JP6885206B2 - レーザー磁区制御用方向性電磁鋼板とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザーを照射して磁区制御を行うのに用いる方向性電磁鋼板及びその製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は変圧器の鉄心に用いられる。変圧器は高効率であることと騒音が低いことが求められる。変圧器の騒音の要因には様々なものがあるが、鉄心に用いられる方向性電磁鋼板の磁歪が大きな要因の一つである。磁歪を小さくする方法は、方位集積度の向上、組成の最適化、歪の低減等がある。
一方、方向性電磁鋼板の鉄損を下げるためには、レーザー照射による磁区制御が施されることが一般的である。しかしながら、レーザー照射をすると鋼板にひずみが入ることから磁歪が大きくなり、変圧器の騒音が大きくなるとの問題がある。そのため、レーザーによる磁区制御材では、できるだけ歪を小さくすべく、なるべく小さなレーザパワーで磁区制御し、鉄損と磁歪の両立を図ることが行われている。特に、鋼板表面の性状の影響でレーザパワーが鋼板に入りにくく、磁区制御効果が低い場合には、低鉄損と低騒音が両立できない。
レーザパワーを鋼板に入りやすくする方法として、グラス被膜の性状を制御する方法については従来より種々の取り組みがされてきている。
特許文献1には、レーザー照射による鋼板の歪が均一に入るよう、グラス被膜におけるフォルステライト粒子径の標準偏差が、フォルステライトの平均粒子径の1.0倍以下とするとの方法が示されている。
特許文献2には、グラス被膜の目付量を4.0g/m以上、平均粒径を0.9μm以下とする方法が示されている。
国際公開第2012/001957号 国際公開第2012/001971号
高効率で低騒音の変圧器を実現するためには、低鉄損と低磁歪を高いレベルで実現する方向性電磁鋼板が必要である。これまでに前記のような対策が取られてきているが、低鉄損と低騒音の十分なレベルでの両立は達成できていなかった。
上記の事情に鑑み、本発明は、レーザー照射により磁区制御を行うのに用いる方向性電磁鋼板の鋼板表面に存在するフォルステライトからなるグラス被膜の構造を制御することによって、レーザパワーを過大にすることなく磁区制御効果を高いレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板を提供し、低鉄損と低磁歪を高いレベルで実現した方向性電磁鋼板を実現することを課題とする。
本発明者らは、レーザー磁区制御に用いる方向性電磁鋼板において、レーザー磁区制御効果の高い鋼板の表面性状について、鋭意研究した。その結果、二次再結晶焼鈍における昇温時、特定の温度域の昇温速度と雰囲気を適切に調整することにより、フォルステライトの結晶粒径をレーザーの波長である1μm近傍にし、さらに、フォルステライトの粒径の分布を鋼板の面内で均一にすると、磁区制御効果を高めることができ、そのような方向性電磁鋼板をレーザー磁区制御に用いることによって、低鉄損と低磁歪を高いレベルで実現した方向性電磁鋼板が得られることを見出した。
本発明は上記の知見に基づきなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
(1)Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する鋼板と、上記鋼板の両面に設けられたグラス被膜と、両面の上記グラス被膜の表面にそれぞれ設けられた張力コーティングを備え、上記グラス被膜は、結晶質のフォルステライトを70質量%以上含み、上記フォルステライトの平均結晶粒径が0.3〜1.5μmであり、0.5μm以下の粒径をもつフォルステライト粒が鋼板面内で5.0μm以上連続して存在する箇所がないことを特徴とするレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板。
