以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書において、「システム」は、1又は複数の情報処理装置を含むものとする。例えば、情報処理装置単体でもシステムを構成し得るし、複数の情報処理装置が協働してウェブサーバ等の機能を果たす場合もこれらの情報処理装置がシステムを構成し得る。また、以下の実施形態で説明するように、「システム」は、ウェブサーバとして機能する情報処理装置と、1又は複数の端末装置と、1又は複数の検査装置と、を含んでいてもよい。
<第1実施形態>
[システムの概要]
本発明の第1実施形態に係るシステムは、例えばインターネットを介したシステムを構成する。本実施形態において、当該システムは、感染性微生物への曝露リスクを評価する曝露リスク評価システムとして機能する。
図1に示す例において、本実施形態に係るシステムは、インターネットN上のサーバ100と、第1端末装置200Aと、第2端末装置200Bと、検出装置300と、測定装置400と、を含む。第1端末装置200Aと第2端末装置200Bは、同一のハードウェア構成を有していてもよく、端末装置200とも称する。また、検出装置300と測定装置400は、それぞれ、後述する曝露リスク関連情報を取得するための検査に用いられる検査装置500として機能する。なお、図1においては、システムが2つの端末装置200を含む例を挙げているが、3つ以上の端末装置200を含んでいてもよい。また、システムは、3つ以上の検査装置500を有していてもよい。
サーバ100は、例えば、感染性微生物の感染対策を支援する感染対策支援サービスの運営者によって運営されるウェブサーバ(情報処理装置)とすることができる。感染対策支援サービスは、例えば、対象領域の衛生管理を行う管理者等に対して、対象領域の感染対策を支援するサービスであり得る。本実施形態において、サービスの提供元の対象領域の衛生管理を行う者を、「管理者」と称する。サーバ100は、例えば、複数の端末装置200と、複数の検査装置500と、インターネットNを介して接続されている。サーバ100は、例えば、第1端末装置200A、検査装置500A(検出装置300及び測定装置400)から入力された情報を処理し、アプリケーション又はウェブサイト等を介して第2端末装置200Bを使用する管理者に感染対策支援サービスを提供することができる。
端末装置200(200A,200B...)は、例えば、スマートフォン、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、スマートウォッチ等であり得るが、これに限定されない。端末装置200は、例えば、サーバ100へアクセスし、サーバ100により生成されたウェブページ等を受信してブラウザ等により画面に表示する。
本実施形態において、第1端末装置200Aは、例えば、対象領域についての検査結果や対象領域に滞在する対象者の行動履歴等(後述する曝露リスク関連情報の少なくとも一部)の入力を受け付けて、サーバ100にこれらの情報を送信することができる。第1端末装置200Aは、対象領域において、後述する曝露リスク関連情報を取得するための検査を行う検査者によって使用され得る。検査者は、例えば、感染対策支援サービスの運営者又は運営者から委託された者でもよいし、対象領域の管理者でもよい。
第2端末装置200Bは、例えば、サーバ100によって生成された感染対策支援に関する情報を表示することができる。端末装置200Bは、感染対策支援サービスに登録する管理者によって使用され得る。
検出装置300は、例えば、対象領域の環境から採取されたサンプルを用いて、感染性微生物に関する検出検査を行う検査装置である。検出装置300は、インターネットNを介してサーバ100に接続されており、検出結果をサーバ100へ送信することができる。
測定装置400は、例えば、対象領域の環境における曝露リスクに関する指標を測定する検査装置である。本実施形態において、測定装置400は、例えば、空間におけるCO2濃度を測定する装置である。測定装置400は、インターネットNを介してサーバ100に接続されており、測定結果をサーバ100へ送信することができる。
本明細書において、「対象領域」は、感染対策支援サービスのユーザ(管理者)による衛生処理の対象となる領域であって、施設、屋外区域、公共交通機関、住居等を含み得る。
施設としては、商業施設、宿泊施設、教育施設、保育施設、医療施設、介護施設、業務施設、飲食施設、健康増進施設、イベント施設、これらの複合施設等が挙げられる。商業施設は、例えば、ショッピングセンター、スーパーマーケット、シネマコンプレックス、アミューズメント施設等が挙げられる。宿泊施設は、例えば、ホテル、旅館、民泊施設等が挙げられる。教育施設は、例えば、各種学校、カルチャーセンター等が挙げられる。保育施設は、保育園、乳幼児の一時預かり施設等が挙げられる。医療施設は、例えば、病院等が挙げられる。業務施設は、例えば、オフィスビル、工場等が挙げられる。飲食施設は、例えば、レストラン、喫茶店、ファーストフード店等が挙げられる。健康増進施設としては、例えば、フィットネス施設、温浴施設等が挙げられる。
屋外区域としては、公園、庭地、緑地、建設現場等が挙げられる。公共交通機関としては、鉄道、バス、タクシー、船舶、及び航空機等から選ばれる公共交通機関が挙げられる。
本明細書において、「対象者」は、対象領域に滞在する者であり、実在する対象者及び仮想的な滞在者を含む。具体的に、対象者は、対象領域において実際に観察された者であってもよいし、シミュレーション等によって想定される者であってもよい。
本明細書において、「感染性微生物」は、感染症の原因となる微生物であり、例えば、ウイルス、細菌、寄生虫、真菌、その他の感染性の微生物から選択された少なくとも一種を含む。これらのうち、評価対象とする感染性微生物は、公衆衛生の観点から感染対策の必要性の高い、ウイルス、細菌、原虫及び真菌から選択された少なくとも一種を含むことが好ましい。ウイルスの具体例としては、インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、ムンプスウイルス、風疹ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、デングウイルス等が挙げられる。細菌の具体例としては、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖連菌、肺炎球菌、結核菌、病原性大腸菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、赤痢菌、コレラ菌、レジオネラ菌等が挙げられる。真菌の具体例としては、アスペルギルス、クリプトコッカス等が挙げられる。原虫は、寄生虫のうち単細胞の微生物をいい、例えば、マラリア、病原性アメーバ、ジアルジア、クリプトスポルジウム等が挙げられる。本実施形態のシステムは、上記感染性微生物ののうちの1種又は2種以上を対象とすることができる。
本明細書において、「曝露」とは、典型的には感染性微生物が対象者の皮膚や毛髪に付着することや体内に侵入することを意味し、「曝露リスク」とは、典型的には感染性微生物が対象者の皮膚や毛髪に付着するリスクや体内に侵入するリスクを意味する。また、「感染対策」とは、対象者の体内における感染成立を防止する対策を意味し、例えば、感染性微生物の曝露を抑制する対策、曝露量を低減する対策等を含む。
[情報処理装置のハードウェア構成]
図2(A)に示すように、サーバ100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、入出力インタフェース15、及び、これらを互いに接続するバス14を備える。
CPU11は、必要に応じてRAM13等に適宜アクセスし、各種演算処理を行いながらサーバ100の各ブロック全体を統括的に制御する。ROM12は、CPU11に実行させるOS、プログラムや各種パラメータ等のファームウェアが固定的に記憶されている不揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11の作業用領域等として用いられ、OS、実行中の各種アプリケーション、処理中の各種データを一時的に保持する。
入出力インタフェース15には、表示部16、操作受付部17、記憶部18、通信部19等が接続される。
表示部16は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、OELD(Organic ElectroLuminescence Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等を用いた表示デバイスである。
操作受付部17は、例えばマウス等のポインティングデバイス、キーボード、タッチパネル、その他の入力装置である。操作受付部17がタッチパネルである場合、そのタッチパネルは表示部16と一体となり得る。
記憶部18は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリ(SSD;Solid State Drive)、その他の固体メモリ等の不揮発性メモリである。当該記憶部18には、上記OSや各種アプリケーション、各種データが記憶される。
本実施形態において、記憶部18は、後述する曝露リスクの評価処理に必要なプログラム等の他、後述する対象領域データベース、処理に用いられるその他のデータベースを有していてもよい。対象領域データベース等のデータベースは、システムの処理において、必要に応じて参照される。なお、これらのデータベースは、記憶部18ではなくサーバ100に外部接続された記憶装置やサーバに記憶されていてもよい。
通信部19は、例えばEthernet用のNIC(Network Interface Card)や無線LAN等の無線通信用の各種モジュールであり、上記端末装置200との間の通信処理を担う。
図2(B)に示すように、端末装置200も、サーバ100と同様に、例えば、CPU21、ROM22、RAM23、バス24、入出力インタフェース25、表示部26、操作受付部27、記憶部28、通信部29を有する。
また、検出装置300は、例えば、サーバ100と同様の構成に加えて、感染性微生物に関する指標を検出する検出部をさらに有していてもよい。測定装置400は、例えば、サーバ100と同様の構成に加えて、CO2濃度を測定する測定部をさらに有していてもよい。
[データベースの構成例]
対象領域データベースは、感染対策支援サービスに登録する対象領域の属性情報を対象領域毎に記憶している。対象領域の属性情報としては、特に限定されないが、例えば、名称、対象領域を識別するためのID、対象領域の分類(施設分類等)、対象領域を運営する運営者の名称及び/又はID、住所(地域)といった一般的な情報の他、対象領域において区分されたエリア情報、対象領域のマップ情報、対象領域に滞在する対象者の属性情報等を含み得る。属性情報は、例えば、曝露リスク、重症化リスク及び/又は発症リスクに関する属性についての情報を含むことが好ましく、このような属性としては、例えば、年齢層、役割、職種等の他、これらのリスクに関する疾患の有病率、既往症率、罹患率等が挙げられる。なお、エリア情報は、エリアの名称やその位置情報等を含み、当該位置情報は、対象領域のマップ上の位置と対応付けて記憶されていてもよい。
