以下に、本願発明を具体化した実施形態を、8条植え式の乗用型田植機1(以下、単に田植機1という)に適用した場合の図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、走行機体2の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
まず、図1から図5を参照しながら、田植機1の概要について説明する。実施形態の田植機1は、走行部としての左右一対の前車輪3及び同じく左右一対の後車輪4によって支持された走行機体2を備えている。走行機体2の前部にはエンジン5が搭載されている。エンジン5からの動力を後方のミッションケース6に伝達して、前車輪3及び後車輪4を駆動させることにより、走行機体2が前後進走行するように構成されている。ミッションケース6の左右側方にフロントアクスルケース7を突出させ、フロントアクスルケース7から左右外向きに延びる前車軸36に前車輪3が舵取り可能に取り付けられている。ミッションケース6の後方に筒状フレーム8を突出させ、筒状フレーム8の後端側にリヤアクスルケース9を固設し、リヤアクスルケース9から左右外向きに延びる後車軸37に後車輪4が取り付けられている。
図1及び図2に示されるように、走行機体2の前部及び中央部の上面側には、オペレータ搭乗用の作業ステップ(車体カバー)10が設けられている。作業ステップ10の前部の上方にはフロントボンネット11が配置され、フロントボンネット11の内部にエンジン5を設置している。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後部側方に、足踏み操作用の走行変速ペダル12が配置されている。詳細は省略するが、実施形態の田植機1は、走行変速ペダル12の踏み込み量に応じた変速電動モータの駆動にて、ミッションケース6の油圧無段変速機40から出力される変速動力を調節するように構成されている。
また、フロントボンネット11の後部上面側にある運転操作部13には、操縦ハンドル14と走行主変速レバー15と昇降操作具としての作業レバー16とが設けられている(図5参照)。作業ステップ10の上面のうちフロントボンネット11の後方には、シートフレーム17を介して操縦座席18が配置されている。なお、フロントボンネット11の左右側方には、作業ステップ10を挟んで左右の予備苗載台24が設けられている。
走行機体2の後端部にリンクフレーム19が立設されている。リンクフレーム19には、ロワーリンク20及びトップリンク21からなる昇降リンク機構22を介して、8条植え用の苗植付装置23が昇降可能に連結されている。この場合、苗植付装置23の前面側に、ローリング支点軸(図示省略)を介してヒッチブラケット38を設けている。昇降リンク機構22の後部側にヒッチブラケット38を連結することによって、走行機体2の後方に苗植付装置23を昇降動可能に配置している。筒状フレーム8の上面後部に、油圧式の昇降シリンダ39(油圧昇降制御機構)のシリンダ基端側を上下回動可能に支持させる。昇降シリンダ39のロッド先端側はロワーリンク20に連結している。昇降シリンダ39の伸縮動にて昇降リンク機構22を上下回動させる結果、苗植付装置23が昇降動する。なお、苗植付装置23は上記ローリング支点軸回りに回動して左右方向の傾斜姿勢を変更可能に構成している。
オペレータは、作業ステップ10の側方にある乗降ステップ25から作業ステップ10上に搭乗し、運転操作にて圃場内を移動しながら、苗植付装置23を駆動させて圃場に苗を植え付ける苗植え作業(田植え作業)を実行する。なお、苗植え作業中において、苗植付装置23には、予備苗載台24上の苗マットをオペレータが随時補給する。
図1及び図2に示すように、苗植付装置23は、エンジン5からミッションケース6を経由した動力が伝達される植付入力ケース26と、植付入力ケース26に連結する8条用4組(2条で1組)の植付伝動ケース27と、各植付伝動ケース27の後端側に設けられた苗植機構28と、8条植え用の苗載台29と、各植付伝動ケース27の下面側に配置された田面均平用のフロート32とを備えている。苗植機構28には、一条分二本の植付爪30を有する植付伝動ケース27が設けられている。植付伝動ケース27に2条分の植付伝動ケース27が配置されている。植付伝動ケース27の出力軸の一回転によって、二本の植付爪30が各々一株ずつの苗を切り取ってつかみ、フロート32にて整地された田面に植え付ける。苗植付装置23の前面側には、圃場面を均す(整地する)整地ロータ85を昇降動可能に設けている。図20に示すように、苗植付装置23には、苗載台29に載置された苗マットに箱施用剤を散布する箱施用剤散布機(薬剤散布機)400を設けている。
詳細は後述するが、エンジン5からミッションケース6を経由した動力は、前車輪3及び後車輪4に伝達されるだけでなく、苗植付装置23の植付入力ケース26にも伝達される。この場合、ミッションケース6から苗植付装置23に向かう動力は、リヤアクスルケース9の右側上部に設けられた株間変速ケース75に一旦伝達され、株間変速ケース75から植付入力ケース26に動力伝達される。当該伝達された動力にて、各苗植機構28や苗載台29が駆動する。株間変速ケース75には、植え付けられる苗の株間を例えば疎植、標準植又は密植等に切り換える株間変速機構76と、苗植付装置23への動力伝達を継断する植付クラッチ77とが内蔵されている(図6参照)。
なお、苗植付装置23の左右外側にはラインマーカ33を備えている。ラインマーカ33は、筋引き用のマーカ輪体34と、マーカ輪体34を回転可能に軸支するマーカアーム35とを有している。各マーカアーム35の基端側が苗植付装置23の左右外側に左右回動可能に軸支されている。ラインマーカ33は、運転操作部13にある作業レバー16の操作に基づき、次工程での基準となる軌跡を田面に着地して形成する作業姿勢と、マーカ輪体34を上昇させて田面から離間させた非作業姿勢とに回動可能に構成されている。
図3及び図4に示すように、走行機体2は前後に延びる左右一対の機体フレーム50を備えている。各機体フレーム50は前部フレーム51と後部フレーム52とに二分割されている。前部フレーム51の後端部と後部フレーム52の前端部とが左右横長の中間連結フレーム53に溶接固定されている。左右一対の前部フレーム51の前端部は前フレーム54に溶接固定されている。左右一対の後部フレーム52の後端側は後フレーム55に溶接固定されている。前フレーム54、左右両前部フレーム51及び中間連結フレーム53は平面視四角枠状に構成されている。同様に、中間連結フレーム53、左右両後部フレーム52及び後フレーム55も平面視四角枠状に構成されている。
図4に示すように、左右両前部フレーム51の前寄り部位は、前後二本のベースフレーム56によって連結されている。当該各ベースフレーム56の中間部は、左右両前部フレーム51よりも低く位置するようにU字形に折り曲げられた形状に形成されている。各ベースフレーム56の左右端部は、対応する前部フレーム51に溶接固定されている。略平板状のエンジン台57及び複数の防振ゴム(図示省略)を介して、前後両ベースフレーム56にエンジン5が搭載され防振支持されている。後側のベースフレーム56は、後中継ブラケット60を介してミッションケース6の前部に連結されている。
図4から分かるように、左右両前部フレーム51の後寄り部位は、ミッションケース6の左右両側に突出したフロントアクスルケース7に連結されている。中間連結フレーム53の中央側には、側面視で後斜め下向きに延びるU字状フレーム61の左右両端部が溶接固定されている。U字状フレーム61の中間部がミッションケース6とリヤアクスルケース9とをつなぐ筒状フレーム8の中途部に連結されている(図3及び図4参照)。後フレーム55の中間部には、左右二本の縦フレーム62の上端側が溶接固定されている。左右両縦フレーム62の下端側には左右横長のリヤアクスル支持フレーム63の中間部が溶接固定されている。リヤアクスル支持フレーム63の左右両端部がリヤアクスルケース9に連結されている。なお、左側の前部フレーム51に外向き突設されたステップ支持台64の下方に、エンジン5の排気音を低減させるマフラー65が配置されている。
