以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の第1実施形態による振動抑制装置を示している。以下の説明では便宜上、図1の上側、下側、左側、及び右側をそれぞれ、「上」、「下」、「左」及び「右」とする。振動抑制装置は、構造物Bの振動を抑制するためのものであり、左右一対の振動抑制装置1L、1Rで構成されている。構造物Bは、例えば商用又は居住用の高層の建築物であって、複数の柱や梁を互いに井桁状に組み合わせたラーメン構造を有しており、基礎梁BFを含む支持体に立設されている。
左右の振動抑制装置1L、1Rは、互いに同様に構成されており、構造物Bを中心として、左右対称に配置されている点のみが異なっているので、両者1L、1Rを代表して、左側の振動抑制装置1Lについて説明する。
図1〜図3に示すように、振動抑制装置1Lは、円筒状の第1シリンダ11と、第1シリンダ11内に軸線方向に摺動自在に設けられた第1ピストン12と、第1シリンダ11に部分的に収容されたピストンロッド13を備えている。第1シリンダ11は、円筒状の周壁11aと、周壁11aの両端部にそれぞれ同心状に一体に設けられた円板状の第1端壁11b及び第2端壁11cを有しており、構造物Bの外周に配置される。第1シリンダ11内は、第1ピストン12によって、第1端壁11b側の第1流体室11dと、第2端壁11c側の第2流体室11eに区画されており、第1及び第2流体室11d、11eには、作動流体HFが充填されている。作動流体HFは、粘性を有する適当な流体、例えばシリコンオイルや作動油などで構成されている。
また、第1端壁11b及び第2端壁11cの各々の径方向の中央には、軸線方向に貫通するロッド案内孔が形成されており、各ロッド案内孔には、シールが設けられている。さらに、第2端壁11cには、外方(下方)に突出する凸部11fが一体に設けられており、凸部11fの内部には、収容部11gが画成されている。また、凸部11fには、自在継手を介して第1取付具FL1が設けられている。第1取付具FL1が基礎梁BFに取り付けられることによって、第1シリンダ11は、第1取付具FL1を介して基礎梁BFに連結され、上下方向に延びる。
前記第1ピストン12は、円柱状に形成されており、その径方向の中央にピストンロッド13が一体に設けられている。ピストンロッド13は、第1ピストン12から軸線方向の両側に延びるとともに、第1シリンダ11の第1及び第2端壁11b、11cの各々のロッド案内孔に、シールを介して液密に挿入されている。また、ピストンロッド13は、その一端部が収容部11gに収容されており、一端部以外の大部分が第1シリンダ11に収容されている。さらに、ピストンロッド13の他端部は、第1シリンダ11から突出しており、自在継手を介して第2取付具FL2が設けられている。第2取付具FL2は、連結部材2の下端部に取り付けられる。
この連結部材2は、上下方向に互いに接合された複数の柱材2aで構成されており、各柱材2aは、比較的剛性が高い鋼材、例えばH形鋼で構成されている。また、連結部材2は、構造物Bの外側に配置され、構造物Bに沿って上下方向に延び、その上端部が、構造物Bの上端部、例えば最上部のブレース階FBの左端部に連結される。以上により、第1ピストン12は、ピストンロッド13、第2取付具FL2及び連結部材2を介して、構造物Bの上端部に連結される。
また、構造物Bには、第1シリンダ11よりも上側の部分に、4つの座屈防止機構BPが設けられる。各座屈防止機構BPは、構造物Bの振動に伴って作用する圧縮荷重による連結部材2の座屈を防止するためのものである。座屈防止機構BPの構成は、本出願の発明者により提案された特許第5149453号に開示されたものと同じであるので、その詳細な説明については省略する。
さらに、第1ピストン12の周面は、シールが設けられており、シールを介して周壁11aの内周面に液密に接触している。第1ピストン12の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されている(2つのみ図示)。これらの孔には、第1リリーフ弁14及び第2リリーフ弁15がそれぞれ設けられている。
第1リリーフ弁14は、弁体と、これを閉弁側に付勢するばねで構成されており、第1流体室11d内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第1及び第2流体室11d、11eが互いに連通されることによって、第1流体室11d内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。第2リリーフ弁15は、第1リリーフ弁14と同様に構成されており、第2流体室11e内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第1及び第2流体室11d、11eが互いに連通されることによって、第2流体室11e内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。
また、振動抑制装置1Lは、第1シリンダ11に接続された導入連通路16と、導入連通路16に設けられたオリフィス17(絞り)をさらに備えている。導入連通路16は、第1シリンダ11内における第1ピストン12の移動範囲の全体において第1ピストン12をバイパスし、第1及び第2流体室11d、11eに連通するように、第1シリンダ11に接続されている。また、導入連通路16の横断面積は、第1及び第2流体室11d、11eの横断面積よりも小さな値に設定されており、導入連通路16には、作動流体HFが充填されている。なお、図2及び図3では便宜上、導入連通路16内の作動流体HFの符号の図示を省略している。また、導入連通路16の開度は、オリフィス17で絞られることにより調整されており、オリフィス17の横断面積は、所定値に設定されている。
さらに、振動抑制装置1Lは、第2シリンダ21と、第2シリンダ21内に軸線方向に摺動自在に設けられた第2ピストン22を備えている。第2シリンダ21は、第1シリンダ11と同様に構成されており、円筒状の周壁21aと、周壁21aの両端部にそれぞれ一体に設けられた円板状の第1端壁21b及び第2端壁21cを有している。また、第2シリンダ21は、前記基礎梁BF、構造物Bの梁BE、及び左右の柱PL、PRによって取り囲まれた空間に配置される。この梁BEは、構造物Bの下部に設けられ、左右方向に水平に延びており、その左端部及び右端部が左右の柱PL、PRにそれぞれ接合されている。
さらに、第2シリンダ21内は、第2ピストン22によって第1端壁21b側の第3流体室21d及び第2端壁21c側の第4流体室21eに区画されており、第3及び第4流体室21d、21eには、作動流体HFが充填されている。また、第1端壁21b及び第2端壁21cの各々の径方向の中央には、軸線方向に貫通するケーブル案内孔(図示せず)が形成されており、ケーブル案内孔には、シール(図示せず)が設けられている。さらに、周壁21aは、連結部材3の取付部3aに取り付けられる。
この連結部材3は、例えばH形鋼から成るV字状のブレース材であって、上記の取付部3aと、取付部3aから上方に斜めに延びる左右の斜め材3b、3bを一体に有しており、梁BEと基礎梁BFの間に設けられる。左右の斜め材3b、3bは、それらの上端部が左右の柱PL、PRと梁BEとの接合部にそれぞれ取り付けられ、基礎梁BFの付近まで延びる。また、左右の斜め材3b、3bの下端部には、上記の取付部3aが一体に設けられており、取付部3aは、左柱PLと右柱PRとの中間に位置する。以上により、第2シリンダ21は、連結部材3を介して梁BEに連結され、基礎梁BFに沿って左右方向(梁BEの長さ方向)に水平に延びる。
また、第2ピストン22は、第1ピストン12と同様、円柱状に形成され、その周面に、シールが設けられており、第2ピストン22の周面は、シールを介して周壁21aの内周面に液密に接触している。作動流体HFに対する第2ピストン22の受圧面積は、第1ピストン12のそれと同じ大きさに設定されている。また、第2ピストン22の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔には、第1リリーフ弁24及び第2リリーフ弁25がそれぞれ設けられている。
これらの第1及び第2リリーフ弁24、25はそれぞれ、前述した第1ピストン12の第1及び第2リリーフ弁14、15と同様に構成されている。第1リリーフ弁24は、第2ピストン22の摺動により第3流体室21d内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第3及び第4流体室21d、21eが互いに連通されることによって、第3流体室21d内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。第2リリーフ弁25は、第2ピストン22の摺動により第4流体室21e内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第3及び第4流体室21d、21eが互いに連通されることによって、第4流体室21e内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。
なお、第1及び第2ピストン12、22の一方にのみ、第1及び第2リリーフ弁14、(24)、15、(25)を設けた場合でも、後述する第1及び第2連通路31、32の働きによって、作動流体HFの圧力の過大化が防止されることが分かる。
また、振動抑制装置1Lは、第2シリンダ21に部分的に収容された左右一対のケーブル26L、26Rと、第2シリンダ21に取り付けられた左右一対の第1滑車27L、27Rと、基礎梁BFに連結される左右一対の第2滑車28L、28Rをさらに備えている。左右のケーブル26L、26Rは、例えば鋼線で構成され、弾性を有している。左ケーブル26Lは、その一端部が第1端壁21b側の第2ピストン22の端部でかつ径方向の中央に取り付けられており、第2ピストン22から第1端壁21b側に延びるとともに、第1端壁21bの前記ケーブル案内孔に、シールを介して液密に挿通されている。また、左ケーブル26Lの他端部は、左連結部材4Lに取り付けられる。左連結部材4Lは、例えばH形鋼で構成されており、基礎梁BF及び左柱PLに取り付けられる。
