詳細な説明
本発明の側面は、遺伝子サイレンシングに関与する方法および組成物に関する。本発明は、皮内注射または皮下投与を通じて、などのsd−rxRNA分子の皮膚への投与が、皮膚における遺伝子発現の効率的なサイレンシングをもたらすという驚くべき発見に、少なくとも部分的に基づく。さらに本発明の側面は、瘢痕形成が、創傷の72時間前と創傷の24時間後との間に治療的有効量の核酸分子を対象へ投与することによって、対象において低減され得るという驚くべき発見に、少なくとも部分的に基づく。sd−rxRNAは、易感染性の皮膚の処置において大きな潜在的可能性を秘めた治療用RNAi分子の新しいクラスを代表する。
本明細書に使用される「核酸分子」は、これらに限定されないが:sd−rxRNA、rxRNAori、オリゴヌクレオチド、ASO、siRNA、shRNA、miRNA、ncRNA、cp−lasiRNA、aiRNA、BMT−101、RXI−109、EXC−001、一本鎖核酸分子、二本鎖核酸分子、RNAおよびDNAを含む。いくつかの態様において、核酸分子は、化学修飾されたオリゴヌクレオチドなどの、化学修飾されたオリゴヌクレオチドである。
本明細書に使用される「創傷」は、これらに限定されないが、傷害、心的外傷、外科手術、易感染性の皮膚および熱傷(burn)を含む。
sd−rxRNA分子
本発明の側面は、sd−rxRNAメートル分子に関する。本明細書に使用される「sd−rxRNA」または「sd−rxRNA分子」は、自己送達型RNA分子、例えば2009年9月22日に出願されたPCT公開第WO2010/033247号(出願第PCT/US2009/005247号)、表題「低減されたサイズの自己送達型RNAi化合物」、2014年8月5日に特許付与された米国特許第8,796,443号、表題「低減されたサイズの自己送達型RNAi分子」、2009年9月22日に出願されたPCT出願第PCT/US2009/005246号、表題「皮膚適応におけるRNA干渉」、および、2014年3月4日に特許付与された米国特許第8,644,189号、表題「皮膚適応におけるRNA干渉」に記載され、参考として組み込まれたものなど、を指す。
簡単に述べると、sd−rxRNA(sd−rxRNAナノとも呼ばれる)は、最小長が16ヌクレオチドのガイド鎖および8〜18ヌクレオチド長のパッセンジャー鎖を含む、単離された非対称二本鎖核酸分子であって、ここで二本鎖核酸分子は二本鎖領域および一本鎖領域を有し、一本鎖領域は4〜12ヌクレオチド長を有し、かつ、少なくとも3つのヌクレオチド主鎖修飾を有する。好ましい態様において、二本鎖核酸分子は、平滑である1末端を有するか、または、1つもしくは2つのヌクレオチド突出を含む。sd−rxRNA分子は、化学修飾を通じて、いくつかの例において疎水性抱合体の付着を通じて、最適化され得る。
いくつかの態様において、sd−rxRNAは、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖を含む単離された二本鎖核酸分子を含み、ここで二本鎖である分子の領域は8〜15ヌクレオチド長であり、ここでガイド鎖は4〜12ヌクレオチド長の一本鎖領域を含有し、ここでガイド鎖の一本鎖領域は3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個のホスホロチオアート修飾を含有し、およびここで、二本鎖核酸のヌクレオチドの少なくとも40%は修飾されている。
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書において、本発明の、単離された二本鎖またはデュプレックス核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、ナノ分子、ナノRNA、sd−rxRNAナノ、sd−rxRNAまたはRNA分子を指す。
sd−rxRNAは、従来のsiRNAと比較して、はるかに効果的に細胞によって取り込まれる。これらの分子は、標的遺伝子のサイレンシングにおいて高度に効率的であって、血清の存在下における高活性、効率的な自己送達、多様なリンカーとの適合性、および、毒性に関連する化学修飾の存在の減少または完全な欠如を含む、以前に記載されたRNAi分子を凌駕する大きな利点を与える。
一本鎖ポリヌクレオチドとは対照的に、デュプレックスポリヌクレオチドは伝統的に細胞への送達が困難であったが、それは、これらが強固な構造および多数の負の電荷を有するために、その膜輸送が困難になっているからである。しかしながら、sd−rxRNAは、部分的に二本鎖であるにも拘わらず、in vivoで一本鎖として認識され、したがって、細胞膜を超えて効率的に送達されることが可能である。その結果、本発明のポリヌクレオチドは、多くの例において自己送達が可能である。よって、本発明のポリヌクレオチドは、従来のRNAi剤と同様の様式において製剤化されても、あるいは、細胞または対象へ単独で(または非送達型キャリアとともに)送達されてもよく、自己送達を可能にする。本発明の一態様において、分子の一部分が従来のRNAデュプレックスに類似し、分子の第2の部分が一本鎖である、自己送達型非対称二本鎖RNA分子が提供される。
本発明のオリゴヌクレオチドは、いくつかの側面において、二本鎖領域と5ヌクレオチドまたはそれより長い一本鎖領域とを含む非対称構造と、具体的な化学修飾パターンとの組み合わせを有し、親油性または疎水性の分子に抱合される。このクラスのRNAi様化合物は、in vitroおよびin vivoで優れた効力を有する。強固なデュプレックス領域のサイズの低減が、一本鎖領域へ適用されるホスホロチオアート修飾と組み合わせられると、観察される優れた効力に寄与すると考えられる。
本発明は、sd−rxRNA分子が、皮内注射および皮下投与を含む種々の方法を通じて、in vivoで効率的に皮膚へ送達されるという驚くべき発見に、少なくとも部分的に基づく。その上、sd−rxRNA分子は、これらが標的化された皮膚の領域において、遺伝子サイレンシングを媒介するのに効率的である。
sd−rxRNAを皮膚へ効果的に投与し、遺伝子発現をサイレンシングする方法は、2014年3月4日に特許付与された米国特許第8,664,189号、表題「皮膚への適応におけるRNA干渉」、2013年4月4日に出願された米国特許公開第US2014/0113950号、表題「皮膚および線維症への適応におけるRNA干渉」、2009年9月22日に出願されたPCT公開第WO 2010/033246号、表題「皮膚への適応におけるRNA干渉」、ならびに、2011年3月24日に出願されたPCT公開第WO2011/119887号、表題「皮膚および線維症への適応におけるRNA干渉」において実証されている。上で参考とされた特許および刊行物の各々は、それらの全体を参考として本明細書に組み込まれる。
例えば、米国特許公開第US2014/0113950号中の図42は、in vivoでのRXi−109の皮内注射(ラット皮膚)の前の、RXI−109(CTGFを標的化するsd−rxRNA)の2回の皮内注射に続く、CTGFサイレンシングを実証する。提示されたデータは、ラット真皮における切除による創傷モデルを使用する研究からのものである。RXI−109の2回の皮内注射に続き、CTGF・対・非標的化対照のサイレンシングは少なくとも5日間持続した。CTGFのmRNAの低減は、用量依存的:同用量の非標的化対照と比較して、300および600μgに対し、夫々51および67%であった。方法:RXI−109または非標的化対照(NTC)が、第1および3日に、ラット背上の4部位の各々への皮内注射(200μL注射につき300または600μg)によって投与された。4mmの切除による創傷が、第2用量(第3日)の30分後に、各注射部位にてなされた。創傷部位を包含し、組織を取り囲む末端生検サンプルが第8日に収集された。RNAが単離され、qPCRによる遺伝子発現分析へ供された。データは、TATAボックス結合タンパク質(TBP)ハウスキーピング遺伝子のレベルに対し正規化され、1.0に設定されたPBSビヒクル対照に対してグラフ化される。エラーバーは、個々の生検サンプル間の標準偏差を表す。RXI−109で処置された群・対・同用量の非標的化対照群のP値は、600μgでは**p<0.001であり、300μgでは*p<0.01であった。
本明細書に開示されるsd−rxRNA分子が、米国特許公開第US2014/0113950号(その全体が参考として組み込まれる)に開示されるsd−rxRNA分子と同じ様式で皮膚へ投与され得ることが理解されるべきである。
本発明の側面は、SPP1、CTFG、PTGS2、TGFB1およびTGFB2を含む遺伝子のサブセットを標的とする強力なsd−rxRNA分子などの強力なsd−rxRNA分子を同定するための細胞ベースのスクリーニングの使用に関する。いくつかの態様において、標的遺伝子が選択され、その遺伝子内に最適な標的配列を同定するためのアルゴリズムが適用される。例えば多くの配列が、1遺伝子に対して選択され得る。いくつかの例において、同定された配列は、試験の第1ラウンド用のRNAi化合物として生成される。例えば、最適な予測配列に基づくRNAi化合物は、スクリーニングの第1ラウンド用のrxRNAori(「ori」)配列として、最初に生成され得る。強力なRNAi化合物の同定後に、これらは、sd−rxRNA分子として生成され得る。
本発明に従って製剤化されたdsRNAはまた、rxRNAoriも含む。rxRNAoriは、2009年2月11日に出願されたPCT公開第WO2009/102427号(出願第PCT/US2009/000852号)、表題「修飾されたRNAiポリヌクレオチドおよびその使用」ならびに2011年2月17日に公開された米国特許公開第US 2011-0039914号、表題「修飾されたRNAiポリヌクレオチドおよびその使用」に記載され、参考として組み込まれた、RNA分子のクラスを指す。
いくつかの態様において、rxRNAori分子は、標的遺伝子の発現を阻害するための、12〜35ヌクレオチド長の二本鎖RNA(dsRNA)コンストラクトを含み、これは以下を含む:5’末端および3’末端を有するセンス鎖、ここでセンス鎖は2’修飾リボース糖により高度に修飾され、ここでセンス鎖の中心部分における3〜6個のヌクレオチドは2’修飾リボース糖により修飾されておらず、および、5’末端および3’末端を有するアンチセンス鎖、これはセンス鎖および標的遺伝子のmRNAにハイブリダイズしており、ここでdsRNAは標的遺伝子の発現を、配列に依存的な様式で阻害する。
rxRNAoriは、本明細書に記載の修飾をいずれも含有し得る。いくつかの態様において、rxRNAoriのヌクレオチドの少なくとも30%は修飾されている。例えば、rxRNAoriのヌクレオチドの少なくとも30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が修飾されている。いくつかの態様において、sd−rxRNAのヌクレオチドの100%が修飾されている。いくつかの態様において、rxRNAoriのパッセンジャー鎖しか修飾を含有しない。
いくつかの態様において、本発明のRNAi化合物は、デュプレックス領域(8〜15塩基長が効率的なRISC侵入に必要とされる)および4〜12ヌクレオチド長の一本鎖領域を含む非対称化合物を含み;13または14ヌクレオチドのデュプレックスを持つ。6または7ヌクレオチドの一本鎖領域が、いくつかの態様において好ましい。新しいRNAi化合物の一本鎖領域はまた、2〜12のホスホロチオアートのヌクレオチド間連結部(ホスホロチオアート修飾として言及される)をも含む。6〜8のホスホロチオアートヌクレオチド間連結部が、いくつかの態様において好ましい。加えて、本発明のRNAi化合物はまた、ユニークな化学修飾パターンをも含み、これは安定性を提供し、RISC侵入に適合する。これらの要因の組み合わせが、in vitroおよびin vivoでのRNAi試薬の送達に高度に有用である、予想外の特性をもたらした。
安定性を提供し、かつ、RISC侵入に適合する、化学修飾されたパターンは、センス鎖またはパッセンジャー鎖ならびにアンチセンス鎖またはガイド鎖への修飾を含む。例えば、パッセンジャー鎖は、安定性を確実にし、かつ、活性に干渉しない、いずれの化学的実体によっても、修飾され得る。かかる修飾は、2’リボ修飾(O−メチル、2’F、2デオキシ等)およびホスホロチオアート修飾のような主鎖修飾を含む。パッセンジャー鎖における好ましい化学修飾パターンは、パッセンジャー鎖内のCおよびUヌクレオチドのOメチル修飾を含む。代わりに、パッセンジャー鎖は完全にOメチル修飾されてもよい。
ガイド鎖はまた、例えば、RISC侵入に干渉せずに、安定性を確実にするいずれの化学修飾によっても修飾されてもよい。ガイド鎖における好ましい化学修飾パターンは、CおよびUヌクレオチドの大多数が2’F修飾され、かつ、5’末端がリン酸化されているものを含む。ガイド鎖における別の好ましい化学修飾パターンは、1位と11〜18位のC/Uとの2’Oメチル修飾および5’末端の化学的リン酸化を含む。ガイド鎖におけるさらに別の好ましい化学修飾パターンは、1位と11〜18位のC/Uとの2’Oメチル修飾および5’末端の化学的リン酸化ならびに2〜10位におけるC/Uの2’F修飾を含む。いくつかの態様において、パッセンジャー鎖および/またはガイド鎖は、少なくとも1つの5−メチルCまたはU修飾を含有する。
いくつかの態様において、sd−rxRNA中のヌクレオチドのうち少なくとも30%が修飾されている。例えば、sd−rxRNA中のヌクレオチドのうち少なくとも30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%が修飾されている。いくつかの態様において、sd−rxRNA中のヌクレオチドの100%が修飾されている。
本発明のオリゴヌクレオチドの上記の化学修飾パターンは、良好な耐性を示し、非対称RNAi化合物の効力を実際に改善した。
RNAiへの修飾の組み合わせは、ポリヌクレオチドにおいてともに使用されるとき、RNAiの受動的取り込みにおける最適な効力の達成をもたらし得る。記載された構成要素(ガイド鎖の安定化、ホスホロチオアートの伸長、センス鎖の安定化および疎水性抱合体)のいずれかの排除、またはいくつかの例において、サイズの増加は、準最適な効力をもたらし、いくつかの例において、効力の完全な喪失をもたらす。要素の組み合わせは、HeLa細胞などの細胞への受動的送達の後であっても十分に活性がある化合物の開発をもたらす。
下に提示される例におけるデータは、本発明のオリゴヌクレオチドの、in vitroおよびin vivoでの両方における、高い効力を実証する。
sd−rxRNAは、いくつかの例において、新規の型の化学的性質(chemistries)を使用して化合物の疎水性を改善することにより、さらに改善され得る。例えば、1つの化学的性質は、疎水性塩基修飾の使用に関する。あらゆる位置におけるあらゆる塩基が、修飾が塩基の分配係数の増大をもたらす限りにおいて、修飾されてもよい。修飾の化学的性質のための好ましい位置は、ピリミジンの4位および5位である。これらの位置の主要な利点は、(a)合成の容易性、および、(b)RISC複合体のローディングおよび標的認識のために必須である、塩基対形成およびA型らせん(A form helix)形成への干渉がないこと、である。複数のデオキシウリジンが全体的な化合物の効力に干渉せずに存在するsd−rxRNA化合物のバージョンが使用された。加えて、組織分布および細胞取り込みにおける主要な改善は、疎水性抱合体の構造を最適化することにより得られ得る。好ましい態様のいくつかにおいて、ステロールの構造は、C17に付着された鎖(C17 attached chain)を変える(増大する/減少する)ように修飾される。この型の修飾は、in vivoでの細胞取り込みの大きな増大を、および、組織取り込み成功率(prosperities)の改善をもたらす。
本発明の側面は、sd−rxRNAおよびrxRNAoriなどの二本鎖リボ核酸分子(dsRNA)に関する。本発明に関連するdsRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み得、ここでアンチセンス鎖は、表2、5、6、9、11、12、13、14、15、16、17および23内の配列から選択される配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドに相補的であり、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。例えば、アンチセンス鎖は、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の連続したヌクレオチドに相補的であり得るか、または、表2、5、6、9、11、12、13、14、15、16、17および23内の配列から選択される配列の25個のヌクレオチドに相補的であり得、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。
本発明に関連するdsRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み得、ここでセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、表1〜27内の配列から選択される配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含み、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。例えば、センス鎖および/またはアンチセンス鎖は、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の連続したヌクレオチドを含み得るか、または、表1〜27内の配列から選択される配列の25個のヌクレオチドを含み得、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。
本発明の側面は、CTGFに対して指向するdsRNAに関する。例えば、CTGFに対して指向するdsRNAのアンチセンス鎖は、表11、12および15内の配列から選択される配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドに相補的であり得、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。CTGFに対して指向するdsRNAのセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、表10、11、12、15、20および24内の配列から選択される配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含み得、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。
いくつかの態様において、センス鎖は、配列番号2463、3429、2443、3445、2459、3493、2465、3475および3469からなる群から選択される配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含み、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。ある態様において、センス鎖は、配列番号2463、3429、2443、3445、2459、3493、2465、3475および3469からなる群から選択される配列を含むか、または、これらからなり、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。
いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、2464、3430、4203、3446、2460、3494、2466、3476および3470からなる群から選択される配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含み、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。ある態様において、アンチセンス鎖は、2464、3430、4203、3446、2460、3494、2466、3476および3470からなる群から選択される配列を含むか、または、これらからなり、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。
好ましい態様において、センス鎖は(GCACCUUUCUAGA)(配列番号3)を含み、アンチセンス鎖は(UCUAGAAAGGUGCAAACAU)(配列番号4)を含み、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号2463および2464夫々から参考として組み込まれる。配列番号3および配列番号4の配列は、本明細書に記載の修飾に従い様々な様式で修飾され得る。配列番号3に好ましい修飾パターンは、(G.mC.A.mC.mC.mU.mU.mU.mC.mU.A*mG*mA.TEG−Chl)(配列番号1)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3429から参考として組み込まれる。
配列番号4に好ましい修飾パターンは、(P.mU.fC.fU.A.G.mA.A.mA.G.G.fU.G.mC*A*A*A*mC*A*U)(配列番号2)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3430から参考として組み込まれる。(G.mC.A.mC.mC.mU.mU.mU.mC.mU.A*mG*mA.TEG−Chl)(配列番号1)のセンス鎖および(P.mU.fC.fU.A.G.mA.A.mA.G.G.fU.G.mC*A*A*A*mC*A*U)(配列番号2)のアンチセンス鎖からなるsd−rxRNAはまた、RXi−109とも呼ばれ、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号に記載され、それらから参考として組み込まれる。TEG−Chlは、TEGリンカーを持つコレステロールを指し;mは2’OMeを指し;fは2’フルオロを指し;*はホスホロチオアート連結部を指し;および.は、ホスホジエステル連結部を指し;Pはリン酸化を表す。
別の好ましい態様において、センス鎖は(UUGCACCUUUCUAA)(配列番号5)を含み、アンチセンス鎖は(UUAGAAAGGUGCAAACAAGG)(配列番号6)を含み、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号2443および4203夫々から参考として組み込まれる。配列番号5および配列番号6の配列は、本明細書に記載の修飾に従い様々な様式で修飾され得る。配列番号5に好ましい修飾パターンは、(mU.mU.G.mC.A.mC.mC.mU.mU.mU.mC.mU*mA*mA.TEG−Chl)(配列番号7)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3445から参考として組み込まれる。配列番号6に好ましい修飾パターンは、(P.mU.fU.A.G.A.mA.A.G.G.fU.G.fC.mA.mA*mA*fC*mA*mA*mG*G.)(配列番号8)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3446から参考として組み込まれる。
別の好ましい態様において、センス鎖は(GUGACCAAAAGUA)(配列番号9)を含み、アンチセンス鎖は(UACUUUUGGUCACACUCUC)(配列番号10)を含み、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号2459および2460夫々から参考として組み込まれる。配列番号9および配列番号10の配列は、本明細書に記載の修飾に従い様々な様式で修飾され得る。配列番号9に好ましい修飾パターンは、(G.mU.G.A.mC.mC.A.A.A.A.G*mU*mA.TEG−Chl)(配列番号11)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3493から参考として組み込まれる。配列番号10に好ましい修飾パターンは、(P.mU.A.fC.fU.fU.fU.fU.G.G.fU.mC.A.mC*A*mC*mU*mC*mU*C.)(配列番号12)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3494から参考として組み込まれる。
別の好ましい態様において、センス鎖は(CCUUUCUAGUUGA)(配列番号13)を含み、アンチセンス鎖は(UCAACUAGAAAGGUGCAAA)(配列番号14)を含み、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号2465および2466夫々から参考として組み込まれる。配列番号13および配列番号14の配列は、本明細書に記載の修飾に従い様々な様式で修飾され得る。配列番号13に好ましい修飾パターンは、(mC.mC.mU.mU.mU.mC.mU.A.G.mU.mU*mG*mA.TEG−Chl)(配列番号15)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3469から参考として組み込まれる。配列番号14に好ましい修飾パターンは、(P.mU.fC.A.A.fC.fU.A.G.A.mA.A.G.G*fU*mG*fC*mA*mA*A.)(配列番号16)に示され、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3470から参考として組み込まれる。
別の好ましい態様において、センス鎖は、配列番号1(G.mC.A.mC.mC.mU.mU.mU.mC.mU.A*mG*mA.TEG−Chl)を含み、アンチセンス鎖は、配列番号17(P.mU.fC.fU.A.G.mA.A.mA.G.G.fU.G.fC*mA*mA*mA*fC*mA*U.)を含み、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号における配列番号3475および3476夫々から参考として組み込まれる。
CTGFに対して指向するrsRNAoriの好ましい態様は、配列番号1835、1847、1848および1849からなる群から選択される配列の少なくとも12個の連続したヌクレオチドを含み得、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。いくつかの態様において、rsRNAoriのセンス鎖は、配列番号1835、1847、1848および1849を含むか、または、これらからなり、これは、PCT公開第WO 2011/119887号および米国特許公開第US2014/0113950号から参考として組み込まれる。
本発明の側面は、sd−rxRNAおよびrxRNAoriなどのdsRNAを含む組成物に関する。いくつかの態様において、組成物は、異なる遺伝子に対して指向する2以上のdsRNAを含む。
いくつかの態様において、核酸分子はsiRNAである。「RNAi」は、用語「RNA干渉」のために文献中に使用される略称であるが、それは一般に、細胞中の標的遺伝子の発現が、標的遺伝子に相補的な配列を有する二本鎖RNA分子を加えることによって干渉される、細胞過程を指す。低分子干渉RNA(siRNA)化合物は典型的に、ガイド鎖およびパッセンジャー鎖の両方を含有する二本鎖RNAデュプレックスである。典型的なsiRNAのデュプレックス長は13〜30塩基対である。デュプレックスは、平滑末端であっても、突出を含有しても、実質的に(in nature)非対称(例として一本鎖領域(単数または複数)を含有する)であってもよい。siRNAの化学修飾は、siRNAの安定性を増強し、免疫刺激を低減し、細胞透過特性を増大することが共通する。
一本鎖siRNAはまた、文献にも記載される
いくつかの態様において、核酸分子はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。ASOは一本鎖化合物であり、典型的には7〜25ヌクレオチド長であり、安定化修飾で装飾されている。典型的なASO(ギャップマー(gapmer)としても知られる)は、〜20ヌクレオチドの長さであり、5’および3’末端上に末端ブロッキング基(2’Oメトキシ)ならびに中央にDNAを含有する。加えて、ASOは典型的には、十分にホスホロチオアート化されている。
本発明は、その適用に関して、以下の説明において記載されるかまたは図面において例示される構成および構成要素の配置の詳細に限定されない。本発明は、他の態様および多様な方法において実施されるかまたは行われることが可能である。また、本明細書に使用される用語および専門用語は、説明を目的とするものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」およびそれらの変化形の使用は、その後に列挙される項目およびその均等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
よって、本発明の側面は、ガイド(アンチセンス)鎖およびパッセンジャー(センス)鎖を含む、単離された二本鎖核酸分子に関する。本明細書に使用される用語「二本鎖」は、ヌクレオモノマーの少なくとも一部が相補的であり、二本鎖領域を形成するように水素結合されている、1または2以上の核酸分子を指す。いくつかの態様において、ガイド鎖の長さは、16〜29ヌクレオチド長の範囲である。ある態様において、ガイド鎖は、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29ヌクレオチド長である。ガイド鎖は標的遺伝子に対して相補性を有する。ガイド鎖と標的遺伝子との間の相補性は、ガイド鎖のいずれの部分にわたっても存在することができる。本明細書に使用される相補性は、ガイド鎖が標的に対してRNAiを媒介できるように十分に相補的である限りにおいて、完全な相補性であっても、より不完全な相補性であってもよい。いくつかの態様において、相補性とは、ガイド鎖と標的との間の、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満のミスマッチを指す。
完全な相補性とは、100%の相補性を指す。よって、本発明は、遺伝子変異、系統多型、または、進化による分岐に起因して予測可能な配列の変化に耐性を示すことができるという利点を有する。例えば、標的配列と比較して挿入、欠失および単一の点変異を有するsiRNAもまた、阻害について有効であることが見出されている。さらに、siRNAの全ての部位が標的の認識について同等に寄与するわけではない。siRNAの中心におけるミスマッチは最も重要であり、本質的に(essentially)標的RNAの切断を無効化する。アンチセンス鎖に関して、中心の上流または切断部位の上流におけるミスマッチは、耐性を示すが、標的RNAの切断を著しく低減する。アンチセンス鎖に関して、中心または切断部位の下流におけるミスマッチ、好ましくは3’末端の付近、例えばアンチセンス鎖の3’末端から1、2、3、4、5または6ヌクレオチドに位置するものは、耐性を示し、標的RNAの切断をごく僅かしか低減しない。
いかなる特定の理論によっても拘束されることを望まないが、いくつかの態様において、ガイド鎖は、少なくとも16ヌクレオチドの長さであり、RISC中でアルゴノートタンパク質をアンカーする。いくつかの態様において、ガイド鎖がRISC中へロードするとき、これは明確なシード領域を有し、標的mRNAの切断は、ガイド鎖の10〜11位にわたって行われる。いくつかの態様において、ガイド鎖の5’末端は、リン酸化されているかまたはリン酸化されることができる。本明細書に記載される核酸分子は、最短トリガーRNA(minimum trigger RNA)として言及される場合もある。
いくつかの態様において、パッセンジャー鎖の長さは、8〜15ヌクレオチド長の範囲である。ある態様において、パッセンジャー鎖は、8、9、10、11、12、13、14または15ヌクレオチド長である。パッセンジャー鎖は、ガイド鎖に対して相補性を有する。パッセンジャー鎖とガイド鎖との間の相補性は、パッセンジャーまたはガイド鎖のいずれの部位にわたっても存在してもよい。いくつかの態様において、ガイド鎖とパッセンジャー鎖との間には、分子の二本鎖領域内に100%の相補性が存在する。
本発明の側面は、最小二本鎖領域を有する二本鎖核酸分子に関する。いくつかの態様において、分子の二本鎖である領域は、8〜15ヌクレオチド長の範囲である。ある態様において、分子の二本鎖である領域は、8、9、10、11、12、13、14または15ヌクレオチド長である。ある態様において、二本鎖領域は、13または14ヌクレオチド長である。ガイド鎖とパッセンジャー鎖との間に100%の相補性が存在してもよく、または、ガイド鎖とパッセンジャー鎖との間に1または2以上のミスマッチが存在してもよい。いくつかの態様において、二本鎖分子の一方の末端において、分子は、平滑末端であるかまたは1ヌクレオチドの突出を有する。分子の一本鎖領域は、いくつかの態様において、4〜12ヌクレオチド長である。例えば、一本鎖領域は、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヌクレオチド長であってよい。しかしながら、ある態様において、一本鎖領域はまた、4ヌクレオチド長未満であっても、または、2ヌクレオチド長より長くてもよい。ある態様において、一本鎖領域は6ヌクレオチド長である。
本発明に関連するRNAiコンストラクトは、−13kkal/mol未満の熱力学的安定性(ΔG)を有することができる。いくつかの態様において、熱力学的安定性(ΔG)は、−20kkal/mol未満である。いくつかの態様において、(ΔG)が−21kkal/mol未満となったとき、効力の喪失が存在する。いくつかの態様において、−13kkal/molより高い(ΔG)値は、本発明の側面に適合性である。いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、いくつかの態様において、相対的に高い(ΔG)値を有する分子は、相対的に高い濃度において活性になる場合があり、一方、相対的に低い(ΔG)値を有する分子は、相対的に低い濃度において活性になる場合がある。いくつかの態様において、(ΔG)値は、−9kkcal/molよりも高くてもよい。最小二本鎖領域を有する本発明に関連するRNAiコンストラクトにより媒介される遺伝子サイレンシング効果は予測できないが、それは、ほぼ同一の設計であるが熱力学的安定性がより低い分子は、不活性であることが示されているからである(Rana et al. 2004)。
いかなる理論によっても拘束されることを望まないが、本明細書に記載される結果は、dsRNAまたはdsDNAの8〜10bpの伸長が、RISCのタンパク質構成要素またはRISCのコファクターにより構造的に認識されるであろうことを示唆する。さらに、タンパク質構成要素により感受され得るか、および/または、かかる構成要素と相互作用するために十分に安定であり得、その結果アルゴノートタンパク質中へロードされ得る、トリガー化合物(triggering compound)のためのフリーエネルギー要求が存在する。最適な熱力学が存在して、好ましくは少なくとも8ヌクレオチドである二本鎖部分が存在する場合、デュプレックスは認識され、RNAi機構中にロードされるであろう。
いくつかの態様において、熱力学的安定性は、LNA塩基の使用を通して増大する。いくつかの態様において、追加の化学修飾が導入される。化学修飾の数個の非限定例は、5’ホスファート、2’−O−メチル、2’−O−エチル、2’−フルオロ、リボチミジン、C−5プロピニル−dC(pdC)およびC−5プロピニル−dU(pdU);C−5プロピニル−C(pC)およびC−5プロピニル−U(pU);5−メチルC、5−メチルU、5−メチルdC、5−メチルdUメトキシ、(2,6−ジアミノプリン)、5’−ジメトキシトリチル−N4−エチル−2’−デオキシシチジンおよびMGB(副溝結合剤)を含む。同一分子内で1つより多くの化学修飾を組み合わせられ得ることが、理解されるべきである。
本発明に関連する分子は、効力の増大および/または毒性の低減のために、最適化される。例えば、ガイドおよび/またはパッセンジャー鎖のヌクレオチドの長さ、および/または、ガイドおよび/またはパッセンジャー鎖におけるホスホロチオアート修飾の数は、いくつかの側面においてRNA分子の効力に影響を及ぼし、一方、2’−フルオロ(2’F)修飾を2’−O−メチル(2’OMe)修飾により置き換えることは、いくつかの側面において分子の毒性に影響を及ぼす。具体的には、分子の2’F含有物の低減は、分子の毒性を低下させると予測される。例のセクションは、2’F修飾が排除された分子を提示し、先に記載のRNAi化合物に対して、予測される毒性の低減に起因する利点を提供する。さらに、RNA分子中のホスホロチオアート修飾の数は、細胞内への分子の取り込み、例えば細胞内への分子の受動的取り込みの効率に影響を及ぼし得る。本明細書に記載される分子の好ましい態様は、2’F修飾を有さず、なお細胞取り込みおよび組織への浸透における同等の効力により特徴づけられる。かかる分子は、2’Fの大量使用により重度に修飾されたAccellおよびWolfrumにより記載される分子などの先行技術に対して、顕著な改善を表わす。