(2)Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する冷延鋼板に、湿水素−不活性ガス雰囲気中で脱炭焼鈍を施す工程、焼鈍分離剤を塗布する工程、仕上げ焼鈍を施す工程、張力コーティングを付与する工程を備え、上記仕上げ焼鈍において、昇温時の雰囲気における酸素ポテンシャルPH2O/PH2を0.19以上0.44以下、300〜600℃での平均昇温速度を8℃/h以下とすることを特徴とするレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)前記焼鈍分離剤に用いる酸化マグネシウムの1000℃における灼熱減量が0.1%以上0.5%以下であることを特徴とする前記(2)のレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明よれば低鉄損で磁歪が小さい方向性電磁鋼板を得ることができる。
はじめに、本発明の一実施形態に係るレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板の構成について説明する。
本実施形態に係るレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板は、Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する鋼板の両面にグラス被膜が設けられており、それぞれのグラス被膜の表面には張力コーティングが設けられている。
本実施形態の方向性電磁鋼板は、Siを0.8〜7.0質量%含有する。Siは、電気抵抗を高めて鉄損を低下させる。しかし、Si含有量が7.0質量%を超えていると、冷間圧延が極めて困難となり、冷間圧延時に割れが生じやすくなる。このため、Si含有量は7.0質量%以下とする。冷延性を確保する観点から、Si含有量は4.5質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、Si含有量が0.8質量%未満であると、仕上げ焼鈍時にγ変態が生じ、方向性電磁鋼板の結晶方位が損なわれる。このため、Si含有量の下限は0.8質量%以上とする。仕上げ焼鈍時のγ変態を抑制する観点からは、2.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがさらに好ましい。
一般的に方向性電磁鋼板は、仕上げ焼鈍工程において純化し、Si以外はFe及び不可避的不純物となる鋼板とすることが多い。本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、Si、Fe及び不可避的不純物からなる鋼板としてもよい。また、最終製品の磁性や機械的特性、被膜特性を向上させるために、方向性電磁鋼板における公知の化学成分を含有してもよい。具体的には、質量%で、Mn:0.5%以下、Sn:0.5%以下、P:0.1%以下、Cr:0.5%以下、Cu:0.5%以下を含有してもよい。
方向性電磁鋼板の製品板として得られる一般的な組成は、質量%で、Si:2.5〜3.5%、Mn:0.02〜0.15%、Sn:0.03〜0.12%、P:0.01〜0.04%、Cr:0.02〜0.15%、Cu:0.01〜0.1%を含有し、残部はFe、及び不可避的不純物である。
なお、方向性電磁鋼板の素材である冷延鋼板は、上記のような最終製品の磁性や機械的特性、被膜特性を向上させるために加えられた微量添加物の他、仕上げ焼鈍工程においてインヒビターとして用いる化合物形成元素を含有する。その他、一般的に鋼に含有するC、S、O、Nや、脱酸に用いるAl、不可避的に混入する元素を含有してもよい。
通常、方向性電磁鋼板のグラス被膜は、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して仕上げ焼鈍を施すことにより、結晶質のフォルステライトが主体(概ね、70質量%以上)となり、そのほか、スピネル、MnSなどが含まれる。本発明の方向性電磁鋼板のグラス被膜も同様である。フォルステライト比率はグラス被膜のX線回折によるピーク強度比から算出することができ、X線回折で一般に用いられる組成分析法を適用し求めることができる。
フォルステライトの平均結晶粒径は0.3〜1.5μmとする必要がある。フォルステライトの平均結晶粒径がこの範囲を外れると、磁歪に対する悪影響が著しくなり、磁歪の値が大きくなる。
さらに、フォルステライトの粒径の分布を、鋼板の面内で均一とするために、0.5μm以下の粒径を持つフォルステライト粒が鋼板面内で5.0μm以上連続している箇所がないことが必要である。0.5μm以下の粒径を持つフォルステライト粒が、鋼板面内で5.0μm以上にわたって連続している箇所があると、磁歪の値が大きくなる。
