ガラス板へ合紙が使用される際に、合紙中のシリコーン等の疎水性物質がガラス板へ転写する傾向があり、特に、表面に存在する20〜29μmの径の疎水性物質領域数が85個/m2を超える木材パルプからなる合紙、或いは、表面に存在する20〜29μmの径の疎水性物質領域数が70個/m2を超える合紙をガラス板に使用すると、ガラス板へ転写する疎水性物質量が増加し、その結果、パネル形成時の問題を引き起こすことが今回明らかとなった。
したがって、本発明のガラス板合紙用木材パルプの一つの形態は、着色剤又は発色剤を適用した後の当該木材パルプの表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が85個/m2以下である品質を備える。これにより、本発明の木材パルプからなるガラス板合紙の表面に存在するシリコーン等の疎水性物質の実質的に問題となりうる領域の数を70個/m2以下とすることができる。また、本発明のガラス板合紙用木材パルプの他の形態は、当該木材パルプを用いてJIS P 8222に準拠した方法で調製された厚さ230μmの手すき紙に着色剤又は発色剤を適用した後の当該手すき紙の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が45個/m2以下である品質を備える。また、本発明のガラス板用合紙は、木材パルプからなるガラス用合紙であって、着色剤又は発色剤の適用後の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が70個/m2以下である。
本発明において、合紙の「表面」とは、合紙の任意の外表面を意味しており、例えば、合紙の一方の外表面(表)だけでなく他方の外表面(裏)をも含む外表面のうちの少なくとも一部を意味する。したがって、合紙の表又は裏の一方の外表面のみに着色剤又は発色剤を適用してもよく、或いは、表及び裏の両方の外表面に着色剤又は発色剤を適用してもよい。また、合紙の表及び/又は裏の外表面の全面に着色剤又は発色剤を適用してもよく、或いは、合紙の表及び/又は裏の外表面の一部に着色剤又は発色剤を適用してもよい。
本発明のガラス板合紙用木材パルプの形態は特に限定されるものではなく、シート状、ブロック状又はフレーク状の任意の形態をとることができる。シート状のパルプは、例えば、ワイヤーパート、プレスパート、ドライパート、フィニッシングの4つの工程を備えるパルプマシンを使用して得ることができる。ワイヤーパートでは長網や真空フィルター等を使ってパルプ繊維を抄紙し、プレスパートではロールプレスを使って脱水する。ドライパートではシリンダードライヤーや、フラクトドライヤー等で乾燥し、最後にシート状パルプの両端を切り落としてロールに巻き取る。この様な方法は、紙パルプ技術協会が出版している「紙パルプ製造技術シリーズ」や、「紙パルプの製造 技術全書」に詳細に記載されている。なお、ブロック状のパルプは、例えば、上記シート状パルプを積層して得ることができ、また、フレーク状のパルプは、例えば、上記シート状パルプを粉砕して得ることができる。
本発明において、木材パルプの「表面」とは、木材パルプの任意の外表面を意味しており、例えば、シート状の木材パルプの場合は、シートの一方の外表面(表)だけでなく他方の外表面(裏)をも含む外表面のうちの少なくとも一部を意味する。一方、ブロック状の木材パルプの場合はブロックが六面体である場合はその任意の外表面を意味しており、6つの外表面(表面、裏面及び側面)を含む外表面のうちの少なくとも一部を意味する。したがって、シート状の木材パルプの場合は、表又は裏の一方の外表面のみに着色剤又は発色剤を適用してもよく、或いは、表及び裏の両方の外表面に着色剤又は発色剤を適用してもよい。また、シート状の木材パルプの表及び/又は裏の外表面の全面に着色剤又は発色剤を適用してもよく、或いは、シート状の木材パルプの表及び/又は裏の外表面の一部に着色剤又は発色剤を適用してもよい。
前記シート状パルプの厚さは、0.7〜1.5mmであることが好ましく、0.9〜1.3mmであることがより好ましく、1.0〜1.2mmであることが更により好ましい。
前記シート状パルプの坪量は、400〜1300g/m2であることが好ましく、500〜1200g/m2であることがより好ましく、500〜1100g/m2であることが更に好ましく、500〜1000g/m2であることが更に好ましく、700〜1000g/m2であることが更により好ましい。
本発明のガラス板合紙用木材パルプに着色剤又は発色剤を適用した後のその表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域は65個/m2以下が好ましく、45個/m2以下がより好ましく、30個/m2以下が更により好ましく、20個/m2以下が更により好ましく、17個/m2以下が更により好ましく、10個/m2以下が特に好ましい。本発明のガラス板合紙用木材パルプを用いてJIS P 8222に準拠した方法で調製された厚さ230μmの手すき紙に着色剤又は発色剤を適用した後の当該手すき紙の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域の個数は40個/m2以下であることが好ましく、35個/m2以下であることがより好ましく、30個/m2以下であることが更により好ましく、25個/m2以下であることが更により好ましく、20個/m2以下であることが更により好ましく、15個/m2以下であることが特に好ましい。また、前記着色又は発色不連続領域の個数は、ガラス板合紙用木材パルプの重量あたりでは100個/kg以下であることが好ましく、60個/kg以下であることがより好ましく、40個/kg以下であることが更により好ましく、30個/kg以下であることが更により好ましく、20個/kg以下であることが更により好ましく、10個/kg以下であることが特に好ましい。ここでの重量とは、風乾パルプの重量を指す。
前記ガラス板用合紙の着色又は発色不連続領域の個数は50個/m2以下であることが好ましく、40個/m2以下であることがより好ましく、35個/m2以下であることが更により好ましく、25個/m2以下であることが更により好ましく、20個/m2以下であることが更により好ましく、15個/m2以下であることが特に好ましい。また、前記着色又は発色不連続領域の個数は、ガラス板用合紙の重量あたりでは1500個/kg以下であることが好ましく、1200個/kg以下であることがより好ましく、800個/kg以下であることが更により好ましく、400個/kg以下であることが更により好ましく、200個/kg以下であることが更により好ましく、40個/kg以下であることが特に好ましい。ここでの重量とは、水分を10重量%含んだ状態の合紙の重量を指す。
