揮発性薬剤含有フィルム30において、34は揮発性薬剤含有フィルムを表す。また、図3(B)は、当該ロール状の揮発性薬剤含有フィルムを形成する揮発性薬剤含有フィルムの、B−B線に沿った拡大概略断面図である。31は基材、32は揮発性薬剤層、33は剥離ライナーを表す。
ロール状の揮発性薬剤含有フィルム30は、最も内径側に位置する揮発性薬剤含有フィルム34から巻回したロール状となっている。ここで、揮発性薬剤含有フィルム34において、揮発性薬剤層32および剥離ライナー33は長手方向に沿って基材上に形成されている。
なお、巻き取りの後、ロール状の揮発性薬剤含有フィルムについて、ロールの任意の箇所で切断を行い、シート状へ固定し、さらに任意の形状へと打ち抜くことで、目的とする機能性フィルムの積層体を形成してもよい。また、ロール状の揮発性薬剤含有フィルムよりフィルムを送り出し、所定の大きさに裁断することにより、目的とする揮発性薬剤含有フィルムを形成してもよい。
また、本発明の他の実施形態は、基材と、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルが保持された揮発性薬剤層と、を有する揮発性薬剤含有フィルムにおけるイソチオシアン酸エステルの残存率向上方法であって、粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、粘着剤組成物がアクリル系共重合体および架橋剤を含み、アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られ、混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が2質量%以下であり、架橋剤は前記架橋性官能基と反応しうる官能基を有する、イソチオシアン酸エステルの残存率向上方法である。
すなわち、粘着剤組成物におけるアクリル系共重合体の混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量を2質量%以下とすることで、イソチオシアン酸エステルの残存率の向上を図るものである。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
(実施例1)
1.アクリル系共重合体の製造
還流器および攪拌機を備えたフラスコに、表1に記載の組成を有するモノマー混合物、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤) モノマー混合物100質量部に対して0.25質量部、および酢酸エチル(溶剤) モノマー混合物100質量部に対して200質量部を添加し、窒素置換を行いながら65℃まで加温した後、重合を行って、アクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、50万であり、Tgは−52℃であった。
2.粘着剤組成物の作製
1.で得られたアクリル系共重合体100質量部に対して、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(固形分75質量%、NCO13.2質量%)2質量部(カルボキシル基に対するイソシアネート基の当量:22mol%)を添加・混合して粘着剤組成物を作製した。
3.揮発性薬剤含有フィルムの作製
2.で得られた粘着剤組成物を、シリコーンを塗布した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラー(登録商標)T60」)上にナイフコーターにより乾燥膜厚30μmとなるように塗布した後、乾燥させて、粘着剤層を形成した。
この積層体の粘着剤層側に、基材である厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製「ルミラー(登録商標)T60」)を貼り合わせた。
この後、イソチオシアン酸アリルを含浸量が粘着剤層に対して10質量%となるようにグラビアコーターにより含浸させて、粘着剤層にイソチオシアン酸アリルが保持された揮発性薬剤層を形成し、揮発性薬剤含浸フィルムを得た。
サンプルを80mm×80mmサイズに切り出し、サンプルの重量W(g)を測定した。その後、粘着剤層を除き、基材および剥離ライナーの重量W(g)を測定した。W−Wにより粘着剤層の重量を算出した。その後、この値に薬剤濃度(10重量%)を掛けることで、フィルム中の薬剤量を算出した。この結果、イソチオシアン酸アリルの薬剤量は、3g/mであった。
(実施例2)
1.アクリル系重合体の製造において、表1に記載の組成を有するモノマー混合物を重合してアクリル系重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、60万であり、Tgは−54℃であった。
(実施例3)
重合時間を変更して、アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を120万としたこと以外は、実施例2と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。
(実施例4)
1.アクリル系重合体の製造において、表1に記載の組成を有するモノマー混合物を重合してアクリル系重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、60万であり、Tgは−23℃であった。
(実施例5)
1.アクリル系重合体の製造において、表1に記載の組成を有するモノマー混合物を重合してアクリル系重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、55万であり、Tgは−54℃であった。
(実施例6)
1.アクリル系重合体の製造において、表1に記載の組成を有するモノマー混合物を重合してアクリル系重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、57万であり、Tgは−52℃であった。
(実施例7)
1.アクリル系重合体の製造において、表1に記載の組成を有するモノマー混合物を重合してアクリル系重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、60万であり、Tgは−51℃であった。
(実施例8)
実施例2において、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(固形分75質量%、NCO13.2質量%)2質量部を4質量部に変更した以外は、実施例2と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、60万であり、Tgは−54℃であった。
(比較例1)
1.アクリル系重合体の製造において、表1に記載の組成を有するモノマー混合物を重合してアクリル系重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、50万であり、Tgは−44℃であった。
(比較例2)
