ところで、上述した従来の特許文献1に開示された溶接装置は、U形のスターラップ筋を移動手段の磁石と本体架台の磁石とにより所定姿勢で保持するものであり、溶接後に移動手段で該スターラップ筋の水平部位を磁着したまま前方へ引っ張ることによって、該スターラップ筋の垂直部位を本体架台の磁石から引き離して前方移動させる。そのため、本体架台の磁石は、少なくとも移動手段による前方へ引っ張る力よりも弱い磁力のものを使用せねばならない。さらに、溶接後に所定ピッチで前方へ移動した後には、移動手段を後方へ移動させて溶接位置まで戻す。この際に、移動手段を後方移動させることで、スターラップ筋の水平部位から該移動手段の磁石を引き離すようにしている。そのため、移動手段の磁石は、少なくとも該移動手段の後方へ移動させる力よりも弱い磁力のものを使用せねばならない。
一方、鉄筋コンクリートの補強用鉄筋には、一般的に、表面に凹凸状のリブや節などを備えた異形断面の棒状のものが用いられる。そして、これら縦筋とスターラップ筋との溶接には、上下の溶接電極により比較的大きな圧力(例えば、300kgf)で挟圧する溶接方法が用いられることから、溶接の際に、該大きな圧力に抗して該スターラップ筋を所定の位置や姿勢で保持することが必要がある。しかしながら、上述した従来の溶接装置(特許文献1に開示されたもの)では、前記のように溶接電極によって比較的大きな圧力がかかったときに、スターラップ筋を保持できずに、該スターラップ筋の位置や姿勢がずれてしまい易い。これは、スターラップ筋を磁石により姿勢保持するようにしていること、および該磁石の磁力が移動手段の移動により離れる程度の力であることから、前記した大きな圧力がかかったときに、異形断面のスターラップ筋を所定位置や姿勢で保てないことに因る。このように上述した従来の特許文献1に開示された溶接装置では、スターラップ筋を所定姿勢で安定して溶接できず、さらには該スターラップ筋のピッチもずれてしまうことから、所望の補強用鉄筋を安定して製造することが難しいという問題があった。
本発明は、異形断面の鉄筋であっても、スターラップ筋と縦筋とを所望の形態で安定して製造し得るコンクリート補強用鉄筋の溶接装置を提案するものである。
本発明は、長尺の縦筋を長手方向に移動可能に支持する縦筋支持手段と、前記縦筋と略直交状に配される横筋部を備えたスターラップ筋を、前記縦筋支持手段に支持された縦筋に該横筋部を溶接する溶接位置で保持し、溶接した該縦筋と共に該スターラップ筋を該溶接位置から前方へ所定距離をおいた離間位置へ移動させる保持移動手段と、前記溶接位置で保持したスターラップ筋の横筋部と前記縦筋とを上下から挟圧して溶接する上下一対の溶接電極を備えた溶接手段とを備えてなるコンクリート補強用鉄筋の溶接装置において、前記保持移動手段は、前記スターラップ筋の横筋部を前後から挟持する挟持状態と、該横筋部を相対的に前方移動可能な開放状態とに変換作動するクランプ装置と、前記クランプ装置を、該スターラップ筋を前記溶接位置とする第一位置と、該スターラップ筋を前記離間位置とする第二位置とに往復移動させるピッチ送り装置と、を備え、さらに、前記第一位置でクランプ装置を挟持状態としてスターラップ筋を前記溶接位置で移動不能に保持する第一制御内容と、該クランプ装置を挟持状態で維持したままでピッチ送り装置により該第一位置から前記第二位置へ往動させる第二制御内容と、該第二位置でクランプ装置を開放状態へ変換してピッチ送り装置により該第一位置へ復動させる第三制御内容とを順次実行する作動制御装置を備えたものであることを特徴とするコンクリート補強用鉄筋の溶接装置である。
ここで、スターラップ筋は、縦筋と略直交状に配される横筋部を少なくとも備えたものであれば良く、該横筋部のみからなる短尺棒状のもの、L形やU形等に折曲されたもの(所謂、閉じない形状のもの)、三角形や四角形等に折曲されたもの(所謂、閉じた形状のもの)が適用され得る。また、本構成にあって、縦筋は、その長手方向がクランプ装置を往復移動させる前後方向に沿うように配される。
かかる構成にあっては、スターラップ筋の横筋部を、該横筋部と略直交する前後方向で挟持するクランプ装置を備えたものであるから、異形断面のクランプ装置で挟持した場合に、上下の溶接電極により比較的大きな圧力で挟圧されても、該スターラップ筋の横筋部が前後方向(縦筋の長手方向)にずれてしまうことを抑制できる。また、スターラップ筋は、横筋部が縦筋の長手方向と直交する方向(以下、横方向という)に配されることから、前後方向に比して、該横筋部に沿った該横方向にずれ難い。そのため、クランプ装置により前記横筋部を前後から挟持することで、スターラップ筋の横方向へのずれも抑制できる。こうしたことから、クランプ装置によりスターラップ筋の横筋部を溶接位置で挟持することによって、溶接電極による比較的大きな圧力で挟圧されても、異形断面のスターラップ筋の位置や姿勢がずれてしまうことを可及的に抑制でき、該溶接位置で該スターラップ筋を安定して保持できる。したがって、本構成によれば、溶接位置でスターラップ筋の横筋部と縦筋とを正確かつ安定して溶接できる。
