JP6893354B2 - マグネシウム基合金伸展材 - Google Patents

マグネシウム基合金伸展材 Download PDF

Info

Publication number
JP6893354B2
JP6893354B2 JP2017126919A JP2017126919A JP6893354B2 JP 6893354 B2 JP6893354 B2 JP 6893354B2 JP 2017126919 A JP2017126919 A JP 2017126919A JP 2017126919 A JP2017126919 A JP 2017126919A JP 6893354 B2 JP6893354 B2 JP 6893354B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
based alloy
room temperature
less
stress
extender
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017126919A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018012888A (ja
Inventor
英俊 染川
英俊 染川
忠信 井上
忠信 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute for Materials Science
Original Assignee
National Institute for Materials Science
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute for Materials Science filed Critical National Institute for Materials Science
Publication of JP2018012888A publication Critical patent/JP2018012888A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6893354B2 publication Critical patent/JP6893354B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Extrusion Of Metal (AREA)

Description

本発明は、スズ(Sn)が添加された室温延性に優れた微細結晶粒のマグネシウム(Mg)基合金伸展材関する。より詳しくは、Sn以外の元素を合金添加元素としないことを特徴とするMg基合金伸展材関するものである。
Mg合金は、次世代の軽量金属材料として注目されている。しかし、Mg金属結晶構造が六方晶であるため、底面すべりと柱面に代表される非底面すべりの臨界分断せん断応力(CRSS)の差が、室温付近では極めて大きい。そのため、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)などの他の金属伸展材料と比較して、延性に乏しいため、室温での塑性変形加工が難しい。
これらの問題を解決すべく、希土類元素添加による合金化がよく用いられている。例えば、特許文献1、2では、イットリウム(Y)やセリウム(Ce)、ランタン(La)をはじめとする希土類元素を添加し、塑性変形能の改善が図られている。希土類元素には、非底面のCRSSを低下させる、すなわち、底面と非底面のCRSSの差を縮め、非底面の転位すべり運動をしやすくする働きがあるためである。しかしながら、素材価格が高騰するため、経済的観点から、希土類元素代替が求められている。
一方、Mgの結晶粒界近傍では、変形を継続するために必要な複雑な応力、すなわち、粒界コンパティビリティー応力が作用し、非底面すべりが活動することも指摘されている(非特許文献1)。そのため、大量の結晶粒界を導入(結晶粒微細化)することは、延性改善に有効であると提唱されている。
特許文献3では、希土類元素又は汎用元素であるCa,Sr,Ba,Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Dr,Tm,Yb、Luのうち一種類の元素を微量に含有させ、結晶粒が微細化している強度特性に優れた微細結晶粒Mg合金が開示されている。この合金の高強度化は、これらの溶質元素が結晶粒界に偏析することが主要因とされている。他方、微細結晶粒Mg合金は、粒界コンパティビリティー応力の作用による非底面の転位すべり運動が活性化する。
しかし、塑性変形を補完する働きのある粒界すべりに関して、これらの合金では、いずれの添加元素も粒界すべりの発現を抑制する働きがあるため、粒界すべりが変形に殆ど寄与しない。そのため、これらの合金の室温における延性は、従来からのMg合金と同等レベルで、更なる延性の改善が求められている。すなわち、粒界コンパティビリティー応力が作用する微細組織構造を維持しながら、粒界すべりの発現を抑制しない溶質元素の探索が必要である。
発明者らは、特許文献4では、0.07〜2mass%のMnを含有し、室温延性に優れたMg合金を開示している。また、特許文献5では、Mnに代えて、Zrを0.11〜2mass%含有させても室温延性に優れることを開示している。また、更に研究を進めた結果、MnやZrをBiに代えても、室温延性に優れることを見出し、特許出願(特願2016-46883)している。これらの合金は、平均結晶粒サイズが10μm以下で、破断伸びが100%程度を示し、変形に及ぼす粒界すべりの寄与率の指標であるm値が0.1以上を示すことを特徴としている。また、これらの合金は、成形性の指標として、応力低下度を用い、その値が0.3以上を示すことを特徴としている。しかし、経済性やコストの観点から、より安価で汎用性の高い溶質元素代替によって、室温延性や成形性に優れたMg基合金の開発が望まれている。
