以下、本技術の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池(リチウムイオン二次電池)
1−1.全体構成
1−2.安全弁機構の構成
1−3.サブディスクの構成
1−4.巻回電極体の構成
1−5.動作
1−6.製造方法
1−7.作用および効果
2.二次電池(リチウム金属二次電池)
3.変形例
4.二次電池の用途
4−1.電池パック(単電池)
4−2.電池パック(組電池)
4−3.電動車両
4−4.電力貯蔵システム
4−5.電動工具
<1.二次電池(リチウムイオン二次電池)>
まず、本技術の一実施形態の二次電池に関して説明する。
ここで説明する二次電池は、例えば、電極反応物質としてリチウムを用いた二次電池であり、より具体的には、リチウムの吸蔵現象およびリチウムの放出現象を利用して電池容量(負極の容量)が得られるリチウムイオン二次電池である。この「電極反応物質」とは、電極反応(充放電反応)に関わる物質である。
<1−1.全体構成>
まず、二次電池の全体構成に関して説明する。
図1は、二次電池の断面構成を表している。この二次電池は、例えば、図1に示したように、電池缶11の内部に、電池素子である巻回電極体20を備えている。電池缶11は、本技術の一実施形態の「収納部材」であると共に、巻回電極体20は、本技術の一実施形態の「電池素子」である。
ここで説明する二次電池は、例えば、電池缶11を用いた円筒型の二次電池である。円筒型の二次電池では、例えば、円柱状の電池缶11の内部に、上記した巻回電極体20と共に、一対の絶縁板12,13および熱感抵抗(PTC)素子15が収納されている。この電池缶11には、安全弁機構30が取り付けられていると共に、その電池缶11は、例えば、電池蓋14により密閉されている。
[電池缶]
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部(開放端部11N)が開放された中空構造を有しており、例えば、鉄、アルミニウムおよびそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電池缶11の表面には、例えば、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上が鍍金されていてもよい。電池缶11の開放端部11Nには、例えば、電池蓋14、熱感抵抗素子15および安全弁機構30がガスケット16を介してかしめられている。
[一対の絶縁板]
一対の絶縁板12,13は、例えば、巻回電極体20の巻回周面に対して垂直な方向に延在していると共に、互いに巻回電極体20を挟むように配置されている。
[電池蓋]
電池蓋14は、主に、電池缶11を封止する部材であり、例えば、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。
[熱感抵抗素子]
熱感抵抗素子15は、温度の変化に応じて電気抵抗が大きく変化する抵抗体(サーミスタ)を含んでいる。熱感抵抗素子15の電気抵抗は、大電流に起因した二次電池の異常な発熱などを防止するために、その二次電池の内部温度が所定の温度を越えると急激に増加する。
[安全弁機構]
安全弁機構30は、開放端部11Nを閉塞するように電池缶11に取り付けられている。この安全弁機構30は、例えば、電池蓋14と巻回電極体20との間に配置されており、熱感抵抗素子15を介して電池蓋14と電気的に接続されている。これにより、電池缶11の内部に巻回電極体20と共に安全弁機構30が収納された状態において、その電池缶11は電池蓋14により封止されている。なお、安全弁機構30の詳細な構成に関しては、後述する(図2〜図5参照)。
[ガスケット]
ガスケット16は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ガスケット16の表面には、例えば、アスファルトなどのうちのいずれか1種類または2種類以上が塗布されていてもよい。
[巻回電極体]
巻回電極体20は、例えば、正極21と、負極22と、セパレータ23と、液状の電解質である電解液とを含んでいる。この巻回電極体20は、例えば、セパレータ23を介して正極21および負極22が積層されたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23が巻回されることにより形成されている。電解液は、例えば、正極21、負極22およびセパレータ23のそれぞれに含浸されている。なお、巻回電極体20の詳細な構成に関しては、後述する(図6参照)。
巻回電極体20の中心には、例えば、正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させる際に生じた空間(巻回空間20C)が設けられており、その巻回空間20Cには、例えば、センターピン24が挿入されている。ただし、センターピン24を省略してもよい。
[正極リード]
正極21には、正極リード25が接続されている。この正極リード25は、正極21と共に電池缶11の内部に収納されており、例えば、アルミニウムなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、正極リード25は、例えば、安全弁機構30(後述するサブディスク34)に物理的に接続されているため、電池蓋14と電気的に接続されている。
[負極リード]
負極22には、負極リード26が接続されている。この負極リード26は、負極22と共に電池缶11の内部に収納されており、例えば、ニッケルなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、負極リード26は、例えば、電池缶11に物理的に接続されているため、その電池缶11と電気的に接続されている。
<1−2.安全弁機構の構成>
続いて、安全弁機構30の構成に関して説明する。
図2は、図1に示した安全弁機構30の断面構成を拡大していると共に、図3は、図2に示した安全弁機構30のうちの主要部(セーフティーカバー31、ディスクホルダ32、ストリッパーディスク33およびサブディスク34)の斜視断面構成を表している。
ただし、図2では、安全弁機構30と共に、その安全弁機構30の周辺の構成要素(電池缶11など)も併せて示している。
また、図3では、図2に示したA−A線に沿ったセーフティーカバー31、ディスクホルダ32、ストリッパーディスク33およびサブディスク34のそれぞれの断面を示している。この場合には、セーフティーカバー31、ディスクホルダ32、ストリッパーディスク33およびサブディスク34が互いに離間された状態を示している。
安全弁機構30は、例えば、図2および図3に示したように、セーフティーカバー31と、ディスクホルダ32と、ストリッパーディスク33と、サブディスク34とを含んでいる。セーフティーカバー31は、本技術の一実施形態の「閉塞部材」であり、ストリッパーディスク33は、本技術の一実施形態の「中間部材」であり、サブディスク34は、本技術の一実施形態の「接続部材」である。
セーフティーカバー31、ディスクホルダ32、ストリッパーディスク33およびサブディスク34は、例えば、巻回電極体20から遠い側(電池蓋14に近い側)からこの順に配置されている。
[セーフティーカバー]
セーフティーカバー31は、主に、開放端部11Nを閉塞すると共に、電池缶11の内圧の上昇に応じて開口可能な部材である。電池缶11の内圧は、例えば、電解液の分解反応などの副反応に起因して上昇する。すなわち、電解液の分解反応などの副反応が発生すると、電池缶11の内部に二酸化炭素などのガスが発生するため、そのガスの発生量の増加に応じて電池缶11の内圧が上昇する。
セーフティーカバー31の平面形状は、特に限定されないが、例えば、円形、多角形および他の形状などである。円形は、例えば、真円(正円)、楕円および略円などである。略円は、例えば、真円が部分的または全体的に歪んだ形状の総称である。多角形は、例えば、三角形、四角形、五角形および六角形などである。他の形状は、例えば、曲線だけにより輪郭が形成されている円形以外の形状、2種類以上の多角形が合成された形状および1種類以上の円形と1種類以上の多角形とが合成された形状などである。ここで説明した「円形」、「多角形」および「他の形状」のそれぞれの定義は、以降においても同様である。ここでは、セーフティーカバー31の平面形状は、例えば、円形である。
セーフティーカバー31のうちの中央領域は、例えば、ディスクホルダ32に向かって窪んでいる。このため、セーフティーカバー31は、例えば、リング状の外周部31Xと、その外周部31Xにより囲まれた中央部31Yとを含んでいる。中央部31Yの平面形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、中央部31Yの平面形状は、例えば、円形である。中央部31Yの表面は、例えば、外周部31Xの表面よりも低くなっているため、その中央部31Yは、例えば、外周部31Xよりもディスクホルダ32に接近している。
中央部31Yは、上記したように、電池缶11の内圧の上昇に応じて開口可能である開口弁部31Rを有している。電池缶11の内圧が一定以上になるまで上昇すると、開口弁部31Rが開裂または除去される。これにより、後述するように、セーフティーカバー31に開口部31Kが形成されるため(図10参照)、そのセーフティーカバー31が開口する。
中央部31Yのうちの中央部分は、例えば、さらにディスクホルダ32に向かって窪んでいる。このため、中央部31Yには、例えば、ディスクホルダ32に向かって突出した突起部31Tが設けられている。言い換えれば、突起部31Tは、サブディスク34に向かって突出している。
このセーフティーカバー31は、例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金などの金属材料うちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
[ディスクホルダ]
ディスクホルダ32は、主に、セーフティーカバー31とストリッパーディスク33との間に介在することにより、そのセーフティーカバー31に対してストリッパーディスク33を位置合わせする部材である。
ディスクホルダ32の平面形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、ディスクホルダ32の平面形状は、例えば、円形である。
ディスクホルダ32のうちの中央領域は、例えば、ストリッパーディスク33に向かって窪んでいる。このため、ディスクホルダ32は、例えば、リング状の外周部32Xと、その外周部32Xにより囲まれた中央部32Yとを含んでいる。中央部32Yの平面形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、中央部32Yの平面形状は、例えば、円形である。中央部32Yの表面は、例えば、外周部32Xの表面よりも低くなっているため、その中央部32Yは、例えば、外周部32Xよりもストリッパーディスク33に接近している。
セーフティーカバー31のうちの中央部31Yは、例えば、ディスクホルダ32に設けられた窪みに嵌め込まれる。これにより、セーフティーカバー31がディスクホルダ32に対して位置合わせされると共に、そのセーフティーカバー31がディスクホルダ32に対して固定される。
中央部32Yのうち、セーフティーカバー31のうちの中央部31Y(開口弁部31R)に対応する箇所には、例えば、開口部32Kが設けられている。開口部32Kの開口形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、開口部32Kの開口形状は、例えば、円形である。
このディスクホルダ32は、例えば、ポリプロピレン(PP)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などの高分子材料うちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
[ストリッパーディスク]
ストリッパーディスク33は、主に、ディスクホルダ32とサブディスク34との間に介在することにより、電池缶11の内部において発生したガスを放出する部材である。
ストリッパーディスク33の平面形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、ストリッパーディスク33の平面形状は、例えば、円形である。
ストリッパーディスク33のうちの中央領域は、例えば、サブディスク34に向かって窪んでいる。このため、ストリッパーディスク33は、例えば、リング状の外周部33Xと、その外周部33Xにより囲まれた中央部33Yとを含んでいる。中央部33Yの平面形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、中央部33Yの平面形状は、例えば、円形である。中央部33Yの表面は、例えば、外周部33Xの表面よりも低くなっているため、その中央部33Yは、例えば、外周部33Xよりもサブディスク34に接近している。
ディスクホルダ32のうちの中央部32Yは、例えば、ストリッパーディスク33に設けられた窪みに嵌め込まれる。これにより、ストリッパーディスク33がディスクホルダ32に対して位置合わせされると共に、そのストリッパーディスク33がディスクホルダ32に対して固定される。
中央部33Yのうち、開口弁部31Rに対向する領域には、例えば、複数の開口部33Kが設けられている。この複数の開口部33Kは、主に、電池缶11の内部においてガスが発生した際に、その電池缶11の外部にガスを放出するための通気口である。
外周部33Xには、複数の開口部33Kに向かって突出した複数の突起部33Tが設けられており、その複数の突起部33Tは、複数の開口部33Kよりも外側に配置されている。この複数の突起部33Tは、主に、ディスクホルダ32に対してストリッパーディスク33を固定させるために用いられる。この場合には、例えば、図2に示したように、ディスクホルダ32の外側面に対して複数の突起部33Tが押圧されることに起因して、そのディスクホルダ32の内側面がセーフティーカバー31に対して押圧される。これにより、ストリッパーディスク33のうちの一部(複数の突起部33T)とセーフティーカバー31との間にディスクホルダ32を介した嵌合力が発生するため、その嵌合力を利用してストリッパーディスク33がディスクホルダ32に対して固定される。
