JP6886833B2 - 木質由来固体酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、木質原料から出発して製造するスルホン酸系の木質由来固体酸の製造方法に関する。
硫酸は高い活性を有するため、炭化水素化合物を反応させる際の触媒としても広く利用される。例えば、遊離高級脂肪酸とアルコールとを反応させて、高級脂肪酸エステルを得るエステル化反応の促進、セルロース等の糖鎖から単糖への加水分解反応の促進、その他、炭化水素燃料を合成するアルキル化反応の促進等の用途である。
硫酸は触媒として各種の反応促進に寄与した後、中和、洗浄され、その都度消費されていた。硫酸は液体であるため回収は容易ではない。回収処理と新規投入との経費差から、現状では使い捨てが主流である。しかし、使用済みの硫酸の中和、洗浄に加え、環境基準に準拠した排水処理までを考慮すると、この処理負担は大きい。このことから、触媒として連続使用に耐えうるとともに、反応後の分離、回収に容易なより利便性の高い触媒が求められるようになってきた。
そのような触媒として固体酸が挙げられる。例えば、硫酸処理を施したジルコニア、PTFEにスルホン酸基(スルホ基)を導入したフッ素樹脂がある。前記のジルコニアの場合、単位重量あたりのスルホ基濃度が低いため、触媒活性の低さが欠点である。また、前記のフッ素樹脂に関しては、熱に弱いことから適用できる反応種が限られている問題がある。
そこで、十分な触媒活性と耐熱性も併せ持つ固体酸として、炭素系の固体酸が提案された(特許文献1、特許文献2等参照)。例えば、特許文献1,2では、固体酸は、多環式芳香族炭化水素を濃硫酸中で加熱処理することにより得られる。その後、安価に調達可能なオガ屑(オガコ)等の木質を炭素系原料として使用し、固体酸を製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。
特許文献3に開示の原料を用いた固体酸は高い触媒活性を有し、量産化に優れた方法であり価格面でも有望視されている。ただし、加工の途中、主にスルホン酸基を導入するスルホン化の段階で粉末化しやすくなる場合がある。そこで、一定の形状保持を可能とした成形固体酸が提案されている(特許文献4参照)。このように、木質を原料とした固体酸製造は大きく進展している。特に、バイオマス資源の有効活用の観点からも望ましい。
しかしながら、原料となる木質における炭素源は、セルロース、リグニン等の複雑な構造の化合物である。木質の炭化は、多環式芳香族炭化水素の炭化とは異なり炭化の進行の制御が困難であった。それゆえ、木質の炭化処理により得られる炭化物の安定化が課題となっていた。炭素源となる炭化物の品質安定化はスルホン酸基の導入量に影響を与える。結果として、固体酸の触媒性能が炭化物により左右される。
そこで、再生可能なバイオマス資源としての木質を固体酸の原料として有効に活用し、さらに、スルホン酸基の導入に際しての炭化物の品質の安定化を図る新たな木質由来固体酸の製造方法が求められていた。
特許第4041409号公報 特許第4582546号公報 特許第5528036号公報 特開2015−83298号公報
このような経緯を踏まえ、発明者は、従前の木質原料にスルホン酸基を導入して固体酸を得る工程について鋭意検討を重ねた。そして、スルホン化の前段階の素材の性状の安定化を実現し、安価かつ簡便に木質原料由来の固体酸を得る製法を得るに至った。
本発明は、上記状況に鑑み提案されたものであり、再生可能なバイオマス資源としての木質を固体酸の原料として有効に活用し、かつ、木質の焼成により得られる焼成物の性状安定化を図ることによって、触媒活性に優れた木質由来固体酸の製造方法を提供する。
すなわち、第1の発明は、木質原料を不活性ガス雰囲気下にて200〜350℃で焼成して原料焼成物を得る原料焼成工程と、前記原料焼成物に塩化亜鉛またはリン酸である木質分処理薬品を添加し180〜300℃で加熱して前記原料焼成物に残留する未分解成分が除去された木質分処理焼成物を得る原料焼成物処理工程と、前記木質分処理焼成物にスルホン酸基を導入しスルホン酸基含有固体酸を得るスルホン化工程とを経てスルホン酸基量が1mmol/g以上の前記スルホン酸基含有固体酸を得ることを特徴とする木質由来固体酸の製造方法に係る。
第2の発明は、前記原料焼成工程の後に前記木質分処理焼成物にバインダを添加して木質分処理生成物を得る成形工程が加えられ、前記スルホン化工程において前記木質分処理成形物にスルホン酸基が導入されてスルホン酸基含有固体酸が得られる請求項に記載の木質由来固体酸の製造方法に係る。
