以下、実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1〜図5に基づいて本実施形態にかかる電磁調量弁、電磁調量弁を含む高圧燃料ポンプ、および、高圧燃料ポンプを含む燃料供給システムを説明する。
(燃料供給システム)
燃料供給システム200は、内燃機関の燃焼室に高圧燃料を噴射する。図1に示すように燃料供給システム200は、燃料タンク110、低圧燃料ポンプ120、高圧燃料ポンプ100、および、制御装置130を有する。この他に燃料供給システム200は、図示しないコモンレールと燃料噴射装置を有する。
燃料タンク110は燃料を貯留する。燃料タンク110に低圧燃料ポンプ120が設けられている。
低圧燃料ポンプ120は内燃機関の出力軸に連動して駆動する。低圧燃料ポンプ120は燃料タンク110内の燃料をくみ出す。低圧燃料ポンプ120は第1燃料配管141を介して高圧燃料ポンプ100と連結されている。低圧燃料ポンプ120でくみ出された燃料は第1燃料配管141を介して高圧燃料ポンプ100に供給される。
第1燃料配管141は第2燃料配管142を介して燃料タンク110と連結されている。第2燃料配管142には戻し弁142aが設けられている。第1燃料配管141の圧力が上昇すると戻し弁が開状態になる。これにより第1燃料配管141の燃料が第2燃料配管142を介して燃料タンク110に戻される。第1燃料配管141の圧力が下がり、戻し弁は閉状態になる。このように戻し弁と第2燃料配管142とによって、第1燃料配管141の圧力の上昇が抑えられている。
高圧燃料ポンプ100はカムシャフト300に連動して駆動する。高圧燃料ポンプ100は低圧燃料ポンプ120から供給された燃料を圧縮して高圧にする。高圧燃料ポンプ100は第3燃料配管143を介してコモンレールと連結されている。高圧燃料ポンプ100で圧縮された高圧の燃料(高圧燃料)は第3燃料配管143を介してコモンレールに供給される。
高圧燃料ポンプ100は第4燃料配管144を介して燃料タンク110に連結されている。高圧燃料ポンプ100からコモンレールに供給されなかった余分な燃料は第4燃料配管144を介して燃料タンク110に戻される。
コモンレールは高圧燃料ポンプから供給された高圧燃料を内部に貯留する。コモンレールは貯留した内部の燃料の圧力を一定に保持する。コモンレールは複数の燃料噴射装置それぞれと連結されている。コモンレールは複数の燃料噴射装置それぞれに高圧燃料を分配する。燃料噴射装置はコモンレールから供給された高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴射する。
制御装置130は、低圧燃料ポンプ120、高圧燃料ポンプ100、コモンレール、および、燃料噴射装置それぞれを制御する。制御装置130は低圧燃料ポンプ120が高圧燃料ポンプ100に供給する燃料の容量を制御する。制御装置130は高圧燃料ポンプ100がコモンレールに供給する高圧燃料の容量を制御する。制御装置130はコモンレールが保持する圧力の圧力値を制御する。制御装置130は燃料噴射装置が燃料を噴射するタイミングや燃料を噴射する時間を制御する。
制御装置130には各種センサの信号が入力される。これら各種センサは、例えば、内燃機関の回転速度を検出する回転速度センサ、および、吸入吸気量を検出するエアフロセンサである。過給圧を検出する過給圧センサ、冷却水温を検出する水温センサ、および、潤滑油の油温を検出する油温センサである。さらに言えば、燃料噴射装置の燃料の圧力と温度を検出する燃圧センサと温度センサなどである。
制御装置130は、これら各種センサの信号に基づいて、車両の運転状況に適した各種目標値を算出する。すなわち制御装置130は、低圧燃料ポンプ120から高圧燃料ポンプ100に供給する燃料の容量の目標値を算出する。制御装置130は高圧燃料ポンプ100からコモンレールに供給する高圧燃料の容量の目標値を算出する。制御装置130はコモンレールが保持する圧力の目標値を算出する。制御装置130は燃料噴射装置の燃料噴射タイミングや燃料噴射時間の目標値を算出する。制御装置130は算出したこれら目標値に基づいて、低圧燃料ポンプ120、高圧燃料ポンプ100、コモンレール、および、燃料噴射装置それぞれを制御する。
(高圧燃料ポンプ)
次に、高圧燃料ポンプ100を説明する。図1に示すように高圧燃料ポンプ100は、シリンダ10、プランジャ20、電磁調量弁30、および、チェックバルブ90を有する。シリンダ10にはプランジャ20の設けられるポンプ室11が形成されている。また図2に示すようにシリンダ10には燃料の流動する燃料供給路12が形成されている。ポンプ室11と燃料供給路12とは連通している。
シリンダ10には、ポンプ室11から燃料を吐出するための吐出孔13が形成されている。吐出孔13は第3燃料配管143と連通している。これによりポンプ室11内の燃料は、吐出孔13を介して第3燃料配管143に供給可能となっている。
ポンプ室11は2つの開口を有する。ポンプ室11の一方の開口端にプランジャ20が設けられている。プランジャ20は柱形状を成す。プランジャ20の軸方向まわりの周方向において、プランジャ20の側壁面とポンプ室11を構成する内壁面とが全周にわたって接触している。これよりプランジャ20は自身の軸方向に摺動可能になっている。
ポンプ室11の他方の開口端側の内壁面と、この内壁面と軸方向で対向するプランジャ20の上端面とによってプランジャ室14が区画されている。プランジャ室14は1つの開口端を有する。この1つの開口端はポンプ室11の他方の開口端に相当する。後述するようにプランジャ室14の開口端に電磁調量弁30の弁体31が設けられる。
プランジャ20は内燃機関のカムシャフト300と連動している。カムシャフト300の回転に応じて、プランジャ20は2つの上記開口端の間でポンプ室11内を摺動する。これによりプランジャ室14の容積が変動する。換言すれば、プランジャ室14内の燃料の容量が変動する。このプランジャ20が摺動する方向(軸方向)が、摺動方向に相当する。
以下においては、軸方向において、ポンプ室11の一方の開口端側を下方と示す。言いかえると、カムシャフト300側を下方と示す。またポンプ室11の他方の開口端側、すなわちプランジャ室14の開口端側を上方と示す。言いかえると、後述する電磁調量弁30のステータコア38側を上方と示す。
(電磁調量弁の概要)
図2に示すように電磁調量弁30は、弁体31、メインスプリング32、および、ソレノイドコイル33を有する。弁体31はプランジャ室14の開口端に挿入されている。これにより弁体31の先端はプランジャ室14内に設けられている。弁体31の先端とは反対側の端部はプランジャ室14の外側に設けられている。