本発明における「着色不連続領域」及び「発色不連続領域」(併せて、「着色又は発色不連続領域」という)とは、それぞれ、着色剤を適用した際に着色する領域又は他の領域と比較して濃く着色する領域、及び、発色剤を適用した際に発色する領域又は他の領域と比較して濃く発色する領域であって、且つ、ある着色又は発色領域は他の着色又は発色領域から区画されていることを意味する。したがって、着色又は発色不連続領域は複数存在可能であり、具体的には、ドット(点)又はスポット(斑点)の形態で散在することができる。
前記着色又は発色不連続領域の形態は任意であり、例えば、円形、楕円形、角形等の様々な形状でありうるが、円形又は楕円形であることが好ましい。
本発明において不連続領域の「径」とは面積円相当径(不連続領域の面積と等しい面積の円の直径)を意味する。前記着色又は発色不連続領域の径は20〜27μmが好ましく、20〜25μmがより好ましく、20〜23μmが更により好ましい。前記着色又は発色不連続領域が円形の場合はその直径が「径」である。また、前記着色又は発色不連続領域が非円形の場合は、面積円相当径(不連続領域の面積と等しい面積の円の直径)が20〜27μmであることが好ましく、20〜25μmが好ましく、20〜23μmがより好ましい。前記着色又は発色不連続領域の面積は例えば顕微鏡法により測定可能である。
本発明のガラス板合紙用木材パルプ及び本発明のガラス板用合紙の表面には径が10mmを超える着色又は発色不連続領域は存在しないことが好ましい。
前記着色剤又は発色剤はシリコーン、ピッチ、樹脂、ゴム、油及び疎水性異物を吸着したタルク等の疎水性物質と親和性を有することが好ましい。したがって、前記着色剤又は発色剤は疎水性のものが好ましい。
前記着色剤は木材パルプ又は合紙の疎水性物質を着色可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、染料、顔料及びこれらの混合物を使用することができる。
染料は任意のものを使用することができる。染料は疎水性のものが好ましく、油溶性染料がより好ましい。
本発明において、疎水性染料としては任意のものを使用することができる。疎水性染料の具体例としては、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、及びC.I.ソルベント・オレンジ等が挙げられる。C.I.ディスパーズ・イエロー、C.I.ディスパーズ・オレンジ、C.I.ディスパーズ・レッド、C.I.ディスパーズ・バイオレット、C.I.ディスパーズ・ブルー、C.I.ディスパーズ・グリーン等の分散染料を使用することもできる。
顔料は任意のものを使用することができる。顔料としては無機系顔料、有機系顔料及びこれらの混合物を使用することができる。顔料は疎水性のものが好ましく、油溶性のものがより好ましい。また、顔料は親水性顔料の表面を疎水化処理したものであってもよい。
無機系顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化ケイ素、カオリン、クレー、セリサイト、カーボンブラック、油煙、ボーンブラック等が挙げられる。
有機系顔料としては、例えば、重合方法等により表面が疎水性となっているポリスチレン粒子、ナイロンパウダー、ポリエチレンパウダー、シリコーン樹脂フィラー、尿素ホルマリン樹脂フィラー等が挙げられる。
発色剤は、電磁波照射等の刺激により発色する性質があり、木材パルプ又は合紙の疎水性物質を発色可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、電磁波の照射により発色する発色剤、化学物質との接触により発色する発色剤又はこれらの混合物を使用することができる。
発色剤は任意のものを使用することができるが、紫外線、赤外線等の電磁波の照射により蛍光を発色する蛍光発色剤が好ましい。蛍光発色剤としては、例えば、ナイルレッド及びナイルブルーなどのオキサジン環を有するオキサジン誘導体、オイルレッドO、ズダンIII、ズダンIV等の蛍光染料を使用することができる。
また、発色剤は、微粒子内又は微粒子表面に疎水性の蛍光性物質を有する蛍光ミクロスフェア、或いはナノ結晶とも呼ばれる量子ドットであってもよい。量子ドットの表面は疎水性に修飾されていてもよい。
着色剤又は発色剤の適用は、例えば、着色剤又は発色剤を含む溶液、分散液等の組成物を木材パルプ、木材パルプから調製された検査用紙又は合紙に塗布することによって実施することができる。或いは、着色剤又は発色剤を含む溶液、分散液等の組成物中に木材パルプ、木材パルプから調製された検査用紙又は合紙を浸漬してもよい。疎水性の着色剤又は発色剤の溶液を木材パルプ、木材パルプから調製された検査用紙又は合紙に塗布することが好ましい。前記塗布又は浸漬後に木材パルプ、木材パルプから調製された検査用紙又は合紙を乾燥することが好ましい。前記組成物中の着色剤又は発色剤の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましく、0.1〜1重量%が更により好ましい。
前記適用によって、木材パルプ、木材パルプから調製された検査用紙又は合紙の疎水性物質の表面に着色剤又は発色剤が選択的に固定され、当該疎水性物質が存在する領域が着色されることで「着色不連続領域」となるか、又は、当該疎水性物質が存在する領域が発色されることで「発色不連続領域」となる。本発明においては、木材パルプ、木材パルプから調製された検査用紙又は合紙の表面に点在する疎水性物質を当該木材パルプ、検査用紙又は合紙の表面における着色又は発色領域によって識別することができる。前記識別は目視で可能であり、容易である。本発明においては、着色又は発色不連続領域が疎水性物質を含むことが好ましい。
前記疎水性物質は着色剤又は発色剤と親和性を有する限り特に限定されない。疎水性物質は、不揮発性であることが好ましく、脂肪族炭化水素、植物油、動物油、合成グリセリド、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪族アルコール及び/又は脂肪酸のエステル、樹脂(シリコーンを除く)、シリコーン、ピッチ、ゴム並びに、疎水性異物を吸着したタルクからなる群から選択されることがより好ましく、特に、シリコーン及び疎水性異物を吸着したタルクからなる群から選択されることが更により好ましい。
脂肪族炭化水素としては、例えば、直鎖状又は分枝状炭化水素、特に、鉱油(流動パラフィン等)、パラフィン、ワセリンすなわちペトロラタム、ナフタレン等;水添ポリイソブテン、イソエイコサン、ポリデセン、パールリーム等の水添ポリイソブテン及びデセン/ブテンコポリマー;並びに、これらの混合物を挙げることができる。
