この発明の一実施形態に係るワイヤハーネスのトータル支援方法およびトータル支援システムについて、図1から図22を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明のトータル支援システム1が鉄道車両(移動体)の車体に配線されるワイヤハーネス500の設計、製造、および、配線を支援するシステムである例に適用して説明する。
ワイヤハーネス500は、図3に示すように、鉄道車両の車体に搭載された機器の間をつなぐ電線501が複数束ねられたものである。電線501は、接続された機器の間で電力や電気信号などを伝えるものである。電線501の端部には、接続される機器に対応し
た形状を有するコネクタ502が取り付けられている。
ワイヤハーネス500には、複数の電線501を束ねて拘束する拘束部材503が設けられている。拘束部材503としては、粘着テープや、チューブ、結束バンドなどの樹脂製の結束部材や、金属製の結束部材や、ロウ引き紐などを例示することができる。なお、結束部材には貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔は、結束部材により束ねられたワイヤハーネス500を、鉄道車両の車体に固定する際に用いられるボルトなどの固定部材が挿通されるものである。
本実施形態では、拘束部材503が粘着テープである例に適用して説明する。ワイヤハーネス500における複数の電線501が束ねられた部分を幹線511、幹線から電線501が分かれる位置を分岐点512、幹線から分かれた先の部分を枝線513とも表記する。
トータル支援システム1には、図1に示すように、ワイヤハーネス500の設計支援を行う設計支援装置100と、ワイヤハーネス500の製造支援を行う製造支援装置200と、ワイヤハーネス500の配線作業を支援する情報処理端末300と、が設けられている。設計支援装置100および製造支援装置200の間と、設計支援装置100および情報処理端末300の間は、専用の情報通信回線または公知の情報通信網を介して情報通信可能に接続されている。
設計支援装置100は、仮想の空間である設計空間の中でワイヤハーネス500の設計を行うものである。本実施形態では設計支援装置100が、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するパーソナルコンピュータやサーバなどの情報処理機器である例に適用して説明する。
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、図2に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて台帳記録部101、フォーマット変換部103、差分情報部105、ハーネス単位定義部107、仮想電線設定部109、径算出部111、空間配置部113、ガイド配置部115、ルーティング部117、整線部119、ワイヤハーネス定義部121(以後「ハーネス定義部121」とも表記する。)、ワイヤハーネス情報部123(以後「ハーネス情報部123」とも表記する。)、拘束部材情報部125、重量算出部127、寸法調整部129、ハーネス用デジタルボード情報部131(以後「ボード情報部131」とも表記する。)、座標変換部133、サイズ情報部135、製造用情報部137、ゲージ情報部139、レシピ作成部141、および、工程情報部143として機能させるものである。
台帳記録部101は、基配線情報や配線情報の管理に用いられる台帳情報を記録する処理を行うものである。台帳情報へ記録を行う具体的な処理内容については、後述する。また、基配線情報や配線情報の内容についても後述する。
フォーマット変換部103は、基配線情報を取得する処理や、予め定められたルールに従って基配線情報に含まれる各種の情報をマスタに書きこむ処理や、ワイヤハーネス500の設計を識別する情報であるプロジェクト情報などを書き込む処理を行うものである。具体的な処理内容については後述する。
差分情報部105は、フォーマット変換処理以前に用いた配線情報(旧配線情報)を基準として、フォーマット変換処理で用いられる配線情報(新配線情報)含まれる各種の情報に変更または追加があるか否かを判定する処理や、変更、追加された情報である差分情報を配線情報に記載する処理などを行うものである。具体的な処理内容については後述す
る。
ハーネス単位定義部107は、配線情報に含まれるエリア情報、および、用途情報の少なくとも一方に基づいて、配線情報に含まれる複数の電線501からワイヤハーネス500としてまとめる電線501の組み合わせを判定する処理を行うものである。具体的な処理内容については後述する。
仮想電線設定部109は、複数の電線501を1つにまとめた仮想的な電線である仮想電線を作成する処理を行うものである。仮想電線を作成する処理の内容は、作成単位が機器単位であるか、コネクタ単位かにより異なる。具体的な処理内容については後述する。
径算出部111は、仮想電線の径(具体的には直径)を算出する処理を行うものである。仮想電線の直径は、仮想電線に含まれる複数の電線501を、1本の電線と見立てることにより算出される。具体的な処理内容については後述する。
空間配置部113は、仮想の3次元空間である設計空間の中に生成された車体のモデル601(図4参照。)に対して、電線501が配置される仮想空間611(図5参照。)を配置する演算処理を行うものである。空間配置部113における演算処理の内容については後述する。
車体のモデル601は、3次元CAD(Computer Aided Design)データ(3D設計データ)に基づいて生成されるものである。3次元CADデータには、車体を構成する構造部品の形状の情報である部品形状情報、車体における構造部品が配置される位置の情報である部品位置情報、車体に配置される機器が配置される位置の情報である機器位置情報、および、当該機器における電線501が接続される位置である接続位置情報が少なくとも含まれている。
仮想空間611は、仮想空間情報に基づいて生成されるものである。仮想空間611は、設計空間の中に設定される仮想上の空間であって、車体を構成する構造部品の間に設定される空間である。図5では、仮想空間611にドットでハッチングして表示している。
仮想空間情報には、仮想空間611の形状に関する情報である空間形状情報、および、当該仮想空間611が配置される位置の情報である空間位置情報が少なくとも含まれている。
ガイド配置部115は、ガイド部621を仮想空間611内に配置する演算処理を行うものである。ガイド配置部115における演算処理の内容については後述する。ガイド部621は、図6に示すように、仮想空間611内に配置される仮想上の板状部材である。ガイド部621には電線501が挿通されるガイド孔622が設けられている。ガイド孔622に電線501を挿通させることにより、電線501が配置される位置が定められる。ガイド孔622に挿通される電線501は、例えば、電線501の配置時に定められる。
なお、ガイド部621の形状は、図6に示す形状に限定されるものではなく、ガイド部621が配置される仮想空間611の断面形状に基づいて定めることができる。同様に、ガイド孔622の大きさは、挿通される電線501の径に基づいて定めることができる。ガイド部621におけるガイド孔622が設けられる位置も、後述するワイヤハーネス500を形成する複数の電線501が隣接するように定めることができる。
ルーティング部117は、配線情報に基づいて電線501が仮想空間611に配置され
る経路の情報である配線経路情報を作成するものである。ルーティング部117における演算処理の内容については後述する。配線経路情報は、ハーネスルーティングデータとも表記される。配線経路情報には、設計空間の中で配置された電線501の3次元形状を表示する図形情報も含まれている。
配線情報は、From To リストとも表記される。配線情報には、電線501が接続される機器(図示せず。)を特定する情報である機器特定情報、当該電線501の種類を特定する情報、当該電線501の長さを表す情報である長さ情報、当該電線501について定められた長さの値に対して予め定められた誤差の範囲である公差情報、当該電線501の径を表す情報である径情報、および、当該電線501に付与するラベル文字情報を少なくとも含まれている。