左側の第1滑車27Lは第1端壁21bに取り付けられており、左側の第2滑車28Lは左連結部材4Lに取り付けられる。左ケーブル26Lは、その中間の部分において、第1及び第2滑車27L、28Lに折り返された状態で巻き回されるとともに、所定のテンションが付与される。
右ケーブル26Rは、その一端部が第2端壁21c側の第2ピストン22の端部でかつ径方向の中央に取り付けられており、第2ピストン22から第2端壁21c側に延びるとともに、第2端壁21cの前記ケーブル案内孔に、シールを介して液密に挿通されている。また、右ケーブル26Rの他端部は、右連結部材4Rに取り付けられる。右連結部材4Rは、左連結部材4Lと同様に例えばH形鋼で構成されており、基礎梁BF及び右柱PRに取り付けられる。以上により、第2ピストン22は、左右のケーブル26L、26R及び左右の連結部材4L、4Rを介して、基礎梁BFに連結される。
右側の第1滑車27Rは第2端壁21cに取り付けられており、右側の第2滑車28Rは右連結部材4Rに取り付けられる。右ケーブル26Rは、その中間の部分において、第1及び第2滑車27R、28Rに折り返された状態で巻き回されるとともに、左ケーブル26Lのテンションと同じ大きさのテンションが付与される。
また、振動抑制装置1Lは、第1連通路31及び第2連通路32をさらに備えている。第1連通路31は、可撓性を有する部材、例えばゴムチューブや鋼管などで構成されており、第1シリンダ11内における第1ピストン12の移動範囲の全体において、また、第2シリンダ21内における第2ピストン22の移動範囲の全体において、第1及び第3流体室11d、21dに連通するように、第1及び第2シリンダ11、21に接続されている。
第2連通路32は、可撓性を有する部材、例えばゴムチューブや鋼管などで構成されており、第1シリンダ11内における第1ピストン12の移動範囲の全体において、また、第2シリンダ21内における第2ピストン22の移動範囲の全体において、第2及び第4流体室11e、21eに連通するように、第1及び第2シリンダ11、21に接続されている。また、第1及び第2連通路31、32の横断面積は、第1〜第4流体室11d、11e、21d、21eの各々の横断面積よりも小さな値に設定されており、両連通路31、32には、作動流体HFが充填されている。なお、図2及び図3では便宜上、第1及び第2連通路31、32内の作動流体HFの符号の図示を省略している。
以上の構成の振動抑制装置1Lでは、構造物Bが静止しているときには、第1及び第2ピストン12、22は、図2に示す中立位置にある。
次に、図1及び図3を参照しながら、構造物Bが1次モードの振動モードで振動したときにおける振動抑制装置1Lの動作について説明する。なお、図3では便宜上、一部の構成要素の符号の図示を省略している。
図1に二点鎖線で示すように、1次モードによる構造物Bの振動は、その上端側が左右方向に繰り返し往復動するような態様で行われる。この場合、構造物Bの曲げ変形による変位の方向と、せん断変形による変位の方向は互いに同じ方向になり、構造物Bの振動に伴って発生した曲げ変形の度合いは、構造物Bの上側の部分であるほど、より大きくなり、構造物Bの振動に伴って発生したせん断変形の度合いは、構造物Bの下側の部分であるほど、より大きくなる。
また、図3に示すように、1次モードの振動に伴って構造物Bの上端部が基礎梁BFに対して右側に変位すると、この構造物Bの上端部と基礎梁BFの間の相対変位が、連結部材2を介して第1シリンダ11及び第1ピストン12に伝達され、それにより、第1ピストン12が第1シリンダ11内を第1流体室11d側に摺動し、第1流体室11dが収縮させられるとともに、第2流体室11eが膨張させられる。また、梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が、連結部材3やケーブル26L、26Rを介して第2シリンダ21及び第2ピストン22に伝達され、それにより、第2ピストン22が第2シリンダ内21を第3流体室21d側に摺動し、第3流体室21dが収縮させられるとともに、第4流体室21eが膨張させられる。図3では、構造物B及び基礎梁BFから第1及び第2ピストン12、22にそれぞれ作用する力を、格子状のハッチング付きの矢印で示している。
上述したように第2ピストン22が摺動することによって、第2シリンダ21の第3流体室21d内の作動流体HFは、第2ピストン22により第1連通路31側に押圧され、それにより第1連通路31内に、第1シリンダ11の第1流体室11d側への作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように第1ピストン12が摺動することによって、第1流体室11d内の作動流体HFが第1ピストン12により押圧され、この第1ピストン12による押圧に起因する作動流体HFの流動は、上述した第2ピストン22による押圧に起因する作動流体HFの流動と合流し、それにより、導入連通路16内に、第2流体室11e側への作動流体HFの流動が生じる。すなわち、第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、第2ピストン22による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が、互いに合わさった状態で導入連通路16に導入される。
なお、図3において、導入連通路16、第1及び第2連通路31、32の付近に示した矢印は、各連通路内における作動流体HFの流動方向を示している。
この場合、導入連通路16内の作動流体HFの流量は、第2ピストン22による押圧により第3流体室21dから第1連通路31に押し出された作動流体HFの流量(=第2ピストン22の受圧面積・第2ピストン22の移動量)と、第1ピストン12による押圧により第1流体室11dから導入連通路16に押し出された作動流体HFの流量(=第1ピストン12の受圧面積・第1ピストン12の移動量)とを互いに足し合わせた大きさになる。また、作動流体HFは、導入連通路16内を流動する際に、導入連通路16に設けられたオリフィス17を通過し、その流量が、オリフィス17の横断面積に応じた大きさに調整される。
さらに、上述したように導入連通路16内を流動した作動流体HFは、第1シリンダ11の第2流体室11eに流入し、その一部が第2流体室11eに滞留し、残りは第2連通路32に流入する結果、第2連通路32内に、第4流体室21e側への作動流体HFの流動が生じる。
さらに、図示しないものの、構造物Bが1次モードの振動モードで振動することによりその上端部が基礎梁BFに対して左側に変位したときには、この構造物Bの上端部と基礎梁BFの間の相対変位が第1シリンダ11及び第1ピストン12に伝達されることによって、第1ピストン12が第2流体室11e側に摺動し、第2流体室11eが収縮させられるとともに、第1流体室11dが膨張させられる。また、梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が第2シリンダ21及び第2ピストン22に伝達されることによって、第2ピストン22が第4流体室21e側に摺動し、第4流体室21eが収縮させられるとともに、第3流体室21dが膨張させられる。
上述したように第2ピストン22が摺動することによって、第4流体室21e内の作動流体HFは、第2ピストン22により第2連通路32側に押圧され、それにより第2連通路32内に、第1シリンダ11の第2流体室11e側への作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように第1ピストン12が摺動することによって、第2流体室11e内の作動流体HFが第1ピストン12により押圧され、この第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの流動は、上述した第2ピストン22による押圧により発生した作動流体HFの流動と合流し、それにより、導入連通路16内に、第1流体室11d側への作動流体HFの流動が生じる。すなわち、第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、第2ピストン22による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が、互いに合わさった状態で導入連通路16に導入される。
この場合、導入連通路16内の作動流体HFの流量は、第2ピストン22による押圧により第4流体室21eから第2連通路32に押し出された作動流体HFの流量(=第2ピストン22の受圧面積・第2ピストン22の移動量)と、第1ピストン12による押圧により第2流体室11eから導入連通路16に押し出された作動流体HFの流量(=第1ピストン12の受圧面積・第1ピストン12の移動量)とを互いに足し合わせた大きさになる。
また、作動流体HFは、導入連通路16内を流動する際に、前述した図3の場合と同様、オリフィス17を通過し、その流量が、オリフィス17の横断面積に応じた大きさに調整される。さらに、上述したように導入連通路16内を流動した作動流体HFは、第1シリンダ11の第1流体室11dに流入し、その一部が第1流体室11dに滞留し、残りは第1連通路31に流入する結果、第1連通路31内に、第3流体室21d側への作動流体HFの流動が生じる。
以上のように作動流体HFが流動するのに伴い、振動抑制装置1Lの減衰抵抗力が発生し、その減衰係数は、第1及び第2ピストン12、22の受圧面積の総和の二乗値に正比例する。
以上のように、第1実施形態によれば、振動に伴う構造物Bの上端部と基礎梁BFの間の相対変位が、作動流体HFが充填された第1シリンダ11と第1ピストン12に伝達されることによって、第1ピストン12が第1シリンダ11内を第1及び第2流体室11d、11eの一方側又は他方側に摺動する。さらに、構造物Bの振動に伴う梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が、作動流体HFが充填された第2シリンダ21と第2ピストン22に伝達されることによって、第2ピストン22が第2シリンダ21内を第3及び第4流体室21d、21eの一方側又は他方側に摺動する。また、導入連通路16が第1及び第2流体室11d、11eに連通し、第1連通路31が第1及び第3流体室11d、21dに連通するとともに、第2連通路32が第2及び第4連通路11e、21eに連通している。これらの連通路16、31、32には、作動流体HFが充填されており、導入連通路16には、オリフィス17が設けられている。
