JP6885051B2 - リング継手 - Google Patents

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Description

本発明は、トンネルの覆工体を構成するセグメントを連結するためのリング継手に関する。
シールド工法を採用してトンネルを構築する場合、切羽の掘進に応じてその後方にて複数のセグメントをトンネル円周方向に接続してセグメントリングを構成し、このセグメントリングをトンネル軸方向に接続して筒状の覆工体を形成する。そして、セグメントリングをトンネル軸方向に接続するにあたり、その接続面には、継手が設けられている。
例えば、特許文献1の従来技術に開示されている継手は、接続されるべき一方のセグメントの接続端面に突設されるピンと、他方のセグメントの接続端面に設けられるピン継手部材を備えている。また、ピン継手部材は、ピンが挿入される開口側が縮径された錘状のケーシングと、ケーシング内に内装された複数のクサビと、複数のクサビを支持するとともに、該クサビに開口側に向かう付勢力を作用させる1つの弾性体とを備えている。
これらは、ケーシング内にピンが挿入されると、ピンを囲うように配置される複数のクサビも、ピンとともにケーシング内を移動しようとするが、クサビは弾性体に支持されているため、弾性体の付勢力によりケーシングの開口側に押し戻されて、ケーシングの内周面とピンの外周面との間に食い込む。これにより、ピンは、複数のクサビを介してケーシングに固定され、引抜けることはない。
特開平09−125882号公報
上記のようなクサビ効果は、ピンをピン継手部材に対して同心となるように挿入した場合に、高い効果を発揮するが、トンネル工事の作業現場において、両者の軸心を合致させることは難しく、ピン継手部材に対してピンが偏心した状態で挿入される事態が生じやすい。この場合、クサビがケーシングとピンとの間で噛み合うことなく遊んでしまい、クサビとしての機能を果たせずピンに引抜けが生じる。
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、メス金具に対してオス金具が偏心して挿入された場合にも、オス金具の引抜けを確実に防止可能な、セグメントのリング継手を提供することである。
かかる目的を達成するため本発明のリング継手は、セグメントのトンネル軸方向に向かい合う端面の一方に埋設されるメス金具と、前記向かい合う端面の他方からトンネル軸方向に突出して設置されるピンボルトを備えるオス金具と、よりなるリング継手であって、前記メス金具が、前記トンネル軸方向に延在する中空部を備える楔ケースと、該楔ケースの中空部に配置される複数の楔金物およびバックアップ材を備え、前記楔ケースの中空部は、前記セグメントの端面側に配置される先端部が、基端部より縮径されて中間部に傾斜面を備え、前記楔金物は、前記中空部に前記ピンボルトが挿入された状態で、該楔金物の外周面が前記傾斜面に接するとともに、該楔金物の内周面が前記ピンボルトに接し、かつ該楔金物が複数で前記ピンボルトを囲う位置に配置され、前記バックアップ材は、前記楔ケースと同心であって前記楔金物の基端部側に収縮した状態で配置されるリング形状の弾性部材よりなり、前記楔金物と接触する一方の端面から軸心方向に延びるスリットが複数設けられ、前記スリットにより分割された前記バックアップ材の割片により、前記楔金物が前記楔ケースの前記傾斜面に押付けられていることを特徴とする。
本発明のリング継手の製造方法によれば、バックアップ材にスリットを設けることにより、独立して弾性変形する割片が複数形成される。これにより、ピンボルトが楔ケースの中空部に挿入されることに伴って、複数の楔金物がバックアップ材側に移動すると、楔ケースに挿入されたピンボルトが同心となっているかもしくは偏心しているかに関わらず、独立して弾性変形する割片から楔金物に対して、それぞれ移動量に応じた反発力が作用される。
このため、すべての楔金物が割片を介して楔ケースの先端側に押し戻され、楔ケースの傾斜面とピンボルトの外周面との間に食い込む。したがって、複数の楔金物によるクサビ効果を十分機能させることができ、オス金具とメス金具を強固に固定し、リング継手に高い引張性能を発揮させることが可能となる。