他の脂肪族炭化水素の例として、直鎖状若しくは分枝状、又は、場合により環状の、C6〜C16低級アルカンを挙げることもできる。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン及びイソパラフィン、例えば、イソヘキサデカン及びイソデカンが含まれる。
植物油の例として、例えば、亜麻仁油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アンズ油、ダイズ油、アララ(arara)油、ヘーゼルナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、アーモンド油、ブドウ種子油、ゴマ油、ピーナッツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
動物油の例として、例えば、ミンク油、スクワレン、ペルヒドロスクワレン及びスクワランを挙げることができる。
合成グリセリドの例として、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを挙げることができる。
脂肪酸は、酸性形態(即ち、石けんになるのを回避するため、塩の形態でない)とするべきであり、飽和でも不飽和でもよく、6〜30個の炭素原子、特に9〜30個の炭素原子を含有し、任意選択で、特に1個又は複数個のヒドロキシル基(特に1〜4個)で置換されている。脂肪酸が不飽和の場合、この化合物は1〜3個の共役又は非共役の炭素−炭素二重結合を含むことができる。脂肪酸は、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸及びイソステアリン酸から選択される。
「脂肪族アルコール」という用語は、本明細書では、任意の飽和で直鎖状又は分枝状のC8〜C30アルコールを意味し、任意選択で、特に1個又は複数個のヒドロキシル基(特に1〜4個)で置換されているものである。
脂肪族アルコールのうち、C12〜C22脂肪族アルコールが好ましく、C16〜C18飽和脂肪族アルコールがより好ましい。これらのうち、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシルアルコール、ミリスチルアルコール、及びそれらの混合物を挙げることができる。
脂肪酸及び/又は脂肪族アルコールのエステルの例として、飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状のC1〜C26脂肪族の一酸又は多酸のエステル、及び飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状のC1〜C26脂肪族の一価アルコール又は多価アルコールのエステルを特に挙げることができ、エステルの総炭素数は10以上が好ましい。
樹脂(シリコーンを除く)は、疎水性である限り特には限定されない。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエスエル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、及び、これらの混合物が挙げられる。
シリコーンとしては、シリコーン油が挙げられる。シリコーン油は疎水性であり、その分子構造は、環状、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。シリコーン油の25℃における動粘度は、通常、0.65〜100,000mm2/sの範囲であるが、0.65〜10,000mm2/sの範囲でもよい。
シリコーン油としては、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、及び、分岐状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン、及び、分岐状オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1)、(2)及び(3):
R
1 3SiO−(R
1 2SiO)
a−SiR
1 3 (1)
(式中、
R
1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、或いは、置換若しくは非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基で示される基から選択される基であり、
aは、0〜1000の整数であり、
bは3〜100の整数であり、
cは1〜4の整数、好ましくは2〜4の整数である)
で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
置換若しくは非置換の一価炭化水素基は、典型的には、置換若しくは非置換の、炭素原子数1〜30、好ましくは炭素原子数1〜10、より好ましくは炭素原子数1〜4の一価の飽和炭化水素基;置換若しくは非置換の、炭素原子数2〜30、好ましくは炭素原子数2〜10、より好ましくは炭素原子数2〜6の一価の不飽和炭化水素基;炭素原子数6〜30、より好ましくは炭素原子数6〜12の一価の芳香族炭化水素基である。
炭素原子数1〜30の一価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基、並びに、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
炭素原子数2〜30の一価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐状のアルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;シクロペンテニルエチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基;及び、エチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基が挙げられる。
炭素原子数6〜30の一価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等のアリール基が挙げられる。フェニル基が好ましい。なお、本明細書において芳香族炭化水素基とは、芳香族炭化水素のみからなる基以外に、芳香族炭化水素と脂肪族飽和炭化水素が複合した基をも含む。芳香族炭化水素と飽和炭化水素が複合した基の例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基が挙げられる。