いくつかの態様において、ガイド鎖は、およそ18〜19ヌクレオチドの長さであり、およそ2〜14のホスファート修飾を有する。例えば、ガイド鎖は、ホスファート修飾された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または14より多くのヌクレオチドを含有し得る。ガイド鎖は、RISC侵入に干渉せずに安定性を増大させる1以上の修飾を含有してもよい。ホスホロチオアート修飾ヌクレオチドなどのホスファート修飾ヌクレオチドは、3’末端にあっても、5’末端にあっても、または、ガイド鎖全体に広がっていてもよい。いくつかの態様において、ガイド鎖の3’末端の10ヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のホスホロチオアート修飾ヌクレオチドを含有する。
ガイド鎖はまた、2’Fおよび/または2’OMe修飾を含有し得るが、これは、分子全体を通して位置され得る。いくつかの態様において、ガイド鎖の1位のヌクレオチド(ガイド鎖の最も5’の位置におけるヌクレオチド)は、2’OMe修飾されているか、および/または、リン酸化されている。ガイド鎖中のCおよびUヌクレオチドは、2’F修飾され得る。例えば、19ntのガイド鎖の2〜10位(または異なる長さの鎖における対応する位置)におけるCおよびUヌクレオチドは、2’F修飾され得る。ガイド鎖中のCおよびUヌクレオチドもまた、2’OMe修飾され得る。
例えば、19ntのガイド鎖の11〜18位(または異なる長さの鎖における対応する位置)におけるCおよびUヌクレオチドは、2’OMe修飾され得る。いくつかの態様において、ガイド鎖の最も3’末端におけるヌクレオチドは、未修飾である。ある態様において、ガイド鎖中のCおよびUの大部分は、2’F修飾されており、ガイド鎖の5’末端はリン酸化されている。他の態様において、1位、および、11〜18位におけるCまたはUは、2’OMe修飾されており、ガイド鎖の5’末端はリン酸化されている。他の態様において、1位、および、11〜18位におけるCまたはUは、2’OMe修飾されており、ガイド鎖の5’末端はリン酸化されており、2〜10位におけるCまたはUは2’F修飾されている。
いくつかの側面において、最適なパッセンジャー鎖は、およそ11〜14ヌクレオチドの長さである。パッセンジャー鎖は、安定性を増大させる修飾を含有してもよい。パッセンジャー鎖における1以上のヌクレオチドは、2’OMe修飾され得る。いくつかの態様において、パッセンジャー鎖における1以上のCおよび/またはUヌクレオチドが2’OMe修飾されているか、または、パッセンジャー鎖におけるCおよびUヌクレオチドの全てが2’OMe修飾されている。ある態様において、パッセンジャー鎖における全てのヌクレオチドが2’OMe修飾されている。パッセンジャー鎖上の1以上のヌクレオチドはまた、ホスホロチオアート修飾などのホスファート修飾もなされ得る。パッセンジャー鎖はまた、2’リボ、2’Fおよび2デオキシ修飾、または、上のいずれの組み合わせをも含有し得る。例において実証されるように、ガイド鎖とパッセンジャー鎖との両方における化学修飾パターンは、良好な耐性を示し、化学修飾の組み合わせがRNA分子の効力および自己送達の増大をもたらすことが、本明細書に示される。
本発明の側面は、RNAiについて先に使用されてきた分子と比較した場合、二本鎖領域に対して相対的に長い一本鎖領域を有するRNAiコンストラクトに関する。分子の一本鎖領域は、細胞取り込みまたは遺伝子サイレンシングを促進するために修飾されていてもよい。いくつかの態様において、一本鎖領域のホスホロチオアート修飾は、細胞取り込みおよび/または遺伝子サイレンシングに影響を及ぼす。ガイド鎖のホスホロチオアート修飾されている領域は、分子の一本鎖および二本鎖の両領域内にヌクレオチドを含み得る。いくつかの態様において、一本鎖領域は、2〜12のホスホロチオアート修飾を含む。例えば、一本鎖領域は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のホスホロチオアート修飾を含み得る。いくつかの例において、一本鎖領域は、6〜8のホスホロチオアート修飾を含む。
本発明に関連する分子はまた、細胞取り込みのためにも最適化される。本明細書に記載されるRNA分子において、ガイド鎖および/またはパッセンジャー鎖は、抱合体に付着され得る。ある態様において、抱合体は疎水性である。疎水性の抱合体は、10より高い分配係数を有する低分子であり得る。抱合体は、コレステロールなどのステロール型分子であっても、または、C17に付着した長さが増大したポリ炭素鎖を有する分子であってもよく、抱合体の存在は、脂質トランスフェクション試薬の有無に関らずRNA分子が細胞に取り込まれる能力に影響を及ぼし得る。抱合体は、疎水性リンカーを通して、パッセンジャー鎖またはガイド鎖に付着され得る。
いくつかの態様において、疎水性リンカーは5〜12Cの長さであり、および/または、ヒドロキシピロリジンをベースとする。いくつかの態様において、疎水性抱合体はパッセンジャー鎖に付着し、パッセンジャー鎖および/またはガイド鎖のいずれかのCU残基は、修飾されている。いくつかの態様において、パッセンジャー鎖および/またはガイド鎖のCU残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、修飾されている。いくつかの側面において、本発明に関連する分子は、自己送達性(sd)である。本明細書において用いられる場合、「自己送達(self-delivery)」とは、分子が、トランスフェクション試薬などの追加の送達ビヒクルを必要とせずに細胞へ送達される能力を指す。
本発明の側面は、RNAiにおける使用のために分子を選択することに関する。8〜15ヌクレオチドの二本鎖領域を有する分子は、RNAiにおける使用のために選択され得る。いくつかの態様において、分子は、その熱力学的安定性(ΔG)に基づいて選択される。いくつかの態様において、−13kkal/mol未満の(ΔG)を有する分子が選択されるであろう。例えば、(ΔG)値は、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−21、−22または−22kkal/mol未満であってもよい。他の態様において、(ΔG)値は、−13kkal/molより高くてもよい。例えば、(ΔG)値は、−12、−11、−10、−9、−8、−7または−7kkal/molより高くてもよい。ΔGは、当該技術分野において知られているいずれの方法をも使用して計算され得ることが理解されるべきである。いくつかの態様において、ΔGは、Mfoldインターネットサイト(http://mfold.bioinfo.rpi.edu/cgi-bin/rna-form1.cgi)を通して利用可能なMfoldを使用して計算される。
ΔGを計算するための方法は、以下の参考文献において記載され、それらから参考として組み込まれる:Zuker, M. (2003) Nucleic Acid Res., 31(13):3406-15;Mathews, D. H., Sabina, J., Zuker, M. and Turner, D. H. (1999) J. Mol. Biol. 288:911-940;Mathews, D. H., Disney, M. D., Childs, J. L., Schroeder, S. J., Zuker, M., and Turner, D. H. (2004) Proc. Natl. Acad. Sci. 101:7287-7292;Duan, S., Mathews, D. H., and Turner, D. H. (2006) Biochemistry 45:9819-9832;Wuchty, S., Fontana, W., Hofacker, I. L., and Schuster, P. (1999) Biopolymers 49:145-165。
ある態様において、ポリヌクレオチドは、5’および/または3’末端の突出を含有する。ポリヌクレオチドの一端におけるヌクレオチド突出の数および/または配列は、ポリヌクレオチドの他端と同じであっても異なっていてもよい。ある態様において、突出ヌクレオチドの1以上は、ホスホロチオアートまたは2’−OMe修飾などの化学修飾を含有してもよい。
ある態様において、ポリヌクレオチドは、未修飾である。他の態様において、少なくとも1つのヌクレオチドが修飾されている。さらなる態様において、修飾は、ガイド配列の5’末端から2つ目のヌクレオチドにおいて、2’−Hまたは2’−修飾されたリボース糖を含む。「2つ目のヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドの5’末端から2つ目のヌクレオチドとして定義される。
本明細書に使用される「2’修飾されたリボース糖」は、2’−OH基を有さないリボース糖を含む。「2’修飾されたリボース糖」は、(未修飾の基準のDNAヌクレオチドにおいて見出される)2’−デオキシリボースを含まない。例えば、2’修飾されているリボース糖は、2’−O−アルキルヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、2’−デオキシヌクレオチドまたはこれらの組み合わせであってもよい。
ある態様において、2’修飾されているヌクレオチドは、ピリミジンヌクレオチド(例としてC/U)である。2’−O−アルキルヌクレオチドの例は、2’−O−メチルヌクレオチドまたは2’−O−アリルヌクレオチドを含む。
ある態様において、上述の5’末端修飾を持つ本発明のsd−rxRNAポリヌクレオチドは、特定された5’末端修飾がない類似のコンストラクトと比較したとき、有意に(例として、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%またはそれを超えて)より低い「オフ・ターゲット(off-target)」遺伝子サイレンシングを呈し、よって、RNAi試薬または治療の全体的な特異性を大きく改善する。
本明細書に使用される「オフ・ターゲット」遺伝子サイレンシングは、例えばアンチセンス(ガイド)配列と、意図しない標的mRNA配列との間の偽の配列相同性に起因する、意図しない遺伝子サイレンシングを指す。
本発明のこの側面に従うと、あるガイド鎖修飾は、RNAi活性を著しく低下させずに(またはRNAi活性を全く低下させずに)、さらに、ヌクレアーゼ安定性を増大させ、および/または、インターフェロン誘導を低下させる。
RNAiコンストラクトがヘアピンを伴ういくつかの態様において、5’ステム配列は、ポリヌクレオチドの5’末端上の2番目のヌクレオチドにて、2’−O−メチル修飾されたヌクレオチドなどの2’修飾されたリボース糖を含んでもよく、いくつかの態様においては、他の修飾ヌクレオチドを含まなくてもよい。かかる修飾を有するヘアピン構造は、該位置にて2’−O−メチル修飾がない類似のコンストラクトと比較して、標的特異性の増強またはオフ・ターゲットサイレンシングの低減を有してもよい。
特定の5’ステム配列の修飾と3’ステム配列の修飾とのある組み合わせは、標的遺伝子の発現を阻害する能力の増強、血清安定性の増強、および/または、標的特異性の増大などにより部分的に表わされる、さらなる予想外の利点をもたらしてもよい。
ある態様において、ガイド鎖は、ガイド鎖の5’末端における2番目のヌクレオチドにて、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含み、かつ、他の修飾ヌクレオチドを含まない。
他の側面において、本発明のsd−rxRNA構造は、マイクロRNA機構によって、配列依存的な遺伝子サイレンシングを媒介する。本明細書に使用される用語「マイクロRNA」(「miRNA」)はまた、当該技術分野において、「小分子RNA(small temporal RNA)」(「stRNA」)としても言及され、遺伝子的に(例として、ウイルス、哺乳動物または植物ゲノムにより)コードされる小さい(10〜50ヌクレオチドの)RNAであって、RNAサイレンシングを指向または媒介することができるものを指す。「miRNA障害」は、miRNAの異常な発現または活性により特徴づけられる疾患または障害を指すべきである。
マイクロRNAは、マウス、昆虫および哺乳動物において、発生またはがんなどの重要な経路において標的遺伝子を下方調節することに関与する。マイクロRNA機構を通した遺伝子サイレンシングは、miRNAとその標的メッセンジャーRNA(mRNA)との特異的であるがなお不完全な塩基対形成により、達成される。標的mRNA発現のマイクロRNA媒介性の下方調節において、多様な機構が使用されてもよい。
miRNAは、およそ22ヌクレオチドの非コードRNAであって、植物および動物の発生の間中、転写後または翻訳後のレベルにて、遺伝子発現を調節し得る。miRNAの1つの共通の特徴は、それらがプレmiRNA(pre-miRNA)と称されるおよそ70ヌクレオチドの前駆体RNAステムループから、恐らくはRNaseIII型酵素であるダイサーまたはそのホモログによって、切り取られることである。天然に存在するmiRNAは、in vivoで内因性遺伝子により発現され、ヘアピンまたはステムループ前駆体(プレmiRNAまたはプリmiRNA(pri-miRNA))から、ダイサーまたは他のRNAseによりプロセッシングされる。miRNAは、in vivoで二本鎖デュプレックス(double-stranded duplex)として一過性に存在し得るが、一方の鎖のみが遺伝子サイレンシングを指揮するためにRISC複合体に取り込まれる。
いくつかの態様において、細胞取り込みおよびmiRNA活性の阻害において有効なsd−rxRNA化合物のバージョンが記載される。化合物は本質的に、RISC侵入性のバージョンに類似するが、大きな鎖の化学修飾パターンが、切断を遮断してRISC作用の効果的な阻害剤として作用するように、最適化されている。例えば、化合物は、先に記載のPS含有物で完全にまたは殆どOメチル修飾されていてもよい。これらの型の化合物について、5’リン酸化は必要でない。二本鎖領域の存在は、細胞取り込みおよび効率的なRISCローディングを促進するので、好ましい。
低分子RNAを配列特異的調節剤として使用する別の経路は、RNA干渉(RNAi)経路であり、これは、細胞における二本鎖RNA(dsRNA)の存在に対する、進化的に保存された応答である。dsRNAは、ダイサーにより、〜20塩基対(bp)デュプレックスの低分子干渉RNA(siRNA)へと切断される。これらの低分子RNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と称される多タンパク質エフェクター複合体へと集合させられる。siRNAは次いで、完璧な相補性を持つ標的mRNAの切断をガイドする。
バイオジェネシス、タンパク質複合体および機能のいくつかの側面は、siRNA経路とmiRNA経路との間で共有される。対象となる一本鎖ポリヌクレオチドは、siRNA機構においてdsRNAを模倣しても、または、miRNA機構においてマイクロRNAを模倣してもよい。
ある態様において、修飾RNAiコンストラクトは、同じ配列を有する未修飾RNAiコンストラクトと比較して、改善された血清および/または脳脊髄液中の安定性を有してもよい。
ある態様において、RNAiコンストラクトの構造は、ヒト、マウスおよび他のげっ歯類ならびに他の非ヒト哺乳動物からの初代細胞を含む哺乳動物の初代細胞などの初代細胞において、インターフェロン応答を誘導しない。ある態様において、RNAiコンストラクトはまた、無脊椎生物において標的遺伝子の発現を阻害するためにも使用されてもよい。
対象となるコンストラクトのin vivoでの安定性をさらに増大させるために、ヘアピン構造の3’末端は、保護基(単数または複数)により遮断されてもよい。例えば反転(inverted)ヌクレオチド、反転脱塩基部分またはアミノ末端修飾ヌクレオチドなどの保護基が使用されてもよい。反転ヌクレオチドは、反転デオキシヌクレオチドを含んでもよい。反転脱塩基部分は、3’,3’連結または5’,5’連結されたデオキシ脱塩基部分などの、反転デオキシ脱塩基部分を含んでもよい。
本発明のRNAiコンストラクトは、標的遺伝子(単数または複数)によりコードされるいずれの標的タンパク質の合成をも阻害することができる。本発明は、細胞において、in vitroまたはin vivoのいずれかで、標的遺伝子の発現を阻害する方法を含む。したがって、本発明のRNAiコンストラクトは、標的遺伝子の過剰発現により特徴づけられる疾患を持つ患者を処置するのに有用である。
標的遺伝子は、細胞にとって内因性であっても外因性(例として、ウイルスにより、または、組み換えDNA技術を使用して、細胞に導入されたもの)であってもよい。かかる方法は、標的遺伝子の発現を阻害するために十分な量でのRNAの細胞内への導入を含んでもよい。例として、かかるRNA分子は、組成物が標的遺伝子の発現を阻害するように、標的遺伝子のヌクレオチド配列に対して相補的なガイド鎖を有してもよい。
本発明はまた、対象となるヘアピンコンストラクトを発現するベクター、および、かかるベクターまたは対象となるヘアピンコンストラクトを含む細胞にも関する。細胞は、in vivoのまたは培養中の、ヒト細胞などの哺乳動物細胞であり得る。
本発明はさらに、対象となるRNAiコンストラクトと薬学的に許容し得るキャリアまたは希釈剤とを含む、組成物に関する。
本発明の別の側面は、哺乳動物細胞において標的遺伝子の発現を阻害するための方法を提供し、該方法は、哺乳動物細胞を、対象となるRNAiコンストラクトのいずれかと接触させることを含む。
方法は、in vitroで、ex vivoで、または、in vivoで、例えば、培養中のヒト細胞などの培養中の哺乳動物細胞において行ってもよい。
標的細胞(例として哺乳動物細胞)は、脂質(例としてカチオン性脂質)またはリポソームなどの送達試薬の存在下において、接触させられてもよい。
本発明の別の側面は、哺乳動物細胞において標的遺伝子の発現を阻害するための方法を提供し、該方法は、哺乳動物細胞を、対象となるRNAiコンストラクトを発現するベクターと接触させることを含む。
本発明の一側面において、約16〜約30ヌクレオチドの範囲のサイズである第1のポリヌクレオチドと、約26〜約46ヌクレオチドの範囲のサイズである第2のポリヌクレオチドとを含む、より長いデュプレックスポリヌクレオチドが提供され、ここで、第1のポリヌクレオチド(アンチセンス鎖)は、第2のポリヌクレオチド(センス鎖)および標的遺伝子の両方に対して相補的であり、両方のポリヌクレオチドは、デュプレックスを形成し、ここで、第1のポリヌクレオチドは、長さが6塩基より長い一本鎖領域を含有し、別の化学修飾パターンにより修飾されており、および/または、細胞送達を容易にする抱合体部分を含む。この態様において、パッセンジャー鎖のヌクレオチドの約40〜約90%、ガイド鎖のヌクレオチドの約40〜約90%、第1のポリヌクレオチドの一本鎖領域のヌクレオチドの約40〜約90%が、化学修飾ヌクレオチドである。
一態様において、ポリヌクレオチドデュプレックス中の化学修飾ヌクレオチドは、上で詳細に議論されたものなどの、当該技術分野において知られているいずれの化学修飾ヌクレオチドであってもよい。特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドは、2’F修飾ヌクレオチド、2’−O−メチル修飾されたものおよび2’デオキシヌクレオチドからなる群より選択される。別の特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基の「疎水性修飾」から生じる。別の特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドはホスホロチオアートである。さらなる別の特定の態様において、化学修飾ヌクレオチドは、ホスホロチオアート、2’−O−メチル、2’デオキシ、疎水性修飾およびホスホロチオアートの組み合わせである。これらの群の修飾が、リボース環、主鎖およびヌクレオチドの修飾を指すなら、いくつかの修飾ヌクレオチドが、3つの修飾の型全ての組み合わせを持つことも実行可能である。
別の態様において、化学修飾は、デュプレックスの多様な領域にわたって同一ではない。特定の態様において、第1のポリヌクレオチド(パッセンジャー鎖)は、多数の多様な化学修飾を、多様な部位において有する。このポリヌクレオチドについて、ヌクレオチドの90%までが化学修飾されていてもよく、および/または、導入されたミスマッチを有していてもよい。別の態様において、第1のまたは第2のポリヌクレオチドの化学修飾は、これらに限定されないが、5’位のウリジンおよびシトシンの修飾(4−ピリジル、2−ピリジル、インドリル、フェニル(C6H5OH);トリプトファニル(C8H6N)CH2CH(NH2)CO)、イソブチル、ブチル、アミノベンジル;フェニル;ナフチルなど)を含み、ここで、化学修飾は、ヌクレオチドの塩基対形成能力を変化させる場合がある。ガイド鎖について、本発明のこの側面の重要な特徴は、アンチセンスの5’末端に対する化学修飾の位置および配列である。例えば、ガイド鎖の5’末端の化学的リン酸化は通常、効力のために有益である。センス鎖のシード領域(5’末端に対して2〜7位)におけるO−メチル修飾は、一般に良好な耐性を示さないが、一方、2’Fおよびデオキシは、良好な耐性を示す。ガイド鎖の中間部分およびガイド鎖の3’末端は、適用される化学修飾の型において、より許容的である。デオキシ修飾は、ガイド鎖の3’末端においては、耐性を示さない。
本発明のこの側面のユニークな特徴は、塩基に対する疎水性の修飾の使用を伴う。一態様において、疎水性修飾は好ましくは、ガイド鎖の5’末端付近に位置し、他の態様においては、それらはガイド鎖の中間に局在し、他の態様においては、それらはガイド鎖の3’末端に局在し、さらに別の態様において、それらは、ポリヌクレオチドの全長を通して分布する。同じ型のパターンが、デュプレックスのパッセンジャー鎖に適用可能である。
分子の他方の部分は、一本鎖領域である。一本鎖領域は、6から40までのヌクレオチドの範囲であると予測される。
一態様において、第1のポリヌクレオチドの一本鎖領域は、40%〜90%の疎水性塩基修飾、40%〜90%のホスホロチオアート、40%〜90%のリボース部分の修飾、および、前述のもののあらゆる組み合わせからなる群より選択される修飾を含有する。
ガイド鎖(第1のポリヌクレオチド)のRISC複合体中へのローディングの効率は、重度に修飾されたポリヌクレオチドについて変わる場合があるので、一態様においては、効率的なガイド鎖のローディングを促進するために、デュプレックスポリヌクレオチドは、ガイド鎖(第1のポリヌクレオチド)上のヌクレオチド9、11、12、13または14と、センス鎖(第2のポリヌクレオチド)上の反対のヌクレオチドとの間のミスマッチを含む。
より詳細な本発明の側面は、以下のセクションにおいて記載される。
デュプレックスの特徴
本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、2つの別々の相補的な核酸鎖により形成されてもよい。デュプレックス形成は、標的遺伝子を含有する細胞の内側または外側のいずれかで生じ得る。
本明細書に使用される用語「デュプレックス(duplex)」は、相補的な配列に水素結合している二本鎖(double-stranded)核酸分子(単数または複数)の領域を含む。本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子に対してセンスであるヌクレオチド配列、および、標的遺伝子に対してアンチセンスである相補配列を含んでもよい。センスおよびアンチセンスヌクレオチド配列は、標的遺伝子配列に対応し、例として、標的遺伝子配列と同一であるかまたは標的遺伝子の阻害をもたらすために十分に同一(例として、ほぼ少なくとも約98%同一、96%同一、94%、90%同一、85%同一または80%同一)である。
ある態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、その全長にわたって二本鎖である、すなわち、分子のいずれの末端においても突出する一本鎖配列を有さない、すなわち、平滑末端である。他の態様において、個々の核酸分子は、異なる長さであってもよい。言い換えると、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、その全長にわたって二本鎖でない。例えば、2つの別々の核酸分子が使用されるとき、分子の一方、例えばアンチセンス配列を含む第1の分子は、それにハイブリダイズする第2の分子より長くてもよい(分子の一部を一本鎖とする)。同様に、単一の核酸分子が使用されるとき、分子のいずれかの末端の部分が一本鎖のままであり得る。
一態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、ミスマッチおよび/またはループまたはバルジを含有するが、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約70%にわたって二本鎖である。別の態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約80%にわたって二本鎖である。別の態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約90%〜95%にわたって二本鎖である。別の態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの長さの少なくとも約96%〜98%にわたって二本鎖である。ある態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドは、少なくともまたは最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個までのミスマッチを含有する。
修飾
本発明のヌクレオチドは、糖部分、ホスホジエステル連結部および/または塩基を含む、多様な位置において修飾されてもよい。
いくつかの態様において、ヌクレオチドの塩基部分は修飾されてもよい。例えば、ピリミジン塩基はピリミジン環の2、3、4、5、および/または6位において修飾されてもよい。いくつかの態様において、シトシンの環外アミンが修飾されてもよい。プリン塩基もまた修飾されてもよい。例えば、プリン塩基は、1、2、3、6、7または8位において修飾されてもよい。いくつかの態様において、アデニンの環外アミンが修飾されてもよい。いくつかのケースにおいて、塩基部分の環の窒素原子は、例えば炭素などの別の原子で置換されてもよい。塩基部分への修飾は、いずれの好適な修飾でもあってもよい。修飾の例は当業者に知られている。いくつかの態様において、塩基の修飾は、アルキル化プリンまたはピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジン、または、その他のヘテロ環を含む。
いくつかの態様において、ピリミジンは5位において修飾されてもよい。例えばピリミジンの5位は、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アシル基またはこれらの置換誘導体により修飾されてもよい。他の例において、ピリミジンの5位は、ヒドロキシル基またはアルコキシル基またはこれらの置換誘導体により修飾されてもよい。また、ピリミジンのN4位をアルキル化してもよい。さらに他の例において、ピリミジン5−6結合は飽和されていてもよく、ピリミジン環内の窒素原子は炭素原子により置換されてもよく、および/または、O2またはO4原子は、硫黄原子により置換されてもよい。他の修飾も可能であることが理解されるべきである。
他の例において、プリンのN7位および/またはN2および/またはN3位は、アルキル基またはその置換誘導体により修飾されてもよい。さらなる例において、第3環はプリン二環系に縮合されてもよく、および/または、プリン環系内の窒素原子は炭素原子で置換されてもよい。他の修飾も可能であることが理解されるべきである。
5位で修飾されたピリミジンの非限定的例は、米国特許第5591843号、米国特許第7,205,297号、米国特許第6,432,963号および米国特許第6,020,483号に開示されており;N4位で修飾されたピリミジンの非限定的例は、米国特許第5,580,731号に開示されており;8位で修飾されたプリンの非限定的例は、米国特許第6,355,787号および米国特許第5,580,972号に開示されており;N6位で修飾されたプリンの非限定的例は、米国特許第4,853,386号、米国特許第5,789,416号および米国特許第7,041,824号に開示されており;2位で修飾されたプリンの非限定的例は、米国特許第4,201,860号および米国特許第5,587,469号に開示されており;これらの全ては、参考として本明細書に組み込まれる。
修飾塩基の非限定的例は、N4,N4−エタノシトシン、7−デアザキサントシン、7−デアザグアノシン、8−オキソ−N6−メチルアデニン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニル−アデニン、1−メチルアデニン、1−メチルプソイドウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、プソイドウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、2−チオシトシンおよび2,6−ジアミノプリンを含む。いくつかの態様において、塩基部分はプリンまたはピリミジン以外のヘテロ環式塩基であってもよい。ヘテロ環式塩基は任意に修飾および/または置換されてもよい。
糖部分は、天然の未修飾糖、例として単糖(ペントース、例としてリボース、デオキシリボース)、修飾糖および糖アナログを含む。一般に、可能なヌクレオモノマーの修飾、特に糖部分のものは、例えば、1以上のヒドロキシル基のハロゲン、ヘテロ原子、脂肪族基での置き換え、または、ヒドロキシル基の、エーテル、アミン、チオールなどとしての官能化を含む。
修飾ヌクレオモノマーの特に有用な一群は、2’−O−メチルヌクレオチドである。かかる2’−O−メチルヌクレオチドは、「メチル化されている」として言及されてもよく、対応するヌクレオチドは、非メチル化ヌクレオチドからアルキル化により、または直接的にメチル化ヌクレオチド試薬から、作られる。修飾ヌクレオモノマーは、未修飾ヌクレオモノマーと組み合わせて使用されてもよい。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドは、メチル化および非メチル化ヌクレオモノマーの両方を含有してもよい。
いくつかの例示的な修飾ヌクレオモノマーは、糖または骨格(backbone)が修飾されたリボヌクレオチドを含む。修飾リボヌクレオチドは、5’位で修飾されたウリジンまたはシチジン、例として5’−(2−アミノ)プロピルウリジンおよび5’−ブロモウリジン;8位で修飾されたアデノシンおよびグアノシン、例として8−ブロモグアノシン;デアザヌクレオチド、例として7−デアザ−アデノシン;ならびにN−アルキル化ヌクレオチド、例としてN6−メチルアデノシンなどの、天然に存在しない塩基を(天然に存在する塩基の代わりに)含有してもよい。また、糖修飾リボヌクレオチドは、H、アルコキシ(もしくはOR)、Rもしくはアルキル、ハロゲン、SH、SR、アミノ(NH2、NHR、NR2など)またはCN基で置き換えられた2’−OH基をも有していてもよく、ここで、Rは、低級アルキル、アルケニルまたはアルキニルである。
修飾リボヌクレオチドはまた、修飾基、例としてホスホロチオアート基により置き換えられた、隣接するリボヌクレオチドに繋げられたホスホジエステル基をも有してもよい。より一般的には、多様なヌクレオチド修飾が組み合わされてもよい。
アンチセンス(ガイド)鎖は、標的遺伝子(単数または複数)の少なくとも一部に対して実質的に同一であってもよいが、少なくとも塩基対形成特性に関連して、配列は、有用であるため、例として標的遺伝子の表現型の発現を阻害するために、完全に同一である必要はない。一般により高い相同性は、より短いアンチセンス遺伝子の使用を埋め合わせるために使用され得る。いくつかのケースにおいて、アンチセンス鎖は、一般に、標的遺伝子に対して(アンチセンス方向において)実質的に同一であろう。
2’−O−メチル修飾RNAの使用はまた、細胞ストレス応答を最少化することが望ましい状況においても有益であり得る。2’−O−メチルヌクレオモノマーを有するRNAは、未修飾RNAを認識すると考えられる細胞機構によって認識され得ない。2’−O−メチル化されたかまたは部分的に2’−O−メチル化されたRNAは、標的RNA阻害を維持しつつ、二本鎖核酸に対するインターフェロン応答を回避し得る。これは、例えば、インターフェロンまたは他の細胞ストレス応答を回避するために、インターフェロン応答を誘導する短いRNAi(例としてsiRNA)配列、および、インターフェロン応答を誘導し得るより長いRNAi配列の両方において、有用であり得る。
全体として、修飾糖は、D−リボース、2’−O−アルキル(2’−O−メチルおよび2’−O−エチルを含む)、すなわち、2’−アルコキシ、2’−アミノ、2’−S−アルキル、2’−ハロ(2’−フルオロを含む)、2’−メトキシエトキシ、2’−アリルオキシ(−OCH2CH=CH2)、2’−プロパルギル、2’−プロピル、エチニル、エテニル、プロペニルならびにシアノなどを含む。一態様において、糖部分は、記載されるように(Augustyns, K., et al., Nucl. Acids. Res. 18:4711 (1992))、ヘキソースであってもよく、オリゴヌクレオチド中に組み込まれてもよい。例示的なヌクレオモノマーは、例として米国特許第5,849,902号において見出され得、これは本明細書に参考として組み込まれる。
具体的な官能基の定義および化学用語は、以下にさらに詳細に記載される。本発明の目的のために、化学元素はCAS versionのHandbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.の内表紙の元素周期表に従って同定され、具体的な官能基はこれに記載のようにして一般的に定義される。さらに、有機化学の一般原理ならびに具体的な官能部分および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999に記載され、この内容の全体は参考として本明細書に組み込まれる。
本発明のある化合物は、特定の幾何学的形態または立体異性形態で存在してもよい。本発明は全てのかかる化合物を考慮し、これにはcis−およびtrans−異性体、R−およびS−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、これらのラセミ混合物、および、これらのその他の混合物を、本発明の範囲内であるとして含む。追加の不斉炭素原子が、アルキル基などの置換基中に存在してよい。全てのかかる異性体およびこれらの混合物は、本発明に含むことが意図される。
種々の異性体比のいずれかを含有する異性体混合物は、本発明に従って利用されてもよい。例えば、2種の異性体のみが組み合わせられるとき、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、95:5、96:4、97:3、98:2、99:1または100:0の異性体比を含有する混合物は全て、本発明に考慮される。当業者は容易に、さらに複雑な異性体混合物について類似の比率が考慮されることを理解するであろう。
例えば本発明の化合物の特定のエナンチオマーが所望される場合、これは不斉合成により、または、キラル補助基による誘導体化により調製されてもよく、ここで得られたジアステレオマー混合物は分離され、補助基が切断されて、純粋な所望のエナンチオマーが提供される。代わりに、分子がアミノなどの塩基性官能基を含有する場合またはカルボキシルなどの酸性官能基を含有する場合、ジアステレオマー塩が、適切な光学活性酸または塩基により形成され、次いでこうして形成されたジアステレオマーが、当該技術分野において周知の分別結晶化またはクロマトグラフィー手段により分割され、続いて純粋なエナンチオマーが回収される。