なお、上述の長さ情報は、初期状態において配線情報に含まれていなくてもよいし、上述の長さ情報の代わりとして電線501の目安としての長さの情報が含まれていてもよい。
上述の長さ情報が配線情報に含まれていない場合には、後述するハーネス情報部123により求められる電線501の長さ情報が、上述の長さ情報として配線情報に含められる。また、目安としての長さの情報が配線情報に含まれている場合には、ハーネス情報部123により求められる電線501の長さ情報が上書きされる。
なお初期状態とは、配線情報が作成されてから、ハーネス情報部123により求められる電線501の長さ情報が配線情報に含められるまで、または、上書きされるまでの状態をいう。
整線部119は、仮想空間611内に配置されている電線501を整理する演算処理を行うものである。整線部119における演算処理の内容は後述する。
ハーネス定義部121は、仮想空間611に配置された電線501を束ねてワイヤハーネス500を定義する演算処理を行うものである。ハーネス定義部121における演算処理の内容は後述する。
ハーネス情報部123は、定義されたワイヤハーネス500についてワイヤハーネス情報(2D設計データ)を作成する演算処理を行うものである。ハーネス情報部123における演算処理の内容は後述する。作成されたワイヤハーネス情報は、設計したワイヤハーネス500の承認手続きや、ワイヤハーネス500の製造に用いられる。
拘束部材情報部125は、3次元CADデータおよびワイヤハーネス情報に基づいてワイヤハーネス500に用いられる拘束部材503の長さ、言い換えると使用量を含む拘束部材情報を作成する演算処理を行うものである。本実施形態では、拘束部材503が粘着テープである例に適用して説明する。作成された拘束部材情報は、リスト形式のデータとして出力可能な情報である。拘束部材情報部125における演算処理の内容は後述する。
重量算出部127、電線501の種別ごとに重量を計算する処理や、算出された種別ごとの電線501の重量に基づいてワイヤハーネス500における総重量を計算する処理を行うものである。具体的な処理内容については後述する。
寸法調整部129、配線経路情報に余長、公差、丸めを加えた新配線経路情報を作成する処理などを行うものである。丸めとは、数値の端数などを処理することを意味する。具体的な処理内容については後述する。
ボード情報部131は、ワイヤハーネス情報に基づいてハーネス用デジタルボード情報を作成する演算処理を行うものである。ハーネス用デジタルボード情報は、後述するハーネス用デジタルボード201に表示される図面情報を含む情報である。
座標変換部133は、枝線513が幹線511に対して斜め方向に延びている情報を、幹線511に対して枝線513が直交する方向へ延びるように情報を変換する処理を行うものである。具体的な処理内容については後述する。
サイズ情報部135は、後述するボード表示部202の大きさに関するサイズ情報を設定する演算処理を行うものである。ボード表示部202は、ハーネス用デジタルボード201におけるワイヤハーネス500を作成する際に電線501が置かれる配置面でもある。
製造用情報部137は、ハーネス用デジタルボード情報およびサイズ情報に基づいて、ワイヤハーネス500の製造に用いられる図面情報を含む製造用情報(製造方法を示す情報)を作成する演算処理を行うものである。図面情報は、ハーネス用デジタルボード201におけるボード表示部202に表示される情報である。
ゲージ情報部139は、配線情報に含まれる公差情報に基づいて、公差ゲージ631の情報であるゲージ情報を作成する演算処理を行うものである。ゲージ情報は、ボード表示部202に公差ゲージ631を表示させる情報であり、作成されたゲージ情報は図面情報に含まれる。
公差ゲージ631は、図7に示すように、電線501をハーネス用デジタルボード201のボード表示部202に配置した際に、当該電線501の一方の端部および他方の端部が配置される位置の許容範囲を表すものである。
レシピ作成部141は、配線情報に基づいて製造レシピを作成する処理を行うものである。製造レシピは、ワイヤハーネス500の生産に用いられる情報であって、ワイヤハーネス500を製造する工程の内容や順序などの情報を含むものである。
工程情報部143は、ワイヤハーネス情報および配線情報に基づいて、ワイヤハーネス500の配線工程に応じた配線工程情報を作成する演算処理を行うものである。配線工程情報は、情報処理端末300の端末表示部321に、ワイヤハーネス500の配線工程に応じた表示を可能とする情報である。例えば、配線作業を行うワイヤハーネス500の枝線513またはコネクタ502の順序を表示したり、ワイヤハーネス500の3次元図面を表示するとともに配線作業を行う枝線513をハイライト表示したりすることが可能な情報である。また、工程情報部143は、配線経路情報に基づいて、配線工程情報を作成する演算処理を行うものであってもよい。また、工程情報部143は、配線経路情報および後述するハーネス3次元情報に基づいて、配線工程情報を作成する演算処理を行うものであってもよい。
なお、本実施形態では1つの設計支援装置100が、台帳記録部101、フォーマット変換部103、差分情報部105、ハーネス単位定義部107、仮想電線設定部109、径算出部111、空間配置部113、ガイド配置部115、ルーティング部117、整線部119、ハーネス定義部121、ハーネス情報部123、拘束部材情報部125、重量算出部127、寸法調整部129、ボード情報部131、座標変換部133、サイズ情報部135、製造用情報部137、ゲージ情報部139、レシピ作成部141、および、工程情報部143として機能する例に適用して説明するが、これらを複数の設計支援装置100に分散させてもよい。
例えば、一の設計支援装置100が台帳記録部101、フォーマット変換部103、差分情報部105、ハーネス単位定義部107、仮想電線設定部109、径算出部111、空間配置部113、ガイド配置部115、ルーティング部117、整線部119、ハーネス定義部121、ハーネス情報部123、拘束部材情報部125、重量算出部127、および、寸法調整部129、として機能し、他の設計支援装置100がボード情報部131、座標変換部133、サイズ情報部135、製造用情報部137、ゲージ情報部139、レシピ作成部141、および、工程情報部143として機能するように分散させる方法を挙げることができる。一の設計支援装置100および他の設計支援装置100の間は、情報通信可能に直接接続されていてもよいし、サーバを介して情報通信可能に接続されていてもよい。
製造支援装置200はワイヤハーネス500を製造するものである。製造支援装置200には、図3および図8に示すように、ハーネス用デジタルボード201と、制御用コンピュータ211と、データサーバ221と、が主に設けられている。更に、製造支援装置200には、読み取り部231、電線切断機241および印刷機251を含むワイヤハーネス500の製造に用いられる機器も設けられている。
ハーネス用デジタルボード201は、ワイヤハーネス500の製造に用いられる机状に形成されたものである。ハーネス用デジタルボード201には、ワイヤハーネス500が製造される作業台でもあるボード表示部202が設けられている。
ボード表示部202は、ワイヤハーネス500の製造に必要な広さおよび長さを有する面である。ボード表示部202は、ワイヤハーネス500が製造される面であるとともに、デジタル情報である図面情報が表示される表示面でもある。ボード表示部202は制御用コンピュータ211と情報通信可能に接続され、表示する図面情報に関する情報が制御用コンピュータ211から送られている。なお、制御用コンピュータ211は、図面情報を含む製造用情報をデータサーバ221から読み込んでもよい。
本実施形態では、ボード表示部202の表示面が液晶ディスプレイである例に適用して説明する。なお、ボード表示部202の表示面は、上述の液晶ディスプレイに限られるものではなく、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイであってもよいし、プロジェクターにより図面情報が投影される投影面であってもよい。