上記の一価炭化水素基上の水素原子は、1以上の置換基によって置換されていてもよく、当該置換基は、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)、水酸基、カルビノール基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、アミド基、オキシアルキレン基等を含む有機基からなる群から選択される。具体的には、3,3,3−トリフロロプロピル基、3−クロロプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3−カルボキシプロピル基、10−カルボキシデシル基、3−イソシアネートプロピル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられるが、メトキシ基又はエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
より具体的には、直鎖状オルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(2mPa・sや6mPa・s等の低粘度〜100万mPa・s等高粘度のジメチルシリコーン)、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、フェニル(トリメチルシロキシ)シロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルアルキルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン・メチルアルキルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジエトキシポリジメチルシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−オクチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ドデシルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−ヘキサデシルトリシロキサン、トリストリメチルシロキシメチルシラン、トリストリメチルシロキシアルキルシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、テトラメチル−1,3−ジヒドロキシジシロキサン、オクタメチル−1,7−ジヒドロキシテトラシロキサン、ヘキサメチル−1,5−ジエトキシトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、ジメチコノール等が例示される。
環状オルガノポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、1,1−ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、フェニルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,1−ジフェニルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラシクロヘキシルテトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−アクリロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−カルボキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(3−ビニロキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(p−ビニルフェニル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ[3−(p−ビニルフェニル)プロピル]テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N−アクリロイル−N−メチル−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(N,N−ビス(ラウロイル)−3−アミノプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
分岐状オルガノポリシロキサンとしては、メチルトリストリメチルシロキシシラン、エチルトリストリメチルシロキシシラン、プロピルトリストリメチルシロキシシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン、フェニルトリストリメチルシロキシシラン等が挙げられる。
本発明におけるシリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリジメチル−ポリジフェニルシロキサンコポリマー、ポリメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン等が好ましい。本発明におけるシリコーンとしては、ジメチルポリシロキサンが典型的である。
本発明におけるシリコーン油は変性シリコーン油であってもよい。変性シリコーン油としては、例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン油が挙げられる。
ポリオキシアルキレン変性シリコーン油は、分子中にケイ素−炭素結合を介してポリオキシアルキレン基が結合しているシリコーン油であり、好ましくは、常温、具体的には25℃において水溶性を示すものであって、より好ましくはノニオン系のものである。
ポリオキシアルキレン変性シリコーン油は、具体的には、例えば直鎖状又は分岐状のシロキサンよりなるシリコーン油とポリオキシアルキレンとの共重合体であり、種々のものがあるが、特に下記式(4)で表わされるものが好ましい。
R2 3SiO−(R1 2SiO)d−(R1ASiO)e−SiR2 3 (4)
(式中、
R1は、それぞれ独立して、上記と同様であり、
R2は、それぞれ独立して、R1又はAであり、
Aは、それぞれ独立して、R3Gで表される基であり、R3は、置換若しくは非置換の二価炭化水素基であり、Gはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の炭素数2〜5のアルキレンオキサイドを少なくとも1種含有してなるポリオキシアルキレン基を表し、
dは1〜500の整数を表し、
eは1〜50の整数を表す)。