ある態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、3’および5’終端(termini)を含む(環状オリゴヌクレオチドを除く)。一態様において、オリゴヌクレオチドの3’および5’終端は、例えば3’または5’結合を修飾することにより、ヌクレアーゼから実質的に保護され得る(例として米国特許第5,849,902号およびWO 98/13526)。例えば、オリゴヌクレオチドは「ブロック基(blocking group)」を含めることにより抵抗性になされ得る。本明細書に使用される用語「ブロック基」は、合成のための保護基または結合基のどちらかとしてオリゴヌクレオチドまたはヌクレオモノマーに付着され得る、置換基(例としてOH基以外のもの)を指す(例として、FITC、プロピル(CH2−CH2−CH3)、グリコール(−O−CH2−CH2−O−)ホスファート(PO3 2−)、ホスホン酸水素またはホスホロアミダイト)。「ブロック基」はまた、「末端ブロック基」または「エキソヌクレアーゼブロック基」をも含み、これらは、修飾ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドエキソヌクレアーゼ抵抗性構造を含む、オリゴヌクレオチドの、3’および5’終端を保護する。
例示の末端ブロック基は、キャップ構造(例として7−メチルグアノシンキャップ)、反転(inverted)ヌクレオモノマー、例として3’−3’または5’−5’末端反転を有するもの(例としてOrtiagao et al. 1992. Antisense Res. Dev. 2:129を参照)、メチルホスホナート、ホスホロアミダイト、非ヌクレオチド基(例として、非ヌクレオチドリンカー、アミノリンカー、抱合体)などを含む。3’末端ヌクレオモノマーは、修飾糖部分を含み得る。3’末端ヌクレオモノマーは、オリゴヌクレオチドの3’−エキソヌクレアーゼ分解を防ぐブロック基により任意に置換され得る3’−Oを含む。例えば、3’−ヒドロキシルは、3’→3’ヌクレオチド間連結物を介してヌクレオチドにエステル化され得る。例えば、アルキルオキシラジカルは、メトキシ、エトキシまたはイソプロポキシであり得、好ましくはエトキシである。任意に、3’末端における3’→3’結合ヌクレオチドは、代替連結により連結され得る。ヌクレアーゼ分解を低減するために、最も5’の3’→5’連結部は、修飾連結部、例としてホスホロチオアートまたはP−アルキルオキシホスホトリエステル連結部であることができる。好ましくは、2つの最も5’の3’→5’連結物は、修飾連結部である。任意に、5’末端ヒドロキシ部分は、リン含有部分、例として、ホスファート、ホスホロチオアートまたはP−エトキシホスファートで、エステル化され得る。
合成方法が、本明細書に記載のとおり、種々の保護基を利用することを、当業者は理解するであろう。本明細書で使用される用語「保護基」は、特定の官能部分、例としてO、SまたはNを一時的に遮断して、多官能性化合物における別の反応部位にて反応が選択的に行われ得ることを意味する。ある態様において、保護基は良好な収率で選択的に反応して、計画された反応に対して安定である、保護された基質を与える;保護基は、容易に利用可能で好ましくは非毒性の、他の官能基を攻撃しない試薬により、良好な収率で選択的に除去可能であるべきである;保護基は、容易に分離可能な誘導体を(より好ましくは、新しい立体中心の生成なしに)形成する;および、保護基は、さらなる反応部位を回避するために最小数の付加的な官能性を有する。
本明細書に詳述されるとおり、酸素、硫黄、窒素および炭素の保護基が利用されてもよい。ヒドロキシル保護基は以下を含む:メチル、メトキシルメチル(MOM)、メチルチオメチル(MTM)、t−ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p−メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、(4−メトキシフェノキシ)メチル(p−AOM)、グアイアコルメチル(GUM)、t−ブトキシメチル、4−ペンテニルオキシメチル(POM)、シロキシメチル、2−メトキシエトキシメチル(MEM)、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEMOR)、テトラヒドロピラニル(THP)、3−ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S−ジオキシド、1−[(2−クロロ−4−メチル)フェニル]−4−メトキシピペリジン−4−イル(CTMP)、
1,4−ジオキサン−2−イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロ−7,8,8−トリメチル−4,7−メタノベンゾフラン−2−イル、1−エトキシエチル、1−(2−クロロエトキシ)エチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、2−(フェニルセレニル)エチル、t−ブチル、アリル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、2,4−ジニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、p−フェニルベンジル、2−ピコリル、4−ピコリル、3−メチル−2−ピコリルN−オキシド、ジフェニルメチル、p,p’−ジニトロベンズヒドリル、5−ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、p−メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p−メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p−メトキシフェニル)メチル、4−(4’−ブロモフェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチル、
4,4’,4’’−トリス(4,5−ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4,4’,4’’−トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル、4,4’,4’’−トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3−(イミダゾール−1−イル)ビス(4’,4’’−ジメトキシフェニル)メチル、1,1− ビス(4−メトキシフェニル)−1’−ピレニルメチル、9−アントリル、9−(9−フェニル)キサンテニル、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリル、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル、ベンズイソチアゾリルS,S−ジオキシド、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルテキシルシリル(dimethylthexylsilyl)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリベンジルシリル、トリ−p−キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル(DPMS)、t−ブチルメトキシフェニルシリル(TBMPS)、ホルマート、ベンゾイルホルマート、アセタート、クロロアセタート、ジクロロアセタート、トリクロロアセタート、トリフルオロアセタート、
メトキシアセタート、トリフェニルメトキシアセタート、フェノキシアセタート、p−クロロフェノキシアセタート、3−フェニルプロピオナート、4−オキソペンタノアート(レブリナート)、4,4−(エチレンジチオ)ペンタノアート(レブリノイルジチオアセタール)、ピバロアート、アダマントアート、クロトナート、4−メトキシクロトナート、ベンゾアート、p−フェニルベンゾアート、2,4,6−トリメチルベンゾアート(メシトアート)、アルキルメチルカーボナート、9−フルオレニルメチルカーボナート(Fmoc)、アルキルエチルカーボナート、アルキル2,2,2−トリクロロエチルカーボナート(Troc)、2−(トリメチルシリル)エチルカーボナート(TMSEC)、2−(フェニルスルホニル)エチルカーボナート(Psec)、2−(トリフェニルホスホニオ)エチルカーボナート(Peoc)、アルキルイソブチルカーボナート、アルキルビニルカーボナートアルキルアリルカーボナート、アルキルp−ニトロフェニルカーボナート、アルキルベンジルカーボナート、アルキルp−メトキシベンジルカーボナート、アルキル3,4−ジメトキシベンジルカーボナート、アルキルo−ニトロベンジルカーボナート、
アルキルp−ニトロベンジルカーボナート、アルキルS−ベンジルチオカーボナート、4−エトキシ−1−ナフチルカーボナート、メチルジチオカーボナート、2−ヨードベンゾアート、4−アジドブチラート、4−ニトロ−4−メチルペンタノアート、o−(ジブロモメチル)ベンゾアート、2−フォルミルベンゼンスルホナート、2−(メチルチオメトキシ)エチル、4−(メチルチオメトキシ)ブチラート、2−(メチルチオメトキシメチル)ベンゾアート、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノキシアセタート、2,6−ジクロロ−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシアセタート、2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェノキシアセタート、クロロジフェニルアセタート、イソブチラート、モノスクシノアート、(E)−2−メチル−2−ブテノアート、o−(メトキシカルボニル)ベンゾアート、α−ナフトアート、ニトラート、アルキルN,N,N’,N’−テトラメチルホスホロジアミダート、アルキルN−フェニルカルバマート、ボラート、ジメチルホスフィノチオイル、アルキル2,4−ジニトロフェニルスルフェナート(dinitrophenylsulfenate)、スルファート、メタンスルホナート(メシラート)、ベンジルスルホナートおよびトシラート(Ts)。
1,2−または1,3−ジオールを保護するためには、保護基は以下を含む:メチレンアセタール、エチリデンアセタール、1−t−ブチルエチリデンケタール、1−フェニルエチリデンケタール、(4−メトキシフェニル)エチリデンアセタール、2,2,2−トリクロロエチリデンアセタール、アセトニド、シクロペンチリデンケタール、シクロヘキシリデンケタール、シクロヘプチリデンケタール、ベンジリデンアセタール、p−メトキシベンジリデンアセタール、2,4− ジメトキシベンジリデンケタール、3,4−ジメトキシベンジリデンアセタール、2−ニトロベンジリデンアセタール、メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール、ジメトキシメチレンオルトエステル、1−メトキシエチリデンオルトエステル、1−エトキシエチリデンオルトエステル、1,2−ジメトキシエチリデンオルトエステル、α−メトキシベンジリデンオルトエステル、1−(N,N−ジメチルアミノ)エチリデン誘導体、α−(N,N’−ジメチルアミノ)ベンジリデン誘導体、
2−オキサシクロペンチリデンオルトエステル、ジ−t−ブチルシリレン基(DTBS)、1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサニリデン)誘導体(TIPDS)、テトラ−t−ブトキシジシロキサン−1,3−ジイリデン誘導体(TBDS)、環状カーボナート、環状ボロナート、エチルボロナートおよびフェニルボロナート。アミノ保護基は、以下を含む:メチルカルバマート、エチルカルバマート、9−フルオレニルメチルカルバマート(Fmoc)、9−(2−スルホ)フルオレニルメチル(fluoroenylmethyl)カルバマート、9−(2,7−ジブロモ)フルオレニルメチルカルバマート、2,7−ジ−t−ブチル−[9−(10,10−ジオキソ−10,10,10,10−テトラヒドロチオキサンチル)]メチルカルバマート(DBD−Tmoc)、4−メトキシフェナシルカルバマート(Phenoc)、2,2,2−トリクロロエチルカルバマート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカルバマート(Teoc)、
2−フェニルエチルカルバマート(hZ)、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルカルバマート(Adpoc)、1,1−ジメチル−2−ハロエチルカルバマート、1,1−ジメチル−2,2−ジブロモエチルカルバマート(DB−t−BOC)、1,1−ジメチル−2,2,2−トリクロロエチルカルバマート(TCBOC)、1−メチル−1−(4−ビフェニルイル)エチルカルバマート(Bpoc)、1−(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−1−メチルエチルカルバマート(t−Bumeoc)、2−(2’−および4’−ピリジル)エチルカルバマート(Pyoc)、2−(N,N−ジシクロヘキシルカルボキサミド)エチルカルバマート、t−ブチルカルバマート(BOC)、1−アダマンチルカルバマート(Adoc)、ビニルカルバマート(Voc)、アリルカルバマート(Alloc)、1−イソプロピルアリルカルバマート(Ipaoc)、シンナミルカルバマート(Coc)、4−ニトロシンナミルカルバマート(Noc)、8−キノリルカルバマート、N−ヒドロキシピペリジニルカルバマート、アルキルジチオカルバマート、ベンジルカルバマート(Cbz)、p−メトキシベンジルカルバマート(Moz)、p−ニトロベンジルカルバマート、p−ブロモベンジルカルバマート、p−クロロベンジルカルバマート、
2,4−ジクロロベンジルカルバマート、4−メチルスルフィニルベンジルカルバマート(Msz)、9−アントリルメチルカルバマート、ジフェニルメチルカルバマート、2−メチルチオエチルカルバマート、2−メチルスルホニルエチルカルバマート、2−(p−トルエンスルホニル)エチルカルバマート、[2−(1,3−ジチアニル)]メチルカルバマート(Dmoc)、4−メチルチオフェニルカルバマート(Mtpc)、2,4−ジメチルチオフェニルカルバマート(Bmpc)、2−ホスホニオエチルカルバマート(Peoc)、2−トリフェニルホスホニオイソプロピルカルバマート(Ppoc)、1,1−ジメチル−2−シアノエチルカルバマート、m−クロロ−p−アシルオキシベンジルカルバマート、p−(ジヒドロキシボリル)ベンジルカルバマート、5−ベンズイソキサゾリルメチルカルバマート、2−(トリフルオロメチル)−6−クロモニルメチルカルバマート(Tcroc)、m−ニトロフェニルカルバマート、3,5−ジメトキシベンジルカルバマート、o−ニトロベンジルカルバマート、3,4−ジメトキシ−6−ニトロベンジルカルバマート、フェニル(o−ニトロフェニル)メチルカルバマート、フェノチアジニル−(10)−カルボニル誘導体、N’−p−トルエンスルホニルアミノカルボニル誘導体、N’−フェニルアミノチオカルボニル誘導体、t−アミルカルバマート、S−ベンジルチオカルバマート、p−シアノベンジルカルバマート、シクロブチルカルバマート、シクロヘキシルカルバマート、
シクロペンチルカルバマート、シクロプロピルメチルカルバマート、p−デシルオキシベンジルカルバマート、2,2−ジメトキシカルボニルビニルカルバマート、o−(N,N−ジメチルカルボキサミド)ベンジルカルバマート、1,1−ジメチル−3−(N,N−ジメチルカルボキサミド)プロピルカルバマート、1,1−ジメチルプロピニルカルバマート、ジ(2−ピリジル)メチルカルバマート、2−フラニルメチルカルバマート、2−ヨードエチルカルバマート、イソボルニルカルバマート、イソブチルカルバマート、イソニコチニルカルバマート、p−(p’−メトキシフェニルアゾ)ベンジルカルバマート、1−メチルシクロブチルカルバマート、1−メチルシクロヘキシルカルバマート、1−メチル−1−シクロプロピルメチルカルバマート、1−メチル−1−(3,5−ジメトキシフェニル)エチルカルバマート、1−メチル−1−(p−フェニルアゾフェニル)エチルカルバマート、
1−メチル−1−フェニルエチルカルバマート、1−メチル−1−(4−ピリジル)エチルカルバマート、フェニルカルバマート、p−(フェニルアゾ)ベンジルカルバマート、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルカルバマート、4−(トリメチルアンモニウム)ベンジルカルバマート、2,4,6−トリメチルベンジルカルバマート、ホルムアミド、アセトアミド、クロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3−フェニルプロパンアミド、ピコリンアミド、3−ピリジルカルボキサミド、N−ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、ベンズアミド、p−フェニルベンズアミド、o−ニトロフェニルアセトアミド、o−ニトロフェノキシアセトアミド、アセトアセトアミド、(N’−ジチオベンジルオキシカルボニルアミノ)アセトアミド、3−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、3−(o−ニトロフェニル)プロパンアミド、2−メチル−2−(o−ニトロフェノキシ)プロパンアミド、2−メチル−2−(o−フェニルアゾフェノキシ)プロパンアミド、
4−クロロブタンアミド、3−メチル−3−ニトロブタンアミド、o−ニトロシンナミド、N−アセチルメチオニン誘導体、o−ニトロベンズアミド、o−(ベンゾイルオキシメチル)ベンズアミド、4,5−ジフェニル−3−オキサゾリン−2−オン、N−フタルイミド、 N−ジチアスクシンイミド(Dts)、N−2,3−ジフェニルマレイミド、N−2,5−ジメチルピロール、N−1,1,4,4−テトラメチルジシリルアザシクロペンタン付加物(STABASE)、5−置換1,3−ジメチル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン−2−オン、5−置換1,3−ジベンジル−1,3,5−トリアザシクロヘキサン−2−オン、1−置換3,5−ジニトロ−4−ピリドン、N−メチルアミン、N−アリルアミン、N−[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチルアミン(SEM)、N−3−アセトキシプロピルアミン、N−(1−イソプロピル−4−ニトロ−2−オキソ−3−ピロリン−3−イル)アミン、第四級アンモニウム塩、N−ベンジルアミン、N−ジ(4−メトキシフェニル)メチルアミン、N−5−ジベンゾスベリルアミン、N−トリフェニルメチルアミン(Tr)、N−[(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチル]アミン(MMTr)、N−9−フェニルフルオレニルアミン(PhF)、N−2,7−ジクロロ−9−フルオレニルメチレンアミン、
N−フェロセニルメチルアミノ(Fcm)、N−2−ピコリルアミノN’−オキシド、N−1,1−ジメチルチオメチレンアミン、N−ベンジリデンアミン、N−p−メトキシベンジリデンアミン、N−ジフェニルメチレンアミン、N−[(2−ピリジル)メシチル]メチレンアミン、N−(N’,N’−ジメチルアミノメチレン)アミン、N,N’−イソプロピリデンジアミン、N−p−ニトロベンジリデンアミン、N−サリシリデンアミン、N−5−クロロサリシリデンアミン、N−(5−クロロ−2−ヒドロキシフェニル)フェニルメチレンアミン、N−シクロヘキシリデンアミン、N−(5,5−ジメチル−3−オキソ−1−シクロヘキセニル)アミン、N−ボラン誘導体、N−ジフェニルボリン酸誘導体、N−[フェニル(ぺンタカルボニルクロム−またはタングステン)カルボニル]アミン、N−銅キレート、N−亜鉛キレート、N−ニトロアミン、N−ニトロソアミン、アミンN−オキシド、ジフェニルホスフィンアミド(Dpp)、
ジメチルチオホスフィンアミド(Mpt)、ジフェニルチオホスフィンアミド(Ppt)、ジアルキルホスホルアミダート、ジベンジルホスホルアミダート、ジフェニルホスホルアミダート、ベンゼンスルフェンアミド、o−ニトロベンゼンスルフェンアミド(Npys)、2,4−ジニトロベンゼンスルフェンアミド、ペンタクロロベンゼンスルフェンアミド、2−ニトロ−4−メトキシベンゼンスルフェンアミド、トリフェニルメチルスルフェンアミド、3−ニトロピリジンスルフェンアミド(Nps)、p−トルエンスルホンアミド(Ts)、ベンゼンスルホンアミド、2,3,6−トリメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mtr)、2,4,6−トリメトキシベンゼンスルホンアミド(Mtb)、2,6−ジメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Pme)、2,3,5,6−テトラメチル−4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mte)、4−メトキシベンゼンスルホンアミド(Mbs)、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホンアミド(Mts)、
2,6−ジメトキシ−4−メチルベンゼンスルホンアミド(iMds)、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホンアミド(Pmc)、メタンスルホンアミド(Ms)、β−トリメチルシリルエタンスルホンアミド(SES)、9−アントラセンスルホンアミド、4−(4’,8’−ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルホンアミド(DNMBS)、ベンジルスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミドおよびフェナシルスルホンアミド。例示の保護基は本明細書に詳述される。しかしながら本発明は、これらの保護基に限定されることを意図せず、むしろ、種々の追加の等価な保護基が上の基準を使用して容易に同定され、本発明の方法において利用され得る。加えて、種々の保護基についてはProtective Groups in Organic Synthesis, Third Ed. Greene, T.W. and Wuts, P.G., Eds., John Wiley & Sons, New York: 1999に記載されており、この内容の全体は本明細書に参考として組み込まれる。
本明細書に記載のとおり、化合物は、あらゆる数の置換基または官能部分により置換されてよいことが理解される。一般に、用語「任意に」が先行するかどうかに関わらず、用語「置換された」およびこの発明の式中に含まれる置換基は、所与の構造中の水素ラジカルの、特定置換基のラジカルによる置き換えを指す。任意の所与の構造中の1つより多くの位置が、特定群から選択された1より多くの置換基により置換されてもよい場合、置換基は各位置において同一であっても異なっていてもよい。本明細書に使用される用語「置換された」は、有機化合物の全ての許容し得る置換基を含むと考えられる。広い見地からは、許容し得る置換基は、有機化合物の、非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式およびヘテロ環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。
窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載の有機化合物のいずれの許容し得る置換基を有してよい。その上、本発明は、いかなる様式においても、有機化合物の許容し得る置換基によって限定されることを意図しない。本発明により想定される置換基および変数の組み合わせは、好ましくは、例えば感染症または増殖性疾患などの処置に有用な安定な化合物の形成をもたらすものである。用語「安定な」とは、好ましくは、本明細書において、製造を可能とするのに十分な安定性を有し、検出されるのに十分な時間の間化合物の完全性を維持し、好ましくは本明細書に詳述される目的のために十分な時間有用であるような、化合物を指す。
本明細書に使用される用語「脂肪族」は、飽和および不飽和両方の、直鎖(すなわち非分枝)、分枝、非環式、環式または多環式の脂肪族炭化水素であって、任意に1以上の官能基により置換されているものを含む。当業者に理解されるとおり、本明細書において「脂肪族」は、これらに限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分を含むことを意図する。よって、本明細書に使用される用語「アルキル」は、直鎖、分枝および環式アルキル基を含む。類似の慣例がその他の一般的用語、例えば「アルケニル」、「アルキニル」などにも適用される。その上、本明細書に使用される用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などは、置換および非置換基の両方を包含する。ある態様において、本明細書で使用される場合「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基(環式、非環式、置換、非置換、分枝または非分枝)を示すために使用される。
ある態様において、本発明に採用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含有する。ある態様において、本発明で採用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜10個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の態様において、本発明で採用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含有する。さらなる他の態様において、本発明で採用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の態様において、本発明で採用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜4個の脂肪族炭素原子を含有する。よって例示の脂肪族基は、これらに限定されないが、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、−CH2−シクロプロピル、ビニル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、−CH2−シクロブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、−CH2−シクロペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、−CH2−シクロヘキシル部分等を含み、これは重ねて、1以上の置換基を有してもよい。アルケニル基は、これらに限定されないが、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどを含む。代表的なアルキニル基は、これらに限定されないが、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどを含む。
本発明の化合物の、上記の脂肪族(およびその他の)部分の置換基のいくつかの例は、これらに限定されないが以下を含む:脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO2;−CN;−CF3;−CH2CF3;−CHCl2;−CH2OH;−CH2CH2OH;−CH2NH2;−CH2SO2CH3;−C(O)Rx;−CO2(Rx);−CON(Rx)2;−OC(O)Rx;−OCO2Rx;−OCON(Rx)2;−N(Rx)2;−S(O)2Rx;−NRx(CO)Rx;ここでRxの出現の各々は独立して、これらに限定されないが、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含み、ここで、上記および本明細書に記載の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル置換基のいずれもが、置換または非置換、分枝または非分枝、環式または非環式であってよく、およびここで、上記および本明細書に記載のアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれもが、置換または非置換であってよい。一般に適用可能な置換基の追加の例は、本明細書に記載の具体的態様により説明される。
本明細書に使用される用語「ヘテロ脂肪族」は、例えば炭素原子の代わりに、1以上の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含む脂肪族部分を指す。ヘテロ脂肪族部分は分枝または非分枝、環式または非環式であってよく、モルホリノ、ピロリジニルなどの飽和および不飽和のヘテロ環を含んでもよい。ある態様において、ヘテロ脂肪族部分は、それ上にある1以上の水素原子の、下記を含むがこれらに限定はされない1以上の部分による独立した置き換えによって置換される:脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO2;−CN;−CF3;−CH2CF3;−CHCl2;−CH2OH;−CH2CH2OH;−CH2NH2;−CH2SO2CH3;−C(O)Rx;−CO2(Rx);−CON(Rx)2;−OC(O)Rx;−OCO2Rx;−OCON(Rx)2;−N(Rx)2;−S(O)2Rx;−NRx(CO)Rx;ここでRxの出現の各々は独立して、これらに限定されないが、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含み、ここで、上記および本明細書に記載の脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキル置換基のいずれもが、置換または非置換、分枝または非分枝、環式または非環式であってよく、およびここで、上記および本明細書に記載のアリールまたはヘテロアリール置換基のいずれもが、置換または非置換であってよい。一般に適用可能な置換基の追加の例は、本明細書に記載の具体的態様により説明される。
本明細書に使用される用語「ハロ」および「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を指す。
用語「アルキル」は、飽和脂肪族基を含み、これは、直鎖アルキル基(例としてメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルキルは、6個以下(例として直鎖についてはC1〜C6、分枝鎖についてはC3〜C6)、より好ましくは4個以下の炭素原子をその骨格中に有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、3〜8個の炭素原子をその環構造中に有し、より好ましくは5または6個の炭素を環構造中に有する。用語C1〜C6は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を含有する。
その上、他に特定されない限りにおいて、用語アルキルは、「非置換のアルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、その後者は、炭化水素骨格の1以上の炭素上の水素を置き換える独立して選択される置換基を有する、アルキル部分を指す。かかる置換基は、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含む。シクロアルキルは、例として上記の置換基により、さらに置換されてもよい。「アルキルアリール」または「アリールアルキル」部分は、アリールで置換されたアルキル(例としてフェニルメチル(ベンジル))である。用語「アルキル」はまた、天然または非天然のアミノ酸の側鎖をも含む。用語「n−アルキル」は、直鎖(すなわち、非分枝)の非置換のアルキル基を意味する。
用語「アルケニル」は、上記のアルキルと長さが類似し、これと置換が可能な不飽和脂肪族基であるが、少なくとも1つの二重結合を含むものを含む。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例としてエチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルケニル基は、6個以下の炭素原子をその骨格中に有する(例として直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてC3〜C6)。同様に、シクロアルケニル基は、その環構造中に3〜8個の炭素原子、より好ましくは環構造中に5または6個の炭素を有してもよい。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を含有する。
その上、他に特定されない限りにおいて、用語アルケニルは、「非置換のアルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含み、その後者は、炭化水素骨格の1以上の炭素上の水素を置き換える独立して選択される置換基を有する、アルケニル部分を指す。かかる置換基は、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含む。
用語「アルキニル」は、上記のアルキルと長さが類似し、これと置換が可能な不飽和脂肪族基であるが、少なくとも1つの三重結合を含むものを含む。例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例としてエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分枝鎖アルキニル基およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。ある態様において、直鎖または分枝鎖アルキニル基は、6個以下の炭素原子をその骨格中に有する(例として直鎖についてはC2〜C6、分枝鎖についてC3〜C6)。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を含有する。
その上、他に特定されない限りにおいて、用語アルキニルは、「非置換のアルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含み、その後者は、炭化水素骨格の1以上の炭素上の水素を置き換える独立して選択される置換基を有するアルキニル部分を指す。かかる置換基は、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート類、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含む。
炭素の数が他に特定されない限りにおいて、「低級アルキル」は、本明細書に使用されるとおり、上で定義されるが、1〜5個の炭素原子をその骨格構造中に有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば2〜5個の炭素原子の鎖長を有する。
用語「アルコキシ」は、酸素原子に共有結合している置換および非置換のアルキル、アルケニルおよびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシ基を含む。置換アルコキシ基の例は、ハロゲン化アルコキシ基を含む。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシラート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフフィドリル(sulffydryl)、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシラート、スルファート類、アルキルスルフミル(slkylsulfmyl)、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリールまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの、独立して選択される基により置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例は、これらに限定されないが、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシなどを含む。
用語「疎水性修飾」は、(1)塩基の全体的な疎水性が著しく増大し、(2)塩基が通常のワトソン−クリック相互作用に類似するものを形成することができる様式で、修飾される塩基を含む。塩基修飾の例のいくつかは、これらに限定されないが、5位のウリジンおよびシチジン修飾、例えばフェニル、4−ピリジル、2−ピリジル、インドリルおよびイソブチル、フェニル(C6H5OH);トリプトファニル(C8H6N)CH2CH(NH2)CO)、イソブチル、ブチル、アミノベンジル;フェニル;ナフチルを含む。
