以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
はじめに、図1および2を参照しながら、本実施の形態の田植機8の構成および動作について具体的に説明する。
ここに、図1は本発明における実施の形態の田植機8の左側面図であり、図2は本発明における実施の形態の田植機8の上面図である。
なお、図1および2を参照しながら説明されるのは苗移植機としての田植機8の基本的な構成および動作であって、薬剤供給などに関する田植機8の構成および動作については図3〜20を主として参照しながら後に詳述する。また、図1および2においては、薬剤供給装置500が省略的に図示されている。
図1においては走行車体2を備える乗用型の8条植えの田植機8の側面視における状態が図示されており、図2においては平面視における状態が図示されている。
なお、本明細書においては、前後、左右の方向基準は、運転席31からみて、走行車体2の走行方向を基準として、前後、左右の基準を規定している。
田植機8は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10及び左右一対の後輪11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10が各々取り付けられている。
又、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11が取り付けられている。
エンジン20は、メインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。
ミッションケース12に伝達された回転動力は、ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18に伝達されて後輪11を駆動する。
又、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10を操向操作する操縦ハンドル34が設けられている。
エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、フロアステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下する構成となっている。
昇降リンク機構3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41を備えている。上リンク40及び下リンク41は、それらの基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に、苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、昇降油圧シリンダー46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4が略一定姿勢のまま昇降する。
苗植付部4は、8条植の構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載せ台51、苗取出口51aに供給された苗を苗植付具54によって圃場に植え付ける苗植付装置52等を備えている。
植付伝動ケース50の後部は、4つに分岐しており、分岐したそれぞれの後端部に植付駆動軸が回転自在に支承されており、この植付駆動軸の左右突出部にロータリーケース16の中央部が一体回転する構成で固定して取り付けられている。
更にロータリーケース16の両端部に植付回動軸を回転自在に支承し、これらの2つの植付回動軸のそれぞれに苗植付具54が取り付けられている。
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55、57、56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55、57、56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植え付けられる。
各フロート55、57、56は、圃場表土面の凹凸に対応して前端側が上下動する如く回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサー(図示せず)により検出され、その検出結果に対応して昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
施肥装置5は、肥料タンク60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でセンターフロート55及びサイドフロート56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込む構成となっている。ブロアー用電動モーター53で駆動するブロアー58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバー59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送する構成となっている。
苗植付部4には第1整地ローター27a及び第2整地ローター27b(第1整地ローター27aと第2整地ローター27bの組み合わせを単に整地ローターと言うことがある)が取り付けられている。
又、苗載せ台51は、苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aを利用してレール上を左右方向にスライドする構成である。
又、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく一対の予備苗枠38が設けられている。
以上においては、図1および2を参照しながら、田植機8の基本的な構成および動作について具体的に説明した。