上述したように摺動する第2ピストン22によって、第3又は第4流体室21d、21e内の作動流体HFが対応する第1又は第2連通路31、32側にそれぞれ押圧され、それにより第1又は第2連通路31、32内に、作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように摺動する第1ピストン12によって、第1又は第2流体室11d、11e内の作動流体HFが導入連通路16側に押圧される。この第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、上述した第2ピストン22による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)は、互いに合わさった状態で導入連通路16に導入され、導入連通路16の開度は、オリフィス17で絞られることにより調整されている。
以上のように、第1及び第2ピストン12、22による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が合わさった状態で導入連通路16に導入されるとともに、導入連通路16の開度が調整されるので、振動抑制装置1の減衰係数は、第1及び第2ピストン12、22の受圧面積の総和の二乗値に正比例し、より大きくなる。したがって、第1及び第2シリンダ11、21ならびに第1及び第2ピストン12、22に伝達される構造物Bの振動に伴う相対変位が比較的小さい場合でも、減衰抵抗力を十分に発生させることができる。
この場合、上下方向に延びる第1シリンダ11が基礎梁BFに連結され、第1ピストン12が構造物Bの上端部に連結されるので、構造物Bの1次モードの振動に伴って発生した曲げ変形による変位を、第1シリンダ11及び第1ピストン12に適切に伝達することができる。また、第2シリンダ21が構造物Bの下部に設けられた梁BEに連結され、第2ピストン22が基礎梁BFに連結されるので、構造物Bの1次モードの振動に伴って発生したせん断変形による変位を、第2シリンダ21及び第2ピストン22に適切に伝達することができる。以上により、構造物Bの1次モードの振動(例えば風揺れなどの比較的小さい振動)を適切に抑制することができる。
さらに、第1ピストン12に設けられた第1及び第2リリーフ弁14、15によって、第1及び第2流体室11d、11e内の作動流体HFの圧力の過大化を防止でき、第2ピストン22に設けられた第1及び第2リリーフ弁24、25によって、第3及び第4流体室21d、21e内の作動流体HFの圧力の過大化を防止できるので、第1シリンダ11及び第1ピストン12ならびに第2シリンダ21及び第2ピストン22に作用する軸力を適切に制限することができる。なお、第1及び第2ピストン12、22の一方にのみ、第1及び第2リリーフ弁14、(24)、15、(25)を設けた場合でも、第1及び第2連通路31、32の働きによって、作動流体HFの圧力の過大化を防止することができる。
また、導入連通路16の開度を調整する、本発明における調整手段として、オリフィス17を用いて、振動抑制装置1を簡易に構成することができる。さらに、振動抑制装置1は、前述した従来の振動抑制装置(特開2014−163496号公報)と異なり、複数のピストンに対応する複数のオリフィスを設けるのではなく、単一の導入連通路16に単一のオリフィス17を設けた構成を備えるので、その所望の減衰抵抗力を得るためのオリフィス17の横断面積の設定を容易に行うことができる。
また、構造物Bの振動時、左右の第1及び第2滑車27L、27R、28L、28Rの一方が他方に対して、いわゆる動滑車として機能し、それにより、構造物Bの振動による変位が増大された状態で第2ピストン22に伝達されるので、第2ピストン22の移動量及び作動流体HFの流動量を増大でき、ひいては、構造物Bの振動抑制効果を高めることができる。
次に、図4及び図5を参照しながら、本発明の第2実施形態による振動抑制装置41について説明する。この振動抑制装置41は、第1実施形態と比較して、オリフィス17に代えて、バルブ42が導入連通路16に設けられている点のみが異なっている。図4において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図4及び図5に示すバルブ42は、例えば、導入連通路16の開度を連続的に変更可能な電磁弁で構成されており、図5に示すように、制御装置43に接続されている。制御装置43は、CPUや、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどの組み合わせで構成されるとともに、電源44に接続されており、バルブ42を介して、導入連通路16の開度を制御する。なお、図4は、振動抑制装置41のうちの左側の振動抑制装置41Lを示しているが、振動抑制装置41は、第1実施形態の振動抑制装置1と同様、右側の振動抑制装置(図示せず)を備えている。
以上より、第2実施形態によれば、バルブ42により導入連通路16の開度を変更することによって、振動抑制装置41の減衰抵抗力を変化させることができる。その他、第1実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。この場合、制御装置43は、例えば、センサなどで取得(検出・算出)された構造物Bの振動度合を表す振動度合パラメータに応じ、バルブ42を介して導入連通路16の開度を制御する。これにより、振動度合パラメータで表される構造物Bの振動度合が大きいほど、振動抑制装置41の減衰抵抗力をより大きな値に制御することによって、構造物Bの振動をより適切に抑制することができる。
また、振動抑制装置41は、特開2015−137716号公報に開示された振動抑制装置と異なり、複数のピストンの各々をそれぞれがバイパスする複数の連通路と、複数の連通路の各々に複数の開閉弁の各々を設けるのではなく、単一の導入連通路16に単一のバルブ42を設けた構成を備えるので、その所望の減衰抵抗力を得るためのバルブ42の開度の制御を容易に行うことができるとともに、コストパフォーマンスを向上させることができる。
なお、第1及び第2実施形態では、第1シリンダ11を基礎梁BFに、第1ピストン12を連結部材2に、それぞれ連結しているが、これとは逆に、第1ピストンを基礎梁に、第1シリンダを連結部材に、それぞれ連結してもよい。また、第1及び第2実施形態では、第1ピストン12を構造物Bの上端部に、連結部材2を介して連結しているが、連結部材2を介さずに直接、連結するとともに、第1シリンダ11を、連結部材を介して基礎梁BFに連結してもよい。これとは逆に、第1シリンダを構造物の上端部に直接、連結するとともに、第1ピストンを、連結部材を介して基礎梁に連結してもよい。
さらに、第1及び第2実施形態では、第1シリンダ11を、基礎梁BFに直接、連結しているが、柱材で構成された連結部材を介して連結してもよい。これとは逆に、第1ピストンを、連結部材を介して基礎梁に連結するとともに、第1シリンダを、連結部材を介して建物の上端部に連結してもよい。これらの場合、第1シリンダの位置は任意である。
また、第1及び第2実施形態では、第2シリンダ21を、連結部材3を介して梁BEに連結しているが、連結部材3を省略するとともに、第2シリンダを梁に直接、連結してもよい。さらに、第1及び第2実施形態では、第2シリンダ21を梁BEに、第2ピストン22を基礎梁BFに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、第2ピストンを梁に、第2シリンダを基礎梁に、それぞれ連結してもよい。この場合、第2シリンダを、逆V字状に設けられた連結部材を介して、左右の柱と基礎梁との接合部に連結するとともに、梁の付近に配置してもよく、あるいは、連結部材を省略するとともに、第2シリンダを基礎梁に直接、連結してもよい。これらのいずれの場合にも、第2滑車は、左右の柱と梁との接合部に取り付けられる。
また、第1及び第2実施形態では、第2シリンダ21を、基礎梁BFとそのすぐ上側の梁BEとの間に設置し、2層間の層間変位を抑制しているが、3層以上の間の層間変位を抑制してもよいことはもちろんである。また、振動抑制装置による振動抑制効果を高めるために、第2シリンダ21及び第2ピストン22が連結された建物Bの連結部分の剛性を、他の部分の剛性よりも低くなるように設定してもよい。さらに、第1及び第2実施形態では、左右のケーブル26L、26Rは、鋼線であるが、テンションを付与することにより剛性を発揮するものであればよく、例えば帯状の鋼板でもよい。
また、第1及び第2実施形態では、第1ピストン12を構造物Bに、柱材2aで構成された連結部材2を介して連結しているが、テンションを付与することにより剛性を発揮する部材(例えばケーブル)を介して連結してもよい。この場合、ケーブルを上下方向にまっすぐ延びるように設けてもよく、ケーブルを上下方向に斜めに延びるように設けてもよい。あるいは、構造物Bに第1ピストン12を、本出願人による特開2017−89337号公報に開示された柱材とブレース材の組み合わせで構成された連結部材や、壁などで構成された連結部材を介して連結してもよい。
さらに、第1及び第2実施形態では、基礎梁BFに第2ピストン22を、左右のケーブル26L、26Rを介して連結しているが、これに代えて、第2ピストンに一体に設けられたピストンロッドを介して連結してもよい。また、第1及び第2実施形態では、第1ピストン12、12を建物Bの上端部の左端部及び右端部にそれぞれ連結するとともに、第2シリンダ22を左右方向に延びる梁BEに連結することによって、構造物Bの振動による左右方向の変位を抑制しているが、構造物の振動による前後方向の変位を抑制してもよい。この場合には、第1ピストンは、構造物の上端部の前端部(後端部)に連結されるとともに、第2シリンダは、前後方向に延びる梁に連結される。
さらに、第1及び第2実施形態では、左右一対の振動抑制装置1L、41L、1R、を設けているが、両者の一方を省略してもよい。また、第1及び第2実施形態では、第1ピストン12を、最上部のブレース階FBに連結しているが、ブレース階FBよりも下側の部位に連結してもよい。さらに、第1及び第2実施形態では、第2ピストン22を、基礎梁BFに連結しているが、構造物が立設された支持体に相当する部位であれば、他の適当な部位、例えば、基礎や、地下構造体、構造物の低層部に連結してもよい。