第1の発明に係る木質由来固体酸の製造方法によると、木質原料を不活性ガス雰囲気下にて200〜350℃で焼成して原料焼成物を得る原料焼成工程と、前記原料焼成物に塩化亜鉛またはリン酸である木質分処理薬品を添加し180〜300℃で加熱して前記原料焼成物に残留する未分解成分が除去された木質分処理焼成物を得る原料焼成物処理工程と、前記木質分処理焼成物にスルホン酸基を導入しスルホン酸基含有固体酸を得るスルホン化工程とを経てスルホン酸基量が1mmol/g以上の前記スルホン酸基含有固体酸を得るため、再生可能なバイオマス資源としての木質を固体酸の原料として有効に活用できるとともに、木質原料の炭素源が燃焼により炭素骨格を形成し、木質分処理薬品の作用によりセルロース、リグニン等の不純物の溶解、分解、炭化は促進され、木質由来の焼成物の安定化が図られ、スルホン酸基の導入効率の良い炭素骨格が形成されて触媒活性に優れた木質由来固体酸を得ることができる。
第2の発明に係る木質由来固体酸の製造方法によると、第の発明において、記原料焼成工程の後に前記木質分処理焼成物にバインダを添加して木質分処理生成物を得る成形工程が加えられ、前記スルホン化工程において前記木質分処理成形物にスルホン酸基が導入されてスルホン酸基含有固体酸が得られるため、木質原料を用いて原価を抑えるとともに、合成樹脂のバインダ自体も木質原料とともに熱処理してバインダの被覆による触媒性能の劣化を回避できる。さらに形状設計の自由度が高い固体酸の製造方法が確立される。
本発明の木質由来固体酸の製造方法例に係る第1概略工程図である。 本発明の木質由来固体酸の製造方法例に係る第2概略工程図である。
本発明に規定する木質由来固体酸の製造方法について、はじめに図1の第1実施形態の概略工程図とともに順に説明する。本発明の木質由来固体酸の出発原料は木質原料Mである。木質原料Mは、木材の製材、加工時に生じるオガコ(または大鋸屑、鉋屑等)、廃材、間伐材、廃竹、伐採竹、ヤシ殻、コーヒー豆の搾りかす等のセルロース分に富む木質の植物原料である。木質原料Mの形態は特段限定されないものの、より好ましくは焼成の効率面から粉砕される(木質原料粉末)。
オガコや廃材等は粉砕後、粉砕粒子の大きさは篩別等により揃えられる。また、木質原料(木質原料粉末)は予め乾燥され、石や金属片等の異物が混入していないことも事前に検査される。このように、木質原料が使用されるため、再生可能なバイオマス資源としての木質は固体酸の原料として有効に活用される。
木質原料M(木質原料粉末)は焼成され、原料焼成物が得られる(S10:「原料焼成工程」)。木質原料Mの焼成により炭化が進む。原料焼成工程における木質原料Mの焼成の温度は200ないし350℃、好ましくは250ないし350℃の低温焼成である。また、原料焼成工程における木質原料Mの焼成は、窒素、炭酸ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下にて行われる。
木質原料に対する焼成は、炭素骨格を形成し、以降の薬品処理において原料焼成物中に残留する不純物(セルロース、リグニン)へ作用させることを目的とする。スルホン酸基の導入に好ましい炭素骨格の条件とは、炭化により木質原料に由来する炭素骨格が得られ、しかもその表面に適度に官能基が残されていることである。400℃を越える温度で焼成して炭化が進むと、グラフェンシート様の構造が多くなる。その結果、後出のスルホン酸基の炭素骨格への導入効率が低下するためである。焼成温度が200℃を下回ると、焼成が低温過ぎるため木質の炭化自体が進行しない。200℃以下で焼成を行い得た焼成物は、事後に行う薬品の作用を制御できず、分解、炭化が進みすぎてしまい、スルホン酸基の導入に好ましい炭素骨格が得られない。従って、適切な焼成の温度は前述の範囲となる。
加えて、焼成時に酸素が存在すると、木質原料の炭素源が燃焼により消耗されて原料焼成物の収率が低下する。そのため、不活性ガス雰囲気下であることが必須である。後記の実施例に開示するように、焼成及び炭化は不活性ガスの供給可能であり、温度制御が容易な電気炉等で行われる。なお、必要により原料焼成物は篩別により、粒子の大きさが揃えられる。
木質原料Mの焼成及び炭化を経て生じた原料焼成物に対し、木質分処理薬品が添加されるとともに加熱され、木質分処理焼成物が得られる(S20:「原料焼成物処理工程」)。木質原料は、天然物であり、セルロース、リグニン等が主成分である。ところが、前出の原料焼成工程のとおり、焼成温度は200ないし350℃である。この温度では木質原料に含有されるセルロース、リグニン等の成分の熱分解は不十分であり、未分解成分の残留も多い。セルロース、リグニン等の未分解成分が残存する場合、後出のスルホン酸基の導入に用いるスルホン化剤に溶出してしまう。すると、スルホン酸基含有固体酸との分離が困難となり、木質由来固体酸として回収ができない。さらに、回収したスルホン化剤の純度は低下し、スルホン化剤の再利用に支障を来たす。