(A)つぎに、図3および4を主として参照しながら、薬剤供給装置500、薬剤供給装置支持部600および薬剤供給装置移動機構700を備える、本実施の形態の田植機8の構成および動作について具体的に説明する。
ここに、図3は本発明における実施の形態の田植機8の動力伝達系および制御系のブロック図であり、図4は本発明における実施の形態の田植機8の苗載せ台51近傍の背面図である。
なお、図3においては、動力伝達系が実線を利用して図示されるとともに、制御系が点線を利用して図示されている。また、図4においては、6条植えの田植機8が図示されており、三つの位置状態の薬剤供給装置500および薬剤供給装置移動機構700が同時に図示されている。
植え付けられる苗を載せる苗載せ台51は、苗載せ台移動機構200によって、走行車体2に取付けられた苗載せ台支持部100の上で左右方向に往復移動させられる。苗載せ台51に載せられた苗に薬剤を供給する薬剤供給装置500は、薬剤供給装置移動機構700によって、苗載せ台51に取付けられた薬剤供給装置支持部600の上で左右方向に往復移動させられる。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
苗載せ台51の左右方向における移動幅は、一つの苗植付具54が担当する一枚の苗マットの左右方向における幅w程度である。したがって、たとえば、左右センター位置pCから左サイド部100Lに対応する左サイド位置pLまでの苗載せ台移動距離、および左右センター位置pCから右サイド部100Rに対応する右サイド位置pRまでの苗載せ台移動距離は、何れもw/2程度である。
なお、苗載せ台支持部100の左右センター位置pCは、苗載せ台51の左右方向における移動幅の左右中央位置である。
後述されるバランスモードでの薬剤供給装置500の左右方向における移動距離は、D=100[mm]程度である。したがって、たとえば、左右中央位置qCからバランスモード左端位置qLまでの薬剤供給装置移動距離、および左右中央位置qCからバランスモード右端位置qRまでの薬剤供給装置移動距離は、何れもD/2=50[mm]程度である。
なお、薬剤供給装置支持部600の左右中央位置qCは、薬剤供給装置500の左右方向における移動幅の左右中央位置である。
後述される薬剤供給モードでの薬剤供給装置500の左右方向における移動距離は、苗載せ台51の左右方向における幅W程度である。したがって、たとえば、右端部600Rに対応する薬剤供給モード右端位置qR1から左端部600Lに対応する薬剤供給モード左端位置qL1までの苗載せ台移動距離は、W程度である。
本実施の形態においては、
(数1)
0<D<Wである。
もちろん、D=0またはD=Wであるような実施の形態も、考えられる。D=0であるような実施の形態においては、バランスモードでの薬剤供給装置500は左右中央位置qCにおいて停止を続け、薬剤供給装置駆動エネルギーの消費量が大きく低減される。D=Wであるような実施の形態においては、バランスモードでの薬剤供給装置500が停止している時間帯が少なく、薬剤供給装置500の駆動休止にともなう速度制御の困難性が大きく低減される。
さらに、薬剤供給モードでの薬剤供給装置500の左右方向における移動が、苗載せ台51の外側にある前板ガード近傍まで大き目に行われるような実施の形態も、考えられる。ただし、後述される薬剤供給制御は、苗載せ台51のない箇所で無駄に薬剤を供給してしまわないように行われることが望ましい。
コントローラー900は、苗載せ台移動機構200、薬剤供給装置500および薬剤供給装置移動機構700の制御を行う。
本実施の形態においては、コントローラー900は、(1)薬剤供給装置支持部600の左端部600Lおよび右端部600Rの間の位置から、薬剤供給装置支持部600の一方の端部としての右端部600Rに、薬剤供給装置500を移動させる準備移動制御を行い、(2)右端部600Rから、薬剤供給装置支持部600の他方の端部としての左端部600Lに、薬剤供給装置500を移動させる薬剤供給移動制御を行い、(3)左端部600Lから、左端部600Lおよび右端部600Rの間の位置に、薬剤供給装置500を移動させる復帰移動制御を行う。
もちろん、以下同様であるが、薬剤供給装置支持部600の一方の端部が左端部600Lであり、薬剤供給装置支持部600の他方の端部が右端部600Rであるような、上記とは逆の方向に、すなわち左右対称方向に薬剤供給装置500が移動する実施の形態も、考えられる。
そして、コントローラー900は、薬剤供給移動制御を行うに当たり、薬剤供給装置500に、苗載せ台51に載せられた苗に薬剤を供給させる薬剤供給制御を行う。
コントローラー900が行うこのような苗載せ台移動機構200、薬剤供給装置500および薬剤供給装置移動機構700の制御動作については、後に詳述する。
苗載せ台移動検出部300は、苗載せ台51が苗載せ台支持部100の左サイド部100Lおよび右サイド部100Rの少なくとも一方としての右サイド部100Rに到達した到達タイミングを検出し、コントローラー900は、検出された到達タイミングを利用して薬剤供給移動制御を開始する。本実施の形態においてはどのような到達タイミングが薬剤供給移動制御を開始するに当たって利用されるのかについては、後に詳述する。
上記に加えて、苗載せ台移動検出部300は、苗載せ台51が苗載せ台支持部100の左サイド部100Lおよび右サイド部100Rの少なくとも一方としての左サイド部100Lに到達した到達タイミングを検出し、コントローラー900は、検出された到達タイミングを利用して準備移動制御を開始する。本実施の形態においてはどのような到達タイミングが準備移動制御を開始するに当たって利用されるのかについては、後に詳述する。
