JP6879109B2 - 蒸着マスク用基材、蒸着マスク用基材の製造方法、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法 - Google Patents

蒸着マスク用基材、蒸着マスク用基材の製造方法、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、蒸着マスク用基材、蒸着マスク用基材の製造方法、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法に関する。
蒸着法を用いて製造される表示デバイスの一つとして有機ELディスプレイが知られている。有機ELディスプレイの備える有機層は、有機物の蒸着によって形成される。蒸着に用いられる蒸着マスクは、エッチングによって形成された複数の貫通孔を備える。この貫通孔は、有機物の蒸着時に有機物が通る通路であり、有機層の形状は、貫通孔の形状に追従する(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−148744公報
蒸着マスクを製造するための蒸着マスク用基材は、例えば、鉄‐ニッケル系合金製の金属板である。金属板の母材に含まれる酸素は、金属板の熱膨張係数、すなわち、蒸着マスクの熱膨張係数を高める一因である。そこで、金属板の製造においては、母材に含まれる酸素の量を低減するために、脱酸剤による脱酸処理が行われる。脱酸処理では、金属を含む脱散剤を母材に混合した後、酸素などを含む脱酸剤を母材から取り除く。脱酸剤の多くは母材から取り除かれるが、一部の脱酸剤は、母材から取り除かれずに介在物として母材から製造された金属板のなかに残る。こうした介在物は、金属板に形成された孔における寸法の精度、ひいては、蒸着マスクを用いて形成された有機層における寸法の精度を低下させる一因となることがある。
本発明は、蒸着対象に形成される層における寸法の精度を高めることを可能とした蒸着マスク用基材、蒸着マスク用基材の製造方法、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための蒸着マスク用基材は、鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって複数の貫通孔を有した蒸着マスクを製造するために用いられる前記金属板を備える蒸着マスク用基材である。前記金属板は、前記金属板の表面および前記金属板の内部に介在物を含む。前記金属板の厚さは、15μm以上40μm以下であり、前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法は、10μm以下であり、前記平面視において前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度は、2.0個/mm以下である。
上記課題を解決するための蒸着マスク用基材の製造方法は、鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって複数の貫通孔を有した蒸着マスクを製造するために用いられる前記金属板を備えた蒸着マスク用基材の製造方法である。介在物を含む鉄‐ニッケル系合金製の母材を圧延して、前記金属板の表面および前記金属板の内部に前記介在物を含む前記金属板を形成する圧延工程と、前記圧延工程によって形成された前記金属板を焼鈍する加熱工程とを含む。前記圧延工程は、前記金属板の厚さが15μm以上40μm以下であり、前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法が10μm以下であり、かつ、前記平面視において前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度が、2.0個/mm以下となるように、前記母材を圧延する。
上記課題を解決するための蒸着マスクの製造方法は、鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって複数の貫通孔を有した蒸着マスクを製造する蒸着マスクの製造方法である。介在物を含む鉄‐ニッケル系合金製の母材の圧延によって、前記金属板の表面および前記金属板の内部に前記介在物を含む前記金属板を形成する板形成工程と、前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成し、前記レジストマスクを用いたエッチングによって前記貫通孔を形成するエッチング工程と、を含む。前記板形成工程は、前記金属板の厚さが、15μm以上40μm以下であり、前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法が、10μm以下であり、前記平面視において前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度が、2.0個/mm以下となる金属板を形成する。
上記課題を解決するための表示装置の製造方法は、鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって製造された蒸着マスクであって、複数の貫通孔を有した前記蒸着マスクを用いて形成される複数の層を備える表示装置の製造方法である。介在物を含む鉄‐ニッケル系合金製の母材の圧延によって、前記金属板の表面および前記金属板の内部に前記介在物を含む前記金属板を形成する板形成工程と、前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成し、前記レジストマスクを用いたエッチングによって前記貫通孔を形成することによって前記蒸着マスクを形成するマスク形成工程と、前記蒸着マスクを用いた蒸着によって蒸着対象に複数の前記層を形成する蒸着工程と、を含む。前記板形成工程は、前記金属板の厚さが、15μm以上40μm以下であり、前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法が、10μm以下であり、前記平面視において前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度が、2.0個/mm以下である金属板を形成する。
上記構成によれば、介在物の密度がより高い構成や、最大寸法がより大きい構成と比べて、金属板がエッチングされたときに、金属板のなかで孔が形成される領域に介在物が位置する確率を低くすることができる。それゆえに、蒸着マスクが備える孔における寸法の精度を高めることができ、結果として、蒸着マスクを用いて蒸着対象に形成された層における寸法の精度を高めることができる。