そこで、原料焼成物に残留するセルロース、リグニン等の未分解成分は木質分処理薬品により原料焼成物中から除去される。木質分処理薬品には、木質原料に対し脱水性、侵食性を有する薬品が使用される。例えば、塩化亜鉛、各種のリン酸、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム、または硫化カリウム等が挙げられる。後述の実施例においては原料焼成物処理工程時の処理温度が低温で行われることを鑑み、不純物の除去効率を勘案して塩化亜鉛とリン酸の使用とした。木質分処理薬品の作用によりセルロース、リグニン等の不純物は溶解、分解、炭化される。従って、原料焼成物中の残留不純物は低減されてより清浄な木質分処理焼成物が得られる。
木質分処理薬品による溶解、分解、炭化の効率の観点から、原料焼成物処理工程において原料焼成物は木質分処理薬品とともに150ないし300℃、好ましくは200ないし300℃に加熱され、溶解、分解、炭化は進行する。処理時の温度が150℃を下回る場合、所望の分解、炭化を得るまでの時間が長くなる。また、分解、炭化の効率も悪くなる。逆に処理時の温度が300℃を上回る場合、高温ゆえに原料焼成物の炭化が進みすぎてしまい好ましくない。従って、スルホン酸基の導入に好ましい炭素骨格を温存させる点から、前掲の温度範囲が望ましい。
生じた木質分処理焼成物は洗浄される(S30:「焼成物精製工程」)。洗浄に際しては、水洗(温水、熱水)、塩酸等の酸洗浄が適宜行われ、木質分処理焼成物中の木質分処理薬品が除去される。焼成物精製工程は選択的ではあるものの、加えることが望ましい。
木質分処理焼成物に対してスルホン酸基が導入されてスルホン酸基含有固体酸が得られる(S50:「スルホン化工程」)。スルホン酸基(スルホ基)は「−SO2(OH)」として表される酸性の官能基である。スルホン酸基の導入とは、濃硫酸、発煙硫酸、またはクロロスルホン酸等のスルホン化剤と木質分処理焼成物との反応により、木質分処理焼成物の炭素骨格にスルホン酸基が付加される。
従前のスルホン化の工程によると、木質を焼成、炭化した原料焼成物にスルホン化剤が添加され、原料焼成物にスルホン酸基が導入される。その後、反応に用いたスルホン化剤は回収される。そして、新たな原料焼成物に先に回収されたスルホン化剤が添加されスルホン基導入の反応に供される。このように、スルホン化剤は再利用される。しかしながら、原料焼成物については、グラフェンシート様の構造化を回避しつつスルホン酸基の導入効率の向上を図るため、否応無く活性炭製造の焼成、炭化温度よりも低温度とする必要がある。それゆえ、セルロース、リグニン等の不純物の残留が多くなり、不純物はスルホン化剤に溶解してしまう。結果、原料焼成物の形状維持ができず、スルホン剤との分離の困難さから回収は容易ではない。回収できたとしてもスルホン化剤の純度の低いため、再利用できる回数は少なくなる。
本発明においては、木質分処理薬品を添加する原料処理工程(S20)が加えられる。木質分処理薬品として用いる塩化亜鉛またはリン酸は、前述のとおり、木質に由来する焼成物(原料焼成物)に残留するセルロース、リグニン等の不純物を溶解、分解、炭化する目的である。このため、低い焼成温度では残留の多いセルロース、リグニン等の不純物の除去が効果的となり、スルホン化工程の前段階の原料の清浄度は高められる。
それゆえ、木質原料に由来の原料焼成物のグラフェンシート様の構造化を抑制してスルホン酸基の導入効率を高めるとともに、当該原料焼成物中のセルロース、リグニン等の不純物を効率良く除去可能となる。結果として、発煙硫酸等のスルホン化剤の再利用回数は増して、スルホン酸基含有固体酸の製造経費は軽減可能となる。
一般的に、塩化亜鉛またはリン酸は、活性炭製造の賦活処理の賦活剤の一種として使用される。この作用は焼成、炭化を終えた後の細孔の発達を目的とする。これに対し、本発明の木質分処理薬品として用いる塩化亜鉛またはリン酸は、前述のとおり、木質に由来するセルロース、リグニン等の不純物の溶解、分解、炭化を目的とする。
木質分処理焼成物に対するスルホン酸基の導入条件は、概ね常温(室温)から230℃の温度域である。スルホン化剤の種類に依存するものの、高温度域ではスルホン化剤自体の酸化力作用等により木質分処理焼成物が分解してしまう。低温度域についての制限は無い。しかしながら、70ないし100℃前後に加熱することにより反応性が高まり、スルホン酸基含有固体酸の生成が促進する。
生成されたスルホン酸基含有固体酸は洗浄される(S60:「固体酸精製工程」)。洗浄に際しては、水洗(温水、熱水)が適宜行われ、スルホン酸基含有固体酸中の余剰のスルホン化剤は除去される。固体酸精製工程は選択的ではあるものの、加えることが望ましい。併せて、篩別等によるスルホン酸基含有固体酸の大きさは揃えられる。以上、一連の工程を経て「木質由来固体酸SA1」は得られる。