いうまでもなく、苗載せ台移動検出部300を左サイド部100Lおよび右サイド部100Rの両方に設け、苗載せ台51の左右端部の到達を検知する構成としてもよい。このとき、苗載せ台51が、左サイド部100Lまたは右サイド部100Rのどちらか一方の端部に到達した回数が、他方よりも1回多くなったときに準備移動制御を行い、その後、薬剤供給移動制御を開始する。たとえば、苗載せ台51が右サイド部100Rに3回到達するたびに準備移動制御、及び薬剤供給移動制御を行う構成とすると、左側の苗載せ台移動検出部300の検知回数が2回、右側の苗載せ台移動検出部300の検知回数が3回になると、準備移動制御、および薬剤供給移動制御が行われる。また、苗載せ台移動検出部300以外に、苗載せ台51が端部に到達したときに作動する苗縦送り部51bの作動回数に基づき、準備移動制御、および薬剤供給移動制御が行われる構成としてもよい。たとえば、苗縦送り部51bが所定回数としての4回の苗縦送りを行うと、準備移動制御を行い、その後、薬剤供給移動制御を開始する。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
左右方向における苗載せ台移動量は苗載せ台移動検出部300によって検出され、縦方向における苗縦送り量は苗縦送りセンサー400によって検出され、左右方向における薬剤供給装置移動量は薬剤供給装置移動センサー800によって検出される。
苗載せ台移動検出部300は、たとえば、(1)苗載せ台51の左サイド位置pLへの到達を検出する左サイド到達検出スイッチ、苗載せ台51の右サイド位置pRへの到達を検出する右サイド到達検出スイッチ、および苗載せ台51の左右センター位置pCの通過および通過向きを検出する左右センター通過検出スイッチの内の全部または一部の検出スイッチであり、(2)苗載せ台駆動カム軸の回転数を検出する回転センサーである。
苗縦送りセンサー400は、たとえば、苗載せ台51が端部に到達すると回動する苗送りカム(図示省略)の回動軌跡上に設ける苗縦送りカウンタスイッチ、または苗送りベルト駆動カム軸の回転角度を検出する角度センサーである。
薬剤供給装置移動センサー800は、たとえば、(1)薬剤供給装置500のバランスモード左端位置qLへの到達を検出するバランスモード左端到達検出スイッチ、薬剤供給装置500のバランスモード右端位置qRへの到達を検出するバランスモード右端到達検出スイッチ、薬剤供給装置500の薬剤供給モード左端位置qL1への到達を検出する薬剤供給モード左端到達検出スイッチ、薬剤供給装置500の薬剤供給モード右端位置qR1への到達を検出する薬剤供給モード右端到達検出スイッチ、および薬剤供給装置500の左右中央位置qCの通過および通過向きを検出する左右中央通過検出スイッチの内の全部または一部の検出スイッチであり、(2)薬剤供給装置移動機構700が後述されるアクチュエーター710(図5参照)を利用する場合には、アクチュエーター710のモーター作動時間を検出するタイマー、またはアクチュエーター710のモーター回転数を検出する回転センサーであり、(3)薬剤供給装置移動機構700がシリンダー機構を利用する場合には、シリンダー伸縮量を検出するストロークセンサーである。
もちろん、苗縦送りが苗載せ台移動検出部300の検出結果に応じた近接スイッチのオン動作に応じて行われ、苗縦送り量が苗載せ台移動量の換算によって算出されるような実施の形態も、考えられる。
さらに、薬剤供給装置500の増速、減速および停止などを行うための薬剤供給装置移動機構700の移動制御が前述された検出結果に応じて行われるのみならず、検出結果が何らかの理由で得られない場合は、薬剤供給装置移動機構700が減速位置に設置されたスイッチを利用して減速から0.2[秒]後に強制的に休止されたり、後述される薬剤供給モードの実行が休止されたりするような実施の形態も、考えられる。
薬剤供給装置支持部600は、苗載せ台51の左右両側に設けられたステー620Lおよび620Rに取り付けられたレール610を有する。
図5に示されているように、薬剤供給装置移動機構700は、レール610の上で薬剤供給装置500を走行させるアクチュエーター710を有する。
ここに、図5は、本発明における実施の形態の田植機8の薬剤供給装置移動機構700近傍の背面図である。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
アクチュエーターギヤ720は、スプロケットギヤ730と噛み合っており、コード状のアクチュエーター配線ハーネス711からの電源供給を利用して駆動するアクチュエーター710によって回転させられる。スプロケット740は、スプロケットギヤ730と同軸であり、ケース状のレール610の上に敷設されているチェーン750と噛み合っている。
すると、薬剤供給装置500は、自立移動時に薬剤供給移動時の機体バランスを崩しにくい設計とすることができるので、苗取量にかかわらず精密な薬剤供給を行うことが可能になる。
かくして、レール610の上で薬剤供給装置500を走行させることが可能である。
コントローラー900は、アクチュエーター710の作動量の検出結果に基づいて薬剤供給装置移動機構700の移動制御を行う。
図6(a)および(b)に示されているように、薬剤供給装置500は、薬剤を貯留する薬剤貯留ホッパー510と、薬剤貯留ホッパー510の薬剤落下経路511から薬剤を落下させるシャッター機構520と、を有する。
ここに、図6(a)は本発明における実施の形態の田植機8のシャッター機構520近傍の模式的な正面図であり、図6(b)は本発明における実施の形態の田植機8のシャッター機構520近傍の模式的な左側面図である。
なお、図6(a)及び(b)においては、上方にある薬剤貯留ホッパー510は図示されておらず、ソレノイド部材522が薬剤落下経路511の開閉状態を閉状態に切替えている。また、図6(b)においては、8条植えの田植機8における苗載せ台51の干渉想定ラインJが参考となるように図示されている。