ここでは、例えば、外周部33Xから中央部33Yに至る範囲において、その外周部33Xのうちの一部を残存させるようにストリッパーディスク33が部分的に除去されている。これにより、ストリッパーディスク33が部分的に除去された箇所に開口部33Pが設けられていると共に、外周部33Xの残存部分により突起部33Tが形成されている。すなわち、複数の突起部33Tに応じて、複数の開口部33Pが設けられている。
開口部33Kの数は、特に限定されないと共に、突起部33Tの数も、特に限定されない。ここでは、開口部33Kの数は、例えば、6個であると共に、突起部33Tの数は、例えば、6個である。
なお、中央部33Yには、例えば、突起部31Tに対応する箇所に、その突起部31Tを通過させるための開口部33Cが設けられている。この突起部31Tは、開口部33Cを通過することにより、サブディスク34に物理的に接続されている。開口部33Cの開口形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、開口部33Cの開口形状は、例えば、円形である。複数の開口部33K、複数の突起部33Tおよび複数の開口部33Pのそれぞれは、例えば、開口部33Cを中心とした同心円上の位置に配置されている。
このストリッパーディスク33は、例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金などの金属材料うちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、ストリッパーディスク33の形成材料は、セーフティーカバー31の形成材料と同じでもよいし、セーフティーカバー31の形成材料と異なっていてもよい。
[サブディスク]
サブディスク34は、主に、セーフティーカバー31と巻回電極体20(正極リード25)との間に配置されることにより、その巻回電極体20に対してセーフティーカバー31(突起部31T)を電気的に接続させる部材である。
サブディスク34は、突起部31Tと物理的に接続されているため、セーフティーカバー31と電気的に接続されている。すなわち、サブディスク34は、突起部31Tに物理的に接続された接続部34Cを有しており、その接続部34Cにおいて突起部31Tと接触している。
また、サブディスク34は、正極リード25と物理的に隣接されているため、巻回電極体20と電気的に接続されている。
サブディスク34の平面形状は、特に限定されないが、例えば、セーフティーカバー31の平面形状と同様である。ここでは、サブディスク34の平面形状は、例えば、円形である。
このサブディスク34は、例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金などの金属材料うちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、サブディスク34の形成材料は、セーフティーカバー31の形成材料と同じでもよいし、セーフティーカバー31の形成材料と異なってもよい。
なお、サブディスク34の詳細な構成に関しては、後述する(図4および図5参照)。
<1−3.サブディスクの構成>
続いて、サブディスク34の構成に関して説明する。
図4および図5のそれぞれは、図3に示したサブディスク34の構成を拡大している。ただし、図4では断面構成を示していると共に、図5では平面構成を示している。
[全体構成]
サブディスク34は、例えば、図4および図5に示したように、巻回電極体20に近い側に位置する第1面である下面34Aと、セーフティーカバー31に近い側に位置する第2面である上面34Bとを有している。
ここでは、突起部31Tは、例えば、図2、図4および図5に示したように、サブディスク34の上面34Bに物理的に接続されている。これにより、サブディスク34は、セーフティーカバー31と電気的に接続されている。突起部31Tの接続方法は、特に限定されないが、例えば、溶接法、より具体的には超音波溶接法などである。
また、正極リード25は、例えば、図2、図4および図5に示したように、サブディスク34の下面34Aに物理的に接続されている。これにより、サブディスク34は、巻回電極体20と電気的に接続されている。正極リード25の接続方法は、例えば、突起部31Tの接続方法と同様である。
[開裂溝]
サブディスク34のうち、接続部34Cの周辺領域のうちの一部または全部には、電池缶11の内圧の上昇に応じてサブディスク34を開裂させるための溝である開裂溝34Mが設けられている。この接続部34Cの「周辺領域」とは、その接続部34Cの周囲の領域である。開裂溝34Mの幅Wおよび深さSのそれぞれは、任意に設定可能である。図5では、開裂溝34Mを識別しやすくするために、開裂溝34Mの形成領域に濃い網掛けを施していると共に、それ以外の領域に淡い網掛けを施している。図2および図3のそれぞれでは、図示内容を簡略化するために、開裂溝34Mの図示を省略している。
サブディスク34に開裂溝34Mが設けられているのは、電池缶11の内圧が上昇した際に、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂するため、そのサブディスク34が開口するからである。これにより、電池缶11の内圧が上昇すると、サブディスク34に対する突起部31Tの接続強度に依存せずに、そのサブディスク34が容易かつ安定に開口しやすくなる。よって、電池缶11の内圧の上昇に応じて安全弁機構30が再現性よく作動しやすくなるため、その安全弁機構30の動作安定性が向上する。
開裂溝34Mがサブディスク34に設けられていることにより、そのサブディスク34は、例えば、開裂溝34Mよりも外側に位置する外周部34Xと、その開裂溝34Mよりも内側に位置する中央部34Yとを含んでいる。
開裂溝34Mの構成は、電池缶11の内圧の上昇に応じてサブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂可能な構成であれば、特に限定されない。
第1に、開裂溝34Mの形成位置は、特に限定されない。このため、開裂溝34Mは、下面34Aに設けられていてもよいし、上面34Bに設けられていてもよいし、下面34Aおよび上面34Bの双方に設けられていてもよい。電池缶11の内圧が上昇した際に、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂しやすくなるからである。ここでは、開裂溝34Mは、例えば、下面34Aに設けられている。
第2に、開裂溝34Mの断面形状は、特に限定されない。このため、開裂溝34Mの断面形状は、矩形でもよいし、多角形(矩形を除く。)でもよいし、湾曲形状でもよいし、それ以外の形状でもよい。
ここで説明する「断面形状」とは、図4に示したように、Y軸方向から見た開裂溝34Mの断面形状である。なお、「湾曲形状」とは、輪郭の一部が曲線により形成された形状および輪郭が曲線だけにより形成された形状などの総称である。「それ以外の形状」とは、例えば、矩形、多角形および湾曲形状などのうちの任意の形状のうちの2種類以上が合成された形状などである。ここでは、開裂溝34Mの断面形状は、例えば、深さ方向に延在する矩形(長方形)である。
第3に、開裂溝34Mの形成範囲は、特に限定されない。このため、開裂溝34Mの形成範囲は、接続部34Cの周辺領域のうちの一部だけでもよいし、その接続部34Cの周辺領域のうちの全部でもよい。接続部34Cの周辺領域のうちの一部だけに開裂溝34Mが設けられている場合には、後述するように、その周辺領域に複数の開裂溝34Mが設けられていてもよい(図15参照)。
ここでは、開裂溝34Mは、例えば、接続部34Cの周辺領域のうちの全部に設けられているため、その接続部34Cを囲んでいる。すなわち、開裂溝34Mは、例えば、接続部34Cを囲むように設けられた環状である。サブディスク34が開裂溝34Mに沿って開裂することにより中央部34Yが除去されるため、そのサブディスク34が容易かつ安定に開口しやすくなるからである。なお、「環状」とは、いわゆる輪状を意味しているため、必ずしも開裂溝34Mにより描かれる形状が円形を意味しているわけではない。このため、環状である開裂溝34Mにより描かれる形状は、任意に設定可能である。
第4に、開裂溝34Mにより描かれる形状は、特に限定されない。このため、開裂溝34Mにより描かれる形状は、円形でもよいし、多角形でもよいし、それ以外の形状でもよい。
円形には、例えば、楕円形が含まれると共に、曲線だけにより輪郭が形成されていることに起因して角部を有していない全ての形状が含まれる。多角形は、例えば、三角形、四角形、五角形および六角形などである。なお、「それ以外の形状」とは、例えば、円形および多角形などのうちの任意の2種類以上が合成された形状などである。ここでは、開裂溝34Mにより描かれる形状は、例えば、円形であるため、その開裂溝34Mは、例えば、いわゆるリング状である。
第5に、開裂溝34Mの形成範囲は、特に限定されない。ここでは、開裂溝34Mは、例えば、ストリッパーディスク33に設けられている開口部33Cに対応する領域の内部に設けられている。後述するように、安全弁機構30の作動時において、電池缶11の内圧の上昇に応じてサブディスク34が開口した際に、そのサブディスク34のうちの一部(中央部34Y)が突起部31Tに接続された状態のままで持ち上げられやすくなるからである。これにより、セーフティーカバー31とサブディスク34とが物理的に分離されやすくなるため、正極端子として機能する電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されやすくなる。
図5では、ストリッパーディスク33に設けられている開口部33Cに対応する領域を分かりやすくするために、その開口部33Cの輪郭を破線で示している。すなわち、開口部33Cに対応する領域は、破線により囲まれた領域である。
[サブディスクの寸法]
サブディスク34の寸法に関する詳細は、以下の通りである。
第1に、開裂溝34Mが設けられていない箇所におけるサブディスク34の第1厚さである厚さT1は、特に限定されないが、中でも、0.05mm〜0.30mmであることが好ましい。溶接法などを用いてセーフティーカバー31のうちの突起部31Tをサブディスク34に接続させるためには、そのサブディスク34の厚さとして0.05mm以上の厚さが必要だからである。また、後述する安全弁機構30の作動圧が適正化されるため、その安全弁機構30の動作安定性がより向上するからである。
第2に、開裂溝34Mが設けられている箇所におけるサブディスク34の第2厚さである厚さT2は、特に限定されないが、中でも、0.02mm〜0.07mmであることが好ましい。安全弁機構30の作動圧が適正化されるため、その安全弁機構30の動作安定性がより向上するからである。なお、厚さT1,T2および深さSに関しては、T2=T1−Sという関係が成立している。
第3に、厚さT1に対する厚さT2の比T2/T1は、特に限定されないが、中でも、0.2〜0.7であることが好ましい。安全弁機構30の作動圧が適正化されるため、その安全弁機構30の動作安定性がより向上するからである。
第4に、開裂溝34Mがリング状である場合、その開裂溝34Mの内径Dは、特に限定されないが、中でも、0.6mm〜1.8mmであることがこのましい。安全弁機構30の作動圧が適正化されるため、その安全弁機構30の動作安定性がより向上するからである。この内径Dは、言い換えれば、中央部34Yの外径である。
第5に、開裂溝34Mの幅Wは、特に限定されないが、例えば、0.10mm〜0.30mmである。電池缶11の内圧の上昇に応じて、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂しやすくなるからである。
[安全弁機構の作動条件]
上記したサブディスク34を用いた安全弁機構30の作動条件は、適正化されていることが好ましい。
ここで、安全弁機構30の作動条件として上記した作動圧(電流遮断作動圧:kgf/cm2 )に着目する。この「電流遮断作動圧」とは、セーフティーカバー31とサブディスク34とが物理的に分離されることにより、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断される際の圧力(電池缶11の内圧)である。この電流遮断作動圧は、8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 であることが好ましい。二次電池の高温保存時および過充電時などにおいて安全弁機構30が適正に作動しやすくなるため、その安全弁機構30の動作安定性が担保されるからである。
ここで、サブディスク34の寸法(厚さT1,T2および内径D)と安全弁機構30の作動圧との関係を調べると、下記の式(1)で表される重相関式が導き出される。よって、式(1)に示した重相関式により算出される安全弁機構30の作動圧P、すなわち電流遮断作動圧は、上記したように、8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 であることが好ましい。言い換えれば、電流遮断作動圧が適正な範囲内(=8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 )となるように、厚さT1,T2および内径Dのそれぞれが設定されることが好ましい。
P=40×T1+6.7×D+400×T2−12 ・・・(1)
(Pは、安全弁機構30の作動圧(kgf/cm2 )である。T1は、開裂溝34Mが設けられていない箇所におけるサブディスク34の厚さ(mm)である。Dは、リング状である開裂溝34Mの内径(mm)である。T2は、開裂溝34Mが設けられている箇所におけるサブディスク34の厚さ(mm)である。)
<1−4.巻回電極体の構成>
続いて、巻回電極体20の構成に関して説明する。
図6は、図1に示した巻回電極体20の断面構成のうちの一部を拡大している。この巻回電極体20は、上記したように、正極21、負極22、セパレータ23および電解液を含んでいる。
[正極]
正極21は、例えば、図6に示したように、正極集電体21Aと、その正極集電体21Aの両面に設けられた2つの正極活物質層21Bとを含んでいる。ただし、正極集電体21Aの片面だけに正極活物質層21Bが設けられていてもよい。
(正極集電体)
正極集電体21Aは、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料である。この正極集電体21Aは、単層でもよいし、多層でもよい。
(正極活物質層)
