以下に図面を参照して、本発明にかかる感染影響度推定プログラム、感染影響度推定方法、および情報処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる感染影響度推定方法の一実施例を示す説明図である。図1において、情報処理装置100は、エリア間の感染症の影響度を推定するコンピュータである。例えば、情報処理装置100は、入院患者のいる医療機関120に設けられ、各患者の診療記録などを記憶するサーバである。医療機関120は、例えば、病院、診療所、療養所などである。エリアは、物理的に分離したエリアであり、例えば、医療機関120における異なる病棟や、同じ病棟内の異なるフロアである。
端末101は、医療機関120の医療従事者が使用するコンピュータである。医療従事者は、例えば、医師や看護師などである。具体的には、例えば、端末101は、スマートフォン、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)、タブレット型PC(Personal Computer)、デスクトップ型PC、ノートPCなどである。
ここで、入院患者のいる医療機関120内において、感染症の入院患者がいると、他の入院患者にも伝染する院内感染が起こることがある。院内感染の経路には、主に、接触感染、空気感染、飛沫感染がある。感染症が発生したときには、初動時に迅速な対応を行うことが感染の拡大防止に有効である。ところが、感染症を発症した患者の病棟やフロアを特定できたとしても、それ以外の各病棟や各フロアへの感染症の影響度合いを即座に把握することは難しい。
そこで、実施の形態では、エリア間の感染影響度を可視化することで、あるエリアで感染症が発生したときの初動対応を支援する感染影響度推定方法について説明する。以下、情報処理装置100の処理例について説明する。
ここで、医療機関120の各フロアについて説明すると、1階に受付窓口や外来患者用の診察室があり、2階以上の各階に入院患者向けの病室がある。ここでは、医療機関120の第1のエリアで感染症が発生したとし、第1のエリアから第2のエリアへの感染症の影響度を推定する場合について説明する。第1のエリアは、例えば、医療機関120のX階のエリアである。第2のエリアは、例えば、医療機関120のY階のエリアである。第1のエリアおよび第2のエリアには、それぞれ滞在者がいる。滞在者は、例えば、入院患者である。
(1)情報処理装置100は、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標を取得する。ここで、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標は、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の影響度合いを示す。例えば、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標は、エリア間における医師や看護師等の人の移動の有無や頻度などによって表される値である。
例えば、ある医師が第1のエリアと第2のエリアとを担当する場合、この医師は、第1のエリアと第2のエリアとを行き来することとなる。そして、第1のエリアで感染症が発生したとすると、この医師を介して、感染症が第2のエリアへ広がる可能性がある。
また、第1のエリアと第2のエリアとを担当する医師が1人の場合よりも2人の場合の方が、感染症が第1のエリアから第2のエリアへ感染する可能性が高い(例えば、2倍程度高い)といえる。言い換えると、第1のエリアと第2のエリアとを担当する医師の数によって、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の影響度合いは異なり、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標が異なる。
第1のエリアと第2のエリアとの間の指標は、例えば、第1のエリアと第2のエリアとを担当する医師の数そのものによって表すことができる。具体的には、例えば、第1のエリアと第2のエリアとの間の指標は、第1のエリアと第2のエリアとを担当する医師の数が10人の場合には「10」とし、1人の場合には「1」としてもよい。
また、医師の数に限らず、第1のエリアと第2のエリアとを担当する看護師の数によっても、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標は異なる。例えば、第1のエリアと第2のエリアとの間の指標は、第1のエリアと第2のエリアとを担当する看護師の数が10人の場合には「10」とし、1人の場合には「1」としてもよい。
また、例えば、入院患者等の滞在者がエリアを移動して病室を変更した場合も考慮して、エリア間の感染症の伝播可能性を示す指標を設定してもよい。例えば、滞在者Aが第2のエリアから第1のエリアへ病室を移動した後に第1のエリアでこの滞在者Aが感染症を発症したとすると、この滞在者Aは、第2のエリアにいたときから既に感染して潜伏期間中にあった可能性がある。また、第2のエリアには、この滞在者Aのほかにも、既に感染して潜伏期間中にある滞在者Bがいる可能性があり、滞在者Bも、今後発症する可能性があることが想定される。
また、例えば、滞在者Cが、第1のエリアから第2のエリアへ病室を移動した後に、第1のエリアで別の滞在者Dが感染症を発症したとすると、滞在者Cも第1のエリアにいたときに既に感染して潜伏期間中にある可能性がある。このため、滞在者Cが第2のエリアにおいて今後発症する可能性があることが想定される。