たとえば、薬剤貯留ホッパー510の容積は、3700[mL]程度である。十分な容積をもつ一つの薬剤貯留ホッパー510が移動させられるので、部品点数が少ない軽量の薬剤供給装置500を利用して均一な薬剤供給を行うことが可能である。
シャッター機構520は、薬剤落下経路511を開閉する開閉板としてのシャッタープレート521と、薬剤落下経路511の開閉状態を切替える切替部材としてのソレノイド部材522と、開状態での薬剤落下経路511の開度を調節する調節部材としての開度調節ダイヤル523と、を有する。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
ダイヤルギヤ523aは、開度調節ダイヤル523と同軸であり、プレートスライダー521aを回動させるスライダーギヤ521bと噛み合っている。後に詳述するように、プレートスライダー521aは、プレート窓521e(図7および8参照)が穿孔されたシャッタープレート521をスライドさせる。ソレノイド部材522が薬剤落下経路511の開閉状態を閉状態に切替えているときには、ソレノイド部材522の一部がプレート位置決め金具521dに当接している。ソレノイド部材522が薬剤落下経路511の開閉状態を開状態に切替えているときには、プレートストッパー521cがソレノイド部材522の一部に当接するので、スライドさせられたシャッタープレート521が脱落してしまう恐れはほとんどない。
後述される試験動作が実行されるに当たっては、薬剤落下経路511の下方にある計量カップ取付け金具524bが試験動作用計量カップ524に穿孔された計量カップ取付け孔524aに係止され、試験動作用計量カップ524が薬剤を受けるために装着される。
作業者が手動で開度調節ダイヤル523を回動させると、開状態での薬剤落下経路511の開度が調節される。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
図7(a)に示されているように、車体前進向きである矢印A1で示された向きにおけるシャッタープレート521のスライド量がゼロであるときには、開状態での薬剤落下経路511の開度が最大開度に調節されているが、車体右折向きである矢印A2で示された向きにおけるソレノイド部材522による牽引が行われておらず、薬剤落下経路511の開閉状態は閉状態である。
ここに、図7(a)は、本発明における実施の形態の田植機8のプレート窓521e近傍の、シャッタープレート521のスライド量がゼロであり、ソレノイド部材522に対する通電が行われていない場合における模式的な上面図である。
そして、図7(b)に示されているように、矢印A2で示された向きにおけるソレノイド部材522による牽引が行われると、開状態での薬剤落下経路511の開度が最大開度に調節されているので、プレート窓521eが薬剤落下経路511と完全に重なり、薬剤落下経路511の開閉状態が最大開度の開状態に切替えられる。
ここに、図7(b)は、本発明における実施の形態の田植機8のプレート窓521e近傍の、シャッタープレート521のスライド量がゼロであり、ソレノイド部材522に対する通電が行われている場合における模式的な上面図である。
図8(a)に示されているように、矢印A1で示された向きにおけるシャッタープレート521のスライド量がゼロでないときには、開状態での薬剤落下経路511の開度が最大開度と比べてより小さい開度に調節されているが、矢印A2で示された向きにおけるソレノイド部材522による牽引が行われておらず、薬剤落下経路511の開閉状態はやはり閉状態である。
ここに、図8(a)は、本発明における実施の形態の田植機8のプレート窓521e近傍の、シャッタープレート521のスライド量がゼロでなく、ソレノイド部材522に対する通電が行われていない場合における模式的な上面図である。
そして、図8(b)に示されているように、矢印A2で示された向きにおけるソレノイド部材522による牽引が行われると、開状態での薬剤落下経路511の開度が最大開度と比べてより小さい開度に調節されているので、プレート窓521eが薬剤落下経路511と完全には重ならず、薬剤落下経路511の開閉状態がより小さい開度の開状態に切替えられる。
ここに、図8(b)は、本発明における実施の形態の田植機8のプレート窓521e近傍の、シャッタープレート521のスライド量がゼロでなく、ソレノイド部材522に対する通電が行われている場合における模式的な上面図である。
かくして、開状態での薬剤落下経路511の開度を調節することが可能である。
たとえば、開度調節ダイヤル523の1/5回転に対応するシャッタープレート521のスライド量は、1[mm]程度である。シャッタープレート521のスライド量は、薬剤を挟み込んでしまう恐れがある薬剤繰出し方式のロール開度調節とは異なり、薬剤が薬剤貯留ホッパー510に入っている場合においても薬剤供給量を容易に減少させることが可能である。なぜならば、開度調節ダイヤル523の操作によりシャッタープレート521の開度を調節する際、シャッタープレート521自体は開閉移動しないので、薬剤をシャッタープレート521で挟み込んで潰すことがないからである。そして、開状態での薬剤落下経路511の開度が後述される試験動作においてこのように手動で細かく調節可能であるので、薬剤は過不足なく供給される。
もちろん、作業者が手動で開度調節ダイヤル523を回動させると、ソレノイド作動幅調節アームが連動して摺動し、開状態での薬剤落下経路511の開度が調節されるような実施の形態も、考えられる。
試験動作実行指示部材としての初回繰出しボタン910は、コントローラー900に薬剤供給移動制御および薬剤供給制御を試験的に行わせる試験動作の実行を指示する。試験動作が実行されるに当たり、薬剤供給装置500は、右端部600Rから左端部600Lに一回だけ移動させられる。
たとえば、初回繰出しボタン910は、前述された薬剤供給装置移動速度の調節ダイヤル、薬剤供給移動制御を開始する苗縦送り回数の設定ボタン、苗縦送り回数のリセットボタン、電源スイッチ、および薬剤繰出し実行ランプ等とともに制御パネル部に配置されている。