置換若しくは非置換の二価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の二価炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の炭素原子数1〜30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基;ビニレン基、アリレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基等の炭素原子数2〜30のアルケニレン基;フェニレン基、ジフェニレン基等の炭素原子数6〜30のアリーレン基;ジメチレンフェニレン基等の炭素原子数7〜30のアルキレンアリーレン基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、水酸基、又は、カルビノール基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、アミド基、オキシアルキレン基等を含む有機基で置換された基が挙げられる。二価炭化水素基は、炭素原子数1〜30のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、炭素原子数3〜5のアルキレン基がより好ましい。
例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン油の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
(式中、
xは20〜160であり、yは1〜25であり、x/yの値は50〜2であり、
Aは、例えば−(CH
2)
3O−(CH
2CH
2O)
m−(CH
2CH
2CH
2O)
n−R
4であり、mは7〜40、nは0〜40、m+nの値は少なくとも1であり、グラフト重合されたものでもランダム重合されたものでもよく、R
4は水素原子又は上記置換若しくは非置換の一価炭化水素基を表す。好適には、mは7〜30、nは0〜30である)。
また、変性シリコーン油としては、例えば、アミノアルキル変性シリコーン油が挙げられる。
アミノアルキル変性シリコーン油は、分子中にケイ素−炭素結合を介してアミノアルキル基が結合しているシリコーン油であり、好ましくは、常温、具体的には25℃において10〜100000csの粘度を示すものである。
前記アミノアルキルシリコーン油としては、上記式(4)において、Gを式:−(NR4CH2CH2)zNR4 2(式中、R4はそれぞれ独立して上記のとおりであり、zは0≦z≦4の数である)で置換したものが挙げられる。
本発明においては、木材パルプ、ひいては当該木材パルプからなるガラス板合紙、に含まれるシリコーンの量が、木材パルプ又は合紙の絶乾質量に対して0.5ppm以下であることが好ましく、0.4ppm以下であることがより好ましく、0.3ppm以下が更により好ましく、0.2ppm以下が更により好ましく、0.1ppm以下であることが特に好ましい。0.5ppmを超える量のシリコーンが存在する場合、携帯端末など非常に高精細なディスプレイを必要とする場面において、ガラスに転移した微量のシリコーンが要因で発生するカラーフィルムの断線箇所が高精彩であるが故に目立ち、品質不良と判断されてしまうおそれが高まるからである。なお、本発明において「絶乾」とは、乾燥により被乾燥対象物中に水分が実質的に存在しない状態を意味しており、例えば、「絶乾」状態の物体の室温(25℃)での1時間当たりの重量変化は1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。
一般に、木材パルプ中にはシリコーンが含有されていることが多い。これは、木材パルプの製造過程、特に洗浄工程において泡の発生による洗浄能力の低下を防ぐために使用される消泡剤としてシリコーン系消泡剤が多用されるからであり、このシリコーン系消泡剤由来のシリコーンがパルプに残存する。シリコーン系消泡剤は、例えば、シリコーンオイル及び疎水性シリカの混合物に変性シリコーン、界面活性剤等を混合して製造される。
タルクは滑石を粉砕した無機粉末であり、層状構造を有する一般式:Mg3(SiO2)2(OH)2またはMg3Si4O10(OH)2の含水ケイ酸マグネシウムである。タルクは填料、ピッチコントロール剤、又は塗工剤として使用されており、木材パルプ中に含まれていることがある。
したがって、ガラス板合紙用木材パルプに着色剤又は発色剤を適用した後の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域を85個/m2以下とし、及び/若しくは、JIS P 8222に準拠した方法で前記木材パルプから調製された厚さ230μmの手すき紙の表面に着色剤又は発色剤を適用した後の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域を45個/m2以下とし、並びに/又は、着色剤又は発色剤の適用後の本発明のガラス板用合紙の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域を70個/m2以下とするためには、特に合紙の原料となる木材パルプがシリコーン、ピッチ、樹脂、ゴム、油及び疎水性異物を吸着したタルクを多く含まないことが重要である。本発明の第一〜第三の態様において、合紙の原料となる木材パルプ中のシリコーン、ピッチ、樹脂、ゴム、油及び疎水性異物を吸着したタルクの含有量を低減する手段は特に限定されるものではないが、木材パルプ製造時に使用する消泡剤として非シリコーン系消泡剤を使用すること、及び填料としてタルク以外のものを使用することが好ましい。
非シリコーン系の消泡剤としては、例えば、鉱物油系消泡剤、高級アルコール系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、アミド系消泡剤、アミン系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、スルホン酸エステル系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤及び植物油系消泡剤が挙げられる。
鉱物油系消泡剤は、例えば、炭化水素油等の鉱物油、鉱物ワックス等を含む。
高級アルコール系消泡剤は、例えば、オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等を含む。
脂肪酸系消泡剤は、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等を含む。
脂肪酸エステル系消泡剤は、例えば、ステアリン酸イソアミル、グリセリンモノリシノレート、ソルビトールモノラウレート、ソリビトールトリオレエート等を含む。