弁体31は、メインスプリング32の付勢力によってプランジャ室14の内側へと付勢されている。これにより、弁体31の先端とプランジャ室14を構成する内壁面とが軸方向で離間している。プランジャ室14と燃料供給路12とが連通している。プランジャ室14と燃料供給路12との間での燃料の流動が可能になっている。
しかしながら制御装置130によってソレノイドコイル33に駆動電流が流されると、その駆動電流によって弁体31の端部を通過する磁界(磁気回路)が形成される。この磁気回路により、弁体31はプランジャ室14の外側へと移動する。この際、弁体31の先端とプランジャ室14を構成する内壁面とが接触する。これによりプランジャ室14と燃料供給路12とが非連通になる。プランジャ室14と燃料供給路12との間での燃料の流動が遮られる。
図2に示すようにチェックバルブ90は閉塞弁91と閉塞スプリング92を有する。吐出孔13の径は、プランジャ室14から遠ざかると局所的に広がる。この径の広がりによって形成された吐出孔13の小室内に閉塞弁91と閉塞スプリング92が設けられている。
吐出孔13の小室は2つの連通口を有する。小室の一方の連通口はプランジャ室14側に開口している。小室の他方の連通口は第3燃料配管143側に開口している。閉塞弁91は、小室のプランジャ室14側の連通口に、閉塞スプリング92の付勢力によって押し付けられている。これによりプランジャ室14と小室との連通が遮断されている。すなわち、吐出孔13を介したプランジャ室14と第3燃料配管143との連通が遮断されている。しかしながら後述するようにプランジャ室14内の圧力が上昇すると、それによって閉塞弁91は閉塞スプリング92の付勢力に抗して小室の連通口から離れる。これによりプランジャ室14と小室とが連通される。すなわちプランジャ室14と第3燃料配管143とが吐出孔13を介して連通される。
なお吐出孔13のプランジャ室14における開口位置は、プランジャ20が最も上方に移動した際のプランジャ20の上端面よりも上方に位置している。これによりプランジャ20による吐出孔13の閉塞が避けられている。
(電磁調量弁30の構成)
次に、本実施形態にかかる電磁調量弁30の詳細構成を図2〜図4に基づいて説明する。またそれにあたって、高圧燃料ポンプ100の電磁調量弁30にかかわる要素についても説明する。以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。また、x方向とy方向とによって規定される平面を規定平面と示す。
上記したように高圧燃料ポンプ100は、シリンダ10、プランジャ20、電磁調量弁30、および、チェックバルブ90を有する。シリンダ10には、上記したポンプ室11、燃料供給路12、および、吐出孔13の他に、第1弁室15が形成されている。また電磁調量弁30は第2弁室55を有している。z方向において、下方から上方に向かって、ポンプ室11、燃料供給路12、第1弁室15、および、第2弁室55が順に並んでいる。第1弁室15が燃料貯留室と弁室に相当する。第2弁室55がアーマチャ室に相当する。
ポンプ室11は2つの開口を有する柱形状を成す。ポンプ室11の軸方向はz方向に沿っている。プランジャ20は柱形状を成している。プランジャ20の軸方向もz方向に沿っている。ポンプ室11の軸方向まわりの周方向において、プランジャ20の側壁面20aとポンプ室11を構成する内壁面11aとは、プランジャ20がポンプ室11の軸方向に摺動できるように全周にわたって接触している。
ポンプ室11の他方の開口端と、プランジャ20の上端面20bとがz方向で対向している。このプランジャ20の上端面20bと、上端面20bよりも上方のポンプ室11の内壁面11aとによってプランジャ室14が区画されている。
シリンダ10は第1ボディ16と第2ボディ17を有する。z方向において第1ボディ16は第2ボディ17よりも下方に位置している。第1ボディ16にポンプ室11と燃料供給路12が形成されている。第1ボディ16と第2ボディ17とによって第1弁室15が構成されている。そして第2ボディ17の上方に第2弁室55が位置している。なお第2ボディ17はシリンダ10にではなく電磁調量弁30に含まれてもよい。
図2に示すように第1ボディ16と第2ボディ17とはかしめや溶接によって互いに連結されている。そして第1ボディ16における第2ボディ17との連結部位側には、z方向において下方に凹む凹部が形成されている。この凹部は、規定平面に広がる内下面16aと、内下面16aから上方に向かって環状に屹立する第1内側面16bとによって区画されている。また第2ボディ17における第1ボディ16との連結部位側には、z方向において上方に凹む凹部が形成されている。この凹部は、z方向で内下面16aと対向する内上面17aと、内上面17aから下方に向かって環状に屹立する第2内側面17bとによって区画されている。以上に示した内下面16a、第1内側面16b、第2内側面17b、および、内上面17aによって第1弁室15が構成されている。
また第1ボディ16にはz方向に貫通する第1貫通孔16cが形成されている。第2ボディ17にはz方向に貫通する第2貫通孔17cが形成されている。第1貫通孔16cと第2貫通孔17cとはz方向で並んでいる。これら第1貫通孔16cと第2貫通孔17cとにより、プランジャ室14、燃料供給路12、第1弁室15、および、第2弁室55それぞれが連通している。以上により、シリンダ10には、プランジャ室14、燃料供給路12、第1貫通孔16c、第1弁室15、第2貫通孔17c、および、第2弁室55を連通する、z方向に延びた連通孔が構成されている。この連通孔に弁体31が設けられる。第2貫通孔17cが貫通孔に相当する。
電磁調量弁30は、上記したように弁体31、メインスプリング32、および、ソレノイドコイル33を有する。これらの他に電磁調量弁30は、連結部34、サブスプリング35、ベース36、スペーサ37、ステータコア38、ハウジング39、コネクタ40、および、ナット41を有する。
弁体31は、吸入弁42とアーマチャ43を有する。吸入弁42とアーマチャ43はそれぞれz方向に延びた柱状を成している。吸入弁42とアーマチャ43とは別体である。
吸入弁42の先端はプランジャ室14内に設けられている。吸入弁42の先端とは反対側の端部は第1弁室15内に設けられている。アーマチャ43の先端も第1弁室15内に設けられている。吸入弁42の端部とアーマチャ43の先端とはz方向で対向している。アーマチャ43の先端とは反対側の端部は第2弁室55内に設けられている。
吸入弁42は第1先端部44と第1柱部45を有する。第1先端部44と第1柱部45とはz方向に並び、互いに一体的に連結されている。そして第1先端部44は第1柱部45よりも規定平面の径が長くなっている。第1先端部44の全てがプランジャ室14内に設けられている。第1柱部45は燃料供給路12、第1貫通孔16c、および、第1弁室15に設けられている。吸入弁42のz方向の移動により、第1柱部45における第1先端部44との連結端は、プランジャ室14を入出する。