複数の苗植付装置52は、苗載せ台51に載せられた苗を植付け、左右方向に配置されている。複数の部分条クラッチ71は、複数の苗植付装置52に対応するように設けられており、苗植付装置52への駆動力の伝達の入切状態を切替える。コントローラー900は、駆動力の伝達の入切状態が切状態に切替えられている箇所においては、薬剤供給装置500に、苗載せ台51に載せられた苗に薬剤を供給させないように、薬剤供給制御を行う。
図9に示されているように、薬剤供給装置500、薬剤供給装置支持部600および薬剤供給装置移動機構700は、非使用時には苗載せ台51の上で上方に移動可能である。
ここに、図9は、本発明における実施の形態の田植機8の苗載せ台51近傍の左側面図である。
なお、図9においては、二つの位置状態の薬剤供給装置500、薬剤供給装置支持部600および薬剤供給装置移動機構700が同時に図示されており、三つの位置状態の苗押さえ屈曲アーム1210が同時に図示されている。
上側支持アーム630の上端部は回動可能であるように薬剤供給装置支持部600側へ連結されており、上側支持アーム630の下端部は上側支持アーム回動軸640の回りに回動可能であるように苗載せ台51側へ連結されている。下側支持アーム650の上端部は薬剤供給装置支持部600側へ連結されており、下側支持アーム650の下端部は下側支持アームスライド溝660に沿って上方および下方にスライド可能であり回動可能であるように苗載せ台51側へ連結されている。
かくして、作業者が薬剤供給装置500、薬剤供給装置支持部600および薬剤供給装置移動機構700を持ち上げて上方に移動させると、後述される、苗水払落しバー1110または苗押さえ屈曲アーム1210の操作が苗の取出し時などにおいて行われるときには、このような操作に必要なスペースを確保することが可能である。
もちろん、薬剤供給装置500、薬剤供給装置支持部600および薬剤供給装置移動機構700が苗載せ台51に対して脱着可能であるような実施の形態も、考えられる。
苗水払落し部1100は、苗水払落しバー1110、および苗水払落しバー取付部材1111を有する。苗水払落しバー取付部材1111は、苗載せ台51の上面側に設けられた突出部材であり、苗水払落しバー1110を脱着可能であるように支持する。苗押さえ屈曲アーム1210は、左右方向が長手方向であるアーム部材であり、苗縦送りが行われる各苗マットの苗水払落しを行う。
葉および茎の苗水は薬剤が供給される前に払落されるので、薬剤は葉および茎に付着せずに根まで十分に供給される。
苗押さえ部1200は、複数の苗押さえ屈曲アーム1210、および苗押さえ屈曲アーム取付部材1211を有する。苗押さえ屈曲アーム取付部材1211は、苗載せ台51の上面側の左右両側および中間に設けられた複数の突出部材であり、複数の苗押さえ屈曲アーム1210の上端部を連結するバーを回動可能であるように支持する。苗押さえ屈曲アーム1210は苗縦送りが行われる方向が長手方向であるアーム部材であり、幾つかの苗押さえ屈曲アーム1210が共同で一枚の苗マットを担当して各苗マットの下端部などの浮上りを抑える。
さて、コントローラー900が行う苗載せ台移動機構200、薬剤供給装置500および薬剤供給装置移動機構700の制御動作について詳述する。
前述されたように、苗載せ台51は走行車体2に取付けられた苗載せ台支持部100の上で左右方向に往復移動させられ、苗載せ台移動検出部300は苗載せ台51が苗載せ台支持部100の左サイド部100Lおよび右サイド部100Rに到達した到達タイミングを検出し、苗送りベルト51bは苗載せ台移動検出部300が検出した到達タイミングに応じて苗縦送りを行う。
そして、薬剤供給装置500は、苗載せ台51に取付けられた薬剤供給装置支持部600の上で左右方向に往復移動させられるとともに、苗載せ台51に載せられた苗に薬剤を供給させられる。
図10に示されているように、かくの如き薬剤供給装置500の制御をともなう動作を実現するための制御ルーチンにおいては、バランスモードおよび薬剤供給モードが実行される。
ここに、図10は、本発明における実施の形態の田植機8の制御ルーチンを説明する流れ図である。
後に詳述するように、前述された、準備移動制御、薬剤供給移動制御、および復帰移動制御、ならびに薬剤供給制御は、薬剤供給モードにおいて行われる。
(ステップS1)制御ルーチンが開始されると、薬剤供給モード実行条件が満足されているか否かが判断される。
苗載せ台51が左サイド部100Lに対応する左サイド位置pLに到達したと判断されると、苗載せ台51の左サイド位置pLへの到達回数カウント値νは1ずつインクリメントされるが、到達回数カウント値νが所定値Nになると、到達回数カウント値νのゼロリセットが直ちに行われる。
本実施の形態においては、一回の薬剤供給制御が行われると、薬剤が左右方向6列の苗にまとめて供給されるので、
(数2)
N=6/2=3[回]
であり、薬剤供給モード実行条件は到達回数カウント値νが (数3)
N−1=3−1=2[回]
である、という条件である。
本実施の形態においては、結果的に、苗縦送り部51bが (数4)
2×(N−1)=2×2=4[回]
の苗縦送りを行うと、準備移動制御が開始され、苗縦送り部51bがさらにもう一回の苗縦送りを行うと、薬剤供給移動制御が開始される。
そして、薬剤供給モード実行条件が満足されているか否かは、苗載せ台51が左サイド位置pLに到達した到達タイミングで判断されていく。
もちろん、一回の薬剤供給制御が行われると、薬剤が左右方向1列の苗にのみ供給されるような実施の形態も、考えられる。
さらに、薬剤供給モード実行条件は、苗縦送り量が0[mm]にリセットされた、または累積された苗縦送り量が100[mm]である、という条件であるような実施の形態も、考えられる。