このため、感染症の伝播可能性を示す指標は、例えば、対象とする感染症の潜伏期間分だけ遡った期間内の入院患者が移動した人数とすることにしてもよい。具体的には、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標は、対象とする感染症の潜伏期間分だけ遡った期間内に、第1のエリアから第2のエリアへまたは第2のエリアから第1のエリアへ移動した感染症の患者の数としてもよい。例えば、第1のエリアと第2のエリアとの間の指標は、滞在者1名が第1のエリアから第2のエリアへ病室を移動した場合に「1」とし、同様に、入院患者1名が第2のエリアから第1のエリアへ病室を移動した場合に「1」としてもよい。
(2)情報処理装置100は、エリアに対応づけてエリア内の滞在者数を記憶する記憶部110を参照して、第2のエリアに対応する滞在者数を特定する。記憶部110は、例えば、第1のエリアに対応づけて第1のエリア内の滞在者数を記憶し、また、第2のエリアに対応づけて第2のエリア内の滞在者数を記憶する。
(3)情報処理装置100は、取得した指標と、特定した滞在者数とに基づいて、第1のエリアから第2のエリアへの感染症の影響度(以下「感染影響度」という)を推定する。感染影響度は、第1のエリアで感染症が発生した場合に予測される第2のエリアにおける感染症の影響度合いである。
例えば、第1のエリアで感染症が発生した場合、第2のエリアに20人いる場合と、10人いる場合とでは、20人いる場合の方が被害は大きく、感染影響度は大きくなる。感染影響度は、例えば、エリア間の感染症の伝播可能性を示す指標と滞在者数とを乗算することにより得られる。具体的には、例えば、第1のエリアと第2のエリアとの間の指標が「9」であり、第2のエリアの入院患者数が10人であるとすると、第1のエリアから第2のエリアへの感染影響度は、「90(=9×10)」である。
(4)情報処理装置100は、推定結果を出力する。推定結果は、推定された感染影響度そのものであってもよいし、感染影響度を10段階評価などの絶対評価で表したものであってもよい。また、他のエリアが複数ある場合は、情報処理装置100は、感染影響度の高い順に推定結果を表すことにしてもよい。ここで、推定結果は、例えば、第1のエリアで感染症が発生した旨を示す画像とともに表示される。また、推定結果は、例えば、第2のエリアに対応づけられて表示される。具体的には、例えば、情報処理装置100は、端末101の表示画面に、推定結果を表示出力する。これにより、医師や看護師に、第1のエリアで感染症が発生した旨や、第2のエリアの感染影響度を通知することができる。
このように、情報処理装置100によれば、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標を取得できる。また、情報処理装置100によれば、エリアに対応づけてエリア内の滞在者数を記憶する記憶部を参照して、第2のエリアに対応する滞在者数を特定することができる。
また、情報処理装置100によれば、指標と滞在者数とに基づいて、第1のエリアから第2のエリアへの感染影響度を推定することができる。これにより、第1のエリアで感染症が発生した場合に予測される第2のエリアの感染症の影響度合いを推定することができる。
また、情報処理装置100によれば、推定結果を出力することができる。これにより、第1のエリアで感染症が発生した場合に、第2のエリアの感染影響度を可視化することができる。これにより、第1のエリアで感染症が発生したときの初動対応を支援することができる。
(情報処理システム200のシステム構成例)
つぎに、実施の形態にかかる情報処理システム200のシステム構成例について説明する。情報処理システム200は、病院Hに適用されるコンピュータシステムである。病院Hは、例えば、1,2階に外来用の診察室等を有し、3〜6階の4フロアに入院患者用の病室を有する。
図2は、実施の形態にかかる情報処理システム200のシステム構成例を示す説明図である。図2において、情報処理システム200は、サーバSvと、端末T1〜Tn(n:1以上の自然数)と、を含む構成である。情報処理システム200において、サーバSvおよび端末T1〜Tnは、有線または無線のネットワーク210を介して接続される。ネットワーク210は、例えば、インターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などである。
以下の説明では、端末T1〜Tnのうちの任意の閲覧者端末を「端末Ti」と表記する場合がある(i=1,2,…,n)。
サーバSvは、エリアDB211(Database)と、入院患者DB212と、医師看護師DB213と、予防接種DB214と、潜伏期間DB215と、を有する。各種DB211〜215の記憶内容については、図5〜9を用いて後述する。図1に示した情報処理装置100は、例えば、サーバSvに相当する。
端末Tiは、医師や看護師が使用するコンピュータである。端末Tiは、例えば、スマートフォン、携帯電話、PHS、タブレット型PC、ノートPC、デスクトップ型PCなどである。図1に示した端末101は、例えば、端末Tiに相当する。
(サーバSvのハードウェア構成例)
図3は、サーバSvのハードウェア構成例を示すブロック図である。図3において、サーバSvは、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302と、I/F(Interface)303と、ディスクドライブ304と、ディスク305と、を有する。また、各構成部は、バス300によってそれぞれ接続される。
ここで、CPU301は、サーバSvの全体の制御を司る。メモリ302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU301のワークエリアとして使用される。メモリ302に記憶されるプログラムは、CPU301にロードされることで、コーディングされている処理をCPU301に実行させる。