読み取り部231は、ボード表示部202の表示面に表示されるバーコードなどの識別子を光学的に読み取るものである。読み取り部231は、制御用コンピュータ211と情報通信可能に接続され、読み取った識別子の情報を制御用コンピュータ211に出力するものである。
本実施形態では、読み取り部231は、携帯可能な大きさおよび重さであり、制御用コンピュータ211と公知の無線通信技術を用いて情報通信可能に接続されている例に適用して説明する。また、識別子としては、公知の方式や形式のものを用いることができる。
電線切断機241は、ワイヤハーネス500の製造に用いられる電線501を、予め定められた所望の長さに切断するものである。電線切断機241は、制御用コンピュータ211と情報通信可能に接続され、制御用コンピュータ211から入力される制御信号に基づいて電線501の切断を行うものである。なお、切断される電線501は、供給リール(図示せず)から繰り出されたものである。
印刷機251は、切断された電線501やワイヤハーネス500に取り付けられるラベ
ルを印刷するものである。ラベルは、電線501の識別等に用いられるものである。印刷機251は、制御用コンピュータ211と情報通信可能に接続され、制御用コンピュータ211から入力される情報に基づいてラベルに印刷を行うものである。
制御用コンピュータ211は、ハーネス用デジタルボード201における図面情報の表示を制御するものである。また、ワイヤハーネス500の製造に用いられる電線切断機241や印刷機251などの他の機器の制御や、作業履歴や検査結果などのワイヤハーネス500の製造に関する情報を取得するものでもある。
本実施形態では制御用コンピュータ211が、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するパーソナルコンピュータなどの情報処理機器である例に適用して説明する。
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、図8に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて入出力部212、制御部213として機能させるものである。
入出力部212は、設計支援装置100、ボード表示部202、読み取り部231、電線切断機241、印刷機251、およびデータサーバ221と情報通信可能に接続されるものである。本実施形態では、ボード表示部202、電線切断機241、印刷機251およびデータサーバ221との間は、LAN(Local Area Network)ケーブル等を用いた公知の方式による有線情報通信が可能に接続され、読み取り部231との間で無線LAN等の公知の方式による無線情報通信が可能に接続される例に適用して説明する。設計支援装置100との間は、公知の情報通信網を用いた情報通信が可能に接続される例に適用して説明する。
制御部213は、ボード表示部202、電線切断機241および印刷機251の動作を制御する制御信号を生成するものである。また、データサーバ221に作業履歴や検査結果などのワイヤハーネス500の製造に関する情報を記憶させるものである。
データサーバ221は、LANケーブル等で構成された情報通信網を介して制御用コンピュータ211と情報通信可能に接続されたサーバである。本実施形態ではデータサーバ221が、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するサーバなどの情報処理機器である例に適用して説明する。
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、図8に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて記憶部222として機能させるものである。記憶部222は、制御用コンピュータ211が取得した作業履歴や検査結果などのワイヤハーネス500の製造に関する情報を記憶するものである。また、記憶部222は、図面情報を含む製造用情報を記憶するものであってもよい。
情報処理端末300は、ワイヤハーネス500の配線作業を支援する情報を表示するものである。本実施形態では、情報処理端末300がCPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有する作業者が携帯して移動可能なタブレット型やノート型の情報処理機器である例に適用して説明する。
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、図1に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を協働させて端末記憶部301、端末制御部311、および、端末表示部321として機能させるものである。
端末記憶部301は、設計支援装置100から取得した配線工程情報および配線経路情報を記憶するものである。端末制御部311は、ワイヤハーネス500の配線工程に応じた配線工程情報および配線経路情報を表示させる制御を行うものである。端末制御部311による制御内容については後述する。
端末表示部321は、配線作業を行う作業者に対して配線工程情報および配線経路情報を表示するものである。また端末表示部321は、作業者による情報処理端末300への操作が入力されるタッチスクリーン等の入力部でもある。本実施形態では、端末表示部321が液晶ディプレイとタッチスクリーンが組み合わされたものである例に適用して説明する。
次に、上記の構成からなるトータル支援システム1におけるワイヤハーネス500のトータル支援方法について図9から図22を参照しながら説明する。本実施形態のトータル支援システム1においてワイヤハーネス500の配線支援が開始されると、図9に示すように、設計支援装置100はフォーマット変換の処理を行う(S100)。
設計支援装置100は、図10および図11に示すように、フォーマット変換として以下に説明する処理を行う。本実施形態では、図10のフォーマット変換1の処理内容を示すフローチャートを先に説明し、次に図11のフォーマット変換2の処理内容を示すフローチャートを説明する。
なお、図10および図11に示すフローチャートは互いに関連を有しており、同時に並行して実行されてもよいし、別々に実行されてもよい。また、図10および図11に示すフローチャートのどちらを先に実行してもよく、実行の順序を特に限定するものではない。
まず、設計支援装置100は、図10に示すように、基配線情報を取得する処理を行う(S101)。設計支援装置100は、予め基配線情報を保存しているサーバ等に対して基配線情報の出力を要請する信号を送信する。出力の要請信号に応じて出力された基配線情報は、設計支援装置100に入力され記憶される。
なお、基配線情報は、配線情報と同様に電線501に関する情報を有するものであるが、配線情報と比較して、電線501に関する情報の記載方法や、記載順序などが異なるものである。基配線情報における電線501に関する情報の記載方法や、記載順序は特に限定するものでない。
基配線情報を取得すると設計支援装置100は、取得した基配線情報に対応する台帳情報があるか否かを判定する処理を行う(S102)。判定処理の方法としては、公知の方法を用いることができ、判定する具体的な処理内容を限定するものではない。
ここで、台帳情報は、基配線情報や配線情報の管理に用いられる整理番号などの整理情報や、基配線情報や配線情報の取得日時や、フォーマット変換を行った日時や、フォーマット変換を行ったユーザ情報などを記録するものである。なお、設計支援装置100は、S102の判定処理を行う際に、取得した基配線情報のコピーを作成して保管する処理も行う。
対応する台帳情報があると判定された場合(YESの場合)には、設計支援装置100は、台帳情報を確認する処理を行う(S103)。対応する台帳情報がある場合とは、判定対象の基配線情報を2回以上取得しており、S102の判定処理以前に台帳情報が作成されていたことを意味する。