(ステップS2)薬剤供給モード実行条件が満足されていないと判断された場合には、バランスモードが開始される。
本実施の形態においては、薬剤供給装置500がバランスモード右端位置qRに到達するタイミングで、苗載せ台51が左サイド位置pLに到達する。
そこで、図11に示されているように、右向きに移動していた薬剤供給装置500はバランスモード右端位置qRを左向きに出発してバランスモード左端位置qLに移動していき、左向きに移動していた苗載せ台51は左サイド位置pLを右向きに出発して右サイド位置pRに移動していく。
ここに、図11は、本発明における実施の形態の田植機8の苗載せ台51近傍の模式的な背面図(その一)である。
そして、本実施の形態においては、薬剤供給装置500がバランスモード左端位置qLに到達するタイミングで、苗載せ台51が右サイド位置pRに到達する。
そこで、図12に示されているように、左向きに移動していた薬剤供給装置500はバランスモード左端位置qLを右向きに出発してバランスモード右端位置qRに移動していき、右向きに移動していた苗載せ台51は右サイド位置pRを左向きに出発して左サイド位置pLに移動していく。
ここに、図12は、本発明における実施の形態の田植機8の苗載せ台51近傍の模式的な背面図(その二)である。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
苗載せ台51の左右方向における移動は、速度vのほぼ等速な移動である。したがって、苗載せ台51が左サイド位置pLを右向きに出発し、左右センター位置pCを経て、右サイド位置pRに到達するのに必要な時間、および苗載せ台51が右サイド位置pRを左向きに出発し、左右センター位置pCを経て、左サイド位置pLに到達するのに必要な時間は、何れも (数5)
Δt=w/v程度である。
バランスモードでの薬剤供給装置500の左右方向における移動は、速度Vのほぼ等速な移動である。したがって、バランスモードでの薬剤供給装置500がバランスモード右端位置qRを左向きに出発し、左右中央位置qCを経て、バランスモード左端位置qLに到達するのに必要な時間、およびバランスモードでの薬剤供給装置500がバランスモード左端位置qLを右向きに出発し、左右中央位置qCを経て、バランスモード右端位置qRに到達するのに必要な時間は、何れも (数6)
ΔT=D/V
程度である。
そして、本実施の形態においては、
(数7)
Δt=ΔTである。
もちろん、Δt≠ΔTであるような実施の形態も、考えられる。たとえば、Δt>ΔTであるような実施の形態においては、バランスモードでの薬剤供給装置500が左右中央位置qC、またはバランスモード左端位置qLもしくはバランスモード右端位置qRなどにおいて停留している時間帯があってもよく、より具体的には、Δt−ΔTの時間長での移動途中における左右中央位置qCでの停留が行われてもよい。
このように、コントローラー900は、薬剤供給制御を行っていない時間帯の一部において、苗載せ台51が、左向きに移動するとき、薬剤供給装置500が、右向きに移動するように、バランス移動制御を行い、苗載せ台51が、右向きに移動するとき、薬剤供給装置500が、左向きに移動するように、バランス移動制御を行う。
そして、コントローラー900は、薬剤供給制御を行っていない時間帯の一部において、(1)苗載せ台51が、苗載せ台51の左右移動ストロークの左右中央位置としての左右センター位置pCを基準として左側に寄っているとき、薬剤供給装置500が、薬剤供給装置500の左右移動ストロークの左右中央位置qCを基準として右側に寄っているように、バランス移動制御を行い、(2)苗載せ台51が、左右センター位置pCを基準として右側に寄っているとき、薬剤供給装置500が、左右中央位置qCを基準として左側に寄っているように、バランス移動制御を行い、(3)苗載せ台51が、左右センター位置pCにあるとき、薬剤供給装置500が、左右中央位置qCにあるように、バランス移動制御を行う。
すると、左右センター位置pCおよび左右中央位置qCが機体の左右方向における真ん中とほぼ一致している時間帯が十分に確保されるので、機体バランスの悪化が大きく抑制される。
もちろん、コントローラー900が、薬剤供給制御を行っていない時間帯の全部においてかくの如きバランス移動制御を行うような実施の形態も、考えられる。ただし、準備移動制御、薬剤供給移動制御、および復帰移動制御が行われる時間帯は、確保されなければならない。
(ステップS3)バランスモードが終了され、制御ルーチンにおけるリターンが行われる。
(ステップS4)薬剤供給モード実行条件が満足されていると判断された場合には、薬剤供給モードが開始される。
(ステップS5)まず、準備移動制御が、行われる。
前述されたように、薬剤供給装置500がバランスモード右端位置qRに到達するタイミングで、苗載せ台51が左サイド位置pLに到達する。
そこで、図13に示されているように、右向きに移動していた薬剤供給装置500はバランスモード右端位置qRをそのまま右向きに通過して薬剤供給モード右端位置qR1に移動していき、左向きに移動していた苗載せ台51は左サイド位置pLを右向きに出発して右サイド位置pRに移動していく。
ここに、図13は、本発明における実施の形態の田植機8の苗載せ台51近傍の模式的な背面図(その三)である。
このように、コントローラー900は、準備移動制御を行うに当たり、薬剤供給装置500が、左右中央位置qCを基準として右側に寄っているときには、薬剤供給装置支持部600の右端部600Rに向かって、薬剤供給装置500を移動させる。
準備移動制御での薬剤供給装置500の左右方向における移動は、速度V1(>V)のほぼ等速な移動である。
もちろん、コントローラー900が、準備移動制御を行うに当たり、薬剤供給装置500が、左右中央位置qCを基準として左側に寄っているときには、薬剤供給装置支持部600の左端部600Lに向かって、薬剤供給装置500を移動させるような実施の形態も、考えられる。