I/F303は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して他の装置(例えば、図2に示した端末Ti)に接続される。そして、I/F303は、ネットワーク210と自装置内部とのインターフェースを司り、他の装置からのデータの入出力を制御する。I/F303には、例えば、モデムやLANアダプタなどを採用することができる。
ディスクドライブ304は、CPU301の制御に従ってディスク305に対するデータのリード/ライトを制御する。ディスク305は、ディスクドライブ304の制御で書き込まれたデータを記憶する。ディスク305としては、例えば、磁気ディスク、光ディスクなどが挙げられる。
なお、サーバSvは、上述した構成部のほかに、例えば、SSD(Solid State Drive)、キーボード、マウス、ディスプレイなどを有することにしてもよい。
(端末Tiのハードウェア構成例)
図4は、端末Tiのハードウェア構成例を示すブロック図である。図4において、端末Tiは、CPU401と、メモリ402と、I/F403と、ディスプレイ404と、スピーカ405と、入力装置406と、を有する。また、各構成部はバス400によってそれぞれ接続される。
ここで、CPU401は、端末Tiの全体の制御を司る。メモリ402は、例えば、ROM、RAMおよびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU401のワークエリアとして使用される。メモリ402に記憶されるプログラムは、CPU401にロードされることで、コーディングされている処理をCPU401に実行させる。
I/F403は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して他の装置(例えば、図2に示したサーバSv)に接続される。そして、I/F403は、ネットワーク210と自装置内部とのインターフェースを司り、他の装置からのデータの入出力を制御する。
ディスプレイ404は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。ディスプレイ404は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどを採用することができる。
スピーカ405は、電気信号に基づいて音を発生させる機器である。入力装置406は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを有し、データの入力を行う。入力装置406は、キーボードやマウスなどであってもよく、また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。
なお、端末Tiは、上述した構成部のほかに、加速度センサ、ジャイロセンサ、などの各種センサ、HDD(Hard Disk Drive)、SSDなどを有することにしてもよい。
(各種DB211〜215の記憶内容)
つぎに、図5〜9を用いて、図2に示したサーバSvが有する各種DB211〜215の記憶内容について説明する。各種DB211〜215は、例えば、図3に示したメモリ302、ディスク305などの記憶装置により実現される。
図5は、エリアDB211の記憶内容の一例を示す説明図である。図5において、エリアDB211は、エリアID(Identification)および名称のフィールドを有する。各フィールドに情報を設定することで、エリア情報(例えば、エリア情報500−1〜500−6)がレコードとして記憶される。
ここで、エリアIDは、エリア毎に付される識別情報を示す。名称は、エリアの名称であり、フロア名を示す。例えば、エリア情報500−1は、エリアIDが「A1」、名称が「病棟1階」を示す。
図6は、入院患者DB212の記憶内容の一例を示す説明図である。図6において、入院患者DB212は、エリアIDおよび患者IDのフィールドを有する。各フィールドに情報を設定することで、入院患者情報(例えば、入院患者情報600−1〜600−3)がレコードとして記憶される。
ここで、エリアIDは、エリア毎に付される識別情報を示し、エリアDB211(図5参照)に示したエリアIDに対応する。患者IDは、患者毎に付される識別情報を示す。入院患者情報600−1は、エリアIDが「A3」、患者IDが「P1」を示す。エリアDB211(図5参照)に示したように、エリアID「A3」と病棟3階とが対応していることから、入院患者情報600−1は、患者ID「P1」の入院患者が病棟3階に入院していることを示す。
図7は、医師看護師DB213の記憶内容の一例を示す説明図である。図7において、医師看護師DB213は、医師看護師ID、名前および担当エリアIDのフィールドを有する。各フィールドに情報を設定することで、医師看護師情報(例えば、医師看護師情報700−1〜700−3)がレコードとして記憶される。
ここで、医師看護師IDは、医師毎にまたは看護師毎に付される識別情報を示す。名前は、医師や看護師の氏名を示す。担当エリアIDは、医師や看護師が担当するエリアのエリアIDを示し、図5に示したエリアIDに対応する。医師看護師情報700−1は、医師看護師IDが「D1」、名前が「○○○○」、担当エリアIDが「A3,A4」を示す。エリアDB211(図5参照)に示したように、エリアID「A3」と病棟3階とが対応しており、エリアID「A4」と病棟4階とが対応している。このため、医師看護師情報700−1は、医師看護師ID「D1」の医師または看護師が病棟3階と病棟4階とを担当することを示す。
図8は、予防接種DB214の記憶内容の一例を示す説明図である。図8において、予防接種DB214は、患者IDおよび病名のフィールドを有する。各フィールドに情報を設定することで、予防接種情報(例えば、予防接種情報800−1〜800−3)がレコードとして記憶される。