本発明の目的のために、用語「突出」は、1本の鎖または領域であって、これとデュプレックスを形成する相補鎖の末端を超えて伸長するこの鎖または領域からもたらされる、末端部分の塩基対を形成しないヌクレオチドを指す。水素結合を通してデュプレックスを形成することができる1以上のポリヌクレオチドが、突出を有することができる。突出の長さは、一般に、5塩基の長さを超えない。
用語「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外のあらゆる元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄およびリンである。
用語「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、(適切なカウンターイオンとともに)−OHまたは−O−を持つ基を含む。
用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。用語「過ハロゲン化」は一般に、全ての水素がハロゲン原子により置き換えられている部分を指す。
用語「置換される」は、当該部分に配置され得、当該分子がその意図する機能を行うことを可能にする、独立して選択される置換基を含む。置換基の例は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、(CR’R’’)0〜3NR’R’’、(CR’R’’)0〜3CN、NO2、ハロゲン、(CR’R’’)0〜3C(ハロゲン)3、(CR’R’’)0〜3CH(ハロゲン)2、(CR’R’’)0〜3CH2(ハロゲン)、(CR’R’’)0〜3CONR’R’’、(CR’R’’)0〜3S(O)1〜2NR’R’’、(CR’R’’)0〜3CHO、(CR’R’’)0〜3O(CR’R’’)0〜3H、(CR’R’’)0〜3S(O)0〜2R’、(CR’R’’)0〜3O(CR’R’’)0〜3H、(CR’R’’)0〜3COR’、(CR’R’’)0〜3CO2R’、または(CR’R’’)0〜3OR’基;ここで各R’およびR’’は、各々独立して、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニルもしくはアリール基であるか、または、R’およびR’’は、一緒になって、ベンジリデン基もしくは−(CH2)2O(CH2)2−基である、を含む。
用語「アミン」または「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1個の炭素またはヘテロ原子に共有結合している化合物または部分を含む。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1つのさらなるアルキル基に結合している基および化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が、少なくとも2つの追加のアルキル基に結合している基を含む。
用語「エーテル」は、2個の異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含有する化合物または部分を含む。例えば、この用語は、「アルコキシアルキル」を含み、これは、別のアルキル基に共有結合した酸素原子に共有結合しているアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」および「オリゴヌクレオチド」は、2以上のヌクレオチドのポリマーを指す。ポリヌクレオチドは、DNA、RNAまたはこれらの誘導体もしくは修飾バージョンであり得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格において修飾され得、例えば分子の安定性、そのハイブリダイゼーションパラメータなどが改善される。ポリヌクレオチドは、限定することなく以下を含む群から選択される修飾塩基部分を含んでもよい:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルクエオシン(galactosylqueosine)、イノシン、
N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシルおよび2,6−ジアミノプリン。
ポリヌクレオチドは、修飾糖部分(例として2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、2’−O−メチルシチジン、アラビノースおよびヘキソース)および/または修飾リン酸部分(例としてホスホロチオアートおよび5’−N−ホスホロアミダイト結合)を含んでもよい。ヌクレオチド配列は典型的には、タンパク質および酵素を作るために細胞機構によって使用される情報を含む、遺伝情報を持つ。これらの用語は、二本鎖または一本鎖のゲノムおよびcDNA、RNA、あらゆる合成のおよび遺伝子操作のポリヌクレオチド、および、センスおよびアンチセンスポリヌクレオチドの両方を含む。これは、一本鎖および二本鎖分子、すなわちDNA−DNA、DNA−RNA、およびRNA−RNAハイブリッド、ならびに、アミノ酸骨格に塩基を抱合させることにより形成された「タンパク質核酸」(PNA)を含む。
用語「塩基」は、知られているプリンおよびピリミジンヘテロ環式塩基、デアザプリンならびにそのアナログ(ヘテロ環置換アナログ、例としてアミノエトキシフェノキサジンを含む)、誘導体(例として1−アルキル−、1−アルケニル−、ヘテロ芳香族−および1−アルキニル誘導体)および互変異性体を含む。プリンの例は、アデニン、グアニン、イノシン、ジアミノプリンおよびキサンチンならびにそのアナログ(例として8−オキソ−N6−メチルアデニンまたは7−ジアザキサンチン)および誘導体を含む。ピリミジンは、例えばチミン、ウラシルおよびシトシンならびにそれらのアナログ(例として5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、5−(1−プロピニル)ウラシル、5−(1−プロピニル)シトシンおよび4,4−エタノシトシン)を含む。好適な塩基の他の例は、2−アミノピリジンおよびトリアジン類などの非プリニルおよび非ピリミジニル塩基を含む。
好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドのヌクレオモノマーは、RNAヌクレオチドである。別の好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチドのヌクレオモノマーは、修飾RNAヌクレオチドである。よって、オリゴヌクレオチドは、修飾RNAヌクレオチドを含有する。
用語「ヌクレオシド」は、糖部分、好ましくはリボースまたはデオキシリボースに共有結合した塩基を含む。好ましいヌクレオシドの例は、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含む。ヌクレオシドはまた、遊離カルボキシル基、遊離アミノ基または保護基を含んでもよいアミノ酸またはアミノ酸アナログに連結した塩基をも含む。好適な保護基は当該技術分野において周知である(P. G. M. WutsおよびT. W. Greene、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、Wiley-Interscience、New York、1999年を参照)。
用語「ヌクレオチド」は、ホスファート基またはホスファートアナログをさらに含むヌクレオシドを含む。
核酸分子は、分子の細胞への標的化および/または送達のために、疎水性部分と結びついてもよい。ある態様において、疎水性部分はリンカーを介して核酸分子と結びつく。ある態様において、結びつきは非共有結合性相互作用を介する。他の態様において、結びつきは共有結合を介する。当該技術分野において知られているいずれのリンカーも、核酸を疎水性部分に結びつけるために使用されてもよい。
当該技術分野において知られているリンカーは、公開された国際PCT出願:WO 92/03464、WO 95/23162、WO 2008/021157、WO 2009/021157、WO 2009/134487、WO 2009/126933、米国特許出願公開第2005/0107325号、米国特許第5,414,077号、米国特許第5,419,966号、米国特許第5,512,667号、米国特許第5,646,126号および米国特許第5,652,359号に記載されており、これらは本明細書に参考として組み込まれる。リンカーは、多原子リンカーに対する共有結合程度に単純であってもよい。リンカーは環式または非環式であってもよい。リンカーは、任意に置換されていてもよい。ある態様において、リンカーは核酸から切断されることができる。ある態様において、リンカーは、生理学的条件下で加水分解されることができる。ある態様において、リンカーは、酵素(例としてエステラーゼまたはホスホジエステラーゼ)により切断されることができる。
ある態様において、リンカーは、核酸を疎水性部分から分離するスペーサー要素を含む。スペーサー要素は1〜30個の炭素またはヘテロ原子を含んでもよい。ある態様において、リンカーおよび/またはスペーサー要素はプロトン化可能な官能基を含む。かかるプロトン化可能な官能基は、核酸分子のエンドソーム脱出を促進してもよい。プロトン化可能な官能基はまた、核酸の細胞への送達を支援することもでき、例えば分子の全体の電荷を中性化する。他の態様において、リンカーおよび/またはスペーサー要素は、生物学的に不活性である(すなわち、もたらされる核酸分子に対して生物学的活性または機能を付与しない)。
ある態様において、リンカーおよび疎水性部分を持つ核酸分子は、本明細書に記載された式のものである。ある態様において、核酸分子は、式:
式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝の脂肪族;または、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族であり;
R1は、疎水性部分であり;
R2は、水素;酸素保護基;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族;置換または非置換、分枝または非分枝のアシル;置換または非置換、分枝または非分枝のアリール;置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロアリールであり;および
R3は、核酸である、
で表される。
ある態様において、分子は、式:
で表される。
ある態様において、分子は、式:
で表される。
ある態様において、分子は、式:
で表される。
ある態様において、分子は、式:
で表される。
ある態様において、XはNである。ある態様において、XはCHである。
ある態様において、Aは結合である。ある態様において、Aは、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝の脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式、置換または非置換、分枝または非分枝の脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式、置換、分枝または非分枝の脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝の脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝のアルキルである。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝のC1〜20アルキルである。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝のC1〜12アルキルである。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝のC1〜10アルキルである。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝のC1〜8アルキルである。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝のC1〜6アルキルである。ある態様において、Aは、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式、置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式、置換、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族である。ある態様において、Aは、非環式、置換、非分枝のヘテロ脂肪族である。
ある態様において、Aは、式:
で表される。
ある態様において、Aは、式:
で表される。
ある態様において、Aは、式:
式中、
Rの出現の各々は、独立して、天然または非天然のアミノ酸の側鎖であり;および
nは、1から20までの整数である、
で表される。ある態様において、Aは、式:
で表される。
ある態様において、Rの出現の各々は、独立して、天然のアミノ酸の側鎖である。ある態様において、nは、1から15までの整数である。ある態様において、nは、1から10までの整数である。ある態様において、nは、1から5までの整数である。
ある態様において、Aは、式:
式中、nは、1から20までの整数である、
で表される。ある態様において、Aは、式:
で表される。
ある態様において、nは、1から15までの整数である。ある態様において、nは、1から10までの整数である。ある態様において、nは、1から5までの整数である。
ある態様において、Aは、式:
式中、nは、1から20までの整数である、
で表される。ある態様において、Aは、式:
で表される。
ある態様において、nは、1から15までの整数である。ある態様において、nは、1から10までの整数である。ある態様において、nは、1から5までの整数である。
ある態様において、分子は、式:
式中、X、R
1、R
2およびR
3は、本明細書に定義された通りであり;および
A’は、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝の脂肪族であるか;または、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族である、
で表される。
ある態様において、A’は、式:
の1つで表される。
ある態様において、Aは、式:
で表される。
ある態様において、Aは、式:
で表される。
ある態様において、R
1はステロイドである。ある態様において、R
1はコレステロールである。ある態様において、R
1は親油性ビタミンである。ある態様において、R
1はビタミンAである。ある態様において、R
1はビタミンEである。
ある態様において、R
1は、式:
式中、R
Aは、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝の脂肪族であるか;または、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族である、
で表される。
ある態様において、R
1は、式:
で表される。
ある態様において、R
1は、式:
で表される。
ある態様において、R
1は、式:
で表される。
ある態様において、R
1は、式:
で表される。
ある態様において、R
1は、式:
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝の脂肪族;または、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族であり;
R
1は、疎水性部分であり;
R
2は、水素;酸素保護基;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族;置換または非置換、分枝または非分枝のアシル;置換または非置換、分枝または非分枝のアリール;置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロアリールであり;および
R
3は、核酸である、
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝の脂肪族;または、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族であり;
R
1は、疎水性部分であり;
R
2は、水素;酸素保護基;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族;置換または非置換、分枝または非分枝のアシル;置換または非置換、分枝または非分枝のアリール;置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロアリールであり;および
R
3は、核酸である、
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
式中、
Xは、NまたはCHであり;
Aは、結合;置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝の脂肪族;または、置換または非置換、環式または非環式、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族であり;
R
1は、疎水性部分であり;
R
2は、水素;酸素保護基;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝の脂肪族;環式または非環式、置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロ脂肪族;置換または非置換、分枝または非分枝のアシル;置換または非置換、分枝または非分枝のアリール;置換または非置換、分枝または非分枝のヘテロアリールであり;および
R
3は、核酸である、
で表される。ある態様において、核酸分子は、式:
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
式中、R
3は、核酸である、
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
式中、R
3は、核酸であり;および
nは、1から20までの整数である。
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
で表される。
ある態様において、核酸分子は、式:
で表される。
本明細書に使用される用語「連結部(linkage)」は、天然に存在する、隣接するヌクレオモノマーに共有結合する未修飾ホスホジエステル部分(−O−(PO2−)−O−)を含む。本明細書に使用される用語「置換連結部(substitute linkage)」は、ネイティブなホスホジエステル基の、隣接するヌクレオモノマーに共有結合するあらゆるアナログまたは誘導体を含む。置換連結部は、ホスホジエステルアナログ、例としてホスホロチオアート、ホスホロジチオアートおよびP−エチオキシホスホジエステル(P-ethyoxyphosphodiester)、P−エトキシホスホジエステル、P−アルキルオキシホスホジエステル、メチルホスホナートおよびリンを含有しない結合、例としてアセタールおよびアミドを含む。かかる置換連結部は、当該技術分野において知られている(例としてBjergarde et al. 1991. Nucleic Acids Res. 19:5843; Caruthers et al. 1991. Nucleosides Nucleotides. 10:47)。ある態様において、ホスホロチオアート連結部などの非加水分解性連結部が好ましい。
ある態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、疎水的に修飾されたヌクレオチドまたは「疎水性修飾」を含む。本明細書に使用される「疎水性修飾」は、(1)塩基の全体的な疎水性が著しく増大し、および/または、(2)塩基がなお通常のワトソン−クリック相互作用に類似するものを形成することができるように修飾された塩基を指す。いくつかの非限定的な塩基修飾の例は、5位のウリジンおよびシチジン修飾、例えばフェニル、4−ピリジル、2−ピリジル、インドリル、および、イソブチル、フェニル(C6H5OH);トリプトファニル(C8H6N)CH2CH(NH2)CO)、イソブチル、ブチル、アミノベンジル;フェニル;およびナフチルを含む。
末端(3’または5’末端)、ループ領域またはsd−rxRNAの他のいずれ部分にも付着し得る別の型の抱合体は、ステロール、ステロール型分子、ペプチド、低分子、タンパク質などを含む。いくつかの態様において、sd−rxRNAは、1つより多い抱合体(同じまたは異なる化学的性質のもの)を含んでもよい。いくつかの態様において、抱合体は、コレステロールである。
標的遺伝子特異性を増大させるかまたはオフ・ターゲットサイレンシング作用を低減するための別の方法は、ガイド配列の5’末端の2番目のヌクレオチドに対応する位置にて、2’修飾(2’−O−メチル修飾など)を導入することである。これにより、ダイサー耐性ヘアピン構造におけるこの2’修飾の配置が可能になり、それにより、オフ・ターゲットサイレンシングがより少ないか、オフ・ターゲットサイレンシングを有さない、より良好なRNAiコンストラクトを設計することが可能となる。
一態様において、本発明のヘアピンポリヌクレオチドは、DNAである1つの核酸部分と、RNAである1つの核酸部分とを含み得る。本発明のアンチセンス(ガイド)配列は、RNA様およびDNA様の領域を含む「キメラオリゴヌクレオチド」であり得る。
語「RNase H活性化領域」は、オリゴヌクレオチド、例としてキメラオリゴヌクレオチドの、当該オリゴヌクレオチドが結合する標的RNA鎖を切断するRNase Hを動員することができる領域を含む。典型的には、RNase H活性化領域は、DNAまたはDNA様ヌクレオモノマーの(少なくとも約3〜5、典型的には約3〜12、より典型的には約5〜12、より好ましくは約5〜10の、連続したヌクレオモノマーの)最小コアを含む(例として米国特許第5,849,902号を参照)。好ましくは、RNase H活性化領域は、約9個の連続したデオキシリボース含有ヌクレオモノマーを含む。
語「非活性化領域」は、アンチセンス配列、例としてキメラオリゴヌクレオチドの領域であって、RNase Hを動員または活性化しないものを含む。好ましくは、非活性化領域は、ホスホロチオアートDNAを含まない。本発明のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの非活性化領域を含む。一態様において、非活性化領域は、ヌクレアーゼに対して安定であることができるか、または、標的に対して相補的であることおよびオリゴヌクレオチドにより結合される標的核酸分子と水素結合を形成することにより、標的に対する特異性を提供し得る。
一態様において、連続したポリヌクレオチドの少なくとも一部は、置換連結部、例としてホスホロチオアート連結部により連結されている。
ある態様において、ガイド配列を超えるヌクレオチドの殆どまたは全ては(2’修飾されていようがいまいが)ホスホロチオアート連結部により連結されている。かかるコンストラクトは、その血清タンパク質に対するより高いアフィニティーに起因して、薬物動態が改善されている傾向がある。ポリヌクレオチドの非ガイド配列部分におけるホスホロチオアート連結部は一般に、一旦ガイド鎖がRISCにロードされた後は、ガイド鎖の活性に干渉しない。
本発明のアンチセンス(ガイド)配列は、「モルホリノオリゴヌクレオチド」を含んでもよい。モルホリノオリゴヌクレオチドは非イオン性であり、RNase H非依存的機構により機能する。モルホリノオリゴヌクレオチドの4つの遺伝子塩基(アデニン、シトシン、グアニンおよびチミン/ウラシル)は、6員のモルホリン環に連結されている。モルホリノオリゴヌクレオチドは、例として非イオン性ホスホロジアミダート(phosphorodiamidate)サブユニット間連結部によって、4つの異なるサブユニット型を結合することにより作られる。モルホリノオリゴヌクレオチドは、以下を含む多数の利点を有する:ヌクレアーゼに対する完全な耐性(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1996. 6:267);予測可能な標的化(Biochemica Biophysica Acta. 1999. 1489:141);細胞における確実な活性(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:63);優れた配列特異性(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:151);最小限の非アンチセンス活性(Biochemica Biophysica Acta. 1999. 1489:141);および簡便な浸透圧または掻爬による送達(Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:291)。モルホリノオリゴヌクレオチドはまた、高用量におけるその非毒性のために好ましい。モルホリノオリゴヌクレオチドの調製の議論は、Antisence & Nucl. Acid Drug Dev. 1997. 7:187において見出され得る。
本明細書に記載の化学修飾は、本明細書に記載のデータに基づき、一本鎖ポリヌクレオチドのRISC中へのローディングを促進すると考えられる。一本鎖ポリヌクレオチドは、RISC中へのローディングおよび遺伝子サイレンシングの誘導において活性であることが示されている。しかしながら、一本鎖ポリヌクレオチドについての活性のレベルは、デュプレックスポリヌクレオチドと比較したとき、2〜4桁の規模でより低いと考えられる。
本発明は、(a)一本鎖ポリヌクレオチドの安定性を著しく増大し、(b)ポリヌクレオチドのRISC複合体への効率的なローディングを促進し、および(c)一本鎖ヌクレオチドの細胞による取り込みを改善する、化学修飾パターンの説明を提供する。図5は、細胞において一本鎖ポリヌクレオチドの効力を達成するために有益であり得る化学修飾パターンのいくつかの非限定的な例を提供する。化学修飾パターンは、リボース修飾、骨格修飾、疎水性ヌクレオシド修飾と、抱合体型修飾との組み合わせを含んでもよい。加えて、態様のいくつかにおいて、単一のポリヌクレオチドの5’末端は、化学的にリン酸化されていてもよい。
さらに他の態様において、本発明は、RISC阻害性ポリヌクレオチドの機能を改善する化学修飾パターンの説明を提供する。一本鎖ポリヌクレオチドは、基質競合機構を通して、予めロードされたRISC複合体の活性を阻害することが示されている。通常アンタゴマー(antagomer)と称されるこれらの型の分子について、活性には、通常、高濃度が必要であり、in vivoでの送達はあまり効果的ではない。本発明は、(a)一本鎖ポリヌクレオチドの安定性を著しく増大し、(b)RISCによるポリヌクレオチドの基質としての効率的な認識を促進し、および/または、(c)細胞による一本鎖ヌクレオチドの取り込みを改善する、化学修飾パターンの説明を提供する。化学修飾パターンは、リボース修飾、骨格修飾、疎水性ヌクレオシド修飾と、抱合体型修飾との組合せを含んでもよい。
本発明により提供される修飾は、全てのポリヌクレオチドに対して適用可能である。これは、一本鎖RISC侵入性ポリヌクレオチド、一本鎖RISC阻害性ポリヌクレオチド、多様な長さ(15〜40bp)の従来のデュプレックス化ポリヌクレオチド、非対称性デュプレックス化ポリヌクレオチドなどを含む。ポリヌクレオチドは、5’末端修飾、リボース修飾、骨格修飾および疎水性ヌクレオシド修飾を含む、多様な化学修飾パターンにより修飾されていてよい。
合成
本発明のオリゴヌクレオチドは、当該技術分野において知られているいずれの方法によっても、例として酵素による合成および/または化学合成を使用して、合成され得る。オリゴヌクレオチドは、in vitroで(例として酵素による合成および化学合成を使用して)、またはin vivoで(当該技術分野において周知の組み換えDNA技術を使用して)合成され得る。
好ましい態様において、化学合成は、修飾ポリヌクレオチドのために使用される。直鎖オリゴヌクレオチドの化学合成は、当該技術分野において周知であり、溶液または固相の技術により達成され得る。好ましくは、合成は、固相方法によるものである。オリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダイト、亜リン酸トリエステル、H−ホスホナートおよびホスホトリエステル方法を含む、いくつかの異なる合成手順のいずれかにより、典型的には自動合成方法により、作られてもよい。
オリゴヌクレオチドの合成プロトコルは当該技術分野において周知であり、例として米国特許第5,830,653号;WO 98/13526;Stec et al. 1984. J. Am. Chem. Soc. 106:6077;Stec et al. 1985. J. Org. Chem. 50:3908;Stec et al. J. Chromatog. 1985. 326:263;LaPlanche et al. 1986. Nucl. Acid. Res. 1986. 14:9081;Fasman G. D., 1989. Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology. 1989. CRC Press, Boca Raton, Fla.;Lamone. 1993. Biochem. Soc. Trans. 21:1;米国特許第5,013,830号;米国特許第5,214,135号;米国特許第5,525,719号;Kawasaki et al. 1993. J. Med. Chem. 36:831;WO 92/03568;米国特許第5,276,019号;および米国特許第5,264,423号において見出され得る。
選択される合成方法は、所望のオリゴヌクレオチドの長さに依存し得、かかる選択は、当業者の技術の範囲内である。例えば、ホスホロアミダイトおよび亜リン酸トリエステル法により、175またはそれより多いヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを生成し得、一方、H−ホスホナート法は、100ヌクレオチド未満のオリゴヌクレオチドのために良好に機能する。修飾塩基がオリゴヌクレオチドに組み込まれる場合、および特に、修飾ホスホジエステル連結部が使用される場合、合成手順は、必要に応じて、公知の手順に従って変えられる。このことに関して、Uhlmannら(1990, Chemical Reviews 90:543-584)は、修飾塩基および修飾ホスホジエステル連結部を有するオリゴヌクレオチドを作製するための参考文献および概略手順を提供する。オリゴヌクレオチドを作製するための他の例示的な方法は、Sonveaux、1994年、「Protecting Groups in Oligonucleotide Synthesis」;Agrawal、Methods in Molecular Biology 26:1において教示される。例示的な合成方法はまた、「Oligonucleotide Synthesis - A Practical Approach」(Gait, M. J. IRL Press at Oxford University Press. 1984)においても教示される。その上、修飾ヌクレオチドを持ついくつかの配列を含む規定の配列の直鎖オリゴヌクレオチドは、数個の商業的供給源から容易に入手可能である。
オリゴヌクレオチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、または、ゲルクロマトグラフィーおよび高圧液体クロマトグラフィーを含む多数のクロマトグラフィー的方法のいずれにより、精製されてもよい。ヌクレオチド配列、特に未修飾ヌクレオチド配列を確認するために、オリゴヌクレオチドは、マクサム・ギルバートシークエンシング、サンガーシークエンシング、キャピラリー電気泳動シークエンシング、ワンダーリングスポット(wandering spot)シークエンシングの手順を含む、知られている手順のいずれかにより、またはHybond紙に結合させたオリゴヌクレオチドの選択的化学分解を使用することにより、DNAシークエンシングに供されてもよい。短いオリゴヌクレオチドの配列はまた、レーザー脱離質量分析または高速原子衝撃によっても分析され得る(McNeal, et al., 1982, J. Am. Chem. Soc. 104:976;Viari, et al., 1987, Biomed. Environ. Mass Spectrom. 14:83;Grotjahn et al., 1982, Nuc. Acid Res. 10:4671)。シークエンシング方法はまた、RNAオリゴヌクレオチドについても利用可能である。
合成されたオリゴヌクレオチドの品質は、オリゴヌクレオチドを、例としてBergot and Egan. 1992. J. Chrom. 599:35の方法を使用して、キャピラリー電気泳動および分解性強アニオンHPLC(denaturing strong anion HPLC:SAX-HPLC)により試験することにより、確認され得る。
他の例示的な合成技術は、当該技術分野において周知である(例としてSambrook et al., Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Second Edition (1989);DNA Cloning, Volumes I and II (DN Glover Ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis(M J Gait Ed, 1984;Nucleic Acid Hybridisation (B D Hames and S J Higgins eds. 1984);A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);またはシリーズであるMethods in Enzymology(Academic Press, Inc.)を参照)。
ある態様において、対象とするRNAiコンストラクトまたは少なくともその一部は、対象とするコンストラクトをコードする発現ベクターから転写される。この目的のために、当該技術分野において認識されるいずれのベクターも使用されてもよい。転写されたRNAiコンストラクトは、所望の修飾(未修飾センス鎖を修飾されたものにより置き換えることなど)が行われる前に、単離、精製されてもよい。
送達/キャリア
細胞によるオリゴヌクレオチドの取り込み
オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド組成物は、1以上の細胞または細胞ライセートと接触させられて(すなわち、接触させられるか、または、本明細書においては投与または送達されるとして言及される)、これに取り込まれる。用語「細胞」は、原核および真核細胞、好ましくは脊椎動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞を含む。好ましい態様において、本発明のオリゴヌクレオチド組成物は、ヒト細胞と接触させられる。
本発明のオリゴヌクレオチド組成物を、in vitroで、例として試験管または培養ディッシュ中で(対象中へ導入されても、されなくてもよく)、またはin vivoで、例として哺乳動物対象などの対象において、細胞と接触させてもよい。オリゴヌクレオチドは、エンドサイトーシスによって遅い速度で細胞に取り込まれるが、エンドサイトーシスされたオリゴヌクレオチドは、一般に隔絶され、例として標的核酸分子へのハイブリダイゼーションのために利用可能ではない。一態様において、細胞による取り込みを、エレクトロポレーションまたはリン酸カルシウム沈殿により容易になされ得る。しかしながら、これらの手順はin vitroまたはex vivoの態様でのみ有用であり、便利ではなく、いくつかのケースにおいては細胞毒性と関連する。
他の態様において、細胞中へのオリゴヌクレオチドの送達は、リン酸カルシウム、DMSO、グリセロールもしくはデキストラン、エレクトロポレーションを含む好適な、当該技術分野において認識される方法により、または、トランスフェクションにより、例としてカチオン性、アニオン性または中性脂質組成物もしくはリポソームを使用して、当該技術分野において知られている方法を使用して(例としてWO 90/14074;WO 91/16024;WO 91/17424;米国特許第4,897,355号;Bergan et al. 1993. Nucleic Acid Research. 21:3567を参照)、増強され得る。増強されたオリゴヌクレオチドの送達はまた、ベクター(例としてShi, Y. 2003. Trends Genet 2003 Jan. 19:9; Reichhart J M et al. Genesis. 2002. 34(1-2):1604;Yu et al. 2002. Proc. Natl. Acad Sci. USA 99:6047;Sui et al. 2002. Proc. Natl. Acad Sci. USA 99:5515を参照)、ウイルス、ポリアミンまたはポリリジン、プロタミンもしくはNi、N12−ビス(エチル)スペルミンなどの化合物を使用するポリカチオン抱合体(例としてBartzatt, R. et al.1989. Biotechnol. Appl. Biochem. 11:133;Wagner E. et al. 1992. Proc. Natl. Acad. Sci. 88:4255を参照)の使用によっても媒介され得る。