さらに、本構成は、クランプ装置の挟持状態と開放状態との変換により、スターラップ筋の横筋部の挟持と該挟持解除とを行うものであるから、該クランプ装置による該横筋部の保持と非保持とが明確に切り替わる。これにより、クランプ装置を、挟持状態でスターラップ筋の横筋部を比較的強固に挟持させるものとできるから、溶接電極による比較的大きな圧力で挟圧された際にも該スターラップ筋を安定して保持できるという、上述した本発明の作用効果を向上できる。このように、本発明の構成は、上述した従来の磁石に比して、該スターラップ筋を溶接位置で保持する効果が極めて高いことから、溶接の際に、上下の溶接電極で異形断面のスターラップ筋の横筋部と縦筋とを挟圧しても、該スターラップ筋を所定位置や姿勢で安定して保持でき、これらを所望の形態で安定して溶接できる。
さらに、本構成では、クランプ装置による挟持状態と開放状態との変換作動と、ピッチ送り装置による第一位置(溶接位置)と第二位置(離間位置)との往復作動とを、第一〜第三制御内容に従って順次実行することによって、縦筋にスターラップ筋を溶接して所定距離だけ前方へ送り出す一連の作動が実施される。そのため、この一連の作動(第一〜第三制御内容)を繰り返し実行することによって、縦筋に、その長手方向で所定距離(間隔)をおいて複数のスターラップ筋を溶接することができる。特に、本構成では、第二制御内容によりクランプ装置を挟持状態としたまま第二位置へ移動させて、第三制御内容により該クランプ装置を開放状態へ変換した後に第一位置へ移動させるようにしていることから、溶接位置で溶接された縦筋とスターラップ筋とを、正確に離間位置まで移動させて停止させることができる。そのため、前記のように第一〜第三制御内容を繰り返し実行した場合に、長手方向に並ぶ複数のスターラップ筋を一定間隔で正確に溶接でき、該一定間隔で複数のスターラップ筋が溶接された所望のコンクリート補強用鉄筋を安定して製造でき得る。
上述したコンクリート補強用鉄筋の溶接装置にあって、保持移動手段のクランプ装置は、スターラップ筋の横筋部を後方から支持する後部支持部と、該後部支持部に支持された該横筋部を前方から支持する起立位置と、該起立位置から前方へ傾倒して該横筋部を支持解除し且つ相対的に前方移動可能とする傾倒位置とに傾動可能に設けられた可動支持部と、作動制御装置により作動制御され、前記可動支持部を起立位置と傾倒位置とに位置変換させる駆動装置とを備え、前記可動支持部を起立位置とすることにより挟持状態となり、傾倒位置とすることにより開放状態となるものである構成が提案される。
かかる構成にあっては、挟持状態と開放状態との変換を、可動支持部の起立位置と傾倒位置とへの位置変換作動で実現するものであり、該可動支持部の傾動という比較的単純な作動によって該挟持状態と開放状態とに変換できる。これにより、挟持状態と開放状態とへの変換作動を迅速かつ正確に実行できると共に、該挟持状態や開放状態で安定して保持し易く、該挟持状態とする起立位置で可動支持部を比較的強固に保持できる。そのため、異形断面のスターラップ筋の横筋部と縦筋とを上下の溶接電極で比較的大きな圧力により挟圧しても、該スターラップ筋の位置や姿勢がずれてしまうことを抑制する効果が一層向上する。さらに、こうした比較的強固な挟持状態と開放状態とを迅速に変換できることから、第一制御内容〜第三制御内容をスムーズかつ迅速実行でき、所望のコンクリート補強用鉄筋を製造する生産性を向上できるという優れた利点もある。
上述したコンクリート補強用鉄筋の溶接装置にあって、保持移動手段のピッチ送り装置は、縦筋の長手方向に沿って移動可能に配設され、クランプ装置に連結されたラックギアと、該ラックギアに噛み合わされたピニオンギアと、作動制御装置により作動制御され、該ピニオンギアを正方向または逆方向に回動させる駆動モータとを備え、前記ピニオンギアを回動させることにより、前記ラックギアを介して前記クランプ装置を第一位置と第二位置とに位置変換させるものである構成が提案される。
かかる構成にあっては、クランプ装置の往復移動をラックギアとピニオンギアとの連動により行うものであり、駆動モータによりピニオンギアの回動を制御することによって該クランプ装置を第一位置と第二位置とに正確かつ安定して位置変換することができる。さらに、駆動モータの駆動停止によってクランプ装置を第一位置または第二位置で確実に停止したまま保持できる。これにより、スターラップ筋と縦筋とを溶接位置で正確かつ安定して溶接できると共に、溶接した該スターラップ筋と縦筋とを該溶接位置から離間位置に正確かつ安定して移動させ得る。したがって、本構成のピッチ送り装置によれば、長手方向に並ぶ複数のスターラップ筋を一定間隔で一層正確に溶接でき、該一定間隔で複数のスターラップ筋が溶接された所望のコンクリート補強用鉄筋を一層安定して製造できる。
上述したコンクリート補強用鉄筋の溶接装置にあって、スターラップ筋が、横筋部の少なくとも一端から折曲された側筋部を備えたものであって、保持移動手段は、溶接位置の上方または下方に配設され、該溶接位置で前記スターラップ筋の側筋部を移動不能に挟持する側筋固定装置を備え、前記保持移動手段の作動制御装置は、第一制御内容により、前記側筋固定装置で前記スターラップ筋の側筋部を挟持し、第二制御内容により、該側筋固定装置による該側筋部の挟持を解除してピッチ送り装置でクランプ装置を第一位置から第二位置へ往動させるようにしたものである構成が提案される。