第1先端部44はプランジャ室14の開口端よりも規定平面の径が長くなっている。第1先端部44の上面44aの中央に第1柱部45が一体的に連結されている。したがって第1先端部44の上面44aは環状を成している。この第1先端部44の上面44aが、内壁面11aにおけるプランジャ室14の開口端側の環状の上内面11bとz方向で対向している。そしてこの上面44aはz方向において第1先端部44から第1柱部45側へと向かうにしたがって徐々に径が狭まるように傾斜したテーパ形状を成している。上内面11bはプランジャ室14の内側から開口端へと向かうにしたがって徐々に径が狭まるように傾斜したテーパ形状を成している。この吸入弁42のテーパ状の上面44aとプランジャ室14のテーパ状の上内面11bとが全面的に接触する。これによりプランジャ室14が吸入弁42によって閉塞される。上内面11bが壁面に相当する。
第1柱部45における燃料供給路12と第1弁室15とを連通する第1貫通孔16cを入出する部位には、切断面がz方向に延びる第1切欠き45aが3つ形成されている。この第1切欠き45aにより、第1柱部45と第1貫通孔16cを構成する壁面との間にz方向に延びる空隙が形成されている。この空隙により、第1貫通孔16cに弁体31が設けられている状態において、燃料供給路12と第1弁室15とが連通している。
第1柱部45における第1弁室15に設けられる部位には、ストッパ46が設けられている。ストッパ46は吸入弁42よりも低硬度の材料から成る。ストッパ46は第1筒部47と第1環状部48を有する。第1筒部47は筒形状を成し、その軸方向はz方向に沿っている。第1環状部48はその名のとおり環状を成し、z方向に開口している。第1筒部47と第1環状部48それぞれの軸方向は、第1柱部45の軸方向と規定平面において一致している。第1筒部47と第1環状部48とは一体物である。第1筒部47と第1環状部48は、図4に示すように第1柱部45における第1弁室15に設けられる部位の端部45bの側面にかしめによって固定されている。
第1筒部47の一端47aは第1ボディ16の内下面16aとz方向で対向している。吸入弁42がz方向においてプランジャ室14側へ移動すると、第1ボディ16の内下面16aに第1筒部47の一端47aが接触する。このように吸入弁42のz方向におけるプランジャ室14側への変位が第1筒部47によって規制される。この結果、第1先端部44の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとのz方向における離間距離が規制される。なお図示しないが第1筒部47の一端47aには、規定平面に沿う方向に延びる連通孔が4つ形成されている。この連通孔を介して、第1筒部47の中空とその外とが連通している。
第1環状部48は第1筒部47の一端47aとは反対の他端側に連結されている。第1環状部48は第1筒部47よりも外径が大きい。そのため第1環状部48の規定平面に沿う下面48aはz方向において第1ボディ16の内下面16aと対向している。この第1環状部48と第1ボディ16との間にサブスプリング35が設けられている。
サブスプリング35は線形状の弾性材料がz方向にらせん状に巻き回されて成るスプリングコイルである。サブスプリング35の中空に第1柱部45と第1筒部47が挿入されている。サブスプリング35は第1柱部45と第1筒部47の周囲を囲んでいる。サブスプリング35はz方向において第1ボディ16と第1環状部48との間に位置する。サブスプリング35の一端は第1ボディ16の内下面16aに接触している。サブスプリング35の他端は第1環状部48の下面48aに接触している。後述するようにサブスプリング35は、メインスプリング32の付勢力によって第1ボディ16と第1環状部48との間で挟持されている。そのため、サブスプリング35はz方向においてサブスプリング35から離れる方向に付勢力を発生している。
アーマチャ43は押圧部49と台座部50を有する。押圧部49は台座部50よりも高硬度の材料から成る。押圧部49と吸入弁42とは同一材料から成る。台座部50は軟磁性体から成る。押圧部49は柱形状を成し、その軸方向はz方向に沿っている。台座部50は環状を成し、z方向に開口している。押圧部49と台座部50それぞれの軸方向は、規定平面において一致している。
押圧部49は台座部50よりもz方向の長さが長くなっている。また規定平面において押圧部49の径と台座部50の内径とはほぼ等しくなっている。押圧部49の一端が台座部50の中空内に設けられている。押圧部49と台座部50とは連結されている。
押圧部49は第2先端部51と第2柱部52を有する。第2先端部51と第2柱部52とはz方向に並び、互いに一体的に連結されている。第2先端部51の全てが第1弁室15内に設けられている。第2柱部52は第1弁室15、第2貫通孔17c、および、第2弁室55に設けられている。第2柱部52が中央部に相当する。
第2先端部51は第2柱部52よりも規定平面の径が長くなっている。第2先端部51の上面51aの中央に第2柱部52が一体的に連結されている。したがって第2先端部51の上面51aは環状を成している。
第2柱部52における第2貫通孔17cを入出する部位には、切断面がz方向に延びる第2切欠き52aが3つ形成されている。この第2切欠き52aにより、第2柱部52と第2貫通孔17cを構成する壁面との間にz方向に延びる空隙が形成されている。この空隙により、第2貫通孔17cに弁体31が設けられている状態において、第1弁室15と第2弁室55とが連通している。
台座部50は第2柱部52における第2弁室55に設けられる部位に連結されている。そのため台座部50の全てが第2弁室55内に設けられている。台座部50の規定平面の外径は第2貫通孔17cの径より長くなっている。そのため台座部50の環状を成す下面50aが第2ボディ17の内上面17aとは反対側の外上面17dとz方向で対向している。外上面17dが壁部のアーマチャ室側の上面に相当する。
外上面17dには環状のシール部17eが形成されている。このシール部17eは第2貫通孔17cの外上面17dにおける開口部を囲むように形成されている。シール部17eのz方向の高さは全周で同一である。このシール部17eの環状の上面は台座部50の下面50aとz方向で対向している。弁体31のz方向の移動によって、シール部17eの上面と台座部50の下面50aとが全面的に接触する。
また図2に示すように第2ボディ17には、外上面17dと第2内側面17bとを連通する常時連通孔17fが形成されている。常時連通孔17fは外上面17dにおいてシール部17eによって囲まれた領域の外に開口している。また常時連通孔17fは第2内側面17bにおけるストッパ46との対向領域に開口している。第2ボディ17が壁部に相当する。