図3及び図4に示すように、エンジン5の後方に配置されたミッションケース6の前部には、パワーステアリングユニット66が設けられている。詳細は省略するが、パワーステアリングユニット66の上面に立設されるハンドルポストの内部にハンドル軸が回動可能に配置される。ハンドル軸の上端側に操縦ハンドル14が固定されている。パワーステアリングユニット66の下面側には操舵出力軸(図示省略)が下向きに突出している。当該操舵出力軸には、左右の前車輪3を操舵する操舵杆68(図4参照)がそれぞれ連結されている。
実施形態のエンジン5は、出力軸70(クランク軸)を左右方向に向けて前後両ベースフレーム56の中間部上に配置されている。エンジン5及びエンジン台57の左右幅は左右両前部フレーム51間の内法寸法よりも小さく、エンジン5の下部側及びエンジン台57は、前後両ベースフレーム56の中間部上に配置された状態で、左右両前部フレーム51よりも下側に露出している。この場合、エンジン5の出力軸70(軸線)は、側面視で左右両前部フレーム51と重なる位置にある。エンジン5の左右一側面(実施形態では左側面)には、エンジン5の排気系に連通する排気管69が配置されている。排気管69の基端側がエンジン5の各気筒に接続され、排気管69の先端側がマフラー65の排気入口側に接続されている。
図5に示す運転操作部13において、走行主変速レバー15は、操縦ハンドル14を挟んだ左右一方側(実施形態では左側に位置している。運転操作部13に形成したガイド溝83に沿って走行主変速レバー15を操作することによって、田植機1の走行モードを前進、中立、後進、苗継及び移動の各モードに切り換えるように構成している。作業レバー16は、操縦ハンドル14を挟んだ左右他方側(実施形態では右側)に位置している。作業レバー16は、苗植付装置23の昇降操作、植付クラッチ77の継断操作及び左右ラインマーカ33の選択操作という複数の操作を単独で担うものであり、十字方向に操作可能に構成している。
この場合、作業レバー16を一回前傾操作すると苗植付装置23が下降し、もう一回前傾操作すると植付クラッチ77が入り作動する(動力接続状態になる)。逆に、作業レバー16を一回後傾操作すると植付クラッチ77が切り作動し(動力遮断状態になり)、もう一回後傾操作すると苗植付装置23が上昇する。苗植付装置23の昇降動作を取り止める場合は、作業レバー16を逆方向に傾動操作する。例えば苗植付装置23の下降動を途中で停止させる場合は作業レバー16を後傾操作すればよい。作業レバー16を一回左へ傾動操作すると左側のラインマーカ33が作業姿勢となり、もう一回左へ傾動操作すると左側のラインマーカ33が非作業姿勢に戻る。作業レバー16を一回右へ傾動操作すると右側のラインマーカ33が作業姿勢となり、もう一回右へ傾動操作すると右側のラインマーカ33が非作業姿勢に戻る。
次に、図6を参照しながら、田植機1の駆動系統について説明する。エンジン5の出力軸70はエンジン5の左右両側面から外向きに突出している。出力軸70のうちエンジン5左側面から突出した突端部にエンジン出力プーリ72を設け、ミッションケース6から左外側に突出したミッション入力軸71にミッション入力プーリ73を設け、両プーリ72,73に伝達ベルトを巻き掛けている。両プーリ72,73及び伝達ベルトを介して、エンジン5からミッションケース6に動力伝達する。
ミッションケース6内には、油圧ポンプ40a及び油圧モータ40bからなる油圧無段変速機40、遊星歯車装置41、油圧無段変速機40及び遊星歯車装置41を経由した変速動力を複数段に変速する歯車式副変速機構42、遊星歯車装置41から歯車式副変速機構42への動力伝達を継断する主クラッチ43、並びに、歯車式副変速機構42からの出力を制動させる走行ブレーキ44等を備えている。ミッション入力軸71からの動力で油圧ポンプ40aを駆動させ、油圧ポンプ40aから油圧モータ40bに作動油を供給し、油圧モータ40bから変速動力が出力される。油圧モータ40bの変速動力は、遊星歯車装置41及び主クラッチ43を介して歯車式副変速機構42に伝達される。そして、歯車式副変速機構42から、前後車輪3,4と苗植付装置23との二方向に分岐して動力伝達される。
前後車輪3,4に向かう分岐動力の一部は、歯車式副変速機構42から差動歯車機構45を介して、フロントアクスルケース7の前車軸36に伝達され、左右前車輪3を回転駆動させる。前後車輪3,4に向かう分岐動力の残りは、歯車式副変速機構42から、自在継手軸46、リヤアクスルケース9内のリヤ駆動軸47、左右一対の摩擦クラッチ48及び歯車式減速機構49を介して、リヤアクスルケース9の後車軸37に伝達され、左右後車輪4を回転駆動させる。走行ブレーキ44を作動させた場合は、歯車式副変速機構42からの出力がなくなるので、前後車輪3,4共にブレーキがかかる。また、田植機1を旋回させる場合は、リヤアクスルケース9内の旋回内側の摩擦クラッチ48を切り作動させて旋回内側の後車輪4を自由回転させ、動力伝達される旋回外側の後車輪4の回転駆動によって旋回する。
リヤアクスルケース9内には、整地ロータ85への動力継断用の整地ロータクラッチを有するロータ駆動ユニット86を備えている。歯車式副変速機構42から自在継手軸46に伝達された動力はロータ駆動ユニット86にも分岐して伝達され、ロータ駆動ユニット86から自在継手軸87を介して整地ロータ85に動力伝達される。整地ロータ85の回転駆動によって圃場面が均される。
苗植付装置23に向かう分岐動力は、自在継手軸付きのPTO伝動軸機構74を介して株間変速ケース75に伝達される。株間変速ケース75内には、植え付けられる苗の株間を例えば疎植、標準植又は密植等に切り換える株間変速機構76と、苗植付装置23への動力伝達を継断する植付クラッチ77とを備えている。株間変速ケース75に伝達された動力は、株間変速機構76、植付クラッチ77及び自在継手軸78を介して植付入力ケース26に伝達される。
植付入力ケース26内には、苗載台29を横送り移動させる苗台横送り機構79と、苗載台29上の苗マットを縦送り搬送させる苗縦送り機構80と、植付入力ケース26から各植付伝動ケース27に動力伝達する植付出力軸81とを備えている。植付入力ケース26に伝達された動力によって、苗台横送り機構79及び苗縦送り機構80が駆動し、苗載台29を連続的に往復で横送り移動させ、苗載台29が往復移動端(往復移動の折返し点)に到達したときに苗載台29上の苗マットを間欠的に縦送り搬送する。植付入力ケース26から植付出力軸81を経由した動力は各植付伝動ケース27に伝達され、各植付伝動ケース27の植付伝動ケース27並びに植付爪30を回転駆動させる。なお、施肥装置を設ける場合は株間変速ケース75から施肥装置に動力伝達される。
植付入力ケース26内部には、左右長手の中間軸211と苗載台駆動軸212とを平行状に配置している。植付入力ケース26に伝わった動力は、中間軸211及び苗載台駆動軸212を経由して横送り機構79及び苗縦送り機構80に伝達される。苗載台駆動軸212には複数枚の横送り調節従動ギヤ214を固定する一方、中間軸211には、横送り調節従動ギヤ214に対応する横送り調節駆動ギヤ213を遊嵌している。複数枚の横送り調節駆動ギヤ213のうちいずれか1つのみに、植付入力ケース26に設けたスライドレバー(図示省略)でスライド操作可能なスライドキー215によって、中間軸211から選択的に動力伝達され、苗載台駆動軸212を回転させる。
横送り調節ギヤ213,214の各組はそれぞれ歯数の比率が相違していて、横送り調節ギヤ213,214の組合せを変えると、苗載台駆動軸212の回転比率が変わる。その結果、苗載台29の横送りピッチが変化して、苗マットの苗の掻取り量が変化する。実施形態では、横送り調節ギヤ213,214の組合せが4種類あり、横送り回数が18回、20回、26回及び30回のいずれかに設定される。ここで、横送り回数とは、苗載台29を左右いずれかの移動端まで横送りする間に、1条分2本の植付爪30が苗マットから苗を掻き取る回数を意味している。横送り回数が30回に対応した横送り調節ギヤ213,214の組合せが高密度育苗の苗マットを用いる場合に適用される。
次に、図7を参照しながら、田植機1の油圧回路構造について説明する。田植機1の油圧回路90には、油圧無段変速機40の構成要素である油圧ポンプ40a及び油圧モータ40bと、チャージポンプ91及び作業ポンプ92とを備える。油圧ポンプ40a、チャージポンプ91及び作業ポンプ92がエンジン5の動力によって駆動する。油圧ポンプ40aと油圧モータ40bとは、閉ループ油路93を介してそれぞれの吸入側及び吐出側に接続している。チャージポンプ91を閉ループ油路93に接続している。走行変速ペダル12の踏み込み量に応じた変速電動モータの駆動によって、油圧ポンプ40aの斜板角度を調節し、油圧モータ40bを正転又は逆転駆動させるように構成している。