対応する台帳が無いと判定された場合(NOの場合)には、設計支援装置100は、新規の台帳情報を作成する処理を行う(S104)。対応する台帳情報が無い場合とは、判定対象の基配線情報を初めて取得しことであり、S102の判定処理以前に台帳情報が作成されていなかったことを意味する。本処理で作成される新規の台帳情報としては、各種の情報が記入される空欄等から構成されるフォーマットを例示することができる。
S103の処理、または、S104の処理が行われると、設計支援装置100の台帳記録部101は、台帳情報を記録する処理を行う(S105)。台帳情報に記録する内容としては、取得した基配線情報に対して新たに付与される整理情報や、取得日時や、フォーマット変換を行った日時を例示することができる。なお、当該整理情報は、後述するS113の書き込み処理において書き込まれる情報でもある。
台帳情報記録の処理が行われると、設計支援装置100は、台帳情報を差し替える処理を行う(S106)。具体的には、本フォーマット変換処理におけるS105の処理以前に作成された台帳情報を、S105で記録した台帳情報に差し替える処理を行う。台帳情報の差し替え処理が行われると、設計支援装置100は、本フォーマット変換処理以前に取得した基配線情報を削除する処理を行う(S107)。
その一方で、設計支援装置100のフォーマット変換部103は、図11に示すように、基配線情報を取得する処理を行う(S111)。次いでマスタを取得する処理を行う(S112)。ここでマスタは、本トータル支援システム1におけるワイヤハーネス500の設計に用いられる配線情報に関するマスタである。より具体的には、配線情報に含まれる各種の情報が記入される空欄等から構成されるフォーマットを意味するものである。
基配線情報およびマスタを取得する処理が行われると、フォーマット変換部103は、マスタに情報を書き込む処理を行う(S113)。具体的には、予め定められたルールに従って基配線情報に含まれる各種の情報をマスタに書きこむ処理、ワイヤハーネス500の設計を識別する情報であるプロジェクト情報などを書き込む処理が行われる。これらの情報が書き込まれたマスタは配線情報でもある。
ここで、ルールは基配線情報を配線情報に変換する変換規則データである。ルールは、基配線情報におけるフォーマット(各種情報が記載される順序などの形式)の種類に応じて複数存在する。複数のルールの中から、基配線情報の内容(フォーマット)を判別し、判別したフォーマットに対応するルールを選択して用いられる。
マスタに情報を書き込む処理が行われると、設計支援装置100の差分情報部105は、S113で書きこまれた配線情報に変更、追加があるか否かを判定する処理を行う(S114:比較ステップ)。配線情報に変更、追加があると判定される場合とは、本フォーマット変換処理以前に用いた配線情報(旧配線情報)を基準として、本フォーマット変換処理で用いられる配線情報(新配線情報)含まれる各種の情報に変更または追加があった場合である。
変更、追加があると判定された場合(YESの場合)には、差分情報部105は、変更、追加された情報である差分情報を配線情報に記載するとともに、変更、追加された情報を比較、解析する処理を行う(S115:差分情報ステップ)。なお、配線情報は、旧配線情報および新配線情報に共通する情報および差分情報が記載されたものとしてもよいし、差分情報のみが記載されたものとしてもよい。
差分情報は、予め定められた解析条件に基づいて旧配線情報と新配線情報とを比較する
ことにより求められる情報である。また、差分情報は、予め定められたフォーマットに従って含まれる情報が整理して配置されている。
その後、差分情報部105は、変更、追加の箇所(差分情報)を出力する処理を行う(S116:差分情報ステップ、差分情報出力ステップ)。出力された差分情報は、例えば台帳に記録される。
S114の判定処理において、変更、追加がないと判定された場合(NOの場合)には、差分情報部105は、変更箇所なしと明示する処理を行う(S117)。具体的には、変更なしとの情報を配線情報に加える処理を行う。
その後、設計支援装置100のハーネス単位定義部107は、ワイヤハーネス単位の定義を行う処理を行う(S118)。具体的には、配線情報に含まれるエリア情報、および、用途情報の少なくとも一方に基づいて、配線情報に含まれる複数の電線501からワイヤハーネス500としてまとめる電線501の組み合わせを判定する処理が行われる。
ここでエリア情報は、電線501が接続される機器が設置されるエリアを特定する情報であり、用途情報は、電線501の用途種別(例えば、交流用電線、直流用電線、シールド回線)を特定する情報である。
エリア情報に基づくことにより、ワイヤハーネス500が配線される場所、例えば、鉄道車両における号車、車両の右側、左側などを考慮してワイヤハーネス500としてまとめる電線501の組み合わせの判定が可能となる。また、電線501の用途種別に基づくことにより、ワイヤハーネス500に交流用電線のみをまとめる、直流用電線のみをまとめる、シールド回線のみをまとめることが可能となる。
図10に示すフォーマット変換1の処理、および、図11に示すフォーマット変換2の処理が終了すると、トータル支援システム1の設計支援装置100は、図9に戻り、3次元CAD上で自動配線を行う際に用いられるリストの作成の処理を行う(S200)。ここで自動配線とは、電線501の一方の端部である起点(From)と他方の端部である終点(To)とをつなぐことを意味する。
設計支援装置100は、図12に示すように、リストのフォーマットを取得する処理を行う(S201)。次いで、対象とするワイヤハーネス500に関する配線情報を取得する処理を行う(S202)。
その後、設計支援装置100は、付加情報を付加する処理を行う(S203)。ここで、付加情報は、電線501の被覆に関する情報や、断面タイプに関する情報や、色に関する情報や、直径に関する情報や、許容曲率に関する情報などを含むものである。
さらに設計支援装置100は、配線対象が取得した配線情報に含まれる複数の電線501の一部であるか否かを判定する処理を行う(S204)。
配線対象は一部であると判定された場合(YESの場合)には、設計支援装置100は、仮想電線の作成単位が機器単位か、コネクタ単位かを判定する処理を行う(S205)。
ここで仮想電線とは、まとめて配線を行う単位で電線501をまとめたものである。例えば、機器単位で仮想電線を作成する場合、一の機器Aと他の機器Gを結ぶ複数の電線501をまとめて1つの仮想電線として作成する。
仮想電線の作成単位が機器単位であると判定された場合には、設計支援装置100は、同じ機器名称同士の配線情報を認識する処理を行う(S206)。その一方で、仮想電線の作成単位がコネクタ単位であると判定された場合には、設計支援装置100は、同じ機器上のコネクタ同士の配線情報を認識する処理を行う(S207)。
次いで設計支援装置100は、仮想電線の作成を行う適応範囲を定義する処理を行う(S208)。言い換えると、仮想電線の作成を行う電線501のグループを定義する処理を行う。この際に、適応範囲の修正が必要か否かの判定を行い、修正が必要な場合には、適応範囲に対して修正を行う処理を行う。修正が不要な場合には次の処理に移る。
仮想電線の適応範囲が定義されると、設計支援装置100の仮想電線設定部109は、仮想電線を作成する処理を行う(S209)。具体的には、S205の判定処理において、仮想電線の作成単位が機器単位であると判定された場合には、一の機器AのBコネクタから他の機器GのHコネクタに接続される電線501と、一の機器AのCコネクタから他の機器GのJコネクタに接続される電線501とは、まとめられて1つの仮想電線として作成する処理が行われる。
また、S205の判定処理において、仮想電線の作成単位がコネクタ単位であると判定された場合には、一の機器AのBコネクタから他の機器GのHコネクタに接続される電線501と、一の機器AのCコネクタから他の機器GのHコネクタに接続される電線501とは、別々の仮想電線として作成する処理が行われる。
仮想電線を作成する処理が行われた後、設計支援装置100の径算出部111は、仮想電線の径を算出する処理を行う(S210)。具体的には、電線501の径(直径または半径)であるサイズ情報を配線情報から取得する処理を行い、取得したサイズ情報に基づいて仮想電線の直径を算出する処理を行う。仮想電線の直径は、仮想電線に含まれる複数の電線501を、1本の電線と見立てることにより算出される。