以上により、弁体31のz方向の移動によって、シール部17eの上面と台座部50の下面50aとの全面的な接触が解除されると、常時連通孔17fを介して第2弁室55と第1弁室15とが連通される。この結果、第2弁室55が燃料供給路12と連通される。逆に、シール部17eの上面と台座部50の下面50aとが全面的に接触すると、常時連通孔17fを介した第2弁室55と第1弁室15との連通が断たれる。
なお台座部50にはz方向に貫通する孔50bが複数形成されている。第2弁室55は燃料で満たされるが、この孔50bにより燃料の抵抗によって台座部50のz方向の移動が困難となることが抑制されている。
連結部34は吸入弁42とアーマチャ43とを間接的に連結する機能を果たす。連結部34は第2筒部53と第2環状部54を有する。第2筒部53は筒形状を成し、その軸方向はz方向に沿っている。第2環状部54はその名のとおり環状を成し、z方向に開口している。第2筒部53と第2環状部54それぞれの軸方向は、第2柱部52の軸方向と規定平面において一致している。第2筒部53と第2環状部54とは一体物である。第2環状部54の外径は第2筒部53の内径と同一である。第2環状部54は第2筒部53の有する2つの開口部のうちの上方側の開口部に設けられている。この結果、第2筒部53の上方側の開口面積は下方側の開口面積よりも狭くなっている。
図2に示すように連結部34の中空に押圧部49が挿入されている。すなわち、第2筒部53の中空に第2先端部51が設けられている。第2環状部54の中空に第2柱部52が設けられている。第2筒部53と第2先端部51とがz方向で対向している。本実施形態では第2筒部53と第2先端部51とは互いに接触している。また第2筒部53の一端53aがストッパ46の第1環状部48の上面48bと接触している。連結部34については後で詳説する。
メインスプリング32は線形状の弾性材料がz方向にらせん状に巻き回されて成るスプリングコイルである。メインスプリング32は第1弁室15に位置する。メインスプリング32はz方向において連結部34と第2ボディ17との間に位置する。メインスプリング32の中空に第2柱部52が挿入されている。メインスプリング32は第2柱部52の周囲を囲んでいる。
内上面17aには環状のシム17gが形成されている。シム17gは第2貫通孔17cの内上面17aにおける開口部を囲むように形成されている。シム17gのz方向の高さは全周で同一である。シム17gの環状の下面は連結部34の第2環状部54の上面54aとz方向で対向している。
メインスプリング32の一端はシム17gの下面と接触している。メインスプリング32の他端は連結部34の第2環状部54の上面54aと接触している。上記したように連結部34はストッパ46と接触している。そしてストッパ46は第1ボディ16の内下面16aと接触している。以上により、メインスプリング32は連結部34とストッパ46とを介して第1ボディ16と第2ボディ17とによって挟持されている。そのためにメインスプリング32は、z方向においてメインスプリング32から離れる方向に付勢力を発生している。
なお、シム17gの高さは、メインスプリング32のシリンダ10への組み付け時に決定される。これによりメインスプリング32のz方向の弾性変形具体が調整される。シム17gの高さは、複数の高さの異なるシム17gを用意しておき、所望のメインスプリング32の付勢力にあったものを第2ボディ17に組み付けることで決定することができる。若しくは、予め第2ボディ17に形成しておいたシム17gを削ることで高さを決定してもよい。
上記したようにストッパ46は吸入弁42に連結されている。したがって吸入弁42には、内下面16aへと向かうメインスプリング32の付勢力がストッパ46を介して付与されている。
またストッパ46と第1ボディ16との間にサブスプリング35が設けられている。上記の内下面16aへと向かうメインスプリング32の付勢力により、サブスプリング35はストッパ46の第1環状部48と第1ボディ16との間で挟持される。これによりサブスプリング35はz方向においてサブスプリング35から離れる方向に付勢力を発生する。この結果、ストッパ46の連結された吸入弁42に、内上面17aへと向かう付勢力がサブスプリング35から付与される。
以上に示したように、吸入弁42には連結部34とストッパ46とを介して下方へと向かう付勢力がメインスプリング32から付与される。吸入弁42にはストッパ46を介して上方へと向かう付勢力がサブスプリング35から付与される。このように吸入弁42に対するメインスプリング32とサブスプリング35の付勢力の付与方向はz方向において互いに逆向きである。なお、連結部34に付与されるメインスプリング32とサブスプリング35の付勢力の付与方向もz方向において互いに逆向きである。
また、上記したように連結部34の第2環状部54とアーマチャ43の第2先端部51の上面51aとが接触している。したがってアーマチャ43には、内下面16aへと向かうメインスプリング32の付勢力が付与されている。
メインスプリング32は上記のサブスプリング35よりも付勢力が大きく設定されている。そのため、図2に示すように、連結部34と接触しているアーマチャ43はメインスプリング32の付勢力によって下方に付勢され、台座部50の下面50aがシール部17eと接触している。また連結部34と接触しているストッパ46はメインスプリング32の付勢力によって下方に付勢され、ストッパ46の第1筒部47の一端47aが内下面16aと接触している。ストッパ46の連結された吸入弁42も同様にして下方に付勢され、第1先端部44の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとがz方向で離れている。これによりプランジャ室14と燃料供給路12とが連通している。
図2に示すように、ソレノイドコイル33、ベース36、スペーサ37、ステータコア38、ハウジング39、コネクタ40、および、ナット41それぞれは第2ボディ17の上方に設けられている。
ベース36とスペーサ37それぞれは筒形状を成している。ベース36とスペーサ37それぞれはz方向に開口している。ベース36とスペーサ37それぞれの軸方向は、第2柱部52の軸方向と規定平面において一致している。ベース36とスペーサ37の規定平面における内径は同一である。ベース36は第2ボディ17の外上面17dに設けられている。これによりベース36の有する2つの開口のうちの一方は第2ボディ17によって閉塞されている。スペーサ37はベース36の残りの開口を構成する端部に設けられている。ベース36とスペーサ37それぞれの中空はz方向で連通している。ベース36とスペーサ37それぞれの内面はz方向において連なっている。