でき上がるスルホン酸基含有固体酸(木質由来固体酸SA1及び後出のSA2(図2参照))の単位重量当たりのスルホン酸基量の多少は、触媒活性の高低の指標となり得る。このため、当該スルホン酸基含有固体酸の性能を評価する上で重視される。そこで、でき上がるスルホン酸基含有固体酸(木質由来固体酸SA1及び後出のSA2(図2参照))の単位重量当たりのスルホン酸基量は、1mmol/g以上、好ましくは1.5mmol/g以上、より好ましくは2.0mmol/g以上と考えられる。スルホン基量は元素分析により硫黄の量から算出される。
後記の実施例から明らかであるように、スルホン酸基含有固体酸のスルホン酸基量1mmol/g未満では相対的に触媒反応性が乏しい傾向にある。反応性を加味してこのスルホン酸基量は多いほどよい。しかし、グラフェンシート様の構造や表面官能基等の要因による制約を受けることから、スルホン酸基量の上限はおおよそ5.0mmol/gと考えられている。よって、前記のとおり単位重量当たりのスルホン酸基量の範囲が導き出される。
次に、図2の第2実施形態の概略工程図とともに本発明に規定する木質由来固体酸SA2の製造方法を説明する。第2実施形態において、木質原料Mから原料焼成工程(S10)、原料焼成物処理工程(S20)、焼成物精製工程(S30)に至るまでは前述の第1実施形態と同様であり、木質原料Mから、順に原料焼成物、木質分処理焼成物が得られる。
そして、原料焼成物処理工程(S20)、好ましくは焼成物精製工程(S30)の後に、木質分処理焼成物にバインダが添加され、所定形状の木質分処理成形物が得られる(S40:「成形工程」)。具体的には、木質分処理焼成物とバインダは所定量ずつ計量され、公知のニーダーやブレンダー等の混練機により双方とも十分に混練され、混練物が得られる。
バインダは一般的に公知の合成樹脂から選択される。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、またはポリウレタン樹脂等の樹脂が挙げられる。スルホン化剤への耐性を勘案すると、後記実施例に開示のレゾール型のフェノール樹脂が好ましい。
バインダの形態は粉末状、液状の適宜である。粉末状のバインダの場合、適量の水分等とともにバインダと木質分処理焼成物は混練される。あるいは、分散液状(ディスパージョン)のバインダを使用することもできる。分散液状のバインダは、樹脂の微細粒子が水等の液体に分散しているコロイド状の溶液である。当該溶液には分散液に加え懸濁液も含まれる。
木質分処理成形物にバインダを添加して成形する際の形状に制約はなく、例えば、球状(丸薬状)、錠剤状(円盤状)、ペレット状(円筒状)等である。球状では造粒機を用いた球形化であり、錠剤状では打錠機が用いられ、ペレット状ではペレタイザー等の使用となる。木質分処理成形物は以降にスルホン化を控えているため、極端に大きすぎる場合には形状維持が容易ではない。成形物が大きくなると表面積は減少し触媒活性も低下する。これらを勘案して、概ね1mmないし15mmの大きさが妥当である。後記実施例では、直径約2mm、長さ約10mmの円筒形のペレット状とした。
続くスルホン化工程(S50)のスルホン化剤の反応により、前述の成形工程(S40)を経て得られる木質分処理成形物にスルホン酸基が導入される。そして、固体酸精製工程(S60)において定形物のスルホン酸基含有固体酸は洗浄される。第2実施形態の製造工程中のスルホン化工程(S50)及び固体酸精製工程(S60)は第1実施形態と同様の条件下にて行われる。
第2実施形態の工程では、木質由来固体酸の製造方法に成形工程(S40)が加えられるため、最終的に完成するスルホン酸基含有固体酸は、所定形状の定形物となる(木質由来固体酸SA2)。このようにすると、触媒等の反応系からの回収が容易となり使用時の利便性は大きく向上する。加えて、第2実施形態の工程から製造される定形物のスルホン酸基含有固体酸は、いったんでき上がった粉末状のスルホン酸基含有固体酸をバインダにより結着した定形物ではない。従って、固体酸表面のスルホン酸基がバインダにより被覆されて、スルホン酸基の表面露出量が減少することはない。すなわち、第2実施形態により調製されるスルホン酸基含有固体酸は定形物でありながら、触媒活性の維持に効果的となる。
[実施例のスルホン酸基含有固体酸の作製]
〈実施例1〉
木質原料としてベイマツ(米松)のオガコ(大鋸粉)を使用した。オガコを105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥後、4.7mesh(粒径およそ4000μm)以上の木片を除去し、ここから木粉を分取した。木粉を坩堝に入れて電気炉内に置いた。室温から200℃まで1時間かけて昇温し、200℃を60分間維持し焼成し原料焼成物を得た(原料焼成工程)。当該焼成時、窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。