本実施形態の方向性電磁鋼板は、レーザー照射による磁区制御を施すことを前提としている。フォルステライトの結晶粒径を上記のように制御することによって、磁区制御効果を高めることができ、レーザー磁区制御により、低鉄損と低磁歪を高いレベルで実現した方向性電磁鋼板が得られる。
フォルステライト平均粒径や、0.5μm以下の粒径を持つフォルステライト粒が鋼板面内で連続している部分の領域の大きさが磁歪に影響する機構については明確になっていない。本発明者らは、以下のように推定している。
粒径が不適正だと、鋼板に局部的にしかレーザパワーが吸収されない。また、0.5μm以下の粒径を持つフォルステライト粒が鋼板面内で連続している部分の領域の大きさが大きすぎると、レーザパワーの吸収が鋼板の部位によって大きくばらつき、磁歪に不利な応力状態が鋼板内に生じる。
フォルステライトの粒径を算出するための方法としては、レプリカ法を用いることができる。これは、グラス被膜表面のレプリカを作成し、この凹凸を透過型電顕で観察する方法である。本実施形態では、20×20μmの視野を、合計10000μmとなるよう25視野観察し、観察した画像を粒子解析により結晶粒径を計測し、円相当径で粒径を算出した。本発明での粒径は、この円相当径を指すものとする。
平均粒径の算出は、円相当径で0.1μm未満の結晶粒を除いて行う。この理由は、粒径0.1μmを下回ると正確な円相当径が求めにくいためである。ただし、0.5μm以下のフォルステライト粒子が連続する範囲を計測する場合は、0.1μm以下の粒子も含めて範囲を計測した。ここで、0.5μm以下のフォルステライト粒子が連続する範囲の値の定義は、0.5μm以下のフォルステライト粒子が連続する領域の最長の長さである。0.5μm以下のフォルステライト粒子が隣り合って連続する領域は不定形となりうるが、その場合、この範囲の端から端までの距離で最も大きい値を指すものとする。
グラス被膜の表面には、通常リン酸塩、例えばリン酸アルミニウムを主成分とする張力コーティングを備える。このコーティングは鋼板の絶縁性を確保するとともに、鋼板に張力を与えて低鉄損化に資するものである。張力コーティングは方向性電磁鋼板の張力コーティングとして公知のものを施せばよく、その成分は特に限定されるものではない。コーティングの厚さは薄すぎると張力被膜を形成した効果がなく、厚すぎると占積率が悪化するため、厚さの範囲は0.5〜2.0μmの間にするとよい。
次に、本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、前述の組成からなる電磁鋼板素材を、熱延工程、必要に応じた熱延板焼鈍工程、さらに冷延工程を経て最終板厚とした後、湿水素−不活性ガス雰囲気中で脱炭焼鈍後、仕上げ焼鈍を行うことによって製造する。
本実施形態においては、熱間圧延については特に限定せず、直送熱延や、連続熱延などの熱延方法及びスラブ加熱温度によらず、本発明の効果を享受できる。冷間圧延の方法については特に限定せず、二回以上冷延、温間圧延などの冷延方法及び冷延圧下率によらず、本発明の効果を享受できる。
脱炭焼鈍後の鋼板(脱炭焼鈍板)には次工程の仕上げ焼鈍中の二次再結晶を発現するためのインヒビターが含まれている。本発明ではMnS、MnSe、AlN等の公知のインヒビターを利用することがでる。インヒビターをいわゆる後天的インヒビターとして追加して形成する窒化処理(窒化焼鈍)を脱炭焼鈍板に対し施してもよい。この場合は窒素量を100ppmから400ppmの間となるように調整するとよい。
窒化処理の手法、条件については、窒素量を制御することができればいかなる手法、条件でもよく、特に限定はしない。例えば、NH雰囲気ガスを用いたガス窒化を行ってもよい。なお、窒化を行うタイミングは、脱炭焼鈍工程中に行ってもよく、脱炭焼鈍とは別設備を用いて、脱炭焼鈍後に行ってもよい。脱炭焼鈍と同一設備(同一炉)で窒化を行う場合は、炉内を雰囲気毎に区切ることで、脱炭焼鈍直後に窒化焼鈍を行うことができる。
以下、冷延鋼板を得た後の工程について詳述する。
(脱炭焼鈍工程)