ここで、患者IDは、患者毎に付される識別情報を示し、入院患者DB212(図6参照)に示した患者IDに対応する。病名は、予防接種を受けた感染症の病名を示し、例えば、A型インフルエンザや、B型インフルエンザ、はしか、風疹、結核、などがある。予防接種情報800−1は、患者IDが「P1」、予防接種を受けた感染症の病名が「A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、風疹」を示す。
図9は、潜伏期間DB215の記憶内容の一例を示す説明図である。図9において、潜伏期間DB215は、病名および潜伏期間のフィールドを有する。各フィールドに情報を設定することで、潜伏期間情報(例えば、潜伏期間情報900−1〜900−5)がレコードとして記憶される。
ここで、病名は、感染症の病名を示す。潜伏期間は、感染症を発症するまでの潜伏期間を示す。潜伏期間情報900−1は、病名が「A型インフルエンザ」、潜伏期間が「1〜3日」を示す。
(サーバSvの機能的構成例)
図10は、サーバSvの機能的構成例を示すブロック図である。図10において、サーバSvは、取得部1001と、特定部1002と、推定部1003と、出力部1004と、記憶部1010と、を含む構成である。取得部1001〜出力部1004は、具体的には、例えば、図3に示したメモリ302、ディスク305などの記憶装置に記憶されたプログラムをCPU301に実行させることにより、または、I/F303により、その機能を実現する。各機能部の処理結果は、例えば、メモリ302、ディスク305などの記憶装置に記憶される。
記憶部1010は、例えば、メモリ302、ディスク305などの記憶装置により実現される。具体的には、例えば、記憶部1010は、図5〜9に示した各種DB211〜215を記憶する。例えば、記憶部1010は、エリアに対応づけてエリア内の滞在者数を記憶する。滞在者は、例えば、入院患者である。エリアは、同じ病棟内の異なるフロアとするが、同一の病院における異なる病棟や、各病棟のフロアとしてもよい。例えば、複数のエリアを病棟3〜6階とすると、記憶部1010は、病棟3階に対応づけて病棟3階の入院患者数を記憶し、病棟4階に対応づけて病棟4階の入院患者数を記憶する。また、記憶部1010は、病棟5階に対応づけて病棟5階の入院患者数を記憶し、病棟6階に対応づけて病棟6階の入院患者数を記憶する。
取得部1001は、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標を取得する。第1のエリアと第2のエリアとは、例えば、3以上の複数のエリアが存在する場合、3以上の複数のエリアの中から抽出した2つのエリアの組合せである。例えば、複数のエリアを病棟3〜6階とすると、第1のエリアと第2のエリアは、病棟3階と4階、病棟3階と5階、病棟3階と6階、病棟4階と5階、病棟4階と6階、および病棟5階と6階、の各フロア同士の組合せである。
第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標は、第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の影響度合いを示し、例えば、各フロア間における医師等の人の移動の有無や頻度などによって表される値である。例えば、指標は、各フロア同士の両方を担当する医師または看護師の数に応じた値である。
これについて、具体的に説明すると、例えば、ある医師が病棟3階と病棟4階とを担当する場合、この医師は、病棟3階と病棟4階とを行き来することとなる。そして、病棟4階で感染症が発生したとすると、この医師を介して、感染症が病棟3階へ広がる可能性がある。
例えば、病棟3階と病棟4階とを担当する医師が1人の場合よりも2人の場合の方が、病棟4階で発生した感染症が病棟3階へ感染する可能性が高い(例えば、2倍程度高い)といえる。言い換えると、病棟3階と病棟4階とを担当する医師の数によって、病棟3階と病棟4階との間の感染症の影響度合いは異なり、病棟3階と病棟4階との間の感染症の伝播可能性を示す指標が異なる。
本実施の形態において、病棟3階と病棟4階との間の指標は、病棟3階と病棟4階とを担当する医師の数そのものとする。具体的には、病棟3階と病棟4階との間の指標は、病棟3階と病棟4階とを担当する医師の数が10人の場合には「10」とし、1人の場合には「1」とする。
また、医師の数に限らず、病棟3階と病棟4階とを担当する看護師の数によっても、病棟3階と病棟4階との間の感染症の伝播可能性を示す指標は異なる。例えば、病棟3階と病棟4階との間の指標は、病棟3階と病棟4階とを担当する看護師の数が10人の場合には「10」とし、1人の場合には「1」とする。
ここで、例えば、病棟3階と病棟4階とを担当する医師と看護師が存在する場合でも、医師に比べて看護師の方が病棟3階と病棟4階とを行き来する頻度が高い場合には、医師よりも看護師による伝播可能性が高いため、医師よりも看護師の指標を高くしてもよい。具体的には、例えば、看護師の指標を医師の指標の2倍にするなど重み付けをしてもよい。
また、エリア間の感染症の伝播可能性を示す指標(以下、適宜「エリア間の指標」という)は、所定の期間内において第1のエリアと第2のエリアとの間を移動した患者の数に応じた値である。例えば、感染症が発生した感染エリアを病棟4階とし、他のエリアを病棟3階とする。
例えば、滞在者aが病棟3階から病棟4階へ病室を移動した後に病棟4階でこの滞在者aが感染症を発症したとすると、この滞在者aは、病棟3階にいたときから既に感染して潜伏期間中にあった可能性がある。また、病棟3階には、この滞在者aのほかにも、既に感染して潜伏期間中にある滞在者bがいる可能性があり、滞在者bも、今後発症する可能性があることが想定される。
また、例えば、滞在者cが、病棟4階から病棟3階へ病室を移動した後に、病棟4階で別の滞在者dが感染症を発症したとすると、滞在者cも病棟4階にいたときに既に感染して潜伏期間中にある可能性がある。このため、滞在者cが病棟3階において今後発症する可能性があることが想定される。