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能である正極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましい。リチウム含有化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、リチウム含有複合酸化物およびリチウム含有リン酸化合物などである。高いエネルギー密度が得られるからである。
リチウム含有複合酸化物は、リチウムと1種類または2種類以上の他元素(リチウム以外の元素)とを構成元素として含む酸化物の総称であり、例えば、層状岩塩型およびスピネル型などのうちのいずれかの結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、リチウムと1種類または2種類以上の他元素とを構成元素として含むリン酸化合物の総称であり、例えば、オリビン型などの結晶構造を有している。
他元素の種類は、任意の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、特に限定されない。中でも、他元素は、長周期型周期表における2族〜15族に属する元素のうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より具体的には、他元素は、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)などである。高い電圧が得られるからである。
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(1)〜式(3)のそれぞれで表される化合物である。
Lia Mn(1-b-c) Nib M11c O(2-d) Fe ・・・(1)
(M11は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜eは、0.8≦a≦1.2、0<b<0.5、0≦c≦0.5、(b+c)<1、−0.1≦d≦0.2および0≦e≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
Lia Ni(1-b) M12b O(2-c) Fd ・・・(2)
(M12は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0.005≦b≦0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
Lia Co(1-b) M13b O(2-c) Fd ・・・(3)
(M13は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.8≦a≦1.2、0≦b<0.5、−0.1≦c≦0.2および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物の具体例は、LiNiO2 、LiCoO2 、LiCo0.98Al0.01Mg0.01O2 、LiNi0.5 Co0.2 Mn0.3 O2 、LiNi0.8 Co0.15Al0.05O2 、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2 、Li1.2 Mn0.52Co0.175 Ni0.1 O2 およびLi1.15(Mn0.65Ni0.22Co0.13)O2 などである。
なお、層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物がニッケル、コバルト、マンガンおよびアルミニウムを構成元素として含む場合には、そのニッケルの原子比率は、50原子%以上であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物は、例えば、下記の式(4)で表される化合物である。
Lia Mn(2-b) M14b Oc Fd ・・・(4)
(M14は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)のうちの少なくとも1種である。a〜dは、0.9≦a≦1.1、0≦b≦0.6、3.7≦c≦4.1および0≦d≦0.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物の具体例は、LiMn2 O4 などである。
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物は、例えば、下記の式(5)で表される化合物である。
Lia M15PO4 ・・・(5)
(M15は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)のうちの少なくとも1種である。aは、0.9≦a≦1.1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、aは完全放電状態の値である。)
オリビン型の結晶構造を有するリチウム含有リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 、LiMnPO4 、LiFe0.5 Mn0.5 PO4 およびLiFe0.3 Mn0.7 PO4 などである。
なお、リチウム含有複合酸化物は、下記の式(6)で表される化合物でもよい。
(Li2 MnO3 )x (LiMnO2 )1-x ・・・(6)
(xは、0≦x≦1を満たす。ただし、リチウムの組成は充放電状態に応じて異なり、xは完全放電状態の値である。)
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物および導電性高分子などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムおよび二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンおよび硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンおよびポリチオフェンなどである。ただし、正極材料は、上記以外の他の材料でもよい。
正極結着剤は、例えば、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリイミドなどである。
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックなどである。ただし、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料および導電性高分子などでもよい。
[負極]
負極22は、例えば、図6に示したように、負極集電体22Aと、その負極集電体22Aの両面に設けられた2つの負極活物質層22Bとを含んでいる。ただし、負極集電体22Aの片面だけに負極活物質層22Bが設けられていてもよい。
(負極集電体)
負極集電体22Aは、例えば、導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。導電性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケルおよびステンレスなどの金属材料である。この負極集電体22Aは、単層でもよいし、多層でもよい。
負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果を利用して、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。電解処理では、電解槽中において電解法により負極集電体22Aの表面に微粒子が形成されるため、その負極集電体22Aの表面に凹凸が設けられる。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
(負極活物質層)
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能である負極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
充電途中において意図せずにリチウム金属が負極22の表面に析出することを抑制するために、負極材料の充電可能な容量は、正極21の放電容量よりも大きいことが好ましい。すなわち、リチウムを吸蔵および放出することが可能である負極材料の電気化学当量は、正極21の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。
負極材料は、例えば、炭素材料である。リチウムの吸蔵時およびリチウムの放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が安定して得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層22Bの導電性が向上するからである。
炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。ただし、難黒鉛化性炭素における(002)面の面間隔は、0.37nm以上であることが好ましいと共に、黒鉛における(002)面の面間隔は、0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類は、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどを含む。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂およびフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)された物質である。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状および鱗片状のうちのいずれでもよい。
また、負極材料は、例えば、金属系材料である。この「金属系材料」とは、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料の総称である。高いエネルギー密度が得られるからである。
金属系材料は、単体でもよいし、合金でもよいし、化合物でもよいし、それらのうちの2種類以上でもよいし、それらのうちの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に含む材料でもよい。ただし、合金には、2種類以上の金属元素からなる材料に加えて、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料も含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この金属系材料の組織は、例えば、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物およびそれらの2種類以上の共存物などである。
上記した金属元素および半金属元素は、例えば、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、金属元素および半金属元素は、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などである。
中でも、ケイ素およびスズが好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が優れているため、著しく高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素を構成元素として含む材料は、ケイ素の単体でもよいし、ケイ素の合金でもよいし、ケイ素の化合物でもよいし、それらのうちの2種類以上でもよいし、それらのうちの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に含む材料でもよい。
また、スズを構成元素として含む材料は、スズの単体でもよいし、スズの合金でもよいし、スズの化合物でもよいし、それらのうちの2種類以上でもよいし、それらのうちの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に含む材料でもよい。
ここで説明する「単体」とは、あくまで一般的な意味合いでの単体であるため、その単体は、微量の不純物を含んでいてもよい。すなわち、単体の純度は、必ずしも100%をに限られない。
ケイ素の合金は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
ケイ素の合金の具体例およびケイ素の化合物の具体例は、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、およびLiSiOなどである。なお、SiOv におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
スズの合金は、例えば、スズ以外の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
スズの合金の具体例およびスズの化合物の具体例は、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOおよびMg2 Snなどである。
特に、スズを構成元素として含む材料は、例えば、第1構成元素であるスズと共に第2構成元素および第3構成元素を含む材料(スズ含有材料)であることが好ましい。第2構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、セシウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル、タングステン、ビスマスおよびケイ素などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。第3構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
中でも、スズ含有材料は、スズとコバルトと炭素とを構成元素として含む材料(スズコバルト炭素含有材料)であることが好ましい。このスズコバルト炭素含有材料では、例えば、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