本発明のリング継手は、前記スリットが前記楔金物と同数以上設けられて、前記楔金物各々に対して複数の前記割片が配置されることを特徴とする。
本発明のリング継手によれば、スリットを楔金物と同数以上設けることにより、独立して弾性変形する割片も楔金物と同数以上に増加するため、楔金物それぞれに接触する割片の数が増加する。これにより、ピンボルトが楔ケースの中空部に挿入されることに伴って、複数の楔金物がバックアップ材側に移動すると、複数の楔金物には、それぞれの移動量に応じた反発力が、複数の割片から作用される。
したがって、例えば、1つの楔金物に接触する複数の割片のうち、1つが隣接する楔金物に跨って配置され、かつ、ピンボルトが楔ケースに挿入される際に両者が偏心し、複数の楔金物がそれぞれ異なる移動量にてバックアップ材側に移動しても、他の割片から複数の楔金物に対して、それぞれの移動量に応じた反発力を確実に作用させることが可能となる。
本発明のリング継手は、前記ピンボルトの外周面と前記楔金物の内周面に、粗面が形成されることを特徴とする。
本発明のリング継手によれば、ピンボルトに引抜き力が作用すると、ピンボルトの外周面に設けた粗面と楔金物の内周面に備えた粗面が噛み合い、ピンボルトと楔金物との間に、高い引抜き抵抗力を発生させることが可能となる。
本発明のリング継手は、前記楔ケースの前記傾斜面を有する部分のテーパー比が、1/5以上1/3以下であることを特徴とするリング継手。
本発明のリング継手によれば、楔ケースの傾斜面に楔部材の外周面をバックアップ材の反発力を介して効率よく押圧し、楔金物を楔ケースの傾斜面とピンボルトの外周面との間に確実に食い込ませることができるため、強固なクサビ効果を生じさせることが可能となる。
本発明によれば、バックアップ材にスリットを設け、独立して弾性変形する割片を形成し、この割片の反発力を楔金物に作用させることにより、楔ケースに内装されている複数の楔金物によるクサビ効果を確実に機能させて、オス金具をメス金具に強固に固定させることができ、リング継手に高い引張性能を発揮させることが可能となる。
本発明のリング継手の詳細を示す図である。 本発明のバックアップ材の詳細を示す図である。 本発明のリング継手によりセグメントを接続した状態を示す図である。 本発明のピンボルトを楔ケースに同心に挿入したリング継手の引張試験の手順を示す図である。 本発明のピンボルトを楔ケースに偏心させて挿入したリング継手の引張試験の手順を示す図である。 本発明のリング継手と比較するための比較用継手の楔ケースに、ピンボルトを偏心して挿入し、セグメントを接続した状態を示す図である。 本発明のピンボルトを楔ケースに偏心して挿入したリング継手によりセグメントを接続した状態を示す図である。 本発明のバックアップ材の他の事例を示す図である。
本発明のリング継手は、複数のセグメントをトンネル円周方向に接続してセグメントリングを形成し、このセグメントリングをトンネル軸方向に接続するための継手として用いられるものであり、セグメントのトンネル軸方向と直交する端面に設置されている。以下に、本発明のリング継手を、図1〜図8を用いて説明する。
図1で示すように、セグメント1の切羽側端面11にはオス金具4、坑口側端面12にはメス金具5がそれぞれ設置されている。なお、坑口側端面12には、水膨張性の止水材2が所定の厚みをもって設置されている。
オス金具4は、周面に粗面42を設けた円柱形状のピンボルト41と、ピンボルト41の基端部に設けられた雄ネジ部(図示せず)とを備えている。そして、この雄ネジ部が、セグメント1の切羽側端面11に埋設されている、オス金具用アンカー部材6の雌ネジに螺合されることにより、オス金具4は、ピンボルト41が切羽側端面11からトンネル軸方向と平行に突出する態様で、セグメント1に設置される。
一方、メス金具5は、オス金具4のピンボルト41が挿入される中空部を有する筒状かつ有底の楔ケース51と、楔ケース51に内装される複数の楔金物52およびバックアップ材53とを備えている。