仮想電線の径が算出されると、設計支援装置100は、仮想電線の配線情報を作成する処理を行う(S211)。当該配線情報は、S201で取得したフォーマットに従って作成される。
その一方で、S204の判定処理において配線対象が一部ではない(全体である)と判定された場合(NOの場合)には、S203で取得した付加情報を加えた配線情報を使用する処理を行う(S212)。
その後、設計支援装置100は、コネクタを自動生成する処理を行う(S213)。具体的には、仮想電線の作成単位が機器単位の場合には、仮想電線の一方の端部である起点(From)のコネクタファイル名を、接続対象である機器の名称を含む名称とし、他方の端部である終点(To)のコネクタファイル名を、接続対象である機器の名称を含む名称としたコネクタファイルを自動生成する処理を行う。その一方で、仮想電線の作成単位がコネクタ単位の場合には、仮想電線の一方の端部である起点(From)のコネクタファイル名を、接続対象である機器の名称およびコネクタの名称を含む名称とし、他方の端部である終点(To)のコネクタファイル名を、接続対象である機器の名称およびコネクタの名称を含む名称としたコネクタファイルを自動生成する処理を行う。
なお、仮想電線を作成しない場合には、電線501の一方の端部である起点(From)のコネクタファイル名を、接続対象である機器の名称およびコネクタの名称を含む名称とし、他方の端部である終点(To)のコネクタファイル名を、接続対象である機器の名称およびコネクタの名称を含む名称としたコネクタファイルが生成される。
図12に示すリスト作成の処理が終了すると、設計支援装置100は、図9に戻り、仮想空間作成の処理を行う(S300)。
設計支援装置100は、仮想空間作成の処理として以下に説明する処理を行う。まず、設計支援装置100は、図13に示すように、3次元CADデータおよび配線情報を入手する処理を行う(S301)。設計支援装置100は、予め3次元CADデータおよび配線情報を保存しているサーバ等に対して3次元CADデータおよび配線情報の出力を要請する信号を送信する。出力の要請信号に応じて出力された3次元CADデータおよび配線情報は、設計支援装置100に入力され記憶される。
3次元CADデータおよび配線情報を入手すると、設計支援装置100は、車体のモデル101の部品情報に基づいて仮想空間611を作成する処理を行う(S302)。仮想空間611の形状は、車両のモデル601を参照しながら定められる。例えば、仮想空間611は、車両の車体を構成する構造部品の間に配置される。さらに、車体に配置される機器に電線501が接続可能な位置に仮想空間611が配置される。
設計支援装置100は、仮想空間611の形状に関する情報である空間形状情報、仮想空間611が配置される位置の情報である空間位置情報を含む仮想空間情報を作成する。
作成された仮想空間611は、車体との干渉有無などが確認される。干渉が無いことが確認されると、仮想空間作成の処理は終了する。トータル支援システム1の設計支援装置100は、図9に戻り、電線ルーティング作業の処理を行う(S400)。
設計支援装置100は、図14に示すように、電線ルーティング作業の処理として以下に説明する処理を行う。まず、設計支援装置100の空間配置部113は、設計空間の中に車両のモデル601および仮想空間611を配置する処理を行う(S401:3D設計ステップ)。車体のモデル601は、3次元CADデータに基づいて設計空間の中に生成されるものである。仮想空間611は、S300の仮想空間作成の処理で承認されたものであり、仮想空間情報に基づいて設計空間の中に生成されるものである。
車両のモデル601および仮想空間611が配置されると、設計支援装置100のガイド配置部115は、仮想空間611にガイド部621を配置する処理を行う(S402:3D設計ステップ)。ガイド部621が配置される位置は、仮想空間611の曲がり角や、仮想空間611が枝分かれする分岐点や、仮想空間611の断面積が拡大または減少するテ―パ部の近傍を例示することができる。
ガイド部621の形状や、ガイド孔622の大きさ及び配置位置を設定する処理は、ガイド部621を配置する処理と同時に行ってもよいし、S402の処理よりも前に行ってもよい。S402の処理よりも前にガイド部621の形状等を設定する処理を行う場合、設計支援装置100とは別のコンピュータにおいて当該設定処理を行ってもよい。この場合、当該設定処理により設定されたガイド部621の形状等は、S402の処理を行う際に設計支援装置100に入力される。
ガイド部621が配置されると、設計支援装置100のルーティング部117は、仮想空間611に電線501を配線する処理であるルーティング作業を行う(S403:3D設計ステップ)。ルーティング作業は、3次元配線設計とも表記する。ルーティング作業および後述する整線処理により、電線501の3次元形状を表示する図形情報を含む配線経路情報が作成される。
電線501を配線する処理は、配線情報に含まれる機器特定情報や、3次元CADデー
タに含まれる機器位置情報および接続位置情報等に基づいて行われる。つまり、配線情報に基づいて、所定の電線501の一方の端部である起点(From)に接続される機器および他方の端部である終点(To)に接続される機器が特定される。特定された起点側の機器および終点側の機器が配置される位置、および、当該機器における電線501が接続される位置が特定される。ルーティング部117は、当該電線501が仮想空間611を経由して特定された機器に接続するように配線する処理を行う。この際に電線501は、ガイド部621の設定されたガイド孔622に挿通される。
ルーティング作業が行われると、設計支援装置100の整線部119は、整線処理を行う(S404:3D設計ステップ)。整線処理では、仮想空間611に電線501が入りきらない場合の調整処理と、仮想空間611が曲げられている箇所や、直線状に延びている箇所に配置された電線501を整理する処理が行われる。まず、仮想空間611に電線501が入りきらない場合の調整処理について説明する。
整線部119は、仮想空間611に電線501が入るか否かの判定を次のように行う。まず、仮想空間情報に基づいて、仮想空間611の判定を行う箇所である所定領域における形状である配置部形状と、配線情報に基づいて当該所定領域に配置された電線501の形状である電線形状を取得する。次いで、配置部形状および電線形状に基づいて、当該所定領域において、電線501が仮想空間611の内側と外側の境である境界面と干渉するか否かを判定する。干渉する場合には、仮想空間611に電線501が入らないと判定される。干渉しない場合には、仮想空間611に電線501が入らないと判定される。
整線部119は、仮想空間611に電線501が入らないと判定した場合には、以下に説明する整線処理の少なくとも1つを行う。仮想空間611に電線501が入ると判定された場合には、これらの整線処理を行わない。
第1の整線処理では、電線501が入らないと判定された仮想空間611を広げる処理が行われる。車体のモデル601と仮想空間611との間には、予め定められた余裕空間が確保されており、当該余裕空間に仮想空間611を広げる処理が行われる。
第2の整線処理では、仮想空間611に入らないと判定された一部の電線501を、別の配線ルートに迂回させる処理が行われる。言い換えると、電線501が入らないと判定された仮想空間611とは異なる他の仮想空間611へ迂回させる処理が行われる。
第3の整線処理では、判定された仮想空間611の中で、配置された電線501の配置位置を変更する処理が行われる。径の異なる複数の電線501が仮想空間611に配置されている場合、間に隙間が多いことにより仮想空間611に全ての電線501が入らないと判定されることがある。この場合に、電線501の配置位置を変更して電線501の間の隙間を減らすことにより、全ての電線501を仮想空間611に入れることが可能になることがある。