作業ポンプ91は、操縦ハンドル14の操作を補助するパワーステアリングユニット66に接続している。パワーステアリングユニット66は、操向油圧切換弁94及び操向油圧モータ95を備えている。操縦ハンドル14の操作によって操向油圧切換弁94を切換作動させて操向油圧モータ95を駆動させ、操縦ハンドル14の操作を補助する。その結果、左右前車輪3を小さい操作力で簡単に操舵できる。
パワーステアリングユニット66はフローデバイダ96に接続している。フローデバイダ96は第一油路97と第二油路98とに分岐している。第一油路97は、昇降シリンダ39に作動油を供給する昇降切換弁99に接続している。昇降切換弁99は、昇降シリンダ39に作動油を供給する供給位置99aと、昇降シリンダ39から作動油を排出する排出位置99bとの二位置に切換可能な4ポート2置切換形の機械式切換弁である。作業レバー16の操作で昇降切換弁99を切換作動させて昇降シリンダ39を伸縮動させることによって、昇降リンク機構22を介して苗植付装置23が昇降動する。なお、フローデバイダ96や昇降切換弁99は、ミッションケース6後部に設けたバルブユニット89内に収容している。
昇降切換弁99から昇降シリンダ39に至るシリンダ油路100中に電磁開閉弁101を設けている。電磁開閉弁101は、昇降シリンダ39に対して作動油を給排する開位置101aと、昇降シリンダ39に対する作動油の給排を停止する閉位置101bとの二位置に切換可能な電磁制御弁である。従って、電磁ソレノイド102を励磁して電磁開閉弁101を開位置101aにすると、昇降シリンダ39は伸縮動可能になり、苗植付装置23が昇降動可能になる。電磁ソレノイド102を非励磁にして戻しバネ103によって電磁開閉弁101を閉位置101bにすると、昇降シリンダ39は伸縮動不能に保持され、苗植付装置23が任意の高さ位置で昇降停止する。
なお、シリンダ油路100のうち電磁開閉弁101と昇降シリンダ39との間には、アキュムレータ油路104を介してアキュムレータ105を接続している。昇降シリンダ39内の急激な作動油圧変動の際は、アキュムレータ105によって作動油圧変動を吸収し、昇降切換弁99及び電磁開閉弁101の組合せによって、昇降シリンダ39をスムーズに伸縮動させ、苗植付装置23を軽快に昇降動させる。
フローデバイダ96の第二油路98は、苗植付装置23の左右傾斜姿勢を制御するローリング制御ユニット106に接続している。ローリング制御ユニット106には、ローリングシリンダ108に作動油を供給する電磁制御弁107を内蔵している。電磁制御弁107の切換作動によって、ローリング制御ユニット106に一体的に設けたローリングシリンダ108を作動させる結果、苗植付装置23が水平姿勢に保持される。なお、田植機1の油圧回路90は、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルフィルタ等も備えている。
次に、図8から図11を参照して、苗植付装置23の構成について説明する。苗植付装置23は、8条用4組の植付伝動ケース27の前端間を連結する植付フレーム111を備えている。植付フレーム111は左右方向に延設されている。植付フレーム111の中央部に植付入力ケース26が取り付けられている。植付入力ケース26は、苗載台29の左右方向の横送りを行う苗台横送り機構79の横送り軸と、苗載台29上の苗の縦送りを行う苗縦送り機構80の縦送り駆動軸80aと、苗植機構28の植付出力軸81を回転させる。
植付伝動ケース27の前端部下側に植深さ調節軸121が回動自在に枢支されている。植深さ調節軸121に、各フロート32a,32b後端部上面に配置されたブラケット113a,113bが植深さ調節リンク114a,114bを介して連結されている。また、植深さ調節軸121に、基準植付深さの調節を行う植深さ調節部材122の基端部が固着されている。植深さ調節部材122は、後述する植深さ調節アクチュエータ機構によって植深さ調節軸121を回動支点として回動されて位置調節される。植深さ調節部材122が位置調節されることにより、植深さ調節軸121及び植深さ調節リンク114a,114bを介してブラケット113a,113bの高さ位置、ひいてはフロート32a,32b(被調節体)が所望の植深さ設定高さに配置される。センターフロート32aの前端部に昇降センサ機構311のセンシングアームが取り付けられている。昇降センサ機構311はフロート傾斜角度(植付深さ)の変化を検出する。センターフロート32aの上方に、植付フレーム111の前面に取り付けられた表面検知センサ機構331が配置されている。表面検知センサ機構331は圃場の表面位置の変化を検出する。サイドフロート32bの前端部に、サイドフロート32b前端部の上下移動範囲を規制するフロート融通機構116が取り付けられている。
次に、ローリング制御装置109について説明する。図9に示されるように、ヒッチブラケット38下端部は、植付フレーム111略中央に固設された支点部材141にローリング支点軸142を介して回動自在に連結されている。ヒッチブラケット38上端側に設けられた取付座143に油圧ローリングシリンダ108が取り付けられている。シリンダ108のピストンロッド145先端は、ローリングアーム146に取り付けられた固定ブラケット147に連結されている。シリンダ108に、複動型のシリンダ108を往復駆動するローリング制御ユニット106が一体的に設けられている。取付座143上面に固設された受板148と、苗載台29裏側面の上レールフレーム151に、上レールフレーム151中央を挟んで設けられた一対のバネフックとの間に、ローリング補正バネ149が張設されている。振子型ローリングセンサ(図示は省略)が苗植付装置23の傾斜を検出するとき、シリンダ108のピストンロッド145を進退制御してローリング支点軸142回りに苗植付装置23を左右に揺動させて苗植付装置23の水平保持を図るように構成されている。
また、植付入力ケース26には苗台横送り機構79と苗縦送り機構80が接続されている。苗台横送り機構79の送り体79aは苗載台29の裏面下部側に連結されており、上レールフレーム151及び下レールフレーム152に沿った左右幅方向に苗載台29を横送り移動させる。このため、苗載台29上の苗マットは連続的に往復で横送り搬送される。
一方、苗縦送り機構80の縦送り駆動軸80aには一対の縦送り駆動カム80bが固着されている。苗載台29が往復移動端(往復移動の折返し点)に到達するとき、縦送り駆動軸80aにより回転駆動される各縦送り駆動カム80bが従動カム153の先端部に当接して従動カム153を回動させる。これによって無端帯状の苗縦送りベルト155が間欠駆動され、苗載台29上の苗マットが苗取出し側(苗載台29の傾斜下端側)に向けて間欠的に縦送り搬送される。
苗縦送りベルト155は、苗載台29の下端側に設けた左右横長の縦送り駆動ローラ軸154に取り付けられた縦送り駆動ローラと、苗載台29の中途部に設けた左右横長の縦送り従動ローラ軸157に取り付けられた縦送り従動ローラに巻き掛けられる。苗載台29の苗マット載面に矩形状の2枚の苗マットを直列に載せ、苗縦送りベルト155を間欠駆動させることによって、苗載台29の苗マット載面の傾斜下端側(苗取出し側)に向けて苗マットが縦送り搬送される。苗縦送りベルト155の苗送り作用面の長さは1枚の苗マットの長さより長い。また、苗取調節軸136に固着された苗取連動カム138と、縦送り駆動ローラ軸154に取り付けられた従動カム153を、連動ワイヤ156を介して連結させ、苗縦取量の変化に対応させて苗縦送り量も変化させて、苗縦取量に応じた適正な苗縦送りを行う。
また、図12に示されるように、苗植付装置23には、苗載台29下端の苗取出板131を上下動させて苗縦取量を調節する苗取調節具132が設けられている。苗取調節具132は、植付伝動ケース27にボルト締結されたガイド部材133に上下動自在に支持されたガイドロッド134上部に固着されている。左右方向に延設された苗取調節軸136に苗取調節カム135の基端部が固着されている。苗取調節カム135の先端部は苗取調節具132に挿入されている。また、苗取調節軸136に苗取調節部材137の基端部が固着されている。後述する苗取調節アクチュエータ機構181によって苗取調節部材137が位置調節されることによって、苗取調節軸136及び苗取調節カム135を介して苗取出板131、苗取調節具132及びガイドロッド134が上下移動されて、植付爪30が取り出す1株分の苗量の調節が行われる。苗取調節軸136は、植付伝動ケース27上部に固設する各軸受板に回動自在に支持される。