ある態様において、本発明のsd-rxRNAは、多様なベータ−グルカン含有粒子を使用して送達されてもよく、該粒子はGeRP(グルカンカプセル化RNAロード粒子)として言及され、これは2010年3月4日出願の米国仮出願第61/310,611号、表題「食細胞への標的化送達のための製剤および方法」に記載されており、参考として組み込まれる。かかる粒子はまた、米国特許公開US 2005/0281781 A1およびUS 2010/0040656、2014年8月26日に特許付与された米国特許第8,815,818号、表題「RNAiの食細胞送達」ならびにPCT公開WO 2006/007372およびWO 2007/050643においても記載されており、参考として組み込まれる。sd-rxRNA分子は、疎水的に修飾されていてもよく、および任意に、脂質および/または両親媒性ペプチドと結びついていてもよい。ある態様において、ベータ−グルカン粒子は酵母に由来する。ある態様において、ペイロードトラップ(payload trapping)分子は、少なくとも約1000Da、10,000Da、50,000Da、100kDa、500kDa等の分子量のポリマーである。好ましいポリマーは、(限定せずに)カチオン性ポリマー、キトサンまたはPEI(ポリエチレンイミン)などを含む。
グルカン粒子は、酵母細胞壁などの真菌細胞壁の不溶性構成要素に由来し得る。いくつかの態様において、酵母はパン酵母である。酵母由来グルカン分子は、1以上のβ−(1,3)−グルカン、β−(1,6)−グルカン、マンナンおよびキチンを含み得る。いくつかの態様において、グルカン粒子は中空の酵母細胞壁を含み、これにより、粒子は細胞に似た3次元構造を維持し、この中でRNA分子などの分子と複合体化するかまたはこれをカプセル化し得る。酵母細胞壁粒子の使用に関連するいくつかの利点は、構成要素の利用可能性、それらの生分解性の性質、および、それらの食作用細胞を標的化する能力である。
いくつかの態様において、グルカン粒子は細胞壁からの不溶性構成要素を抽出することにより調製され得、例えばパン酵母(フライシュマンのもの)を1MのNaOH/pH4.0、H2Oで抽出し、続いて洗浄および乾燥することによる。酵母細胞壁粒子を調製するための方法は以下の文献に議論され、これらから参考として組み込まれる:米国特許第4,810,646号、同第4,992,540号、同第5,082,936号、同第5,028,703号、同第5,032,401号、同第5,322,841号、同第5,401,727号、同第5,504,079号、同第5,607,677号、同第5,968,811号、同第6,242,594号、同第6,444,448号、同第6,476,003号、米国特許公開第2003/0216346号、同第2004/0014715号および同第2010/0040656号ならびにPCT公開第WO02/12348号。
グルカン粒子を調製するためのプロトコルもまた、以下の文献に記載されており、これらから参考として組み込まれる:Soto and Ostroff (2008), “Characterization of multilayered nanoparticles encapsulated in yeast cell wall particles for DNA delivery”; Bioconjug Chem 19(4):840-8;Soto and Ostroff (2007), “Oral Macrophage Mediated Gene Delivery System,” Nanotech, Volume 2, Chapter 5 (“Drug Delivery”), pages 378-381;およびLi et al. (2007), “Yeast glucan particles activate murine resident macrophages to secrete proinflammatory cytokines via MyD88-and Syk kinase-dependent pathways.” Clinical Immunology 124(2):170-181。
酵母細胞壁粒子などのグルカン含有粒子はまた、商業的にも得られ得る。いくつかの非限定的例は以下を含む:Biorigin(Sao Paolo, Brazil)からのNutricell MOS 55、SAF-Mannan(SAF Agri, Minneapolis, Minn.)、Nutrex(Sensient Technologies, Milwaukee, Wis.)、アルカリ抽出粒子、例えばNutricepts(Nutricepts Inc., Burnsville, Minn.)およびASA Biotech製造のもの、Biopolymer Engineeringからの酸抽出WGP粒子および有機溶媒抽出粒子、例えばAlpha-beta Technology, Inc.(Worcester, Mass.)からのAdjuvax(商標)およびNovogen(Stamford, Conn.)からの微粒子グルカン。
酵母細胞壁粒子などのグルカン粒子は、製造および/または抽出方法に依存して種々のレベルの純度を有し得る。いくつかの例において、粒子はアルカリ抽出、酸抽出または有機溶媒抽出して、細胞内構成要素および/または細胞壁の外部マンノタンパク質層を除去する。かかるプロトコルは、50〜90%の範囲のグルカン含量(w/w)を有する粒子を製造し得る。いくつかの例において、低純度の粒子、すなわち低グルカンw/w含量の粒子が好ましい場合もあり、一方他の態様においては、高純度すなわち高グルカンw/w含量の粒子が好ましい場合もある。
酵母細胞壁粒子などのグルカン粒子は、天然の脂質含量を有し得る。例えば、粒子は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%または20%w/wを超える脂質を含有し得る。例のセクションにおいて、グルカン粒子2つのバッチ:YGP SAFおよびYGP SAF+L(天然脂質含有)の有効性を試験する。いくつかの態様において、天然脂質の存在はRNA分子の複合体化または捕捉を支援し得る。
グルカン含有粒子は典型的には、および2〜4ミクロンの直径を有するが、2ミクロン未満または4ミクロンを超える直径の粒子もまた、本発明の側面に適合する。
送達するRNA分子(単数または複数)は、グルカン粒子に複合体化されるか、そのシェル内に「捕捉」される。粒子のシェルまたはRNA構成要素は、Soto and Ostroff (2008) Bioconjug Chem 19:840に記載され、参考として組み込まれているように、視覚化のために標識され得る。GeRPをロードする方法は以下にさらに議論される。
オリゴヌクレオチドの取り込みのための最適なプロトコルは、多数の因子に依存するであろうが、最も重要なのは、使用される細胞の型である。取り込みにおいて重要な他の因子は、これらに限定されないが、オリゴヌクレオチドの性質および濃度、細胞のコンフルエンス、細胞を入れる培養の種類(例として懸濁培養であるかまたはプレート培養であるか)および細胞を培養する培地の種類を含む。
カプセル化剤
カプセル化剤は、ビヒクル内にオリゴヌクレオチドを捕捉する。本発明の他の態様において、オリゴヌクレオチドは、キャリアまたはビヒクル、例としてリポソームまたはミセルと結びついてもよいが、他のキャリアを使用され得ることは、当業者により理解される通りである。リポソームは、生体膜と類似する構造を有する脂質二重層からなるビヒクルである。かかるキャリアは、細胞による取り込みを促進するため、または、オリゴヌクレオチドを標的化するため、または、オリゴヌクレオチドの薬物動態または毒性学的特性を改善するために、使用される。
例えば、本発明のオリゴヌクレオチドはまた、その中に活性成分が分散してまたは脂質層に接着した水性濃縮層からなる小体中に多様に存在して含有される医薬組成物であるリポソーム中にカプセル化されても、投与されてもよい。オリゴヌクレオチドは、溶解性に依存して、水性層および脂質層の両方に存在しても、一般にリポソーム懸濁液(liposomic suspension)と称されるものの中に存在してもよい。疎水性層は一般に、必ずではないが、レシチンおよびスフィンゴミエリンなどのリン脂質、コレステロールなどのステロイド、リン酸ジアセチルなどの多かれ少なかれイオン性の界面活性剤、ステアリルアミンまたはホスファチジル酸または疎水性の性質の他の材料を含む。リポソームの直径は一般に、約15nmから約5ミクロンまでの範囲である。
薬物送達ビヒクルとしてのリポソームの使用は、幾つかの利点を与える。リポソームは、細胞内安定性を増大し、取り込み効率を増大し、生物学的活性を改善する。リポソームは、細胞膜を構成する脂質と類似の様式において配置された脂質からなる、中空の球体ビヒクルである。これらは、水溶性化合物を封入する内部の水性の空間を有し、直径0.05から数ミクロンまでの範囲のサイズである。数個の研究から、リポソームが核酸を細胞へ送達し得るること、および、核酸が生物学的に活性であり続けることが示される。例えば、リポフェクチンまたはLIPOFECTAMINE(商標)2000などの本来は研究用ツールとして設計された脂質送達ビヒクルは、無傷の(intact)核酸分子を細胞へ送達し得る。
リポソームを使用することの具体的な利点は以下を含む:それらは組成物において非毒性であり生分解性であること;それらは長期の循環半減期を呈すこと;および、認識分子が、組織へ標的化するために、それらの表面へ容易に付着され得ること。最後に、液体懸濁液または凍結乾燥製品のいずれにおいても、リポソームベースの医薬のコスト効率の良い製造は、受容可能な薬物送達システムとしてのこの技術のバイアビリティを実証している。
いくつかの側面において、本発明に関連する製剤は、天然に存在するかまたは化学的に合成されたかまたは修飾された、飽和および不飽和の脂肪酸残基のクラスについて選択されてもよい。脂肪酸は、トリグリセリド類、ジグリセリド類または個々の脂肪酸の形態で存在してもよい。他の態様において、非経口栄養のために薬理学において現在使用されている脂肪酸および/または脂質の乳液の、よく検証された混合物の使用が利用されてもよい。
リポソームベースの製剤は、オリゴヌクレオチドの送達のために広範に使用される。しかしながら、市販の脂質またはリポソーム製剤の殆どは、少なくとも1つの正に荷電した脂質(カチオン性脂質)を含有する。この正に荷電した脂質の存在は、高レベルのオリゴヌクレオチドのローディングを得るために、および、リポソームの膜融合特性を増強するために、必須であると考えられている。最適な正に荷電した脂質の化合物を同定するための、数個の方法が実施され、公開されている。しかしながら、カチオン性脂質を含有する市販のリポソーム製剤は、高レベルの毒性によって特徴づけられる。in vivoでの限定された治療インデックスにより、正に荷電した脂質を含有するリポソーム製剤が、RNAサイレンシングを達成するために必要とされる濃度よりもごく僅かに高い濃度において、毒性(すなわち肝臓の酵素の増大)と関連することが明らかとなっている。
本発明に関連する核酸は、疎水的に修飾され得、中性ナノトランスポーターに包含され得る。中性ナノトランスポーターのさらなる説明は、2009年9月22日に出願されたPCT出願PCT/US2009/005251、表題「中性ナノトランスポーター」および2011年9月29日に公開された米国特許公開第US2011/0237522号、表題「中性ナノトランスポーター」から参考として組み込まれる。かかる粒子は、定量的なオリゴヌクレオチドを非荷電の脂質混合物中に組み込むことができる。かかる中性ナノトランスポーター組成物においてカチオン性脂質が毒性レベルを欠いていることは、重要な特性である。
PCT/US2009/005251に実証されているとおり、オリゴヌクレオチドは、カチオン性脂質を有さない脂質混合物中に効率的に組み込まれ得、かかる組成物は、治療用オリゴヌクレオチドを機能的な様式で細胞に効果的に送達し得る。例えば、脂質混合物が、ホスファチジルコリンベースの脂肪酸およびコレステロールなどのステロールから構成されたとき、高レベルの活性が観察された。例えば、中性脂質混合物の1つの好ましい製剤は、少なくとも20%のDOPCまたはDSPCおよび少なくとも20%のコレステロールなどのステロールから構成される。1:5の脂質対オリゴヌクレオチド比率という低さでも、オリゴヌクレオチドの非荷電製剤中での完全なカプセル化を得るのに充分であることが示された。
中性ナノトランスポーター組成物は、オリゴヌクレオチドの中性脂質製剤中への効率的なローディングを可能にする。組成物は、分子の疎水性が増大するような様式において修飾されている(例えば、疎水性分子が、疎水性分子に、オリゴヌクレオチド末端または末端でないヌクレオチド、塩基、糖もしくは主鎖上で、(共有結合的にまたは非共有結合的に)付着されている)オリゴヌクレオチドを含み、修飾オリゴヌクレオチドは、中性脂質製剤と混合されている(例えば、少なくとも25%のコレステロールおよび25%のDOPCまたはそのアナログを含有する)。別の脂質などのカーゴ分子もまた、組成物中に含まれ得る。この組成物は、製剤の一部がオリゴヌクレオチド自体中に構築される場合、中性脂質粒子中におけるオリゴヌクレオチドの効率的なカプセル化を可能にする。
いくつかの側面において、50から140nmまでの範囲のサイズの安定な粒子は、疎水性オリゴヌクレオチドを好ましい製剤と複合体化することにより形成され得る。製剤は、それ自体では典型的には小さい粒子を形成せず、むしろ集塊物を形成し、これは疎水性修飾オリゴヌクレオチドを付加することにより、安定な50〜120nmの粒子へと転換されることに言及することは興味深い。
本発明の中性ナノトランスポーター組成物は、疎水性修飾ポリヌクレオチド、中性脂質混合物および任意にカーゴ分子を含む。本明細書に使用される「疎水性修飾ポリヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドの修飾の前よりも疎水性にする少なくとも1つの修飾を有する、本発明のポリヌクレオチド(すなわちsd−rxRNA)である。修飾は、疎水性分子をポリヌクレオチドに付着(共有結合的または非共有結合的に)することにより達成されてもよい。いくつかの例において、疎水性分子は、親油性基であるかまたは親油性基を含む。
用語「親油性基」は、水に対するアフィニティーよりも高い、脂質に対するアフィニティーを有する基を意味する。親油性基の例は、これらに限定されないが、コレステロール、コレステリルまたは修飾コレステリル残基、アダマンチン、ジヒドロテステロン(dihydrotesterone)、長鎖アルキル、長鎖アルケニル、長鎖アルキニル、オレイル−リトコール酸、コレン酸、オレオイル−コレン酸、パルミチル酸、ヘプタデシル酸、ミリスチル酸、胆汁酸、コール酸またはタウロコール酸、デオキシコール酸、オレイルリトコール酸、オレオイルコレン酸、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロイドなどのイソプレノイド類、ビタミンEなどのビタミン類、飽和または不飽和のいずれかの脂肪酸、トリグリセリドなどの脂肪酸エステル類、ピレン類、ポルフィリン類、テキサフィリン、アダマンタン、アクリジン類、ビオチン、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、Texas-Red、ジゴキシゲニン、ジメトキシトリチル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、シアニン色素(例としてCy3またはCy5)、Hoechst 33258色素、ソラレンまたはイブプロフェンを含む。コレステロール部分は還元されても(例としてコレスタン中のように)、または、置換されても(例としてハロゲンにより)よい。1分子における異なる親油性基の組み合わせもまた可能である。
疎水性分子は、ポリヌクレオチドの多様な位置において付着されてもよい。上記のとおり、疎水性分子は、ポリヌクレオチドの3’または5’末端などのポリヌクレオチドの末端の残基に連結されていてもよい。代わりに、これは、ポリヌクレオチドの内部のヌクレオチドまたは枝上のヌクレオチドに連結されていてもよい。疎水性分子が、例えばヌクレオチドの2’位に、付着されていてもよい。疎水性分子はまた、ポリヌクレオチドのヌクレオチドの複素環式塩基、糖または主鎖にも連結されていてもよい。
疎水性分子は、リンカー部分によりポリヌクレオチドに繋げられていてもよい。任意に、リンカー部分は、非ヌクレオチド性のリンカー部分である。非ヌクレオチド性のリンカーは、例として、脱塩基残基(dスペーサー)、トリエチレングリコール(スペーサー9)もしくはヘキサエチレングリコール(スペーサー18)などのオリゴエチレングリコール、またはブタンジオールなどのアルカンジオールである。スペーサーユニットは、好ましくは、ホスホジエステルまたはホスホロチオアート結合により連結されている。リンカーユニットは、分子中に1回のみ現れても、または、例としてホスホジエステル、ホスホロチオアート、メチルホスホナートまたはアミン連結部などを介して、数回組み込まれてもよい。
典型的な抱合プロトコルは、配列の1以上の位置においてアミノリンカーを保有するポリヌクレオチドの合成を含むが、しかしながらリンカーは必要ではない。アミノ基は、次いで、適切なカップリングまたは活性化試薬を使用して、抱合される分子と反応させられる。抱合反応は、まだ固体支持体に結合しているポリヌクレオチドを用いて、または、溶液相中でのポリヌクレオチドの切断に続いて、実施されてもよい。HPLCによる修飾ポリヌクレオチドの精製は、典型的には、結果として純粋な材料を生じる。
いくつかの態様において、疎水性分子は、ミセル中へ組み込まれるために充分な疎水性を提供する、ステロール型抱合体、フィトステロール抱合体、コレステロール抱合体、側鎖の長さが変えられたステロール型抱合体、脂肪酸抱合体、任意の他の疎水性基抱合体、および/または内部ヌクレオシドの疎水性修飾である。
本発明の目的のために、用語「ステロール」またはステロイドアルコール類は、A環の3位においてヒドロキシル基を持つステロイドのサブグループを指す。これらは、アセチル−コエンザイムAからHMG−CoAレダクターゼ経路を介して合成される両親媒性脂質である。全体的な分子は、極めて扁平である。A環上のヒドロキシル基は、極性である。脂肪族鎖の残りは、非極性である。通常、ステロールは、17位において8炭素鎖を有すると考えられる。
本発明の目的のために、用語「ステロール型分子」は、ステロイドアルコール類を指し、これは、ステロールと構造が類似する。主要な差異は、環の構造および21位に結合する側鎖の炭素の数である。
本発明の目的のために、用語「フィトステロール」(また植物ステロールとも称される)は、植物において天然に存在する植物化学物質である、一群のステロイドアルコール類である。200種を超えるフィトステロールが知られている。
本発明の目的のために、用語「ステロールの側鎖」は、ステロール型分子の17位にて付着する側鎖の化学組成を指す。標準的な定義において、ステロールは、8炭素鎖を17位に保有する4環構造に限定される。本発明において、従来のものよりも長いおよび短い側鎖を持つステロール型分子が記載される。側鎖は、分枝であってもよいし、二重の骨格を含有していてもよい。
よって、本発明に有用なステロールは、例えば、コレステロール、ならびに、17位に2〜7個または9個の炭素より長い側鎖が結合しているユニークなステロールを含む。特定の態様において、ポリ炭素テイルの長さは、5〜9個の炭素の間で変動する。かかる抱合体は、特に肝臓への送達において、顕著により良好なin vivo効力を有してもよい。これらの型の分子は、従来のコレステロールに抱合されたオリゴヌクレオチドよりも5〜9倍低い濃度にて働くことが期待される。
代わりに、ポリヌクレオチドは、タンパク質、ペプチド、または、疎水性分子として機能する正に荷電した化学物質に結合していてもよい。タンパク質は、プロタミン、dsRNA結合ドメインおよびアルギニンリッチペプチドからなる群から選択されてもよい。例示的な正に荷電した化学物質は、スペルミン、スペルミジン、カダベリンおよびプトレシンを含む。
他の態様において、疎水性分子抱合体は、疎水性修飾、ホスホロチオアート修飾および2’リボ修飾を含むがこれらに限定されないポリヌクレオチドの最適な化学修飾パターンと組み合わされたとき(本明細書に詳細に記載されるとおり)、さらに高い効力を実証し得る。
他の態様において、ステロール型分子は、天然に存在するフィトステロールであってもよい。ポリ炭素鎖は、9個より長くても、直鎖であっても、分枝鎖であっても、および/または、二重結合を含有していてもよい。ポリヌクレオチド抱合体を含有するいくつかのフィトステロールは、多様な組織へのポリヌクレオチドの送達において、顕著により強力かつ活性であり得る。いくつかのフィトステロールは組織選択性を実証し得ることから、RNAiを特異的に特定の組織へ送達するための手段として使用され得る。
疎水性修飾ポリヌクレオチドは、中性脂肪酸混合物と混合されて、ミセルを形成する。中性脂肪酸混合物は、疎水性修飾ポリヌクレオチドとともにミセルを形成し得る生理学的pHにおいてまたはその付近において、正味の中性または僅かに正味の負の電荷を有する、脂質の混合物である。本発明の目的のために、用語「ミセル」は、非荷電性脂肪酸とリン脂質との混合物により形成される、小さいナノ粒子を指す。中性脂肪酸混合物は、毒性を引き起こさない量において存在する限りにおいて、カチオン性脂質を含んでもよい。好ましい態様において、中性脂肪酸混合物は、カチオン性脂質を含まない。カチオン性脂質を含まない混合物は、全脂質のうちの1%未満、好ましくは0%が、カチオン性脂質であるものである。用語「カチオン性脂質」は、生理学的pHにおいてまたはその付近において、正味の正の電荷を有する、脂質および合成脂質を含む。用語「アニオン性脂質」は、生理学的pHにおいてまたはその付近において、正味の負の電荷を有する、脂質および合成脂質を含む。
中性脂質は、強力であるが共有結合ではない引力(例として静電気、ファンデルワールス、パイ・スタッキング(pi-stacking)などの相互作用)により、本発明のオリゴヌクレオチドに結合する。
中性脂質混合物は、天然に存在するかまたは化学合成された、または、修飾された、飽和および不飽和脂肪酸残基のクラスから選択される製剤を含んでもよい。脂肪酸は、トリグリセリド、ジグリセリドまたは個別の脂肪酸の形態で存在し得る。他の態様において、薬理学において非経口栄養のために現在使用されている脂肪酸のよく確認された混合物および/または脂質乳液が利用されてもよい。
中性脂肪酸混合物は、好ましくは、コリンをベースとする脂肪酸およびステロールの混合物である。コリンをベースとする脂肪酸は、例えば、DDPC、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPCおよびDEPCなどの合成のホスホコリン誘導体を含む。DOPC(化合物登録番号4235-95-4)は、ジオレオイルホスファチジルコリンである(ジエライドイルホスファチジルコリン、ジオレオイル−PC、ジオレオイルホスホコリン、ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、ジオレイルホスファチジルコリンとしても知られる)。DSPC(化合物登録番号816-94-4は、ジステアロイルホスファチジルコリンである(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンとしても知られる)。
中性脂肪酸混合物中のステロールは、例えばコレステロールであってもよい。中性脂肪酸混合物は、完全にコリンベースの脂肪酸およびステロールからなっても、または、これは任意にカーゴ分子を含んでもよい。例えば、中性脂肪酸混合物は、少なくとも20%または25%の脂肪酸および20%または25%のステロールを有してもよい。
本発明の目的のために、用語「脂肪酸」は、脂肪酸の従来の説明に関する。これらは、個別の実体またはジグリセリドおよびトリグリセリドの形態において存在し得る。本発明の目的のために、用語「脂質乳液」は、食事から十分な脂質を得ることができない対象へ静脈内に与えられる安全な脂質製剤を指す。これは、大豆油(または他の天然に存在するオイル)と卵のリン脂質との乳液である。脂質乳液は、いくつかの不溶性麻酔剤の製剤のために使用されている。本開示において、脂質乳液は、イントラリピッド(Intralipid)、リポシン(Liposyn)、ニュートリピッド(Nutrilipid)などの市販の製剤の一部、特定の脂肪酸が濃縮されている改変された市販の製剤、または、完全にde novoで処方された脂肪酸とリン脂質との組合せであってもよい。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチド組成物と接触させる細胞は、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および、脂質、例として上記の脂質または脂質組成物の1つを含む混合物と、約12時間〜約24時間の間接触させられる。他の態様において、オリゴヌクレオチド組成物と接触させる細胞は、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および、脂質、例として上記の脂質または脂質組成物の1つを含む混合物と、約1〜約5日間接触させられる。一態様において、細胞は、脂質およびオリゴヌクレオチドを含む混合物と、約3日間〜約30日間接触させられる。他の態様において、脂質を含む混合物は、細胞と、少なくとも約5〜約20日間、接触状態に置かれる。他の態様において、脂質を含む混合物は、細胞と、少なくとも約7〜約15日間、接触状態に置かれる。
製剤の50%〜60%は、任意に、他のいずれの脂質または分子であってもよい。かかる脂質または分子は、本明細書において、カーゴ脂質またはカーゴ分子として言及される。カーゴ分子は、これらに限定されずに、イントラリピッド(intralipid)、低分子、膜融合ペプチドもしくは脂質を含むか、または、他の低分子が、細胞取り込み、エンドソームによる放出または組織分布特性を変えるために添加されてもよい。かかる特性が望ましい場合、カーゴ分子に耐性を示す能力は、これらの粒子の特性の改変のために重要である。例えば、いくつかの組織特異的代謝物の存在は、組織分布プロフィールを大幅に変える場合がある。例えば、多様な飽和レベルを有するより短いまたはより長い脂質鎖が濃縮されているイントラリピッド(intralipid)型製剤の使用は、これらの型の製剤の組織分布プロフィール(およびそれらのローディング)に影響を及ぼす。
本発明に従い有用なカーゴ脂質の例は、膜融合脂質である。例えば、双性イオン脂質DOPE(化合物登録番号4004-5-1、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)は、好ましいカーゴ脂質である。
イントラリピッド(Intralipid)は、以下の組成から構成され得る:1000mLが以下を含有する:精製大豆油90g、精製卵リン脂質12g、無水グリセロール22g、注射用水(1000mLへの十分量)。pHは、水酸化ナトリウムで、約pH8に調整される。エネルギー含量/L:4.6MJ(190kcal)。浸透圧(およそ):300mOsm/水1kg。他の態様において、脂質乳液は、5%のベニバナ油、5%の大豆油、乳化剤として添加される最大1.2%までの卵リン脂質および注射用水中の2.5%のグリセリンを含有する、リポシン(Liposyn)である。これはまた、pH調整のために水酸化ナトリウムを含有してもよい。pH8.0(6.0〜9.0)。リポシンは、276mOsmol/リットル(実測値)の浸透圧を有する。
カーゴ脂質のアイデンティティー、量および比率のバリエーションは、これらの化合物の細胞による取り込みおよび組織分布の特徴に影響を及ぼす。例えば、脂質テイルの長さおよび飽和性のレベルは、肝臓、肺、脂肪および心筋細胞への異なる取り込みに影響を及ぼす。ビタミン類または異なる形態のステロールなどの特別な疎水性分子の添加は、特定の化合物の代謝に関与する特別な組織への分布に有利に働き得る。複合体は、異なるオリゴヌクレオチド濃度にて形成され、より高い濃度は、より効率的な複合体形成に有利に働く。
他の態様において、脂質乳液は、脂質の混合物に基づく。かかる脂質は、天然の化合物、化学合成された化合物、精製脂肪酸または他のいずれの脂質をも含んでもよい。さらに他の態様において、脂質乳液の組成は、完全に人工的なものである。特定の態様において、脂質乳液は、70%を超えて、リノール酸である。さらに別の特定の態様において、脂質乳液は、少なくとも1%のカルジオリピンである。リノール酸(LA)は、不飽和オメガ−6脂肪酸である。これは、18−炭素鎖および2個のシス二重結合を有するカルボン酸からなる無色の液体である。
本発明のさらに他の態様において、疎水性修飾ポリヌクレオチドの組織分布を変えるための手段として、脂質乳液の組成の変更が使用される。この方法論は、特定の組織へのポリヌクレオチドの特異的送達をもたらす(図12)。
他の態様において、70%を超えるリノール酸(C18H32O2)および/またはカルジオリピンを含むカーゴ分子の脂質乳液は、RNAiを心筋に特異的に送達するために使用される。
イントラリピッド(intralipid)などの脂質乳液は、いくつかの非水溶性薬物(プロポフォール(Propofol)(Diprivanとして再処方されている)など)のための送達用製剤として、前から使用されてきた。本発明のユニークな特徴は、(a)修飾ポリヌクレオチドを1以上の疎水性化合物と組み合わせ、それによりこれが脂質ミセル中に組み込まれ得るというコンセプト、および(b)可逆性キャリアを提供するためにこれを脂質乳液と混合すること、を含む。血流中への注射の後で、ミセルは通常、アルブミン、HDL、LDLおよびその他の血清タンパク質と結合する。この結合は可逆性であり、最終的に脂質は細胞により吸収される。ミセルの一部として組み込まれるポリヌクレオチドは、次いで、細胞の表面近くに送達されるであろう。その後、ステロール型送達を含むがこれらに限定されない多様な機構を通して、細胞による取り込みが起こり得る。
複合体化剤
複合体化剤は、強力であるが共有結合ではない引力(例として静電気、ファンデルワールス、パイ・スタッキングなどの相互作用)により、本発明のオリゴヌクレオチドに結合する。一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの細胞による取り込みを増大するために、複合体化剤と複合体化され得る。複合体化剤の例は、カチオン性脂質を含む。カチオン性脂質は、オリゴヌクレオチドを細胞へ送達するために使用され得る。しかしながら、上記のとおり、カチオン性脂質を含まない製剤が、いくつかの態様において好ましい。
用語「カチオン性脂質」は、極性および非極性ドメインの両方を有する脂質および合成脂質であって、生理学的pHまたはその付近において正に荷電することができ、核酸などのポリアニオンに結合して核酸の細胞中への送達を促進するものを含む。一般に、カチオン性脂質は、飽和および不飽和アルキル、ならびに、脂環式のエーテル類およびアミンのエステル類、アミド類、または、これらの誘導体を含む。カチオン性脂質の直鎖および分枝アルキルおよびアルケニル基は、例として、1から約25個の炭素原子を含有し得る。好ましい直鎖または分枝アルキルまたはアルケン基は、6個以上の炭素原子を有する。脂環式基は、コレステロールおよび他のステロイド基を含む。カチオン性脂質は、例としてCl−、Br−、I−、F−、アセタート、トリフルオロ酢酸、スルファート、亜硝酸化合物(nitrite)およびニトラートを含む多様な対イオン(アニオン)とともに調製され得る。
カチオン性脂質の例は、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン(PAMAM)スターバーストデンドリマー、リポフェクチン(DOTMAとDOPEとの組合せ)、リポフェクターゼ(Lipofectase)、LIPOFECTAMINE(商標)(例えば、LIPOFECTAMINE(商標)2000)、DOPE、サイトフェクチン(Cytofectin)(Gilead Sciences、Foster City、Calif.)、およびユーフェクチン(Eufectins)(JBL、San Luis Obispo、Calif.)を含む。例示的なカチオン性リポソームは、N−[1−(2,3−ジオレオロキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N−[1−(2,3−ジオレオロキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルファート(DOTAP)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、2,3,−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセタート(DOSPA)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド;およびジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)から製造され得る。カチオン性脂質、例えばN−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)は、ホスホロチオアートオリゴヌクレオチドのアンチセンス効果を1000倍増大することが見出された(Vlassov et al., 1994, Biochimica et Biophysica Acta 1197:95-108)。オリゴヌクレオチドはまた、例としてポリ(L−リジン)またはアビジンと複合体化されてもよく、脂質は、この混合物中、例としてステリル−ポリ(L−リジン)に含まれても含まれなくてもよい。
カチオン性脂質は、オリゴヌクレオチドを細胞に送達するために当該技術分野において使用されてきた(例として米国特許第5,855,910号;同第5,851,548号;同第5,830,430号;同第5,780,053号;同第5,767,099号;Lewis et al. 1996. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:3176; Hope et al. 1998. Molecular Membrane Biology 15:1を参照)。今回のオリゴヌクレオチドの取り込みを容易にするために使用され得る他の脂質組成物は、クレームされる方法と組み合わせて使用され得る。上で列記されるものに加えて、例として米国特許第4,235,871号;米国特許第4,501,728号;同第4,837,028号;同第4,737,323号において教示されるものを含む他の脂質組成物もまた、当該技術分野において知られている。
一態様において、脂質組成物は、剤、例としてウイルスタンパク質を、オリゴヌクレオチドの脂質媒介性トランスフェクションを増強するためにさらに含み得る(Kamata, et al., 1994. Nucl. Acids. Res. 22:536)。他の態様において、オリゴヌクレオチドは、例として米国特許第5,736,392号に教示されるとおりのオリゴヌクレオチド、ペプチドおよび脂質を含む組成物の一部として、細胞と接触させられる。血清耐性である改善された脂質もまた記載されている(Lewis, et al., 1996. Proc. Natl. Acad. Sci. 93:3176)。カチオン性脂質および他の複合体化剤は、エンドサイトーシスを通して細胞中へ運搬されるオリゴヌクレオチドの数を増大するために作用する。
他の態様において、オリゴヌクレオチドの取り込みを最適化するために、N−置換グリシンオリゴヌクレオチド(ペプトイド)が使用され得る。ペプトイドは、トランスフェクションのためのカチオン性脂質様化合物を作製するために使用されてきた(Murphy, et al., 1998. Proc. Natl. Acad. Sci. 95:1517)。ペプトイドは、標準的な方法(例としてZuckermann, R. N., et al. 1992. J. Am. Chem. Soc. 114:10646; Zuckermann, R. N., et al. 1992. Int. J. Peptide Protein Res. 40:497)を使用して合成され得る。カチオン性脂質とペプトイドとの組合せであるリプトイド(liptoid)もまた、目的のオリゴヌクレオチドの取り込みを最適化するために使用され得る(Hunag, et al., 1998. Chemistry and Biology. 5:345)。リプトイドは、ペプトイドオリゴヌクレオチドを産生して、アミノ末端のサブモノマーをそのアミノ基を介して脂質にカップリングすることにより合成され得る(Hunag, et al., 1998. Chemistry and Biology. 5:345)。