第4の整線処理は、第1の整線処理から第3の整線処理を行った後も仮想空間611に電線501が入らないと判定された際に行われる処理である。本整線処理では、車両の車体を構成する構造部品の形状や、電線501が接続される機器の配置を変更する処理が行われる。構造部品の形状の変更により仮想空間611を広げる変更が可能となり、全ての電線501を仮想空間611に入れることが可能になる。また、機器の配置の変更により電線501が配置されるルートが変更され、全ての電線501を仮想空間611に入れることが可能になる。
また上述のように、整線部119が仮想空間611に電線501が入らないと判定した
場合に、第1の整線処理から第4の整線処理を行ってもよいし、作業者が処理の実行を入力した場合に行ってもよい。
次に、仮想空間611が曲げられている箇所や、直線状に延びている箇所に配置された電線501を整理する処理について説明する。本実施形態では、作業者が実行を入力した場合に当該処理が行われる例に適用して説明するが、整線部119が当該処理の実行可否を判断してもよい。
作業者により当該処理の実行が入力されると、整線部119は、電線501の配置状態を整理する処理を行う。例えば、仮想空間611の中心線と並行に電線501を配置させる処理や、隣接する電線501との距離を所望の範囲内とする処理などが行われる。
整線処理が行われると、設計支援装置100は、ワイヤハーネス情報および拘束部材情報を作成する処理を行う(S405:3D設計ステップ)。まず、設計支援装置100のハーネス定義部121により行われるワイヤハーネス500を定義する処理が行われる。その後、ハーネス情報部123によるワイヤハーネス情報の作成処理、および、拘束部材情報部125による拘束部材情報の作成処理が行われる。
ハーネス定義部121は、所定数の電線501を束ねてワイヤハーネス500を定義する演算処理を行う。所定数の電線501は、仮想空間611に配置された複数の電線501から、所定の規則に従い選択されたものである。
所定の規則としては、1つのワイヤハーネス500にまとめる電線501の本数を例えば100本までとする、同じ機器に接続される電線501をワイヤハーネス500にまとめる、電気種類に基づいてワイヤハーネス500にまとめる電線501を選択する、などを例示することができる。なお電気種類に基づく選択方法としては、電線501の種類(例えば、交流用電線、直流用電線、シールド回線)が同じものを選択する方法を例示することができる。
ワイヤハーネス500を定義する処理が行われると、ハーネス情報部123は、ワイヤハーネス500の3次元形状の情報であるハーネス3次元情報に基づいてワイヤハーネス情報を作成する処理を行う。ここで、ハーネス3次元情報は、ワイヤハーネス500を構成する電線501の配線経路情報に基づく情報である。
ワイヤハーネス情報は、当該ワイヤハーネス500の幹線511の長さ情報や、分岐点512の位置情報や、枝線513の長さ情報などのワイヤハーネス500の形状に関する情報である。またワイヤハーネス情報は、当該ワイヤハーネス500を2次元図面として表示可能な情報も含む。
さらにワイヤハーネス情報には、当該ワイヤハーネス500を構成する電線501を特定する情報や、当該電線501の長さ情報や、当該電線501の径情報や、枝線513を構成する電線501を特定する情報など、ワイヤハーネス500を構成する電線501に関する情報が含まれる。
拘束部材情報部125は、3次元CADデータやワイヤハーネス情報等に基づいて拘束部材情報を作成する演算処理を行う。拘束部材情報は、ワイヤハーネス500に用いられる拘束部材503である粘着テープの長さ、言い換えると使用量を含む情報である。
まず、拘束部材情報部125は、複数の電線501を束ねて拘束する拘束位置、拘束に用いる拘束部材503の種類、および、拘束する位置において拘束部材503を巻き付け
る回数である巻き数の情報である拘束部材配置情報を取得する。これらの情報は、作業者により入力されてもよいし、予め記憶されていたものを取得してもよい。
拘束部材情報部125は、拘束位置の情報、および、電線501の径情報に基づいて、拘束位置における電線501の束(ワイヤハーネス500)の外径を算出する処理を行う。
外径の値を算出した後、拘束部材情報部125は、外径の値と巻き数とを乗算する処理を行う。当該乗算により、当該拘束位置において使用される拘束部材503の長さ(使用量)が求められる。使用量を求める処理は、拘束位置毎に行われる。
ワイヤハーネス500における全ての拘束位置について拘束部材503の使用量が求められると、拘束部材情報部125は、ワイヤハーネス500を特定する情報、拘束位置、拘束部材503の種類、巻き数、および、使用量などの情報を含む拘束部材情報を作成する。拘束部材情報は、公知のフォーマット形式を有する出力可能なデータとして作成される。
拘束部材情報が作成されると、設計支援装置100は、ハーネス配線図情報(2D設計データ)を作成する処理を行う(S406:2D設計ステップ)。ハーネス配線図情報は、ワイヤハーネス500に関する2次元図面の情報であり、車体に対してどのようにワイヤハーネス500を配線するかを示す図面の情報である。
図14に示す電線ルーティング作業の処理が終了すると、設計支援装置100は、図9に戻り、重量チェックの処理を行う(S500)。
設計支援装置100は、図15に示すように、配線経路情報(ハーネスルーティングデータ)を取得する処理を行う(S501)。具体的には、配線経路情報に含まれる配線長さの情報を少なくとも取得する処理を行う。
配線経路情報を取得する処理が行われると、設計支援装置100は、合成情報を取得する処理を行う(S502)。ここで合成情報とは、仮想電線の作成において算出された仮想電線の直径、仮想電線に含まれる電線501の直径などの情報である。
次いで設計支援装置100の重量算出部127は、電線501の種別ごとに重量を計算する処理を行う(S503:重量算出ステップ)。具体的には、電線501の重量に関する情報(単位長さ当たりの重量など)を取得し、取得した当該情報およびS501で取得した配線長さの情報に基づいて重量を算出する処理が行われる。
電線501の種別ごとに重量が算出されると、重量算出部127は、ワイヤハーネス500における総重量を計算する処理を行う(S504:重量算出ステップ)。その後、設計支援装置100は、算出した総重量が、予め定められた閾値以下か否かを判定する処理を行う(S505)。閾値は、ワイヤハーネス500の配線を行う作業者の作業負担を考慮して決められる。閾値としては、例えば20kg以下を挙げることができる。
総重量が閾値以下でないと判定された場合(NOの場合)には、設計支援装置100は、エラー表示を行う処理を行う(S506)。
エラー表示を行った後、または、総重量が閾値以下であると判定された場合(YESの場合)には、設計支援装置100は、配線情報に重量を書き込む処理を行う(S507)。
図15に示す重量チェックの処理が終了すると、設計支援装置100は、図9に戻り、
寸法調整の処理を行う(S600)。
設計支援装置100は、図16に示すように、配線経路情報(ハーネスルーティングデータ)を取得する処理を行う(S601)。具体的には、配線経路情報に含まれる分岐に関する情報や、区間長に関する情報などを少なくとも取得する処理を行う。
次いで、設計支援装置100は、編集後の配線経路情報を取得する処理を行う(S602)。編集後の配線経路情報とは、分岐に関する情報、区間長に関する情報、座標情報に関する情報の編集が行われた配線経路情報である。編集とは、公差や、余長や、数値の端数などを処理する丸め処理などを意味する。
その後、設計支援装置100の寸法調整部129は、電線501の線分が枝線513であるか否かを判定する処理を行う(S603)。具体的には、各線分の始点座標、終点座標を取得して、当該座標に基づいて判定処理を行う。
線分が枝線513であると判定された場合(YESの場合)には、寸法調整部129は、S601で取得した配線経路情報に対して、余長、公差を加算する処理を行う(S604:寸法調整ステップ)。加算する余長、公差の値は、外部から取得する公差ルールや、予め設定されている余長の値に基づいて定められる。
S604の処理が行われた後、または、線分が枝線でないと判定された場合(NOの場合)には、寸法調整部129は、S601で取得した配線経路情報に余長、公差、丸めを加えた新配線経路情報を作成する処理を行う(S605:寸法調整ステップ)。