このため、感染症の伝播可能性を示す指標は、例えば、対象とする感染症の潜伏期間分だけ遡った期間内の入院患者が移動した人数とする。例えば、病棟3階と病棟4階との間の感染症の伝播可能性を示す指標は、対象とする感染症の潜伏期間分だけ遡った期間内に、病棟3階から病棟4階へまたは病棟4階から病棟3階へ移動した感染症の入院患者の数とする。例えば、病棟3階と病棟4階との間の指標は、入院患者1名が病棟3階から病棟4階へ病室を移動した場合に「1」とし、同様に、入院患者1名が病棟4階から病棟3階へ病室を移動した場合も「1」とする。
特定部1002は、記憶部1010を参照して、第2のエリアに対応する入院患者数を特定する。ここで、第1のエリアを感染症が発生した感染エリア(例えば、病棟4階)とすると、第2のエリアは、例えば、第1のエリアとは異なる他のエリア(例えば、病棟4階以外の各階)である。特定部1002は、具体的には、図2に示すエリアDB211および入院患者DB212を参照して、他のエリアに対応する入院患者数を特定する。
推定部1003は、取得部1001によって取得されたエリア間の指標と、特定部1002によって特定された入院患者数とに基づいて、第1のエリアから第2のエリアへの感染影響度を推定する。感染影響度は、あるエリアで感染症が発生した場合に他のエリアへの感染症の影響度合いである。例えば、感染エリアである第1のエリアを病棟4階とすると、他のエリアである第2のエリアは、病棟3階、5階、6階である。
例えば、病棟3階に30人いる場合と、10人いる場合とでは、30人いる場合の方が病棟3階の被害は大きく、すなわち、感染影響度は大きい。例えば、感染影響度は、エリア間の指標と入院患者数とを乗算することにより得られる。具体的には、例えば、病棟3階と病棟4階との間の指標が「3」であり、病棟3階の入院患者数が30人であるとすると、病棟4階から病棟3階への感染影響度は、3×30=90である。
ただし、感染影響度は、エリア間の指標と入院患者数とを乗算することによって得られる値に限らず、例えば、エリア間の指標と入院患者数とを加算することによって得られる値でもよい。また、感染影響度は、エリア間の指標と入院患者数とを比較して感染による影響度合いの大きさを考慮して、それぞれ重み付けして得られる値としてもよい。具体的には、例えば、感染影響度は、入院患者数については、例えば、0.5倍にするなどの所定の重み付けをして、エリア間の指標と加算または乗算することによって得られる値でもよい。
出力部1004は、推定結果を出力する。推定結果は、推定された感染影響度そのものであってもよいし、感染影響度を10段階評価などの絶対評価で表したものであってもよい。また、出力部1004は、感染影響度の高い順に推定結果を表すことにしてもよい。出力部1004は、各エリアと対応づけて推定結果を出力するとともに、感染症が発生したエリアの情報や、警告音なども出力する。
また、出力部1004は、推定部1003によって推定された感染影響度と対応づけて、取得部1001によって取得された指標と、特定部1002によって特定された滞在者数とを出力する。具体的には、出力部1004は、感染影響度と対応づけて、後述する関連度スコアと、後述する感染力スコアとを出力する。
出力部1004は、病院H内のタブレット型PCやデスクトップ型PCや医師や看護師のPHSやスマートフォン等の端末Tiに推定結果等を一斉配信するとともに、プッシュ型で警告を通知する。これにより、端末Tiのディスプレイ404(図4参照)に推定結果を表示するとともに、スピーカ405(図4参照)から警告音を出力し、医師や看護師に感染影響度を通知することができる。
また、本実施の形態において、入院患者数は、エリア内の予防接種を受けていない入院患者数である。例えば、特定部1002は、予防接種DB214を参照して、各エリアの予防接種を受けた入院患者数を特定する。また、特定部1002は、各エリアの入院患者数から、各エリアの予防接種を受けた入院患者数を減じることにより、各エリア内の予防接種を受けていない入院患者数を特定する。推定部1003は、取得部1001によって取得されたエリア間の指標と、特定部1002によって特定された各エリアの予防接種を受けていない入院患者数とに基づいて、各エリアの感染影響度を推定する。具体的には、推定部1003は、エリア間の指標と、各エリアの予防接種を受けていない入院患者数とを乗算することにより、各エリアの感染影響度を推定する。
(関連度ポイントの集計例について)
図11は、関連度ポイントの集計例を示す説明図である。図11において、説明図1100は、各階の担当医師および担当看護師を示すとともに、フロアの移動を伴う病室の移動があった患者を示している。例えば、説明図1100では、病棟における病棟3〜6階の4フロアから取り出した2フロア間の関連度ポイントの集計例について説明する。関連度ポイントは、例えば、各エリア間の感染症の伝播可能性を示す指標である。
説明図1100に示すように、例えば、病棟3階と4階に着目すると、医師Bは、病棟3階と4階とを担当することを示す。この場合、サーバSvは、病棟3階と4階との関連度ポイントを「+1」する。また、看護師Aは、病棟3階と4階とを担当することを示す。この場合も、サーバSvは、病棟3階と4階との関連度ポイントを「+1」する。また、患者Bは、病棟3階から4階に病床を移動したことを示す。この場合も、サーバSvは、病棟3階と4階との関連度ポイントを「+1」する。ここで、関連度ポイントの累計値を「関連度スコア」という。病棟3階と4階との関連度スコアは、「3」である。
同様に、病棟3階と5階との関連度スコア、病棟3階と6階との関連度スコア、病棟4階と5階との関連度スコア、病棟4階と6階との関連度スコア、病棟5階と6階の関連度スコア、も集計される。集計結果を図12の関連度スコア表に示す。
(関連度スコア表の一例について)