正に荷電したアミノ酸を、高活性カチオン性脂質を作製するために使用され得ることは、当該技術分野において知られている(Lewis et al. 1996. Proc. Natl. Acad. Sci. US.A. 93:3176)。一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドを送達するための組成物は、親油性部分に結合した多数のアルギニン、リジン、ヒスチジンまたはオルニチン残基を含む(例として米国特許第5,777,153号を参照)。
他の態様において、本発明のオリゴヌクレオチドを送達するための組成物は、約1〜約4個の塩基性残基を有するペプチドを含む。これらの塩基性残基は、例としてペプチドのアミノ末端、C末端または内部領域に位置され得る。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されてきた。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例としてリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例としてアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例としてグリシン(これはまた非極性であるとも考えられる)、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例としてアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分枝側鎖(例としてスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例としてチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を持つアミノ酸を含む。塩基性アミノ酸の他にも、ペプチドの他の残基の大多数または全てが、非塩基性アミノ酸から、例としてリジン、アルギニンまたはヒスチジン以外のアミノ酸から選択され得る。好ましくは、長い中性の側鎖を有する中性アミノ酸が優勢であることが使用される。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドを送達するための組成物は、1以上のガンマカルボキシグルタミン酸残基またはγ−Gla残基を有する天然または合成のポリペプチドを含む。これらのガンマカルボキシグルタミン酸残基により、ポリペプチドが、互いにおよび膜表面に、結合することが可能になる。言い換えると、一連のγ−Glaを有するポリペプチドは、RNAiコンストラクトが、それが接触した膜が何であれそれに固着することを助けるための汎用送達モダリティーとして使用され得る。これは、少なくとも、RNAiコンストラクトが血流からクリアランスされることを遅延し、それらが標的にホーミングするチャンスを増強し得る。
ガンマカルボキシグルタミン酸残基は、天然のタンパク質中に存在してもよい(例えばプロトロンビンは10個のγ−Gla残基を有する)。代わりに、これらは、精製された、組み換え的に作製された、または、化学合成されたポリペプチド中に、カルボキシル化により、例えばビタミンK依存性カルボキシラーゼを使用して、導入され得る。ガンマカルボキシグルタミン酸残基は、連続的であっても非連続的であってもよく、ポリペプチド中のかかるガンマカルボキシグルタミン酸残基の総数および位置は、ポリヌクレオチドの異なるレベルの「固着性(stickiness)」を達成するために調節/微調整され得る。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチド組成物と接触させられる細胞は、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および、例として上記の脂質または脂質組成物の1つなどの脂質を含む混合物と、約12時間〜約24時間接触させられる。他の態様において、オリゴヌクレオチド組成物と接触させる細胞は、オリゴヌクレオチドを含む混合物、および、例として上記の脂質または脂質組成物の1つなどの脂質を含む混合物と、約1日〜約5日間接触させられる。一態様において、細胞は、脂質およびオリゴヌクレオチドを含む混合物と、約3日間〜約30日間までもの長さにわたり接触させられる。他の態様において、脂質を含む混合物は、細胞と、少なくとも約5〜約20日間接触させたままに置かれる。他の態様において、脂質を含む混合物は、細胞と、少なくとも約7〜約15日間接触させたままで置かれる。
例えば、一態様において、オリゴヌクレオチド組成物は、サイトフェクチンCSまたはGSV(Glen Research; Sterling, Va.から入手可能)、GS3815、GS2888などの脂質の存在下において、本明細書に記載されるとおり、長期のインキュベーション期間にわたって細胞と接触させられてもよい。
一態様において、細胞の、脂質およびオリゴヌクレオチド組成物を含む混合物とのインキュベーションは、細胞のバイアビリティを低下させない。好ましくは、トランスフェクション期間の後で、細胞は実質的に生存している。一態様において、トランスフェクションの後で、細胞は、少なくとも約70%〜少なくとも約100%生存している。他の態様において、細胞は、少なくとも約80%〜少なくとも約95%生存している。さらに他の例において、細胞は、少なくとも約85%〜少なくとも約90%生存している。
一態様において、オリゴヌクレオチドは、本明細書において「輸送ペプチド」として言及される、オリゴヌクレオチドを細胞中へ輸送するペプチド配列を付着させることにより修飾される。一態様において、組成物は、タンパク質をコードする標的核酸分子に対して相補的であるオリゴヌクレオチドおよび共有結合で付着している輸送ペプチドを含む。
語「輸送ペプチド」は、オリゴヌクレオチドの細胞中への輸送を容易にさせるアミノ酸配列を含む。それが連結されている部分の細胞中への輸送を容易にさせる例示的なペプチドは、当該技術分野において知られており、例としてHIV TAT転写因子、ラクトフェリン、ヘルペスVP22タンパク質および線維芽細胞増殖因子2を含む(Pooga et al. 1998. Nature Biotechnology. 16:857;およびDerossi et al. 1998. Trends in Cell Biology. 8:84; Elliott and O'Hare. 1997. Cell 88:223)。
オリゴヌクレオチドは、知られている技術(例としてProchiantz, A. 1996. Curr. Opin. Neurobiol. 6:629; Derossi et al. 1998. Trends Cell Biol. 8:84;Troy et al. 1996. J. Neurosci. 16:253、Vives et al. 1997. J. Biol. Chem. 272:16010)を使用して輸送ペプチドに付着させ得る。例えば、一態様において、活性化チオール基を保有するオリゴヌクレオチドは、そのチオール基を介して、輸送ペプチド中に存在するシステインに(例としてDerossi et al. 1998. Trends Cell Biol. 8:84; Prochiantz. 1996. Current Opinion in Neurobiol. 6:629; Allinquant et al. 1995. J Cell Biol. 128:919において教示されるとおり、例としてアンテナペディアホメオドメインの第2と第3とのヘリックスの間のβターン中に存在するシステインに)連結させる。他の態様において、Boc−Cys−(Npys)OH基は、最後の(N末端)アミノ酸およびSH基を保有するオリゴヌクレオチドがペプチドにカップリングされ得るように、輸送ペプチドにカップリングされ得る(Troy et al. 1996. J. Neurosci. 16:253)。
一態様において、連結基(linking group)はヌクレオモノマーに付着され得、輸送ペプチドはリンカーへ共有結合で付着させられ得る。一態様において、リンカーは、輸送ペプチドについての結合部位として、および、ヌクレアーゼに対する安定性を提供し得るものの両方として、機能し得る。好適なリンカーの例は、置換または非置換のC1〜C20アルキル鎖、C2〜C20アルケニル鎖、C2〜C20アルキニル鎖、ペプチドおよびヘテロ原子(例としてS、O、NHなど)を含む。他の例示的なリンカーは、スルホスクシンイミジル−4−(マレイミドフェニル)−酪酸(SMPB)(例としてSmith et al. Biochem J 1991.276: 417-2を参照)などの二官能性架橋剤を含む。
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、受容体により媒介されるエンドサイトーシス機構を遺伝子の細胞中への送達のために利用する、分子抱合体として合成される(例としてBunnell et al. 1992. Somatic Cell and Molecular Genetics. 18:559およびこれにおいて引用される参考文献を参照)。
標的化剤
オリゴヌクレオチドの送達はまた、オリゴヌクレオチドを細胞受容体へ標的化することによっても改善され得る。標的化部分は、オリゴヌクレオチドに抱合させても、オリゴヌクレオチドに結合したキャリア基(すなわち、ポリ(L−リジン)またはリポソーム)に付着させてもよい。この方法は、特異的受容体により媒介されるエンドサイトーシスを呈す細胞にとって良好に適する。
例えば、6−ホスホマンノシル化タンパク質に対するオリゴヌクレオチドの抱合体は、マンノース−6−リン酸特異的受容体を発現する細胞により、遊離オリゴヌクレオチドよりも20倍効率的に内部移行される。オリゴヌクレオチドはまた、細胞受容体に対するリガンドに、生分解性リンカーを使用してカップリングされてもよい。別の例において、送達コンストラクトは、ビオチン化オリゴヌクレオチドと強固な複合体を形成するマンノシル化ストレプトアビジンである。マンノシル化ストレプトアビジンは、ビオチン化オリゴヌクレオチドの内部移行を20倍増大することが見出された(Vlassov et al. 1994. Biochimica et Biophysica Acta 1197:95-108)。
加えて、特異的リガンドは、ポリリジンベースの送達システムのポリリジン成分に抱合させられ得る。例えば、トランスフェリン−ポリリジン、アデノウイルス−ポリリジンおよびインフルエンザウイルス赤血球凝集素HA−2のN末端膜融合ペプチド−ポリリジン抱合体は、真核細胞における受容体媒介性DNA送達を大いに増強する。肺胞マクロファージ中のポリ(L−リジン)に抱合したマンノシル化糖タンパク質は、オリゴヌクレオチドの細胞による取り込みを増強するために採用されている(Liang et al. 1999. Pharmazie 54:559-566)。
悪性細胞は、葉酸およびトランスフェリンなどの必須栄養素に対して高い必要性を有するので、これらの栄養素は、オリゴヌクレオチドをがん性細胞に標的化するために用いることができる。例えば、葉酸をポリ(L−リジン)に連結させると、前骨髄球性白血病(HL−60)細胞およびヒトメラノーマ(M−14)細胞において増強されたオリゴヌクレオチド取り込みが観察される(Ginobbi et al. 1997. Anticancer Res. 17:29)。別の例において、マレイル化されたウシ血清アルブミン、葉酸またはプロトポルフィリン三価鉄IXによりコートされたリポソームは、マウスマクロファージ、KB細胞および2.2.15ヒト肝細胞腫細胞において、オリゴヌクレオチドの増強された細胞による取り込みを示す(Liang et al. 1999. Pharmazie 54:559-566)。
リポソームは、肝臓、膵臓、網膜内皮系において自然に蓄積する(いわゆる受動的標的化)。リポソームを、抗体およびプロテインAなどの多様なリガンドにカップリングすることにより、これらは、特定の細胞集団に対して能動的に標的化され得る。例えば、プロテインA保有リポソームを、マウス主要組織適合複合体によりコードされるL細胞上に発現するH−2Kタンパク質に標的化されたH−2K特異的抗体により、予め処置されてもよい(Vlassov et al. 1994. Biochimica et Biophysica Acta 1197:95-108)。
他のin vitroおよび/またはin vivoでのRNAi試薬の送達は、当該技術分野において知られており、目的のRNAiコンストラクトを送達するために使用され得る。例えば、数例を挙げると、米国特許出願公開第20080152661号、同第20080112916号、同第20080107694号、同第20080038296号、同第20070231392号、同第20060240093号、同第20060178327号、同第20060008910号、同第20050265957号、同第20050064595号、同第20050042227号、同第20050037496号、同第20050026286号、同第20040162235号、同第20040072785号、同第20040063654号、同第20030157030号、WO 2008/036825、WO04/065601およびAU2004206255B2を参照(全て参考として組み込まれる)。
投与
オリゴヌクレオチドの投与または送達の最適な経路は、所望の結果および/または処置される対象に依存して変動し得る。本明細書に使用される「投与」は、細胞をオリゴヌクレオチドに接触させることを指し、in vitroで、またはin vivoで実施され得る。標的核酸分子から翻訳されるタンパク質の発現を最適に減少させるために、オリゴヌクレオチドの投薬量は、例としてRNA安定性の読み出しによりまたは治療応答により測定されるものとして、過度の実験なしに調整されてもよい。
例えば、核酸標的によりコードされるタンパク質の発現が測定され得、投薬レジメンがそれに従って調整される必要があるか否かを決定し得る。加えて、細胞におけるまたは細胞により産生されるRNAまたはタンパク質のレベルの増大または減少は、当該技術分野において認識されるいずれの技術をも使用して測定され得る。転写が減少したか否かを決定することにより、標的RNAの切断を誘導する上でのオリゴヌクレオチドの有効性が決定され得る。
上記オリゴヌクレオチド組成物のいずれも、単独でまたは薬学的に許容し得るキャリアと組み合わせて、使用され得る。本明細書に使用される「薬学的に許容し得るキャリア」は、好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質のためのかかる媒体および剤は、当該技術分野において周知である。従来のいずれの媒体または剤が活性成分と適合しない場合を除いて、これは治療用組成物において使用され得る。補足の活性成分もまた、組成物中に組み込まれ得る。
オリゴヌクレオチドは、非経口投与のために、リポソームもしくはポリエチレングリコールで修飾されたリポソーム中へ組み込んでも、または、カチオン性脂質と混和されてもよい。追加の物質、例えば特定の標的細胞上に見出される膜タンパク質に対して反応性の抗体の、リポソーム中への組み込みは、特異的な細胞型に対するオリゴヌクレオチドの標的化に役立ち得る。
in vivoでの適用に関して、本発明の製剤は、患者へ、選択された投与の経路、例として非経口で、経口で、または腹腔内でのものに適応した多様な形態で投与され得る。非経口投与が好ましく、これは、以下の経路による投与を含む:静脈内;筋肉内;間質内(interstitially);動脈内;皮下;眼内;滑膜内(intrasynovial);経皮を含む経上皮;吸入を介した肺;眼(ophthalmic);舌下および口腔内;眼(ophthalmic)を含む局所;経皮;眼(ocular);直腸;ならびに送気を介した経鼻吸入。好ましい態様において、sd−rxRNA分子は、皮内注射によりまたは皮下的に投与される。
非経口投与のための医薬製剤は、水溶性または水分散性の形態における活性化合物の水性溶液を含む。加えて、好適な油性注射用懸濁液としての活性化合物の懸濁液も、投与されてもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油、または、合成脂肪酸エステル類、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドを含む。水性注射用懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの、懸濁液の粘性を増大させる物質を含有してもよく、任意に、懸濁液はまた、安定化剤を含んでもよい。本発明のオリゴヌクレオチドは、液体の溶液、好ましくはハンクス溶液またはリンガー溶液などの生理学的に適合性の緩衝液中で処方されてもよい。さらに、オリゴヌクレオチドは、固体の形態において処方されて、使用の直前に再溶解されるか懸濁されてもよい。凍結乾燥形態もまた、本発明において含まれる。
局所投与用の医薬製剤は、経皮貼付剤、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴下剤、スプレー、坐剤、液体または粉末を含む。加えて、従来の医薬用キャリア、水性、粉末または油性の基剤、または、増粘剤も、局所投与用の医薬製剤に使用されてもよい。
経口投与用の医薬製剤は、散剤または顆粒、水または非水性媒体中の懸濁液または、溶液、カプセル、サケット(sachet)または錠剤を含む。加えて、増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散化補助剤または結合剤も、経口投与用の医薬製剤に使用されてもよい。
経粘膜または経皮投与用に、浸透すべき障壁に適切な浸透剤(penetrant)が、製剤中に使用される。かかる浸透剤は当該技術分野において知られており、例えば、経粘膜投与用に、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体ならびに界面活性剤を含む。経粘膜投与は、鼻用スプレーを通して、または、坐剤を使用するものであってもよい。経口投与用に、オリゴヌクレオチドが、カプセル、錠剤およびトニックなどの従来の経口投与形態中へ製剤化される。局所投与用に、本発明のオリゴヌクレオチドが、当該技術分野において知られている軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリーム中へに製剤化される。
薬物送達ビヒクルは、例としてin vitroでの投与のため、全身投与のためまたは局所投与のために、選ばれ得る。これらのビヒクルは、遅延放出リザーバとして機能するように、または、この含有物を標的細胞に直接的に送達するように、設計され得る。いくつかの直接送達用薬物ビヒクルを使用する利点は、1回の取り込みごとに複数の分子が送達されることである。かかるビヒクルは、さもなくば血流から急速にクリアランスされるであろう薬物の循環半減期を延長することが示されている。このカテゴリーに分類されるかかる特殊化された薬物送達ビヒクルのいくつかの例は、リポソーム、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセルおよび生体粘着性ミクロスフィアである。
記載のオリゴヌクレオチドは、対象へ全身投与されてもよい。全身吸収は、薬物の血流中への侵入と、それに続く全身にわたる分布を指す。全身吸収をもたらす投与経路は以下を含む:静脈内、皮下、腹腔内および鼻内。これらの投与経路の各々は、オリゴヌクレオチドを、アクセス可能な罹患細胞に送達する。皮下投与の後で、治療剤は局所リンパ節中へ流れ、リンパのネットワークを通って循環中へと進む。循環中への侵入の速度は、分子量またはサイズの関数であることが示されている。リポソームまたは他の薬物キャリアの使用は、オリゴヌクレオチドをリンパ節に局在させる。オリゴヌクレオチドを細胞中へ拡散するように修飾しても、未修飾または修飾オリゴヌクレオチドの細胞中への送達にリポソームが直接的に参加してもよい。
選ばれた送達方法は、細胞中への侵入をもたらすであろう。いくつかの態様において、好ましい送達方法は、リポソーム(10〜400nm)、ハイドロゲル、制御放出ポリマーおよび他の薬学的に適用可能なビヒクルならびにマイクロインジェクションまたはエレクトロポレーション(ex vivoでの処置のため)を含む。
本発明の医薬製剤は、乳液として調製され製剤化されてもよい。乳液は通常、1つの液体が別の液体中に通常は直径0.1μmを超える液滴の形態で分散した、均質な系である。本発明の乳液は、乳化剤、安定化剤、色素、脂質、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、湿潤剤、親水性コロイド、保存剤などの賦形剤を含んでもよく、抗酸化剤もまた、必要に応じて乳液中に存在してもよい。賦形剤は、水相、油相またはそれ自体が別の相として、溶液として存在してもよい。
本発明の乳液製剤に使用されてもよい天然に存在する乳化剤の例は、ラノリン、ミツロウ、リン脂質、レシチンおよびアカシアを含む。微細に分割された固体もまた、特に界面活性剤と組み合わせて、粘性の製剤において、良好な乳化剤として使用されてきた。乳化剤として使用されてもよい微細に分割された固体は、重金属水酸化物などの極性無機固体、ベントナイト、アタパルジャイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウムおよびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの非膨潤性粘土、顔料ならびに炭素またはステアリン酸グリセリルなどの非極性固体を含む。
乳液製剤に含まれてもよい保存剤の例は、メチルパラベン、プロピルパラベン、4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p−ヒドロキシ安息香酸のエステルおよびホウ酸を含む。乳液製剤に含まれてもよい抗酸化剤の例は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカルスカベンジャーまたはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤ならびにクエン酸、酒石酸およびレシチンなどの抗酸化剤補助剤(antioxidant synergist)を含む。
一態様において、オリゴヌクレオチドの組成物は、マイクロエマルジョン(microemulsion)として製剤化される。マイクロエマルジョンは、水、油および両親媒性物質の系であって、単一の光学的等方性および熱力学的安定性の溶液である。典型的には、マイクロエマルジョンは、第1に油を水性界面活性剤溶液中に分散させ、次いで、透明な系を形成するために、充分な量の第4の成分、一般的には中程度の鎖長のアルコールを加えることにより調製される。
マイクロエマルジョンの調製において使用されてもよい界面活性剤は、これらに限定されないが、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、Brij 96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル類、テトラグリセロールモノラウラート(ML310)、テトラグリセロールモノオレアート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレアート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレアート(PO500)、デカグリセロールモノカプラート(MCA750)、デカグリセロールモノオレアート(MO750)、デカグリセロールセキオレアート(S0750)、デカグリセロールデカオレアート(DA0750)が、単独でまたは共界面活性剤(cosurfactant)と組合せて、含む。共界面活性剤、通常はエタノール、1−プロパノールおよび1−ブタノールなどの短鎖アルコールは、界面活性剤のフィルム中に浸透して、その後、界面活性剤分子の間で生み出される空隙のために不規則なフィルムを作り出すことにより、界面の流動性を増大させるのに役立つ。
しかしながら、マイクロエマルジョンは、共界面活性剤の使用なしで調製されてもよく、アルコールを含まない自己乳化マイクロエマルジョン系が、当該技術分野において知られている。水相は、典型的には、これらに限定されないが、水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコールおよびエチレングリコールの誘導体であってもよい。油相は、これらに限定されないが、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル類、中鎖(C8〜C12)モノ、ジおよびトリ−グリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル類、脂肪アルコール類、ポリグリコール化(polyglycolized)グリセリド、飽和ポリグリコール化C8〜C10グリセリド、植物油およびシリコーン油などの材料を含んでもよい。
マイクロエマルジョンは、薬物の可溶化および増強された薬物の吸収の観点から特に関心がある。脂質ベースのマイクロエマルジョン(油/水および水/油の両方)が、薬物の経口でのバイオアベイラビリティーを増強するために提案されている。
マイクロエマルジョンは、薬物の可溶化の改善、酵素による加水分解からの薬物の保護、界面活性剤により誘導される膜の流動性および透過性の変化に起因する薬物吸収の増強の可能性、調製の容易性、固体投与形態と比べた経口投与の容易性、臨床的効力の改善ならびに毒性の低減を与える(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11:1385;Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85:138-143)。マイクロエマルジョンはまた、化粧品および医薬適用の両方における、活性成分の経皮送達においても有効であった。本発明のマイクロエマルジョンの組成物および製剤は、胃腸管からのオリゴヌクレオチドの全身吸収の増大を促進し、ならびに、胃腸管、膣、口腔および他の投与の領域内における、オリゴヌクレオチドの局所的な細胞による取り込みを改善することが予測される。
一態様において、本発明は、核酸、特にオリゴヌクレオチドの、動物の皮膚への効率的な送達に影響を及ぼす多様な浸透増強剤を採用する。越えるべき膜を浸透増強剤で処置した場合、非親油性薬物すら、細胞膜を越えることができる。細胞膜を越える非親油性薬物の拡散を増大することに加えて、浸透増強剤はまた、親油性薬物の浸透性を増強するようにも作用する。
本発明において使用されてもよい5種のカテゴリーの浸透増強剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤および非キレート性非界面活性剤を含む。投与されるオリゴヌクレオチドの浸透を増強するために利用されてもよい他の剤は、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール類、2−15ピロールなどのピロール類、アゾン類、リモネンなどのテルペン類ならびにメントンを含む。
オリゴヌクレオチド、特に脂質製剤中のものはまた、医療用デバイス、例えば血管形成バルーンカテーテルなどのカテーテルを、カチオン性脂質製剤によりコーティングすることによっても投与され得る。コーティングは、例えば脂質製剤または脂質製剤と、好適な溶媒、例えば水をベースとする緩衝液、水性溶媒、エタノール、塩化メチレン、クロロフォルムなど、との混合物中に、医療用デバイスを浸漬することにより、達成されてもよい。一定量の製剤がデバイスの表面に自然に接着し、デバイスがその後適宜患者へ投与される。代わりに、脂質製剤の凍結乾燥混合物は、デバイスの表面に特異的に結合されてもよい。かかる結合技術は、例えばK. Ishihara et al., Journal of Biomedical Materials Research, Vol. 27, pp. 1309-1314 (1993)に記載され、その開示は、本明細書においてその全体を参考として組み込まれる。
投与されるべき有用な投薬量および特定の投与の形態は、細胞型、in vivoでの使用については年齢、体重および特定の動物および処置されるべきその領域、使用される特定のオリゴヌクレオチドおよび送達方法、企図される治療および診断用途ならびに製剤の形態、例えば懸濁液、乳液、ミセルまたはリポソームなどの要因に依存して変動し、このことは当業者に容易に明らかであろう。典型的には、投薬量は、より低い量で投与され、所望の結果が達成されるまで増加させられる。オリゴヌクレオチドを送達するために脂質が使用されるとき、投与される脂質化合物の量は変化し得、一般に、投与されているオリゴヌクレオチド剤の量に依存する。
例えば、脂質化合物のオリゴヌクレオチド剤に対する重量比は、好ましくは約1:1から約15:1までであり、約5:1〜約10:1の重量比がより好ましい。一般に、投与されるカチオン性脂質化合物の量は、約0.1ミリグラム(mg)〜約1グラム(g)まで変化する。一般的なガイダンスのために、典型的には、患者の体重の各1kg毎に約0.1mg〜約10mgの特定のオリゴヌクレオチド剤および約1mg〜約100mgの脂質組成物が投与されるが、より高いおよびより低い量も使用され得る。
本発明の剤は、医薬の投与に好適な生物学的に適合性の形態で、対象へ投与されるか、または、細胞と接触させられる。「投与に好適な生物学的に適合性の形態」は、オリゴヌクレオチドの治療効果があらゆる毒性効果を凌ぐ形態で、オリゴヌクレオチドが投与されることを意味する。一態様において、オリゴヌクレオチドは、対象へ投与される。対象の例は、哺乳動物、例としてヒトおよび他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマおよび農耕(farming)(農業(agricultural))用動物;イヌ、ネコおよび他の家庭のペット;マウス、ラットおよびトランスジェニック非ヒト動物を含む。
本発明のオリゴヌクレオチドの活性量の投与は、所望の結果を達成するために必要な投与量および時間において、有効量として定義される。例えば、オリゴヌクレオチドの活性量は、細胞の型、使用されるオリゴヌクレオチド、ならびに、in vivoでの使用については疾患の状態、個体の年齢、性別および体重、ならびに、個体において所望の応答を惹起するオリゴヌクレオチドの能力などの因子に従って変動してもよい。細胞中でのオリゴヌクレオチドの治療的レベルの確立は、取り込みの速度と流出または分解の速度に依存する。分解の度合いを低下させることは、オリゴヌクレオチドの細胞内半減期を延長する。よって、化学修飾されたオリゴヌクレオチド、例としてリン酸骨格の修飾を持つものは、異なる用量を必要とする場合がある。
正確なオリゴヌクレオチドの投薬量および投与される用量の回数は、実験的におよび臨床試験において生み出されるデータに依存するであろう。所望の効果、送達ビヒクル、疾患の兆候および投与の経路などの数個の因子が、投薬量に影響を及ぼすであろう。投薬量は当業者により容易に決定され得、対象とする医薬組成物中へ製剤化される。好ましくは、処置の期間は、少なくとも疾患の症状の経過全体に及ぶであろう。
投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するために調整されてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、繰り返して投与されてもよく、例として数回の用量が毎日投与してもよく、または、その用量が、治療状況の要件に従って比例的に低減させてもよい。オリゴヌクレオチドが細胞へ投与されるかまたは対象へ投与されるかに関わらず、当業者は、対象とするオリゴヌクレオチドの適切な用量および投与のスケジュールを容易に決定することができるであろう。
sd−rxRNAの、皮内注射または皮下送達を通じて、などによる投与は、投薬レジメンの試験を通して最適化され得る。いくつかの態様において、単回投与で充分である。投与されたsd−rxRNAの効果をさらに延長するために、sd−rxRNAは、当業者が精通しているとおり、遅延放出製剤またはデバイスにおいて投与され得る。sd−rxRNA化合物の疎水性の性質により、広範で多様なポリマーの使用が可能となり、これらのいくつかは、従来のオリゴヌクレオチド送達に適合しない。
他の態様において、sd−rxRNAは複数回投与される。いくつかの態様において、これは、毎日、週2回、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2カ月毎、3カ月毎、4カ月毎、5カ月毎、6カ月毎または6カ月に1回未満、投与される。いくつかの例において、これは、1日、1週間、1カ月および/または1年に複数回投与される。例えば、これは、およそ1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、12時間または12時間を超えてから1回、投与される。これは、毎日1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または10回を超えた回数、投与され得る。
いくつかの態様において、核酸分子は、創傷の72時間前と創傷の24時間後との間に、投与される。例えば、sd−rxRNAは、創傷の、およそ72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、56、55、54、53、52、51、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1時間前または1時間未満前に投与される。他の態様において、sd−核酸分子は、創傷の、およそ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、6、17、18、19、20、21、22、23、24時間後または24時間を超えてから、投与される。
他の態様において、投与または処置は遅延させられる。例えば、sd−核酸分子は、創傷後48時間またはそれを超えてから、投与される。いくつかの態様において、sd−核酸分子は、創傷の、48時間(2日)、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日後または30日を超えてから、投与される。いくつかの態様において、sd−核酸分子は、創傷の48時間後と30日後との間に投与される。いくつかの態様において、sd−核酸分子は、創傷の7日後と30日後との間に投与される。
いくつかの態様において、本発明の驚くべき側面は、sd−rxRNA分子の処置または投与を遅延させることによって達成される、有利な皮膚治癒に関する。いくつかの態様において、創傷の少なくとも48時間後または少なくとも7日後など、sd−核酸分子の投与を遅延させることは、創傷直後にsd−核酸分子を投与することより効果的である。
本発明の側面は、sd−rxRNA分子を対象へ投与することに関する。いくつかの例において、対象は患者であり、sd−rxRNA分子の投与には、sd−rxRNA分子を医院で投与することが関与する。
いくつかの態様において、1種より多くのsd−rxRNA分子が同時に投与される。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種または10種より多くの異なるsd−rxRNA分子を含む組成物が投与されてもよい。ある態様において、組成物は2または3種の異なるsd−rxRNA分子を含む。組成物が1種より多くのsd−rxRNA分子を含むとき、組成物中のsd−rxRNA分子は、同一の遺伝子または異なる遺伝子に指向し得る。
いくつかの態様において、sd−rxRNAは、外科手術などの皮膚を機能低下させるかまたは損傷させる事象の8日前以内に投与される。例えば、sd−rxRNAは、皮膚を危うくさせるかまたは損傷させる事象の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日前にまたは10日を超えてから、投与され得る。
他の態様において、投与または処置は遅延させられる。例えば、sd−核酸分子は、外科手術などの皮膚を危うくさせるかまたは損傷させる事象の48時間後またはそれを超えてから、投与される。いくつかの態様において、sd−核酸分子は、外科手術などの皮膚を危うくさせるかまたは損傷させる事象の、48時間(2日)、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日後または30日を超えてから、投与される。いくつかの態様において、sd−核酸分子は、外科手術などの皮膚を危うくさせるかまたは損傷させる事象の48時間後と30日後との間に投与される。いくつかの態様において、sd−核酸分子は、外科手術などの皮膚を危うくさせるかまたは損傷させる事象の7日後および30日後との間に投与される。