本実施形態において、対象領域データベースは、上記属性情報の他、対象領域毎に、後述する複数の評価項目の情報と、取得された曝露リスク関連情報と、を含んでいる。さらに、対象領域データベースは、例えば、対象領域の評価対象の感染性微生物に関する情報(分類、感染経路、感染リスク、重症化リスク等)、その他の処理に用いられる情報を含んでいてもよい。
本実施形態において、複数の評価項目は、対象領域内の位置、時間及び対象者の行動から選択された少なくとも一つの要素によって区分された項目であり、曝露リスクを評価するための項目である。評価項目は、本実施形態において、曝露リスク評価処理の処理単位となる。複数の評価項目は、例えば、対象領域における対象者の行動、感染性微生物の感染経路、対象領域における衛生管理項目等に基づいて決定される。
例えば、評価項目は、対象者の曝露リスクに関する行動に基づいて区分された複数の場面にそれぞれ対応してもよい。評価項目に対応する場面は、対象者の所定の行動が行われる場面であり、例えば、対象領域における典型的な対象者の動線上にある場面(例えば、手洗い、食事、会話等)、対象領域で行われるイベントに応じた場面(例えば受付、入場、退場等)等が挙げられる。また、場面に対応する評価項目は、それぞれ、当該場面が行われる対象領域内の位置情報(例えばエリア情報等)と対応付けられていてもよい。
あるいは、評価項目は、対象領域における、曝露リスクによって区分されるエリアに対応していてもよい。評価項目に対応するエリアは、例えば、対象領域において壁やパーテーションなどで仕切られた区画(例えば、会議室、スタッフルーム、キッチン等)であってもよいし、仕切られた区画内の、異なる曝露リスクを有するエリア(例えば、食事エリア、消毒エリア等)であってもよい。
あるいは、評価項目は、曝露リスクによって区分される時間帯(例えば、朝、昼、夜、午前、午後等)に対応していてもよい。
さらに、評価項目は、対象領域内の位置、時間及び対象者の行動から選択された複数の要素によって区分された項目でもよい。このような評価項目としては、例えば、時間帯とエリアの要素によって区分された評価項目、時間帯と場面の要素によって区分された評価項目、エリアと場面によって区分された評価項目等が挙げられる。
本実施形態において、評価項目は、それぞれ、感染性微生物による少なくとも一つの感染経路と対応付けて記憶されていることが好ましい。これにより、後述する曝露リスク関連情報を取得するための検査項目の選定が容易になる。
具体的に、感染性微生物による感染経路は、感染性微生物の種類に応じて、例えば、飛沫感染、接触感染、空気感染、経口感染、ベクター感染、その他の感染経路から選択された少なくとも一つを含む。各評価項目に対応する感染経路は、対象となる感染性微生物による感染経路から選択され、例えば、各評価項目に対応する対象者の行動、各評価項目に対応する環境(例えば、環境表面や空間等)等に基づいて設定される。各評価項目に対応する感染経路は、1つでもよいし、複数でもよい。評価項目が場面に対応する場合を例に挙げると、対象者が高頻度で接触する物品を使用する場面は、例えば、接触感染に対応付けて記憶され得る。また、対象者同士が近距離で接触し得る場面は、例えば、飛沫感染、飛沫による接触感染、空気感染に対応付けて記憶され得る。
曝露リスク関連情報は、曝露リスクに関連する情報であり、サーバ100による曝露リスク評価処理に用いられる情報である。本実施形態において、曝露リスク関連情報は、第1端末装置200Aによって入力されサーバ100に送信された情報と、検査装置500によって送信された検査結果についての情報と、から選択された少なくとも一つの情報を含む。
本実施形態において、曝露リスク関連情報は、複数の評価項目各々における曝露リスクに関連する情報であることが好ましい。例えば、曝露リスク関連情報は、複数の評価項目各々に対応する少なくとも一つの感染経路による曝露リスクに関連する情報を含むことが好ましい。例えば、曝露リスク関連情報は、後述する、行動リスク情報と、環境リスク情報と、から選択された少なくとも一つの情報を含むことが好ましい。
本実施形態において、行動リスク情報は、複数の評価項目のうちの少なくとも一つの評価項目に対応する状況における、対象者の曝露リスクに関連する行動に関する情報である。曝露リスク関連情報が行動リスク情報を含むことで、接触感染、飛沫感染、空気感染などの、幅広い曝露リスクの評価が可能となる。
行動リスク情報は、例えば、対象者の曝露リスクに関連する行動についての情報、対象者の行動に起因する曝露リスクを変化させる状況についての情報から選択された少なくとも一つの情報を含むことが好ましい。曝露リスクに関連する行動は、例えば、感染性微生物の曝露リスクを変化させる可能性のある行動を含む。このような行動としては、例えば、他人との会話、発声、くしゃみ、咳等の飛沫発生行動、環境表面への接触行動、手指衛生、清掃、マスク着用等の感染対策行動等が挙げられる。対象者の行動に起因する曝露リスクを変化させる状況としては、例えば、後述する感染対策状況等が挙げられる。
例えば、行動リスク情報は、評価項目に対応する状況で観察された1又は複数のサンプル対象者の曝露リスクに関連する行動に関する情報を含んでいてもよい。サンプル対象者は、対象領域において実際に観察された対象者でもよいし、対象領域に対応する仮想空間等において観察された仮想的な対象者でもよい。また、実在するサンプル対象者の観察方法としては、例えば、対象領域に出向いて直接観察する方法、対象領域を撮像した画像を観察する方法等が挙げられる。
例えば、行動リスク情報は、評価項目に対応する状況で観察された対象者としての複数のサンプル対象者が接触する接触場面に関する情報を含むことが好ましい。本明細書において、複数の(サンプル)対象者同士の「接触」とは、これらの(サンプル)対象者の肌や衣服が直接触れ合う行動の他、会話等の近距離での交流を伴う行動を含む。また、「接触場面」とは、評価項目に対応する状況において観察される、複数のサンプル接触者による接触行動を含む場面であり、評価項目としての「場面」とは異なる概念とする。
具体的に、行動リスク情報は、例えば、接触場面における1又は複数のサンプル対象者の滞在時間、接触場面における1又は複数のサンプル対象者の飛沫発生行動、接触場面におけるサンプル対象者の位置関係、接触場面における感染対策状況から選択された少なくとも一つについての情報を含むことが好ましい。上記滞在時間についての情報としては、例えば、複数のサンプル対象者が近距離で滞在した滞在時間等についての情報が挙げられる。上記位置関係についての情報としては、サンプル接触者間の距離、サンプル接触者の席の位置関係(対面、斜め等)等についての情報が挙げられる。飛沫発生行動としては、例えば、会話、発声、くしゃみ、咳などが挙げられ、飛沫発生行動についての情報としては、例えば、飛沫発生行動の有無、時間、頻度、回数等についての情報が挙げられる。感染対策状況としては、手指衛生、清掃、マスクの着用、パーテーションの設置等が挙げられ、感染対策状況についての情報としては、感染対策状況の有無、感染対策行動(手指衛生や清掃等)の回数、パーテーションの設置位置及び/又は数、マスクの素材等についての情報が挙げられる。
本実施形態において、環境リスク情報は、複数の評価項目のうちの少なくとも一つの評価項目に対応する環境に起因する曝露リスクに関連する情報である。本明細書において、対象領域における環境は、例えば、対象領域内の環境表面、対象領域内の空間、対象領域で使用される水等を含む。本明細書において、上記環境表面は、例えば、対象領域に含まれる建造物の表面(床、壁等)、対象領域に配置された物品の表面等を含み得る。物品とは、固定された物品、固定されていない物品のいずれでもよい。物品の材料も限定されない。物品としては、例えば、家具、電化製品、水回りの物品、建材、建具、衣類、寝具等が挙げられる。
本実施形態において、環境リスク情報は、例えば、環境における感染性微生物に関する検出結果についての情報を含んでいることが好ましい。感染性微生物に関する検出結果は、例えば、感染性微生物についての検出結果、又は感染性微生物と関連性を有する指標の検出結果の少なくとも一方を含み得る。感染性微生物についての検出結果としては、例えば、感染性微生物に含まれるタンパク質またはその断片の検出結果、感染性微生物の遺伝子の検出結果等を含む。タンパク質またはその断片の検出方法としては、例えば、ELISA法、イムノクロマト法、バイオセンサー等の抗原抗体反応を利用した方法が挙げられる。遺伝子の検出方法としては、例えば、PCR法、リアルタイムPCR法、LAMP法等を利用した方法が挙げられる。感染性微生物と関連性を有する指標の検出結果としては、感染性微生物の種類に応じて適宜選択できるが、例えば、唾液含有成分の検出結果、ATPの検出結果、バイオセンサーの検出結果等が挙げられる。
環境リスク情報は、例えば、環境における感染性微生物に関する検出結果についての情報を含んでいることが好ましく、例えば、環境表面における感染性微生物に関する検出結果についての情報を含んでいることが好ましい。環境表面からの検出用サンプルの採取方法としては、例えば、適当な採取手段(脱脂綿、不織布、スポンジ、綿棒、スワブ等)を環境表面に接触させる方法が挙げられる。この場合、採取手段は、適当な液体(界面活性剤を含む水溶液、生理食塩水、緩衝液、これらを組み合わせた液体等)によって浸潤された状態であることが好ましい。また、環境リスク情報は、環境空間における感染性微生物に関する検出結果についての情報を含んでいてもよい。環境空間からの検出用サンプルの採取方法としては、例えば、フィルターによる捕捉、バブリング等による液体への捕捉、静電吸着による捕集、ポンプを用いた吸引等が挙げられる。また、当該採取方法は、ポンプを用いないパッシブサンプリングでもよいし、分級を用いた捕捉でも良い。
本実施形態において、環境リスク情報は、例えば、環境における唾液含有成分及び/又は胆汁酸などの糞便含有成分の検出結果を含むことが好ましく、特に、接触感染と関連性の高い、環境(例えば環境表面)における唾液含有成分の検出結果を含むことが好ましい。検出対象となる唾液含有成分は、例えば、アミラーゼを含むことが好ましい。アミラーゼは、ヒトの唾液に含まれている酵素である。環境リスク情報がアミラーゼ等の唾液含有成分の検出結果を含むことで、環境における唾液飛沫による汚染状況を評価することが可能となる。唾液含有成分の検出結果は、例えば、当該成分の検出量についての情報、当該成分の検出頻度に関する情報等を含み得る。
本実施形態において、環境リスク情報は、例えば、環境におけるATPの検出結果についての情報を含むことが好ましく、特に、環境表面におけるATPの検出結果についての情報を含むことが好ましい。ATPは、電気化学的な方法、例えば化学発光法によって検出することができる。環境リスク情報がATPの検出結果を含むことで、環境における微生物自体による汚染のみならず、微生物の増殖に関連する有機物による汚染についても評価することができ、環境における感染性微生物の増殖リスクの評価が可能となる。例えば、環境表面におけるATPは、ATP拭き取り検査等によって迅速に検出することができる。
本実施形態において、環境リスク情報は、例えば、空間の換気状況に関する情報を含むことが好ましい。空間の換気状況に関する情報としては、空間のCO2濃度の測定結果についての情報、空間の換気量の測定結果についての情報、換気設備の能力や電力についての情報、空間の換気頻度についての情報、空間内の気流の風速、風量、及び/又は風の向きの測定結果についての情報等が挙げられる。