次に、図13から図17を参照しながら、植深さ調節アクチュエータ機構171と苗取調節アクチュエータ機構181を有する調節アクチュエータ機構群161の構成について説明する。調節アクチュエータ機構群161は、植深さ調節アクチュエータ機構171と苗取調節アクチュエータ機構181とアクチュエータ機構カバー162を備えている。調節アクチュエータ機構群161はローリング支点軸142よりも左側方位置で植付フレーム111に取り付けられている。調節アクチュエータ機構群161において調節アクチュエータ機構171,181は左右方向に隣り合って配置されている。苗取調節アクチュエータ機構181は、植深さ調節アクチュエータ機構171よりも走行機体2中央側に配置されている。
植深さ調節アクチュエータ機構171と苗取調節アクチュエータ機構181は基本的に同様の構成を有している。調節アクチュエータ機構171,181は、送りねじ172,182と、滑り子173,183と、電動式の調節モータ174,184と、送りねじ上部支持部材175,185と、送りねじ下部支持部材176,186を備えている。調節モータ174,184によって送りねじ172,182が回転されることにより、送りねじ172,182上で滑り子173,183が直線運動される。送りねじ上部支持部材175,185は送りねじ172,182の上端側(調節モータ側)を回転自在に支持する。送りねじ下部支持部材176,186は送りねじ172,182の下端部を回転自在に支持する。なお、調節アクチュエータ機構171,181は、電動式の調節モータ174,184に替えて、送りねじ172,182を回転させる油圧モータを備えた構成であってもよい。
アクチュエータ機構カバー162には、送りねじ172に沿って開口された滑り子回転防止溝164dと、送りねじ182に沿って開口された滑り子回転防止溝164eが形成されている。滑り子回転防止溝164d,164eに滑り子173,183の回転防止突起部173a,183aが挿入されている。
図14及び図15を参照しながら、植深さ調節アクチュエータ機構171の動作について説明する。植深さ調節アクチュエータ機構171の滑り子173に、前述の植深さ調節部材122が融通機構を介して連結されている。基端部が植深さ調節軸121に固着された植深さ調節部材122の先端部は、植付フレーム111の上方側で植深さ調節アクチュエータ機構171右方近傍に配置されている。植深さ調節部材122の先端部に前下方へ延伸する棒状部材123の基端部が取り付けられている。棒状部材123の先端部に、植深さ調節アクチュエータ機構171側へ突設されたピン部材124が取り付けられている。一方、滑り子173には、ピン部材124の先端部が係合される溝を有する係合部材173bが取り付けられている。このようにして、植深さ調節アクチュエータ機構171の滑り子173と植深さ調節部材122は連結されている。
植深さ調節アクチュエータ機構171は、運転操作部13に配置された項目選択器291(図5参照)によって調節される設定植付深さに応じて、植深さ調節モータ174の駆動によって送りねじ172を回転させて滑り子173を移動させる。滑り子173の位置は、例えば、送りねじカバー部材164の左側面164bに取り付けられたフロート位置センサ178(ここではポテンショメータ)によって検出される。滑り子173とともに係合部材173bが移動されると、ピン部材124及び棒状部材123を介して植深さ調節部材122が植深さ調節軸121を回動支点として回転されて位置調節される。植深さ調節軸121の回転によって植深さ調節軸121及び前述の植深さ調節リンク114a,114bが回転され、フロート32が、運転操作部13に配置された項目選択器502(図5参照)によって設定された設定植付深さに応じた設定植付深さ位置に配置される。項目選択器502については後述する。
図16及び図17を参照しながら、苗取調節アクチュエータ機構181の動作について説明する。苗取調節アクチュエータ機構181の滑り子183に、前述の苗取調節部材137が融通機構を介して連結されている。苗取調節部材137に、前方へ延設された連結部材139の基端部が取り付けられている。連結部材139の先端部は、植付フレーム111よりも上方側で苗取調節アクチュエータ機構181左方近傍に配置されている。連結部材139の先端部に連結部材139の長手方向に沿った長穴139aが形成されている。一方、滑り子183には、長穴139aに挿入される係合ピン部材183bがピン支持部材183cを介して設けられている。連結部材139の長穴139aに係合ピン部材183bが挿入されることによって、苗取調節アクチュエータ機構181の滑り子183と苗取調節部材137は連結されている。
苗取調節アクチュエータ機構181は、項目選択器502(図5参照)によって調節される設定苗縦取量に応じて、苗取調節モータ184の駆動によって送りねじ182を回転させて滑り子183を移動させる。滑り子183とともに係合ピン部材183bが移動されると、連結部材139を介して苗取調節部材137が苗取調節軸136を回動支点として回転されて位置調節される。苗取調節部材137の回転によって苗取調節軸136を介して苗取調節カム135が回転され、苗取出板131が、項目選択器502によって設定された設定苗縦取量に応じた設定苗縦取量位置に配置される。なお、滑り子183の位置は、例えば、基端部が苗取調節軸136に固着された検出用棒状部材188の先端部の位置を、植付フレーム111にセンサブラケット189を介して取り付けられた苗取出板センサ190(ここではポテンショメータ)が検出することよって検出される。
次に、図18及び図19を参照しながら、昇降センサ機構311と表面検知センサ機構331について説明する。昇降センサ機構311と表面検知センサ機構331は、センターフロート32a上方で植付フレーム111の中央部に隣り合って取り付けられている。
昇降センサ機構311において、センターフロート32a前部にブラケット313を介してセンシングアーム312の下端側を回転自在に連結し、センシングアーム312の上端側を植深さリンク機構314に連動連結する。植深さリンク機構314は、植付フレーム111の前面に固定されたリンクブラケット315と、リンクブラケット315に回動支軸316を介して連結されるリンク体317と、リンク体317の前部に連結ピン318を介して連結されるセンサ支持部材319を備えている。植深さ調節軸121に立設した補正アーム321を略U字形の補正ロッド320を介してリンク体317の下部に連結する。センサ支持部材319の後部側下端部を略U字形のセンサリンクロッド322を介してセンサブラケット315に連結する。センサ支持部材319には、左右方向に配置された揺動支軸323を軸支する。植深さ調節軸121の回動により、補正アーム321及び補正ロッド320が変位してリンク体317が回動支軸316を支点として回動し、センサ支持部材319が上下揺動する。
揺動支軸323の左端部に左揺動プレート324の後部を連結し、左揺動プレート324の前部にセンシングアーム312の上端側を連結する。また、揺動支軸323の左端部側に、左揺動プレート324と連動する規制プレート330の基端部が左揺動プレート324よりもセンサ支持部319側で遊嵌されている。センサ支持部材319の右側面に、センサブラケット326を介して昇降センサ325(ここではポテンショメータ)を設ける。揺動支軸323の右端部に右揺動プレート327の後部を連結し、右揺動プレート327の右側面に右側へ立設した長溝部328の長溝に昇降センサ325の検出アーム329を係合させる。昇降センサ325は揺動支軸323の回動変位量を検出し、センターフロート32aの上下方向の姿勢を示すフロート角(傾斜角度)を検出可能としている。規制プレート330の前端部とセンサ支持部材319の前下部の間にコイルばね350が張設され、右揺動プレート327の前端部とセンサ支持部材319の前下部の間にコイルばね351が張設されている。