また、導入連通路16を第1シリンダ11に、第1ピストン12の移動範囲の全体において、第1及び第2流体室11d、11eに連通するように接続しているが、第1ピストンの移動範囲の一部において、第1及び第2流体室に連通するように接続してもよい。このことは、第1及び第2連通路31、32についても、同様に当てはまる。
さらに、第1及び第2実施形態に関し、本出願人による特開2015−206381号公報に開示された連通路を、導入連通路16と並列に設けることによって、振動抑制装置を、第1ピストンの摺動位置に応じてその減衰係数が変化するように構成してもよい。また、本出願人による特願2016−202281号や、特願2017−096599号、特願2017−100059号、特願2017−118577号に開示された連通路やバルブを導入連通路16と並列に設けることによって、振動抑制装置を、その減衰係数を変更可能に構成してもよい。これらのことは、後述する第3〜第6実施形態についても同様に当てはまる。
また、第1及び第2実施形態では、振動抑制装置1L、41L、1Rの各々は、第1及び第2シリンダ11、21を備えているが、シリンダの数は3つ以上でもよく、このことは、第1及び第2ピストン12、22についても同様に当てはまる。一例として、第2シリンダ及び第2ピストンを2つずつ設けた場合には、2つの第2シリンダを、連結部材の取付部を中心として互いに対称に配置し、各第2シリンダを取付部に取り付けるとともに、各第2ピストンを基礎梁に連結してもよい。
さらに、第2実施形態では、バルブ42を、導入連通路16の開度を連続的に変更可能な電磁弁で構成しているが、導入連通路16の開度を段階的に変更可能な電磁弁で構成してもよい。あるいは、油圧などの流体圧で駆動されるタイプのバルブで構成してもよく、この場合にも、導入連通路16の開度を連続的に又は段階的に変更可能に構成してもよい。さらにこの場合、流体圧として、作動流体HFの圧力を用いて駆動されるタイプのバルブを用いてもよい。また、導入連通路を複数、分岐させるとともに、分岐した複数の導入連通路の各々に複数のバルブの各々を設けてもよい。これらのことは、後述する第4実施形態のバルブ62及び第6実施形態のバルブ92についても、同様に当てはまる。
また、第1及び第2実施形態では、導入連通路16を第1シリンダ11に接続しているが、導入連通路16の一端部及び他端部を、第1及び第2連通路31、32にそれぞれ連通するように接続してもよい(図6参照)。あるいは、導入連通路を、第3及び第4流体室に連通するように、第2シリンダに接続してもよい。あるいは、第1実施形態に関しては、本発明における導入連通路及び調整手段を、第1ピストンに形成されるとともに、第1及び第2流体室に連通するオリフィスで一体に構成してもよく、あるいは、第2ピストンに形成されるとともに、第3及び第4流体室に連通するオリフィスで一体に構成してもよい。あるいは、第2実施形態に関しては、本発明における導入連通路を、第1ピストンに形成されるとともに、第1及び第2流体室に連通する連通孔で構成してもよく、あるいは、第2ピストンに形成されるとともに、第3及び第4流体室に連通する連通孔で構成してもよい。その場合には、調整手段として、作動流体HFの圧力により駆動されるバルブが用いられる。また、第1及び第2実施形態に関してこれまでに述べたバリエーションを適宜、組み合わせて適用してもよいことは、もちろんである。
次に、図7を参照しながら、本発明の第3実施形態による振動抑制装置51について説明する。この振動抑制装置51は、第1実施形態と比較して、第1シリンダ11及び第1ピストン12の構造物Bへの連結部位や、第2シリンダ52の構成などが主に異なっている。図7において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、以下の説明では便宜上、図7の上側、下側、左側及び右側をそれぞれ、「上」「下」「左」及び「右」とする。
第1シリンダ11は、第1実施形態の場合と異なり、構造物Bの外周に配置されず、構造物Bの左右の柱PL、PR、梁BE、及び基礎梁BFで囲まれた空間内に配置され、第1及び第2シリンダ11、52は、連結部材5の取付部5aを中心として、互いに左右対称に配置される。
この連結部材5は、第1実施形態で説明した連結部材3と同様に構成されたV字状のブレース材であって、上記の取付部5aと、取付部5aから上方に斜めに延びる左右の斜め材5b、5bを一体に有しており、梁BEと基礎梁BFの間に設けられる。左右の斜め材5b、5bは、それらの上端部が左右の柱PL、PRと梁BEとの接合部にそれぞれ取り付けられ、基礎梁BFの付近まで延びる。また、左右の斜め材5b、5bの下端部には、上記の取付部5aが一体に設けられており、取付部5aは、基礎梁BFの付近に位置するとともに、左柱PLと右柱PRの中間に位置する。
第1シリンダ11に設けられた前記第1取付具FL1は、前記左連結部材4Lに取り付けられ、それにより、第1シリンダ11は、第1取付具FL1を介して基礎梁BFに連結される。また、第2取付具FL2は取付部5aに取り付けられる。以上により、第1ピストン12は、ピストンロッド13、第2取付具FL2及び連結部材5を介して、梁BEに連結される。また、第1シリンダ11は、左柱PLと取付部5aの間に位置するとともに、基礎梁BFに沿って左右方向(梁BEの長さ方向)に水平に延びる。
第2シリンダ52は、第1シリンダ11と同様に構成されており、円筒状の周壁52aと、周壁52aの両端部にそれぞれ同心状に一体に設けられた円板状の第1及び第2端壁52b、52cを有している。第2シリンダ52内は、第2ピストン53によって、第1端壁52b側の第3流体室52dと、第2端壁52c側の第4流体室52eに区画されており、第3及び第4流体室52d、52eには、作動流体HFが充填されている。
また、第1端壁52b及び第2端壁52cの各々の径方向の中央には、軸線方向に貫通するロッド案内孔が形成されており、各ロッド案内孔には、シールが設けられている。さらに、第2端壁52cには、外方に突出する凸部52fが一体に設けられており、凸部52fの内部には、収容部52gが画成されている。さらに、凸部52fには、自在継手を介して第1取付具FL1が設けられており、第1取付具FL1は、前記右連結部材4Rに取り付けられる。以上により、第2シリンダ52は、第1取付具FL1及び右連結部材4Rを介して基礎梁BFに連結される。
第2ピストン53は、第1ピストン12と同様、円柱状に形成され、その周面に、シール(図示せず)が設けられており、第2ピストン53の周面は、このシールを介して、周壁52aの内周面に液密に接触している。また、第2ピストン53の径方向の中央には、ピストンロッド54が一体に設けられている。
ピストンロッド54は、第2ピストン53から軸線方向の両側に延びるとともに、第2シリンダ52の第1及び第2端壁52b、52cの各々のロッド案内孔に、シールを介して液密に挿入されている。また、ピストンロッド54は、その一端部が収容部52gに収容されており、一端部以外の大部分が第2シリンダ52に収容されている。さらに、ピストンロッド54の他端部は、第2シリンダ52から突出しており、自在継手を介して第2取付具FL2が設けられている。第2取付具FL2は前記連結部5aに取り付けられる。以上により、第2ピストン53は、ピストンロッド54、第2取付具FL2及び連結部材5を介して、構造物Bの梁BEに連結される。また、第2シリンダ52は、右柱PRと取付部5aの間に位置するとともに、基礎梁BFに沿って左右方向(梁BEの長さ方向)に水平に延びる。
また、作動流体HFに対する第2ピストン53の受圧面積は、第1ピストン12のそれと同じ大きさに設定されている。さらに、第2ピストン53の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されており(2つのみ図示)、これらの孔には、第1リリーフ弁55及び第2リリーフ弁56がそれぞれ設けられている。
これらの第1及び第2リリーフ弁55、56はそれぞれ、前述した第1ピストン12の第1及び第2リリーフ弁14、15と同様に構成されている。第1リリーフ弁55は、第2ピストン53の摺動により第3流体室52d内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第3及び第4流体室52d、52eが互いに連通されることによって、第3流体室52d内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。第2リリーフ弁56は、第2ピストン53の摺動により第4流体室52e内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第3及び第4流体室52d、52eが互いに連通されることによって、第4流体室52e内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。
また、振動抑制装置51の第1連通路31は、第1シリンダ11内における第1ピストン12の移動範囲の全体において、また、第2シリンダ52内における第2ピストン53の移動範囲の全体において、第1及び第4流体室11d、52eに連通するように、第1及び第2シリンダ11、52に接続されている。また、第2連通路32は、第1シリンダ11内における第1ピストン12の移動範囲の全体において、また、第2シリンダ52内における第2ピストン53の移動範囲の全体において、第2及び第3流体室11e、52dに連通するように、第1及び第2シリンダ11、52に接続されている。第1及び第2連通路31、32の横断面積は、第1〜第4流体室11d、11e、52d、52eの各々の横断面積よりも小さな値に設定されている。
以上の構成の振動抑制装置51では、構造物Bが静止しているときには、第1及び第2ピストン12、53は、図7に示す中立位置にある。
構造物Bの振動に伴い、梁BEが基礎梁BFに対して右方に変位すると、梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が、連結部材5などを介して、第1シリンダ11及び第1ピストン12ならびに第2シリンダ52及び第2ピストン53に伝達される。これにより、第1ピストン12が第1シリンダ11内を第1流体室11d側に摺動し、第1流体室11dが収縮させられるとともに、第2流体室11eが膨張させられ、第2ピストン53が第2シリンダ52内を第4流体室52e側に摺動し、第4流体室52eが収縮させられるとともに、第3流体室52dが膨張させられる。