かかる構成にあっては、上述したL形やU形などの閉じない形状のスターラップ筋や、三角形や四角形などの閉じた形状のスターラップ筋を縦筋に溶接する場合に、その側筋部を側筋固定装置で挟持することで、縦筋に対して所望の姿勢で安定して保持できるようにしたものである。そのため、前記形状のスターラップ筋を所望の姿勢で正確かつ安定して縦筋に溶接することできる。さらに、側筋固定装置で側筋部を挟持することから、上記した溶接電極で挟圧されたときにスターラップ筋が横方向にずれてしまうことを抑制する効果が一層向上する。また、溶接後に側筋固定装置による挟持を解除して、クランプ装置を第二位置へ往動させるようにしていることから、溶接したスターラップ筋と縦筋とを溶接位置から該離間位置まで安定して移動させることができる。そのため、複数の前記スターラップ筋を長手方向に並べて溶接する場合に、各スターラップ筋を一定間隔で正確かつ安定して溶接できる。したがって、本構成によれば、前記した閉じない形状および閉じた形状のいずれのスターラップ筋を溶接する場合でも、所望のコンクリート補強用鉄筋を安定して製造できる。
本発明のコンクリート補強用鉄筋の溶接装置によれば、上述したように、クランプ装置でスターラップ筋の横筋部を前後から挟持することから、該スターラップ筋が前後方向にずれてしまうことを抑制できる。これにより、クランプ装置によりスターラップ筋の横筋部を挟持することで、溶接電極により比較的大きな圧力で挟持されても、異形断面のスターラップ筋を所定位置と姿勢で安定して保持できるため、該スターラップ筋の横筋部と縦筋とを溶接位置で正確且つ安定して溶接できる。さらに、溶接したスターラップ筋を離間位置に正確かつ安定して移動させることができるため、複数のスターラップ筋を所定距離をおいて正確に溶接することができ得る。したがって、縦筋に複数のスターラップ筋を溶接した補強用鉄筋を、所望の形態で安定して製造でき得る。
本発明にかかる実施例を添付図面に従って説明する。
本実施例のコンクリート補強用鉄筋の溶接装置1は、図1〜3に示すように、複数の溶接機21が並設された装置本体2と、該装置本体2の後方に配設された縦筋支持台3と、該装置本体2の前方に配設された製品受台4とを備える。縦筋支持台3は、装置本体2に送る長尺の縦筋101を支持するものであり、製品受台4は、装置本体2から送り出されたスターラップ筋102と縦筋101とを支持するものである。尚、本実施例にあって、装置本体2に対して縦筋支持台3の配設側を後方とし、製品受台4の配設側を前方として、前後方向を規定する。そして、この前後方向と略直交する左右の方向を横方向として規定する。
ここで、本実施例にあって、縦筋101は長尺棒状の鉄筋である。また、スターラップ筋102は、棒状の鉄筋を折曲加工された略U形のものであり(図3参照)、横筋部103と該横筋部103の両端から折曲された側筋部104,104とを備えてなる。これら縦筋101とスターラップ筋102とは、一般的な鉄筋コンクリートで使用される異形断面のものであり、表面に凹凸形のリブや節などが形成されている(図示せず)。また、本実施例では、後述するように、所定間隔をおいて平行に並べた三本の縦筋101に、スターラップ筋102の横筋部103を略直交状に差し渡して溶接するものであり、スターラップ筋102の横筋部103の長さが左右両側の縦筋101の間隔よりも長くなるように該スターラップ筋102の寸法と縦筋101の間隔とが夫々設定されている。
装置本体2は、矩形板状の台ベース11と、該台ベース11に立設された本体フレーム12とを備え、該台ベース11に三台の溶接機21が横方向に並んで配設されている。本体フレーム12は、台ベース11の左右両側縁に夫々立設された断面矩形状の支柱13,13と、該支柱13,13の上端部に差し渡された断面矩形状の上部梁14と、該支柱13,13の上下方向略中央部に差し渡された断面矩形状の中部梁15とを備える。さらに、本体フレーム12は、左右の支柱13,13の後方に夫々配設された断面矩形状の支柱16,16を備えており、前記台ベース11の左右両側縁に、支柱13と支柱16とが夫々前後に並んで立設されている。
装置本体2には、三台の溶接機21が横方向に並んで配設されている。各溶接機21は、トランス22と二台の溶接ガン23とを夫々備えており、トランス22が台ベース11に固定されて配設され、二台の溶接ガン23,23が本体フレーム12の中部梁15に横方向へスライド可能に取付られている。そのため、各溶接機21は、夫々の溶接ガン23,23の横方向位置を適宜変更することが可能である。
溶接ガン23は、図4に示すように、中部梁15に、横方向にスライド可能に係合されたガンフレーム24と、ガンフレーム24に配設された二本のエアシリンダ25,25と、ガンフレーム24に配設された上下一対の溶接電極26,26とを備える。さらに、ガンフレーム24には、縦筋支持台3に乗載されて支持された縦筋101を支持する断面略V形の受枠部材20が前後方向に沿って配設されている。この受枠部材20は、水平方向に沿って配設されており、該受枠部材20によって、縦筋支持台3に乗載された長尺の縦筋101を前後方向に沿って配し且つ上下の溶接電極26,26間の溶接位置Pに正確に導くことができる。尚、この受枠部材20は、ガンフレーム24に配設されていることから、溶接ガン23と共に横方向にスライド可能となっている。これにより、溶接ガン23の横方向位置を変えても、受枠部材20で縦筋101を支持することで、当該縦筋101が溶接位置Pに導かれる。