ステータコア38は柱状を成す。ステータコア38はスペーサ37におけるベース36との連結端の反対側の端部に設けられている。ステータコア38はスペーサ37の開口を塞いでいる。以上により、第2ボディ17の外上面17dの上方に、ベース36、スペーサ37、および、ステータコア38によって第2弁室55が構成されている。
外上面17dにおけるベース36によって囲まれた領域に第2貫通孔17cと常時連通孔17fそれぞれが開口し、シール部17eが形成されている。したがって、第2弁室55に第2貫通孔17cと常時連通孔17fそれぞれが開口している。第2弁室55にシール部17eが位置している。第2弁室55内にアーマチャ43の台座部50と台座部50の固定された第2柱部52の端部が設けられている。
ソレノイドコイル33はz方向まわりの周方向で第2弁室55を囲んでいる。このソレノイドコイル33は樹脂からなるハウジング39によってコネクタ40とともに第2ボディ17に固定されている。コネクタ40はソレノイドコイル33と制御装置130とを電気的に接続する機能を果たしている。ナット41はステータコア38とともにコネクタ40とハウジング39を第2ボディ17に固定している。以上により、第2ボディ17の上方に、ソレノイドコイル33、ベース36、スペーサ37、ステータコア38、ハウジング39、コネクタ40、および、ナット41が設けられている。
ベース36とステータコア38は台座部50と同様にして軟磁性体から成る。これに対してスペーサ37は非磁性材料から成る。したがって、ソレノイドコイル33にコネクタ40を介して制御装置130から駆動電流が供給されると、ベース36、台座部50、および、ステータコア38を通る磁気回路が形成される。この磁気回路が形成されると、台座部50に上方に向かう電磁力が発生する。
この電磁力の発生により、図3に示すようにアーマチャ43は上方に移動する。このアーマチャ43の移動により連結部34も移動する。これに伴い吸入弁42も上方に移動する。この結果、吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとが全面的に接触する。これによりプランジャ室14が閉塞される。
プランジャ室14が閉塞された状態において、カムシャフト300の回転によってプランジャ20が上昇すると、プランジャ室14の圧力が上昇する。プランジャ室14の圧力上昇によって、閉塞弁91は閉塞スプリング92の付勢力に抗して吐出孔13の連通口から離れる。この結果、プランジャ室14の燃料が吐出孔13を介して第3燃料配管143に吐出される。
(連結部)
次に、図4に基づいて連結部34を詳説する。上記したように連結部34は第2筒部53と第2環状部54を有する。第2筒部53の外径は第1弁室15の規定平面における幅と同等になっている。第2筒部53の外側面53bは第1弁室15の一部を区画する第2内側面17bと接触している。第2筒部53の外側面53bと第2ボディ17の第2内側面17bとは摺動できる程度に接触している。
第2筒部53の内径は第2先端部51の径よりも長くなっている。しかしながら第2環状部54の内径は第2先端部51の径よりも短くなっている。第2筒部53の中空に第2先端部51が挿入されている。第2環状部54の下面54bに第2先端部51の上面51aが接触している。
第2環状部54の内径は第2柱部52の径と同等となっている。第2環状部54に第2柱部52が挿入されている。第2環状部54の内周面54cと第2柱部52の側面52bとが接触している。内周面54cと側面52bとは摺動できる程度に接触している。ただし、内周面54cと側面52bとは、外側面53bと第2内側面17bよりも摺動し難い程度に接触している。したがって内周面54cと側面52bとの間の隙間を介した燃料の流動は抑制されている。
以上の構成により、第1ボディ16と第2ボディ17とによって区画される第1弁室15は、連結部34を境として2つの空間に分けられている。すなわち第1弁室15は、連結部34よりも下方に位置する下方弁室と、上方に位置する上方弁室と、に分けられている。この上方弁室は、シール部17eの上面と台座部50の下面50aとが全面的に接触している状態では密閉状態となり、燃料を貯留する役割を果たす。以下においては上方弁室を燃料貯留室56と示す。また下方弁室を単に弁室57と示す。
燃料貯留室56は、第2ボディ17、連結部34、および、第2柱部52によって区画されている。詳しく言えば、燃料貯留室56は、連結部34の上面34a、第2内側面17bにおける上面34aよりも上方の部位、内上面17a、および、側面52bにおける上面34aと内上面17aとの間の部位によって区画されている。
なおシール部17eの上面と台座部50の下面50aとが全面的に接触している状態で燃料を貯留する領域は、厳密に言えば燃料貯留室56だけではない。燃料を貯留する領域は、第2貫通孔17cと第2弁室55とにもある。第2貫通孔17cにおいては、第2柱部52と第2貫通孔17cを構成する壁面との間の空隙(領域)に燃料が貯留される。第2弁室55においては、シール部17e、第2柱部52、および、台座部50によって囲まれた領域に燃料が貯留される。この第2貫通孔17cと第2弁室55とにある燃料を貯留する領域を、図4において一点鎖線で囲って示す。以下においてはこの領域を副次貯留室56aと示す。
図3に示すように電磁力によって弁体31はz方向へ移動する。これによってシール部17eの上面と台座部50の下面50aとの全面的な接触が解除されると、燃料貯留室56と副次貯留室56aは常時連通孔17fを介して弁室57と連通される。弁室57は第1貫通孔16cを介して燃料供給路12と連通されている。したがって燃料貯留室56と副次貯留室56aは常時連通孔17f、弁室57、および、第1貫通孔16cを介して燃料供給路12と連通される。この結果、燃料貯留室56と副次貯留室56aの密閉状態が解除される。
以上に示したように副次貯留室56aも燃料の貯留に寄与を果たす。しかしながら副次貯留室56aは燃料貯留室56と振る舞いが同一である。したがって説明が煩雑となることを避けるために、以下においては副次貯留室56aの説明を省略する。
次に、電磁調量弁30の振る舞いとともに燃料貯留室56の機能を図5に基づいて説明する。上記したようにプランジャ20はカムシャフト300の回転にともなって軸方向に運動する。図5の時間t0において、プランジャ20はプランジャ室14の最も上方に位置している。これによりプランジャ室14の容積は最も小さくなっている。この際、プランジャ室14は閉塞されている。したがってプランジャ室14内の圧力は依然高い状態となっている。
時間t0においてソレノイドコイル33に駆動電流は供給されていない。したがって弁体31はメインスプリング32の付勢力によって下方へと移動しようとしている。しかしながらプランジャ室14内の圧力が依然高い。そのために弁体31の下方への移動は始まっていない。