スズコバルト炭素含有材料は、スズとコバルトと炭素とを構成元素として含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であるため、その反応相の存在に起因して優れた特性が得られる。この反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅(回折角2θ)は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合において、1°以上であることが好ましい。リチウムが円滑に吸蔵および放出されると共に、電解液との反応性が低減するからである。なお、スズコバルト炭素含有材料は、低結晶性または非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部が含まれている相を有する場合もある。
X線回折により得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応する回折ピークであるか否かを容易に判断するためには、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すればよい。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応する回折ピークである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質である反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の範囲に検出される。この反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化または非晶質化していると考えられる。
スズコバルト炭素含有材料では、構成元素である炭素のうちの少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。スズの凝集およびスズの結晶化などが抑制されるからである。元素の結合状態に関しては、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて確認可能である。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線またはMg−Kα線などが用いられる。炭素のうちの一部または全部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に検出される。ただし、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正されていることとする。この場合には、通常、物質表面に表面汚染炭素が存在しているため、その表面汚染炭素のC1sのピークが検出される位置を284.8eVとして、そのピークをエネルギー基準とする。XPS測定において、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ状態で得られる。このため、例えば、市販のソフトウエアを用いてピークを解析することにより、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このスズコバルト炭素含有材料は、構成元素がスズ、コバルトおよび炭素だけである材料(SnCoC)に限られない。このスズコバルト炭素含有材料は、例えば、スズ、コバルトおよび炭素に加えて、さらにケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムおよびビスマスなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
スズコバルト炭素含有材料の他、スズとコバルトと鉄と炭素とを構成元素として含む材料(スズコバルト鉄炭素含有材料)も好ましい。このスズコバルト鉄炭素含有材料の組成は、任意である。一例を挙げると、鉄の含有量を少なめに設定する場合は、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、鉄の含有量が0.3質量%〜5.9質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%〜70質量%である。また、鉄の含有量を多めに設定する場合は、炭素の含有量が11.9質量%〜29.7質量%、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%〜48.5質量%、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%〜79.5質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。なお、スズコバルト鉄炭素含有材料の物性(半値幅など)は、例えば、上記したスズコバルト炭素含有材料の物性と同様である。
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物および高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムおよび酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンおよびポリピロールなどである。
中でも、負極材料は、以下で説明する理由により、炭素材料および金属系材料の双方を含むことが好ましい。
金属系材料、特に、ケイ素およびスズのうちの一方または双方を構成元素として含む材料は、理論容量が高いという利点を有する反面、充放電時において激しく膨張収縮しやすいという懸念点を有する。一方、炭素材料は、理論容量が低いという懸念点を有する反面、充放電時において膨張収縮しにくいという利点を有する。よって、炭素材料および金属系材料の双方を用いることにより、高い理論容量(言い換えれば電池容量)を得つつ、充放電時において負極材料の膨張収縮が抑制される。
なお、負極活物質層22Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上の方法を用いて形成されている。塗布法は、例えば、粒子(粉末)状の負極活物質を負極結着剤などと混合したのち、その混合物を有機溶剤などに溶解または分散させてから負極集電体22Aに塗布する方法である。気相法は、例えば、物理堆積法および化学堆積法などである。より具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長、化学気相成長(CVD)法およびプラズマ化学気相成長法などである。液相法は、例えば、電解鍍金法および無電解鍍金法などである。溶射法は、溶融状態または半溶融状態の負極活物質を負極集電体22Aに噴き付ける方法である。焼成法は、例えば、塗布法を用いて、有機溶剤などに溶解または分散された混合物を負極集電体22Aに塗布したのち、負極結着剤などの融点よりも高い温度で混合物を熱処理する方法である。この焼成法は、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法およびホットプレス焼成法などである。
この二次電池では、上記したように、充電途中において負極22の表面にリチウム金属が意図せずに析出することを防止するために、リチウムを吸蔵および放出することが可能である負極材料の電気化学当量は、正極の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。また、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、その完全充電時の開回路電圧が4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、そのことを考慮した上で正極活物質の量および負極活物質の量は調整されていることが好ましい。これにより、高いエネルギー密度が得られる。
[セパレータ]
セパレータ23は、例えば、図6に示したように、正極21と負極22との間に介在している。これにより、セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離すると共に、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる。
このセパレータ23は、例えば、合成樹脂およびセラミックなどの多孔質膜のうちのいずれか1種類または2種類以上であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
特に、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)と、その基材層の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21に対するセパレータ23の密着性が向上すると共に、負極22に対するセパレータ23の密着性が向上するため、巻回電極体20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても、抵抗が上昇しにくくなると共に、電池膨れが抑制される。
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。この高分子化合物層を形成する場合には、例えば、有機溶剤などに高分子化合物が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。または、例えば、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。なお、高分子化合物層は、例えば、無機粒子などの絶縁性粒子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。無機粒子の種類は、例えば、酸化アルミニウムおよび窒化アルミニウムなどである。
[電解液]
セパレータ23には、上記したように、電解液が含浸されている。ただし、電解液は、例えば、上記したように、正極21に含浸されていてもよいし、負極22に含浸されていてもよい。
電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。ただし、電解液は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
(溶媒)
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。非水溶媒を含む電解液は、いわゆる非水電解液である。
非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルおよびニトリル(モノニトリル)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよび炭酸ブチレンなどである。鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどである。鎖状カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ニトリルは、例えば、アセトニトリル、メトキシアセトニトリルおよび3−メトキシプロピオニトリルなどである。
この他、非水溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルおよびジメチルスルホキシドなどでもよい。同様の利点が得られるからである。
中でも、非水溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含むことが好ましい。高い電池容量、優れたサイクル特性および優れた保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
また、非水溶媒は、例えば、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルホン酸エステル、酸無水物、ジシアノ化合物(ジニトリル化合物)、ジイソシアネート化合物、リン酸エステルおよび炭素間三重結合を有する鎖状化合物などである。電解液の化学的安定性が向上するからである。
「不飽和環状炭酸エステル」とは、1個または2個以上の不飽和結合(炭素間二重結合または炭素間三重結合)を有する環状炭酸エステルである。この不飽和環状炭酸エステルは、例えば、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。非水溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。
「ハロゲン化炭酸エステル」とは、1個または2個以上のハロゲン元素を構成元素として含む環状または鎖状の炭酸エステルである。ハロゲン化炭酸エステルが2個以上のハロゲンを構成元素として含む場合、その2個以上のハロゲンの種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。環状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。鎖状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)および炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。非水溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。
スルホン酸エステルは、例えば、モノスルホン酸エステルおよびジスルホン酸エステルなどである。非水溶媒中におけるスルホン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。
モノスルホン酸エステルは、環状モノスルホン酸エステルでもよいし、鎖状モノスルホン酸エステルでもよい。環状モノスルホン酸エステルは、例えば、1,3−プロパンスルトンおよび1,3−プロペンスルトンなどのスルトンである。鎖状モノスルホン酸エステルは、例えば、環状モノスルホン酸エステルが途中で切断された化合物などである。ジスルホン酸エステルは、環状ジスルホン酸エステルでもよいし、鎖状ジスルホン酸エステルでもよい。