その後寸法調整部129は、全データに対して処理を行ったか否かを判定する処理を行う(S606)。全データに対して処理が行われていないと判定された場合(NOの場合)には、S603に戻り上述の処理を繰り返し行う。
全データに対して処理が行われたと判定された場合(YESの場合)には、編集前と後の配線経路情報の間における差が、予め定められた所定値以内であるか否かを判定する処理を行う(S607:検出ステップ)。
編集前と後の配線経路情報の間における差が所定閾値を超えると判定された場合(NOの場合)には、設計支援装置100は、エラーを表示する処理を行う(S608)。その後、処理がキャンセルされる。
その一方で、編集前と後の配線経路情報の間における差が所定閾値以内と判定された場合(YESの場合)には、設計支援装置100は、編集後の配線経路情報を出力する処理を行う(S609)。
図16に示す寸法調整の処理が終了するとトータル支援システム1の設計支援装置100は、図9に戻り、ハーネス設計図作成の処理を行う(S700)。
設計支援装置100は、図17に示すように、ハーネス設計図作成の処理として以下に説明する処理を行う。まず、設計支援装置100は、配線情報およびワイヤハーネス情報に基づいてハーネス設計図(2D設計データ)を作成する処理を行う(S701)。なお、ハーネス設計図は、ワイヤハーネス情報の代わりにハーネス配線図情報に基づいて作成されてもよい。
ハーネス設計図はワイヤハーネス単位で作成され、予め定められた大きさ(例えばA3サイズ)に作成される。1つのワイヤハーネス500は、1図面(1品番の図面)で記載される。ただし、大きなワイヤハーネス500の場合には、複数の図面(複数品番の図面
)に分割して記載される。
ハーネス設計図は、ワイヤハーネス500の形状が実際のワイヤハーネス500と同じ大きさである実寸大(1/1スケール)で記載される。但し、予め定められた用紙サイズ(例えばA3サイズ)の枠内にワイヤハーネス500の形状を記載するために、形状はデフォルメ(変形・縮尺)される。
設計支援装置100は、ワイヤハーネス500の実際の長さや、予め定められた用紙サイズ等に基づいて、ハーネス設計図の縮尺や、幹線511に対する分岐した枝線513の角度等を求める演算を行い、ハーネス設計図として出力する。
また、ハーネス設計図が複数の図面に分割される場合には、設計支援装置100は、更に分割される図面数にも基づいて、縮尺や、幹線511に対する分岐した枝線513の角度等を求める演算を行う。
ハーネス設計図が作成されると、設計支援装置100のボード情報部131は、ハーネス用デジタルボード情報(ハーネスボード図面データ)を作成する処理を行う(S702)。ハーネス用デジタルボード情報には、例えば、ワイヤハーネス情報に基づき作成されたワイヤハーネス500の2次元図面の情報や、ワイヤハーネス500を構成する電線501を特定する情報や、電線501に取り付けられるコネクタ502を特定する情報が含まれる。
図17に示すハーネス設計図作成の処理が終了すると、設計支援装置100は、図9に戻り、座標変換の処理を行う(S800)。設計支援装置100は、図18に示すように、対象とするワイヤハーネス500のワイヤハーネス情報を取得する処理を行う。(S801)。
次いで設計支援装置100は、幹線511、枝線513を区別する処理を行い(S802)、枝線513が存在するか否かを判定する処理を行う(S803)。枝線513が存在すると判定された場合(YESの場合)には、設計支援装置100は、幹線511を固定する処理を行う(S804)。幹線511を固定する処理では、幹線511の区間長を固定する処理も行われる。次いで設計支援装置100は、枝線513の位置を設定する処理を行う(S805)。
その一方で、S803の判定処理において枝線513が存在しないと判定された場合(NOの場合)には、設計支援装置100は、ワイヤハーネス500を単線ハーネスとして扱う処理を行う(S806)。
枝線513の位置を設定する処理を行った後、または、ワイヤハーネス500を単線ハーネスとして扱う処理を行った後、設計支援装置100の座標変換部133は、端末情報を設定する処理を行う(S807)。具体的には、幹線511に対して枝線513が直交する方向へ延びるように情報を変換する処理を行う。
次いで設計支援装置100は、バンドル位置を設定する処理を行う(S808)。言い換えると剥き出し寸法を設定する処理を行い、長さと座標点の整合を確認する処理を行う(S809)。
図18に示す座標変換の処理が終了すると、設計支援装置100は、図9に戻り、ハーネスボード図面作成の処理を行う(S900:製造支援ステップ)。
設計支援装置100は、図19に示すように、ハーネスボード図面作成の処理として以
下に説明する処理を行う。まず、設計支援装置100のサイズ情報部135は、ボードサイズを検討する処理を行う(S901)。
サイズ情報部135は、ボード表示部202の大きさに関するサイズ情報を設定する演算処理を行う。ボード表示部202は、後述する図面情報が表示される表示面であり、ハーネス用デジタルボード201におけるワイヤハーネス500を作成する際に電線501が置かれる配置面でもある。
サイズ情報が設定されると、設計支援装置100の製造用情報部137は、図面情報を含む製造用情報を作成する処理を行う(S902)。図面情報は、ハーネス用デジタルボード201のボード表示部202に表示される情報である。
図面情報により表示されるワイヤハーネス500は、ワイヤハーネス500の長さ方向において、実物のワイヤハーネス500と同じ長さ(実寸大または1/1スケール)で表示される。
ワイヤハーネス500の径方向または幅方向については、実物のワイヤハーネス500と同じ太さ、または、同じ径でボード表示部202に表示されてもよい。この場合には、ワイヤハーネス500が、どの程度の太さのケーブルから構成されるか視覚的に認識することが可能となる。
また、同じ太さ、または、同じ径で表示されない場合と比較して、ワイヤハーネス500を製作する際に、ボード表示部202上に配置した電線501の本数が多すぎること、または、少なすぎることに作業者が気付きやすくなる。その結果、ワイヤハーネス500を製作する際の作業ミスを低減しやすくなる。
その一方で、ワイヤハーネス500の径方向または幅方向について、実物のワイヤハーネス500に基づかない大きさの表示であってもよい。この場合は特に、ボード表示部202に表示されるすべての幹線511および枝線513における径方向(幅方向)の大きさを同一にすると、図面情報の作成が容易なる。
表示されるワイヤハーネス500の太さD2が大きく表示される場合は、ボード表示部202に電線501を配置しても、表示されたワイヤハーネス500が配置した電線501に隠れにくくなる。そのため、ワイヤハーネス500を製作する際の作業性を向上させやすくなる。
但し、サイズ情報で定められた大きさの枠内にワイヤハーネス500を表示するために、幹線511や、枝線513の形状が変形される。なお、複数のワイヤハーネス500が同時にボード表示部202に表示される場合もある。
製造用情報が作成されると、設計支援装置100のゲージ情報部139は、公差ゲージ631の情報であるゲージ情報を作成する演算処理を行う。ゲージ情報は、ボード表示部202に公差ゲージ631を表示させる情報である。作成されたゲージ情報は図面情報に含まれる。
公差ゲージ631は、図7に示すように、電線501をハーネス用デジタルボード201のボード表示部202に配置した際に、当該電線501の一方の端部である起点および他方の端部である終点が配置される位置の許容範囲を表すものである。公差ゲージ631を表示する位置は、ゲージ情報部139により指定されてもよいし、作業者が表示する位置を変更または指定してもよい。
本実施形態では、公差ゲージ631が所定のピッチの枠で構成された格子として表示される例に適用して説明する。所定のピッチとしては5mmピッチを例示することができる。図7に示す公差ゲージ631は、プラス公差およびマイナス公差を表示している。この他に、プラス公差のみ、または、マイナス公差のみを表示させてもよい。
また、公差ゲージ631の表示態様は、公差範囲が明確になればよく、本実施形態の公差ゲージ631のように格子としての表示態様に限定されるものではない。例えば、線分の組み合わせであってもよいし、格子の外枠である大枠のみの表示態様であってもよい。