時間t0において弁体31は図3に示すように上方に位置している。そのためシール部17eと台座部50との接触が解除されている。燃料貯留室56の密閉状態が解除されている。燃料貯留室56の容積は最も小さくなっている。燃料貯留室56に貯留している燃料は最も少なくなっている。
時間t0から時間が経過すると、カムシャフト300の回転により、プランジャ20は下方に運動する。すなわちプランジャ20は降下する。これによりプランジャ室14の容積が増大し始める。プランジャ室14内の圧力が低まる。この結果、弁体31はメインスプリング32の付勢力によって下方へと移動し始める。吸入弁42とプランジャ室14との接触が解除され、燃料供給路12とプランジャ室14とが連通される。燃料供給路12からプランジャ室14内へと燃料が流入し始める。プランジャ室14内に燃料が吸引される。
また燃料貯留室56の容積も増大し始める。それにより燃料貯留室56の圧力が低まる。図5に示すように燃料貯留室56の圧力と相関関係を有する抗力も低下する。これにより燃料貯留室56に燃料が流入し始める。燃料貯留室56内の燃料の容量が増大し始める。
時間t1に至ると、燃料貯留室56の容積が最大になる。これにより燃料貯留室56の減圧が止まる。これは、弁体31の下方への移動によってシール部17eと台座部50とが接触したことを示している。なお、燃料貯留室56の容積が最大となっても、燃料貯留室56内の燃料の容量は最大とはならない。流動抵抗などのために、燃料貯留室56の容積が最大になるタイミングよりも、燃料貯留室56内に貯留される燃料の容量が最大になるタイミングが遅れる。時間t1において燃料貯留室56内の燃料の容量は最大とはなっていない。
上記したようにシール部17eと台座部50とが接触すると燃料貯留室56は密閉状態となる。しかしながら表面凹凸などの微視的な表面粗さのために、燃料貯留室56は理想的な密閉状態とはならない。また上記したように燃料貯留室56の圧力は低くなっている。そのため、例えば第2筒部53の外側面53bと第2ボディ17の第2内側面17bとの間の微視的な隙間を介して、燃料貯留室56内に燃料が流入する。第2環状部54の内周面54cと第2柱部52の側面52bとの間の微視的な隙間を介して、燃料貯留室56内に燃料が流入する。これにより燃料貯留室56内の燃料の容量が徐々に増大する。その結果、燃料貯留室56の抗力も徐々に増大する。
時間t2に至ると燃料貯留室56内の燃料の容量が最大になる。この結果、燃料貯留室56への燃料の流入が停止し、燃料貯留室56の抗力が一定となる。この際の燃料貯留室56の圧力は、第2弁室55などの圧力と同一である。
時間t3に至ると、プランジャ20は最も下方に位置する。これによりプランジャ室14の容積は最も大きくなっている。そのため、プランジャ室14内の燃料の容量も最も多くなっている。
時間t3から時間が経過すると、カムシャフト300の回転により、プランジャ20は上方に運動し始める。すなわちプランジャ20は上昇する。これによりプランジャ室14内の容積が減少し始める。
この際、ソレノイドコイル33に駆動電流は供給されていない。そのためにプランジャ室14と燃料供給路12とは連通している。プランジャ20の上方への運動により、プランジャ室14内から燃料供給路12へと燃料が排出される。これによりプランジャ室14内の燃料の容量が減少する。
上記したプランジャ20の上方への運動によるプランジャ室14からの燃料の排出によって、吸入弁42に燃料の排出圧力が付与される。この排出圧力の付与方向は上方である。そのため吸入弁42は排出圧力によって上方に移動しようとする。
吸入弁42にはストッパ46が設けられている。ストッパ46は連結部34と接触している。連結部34の上方に燃料貯留室56が位置している。時間t3において燃料貯留室56は密閉状態であり、燃料で満たされている。そのため、吸入弁42とともに連結部34が上方へと移動しようとすると、燃料で満たされた燃料貯留室56が圧縮される。これにより燃料貯留室56の抗力(反力)が増大する。この抗力は連結部34の運動を妨げる方向に付与される。すなわち、抗力の付与方向は下方である。この抗力が連結部34とストッパ46とを介して吸入弁42に付与される。そのため、吸入弁42にはメインスプリング32の付勢力と抗力とが下方に付与される。吸入弁42とプランジャ室14との離間は、この付勢力と抗力とによって保持される。
時間t4に至ると、プランジャ室14の容積が車両の運転状況に適した目標値に達する。すなわち、コモンレールに供給する燃料の吐出量が車両の運転状況に適した目標値に達する。この燃料の吐出量の判定は、制御装置130によって行われる。この際に制御装置130はソレノイドコイル33に駆動電流を流す。これにより磁気回路が形成される。アーマチャ43に上方への電磁力が発生する。この電磁力により、アーマチャ43は上方へと移動しようとする。
アーマチャ43が上方に移動すると、シール部17eと台座部50とが離間する。これにより燃料貯留室56の密閉状態が解除される。そのため、図5に示すように時間t4から時間が経過すると燃料貯留室56の抗力が減少する。
アーマチャ43はメインスプリング32の付勢力に抗して上方へと移動する。これにより吸入弁42もアーマチャ43とともに上方に移動し、吸入弁42とプランジャ室14とが接触する。この結果、プランジャ室14と燃料供給路12との連通が遮られる。
時間t4以降、プランジャ20は上方への運動を継続している。そのためプランジャ室14内の圧力が高まる。この圧力が閉塞弁91に印加される。この圧力により、閉塞弁91は閉塞スプリング92の付勢力に抗して吐出孔13の小室のプランジャ室14側の連通口から離れるように移動する。これによりプランジャ室14と第3燃料配管143とが吐出孔13を介して連通される。プランジャ室14内の高圧燃料が第3燃料配管143を介してコモンレールへと供給される。
吐出孔13から第3燃料配管143に燃料が吐出している途中の時間t5において、制御装置130はソレノイドコイル33への駆動電流の供給を止める。これにより、プランジャ室14の開口端を閉塞している吸入弁42は下方に移動しようとする。すなわち吸入弁42はプランジャ室14の壁面から離れようとする。しかしながらプランジャ20は上方へと運動しているため、プランジャ室14内の圧力は依然高い。そのために吸入弁42の下方への移動は始まらない。
時間t6に至ると、プランジャ20は最も上方に位置する。この後、プランジャ20は下方へと移動を開始しようとする。そのため、プランジャ室14内の圧力が低下する。これにより吸入弁42の下方への移動が開始する。吸入弁42がプランジャ室14の壁面から離れ、プランジャ室14と燃料供給路12とが連通される。また、閉塞スプリング92の付勢力によって閉塞弁91が吐出孔13の小室のプランジャ室14側の連通口に押し付けられる。これにより吐出孔13を介したプランジャ室14と第3燃料配管143との連通が遮られる。以上に示した時間t1〜時間t6における動作を繰り返すことで、高圧燃料ポンプ100はコモンレールに高圧燃料を供給する。