溶接ガン23の上下一対の溶接電極26,26は、上記した受枠部材20の前方の所定位置に配設されており、受枠部材20に支持された縦筋101を上下から挟むことができるように、夫々上下方向に移動可能に設けられている。これら上下の溶接電極26,26は、エアシリンダ25,25から供給される圧力によって昇降動するものであり、該圧力供給により互いに近接する方向に移動し、圧力解除により互いに離間する方向に移動する。これにより、上下の溶接電極26,26は、該溶接電極間で当接させた縦筋101とスターラップ筋102の横筋部103とを挟圧し、溶接後に挟圧解除する。このように縦筋101とスターラップ筋102の横筋部103とを上下一対の溶接電極26,26で挟圧して溶接する位置が、本発明にかかる溶接位置Pである。
ここで、本実施例では、一機の溶接ガン23が、小径のエアシリンダ25,25を前後方向に二台並設しており、大径のエアシリンダを一台配設した場合と同等の圧力を溶接電極26,26にかけることができると共に、該大径のエアシリンダに比して横方向の配設スペースを狭くできる。総じて、溶接ガン23は、その横方向幅を短くできることから(図2,3参照)、二本の縦筋101を比較的狭い間隔で並べた構造にも対応でき、後述のように各縦筋101とスターラップ筋102の横筋部103を正確かつ安定して溶接できる。尚、本実施例にあっては、二個のエアシリンダ25,25によって上下の溶接電極26,26に約300kgfの圧力をかけて、縦筋101とスターラップ筋102の横筋部103とを挟圧できる。また、溶接ガン23は、中部梁15に沿って横方向にスライド可能な状態と、横方向位置を位置決めして該中部梁15に固定する固定状態とに変換できる位置決め機構(図示せず)を備えている。この位置決め機構は、作業者により操作される手動レバーを備え、該手動レバーの操作によって前記スライド可能な状態と固定状態とに変換することで、溶接ガン23を製品に応じた位置に配置できる。
尚、本実施例にあっては、上述したように、二台の溶接ガン23を夫々備えた溶接機21を三台配設したものであることから、同時に六本の縦筋101を配して溶接することが可能である(図2,3参照)。本実施例の溶接機21により、本発明にかかる溶接手段が構成されており、縦筋支持台3および受枠部材20により、本発明にかかる縦筋支持手段が構成されている。
次に、本発明の要部について説明する。
図5に示すように、上述した本体フレーム12には、台ベース11の左右両側で夫々前後に並ぶ支柱13,16に、案内レール31が前後方向に夫々差し渡されている(図3参照)。各案内レール31は、上記した溶接ガン23に配設された受枠部材20よりも上方位置で水平方向に沿うように、支柱13,16の上部に夫々取り付けられている。そして、前後方向に所定長をなすラックギア32が、左右の案内レール31に、前後方向へ移動可能に係合されている。さらに、左右のラックギア32,32には、断面略矩形状の連結杆33が差し渡されている(図3参照)。これにより、左右のラックギア32,32と連結杆33とが一体的に前後方向に移動するようになっている。
これら左右のラックギア32には、ピニオンギア34が夫々噛み合わされている。そして、左右のピニオンギア34,34は、回動軸35に夫々接合されており、一体的に回動する(図2参照)。また、左右一方の支柱16には、該支柱16の外側に、回転駆動装置36が配設されている(図2,3参照)。回転駆動装置36は、図示しないモータと減速機とを備えており、前記回動軸35の一端が該減速機を介して該モータに連結されている。この回転駆動装置36のモータを駆動させることにより、回動軸35を介して左右のピニオンギア34,34が一体的に回動し、これに伴って左右のラックギア32,32と連結杆33とが前後方向に一体的に移動する(図8参照)。
また、上記した連結杆33には、複数のクランプ装置41が横方向に移動可能に夫々係合されている(図2,3参照)。本実施例にあっては、四台のクランプ装置41が連結杆33に係合されている。また、各クランプ装置41には、横方向へ移動可能な状態と該横方向位置を位置決めして移動不能な固定状態とに変換する手動の位置決め機構(図示せず)が夫々設けられており、製品の寸法サイズ(縦筋101の横方向間隔など)に応じて横方向位置を位置決めできる。
クランプ装置41は、連結杆33に係合される基体部42と、該基体部42の前端に設けられた後部支持部43および可動支持部44と、該可動支持部44を傾動させるエアシリンダ45とを備えてなる。ここで、基体部42は、前後方向に延成されてなり、後端上部に連結杆33と係合される係合部46を備え、該連結杆33に係合された後部から前方へ突出するように形成されている。そして、基体部42の前端に設けられた後部支持部43は、後述するように溶接位置Pに配置されたスターラップ筋102の横筋部103を後方から支持する。一方、可動支持部44は、基体部42の前端に前後方向に沿って傾動可能に軸支されており、作動杆47を介して前記エアシリンダ45に連結されている。