冷却後、電気炉から坩堝を取り出し、原料焼成物を回収した。1Nの塩酸に塩化亜鉛を溶解し濃度65%(w/w)の塩化亜鉛溶液を調製とした(木質分処理薬品の調製)。坩堝へ原料焼成物20gに塩化亜鉛溶液108gを添加して混合し、200℃で1時間加熱して木質分処理焼成物を得た(原料焼成物処理工程)。原料焼成物に対する塩化亜鉛の添加量は、重量換算で3.5重量倍である。木質分処理焼成物を坩堝からガラスビーカーへ回収し、20%に希釈した塩酸を添加して1時間煮沸しながら洗浄した。水分を切り、さらに木質分処理焼成物を100℃の蒸留水で洗浄した(焼成物精製工程)。洗浄後の木質分処理焼成物を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥して回収した。
木質分処理焼成物10gを秤量して500mLの三つ口フラスコ内に投入し、ここに11.3%発煙硫酸100mLを加え、80℃で10時間加熱しスルホン酸基を導入してスルホン酸基含有固体酸を得た(スルホン化工程)。その後、100℃の蒸留水により繰り返し洗浄し、蒸留水中の硫酸イオンが元素分析の検出限界以下になるまで洗浄を繰り返し(固体酸精製工程)、実施例1のスルホン酸基含有固体酸を得た。
〈実施例2〉
実施例2は、実施例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を250℃とした。それ以外の条件は実施例1と共通とした。
〈実施例3〉
実施例3は、実施例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を300℃とした。また、原料焼成物処理工程中の原料焼成物に対する塩化亜鉛の添加量は、重量換算で1.0重量倍とした。それ以外の条件は実施例1と共通とした。
〈実施例4〉
実施例4は、実施例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を300℃とした。また、原料焼成物処理工程中の加熱温度を180℃とした。それ以外の条件は実施例1と共通とした。
〈実施例5〉
実施例5は、実施例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を300℃とした。それ以外の条件は実施例1と共通とした。
〈実施例6〉
実施例6は、実施例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を300℃とした。また、原料焼成物処理工程中の加熱温度を300℃とした。それ以外の条件は実施例1と共通とした。
〈実施例7〉
実施例7は、実施例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を330℃とした。それ以外の条件は実施例1と共通とした。
〈実施例8〉
実施例8は、実施例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を350℃とした。また、原料焼成物処理工程中の加熱温度を300℃とした。それ以外の条件は実施例1と共通とした。
〈実施例9〉
実施例9においては、実施例1と共通の木質原料を使用し、同条件により得た木粉を坩堝に入れて電気炉内に置いた。室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃を60分間維持し焼成し原料焼成物を得た。当該焼成時、窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。
冷却後、電気炉から坩堝を取り出し、原料焼成物を回収した。実施例9では、実施例1の塩化亜鉛溶液に代えてリン酸(85%)を木質分処理薬品として使用した。坩堝へ原料焼成物20gにリン酸83gを添加して混合し、200℃で1時間加熱して木質分処理焼成物を得た。原料焼成物に対するリン酸の添加量は、重量換算で3.5重量倍である。木質分処理焼成物を坩堝からガラスビーカーへ回収し、100℃の蒸留水中にて煮沸しながら洗浄した。水分を切り、さらに木質分処理焼成物を100℃の蒸留水で洗浄した。洗浄後の木質分処理焼成物を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥して回収した。その後のスルホン化工程及び固体酸精製工程は実施例1と共通とした。
〈実施例10〉
実施例10は、実施例9と同様の工程により木質分処理薬品としてリン酸を使用し、スルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、原料焼成工程中の焼成温度を300℃とした。それ以外の条件は実施例9と共通とした。
〈実施例11〉