酸無水物は、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物およびカルボン酸スルホン酸無水物などである。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸および無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸および無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸および無水スルホ酪酸などである。非水溶媒中における酸無水物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
ジニトリル化合物は、例えば、NC−R1−CN(R1は、アルキレン基およびアリーレン基のうちのいずれかである。)で表される化合物である。このジニトリル化合物は、例えば、スクシノニトリル(NC−C2 H4 −CN)、グルタロニトリル(NC−C3 H6 −CN)、アジポニトリル(NC−C4 H8 −CN)およびフタロニトリル(NC−C6 H4 −CN)などである。非水溶媒中におけるジニトリル化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
ジイソシアネート化合物は、例えば、OCN−R2−NCO(R2は、アルキレン基およびアリーレン基のうちのいずれかである。)で表される化合物である。このジイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(OCN−C6 H12−NCO)などである。非水溶媒中におけるジイソシアネート化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
リン酸エステルは、例えば、リン酸トリメチルおよびリン酸トリエチルなどである。非水溶媒中におけるリン酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
炭素間三重結合を有する鎖状化合物は、1個または2個以上の炭素間三重結合(−C≡C−)を有する鎖状の化合物である。この炭素間三重結合を有する鎖状化合物は、例えば、炭酸プロパルギルメチル(CH≡C−CH2 −O−C(=O)−O−CH3 )およびメチルスルホン酸プロパルギル(CH≡C−CH2 −O−S(=O)2 −CH3 )などである。非水溶媒中における炭素間三重結合を有する鎖状化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。
(電解質塩)
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。
リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)および臭化リチウム(LiBr)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
中でも、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムおよび六フッ化ヒ酸リチウムのうちのいずれか1種類または2種類以上が好ましく、六フッ化リン酸リチウムがより好ましい。内部抵抗が低下するからである。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
<1−5.動作>
続いて、二次電池の動作に関して説明する。
図7〜図10のそれぞれは、二次電池の動作を説明するために、その動作時における二次電池の構成を表している。図7および図10のそれぞれは、図2に対応する断面構成を示している。図8は、図4に対応する断面構成を示している。図9は、図5に対応する平面構成を示している。
以下では、二次電池の充放電動作に関して説明したのち、その二次電池(安全弁機構30)の安全動作に関して説明する。
[充放電動作]
充電時には、例えば、正極21からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、例えば、負極22からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
[安全動作]
二次電池の使用時および保存時などにおいて、電池缶11の内圧が上昇すると、その二次電池の破裂および破損などを防止するために、安全弁機構30が作動する。
具体的には、正常時、すなわち電池缶11の内圧が低い場合には、図2〜図5に示したように、セーフティーカバー31(開口弁部31R)が未だ開口していないため、複数の開口部33Kを利用したガスの放出経路が開口弁部31Rにより閉塞されている。
これに対して、電池缶11の内部において電解液の分解反応などの副反応に起因してガスが発生すると、そのガスが電池缶11の内部に蓄積されるため、その電池缶11の内圧が上昇する。
この場合には、電池缶11の内圧が一定以上になると、例えば、図7〜図9に示したように、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂することにより、中央部34Yが外周部34Xから分離される。すなわち、サブディスク34に開口部34Kが形成されるため、そのサブディスク34が開口する。ただし、サブディスク34が開口すれば、中央部34Yが外周部34Xから分離されずに、その中央部34Yが外周部34Xと部分的に接続されていてもよい。これにより、電池缶11の内圧を利用して、中央部34Yに突起部31Tが接続された状態のままでセーフティーカバー31が部分的に持ち上げられるため、そのセーフティーカバー31とサブディスク34(外周部34X)とが物理的に分離される。よって、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されるため、その巻回電極体20から電池蓋14に流れる電流の経路が遮断される。
こののち、さらに電池缶11の内圧が上昇すると、図10に示したように、セーフティーカバー31(開口弁部31R)が開裂する。これにより、セーフティーカバー31に開口部31Kが形成されるため、そのセーフティーカバー31が開口する。よって、複数の開口部33Kを利用したガスの放出経路が開放されるため、その複数の開口部33Kを経由してガスが放出される。
<1−6.製造方法>
続いて、二次電池の製造方法に関して説明する。この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
正極21を作製する場合には、最初に、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合することにより、正極合剤を得る。続いて、有機溶剤などに正極合剤を分散させることにより、ペースト状の正極合剤スラリーを得る。最後に、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成する。こののち、必要に応じて、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層21Bを加熱してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
負極22を作製する場合には、上記した正極21の作製手順と同様の手順により、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成する。具体的には、負極活物質と、負正極結着剤および負極導電剤などとを混合することにより、負極合剤を得たのち、有機溶剤などに負極合剤を分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーを得る。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層22Bを形成する。こののち、必要に応じて、ロールプレス機などを用いて負極活物質層22Bを圧縮成型する。
二次電池を組み立てる場合には、溶接法などを用いて正極集電体21Aに正極リード25を接続させると共に、溶接法などを用いて負極集電体22Aに負極リード26を接続させる。続いて、セパレータ23を介して正極21および負極22を積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回電極体20を形成する。続いて、巻回電極体20の巻回空間20Cにセンターピン24を挿入する。
続いて、一対の絶縁板12,13で巻回電極体20を挟みながら、その一対の絶縁板12,13と共に巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて正極リード25の一端部を安全弁機構30(サブディスク34)に接続させると共に、溶接法などを用いて負極リード26の一端部を電池缶11に接続させる。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入することにより、その電解液を巻回電極体20に含浸させる。最後に、ガスケット16を介して電池缶11の開放端部11Nに電池蓋14、熱感抵抗素子15および安全弁機構30をかしめる。これにより、安全弁機構30を備えた二次電池が完成する。
<1−7.作用および効果>
この二次電池(リチウムイオン二次電池)によれば、安全弁機構30は、セーフティーカバー31と、セーフティーカバー31および巻回電極体20のそれぞれに電気的に接続されたサブディスク34とを含んでいる。サブディスク34のうち、セーフティーカバー31に物理的に接続された接続部34Cの周辺領域には、開裂溝34Mが設けられている。よって、以下で説明する理由により、安全性を向上させることができる。
サブディスク34に開裂溝34Mが設けられていない場合には、電池缶11の内圧が上昇した際に電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されるかどうかは、サブディスク34に対するセーフティーカバー31の接続強度に依存する。この「接続強度」とは、例えば、サブディスク34に対してセーフティーカバー31が溶接されている場合には、溶接強度である。
具体的には、サブディスク34に対するセーフティーカバー31の接続強度が低い場合には、電池缶11の内圧が上昇すると、セーフティーカバー31がサブディスク34から物理的に分離されやすくなるため、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されやすくなる。一方、サブディスク34に対するセーフティーカバー31の接続強度が高い場合には、電池缶11の内圧が上昇しても、セーフティーカバー31がサブディスク34から物理的に分離されにくくなるため、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されにくくなる。
この場合には、サブディスク34に対するセーフティーカバー31の接続強度のばらつきに起因して、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するために必要な圧力(電池缶11の内圧)がばらつくため、安全弁機構30が再現性よく作動しにくくなる。よって、安全弁機構30の動作安定性が低下するため、安全性を向上させることが困難である。
これに対して、サブディスク34に開裂溝34Mが設けられている場合には、電池缶11の内圧が上昇した際に電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されるかどうかは、サブディスク34に対するセーフティーカバー31の接続強度に依存せずに、その開裂溝34Mを利用したサブディスク34の開裂しやすさに依存する。
この場合には、電池缶11の内圧が上昇すると、サブディスク34に対するセーフティーカバー31の接続強度に関係なく、そのサブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂しやすくなる。これにより、電池缶11の内圧が一定の値になると、サブディスク34が容易かつ安定に開口しやすくなるため、安全弁機構30が再現性よく作動しやすくなる。よって、安全弁機構30の動作安定性が向上するため、安全性を向上させることができる。
特に、開裂溝34Mが接続部34Cを囲むように設けられた環状であり、より具体的には開裂溝34Mがリング状であれば、サブディスク34が容易かつ安定に開裂しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、開裂溝34Mがサブディスク34の下面34Aに設けられていれば、電池缶11の内圧が上昇した際にサブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂しやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、セーフティーカバー31が接続部34Cにおいてサブディスク34に物理的に接続される突起部31Tを有している場合において、安全弁機構が突起部31Tを通過させるための開口部33Kを有するストリッパーディスク33を含んでおり、サブディスク34のうちの開口部33Kに対応する領域の内部に開裂溝34Mが設けられていれば、電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、サブディスク34の厚さT1が0.05mm〜0.30mmであり、サブディスク34の厚さT2が0.02mm〜0.07mmであり、比T2/T1が0.2〜0.7であり、またはリング状である開裂溝34Mの内径Dが0.6mm〜1.8mmであれば、安全弁機構30の作動圧が適正化される。よって、安全弁機構30の動作安定性がより向上するため、より高い効果を得ることができる。
また、式(1)に示した重相関式により算出される安全弁機構30の作動圧(電流遮断作動圧)Pが8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 であれば、二次電池の高温保存時および過充電時などにおいて安全弁機構30が適正に作動しやすくなる。よって、安全弁機構30の動作安定性が担保されるため、より高い効果を得ることができる。
<2.二次電池(リチウム金属二次電池)>
次に、本技術の一実施形態の他の二次電池に関して説明する。以下の説明では、随時、既に説明したリチウムイオン二次電池の構成要素を引用する。
ここで説明する二次電池は、リチウム金属の析出現象およびリチウム金属の溶解現象を利用して電池容量(負極の容量)が得られる円筒型のリチウム金属二次電池である。