上述の例の他、環境リスク情報は、例えば、対象領域における水を介した水介在性の曝露リスクについての情報を含んでいてもよい。このような水介在性の曝露リスクに関連する情報としては、対象領域で排出される排水、対象領域で使用される水(水道水、プールの水、浴槽内の水、用水路内の水、河川や湖の水等)についての微生物検査の結果や水質検査の結果等が挙げられる。
本実施形態において、記憶部18は、さらに、ユーザデータベースを有していてもよい。ユーザデータベースは、感染対策支援サービスに登録するユーザの属性情報をユーザ毎に記憶している。本実施形態において、ユーザは、感染対策支援サービスにアクセス可能なユーザであり、例えば、検査結果を登録する検査者、及び管理者を含む。ユーザの属性情報としては、特に限定されないが、例えば、ユーザの氏名(ニックネーム)、ユーザを識別するためのID、ユーザの分類(例えば管理者、検査者等)、ユーザの所属先、ユーザの連絡先、といった一般的な情報の他、ユーザ毎に、担当する対象領域の情報等を含み得る。
[システムの動作例]
次に、以上のように構成されたシステムの動作例について説明する。以下で説明するサーバ100の動作は、CPU11及び通信部19等のハードウェアと、記憶部18に記憶されたソフトウェアとの協働により実行される。第1及び第2端末装置200A,200Bの動作も同様に、CPU21及び通信部29等のハードウェアと、記憶部28に記憶されたソフトウェアとの協働により実行される。各検査装置500も同様である。
本動作例では、対象領域が飲食店である店舗Aであり、対象となる感染性微生物が接触感染、飛沫感染及び空気感染等により感染症を引き起こすエンベロープウイルス(インフルエンザウイルス、コロナウイルス等)である例を挙げる。本動作例においては、第1端末装置200Aを使用する検査者が、対象領域において所定の検査を行い、第1端末装置200Aに検査結果又は検査結果に関連する情報を入力する。また、対象領域に設置された検査装置500(例えば検出装置300及び測定装置400)が検査結果を取得し、当該検査結果をサーバ100へ送信する。サーバ100は、受信した情報に基づいて、曝露リスクの評価処理を行う。そしてサーバ100は、感染対策支援サービスのユーザである対象領域の衛生管理者(以下、「管理者」)の使用する端末装置200Bに対して、処理結果を送信する。但し、本実施形態におけるシステムの動作は、以下の動作例に限定されない。
図3は、本動作例の対象領域となる飲食店である店舗50のマップの例を示す。この店舗50は、例えば、顧客とスタッフが利用する共用エリア510と、スタッフが利用するスタッフエリア520と、を含む。さらに、共用エリア510は、例えば、エントランスエリア511と、飲食エリア512と、を有する。エントランスエリア511は、出入口513と、待機ゾーン514と、を有する。飲食エリア512は、通路ゾーン515と、複数のテーブル516A,516B・・・と、トイレ517と、を有する。スタッフエリア520は、キッチンゾーン521と、スタッフルーム522と、を有する。これらのエリアの情報は、例えば対象領域データベースに記憶されている。また、このようなマップの情報も、例えば対象領域データベースに記憶されていることが好ましい。
店舗50を利用する典型的な対象者(顧客)は、例えば、出入口513から店舗50に入店し、出入口513近傍に配置された消毒器518で手指を消毒する。そして、待機ゾーン514で待機し、飲食エリア512へ入場する。顧客は、所定のテーブル516Aに着席し、メニューを選定し、メニューをオーダーする。そして、スタッフがテーブル516Aに食事を配膳する。その後、顧客は、テーブル516Aで食事や会話をし、必要に応じてトイレ517を利用して、退席し、退店する。
本動作例において、対象領域データベースは、例えば、予め決定された上述のような顧客の動線上の各場面に対応する評価項目を記憶している。本動作例において、評価項目は、例えば、アルコール消毒、待機、席とり、メニュー選定、オーダー、配膳、食事、会話、トイレ、退席、退店、等の場面を含む。表1に、本動作例における評価項目の例を示す。これらの各評価項目(場面)の情報は、例えば、曝露リスクとなり得る感染経路の情報(例えば接触感染、飛沫感染、空気感染)と対応付けられている。また、各評価項目の情報は、例えば、対象となるエリアの情報とも対応付けられていることが好ましい。
検査者は、曝露リスク関連情報を取得するための検査を行う。検査は、感染経路の情報や実際の顧客の行動等に応じて、評価項目毎に選定され得る。本動作例において、接触場面を含み得る食事、会話等の場面では、サンプル対象者の行動を観察する行動検査が行われる。また、メニュー選定、食事、会話、トイレ等の環境表面の汚染リスクを有する場面では、環境表面に対して、唾液含有成分やATP検査が行われる。また、検査者は、例えば、空間の汚染リスクを有するエリア(例えば飲食エリア512等)を選定して、CO2濃度を測定する測定装置400を設置する。
(曝露リスク関連情報の取得処理)
まず、図4を参照し、検査者の使用する第1端末装置200Aは、曝露リスク関連情報の少なくとも一部の入力を受け付け(ST11)、その曝露リスク関連情報の少なくとも一部をサーバ100へ送信する(ST12)。本動作例において、第1端末装置200Aが入力を受け付ける曝露リスク関連情報は、例えば、行動リスク情報に含まれる行動検査の検査結果についての情報と、環境リスク情報に含まれる唾液飛沫検査の検査結果についての情報と、を含む。なお、ATP検査及びCO2検査に関しても、第1端末装置200Aは、検査結果に関連する、検査装置500の位置情報等の情報を入力し、送信することができる。
まず、行動検査の例について説明する。
行動検査を行う検査者は、対象領域の店舗に出向いて行動観察を行ってもよいし、例えば店舗に設置されたカメラ等によって記憶された画像等に基づいて行動観察を行ってもよい。検査者は、例えば、飛沫感染に対応付けられた各場面において、検査対象となるサンプル対象者(検査対象者及びその接触者)を含む接触場面を選定する。検査者は、例えば、所定の時間毎に行動検査を行うことができる。この場合に、異なる時間帯に同一のサンプル対象者グループが観察された場合は、それぞれ行動検査を行うことができる。
次に、検査者は、第1端末装置200Aに行動検査の結果を入力するため、接触場面の検査結果を入力するための画面を表示させる。まず、第1端末装置200Aを使用する検査者が、感染対策支援サービスのアプリケーションへのログイン操作を行うことで、第1端末装置200Aの表示部26が、対象領域選択画面201を表示することができる(図5(A))。対象領域選択画面201は、例えば、感染対策支援サービスに登録された複数の対象領域の情報を含む。検査者は、対象領域の選択画面201において検査対象となる対象領域(例えば店舗A)をタップ等の操作によって選択し、表示部26に検査項目選択画面202を表示させる(図5(B))。
図5(B)に例示する検査項目選択画面202は、複数の検査項目の情報を含む。検査者は、検査項目選択画面202において検査対象の検査項目(ここでは行動検査)を選択することができる。次に、第1端末装置200Aの表示部26が、行動検査の対象となる場面の情報を含む評価項目選択画面203を表示することができる(図6(A))。検査者は、例えば、評価項目選択画面203において検査対象となる場面(この例では「会話」)を選択し、表示部26に検査対象となるサンプル対象者(以下、「検査対象者」とも称する)の選択画面204を表示させる(図6(B))。
検査者は、例えば、サンプル対象者の選択画面204において、検査対象となる検査対象者の測定ボタン204aを選択し、表示部26に滞在時間測定画面205を表示させる(図6(C))。図6(C)に例示する滞在時間測定画面205は、検査対象者についての行動入力欄205aと、接触者1についての行動入力欄205bと、接触者2についての行動入力欄205cと、コメント入力欄205iと、検査完了ボタン205jと、を含む。検査対象者についての行動入力欄205aは、例えば、滞在時間測定ボタン205dと、マスク有無登録ボタン205eと、を含む。例えば、接触者1及び接触者2についての行動入力欄205b、205cは、例えばタップ等によって選択されると、同様の滞在時間測定ボタン及びマスク有無登録ボタンとが展開される。
本動作例において、検査者は、例えば会話場面の一接触場面における検査対象者の行動を観察する。検査者は、例えば、検査対象者と接触者との接触場面が開始されると、滞在時間測定ボタン205dをタップ等によって選択する。これにより、CPU21は、検査対象者の接触場面における滞在時間の測定を開始する。また、検査者は、当該接触場面における検査対象者のマスク着用の有無を、マスク有無登録ボタン205eを選択することによって登録する。また、検査者は、例えば、検査対象者と接触している接触者の滞在時間の測定も同様に開始し、当該接触者のマスク着用の有無も登録する。検査者は、例えば、検査対象者と接触者との接触が終了した場合、再び滞在時間測定ボタン205dを選択して、滞在時間の測定を終了する。
本動作例において、検査者は、上記滞在時間以外の、検査対象者及び接触者の曝露リスクに関連する情報を登録することができる。例えば、検査者は、検査対象者の行動入力欄205a近傍に配置された三点リーダー205fを選択し、検査対象者登録画面206を表示部26に表示させる(図7(A))。図7(A)に例示する検査対象者登録画面206は、例えば、検査対象者の年齢層登録欄206a、マスクの種類の登録欄206b、声の大きさの登録欄206c、呼吸量の登録欄206d、手指衛生の登録欄206e、清掃行動の登録欄206f、確定ボタン206g等を含む。検査者は、例えば、これらの登録欄において検査対象者の情報を登録し、確定ボタン206gを選択する。これにより、検査対象者の詳細な情報が第1端末装置200Aに入力される。
同様に、検査者は、接触者の行動入力欄205b(205c)の近傍に配置された三点リーダー205g(205h)を選択し、接触者登録画面207を表示部26に表示させる(図7(B))。図7(B)に例示する接触者登録画面207は、例えば、検査対象者の年齢層登録欄207a、マスクの種類の登録欄207b、検査対象者との距離の登録欄207c、パーテーションの有無の登録欄207d、確定ボタン207e等を含む。検査者は、これらの登録欄において接触者の情報を登録し、確定ボタン207eを選択する。これにより、曝露リスクに関する接触者の詳細な情報が第1端末装置200Aに入力される。
接触場面における検査が完了した場合、検査者は、滞在時間測定画面205の検査完了ボタン205jを選択して、検査結果表示画面208を表示部26に表示させる。検査結果表示画面208は、例えば、検査情報(検査日時、検査者の氏名等)の表示欄208a、検査対象者情報表示欄208b、接触者情報表示欄208c、コメント表示欄208d、確定ボタン208e等を含む。検査者は、検査結果表示画面208の表示項目を確認し、確定ボタン208eを選択する。
これにより、第1端末装置200AのCPU21は、行動検査の基本情報(対象領域、評価項目(場面)、検査日時、検査者等についての情報)、検査対象者についての行動リスク情報(滞在時間、年齢層、マスク着用の有無、声の大きさ、呼吸量、手指衛生、清掃接触場面等についての情報)、接触者についての行動リスク情報(滞在時間、年齢層、マスク着用の有無、検査対象者との距離、パーテーションの有無等の情報)等の入力を受け付け、これらの情報を対応付けてサーバ100へ送信することができる。