アミド系消泡剤は、例えば、アクリレートポリアミン等を含む。
アミン系消泡剤は、例えば、ジアリルアミン等を含む。
リン酸エステル系消泡剤は、例えば、リン酸トリブチル、オクチルリン酸ナトリウム等を含む。
金属石鹸系消泡剤は、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カリウム等を含む。
スルホン酸エステル系消泡剤は、例えば、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム等を含む。
ポリエーテル系消泡剤は、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数8以上の高級アルコールや炭素数12〜14の2級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等を含む。
植物油系消泡剤は、例えば、大豆油、トウモロコシ油、ヤシ油、アマニ油、菜種油、綿実油、ゴマ油、ヒマシ油等の植物油を含む。
また、非シリコーン系消泡剤は、疎水性シリカ等の無機粒子を含むことができる。疎水性シリカとしては、親水性のシリカのシラノール基をメチル基等のアルキル基で置換することによって疎水化処理されたシリカを使用することが好ましい。
非シリコーン系消泡剤は、必要に応じて、界面活性剤等を含むこともできる。したがって、非シリコーン系消泡剤はエマルジョン型であってもよい。
タルク以外の填料としては、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機填料、及び尿素樹脂等の有機填料を使用することができる。
本発明のガラス板合紙用木材パルプは、(1)着色剤又は発色剤を適用した後の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が85個/m2以下であるか、又は、(2)当該木材パルプを用いてJIS P 8222に準拠した方法で調製された厚さ230μmの手すき紙への着色剤又は発色剤の適用後の当該手すき紙の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が45個/m2以下であるが、両者の特性を備えることが好ましい。すなわち、本発明のガラス板合紙用パルプは、(1)着色剤又は発色剤を適用した後の当該木材パルプの表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が85個/m2以下、好ましくは65個/m2以下、より好ましくは45個/m2以下、更により好ましくは30個/m2以下、更により好ましくは17個/m2以下、並びに、(2)JIS P 8222に準拠した方法で当該木材パルプから調製された厚さ230μmの手すき紙に対して、着色剤又は発色剤を適用した後の当該手すき紙の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が45個/m2以下であることが好ましく、35個/m2以下であることがより好ましく、30個/m2以下であることが更により好ましく、25個/m2以下である、の両者の特性を備えることが好ましい。これにより、本発明の木材パルプからなるガラス板合紙の表面に存在するシリコーン、ピッチ、樹脂、ゴム、油及び疎水性異物を吸着したタルク等の疎水性物質の20〜29μmの径の領域数を70個/m2以下とすることが容易となる。
本発明において使用可能な木材パルプは、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプを単独或いは混合したものである。この木材パルプを主体とし、必要に応じてこれに麻、竹、藁、ケナフ、楮、三椏や木綿等の非木材パルプ、カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリエステル等の合成繊維や化学繊維、又はミクロフィブリル化パルプを単独で、或いは混合して併用することができる。ただし、パルプ中に樹脂分が多く含まれると、当該樹脂分がガラス板表面を汚す等の悪影響を及ぼす可能性があるので、できるだけ樹脂分の少ない化学パルプ、例えば針葉樹晒クラフトパルプを単独で使用することが好ましい。また、砕木パルプのような高収率パルプは、樹脂分が多く含まれるので好ましくない。なお、合成繊維や化学繊維を混合させると削刀性が向上し、合紙を平版にする際の作業性が向上するが、廃棄物処理の面においてリサイクル性が悪くなるので注意が必要である。
また、本発明の性能を損なわない範囲で、上記した木材パルプを主体とした製紙用繊維に対して、必要に応じて接着剤、防黴剤、各種の製紙用填料、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、着色剤、定着剤、歩留まり向上剤、スライムコントロール剤等を添加し、次いで公知・既存の長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、長網と円網のコンビネーション抄紙機等で抄造して得ることができる。また、これら薬品添加の際には虫やごみ等が混入しないように細心の注意を要する。
本発明の木材パルプを製造する際に、木材パルプの叩解を進めると紙層間強度が増す効果が期待できる。しかしながら、叩解を進めることによって木材パルプ中の微細繊維が増加すると、合紙として使用中に紙粉が発生する恐れがあるので、必要以上に叩解度を進めることは好ましくない。よって本発明において好ましい叩解度は300〜650mlc.s.f.である。
本発明の木材パルプを使用して、通常の方法により、ガラス板合紙、特に本発明のガラス板合紙、を得ることができる。なお、ガラス板合紙の抄造の途中及び/又は製造後でカレンダー処理、スーパーカレンダー処理、ソフトニップカレンダー処理、エンボス等の加工を行っても構わない。加工処理により、表面性や厚さを調整することができる。
前記ガラス板合紙の厚さは、0.01〜0.4mmであることが好ましく、0.05〜0.2mmであることがより好ましく、0.06〜0.1mmであることが更により好ましい。
本発明のガラス板用合紙の坪量は、20〜200g/m2であることが好ましく、25〜100g/m2であることがより好ましく、30〜80g/m2であることが更により好ましい。
本発明のガラス板用合紙は、着色剤又は発色剤の適用後の表面に存在する20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が70個/m2以下である。したがって、本発明のガラス板用合紙は、着色剤又は発色剤が適用された後のものを包含することは当然であるが、着色剤又は発色剤を適用した場合に表面に現れる20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域が70個/m2以下である、着色剤又は発色剤の適用前のものも包含する。