表面検知センサ機構331は、植付フレーム111の前面に固定されたリンクブラケット332に取り付けられる。リンクブラケット332上部に回動支軸333を介してリンク体334の後部を連結し、リンク体334の前部に連結ロッド335を介してセクターギヤケース336の上部を連結する。セクターギヤケース336の右側面下部寄り部位を略J字形のセンサリンクロッド337を介してセンサブラケット332下部に連結する。連結ロッド335の右端部は連結プレート338を介して、昇降センサ機構311の略J字形のセンサリンクロッド322の前側左端部に連結される。セクターギヤケース336は、植深さ調節軸121の回動に伴って上下揺動する昇降センサ機構311のセンサ支持部材319の変位に連動して上下揺動する。
セクターギヤケース336に、左右方向に延びる表面検知揺動軸339を回動自在に軸支する。表面検知揺動軸339の左右両端部に、左右一対の表面検知アーム340,340の基端側を取り付け、表面検知アーム340,340の先端側に表面検知体341,341を取り付ける。セクターギヤケース336内部に、セクターギヤ対343を介して表面検知揺動軸339の回動に連動して回動するセンサ軸342を設ける。セクターギヤケース336左側面に表面検知センサ344(ここではポテンショメータ)を設け、表面検知センサ344の検知軸をセンサ軸342の左端部に連結する。表面検知センサ344は、セクターギヤ対343及びセンサ軸342を介して表面検知揺動軸339の回動変位量を検出し、表面検知体341,341の変位や、圃場表面から苗植付装置23の所定箇所(例えば植深さ調節軸121)までの高さを検出可能としている。
次に、図20から図23を参照しながら、箱施用剤散布機400について説明する。箱施用剤散布機400は、苗植機構28の植付伝動ケース27の後部上面に連結された支持フレーム401と、支持フレーム401に支持された4つの散布ユニット402を備える。4つの散布ユニット402は、苗載台29の下端部上方の位置で、苗載台29に対向して左右方向に並んで配置される。
各散布ユニット402は、粒状の箱施用剤を収容するホッパ403から繰出機構404の駆動により箱施用剤を所定量ずつ繰り出して散布ノズル405から苗載台29に載置された苗マットに向けて箱施用剤を散布する。各ホッパ403は、下端側が二股に分岐されると共に、上端及び下端が開口され、上端開口部は開閉可能な蓋部材406により塞がれる。二股に分岐されたホッパ403の下端側に繰出機構404が連結される。各散布ユニット402は繰出機構404及び散布ノズル405を2組ずつ備え、繰出機構404及び散布ノズル405は条間ピッチと略一致するように配置される。
繰出機構404は、繰出ケース407に収容された繰出ロール408が回転駆動することにより、ホッパ403内の箱施用剤を散布ノズル405へ所定の供給速度で繰り出す。繰出ロール408は略円盤形であり、その外周面に複数の凹部408aが等間隔で形成されている。繰出ロール408とホッパ403側壁の隙間は、繰出ロール408前方に配置されたブラシ状部材409と、繰出ロール408後方に配置された封止部材410により埋められる。
繰出ロール408は、左右方向に延設された筒状の繰出駆動軸411により回転駆動される。繰出駆動軸411の駆動力は植付伝動ケース27から取り出される。この実施形態では、4つの植付伝動ケース27うち1つの植付伝動ケース27の後部に連結された駆動力取出機構412が取り付けられる。駆動力取出機構412は、植付伝動ケース27内部から動力伝達される駆動取出軸413の回転運動を、駆動取出軸413後端に取り付けられたクランクプレート414と、クランクプレート414先端に下端側が取り付けられた下リンクロッド415により上下往復運動に変換する。左右方向に延びるレバープレート支軸417に回動自在に取り付けられた手動レバープレート416に下リンクロッド415の上端側を連結し、手動レバープレート416を回動往復運動させる。前後方向に配置される上リンクロッド418の後端側を手動レバープレート416に連結し、上リンクロッド418を前後往復運動させて、ワンウェイクラッチ機構420に動力を伝達する。
ワンウェイクラッチ機構420は、上リンクロッド418の前後往復運動を回転往復運動に変換すると共に、左右方向に延設された伝達駆動軸421を間欠的に回転駆動する。ワンウェイクラッチ機構420では、伝達駆動軸421にリンクレバー部材422を回動自在に軸支し、リンクレバー部材422の上部に上リンクロッド418の前端側を連結する。伝達駆動軸421には、リンクレバー部材422の右側方に、ワンウェイクラッチのクラッチレバー部材423を回動自在に軸支する。クラッチレバー部材423の基端部側に左側方へ突出する駆動ピン424を固着し、クラッチレバー部材423の先端部側に右側方へ突出する規制ピン425を固着する。ねじりコイルばね426を伝達駆動軸421に外嵌し、ねじりコイルばね426の一端側を駆動ピン424に掛止し、他端側を支持フレーム1に固定された固定部材427に掛止する。ねじりコイルばね426の弾性により駆動ピン424がリンクレバー部材422の下端部に付勢される。上リンクロッド418の前後往復運動によりリンクレバー部材422が往復回転駆動し、それに伴ってワンウェイクラッチのクラッチレバー部材423が往復回転駆動し、クラッチレバー部材423内部のワンウェイクラッチの作用によって伝達駆動軸421が一方向に間欠的に回転駆動する。
クラッチレバー部材423の回動可能範囲は散布量調節機構430により制限される。散布量調節機構430は、散布量調節ダイヤル431の回転操作により回転される送りねじ432上で直線運動する散布量調節部材433を備える。散布量調節部材433は下端部にストッパ部材434を備える。ストッパ部材434は、クラッチレバー部材423の規制ピン425の円弧軌跡上に、位置調節可能に配置される。散布量調節部材433及びストッパ部材434が規制ピン425から離れる方向へ移動されると、クラッチレバー部材423の回動可能範囲が大きくなる一方、散布量調節部材433及びストッパ部材434が規制ピン425に近づく方向へ移動されると、クラッチレバー部材423の回動可能範囲が狭くなる。クラッチレバー部材423の回動可能範囲が大きいほど、上リンクロッド418の1往復あたりの伝達駆動軸421の回転角が大きくなるので、伝達駆動軸421の回転速度は大きくなる。逆に、ラッチレバー部材423の回動可能範囲が小さいほど、伝達駆動軸421の回転速度は小さくなる。
伝達駆動軸421の回転駆動力は、伝達駆動軸421の両端に連結された伝達機構435を介して、散布ユニット402の繰出駆動軸411に伝達される。伝達機構435の内部には、繰出駆動軸411と伝達駆動軸421に1つずつ固着された一対のギヤ(図示省略)が配置され、これらのギヤの噛合いにより、繰出駆動軸411が伝達駆動軸421とは反対方向に回転する。繰出駆動軸411の間欠的な回転駆動により繰出ロール408が間欠的に回転し、ホッパ403内の箱施用剤が繰出ロール408の凹部408a及び散布ノズル405を介して苗マットへ向けて散布される。箱施用剤散布機400は植付伝動ケース27に固定されているので、苗載台29上の苗マットが苗台横送り機構79及び苗縦送り機構80(図6参照)の駆動によって散布ノズル405に対して横方向及び縦方向に相対的に移動する。これにより、苗マット上に箱施用剤が満遍なく散布される。
箱施用剤散布機400では、散布量調節機構430での散布量調節部材433及びストッパ部材434の位置調節により、伝達駆動軸421の回転速度が調節されることで、繰出駆動軸411の回転速度、ひいては繰出ロール408の回転速度を調節して、散布ノズル405から散布される箱施用剤の散布量が調節可能に構成されている。散布量調節部材433及びストッパ部材434の位置調整は、散布量調節機構430の右側方に隣接配置されて送りねじ432を回転させる散布量調節アクチュエータ機構436により位置調節される。散布量調節アクチュエータ機構436は、送りねじ432を回転させる散布量調節モータ437と、散布量調節部材433の位置を検出する散布量センサ438(ここではポテンショメータ)を備える。後述する項目設定器502(図5参照)により設定される箱施用剤散布量に基づき、設定散布量になるように散布量調節部材433の位置が調節される。なお、手動で散布量調節ダイヤル431を回転操作して散布量を調節することも可能である。
次に、図24から図29を参照しながら、苗植機構28及びその周辺の詳細構造について説明する。植付入力ケース26の後方には、苗取出口220を有する苗取出板131を略水平横向きに延びるように配置している。苗載台29の裏面下部に、略水平横向きに延びる下レールフレーム152を固着している。苗取出板131に設けた下スライドシュー223を、下レールフレーム152に摺動可能に下方から嵌め込んでいる。