この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により形成されていることを除いて、上記したリチウムイオン二次電池と同様の構成を有していると共に、そのリチウムイオン二次電池と同様に動作する。また、二次電池は、リチウム金属を用いて負極活物質層22Bを形成することを除いて、リチウムイオン二次電池と同様の製造手順により製造される。
この二次電池では、負極活物質としてリチウム金属が用いられているため、高いエネルギー密度が得られる。負極活物質層22Bは、例えば、二次電池の組み立て時から既に存在していてもよい。または、負極活物質層22Bは、例えば、二次電池の組み立て時には未だ存在しておらず、充電時において析出したリチウム金属により形成されてもよい。この場合には、例えば、リチウム金属により形成された負極活物質層22Bを集電体として利用することにより、負極集電体22Aを省略してもよい。
この二次電池は、以下のように動作する。充電時には、例えば、正極21からリチウムイオンが放出されると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して負極22(負極集電体22A)の表面にリチウム金属として析出する。一方、放電時には、例えば、負極22(負極活物質層22B)からリチウム金属がリチウムイオンとして電解液中に溶出すると共に、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
この二次電池(リチウム金属二次電池)によれば、上記したリチウムイオン二次電池と同様に、セーフティーカバー31と開裂溝34Mが設けられたサブディスク34とを含む安全弁機構30を備えている。よって、リチウムイオン二次電池と同様の理由により、安全弁機構30の動作安定性が向上するため、安全性を向上させることができる。
リチウム金属二次電池に関する他の作用および効果は、リチウムイオン二次電池に関する他の作用および効果と同様である。
<3.変形例>
上記した二次電池の構成は、適宜、変更可能である。
[変形例1]
具体的には、開裂溝34Mの形成位置は、上記したように、サブディスク34の下面34Aに限定されない。このため、例えば、図4に対応する図11に示したように、サブディスク34の上面34Bに開裂溝34Mが設けられていてもよい。また、例えば、図4に対応する図12に示したように、サブディスク34の下面34Aおよび上面34Bの双方に開裂溝34Mが設けられていてもよい。これらの場合においても、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂するため、同様の効果を得ることができる。
もちろん、下面34Aおよび上面34Bの双方に開裂溝34Mが設けられている場合には、下面34Aに設けられている開裂溝34Mの深さSは任意に設定可能であると共に、上面34Bに設けられている開裂溝34Mの深さSも任意に設定可能である。すなわち、下面34Aに設けられている開裂溝34Mの深さSと上面34Bに設けられている開裂溝34Mの深さSとは、互いに同じでもよいし、互いに異なってもよい。
[変形例2]
開裂溝34Mの断面形状は、上記したように、矩形(長方形)に限定されない。このため、例えば、図4に対応する図13に示したように、開裂溝34Mの断面形状が三角形でもよい。また、例えば、図4に対応する図14に示したように、開裂溝34Mの断面形状が湾曲部を含む形状でもよい。この湾曲部を含む形状は、例えば、矩形(長方形)と半円とが合成された形状などである。これらの場合においても、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂するため、同様の効果を得ることができる。
[変形例3]
開裂溝34Mの形成範囲は、上記したように、接続部34Cの周辺領域のうちの全部に設けられていなくてもよい。言い換えれば、開裂溝34Mは、環状でなくてもよい。このため、開裂溝34Mは、接続部34Cの周辺領域のうちの一部に設けられていてもよい。具体的には、例えば、図5に対応する図15に示したように、開裂溝34Mは、1箇所または2箇所以上において分断されていてもよい。ここでは、リング状である開裂溝34Mは、例えば、2箇所において分断されている。このため、サブディスク34の下面34Aに、例えば、円弧状の2つの開裂溝34Mが設けられている。この場合においても、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂するため、同様の効果を得ることができる。
ただし、サブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂しやすくするためには、上記したように、接続部34Cの周辺領域のうちの全部に設けられていることが好ましい。すなわち、開裂溝34Mが接続部34Cを囲んでいるため、その開裂溝34Mは環状であることが好ましい。
<4.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例に関して説明する。
二次電池の用途は、駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして二次電池を利用可能である機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として用いられる二次電池は、主電源でもよいし、補助電源でもよい。主電源は、他の電源の有無に関係なく、優先的に用いられる電源である。補助電源は、例えば、主電源の代わりに用いられる電源でもよいし、必要に応じて主電源から切り替えられる電源でもよい。二次電池を補助電源として用いる場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
二次電池の用途は、例えば、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに搭載される電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、二次電池の用途は、上記以外の用途でもよい。
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器などに適用されることが有効である。これらの用途では優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることにより、有効に性能向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源である。この電池パックは、後述するように、単電池を用いてもよいし、組電池を用いてもよい。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いたシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されるため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能である。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えば、ドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
ここで、二次電池のいくつかの適用例に関して具体的に説明する。なお、以下で説明する適用例の構成は、あくまで一例であるため、その適用例の構成は、適宜変更可能である。
<4−1.電池パック(単電池)>
図16は、単電池を用いた電池パックの斜視構成を表している。図17は、図16に示した電池パックのブロック構成を表している。なお、図16では、電池パックが分解された状態を示している。
ここで説明する電池パックは、1個の二次電池を用いた簡易型の電池パック(いわゆるソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器などに搭載される。この電池パックは、例えば、図16に示したように、ラミネートフィルム型の二次電池である電源111と、その電源111に接続される回路基板116とを備えている。この電源111には、正極リード112および負極リード113が取り付けられている。
電源111の両側面には、一対の粘着テープ118,119が貼り付けられている。回路基板116には、保護回路(PCM:Protection・Circuit・Module )が形成されている。この回路基板116は、タブ114を介して正極リード112に接続されていると共に、タブ115を介して負極リード113に接続されている。また、回路基板116は、外部接続用のコネクタ付きリード線117に接続されている。なお、回路基板116が電源111に接続された状態において、その回路基板116は、ラベル120および絶縁シート121により保護されている。このラベル120が回路基板116に貼り付けられることにより、回路基板116および絶縁シート121などは固定されている。
また、電池パックは、例えば、図17に示したように、電源111と、回路基板116とを備えている。回路基板116は、例えば、制御部121と、スイッチ部122と、PTC素子123と、温度検出部124とを含んでいる。電源111は、正極端子125および負極端子127を介して外部電源と接続可能であるため、その電源111は、正極端子125および負極端子127を介して充放電される。温度検出部124は、温度検出端子(いわゆるT端子)126を用いて温度を検出する。
制御部121は、電池パック全体の動作(電源111の使用状態を含む)を制御する。この制御部121は、例えば、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでいる。
この制御部121は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断することにより、電源111の電流経路に充電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、充電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断することにより、充電電流を遮断する。
一方、制御部121は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断することにより、電源111の電流経路に放電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、放電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断することにより、放電電流を遮断する。
なお、過充電検出電圧は、特に限定されないが、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、特に限定されないが、例えば、2.4V±0.1Vである。
スイッチ部122は、制御部121の指示に応じて、電源111の使用状態、すなわち電源111と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部122は、例えば、充電制御スイッチおよび放電制御スイッチなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。なお、充放電電流は、例えば、スイッチ部122のON抵抗に基づいて検出される。
温度検出部124は、電源111の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部121に出力する。この温度検出部124は、例えば、サーミスタなどの温度検出素子を含んでいる。なお、温度検出部124により測定される温度の測定結果は、異常発熱時において制御部121が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部121が補正処理を行う場合などに用いられる。
なお、回路基板116は、PTC素子123を備えていなくてもよい。この場合には、別途、回路基板116にPTC素子が付設されていてもよい。
<4−2.電池パック(組電池)>
図18は、組電池を用いた電池パックのブロック構成を表している。
この電池パックは、例えば、筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。この筐体60は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御する。この制御部61は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源62は、2個以上の二次電池を含む組電池であり、その2個以上の二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6個の二次電池を含んでいる。
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて、電源62の使用状態、すなわち電源62と外部機器との接続の有無を切り換える。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオードなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチのそれぞれは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定すると共に、その電流の測定結果を制御部61に出力する。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度の測定結果は、例えば、異常発熱時において制御部61が充放電制御を行う場合および残容量の算出時において制御部61が補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定すると共に、アナログ−デジタル変換された電圧の測定結果を制御部61に供給する。
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66のそれぞれから入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御する。
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に充電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れると、充電電流を遮断する。