本発明の木材パルプから得られた合紙、特に本発明のガラス板合紙、はガラス板の間に挿入されて使用される。例えば、前記ガラス板合紙は複数のガラス板の間に、典型的には、1枚ずつ挿入され、全体として、積層体とされ、当該積層体が保管、運搬の対象となる。また、本発明の木材パルプからなる合紙、特に本発明のガラス板合紙、を用いてガラス板単体又は前記積層体を包装してもよい。したがって、本発明は、上記ガラス板用合紙をガラス板間に配置(特に、挿入)する工程を含むガラス板の保護方法の側面を有する。
ガラス板としては特に限定されるものではないが、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル(特にTFT液晶ディスプレイパネル)、有機ELディスプレイパネル等のフラットパネル・ディスプレイ用のガラス板であることが好ましい。フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板の表面には微細な電極、隔壁等が形成されるが、本発明の木材パルプからなるガラス板合紙、特に本発明のガラス板合紙、を使用することにより、ガラス板へのシリコーン等の疎水性物質の転写が抑制乃至回避されるので、ガラス板の表面に微細な電極、隔壁等が形成されても、疎水性物質による不都合を抑制乃至回避することができ、結果的に、ディスプレイの欠陥を抑制乃至回避することができる。
特に、ディスプレイの大型化に伴い、フラットパネル・ディスプレイ用のガラス板のサイズ及び重量は増大しているが、本発明の木材パルプからなるガラス板合紙、特に本発明のガラス板合紙、はそのような大型乃至大重量のガラス板の表面を良好に保護することができる。特に、本発明の木材パルプからなるガラス板合紙、特に本発明のガラス板合紙は、シリコーン、ピッチ、樹脂、ゴム、油及び疎水性異物を吸着したタルク等の疎水性物質の点在数が極めて少ないので、大重量のガラス板によって押圧されてもシリコーン等の疎水性物質がガラス板に転写することが抑制乃至回避される。したがって、本発明の木材パルプからなるガラス板合紙、特に本発明のガラス板合紙は、表面の清浄性が特に求められるフラットパネル・ディスプレイ用のガラス板に好適に使用することができる。
また、本発明はガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙の検査方法にも関する。本発明のガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙の検査方法は、
ガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙に着色剤又は発色剤を適用する工程、
前記適用後の前記ガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙の表面における20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域の個数を測定する工程、
前記着色又は発色不連続領域の前記個数及び前記ガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙の表面積から前記着色又は発色不連続領域の存在割合を決定する工程、
前記着色又は発色不連続領域の前記存在割合が85個/m2以下、好ましくは65個/m2以下、より好ましくは45個/m2以下、更により好ましくは30個/m2以下、更により好ましくは17個/m2以下のガラス板合紙用木材パルプ又は前記着色又は発色不連続領域の前記存在割合が70個/m2以下、好ましくは50個/m2以下、より好ましくは35個/m2以下、更により好ましくは20個/m2以下のガラス板用合紙を選別する工程
を含む。
ガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙に着色剤又は発色剤を適用する工程は、例えば、着色剤又は発色剤を含む溶液、分散液等の組成物を当該パルプ又は合紙に塗布することによって、或いは、着色剤又は発色剤を含む溶液、分散液等の組成物中に当該パルプ又は合紙を浸漬することによって実施可能である。疎水性の着色剤又は発色剤の溶液を前記パルプ又は合紙に塗布することが好ましい。前記塗布又は浸漬後に前記パルプ又は合紙を乾燥することが好ましい。前記組成物中の着色剤又は発色剤の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜20重量%が好ましく、0.01〜10重量%がより好ましく、0.1〜1重量%が更により好ましい。
前記適用後の前記ガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙の表面における20〜29μmの径の着色又は発色不連続領域の個数を測定する工程は、着色又は発色領域と非着色又は非発色領域とを着色の有無又は濃淡、例えば電磁波照射時の発色の有無又は濃淡で識別可能であることから、目視でも実施することができるが、光学機器により得られた前記ガラス板合紙木材パルプ又はガラス板用合紙の表面の画像を処理して自動的に測定を行うことが好ましい。
前記着色又は発色不連続領域の前記個数及び前記ガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙の表面積から前記着色又は発色不連続領域の存在割合を決定する工程では、当該個数及び表面積が既知であれば着色又は発色不連続領域の存在割合を単位面積当たりの個数(例えば、85個/m2、70個/m2等)として一義的に決定することができる。
前記着色又は発色不連続領域の前記存在割合が85個/m2以下のガラス板合紙用木材パルプ又は前記着色又は発色不連続領域の前記存在割合が70個/m2以下のガラス板用合紙を選別する工程は、例えば、予め設定された85個/m2以下又は70個/m2以下の基準に従って、当該基準に合致するガラス板合紙用木材パルプ又はガラス板用合紙を手動又は自動で選別することによって実施することができる。
前記着色剤又は発色剤の適用前のガラス板用合紙を上記基準に従って選別する場合は、例えば、同じロットの木材パルプによって得られた合紙の一部について上記適用・測定・決定工程を行い、当該合紙が上記基準に合致する場合に、当該ロットの木材パルプから調製された合紙の全部について基準を満たすとみなして合格とすることができる。