そして、エアシリンダ45を駆動することによって、可動支持部44が、前記後部支持部43に支持されたスターラップ筋102の横筋部103を前方から支持する起立位置(図7(A))と、該起立位置から前方へ傾動して支持解除すると共に該横筋部103を前方に相対移動可能な傾倒位置(図7(B))とに位置変換される。ここで、可動支持部44を起立位置とした場合には、図6および図7(A)に示すように、後部支持部43により後方から支持されたスターラップ筋102の横筋部103を、該可動支持部44により前方から支持することから、該可動支持部44と該後部支持部43とにより前後から挟持して保持できる。また、可動支持部44を傾倒位置とした場合には、図7(B)に示すように、スターラップ筋102の横筋部103の前方が開放されることから、該横筋部103を前方へ移動可能であると共に後部支持部43(クランプ装置41)を後方へ移動可能である。すなわち、可動支持部44の傾倒位置では、スターラップ筋102の横筋部103が相対的に前方移動可能である。尚、可動支持部44を傾動させる前記エアシリンダ45は、該可動支持部44を起立位置で確実かつ安定して保持できる性能を有するものであり、上記した溶接電極26,26により比較的大きな圧力で挟圧されてもスターラップ筋102の横筋部103を確実に保持できる。
こうしたクランプ装置41は、上述したように連結杆33に係合されたものであることから、図8に示すように、ラックギア32,32と一体的に前後方向に移動する。そして、図8(A)に示すように、クランプ装置41を移動可能な前後方向の後ろ寄りの第一位置F(図4,5参照)とすることで、後部支持部43と起立位置の可動支持部44とにより、スターラップ筋102の横筋部103を、上述した上下の溶接電極26,26により挟圧される溶接位置Pで挟持できる。すなわち、クランプ装置41を前記第一位置Fに位置させることによって、その前端に配設された後部支持部43と可動支持部44とで、スターラップ筋102の横筋部103を前記溶接位置Pで挟持できる。一方、図8(B)に示すように、クランプ装置41を前記第一位置Fの前方の第二位置Gへ往動させることによって、後部支持部43と可動支持部44とで挟持したスターラップ筋102を、前記溶接位置Pから前方へ所定距離をおいた離間位置Tに移動させることができる。そして、クランプ装置41を前記第二位置Gで停止することで、前記スターラップ筋102を前記離間位置Tに位置させる。ここで、溶接位置P(第一位置F)から離間位置T(第二位置G)までの距離が、縦筋101にスターラップ筋102を溶接するピッチ(間隔)に設定されており、当該距離(第一位置Fと第二位置Gとの間隔)をクランプ装置41が前後方向に移動可能とするように、上記したラックギア32,32の長さが定められている。尚、クランプ装置41の第一位置Fと前記溶接位置Pとは、実質的に同義と言えると共に、クランプ装置41の第二位置Gと前記離間位置Tとは、実質的に同義と言える。
このように、クランプ装置41は、回転駆動装置36のモータを正方向(又は逆方向)に回転駆動させることにより、第一位置F(溶接位置P)から第二位置G(離間位置T)まで前方移動する一方、該モータを逆方向(又は正方向)に回転駆動させることにより、第二位置Gにあるクランプ装置41を第一位置Fまで後方移動する。尚、第一位置F(溶接位置P)と第二位置G(離間位置T)との距離は、製品に応じて適宜設定することが可能である。
一方、本体フレーム12の上部梁14には、図1〜3に示すように、四個の側筋固定装置51が横方向に移動可能に夫々係合されている。各側筋固定装置51には、上部梁14に沿って横方向へ移動可能な状態と横方向位置を位置決めして移動不能な固定状態とに変換する手動の位置決め機構(図示せず)が夫々設けられている。さらに、側筋固定装置51は、図4,5に示すように、スターラップ筋102の側筋部104を左右から挟持するハンド部52と、該ハンド部52を作動するエアシリンダ53とを備えている。このハンド部52は、エアシリンダ53によって、側筋部104を左右から挟持して移動不能とする固持状態と、該挟持を解除して移動可能とする解除状態とに変換作動される(図示せず)。また、側筋固定装置51は、上部梁14に対して上下方向へスライド可能とする上下位置変換機構(図示せず)を備えており、ハンド部52とエアシリンダ53との上下方向の高さ位置をスターラップ筋102の形状に応じて適宜変えることが可能である。そして、上下位置変換機構は、ハンド部52とエアシリンダ53とを、縦筋101の上方と下方とにスライド可能であり、縦筋101の上方または下方に位置決めして固定できる。尚、本実施例の上下位置変換機構は、ハンド部52とエアシリンダ53とを、上下方向にスライド可能な状態と上下方向位置を位置決めした固定状態とに手動で変換されるものである。
こうした側筋固定装置51は、左右の二個づつがスターラップ筋102の側筋部104,104の間隔だけ離間させた横方向位置で、上部梁14に位置決めされる(図2,3参照)。尚、側筋固定装置51のエアシリンダ53は、ハンド部52で挟持した側筋部104を移動不能に挟持するものであり、上記した溶接電極26,26により比較的大きな圧力で挟圧された際に、該側筋部104を確実に保持できる性能を有する。