楔ケース51は、底部を有する基端部512から開口を有する先端部513に向けて中空部が漸次縮径する形状となるよう、その内周面に傾斜面511が形成されており、先端部513の内径は、基端部512の内径より小径に形成されている。そして、楔ケース51は、先端部513が坑口側端面12に配置されるとともに、中空部がトンネル軸方向に延在する態様で、基端部512側に設置されるメス金具用アンカー部材7とともに、セグメント1に埋設されている。
楔ケース51の中空部に配置される複数の楔金物52は、外周面が楔ケース51の傾斜面511であって先端部513に接し、内径がオス金具4のピンボルト41の外径より略小さい、外形状が円錐大台形状の筒状部材を、軸方向に複数分割した形状を有している。本実施の形態では、4つに分割して楔金物52を4つ備える構成とし、その内周面にはそれぞれ、粗面521を形成している。また、楔金物52は、楔ケース51の軸心方向の長さが傾斜面511より短く形成されており、楔ケース51の先端部51と基端部512の間を、傾斜面511に沿って移動可能となっている。
楔金物52と楔ケース51の基端部512との間に設置されるバックアップ材53は、図2で示すように、リング形状の弾性部材よりなり、一方の端面531から軸心方向に延びるスリット532が複数設けられている。本実施の形態では、スリット532を8つ設けているため、一方の端面531にはスリット532により分割された割片533が8つ形成されている。なお、スリット532の長さは、一方の端面531に押圧力が作用した際に、割片533が内側に倒れこむことがなく、かつ割片533がそれぞれ独立して弾性変形可能な長さに設定するとよい。
このような構成のバックアップ材53は、図1で示すように、軸心が楔ケース51の軸心と合致する状態で楔ケース51の中空部に配置され、他方の端面534が基端部512に支持されるとともに、一方の端面531が複数の楔金物52各々と接触している。このとき、バックアップ材53の長さは、複数の楔金物52が傾斜面511の先端部513側に位置し互いに側面を接した状態において、楔金物52の基端部512側の端面と楔ケース51の基端部512までの距離より、略長くなるよう形成されている。
これにより、バックアップ材53は、楔ケース51の中空部に収縮した状態で設置されるため、その反発力が楔金物52に作用し、楔金物52は楔ケース51の傾斜面511に常時押付けられた状態となる。したがって、セグメント1の搬送時に何らかの衝撃等が作用しても、複数の楔金物52は、傾斜面511の先端部513側に位置し、互いに側面を接した状態を維持することができる。
なお、本実施の形態では図2で示すように、4つの楔金物52各々に対して割片533を2つずつ配置しているから、楔金物52には、2つの割片533から反発力が作用される構成となっている。
上述する構成のリング継手3を用いて向かい合うセグメント1どうしを接続する際には、まず、メス金具5とオス金具4とを対向させて、ピンボルト41と楔ケース51を互いの軸心が同心となるように位置決めする。この状態で、セグメント1どうしを接続させる方向に押圧力を作用させる。
このとき、図1で示すように、複数の楔金物52は、楔ケース51の中空部で傾斜面511の先端部513側に位置し互いに側面を接した態様で配置されており、その内径がピンボルト41の外径より略小さく形成されている。このため、ピンボルト41は、複数の楔金物52を伴いながら、楔ケース51の中空部に徐々に挿入され、また、複数の楔金物52はそれぞれ、楔ケース51の傾斜面511に沿って基端部512に向かって移動しつつ、バックアップ材53の割片533を押圧する。
すると、図3で示すように、複数の楔金物52は、内周面がピンボルト41に押し広げられて互いの側面間に隙間を生じるとともに、基端部512に向かって移動した移動量分だけ割片533から反発力が作用され、楔ケース51の先端部513側に押し戻される。この状態からさらにセグメント1に押圧力を作用させ、止水材2が押し潰れるまで向かい合うセグメント1どうしを当接させると、複数の楔金物52は、割片533の反発力によりその外周面を楔ケース51の傾斜面511に、また、内周面をピンボルト41に押し付けられて、楔ケース51とピンボルト41の間に食い込む。これにより、クサビ効果が発揮されてピンボルト41は楔ケース51に強固に固定されるため、リング継手3に高い引張性能が付与される。