1.アクリル系重合体の製造において、表1に記載の組成を有するモノマー混合物を重合してアクリル系重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして揮発性薬剤含有フィルムを作製した。得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、50万であり、Tgは−51℃であった。
(評価)
1.イソチオシアン酸アリルの残存率
フィルム内のイソチオシアン酸アリル量はガスクロマトグラフにより求めた。フィルムをアルミ袋に入れて25℃12日間保存し、保存後のフィルム内のイソチオシアン酸アリル量を同様にして求めた。初期のイソチオシアン酸アリル量に対する25℃12日間保存後のイソチオシアン酸アリル量を求め、イソチオシアン酸アリルの残存率とした。また、別のフィルムをアルミ袋60℃12日間保存し、保存後のフィルム内のイソチオシアン酸アリル量を同様にして求めた。初期のイソチオシアン酸アリル量に対する60℃12日間保存後のイソチオシアン酸アリル量を求め、イソチオシアン酸アリルの残存率とした。結果を下記表1に示す。
2.粘着剤のはみ出し
フィルムを90mm×90mmの大きさに切断し、100mm×100mmの2枚のガラス板に間に挟み、42.5Kg/cmの荷重をかけて、60℃の環境下で24時間経過した後にはみ出しの有無を観察した。
結果を表1に示す。
Figure 0006898108
上記結果より、本発明の揮発性薬剤フィルムは、長期保存後であっても、イソチオシアン酸エステルの残存率が高いものとなることがわかる。また、いずれの実施例および比較例においても、粘着剤のはみ出しは観察されなかった。さらにカルボキシル基含有ビニルモノマーを実質的に含有しない実施例2〜8では、さらに、イソチオシアン酸エステルの残存率が高いものとなった。また、水酸基に対するイソシアネート基の当量が20mol%以上である実施例2〜5では、さらに、イソチオシアン酸エステルの残存率が高いものとなった。
10、20、34 揮発性薬剤含有フィルム、
11、31 基材、
12、32 揮発性薬剤層、
13 剥離ライナー、
14 揮発性薬剤透過性層、
30 ロール状の揮発性薬剤含有フィルム。

Claims (9)

  1. 基材と、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルが保持された揮発性薬剤層と、を有し、
    前記粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、
    前記粘着剤組成物がアクリル系共重合体および架橋剤を含み、
    前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られ、
    前記混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が質量%以下であり、
    前記架橋剤は前記架橋性官能基と反応しうる官能基を有する、揮発性薬剤含有フィルム。
  2. 基材と、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルが保持された揮発性薬剤層と、を有し、
    前記粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、
    前記粘着剤組成物がアクリル系共重合体および架橋剤を含み、
    前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られ、
    前記混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が2質量%以下であり、
    前記架橋剤は前記架橋性官能基と反応しうる官能基を有し、
    前記架橋性官能基に対する前記架橋剤中の前記架橋性官能基と反応しうる官能基の当量が20mol%以上である、揮発性薬剤含有フィルム。
  3. 前記架橋性官能基含有ビニルモノマーが、水酸基含有ビニルモノマーおよびアミド基含有ビニルモノマーの少なくとも一方から選択される架橋性官能基含有ビニルモノマーである、請求項1または2に記載の揮発性薬剤含有フィルム
  4. 基材と、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルが保持された揮発性薬剤層と、を有し、
    前記粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、
    前記粘着剤組成物がアクリル系共重合体および架橋剤を含み、
    前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルならびに水酸基含有ビニルモノマーおよびアミド基含有ビニルモノマーの少なくとも一方から選択される架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られ、
    前記混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が2質量%以下であり、
    前記架橋剤は前記架橋性官能基と反応しうる官能基を有する、揮発性薬剤含有フィルム。
  5. 前記混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が0.01質量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の揮発性薬剤含有フィルム。
  6. 前記アクリル系共重合体の分子量が30万〜150万である、請求項1〜のいずれか1項に記載の揮発性薬剤含有フィルム。
  7. 前記アクリル系共重合体のガラス転移温度が−60〜−20℃である、請求項1〜のいずれか1項に記載の揮発性薬剤含有フィルム。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の揮発性薬剤含有フィルムの製造方法であって、
    粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成し、
    前記粘着剤層にイソチオシアン酸エステルを保持させることを有する、揮発性薬剤含有フィルムの製造方法。
  9. 基材と、粘着剤層にイソチオシアン酸エステルが保持された揮発性薬剤層と、を有する揮発性薬剤含有フィルムにおけるイソチオシアン酸エステルの残存率向上方法であって、
    前記粘着剤層は粘着剤組成物から形成され、
    前記粘着剤組成物がアクリル系共重合体および架橋剤を含み、
    前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性官能基含有ビニルモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られ、
    前記混合物におけるカルボキシル基含有ビニルモノマーの含有量が質量%以下であり、
    前記架橋剤は前記架橋性官能基と反応しうる官能基を有する、イソチオシアン酸エステルの残存率向上方法。
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