苗取出板131における各苗取出口220の箇所には、苗取出口220の内周縁を囲う取出口カバー226と、植付爪30の長手中途部を左右両側から挟持する植付爪挟持ガイド227と、植付爪30の先端側と対峙する植付爪先端ガイド228とを着脱可能に取り付けている。この場合、苗取出板131における各苗取出口220近傍の2箇所に設けたボルト取付用孔241に、植付爪先端ガイド228の上端側の取付用孔242、取出口カバー226の取付用孔243及び植付爪挟持ガイド227の上端側の取付用孔244を、順次重ね合わせた状態でボルト229によって共締めしている。取出口カバー226の存在は、苗取出板131における各苗取出口220の箇所の強度を向上させ、植付爪30による苗マットの苗の掻取り量を安定化させるのに寄与している。植付爪先端ガイド228や植付爪挟持ガイド227の上端側も、共締め構造によって、各苗取出口220の箇所の強度向上に貢献している。
実施形態では、取出口カバー226、植付爪挟持ガイド227及び植付爪先端ガイド228の組合せを取出口ユニット230として2種類用意している。1つは高密度育苗の苗マット用のもの、もう1つは標準型育苗の苗マット用のものである。どちらの仕様の苗マットを使うかによって取出口ユニット230を付け替えるように構成している。取出口カバー226において植付爪30の通過する開口溝231の溝幅寸法ΔWは、高密度育苗用と標準型育苗用とで広狭異ならせている。図29に示すように、高密度育苗用の取出口カバー226aの溝幅寸法ΔWa((A)参照)は、標準型育苗用の取出口カバー226bの溝幅寸法ΔWb((B)参照)よりも幅狭に設定している。
この実施形態では、植付爪挟持ガイド227の取付用孔244は左右横長に形成されており、苗取出板131への植付爪挟持ガイド227の取付位置を、取出板131の苗取出口220やボルト取付用孔241に対して、開口溝231の幅方向に調節可能にされている。これにより、同一形状の植付爪挟持ガイド227を、高密度育苗用の取出口カバー226aの溝幅寸法ΔWaと標準型育苗用の取出口カバー226bの溝幅寸法ΔWbの両方に適合できる。したがって、高密度育苗の苗マット用の取出口ユニット230と標準型育苗の苗マット用の取出口ユニット230とで植付爪挟持ガイド227を共通化でき、植付爪挟持ガイド227の設計コストや製造コストを低減できる。
図25、図26及び図30に示すように、苗植機構28における各ロータリケース31の長手両端側には、植付爪30と、植付爪30で挟持した苗を押し出すU字状の押出片234と、押出片234を植付爪30に沿って摺動させるプッシュロッド235とを備えている。植付爪30は、ロータリケース31の長手両端側に位置する植付本体部236に、寸切ボルト237及びナット238で着脱可能に取り付けている。押出片234はプッシュロッド235の先端部に固着している。
図31に示すように、実施形態では、植付爪30、押出片234及びプッシュロッド235の組合せを植付爪ユニットとして2種類用意している。1つは高密度育苗の苗マット用のもの、もう1つは標準型育苗の苗マット用のものである。高密度育苗用の植付爪30aの先端側は基端側よりも幅狭に構成している。この場合、標準型育苗用の植付爪30b先端側は14mm程度の幅に設定しているのに対して、高密度育苗用の植付爪30a先端側は11mm程度の幅に設定している。
一方、高密度育苗用の押出片234aにおける二股状の上端部外側を、内側から外側に向けて斜め下向きに傾斜するように角を切り落とした面取り形状に形成している。そして、押出片234aの二股状の上端側を、高密度育苗用の植付爪30aの幅狭な先端側の裏面に摺動自在に近接させている。このように、植付爪30aの先端側と、押出片234aの二股状の上端側とを幅狭に構成すれば、高密度育苗の苗マットから1株分の苗を掻き取り易くしたものでありながら、掻き取った苗がU字状の押出片234a内に詰まるのを抑制できる。他方、標準型育苗用の押出片234bは略均一な厚みで形成している。そして、押出片234bの二股状の上端側を、標準型育苗用の植付爪30b先端側の裏面に摺動自在に近接させている。
また、図32に示すように、高密度育苗用の押出片234a及びプッシュロッド235先端部に押出片カバー251を装着し、押出片234a及び押出片カバー251の二股状の上端側を標準型育苗用の植付爪30b先端側の裏面に近接させるようにしてもよい。押出片カバー251は、略U字状であり、押出片234a及びプッシュロッド235の外周面形状に応じた内壁を有する空洞部252と、押出片234aの内壁底部の先端側部位に当接される前係止用突起部253と、押出片234aの二股状の後側面(プッシュロッド235の基端側の側面)の下部に当接される一対の後部係止用突起部254を備えている。押出片カバー251は可撓性を有する材料金属又は樹脂で形成される。
押出片234a及び押出片カバー251の先端部を、後部係止用突起部254側から前係止用突起部253側へ向けて、後部係止用突起部254,254の間隔を広げながら空洞部252内に挿入する。前係止用突起部253が押出片234aの内壁底部の先端側部位に当接すると共に、後部係止用突起部254,254がプッシュロッド235を把持しながら押出片234aの後側面に当接して、押出片カバー251が押出片234a及びプッシュロッド235先端部に装着される。これにより、押出片234a及びプッシュロッド235を交換しなくても、高密度育苗用の押出片植付爪30aを標準型育苗用の植付爪30bに交換すると共に押出片カバー251を装着するだけで、標準型育苗の苗マットに簡単に対応できる。すなわち、煩雑なプッシュロッド235の交換作業を行うことなく、標準型育苗の苗マットを用いた苗植え作業と、高密度育苗の苗マットを用いた苗植え作業との両方を、一台の田植機で実現でき、田植機の汎用性を向上できる。
次に、苗植付けに関する田植機1の制御系について説明する。図33に示すように、走行機体2には、主に苗植付装置23に関連する制御を司る制御手段としての植付作業コントローラ500(制御装置)が搭載されている。植付作業コントローラ500は、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)や、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)と制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含む記憶装置501、入力インターフェース等を有している。
植付作業コントローラ500の入力側には、各種苗植付条件を選択及び設定するための項目設定器502、基準フロート角を設定するための油圧感度設定器503、フロート角を検出する昇降センサ325、ロワーリンク20又はトップリンク21(図1参照)の回動部に取り付けられたポテンショメータ等のセンサで構成されて苗植付装置23の位置を検出する昇降位置センサ504、ミッションケース6からの走行出力を検出する車速センサ505、フロート32の位置を検出するフロート位置センサ178、苗取出板131の位置を検出する苗取出板センサ190、表面検知体341の位置を検出する表面検知センサ344、散布量調節機構430の散布量調節部材433の位置を検出する散布量センサ438と、箱施用剤散布機400の苗植付装置23への装着を検出する箱施用剤散布機装着センサ506が電気的に接続されている。
植付作業コントローラ500の出力側には、昇降シリンダ39の伸縮動を制御する昇降切換電磁弁99及び電磁開閉弁101と、フロート32の位置を調節する植深さ調節モータ174のモータ駆動回路部511と、苗取出板131の位置を調節する苗取調節モータ184のモータ駆動回路部512と、箱施用剤散布量を調節する散布量調節モータ437のモータ駆動回路部513と、運転操作部13における表示パネル521に各種設定項目等を表示する液晶パネル522(表示部)が電気的に接続されている。なお、図33は概略的な機能ブロック図であり、図示は省略されているが植付作業コントローラ500には他にも各種センサや駆動装置等が電気的に接続されている。