なお、本実施の形態では、ピンボルト41の周面に粗面42を設けるとともに、楔金物52の内周面に粗面521を設けている。こうすると、リング継手3に引張力が作用した際に、ピンボルト41の粗面42と楔金物52の粗面521が相まって、この引張力に抵抗するため、リング継手3の引抜き抵抗力はより大きなものとなる。
これら粗面42、521の形状はいずれでもよいが、例えば、ピンボルト41が引抜き方向に移動しようした場合に、ピンボルト41の粗面42と楔金物52の粗面521が互いに噛み合う鋸目形状の刃を設けると、両者の間に高い引抜き抵抗力を付与することができる。ただし、これら粗面42、521は、必ずしも設けなくてもよい。
また、楔ケース51の傾斜面511を有する部分のテーパー比は、発明者らが鋭意検討した結果、1/5以上1/3以下が好ましく、より好ましくは1/4との知見を得た。1/4に設定すると、バックアップ材53の反発力を介して楔部材52の外周面を楔ケース51の傾斜面511に効率よく押圧できるため、楔金物52を楔ケース51の傾斜面511とピンボルト41の外周面との間に効率よく食い込ませて、クサビ効果を確実に生じさせることが可能となる。なお、テーパーを1/5より小さくすると、メス金具5の楔ケース51が長くなるため、経済性に劣る。また、テーパーを1/3より大きくすると、楔金物52の楔ケース51の傾斜面511とピンボルト41の外周面との間への食い込みが不足して十分な拘束力が生じず、リング継手3に引張力が作用した際に、所望の引抜き抵抗力を得られない事態が起こりやすい。
上述するリング継手3の引張性能を確認するべく、リング継手3の引張試験を行った。引抜試験の手順は、図4で示すとおりである。
図4(a)で示すように、楔ケース51の基端側に第2の治具9を設置し、ピンボルト41と楔ケース51の軸心を合致させた状態で圧縮試験機械Mに装着する。次に、図4(b)で示すように、ピンボルト41を楔ケース51の中空部に挿入してリング継手3を形成する。そして、図4(c)で示すように、ピンボルト41の基端側にも第1の治具8を設置する。
この後、図4(d)で示すように、圧縮試験機械Mを作動させ、上側に位置するピンボルト41に設置した第1の治具8に鉛直上方向の荷重を作用させ、下側に位置する楔ケース51に設置した第2の治具9に鉛直下方向の荷重を作用させる。こうして破壊状態となるまで、リング継手3に引張荷重を付与した。
引抜試験の結果、ピンボルト41と楔ケース51の目開き量が止水材2の膨張にて負担できる程度の小さいままに引張荷重が設計荷重を超え、十分な引張性能を有することが確認された。そして、最終破壊状態は、ピンボルト41の破断であり、ピンボルト41が楔ケース51から抜け出る引抜けは発生しなかった。
このように、ピンボルト41と楔ケース51の軸心が合致している場合、図3で示すように、複数の楔金物52はそれぞれ、ピンボルト41により同量の移動量をもって楔ケース51の基端部512に移動する。このため、割片533はすべて均等に収縮し、複数の楔金物52各々に対して、同じ大きさの反発力を作用させることができる。したがって、複数の楔金物52すべてが、同量の深さで楔ケース51とピンボルト41の間に食い込み、確実にクサビ効果が発揮される。
しかし、トンネル工事の現場状況によっては、ピンボルト41と楔ケース51の位置合わせを正確に行うことができず、ピンボルト41が楔ケース51に対して偏心した状態で挿入される事態が生じやすい。そこで、ピンボルト41が楔ケース51に対して偏心して挿入された場合のリング継手3の引張性能を確認するべく、リング継手3の引張試験を行った。その手順は、図5で示すとおりである。
図5(a)で示すように、ピンボルト41の基端側に第1の治具8を設置するとともに、楔ケース51の基端側に第2の治具9を設置し、第1の治具8に取り付けたボルト部材81により、第2の治具9を介して楔ケース51に水平力を作用させ、ピンボルト41に対して楔ケース51を偏心させる。この状態で圧縮試験機械Mに装着し、図5(b)で示すように、ピンボルト41を楔ケース51の中空部に挿入して、図5(c)で示すように、リング継手3を形成する。