いくつかの例において、皮下投与により送達されるsd−rxRNAの有効量は、少なくともおよそ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100mg/kgまたは100mg/kgより多く、全ての中間の値を含む。
いくつかの例において、皮内注射により送達されるsd−rxRNAの有効量は、少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950μgまたは950μgより多く、全ての中間の値を含む。
いくつかの態様において、投与されるsd−rxRNAの用量は、1センチメートルあたり0.1〜20mgの間である。例えば、いくつかの態様において、用量は、1センチメートルあたり、およそ0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mgであるかまたは20mgより多い。
いくつかの態様において、sd−rxRNAの1以上の追加用量は、初回の用量後に投与される。例えば、いくつかの態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または20回を超える追加用量は、初回の用量後に投与される。いくつかの態様において、1〜5回の追加用量が投与される。追加用量は、当業者に理解されるであろうが、治療的に有効であるいずれの時間枠内でも投与され得る。いくつかの態様において、追加用量は、およそ週2回投与される。他の態様において、追加用量は、およそ毎週投与される。他の態様において、追加用量は、およそ2週間毎投与される。他の態様において、追加用量は、およそ毎月投与される。いくつかの態様において、追加用量は、異なる時間の長さが、異なる追加用量の間で生じるように、一定の間隔で投与されない。例えば、いくつかの態様において、追加用量は、毎週、2週間毎および毎月の用量を組み合わせて投与される。
本明細書に記載の方法により投与されるsd−rxRNA分子は、皮膚の全ての細胞型に対して効率的に標的化される。
核酸を導入する物理的方法は、核酸を含む溶液の注射、核酸により被覆された粒子による衝撃、核酸の溶液中での細胞または生体の浸漬、または、核酸の存在下における細胞膜のエレクトロポレーションを含む。ウイルス粒子中にパッケージングされたウイルスコンストラクトは、細胞中への発現コンストラクトの導入および発現コンストラクトによりコードされる核酸の転写の両方を達成する。脂質媒介性キャリア輸送、リン酸カルシウムなどの化学媒介性輸送などの、核酸を細胞へ導入するための当該技術分野において知られている他の方法が使用されてもよい。よって、核酸は、以下の活性の1以上を実施する構成要素とともに導入され得る:細胞による核酸の取り込みを増強する、一本鎖のアニーリングを阻害する、一本鎖を安定化する、あるいは、標的遺伝子の阻害を増大させる。
核酸は、細胞中へ直接導入されても(すなわち細胞内で);または細胞外から、腔、間質の空間中へ、生体の循環中へ導入しても、経口で導入しても、または、細胞もしくは生体を、核酸を含む溶液中に浸漬することにより導入されてもよい。血管のまたは血管外の循環、血液またはリンパ系および脳脊髄液は、核酸が導入されてもよい部位である。
標的遺伝子を持つ細胞は、いずれの生物から由来しても、または、それらに含有されてもよい。生物は、植物、動物、原虫、細菌、ウイルスまたは真菌であってよい。植物は、単子葉、双子葉または裸子植物であってよい;動物は脊椎動物であっても無脊椎動物であってもよい。好ましい微生物は、農業においてまたは工業により使用されるものであり、植物または動物に対して病原性であるものである。
代わりに、ベクター、例として本発明のsiRNAをコードする導入遺伝子は、当該技術分野において認識される技術を使用して、宿主細胞またはトランスジェニック動物中へ操作され得る。
本発明の剤(またはそれをコードするベクターまたは導入遺伝子)についてのさらに好ましい使用は、真核細胞または真核の非ヒト生物、好ましくは哺乳動物の細胞または成体、最も好ましくはヒト細胞、例としてHeLaまたは293などの細胞株、または、げっ歯類、例としてラットおよびマウスにおいて行われる機能分析である。標的特異的RNA干渉に指向させるために標的mRNA配列に対して充分に相補的である好適なプライミング剤/RNAi剤を投与することにより、標的細胞において、例として細胞培養においてまたは標的生物において、特異的なノックアウトまたはノックダウン表現型が得られ得る。
よって、本発明のさらなる主題は、標的遺伝子特異的ノックアウトまたはノックダウン表現型を示す真核細胞または真核の非ヒト生物であって、完全に、または少なくとも部分的に、少なくとも1つの内因性標的遺伝子の発現を欠損するものであって、ここで、該細胞または生物は、標的遺伝子の発現を阻害することができるRNAi剤をコードするDNAを含む、少なくとも1つのベクターによりトランスフェクトされている。本発明が、RNAi剤の特異性に起因して、数個の異なる内因性遺伝子の標的特異的ノックアウトまたはノックダウンを可能にすることは、注目されるべきである。
細胞または非ヒト生物、特にヒト細胞または非ヒト哺乳動物の遺伝子特異的ノックアウトまたはノックダウン表現型は、処理の分析(analytic to procedures)において、例として遺伝子発現プロフィールおよび/またはプロテオームの分析などの複雑な生理学的プロセスの機能的および/または表現型的分析において、使用されてもよい。好ましくは、分析は、オリゴヌクレオチドベースのチップを使用するハイスループット法により行われる。
オリゴヌクレオチド安定性のアッセイ
いくつかの態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは安定であり、すなわちエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼ分解に対して実質的に安定である。オリゴヌクレオチドは、それが内因性の細胞ヌクレアーゼによる攻撃に対して少なくとも約3倍耐性が高いとき、ヌクレアーゼに対して実質的に耐性であるとして、および、それが対応するオリゴヌクレオチドよりも少なくとも約6倍耐性が高いとき、高度にヌクレアーゼ耐性であるとして、定義される。これは、当該技術分野において知られている技術を使用して、本発明のオリゴヌクレオチドがヌクレアーゼに対して実質的に耐性であることを示すことにより、実証され得る。
実質的な安定性が実証され得る1つの方法は、本発明のオリゴヌクレオチドが、細胞に送達されたときに機能すること、例としてこれらが標的核酸分子の転写または翻訳を低下させることが、例としてタンパク質レベルを測定することによりまたはmRNAの切断を測定することにより、示すことによる。標的RNAの安定性を測定するアッセイは、トランスフェクションの約24時間後に実施され得る(例として当該技術分野において知られているとおり、ノーザンブロット技術、RNase保護アッセイまたはQC−PCRを使用して)。代わりに、標的タンパク質のレベルが測定され得る。好ましくは、目的のRNAまたはタンパク質のレベルを試験することに加えて、対照の、非標的遺伝子(例としてアクチン、または好ましくは標的と類似する配列を有する対照)のRNAまたはタンパク質のレベルが、特異性の対照として測定されるであろう。RNAまたはタンパク質の測定は、当該技術分野において認識されるいずれの技術を使用してもなされ得る。好ましくは、測定は、トランスフェクションの約16〜24時間後に開始してなされるであろう(M. Y. Chiang, et al. 1991. J Biol Chem. 266:18162-71;T. Fisher, et al. 1993. Nucleic Acid Research. 21 3857)。
本発明のオリゴヌクレオチド組成物がタンパク質合成を阻害する能力は、当該技術分野において知られている技術、例えば遺伝子の転写またはタンパク質合成における阻害を検出することにより、測定され得る。例えばヌクレアーゼS1のマッピングが実施され得る。別の例において、ノーザンブロット分析が、特定のタンパク質をコードするRNAの存在を測定するために使用され得る。例えば全RNAは、塩化セシウムのクッションの上で調製され得る(例としてAusebel et al., 1987. Current Protocols in Molecular Biology(Greene & Wiley, New York)を参照)。次いで、ノーザンブロットが、RNAを使用してなされ、プローブされる(例として上記を参照)。別の例において、例えばPCRを使用して、標的タンパク質により産生される特定のmRNAのレベルが測定され得る。さらに別の例において、ウェスタンブロットが、存在する標的タンパク質の量を測定するために使用され得る。なお他の態様において、タンパク質の量により影響を受ける表現型が検出され得る。ウェスタンブロットを実施するための技術は、当該技術分野において周知であり、例としてChen et al. J. Biol. Chem. 271:28259を参照。
別の例において、標的遺伝子のプロモーター配列をレポーター遺伝子に連結させ、レポーター遺伝子の転写を(例として以下に詳細に記載されるとおり)モニタリングしてもよい。代わりに、プロモーターを標的化しないオリゴヌクレオチド組成物を、標的核酸分子の一部をレポーター遺伝子に、レポーター遺伝子が転写されるように融合させることにより、同定してもよい。オリゴヌクレオチド組成物の存在下においてレポーター遺伝子の発現の変化をモニタリングすることにより、レポーター遺伝子の発現を阻害する上でのオリゴヌクレオチド組成物の有効性を決定することが可能である。例えば、一態様において、有効なオリゴヌクレオチド組成物は、レポーター遺伝子の発現を低減させるであろう。
「レポーター遺伝子」は、検出可能な遺伝子産物を発現する核酸であって、これは、RNAまたはタンパク質である。mRNA発現の検出は、ノーザンブロットにより達成することができ、タンパク質の検出は、当該タンパク質に対して特異的な抗体で染色することにより達成することができる。好ましいレポーター遺伝子は、容易に検出可能な産物を産生する。レポーター遺伝子を、当該レポーター遺伝子の産物の検出が調節配列の転写活性の測定をもたらすように、調節DNA配列に作動的に連結してもよい。好ましい態様において、レポーター遺伝子の遺伝子産物は、その産物に関連する固有の活性により検出される。例えば、レポーター遺伝子は、色、蛍光または発光に基づく検出可能なシグナルを酵素活性によって生じさせる遺伝子産物をコードしてもよい。レポーター遺伝子の例として、限定されないが、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼをコードするものが挙げられる。
当業者は、本発明における使用のために好適な多数のレポーター遺伝子を容易に認識することができる。これらは、限定されないが、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、ヒト成長ホルモン(hGH)およびベータ−ガラクトシダーゼを含む。かかるレポーター遺伝子の例は、F. A. Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons, New York(1989)において見出すことができる。検出可能な産物、例として検出可能な酵素活性を有する、または、特定の抗体を生じることができる任意の産物をコードする任意の遺伝子を、本方法におけるレポーター遺伝子として使用することができる。
1つのレポーター遺伝子システムは、ホタルルシフェラーゼレポーターシステムである(Gould, S. J., and Subramani, S. 1988. Anal. Biochem., 7:404-408;本明細書に参考として組み込まれる)。ルシフェラーゼアッセイは、迅速かつ感受性である。このアッセイにおいて、試験細胞のライセートを調製し、ATPおよび基質ルシフェリンと組み合わせる。コードされた酵素であるルシフェラーゼは、迅速なATP依存的な基質の酸化を触媒し、発光生成物を生成する。合計の光出力を測定し、これは、広範囲の酵素の濃度にわたって存在するルシフェラーゼの量に比例する。
CATは、頻繁に使用されるもう1つのレポーター遺伝子システムである。このシステムの主な利点は、これが広範囲に有効性を確認されており、プロモーター活性の尺度として広く受容されていることである(Gorman C. M., Moffat, L. F., and Howard, B. H. 1982. Mol. Cell. Biol., 2:1044-1051)。このシステムにおいて、試験細胞をCAT発現ベクターによりトランスフェクトし、最初のトランスフェクションの2〜3日以内に、候補物質とともにインキュベートする。その後、細胞抽出物を調製する。抽出物をアセチルCoAおよび放射活性クロラムフェニコールとともにインキュベートする。インキュベーションの後で、アセチル化されたクロラムフェニコールを、薄層クロマトグラフィーにより、非アセチル化形態から分離する。このアッセイにおいて、アセチル化の程度が、特定のプロモーターによるCAT遺伝子の活性を反映する。
別の好適なレポーター遺伝子システムは、hGHの免疫学的検出に基づく。このシステムはまた、迅速かつ使用するのも容易である(Selden, R., Burke-Howie, K. Rowe, M. E., Goodman, H. M., and Moore, D. D. (1986), Mol. Cell, Biol., 6:3173-3179;本明細書に参考として組み込まれる)。hGHシステムは、発現されたhGHポリペプチドが、細胞抽出物ではなく溶媒中でアッセイされることにおいて有利である。よって、このシステムは、試験細胞の破壊を必要としない。このレポーター遺伝子システムの原理がhGHには限定されず、むしろ、受容可能な特異性を有する抗体が利用可能であるかまたはこれを準備することができる任意のポリペプチドについての使用に適していることが、理解されるべきである。
一態様において、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ安定性を測定し、対照、例として当該技術分野において典型的に使用されるRNAi分子(例として長さが25ヌクレオチド未満であって、2ヌクレオチド塩基の突出を含むデュプレックスオリゴヌクレオチド)または平滑末端を有する未修飾RNAデュプレックスと比較する。
本発明のsiRNAを使用して達成される標的RNA切断反応は、高度に配列特異的である。配列同一性は、当該技術分野において知られている配列比較およびアラインメントアルゴリズムにより決定することができる。2つの核酸配列(または2つのアミノ酸配列)の%同一性を決定するために、配列を、最適な比較目的のためにアラインメントする(例として最適なアラインメントのために、第1の配列または第2の配列中にギャップを導入する)。配列の比較のために利用される局所アラインメントアルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68のアルゴリズムであって、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77において修正されたものである。かかるアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれる。siRNAと標的遺伝子との間の90%より高い配列同一性、例として91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%までもの配列同一性が好ましい。
代わりに、siRNAは、標的遺伝子転写物の一部とハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列(またはオリゴヌクレオチド配列)として機能的に定義される。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件の例は、Sambrook, J.、E. F. FritschおよびT. Maniatis、1989年、Molecular Cloning: A Laboラットory Manual、Cold Spring Harbor Laboラットory Press、Cold Spring Harbor, N.Y.、第9章および11章、ならびに、Current Protocols in Molecular Biology、1995年、F. M. Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、セクション2.10および6.3-6.4において提供され、これらは本明細書に参考として組み込まれる。
治療的使用
遺伝子の発現を阻害することにより、本発明のオリゴヌクレオチド組成物は、タンパク質の発現が関与する任意の疾患を処置するために使用することができる。オリゴヌクレオチド組成物により処置することができる疾患の例として、単に説明するために、がん、網膜症、自己免疫疾患、炎症性疾患(すなわち、ICAM−1関連障害、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病)、ウイルス疾患(すなわち、HIV、C型肝炎)、miRNA障害および心血管性疾患が挙げられる。
一態様において、オリゴヌクレオチドによるin vitroでの細胞の処置を、対象から取り除かれた細胞のex vivoでの治療のため(例として白血病またはウイルス感染の処置のため)、または、対象に由来しないが対象へ投与される予定の細胞の処置のため(例として対象へ移植される予定の細胞における移植抗原の発現の除去)に使用することができる。加えて、in vitroでの細胞の処置を、非治療的セッティングにおいて、例として遺伝子の機能を評価するため、遺伝子の調節およびタンパク質合成を研究するため、または、遺伝子発現またはタンパク質合成を調節するように設計されたオリゴヌクレオチドに対して行われた改善を評価するために、使用することができる。in vivoでの細胞の処置は、タンパク質の発現を阻害することが望ましい特定の臨床的セッティングにおいて有用であり得る。
アンチセンス治療が好適であることが報告されている多数の医療条件(例として米国特許第5,830,653号を参照)ならびに呼吸器多核体ウイルス感染症(WO 95/22,553)、インフルエンザウイルス(WO 94/23,028)および悪性腫瘍(WO 94/08,003)が存在する。アンチセンス配列の臨床的使用の他の例は、例としてGlaser. 1996. Genetic Engineering News 16:1において概説される。オリゴヌクレオチドによる切断のための例示的な標的として、例としてタンパクキナーゼCa、ICAM−1、c−rafキナーゼ、p53、c−mybおよび慢性骨髄性白血病において見出されるbcr/abl融合遺伝子が挙げられる。
対象とする核酸は、ヒト、非ヒト霊長類、非ヒト哺乳動物、非ヒト脊椎動物、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、ウサギなど)、家畜動物、ペット(ネコ、イヌなど)、ツメガエル、魚類、昆虫(ショウジョウバエなど)および線虫(C. elegans)などのRNAi経路を有する任意の動物において、RNAiに基づく治療に使用することができる。
本発明は、対象へ治療剤(例としてRNAi剤またはこれをコードするベクターもしくは導入遺伝子)を投与することにより、対象において、異常なまたは望ましくない標的遺伝子の発現または活性に関連する疾患または状態を予防するための方法を提供する。適切である場合、対象を始めに、続くRNAi治療に対してより応答性となるように、プライミング剤により処置する。異常な、または望ましくない標的遺伝子の発現または活性により引き起こされるかこれが寄与する疾患についてのリスクを有する対象は、例えば本明細書に記載の診断または予後診断アッセイのいずれかまたは任意の組み合わせにより同定することができる。予防剤の投与は、疾患または障害が予防されるように、標的遺伝子の異常の特徴である症状の顕在化に先だって行われても、あるいは、その進行において遅れて行われてもよい。標的遺伝子の異常の型に依存して、例えば標的遺伝子、標的遺伝子アゴニストまたは標的遺伝子アンタゴニスト剤を、対象を処置するために使用することができる。
別の側面において、本発明は、治療を目的として、標的遺伝子発現、タンパク質の発現または活性を調節するための方法に関する。したがって、例示的な態様において、本発明の調節方法は、標的遺伝子を発現することができる細胞を、標的遺伝子またはタンパク質に対して特異的な(例として前記遺伝子によりコードされるmRNAに対して特異的な、たは前記タンパク質のアミノ酸配列を特定する)本発明の治療剤と、標的タンパク質の発現または1以上の活性が調節されるように、接触させることを含む。これらの調節方法は、in vitroで(例として細胞を剤とともに培養することにより)、in vivoで(例として剤を対象へ投与することにより)、または、ex vivoで行うことができる。
典型的には、対象を始めに、続くRNAi治療に対してより応答性になるように、プライミング剤で処置する。したがって、本発明は、標的遺伝子のポリペプチドまたは核酸分子の異常なまたは望ましくない発現または活性により特徴づけられる疾患または障害に罹患した個体を処置する方法を提供する。標的遺伝子の活性の阻害は、標的遺伝子が異常に制御されていないか、および/または、低下した標的遺伝子の活性が有益な効果を有する可能性がある状況において望ましい。
本発明の治療剤は、異常なまたは望ましくない標的遺伝子の活性に関連する障害を処置(予防的または治療的に)するために、個体に投与することができる。かかる処置と組み合わせて、薬理ゲノミクス(すなわち、個体のジェノタイプと外来化合物または薬物に対する個体の応答との間の関係の研究)を考慮する。治療剤の代謝における差異は、薬理学的に活性な薬物の用量と血中濃度の間の関係を変化させることにより、重篤な毒性または治療の失敗をもたらす可能性がある。したがって、医師または臨床医は、治療剤を投与するか否かを決定する上で、ならびに、投薬量および/または治療剤による処置の治療レジメンを調整する上で、関連する薬理ゲノミクス研究において得られる知識を適用することを考慮してもよい。薬理ゲノミクスは、罹患個体における薬物の体内処理(disposition)および異常作用の変化に起因する、薬物に対する応答における臨床的に重要な遺伝的バリエーションに対処する。例えば、Eichelbaum, M. et al. (1996) Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 23(10-11): 983-985およびLinder, M. W. et al. (1997) Clin. Chem. 43(2):254-266を参照。
皮膚への適応におけるRNAi
本明細書において記載される核酸分子または核酸分子を含む組成物は、いくつかの態様において、易感染性の皮膚を、予め処置するか、処置するか、または、予防するために投与される。本明細書に使用される「易感染性の皮膚」は、正常な皮膚から区別される特徴を示す皮膚を指す。易感染性の皮膚は、皮膚科学的状態と関連して生じ得る。皮膚科学的状態の数個の非限定的な例として、酒さ(rosacea)、一般的な挫瘡、脂漏性皮膚炎、口囲皮膚炎、挫瘡様発疹、一過性棘融解性皮膚症(transient acantholytic dermatosis)および粟粒状壊死性挫瘡(acne necrotica miliaris)が挙げられる。いくつかの例において、易感染性の皮膚は、創傷および/または瘢痕組織を含み得る。いくつかの例において、本発明に関連する方法および組成物は、創傷の治癒、瘢痕形成の予防、低減もしくは阻害、および/または、創傷の再上皮形成の促進のために使用することができる。
対象を、対象の皮膚が易感染性になる前に、本発明に関連する分子により予め処置するかまたは予防的に処置してもよい。本明細書に使用される「予めの処置」または「予防的処置」は、皮膚が易感染性になる前に核酸を皮膚へ投与することを指す。例えば、対象を、皮膚が易感染性になる15分間、30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、24時間、48時間、3日、4日、5日、6日、7日、8日の前に、または、8日を超えてから、予め処置してもよい。
他の態様において、対象を、本発明に関連する分子で、皮膚が易感染性になる直前に、および/または、皮膚が易感染性になると同時に、および/または、皮膚が易感染性になった後に、処置してもよい。いくつかの態様において、皮膚は、待機的手術を含む外科手術などの医療処置を介して、易感染性となる。ある態様において、方法および組成物を、易感染性になるリスクがあると考えられる皮膚の領域に適用することができる。当業者は、慣用的な実験のみを用いて、投与のタイミングを最適化することができることが理解されるべきである。
いくつかの側面において、本発明に関連する方法を、易感染性の皮膚の治癒を促進させるために適用することができる。投与は、易感染性の皮膚が部分的に既に治癒していたとしても、易感染性の皮膚が治癒するまでの任意の時間に、行うことができる。投与のタイミングは、易感染性の皮膚の性質、易感染性の皮膚内の損傷の程度および易感染性の領域のサイズを含む、数個の因子に依存し得る。いくつかの態様において、投与は、皮膚が易感染性になった直後、または、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間もしくは48時間より後に、行ってもよい。
いくつかの態様において、投与は、皮膚が傷つけられてから、48時間(2日)、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日後または30日を超えてから、行われる。いくつかの態様において、投与は、皮膚が危うくなってから48時間後と30日後との間に行われる。いくつかの態様において、投与は、皮膚が危うくなってから7日後と30日後との間に行われる。
本発明の方法および組成物を、必要に応じて、1以上の回数で投与してもよい。例えば、いくつかの態様において、組成物を、1日1回または1日2回投与してもよい。いくつかの例において、組成物を、易感染性の皮膚の形成の前および後の両方において投与してもよい。
本発明に関連する組成物は、任意の好適な経路により投与することができる。いくつかの態様において、投与は、易感染性の皮膚の領域において局所的に行われる。例えば、組成物を、皮内注射により投与してもよい。皮内注射のための組成物として、注射用溶液が挙げられる。皮内注射は、いくつかの態様において、易感染性の皮膚の領域の周囲で行っても、皮膚が易感染性になる可能性がある部位において行ってもよい。いくつかの態様において、組成物は、局所用形態において、例えばクリームまたは軟膏などにおいて、投与してもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、易感染性の皮膚の最初の処置または予めの処置の一部を含むが、一方、他の態様においては、かかる組成物の投与は、易感染性の皮膚の領域に対するフォローアップ治療を含む。
適用されるべき組成物または医薬の適切な量は、当業者により慣用的な実験を通して決定することができる多数の異なる因子に依存し得る。考慮され得る数個の非限定的な因子として、剤の生物学的活性およびバイオアベイラビリティー、剤の性質、投与の形態、半減期および処置される対象の特徴が挙げられる。
いくつかの側面において、本発明に関連する核酸分子はまた、肺線維症(pulmonary fibrosis)、肝硬変、強皮症および糸球体腎炎、肺線維症(lung fibrosis)、肝線維症、皮膚線維症、筋線維症、放射線線維症、腎線維症、増殖性硝子体網膜症、再狭窄および子宮線維症を含む、線維性障害の処置および/または予防において使用されてもよい。
本明細書に記載の核酸分子の治療有効量は、いくつかの態様において、易感染性の皮膚の形成を予防する、および/または、易感染性の皮膚の状態を改善する、および/または、線維性障害を処置または予防するのに充分な量である。いくつかの態様において、易感染性の皮膚の状態の改善は、創傷の治癒の促進および/または瘢痕形成の阻害および/または上皮の再生の促進に対応する。易感染性の皮膚の形成の予防および/または易感染性の皮膚の状態に対する改善の程度は、いくつかの例において、例えば医師または臨床医により決定される。
本発明に関連する核酸分子が易感染性の皮膚の形成を予防するおよび/または易感染性の皮膚の状態を改善する能力は、いくつかの例において、皮膚により示される特性を参照して測定することができる。いくつかの例において、これらの特性として、対照の皮膚と比較した、比較可能な時点における、上皮化の速度および/または易感染性の皮膚の領域のサイズの減少が挙げられる。
本明細書に使用される、例えば外科術式の前の易感染性の皮膚の形成の予防、および/または、例えば外科術式の後での易感染性の皮膚の状態の改善は、対照試料において生じる治癒の速度と比較しての、機能低下皮膚における治癒の速度のあらゆる増大を包含し得る。いくつかの例において、易感染性の皮膚の状態は、処置された皮膚と対照の皮膚とにおいて達成された再上皮形成の速度の比較、または、処置された易感染性の皮膚の領域と対照の易感染性の皮膚の領域との相対的面積の比較可能な時点における比較の、いずれかに関して評価することができる。いくつかの側面において、易感染性の皮膚の形成を予防するかまたは易感染性の皮膚の治癒を促進する分子は、投与の後で、易感染性の皮膚の領域に、比較可能な時点において対照と比較して、再上皮形成の速度の増大および/または易感染性の皮膚のサイズの減少を示させる分子であり得る。いくつかの態様において、易感染性の皮膚の治癒は、対照において生じる速度よりも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%高い治癒の速度を生じる。
いくつかの側面において、本発明に関連する方法および組成物により処置される対象は、外科手術などの医療処置を経験することになっているか、経験しているか、または、既に経験した対象である。いくつかの態様において、対象は、高齢者における皮膚の創傷など、再上皮形成に欠陥があるか、遅延しているか、または、他に障害を有する傾向を有し得る。創傷の治癒が、遅延した再上皮形成または他に障害を有する再上皮形成に関連する、状態または障害の他の非限定的な例として、糖尿病を罹患する患者、多剤併用中の患者、閉経後の女性、圧力傷害(pressure injury)に対して感受性の患者、血管性疾患を有する患者、臨床的に肥満の患者、化学療法を受けている患者、放射線治療を受けている患者、ステロイド処置を受けている患者、および、免疫無防備状態の患者が挙げられる。いくつかの例において、欠陥のある再上皮形成応答は、創傷部位における感染および潰瘍などの慢性創傷の形成の原因となり得る。
いくつかの態様において、本発明に関連する方法は、潰瘍などの慢性創傷において易感染性の皮膚の再上皮形成を促進し得、また、創傷の治癒に関連する瘢痕形成を阻害し得る。他の態様において、本発明に関連する方法は、慢性創傷に発達する、創傷の治癒に障害を有する素因を有する患者における急性創傷において、易感染性の皮膚の予防または処置のために適用される。他の側面において、本発明に関連する方法は、一般的な臨床の意味における使用のために、瘢痕形成を予防、低減または阻害しつつ、易感染性の皮膚の治癒の加速を促進するために、適用される。いくつかの側面において、これは、外科手術の切開の処置を含み得、かかる方法の適用は、さもなくばかかる治癒に際して生じ得る瘢痕形成の予防、低減または阻害をもたらし得る。かかる処置は、瘢痕を、より目立たなく、より正常な皮膚構造の再生を示すようにし得る。他の態様において、処置される易感染性の皮膚は、外科手術による切開により引き起こされる易感染性の皮膚ではない。易感染性の皮膚は、再上皮形成および治癒を促進するために、継続的治療および医薬の継続的適用に供される。
いくつかの側面において、本発明に関連する方法を、移植術に関連する易感染性の皮膚の処置において用いてもよい。これは、移植ドナー部位および/または移植レシピエント部位の処置を含み得る。移植は、いくつかの態様において、皮膚、人工皮膚または皮膚の代わりを含み得る。本発明に関連する方法はまた、上皮の再生を促進するために用いてもよい。本明細書において用いられる場合、上皮の再生の促進とは、対照処置されたまたは無処置の上皮において起こる再生と比較した場合の、上皮の再生の速度のあらゆる増加を包含する。得られた上皮の再生の速度は、いくつかの例において、当該技術分野において知られている任意の好適な上皮の再生のモデルを用いて、対照処置されたまたは無処置の上皮において起こるものと比較することができる。上皮の再生の促進は、再上皮形成応答が損なわれているか、阻害されているか、遅延しているか、または、他に欠陥がある場合において、有効な再上皮化を誘導するために役立ち得る。上皮の再生の促進はまた、上皮損傷を罹患する患者において、欠陥があるかまたは正常な上皮の再生応答の速度を加速するために達成してもよい。
再上皮形成応答が欠陥を有し得るいくつかの例は、天疱瘡、ヘイリー・ヘイリー病(家族性良性天疱瘡)、中毒性表皮壊死症(TEN)/ライエル症候群、表皮水疱症、皮膚リューシュマニア症および日光角化症などの状態を含む。肺の再上皮化の欠陥は、特発性肺線維症(IPF)または間質性肺疾患に関連し得る。眼の再上皮化の欠陥は、部分角膜縁幹細胞欠乏症(partial limbal stem cell deficiency)または角膜糜爛などの状態に関連し得る。胃腸管または結腸の再上皮形成の欠陥は、慢性肛門裂傷(肛裂)、潰瘍性大腸炎またはクローン病および他の炎症性大腸障害などの状態に関連し得る。
いくつかの側面において、本発明に関連する方法は、瘢痕形成に関連する易感染性の皮膚を予防、低減あるいは阻害するために用いられる。これは、皮膚、眼、神経、腱、靭帯、筋肉および口腔(唇および口蓋を含む)ならびに内臓(肝臓、心臓、脳、腹腔、骨盤腔、胸腔、腸および生殖組織など)を含む、体内の任意の部位および任意の組織または器官に適用することができる。皮膚において、処置は、コラーゲン線維の形態および組織化を変化し得、結果として、瘢痕をより目立たなく、周囲の皮膚と混ざった状態にし得る。本明細書において用いられる場合、瘢痕形成の予防、低減または阻害は、対照処置されたまたは無処置の創傷において生じ得る瘢痕形成のレベルと比較した場合の、あらゆる程度の瘢痕形成における予防、低減または阻害を包含する。
皮膚の瘢痕形成と関連する易感染性の皮膚などの易感染性の皮膚の予防、低減または阻害は、顕微鏡的および/または肉眼での特徴を参照して評価および/または測定することができる。肉眼での特徴として、皮膚の色、高さ、表面のテクスチャおよび固さが挙げられ得る。いくつかの例において、易感染性の皮膚の予防、低減または阻害は、皮膚の色、高さ、表面のテクスチャおよび固さが、処置の後で、無処置の対照よりも緊密に正常な皮膚のものと類似する場合に、実証することができる。易感染性の皮膚の顕微鏡的評価は、細胞外マトリックス(ECM)線維の厚みおよび/または方向および/または組成、ならびに、易感染性の皮膚の細胞充実性(cellularity)を試験することを含み得る。いくつかの例において、易感染性の皮膚の予防、低減または阻害は、細胞外マトリックス(ECM)線維の厚みおよび/または方向および/または組成、ならびに、易感染性の皮膚の細胞充実性が、処置の後で、無処置の対照よりも緊密に、正常な皮膚のものと類似する場合に、実証することができる。
いくつかの側面において、本発明に関連する方法は、少なくとも部分的に易感染性の皮膚の美容的外観を改善することに寄与するために、美容目的のために用いられる。いくつかの態様において、本発明に関連する方法は、身体の関節を覆う創傷の瘢痕形成などの易感染性の皮膚を予防、低減または阻害するために用いてもよい。他の態様において、本発明に関連する方法は、収縮性の瘢痕を形成するかまたは皮膚の張力が高い部位に創傷が位置するリスクが増大している場合に、創傷の治癒の加速を促進する、および/または、創傷の瘢痕形成を予防、低減または阻害するために、用いてもよい。
いくつかの態様において、本発明に関連する方法は、正常な瘢痕形成よりも顕著な有害効果を有し得る肥厚性瘢痕およびケロイドなどの異常な瘢痕形成のリスクが高い例において、易感染性の皮膚の治癒を促進するために適用することができる。いくつかの態様において、機能低下皮膚の治癒の加速を促進するおよび/または瘢痕形成を予防、低減または阻害するための本明細書に記載の方法は、異常な瘢痕の修正手術によりもたらされる易感染性の皮膚に適用される。