図12は、関連度スコア表の一例を示す説明図である。図12において、関連度スコア表1200は、各階同士の関連度スコアを示す。具体的には、病棟3階と4階との関連度スコアは、「3」である。病棟3階と5階との関連度スコアは、「1」である。病棟3階と6階との関連度スコアは、「1」である。病棟4階と5階との関連度スコアは、「2」である。病棟4階と6階との関連度スコアは、「1」である。病棟5階と6階との関連度スコアは、「2」である。
(感染力スコアの一例について)
図13は、感染力スコアの一例を示す説明図である。図13において、説明図1300は、各階の、入院患者数と、予防接種患者数と、感染力スコアと、を示す。予防接種患者数は、入院患者数のうちの予防接種を受けた入院患者数を示す。感染力スコアは、入院患者数から予防接種患者数を減算した値である。本実施の形態において、感染症は、例えば風疹を対象とする。例えば、病棟3階の入院患者数が30であり、予防接種患者数が30であるとすると、風疹についての病棟3階の感染力スコアは、入院患者数から予防接種患者数を減算した「0(=30−30)」である。
また、病棟4階の入院患者数が30であり、予防接種患者数が5であることから、病棟4階の感染力スコアは、入院患者数から予防接種患者数を減算した「25(=30−5)」である。また、病棟5階の入院患者数が45であり、予防接種患者数が0であることから、病棟5階の感染力スコアは、入院患者数から予防接種患者数を減算した「45(=45−0)」である。また、病棟6階の入院患者数が20であり、予防接種患者数が5であることから、病棟6階の感染力スコアは、入院患者数から予防接種患者数を減算した「15(=20−5)」である。
(感染影響度表の一例について)
図14は、感染影響度表の一例を示す説明図である。図14において、感染影響度表1400は、病棟4階で感染症が発生した際の各階の感染影響度を示す。まず、病棟3階について説明すると、病棟3階と病棟4階との関連度スコアは、関連度スコア表1200(図12参照)に示したように「3」である。また、病棟3階の感染力スコアは、説明図1300(図13参照)に示したように「0」である。感染影響度は、関連度スコアと感染力スコアとを乗算することにより得られる。このため、病棟4階で感染症が発生した際の病棟3階の感染影響度は、「0(=3×0)」である。
また、病棟5階について説明すると、病棟5階と病棟4階との関連度スコアは、関連度スコア表1200(図12参照)に示したように「2」である。また、病棟5階の感染力スコアは、説明図1300(図13参照)に示したように「45」である。感染影響度は、関連度スコアと感染力スコアとを乗算することにより得られる。このため、病棟4階で感染症が発生した際の病棟5階の感染影響度は、「90(=2×45)」である。
また、病棟6階について説明すると、病棟6階と病棟4階との関連度スコアは、関連度スコア表1200(図12参照)に示したように「1」である。また、病棟6階の感染力スコアは、説明図1300(図13参照)に示したように「15」である。感染影響度は、関連度スコアと感染力スコアとを乗算することにより得られる。このため、病棟4階で感染症が発生した際の病棟6階の感染影響度は、「15(=1×15)」である。
(端末Tiに表示される感染影響度の出力画面の一例)
図15は、端末Tiに表示される感染影響度の出力画面の一例を示す説明図である。図15において、感染影響度の出力画面1500は、病棟4階で風疹が発生した際に、端末Tiのディスプレイ404(図4参照)に表示される画面である。病棟4階で風疹が発生したとすると、まず、最初に病棟4階にいる患者を隔離し、病棟4階の被害の拡大に努めることはできる。本実施の形態では、感染症が発生したエリアのみならず、つぎにどのエリアが危険かを通知するために、感染影響度を通知できる。
具体的には、出力画面1500には、病棟4階で風疹が発生した旨、最も感染影響度が大きい病棟5階への被害が懸念される旨、迅速な初動対応を実施する旨、さらには感染影響度表1400についても表示されている。これにより、病棟4階のつぎに感染による被害の大きいエリアとして病棟5階を通知できる。このため、医師や看護師は、病棟5階への被害を最小限に抑えるための初動対応をとることができる。
また、感染影響度を表示することにより、医師や看護師は、具体的な初動対応をとることができる。例えば、病棟5階の感染影響度が90であり、病棟6階の感染影響度が15であることを表示することにより、医師や看護師は、例えば、「10:2」程度の比率で人員を配置するなどの有効な初動対応をとることができる。
また、関連度スコアや感染力スコアを表示することにより、医師や看護師は、エリア間の感染症の伝播可能性や風疹に感染するおそれのある入院患者数も把握することができる。また、例えば、感染影響度が同じ値のエリアがある場合に、医師や看護師は、感染力スコアが高い方のエリアを優先して初動対応をとることができ、感染するおそれのある入院患者数が多いエリアを優先して初動対応をとることができる。これにより、感染による被害を抑えることができる。
(サーバSvの関連度スコアの算出処理手順)
つぎに、図16を用いて、サーバSvの関連度スコアの算出処理手順について説明する。
図16は、サーバSvの関連度スコアの算出処理手順の一例を示すフローチャートである。図16のフローチャートにおいて、まず、サーバSvは、例えば、病院H内のデスクトップ型PCなどの端末Tiを介して、医師や看護師から関連度スコアの算出開始を受け付けたか否かを判断する(ステップS1601)。ここで、サーバSvは、関連度スコアの算出開始を受け付けるまで待つ(ステップS1601:No)。
そして、サーバSvは、関連度スコアの算出開始を受け付けた場合(ステップS1601:Yes)、入院患者DB212や医師看護師DB213を参照して、対象の各階の担当医師、担当看護師、患者を抽出する(ステップS1602)。対象の各階とは、例えば、階同士の組合せに相当する。具体的には、例えば、病棟3〜6階まであるとすると、対象の各階は、病棟3階と4階との組合せ、病棟3階と5階との組合せ、病棟3階と6階との組合せ、病棟4階と5階との組合せ、病棟4階と6階との組合せ、および病棟5階と6階との組合せである。