この後、図5(d)で示した引張荷重を作用させる方法は、上記の図4(d)で示した方法と同様である。なお、リング継手3の効果と比較するべく、バックアップ材53にスリット532を設けられていないものの、その他はすべてリング継手3と同様の構造を有する比較用継手を作成し、同様の方法により引張試験を実施した。
引張試験の結果、スリット532を設けないバックアップ材53が内装された比較用継手の楔ケース51に、ピンボルト41を偏心させて挿入した場合、引張荷重が設計荷重に達する前に、破壊状態に至る比較用継手が散見された。これらの破壊状態は、ピンボルト41が楔ケース51から抜け出る引抜けやピンボルト41の破断など、破壊状態も様々に異なっている。このように、バックアップ材53にスリット532を設けない比較用継手は、設計荷重を満足しないだけでなく破壊状態も一貫性がないなど、安定した引張性能を得られないことが確認された。
なお、引抜けが生じたケースでは図6で示すように、ピンボルト41が楔ケース51に偏心した状態で挿入されると、楔金物52各々でその移動量が異なることから、バックアップ材53は、移動量の大きい楔金物52の影響を受けて部分的に収縮し、一方の端面531全面が歪んで変形する。すると、移動量の少ない楔金物52には、バックアップ材53が接触せず、収縮により生じるバックアップ材53の反発力を作用させることができない場合が生じる。これにより、遊びを生じる楔金物52が発生し、クサビ効果を発揮できなかったものと想定できる。
一方、本実施の形態のリング継手3は、ピンボルト41を同心となるように挿入した場合と比較して、ピンボルト41と楔ケース51の目開き量がやや大きいものの引張荷重は設計荷重を超え、十分な引張性能を有することが確認された。なお、最終破壊状態は、軸心を合致させた場合と同様のピンボルト41の破断であり、ピンボルト41がメス金具5から抜け出る引抜けは発生しなかった。
これは、図7で示すように、リング継手3では、複数の楔金物52それぞれに独立して弾性変形する割片533が当接していることから、楔金物52ごとで移動量に差が生じていても、楔金物52にはそれぞれの移動量に応じた反発力が、複数の割片533から作用され、楔ケース51の先端部513側に押し戻される。このため、複数の楔金物52すべてが、楔ケース51とピンボルト41との間に食い込んでクサビ効果を十分機能させることができることに起因する。
上記のとおり、バックアップ材53にスリット532を設けたリング継手3は、オス金具4のピンボルト41がメス金具5の楔ケース51に偏心した状態で挿入された場合にも、楔金物52の一部に遊びが生じるといった事態を引き起こすことがなく、バックアップ材53を介して楔金物52によるクサビ効果を十分機能させることができる。これにより、オス金具4とメス金具5を強固に固定し、リング継手3に高い引張性能を発揮させることが可能となる。
なお、本発明のリング継手3は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、楔金物52を4つ、また、バックアップ材53にスリット532を8本設けて割片533を8個形成し、4つの楔金物52各々に対して割片533を2つずつ配置することにより、割片533の反発力が楔金物52に確実に作用するよう配置している。しかし、楔金物52の数量およびスリット532の数量は、必ずしもこれに限定されるものではなく、楔金物52は少なくとも2つ以上、またスリット532は楔金物52と同数以上設置されていればよい。
スリット532の数量を楔金物52の数量より多くすると、独立して弾性変形する割片533の数量も楔金物52より増加することから、楔金物52各々に接触する割片533の数が増加する。これにより、1つの割片533が、異なる移動量にて楔ケース51の基端側512に移動する2つの楔金物52に跨って配置されても、2つの楔金物52各々に接触している他の割片533がその反発力を確実に作用させる。これにより、楔金物52に遊びを生じることがなく、複数の楔金物52にて確実にクサビ効果を機能させることが可能となる。