次に、唾液飛沫検査の例について説明する。
本動作例において、唾液飛沫検査は、アミラーゼを検出するための検査とする。まず、検査者は、対象領域の検査対象となる評価項目(例えば場面)において、接触感染リスクを有する検査対象部位を選定することができる。そして、検査者は、検査対象部位において、検査サンプルを採取することができる。検査サンプルの採取は、例えば、所定の採取具によって検査対象部位の表面を拭き取ることにより行われる。検査者は、採取されたサンプルを用いて、アミラーゼの抽出及び検出を行うことができる。アミラーゼの抽出及び検出は、例えば、市販のキットを用いて行うことができる。アミラーゼの検出は、例えば、抗原抗体反応及び/又は酵素反応を利用した方法により行われる。検査者は、目視により、キットなどに表示されたアミラーゼの検出結果を確認することができる。また、検査者は、例えば、第1端末装置200Aを用いてアミラーゼの検出結果を撮像することができる。
続いて、検査者は、行動検査の例と同様に、例えば、第1端末装置200Aを用いて感染支援対策アプリケーションへログインし、対象領域選択画面201において店舗Aを選択し、検査項目選択画面202において検査対象となる唾液飛沫検査を選択する(図5(A)及び(B))。次に、第1端末装置200Aの表示部26が、例えば、唾液飛沫検査の対象となる評価項目選択画面を表示する。評価項目選択画面は、図6(A)の評価項目選択画面と同様に構成され得る。検査者は、評価項目選択画面において検査対象となる場面を選択し、表示部26に検査対象物の設定画面209を表示させる(図8(A))。
図8(A)に例示する検査対象物の設定画面209は、例えば、検査対象物の位置情報選択欄209a、各検査対象物の検査情報表示欄209b、マップ位置登録ボタン209d等を含む。検査情報表示欄209bは、例えば、検査対象物の名称と、検査対象物における各検査対象部位の測定ボタン209cを含む。検査対象物やその部位の情報は、予めサーバ100の対象領域データベースに登録されていてもよいし、検査者が検査対象物登録画面210において検査対象を登録してもよい(図8(B))。また、予め対象領域のマップ情報が対象領域データベースに登録されている場合、検査者は、検査対象物の設定画面209のマップ位置登録ボタン209dを選択して、検査対象物のマップ上の位置情報を登録することもできる。検査者は、検査結果を得た検査対象物の部位の測定ボタン209cを選択し、表示部26に検査結果登録画面211を表示させる(図8(C))。
図8(C)に例示する検査結果登録画面211は、例えば、検査情報表示欄211a、検査結果画像表示欄211b、検査結果登録欄211c、コメント入力欄211d、確定ボタン211e等を含む。検査情報表示欄211aは、測定日時、検査者の氏名、検査エリア、検査対象物の名称及び/又は画像、検査対象部位の名称及び/画像等の情報を含む。検査結果画像表示欄211bは、検査者がアップロードした、検査結果を示すキットや試薬等の画像情報を含む。検査結果登録欄211cは、検査者が目視により判断した検査結果の情報(例えば、陽性/陰性、比色法による検査結果等)を登録する欄である。検査者は、検査結果の画像をアップロードして、検査結果登録欄211cに目視により判断した検査結果を登録する。全ての検査結果を登録した後、検査者は、確定ボタン211eを選択する。
これにより、第1端末装置200Aは、唾液含有成分であるアミラーゼの検出結果についての情報として、検査の基本情報(測定日時、検査者の氏名、検査エリア、検査対象物の名称及び/又は画像、検査対象部位の名称及び/画像等の情報)、検査結果情報(検査結果の画像情報、検査結果の登録情報)の入力を受け付け、これらの情報を対応付けてサーバ100へ送信することができる。
一方、環境リスク情報に含まれるATP検査及びCO2検査の検査結果については、検査装置500(例えば検出装置300及び測定装置400)が検査結果を取得し(ST21)、検査結果を曝露リスク関連情報の一部として送信することができる(ST22)。なお、以下に示すように、これらの検査に関する情報は、検査装置500、サーバ100及び第1端末装置200Aが協働して取得することができる。
ATP検査の例について説明する。
本動作例では、例えば化学発光法によってATPを検出し、検出結果を読み取ることが可能な検出装置300を用いたATP拭き取り法による検出例を挙げる。本動作例において、検査者は、例えば、対象となる評価項目において接触感染リスクを有する検査対象部位を選定し、検査対象部位から検査サンプルを採取することができる。検査サンプルの採取は、所定の採取具によって検査対象部位の表面を拭き取ることにより行われる。検査者は、検出装置300に採取具をセットして、検出装置300を操作して検出処理を開始させる。これにより、検出装置300が検出結果を取得することができる。
続いて、検査者は、行動検査等の例と同様に、例えば、第1端末装置200Aを用いて感染支援対策アプリケーションへログインし、対象領域選択画面201において店舗Aを選択し、検査項目選択画面202において検査対象となるATP検査を選択する(図5(A)及び(B))。これにより、第1端末装置200Aの表示部26が、例えば、ATP検査の対象となる評価項目選択画面を表示する。評価項目選択画面は、図6(A)の評価項目選択画面と同様に構成され得る。検査者は、例えば、評価項目選択画面において検査対象となる場面を選択し、表示部26に検査対象設定画面212を表示させる(図9(A))。
図9(A)に例示する検査対象設定画面212は、例えば、検査対象物の位置するエリア情報選択欄212a、各検査対象物の検査情報表示欄212b、マップ位置登録ボタン212c、検出装置接続ボタン212e等を含む。検査情報表示欄212bは、例えば、検査対象物における各検査対象部位の測定ボタン212dを含む。検査対象物やその部位の情報は、予めサーバ100の対象領域データベースに登録されていてもよいし、検査者が検査対象登録画面において登録してもよい。また、予め対象領域のマップ情報が対象領域データベースに登録されている場合、検査者は、マップ位置登録ボタン212cを選択して、検査対象物のマップ上の位置情報を登録することもできる。検査者は、例えば、検出装置接続ボタン212eを選択し、表示部26に検出装置接続画面213を表示させる(図9(B))。
検査者は、図9(B)に例示する検出装置接続画面213に含まれる検出装置300の中から、検出結果を得た検出装置300を選択することができる。これにより、選択された検出装置300は、インターネットNを介して、サーバ100に、検出装置300の識別情報に対応付けられたATPの検出結果についての情報を送信することができる。第1端末装置200Aは、例えば、ATPの検出結果についての情報をサーバ100から受信し、表示部26に検査結果登録画面214を表示させることができる(図9(C))。
図9(C)に例示する検査結果登録画面214は、例えば、検査情報表示欄214a、検査対象物選択欄214b、検査対象部位登録欄214c、検出結果情報表示欄214d、コメント入力欄214e、確定ボタン214f等を含む。検査情報表示欄214aは、例えば、測定日時、検査者の氏名、検査対象物のエリア等の情報を含む。検査結果情報表示欄214dは、例えば、接続された検出装置300から取得された検出結果の情報(例えば、定量的な情報(陽性/陰性等)及び/又は定性的な情報(検出値等))を含む。検査者は、検査対象物選択欄214b及び検査対象部位登録欄214cによって、検出結果に対応する検査対象物及びその部位の情報を登録することができる。全ての検査結果を登録した後、検査者は、例えば、確定ボタン214fを選択する。
これにより、第1端末装置200Aは、ATPの検出結果に関する情報として、検査の基本情報(検査日時、検査者の氏名、検査エリア、検査対象物の名称及び/又は画像、検査対象部位の名称及び/画像等の情報)の入力を受け付け、これらの情報を検査結果情報と対応付けてサーバ100へ送信することができる。
次に、CO2検査について説明する。
検査者は、例えば、対象領域の評価項目(例えば会話場面)に対応するエリア(例えば飲食エリア)に、空気中のCO2濃度を測定する測定装置400を設置することができる。検査者は、第1端末装置200Aによって、測定装置400の測定開始のための入力操作や、測定装置400の識別情報と設置位置等の情報を対応付けるための入力操作等を行うことができる。
続いて、検査者は、行動検査の例と同様に、例えば、第1端末装置200Aを用いて感染支援対策アプリケーションへログインし、対象領域選択画面201において店舗Aを選択し、検査項目選択画面202において検査対象となるCO2検査を選択する(図5(A)及び(B))。次に、第1端末装置200Aの表示部26が、例えば、CO2測定の対象となる評価項目選択画面を表示する。評価項目選択画面は、図6(A)の評価項目選択画面と同様に構成され得る。検査者は、例えば、評価項目選択画面において検査対象となる場面を選択し、表示部26に測定装置設定画面215を表示させる(図10(A))。
図10(A)に例示する測定装置設定画面215は、例えば、測定装置400の位置するエリア情報選択欄215a、測定装置400の識別情報表示欄215b、各測定装置400の測定ボタン215c、測定装置400の追加ボタン215d等を含む。検査者は、新たな測定装置400を登録する場合は、追加ボタン215dを選択して、表示部26に、測定装置登録画面216を表示させ、識別情報入力欄216aに測定装置400の識別情報(シリアルNo.等)を入力することができる。
これにより、第1端末装置200Aは、測定装置400の位置情報、識別情報等の情報の入力を受け付けて、これらの情報を対応付けてサーバ100へ送信することができる。
検査者は、測定装置設定画面215において、例えば、測定を開始する測定装置400に対応する測定ボタン215cを選択する。これにより、選択された測定装置400は、CO2濃度の測定結果を取得し、インターネットNを介して、サーバ100に、測定装置400の識別情報に対応付けられた測定結果についての情報を送信することができる。
図4に示すように、サーバ100のCPU11は、例えば、第1端末装置200A及び検査装置500(検出装置300及び測定装置400)から送信された曝露リスク関連情報を受信(取得)し(ST31)、例えば、記憶部18の対象領域データベースにこれらの情報を記憶する。
(曝露リスクの評価処理)
図4に示すように、CPU11は、複数の評価項目各々における曝露リスクを、曝露リスク関連情報に基づいて評価する(ST32)。本動作例において、CPU11は、評価項目である場面毎に、当該評価項目に対応付けられた曝露リスク関連情報を用いて評価することができる。各評価項目の評価において、CPU11は、例えば、各検査結果に基づく曝露リスクをそれぞれ評価し、これらの評価結果に基づいて各評価項目の評価結果を導出してもよい。あるいは、CPU11は、評価項目に対応する全ての検査結果を機械学習モデル等に適用し、当該評価項目の評価結果を導出することもできる。本動作例において、曝露リスクの評価結果は、例えば曝露リスクの指標となる曝露リスク指標として導出されてもよい。曝露リスク指標は、数値(評点)として表されてもよいし、数値以外のランクとして表されてもよい。