また、本実施例のコンクリート補強用鉄筋の溶接装置1は、図9に示すように、上記した溶接機21、回転駆動装置36、クランプ装置41、および側筋固定装置51を作動制御する作動制御装置61を備えている。作動制御装置61による溶接機21の作動制御として、トランス22を作動制御することで、上下の溶接電極26,26に所定電圧を印加する制御と、溶接ガン23のエアシリンダ25,25を作動制御することで、上下の溶接電極26,26を昇降動する制御とを備える。また、回転駆動装置36の作動制御として、該回転駆動装置36のモータを駆動制御することで、クランプ装置41を前後方向に往復移動させる制御を備える。また、クランプ装置41の作動制御として、エアシリンダ45を作動制御することで、可動支持部44を傾動させる制御を備える。また、側筋固定装置51の作動制御として、エアシリンダ53を作動制御することで、ハンド部52を固持状態と解除状態とに変換する制御を備える。こうした作動制御装置61は、これら各作動制御を所定順序で実行することにより、溶接位置で縦筋101にスターラップ筋102を溶接し、該溶接後に該スターラップ筋102を離間位置へ移動するという一連の作動を実施するものである。
すなわち、溶接位置Pで、前後方向の縦筋101に、スターラップ筋102の横筋部103が該縦筋101に略直交するように当接されて配置されると、作動制御措置61は、第一位置Fに位置するクランプ装置41のエアシリンダ45を作動制御して可動支持部44を起立位置として該横筋部103を後部支持部43とで挟持する(図8(A)参照)と共に、側筋固定装置51のエアシリンダ53を作動制御してハンド部52で当該スターラップ筋102の側筋部104を挟持する。これにより、スターラップ筋102を、その横筋部103が縦筋101と当接し且つ所定の姿勢とした状態で、前記溶接位置Pに保持する。次に、溶接機21のエアシリンダ25,25を作動制御して上下の溶接電極26,26で横筋部103と縦筋101との当接した部分を上下から所定圧力で挟圧する(図8(A)参照)と共に、トランス22を作動制御することで上下の溶接電極26,26に所定電圧を印加する。これにより、スターラップ筋102の横筋部103と縦筋101とを溶接する。この溶接後に、トランス22による前記電圧印加を停止すると共にエアシリンダ25,25を作動制御して上下の溶接電極26,26による挟圧を解除する。さらに、側筋固定装置51のエアシリンダ53を作動制御してハンド部52による側筋部104の挟持を解除した後に、回転駆動装置36を作動制御してクランプ装置41を第一位置Fから第二位置Gまで往動して、該第二位置Gで停止する(図8(B)参照)。これにより、溶接されたスターラップ筋102と縦筋101とを、溶接位置Pから離間位置Tまで前方移動させて、該離間位置Tに位置させる。次に、第二位置Gでクランプ装置41のエアシリンダ45を作動制御して可動支持部44を起立位置から傾倒位置へ位置変換することにより、スターラップ筋102の横筋部103の保持を解除する(図8(B)参照)。これにより、スターラップ筋102を離間位置Tで正確に停止させておくことができる。その後、回転駆動装置36を作動制御してクランプ装置41を第二位置Gから第一位置Fまで復動する。この際に、クランプ装置41の可動支持部44が傾倒位置にあることから、スターラップ筋102を離間位置Tに停止させたまま、クランプ装置41だけが第一位置Fに復帰する。
こうした一連の作動制御を繰り返し実行することによって、縦筋101の長手方向に所定間隔をおいて複数のスターラップ筋102を溶接することができる(図1参照)。
尚、本実施例にあって、ラックギア32、ピニオンギア34、および回転駆動装置36により、本発明にかかるピッチ送り装置が構成されており、該回転駆動装置36のモータにより、本発明にかかる駆動モータが構成されている。また、クランプ装置41のエアシリンダ45により、本発明にかかる駆動装置が構成されている。また、上述した作動制御装置61による作動制御にあって、クランプ装置41の可動支持部44を起立位置とする制御と、側筋固定装置51のハンド部52でスターラップ筋102の側筋部104を挟持する制御とにより、本発明にかかる第一制御内容が実現されている。また、側筋固定装置51のハンド部52による挟持解除の制御と、クランプ装置41を第二位置Gへ往動する制御とにより、本発明にかかる第二制御内容が実現されている。また、クランプ装置41の可動支持部44を傾倒位置とする制御と、該クランプ装置41を第一位置Fに復動する制御とにより、本発明にかかる第三制御内容が実現されている。
次に、上述した本実施例のコンクリート補強用鉄筋の溶接装置1による、縦筋101とスターラップ筋102とからなる補強用鉄筋の溶接過程を、以下に詳述する。
本実施例では、補強用鉄筋として、所定間隔で平行に並べられた三本の縦筋101に、該縦筋101の長手方向に所定ピッチでU形のスターラップ筋102を複数溶接してなるものを製造する。尚、本実施例のコンクリート補強用鉄筋の溶接装置1は、二個の補強用鉄筋を、左右で並行して製造可能であるが、溶接過程は同じであることから、以下の説明では左右の一方について説明する。