実施例11においては、実施例1と共通の木質原料を使用し、同条件により得た木粉を坩堝に入れて電気炉内に置いた。室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃を60分間維持し焼成し原料焼成物を得た(原料焼成工程)。当該焼成時、窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。冷却後、電気炉から坩堝を取り出し、原料焼成物を回収した。実施例1と共通の塩化亜鉛溶液を調製し、坩堝へ原料焼成物20gと塩化亜鉛溶液108gを添加して混合し、200℃で1時間加熱して木質分処理焼成物を得た(原料焼成物処理工程)。原料焼成物に対する塩化亜鉛の添加量は、重量換算で3.5重量倍である。木質分処理焼成物を坩堝からガラスビーカーへ回収し、20%に希釈した塩酸を添加して1時間煮沸しながら洗浄した。水分を切り、さらに木質分処理焼成物を100℃の蒸留水で洗浄した(焼成物精製工程)。洗浄後の木質分処理焼成物を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥して回収した。
原料焼成物処理工程後(つまり、焼成物精製工程後)、木質分処理焼成物にバインダ(レゾール型フェノール樹脂)を適量の水とともに添加、混練した。そして、当該混練物をペレタイザーに投入して直径2mm、全長10mmの円筒形ペレット形状の木質分処理成形物を得た(成形工程)。バインダの添加量は、木質分処理焼成物重量の40重量%(重量換算)とした。
木質分処理成形物10gを秤量して500mLの三つ口フラスコ内に投入し、ここに11.3%発煙硫酸100mLを加え、80℃で10時間加熱しスルホン酸基を導入してスルホン酸基含有固体酸を得た(スルホン化工程)。その後、100℃の蒸留水により繰り返し洗浄し、蒸留水中の硫酸イオンが元素分析の検出限界以下になるまで洗浄を繰り返し(固体酸精製工程)、実施例11のスルホン酸基含有固体酸を得た。
[比較例のスルホン酸基含有固体酸の作製]
〈比較例1〉
実施例1と共通の木質原料となるオガコ20gに、実施例1と共通の塩化亜鉛溶液108gを添加して混合し、この混合物を坩堝に入れ電気炉内に置いた。室温から200℃まで1時間かけて昇温し、200℃を60分間維持し焼成し焼成物を得た。焼成物に対する塩化亜鉛の添加量は、重量換算で3.5重量倍である。当該焼成時、窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。冷却後、電気炉から坩堝を取り出して焼成物を回収し、20%に希釈した塩酸200mlを添加して1時間煮沸しながら洗浄した。水分を切り、さらに100℃の蒸留水により洗浄した。洗浄後の焼成物を105±5℃に保った乾燥機内で8時間乾燥した。
前記焼成物10gに100mLの11.3%発煙硫酸を加え、80℃で10時間加熱しスルホン酸基を導入してスルホン酸基含有固体酸を得た。その後、100℃の蒸留水により繰り返し洗浄し、蒸留水中の硫酸イオンが元素分析の検出限界以下になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、スルホン酸基含有固体酸を十分に余剰の水分を切り、比較例1のスルホン酸基含有固体酸を得た。
〈比較例2〉
比較例2は、比較例1と同様の工程によりスルホン酸基含有固体酸を調製した。ただし、オガコと塩化亜鉛溶液を混合後の加熱温度を300℃に変更した。その他の条件は全て比較例1と共通として、比較例2のスルホン酸基含有固体酸を得た。
〈比較例3〉
実施例1と共通の木質原料となるオガコ20gを室温から200℃まで1時間かけて昇温し、200℃を60分間維持し焼成し焼成物を得た。当該焼成時、窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。焼成物10gに100mLの11.3%発煙硫酸を加え、80℃で10時間加熱した。しかしながら、スルホン化の工程中に焼成物は崩壊してしまい、反応系から回収不能となったため、この時点で処理を打ち切った。
〈比較例4〉
比較例4は、比較例3におけるオガコの焼成温度を300℃に変更した。その他の条件を全て比較例3と共通とした。しかしながら、比較例4もスルホン化の工程中に焼成物は崩壊してしまい、反応系から回収不能となったため、この時点で処理を打ち切った。
〈比較例5〉
実施例1と共通の木質原料となるオガコ20gを室温から200℃まで1時間かけて昇温し、200℃を60分間維持し焼成し焼成物を得た。当該焼成時、窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。冷却後、電気炉から坩堝を取り出し、焼成物を回収した。得られた焼成物に対し、再度200℃まで1時間かけて昇温し、200℃を60分間維持して焼成し焼成物を得た(2回焼成)。当該焼成時も窒素ガスを供給して不活性ガス雰囲気下とした。2回焼成を経た焼成物10gに100mLの11.3%発煙硫酸を加え、80℃で10時間加熱した。しかしながら、スルホン化の工程中に焼成物は崩壊してしまい、反応系から回収不能となったため、この時点で処理を打ち切った。