製造用情報が作成されると、設計支援装置100はアウトプット情報の作成処理を行う(S903)。アウトプット情報は、製造用情報に基づいて作成される情報である。アウトプット情報には、図面情報から作成されたCADデータおよび各種の情報端末で図面情報を表示可能な電子データ(例えば、PDF(Portable Document Format)と、材料表情報と、製造用の配線情報とが含まれる。
アウトプット情報が作成されると、設計支援装置100はアウトプット情報の出力処理を行う(S904)。作成されたアウトプット情報は、製造支援装置200が設けられた生産拠点に配信される。
図19に示すハーネスボード図面作成の処理が終了すると、設計支援装置100は、製造レシピの自動作成および、作成した製造レシピと配線情報とが整合するか確認の処理を行う(S1000)。まず、設計支援装置100は、図20に示すように、製造レシピのフォーマットを取得する処理を行う(S1001)。
次いで設計支援装置100は、編集前後の配線情報を取得する処理を行い(S1002)、編集前後の配線情報を比較する処理を行う(S1003)。設計支援装置100は、比較の結果に基づいて、編集前後の配線情報が一致しているか否かを判定する処理を行う(S1004:比較ステップ)。
編集前後の配線情報が一致していると判定された場合(YESの場合)には、設計支援装置100のレシピ作成部141は、配線情報に基づいて製造レシピを作成する処理を行う(S1005:製造レシピ作成ステップ)。
なお、編集前後の配線が一致しているか否かの判定処理(S1004)、および、製造レシピを作成する処理(S1005)は、上述のようにS1004が先で、S1005が後であってもよいし、S1005が先で、S1004が後であってもよい。
製造レシピが作成されると、設計支援装置100は材料表情報(「BOM」とも表記する。)を作成する処理を行う(S1006)。ここで材料表情報は、ワイヤハーネス500の生産に必要な電線501やコネクタ502など部材準備に用いられる情報である。製造レシピおよび材料表情報が作成されると設計支援装置100は、製造レシピおよび材料表情報を記憶するとともに、出力する処理を行う(S1007)。
S1004の判定処理において、編集前後の配線情報が一致していないと判定された場合(NOの場合)には、設計支援装置100は、エラーを表示する処理を行う(S1008)。その後、処理がキャンセルされる。
図20に示すレシピの確認処理が終了すると、トータル支援システム1は、図9に戻り、ワイヤハーネス製造の処理を行う(S1100:製造支援ステップ)。
トータル支援システム1の製造支援装置200は、ワイヤハーネス製造の処理として以下に説明する処理を行う。まず、図21に示すように、製造支援装置200の制御用コンピュータ211は、配信されたアウトプット情報に基づいて、ワイヤハーネス500の製作準備であるセットアップ処理を行う(S1101)。
セットアップ処理が終了すると、制御用コンピュータ211は、ワイヤハーネス500の製作処理を行う(S1102)。製作処理において制御用コンピュータ211は、ワイヤハーネス500の製作工程に応じた図面情報、ゲージ情報、および識別子をボード表示部202に表示する処理を行う。
ゲージ情報により表示される公差ゲージ631は、制御用コンピュータ211によりボード表示部202上の所定位置に表示される。具体的には、電線501の一方の端部である起点、および、他方の端部である終点が配置される位置の近傍に表示される。
制御用コンピュータ211は、読み取り部231が読み取った識別子の情報を取得し、ワイヤハーネス500を特定する情報、製造日時、製造場所などの情報とともにデータサーバ221に記憶させる処理を行う。なお、読み取り部231が読み取る識別子としては、電線501や、電線501に取り付けられるコネクタ502を特定する情報を有するものなどを例示することができる。
さらに制御用コンピュータ211は、識別子の情報の取得に応じて、電線切断機241および印刷機251を制御し、所望の種類の電線501を所望の長さに切断して供給する。供給された電線501は、ボード表示部202の上に配置されワイヤハーネス500の製作が進められる。
なお、アウトプット情報に含まれる材料表情報は、ワイヤハーネス500の生産に必要な電線501やコネクタ502など部材準備に用いられる。製造用の配線情報は、ワイヤハーネス500の生産時における加工順に合わせて情報の配列が変更されている。製造用の配線情報はレシピとも呼ばれる。
ワイヤハーネス製造の処理が完了すると、作成されたワイヤハーネス500は鉄道車両の車体が生産されている拠点に輸送される。トータル支援システム1の情報処理端末300は、図22に示すように、ワイヤハーネス500の配線を支援する処理を行う(S1200:配線支援ステップ)。
ワイヤハーネス500の配線支援の処理では、まず、設計支援装置100から情報処理端末300へ配線工程情報および配線経路情報の配信が行われる(S1201)。配信された配線工程情報および配線経路情報は、端末記憶部301に記憶される。
情報処理端末300の端末制御部311は、ワイヤハーネス500の配線工程に応じた配線工程情報および配線経路情報を表示させる制御を行う(S1202)。具体的には、ワイヤハーネス500の組み付け順序STEPとして大分類して、作業の順番に従って端末表示部321に表示する制御を行う。
情報処理端末300は、アウトプット情報に含まれる電子データ化された図面情報を端末表示部321に表示することもできる。情報処理端末300は、配線の現場での作業に使用できる。また、配線作業者への教育にも用いることができる。
ワイヤハーネス500の設計において、配線情報が変更されるたびにワイヤハーネス5
00の全体設計が最初から行われている。このように配線情報の変更のたびにワイヤハーネス500の設計をし直すことは煩雑であった。
これに対して上記の構成のトータル支援システム1によれば、旧配線情報と新配線情報との間の差分である差分情報に応じてワイヤハーネス500の設計を行うことにより、新配線情報に基づいて再度設計を繰り返す場合と比較して、ワイヤハーネス500の設計が容易になる。取得した配線情報が、旧配線情報を変更した新配線情報である場合には、変更箇所に相当する差分情報を求め、当該差分情報に関するワイヤハーネス500の設計を行う。そのため、新配線情報に基づいて設計を全体的にやり直す場合と比較して、設計で行われる演算量が少なくなり、ワイヤハーネス500の設計が容易となる。
差分情報をリストデータとして出力することにより、リストデータとして出力しない場合と比較して、差分情報の管理が容易となる。ひいては、ワイヤハーネス500の設計が容易となる。
また、ワイヤハーネス500の重量が重くなりすぎると、ワイヤハーネス500を移動体に配線取付けを行うぎ装作業の際の作業者への負担になっていた。
ワイヤハーネス500の重量を算出することにより、重量を算出しない場合と比較して、ぎ装作業の際の負担軽減が可能なワイヤハーネス500の設計および検討を行いやすくなる。
ワイヤハーネス500の寸法データには、コネクタ502を設けるための余長や、寸法公差、寸法を丸める等の寸法調整が行われている。手動で寸法調整を行った場合、ヒューマンエラーにより調整後のハーネス長さのデータが適切でないおそれがあった。
電線501の寸法データの調整を行う場合に、調整前後の寸法データの変化量を確認することにより、変化量を確認しない場合と比較して、調整後の寸法データの妥当性検討が容易となる。ひいては、上述のようなヒューマンエラーの発生を抑制することも可能となる。
製造レシピに含まれる電線501に関する情報の少なくとも一部と、当該電線501に係る配線情報の少なくとも一部を比較することにより、比較しない場合と比較して、製造レシピに従って作成されるワイヤハーネス500が配線情報を満たしているか検証を行いやすくなる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においてワイヤハーネス500が配線される対象は、自動車の車体や、航空機の機体や、船舶の船体などであってもよく、鉄道車両に限られるものではない。