(ステップS6)つぎに、薬剤供給移動制御および薬剤供給制御が、行われる。
本実施の形態においては、薬剤供給装置500が薬剤供給モード右端位置qR1に到達するタイミングで、苗載せ台51が右サイド位置pRに到達する。
そこで、図14に示されているように、右向きに移動していた薬剤供給装置500は薬剤供給モード右端位置qR1を左向きに出発して薬剤供給モード左端位置qL1に移動していき、右向きに移動していた苗載せ台51は右サイド位置pRを左向きに出発して左サイド位置pLに移動していく。
ここに、図14は、本発明における実施の形態の田植機8の苗載せ台51近傍の模式的な背面図(その四)である。
もちろん、苗載せ台51が右サイド位置pRに到達するタイミングでは、薬剤供給装置500がすでに薬剤供給モード右端位置qR1に到達しているような実施の形態も、考えられる。ただし、機体バランスの悪化が招来される恐れがあるので、前述された準備移動制御は過度に早く終了されないことが望ましい。
そして、コントローラー900は、薬剤供給移動制御を行うに当たり、薬剤供給制御を開始した後に、所定時間が経過してから、薬剤供給移動制御を開始する。
すると、薬剤供給開始位置においても、薬剤供給量が十分に確保される。
薬剤供給移動制御での薬剤供給装置500の左右方向における移動は、速度V2(>V1)のほぼ等速な移動である。
もちろん、薬剤供給移動制御での薬剤供給装置500の左右方向における移動は、薬剤供給移動制御の間は高速で行われ、それ以外の苗縦送りなどの間は低速で行われるような実施の形態も、考えられる。ただし、薬剤供給制御は、苗載せ台51のない箇所で無駄に薬剤を供給してしまわないように薬剤供給移動制御に追随して精密に行われることが望ましい。
さらに、コントローラー900が、薬剤供給移動制御を行うに当たり、薬剤供給制御を開始すると同時に、薬剤供給移動制御を開始するような実施の形態も、考えられる。
(ステップS7)そして、復帰移動制御が、行われる。
本実施の形態においては、薬剤供給装置500が薬剤供給モード左端位置qL1に到達するタイミングで、苗載せ台51がまだ左サイド位置pLに到達していない。
そこで、図15に示されているように、左向きに移動していた薬剤供給装置500は薬剤供給モード左端位置qL1を右向きに出発してバランスモード右端位置qRに移動していき、左向きに移動していた苗載せ台51はそのまま左向きに左サイド位置pLに移動していく。
ここに、図15は、本発明における実施の形態の田植機8の苗載せ台51近傍の模式的な背面図(その五)である。
もちろん、薬剤供給装置500が薬剤供給モード左端位置qL1に到達するタイミングでは、苗載せ台51がすでに左サイド位置pLに到達しているような実施の形態も、考えられる。ただし、前述された薬剤供給制御は、苗縦送りが完了する前に終了されることが望ましい。
そして、本実施の形態においては、薬剤供給装置500がバランスモード右端位置qRに到達するタイミングで、苗載せ台51が左サイド位置pLに到達する(図11参照)。
復帰移動制御での薬剤供給装置500の左右方向における移動は、速度V2のほぼ等速な移動である。
もちろん、苗載せ台51が左サイド位置pLに到達するタイミングでは、薬剤供給装置500がすでにバランスモード右端位置qRに到達しているような実施の形態も、考えられる。
(ステップS8)薬剤供給モードが終了され、制御ルーチンにおけるリターンが行われる。
このように、コントローラー900は、準備移動制御を行うに当たり、左右中央位置qCとは異なる位置から、薬剤供給装置500を移動させる。つまり、本実施の形態は、薬剤供給装置500がバランスモードにおける左右移動位置の何れか一方にあるとき、薬剤供給装置500を薬剤供給装置支持部600の左右中央位置qCに一旦移動させることなく、薬剤供給モードにおける左サイド位置pL、または右サイド位置pRまで移動させるような実施の形態である。これにより、薬剤供給装置500で薬剤供給作業を速やかに行うことができるので、薬剤が適切なタイミングで苗に供給されるとともに、薬剤供給装置移動機構700のアクチュエーター710を入切制御する回数が減少して作動回数が抑えられ、エネルギーの消費が抑えられる。
もちろん、コントローラー900が、準備移動制御を行うに当たり、左右中央位置qCから、薬剤供給装置500を移動させ、復帰移動制御を行うに当たり、左右中央位置qCに、薬剤供給装置500を移動させるような実施の形態も、考えられる。
本実施の形態においては、バランスモードが終了されるタイミングでも、薬剤供給モードが終了されるタイミングでも、苗載せ台51が左サイド位置pLに到達し、薬剤供給装置500がバランスモード右端位置qRに到達している。したがって、制御ルーチンにおけるリターンが行われ、薬剤供給モード実行条件が満足されているか否かが判断された後における、バランスモードから薬剤供給モードへの移行も、薬剤供給モードからバランスモードへの移行も、特段な移行動作制御が利用されることなく、スムーズに行われる。このため、簡潔な往復移動の組み合わせによる周期的な制御動作を繰り返し継続することが、可能である。
もちろん、バランスモードから薬剤供給モードへの移行、または薬剤供給モードからバランスモードへの移行を行うための移行動作制御が利用されるような実施の形態も、考えられる。
以上においては、コントローラー900が行う苗載せ台移動機構200、薬剤供給装置500および薬剤供給装置移動機構700の制御動作について詳述した。
(B)つぎに、図16を主として参照しながら、つぎの植付列の目安となる直線状のマークを圃場面に形成する電動リアマーカー1300を備える、本実施の形態の田植機8の構成および動作について説明する。
ここに、図16は、本発明における実施の形態の田植機8の模式的な正面図である。