(作用効果)
次に、本実施形態にかかる高圧燃料ポンプ100の電磁調量弁30の作用効果を説明する。
プランジャ20の上方への運動によるプランジャ室14からの燃料の排出時に、吸入弁42には燃料の排出圧力が付与される。この排出圧力によって吸入弁42は上方に移動しようとする。この際、吸入弁42にはメインスプリング32の付勢力と燃料貯留室56の抗力とが下方に付与される。
このため、吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとのz方向における離間が、付勢力と抗力とによって保持される。これにより、吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとのz方向における離間をメインスプリング32の付勢力だけで保持する構成と比べて、メインスプリング32の付勢力を弱く設定することができる。
また、ソレノイドコイル33への駆動電流の通電によってアーマチャ43に上方に向かう電磁力が発生する。この電磁力によりアーマチャ43は上方へと移動しようとする。これにより燃料貯留室56の密閉状態が解除される。燃料貯留室56の抗力が減少し、消失する。このため、吸入弁42とアーマチャ43に付与される下方の力はメインスプリング32の付勢力だけになる。したがって、吸入弁42を移動させて吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとを接触させるには、アーマチャ43に付与する電磁力をメインスプリング32の付勢力よりも強くするだけでよくなる。
上記したようにメインスプリング32の付勢力は弱く設定することができる。そのためアーマチャ43に付与する電磁力も弱く設定することができる。これによりソレノイドコイル33に流す電流量を少なくすることができる。この結果、ソレノイドコイル33の電流量の増大が抑制される。
図5に、吸入弁42とプランジャ室14とのz方向における離間をメインスプリング32の付勢力だけで保持する構成の場合に必要とする駆動電流を一点鎖線で示す。これに対して、吸入弁42とプランジャ室14とのz方向における離間をメインスプリング32の付勢力と燃料貯留室56の抗力によって保持する本実施形態の場合に必要とする駆動電流を実線で示す。図5においてはこれらの駆動電流を模式的に示している。しかしながら本発明者が実験で検証したところ、図5に示す駆動電流の大小関係が成立することが確かめられている。すなわち、本実施形態のほうが、比較構成と比べて駆動電流が低くなることが確かめられている。
第2ボディ17の外上面17dには、第2貫通孔17cの外上面17dにおける開口部を囲む環状のシール部17eが形成されている。アーマチャ43のz方向の移動によって、シール部17eの上面と台座部50の下面50aとの接触が制御される。したがって、アーマチャ43のz方向の移動によって、燃料貯留室56と第2弁室55との連通が制御される。
第2ボディ17には、外上面17dにおけるシール部17eによって囲まれた領域の外に開口し、第2内側面17bにおけるストッパ46との対向領域に開口する常時連通孔17fが形成されている。したがって、アーマチャ43の上方への移動によってシール部17eと台座部50とが離れると、燃料貯留室56が、第2弁室55、常時連通孔17f、および、第1弁室15の弁室57を介して燃料供給路12と連通される。これにより燃料貯留室56の密閉状態が解除される。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6および図7に基づいて説明する。第2実施形態にかかる電磁調量弁は上記した実施形態によるものと共通点が多い。そのため以下においては共通部分の説明を省略し、異なる部分を重点的に説明する。また以下においては上記した実施形態で示した要素と同一の要素には同一の符号を付与する。
第1実施形態では、図4に示すようにアーマチャ43の第2先端部51の上面51aと連結部34の第2環状部54の下面54bとが接触している例を示した。これに対して本実施形態では、図6に示すように吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとがz方向で離間している状態において、図7に示すように第2先端部51の上面51aと第2環状部54の下面54bとがz方向で離間している。
このようなアーマチャ43と連結部34とのz方向の離間を維持するために、本実施形態の電磁調量弁30はガイド部60とアーマチャスプリング61を有する。図6に示すようにステータコア38にはガイド部60とアーマチャスプリング61を設けるための凹部38aが形成されている。この凹部38aはステータコア38における第2柱部52との対向面に開口している。凹部38aはz方向に延びている。
ガイド部60は支持台62とガイド軸63を有する。支持台62はステータコア38の対向面からz方向に離間した凹部38aの底面側に設けられている。ガイド軸63は支持台62からz方向に沿って第2柱部52に向かって延びている。ガイド軸63と第2柱部52とはz方向で離間している。ガイド軸63と第2柱部52との離間距離は、両者の接触によってアーマチャ43のz方向の移動を妨げないように設計されている。
アーマチャスプリング61は線形状の弾性材料がz方向にらせん状に巻き回されて成るスプリングコイルである。アーマチャスプリング61の中空にガイド軸63が挿入されている。アーマチャスプリング61はガイド軸63の周囲を囲んでいる。アーマチャスプリング61はz方向において支持台62と第2柱部52との間に位置する。
アーマチャスプリング61の一端は支持台62におけるガイド軸63の形成面62aに接触している。アーマチャスプリング61の他端はアーマチャ43の第2柱部52の上面52cと接触している。支持台62はステータコア38の凹部38aに固定されている。アーマチャ43の台座部50は第2ボディ17のシール部17eと接触している。以上により、アーマチャスプリング61は支持台62とアーマチャ43とを介してステータコア38と第2ボディ17とによって挟持されている。
そのためにアーマチャスプリング61は、z方向においてアーマチャスプリング61から離れる方向に付勢力を発生している。この付勢力によりアーマチャ43の位置が固定されている。すなわち、図7に示すようにアーマチャ43の第2先端部51の上面51aと、連結部34の第2環状部54の下面54bとがz方向で離間している。アーマチャ43の台座部50とシール部17eとが接触している。