〈比較例6〉
比較例6は、比較例5におけるオガコの焼成温度を300℃に変更した。また、再度の焼成の際の焼成温度を300℃とした。その他の条件を全て比較例5と共通とした。しかしながら、比較例4もスルホン化の工程中に焼成物は崩壊してしまい、反応系から回収不能となったため、この時点で処理を打ち切った。
[物性測定]
〈硫黄含有量とスルホン酸基量の測定〉
はじめに実施例及び比較例のスルホン酸基含有固体酸を100℃に加熱して乾燥した。それぞれに含まれる元素組成について、自動燃焼イオンクロマトグラフ:DIONEX製ICS−1000、燃焼装置:株式会社三菱化学アナリテック製AQF−100、吸収装置:株式会社三菱化学アナリテック製GA−100、送水ユニット:株式会社三菱化学アナリテック製WS−100、燃焼温度1000℃)により分析した。得られた硫黄分(mmol/g)は、スルホン酸基と等価であるとして、単位重量当たりのスルホン酸基含有固体酸におけるスルホン酸基量(mmol/g)を求めた。
[触媒活性の測定]
〈加水分解反応の測定〉
はじめに実施例及び比較例のスルホン酸基含有固体酸を100℃に加熱して乾燥した。サンプル瓶にスルホン酸基含有固体酸0.3gを分取し、ここにセロビオース0.36g、水2.1mLを添加して90℃の温度を維持しながら60分間反応させた。反応後冷却して水6.9mLを添加しシリンジフィルターにより濾過した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(株式会社島津製作所製,RID−10A)、カラム(BIO−RAD社製,品名:AminaxHPX−87Hカラム)を使用し、濾過液を当該HPLCにて測定し、グルコース等の単糖類のピーク面積比よりセロビオースから分解されて生成した糖類量を求めた。そして、1g固体酸当たりの1時間の反応による生成量(μmol)に換算した(μmol・g-1・h-1)。
〈エステル化反応の測定〉
はじめに実施例及び比較例のスルホン酸基含有固体酸を100℃に加熱して乾燥した。スルホン酸基含有固体酸0.2gをフラスコに分取して150℃で1時間、真空乾燥(0.4Pa以下)した。真空乾燥を終えたスルホン酸基含有固体酸にエタノール58.5mL(1.0mol)、酢酸5.742mL(0.1mol)を添加し、70℃の温度を維持しながら60分間反応させた。反応後冷却してシリンジフィルターにより濾過した。濾液中に含まれる酢酸エチルの生成量をガスクロマトグラフィー(GC)(株式会社島津製作所製,GC−2014 FID−ガスクロマトグラフィー)、カラム(アジレント・テクノロジー株式会社製,J&W GCカラム DB−WAXキャピラリーカラム)を使用して求めた。そして、1g固体酸当たりの1分間の反応による生成量(mmol)に換算した(mmol・g-1・min-1)。
各実施例及び比較例のとおり作製したスルホン酸基含有固体酸の結果は表1ないし表5である。表の上から順に、木質原料に対する焼成、炭化処理条件の焼成温度(℃)と添加物(種類または有無)、焼成物処理条件の処理温度(℃)と添加物(種類または有無)、成形条件の形状と添加物(種類または有無)、スルホン化条件におけるスルホン化温度(℃)、スルホン化剤(種類)、硫黄含有量(重量%)、スルホン基量(mmol/g)、及び触媒性能評価の加水分解反応速度(μmol・g-1・h-1)とエステル化反応速度(mmol・g-1・h-1)である。
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[結果,考察]
〈原料焼成工程、原料焼成物処理工程の有無〉
比較例3及び4は木質原料(オガコ)を焼成したのみの処理である。この場合、焼成温度が200℃、300℃であり通常の活性炭の焼成、炭化温度と比べて明らかに低温度である。そして、続くスルホン化工程において発煙硫酸の腐食作用により分解した。従って、木質原料から活性炭製造よりも低温度域の焼成のみではスルホン酸基含有固体酸を製造することはできない。比較例5及び6は、原料焼成物処理工程より木質分処理薬品の添加を省略した例である。この例からも、木質分処理薬品の添加が無ければ、スルホン酸基含有固体酸を製造することはできない。
〈木質分処理薬品の添加時点〉
比較例1及び2は背景技術にて言及した特許文献3(特許第5528036号公報)に対応する例である。比較例1及び2では、木質原料の段階で木質分処理薬品と混合して、炭化、焼成した。これに対し、各実施例では、はじめに木質原料を活性炭製造よりも低温度域で焼成し、その後、塩化亜鉛またはリン酸の木質分処理薬品を添加して、その後また活性炭製造よりも低温度域で加熱している。比較例1及び2、実施例のいずれもスルホン酸基含有固体酸を製造できた。ただし、実施例側の方が単位重量あたりのスルホン酸基量が多い結果となった。
この点について、比較例1及び2では木質原料に対し薬品を混合しているため、薬品の作用が制御できずに木質原料のグラフェンシート様の構造化が進行し、目的の炭素骨格が得られなかったと考える。実施例側は予め木質原料を低温度域の加熱で炭素骨格を形成することにより炭素骨格の炭化を制御できる。また、実施例側は原料焼成物中に残留する不純物(セルロース、リグニン)に効率よく作用し溶解、分解、炭化した。結果的に、実施例側はスルホン酸基の導入効率の良い炭素骨格を維持でき、スルホン酸基の結合が進んだと考える。
〈原料焼成工程における焼成温度〉
実施例1ないし8の結果より、原料焼成工程における木質原料の焼成温度は200ないし350℃の範囲であった。焼成温度が180℃の場合、低温過ぎであり木質原料がそのまま残存した。それゆえ、原料焼成工程における木質原料の焼成温度の下限は200℃とした。また、焼成温度が400℃を超える場合、木質原料の炭化が過剰となりグラフェンシート様の構造化が進み過ぎとなり、露出する官能基量も減ると考えられる。よって、スルホン酸基の導入も進まず、単位重量当たりの活性の高いスルホン酸基含有固体酸の作製から遠ざかる。従って、原料焼成工程における木質原料の焼成温度は200ないし350℃の範囲とした。
〈原料焼成物処理工程における処理温度〉
原料焼成物処理工程は木質分処理薬品を添加して同薬品の作用により原料焼成物中に残留する不純物を溶解、分解、炭化する工程である。速度反応の理論から高温度ほど好ましいと考えられる。しかしながら、高温度とすると、原料焼成物自体の分解、炭化が進み、スルホン酸基導入の炭素骨格を得ることができない。そのため、原料焼成物中に残留する不純物の溶解、分解、炭化を促進する温度とし、かつ、原料焼成物自体の分解を抑制する必要がある。従って、実施例4、6、8を加味して原料焼成物処理工程における処理温度は150ないし300℃の範囲とした。
〈木質分処理薬品〉
実施例1ないし8及び実施例9と10の結果より、木質分処理薬品には塩化亜鉛とリン酸のいずれもスルホン酸基量、触媒性能において差異は無く、両方とも使用できる。
〈バインダによる成形〉
実施例11は、木質分処理焼成物にバインダを添加して木質分処理成形物とし、これにスルホン酸基を導入して得た定形物のスルホン酸基含有固体酸である。また、比較例1、2と比較しても有意に優れている。実施例11はいったんでき上がった固体酸をバインダにより結着して成形した製法の固体酸ではない。このため、固体酸自体がバインダにより被覆されず、スルホン酸基の露出量は減少せず、良好な触媒活性を維持できる。特に、成形体としての利便性も高まる。
〈スルホ基量の範囲〉
各実施例並びに比較例の触媒反応の結果から勘案すると、下限値は1mmol/g、より好ましくは1.5mmol/gを導くことができる。上限値については高いほど好ましい。しかしながら、熱処理成形体のグラフェンシート様の構造や表面官能基等による制約から、スルホ基量の上限値は概ね5.0mmol/gに収斂すると考えられる。そこで、好適なスルホ基量の範囲は1mmol/g以上、より具体的には、1ないし5.0mmol/gの範囲となる。
本発明の木質由来固体酸の製造方法は、再生可能なバイオマス資源としての木質を固体酸の原料として有効に活用し、さらに、スルホン酸基の導入量を多くして触媒活性を高めることができた。しかも、固体酸の成形物も得ることができる。従って、従前の硫酸の代替として非常に有望である。
M 木質原料(木質原料粉末)
SA1,SA2 木質由来固体酸(スルホン酸基含有固体酸)

Claims (2)

  1. 木質原料を不活性ガス雰囲気下にて200〜350℃で焼成して原料焼成物を得る原料焼成工程と、
    前記原料焼成物に塩化亜鉛またはリン酸である木質分処理薬品を添加し180〜300℃で加熱して前記原料焼成物に残留する未分解成分が除去された木質分処理焼成物を得る原料焼成物処理工程と、
    前記木質分処理焼成物にスルホン酸基を導入しスルホン酸基含有固体酸を得るスルホン化工程とを経て
    スルホン酸基量が1mmol/g以上の前記スルホン酸基含有固体酸を得る
    ことを特徴とする木質由来固体酸の製造方法。
  2. 前記原料焼成工程の後に前記木質分処理焼成物にバインダを添加して木質分処理生成物を得る成形工程が加えられ、前記スルホン化工程において前記木質分処理成形物にスルホン酸基が導入されてスルホン酸基含有固体酸が得られる請求項に記載の木質由来固体酸の製造方法。
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