一般的に、周期表において、同族元素(周期表の縦列)やその両隣(周期表の横列)に属する元素は同じ特性や効果を示すこと多い。そのため、周期表でMnやZr、Biの近接元素を添加したMg基合金の開発は行われているものの、MnやZr、Biと同等または、それらを超える効果を示す添加元素についての開示はされていない。一方で、いまだSnを単独添加したMg合金材の開示は、以下の段落にあるように耐摩擦特性を向上させることを目的とした特許文献が開示はされているものの、MnやZr、Bi単独添加と同じ効果である優れた延性や成形性を示す文献はない。
特許文献6では、SnをMgに0.5〜15mass%添加することで、摩擦摩耗特性に優れたMg基合金板材が開示されている。しかし、Mg基合金の摩擦摩耗特性を向上させるためには、粒界すべりを抑制することが重要であることが指摘されている(非特許文献2)。そのため、本発明の目的である粒界すべりの促進と逆であり、室温における優れた延性や成形性を得ることは、非常に困難である。
国際出願WO2013/180122号公報 特開2008‐214668号公報 特開2006‐16658号公報 特開2016‐17183号公報 特開2016‐89228号公報 特開2006‐213983号公報
J. Koike et al., Acta Mater, 51 (2003) p2055. 松岡敬他 材料 51(2002)p1154.
本発明は、Snのみを添加したMg基合金素材を、温度と減面比を制御した熱間及び温間加工を施すことにより、優れた室温加工性及び変形能を有するMg基合金伸展材を提供することを課題としている。
本発明の第1は、Mg基合金伸展材であって、0.14mass%以上、14.48mass%以下のSnを含み、残部がMgと不可避的成分からなり、かつ鋳造後の溶体化処理及び塑性ひずみ付与後の前記Mg基合金伸展材の平均結晶粒サイズがμm以下であり、前記Mg基合金伸展材の金属組織中のMg母相及び結晶粒界に、粒子径が0.5μm以下のMg−Sn金属間化合物粒子が相互に粒子間距離が1.95μm以下の間隔で分散析出している室温延性に優れたMg基合金伸展材を提供する。
本発明の第は、発明に記載のMg基合金伸展材であって、伸展材の室温引張試験によって得られる応力-ひずみ曲線図において、最大負荷応力を(σmax)と破断時応力を(σbk)と定義したときの式(σmax―σbk)/σmaxの値が0.3以上である室温延性に優れたMg基合金伸展材を提供する。
本発明の第は、発明1又は2に記載のMg基合金伸展材であって、伸展材の室温引張又は圧縮試験における、粒界すべりの発現の指標となるひずみ速度感受性指数(m値)が0.1以上を示す室温延性に優れたMg基合金伸展材を提供する。
本発明の第は、発明1からのいずれかに記載のMg基合金伸展材であって、室温変形中にMg母相が微細化し、室温変形後のMg母相の平均結晶粒サイズが、Mg基合金伸展材の平均結晶粒サイズと比較して、90%以下を示す室温延性に優れたMg基合金伸展材を提供する。
Mg-3Al-1Zn合金押出材の室温引張試験によって得られる公称応力-公称ひずみ曲線。 実施例:Mg-1.4Sn合金押出材の微細組織を走査型電子顕微鏡/後方散乱電子回折により観察した写真。 実施例:Mg-1.4Sn合金押出材の室温引張試験により得られた公称応力-公称ひずみ曲線。 実施例:Mg-1.4Sn合金押出材の引張試験後の微細組織を走査型電子/後方散乱電子回折により観察した写真。 実施例:Mg-1.4Sn合金押出材の流動応力とひずみ速度の関係。
本発明の効果を得るためのMg基合金素材のSnの含有量は、0.14mass%以上、14.48mass%以下である。Snの含有量が0.14mass%(=0.03mol%)とは、溶質元素であるSnが、変形挙動に影響を及ぼす最小添加量である。すなわち、含有量が0.14mass%の場合、固溶しているSn原子は、19.5x10−4μmの間隔で、Mg結晶中、相互に存在すると見積もることができる。この距離は、Mgのバーガースベクトルの3倍程度の大きさに相当し、転位などの格子欠陥が原子結合論的に相互作用を及ぼす限界の値であることを意味する。一方、Sn含有量が14.48mass%以上の場合、Mg結晶中のSnの最大固溶量を超過するため、Mg-Snからなる粗大な金属間化合物が、結晶粒内及び結晶粒界に分散する。これらの粗大な金属間化合物粒子の分散は、塑性変形中に破壊の起点となり、延性の向上の観点から好ましいとは言えない。ここで、Mg-Sn金属間化合物粒子の大きさは、好ましくは、0,5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
好ましくは、Mg基合金素材のSnの含有量は、0.5mass%以上、10.0mass%以下であるとよく、さらに好ましくは、1.0mass%以上、7.5mass%以下、よりさらに好ましくは、1.5mass%以上、5.0mass%以下であるとよい。
熱間加工後のMg母相の平均結晶粒サイズが、20μm以下であることが好ましい。より好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。結晶粒サイズが20μmより粗大な場合、結晶粒界近傍で生じる粒界コンパティビリティー応力は、結晶粒内全域に影響を及ぼさない。すなわち、非底面転位すべりが結晶粒内全域で活動することが難しく、延性の向上が望めない。もちろん、平均結晶粒サイズが20μm以下であれば、Mg結晶粒内及び結晶粒界に0.5μm以下のMg-Sn金属間化合物が分散していてもかまわない。また、平均結晶粒サイズを20μm以下に維持できるのであれば、熱間加工後に、ひずみ取り焼鈍などの熱処理を行ってもかまわない