上述したように第2ピストン53が摺動することによって、第4流体室52e内の作動流体HFは、第2ピストン53により第1連通路31側に押圧され、それにより第1連通路31内に、第1流体室11d側への作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように第1ピストン12が摺動することによって、第1流体室11d内の作動流体HFが第1ピストン12により押圧され、この第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの流動は、上述した第2ピストン53による押圧により発生した作動流体HFの流動と合流し、それにより、導入連通路16内に、第2流体室11e側への作動流体HFの流動が生じる。すなわち、第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、第2ピストン53による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が、互いに合わさった状態で導入連通路16に導入される。
この場合、導入連通路16内の作動流体HFの流量は、第2ピストン53による押圧により第4流体室52eから第1連通路31に押し出された作動流体HFの流量(=第2ピストン53の受圧面積・第2ピストン53の移動量)と、第1ピストン12による押圧により第1流体室11dから導入連通路16に押し出された作動流体HFの流量(=第1ピストン12の受圧面積・第1ピストン12の移動量)とを互いに足し合わせた大きさになる。
また、作動流体HFは、導入連通路16内を流動する際に、導入連通路16に設けられたオリフィス17を通過し、その流量が、オリフィス17の横断面積に応じた大きさに調整される。
さらに、上述したように導入連通路16内を流動した作動流体HFは、第1シリンダ11の第2流体室11eに流入し、その一部が第2流体室11eに滞留し、残りは第2連通路32に流入する結果、第2連通路32内に、第3流体室52d側への作動流体HFの流動が生じる。
また、構造物Bの振動に伴い、梁BEが基礎梁BFに対して左方に変位すると、梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が第1シリンダ11及び第1ピストン12に伝達されることによって、第1ピストン12が第1シリンダ11内を第2流体室11e側に摺動し、第2流体室11eが収縮させられるとともに、第1流体室11dが膨張させられる。また、梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が第2シリンダ52及び第2ピストン53に伝達されることによって、第2ピストン53が第2シリンダ52内を第3流体室52d側に摺動し、第3流体室52dが収縮させられるとともに、第4流体室52eが膨張させられる。
上述したように第2ピストン53が摺動することによって、第3流体室52d内の作動流体HFは、第2ピストン53により第2連通路32側に押圧され、それにより第2連通路32内に、第2流体室11e側への作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように第1ピストン12が摺動することによって、第2流体室11e内の作動流体HFが第1ピストン12により押圧され、この第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの流動は、上述した第2ピストン53による押圧により発生した作動流体HFの流動と合流し、それにより、導入連通路16内に、第1流体室11d側への作動流体HFの流動が生じる。すなわち、第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、第2ピストン53による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が、互いに合わさった状態で導入連通路16に導入される。
この場合、導入連通路16内の作動流体HFの流量は、第2ピストン53による押圧により第3流体室52dから第2連通路32に押し出された作動流体HFの流量(=第2ピストン53の受圧面積・第2ピストン53の移動量)と、第1ピストン12による押圧により第2流体室11eから導入連通路16に押し出された作動流体HFの流量(=第1ピストン12の受圧面積・第1ピストン12の移動量)とを互いに足し合わせた大きさになる。
また、作動流体HFは、導入連通路16内を流動する際に、オリフィス17を通過し、その流量が、オリフィス17の横断面積に応じた大きさに調整される。
さらに、上述したように導入連通路16内を流動した作動流体HFは、第1シリンダ11の第1流体室11dに流入し、その一部が第1流体室11dに滞留し、残りは第1連通路31に流入する結果、第1連通路31内に、第4流体室52e側への作動流体HFの流動が生じる。
以上のように作動流体HFが流動するのに伴い、振動抑制装置51の減衰抵抗力が発生し、その減衰係数は、第1及び第2ピストン12、53の受圧面積の総和の二乗値に正比例する。
以上のように、第3実施形態によれば、構造物Bの振動に伴う梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が、第1シリンダ11及び第1ピストン12ならびに第2シリンダ52及び第2ピストン53に伝達されることによって、第1ピストン12が第1シリンダ11内を第1及び第2流体室11d、11eの一方側又は他方側に摺動するとともに、第2ピストン53が第2シリンダ52内を第3及び第4流体室52d、52eの一方側又は他方側に摺動する。また、第1連通路31が第1及び第4流体室11d、52eに連通し、第2連通路32が第2及び第3連通路11e、52dに連通するとともに、導入連通路16が第1及び第2流体室11d、11eに連通している。
上述したように摺動する第2ピストン53によって、第3又は第4流体室52d、52e内の作動流体HFが対応する第1又は第2連通路31、32側にそれぞれ押圧され、それにより第1又は第2連通路31、32内に、作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように摺動する第1ピストン12によって、第1又は第2流体室11d、11e内の作動流体HFが導入連通路16側に押圧される。この第1ピストン12による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、上述した第2ピストン53による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)は、互いに合わさった状態で導入連通路16に導入され、導入連通路16の開度は、オリフィス17で絞られることにより調整されている。
以上のように、第1及び第2ピストン12、53による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が合わさった状態で導入連通路16に導入されるとともに、導入連通路16の開度が調整されるので、振動抑制装置51の減衰係数は、第1及び第2ピストン12、53の受圧面積の総和の二乗値に正比例し、より大きくなる。したがって、第1及び第2シリンダ11、52ならびに第1及び第2ピストン12、53に伝達される構造物Bの振動に伴う梁BEと基礎梁BFの間の相対変位が比較的小さい場合でも、減衰抵抗力を十分に発生させることができ、ひいては、構造物Bの振動を適切に抑制することができる。また、第1及び第2シリンダ11、52を、連結部材5の取付部5aの周りにコンパクトに配置することができる。
さらに、第1ピストン12に設けられた第1及び第2リリーフ弁14、15によって、第1及び第2流体室11d、11e内の作動流体HFの圧力の過大化を防止でき、第2ピストン53に設けられた第1及び第2リリーフ弁55、56によって、第3及び第4流体室52d、52e内の作動流体HFの圧力の過大化を防止できるので、第1シリンダ11及び第1ピストン12ならびに第2シリンダ52及び第2ピストン53に作用する軸力を適切に制限することができる。なお、第1及び第2ピストン12、53の一方にのみ、第1及び第2リリーフ弁14、(55)、15、(56)を設けた場合でも、第1及び第2連通路31、32の働きによって、作動流体HFの圧力の過大化を防止することができる。
また、導入連通路16の開度を調整する、本発明における調整手段として、オリフィス17を用いて、振動抑制装置51を簡易に構成することができる。さらに、振動抑制装置51は、前述した従来の振動抑制装置(特開2014−163496号公報)と異なり、複数のピストンに対応する複数のオリフィスを設けるのではなく、単一の導入連通路16に単一のオリフィス17を設けた構成を備えるので、その所望の減衰抵抗力を得るためのオリフィス17の横断面積の設定を容易に行うことができる。
次に、図8及び図9を参照しながら、本発明の第4実施形態による振動抑制装置61について説明する。この振動抑制装置61は、第3実施形態と比較して、オリフィス17に代えて、バルブ62が導入連通路16に設けられている点のみが異なっている。図8において、第1及び第3実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
図8及び図9に示すバルブ62は、例えば、第2実施形態のバルブ42と同様、導入連通路16の開度を連続的に変更可能な電磁弁で構成されており、図9に示すように、制御装置63に接続されている。制御装置63は、第2実施形態の制御装置43と同様、CPUや、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどの組み合わせで構成されるとともに、電源64に接続されており、バルブ62を介して、導入連通路16の開度を制御する。
以上より、第4実施形態によれば、バルブ62により導入連通路16の開度を変更することによって、振動抑制装置61の減衰抵抗力を変化させることができる。その他、第3実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。この場合、制御装置63は、例えば、センサなどで取得(検出・算出)された構造物Bの振動度合を表す振動度合パラメータに応じ、バルブ62を介して導入連通路16の開度を制御する。これにより、振動度合パラメータで表される構造物Bの振動度合が大きいほど、振動抑制装置61の減衰抵抗力をより大きな値に制御することによって、構造物Bの振動をより適切に抑制することができる。