そして、サーバSvは、同一の医師が対象の各階を担当しているか否かを判断する(ステップS1603)。サーバSvは、同一の医師が対象の各階を担当していない場合(ステップS1603:No)、ステップS1605に移行する。
サーバSvは、同一の医師が対象の各階を担当している場合(ステップS1603:Yes)、対象の各階に対して、同一の担当医師の数に相当する関連度ポイントを付与する(ステップS1604)。例えば、対象の各階を病棟3階と病棟4階とし、ある医師が病棟3階と病棟4階とを担当している場合、病棟3階と病棟4階のそれぞれに1ポイントを付与する。そして、サーバSvは、同一の看護師が対象の各階を担当しているか否かを判断する(ステップS1605)。サーバSvは、同一の看護師が対象の各階を担当していない場合(ステップS1605:No)、ステップS1607に移行する。
サーバSvは、同一の看護師が対象の各階を担当している場合(ステップS1605:Yes)、対象の各階に対して、同一の担当看護師の数に相当する関連度ポイントを付与する(ステップS1606)。例えば、ある看護師が病棟3階と病棟4階とを担当している場合、病棟階と病棟階のそれぞれに1ポイントを付与する。そして、サーバSvは、同一の入院患者がいたか否かを判断する(ステップS1607)。同一の入院患者とは、階を移動した入院患者である。例えば、風疹の場合は、潜伏期間が最大で22日であることから、サーバSvは、現時点から22日前の期間内において、同一の入院患者がいたか否かを判断する。
サーバSvは、同一の入院患者がいない場合(ステップS1607:No)、ステップS1609に移行する。サーバSvは、同一の入院患者がいる場合(ステップS1607:Yes)、対象の各階に対して、同一の入院患者の数に相当する関連度ポイントを付与する(ステップS1608)。例えば、病棟3階から病棟4階に病室を移動した入院患者がいる場合に、3階と4階のそれぞれに1ポイントを付与する。
そして、全ての対象の各階の関連度スコアの算出が完了したか否かを判断する(ステップS1609)。具体的には、サーバSvは、病棟3階と4階、病棟3階と5階、病棟3階と6階、病棟4階と5階、病棟4階と6階、病棟5階と6階、の全組合せについて、関連度スコアの算出が完了したか否かを判断する。サーバSvは、全ての対象の各階の関連度スコアの算出が完了していない場合(ステップS1609:No)、ステップS1602に移行する。サーバSvは、全ての対象の各階の関連度スコアの算出が完了した場合(ステップS1609:Yes)、本フローチャートによる一連の処理を終了する。
本フローチャートの開始のトリガは、医師や看護師から関連度スコアの算出開始を受け付けることとしたが、これに限らず、例えば、一定期間の経過としてもよいし、医師や看護師の担当フロアが変わったときとしてもよい。また、入院患者のフロアの移動を伴う病室の移動があったときとしてもよいし、図17を用いて後述する感染影響度の算出開始を受け付けたときとしてもよい。
(サーバSvの感染影響度の算出処理手順)
つぎに、図17を用いて、サーバSvの感染影響度の算出処理手順について説明する。
図17は、サーバSvの感染影響度の算出処理手順の一例を示すフローチャートである。図17のフローチャートにおいて、まず、サーバSvは、例えば、病院H内のデスクトップ型PCなどの端末Tiを介して、医師や看護師から感染影響度の算出開始を受け付けたか否かを判断する(ステップS1701)。ここでは、風疹の感染影響度の算出開始を受け付けるものとする。サーバSvは、感染影響度の算出開始を受け付けるまで待つ(ステップS1701:No)。
そして、サーバSvは、感染影響度の算出開始を受け付けた場合(ステップS1701:Yes)、潜伏期間DB215を参照して、感染症の発生日から感染症の潜伏期間を特定する(ステップS1702)。例えば、風疹の場合、潜伏期間は、14〜22日間であり、最大で22日であることから、22日間遡った期間を特定する。
サーバSvは、発生日から潜伏期間分、遡った期間内の関連度スコアを集計する(ステップS1703)。例えば、発生日が4月10日であるとすると、サーバSvは、3月20日〜4月10日の期間内の関連度スコアを集計する。そして、サーバSvは、対象の階の入院患者を集計する(ステップS1704)。例えば、対象の階を病棟3階とした場合、サーバSvは、病棟3階の入院患者を集計する。つぎに、サーバSvは、エリアDB211、入院患者DB212および予防接種DB214を参照して、対象の階において予防接種患者がいるか否かを判断する(ステップS1705)。
サーバSvは、対象の階において予防接種患者がいる場合(ステップS1705:Yes)、対象の階の入院患者数から予防接種患者数を減算して感染力スコアを算出する(ステップS1706)。一方、対象の階において予防接種患者がいない場合(ステップS1705:No)、対象の階の入院患者数を感染力スコアとする(ステップS1707)。そして、サーバSvは、全ての階の感染力スコアの集計が完了したか否かを判断する(ステップS1708)。
サーバSvは、全ての階の感染力スコアの集計が完了していない場合(ステップS1708:No)、ステップS1704に移行する。サーバSvは、全ての階の感染力スコアの集計が完了した場合(ステップS1708:Yes)、感染症が発生した階以外の各階において、関連度スコアと感染力スコアとを乗算して感染影響度を算出する(ステップS1709)。