不可避的不純物には、例えばFe、Si、Ni、Mnが含まれる。これらの不可避的不純物は、原料に含まれるものであり、少量であることが望ましい。例えば、表1の実施例を参考にして、Feは0.05mass%以下、Siは0.01mass%以下、Niは0.01mass%以下、Mnは0.01mass%以下であるとよい。
次に微細組織を得るための製造方法を説明する。溶製したMg-Sn合金鋳造材を、400℃以上、650℃以下の温度で溶体化処理を行う。ここで、溶体化処理温度が400℃未満の場合、Snを均質に固溶させるためには長時間の温度保持が必要となり、工業的観点から好ましくない。一方、650℃を超えると、固相温度以上であるため、局所溶解が始まり、作業上危険である。また、溶体化処理時間は、0.5時間以上、48時間以下が好ましい。0.5時間未満の場合、溶質元素が母相内全域に拡散することが不十分なため、鋳造時の偏析が残存し、健全な素材を創製することができない。48時間を超える場合、作業時間が長くなるため、工業的観点から好ましくない。もちろん、鋳造法は、重力鋳造、砂型鋳造、ダイキャストなど、本発明のMg基合金鋳造材を作製できる手法であればいずれの方法も採用できる。
溶体化処理後、熱間ひずみ付与を行う。熱間加工の温度は、50℃以上、550℃以下が好ましい。加工温度が50℃未満の場合、割れや亀裂の起点となる変形双晶が数多く生じるため、健全な伸展材を作製することができない。加工温度が550℃を超える場合、加工中に再結晶化が進行して結晶粒微細化が阻害され、更に、押出加工の金型寿命の低下の原因となる。
熱間加工時のひずみ付与は、総断面減少率が70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上とする。総断面減少率が70%未満の場合、ひずみ付与が不十分であるため、結晶粒サイズの微細化ができない。更に、ひずみ付与前、すなわち、所定温度に昇温した炉内又はコンテナ内に保持中に、Mg-Snからなる金属間化合物が母相及び結晶粒界に生成することが考えられる。この様な場合、十分なひずみを付与しなければ、これらの金属間化合物を微細に分散させることが難しい。熱間加工方法は、押出、鍛造、圧延、引抜などが代表的であるが、ひずみを付与できる塑性加工法であればいずれの加工法でも採用できる。ただし、熱間加工を実行せず、鋳造材に溶体化処理したのみでは、Mg母相の結晶粒サイズが粗大であるため、本発明の効果が得られない。
室温におけるMg基合金伸展材の延性や成形性を評価する指標、すなわち、応力低下度とひずみ速度感受性指数(m値)について説明する。両指標は、引張試験によって取得される公称応力と公称ひずみ曲線から算出することができる。
応力低下度は、式1によって求めることができ、応力低下度の値が、0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。
Figure 0006893354
なお、σmaxは最大負荷応力、σbkは破断時応力であり、その例を図1と図3に示している。
また、変形にともなう粒界すべりの有無は、m値を用いることで予測することができる。式2のm値は、
Figure 0006893354
の関係にあり、eはひずみ速度、Aは定数、σは流動応力である。m値が大きいほど、粒界すべりの発現が大きく、変形への寄与が大きい。一般的なMg合金の室温塑性変形条件では、転位運動が全変形を担うため、m値が0.05以下である。そのため、発明の効果をえる、すなわち粒界すべりが変形に寄与するためには、m値が0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。
室温引張試験によって得られる一般的なMg基合金伸展材の応力-ひずみ曲線の特徴を述べる。図1に典型的なMg-3mass%Al-1mass%Zn合金押出材の室温引張試験によって得られる公称応力-公称ひずみ曲線を示す。降伏現象を示した後、緩やかな加工硬化と加工軟化が起こり、破断に至ることが確認できる。しかし、加工硬化および加工軟化の各々の度合い(図内:直線の傾き)は、極めてわずかであることが最大の特徴であり、式1に示す応力低下度は0.1以下である。このわずかな加工硬化や加工軟化、小さな応力低下度は、変形を担う機構が拡散をともなわない転位運動に起因するためである。そのため、内部微細組織は変形前後で変わらず、Mg母相の結晶粒サイズの微細化は起こらない。
市販の純Sn(99.9mass%)と市販の純Mg(99.98mass%)を、鉄製るつぼを用いて、Sn目標含有量が、1.4mass%、3.0mass%、5.0mass%、6.5mass%となるようにSnとMgを調整し、鉄製るつぼを用いてMg-Sn合金鋳造材を溶製した。なお、Ar雰囲気にて、溶解温度は700℃、溶解保持時間を5分とし、直径50mm、高さ200mmの鉄製鋳型を用いて鋳造した。その後、鋳造材を500℃、2時間にて溶体化処理した。
表1にICPによって計測したSnと不純物元素の組成分析の結果を示す。
Figure 0006893354
溶体化処理後の表1の鋳造材を、機械加工により、直径40mm、長さ60mmの円柱押出ビレットに加工した。加工後のビレットを175℃に設定したコンテナ内で30分間保持した後、押出比25:1(=減面率:94%)にて押出による熱間ひずみ付与加工を行い、直径8mmで長さ500mm以上の形状の押出材を作製した。(以下、押出材と称す。)
走査型電子顕微鏡/後方散乱電子回折法を用いて、作製したMg-1.4Sn合金押出材の微細組織観察を行った。図2に観察した典型的な微細組織例を示す。同じコントラストからなる領域がひとつの結晶粒(Mg母相)であり、Mg-1.4Sn合金押出材の平均結晶粒サイズが3.2μmであり、20μm以下であることが分かる。なお、同様の手法によって測定した他のMg-Sn合金押出材の平均結晶粒サイズは、表2に示している。
Mg-1.4Sn合金押出材から採取した試験片について、初期ひずみ速度が、1x10−4 s−1から2x10−6 s−1の範囲内で室温引張試験を行った。他のMg-Sn合金押出材は、初期ひずみ速度が、1x10−4 s−1と1x10−5 s−1で室温引張試験を行った。全ての引張試験は、JIS規格に基づき、平行部長さ10mm、平行部直径2.5mmからなる丸棒試験片を用いた。試験片は、押出方向に対して、平行方向から採取した。図3に室温の引張試験により得られた公称応力-公称ひずみ曲線を示す。ひずみ速度;2x10−6 s−1では、破断伸びが130%を超え、優れた延性を示すことが確認できる。ここで、応力が急激に(各測定間で20%)低下した場合を「破断」したと定義し、その時の公称ひずみを、破断伸びとして表2にまとめている。
Figure 0006893354
図3に示すMg-1.4Sn合金押出材の公称応力と公称ひずみ曲線では、最大負荷応力に到達した後、大きな応力低下度を示していることが分かる。例えば、ひずみ速度;1x10−5 s−1で引張試験した場合、(σmax―σbk)/σmaxの値は0.56を示すことから、本発明合金の塑性変形限界が大きく、成形性に優れることを示唆している。表2より、Snの添加量に関係なく、(σmax―σbk)/σmaxの値は0.3以上で、優れた成形性を示すことが分かる。
また、ひずみ速度;2x10−6 s−1の応力-ひずみ曲線は、図1に示した一般的なMg合金押出材と異なることが分かる。最大負荷応力に到達した後、急激な加工軟化を示し、主変形機構が粒界すべりであり、Mg母相の結晶粒サイズの微細化を引き起こす動的再結晶挙動を示唆している。走査型電子顕微鏡/後方電子散乱回折法を用いて、引張試験後の破断部近傍の微細組織観察を行った。図4に観察した典型的な微細組織例を示す。Mg母相の平均結晶粒サイズが1.7μmであった。図2に示す変形前のMg母相の平均結晶粒サイズが3.2μmであったことから、変形にともない、Mg母相の微細化が起こり、結晶粒サイズが53%に微細化していることが確認できる。
各引張試験の結果をもとに、公称ひずみ0.1の時の、公称応力の値を流動応力とし、図5に流動応力とひずみ速度の関係を示す。図中、直線の傾きがm値に相当し、平均二乗法によって求まった値を表1に示す。実施例にあるMg-1.4Sn合金押出材のm値は、0.10以上を示し、粒界すべりの発現により、室温において高延性化をもたらしている。同様に、表2より、Snの添加量に関係なく、m値は0.10以上を示すことが分かる。なお、ひずみ速度:1x10−5 s−1から2x10−6 s−1の範囲内におけるm値は、ひずみ速度急変法によって求めている。ここで、ひずみ速度急変法とは、公称ひずみ0.1に到達した際、所定のひずみ速度に変化(急変)し、短時間でm値を求めることができる有効な試験法である。一方で、破断まで試験が継続しないため、破断伸びや応力低下度を求めることができないことを欠点とする。
比較例
表2に記載の各種Mg-Sn合金押出材を用いて、Mg母相を粗大化するために、マッフル炉内にて熱処理を行った。(以下、熱処理材と称す)熱処理時間と温度は、表3記載のとおりである。Mg母相の平均結晶粒サイズは、光学顕微鏡を用いて測定し、その結果を表3に示す。各熱処理材の平均結晶粒サイズは、20μm以上であることが分かる。
実施例と同様の試験条件、試験片形状で、室温引張試験を行った。得られた破断伸び、応力低下度、m値を表3にまとめている。熱処理材の破断伸びや応力低下度は、表2に示す実施例の押出材と比べて、小さい。また、熱処理材のm値は、0.1以下であり、塑性変形に対する粒界すべりの寄与は乏しいことが分かる。これら破断伸びや応力低下度、m値の減少は、結晶粒サイズの粗大化にともない、試験片(バルク)内に占める粒界の割合が減少したためである。本発明の効果を得るためには、平均結晶粒サイズが20μm以下である必要があり、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、よりさらに好ましくは5μm以下とする。
Figure 0006893354
なお、本発明の実施例では、一回の塑性ひずみ付与方法によって内部組織の微細化を図ったが、断面減少率が所定の値より少ない場合には、複数回の塑性ひずみ付与を行うこともできる。
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記の実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の項で説明した特徴の組み合わせの全てが本発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明のMg-Sn合金は、優れた室温延性を示すことから、二次加工性に富み、板形状をはじめとする複雑形状への成形が容易である。また、粒界すべりが発現することから、内部摩擦特性に優れ、振動やノイズを課題とする部位への適応が考えられる。更に、希土類元素を用いていないため、従来の希土類添加Mg合金と比較して素材の価格を低減することが可能である。
σmax 最大負荷応力
σbk 破断時応力
m(値) ひずみ速度感受性指数
ED 押出加工に対して平行方向
TD 押出加工に対して垂直方向

Claims (4)

  1. Mg基合金伸展材であって、0.14mass%以上、14.48mass%以下のSnを含み、残部がMgと不可避的成分からなり、
    かつ鋳造後の溶体化処理及び塑性ひずみ付与後の前記Mg基合金伸展材の平均結晶粒サイズが5μm以下であり、
    前記Mg基合金伸展材の金属組織中のMg母相及び結晶粒界に、粒子径が0.5μm以下のMg−Sn金属間化合物粒子が相互に粒子間距離が1.95μm以下の間隔で分散析出していることを特徴とする室温延性に優れたMg基合金伸展材。
  2. 請求項1に記載のMg基合金伸展材であって、伸展材の室温引張試験によって得られる応力-ひずみ曲線図において、最大負荷応力を(σmax)と破断時応力を(σbk)と定義したときの式(σmax―σbk)/σmaxの値が0.3以上であることを特徴とする室温延性に優れたMg基合金伸展材。
  3. 請求項1又は2に記載のMg基合金伸展材であって、
    伸展材の室温引張又は圧縮試験における、粒界すべりの発現の指標となるひずみ速度感受性指数(m値)が0.1以上を示すことを特徴とする室温延性に優れたMg基合金伸展材。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のMg基合金伸展材であって、
    室温変形中にMg母相が微細化し、室温変形後のMg母相の平均結晶粒サイズが、Mg基合金伸展材の平均結晶粒サイズと比較して、90%以下を示す室温延性に優れたMg基合金伸展材。
JP2017126919A 2016-07-11 2017-06-29 マグネシウム基合金伸展材 Active JP6893354B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016136565 2016-07-11
JP2016136565 2016-07-11

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018012888A JP2018012888A (ja) 2018-01-25
JP6893354B2 true JP6893354B2 (ja) 2021-06-23

Family

ID=61019324

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017126919A Active JP6893354B2 (ja) 2016-07-11 2017-06-29 マグネシウム基合金伸展材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6893354B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112284894B (zh) * 2020-09-14 2023-03-28 中国科学院金属研究所 一种高强度低合金耐候结构钢的高温拉伸试验方法
CN114260402B (zh) * 2021-12-21 2023-11-28 中国第二重型机械集团德阳万航模锻有限责任公司 大直径薄壁球壳类整体模锻件的设计方法及锻造方法
CN114934217B (zh) * 2022-05-25 2023-09-26 鹤壁海镁科技有限公司 一种微合金的Mg-Sn-Bi-Gd-Zr高塑性镁合金及其制备方法
CN115261693B (zh) * 2022-07-27 2023-05-26 西南大学 一种高强高导热稀土镁合金
CN116274788A (zh) * 2023-05-15 2023-06-23 山西银光华盛镁业股份有限公司 一种镁合金锻件成型方法及设备

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4189687B2 (ja) * 2005-11-16 2008-12-03 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金材
JP2007291447A (ja) * 2006-04-25 2007-11-08 Toyota Motor Corp マグネシウム合金製摺動部品
JP6080067B2 (ja) * 2010-03-31 2017-02-15 国立研究開発法人物質・材料研究機構 マグネシウム合金
JP6587174B2 (ja) * 2015-04-28 2019-10-09 国立研究開発法人物質・材料研究機構 高靱性マグネシウム基合金伸展材及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018012888A (ja) 2018-01-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6893354B2 (ja) マグネシウム基合金伸展材
JP6860235B2 (ja) マグネシウム基合金展伸材及びその製造方法
JP6803574B2 (ja) マグネシウム基合金伸展材及びその製造方法
JP6860236B2 (ja) マグネシウム基合金展伸材及びその製造方法
KR101258470B1 (ko) 고강도 고연성 난연성 마그네슘 합금
JP6489576B2 (ja) マグネシウム基合金伸展材の製造方法
JP5703881B2 (ja) 高強度マグネシウム合金およびその製造方法
JP5729081B2 (ja) マグネシウム合金
EP2835437A1 (en) Magnesium alloy, magnesium alloy member and method for manufacturing same, and method for using magnesium alloy
KR20180115848A (ko) 알루미늄-아연-구리(Al-Zn-Cu) 합금 및 이의 제조방법
JP2016017183A (ja) マグネシウム基合金展伸材及びその製造方法
JP6493741B2 (ja) Mg合金とその製造方法
KR101700419B1 (ko) 저온 및 저속의 압출공정을 이용한 고강도 마그네슘 합금 압출재 제조방법 및 이에 의해 제조된 마그네슘 합금 압출재
JP4929000B2 (ja) 塑性加工用マグネシウム合金及びマグネシウム合金塑性加工部材
JP6648894B2 (ja) マグネシウム基合金伸展材及びその製造方法
JP5419061B2 (ja) マグネシウム合金
Pérez et al. High-strength extruded Mg96Ni2Y1RE1 alloy exhibiting superplastic behaviour
KR101680041B1 (ko) 고연성 및 고인성의 마그네슘 합금 가공재 및 그 제조방법
JP6649665B2 (ja) マグネシウム合金製造方法、マグネシウム合金圧延材、およびマグネシウム合金成形体
KR20080085664A (ko) 소성 가공용 마그네슘 합금 및 마그네슘 합금 소성가공부재
WO2023080056A1 (ja) マグネシウム基合金伸展材
JP6774787B2 (ja) マグネシウム合金の製造方法
JP6120380B6 (ja) マグネシウム合金、マグネシウム合金部材並びにその製造方法、マグネシウム合金の使用方法
WO2008088082A1 (en) Mg alloy

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200330

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201019

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201027

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201221

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210216

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210324

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210511

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210525

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6893354

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250