なお、支持台62のz方向の長さ(高さ)は、アーマチャスプリング61のステータコア38への組み付け時に決定される。これによりアーマチャスプリング61のz方向の弾性変形具体が調整される。支持台62の高さは、複数の高さの異なる支持台62を用意しておき、所望のアーマチャスプリング61の付勢力にあったものをステータコア38に設けることで決定することができる。また、支持台62のステータコア38への取り付け位置の変更によってアーマチャスプリング61のz方向の弾性変形具体を調整してもよい。アーマチャスプリング61の付勢力はメインスプリング32の付勢力以下に設定することができる。
また、本実施形態では、第2環状部54の内周面54cと第2柱部52の側面52bとは、第2筒部53の外側面53bと第2ボディ17の第2内側面17bと同程度の摺動し易さで接触している。
このように本実施形態にかかる電磁調量弁30では、アーマチャスプリング61の付勢力によって、アーマチャ43の第2先端部51の上面51aと、連結部34の第2環状部54の下面54bとがz方向で離間している。また、アーマチャスプリング61の付勢力によって台座部50とシール部17eとが接触している。これにより燃料貯留室56が密閉されている。そして連結部34の第2環状部54の内周面54cとアーマチャ43の第2柱部52の側面52bとが摺動し易くなっている。
以上により、ソレノイドコイル33への駆動電流の通電によって台座部50に電磁力が発生すると、アーマチャ43の第2先端部51の上面51aと連結部34の第2環状部54の下面54bとが接触するまで、アーマチャ43は単独で上方に移動する。このアーマチャ43の単独の移動により燃料貯留室56の密閉状態が解除される。これにより吸入弁42とアーマチャ43とが共に移動することで燃料貯留室56の密閉状態が解除される構成と比べて、燃料貯留室56の密閉状態の解除を速く行うことができる。
本実施形態にかかる電磁調量弁30には、第1実施形態に記載の電磁調量弁30と同等の構成要素が含まれている。そのため同等の作用効果を奏することは言うまでもない。
なお、図6に示すように本実施形態ではシール部17eがアーマチャ43の台座部50に形成されている。このアーマチャ43が外上面17dに接触することで燃料貯留室56が密閉状態となる。
以上、本開示物の好ましい実施形態について説明したが、本開示物は上記した実施形態になんら制限されることなく、本開示物の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
(第1の変形例)
第2実施形態では、吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとがz方向で離間している状態においてアーマチャ43と連結部34とがz方向で離間している例を示した。しかしながら吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとがz方向で離間している状態において、図8に示すように吸入弁42と連結部34とがz方向で離間している構成を採用することもできる。
図8に示す変形例では、吸入弁42にストッパ46が形成されていない。その代りに吸入弁42の第1柱部45の第1弁室15内の端部45bは局所的に径が他よりも長くなっている。また連結部34は第2筒部53と第2環状部54の他に、第3筒部58と第3環状部59を有する。
第3筒部58は筒形状を成し、その軸方向はz方向に沿っている。第3環状部59はその名のとおり環状を成し、z方向に開口している。第3筒部58と第3環状部59それぞれの軸方向は、第1柱部45の軸方向と規定平面において一致している。第3筒部58と第3環状部59とは一体物である。第3環状部59の外径は第3筒部58の内径と同一である。第3環状部59は第3筒部58の有する2つの開口部のうちの下方側の開口部に設けられている。この結果、第3筒部58の上方側の開口面積は下側の開口面積よりも狭くなっている。
図8に示すように第3筒部58の中空に第1柱部45の端部45bが設けられている。第3環状部59の中空に第1柱部45が設けられている。第3環状部59と端部45bとがz方向で対向している。吸入弁42の上面44aとプランジャ室14の上内面11bとがz方向で離間している状態において第3環状部59と端部45bとがz方向で互いに離間している。
以上により、ソレノイドコイル33への駆動電流の通電によって台座部50に電磁力が発生すると、第3環状部59と端部45bとが接触するまで、アーマチャ43が単独で上方に移動する。このアーマチャ43の単独の移動により燃料貯留室56の密閉状態が解除される。このため、第2実施形態に記載の電磁調量弁30と同様にして、燃料貯留室56の密閉状態の解除を速く行うことができる。
(第2の変形例)
図9に示すように燃料貯留室56と第2弁室55との連通を補助する補助連通孔17hが第2ボディ17に形成された構成を採用することもできる。この補助連通孔17hにより、燃料貯留室56と第2弁室55との間での燃料の流通が促進される。この変形例の場合、第2柱部52に第2切欠き52aを形成しなくともよい。
図9の(a)に示す変形例の補助連通孔17hは、外上面17dにおいてシール部17eによって囲まれた領域の外に開口している。また補助連通孔17hの外上面17dにおける開口は、シール部17eと常時連通孔17fの開口との間に位置している。補助連通孔17hには、第2弁室55から燃料貯留室56へと一方向に燃料を流動させる逆止弁64が設けられている。この逆止弁64は、カムシャフト300の回転によるプランジャ20の下方への運動によって燃料貯留室56の容積が増大する際に開弁状態となる。これにより補助連通孔17hを介した燃料貯留室56への燃料の流入が促進される。
図9の(b)に示す変形例の補助連通孔17hは、外上面17dにおいてシール部17eの上面に開口している。これによっても補助連通孔17hを介した燃料貯留室56への燃料の流入が促進される。
(第3の変形例)
第1実施形態では、第1柱部45における燃料供給路12と第1弁室15とを連通する第1貫通孔16cを入出する部位に3つの第1切欠き45aが形成された例を示した。また、第2柱部52における第2貫通孔17cを入出する部位に3つの第2切欠き52aが形成された例を示した。しかしながら第1切欠き45aと第2切欠き52aの数としては上記例に限定されない。例えば第1切欠き45aと第2切欠き52aが4つ形成された構成を採用することもできる。図10の(a)欄に4つの切欠きがz方向まわりの周方向に等間隔で位置するように形成された構成を示す。
(第4の変形例)
図10の(b)に示すように第1弁室15の弁室57と燃料供給路12とを連通する連通孔16dが第1ボディ16に形成された構成を採用することもできる。この連通孔16dにより、第1柱部45に第1切欠き45aを形成しなくともよくなる。図10の(b)欄に示す変形例では4つの連通孔16dがz方向まわりの周方向に等間隔で形成されている。