図5に示すように、運転操作部13において、油圧感度設定器503は、運転操作部13のうち後部右寄り部位に配置され、項目設定器502は、操縦ハンドル14のハンドル軸の左前近傍に配置されている。油圧感度設定器503はロータリエンコーダ等のスイッチで構成される。項目設定器502はプッシュスイッチ付きのロータリエンコーダ等のスイッチで構成される。項目設定器502を左右方向のいずれかへつまみ回転操作すると、図34に示すように、表示パネル521の液晶パネル522に各種設定項目が項目設定器502を回転させる毎に順次表示される。なお、図34では、田植機1の各種設定項目のうち一部のみを図示している。
目的の項目選択画面523が液晶パネル522に表示されている状態で項目設定器502を押し操作すると、その設定項目の設定画面524へ移行し、項目設定器502のつまみ回転操作により、その選択項目の調節や変更が可能になる。設定画面524が表示されている状態で項目設定器502を押し操作すると、その選択項目の条件が決定されて、項目選択画面523が表示される。この実施形態では、項目設定器502により、苗植付モード(苗モード)の選択や、苗の植付深さ(植深さ)の調節、苗縦取量(苗取量)の調節、箱施用剤散布量(箱施用)の調節などが行われる。ここで、箱施用剤散布量(箱施用)の設定項目は、箱施用剤散布機400(図21参照)の苗植付装置23への装着を検出する箱施用剤散布機装着センサ506(図33参照)が箱施用剤散布機400の装着を検出するときに表示するようにしてもよい。
なお、これらの項目の選択及び設定は、項目選択器502によって行われる構成に限定されない。例えば、密苗モードと標準モードの選択は、切替スイッチで切り替えてもよいし、モード選択用のプッシュボタン式スイッチを押すごとに切り替えてもよい。また、苗の植付深さ調節や苗縦取量調節、箱施用剤散布量の調節は、それぞれロータリエンコーダ式の設定器で設定されてもよい。
図35を参照して、苗植付条件の設定及び苗植付制御の一実施形態について説明する。田植機1は、標準型育苗の苗マットに対応する標準モードと、標準型育苗の苗マットよりも苗が高密度に生育された高密度育苗の苗マットに対応する密苗モードとを選択可能に構成している。植付作業コントローラ500は、標準モード用の制御プログラムと、密苗モード用の制御プログラムとを記憶装置501に記憶している。高密度育苗の苗マット使用時には高密度育苗用の取出口カバー226a、植付爪30a及び押出片234aが装着され、標準型育苗の苗マット使用時には標準型育苗用の取出口カバー226b、植付爪30b及び押出片234bが装着される(図30及び図31参照)。
項目選択器502の操作により苗モードの項目選択画面523(図34参照)で密苗モードが選択されると(ステップS1:Yes)、密苗モード用の制御プログラムが読み込まれる(ステップS2)。密苗モードでは、苗取量(苗縦取量)の項目選択画面523及び設定画面524において、苗縦取量の調節可能範囲が下限側の所定範囲に制限される(ステップS3)。つまり、高密度育苗の苗マットの植付時には、標準型育苗の苗マットの植付時に比べて、苗取調節アクチュエータ機構181(図17参照)による苗取調節部材137の変位可能な範囲を電気制御的に制限して、苗縦取量の調節可能範囲が下限側の所定範囲に制限される。この実施形態では、標準モードでは苗縦取量の調節可能範囲が8〜17mm(1目盛り1mmで10目盛り)であるのに対し、図34に示すように、密苗モードでは苗縦取量の調節可能範囲525が8〜13mm(下限側の6目盛り)に制限される。高密度育苗の苗マットを用いる田植え作業の際に、オペレータが密苗モードを選択していれば、苗縦取量の設定を失念しても、苗縦取量を13mm以下に抑制できるので、1株あたりの苗本数が極端に多くなって無駄な苗消費がされるのを防止して適切な田植え作業を行えると共に、苗縦取量設定に関するオペレータの負担を低減できる。
また、上述のように、苗縦送りベルト155(図9及び図12参照)の間欠駆動による苗縦送り量は、連動ワイヤ156を介して苗取連動カム138(図8参照)と従動カム153が連結されることにより、苗縦取量の変化に対応して苗縦送り量も変化する。したがって、高密度育苗の苗マット使用時において、標準型育苗の苗マット使用時よりも苗縦取量が少なく設定されている場合には、苗縦送り量も少なくなり、苗縦取量に応じた適正な苗縦送りが行われる。これにより、高密度育苗の苗マット使用時には、標準型育苗の苗マット使用時に比べて、苗マットの消費速さを小さくすることができ、単位面積当たりの田植え作業に必要な苗マット枚数を低減できると共に、苗載台29に苗マットを補充する回数を減少させて、苗植付け作業に要する時間減少や、オペレータや作業補助者の労力低減を図れる。
続いて、密苗モードで苗植付け作業中の苗の植付深さ制御について説明する。密苗モード選択時には、標準モード選択時に比べて、苗の植付深さが深くなるように油圧シリンダ39(油圧昇降制御機構)の昇降制御を補正する。作業レバー16の操作により苗植付装置23が下降されて苗植付け作業が開始されるとき(ステップS4:Yes)、昇降切換電磁弁99及び電磁切換弁101の操作によって昇降シリンダ39が下降側へ駆動される。昇降センサ325の昇降センサ値Vと油圧感度(センタフロート32aの目標傾斜角度)である目標値V1とが一致(センタフロート32aの傾斜角度が一定)するまで昇降シリンダ39によって苗植付装置23が下降制御され、以後目標の植付深さを一定維持させる(V=V1)ように苗植付装置23の昇降制御が行われる。
苗植付け作業中においては、油圧感度設定器502の油圧感度設定値と昇降センサ325の昇降センサ値Vと車速センサの車速センサ値を読み込み(ステップS5:Yes)、油圧感度設定器502の油圧感度設定値に対して油圧シリンダ39の油圧感度(感度)を鈍感側(フロート32aの前部が上昇する側)へ補正し(ステップS6)、昇降センサ値と補正後感度値と車速センサ値に基づいて、油圧感度である目標値V1を算出する(ステップS7)。ここで、走行機体2の走行速度が速くなる程、フロート32が前上り傾向となってフロート32の沈下量が増大する一方、走行機体2の走行速度が遅くなる程、フロート32が前下がり傾向となってフロート32の沈下量が減少するので、上記ステップS6では車速センサ値に応じて、苗植付深さが一定になるように目標値V1を算出する。
昇降センサ値Vと目標値V1が一致するように苗植付装置23を昇降制御する(ステップS8)。昇降センサ値Vと目標値V1が一致するときは、油圧シリンダ39を作動させずに苗植付装置23の昇降を停止する。昇降センサ値Vが目標値V1よりも小さいときは、電磁開閉弁101を開位置101aに接続すると共に昇降切換弁99を排出位置99bに接続して昇降シリンダ39を縮作動させて昇降センサ値Vと目標値V1が一致するように苗植付装置23を下降させる。昇降センサ値Vが目標値V1よりも大きいときは、電磁開閉弁101を開位置101aに接続すると共に昇降切換弁99を供給位置99aに接続して昇降センサ値Vと目標値V1が一致するように苗植付装置23を上昇させる。
一方、苗モードの項目選択画面523(図34参照)で標準モードが選択されると(ステップS1:No)、標準モード用の制御プログラムが読み込まれる(ステップS11)。標準モードでは、苗取量(苗縦取量)の項目選択画面523及び設定画面524において、苗縦取量の調節可能範囲が電気制御的に制限されることなく、8〜17mm(1目盛り1mmで10目盛り)の範囲で選択可能である。
続いて、標準モードで苗の植付け作業が開始され、苗の植付作業中であるとき(ステップS12:Yes)、油圧感度設定器502の油圧感度設定値と昇降センサ325の昇降センサ値Vと車速センサ505の車速センサ値を読み込み(ステップS13:Yes)、油圧感度である目標値V1を算出する(ステップS14)。ここで、標準モードでは、密苗モード時のステップS6のようには、油圧感度設定値を補正しない。そして、昇降センサ値Vと目標値V1が一致するように苗植付装置23を制御する(ステップS15)。
この実施形態では、密苗モード選択時には、上記ステップS3のように、油圧感度設定器502の油圧感度設定値に対して油圧シリンダ39の油圧感度を鈍感側へ補正して、標準モード選択時に比べて、苗の植付深さが深くなるように油圧シリンダ39(油圧昇降制御機構)の昇降制御を補正する。高密度育苗の苗マットを用いる田植え作業では、標準型育苗の苗マット使用時に比べて植付爪30が苗マットを掻き取る面積が小さいので、圃場へ植え付けた苗が浮き上がりやすい。そこで、高密度育苗の苗マットに対応する密苗モード選択時には、標準型育苗の苗マットに対応する標準モード選択時時に比べて、苗の植付深さを深くするように油圧シリンダ39の昇降制御を自動で補正することで、浮き苗を防止できると共に、苗の植深さ設定に関するオペレータの負担を低減できる。