通常、脱炭板の表面近傍(鋼板表面からおおむね3μm深さまで)には脱炭工程中に形成されたSiOを主とする酸化物層が存在する。このSiOは後述する仕上げ焼鈍において、焼鈍分離剤に含まれるMgOと反応してフォルステライトからなるグラス被膜を形成する。したがって、密着性の良好なグラス被膜を得るためには脱炭板のSiOの量を制御することが必要である。
すなわち、SiOが少なすぎるとグラス被膜の形成不良となり、被膜の密着性などが損なわれるおそれがある。他方、SiOが多すぎるとグラス被膜が厚くなり、磁気特性に悪影響が出る。このため、通常はフォルステライトを含む鋼板の酸素量が0.22mm厚の板厚換算で、1000〜2000ppmの範囲とするのがよい。ここで規定する酸素量は、後述する鋼板最表面のリン酸塩からなるコーティング層は除いた値である。脱炭焼鈍時に急速加熱をおこなってもよい。
脱炭焼鈍工程における焼鈍温度や焼鈍時間(保持時間)は、常法の手法により施行してよい。生産性の観点からは、脱炭焼鈍工程における焼鈍温度は750〜900℃の範囲が好ましく、保持時間は30〜250秒の範囲とすることが好ましい。
昇温速度は通常の値をとってもよいし、前述のとおり急速加熱を実施してもよい。また、雰囲気については水素−不活性ガス雰囲気とし、酸素ポテンシャルについては脱炭後に炭素が十分に低減され、また酸素量が0.22mm厚の板厚換算で1000ppm程度になるように調整すればよい。脱炭焼鈍の雰囲気には水素は必要だが、不活性ガスとしては窒素のほか、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの混合ガスが使用可能である。このうちコストの面からは窒素を選択するとよい。
(焼鈍分離剤塗布工程)
脱炭焼鈍後、脱炭板上にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して焼鈍分離剤からなる層を形成する。この目的は仕上げ焼鈍中での鋼板同士の焼き付き防止やグラス被膜形成が主なものである。
焼鈍分離剤はMgOを主成分とするが、被膜特性改善、磁気特性改善のための公知の微量添加元素を含むことができる。焼鈍分離剤の塗布方法は、焼鈍分離剤を水に分散させてスラリーとして鋼板に塗布した後に乾燥する方法や、静電塗布法など公知いずれの方法も用いることができる。
焼鈍分離剤の塗布量は、片面あたり3〜10g/mとするとよく、好ましくは5〜7g/mとするとよい。焼鈍分離剤の塗布量が少なすぎると焼鈍時に鋼板が焼きつきやすくなり、一方多すぎるとコイル状に巻き取りにくくなる上に、コスト上昇等の問題が生じるようになる。
焼鈍分離剤に用いる酸化マグネシウムの1000℃における灼熱減量を0.1%以上0.5%以下とすると、鉄損と磁歪をさらに高いレベルで両立することができる。
(仕上げ焼鈍工程)
焼鈍分離剤を塗布した後に、鋼板をコイル状に巻き取って仕上げ焼鈍を実施する。仕上げ焼鈍では、コイルを1200℃程度まで昇温して二次再結晶を生じさせるとともに、インヒビターを鋼中から除去する純化を行う。昇温速度は5℃/hから25℃/hの間にするとよい結果が得られるが、本発明ではとくに300℃から600℃の間の平均昇温速度を8℃/h以下とし、好ましくは、0.3〜8℃/hとするとよい。
仕上げ焼鈍昇温中の雰囲気は水素と不活性ガスの混合ガスを用いる必要があり、酸素ポテンシャルPH2O/PH2を0.01〜0.55とするとよい。本発明では、とくに300℃から600℃の間の酸素ポテンシャルPH2O/PH2は0.19以上0.44以下とする必要がある。上記のように300℃から600℃の間の昇温速度と雰囲気の酸素ポテンシャルを制御する理由は、グラス被膜のフォルステライト粒径を適正な値にするためである。
300℃から600℃の間の昇温速度が高すぎる場合や、酸素ポテンシャルが大きすぎる場合には、フォルステライトの平均粒径が小さくなりすぎ、また、0.5μm以下のフォルステライト粒子が広範に生成されて鋼板面上のフォルステライト粒径のばらつきが場所によって大きくなり、0.5μm以下のフォルステライトが5μm以上の領域にわたって形成されるようになる。
一方、この温度域で昇温速度が低すぎる場合や、酸素ポテンシャルが低すぎる場合には、フォルステライトの鋼板面内での粒径分布は悪化しないが、フォルステライト平均粒径が大きくなりすぎるという問題が生じる。したがって、300℃から600℃の間での平均の昇温速度と雰囲気を、上記の条件とすることが必要である。