CPU11は、例えば、曝露リスク関連情報から評価結果を導出するための機械学習モデルを用いて、曝露リスクを評価してもよい。あるいは、CPU11は、記憶部18に記憶された、検査結果と、それに対応する評価結果とを対応付けたテーブルを用いて、曝露リスクを評価してもよい。また、CPU11は、後述するように、曝露リスク関連情報に含まれる情報から曝露リスクをシミュレーションするシミュレーションモデルを用いて、曝露リスクを評価してもよい。評価結果の導出にかかる情報処理の速度を高めるという観点から、テーブル、シミュレーションモデル、もしくはそれらの組み合わせを用いることがより好ましい。
本動作例において、CPU11は、各評価項目に対応する行動リスク情報及び環境リスク情報から選択された少なくとも一つの曝露リスク関連情報に基づいて、各評価項目の曝露リスクを評価することができる。例えば、CPU11は、評価項目毎に、曝露リスク関連情報として取得された検査結果各々から曝露リスク指標を算出してもよい。あるいは、CPU11は、検査結果各々から算出された曝露リスク指標の合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出してもよい。また、CPU11は、評価項目毎に、各感染経路に対応する検査結果から、感染経路毎の曝露リスク指標を算出してもよい。なお、異なる検査結果から導出された曝露リスク指標を加算する場合、CPU11は、各検査結果から導出された曝露リスク指標に、曝露リスクへの重要度(例えば寄与度等)に応じた係数を乗じた値を算出し、この算出された値を加算することができる。
行動リスク情報を用いた評価処理例について説明する。
本動作例において、CPU11は、行動検査によって取得した行動リスク情報に基づいて、曝露リスクを評価することができる。具体的に、本動作例において、CPU11は、各評価項目に対応する接触場面に関する情報に基づいて、1又は複数のサンプル接触者(検査対象者及び/又は接触者)の曝露リスクを評価することができる。本動作例において、接触場面に関する行動リスク情報は、例えば、行動検査の基本情報(対象領域、評価項目(場面)、検査日時、検査者等についての情報)、検査対象者についての行動リスク情報(年齢層、マスク着用の有無、声の大きさ、呼吸量、手指衛生、清掃、接触場面における滞在時間等についての情報)、接触者についての行動リスク情報(年齢層、マスク着用の有無、検査対象者との距離、パーテーションの有無等の情報)等を含む。
具体的に、CPU11は、例えば、サンプル対象者の少なくとも一人が感染性微生物を保有する保有対象者であると仮定し、かつ、行動リスク情報及び感染性微生物の感染経路に基づいて、保有対象者以外のサンプル対象者である非保有対象者の曝露リスクをシミュレーションすることで、接触場面における曝露リスクを評価することができる。本動作例では、検査対象者を保有対象者、接触者を非保有対象者と仮定して、検査対象者及び/又は環境中から接触者へのウイルスの移行量をシミュレーションすることで、接触者の当該ウイルスの曝露リスクを評価することができる。
さらに、CPU11は、接触場面において3人以上のサンプル対象者を含む場合、接触場面を、保有対象者と非保有対象者を1人ずつ含む複数の接触事象に区分し、接触事象各々について、非保有対象者の曝露リスクの指標である曝露リスク指標を算出することができる。そして、CPU11は、算出された複数の接触事象についての曝露リスク指標に基づいて、接触場面における曝露リスクを評価することができる。具体的に、CPU11は、例えば、複数の接触事象についての曝露リスク指標の合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、接触場面における曝露リスクを評価することができる。
本明細書において、接触事象は、接触場面を構成する全てのサンプル対象者各々が、他の1人のサンプル接触者と1対1で接触する事象である。本明細書において、曝露リスク指標は、曝露リスクの指標であって、例えば、感染性微生物の推定曝露量、推定曝露率、推定陽性率等から選択される少なくとも一つの指標であり得る。
図11を用いて、接触事象の例について説明する。図11(A)には、店舗Aのテーブル516Aにおいて観察される、3人のサンプル対象者の配置例が示されている。店舗のテーブル516Aには、サンプル対象者H1,H2,H3が着席しており、会話場面の進行中であるとする。この例では、ある時間帯において、サンプル対象者H1,H2,H3がテーブル516Aを囲む会話場面を1つの接触場面とする。なお、CPU11は、同一のサンプル対象者グループによって、複数の接触場面に関する検査結果が得られている場合、各時間帯における接触場面に関する検査結果(行動リスク情報)に基づいて、曝露リスクを評価することができる。これにより、長時間にわたる接触場面での曝露リスクを精度よく評価することができる。
図11(B)に例示するように、この接触場面は、サンプル対象者H1及びH2を含む接触事象V1、サンプル対象者H1及びH3を含む接触事象V2、サンプル対象者H2及びH3を含む接触事象V3に区分される。CPU11は、各接触事象V1,V2,V3において、一方のサンプル対象者を保有対象者、他方のサンプル対象者を非保有対象者として、非保有対象者の曝露リスク指標をシミュレーションモデルにより算出する。そして、CPU11は、接触事象V1,V2,V3についてそれぞれ算出された曝露リスク指標の合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、ある時間帯においてサンプル対象者H1,H2,H3を含む接触場面における曝露リスク指標を算出することができる。
さらに、CPU11は、一つの評価項目において複数の接触場面に対応する行動リスク情報を取得した場合は、この複数の接触場面における曝露リスク指標の合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、当該評価項目全体の行動リスク情報に基づく曝露リスクを評価することができる。
本実施形態において、シミュレーションモデルは、感染性微生物の感染経路等に基づいて適切なものを選択することができる。例えば、シミュレーションモデルは、確率論的モデル又は決定論的モデルのいずれでもよく、またこれらを組み合わせたモデルであってもよい。なお、本動作例で用いられるシミュレーションモデルの具体例については後述する。
次に、環境リスク情報を用いた評価処理例について説明する。
本動作例において、CPU11は、例えば、取得された環境リスク情報に基づいて、各評価項目の環境に起因する曝露リスクを評価することができる。
CPU11は、例えば、環境における感染性微生物の検出結果についての情報に基づいて、曝露リスクを評価することができる。これにより、環境中からの感染性微生物の曝露リスクを評価することができる。曝露リスクの評価結果は、例えば、検出結果そのものを用いることもできるし、曝露リスクの指標となる曝露リスク指標として表すことができる。CPU11は、例えば、当該検出結果から当該曝露リスク指標を算出するための機械学習モデルを用いて、曝露リスク指標を算出してもよい。あるいは、CPU11は、例えば、記憶部18に記憶された、検出結果とそれに対応する曝露リスク指標とを対応付けたテーブルを用いて、曝露リスク指標を算出してもよい。また、CPU11は、上記検出結果から曝露リスク指標を算出するシミュレーションモデルを用いて、曝露リスク指標を算出してもよい。
本動作例において、環境リスク情報は、一つの検査対象部位に対して、複数の検出結果を含んでいてもよい。例えば、上述の例では、「テーブルの表面」という検査対象部位に対して、アミラーゼとATPの2種類の検出結果を得ることができる。この場合、CPU11は、例えば、各検出結果に基づく曝露リスク指標をそれぞれ算出し、それらの合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、一つの検査対象部位における曝露リスク指標を算出することができる。なお、複数の検出結果各々における曝露リスクに対する重要度(例えば、信頼度や寄与度等)が異なる場合、CPU11は、例えば、各検出結果から算出された曝露リスク指標に、当該重要度等に応じた所定の係数を乗じた値を算出し、これらの合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、一つの検査対象部位における曝露リスク指標を算出することができる。
本動作例において、環境リスク情報は、例えば、評価項目毎に、複数の検査対象部位における検出結果についての情報を含んでいてもよい。例えば、上述の例では、「会話」という評価項目に対して、「テーブル」の「表面」と「縁」の2つの検査対象部位の検出結果を得ることができる。この場合、CPU11は、例えば、評価項目に対応する複数の検査対象部位の検査結果各々から曝露リスク指標を算出し、これらの合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、当該評価項目に対応する検査対象部位における曝露リスク指標を算出することができる。なお、複数の検査対象部位において、対象者が接触するリスク等が異なる場合、CPU11は、例えば、各検査対象部位の検査結果から算出された指標値に、接触リスク等に応じた所定の係数を乗じた値を算出し、これらの合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、複数の検査対象部位における曝露リスク指標を算出することができる。
本動作例において、CPU11は、例えば、各評価項目に対応付けられた空間の換気状況に関する情報に基づいて、曝露リスクを評価することができる。CPU11は、例えば、空間の換気状況を示す空間関連指標(例えば、CO2濃度、換気量、風量、風速等)に基づいて、曝露リスクを評価することができる。
CPU11は、例えば、環境リスク情報に含まれる空間関連指標から曝露リスク指標を導出するための機械学習モデルを用いて、曝露リスクを評価してもよい。あるいは、CPU11は、例えば、記憶部18に記憶された、空間関連指標とそれに対応する曝露リスク指標とを対応付けたテーブルを用いて、曝露リスクを評価してもよい。また、CPU11は、空間関連指標から曝露リスク指標を導出するシミュレーションモデルを用いて、曝露リスクを評価してもよい。
本実施形態において、環境リスク情報が空間関連指標と対応する位置情報を含む場合、CPU11は、当該空間関連指標を、当該位置情報に対応する評価項目における曝露リスクの評価に用いることができる。本動作例において、例えば、CO2濃度を測定する測定装置400が飲食エリアに設置された場合、CPU11は、飲食エリアにおいて行われる各場面の曝露リスクの評価に、測定装置400による測定結果を用いることができる。また、CPU11は、測定装置400の位置と評価項目に対応するエリアとの対応関係に基づいて、当該評価項目における換気状況に起因する曝露リスクを評価してもよい。
(優先度の決定処理)
続いて、図4に示すように、CPU11は、複数の評価項目各々の曝露リスクの評価結果に基づいて、複数の評価項目における感染性微生物への感染対策の優先度を決定する(ST33)。優先度は、ランクによって表されてもよいし、評価項目の優先順位によって表されてもよい。CPU11は、例えば、曝露リスクの評点に応じて、評価項目における優先度を決定することができる。この場合、CPU11は、評点の高い順に、優先順位を決定してもよいし、評点の範囲と対応するランクを決定してもよい。