また、上記ステップS7及びS14で、表面検知センサ334のセンサ値を用いてセンターフロート32aの沈下量が一定値となるように油圧感度の目標値V1を補正して、苗の植付深さが一定になるようにしてもよい。圃場表面の実高さを検出する表面検知センサ334のセンサ値からセンターフロート32aの沈下量を算出し、沈下量が一定になるように油圧感度の目標値V1を鈍感側(フロート32aの前部が上昇する側)又は敏感側(フロート32aの前部が下降する側)へ補正する。ここで、密苗モード選択時には、上記ステップS6で油圧感度設定値が鈍感側へ補正された補正後感度値を用いて油圧感度の目標値V1の算出及び補正がされる。
図36を参照して、苗植付条件の設定及び苗植付制御の他の実施形態について説明する。この実施形態では、図35を参照して説明した実施形態の上記ステップS6(密苗モード選択時)に替えて、苗の植付深さが深くなるようにフロート32の位置を補正するステップS3−1を含む。ステップS3−1では、項目選択器502の操作により設定される植深さ設定値(図34参照)に対して、苗の植付深さが深くなるように植深さ設定値を補正する。この実施形態では、植深さ調節モータ174(図15参照)の駆動により補正分だけ植深さ調節部材122を前方へ回動させてフロート32の位置を植深さ調節軸121側へ補正する。これにより、苗植付け作業時の植付爪30の爪出量(植付爪30の先端部とフロート32底面との距離)が大きくなり、苗の植付深さが深くなる。このように、高密度育苗の苗マットを用いる密苗モードにおいて、苗の植付深さを深くするようにフロート32の位置を自動で補正することで、植付爪30が苗マットを掻き取る面積が小さくても浮き苗を防止できると共に、苗の植深さ設定に関するオペレータの負担を低減できる。
図37を参照して、箱施用剤散布制御の実施形態について説明する。この実施形態では、密苗モード選択時において、箱施用剤散布量を補正するステップS3−2を含む。箱施用剤散布機400(図20から図23参照)の箱施用剤散布量は、項目選択器502の操作により設定される箱施用剤散布量(箱施用)の設定値(図34参照)、又は散布量調節ダイヤル431(図23参照)の回転操作により設定される。密苗モード選択時には、薬剤散布量設定値に対して、薬剤散布量が多くなるように薬剤散布量設定値を補正する(ステップS3−2)。この実施形態では、散布量調節モータ437(図23参照)を駆動の駆動により補正分だけ散布量調節部材433を規制ピン425から離れる方向(後斜め上方向)へ移動させて、散布量調節部材433及びストッパ部材434の位置を補正する。
高密度育苗の苗マットでは、苗が密に生育されているので、標準型育苗の苗マット使用時と箱施用剤散布量が同じであると、十分な苗の殺虫や殺菌ができない。そこで、高密度育苗の苗マット使用時(密苗モード選択時)には、箱施用剤散布量が自動で多く設定することで、高密度育苗の苗マットにおける十分な苗の殺虫や殺菌をでき、圃場へ植え付けられた苗の健全な生育を実現できると共に、箱施用剤散布量の設定に関するオペレータの負担を低減できる。
以上、説明した実施形態のように、上記実施形態の田植機1は、苗載台29に載置された苗マットから植付爪30で苗を掻き取って圃場へ植え付ける苗植付装置23を備え、標準型育苗の苗マットに対応して掻き取り量が多い標準モードと、標準型育苗の苗マットよりも苗が高密度に生育された高密度育苗の苗マットに対応して掻き取り量が少ない密苗モードとを選択可能に構成しているので、高密度育苗の苗マット使用時の田植機の設定を簡便にしてオペレータの負担を低減できる。
また、上記実施形態の田植機1は、苗の植付深さを調節するフロート32aの傾斜角度を検出する昇降センサ325の検出値に基づいて苗植付装置23を昇降制御する油圧シリンダ39(昇降制御機構)を備えた構成であって、密苗モードの選択時には、標準モードの選択時に比べて、苗の植付深さが深くなるように構成しているので、高密度育苗の苗マットを用いる田植え作業では植付爪30が苗マットを掻き取る面積が小さいので圃場へ植え付けた苗が浮き上がりやすいが、苗の植付深さを深くするように油圧シリンダ39の昇降制御を自動で補正することで、浮き苗を防止できると共に、苗の植深さ設定に関するオペレータの負担を低減できる。
また、上記実施形態の田植機1は、苗載台29の下方に配置された苗取出板131の位置調節により植付爪30の苗縦取量を調節可能な構成であって、密苗モードの選択時には、苗縦取量の調節可能範囲が下限側の所定範囲に制限されるので、高密度育苗の苗マットを用いる田植え作業の際に、オペレータが密苗モードを選択していれば、苗縦取量の設定を失念しても、苗縦取量を下限側の所定範囲に抑制できるので、1株あたりの苗本数が極端に多くなって無駄な苗消費がされるのを防止して適切な田植え作業を行えると共に、苗縦取量設定に関するオペレータの負担を低減できる。
また、上記実施形態の田植機1は、苗載台29に載置された苗マットに薬剤を散布する箱施用剤散布機400(薬剤散布機)を備えた構成であって、密苗モードの選択時には、標準モードの選択時に比べて、箱施用剤散布機400の薬剤散布量を多くするように構成しているので、高密度育苗の苗マットを用いる田植え作業の際に、オペレータが密苗モードを選択していれば、箱施用剤散布量が自動で多く設定されることで、高密度育苗の苗マットにおける十分な苗の殺虫や殺菌をでき、圃場へ植え付けられた苗の健全な生育を実現できると共に、箱施用剤散布量の設定に関するオペレータの負担を低減できる。
また、上記実施形態の田植機1は、苗載台29に載置された苗マットから植付爪30で苗を掻き取って圃場へ植え付ける苗植付装置23と、苗の植付深さを調節するフロート32aの傾斜角度を検出する昇降センサ325の検出値に基づいて苗植付装置23を昇降制御する油圧シリンダ39(昇降制御機構)とを備える田植機において、高密度育苗の苗マットの植付時には、高密度育苗の苗マットよりも苗が低密度に生育された標準型育苗の苗マットの植付時に比べて、苗の植付深さが深くなるように構成しているので、高密度育苗の苗マットを用いる田植え作業において植付爪30が苗マットを掻き取る面積が小さい場合であっても、浮き苗を防止できる。
また、上記実施形態の田植機1は、高密度育苗の苗マットの植付時には、油圧シリンダ39(昇降制御機構)の油圧感度(感度)を鈍感側へ補正して苗の植付深さが深くなるように構成しているので、植付深さを深くする部材を別途設けることなく、高密度育苗の苗マットの植付時に油圧シリンダ39の油圧感度を補正するだけで簡便に苗の植付深さを深くして浮き苗を防止できる。
また、上記実施形態の田植機1は、植深さ調節アクチュエータ機構171によって位置調節される植深さ調節部材122の変位に伴ってフロート32が位置調節される構成であって、高密度育苗の苗マットの植付時には、フロート32の位置を上昇側へ補正して苗の植付深さが深くなるように構成しているので、植付深さを深くする部材を別途設けることなく、高密度育苗の苗マットの植付時にフロート32の位置を補正するだけで簡便に苗の植付深さを深くして浮き苗を防止できる。
また、上記実施形態の田植機1は、苗載台29に載置された苗マットから植付爪30で苗を掻き取って圃場へ植え付ける苗植付装置23と、苗載台29に載置された苗マットに薬剤を散布する箱施用剤散布機400(薬剤散布機)を備える田植機において、高密度育苗の苗マットの植付時と、高密度育苗の苗マットよりも苗が低密度に生育された標準型育苗の苗マットの植付時とで、箱施用剤散布機400の薬剤散布量を変更するように構成しているので、高密度育苗の苗マットの植付時と標準型育苗の苗マットの植付時とで、薬剤散布量を異ならせて、高密度育苗の苗マットと標準型育苗の苗マットにそれぞれ応じた適切な散布量の薬剤を苗マットに散布できる。
また、上記実施形態の田植機1は、高密度育苗の苗マットの植付時は、標準型育苗の苗マットの植付時に比べて、箱施用剤散布機400(薬剤散布機)の薬剤散布量を多くするように構成しているので、高密度育苗の苗マットを用いる田植え作業の際に、高密度育苗の苗マットにおける十分な苗の殺虫や殺菌をでき、圃場へ植え付けられた苗の健全な生育を実現できる。
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。