仕上げ焼鈍では、インヒビターを鋼中から取り除く純化焼鈍が必要であり、このためには1150℃以上1250℃以下の温度域で10時間以上焼鈍すればよく、この場合の雰囲気は水素100%で酸素ポテンシャルが0.1以下のDry雰囲気とするとよい。
(コーティング付与工程)
仕上げ焼鈍後は、未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、通常リン酸塩、例えばリン酸アルミニウムを主成分とするコーティング処置を施す。このコーティングは鋼板の絶縁性を確保するとともに、鋼板に張力を与えて低鉄損化に資するものである。この膜の厚さは薄すぎると張力被膜を形成した効果がなく、厚すぎると占積率が悪化するため、厚さの範囲は0.5〜2.0μmの間にするとよい。
以上、本実施形態におけるレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板の構成、及び製造方法について説明した。本実施形態におけるレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板は、レーザー照射により磁区制御を実施することによって、鉄損と磁歪を低下させることができる。
レーザー照射の条件は、鉄損と磁歪が両立できる条件で行えばよい。たとえば、単位面積当たりの照射レーザパワーPが1.0から2.0の間になるようにするとよい結果が得られる。Pは以下の式により算出する。
P=P0/(Vc・Pl) ・・・ (1)
P0は元のレーザパワー(W)、Vcはレーザーのスキャン速度(m/s)、Pl照射ピッチ(m)である。ここで、Pが大きすぎると磁歪が悪化し、Pが小さすぎると磁歪は小さくなるが、鉄損改善効果が十分ではなくなる。
[実施例1]
Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、S:0.006質量%、C:0.045質量%、酸可溶解Al:0.022質量%、N:0.005質量%を含んだスラブを素材として公知の方法にて熱間圧延後、熱延板焼鈍を行い、冷間圧延で0.22mmを最終板厚とする冷延鋼板を得た。
得られた冷延板を脱炭して窒化後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を片面6g/mとなるよう塗布した。脱炭条件は、850℃まで20℃/秒で昇温した後、60秒保定して冷却した。脱炭雰囲気は水素−不活性ガス雰囲気は酸素ポテンシャルPHO/PHで0.33とした。焼鈍分離剤の組成は、MgO:100質量部、TiO:5質量部に対し、FeClを塩素で200ppmとなるよう添加した。また、窒化量は200ppmとした。この焼鈍分離剤の灼熱減量は0.3%であった。
得られた鋼板をコイル状に巻き取って、20℃/hで昇温し、1200℃で20時間仕上げ焼鈍した後冷却した。ここで、昇温中の300から600℃の間の昇温速度及び雰囲気を種々に振ってグラス被膜の平均粒径及び0.5μm以下のグラス被膜結晶粒が連続する範囲を変化させた。
なお、800℃までは水素50%を含む窒素雰囲気とし、800℃以上は水素75%を含む窒素雰囲気として、PHO/PHが0.1以下となるよう露点を制御した。1200℃以降は、水素100%として、Dry雰囲気とした。
このようにして得た鋼板にリン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする張力被膜を厚さ1μmとなるよう形成し、照射レーザパワーPが1.5mJ/mmであるレーザーにて磁区制御をおこなった。磁区制御の鋼板長手方向のピッチは5mmである。このようにして得られた鋼板の磁歪及び鉄損を評価した。
磁歪はレーザーによる干渉効果を利用した手法により測定した。試料は幅100mm、長さ500mmの形状とし、励磁条件は1.7T50Hzとし、磁歪振幅の最大値を磁歪量として計測した。鉄損は、磁歪を測定したものと同一形状の試料を用いて、単板磁気測定装置で、励磁条件が1.7T50Hzの値を用いて評価した。
磁歪及び鉄損の良否は、磁歪は0.6×10−6以下、鉄損は0.78W/kg以下のものを良好と判断した。結果を表1に示す。
Figure 0006885206