本実施の形態の電動リアマーカー自動収納展開制御は、苗植付が副変速レバー操作位置などに応じて行われている場合においては、電動リアマーカー1300の基準線Hからの回動量θがあまり大きくならないように行われる。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
植付けられる苗を載せる苗載せ台51が左右方向に往復移動させられるときには、電動リアマーカー1300が苗載せ台51に干渉する恐れがある。
そこで、苗植付が行われている場合における、本実施の形態の電動リアマーカー自動収納展開制御は、回動量θがほぼ70度になるように行われる。
ただし、たとえば、電動リアマーカー1300が苗載せ台51に干渉する恐れがあまりない機体レイアウトが採用されているのであれば、現行機におけるように、苗植付が行われている場合においても回動量θが90度になるような自動収納展開制御が行われてもよい。
もちろん、電動リアマーカー自動収納展開制御が回動量θを検出するためのポテンショメーターを利用してより精密に行われるような実施の形態も、考えられる。
さらに、電動リアマーカー昇降モーターの制御が、前述されたポテンショメーターによる検出結果に応じて得られる電動リアマーカー1300の振出し位置に応じてパルス駆動による振動モードで行われるような実施の形態も、考えられる。たとえば、電動リアマーカー昇降モーターの制御は、電動リアマーカー1300の上昇信号が出力されて回動量θがゼロからほぼ10〜20度になるまでそのような振動モードで行われてもよい。すると、電動リアマーカー1300に付着した泥は、作業者に飛び散る恐れなく振動によって振り落とされる。
(本発明に関連する発明の実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本発明に関連する発明の実施の形態について詳細に説明する。
はじめに、図17および18を主として参照しながら、本発明に関連する発明の実施の形態の播種機の構成および動作について具体的に説明する。
ここに、図17は本発明に関連する発明の実施の形態の播種機のフロート2100近傍の左側面図(その一)であり、図18は本発明に関連する発明の実施の形態の播種機のフロート2100近傍の左側面図(その二)である。
なお、図17においては、下方回動位置状態の種子作溝器2300が図示されている。また、図18においては、上方回動位置状態の種子作溝器2300が図示されており、フロート2100は図示されていない。
本発明に関連する発明の実施の形態の播種機は、上述された実施の形態の田植機8に類似しているが、苗植付装置52ではなく、直播装置2200を備えている。
種子作溝器2300は、脱着の要なく使用不使用に応じて容易に回動支点2310の回りに回動可能であり、スライダースティック2321およびスナップピン2322をもつ回動ロック部材2320によってロック可能である。
種子作溝器2300は、種子コーティングが作溝を必要とするコーティングである場合には、その一部がフロート接地面Sより下方に位置するように下方回動される。そして、スライダースティック2321は、フロート2100の上面側に穿孔された下方回動位置孔2120に挿通され、スライダースティック2321のスナップピン孔に挿入されたスナップピン2322によってロックされる。かくして、種子作溝器2300の使用時における下方回動位置状態が、実現される。
種子作溝器2300は、種子コーティングが圃場面への播種に適した作溝を必要としない鉄コーティングなどである場合には、ほぼ全部がフロート接地面Sより上方に位置するように上方回動される。そして、スライダースティック2321は、フロート2100の上面側に穿孔された上方回動位置孔2110に挿通され、スライダースティック2321のスナップピン孔に挿入されたスナップピン2322によってロックされる。かくして、種子作溝器2300の不使用時における上方回動位置状態が、実現される。
より具体的に説明すると、つぎの通りである。
回動ロック部材2320および回動支点2310は、フロート接地面Sより上方に設けられている。このため、泥が回動ロック部材2320および回動支点2310に付着して作動不良が惹起される恐れはほとんどなく、不使用時においては種子作溝器2300の全体がフロート接地面Sより上方にほぼ完全に収納可能である。
回動ロック部材2320は、種子作溝器2300より前方に設けられている。このため、回動ロック部材2320が播種を妨げる恐れは、ほとんどない。
そして、回動支点2310は、種子作溝器2300より前方に設けられている。
もちろん、図19に示されているように、回動支点2310が種子作溝器2300より後方に設けられているような実施の形態も、考えられる。
ここに、図19は、本発明に関連する発明の実施の形態の播種機のフロート2100近傍の模式的な左側面図である。
なお、図19においては、下方回動位置状態の種子作溝器2300が図示されており、フロート2100などは図示されていない。
さらに、回動ロック部材2320が種子作溝器2300より後方に設けられているような実施の形態も、考えられる。
つぎに、図20を主として参照しながら、本発明に関連する発明の実施の形態の播種機の構成および動作についてより具体的に説明する。
ここに、図20は、本発明に関連する発明の実施の形態の播種機のフロート2100の模式的なA−A´断面図である。
フロート2100のフロート底面2101の形状は、平坦形状ではなく、左右中央位置に設けられたフロート底面凹部2101aをもった上方に凸な形状である。このため、泥、水および藁などがフロート底面凹部2101aに集積されやすいので、フロート2100の排水性能が向上され、轍跡がフロート接地面Sに残存しにくく、整地性能も向上され、フロート底面2101がフロート接地面Sに吸着されにくいので、接地されたフロート2100の上昇動作が容易である。
もちろん、上述された実施の形態の田植機8のフロート55〜57の形状がかくの如き形状であるような実施の形態も、考えられる。