表2には、各場面の曝露リスクの評価結果と、その優先度の例を示している。この例において、曝露リスクの評価は、例えば各場面の評点として表されており(カッコ内の数値)、優先度は、A,B,C,D,Eの5段階の優先度ランクで表されている。また、表3に示すように、各優先度ランクは、それぞれ、曝露リスクの評点の範囲に対応付けられている。
他の例として、CPU11は、重要度の高い曝露リスク関連情報から導出された曝露リスクの評価結果に基づいて、優先度を決定してもよい。重要度の高い曝露リスク関連情報は、例えば、所定の感染経路に対応する曝露リスク関連情報であってもよいし、所定の検査の検査結果に対応する曝露リスク関連情報であってもよい。具体的に、曝露リスク関連情報の重要度は、例えば、データの信頼性、曝露リスク及び/又は感染リスクとの関連性、感染対策の容易さ等に基づいて設定され得る。優先度の処理に用いられる重要度の高い曝露リスク関連情報は、評価項目毎に設定されていてもよいし、全ての評価項目において同一であってもよい。また、重要度の高い曝露リスク関連情報は、例えば管理者などのユーザによる設定登録によって対象領域データベースに記憶されていてもよい。あるいは、CPU11が評価項目に対応付けられた感染経路などに基づいて重要度の高い曝露リスク関連情報を決定してもよい。これにより、より有用性の高い感染対策の優先度を決定することができる。また、例えば管理者が重要度を設定登録する場合は、管理者のニーズに応じた優先度の決定が可能となる。
(評価結果関連情報の出力処理)
続いて、CPU11は、決定された優先度についての情報を含む評価結果関連情報を出力する(ST34)。本動作例において、CPU11は、第2端末装置200Bに対し、当該評価結果関連情報を送信することができる。評価結果関連情報の送信方法は、例えば、上記感染管理支援サービスを提供するアプリケーションやウェブサイト上の通知機能等を用いて行ってもよいし、例えば電子メールや各種メッセンジャーアプリケーションを用いて行ってもよい。CPU11は、出力された情報をプリンタ等の外部機器に出力してもよい。これにより、対象領域の管理者に対し、ダイレクトメール等の紙媒体を介して、評価結果関連情報を提供することもできる。
また、評価結果関連情報は、複数の評価項目各々における曝露リスクの評価結果についての情報を含んでいてもよい。当該情報としては、評価項目毎の曝露リスクの評点及び/又はランク、評価項目毎に関連する検査結果各々から導出された曝露リスクの評点やランク等が挙げられる。
その他、評価結果関連情報は、対象領域及び/又は評価項目における曝露リスクについて分析した分析情報を含んでいてもよい。分析情報は、例えば、得られた検査結果や導出された曝露リスク指標のデータを用いて生成されたグラフ等の情報を含んでいてもよい。グラフとしては、特に限定されないが、例えば、棒グラフ、折れ線グラフ、バブル図、パレート図、円グラフ、レーダーチャート等のグラフが挙げられる。さらに、分析情報は、評価結果に対するコメントや解説等の情報を含んでいてもよい。
第2端末装置200Bは、評価結果関連情報を受信し(ST41)、受信した評価結果関連情報を表示部26に表示する(ST42)。本動作例において、第2端末装置200Bの表示部26は、「制御部から出力された評価結果関連情報を表示する表示部」として機能する。
図12に例示ように、表示部26は、例えば、評価項目(例えば場面)毎の曝露リスクの評価結果と、場面毎の感染対策の優先度と、を示す画面を表示してもよい。さらに、当該画面は、評価結果についてのコメント等を含んでいてもよい。また、表示部26は、優先度を色分けして表してもよい。これにより、第2端末装置200Bを使用するユーザが、優先度を直感的に理解することができる。
[本実施形態の作用効果]
本実施形態における曝露リスク評価システムによれば、複数の評価項目における感染対策の優先度に関する情報を出力することで、対象領域の衛生管理を行う管理者に対し、感染対策を重点的に行うべき評価項目(位置、場面、時間帯等)を明確に示すことができる。対象領域における感染対策を行う項目は多岐にわたることが多いが、上記構成により、対象領域の衛生管理を行う管理者が、優先して感染対策を行う項目を決定する手間を軽減することができる。またこれにより、管理者の使用する第2端末装置200Bによるデータ分析などの処理負担を軽減することができる。したがって、本実施形態のシステムによれば、対象領域における感染対策を効率化することが可能となる。
また、曝露リスク関連情報のうちの行動リスク情報が、例えば、観察された複数のサンプル接触者が接触する接触場面に関する情報を含むことで、曝露リスクの高い行動についての信頼性の高い情報を用いて曝露リスクを評価することができる。これにより、行動リスク情報に基づく曝露リスクを精度よく評価することができる。また、サンプル対象者の少なくとも一人が感染性微生物を保有する保有対象者であると仮定し、かつ、行動リスク情報及び感染性微生物の感染経路に基づいて、保有対象者以外のサンプル対象者である非保有対象者の曝露リスクをシミュレーションすることで、行動リスク情報に基づく曝露リスクをより精度よく評価することができる。
さらに、CPU11(制御部)は、接触場面における複数のサンプル対象者が3人以上のサンプル対象者を含む場合、接触場面を、保有対象者と非保有対象者を1人ずつ含む複数の接触事象に区分し、接触事象各々について、非保有対象者の曝露リスク指標を算出し、複数の接触事象についての曝露リスク指標を合計することで、接触場面全体における曝露リスクを精度よく評価することができる。これにより、3人以上のサンプル対象者が存在する接触場面においても、サンプル対象者が1対1で接触する接触事象毎に、1人の保有対象者から1人の非保有対象者へ移行する感染性微生物を定量的に評価することができる。これにより、現実の感染場面に即したシミュレーションを行うことができ、曝露リスクをより精度よく評価することができる。
[変形例]
図13に示すように、CPU11は、曝露リスク情報に基づいて、対象領域における曝露リスクの総合評価を決定してもよく(ST35)、その場合、CPU11は、優先度についての情報と、総合評価についての情報と、を少なくとも含む評価結果関連を出力してもよい(ST34)。
CPU11は、例えば、複数の評価項目各々において導出された曝露リスクの評価結果に基づいて、曝露リスクの総合評価を決定してもよい。例えば、CPU11は、複数の評価項目各々において算出された曝露リスク指標の合計値、平均値、最大値、中央値等から選択された少なくとも一つを算出することで、曝露リスクの総合評価を決定してもよい。この場合、総合評価についての情報は、算出された曝露リスク指標の数値及び/又はランクについての情報を含んでいてもよい。また、各評価項目の重要度についての情報が記憶されている場合、CPU11は、各評価項目の重要度についての情報を参照して、総合評価を決定してもよい。例えば、CPU11は、各評価項目各々の曝露リスク指標に対し、重要度に基づいて決定された係数を乗じた値を算出し、この値を用いて総合評価を決定してもよい。
あるいは、CPU11は、複数の評価項目各々に対する曝露リスクの評価処理とは別に、曝露リスク関連情報に基づいて、対象領域における曝露リスクの総合評価を決定してもよい。例えば、CPU11は、対象領域に対応付けて得られた1又は複数の検査結果に対応する曝露リスク関連情報を用いて、対象領域における曝露リスクの総合評価を決定することができる。この総合評価は、複数の検査結果に基づいて決定されたものでもよいし、各検査結果に基づいて導出されたものでもよい。
これにより、図4を参照し、第2端末装置200Bは、総合評価についての情報を含む評価結果関連情報を受信し(ST41)、受信した情報を表示部26に表示することができる(ST42)。
また、表示部26に表示される画面は、図12の例に限定されず、種々の態様を採り得る。以下、表示画面の変形例について説明する。
図14に例示するように、例えば表示部26は、曝露リスクの評価結果を詳細に分析した分析情報を表示してもよい。同図に示す画面は、評価項目をエリア毎に区分した場合の、ある評価項目(エリアA)の、行動リスク情報と、その曝露リスクについての評価結果及び/又は分析結果を含む。この画面は、あるエリアAにおける、会話時間についての情報、会話を含む行動に基づく飛沫感染による曝露リスク(「飛沫リスク」)についての情報、当該行動に基づく接触感染による曝露リスク(「接触リスク」)についての情報、会話時間による飛沫リスク及び接触リスクの推移例を示すバブル図等を含む。これにより、第2端末装置200Bを使用する管理者が、対象者の行動による曝露リスクをより詳細に把握することができる。
曝露リスクの評価結果の他の表示例として、図15に例示する表示部26は、評価項目毎の、対応する感染経路による曝露リスクについての評価結果及び/又は分析結果を表示する画面を表示してもよい。図15に示す画面は、評価項目(ここではエリア)毎の、アミラーゼの検出結果の情報と、それに基づいて導出されたウイルス曝露量についての情報と、を含む。さらに、当該画面は、分析情報として、評価項目毎のウイルス曝露量の棒グラフを含んでいてもよい。これにより、第2端末装置200Bを使用する管理者が、所定の感染経路(例えば接触感染)による曝露リスクの高い評価項目を直感的に理解することができる。
曝露リスクの評価結果の他の表示例として、図16に示すように、表示部26は、環境リスク情報及び/又はそれに基づく曝露リスクの評価結果を分析した分析情報を含む画面を表示してもよい。図16に示す画面は、評価項目をエリア毎に区分した場合のエリアAに対応する検査対象物毎のATP検査及び唾液飛沫検査の評価結果を示すレーダーチャートと、そのうちの一つの検査対象物の部位毎の評価結果を示す棒グラフと、を含む。
あるいは、図17に示すように、表示部26は、分析情報として、ある評価項目(エリアB)における、検査対象物毎のATP検査及び唾液飛沫検査の評価結果を示すパレート図を含んでいてもよい。図16及び図17のような分析結果を表示することで、第2端末装置200Bを使用する管理者が、環境表面において曝露リスクの高い部位を明確に把握することができる。
また、表示部26は、総合評価についての詳細な情報を表示してもよい。例えば、図18に例示する画面は、例えば、対象領域(ここでは施設B)の全ての検査結果に基づく総合評価の情報と、行動検査、CO2検査、ATP検査、及び唾液飛沫検査各々の結果に基づく総合評価の情報と、を含んでいる。これにより、対象領域の曝露リスクを多面的に評価することができ、管理者の感染対策をより効果的に支援することができる。
[シミュレーションモデルの具体例]
本実施形態において用いられることが可能な、行動リスク情報に基づく曝露リスクをシミュレーションするためのシミュレーションモデルの具体例について説明する。但し、本実施形態において用いられるシミュレーションモデルは、以下の例に限定されない。
本シミュレーションモデルは、接触場面において3人以上のサンプル対象者を含む場合、接触場面を、保有対象者と非保有対象者を1人ずつ含む複数の接触事象に区分し、接触事象各々について、非保有対象者の曝露リスク指標を算出することができるモデルである。具体的に、本シミュレーションモデルでは、各接触事象において、保有対象者から非保有対象者への感染性微生物の推定曝露量を、感染経路毎に算出する。感染経路毎に算出された推定曝露量を合計し、接触事象毎の非保有対象者への推定曝露量を算出することができる。