また、振動抑制装置61は、特開2015−137716号公報に開示された振動抑制装置と異なり、複数のピストンの各々をそれぞれがバイパスする複数の連通路と、複数の連通路の各々に複数の開閉弁の各々を設けるのではなく、単一の導入連通路16に単一のバルブ62を設けた構成を備えるので、その所望の減衰抵抗力を得るためのバルブ62の開度の制御を容易に行うことができるとともに、コストパフォーマンスを向上させることができる。
なお、第3及び第4実施形態では、第1及び第2ピストン12、53を梁BEに、第1及び第2シリンダ11、52を基礎梁BFに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、第1及び第2シリンダの少なくとも一方を梁に、対応する第1及び第2ピストンの少なくとも一方を基礎梁に、それぞれ連結してもよい。また、第3及び第4実施形態では、本発明における第1及び第2部位はそれぞれ、梁BE及び基礎梁BFであるが、他の適当な部位(例えば、構造物内の任意の層間にある上梁(第1部位)と下梁(第2部位))を採用してもよい。
さらに、第3及び第4実施形態では、第1及び第2ピストン12、53を左右方向に延びる梁BEに連結することによって、構造物Bの振動による左右方向の変位を抑制しているが、構造物の振動による前後方向の変位や上下方向の変位を抑制してもよい。第1及び第2ピストンは、前後方向の変位を抑制する場合には、前後方向に延びる梁に、これと平行に延びた状態で連結され、上下方向の変位を抑制する場合には、構造物の第1及び第2部位に、上下方向に延びた状態で連結される。
また、第3及び第4実施形態では、第1及び第2ピストン12、53をそれぞれ、左右の柱PL、PRと梁BEとの接合部に、ピストンロッド13、54を介して連結しているが、これに代えて、両ピストンの少なくとも一方を、他の適当な部材、例えば、テンションを付与することにより剛性を発揮する部材(例えばケーブルや帯状の鋼板)を介して連結してもよい。
さらに、第3及び第4実施形態では、導入連通路16を第1シリンダ11に、第1ピストン12の移動範囲の全体において、第1及び第2流体室11d、11eに連通するように接続しているが、第1ピストンの移動範囲の一部において、第1及び第2流体室に連通するように接続してもよく、このことは、第1及び第2連通路31、32についても、同様に当てはまる。
また、第3及び第4実施形態では、振動抑制装置51、61は、第1及び第2シリンダ11、52を備えているが、シリンダの数は3つ以上でもよく、このことは、第1及び第2ピストン12、53についても同様に当てはまる。一例として、振動抑制装置を、2組の第1及び第2シリンダならびに第1及び第2ピストンを備えるように構成し、2組のうちの1組の第1及び第2シリンダを基礎梁に、対応する1組の第1及び第2ピストンを所定の第1梁に、それぞれ連結し、残りの1組の第1及び第2シリンダを基礎梁に、対応する残りの1組の第1及び第2ピストンを上記の第1梁と平行に設けられた第2梁に、それぞれ連結してもよい。
さらに、第3及び第4実施形態では、導入連通路16を第1シリンダ11に接続しているが、導入連通路16の一端部及び他端部を、第1及び第2連通路31、32にそれぞれ接続し、連通させてもよい(図10参照)。あるいは、導入連通路を、第3及び第4流体室に連通するように、第2シリンダに接続してもよい。あるいは、第3実施形態に関しては、本発明における導入連通路及び調整手段を、第1ピストンに形成されるとともに、第1及び第2流体室に連通するオリフィスで一体に構成してもよく、あるいは、第2ピストンに形成されるとともに、第3及び第4流体室に連通するオリフィスで一体に構成してもよい。あるいは、第4実施形態に関しては、本発明における導入連通路を、第1ピストンに形成されるとともに、第1及び第2流体室に連通する連通孔で構成してもよく、あるいは、第2ピストンに形成されるとともに、第3及び第4流体室に連通する連通孔で構成してもよい。その場合には、調整手段として、作動流体HFの圧力により駆動されるバルブが用いられる。また、第3及び第4実施形態に関してこれまでに述べたバリエーションを適宜、組み合わせて適用してもよいことは、もちろんである。
次に、図11を参照しながら、本発明の第5実施形態による振動抑制装置71について説明する。同図では、第1及び第3実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。この振動抑制装置71は、2つの流体室を有するシリンダ72と、2つの流体室にそれぞれ軸線方向に摺動自在に設けられた第1ピストン73及び第2ピストン74と、シリンダ72内に部分的に収容されたピストンロッド75を備えている。
シリンダ72は、円筒状の周壁72aと、周壁72aの両端部にそれぞれ同心状に一体に設けられた円板状の第1端壁72b及び第2端壁72cと、周壁72a内の中央部に同心状に一体に設けられた円板状の区画壁72dを有している。シリンダ72内には、これらの周壁72a、第1端壁72b、第2端壁72c及び区画壁72dによって、上記の2つの流体室が画成されており、これらの流体室の各々には、作動流体HFが充填されている。また、第1端壁72bには、自在継手を介して第1取付具FL1が設けられ、第2端壁72c及び区画壁72dの径方向の中央には、軸線方向に貫通するロッド案内孔が形成されており、各ロッド案内孔には、シールが設けられている。
さらに、2つの流体室のうち、第1端壁72bと区画壁72dなどで画成された流体室は、第1ピストン73によって、第1端壁72b側の第1流体室72eと、区画壁72d側の第2流体室72fに区画されている。また、2つの流体室のうち、第2端壁72cと区画壁72dなどで画成された流体室は、第2ピストン74によって、区画壁72d側の第3流体室72gと、第2端壁72c側の第4流体室72hに区画されている。
第1及び第2ピストン73、74は、円柱状に形成され、その周面に、シールが設けられている。第1及び第2ピストン73、74の周面は、このシールを介して、周壁72aの内周面に液密に接触しており、第1及び第2ピストン73、74の横断面積は、互いに同じ値に設定されている。また、第1及び第2ピストン73、74は、図11に示すシリンダ72内の所定の中立位置を初期位置としており、外力が一度も入力されていないときには、この中立位置に位置する。
さらに、第1ピストン73の径方向の中央の区画壁72d側の端部には、ピストンロッド75の一端部が、第2ピストン74の径方向の中央には、ピストンロッド75の中央部が、それぞれ一体に設けられている。ピストンロッド75は、第1ピストン73から区画壁72d側に延び、区画壁72dのロッド案内孔にシールを介して液密に挿入されており、また、第2ピストン74から第2端壁72c側に延び、第2端壁72cのロッド案内孔にシールを介して液密に挿入されるとともに、第2端壁72cから外方に延びている。また、ピストンロッド75の他端部には、自在継手を介して第2取付具FL2が設けられている。
さらに、第1及び第2ピストン73、74の各々の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の孔が形成されている(2つのみ図示)。各々のピストン73、74のこれらの孔には、第1及び第2リリーフ弁76(78)、77(79)がそれぞれ設けられており、これらの第1及び第2リリーフ弁76(78)、77(79)はそれぞれ、第1実施形態で説明した第1及び第2リリーフ弁14、15と同様に構成されている。
第1ピストン73に設けられた第1リリーフ弁76は、第1ピストン73の摺動により第1流体室72e内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第1及び第2流体室72e、72fが互いに連通されることによって、第1流体室72e内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。第1ピストン73に設けられた第2リリーフ弁77は、第1ピストン73の摺動により第2流体室72f内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第1及び第2流体室72e、72fが互いに連通されることによって、第2流体室72f内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。
第2ピストン74に設けられた第1リリーフ弁78は、第2ピストン74の摺動により第3流体室72g内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第3及び第4流体室72g、72hが互いに連通されることによって、第3流体室72g内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。第2ピストン74に設けられた第2リリーフ弁79は、第2ピストン74の摺動により第4流体室72h内の作動流体HFの圧力が所定値に達したときに開弁し、それにより第3及び第4流体室72g、72hが互いに連通されることによって、第4流体室72h内の作動流体HFの圧力の過大化が防止される。
なお、第1及び第2ピストン73、74の一方にのみ、第1及び第2リリーフ弁76、(78)、77、(79)を設けた場合でも、後述する第1及び第2連通路82、83の働きによって、作動流体HFの圧力の過大化が防止されることが分かる。
また、振動抑制装置71は、シリンダ72に接続されるとともに、作動流体HFが充填された導入連通路81、第1連通路82及び第2連通路83をさらに備えている。なお、図11では便宜上、各連通路81〜83内の作動流体HFの符号の図示を省略している。導入連通路81は、シリンダ72の第2端壁72c側の流体室における第2ピストン74の移動範囲の全体において、第2ピストン74をバイパスし、第3及び第4流体室72g、72hに連通するように、シリンダ72に接続されている。また、導入連通路81の横断面積は、第3及び第4流体室72g、72hの横断面積よりも小さな値に設定されている。
また、導入連通路81には、オリフィス84(絞り)が設けられている。導入連通路812の開度は、オリフィス84で絞られることにより調整されており、オリフィス84の横断面積は、所定値に設定されている。