溶接装置1では、溶接作業の準備として、各溶接ガン23、クランプ装置41、および側筋固定装置51を、補強用鉄筋を構成する縦筋101とスターラップ筋102との形状寸法に応じて適宜位置決めする(図1〜3参照)。すなわち、左右で隣合う三台の溶接ガン23を、上記した縦筋101の所定間隔をおいて夫々位置決めすると共に、三台の溶接ガン23の間にクランプ装置41を夫々配置して位置決めする。そして、各クランプ装置41は、第一位置Fに位置させ、かつ可動支持部44を傾倒位置としておく。また、二台の側筋固定装置51を、その横方向位置をスターラップ筋102の左右の側筋部104の間隔に合わせて位置決めすると共に、前記溶接位置Pよりも上方の所定高さ位置に位置決めする。ここで、各側筋固定装置51は、そのハンド部52を解除状態としておく。さらに、クランプ装置41の第一位置F(溶接位置P)と第二位置G(離間位置T)との距離が所望のピッチとなるように、作動制御装置61による回転駆動装置36の制御パターンを設定する。
こうした準備を整えた後に、三本の縦筋101を、縦筋支持台3上に並べて乗載し、夫々の前端部を、各溶接ガン23の受枠部材20に支持させて、上記した溶接位置P(各溶接ガン23の上下一対の溶接電極26,26の間)を通過させる。これにより、三本の縦筋101は、夫々の長手方向が前後方向に沿って配置されると共に、溶接位置Pで、水平方向に沿って所定間隔をおいて略平行に配置される(図1〜3参照)。このように縦筋101をセットした状態で、U形のスターラップ筋102を溶接位置Pに配置する。ここで、スターラップ筋102は、側筋部104,104を横筋部103から垂直上方へ突出させた上向きの姿勢で、三本の縦筋101上に載置する(図3参照)。この際に、横筋部103の後部を、各クランプ装置41の後部支持部43に当接させると共に、左右の側筋部104,104を、各側筋固定装置51のハンド部52内に夫々位置させる。これによりスターラップ筋102は、その横方向位置と前後方向位置とが正確に位置決めされて、横筋部103が三本の縦筋101と夫々直交するように差し渡された状態でセットされる。
このようにスターラップ筋102を溶接位置Pにセットすると、作動制御装置61による制御作動を開始する。作動制御装置61が各クランプ装置41のエアシリンダ45を夫々作動制御することにより、夫々の可動支持部44を傾倒位置から起立位置へ変換させて、上記セットしたスターラップ筋102の横筋部103を、図5,図6,図7(A)のように、夫々の後部支持部43と可動支持部44とで前後から挟持する。これと同期して、各側筋固定装置51のエアシリンダ53を夫々作動制御することにより、夫々のハンド部52を解除状態から固持状態へ変換させて、上記したセットしたスターラップ筋102の各側筋部104を夫々挟持する。これにより、スターラップ筋102が所定姿勢で保持される(図1〜5参照)。こうしてスターラップ筋102が溶接位置Pで保持されると、図8(A)のように、各溶接ガン23のエアシリンダ25,25を作動制御して、夫々の上下の溶接電極26,26により、スターラップ筋102の横筋部103と縦筋101とをその当接部位で挟圧する。そして、各溶接機21のトランス22を作動制御して、夫々の上下の溶接電極26,26を所定電圧で印加することにより、スターラップ筋102の横筋部103と縦筋101とをその当接部位で溶接する。ここで、上下の溶接電極26,26により挟圧する際には、上述したように比較的強い圧力(例えば、300kgf)が作用することから、異形断面の縦筋101やスターラップ筋102が該圧力により動こうする。これに対して、クランプ装置41の可動支持部44と後部支持部43とがスターラップ筋102の横筋部103を前後から挟持しているため、前記溶接電極26,26の挟圧で該横筋部103が前後方向へ動いてしまうことを可及的に抑制できる。特に、可動支持部44が、エアシリンダ45によって前記溶接電極26,26の圧力に抗して起立位置で保持され得ることから、前記した前後方向への動きを一層抑制できる。また、横筋部103を可動支持部44と後部支持部43とで挟持することで、該横筋部103の横方向への動きも抑制できる。さらに、スターラップ筋102の側筋部104,104が側筋固定装置51,51により保持されていることから、前記横筋部103の横方向への動きを一層抑制できる。こうしたことから、溶接の際に前記溶接電極26,26により比較的大きな圧力で挟圧されても、異形断面のスターラップ筋102を溶接位置Pで確実かつ安定して保持できる。そして、スターラップ筋102を溶接位置Pでかつ所望の姿勢で縦筋101に溶接できる。
上記した溶接を終了すると、各溶接ガン23のエアシリンダ25,25を作動制御して、夫々の上下の溶接電極26,26を離間させると共に、各溶接機21のトランス32を作動制御して、夫々の上下の溶接電極26,26への電圧印加を停止する。そして、各側筋固定装置51のエアシリンダ53を夫々作動制御することにより、夫々のハンド部52を固持状態から解除状態へ変換させる。その後、回転駆動装置36のモータを駆動制御することにより、各クランプ装置41を第一位置Fから前方へ往動させて、第二位置Gで停止させる。ここで、各クランプ装置41は、可動支持部44が起立位置で保持されままで、第一位置Fから第二位置Gまで移動することから、溶接されたスターラップ筋102と縦筋101とを溶接位置Pから離間位置Tまで一体的に移動させることができる。