表1より明らかなように、グラス被膜のフォルステライト含有量が70質量%以上であり、平均粒径を0.3〜1.5μmとし、0.5μm以下の粒径のグラス被膜結晶が連続する部分が5μm以下であると、磁歪及び鉄損が良好であることが分かる。
また、300から600℃までの昇温速度が8℃/時以下1℃/時以上の場合に前述のグラス被膜の平均粒径、及び0.5μm以下の粒径のグラス被膜結晶が連続する部分を5μm以下とすることができることが分かる。
[実施例2]
Si:3.3質量%、Mn:0.1質量%、S:0.006質量%、C:0.045質量%、酸可溶解Al:0.022質量%、N:0.005質量%を含んだスラブを素材として公知の方法にて熱間圧延後、熱延板焼鈍を行い、冷間圧延で0.22mmを最終板厚とする鋼板を得た。
このような冷延板を脱炭して窒化後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を片面6g/mとなるよう塗布した。脱炭条件は、850℃まで20℃/秒で昇温した後、60秒保定して冷却した。脱炭雰囲気は水素−不活性ガス雰囲気はPHO/PHで0.33とした。
焼鈍分離剤の組成は、MgO:100質量部、TiO:5質量部に対し、FeClを塩素で200ppmとなるよう添加した。また、窒化量は200ppmとした。ここで、焼鈍分離材の灼熱減量を種々に振って塗布を実施した。灼熱減量はMgOをあらかじめ熱処理して調整した。
得られた鋼板をコイル状に巻き取って、20℃/hで昇温し、1200℃で20時間仕上げ焼鈍した後冷却した。ここで、昇温中の300から600℃の間の昇温速度を5℃/時とし、また雰囲気を酸素ポテンシャルPHO/PHで0.3とした。なお、800℃までは水素50%を含む窒素雰囲気とし、800℃以上は水素75%を含む窒素雰囲気として、酸素ポテンシャルPHO/PHで0.1以下となるよう露点を制御した。1200℃以降は、水素100%として、Dry雰囲気とした。
このようにして得た鋼板にリン酸アルミニウムとコロイダルシリカを主成分とする張力被膜を厚さ1μmとなるよう形成し、単位面積当たりの照射レーザパワーPを1.5mJ/mmとしたレーザーにて磁区制御をおこなった。なお磁区制御の鋼板長手方向のピッチは5mmである。このようにして得られた鋼板の磁歪及び鉄損を評価した結果を表2に示す。
Figure 0006885206
表2より明らかなように、灼熱減量を0.1%から0.5%にした場合に、とくに良好な磁歪及び鉄損が得られることが分かる。

Claims (3)

  1. Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する鋼板と、
    上記鋼板の両面に設けられたグラス被膜と、
    両面の上記グラス被膜の表面にそれぞれ設けられた張力コーティング
    を備え、
    上記グラス被膜は結晶質のフォルステライトを70質量%以上含み、
    上記グラス被膜中のフォルステライトの平均結晶粒径が0.3〜1.5μmであり、
    0.5μm以下の粒径をもつフォルステライト粒が鋼板面内で連続する領域の最大の長さが5.0μm未満である
    ことを特徴とするレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板。
  2. 請求項1に記載の方向性電磁鋼板を製造する方法であって
    Siを0.8質量%以上7.0質量%以下含有する冷延鋼板に、湿水素−不活性ガス雰囲気中で脱炭焼鈍を施す工程、
    焼鈍分離剤を塗布する工程、
    仕上げ焼鈍を施す工程、
    張力コーティングを付与する工程
    を備え、
    上記仕上げ焼鈍において、
    昇温時の雰囲気における酸素ポテンシャルPH2O/PH2を0.19以上0.44以下、
    300〜600℃での平均昇温速度を8℃/h以下
    とすることを特徴とするレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記焼鈍分離剤に用いる酸化マグネシウムの1000℃における灼熱減量が0.1%以上0.5%以下であることを特徴とする請求項2に記載のレーザー磁区制御用方向性電磁鋼板の製造方法。
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