ケロイドは、逆行することのない皮膚の瘢痕の、特定の攻撃的な形態である。ケロイド瘢痕は、隆起し、不規則な形状で、ピンク〜暗赤の色を呈し、特徴的には、元の創傷の境界を越えて及ぶ。ケロイドは一般的に、圧痛があるかまたは痛みを伴い、激しく痒いこともある。ケロイドは、肌の色がより黒い個体ほどより高頻度にみられ、しばしば家系に特有である一方で、ケロイドは、全ての肌質で生じ得る。現在の処置は満足いくものではなく、コルチコステロイド注射、凍結療法、皮膚穿刺、包帯圧迫またはシリコーン包帯、レーザー処置または放射線処置および外科的除去を含む。ケロイドが、炎症または傷害の部位にて形成するため、ケロイドの処置または除去は、さらにより大きいケロイドをもたらすことがある。
CTGFは、皮膚/組織の傷害の際に発現が上昇し、その後の創傷治癒の間中、発現し続ける。しかしながら、肥厚性瘢痕およびケロイドは、過剰な創傷治癒(Shi-Wen 2008)および過剰な瘢痕組織の沈着の結果もたらされる。CTGFの上昇かつ長期の発現がケロイドに(Shi Wen 2008)、特に成長しつつある末端に(Igarashi et al. (1996) J. Investigative Dermatology, Vol 106, No 4 April 1996, p. 729-733;例として図5を参照、参考として本明細書に組み込まれる)あることから、ケロイドが切除された部位でのCTGFの低減は、低減されたケロイドをもたらし得る。ケロイドの外科的除去のみでは充分でなく、一般に、ケロイド再発(40〜100%)を、いくつかのケースにおいては、より大きなケロイドの再発をもたらす(Al-Attar 2006)。
ケロイドにおけるCTGFの上昇かつ長期の発現を考えると、いくつかの態様において、CTGFレベルを低減するためのより攻撃的な投薬レジメンが必要とされる。切除の最大72時間前までのケロイドの予防的処置は、切除されるケロイドの先端(leading edges)におけるCTGFの上昇したレベルを低減するのに有益であり得る。ケロイド切除に続き、RXI−109は、ケロイドの再発を低減するために、例えば毎日、1日おき、週2回、毎週、隔週毎、第3週毎、毎月、または、上のいずれの組み合わせでも、投薬され得る。
本発明の側面は、熱傷により引き起こされる易感染性の皮膚に適用することができる。熱傷に対する応答における治癒は、肥厚性瘢痕の形成を含む有害な瘢痕形成をもたらし得る。本発明に関連する方法は、表皮が損傷を受ける皮膚への傷害などの、上皮層に対する損傷を含む全ての傷害の処置のために適用することができる。他の非限定的な上皮組織への傷害の例として、呼吸上皮、消化器系上皮(digestive epithelia)または内部組織もしくは器官の周囲の上皮に関する傷害が挙げられる。
肝線維症を処置するためのRNAi
いくつかの態様において、本発明に関連する方法は、肝線維症を処置するために用いる。肝線維症は、慢性肝疾患のほとんどのタイプにおいて生じる、コラーゲンを含む細胞外基質タンパク質の過剰な蓄積である。これは、傷害に対する肝臓の応答を表す、瘢痕形成プロセスである。進行した肝線維症は、肝硬変、肝不全、および門脈圧亢進症となり、多くは肝移植を必要とする。皮膚および他の器官がコラーゲンおよび他の基質成分の沈着を通して創傷を治癒するように、肝臓も新しいコラーゲンの沈着を通して傷害を修復する。活性化された肝星細胞、門脈線維芽細胞および骨髄由来の筋線維芽細胞が、傷害された肝臓における主要なコラーゲン産生細胞として同定されている。これらの細胞は、TGF−β1、アンギオテンシンIIおよびレプチンなどの線維形成サイトカインにより活性化される。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法は、線維形成細胞の蓄積を阻害し、および/または、細胞外基質タンパク質の沈着を予防することを目的とする。いくつかの態様において、RNAi分子(sd−rxRNAおよびrxRNAoriを含む)は、CTGF、TGF−β1、アンギオテンシンIIおよび/またはレプチンを標的とするように、設計することができる。いくつかの態様において、RNAi分子(sd−rxRNAおよびrxRNAoriを含む)は、表1〜25に挙げられているそれらの遺伝子を標的とするように設計することができる。
線維柱帯切除術の失敗
線維柱帯切除術は、強膜を通るチャネルまたはブレブを作製して、過剰な体液を眼の前方から排出するように設計された外科手術であり、これにより、緑内障に関連する失明の危険因子である眼内圧(IOP)の減少をもたらす。線維柱帯切除術の失敗の最も一般的な原因は、瘢痕組織によるブレブの閉塞である。ある態様において、sd−rxRNAを用いて、線維柱帯切除術に起因する瘢痕組織の形成を防ぐ。いくつかの態様において、sd−rxRNAは、コネキシン43を標的とする。別の態様において、sd−rxRNAは、プロリル4−ヒドロキシラーゼを標的とする。さらに他の態様において、sd−rxRNAは、プロコラーゲンC−プロテアーゼを標的とする。
標的遺伝子
本明細書において設計され開示されるRNAi分子に基づき、当業者は、状況および意図される用途に依存して、多様な異なる遺伝子を標的とするかかるRNAi分子を設計できることが、理解されるべきである。易感染性の皮膚を予め処置するか、処置するかまたは予防する、および/または、創傷の治癒を促進するか、および/または、瘢痕形成を予防、低減または阻害することを目的として、当業者は、少なくとも部分的に、遺伝子の既知のまたは予測される機能、および/または、遺伝子の既知のまたは予測される発現パターンに基づいて、多様な好適な標的遺伝子を同定できることを理解する。易感染性の皮膚を予め処置するか、処置するかまたは予防する、および/または、創傷の治癒を促進するか、および/または、瘢痕形成を予防、低減または阻害するために、RNAi分子により標的化されることができる遺伝子の数個の非限定的な例として、以下のタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる:
トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)、オステオポンチン(SPP1)、結合組織増殖因子(CTGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、低酸素誘導因子−1α(HIF1α)、コラーゲンIおよび/またはIII、プロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)、プロコラーゲンC−プロテアーゼ(PCP)、マトリックスメタロプロテイナーゼ2、9(MMP2,9)、インテグリン類、コネキシン、ヒスタミンH1受容体、組織トランスグルタミナーゼ、哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)、HoxB13、VEGF、IL−6、SMADタンパク質、リボソームタンパク質S6キナーゼ(RSP6)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2/PTGS2)、カンナビノイド受容体(CB1、CB2)および/またはmiR29b。
トランスフォーミング増殖因子βタンパク質について、哺乳動物においては3種のアイソフォーム(TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3)が存在し、これは分泌タンパク質であり、増殖、遊走、アポトーシス、接着、分化、炎症、免疫抑制および細胞外タンパク質の発現を含む、多くの細胞プロセスの調節に関与する増殖因子のスーパーファミリーに属している。これらのタンパク質は、上皮、内皮、造血、神経および結合組織の細胞を含む、広範囲の細胞型により産生される。ヒトTGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は夫々、BT007245、BC096235およびX14149である。TGFβファミリー内において、TGFβ1およびTGFβ2は、好適な標的を表わすが、TGFβ3はそうではない。TGFβのバリアントの比の変化は、より良好な創傷の治癒を促進し、過剰な瘢痕形成を予防する。
オステオポンチン(OPN)は、分泌リンタンパク質1(SPP1)、骨シアロタンパク質1(BSP−1)、および初期Tリンパ球活性化(early T-lymphocyte activation)(ETA−1)としても知られ、ヒドロキシアパタイトに結合する分泌グリコプロテインタンパク質である。OPNは、骨リモデリング、免疫機能、化学走性、細胞の活性化およびアポトーシスを含む、多様な生物学的プロセスに関与すると考えられている。オステオポンチンは、線維芽細胞、前骨芽細胞(preosteoblast)、骨芽細胞、骨細胞、象牙芽細胞、骨髄細胞、肥大軟骨細胞、樹状細胞、マクロファージ、平滑筋、骨格筋筋芽細胞、内皮細胞、ならびに、内耳、脳、腎臓、子宮脱落膜および胎盤における骨外(非骨)細胞を含む、多様な細胞型により産生される。ヒトオステオポンチンについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_000582.2およびX13694である。
結合組織増殖因子(CTGF)は、肥大軟骨細胞特異的タンパク質24としても知られ、創傷の治癒および強皮症に関与すると考えられている分泌性のヘアピン結合タンパク質である。結合組織増殖因子は、線維芽細胞、筋線維芽細胞、内皮および上皮細胞を含む多くの細胞型において活性である。ヒトCTGFについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_001901.2およびM92934である。
数個のアイソフォームを含む血小板由来増殖因子(PDGF)ファミリーのタンパク質は、分泌マイトジェンである。PDGFタンパク質は、創傷の治癒に、少なくとも部分的に関連すると考えられる。なぜならば、これらは、創傷に続き、血小板から放出されるからである。ヒトPDGFの遺伝子およびタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号として、X03795(PDGFA)、X02811(PDGFB)、AF091434(PDGFC)、AB033832(PDGFD)が挙げられる。
低酸素誘導因子−1α(HIF1α)は、低酸素に対する細胞の応答に関与する転写因子である。HIF1αは、胎児血管新生、腫瘍血管新生および虚血性疾患の病態生理学などの細胞プロセスに関与すると考えられる。ヒトHIF1αについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はU22431である。
コラーゲンタンパク質は、最も豊富な哺乳動物タンパク質であり、皮膚、腱、血管、靭帯、器官および骨などの組織において見出される。コラーゲンIタンパク質(COL1A1およびCOL1A2など)は、創傷が治癒する間、瘢痕組織において検出され、皮膚において発現する。コラーゲンIIIタンパク質(COL3A1を含む)は、創傷中の結合組織(肉芽組織)において検出され、また皮膚においても発現される。ヒトコラーゲンタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号として、Z74615(COL1A1)、J03464(COL1A2)およびX14420(COL3A1)が挙げられる。
プロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4H)は、コラーゲンの産生および酸素のセンシングに関与する。ヒトP4HについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はAY198406である。
プロコラーゲンC−プロテアーゼ(PCP)は別の標的である。
マトリックスメタロプロテイナーゼ2、9(MMP2,9)は、メトジンシンメタロプロテイナーゼスーパーファミリーに属し、亜鉛依存性エンドペプチダーゼである。これらのタンパク質は、組織修復を含む多様な細胞プロセスに関与すると考えられる。ヒトMMPタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、M55593(MMP2)およびJ05070(MMP9)である。
インテグリン類は、細胞と細胞外マトリックスとの間の相互作用および連絡に関与するタンパク質のファミリーである。脊椎動物は、α1β1、α2β1、α4β1、α5β1、α6β1、αLβ2、αMβ2、αIIbβ3、αvβ3、αvβ5、αvβ6、α6β4を含む多様なインテグリン類を含有する。
コネキシン類は、脊椎動物の、ギャップ結合を形成する膜貫通タンパク質のファミリーである。コネキシン類の数個の例として、Cx23(GJE1)、Cx25(GJB7)、Cx26(GJB2)、Cx29(GJE1)、Cx30(GJB6)、Cx30.2(GJC3)、Cx30.3(GJB4)、Cx31(GJB3)、Cx31.1(GJB5)、Cx31.9(GJC1/GJD3)、Cx32(GJB1)、Cx33(GJA6)、Cx36(GJD2/GJA9)、Cx37(GJA4)、Cx39(GJD4)、Cx40(GJA5)、Cx40.1(GJD4)、Cx43(GJA1)、Cx45(GJC1/GJA7)、Cx46(GJA3)、Cx47(GJC2/GJA12)、Cx50(GJA8)、Cx59(GJA10)およびCx62(GJA10)が挙げられ、括弧内には付随する遺伝子名が示されている。
ヒスタミンH1受容体(HRH1)は、ホスホリパーゼCおよびホスホチジルイノシトール(PIP2)のシグナル伝達経路に関与する、代謝調節型Gタンパク質共役受容体である。ヒトHRH1のためのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はZ34897である。
組織トランスグルタミナーゼは、タンパク質−グルタミンガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ2とも称され、タンパク質架橋に関与し、アポトーシス、細胞分化およびマトリックス安定化などの生物学的プロセスに関与すると考えられる。ヒト組織トランスグルタミナーゼについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はM55153である。
哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)は、セリン/スレオニン−タンパク質キナーゼmTORおよびFK506結合タンパク質12−ラパマイシン結合タンパク質1(FRAP1)としても知られ、細胞の増殖および生存、細胞の運動性、転写および翻訳の調節に関与する。ヒトmTORについてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はL34075である。
HoxB13は、ホメオボックスタンパク質のファミリーに属し、皮膚の再生および胎生期の皮膚の発達などの機能に結び付けられている。ヒトHoxB13についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はU57052である。
血管内皮増殖因子(VEGF)タンパク質は、チロシンキナーゼ受容体に結合する増殖因子であり、がん、加齢横斑変性、関節リウマチおよび糖尿病性網膜症などの複数の障害に関与すると考えられる。このタンパク質ファミリーのメンバーとして、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−CおよびVEGF−Dが挙げられる。ヒトVEGFタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、M32977(VEGF-A)、U43368(VEGF-B)、X94216 (VEGF-C)およびD89630(VEGF-D)である。
インターロイキン−6(IL−6)は、組織損傷に対する免疫応答の刺激に関与するサイトカインである。ヒトIL−6についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はX04430である。
SMADタンパク質(SMAD1〜7、9)は、TGFβシグナル伝達の調節に関与する転写因子のファミリーである。ヒトSMADタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、U59912(SMAD1)、U59911(SMAD2)、U68019(SMAD3)、U44378(SMAD4)、U59913(SMAD5)、U59914(SMAD6)、AF015261(SMAD7)およびBC011559(SMAD9)である。
リボソームタンパク質S6キナーゼ(RSK6)は、転写因子CREBの活性化に関与するセリン/スレオニンキナーゼのファミリーを代表する。ヒトリボソームタンパク質S6キナーゼアルファ−6についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はAF184965である。
シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)は、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2(PTGS2)とも称され、脂質代謝およびプロスタノイドの生合成に関与し、関節リウマチなどの炎症性障害に関与すると考えられる。ヒトCOX−2についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号はAY462100である。
現在2つのサブタイプCB1およびCB2が知られているカンナビノイド受容体は、Gタンパク質共役受容体スーパーファミリーの中の細胞膜受容体のクラスである。CB1受容体は主に脳において発現されるが、肺、肝臓、腎臓においても発現され、一方CB2受容体は、主に免疫系および造血細胞において発現される。ヒトCB1についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_001160226、NM_001160258、NM_001160259、NM_001160260、NM_016083、およびNM_033181である。
miR29b(またはmiR−29b)はmicroRNA(miRNA)であり、これは、mRNAの安定性および翻訳の両方に影響を及ぼすことによって、多細胞生物における遺伝子発現の翻訳後調節に関与する、短い(20〜24nt)非コードRNAである。miRNAはRNAポリメラーゼIIにより、タンパク質をコードできるかコードできない、キャップされポリアデニル化された一次転写産物の一部として転写される。この一次転写産物は、DroshaのリボヌクレアーゼIII酵素により切断されて、約70ntのステムループ前駆体miRNA(プレmiRNA)を産生し、これはさらに細胞質ダイサーリボヌクレアーゼによって切断されて、成熟miRNAおよびアンチセンスmiRNA星(miRNA*)産物を生成する。成熟miRNAはRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれ、これは、miRNAとの不完全な塩基対形成を介して標的mRNAを認識し、もっとも一般的には標的mRNAの翻訳阻害または非安定化をもたらす。miR29bの代表的なmiRBaseアクセッション番号はMI0000105である(ウェブサイト:mirbase.org/cgi-bin/mirna_entry.pl?acc=MI0000105)。
いくつかの態様において、sd−rxRNAはコネキシン43(CX43)を標的とする。この遺伝子は、コネキシン遺伝子ファミリーのメンバーである。コードされるタンパク質はギャップ結合の成分であり、これは細胞から細胞への低分子量物質の拡散経路を提供する、細胞間チャネルのアレイからなる。コードされるタンパク質は、心臓のギャップ結合の主要なタンパク質であり、このギャップ結合は、心臓の同期した収縮および胚発生において重要な役割を有すると考えられている。関連するイントロンのない偽遺伝子が、クロモソーム5にマッピングされてきた。この遺伝子における変異は、眼歯指異形成症および心臓の奇形と関連づけられてきた。ヒトCX43遺伝子およびタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_000165およびNP_000156を含む。
他の態様において、sd−rxRNAはプロリル4−ヒドロキシラーゼ(P4HTM)を標的とする。この遺伝子の産物は、プロリル4−ヒドロキシラーゼのファミリーに属する。このタンパク質は、常酸素下での低酸素誘導性転写因子の分解に関与することができるプロリルヒドロキシラーゼである。これは、低酸素への適応において役割を果たし、細胞による酸素のセンシングに関連し得る。異なるアイソフォームをコードする、選択的にスプライシングされた変異体が同定されてきた。ヒトP4HTM遺伝子およびタンパク質についてのDNAおよびタンパク質の配列情報を提供する代表的なGenbankアクセッション番号は、NM_177938、NP_808807、NM_177939、およびNP_808808を含む。
ある態様において、sd−rxRNAは、プロコラーゲンCプロテアーゼを標的とする。本発明は、以下の例によってさらに例示されるが、これらは決して、さらに限定するものとして解釈されるべきではない。本出願を通して引用された全ての参考資料(参考文献、交付済み特許、公開された特許出願および同時係属の特許出願を含む)の全体の内容は、参考としてここに明示的に組み込まれる。
例
例1:RXI−109は、in vitroおよびin vivoでの前臨床実験においてCTGFを効率的にサイレンシングする
図1Aは、RXI−109のin vitroでの効力を実証する。RXI−109を、A549(ヒト腺がん胞状基底上皮)細胞(10,000細胞/ウェル、96ウェルプラート)における活性について試験した。A549細胞を、血清フリー培地(AccellsiRNA送達培地、ThermoFisher)中のRXI−109または非標的化対照(#21803)の濃度を変えることで試験した。試験した濃度は、1、0.5、0.1、0.05、0.025および0.01μMであった。
非標的化対照sd−rxRNA(#21803)は、RXI−109と同じ構造であって、両鎖にわたり、類似の安定化修飾を含有する。投与から48時間後、細胞を溶解し、mRNAレベルを、遺伝子特異的プローブ(Affymetrix)を使用するQuantigene branched DNAアッセイによって、製造元のプロトコルに従い決定した。データを、ハウスキーピング遺伝子(PPIB)に対し正規化し、非標的化対照についてグラフ化する。エラーバーは、生物学的トリプリケートの平均からの標準偏差を表す。
図1Bは、in vivo(ラット皮膚)での、RXI−109の2回の皮内注射後のCTGFサイレンシングを実証する。
提示したデータは、ラット真皮の切除による創傷モデルを使用する研究からのものである。RXI−109の2回の皮内注射に続き、CTGF・対・非標的化対照のサイレンシングを、少なくとも5日間維持した。CTGFのmRNAの低減は用量依存的;同用量の非標的化対照と比較して、300および600μgにつき夫々51および67%であった。方法:RXI−109または非標的化対照(NTC)を、第1日および第3日に、ラットの背上4つの部位各々への皮内注射(200μLあたり300または600μgの注射)によって投与した。
切除による4mm創傷を、第2用量(第3日)の〜30分後に、各注射部位にて、もたらした。創傷部位を包含し、組織を取り囲む末端の生検サンプルを第8日に収集した。RNAを単離し、qPCRによる遺伝子発現分析へ供した。データを、TATAボックス結合タンパク質(TBP)ハウスキーピング遺伝子のレベルに対して正規化し、1.0に設定したPBSビヒクル対照に対してグラフ化する。各バーは、12個の生検(ラット1匹あたり4つの処置部位を持つ3匹のラット)からの平均化データを表す。エラーバーは、個々の生検サンプル間の標準偏差を表す。RXI−109で処置された群・対・同用量の非標的対照群についてのp値は、600μgでは**p<0.001であり、300μgでは*p<0.01であった。
例2:CTGFサイレンシングは、げっ歯類モデルにおいて早期創傷治癒を遅延させず、増強し得る
図2は、CTGFサイレンシングが、げっ歯類モデルにおいて早期創傷治癒を遅延させず、増強し得ることを実証する。図2Aは、ラットにおける予防的投薬を含む、大きな創傷の治癒研究の概略を示す:方法:12匹のラットを含有する各4群に、背上2つの部位の各々にて、600μgのRXI−109の、200μl皮内注射を受けさせた。48時間後、ラットに、各部位にて第2注射を受けさせた後、その注射の15分後に、切除による4mmの創傷をもたらした。
4匹のラットを、創傷後の第5日に、犠死させた。創傷から7日後、残りのラットに、RXI−109の追加の200μl用量を、創傷を取り囲む4×50μlの注射に分けて、受けさせた。1群あたり4匹のラットを、創傷から9日後および15日後に、犠死させた。創傷幅および視覚的重症度を、無麻酔の動物に対し、本研究にわたり毎日査定した。犠死のとき、創傷部位を収集し二等分して、その半分を亜鉛固定液中で固定した後、パラフィンブロックに処理した。非連続の切片を切り取り、マッソン三重染色により染色し、創傷幅、創傷エリア、再上皮形成および肉芽組織の成熟度の組織学的査定を実施した。二等分された各サンプルの残り半分を、−80℃に急速凍結する前に、RNAlater溶液中に24時間保存し、qPCRによる遺伝子発現分析のためにRXi Pharmaceuticals Corporationへ発送した。RNAを単離し、qPCRによる遺伝子発現分析へ供した。
図2Bは、in vivo(ラット皮膚)での、RXI109の3回の皮内注射後のCTGFサイレンシングを実証する。RXI−109の2回の皮内注射に続き、CTGF・対・非標的化対照のサイレンシングを、少なくとも5日間維持した。CTGFのmRNAの低減は、PBS対照と比較して、300μgでは53%であった。
RNAを単離し、qPCRによる遺伝子発現分析へ供した。データを、Sfrs11ハウスキーピング遺伝子に対して正規化し、1.0に設定したPBSビヒクル対照に対してグラフ化する。各バーは、8個の生検(ラット1匹あたり2つの処置部位を持つ4匹のラット)からの平均化データを表す。エラーバーは、個々の生検サンプル間の標準偏差を表す。RXI−109で処置された群・対・PBSについてのp値は、300μg用量でp<0.0003であった。
図2Cは、ラット皮膚におけるRXI−109の投与が、測定結果を持つ創傷によって決定された早期創傷閉鎖を遅延させないことを実証する。RXI−109は、創傷幅測定結果により決定された早期創傷閉鎖を遅延させない。研究デザインおよび方法を図2Aに与える。RXI−109を、創傷の2日前、創傷時、および、創傷から7日後に、皮内注射によって投与した。第6日から第9日に、RXI−109で処置された創傷は、PBS対照で処置された創傷より幅が小さかった(第6、7および8日夫々の、600μg用量のRXI−109・対・NTCは、*p=0.002、0.0008、0.002)。
図2Dは、ラット皮膚におけるRXi−109の投与が、パーセント再上皮化の組織学的測定結果によって決定された早期創傷閉鎖を遅延させないことを実証する。RXi−109は、パーセント再上皮形成の組織学的測定結果によって決定された早期創傷閉鎖を遅延させない。研究デザインおよび方法を図2Aに与える。RXI−109を、創傷の2日前、創傷時、および、創傷から7日後に、皮内注射によって投与した。組織学的パーセント再上皮形成測定結果は、RXI−109で処置された創傷が、創傷から5日後に、PBSで処置された創傷より著しく再上皮形成されることを示す(p=0.004・対・PBS)。全ての創傷は、創傷から15日後によって完全に再上皮形成された。
例3:RXI−109フェーズ1臨床試験
図3は、RXI−109フェーズ1臨床試験:研究1201および1202の要約を示す。研究1201は、以下:フェーズ1単一施設の、無作為化の、単回用量の、二重盲式の、漸増用量の、および、切開瘢痕処置用RXI−109の対象内対照研究からなった。研究1202は、以下:フェーズ1単一施設の、無作為化の、複数回用量の二重盲式の、漸増用量の、および、切開瘢痕処置用RXI−109の対象内対照研究からなった。以下:対・ビヒクルの安全性&副作用の査定、対・ビヒクルの写真比較、対・ビヒクルの瘢痕部位の組織学的比較、および、局所的な皮内注射後の薬物動態パラメータを含む、複数のパラメータを評価した。
例4:RXI−109−1201:腹部切開レイアウト、予備の盲式組織学的データおよび盲式データ
図4は、RXI−109−1201フェーズ1臨床試験用の切開レイアウトの要約を示す。対象には、1対象ごとに、所定の無作為化パターンに従って、RXI−109またはプラシーボのいずれかの単回皮内注射を受けさせた。部位の半数をRXI−109で、もう半分をプラシーボで処置した。
対象(15名の対象(3名のボランティア対象の5群のコホート))に、彼らの腹部上2部位にRXI−109のID注射を、および、他の2部位にプラシーボ(PBS)のID注射を、受けさせた。外科術式を模倣するため、翌日、これらの部位にて小さな切開を行った。試験した5種の用量レベルは、2、5、10、15および20mgである1対象あたりの合計用量に対し夫々、2カ所の2cm切開の各々につき1、2.5、5、7.5および10mg/注射であった。投与から84日後に、切開部位の生検を、組織学的分析用に採った。
RXI−109−1201投薬レジメン:対象を創傷から1日後に処置した。
図5は、切開から84日後の創傷エリアの、RXI−109−1201からの予備の盲式組織学データを示す。切開部位の画像を、組織学データの上に示す。正常なおよび処置された皮膚サンプルの生検を、組織学的評価用に、創傷から84日後に、対象から採った。創傷エリアおよびCTGFレベルを、1サンプルごとに決定した。
図6は、切開から84日後の、下方切開部位からの、1部位あたり3切片からの、創傷エリアの合計の予備の盲式組織学データを示す。正常なおよび処置された皮膚サンプルの生検を、組織学的評価用に、創傷から84日後に、対象から採った。創傷エリアおよびCTGFレベルを、1サンプルごとに決定した。
図7は、切開から84日後の、創傷エリア、CTGF染色およびa−SMA染色の、RXI−109−1201からの予備の盲式組織学データを示す(倍率20×)。
正常なおよび処置された皮膚サンプルの生検は、組織学的評価用に、創傷から84日後に対象から採られた。創傷エリアおよびCTGFレベルは、1サンプルごとに決定された。創傷エリアおよびCTGFレベルを、1サンプルごとに決定した。創傷エリアが小さくなるほど、より低いCTGF発現レベルをたどるように見える。
例5:RXI−109−1202:対象の腹部切開レイアウトならびに臨床写真およびデータ
図8は、RXI−109−1201フェーズ1臨床試験用の切開レイアウトの要約を示す。対象には、1対象ごとに、所定の無作為化パターンに従って、2週間にわたり、RXI−109またはプラシーボのいずれかの3回皮内注射を受けさせた。部位の半数をRXI−109で、もう半分をプラシーボで処置した。
対象(12名の対象(3名のボランティア対象の4群のコホート))に、彼らの腹部上4部位にRXI−109のID注射を、および、他の4部位にプラシーボ(PBS)のID注射を、受けさせた。対象には、第1、8および15日に、薬物の合計3回の投与を受けさせた。外科術式を模倣するため、初回投与から30分後にこれらの部位にて、小さな切開を行った。試験した4種の用量レベルは、1日あたり10、20、30および40mgの1対象あたりの合計用量に対し夫々、4カ所の2cm切開の各々につき2.5、5、7.5および10mg/注射であった。創傷から18および84日後に、切開部位の生検を、組織学的分析用およびmRNA発現分析用に採った。
RXI−109−1202投薬レジメン:対象を、3つの機会:創傷から30分後、創傷から1週間後および創傷から2週間後に、薬物で処置した。
図9は、RXI−109−1201フェーズ1臨床試験からの、切開から18日後(第3回かつ最終回の用量から3日後)の対象の切開部位の画像を示す。提示されたデータは盲式であり、コードはブレークされていない。
図10は、切開から18日後(第3回かつ最終回の用量から3日後)の対象の切開部位の画像、ならびに、RXI−109−1201フェーズ1臨床試験からの各切開部位からの対応する相対的CTGFのmRNAレベルを示す。提示されたデータは盲式であり、コードはブレークされていない。正常なおよび処置された皮膚サンプルの生検を、CTGFのmRNAレベルの評価用に、創傷から18日後に対象から採った。CTGFおよびハウスキーピングmRNAレベルを、qPCR(taqman Probes ABI)を使用して決定した。
例6:RXI−109−1301:腹部の修正された瘢痕断片レイアウト、写真の1カ月中間分析
図11は、RXI−109フェーズ2臨床試験:研究RXI−109−1301の要約を示す。研究RXI−109−1301は、以下:複数施設の、前向きの、無作為化の、二重盲式の、健常成人における既往手術に起因する下腹部上に横断する肥厚性瘢痕に対する瘢痕修正手術の成果に対するRXI−109の有効性および安全性を評価する対象内対照フェーズ2a研究からなった。以下:対・ビヒクルの安全性&副作用、および、対・ビヒクルの写真比較を含む、複数のパラメータを評価した。
図12は、RXI−109−1301フェーズ2臨床試験用の、修正瘢痕断片レイアウトの要約を示す。対象には、2週間にわたり、1対象ごとに、所定の無作為化パターンに従って、RXI−109またはプラシーボのいずれかの3回の皮内注射を受けさせた(修正瘢痕断片のうち中央断片は無処置のままであった)。修正瘢痕断片(RまたはL)の一部分をRXI−109で処置した一方、他の部分(RまたはL)をプラシーボで処置した。
対象(16名の対象(8名のボランティア対象の2群のコホート))に、彼らの修正瘢痕断片の一方の区域(RまたはL)上にRXI−109のID注射を、および、修正瘢痕断片のもう片方にてプラシーボ(生理食塩水)のID注射を、受けさせた。対象には、第1、8および15日に(コホート1)または第14、21および28日に(コホート2)、薬物の合計3回の投与を受けさせた。試験した用量レベルは5mg/cmであった。修正瘢痕断片の写真を、修正から1カ月後、3カ月後、6カ月後および9カ月後に撮った。
図13および14は、盲式評価者による写真の1カ月中間分析を示す。評価者には、(a)どちら側(左または右)がより良好に見えるか、または、差異がないかで選択すること、(b)0(ファインラインの瘢痕)から10(可能な限り最悪な瘢痕)までのVASスコアを提供すること、を求めた。盲式評価者の中間分析によって、コホート2(第14、21および28日)におけるRXI−109による処置の方が、コホート1(第1、14および21日)におけるRXI−109による処置より良好であることが示唆される。コホート2のみにおいて、両方の比較観察(RXI−109で処置された・対・プラシーボで処置された瘢痕)による、および、視覚的アナログスケールを使用する瘢痕の評価による、RXI−109で処置された瘢痕には、統計学的な優先傾向があった。
図15は、コホート1における対象からの、外科手術前のおよび修正から1カ月後の瘢痕断片の写真を示す。
図16は、コホート2における対象からの、外科手術前のおよび修正から1カ月後の瘢痕断片の写真を示す。
均等物
当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載される本発明の具体的な態様についての多数の均等物を理解するかまたはそれに気付くことができるであろう。かかる均等物は、以下のクレームによって包含されることが意図される。
特許文書を含め、本明細書に開示される全ての参考文献は、それらの全体が参照されることによって組み込まれる。本出願は、2011年3月24日に出願されたPCT公開第WO 2011/119887号(出願第PCT/US2011/029867号)、表題「皮膚および線維症の適応におけるRNA干渉」、2009年9月22日に出願されたPCT公開第WO2010/033247号(出願第PCT/US2009/005247号)、表題「低減されたサイズの自己送達型RNAi化合物」、2009年2月11日に出願されたPCT公開第WO2009/102427号(出願第PCT/US2009/000852号)、表題「修飾されたRNAiポリヌクレオチドおよびそれらの使用」、2013年4月4日に出願された米国特許公開第No. US2014/0113950号、表題「皮膚および線維症の適応におけるRNA干渉」、2014年8月5日に特許付与された米国特許第8,796,443号、表題「低減されたサイズの自己送達型RNAi化合物」、2014年3月4日に特許付与された米国特許第8,644,189号、表題「皮膚の適応におけるRNA干渉」および2011年2月17日に公開された米国特許公開第US 2011-0039914号、表題「修飾されたRNAiポリヌクレオチドおよびそれらの使用」の、全ての図面および明細書の全ての部分を含む全内容(配列表またはアミノ酸/ポリヌクレオチド配列を含む)を、参照によって組み込む。
クレームされているものは以下のとおりである: