以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による高圧燃料ポンプ10は、図1に示す燃料供給システム1に用いられる。燃料供給システム1は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関2に、軽油等の燃料を供給する。燃料供給システム1は、高圧燃料ポンプ10に加えて、燃料タンク4、低圧燃料ポンプ5、コモンレール6、燃料噴射弁7、機関制御装置9を含む構成とされている。
燃料タンク4は、内燃機関2への供給燃料を貯留する。低圧燃料ポンプ5は、通電により作動し、燃料タンク4に貯留された燃料を吸入する電動ポンプである。低圧燃料ポンプ5は、吸入した燃料を所定の低圧値(例えば0.4MPa程度)にまで加圧し、高圧燃料ポンプ10へ向けて吐出する。
コモンレール6には、高圧燃料ポンプ10によって昇圧された燃料が供給される。コモンレール6は、高圧燃料ポンプ10から圧送された高圧燃料を畜圧状態にて保持し、燃料噴射弁7に分配する。燃料噴射弁7は、内燃機関2に設けられた複数の気筒2b毎に一つずつ設置されている。燃料噴射弁7は、内燃機関2のヘッド部材2aに設けられた挿通孔に挿入されており、各気筒2b内の燃料室へ向けて、高圧燃料を噴孔7aから噴射する。
機関制御装置9は、マイクロコンピュータ又はマイクロコントローラを主体に構成されている。機関制御装置9は、低圧燃料ポンプ5、高圧燃料ポンプ10及び各燃料噴射弁7と電気的に接続されている。機関制御装置9は、燃料タンク4、高圧燃料ポンプ10及び各燃料噴射弁7の作動を制御する。
図1及び図2示す高圧燃料ポンプ10は、プランジャポンプである。高圧燃料ポンプ10は、プランジャ43の往復移動により、低圧燃料ポンプ5によって圧送された低圧燃料を加圧室24に吸入し、吸入した燃料を所定の高圧値(例えば250MPa程度)にまでさらに加圧し、コモンレール6へ向けて圧送する。高圧燃料ポンプ10は、機関制御装置9による調量弁100の通電制御によって燃料圧送量を調整される。高圧燃料ポンプ10は、ポンプボディ20、カムシャフト30、圧送機構40及び吐出弁29を、上記の調量弁100と共に備えている。
ポンプボディ20は、ケーシング20a、カバー20b及びシリンダ20c等を組み合わせてなる。ケーシング20aは、金属材により中空ブロック状に形成されている。ケーシング20aには、カム収容室21及びタペット収容室22が形成されている。カム収容室21は、円筒孔状に形成されている。タペット収容室22は、カム収容室21の中心軸線に対して実質直交する円筒孔状に形成されている。タペット収容室22は、カム収容室21の外周部からケーシング20aの外面まで延伸している。カバー20bは、金属材により扁平な円筒状に形成されている。カバー20bは、カム収容室21内に嵌入される。カバー20bは、カム収容室21と同軸上に位置し、カム収容室21を覆っている。
シリンダ20cは、金属材により円筒状に形成されている。シリンダ20cには、貫通孔が設けられている。シリンダ20cは、タペット収容室22内に嵌入されており、タペット収容室22と同軸上に位置している。シリンダ20cは、カム収容室21とは反対側にてタペット収容室22を覆っている。シリンダ20cには、プランジャ収容孔23、弁体装着孔25及びアクチュエータ装着孔28が形成されている。
プランジャ収容孔23及び弁体装着孔25は、カム収容室21の中心軸線に対して実質直交する円筒孔状に形成されている。プランジャ収容孔23及び弁体装着孔25は、互いに同軸上に位置している。プランジャ収容孔23は、シリンダ20cにおいてカム収容室21側の端面から反対側へと向かって延伸している。プランジャ収容孔23にてカム収容室21とは反対側部分には、加圧室24が区画されている。弁体装着孔25は、シリンダ20cにおいてプランジャ収容孔23からカム収容室21とは反対側の端面まで延伸している。
アクチュエータ装着孔28は、弁体装着孔25の中心軸線に対して実質直交する円筒孔状に形成されている。アクチュエータ装着孔28は、シリンダ20cの側面から窪む形状であり、区画底部28aを有している。区画底部28aには、弁体挿通孔28bが形成されている。弁体挿通孔28bは、弁体装着孔25とアクチュエータ装着孔28とを接続する貫通孔であり、アクチュエータ装着孔28よりも小径の円筒孔状に形成されている。
ポンプボディ20には、供給通路26及び吐出通路27が形成されている。供給通路26は、ポンプボディ20のうち少なくともシリンダ20cを貫通することで、弁体装着孔25を経由して、ポンプボディ20の外部(例えば燃料フィルタ等)と加圧室24との間を接続している。吐出通路27は、シリンダ20cを貫通することで、加圧室24と外部のコモンレール6との間を接続している。
カムシャフト30は、金属材により円柱状に形成されている。カムシャフト30は、カム収容室21に同軸上に収容されている。カムシャフト30は、内燃機関2のクランク軸から伝達されるクランクトルクを受けて、中心軸線まわりに回転駆動される。カムシャフト30には、駆動カム31が設けられている。駆動カム31は、例えば内燃機関2の気筒数及びクランク軸との間の減速比等を考慮して、オーバル型の輪郭曲線を外周面に与えられた板カム状に形成されている。
圧送機構40は、ローラ41、タペット42、プランジャ43及びプランジャスプリング44等から構成されている。圧送機構40の構成要素は、いずれも金属材により形成されている。
ローラ41は、タペット42及びプランジャスプリング44と共にタペット収容室22に収容されている。ローラ41は、駆動カム31の中心軸線に対して実質平行、且つ、タペット収容室22の中心軸線に対して実質直交する円柱状に形成されている。ローラ41は、駆動カム31の中心軸線に沿う線接触状態にて駆動カム31の外周面と転がり接触する。
タペット42は、二部材を組み合わせることで、全体として貫通円筒状を呈している。タペット42は、駆動カム31の中心軸線に対して実質直交するように設けられている。タペット42は、タペット収容室22の内周面によって同軸上に摺動支持されることで、軸方向に往復移動可能である。タペット42は、ローラ41を転動可能且つ一体往復移動可能に保持している。タペット42には、ばね座42aが設けられている。
プランジャ43は、タペット収容室22からプランジャ収容孔23に跨って収容されている。プランジャ43は、小径細長の円柱ロッド状である。プランジャ43の一方の端部は、端面によって加圧室24を区画している。プランジャ43の他方の端部は、ばね座42aの部分にてタペット42と連結されている。
プランジャ43は、駆動カム31の中心軸線に対して実質直交するように設けられている。プランジャ43は、プランジャ収容孔23の内周面によってプランジャ収容孔23と同軸上に摺動支持されており、軸方向に往復移動可能である。プランジャ43の中心軸線は、プランジャ43の変位方向を規定するプランジャ軸線40axとなる。
プランジャスプリング44は、圧縮コイルばねである。プランジャスプリング44は、シリンダ20cとばね座42aとの間に同軸上に配置されている。プランジャスプリング44は、弾性変形状態で挟持されており、ばね座42a及びタペット42を介して、駆動カム31の外周面にローラ41を押し付けている。
以上により、プランジャ43は、内燃機関2におけるクランク軸の回転に応じて往復駆動される。プランジャ43の往復移動により、加圧室24への燃料の吸入及び加圧室24からの燃料の吐出が行われる。具体的に、吸入行程におけるプランジャ43は、駆動カム31の回転に応じて加圧室24に燃料を吸入する側へと向かって駆動され、上死点及び下死点の間を下降する。一方、圧送行程におけるプランジャ43は、駆動カム31の回転に応じて加圧室24の燃料を圧送する側へと向かって駆動され、下死点及び上死点の間を上昇する。
吐出弁29は、機械的に作動する逆止弁である。吐出弁29は、吐出通路27の中途部に設置されている。吐出弁29は、加圧室24での燃料の圧力が圧送行程における開弁圧になると開弁する。吐出弁29の開弁により、加圧室24にて加圧された燃料は、吐出通路27へと吐出され、吐出燃料としてコモンレール6に圧送される。
図2~図4に示す調量弁100は、シリンダ20cに装着され、供給通路26の中途部に設置されている。調量弁100は、機関制御装置9からの通電制御に応じて作動し、供給通路26から加圧室24に流入する燃料の流量を制御する。調量弁100は、供給通路26と加圧室24との間の連通を遮断した遮断状態と、これらの間の連通を許容した連通状態とを切り替える。調量弁100は、通電(駆動パルス 図6参照)がオフの場合に連通状態となるノーマリオープン型の制御弁である。調量弁100は、電磁アクチュエータ50、駆動弁体70、バルブボディ80、従動弁体90及び接続部材78を備えている。
図2及び図3に示す電磁アクチュエータ50は、駆動弁体70を保持した状態で、アクチュエータ装着孔28に装着されている。電磁アクチュエータ50は、機関制御装置9から入力される駆動パルスに応じて、駆動弁体70を軸方向に沿って往復移動させる。電磁アクチュエータ50は、組付ボディ51、ステータ52、可動コア53、磁束発生部60及びコネクタ65等によって構成されている。
組付ボディ51は、金属材により貫通円筒状に形成されている。組付ボディ51は、アクチュエータ装着孔28に同軸上に螺入され、シリンダ20cに組み付けられている。組付ボディ51には、駆動弁体70を挿通させるボディ挿通孔51aが形成されている。ボディ挿通孔51aは、アクチュエータ装着孔28、組付ボディ51及び弁体挿通孔28bと同軸上に設けられている。ボディ挿通孔51aの内径は、弁体挿通孔28bと内径と実質同一である。
ステータ52は、ポンプボディ20の外部において組付ボディ51に固定されている。ステータ52は、メインコア54、サイドコア55及びカラー56等によって構成されている。ステータ52の各構成は、互いに同軸上に設けられ、且つ、組付ボディ51の同軸上に位置している。
メインコア54は、金属磁性材により有底円筒状に形成されている。メインコア54は、ソレノイドコイル61への通電による発生磁束に対して一意の磁束密度を現出させるように、例えば高BH材等から構成されている。メインコア54は、組付ボディ51へ開口部を向けた姿勢で、サイドコア55及びカラー56と共に組付ボディ51に保持されている。
サイドコア55は、金属磁性材により貫通円筒状に形成されている。サイドコア55は、メインコア54と同様に、ソレノイドコイル61の発生磁束に対し一意の磁束密度を現出させるように、例えば高BH材等から構成されている。サイドコア55は、組付ボディ51により直接的に保持されている。サイドコア55は、メインコア54から離間して設けられている。メインコア54からのサイドコア55の軸方向における離間距離は、磁気ギャップ58(後述する)の最大幅ALよりも、大きく設定されている。
カラー56は、金属非磁性材により貫通円筒状に形成されている。カラー56は、メインコア54及びサイドコア55に接合されている。カラー56は、メインコア54とサイドコア55との間での磁束の短絡を規制する。
可動コア53は、金属磁性材により貫通円筒状に形成されている。可動コア53は、メインコア54及びサイドコア55と同様に、ソレノイドコイル61の発生磁束に対して一意の磁束密度を現出させるように、例えば高BH材等から構成されている。可動コア53は、サイドコア55及びカラー56の内周側に設けられている。可動コア53の外周面は、サイドコア55及びカラー56に跨って、径方向に対向している。
可動コア53は、ステータ52の各構成の同軸上に位置しており、メインコア54に対して軸方向に対向している。可動コア53は、駆動弁体70を保持しおり、駆動弁体70と一体で軸方向に往復移動可能である。可動コア53の端面53aとメインコア54の端面54aとの間には、磁気ギャップ58が形成されている。磁気ギャップ58には、ソレノイドコイル61による発生磁束が可動コア53とメインコア54との間にて流れることとなる。メインコア54へ向かう方向(以下、「リフト方向LD」)への可動コア53の移動に応じて、磁気ギャップ58の軸方向幅は縮小傾向を示す。
磁束発生部60は、電磁アクチュエータ50の内部に収容されている。磁束発生部60は、ステータ52及び可動コア53の外周側に設けられている。磁束発生部60は、ソレノイドコイル61及び磁性ヨーク63等によって構成されている。
ソレノイドコイル61は、円筒状に形成された樹脂ボビン62に、金属線材を巻回した構成である。ソレノイドコイル61は、ステータ52及び可動コア53の外周側且つ同軸上に設けられている。ソレノイドコイル61は、機関制御装置9による通電(駆動パルスオン)によって励磁され、機関制御装置9による通電停止(駆動パルスオフ)により消磁される。磁性ヨーク63は、金属磁性材により形成された二部材により、全体として貫通円筒状に形成されている。磁性ヨーク63は、樹脂ボビン62に装着されることで、ソレノイドコイル61を外周側から覆っている。
コネクタ65は、樹脂ボディ66及びターミナル67等によって構成されている。樹脂ボディ66は、樹脂ボビン62に装着されており、ソレノイドコイル61の外周側に張り出した形状である。ターミナル67は、金属板材によって形成され、樹脂ボディ66に埋設されている。ターミナル67は、樹脂ボディ66に組み付けられるワイヤハーネスを介して、ソレノイドコイル61の金属線材と機関制御装置9との間を通電可能に接続している。
駆動弁体70は、電磁アクチュエータ50の発生駆動力によってリフト方向LDに変位可能である。駆動弁体70は、駆動部材71及び第一弾性部材76等を組み合わせてなる。
駆動部材71は、金属材により細長の円柱ロッド状に形成されている。駆動部材71は、組付ボディ51のボディ挿通孔51a及びシリンダ20cの弁体挿通孔28bにより同軸上に摺動支持されており、軸方向に往復移動可能である。駆動部材71の中心軸線は、駆動弁体70の変位方向を規定する駆動軸線70axとなる。駆動軸線70axは、プランジャ軸線40axに対して実質直交する姿勢である。駆動部材71の一方の端部には、伝達端面72が形成されている。伝達端面72は、駆動軸線70axに対し実質直交する平面状である。伝達端面72は、バルブボディ80内にて接続部材78と当接可能である。駆動部材71の他方の端部は、可動コア53の中央部分にて、可動コア53を連結されている。
第一弾性部材76は、金属材により形成された圧縮コイルばねである。第一弾性部材76は、ステータ52の内周側、且つ、ステータ52、可動コア53及び駆動部材71と同軸上に設けられている。第一弾性部材76は、メインコア54と駆動部材71との間で挟持されている。第一弾性部材76は、リフト方向LDとは反対の方向(以下、「戻し方向RD」)に、可動コア53及び駆動部材71を付勢している。
図2及び図4に示すバルブボディ80は、従動弁体90を保持した状態で、弁体装着孔25に装着されている。バルブボディ80は、駆動弁体70から入力される駆動力に応じて、従動弁体90を軸方向に沿って往復移動させる。バルブボディ80は、弁座部材81及びトップカバー85等によって構成されている。
弁座部材81は、金属材により貫通円筒状に形成されている。弁座部材81は、プランジャ収容孔23とトップカバー85との間にて、弁体装着孔25と同軸上に位置している。弁座部材81は、トップカバー85によってシリンダ20cに固定されている。弁座部材81には、摺動孔81a、流通孔81b、連通孔81c、弁座面82及び吸込通路83が形成されている。
摺動孔81a及び流通孔81bは、軸方向に並ぶ配置にて、弁座部材81及びプランジャ収容孔23と同軸上に円筒孔状に形成されている。摺動孔81aは、流通孔81bを挟んで加圧室24の反対側に位置している。連通孔81cは、摺動孔81aと連続しており、摺動孔81aの中心軸線に対して実質直交する円筒孔状に形成されている。連通孔81cは、弁体挿通孔28bと実質同一内径であり、且つ、弁体挿通孔28bと同軸上に設けられている。連通孔81cは、接続部材78及び駆動部材71の伝達端面72を収容している。
弁座面82は、加圧室24に露出した弁座部材81の底端面に形成されている。弁座面82は、流通孔81bの一方の端部と連続している。弁座面82は、軸方向に沿ってプランジャ43へ向かうに従い、流通孔81bの内径から拡大する拡大テーパ面状を呈している。
吸込通路83は、流通孔81bと連続しており、流通孔81bの中心軸線に対して実質直交する円筒孔状に形成されている。吸込通路83は、流通孔81bと共に供給通路26の一部として機能し、加圧室24へ向かって流れる燃料の流路となる。
図2,図4及び図5に示す従動弁体90は、供給通路26から加圧室24へ向かう燃料の流れを変位によって制御する。従動弁体90は、電磁アクチュエータ50の発生駆動力により、加圧室24への燃料吸入を遮断するように閉弁方向VCDに変位可能である。従動弁体90は、開閉部材91、ばね座シリンダ95及び第二弾性部材96等を組み合わせてなる。
開閉部材91は、金属材により細長の円柱ロッド状に形成されている。開閉部材91は、駆動部材71よりも短い。開閉部材91は、接続部材78を介して、駆動弁体70の駆動部材71と機械的に連結されている。開閉部材91は、弁座部材81の摺動孔81aによって同軸上に摺動支持されており、駆動部材71と連繋して、軸方向に往復移動可能である。開閉部材91の中心軸線は、従動弁体90の変位方向を規定する従動軸線90axとなる。従動軸線90axは、プランジャ軸線40axに沿っており、プランジャ軸線40axと実質一致している。その結果、駆動軸線70axは、従動軸線90axに対して傾斜した姿勢となり、具体的には、従動軸線90axに対して実質的に直交している。
開閉部材91は、弁部92及び当接部93を有している。弁部92は、加圧室24へと突出する開閉部材91の一方の端部に、フランジ状に形成されている。弁部92は、従動軸線90axに沿った開閉部材91の往復移動によって弁座面82に離着座可能である。開閉部材91は、トップカバー85へ向かう閉弁方向VCDへの移動により、弁部92を弁座面82に着座させる。これにより、供給通路26及び加圧室24の間が遮断(閉弁)状態となる。一方、開閉部材91は、プランジャ43へ向かう開弁方向VODへの移動により、弁部92を弁座面82から離座させる。これにより、供給通路26及び加圧室24の間が連通(開弁)状態となる。
当接部93は、開閉部材91の軸方向の中間部分に形成されている。当接部93は、摺動孔81aに収容され、連通孔81cに臨んでいる。当接部93は、開閉部材91のうちで接続部材78と当接する部分であり、連通孔81cから摺動孔81aに突き出した接続部材78との接触状態を維持する。当接部93には、押圧テーパ面部93a及び保持テーパ面部93bが設けられている。
押圧テーパ面部93a及び保持テーパ面部93bは、共に部分円錐面状に形成されている。押圧テーパ面部93a及び保持テーパ面部93bは、共に開閉部材91と同軸上に設けられており、開閉部材91の周囲方向の全周にわたって形成されている。押圧テーパ面部93a及び保持テーパ面部93bは、従動軸線90axに対して直交する仮想平面に対し、軸方向において互いに面対称となる形状である。押圧テーパ面部93aは、保持テーパ面部93bに対し弁部92側に形成されている。押圧テーパ面部93aは、弁部92へ向かうに従って拡径するテーパ面状を呈している。押圧テーパ面部93aは、接続部材78に押されることで、開閉部材91を開弁方向VODへ変位させる。保持テーパ面部93bは、押圧テーパ面部93aから離れるに従って拡径するテーパ面状を呈している。保持テーパ面部93bは、押圧テーパ面部93aと共に接続部材78に当接し、開閉部材91を特定位置にて保持する。
従動軸線90axを含む開閉部材91の縦断面において、押圧テーパ面部93aと保持テーパ面部93bとの間の角度(以下、ボールリンク角度θ1)は、90°を超え、且つ、180°未満(例えば100°~150°程度)となるように設定されている。加えて、押圧テーパ面部93a及び保持テーパ面部93bの各勾配角度θ2は、共に45°未満であり、且つ0°を超えるよう設定されている。換言すれば、押圧テーパ面部93a及び保持テーパ面部93bの各テーパ角度は、共に90°未満とされている。
ばね座シリンダ95は、金属材によって貫通円筒状に形成されている。ばね座シリンダ95は、開閉部材91にて弁部92とは反対側となる他方の端部の外周面に、同軸上に外嵌されている。ばね座シリンダ95は、開閉部材91と一体的に往復移動可能である。ばね座シリンダ95には、鍔状のばね座部95aが設けられている。
第二弾性部材96は、金属材により形成された圧縮コイルばねである。第二弾性部材96は、弁座部材81の頂面に設けられた凹部と、ばね座シリンダ95のばね座部95aとの間に、同軸上に挟持されている。第二弾性部材96は、開閉部材91及びばね座シリンダ95を、弁座部材81に対して閉弁方向VCDに付勢している。第二弾性部材96による閉弁方向VCDの付勢力よりも、第一弾性部材76による戻し方向RDへの付勢力が大きくなるように、各弾性部材76,96の各弾性力は、調整されている。
接続部材78は、金属材により、実質的に真球状に形成されている。接続部材78の外径は、連通孔81cの内径よりも僅かに小さい。接続部材78は、連通孔81cに収容され、連通孔81c内を駆動軸線70axに沿って移動可能である。接続部材78は、駆動弁体70の駆動部材71と従動弁体90の開閉部材91との間に、駆動部材71とは別体で設けられており、伝達端面72と当接部93との間に挟まれている。接続部材78は、当接部93と共にボールリンク機構部79を構成している。接続部材78は、当接部93との当接により、戻し方向RDへの駆動部材71の移動を、開弁方向VODへの移動として開閉部材91に伝達する。一方、リフト方向LDへ向けた駆動部材71の移動によれば、接続部材78は、押圧テーパ面部93aによって連通孔81c内へ押し込まれ、連通孔81cの内周面に沿い、伝達端面72に追従してリフト方向LDに変位する。
以上の調量弁100では、ソレノイドコイル61の通電停止の状態にて、駆動部材71は、第一弾性部材76の付勢力により、接続部材78と一体的に戻し方向RDへ移動する。すると、接続部材78による押圧テーパ面部93aの押圧により、開閉部材91は、開弁方向VODへ向けて移動し、押圧テーパ面部93a及び保持テーパ面部93bを接続部材78に接触させた位置にて停止する。こうして弁部92が弁座面82から離座することで、供給通路26から加圧室24への燃料流入が許容される(図5 停止時参照)。
一方、機関制御装置9によるソレノイドコイル61への電流の印加によれば、磁気ギャップ58を消失させるリフト方向LDへの駆動力が電磁アクチュエータ50に発生し、駆動部材71は、リフト方向LDに移動する。その結果、リフト方向LDへの接続部材78の移動が許容されるため、開閉部材91は、第二弾性部材96の付勢力により、押圧テーパ面部93aによって接続部材78を押し返しつつ、閉弁方向VCDへ向けて移動する。こうして弁部92が弁座面82に着座することで、供給通路26と加圧室24との連通が遮断される(図5 可動時参照)。
次に、図6に基づき、図2~図5を参照しつつ、調量弁100の開閉弁作動を、比較例と比較しつつ説明する。比較例では、プランジャ、開閉部材及び可動コアが直列配置されており、開閉部材及び可動コアは、プランジャの軸方向に沿って往復移動する。図6に示すように、調量弁100及び比較例における各開閉部材の最大リフト量VL(図4も参照)は、互いに同一である。
調量弁100では、上述した各角度θ1,θ2の設定により、駆動弁体70の移動は、接続部材78及び押圧テーパ面部93aによるボールリンク機構部79によって拡大され、従動弁体90に伝達される。即ち、開閉部材91の変位Di2は、駆動部材71の変位Di1よりも大きくなる。故に、最大リフト量VLを同一とした場合、調量弁100の磁気ギャップ58は、比較例の磁気ギャップよりも小さく設定可能となる。こうしたイニシャルギャップの縮小によれば、吸引力の立ち上がりが早くなる。故に、駆動パルスのオン時刻t1から駆動弁体70の動き出し時刻t2までの時間は、比較例(時刻t1~t2c)と比較して短くなる。
加えて、イニシャルギャップの縮小によれば、可動コア53に作用する吸引力が向上する。その結果、可動コア53の移動速度は、比較例よりも高速となる。さらに、駆動部材71の変位Di1は、1:1以上の比率にて、開閉部材91に伝達される。故に、開閉部材91の移動(上昇)速度は、比較例に対してさらに高速となる。こうした作用の組み合わせにより、調量弁100における閉弁時間Tvc(時刻t1~t3)は、比較例における閉弁時間Tvcc(時刻t1~t3c)よりも短くなる。
以上説明したように、第一実施形態の調量弁100では、駆動弁体70の変位Di1よりも従動弁体90の変位Di2が大きくされている。故に、従動弁体90の変位量(最大リフト量VL)を確保しつつ、磁気ギャップ58を狭めることが可能になる。こうして磁気ギャップ58が狭くされれば、電磁アクチュエータ50は、ソレノイドコイル61への電流の印加によって、駆動弁体70を速やかにリフト方向LDに変位させ得る。したがって、調量弁100の高応答化が可能になる。
加えて第一実施形態では、駆動弁体70の駆動部材71と従動弁体90の開閉部材91とが接続部材78を介して機械的に連結されている。故に、駆動弁体70の移動は、実質的に遅延することなく、従動弁体90に伝達し得る。以上によれば、駆動弁体70の動きを増速させて従動弁体90に伝える構成であっても、応答性の悪化は、抑制され得る。
さらに、開閉部材91は、可動コア53及び駆動部材71の戻し方向RDへの移動にも、逐次追従可能となる。よって、駆動パルスのオフ時刻t4にて、開閉部材91は、開弁方向VODへの移動を開始し得る。その結果、駆動パルスのオフ時刻t4から開弁完了時刻t5までの開弁時間Tvoは、比較例の開弁時間Tvoc(時刻t4~t5c)と比較して短くなる。以上によれば、開弁時においても、調量弁100の高応答化が実現される。
また第一実施形態では、従動軸線90axがプランジャ軸線40axと一致しており、弁部92は、プランジャ43の頂面直上に配置されている。そのため、加圧室24のデッドボリュームの増加が回避可能となる。加えて、駆動軸線70axは、従動軸線90axに対して傾斜した姿勢である。故に、加圧室24の直上に弁部92を位置させたままでも、電磁アクチュエータ50は、加圧室24の直上とは異なる位置に設置可能となる。以上によれば、ポンプにおける吐出効率の確保と、電磁アクチュエータ50の配置の自由度の確保とが両立可能となる。
加えて第一実施形態における駆動軸線70axは、従動軸線90axに対して実質的に直交している。故に、電磁アクチュエータ50は、バルブボディ80の側方に設けられたアクチュエータ装着孔28に設置可能となる。こうした電磁アクチュエータ50のレイアウトによれば、バルブボディ80及び電磁アクチュエータ50を互いに別体とした調量弁100であっても、高圧燃料ポンプ10の搭載性は、確保される。
また第一実施形態では、駆動弁体70とは別体とされた接続部材78が、駆動部材71と開閉部材91との間に設けられている。こうした構成では、開閉部材91から接続部材78に作用する力のうちで、駆動軸線70axと交差する方向の成分(横力)は、連通孔81cの内周面に伝達される。その結果、接続部材78から駆動部材71に作用する力は、概ね駆動軸線70axに沿う方向となる。故に、駆動部材71に作用する横力によって可動コア53の作動が妨げられる事態は、回避される。
さらに第一実施形態では、接続部材78が球状に形成されている。こうした形状により、接続部材78は、駆動弁体70の往復移動に伴い、伝達端面72と押圧テーパ面部93aとの間で回転し得る。故に、接続部材78は、伝達端面72及び当接部93等に固着し難くなる。以上によれば、高応答可能な状態が、調量弁100の長期の使用にわたって維持される。
加えて第一実施形態では、当接部93に押圧テーパ面部93aを設ける構成により、駆動部材71の変位Di1の拡大及び方向変換を行うボールリンク機構部79が実現されている。以上によれば、構成の複雑化を抑制したうえで、調量弁100の高応答化が実現可能となる。
尚、第一実施形態では、加圧室24が「ポンプ室」に相当し、電磁アクチュエータ50が「電磁駆動部」に相当し、ソレノイドコイル61が「電磁コイル」に相当し、高圧燃料ポンプ10が「ポンプ装置」に相当する。また、最大リフト量VLとなる開閉部材91の変位位置が「特定の変位位置」に相当する。
(第二実施形態)
図7に示す本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、開閉部材291の形状が、第一実施形態とは異なっている。開閉部材291の当接部293からは、第一実施形態の保持テーパ面部93b(図5参照)に相当する部位が省略されている。当接部293には、第一実施形態と実質同一の押圧テーパ面部93aに加えて、小径部293cが設けられている。
押圧テーパ面部93aの勾配角度θ2は、第一実施形態と同様に、45°未満とされている。故に、従動軸線90axを含む縦断面での押圧テーパ面部93aと駆動軸線70axとの間のθ201は、45°以上となる。
小径部293cは、円筒面状に形成され、押圧テーパ面部93aと同軸上に設けられている。小径部293cの外径は、押圧テーパ面部93aの最小径と実質同一である。当接部293は、押圧テーパ面部93a及び小径部293cのうちで、押圧テーパ面部93aのみを接続部材78に当接させる。
以上の第二実施形態でも、押圧テーパ面部93aの勾配形状により、駆動部材71の変位Di1は、接続部材78及び押圧テーパ面部93aを介して拡大され、開閉部材291の変位Di2に変換される。故に、第一実施形態と同様の効果を奏し、調量弁の高応答化が実現される。加えて第二実施形態の接続部材78も、開閉部材291の往復移動によって回転し得る。以上によれば、押圧テーパ面部93aへの接続部材78の固着抑制効果が獲得可能となる。
(第三実施形態)
図8に示す本開示の第三実施形態は、第二実施形態の変形例である。第三実施形態では、接続部材378の形状が第二実施形態と異なっている。第三実施形態の接続部材378は、円柱状又は角柱状に形成されている。接続部材378は、駆動部材71と別体で設けられており、駆動軸線70axに軸方向を沿わせた姿勢で、連通孔81cの内周面、伝達端面72及び押圧テーパ面部93aの間に挟持されている。接続部材378の一方の端面は、駆動側端面378aとして伝達端面72に当接している。接続部材378の他方の端面は、従動側端面378bとして、縁部378cを押圧テーパ面部93aに当接させている。加えて接続部材378は、開閉部材291によって閉弁方向VCDに押されており、駆動部材71に対し偏心した配置となっている。接続部材378は、連通孔81cの内周面に対し外周面を摺動させるようにして、軸方向に往復移動する。
以上の第三実施形態でも、押圧テーパ面部93aの勾配形状により、駆動部材71の変位Di1は、接続部材378及び押圧テーパ面部93aを介して拡大され、開閉部材291の変位Di2に変換される。故に、第一実施形態と同様の効果を奏し、調量弁の高応答化が実現される。
加えて第三実施形態の接続部材378は、駆動部材71と別体とされている。故に、駆動側端面378aから伝達端面72には、主に駆動軸線70axに沿う方向の力のみが作用する。以上によれば、第三実施形態でも、電磁アクチュエータ50(図3参照)の円滑な作動が可能になる。
(第四実施形態)
図9に示す本開示の第四実施形態は、第二実施形態の別の変形例である。第四実施形態の駆動部材471の伝達端面472には、伝達突起部473が設けられている。伝達突起部473は、伝達端面472の中央から円柱状又は角柱状に突出しており、駆動部材471と同軸上に設けられている。伝達突起部473の頂面は、従動側端面473bとして、縁部473cを押圧テーパ面部93aに当接させている。
以上の第四実施形態でも、押圧テーパ面部93aの勾配形状により、駆動部材471の変位Di1は、伝達突起部473及び押圧テーパ面部93aを介して拡大され、開閉部材291の変位Di2に変換される。故に、第一実施形態と同様の効果を奏し、調量弁の高応答化が実現される。
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
上記実施形態では、真球状の接続部材78を用いたボールリンク機構部79によって駆動弁体及び従動弁体は、機械的に連結されていた。こうした機械的連結の具体的態様は、適宜変更されてよい。機械的な連結とは、駆動弁体のリフト方向LDへの移動により、従動弁体が特定方向に移動し、駆動弁体の戻し方向RDへの移動により、従動弁体が特定方向とは反対方向に移動する状態を示すものである。即ち、個々の部品同士は、相互に変位を伝達可能であれば、互いに保持されていなくてもよい。
加えて、接続部材の形状及び配置姿勢は、上記実施形態の内容に限定されない。例えば円筒状の接続部材が、駆動軸線70ax及び従動軸線90axを含む平面に対して軸方向を直交させた姿勢で、伝達端面及び押圧テーパ面部の間に配置されていてもよい。さらに、複数の接続部材が、駆動部材及び開閉部材の間にリンク機構の構成要素として配置されていてもよい。尚、接続部材が駆動弁体に保持されておらず、駆動弁体に対し駆動軸線と直交する方向への接続部材のずれが少なくとも許容された構成を、「接続部材と駆動部材とが別体である」とする。
上記実施形態では、従動弁体の変位Di2が駆動弁体の変位Di11よりも大きいことで、弁部の最大リフト量VL(図4参照)も、磁気ギャップの最大幅AL(図3参照)よりも大きくされている。そして、駆動部材の変位Di1と開閉部材の変位Di2との比率(以下、「増速比Di2/Di1」)は、実質的に一定で推移し、最大幅ALと最大リフト量VLとの比率(VL/AL)と概ね等しくなる。尚、こうしたリンク機構による増速比は、駆動弁体の変位Di1に応じて変化してもよい。例えば、駆動弁体のリフト方向LDへの変位Di1に伴い、増速比は、漸増してもよく又は漸減してもよい。
上記実施形態の調量弁は、駆動パルスのオフ期間にて弁部を開弁状態とするノーマリオープン型の制御弁であった。しかし、調量弁は、駆動パルスのオフ期間にて弁部を閉弁状態とするノーマリクローズ型の制御弁であってもよい。こうした調量弁であっても、リンク機構の増速作用により、開弁期間の短縮が実現される。
以上のように、駆動弁体の駆動によって流体の流れを制御するように変位する従動弁体の挙動は、適宜変更されてよい。例えば従動弁体は、駆動パルスによって弁部の開閉状態を二値的に切り替える構成でなくてもよく、駆動パルスに応じて弁部の開度を調整可能であってもよい。
上記実施形態の押圧テーパ面部及び保持テーパ面部の形状は、適宜変更されてよい。例えば、各テーパ面部の勾配角度θ2(図5参照)及び軸方向の長さ等は、互いに異なっていてもよい。さらに、各テーパ面部は、開閉部材の外周面に全周に亘って設けられていなくてもよく、部分的に形成されていてもよい。
調量弁における電磁アクチュエータ及びバルブボディの位置関係は、適宜変更されてよい。故に、駆動軸線70axと従動軸線90axとの角度関係も適宜変更可能である。例えば駆動軸線70axと従動軸線90axとは、互いに交差していなくてもよく、ねじれの位置関係であってもよい。同様に、弁部とプランジャとが軸方向に対向していれば、従動軸線90axは、プランジャ軸線40axに対して偏心していてもよく、又はプランジャ軸線40axに対して僅かに傾斜した姿勢であってもよい。
高圧燃料ポンプには、複数組のプランジャ及び加圧室が設けられていてもよい。こうした高圧燃料ポンプには、複数の調量弁が設けられている。加えて高圧燃料ポンプは、燃料として軽油とは異なる液体燃料、例えばガソリン等を圧送する構成であってもよい。また調量弁は、コモンレール6(図1参照)の燃料圧力を調整する制御弁であってもよい。調量弁によって流れを制御される液体は、燃料に限定されず、不凍液、冷媒、冷却水、及び潤滑油等であってもよい。