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断することにより、電源62の電流経路に放電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電だけが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れると、放電電流を遮断する。
なお、過充電検出電圧は、特に限定されないが、例えば、4.2V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、特に限定されないが、例えば、2.4V±0.1Vである。
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどを含んでいる。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値および製造工程段階において測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)などが記憶されている。メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておくことにより、制御部61は残容量などの情報を把握できる。
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共に、その温度の測定結果を制御部61に出力する。この温度検出素子69は、例えば、サーミスタなどを含んでいる。
正極端子71および負極端子72のそれぞれは、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えば、ノート型のパーソナルコンピュータなど)および電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば、充電器など)などに接続される端子である。電源62は、正極端子71および負極端子72を介して充放電される。
<4−3.電動車両>
図19は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。
この電動車両は、例えば、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および一対の前輪86と、後輪用駆動軸87および一対の後輪88とを備えている。
この電動車両は、例えば、エンジン75およびモータ77のうちのいずれか一方を駆動源として用いて走行可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合には、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して、エンジン75の駆動力(回転力)が一対の前輪86および一対の後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力が発電機79に伝達されるため、その回転力を利用して発電機79が交流電力を発生すると共に、その交流電力がインバータ83を介して直流電力に変換されるため、その直流電力が電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合には、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換されるため、その交流電力を利用してモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して一対の前輪86および一対の後輪88に伝達される。
なお、制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達されるため、その回転力を利用してモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換されるため、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
制御部74は、電動車両全体の動作を制御する。この制御部74は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1個または2個以上の二次電池を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続されていると共に、その外部電源から電力供給を受けることにより、電力を蓄積させてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御すると共に、スロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサおよびエンジン回転数センサなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合を例に挙げたが、その電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
<4−4.電力貯蔵システム>
図20は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。
この電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅および商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続可能である。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続可能である。
なお、電気機器94は、例えば、1種類または2種類以上の家電製品を含んでおり、その家電製品は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビおよび給湯器などである。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機および風力発電機などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクおよびハイブリッド自動車などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所および風力発電所などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御する。この制御部90は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1個または2個以上の二次電池を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能である。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、外部と通信しながら、家屋89における電力の需要と供給とのバランスを制御することにより、高効率で安定したエネルギー供給を可能とする。
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部90の指示に応じて電気機器94および電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、その電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
電源91に蓄積された電力は、必要に応じて使用可能である。このため、例えば、電気使用料が安い深夜において、集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、電気使用料が高い日中において、その電源91に蓄積された電力を使用可能である。
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
<4−5.電動工具>
図21は、電動工具のブロック構成を表している。
ここで説明する電動工具は、例えば、電動ドリルである。この電動工具は、例えば、工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
工具本体98は、例えば、プラスチック材料などを含んでいる。制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御する。この制御部99は、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1個または2個以上の二次電池を含んでいる。この制御部99は、動作スイッチの操作に応じて、電源100からドリル部101に電力を供給する。
本技術の実施例に関して説明する。
(実験例1−1,1−2)
以下の手順により、図1〜図6に示した円筒型の二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
正極21を作製する場合には、最初に、正極活物質(LiCoO2 )94質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)3質量部とを混合することにより、正極合剤を得た。続いて、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に正極合剤を投入したのち、その有機溶剤を撹拌することにより、ペースト状の正極合剤スラリーを得た。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体21A(帯状のアルミニウム箔,厚さ=15μm)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させることにより、正極活物質層21Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。
負極22を作製する場合には、最初に、負極活物質(黒鉛)95質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、負極導電剤2質量部(カーボンブラック)とを混合することにより、負極合剤を得た。続いて、有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に負極合剤を分散させることにより、ペースト状の負極合剤スラリーを得た。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体22A(帯状の銅箔,厚さ=15μm)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させることにより、負極活物質層22Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。
電解液を調製する場合には、溶媒(炭酸エチレン、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジメチル)に電解質塩(LiPF6 )を加えたのち、その溶媒を撹拌した。この場合には、溶媒の混合比(重量比)を炭酸エチレン:炭酸エチルメチル:炭酸ジメチル=20:20:60とすると共に、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。
二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極集電体21Aにアルミニウム製の正極リード25を溶接すると共に、負極集電体22Aにニッケル製の負極リード26を溶接した。続いて、セパレータ23(多孔性ポリエチレンフィルム,厚さ=16μm)を介して正極21と負極22とを積層させたのち、その正極21、負極22およびセパレータ23を巻回させることにより、巻回体を得た。続いて、粘着テープを用いて巻回体の巻き終わり部分を固定することにより、巻回電極体20を得た。続いて、巻回電極体20の巻回空間20Cにセンターピン24を挿入した。
続いて、アルミニウム製のセーフティーカバー31と、ポリプロピレン製のディスクホルダ32と、アルミニウム製のストリッパーディスク33と、リング状の開裂溝34Mが下面34Aに設けられたアルミニウム製のサブディスク34とを含む安全弁機構30を準備した。この安全弁機構30では、セーフティーカバー31のうちの一部(突起部31T)がサブディスク34に超音波溶接されている。この場合には、厚さT1=0.1mm、厚さT2=0.03mm、深さS=0.07mm、幅W=0.10mm、内径D=1.2mmとした。
なお、比較のために、開裂溝34Mが設けられていないアルミニウム製のサブディスク34を含む安全弁機構30も準備した。開裂溝34Mの有無は、表1に示した通りである。
続いて、ニッケル鍍金された鉄製の電池缶11の内部に、一対の絶縁板12,13で挟みながら巻回電極体20を収納した。この場合には、正極リード25の一端部を安全弁機構30(サブディスク34)に溶接すると共に、負極リード26の一端部を電池缶11に溶接した。続いて、減圧方式を用いて電池缶11の内部に電解液を注入することにより、その電解液を巻回電極体20に含浸させた。最後に、ガスケット16を介して電池缶11の開放端部に電池蓋14、熱感抵抗素子15および安全弁機構30をかしめた。
これにより、安全弁機構30を備えた円筒型の二次電池が完成した。
二次電池の安全性を評価するために、安全弁機構30の動作特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
安全弁機構30の動作特性を調べる場合には、最初に、長手方向における電池缶11の中央近傍に外力を加えることにより、その電池缶11の内圧を意図的に上昇させた。続いて、電池缶11の内圧を上昇させながら、セーフティーカバー31(突起部31T)とサブディスク34(外周部34X)とが物理的に分離される際の圧力、すなわち電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続が切断されることに起因して電流の経路が遮断される際の圧力(電流遮断作動圧:kgf/cm2 )を特定した。この電流遮断作動圧を特定するためには、あらかじめ外力と電流遮断作動圧との相関関係を調べておくことにより、電流の経路が遮断された際の外力の値に対応する電流遮断作動圧の値を特定した。この場合には、30個の二次電池を用いて、電流遮断作動圧を特定する作業を30回繰り返した(試験数=30個)。最後に、電流遮断作動圧の特定結果(30個の電流遮断作動圧)に基づいて、その電流遮断作動圧の標準偏差3σ(kgf/cm2 )を算出した。