以下の説明においては、感染性微生物が、唾液飛沫等を介して移行するウイルスの例を挙げる。このようなウイルスとしては、例えば、SARS-CoV-2等が挙げられる。この例において、感染経路は、例えば、遠距離感染経路と、近距離感染経路と、を含む。遠距離感染経路は、例えば、空気感染、接触感染等を含む。近距離感染経路は、例えば、飛沫感染等を含む。
図19を参照し、遠距離感染経路による曝露量の算出方法について説明する。
同図に示すように、本シミュレーションモデルでは、遠距離感染経路による曝露量を的確に推定するために、ウイルスの経時変化を複数の状態に区分し、それぞれの状態間の遷移を1次反応でモデル化し、非保有対象者へ移行するウイルス量を曝露量として算出する。当該複数の状態は、例えば、「Room Air(室内空気)」、「Textile Surfaces(繊維表面)」、「Nontextile Surfaces(硬質表面)」、「Hands(非感染者の手)」、「Facial Membranes(非感染者の顔の粘膜)」、「Lower Respiratory Tract(非保有対象者の下気道)」、「Loss of Viability(不活化したウイルス)」、「Exhausted from Room(排気)」を含む。
図19に示す状態遷移モデルは、以下の式(1)~式(8)で示す常微分方程式を用いて記述され得る。なお、以下の各式におけるパラメータの具体的な数値は、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に開示されているような、公知の曝露リスクのシミュレーションモデルを参照して、適宜設定することができる。
これらの式において、λ
ijは、状態iから状態jへ遷移する際の、遷移速度定数である。また、Q
1、Q
2、Q
3は、飛沫の発生イベント(咳、くしゃみ、会話等)による、各状態へのウイルス分配量である(次元は単位当たりのウイルス量[PFU/s])。本シミュレーションモデルでは、ウイルス分配量Q
1、Q
2、Q
3を、非特許文献1に記載されたモデルを参考に、式(9)~(11)に示すように定めた。以下の式において、Q
large、Q
smallは咳、会話、くしゃみなどによって単位時間当たりに発生する大液滴、小液滴の体積をそれぞれ表す。C
salivaは唾液中に含まれるウイルス濃度([PFU?mL])である。また、f
textile、f
nontextileは環境表面中の、繊維表面と硬質表面の割合である。式(1)~(11)を初期条件(初期ウイルス量)のもとで解くことにより、各状態におけるウイルス量の経時変化が得られる。
本シミュレーションモデルにおいて、空気中を浮遊する飛沫核を吸い込むことにより感染する経路を「Respirable」と呼ぶ。Respirableによるウイルス取り込み量D
respirableは、図19のN
6に相当する。
また、本シミュレーションモデルにおいて、汚染された環境表面を手指で触り、その手指で顔粘膜を触ることにより感染する経路を「Hand Contact」と呼ぶ。Hand Contactによるウイルス取り込み量D
handは、図19のN
5に相当する。
次に、近距離感染経路による曝露量の算出方法について説明する。本シミュレーションモデルにおいては、近距離経路として、例えば「Spray」と「Inspirable」の2つを考慮する。Sprayは「咳・くしゃみ・会話によって発生した液滴のうち、「大きな」液滴が粘膜に着弾することにより感染する経路」である。Inspirableは「咳・くしゃみ・会話によって発生した液滴のうち、「小さな」液滴を吸い込むことにより感染する経路」である。
本シミュレーションモデルでは、以下のような考え方で、Sprayによる曝露量を見積もることができる。
(1)液滴は円錐状に噴射される。
(2)Sprayに寄与する大きな粒子は、円錐の底面積上を均一に通過する。
(3)発生した液滴が粘膜に着弾する確率は、「粘膜の表面積」と「円錐の底面積」の比で表せる。
(4)被感染者はある一定の頻度で、感染者の近くにいる。
(5)唾液中に含まれるウイルス濃度は、液滴径によらず一定である。
このような考え方に基づき、Sprayによる曝露量D
sprayの時間変化は、以下の式(14)及び式(15)で表される。
ここでQlargeは咳・会話・くしゃみによって単位時間当たりに発生する大液滴の総体積である。この例では、大液滴のみがSprayに寄与するとしている。pproximityは被感染者が感染者の近くにいる頻度であり、非特許文献2を参照し、例えば、0.05とすることができる。
本シミュレーションモデルにおいて、Inspirableの曝露量は、Sprayと同様に円錐をベースに見積もった。Sprayとの違いは、Inspirableに寄与する小さい粒が、円錐の体積内に均一に浮遊している点、発生した液滴を吸い込む確率は、「呼吸の頻度」と「呼吸の流量」の比で表せる点、の2点である。このような考え方に基づき、Inspirableによる曝露量D
sprayの時間変化は、以下の式(16)及び式(17)で表される。なお、0.5は、吸引体積のうち、液滴を吸い込む割合である。
さらに、本シミュレーションモデルにおいては、算出された推定曝露量から、感染リスクを算出することができる。
例えば、ある微生物やウイルスにより、感染がおこる確率を表すモデルとして用量反応モデル(Dose-ResponseModel)が知られている。このモデルは、感染成立についての閾値が存在しない場合に用いることができる。本シミュレーションモデルでは、例えば、用量反応モデルのうちの「指数モデル」を用いて、ウイルス曝露量から感染リスク(確率)を見積もることができる。指数モデルでは、ウイルス曝露量D
iと感染リスクR
iの関係は、以下のように表される。
ここで添え字のiは経路(Respirable,Hand Contact,Spray,Inspirable)に対応する。また、α
iは感染のしやすさを表現するパラメータである。本シミュレーションモデルでは、Respirableは下気道で感染が起こることから、その他の感染経路(Hand Contact,Spray,Inspirable)とはパラメータα
iを分けて計算することができる。
全ての経路の曝露量を考慮した、トータルのリスクR
totalは、包除原理(Inclusion-exclusionprinciple)によって求めることができる。包除原理を用いることで、各経路による感染リスクを重複して算出せずに、「感染は1度だけ起こる」という実態に即した感染リスクを算出することができる。
各経路の寄与率Φ
iは、例えば以下の式(22)で定義される。
これにより、各経路の感染リスクの合計がトータルの感染リスクと等しくなるように調整した式(23)を用いて、各感染経路の感染リスクを算出することができる。
以上のように、本シミュレーションモデルでは、比較的計算速度が速い決定論的モデルを採用していることに加えて、感染経路毎の推定曝露量を算出することから、曝露リスクを速い処理速度で、かつ精度よく計算することができる。
<第2実施形態>
以下、本実施形態の第2実施形態について説明する。本実施形態について、第1実施形態と同様の構成については、適宜説明を省略する。
[システムの概要]
本発明の第2実施形態に係るシステムは、対象領域における感染性微生物の感染対策を支援する感染対策支援システムとして機能し得る。当該システムは、第1実施形態と同様に、インターネットN上のサーバ100と、第1端末装置200Aと、第2端末装置200Bと、を含み、さらに検査装置500として、検出装置300と、測定装置400と、を含んでいてもよい(図1参照)。
本実施形態において、サーバ100は、第1実施形態と同様に、複数の評価項目各々における曝露リスクに関連する曝露リスク関連情報を取得し、曝露リスク関連情報に基づいて、複数の評価項目各々における曝露リスクを評価する。第1実施形態と異なる点として、サーバ100は、複数の評価項目の少なくとも一つの評価項目について、曝露リスクを低下させるための感染対策についてのアドバイスを生成し、当該感染対策を実施した場合における曝露リスクを予測する。これにより、サーバ100は、曝露リスクの評価結果と、生成された感染対策についてのアドバイスと、曝露リスクの予測結果と、を含む感染対策支援情報を出力することができる。
各装置のハードウェア構成は、例えば、第1実施形態と同様に構成される(図2(A)及び(B)参照)。また、サーバ100の記憶部18は、第1実施形態と同様の対策領域情報データベースを含む。
[システムの動作例]
次に、図20のシーケンス図を用いて、以上のように構成されたシステムの動作例について説明する。以下で説明するサーバ100の動作は、CPU11及び通信部19等のハードウェアと、記憶部18に記憶されたソフトウェアとの協働により実行される。他の装置も同様である。
また、本動作例でも、第1実施形態と同様に、対象領域が飲食店である店舗Aであり、感染性微生物が接触感染、飛沫感染及び空気感染等により感染症を引き起こすウイルスである例を挙げる。また、本動作例において、第1端末装置200Aが曝露リスク関連情報の少なくとも一部の入力を受け付けるステップ(ST11)、その曝露リスク関連情報の少なくとも一部をサーバ100へ送信するステップ(ST12)、検査装置500が検査結果を取得するステップ(ST21)、その測定結果についての情報を曝露リスク関連情報の一部、してサーバ100へ送信するステップ(ST22)、サーバ100が曝露リスク関連情報を取得するステップ(ST31)、及びCPU11が複数の評価項目各々における曝露リスクを、曝露リスク関連情報に基づいて評価するステップ(ST32)は、第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。本動作例においては、主に、曝露リスクの評価結果を感染対策についてのアドバイスの生成に利用し、さらに感染対策後の曝露リスクを予測する点が、第1実施形態と異なる。
(アドバイス生成処理)
本動作例において、優先度の決定ステップ(ST33)の後、CPU11は、複数の評価項目のうちの少なくとも一つの評価項目について、評価された曝露リスクを低下させるための感染対策についてのアドバイスを生成する(ST35)。
CPU11は、例えば、曝露リスクを評価された全ての評価項目各々について、感染対策についてのアドバイスを生成してもよい。あるいは、CPU11は、曝露リスクの評価結果に基づいて選択された少なくとも一つの評価項目について、感染対策についてのアドバイスを生成してもよい。あるいは、CPU11は、曝露リスクが高いと評価された評価項目についてアドバイスを生成してもよい。例えば、対象領域データベースが評価項目の重要度についての情報を記憶している場合、CPU11は、重要度の高い評価項目における感染対策についてのアドバイスを生成してもよい。
また、第1実施形態で説明したように、例えば、CPU11が複数の評価項目における優先度を決定する場合は(図4のST33参照)、その優先度の高い評価項目における感染対策についてのアドバイスを生成してもよい。これにより、優先度の高い評価項目に対して具体的な改善策を提示することができる。