本発明の検査方法は、ガラス板合紙用木材パルプから調製された検査用紙又はガラス板用合紙の表面に存在するシリコーン等の疎水性物質の存在を視覚的に確認できるので、容易に実施することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
[ガラス板への転写試験方法(輸送テスト)]
アルミ製で75度の角度がつけられたL字架台上のガラス載置面に発泡ウレタンを敷き、ガラス板を垂直方向に載置するための載置面と、載置面の後端部から垂直方向に延びる背もたれ面に向けて、サイズ680mm×880mm×0.7mmのガラス板120枚と各ガラス板の間にガラス板合紙を挿入して、背もたれ面に平行となるように立てかけ、架台に固定された帯状のベルトを後端部から背もたれ面へ全周にわたり掛け渡してガラス板を固定した。上記のようにセットされた架台は、外部からの埃や塵等の混入を防ぐため包装資材で全面を被覆した。その後、トラックでの輸送テストを実施した。輸送テスト条件は、輸送距離1000km(輸送途中に40℃×95%RHの環境下に5日間保管)でテストを実施した。
[実施例1](木材パルプの製造)
蒸解工程と、洗浄工程と、酸素脱リグニン反応工程と、二酸化塩素及び過酸化水素による多段晒漂白工程とからなる針葉樹晒クラフトパルプの製造装置において、蒸解工程後にノットを除去した直後のドラムウォッシャーの洗浄液に使用される消泡剤として非シリコーン系の消泡剤である鉱物油系消泡剤「プロナールA5044」(東邦化学社製)の原液を適量連続添加した。また、プレス洗浄の工程でウォッシュプレスに添加される消泡剤として同じく「プロナールA5044」を適量加えた。なお、洗浄工程ではトルエンとメタノールを混合した溶剤で洗浄し、ろ過する溶剤洗浄を5回繰り返した。以上のように、製造工程中で非シリコーン系消泡剤を使用した針葉樹晒クラフトパルプAを得た。この針葉樹晒クラフトパルプAの形態を、定法に従って、厚さ1.2mm、坪量700g/m2のシート状パルプとした。
この針葉樹晒クラフトパルプAの表面に蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))濃度0.05重量%液を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は82.169個/m2であった。
[実施例2](木材パルプの製造)
実施例1と同様にして針葉樹晒クラフトパルプAを得た。
この針葉樹晒クラフトパルプAを原料としてJIS P 8222に準拠した方法で厚さ230μmの手すき紙を作製した。この手すき紙の表面に蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))1重量%を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は43.290個/m2であった。
[比較例1](木材パルプの製造)
消泡剤としてシリコーン系消泡剤「SNデフォーマー551K」(サンノプコ社製)を使用し、かつ、前記溶剤洗浄を行わない以外は実施例1及び2と同様にして針葉樹晒クラフトパルプBを得た。この針葉樹晒クラフトパルプBの形態を、定法に従って、厚さ1.2mm、坪量700g/m2のシート状パルプとした。
この針葉樹晒クラフトパルプBの表面に蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))1重量%を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は91.454個/m2であった。
また、この針葉樹晒クラフトパルプBを原料としてJIS P 8222に準拠した方法で厚さ230μmの手すき紙を作製した。この手すき紙の表面に蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))1重量%を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は58.603個/m2であった。
[実施例3](ガラス板合紙の製造)
木材パルプとして実施例1の針葉樹晒クラフトパルプAを100質量部用意し、これを離解して叩解度を520mlc.s.f.に調製したスラリーに紙力増強剤としてポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン1250、荒川化学工業社製)を全パルプ質量に対して0.5質量部添加し、0.4%濃度のパルプスラリーを調製した。これから、長網抄紙機を使用して、坪量50g/m2、厚さ0.093mmのガラス板合紙を得た。
このガラス板合紙の表面に、蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))1重量%を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は41.322個/m2であった。
[実施例4](ガラス板合紙の製造)
坪量30g/m2、厚さ0.054mmとした以外は実施例3と同様の製法によりガラス板合紙を得た。
このガラス板合紙の表面に、蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))1重量%を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は28.250個/m2であった。
[実施例5](ガラス板合紙の製造)
坪量80g/m2、厚さ0.125mmとした以外は実施例3と同様の製法によりガラス板合紙を得た。
このガラス板合紙の表面に、蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))1重量%を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は66.741個/m2であった。
[比較例2](ガラス板合紙の製造)
木材パルプとして比較例1の針葉樹晒クラフトパルプB100質量部を使用した以外は実施例3と同様の手法で、坪量50g/m2のガラス板合紙を得た。
このガラス板合紙の表面に、蛍光発色剤「ナイルレッド」(和光純薬工業(株))1重量%を塗布して、乾燥後に蛍光顕微鏡観察したところ、20〜29μmの径の発色不連続領域の存在割合は78.005個/m2であった。
実施例3〜5及び比較例2で得たガラス板合紙のガラス板への転写を輸送テストにて確認したところ、実施例3〜5の合紙を使用したガラス板を用いた液晶パネルのアレイ形成の際には、カラーフィルムの断線が認められなかった。一方、比較例2の合紙を使用したガラス板を用いた液晶パネルのアレイ形成の際には、カラーフィルムの断線が認められた。