表1に示したように、電流遮断作動圧の標準偏差3σは、開裂溝34Mの有無に応じて大きく変動した。
具体的には、サブディスク34に開裂溝34Mが設けられていない場合(実験例1−2)には、サブディスク34に対する突起部31Tの溶接強度のばらつきに起因して、電流遮断作動圧が変動しやすくなった。よって、電流遮断作動圧の標準偏差3σは、大きな値(3σ=0.6)となった。
これに対して、サブディスク34に開裂溝34Mが設けられている場合(実験例1−1)には、サブディスク34に対する突起部31Tの溶接強度に依存せずに、そのサブディスク34が開裂溝34Mを利用して開裂したため、電流遮断作動圧が変動しにくくなった。よって、電流遮断作動圧の標準偏差3σは、小さな値(3σ=0.2)となった。すなわち、開裂溝34Mを用いた場合の標準偏差3σは、その開裂溝34Mを用いなかった場合の標準偏差3σと比較して、1/3になった。
(実験例2−1〜2−15)
表2に示したように、電流遮断作動圧を変化させることにより、その電流遮断作動圧と二次電池の電池特性(保存特性および過充電特性)との相関を調べた。この場合には、開裂溝34Mの深さSを変更することにより、電流遮断作動圧を変化させた。
保存特性を調べるためには、過酷高温保存試験を行うことにより、保存合格率(%)を求めた。この「過酷高温保存試験」とは、二次電池の製造工程において電池缶11の内部に水が浸入したことに起因して、高温環境下における二次電池の使用時において安全弁機構30が意図せずに作動することにより、その二次電池が使用不可になることを確認するための試験である。
具体的には、最初に、電池缶11の内部に意図的に水を投入することにより、二次電池を作製した。この場合には、電解液の重量の5%に相当する重量となるように、水の投入量を設定した。続いて、電圧が4.5Vに到達するまで二次電池を充電させることにより、その二次電池を満充電状態にしたのち、高温環境中(環境温度=60℃)において満充電状態の二次電池を保存(保存時間=100時間)した。この場合には、二次電池の使用数(試験数)を100個とした。続いて、安全弁機構30の状態を目視で確認することにより、その安全弁機構30の状態を判定した。この場合には、保存期間内において安全弁機構30が作動しなかった場合を「合格」と判定したと共に、保存期間内において安全弁機構30が作動した場合を「不合格」と判定した。最後に、保存合格率(%)=(合格した二次電池の個数/二次電池の試験数)×100を算出した。
過充電特性を調べるためには、過酷過充電試験を行うことにより、過充電合格率(%)を求めた。
具体的には、最初に、充放電サイクル数が100サイクルに到達するまで二次電池を繰り返して充放電させた。充電時には、0.2Cの電流で電圧が4.2Vに到達するまで定電流充電したのち、4.2Vの電圧で電流密度が0.02Cに到達するまで定電圧充電した。放電時には、0.2Cの電流密度で電圧が2Vに到達するまで放電した。「0.2C」とは、電池容量(理論容量)を5時間で放電しきる電流値であると共に、「0.02C」とは、電池容量を50時間で放電しきる電流値である。続いて、電圧が定格充電電圧の2.5倍の電圧に到達するまで二次電池を過充電した。この場合には、二次電池の使用数(試験数)を100個とした。続いて、二次電池の状態を目視で確認することにより、その二次電池の状態を判定した。この場合には、二次電池が破裂、発火または発煙しなかった場合を「合格」と判定したと共に、二次電池が破裂、発火または発煙した場合を「不合格」と判定した。最後に、過充電合格率(%)=(合格した二次電池の個数/二次電池の試験数)×100を算出した。
表2に示したように、保存合格率および過充電合格率のそれぞれは、電流遮断作動圧に応じて大きく変動した。具体的には、保存合格率は、電流遮断作動圧が増加するにしたがって増加したのに対して、過充電合格率は、電流遮断作動圧が増加するにしたがって減少した。この場合には、電流遮断作動圧が8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 であると(実験例2−3〜2−12)、90%以上の高い保存合格率が得られると共に、90%以上の高い過充電合格率も得られた。
よって、以下では、安全弁機構30の動作安定性が担保される電流遮断作動圧の適正範囲を8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 とした上で、サブディスク34の構成(厚さT1,T2、比T2/T1および内径D)が安全弁機構30の動作特性に与える影響を調べた。
(実験例3−1〜3−7)
表3に示したように、サブディスク34の厚さT1を変更したことを除いて同様の手順により、安全弁機構30の作動特性(電流遮断作動圧)を調べた。
表3に示したように、電流遮断作動圧は、厚さT1に応じて大きく変動した。具体的には、電流遮断作動圧は、厚さT1が増加するにしたがって次第に増加した。この場合には、厚さT1が0.05mm〜0.30mmであると(実験例3−1〜3−6)、上記した適正な範囲内の電流遮断作動圧(=8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 )が得られた。
(実験例4−1〜4−8)
表4に示したように、サブディスク34の厚さT2を変更したことを除いて同様の手順により、安全弁機構30の作動特性(電流遮断作動圧)を調べた。
表4に示したように、電流遮断作動圧は、厚さT2に応じて大きく変動した。具体的には、電流遮断作動圧は、厚さT2が増加するにしたがって次第に増加した。この場合には、厚さT2が0.02mm〜0.07mmであると(実験例4−2〜4−7)、上記した適正な範囲内の電流遮断作動圧(=8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 )が得られた。
(実験例5−1〜5−8)
表5に示したように、厚さT1に対する厚さT2の比T2/T1を変更したことを除いて同様の手順により、安全弁機構30の作動特性(電流遮断作動圧)を調べた。比T2/T1を変更するために設定された厚さT1,T2のそれぞれは、表5に示した通りである。
表5に示したように、電流遮断作動圧は、比T2/T1に応じて大きく変動した。具体的には、電流遮断作動圧は、比T2/T1が増加するにしたがって次第に増加した。この場合には、比T2/T1が0.2〜0.7であると(実験例5−2〜5−7)、上記した適正な範囲内の電流遮断作動圧(=8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 )が得られた。
(実験例6−1〜6−5)
表6に示したように、サブディスク34の内径Dを変更したことを除いて同様の手順により、安全弁機構30の作動特性(電流遮断作動圧)を調べた。
表6に示したように、電流遮断作動圧は、内径Dに応じて大きく変動した。具体的には、電流遮断作動圧は、内径Dが増加するにしたがって次第に増加した。この場合には、内径Dが0.6mm〜1.8mmであると(実験例6−2〜6−4)、上記した適正な範囲内の電流遮断作動圧(=8kgf/cm2 〜28kgf/cm2 )が得られた。
表1〜表6に示した結果から、サブディスク34に開裂溝34Mが設けられていると、安全弁機構30の動作安定性が向上した。よって、二次電池の安全性が向上した。
以上、一実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、本技術は、一実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
具体的には、円筒型の二次電池に関して説明したが、これに限られない。二次電池の種類は、安全弁機構を備えた二次電池であれば、例えば、ラミネートフィルム型の二次電池でもよいし、角型の二次電池でもよいし、コイン型の二次電池でもよいし、他の二次電池でもよい。
また、電池素子が巻回構造を有する場合に関して説明したが、これに限られない。電池素子は、例えば、積層構造などの他の構造を有していてもよい。
また、リチウムの吸蔵現象およびリチウムの放出現象を利用して電池容量が得られる二次電池(リチウムイオン二次電池)と、リチウムの析出現象およびリチウムの溶解現象を利用して電池容量が得られる二次電池(リチウム金属二次電池)とに関して説明したが、これらに限られない。二次電池の種類は、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能である負極材料の容量を正極の容量よりも小さくすることにより、リチウムの吸蔵現象およびリチウムの放出現象を利用した容量とリチウムの析出現象およびリチウムの溶解現象を利用した容量との和により電池容量が表される二次電池などでもよい。
また、電極反応物質としてリチウムを用いる場合に関して説明したが、これに限られない。電極反応物質は、例えば、ナトリウムおよびカリウムなどの長周期型周期表における他の1族の元素でもよいし、マグネシウムおよびカルシウムなどの長周期型周期表における2族の元素でもよいし、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。また、電極反応物質は、上記した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む合金でもよい。
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
なお、本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
正極および負極と共に電解液を含む電池素子と、
開放端部を有すると共に、前記電池素子を収納する収納部材と、
前記開放端部を閉塞するように前記収納部材に取り付けられた安全弁機構と
を備え、
前記安全弁機構は、
前記開放端部を閉塞する閉塞部材と、
前記電池素子と前記閉塞部材との間に配置され、前記電池素子および前記閉塞部材のそれぞれに電気的に接続されると共に、前記閉塞部材に物理的に接続された接続部と、前記接続部の周辺領域のうちの少なくとも一部に設けられた溝とを有する接続部材と
を含む、二次電池。
(2)
前記溝は、前記接続部を囲むように設けられた環状である、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
前記溝は、リング状である、
上記(2)に記載の二次電池。
(4)
前記接続部材は、
前記電池素子に近い側に位置する第1面と、
前記閉塞部材に近い側に位置する第2面と
を有し、
前記溝は、前記第1面および前記第2面のうちの少なくとも一方に設けられている、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池。
(5)
前記閉塞部材は、前記接続部材に向かって突出した突起部を有し、
前記安全弁機構は、さらに、前記閉塞部材と前記接続部材との間に配置され、前記突起部を通過させるための開口部を有する中間部材を含み、
前記接続部材は、前記接続部において前記突起部と物理的に接続されており、
前記溝は、前記接続部材のうちの前記開口部に対応する領域の内部に設けられている、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の二次電池。
(6)
前記溝が設けられていない箇所における前記接続部材の第1厚さは、0.05mm以上0.30mm以下である、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(7)
前記溝が設けられている箇所における前記接続部材の第2厚さは、0.02mm以上0.07mm以下である、
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の二次電池。
(8)
前記溝が設けられていない箇所における前記接続部材の第1厚さに対する、前記溝が設けられている箇所における前記接続部材の第2厚さの比(第2厚さ/第1厚さ)は、0.2以上0.7以下である、
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の二次電池。
(9)
前記溝は、リング状であり、
前記溝の内径は、0.6mm以上1.8mm以下である、
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の二次電池。
(10)
前記溝は、リング状であり、
下記の式(1)で表される重相関式により算出される前記安全弁機構の作動圧は、8kgf/cm2 以上28kgf/cm2 以下である、
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池。
P=40×T1+6.7×D+400×T2−12 ・・・(1)
(Pは、安全弁機構の作動圧(kgf/cm2 )である。T1は、溝が設けられていない箇所における接続部材の第1厚さ(mm)である。Dは、溝の内径(mm)である。T2は、溝が設けられている箇所における接続部材の第2厚さ(mm)である。)
(11)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の二次電池。
(12)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と、
前記制御部の指示に応じて前記二次電池の動作を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(13)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
前記駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(14)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(15)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の二次電池と、
前記二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(16)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。