上記の第1連通路82は、シリンダ72の2つの流体室の各々における第1及び第2ピストン73、74の各々の移動範囲の全体において、第1及び第3流体室72e、72gに連通するように、シリンダ72に接続されている。また、第2連通路83は、シリンダ72の2つの流体室の各々における第1及び第2ピストン73、74の各々の移動範囲の全体において、第2及び第4流体室72f、72hに連通するように、シリンダ72に接続されている。
以上の構成の振動抑制装置71のシリンダ72は、例えば図12に示すように、連結部材6を介して、構造物Bの上梁BUに連結され、ピストンロッド75は、連結部材7を介して、構造物Bの下梁BDに連結される。
連結部材6は、第1実施形態の連結部材3と同様、V字状のブレース材で構成され、下側の取付部6aと、連結部6aから上方に斜めに延びる一対の斜め材6b、6bを一体に有しており、上下の梁BU、BDの間に設けられる。取付部6aは、下梁BDの付近に位置し、一対の斜め材6b、6bの上端部は、上梁BUと左柱PLの接合部、及び、上梁BUと右柱PRの接合部にそれぞれ取り付けられる。連結部材7は、剛性が比較的高い鋼材、例えばH形鋼で構成されている。
また、取付部6a及び連結部材7には、振動抑制装置71の第1及び第2取付具FL1、FL2がそれぞれ取り付けられ、振動抑制装置71は、下梁BDに沿ってその長さ方向に延びる。なお、図12では便宜上、導入連通路81、第1及び第2連通路82、83の図示を省略している。また、振動抑制装置71を連結する部位として、上下の梁BU、BDに限らず、他の適当な部位を採用してもよく、さらに、構造物への振動抑制装置の連結手法として、他の適当な手法を採用してもよい。
構造物Bの振動に伴い、下梁BDが上梁BUに対して左方に変位すると、これらの上下の梁BU、BDの間の相対変位が、連結部材6、7などを介して、シリンダ72、第1及び第2ピストン73、74に伝達される。これにより、第1ピストン73がシリンダ72内を第1流体室72e側に摺動し、第1流体室72eが収縮させられるとともに、第2流体室72fが膨張させられ、第2ピストン74がシリンダ72内を第3流体室72g側に摺動し、第3流体室72gが収縮させられるとともに、第4流体室72hが膨張させられる。
上述したように第1ピストン73が摺動することによって、第1流体室72e内の作動流体HFは、第1ピストン73により第1連通路82側に押圧され、それにより第1連通路82内に、第3流体室72g側への作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように第2ピストン74が摺動することによって、第3流体室72g内の作動流体HFが第2ピストン74により押圧され、この第2ピストン74による押圧により発生した作動流体HFの流動は、上述した第1ピストン73による押圧により発生した作動流体HFの流動と合流し、それにより、導入連通路81内に、第4流体室72h側への作動流体HFの流動が生じる。すなわち、第1ピストン73による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、第2ピストン74による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が、互いに合わさった状態で導入連通路81に導入される。
この場合、導入連通路81内の作動流体HFの流量は、第1ピストン73による押圧により第1流体室72eから第1連通路82に押し出された作動流体HFの流量(=第1ピストン73の受圧面積・第1ピストン73の移動量)と、第2ピストン74による押圧により第3流体室72gから導入連通路81に押し出された作動流体HFの流量(=第2ピストン74の受圧面積・第2ピストン74の移動量)とを互いに足し合わせた大きさになる。なお、第1ピストン73が第1流体室72e側に摺動しているときには、第1ピストン73の受圧面積は、第1ピストン73の横断面積になり、第2ピストン74の受圧面積は、第2ピストン74の摺動方向に拘わらず、第2ピストン74の横断面積からピストンロッド75の横断面積を減算した値になる。また、作動流体HFは、導入連通路81内を流動する際に、オリフィス84を通過し、その流量が、オリフィス84の横断面積に応じた大きさに調整される。
さらに、上述したように導入連通路81内を流動した作動流体HFは、第4流体室72hに流入し、その一部が第4流体室72hに滞留し、残りは第2連通路83に流入する結果、第2連通路83内に、第2流体室72f側への作動流体HFの流動が生じる。
また、構造物Bの振動に伴い、下梁BDが上梁BUに対して右方に変位すると、これらの上下の梁BU、BDの間の相対変位がシリンダ72、第1及び第2ピストン73、74に伝達されることによって、第1ピストン73が第2流体室72f側に摺動し、第2及び第1流体室72f、72eがそれぞれ収縮及び膨張させられるとともに、第2ピストン74が第4流体室72h側に摺動し、第4及び第3流体室72h、72gがそれぞれ収縮及び膨張させられる。
上述したように第1ピストン73が摺動することによって、第2流体室72f内の作動流体HFは、第1ピストン73により第2連通路83側に押圧され、それにより第2連通路83内に、第4流体室72h側への作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように第2ピストン74が摺動することによって、第4流体室72h内の作動流体HFが第2ピストン74により押圧され、この第2ピストン74による押圧により発生した作動流体HFの流動は、上述した第1ピストン73による押圧により発生した作動流体HFの流動と合流し、それにより、導入連通路81内に、第3流体室72g側への作動流体HFの流動が生じる。すなわち、第1ピストン73による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、第2ピストン74による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が、互いに合わさった状態で導入連通路81に導入される。
この場合、導入連通路81内の作動流体HFの流量は、第1ピストン73による押圧により第2流体室72fから第2連通路83に押し出された作動流体HFの流量(=第1ピストン73の受圧面積・第1ピストン73の移動量)と、第2ピストン74による押圧により第4流体室72hから導入連通路81に押し出された作動流体HFの流量(=第2ピストン74の受圧面積・第2ピストン74の移動量)とを互いに足し合わせた大きさになる。なお、第1ピストン73が第2流体室72f側に摺動しているときには、第1ピストン73の受圧面積は、第1ピストン73の横断面積からピストンロッド75の横断面積を減算した値になる。また、作動流体HFは、導入連通路81内を流動する際に、オリフィス84を通過し、その流量が、オリフィス84の横断面積に応じた大きさに調整される。
さらに、上述したように導入連通路81内を流動した作動流体HFは、第3流体室72gに流入し、その一部が第3流体室72gに滞留し、残りは第1連通路82に流入する結果、第1連通路82内に、第1流体室72e側への作動流体HFの流動が生じる。
以上のように作動流体HFが流動するのに伴い、振動抑制装置71の減衰抵抗力が発生し、その減衰係数は、第1及び第2ピストン73、74の受圧面積の総和の二乗値に正比例する。
以上のように、第5実施形態によれば、作動流体HFがそれぞれ充填されたシリンダ72の2つの流体室に、第1及び第2ピストン73、74が軸線方向に摺動自在に設けられており、一方の流体室が第1ピストン73によって第1及び第2流体室72e、72fに、他方の流体室が第2ピストン74によって第3及び第4流体室72g、72hに、それぞれ区画されている。また、構造物Bの振動に伴って発生した上下の梁BU、BDの間の相対変位が、シリンダ72、第1及び第2ピストン73、74に伝達されることによって、第1ピストン73が、対応する流体室を第1及び第2流体室72e、72fの一方側又は他方側に摺動するとともに、第2ピストン74が、対応する流体室を第3及び第4流体室72g、72hの一方側又は他方側に摺動する。
さらに、導入連通路81が第3及び第4流体室72g、72hに連通し、第1連通路82が第1及び第3流体室72e、72gに連通するとともに、第2連通路83が第2及び第4流体室72f、72hに連通している。各連通路81〜83には、作動流体HFが充填されており、導入連通路81には、オリフィス84が設けられている。
上述したように摺動する第1ピストン73によって、第1又は第2流体室72e、72f内の作動流体HFが対応する第1又は第2連通路82、83側にそれぞれ押圧され、それにより第1又は第2連通路82、83内に、作動流体HFの流動が生じる。また、上述したように摺動する第2ピストン74によって、第3又は第4流体室72g、72h内の作動流体HFが導入連通路81側に押圧される。この第2ピストン74による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)と、上述した第1ピストン73による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)は、互いに合わさった状態で導入連通路81に導入され、導入連通路81の開度は、オリフィス84で絞られることにより調整されている。
以上のように、第1及び第2ピストン73、74による押圧により発生した作動流体HFの圧力(流量)が合わさった状態で導入連通路81に導入されるとともに、導入連通路81の開度が調整されるので、振動抑制装置71の減衰係数は、第1及び第2ピストン73、74の受圧面積の総和の二乗値に正比例し、より大きくなる。したがって、シリンダ72、第1及び第2ピストン73、74に伝達される構造物Bの振動に伴う上下の梁BU、BDの間の相対変位が比較的小さい場合でも、減衰抵抗力を十分に発生させることができ、ひいては、構造物Bの振動を適切に抑制することができる。
さらに、第1ピストン73に設けられた第1及び第2リリーフ弁76、77によって、第1及び第2流体室72e、72f内の作動流体HFの圧力の過大化を防止でき、第2ピストン74に設けられた第1及び第2リリーフ弁78、79によって、第3及び第4流体室72g、72h内の作動流体HFの圧力の過大化を防止できるので、シリンダ72、第1及び第2ピストン73、74に作用する軸力を適切に制限することができる。なお、第1及び第2ピストン73、74の一方にのみ、第1及び第2リリーフ弁76、(78)、77、(79)を設けた場合でも、第1及び第2連通路82、83の働きによって、作動流体HFの圧力の過大化が防止されることが分かる。