そして、第二位置Gで停止させた後に、図8(B)のように、各クランプ装置41のエアシリンダ45を夫々作動制御して、夫々の可動支持部44を起立位置から傾倒位置へ位置変換する。これにより、スターラップ筋102の横筋部103を挟持した状態が解除される。ここで、可動支持部44による挟持解除は、クランプ装置41を第二位置Gで停止した後であることから、スターラップ筋102を離間位置Tに正確に移動させることができると共に該離間位置Tで正確に停止させることができる。この後に、回転駆動装置36のモータを駆動制御することにより、各クランプ装置41を第二位置Gから後方へ復動させて、第一位置Fで停止させる。これにより、各クランプ装置41を元の第一位置Fに復帰させる。尚この復動の際に、前記のようにクランプ装置41の可動支持部44が傾倒位置にあることから、溶接されたスターラップ筋102は離間位置Tで停止したままとなる。
このように溶接位置Pにセットしたスターラップ筋102を保持する作動から、溶接後に第二位置G(離間位置T)へ移動させて、再び第一位置Fに復帰させる作動までの一連の作動を実行することによって、該スターラップ筋102を縦筋101に溶接すると共に該スターラップ筋102を溶接位置Pから所定距離だけ離間させることができる。そのため、こうした一連の作動を繰り返し実行することにより、縦筋101の長手方向に所定ピッチをおいて複数のスターラップ筋102を順次溶接できることから、上記した所望の補強用鉄筋を製造することができる。
本実施例のコンクリート補強用鉄筋の溶接装置1にあっては、上述したように、溶接の際に異形断面のスターラップ筋102を溶接位置Pで安定して保持できることから、該スターラップ筋102を所定位置と姿勢とで正確かつ安定して縦筋101に溶接できる。これは、スターラップ筋102の横筋部103をクランプ装置41の可動支持部44と後部支持部43とにより前後から挟持していることや、該スターラップ筋102の側筋部104,104を側筋固定装置51により挟持していること等に因る。また、クランプ装置41による横筋部103の挟持状態と開放状態との変換作動と、側筋固定装置51による側筋部104の固持状態と解除状態との変換作動と、該クランプ装置41の第一位置Fと第二位置Gとへの往復移動とを、夫々関連付けて作動制御していることから、溶接位置Pで異形断面のスターラップ筋102と縦筋101とを所望の形態で正確かつ安定して溶接できると共に、溶接したスターラップ筋102と縦筋101とを所定ピッチで前方へ正確に移動できる。これにより、複数のスターラップ筋102を縦筋101の長手方向に所定ピッチで正確かつ安定して溶接でき、所望のコンクリート補強用鉄筋を安定して製造できる。
尚、上述した従来構成(特許文献1)では、スターラップ筋を永久磁石で磁着して保持し、移動手段の移動により該永久磁石を引き離して保持解除することから、溶接位置で上下の溶接電極の圧力により位置や姿勢がずれてしまう虞があると共に、スターラップ筋を移動して停止する位置がずれ易く、複数のスターラップ筋を所定ピッチで正確に溶接することが難しい。そのため、この従来構成では、所望の補強用鉄筋を安定して製造することが難しい。こうした従来構成による問題点を、上述した本実施例では生じず、補強用鉄筋の生産効率を飛躍的に向上できるという優れた効果を奏する。
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、これら実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
例えば、本実施例では、U形のスターラップ筋102を、上向きに開放した姿勢で溶接するようにしたが、当該スターラップ筋102を、下向きに開放した姿勢で縦筋101に溶接するようにしても良い。ここで、スターラップ筋102を下向き開放した姿勢とすると、横筋部103から側筋部104,104が下方へ垂下された状態となるため、縦筋101が側筋部104,104の内側に位置して該横筋部103に溶接される。こうした下向き開放した姿勢でスターラップ筋102を溶接する場合には、側筋固定装置51,51を縦筋101の下方へ移動させて位置決めすることにより、上記実施例と同様に、側筋部104,104を夫々のハンド部52により挟持できる。このようにスターラップ筋102を下向き姿勢で溶接する場合であっても、本実施例の溶接装置1は、その溶接機21、クランプ装置41、側筋固定装置51などが溶接位置の直下または該溶接位置Pよりも後方に配置されていることから、該スターラップ筋102を該溶接位置Pから離間位置Tへ移動させる際に、該移動を妨げないという優れた利点もある。このように本実施例の構成によれば、U形のスターラップ筋102を上向き又は下向きのいずれの姿勢でも、正確かつ安定して溶接することができる。
また、本実施例の構成は、U形のスターラップ筋102に限らず、L形のスターラップ筋、三角形や四角形などのスターラップ筋、および横筋部のみからなる短尺棒状のスターラップ筋を溶接することもでき、いずれのスターラップ筋でもU形と同様に正確かつ安定して溶接できる。尚、側筋固定装置51は、スターラップ筋の形態に応じて、適宜選択して使用可能であり、該スターラップ筋の形態に合わせて横方向や上下方向の各位置を定めることで、該スターラップ筋を所望の姿勢で保持できる。