本ステップにおいて、CPU11は、アドバイスの生成対象の評価項目における感染対策を選択することができる。例えば、CPU11は、アドバイスの生成対象の評価項目に対応付けて記憶された感染対策を選択してもよい。あるいは、評価項目毎の感染経路の情報と、感染経路に対応付けられた感染対策の情報と、が記憶されている場合、CPU11は、アドバイスの生成対象の評価項目の感染経路に対応する感染対策を選択してもよい。この場合、CPU11は、例えば、曝露リスクが高いと評価された感染経路に対応する感染経路を選択することができる。
また、対象領域データベースが評価項目及び/又は感染経路の重要度を記憶している場合、CPU11は、重要度の高い評価項目及び/又は感染経路についての感染対策を選択することができる。さらに、感染対策毎の労力及び/又は費用についての情報が記憶されている場合、CPU11は、管理者等によって登録された、許容可能な労力及び/又は費用の範囲に含まれる感染対策を選択してもよい。
接触感染に対する感染対策としては、例えば、感染対策行動の実施が挙げられ、具体的には、清掃、マスク着用(例えば不織布マスク着用)、手指衛生等が挙げられる。飛沫感染に対する感染対策としては、例えば、マスク着用(例えば不織布マスク着用)、会話自粛、パーテーション設置、換気効率の向上、対象者同士の位置を指示する手段(掲示物や当該位置を指示するマーク等)の設置等が挙げられる。
他の例として、CPU11は、行動リスク情報に含まれる対象者の行動及び/又は感染対策状況に関連する感染対策を選択することができる。行動リスク情報に含まれる対象者の行動としては、例えば、会話の有無又はその時間、マスク着用の有無、マスクの種類、声の大きさ、呼吸量、手指衛生、清掃行動等が挙げられる。また、感染対策状況としては、例えば、パーテーション設置、換気状況(換気量、換気回数等)等が挙げられる。CPU11は、例えば、上記行動及び/又は感染対策状況の少なくとも一つを改善するための感染対策を選択することができる。
続いて、CPU11は、選択された感染対策毎にアドバイスを生成することができる。CPU11は、例えば、選択された感染対策に対応付けて記憶された定型文を用いてアドバイスを生成してもよい。定型文は、例えば、感染対策毎に準備されていることが好ましい。あるいは、CPU11は、選択された感染対策に対応付けて記憶されたキーワードを用いてアドバイスを生成してもよい。この場合、CPU11は、例えば、キーワードに基づいて自動的に文章を作成する公知の文章生成技術等を用いてアドバイスを生成することができる。
(曝露リスク予測処理)
CPU11は、感染対策の実施後における評価項目についての曝露リスクを予測する(ST36)。CPU11は、例えば、曝露リスク関連情報に含まれる、選択された感染対策に対応する少なくとも一つのパラメータの値を変更して、変更後のパラメータの値を用いてステップST32と同様に曝露リスクを評価することで、曝露リスクを予測することができる。ここでいうパラメータの値とは、実際の数値に限定されず、「有り」と「無し」、「高」と「低」などの数値化できる指標を含む。
例えば、行動リスク情報に含まれるパラメータとしては、対象者の行動及び/又は感染対策状況についてのパラメータが挙げられる。対象者の行動についてのパラメータとしては、例えば、会話の有無又はその時間、マスク着用の有無、マスクの種類、声の大きさ、呼吸量、手指衛生の有無、清掃行動の有無等が挙げられる。感染対策状況についてのパラメータとしては、例えば、パーテーション設置の有無、換気状況(換気量、換気回数等)等が挙げられる。変更対象のパラメータは、これらのうちの一つ、又は複数であり得る。例えば、感染対策として「マスク着用」を選択した場合、CPU11は、「マスク着用の有無」のパラメータを現状の「マスク無し」から「マスク有り」に変更して、評価ステップ(ST32)と同様に曝露リスクを評価することができる。
環境リスク情報に含まれるパラメータとしては、例えば、感染性微生物に関する検出についての検出指標が挙げられ、具体的には、唾液含有成分の検出指標、ATPの検出指標等が挙げられる。変更対象のパラメータは、これらのうちの一つ、又は複数であり得る。CPU11は、選択された感染対策がこれらの検出結果に関連する感染対策(清掃、手指衛生等)を含む場合、例えば感染性微生物に関する検出指標をより好ましい値に変更して、評価ステップ(ST32)と同様に曝露リスクを評価することができる。
環境リスク情報に含まれる他のパラメータとしては、換気状況に関する指標が挙げられ、具体的には、換気量、換気回数等が挙げられる。CPU11は、選択された感染対策が換気状況に対する感染対策を含む場合、例えば換気状況に関する指標をより好ましい値に変更して、評価ステップ(ST32)と同様に曝露リスクを評価することができる。
(感染対策支援情報の出力処理)
続いて、CPU11は、曝露リスクの評価結果と、感染対策についてのアドバイスと、曝露リスクの予測結果と、を含む感染対策支援情報を出力する(ST37)。なお、感染対策支援情報は、曝露リスクの評価結果及び/又は予測結果を分析した分析情報を含んでいてもよい。本動作例において、CPU11は、第2端末装置200Bに対し、当該感染対策支援情報を送信することができる。感染対策支援情報の出力方法は、例えば、第1実施形態に係る評価結果関連情報と同様の方法が挙げられる。
また、感染対策支援情報は、第1実施形態の変形例として説明した、対象領域における曝露リスクの総合評価を含んでいてもよい。
これにより、第2端末装置200Bは、感染対策支援情報を受信し(ST43)、受信した情報を表示部26に表示することができる(ST44)。本動作例において、第2端末装置200Bの表示部26は、「制御部から出力された感染対策支援情報を表示する表示部」として機能する。
図21に示すように、表示部26は、例えば、評価項目(例えば場面)毎の曝露リスクの評価結果と、曝露リスクの予測結果と、感染対策についてのアドバイスと、を含む画面を表示することができる。これにより、評価項目毎の感染対策前後の曝露リスクの変化を明確に示すことができ、説得力のあるアドバイスを提供することができる。また、当該画面は、曝露リスクの総合評価を含んでいてもよい。さらに、当該画面は、場面毎の感染対策の優先度(例えばA,B,C,D,E)を含んでいてもよく、表示部26は、優先度を色分けして表してもよい。
[本実施形態の作用効果]
本実施形態における感染対策支援システムによれば、複数の評価項目各々についての曝露リスクの評価結果と感染対策についてのアドバイスを生成し、さらに感染対策の実施後における曝露リスクを予測し、出力することで、感染対策の必要性についての説得力を高めることができる。また、感染対策についてのアドバイスを提示することで、明確に感染対策を推奨することができる。さらに、上記構成により、管理者による感染対策前後の曝露リスクの分析等の、具体的な感染対策を決定するための手間を軽減することができるとともに、第2端末装置200Bによる分析処理等の処理負担を軽減することができる。したがって、本実施形態のシステムによれば、対象領域における感染対策を効率化することができ、管理者等における感染対策の負担を軽減することができる。
[変形例]
図22に例示するように、アドバイスの生成ステップ(ST35)は、曝露リスクの予測ステップ(ST36)の後に行われてもよい。この場合は、CPU11が、複数の評価項目のうちの少なくとも一つの評価項目について、評価された曝露リスクを低下させるための感染対策を選定し、その感染対策の実施後における評価項目についての曝露リスクを予測することができる(ST36)。その後、CPU11は、感染対策についてのアドバイスを生成することができる(ST35)。これによっても、CPU11が同様の感染対策支援情報を出力することができる。
また、表示部26に表示される画面は、図21の例に限定されず、種々の態様を採り得る。以下、表示画面の変形例について説明する。
例えば、図23に示すように、表示部26は、各評価項目(例えば場面)についての感染対策(例えばマスク着用)の有無と曝露リスクとの関係を示したグラフを含む分析情報と、当該感染対策(例えばマスク着用)を推奨するアドバイスと、を含む画面を表示してもよい。これにより、曝露リスクの分析結果を示しながら、説得力のある感染対策についてのアドバイスを示すことができる。
例えば、図24に示すように、表示部26は、ある評価項目についての評価結果の分析情報と、予測結果の分析情報と、を表示することができる。図24に示す画面は、例えば、ある評価項目についての感染対策(会話時間減少、滞在時間減少、飛沫発生行動減少)前後の接触感染の曝露リスクについての分析結果(例えばバブル図)を含む。これにより、感染対策前後の曝露リスクをより明確に示すことができる。なおこの場合、表示部26は、別の表示画面において、アドバイスを表示することができる。
<他の実施形態>
なお、以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、各実施形態で説明した内容は、可能な限り組み合わせて実施され得る。
以上の実施形態における動作例では、曝露リスク関連情報を取得するための検査として、行動検査、唾液飛沫検査、ATP検査、及びCO2濃度測定検査の4つの検査を例示したが、これらに限定されない。また、曝露リスク関連情報を取得するための検査は、複数種類に限定されず、1種類でもよい。
また、行動リスク情報が、接触場面で観察されるサンプル対象者の情報としてサンプル対象者の属性についての情報を含んでいる場合、CPU11は、当該属性に基づいて分類されたサンプル対象者群の行動に基づいて曝露リスクを評価及び/又は予測してもよい。サンプル対象者の属性としては、曝露リスク、重症化リスク及び/又は発症リスクに関する属性を含み、例えば、年齢層、役割、職種の他、曝露リスク、重症化リスク及び/又は発症リスクに関連する疾患の有病率、既往症率、罹患率等が挙げられる。
図25に例示する画面は、例えば、施設Bの合唱イベントにおける飛沫感染の曝露リスク結果を分析したバブル図を含む。当該画面は、例えば、サンプル対象者を、合唱者、聴衆、及び職員に分類し、それぞれの飛沫感染による曝露リスクの評価結果を含む。さらに、当該画面は、いずれか一つのグループが100%マスク着用をした場合や、聴衆間の距離をあけた場合等の曝露リスクの予測結果等を含む。これにより、曝露リスクや重症化リスク等の異なるサンプル対象者群毎に評価結果を得ることができ、感染対策をより効率化することができる。
CPU11による曝露リスクの評価及び/又は予測処理は、曝露リスク関連情報の他、感染性微生物の感染性及び/又は危険性についての情報を用いてもよい。このような情報としては、例えば、感染性微生物による感染症についての情報(感染症の症状、リスクグレード等)、検査結果とリスクグレードとの対応テーブル、用量反応関数を用いた曝露リスクのシミュレーション等に用いるパラメータとしての感染性微生物の力価についての情報(50%感染用量、感染成立量等)、感染性微生物の流行状況についての情報(市中感染率、感染者数等)、感染性微生物の免疫獲得状況についての情報(抗体保有率、ワクチン接種率等)等が挙げられる。これらの情報は、例えば、記憶部18が記憶しており、サーバ100による曝露リスクの評価及び/又は予測処理において適宜参照され得る。
また、システムの構成も、上述の例に限定されない。例えば、管理者自身が対象領域の検査をする場合等では、一つの端末装置が、入力受付部と表示部の機能を有していてもよい。また、システムを構成する検査装置500も、上述の例に限定されない。あるいは、システムが検査装置を有していなくてもよい。