また、導入連通路81の開度を調整する、本発明における調整手段として、オリフィス84を用いて、振動抑制装置71を簡易に構成することができる。さらに、振動抑制装置71は、前述した従来の振動抑制装置(特開2014−163496号公報)と異なり、複数のピストンに対応する複数のオリフィスを設けるのではなく、単一の導入連通路81に単一のオリフィス84を設けた構成を備えるので、その所望の減衰抵抗力を得るためのオリフィス84の横断面積の設定を容易に行うことができる。
次に、図13及び図14を参照しながら、本発明の第6実施形態による振動抑制装置91について説明する。この振動抑制装置91は、第5実施形態と比較して、オリフィス84に代えて、バルブ92が導入連通路81に設けられている点のみが異なっている。図13において、第5実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
図13及び図14に示すバルブ92は、例えば、導入連通路81の開度を連続的に変更可能な電磁弁で構成されており、図14に示すように、制御装置93に接続されている。制御装置93は、第2実施形態の制御装置43と同様、CPUや、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどの組み合わせで構成されるとともに、電源94に接続されており、バルブ92を介して、導入連通路81の開度を制御する。なお、振動抑制装置91は、例えば、第5実施形態の場合と同様にして、構造物Bの上下の梁BU、BDに連結される。
以上より、第6実施形態によれば、バルブ92により導入連通路81の開度を変更することによって、振動抑制装置91の減衰抵抗力を変化させることができる。その他、第5実施形態による前述した効果を同様に得ることができる。この場合、制御装置93は、例えば、センサなどで取得(検出・算出)された構造物Bの振動度合を表す振動度合パラメータに応じ、バルブ92を介して導入連通路81の開度を制御する。これにより、振動度合パラメータで表される構造物Bの振動度合が大きいほど、振動抑制装置91の減衰抵抗力をより大きな値に制御することによって、構造物Bの振動をより適切に抑制することができる。
また、振動抑制装置91は、特開2015−137716号公報に開示された振動抑制装置と異なり、複数のピストンの各々をそれぞれがバイパスする複数の連通路と、複数の連通路の各々に複数の開閉弁の各々を設けるのではなく、単一の導入連通路81に単一のバルブ92を設けた構成を備えるので、その所望の減衰抵抗力を得るためのバルブ92の開度の制御を容易に行うことができるとともに、コストパフォーマンスを向上させることができる。
なお、第5及び第6実施形態では、導入連通路81をシリンダ72に、第3及び第4流体室72g、72hに連通するように接続しているが、第1及び第4流体室72e、72hに連通するように接続してもよい(図15参照)。あるいは、第1及び第2流体室72e、72fに連通するように、又は、第2及び第3流体室72f、72gに連通するように、接続してもよい。あるいは、導入連通路81の一端部及び他端部を、第1及び第2連通路82、83にそれぞれ連通するように接続してもよい(図16参照)。
あるいは、第5実施形態に関しては、本発明における導入連通路及び調整手段を、第1ピストンに形成されるとともに、第1及び第2流体室に連通するオリフィスで一体に構成してもよく、あるいは、第2ピストンに形成されるとともに、第3及び第4流体室に連通するオリフィスで一体に構成してもよい。あるいは、第6実施形態に関しては、本発明における導入連通路を、第1ピストンに形成されるとともに、第1及び第2流体室に連通する連通孔で構成してもよく、あるいは、第2ピストンに形成されるとともに、第3及び第4流体室に連通する連通孔で構成してもよい。その場合には、調整手段として、作動流体HFの圧力により駆動されるバルブが用いられる。
また、第5及び第6実施形態では、本発明における複数のピストンを互いに連結する連結部材として、ピストンロッド75を用いているが、他の適当な部材、例えば、テンションを付与することにより剛性を発揮する部材(例えばケーブルや帯状の鋼板)を用いてもよい。さらに、第5及び第6実施形態では、振動抑制装置71、91は、2つの流体室と第1及び第2ピストン73、74を備えているが、流体室及びピストンの数はそれぞれ3つ以上でもよい。また、シリンダ72、第1及び第2ピストン73、74を、本出願人による特願2016−015130号の図15などに記載されたように構成してもよい。
また、第5及び第6実施形態では、導入連通路81をシリンダ72内の第2ピストン74の移動範囲の全体において、第3及び第4流体室72g、72hに連通するように接続しているが、第2ピストンの移動範囲の一部において、第3及び第4流体室に連通するように接続してもよく、このことは、第1及び第2連通路82、83についても、同様に当てはまる。さらに、第5及び第6実施形態に関してこれまでに述べたバリエーションを適宜、組み合わせて適用してもよいことは、もちろんである。
次に、図17及び図18を参照しながら、本発明の第7実施形態による振動抑制装置101について説明する。この振動抑制装置101は、第5実施形態と比較して、導入連通路102の構成と、オリフィス84に代えて第1〜第3バルブ103〜105を備えていることと、補助流体圧タンク106をさらに備えることが、主に異なっている。図17において、第5実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第5実施形態と異なる点を中心に説明する。
導入連通路102は、第3流体室72gに連通する第1集合通路102aと、第4流体室72hに連通する第2集合通路102bと、第1及び第2集合通路102a、102bから分岐する第1及び第2分岐通路102c、102dを一体に有している。第1分岐通路102cには、第1バルブ103が設けられており、第2分岐通路102dには、第1集合通路102a側の部分に第2バルブ104が、第2集合通路102b側の部分に第3バルブ105が、それぞれ設けられている。また、第2分岐通路102dにおける第2バルブ104と第3バルブ105の間の部分には、補助流体圧タンク106が設けられている。導入連通路102には、作動流体HFが充填されている。なお、図17では便宜上、導入連通路102内の作動流体HFの符号の図示を省略している。
また、第1〜第3バルブ103〜105は、対応する通路の開度を全開又は全閉に選択的に制御可能なバルブ、例えば電磁弁で構成されており、図18に示す制御装置107に接続されている。制御装置107は、第2実施形態の制御装置43と同様、CPUや、RAM、ROM、I/Oインターフェースなどの組み合わせで構成されるとともに、電源108に接続されており、第1〜第3バルブ103〜105を制御する。さらに、上記の補助油圧タンク106は、第2分岐通路102dに導入された作動流体HFの圧力を蓄積可能に構成されている。
なお、振動抑制装置101は、例えば、第5実施形態の場合と同様にして、構造物Bの上下の梁BU、BDに連結される。この場合、第1〜第3バルブ103〜105の開閉は、特開2014−163502号公報の図2や、段落[0015]〜[0018]などに記載されているようにして、制御される。その場合には、相対変位の向きが反転したかは、センサなどによる上下の梁BU、BDの相対変位や、第1流体室72e内の作動流体HFと第2流体室72f内の作動流体HFの圧力差及び第3流体室72g内の作動流体HFと第4流体室72h内の作動流体HFの圧力差の一方に応じて、判定され、これらの相対変位や圧力差といったパラメータは、センサを用いた検出や算出などによって取得される。なお、第1〜第3バルブ103〜105を、特開2014−163502号公報に開示されているように、第1〜第4流体室72e〜72h内の作動流体HFの圧力を用いて駆動されるように構成してもよい。
以上により、第7実施形態によれば、特開2014−163502号公報に開示された振動抑制装置と異なり、作動流体HFの流体圧を第1及び第2ピストン73、74から成る複数のピストンに作用させることができるので、シリンダ72、第1及び第2ピストン73、74に伝達される振動に伴う相対変位が比較的小さい場合でも、振動抑制装置101の減衰抵抗力を十分に発生させ、その振動エネルギの吸収能力を十分に発揮させることができ、ひいては、構造物Bの振動を適切に抑制することができる。その他、第5実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、第7実施形態に関し、第5及び第6実施形態に関して前述したバリエーションを適宜、採用してもよいことは、もちろんである。また、第1〜第4実施形態に関し、導入連通路16や、オリフィス17、バルブ42、62に代えて、第7実施形態の導入連通路102や、第1〜第3バルブ103〜105、補助流体圧タンク106を設けてもよい。この場合、特開2014−163502号公報に開示された振動抑制装置を、本発明の複数のシリンダと同じ数、設けた場合と異なり、第1〜第3バルブや補助流体圧タンクが1つのシリンダに集約して設けられるので、第1〜第3バルブの制御を容易に行うことができるとともに、コストパフォーマンスを向上させることができる。
また、本発明は、説明した第1〜第6実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、第1及び第2ピストン12、73、22、53、74の両方に、第1及び第2リリーフ弁14、24、55、76、78、15、25、56、77、79を設けているが、複数のピストンのすべてではなく、それらのいくつかに設けてもよく、あるいは、省略してもよい。また、実施形態では、構造物Bは、商用や居住用の建築物であるが、他の適当な構造物、例えば、橋梁や、鉄塔などでもよい。さらに、これまでに述べたバリエーション(各実施形態で説明したバリエーションを含む)を適宜、組み合わせて適用してもよいことは、もちろんである。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。