そして、サーバSvは、全ての階の感染影響度の算出が完了したか否かを判断する(ステップS1710)。サーバSvは、全ての階の感染影響度の算出が完了していない場合(ステップS1710:No)、ステップS1709に移行する。サーバSvは、全ての階の感染影響度の算出が完了した場合(ステップS1710:Yes)、具体的には、感染影響度表1400(図14参照)を作成した場合、感染影響度表1400を参照して、感染影響度が最も高い階を決定する(ステップS1711)。つぎに、サーバSvは、病院H内のタブレット型PCやデスクトップ型PCや医師や看護師のPHSやスマートフォン等の端末Tiに対してプッシュ型で警告を通知し(ステップS1712)、本フローチャートによる一連の処理を終了する。
以上説明したように、実施の形態において、サーバSvは、各エリア間の感染症の伝播可能性を示す指標と、エリア内の入院患者数とに基づいて、感染エリアから他のエリアへの感染影響度を推定して出力することとした。これにより、感染エリアで感染症が発生した場合に予測される他のエリアの感染影響度を可視化することができる。したがって、院内感染の被害を抑えるための迅速な初動対応を支援することができる。これにより、医師や看護師は、感染影響度に応じた初動対応をとることができ、院内感染の拡大を有効に抑えることができる。
また、本実施の形態において、サーバSvは、他のエリアの中で最も感染影響度が高いエリアを優先して表示させることとした。これにより、感染影響度が最も高いエリアの被害を抑えるための迅速な初動対応を支援することができる。これにより、医師や看護師は、感染影響度が最も高いエリアの初動対応をとることができる。
また、本実施の形態において、サーバSvは、他のエリア毎の感染影響度を表示させることとした。これにより、医師や看護師は、感染影響度に応じた比率で各エリアに人員を配置するなど有効な初動対応をとることができる。
また、本実施の形態において、入院患者数は、エリア内の予防接種を受けていない入院患者数である。これにより、予防接種を受けた入院患者については感染のおそれがないと見なせることから、感染力スコアに含めないようにすることができる。このため、感染影響度を高精度に推定することができる。
また、本実施の形態において、エリア間の感染症の伝播可能性を示す指標は、感染エリアと他のエリアとの両方を担当する医師または看護師の数に応じた値とした。これにより、各エリア間における医師や看護師等の移動を考慮して感染影響度を推定することができる。これにより、感染影響度を高精度に推定することができる。
また、本実施の形態において、エリア間の感染症の伝播可能性を示す指標は、所定の期間内において感染エリアと他のエリアとの間を移動した入院患者の数に応じた値とした。これにより、入院患者のフロアの移動を伴う病室の移動や、フロアの移動前後における感染症の潜伏期間を考慮して感染影響度を推定することができる。これにより、感染影響度を高精度に推定することができる。
なお、本実施の形態において、サーバSvは、病院Hに設けられ、病院H内における感染影響度を推定するものとしたが、これに限らず、老人ホームなどの介護施設や、災害時などの救護施設などに設けられ、各施設の感染影響度を推定するものとしてもよい。
なお、本実施の形態で説明した感染影響度推定方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。感染影響度推定プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)−ROM、MO(Magneto−Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、感染影響度推定プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標を取得し、
エリアに対応づけてエリア内の滞在者数を記憶する記憶部を参照して、前記第2のエリアに対応する滞在者数を特定し、
前記指標と、特定した該滞在者数とに基づいて、前記第1のエリアから前記第2のエリアへの感染症の影響度を推定し、
推定結果を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする感染影響度推定プログラム。
(付記2)前記滞在者数は、エリア内の予防接種を受けていない滞在者数である、
ことを特徴とする付記1に記載の感染影響度推定プログラム。
(付記3)前記指標は、前記第1のエリアと前記第2のエリアとの両方を担当する医師または看護師の数に応じた値である、
ことを特徴とする付記1に記載の感染影響度推定プログラム。
(付記4)前記指標は、所定の期間内において前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間を移動した患者の数に応じた値である、
ことを特徴とする付記1に記載の感染影響度推定プログラム。
(付記5)前記出力する処理は、
推定した前記影響度と対応づけて、取得した前記指標と、特定した前記滞在者数とを出力する、ことを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の感染影響度推定プログラム。
(付記6)第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標を取得し、
エリアに対応づけてエリア内の滞在者数を記憶する記憶部を参照して、前記第2のエリアに対応する滞在者数を特定し、
前記指標と、特定した該滞在者数とに基づいて、前記第1のエリアから前記第2のエリアへの感染症の影響度を推定し、
推定結果を出力する、
処理を実行することを特徴とする感染影響度推定方法。
(付記7)第1のエリアと第2のエリアとの間の感染症の伝播可能性を示す指標を取得し、
エリアに対応づけてエリア内の滞在者数を記憶する記憶部を参照して、前記第2のエリアに対応する滞在者数を特定し、
前記指標と、特定した該滞在者数とに基づいて、前記第1のエリアから前記第2のエリアへの感染症の影響度を推定し、
推定結果を出力する、
制御部を有することを特徴とする情報処理装置。