また、本実施の形態では、図2で示すように、バックアップ材53に設けたスリット532の形状をトンネル軸線と平行な長方形に形成しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、スリット532を、割片533の形状が一方の端面531側の長さより他方の端面534側の長さが短い台形形状となるよう、形成してもよいし、これとは逆に、図8で示すように、割片533の形状が他方の端面534側の長さより一方の端面531側の長さが短い台形形状となるよう、設けてもよい。
このように、割片533の形状を一方の端面531側の長さが短い台形形状にすると、リング継手3にセグメント1どうしを接続させる方向の押圧力を作用させることによって、楔部材52が移動することに伴って割片533各々が収縮して変形しても、隣り合う割片533どうしが干渉しあうことがない、もしくは干渉の度合いを小さくできる。このため、割片533の、独立して弾性変形しようとする挙動を阻害することがなく、また、割片533がバックアップ材53の内側へ倒れこむこともない。これにより、割片533から楔金物52に対して、楔金物52それぞれの移動量に応じた反発力を確実に作用させることが可能となる。
さらに、本実施の形態では、オス金具用アンカー部材6およびメス金具用アンカー部材7に、アンカーボルトを採用しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、リング継手3に引張力が作用した際に、セグメント1からオス金具4およびメス金具5が抜け出すことのないようアンカー機能を発揮できる部材であれば、いずれを採用してもよい。
1 セグメント
11 切羽側端面
12 坑口側端面
2 止水材
3 リング継手
4 オス金具
41 ピンボルト
42 粗面
5 メス金具
51 楔ケース
511 傾斜面
512 基端部
513 先端部
52 楔金物
521 粗面
53 バックアップ材
531 一方の端面
532 スリット
533 割片
534 他方の端面
6 オス金具用アンカー部材
7 メス金具用アンカー部材
8 第1の治具
81 ボルト部材
9 第2の治具
M 圧縮試験機

Claims (4)

  1. セグメントのトンネル軸方向に向かい合う端面の一方に埋設されるメス金具と、前記向かい合う端面の他方からトンネル軸方向に突出して設置されるピンボルトを備えるオス金具と、よりなるリング継手であって、
    前記メス金具が、前記トンネル軸方向に延在する中空部を備える楔ケースと、該楔ケースの中空部に配置される複数の楔金物およびバックアップ材を備え、
    前記楔ケースの中空部は、前記セグメントの端面側に配置される先端部が、基端部より縮径されて中間部に傾斜面を備え、
    前記楔金物は、前記中空部に前記ピンボルトが挿入された状態で、該楔金物の外周面が前記傾斜面に接するとともに、該楔金物の内周面が前記ピンボルトに接し、かつ該楔金物が複数で前記ピンボルトを囲う位置に配置され、
    前記バックアップ材は、前記楔ケースと同心であって前記楔金物の基端部側に収縮した状態で配置されるリング形状の弾性部材よりなり、前記楔金物と接触する一方の端面から軸心方向に延びるスリットが複数設けられ、
    前記スリットにより分割された前記バックアップ材の割片により、前記楔金物が前記楔ケースの前記傾斜面に押付けられていることを特徴とするリング継手。
  2. 請求項1に記載のリング継手において、
    前記スリットが前記楔金物と同数以上設けられて、前記楔金物各々に対して複数の前記割片が配置されることを特徴とするリング継手。
  3. 請求項1または2に記載のリング継手において、
    前記ピンボルトの外周面と前記楔金物の内周面に、粗面が形成されることを特徴とするリング継手。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のリング継手において、
    前記楔ケースの前記傾斜面を有する部分のテーパー比が、1/5以上1/3以下であることを特徴とするリング継手。
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