上記蒸着マスク用基材において、複数の前記介在物のなかで、マグネシウムが主成分である前記介在物が第1介在物であり、前記最大寸法が1μm以上である前記第1介在物の密度は、前記介在物の密度に対して50%以上であってもよい。
上記構成によれば、全介在物における50%以上がマグネシウムを主成分とする第1介在物であるため、金属板のなかで孔が形成される領域に介在物が位置したとしても、その介在物が第1介在物である可能性が高められる。介在物が第1介在物であれば、マグネシウムが主成分であるため、孔における寸法の精度を高めることができる。
上記蒸着マスク用基材において、前記最大寸法が1μm以上である全ての前記介在物における原子の総質量において、マグネシウムの割合がアルミニウムの割合よりも大きくてもよい。
上記構成によれば、アルミニウムの割合がマグネシウムの割合よりも大きい構成と比べて、金属板がエッチングされるときに、介在物を構成する原子の総和において、エッチング液に溶解する割合を大きくすることができる。それゆえに、金属板中に介在物が含まれることによって、金属板のエッチングが阻害されることが抑えられ、結果として、金属板に形成される孔における寸法の精度が低下することが抑えられる。
上記蒸着マスク用基材において、単位領域において、前記最大寸法が1μm以上である前記第1介在物における前記平面視での総面積が、前記最大寸法が1μm以上である全ての前記介在物における前記平面視での総面積の45%以上であってもよい。
上記構成によれば、第1介在物の総面積がより小さい構成と比べて、金属板の表面に含まれる全ての介在物のなかで、金属板のエッチングにおいて、エッチング液に溶解する部分の面積を拡げることができる。それゆえに、金属板の表面において、金属板のエッチングが介在物によって阻害されることが抑えられる。結果として、孔の開口における寸法の精度が低下することが抑えられる。
上記蒸着マスク用基材において、複数の前記介在物のなかで、アルミニウムが主成分である前記介在物が第2介在物であり、単位領域において、前記最大寸法が1μm以上である前記第2介在物における前記平面視での総面積が、前記最大寸法が1μm以上である全ての前記介在物における前記平面視での総面積の25%以下であってもよい。
上記構成によれば、第2介在物の総面積がより大きい構成と比べて、金属板の表面に含まれる全ての介在物のなかで、金属板のエッチングにおいて、エッチング液に溶解しない部分の面積を縮めることができる。それゆえに、金属板の表面において、金属板のエッチングが介在物によって阻害されることが抑えられ、孔の開口における寸法の精度が低下することが抑えられる。
本発明によれば、蒸着対象に形成される層における寸法の精度を高めることができる。
一実施形態の蒸着マスク用基材における一部斜視構造を示す斜視図。 蒸着マスク用基材の一部平面構造を拡大して示す部分拡大平面図。 蒸着マスクの平面構造を示す平面図。 蒸着マスク用基材の製造方法における鋳造工程を説明するための工程図。 蒸着マスク用基材の製造方法における圧延工程を説明するための工程図。 蒸着マスク用基材の製造方法における切断工程を説明するための工程図。 蒸着マスク用基材の製造方法における加熱工程を説明するための工程図。 蒸着マスクの製造方法における配置工程を説明するための工程図。 蒸着マスクの製造方法における露光工程を説明するための工程図。 蒸着マスクの製造方法における現像工程を説明するための工程図。 蒸着マスクの製造方法におけるエッチング工程を説明するための工程図。 蒸着マスクの製造方法におけるエッチング工程を説明するための工程図。 蒸着マスクの製造方法におけるエッチング工程を説明するための工程図。 蒸着マスクの製造方法における除去工程を説明するための工程図。 金属板の表面と対向する平面視における金属板の平面構造を示す平面図。 図15における領域Aを拡大して示す部分拡大平面図。 蒸着マスクを用いた蒸着が行われる蒸着装置の概略構成を蒸着マスクとともに示すブロック図。
図1から図17を参照して、蒸着マスク用基材、蒸着マスク用基材の製造方法、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法の一実施形態を説明する。以下では、蒸着マスク用基材の構成、蒸着マスクの構成、蒸着マスク用基材の製造方法、蒸着マスクの製造方法、蒸着マスクを用いた表示装置の製造方法、および、実施例を記載の順に説明する。
[蒸着マスク用基材の構成]
図1および図2を参照して、蒸着マスク用基材の構成を説明する。
図1が示すように、蒸着マスク用基材10は、鉄‐ニッケル系合金製の金属板11のエッチングによって複数の貫通孔を有した蒸着マスクを製造するために用いられる金属板11を備えている。本実施形態における蒸着マスク用基材10は、1枚の金属板11のみを備える構成として具体化されているが、1枚の金属板11に加えて、金属板11に貼り合わせられた樹脂層を備える構成でもよいし、2枚の金属板と2枚の金属板に挟まれる樹脂層とから構成されてもよい。金属板11の厚さTは、15μm以上40μm以下である。金属板11は、表面11Fと裏面11Rとを含んでいる。
図2は、金属板11の表面11Fと対向する平面視における金属板11の構成を示している。図2では、金属板11の表面11Fにおける一部が拡大して示され、また、金属板11の表面11Fと金属板11の表面に含まれる介在物とを区別しやすくする便宜上、介在物にドットが付されている。
図2が示すように、金属板11は、金属板11の表面11Fおよび金属板11の内部に介在物12を含んでいる。金属板11の表面11Fと対向する平面視にて所定の面積を有する領域が単位領域11F1である。金属板11の表面11Fと対向する平面視にて介在物12の寸法における最大値が最大寸法Lmaxである。金属板11に含まれる全ての介在物12において、介在物12の最大寸法Lmaxは、10μm以下である。金属板11の表面11Fと対向する平面視において、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度は、2.0個/mm以下である。全ての介在物12には、第1介在物12aと第2介在物12bとが含まれている。第1介在物12aと第2介在物12bとの間では、各介在物を構成する元素の組成が異なっている。
金属板11では、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度が、2.0個/mm以下に抑えられ、かつ、介在物12の最大寸法Lmaxも10μm以下に抑えられている。そのため、介在物の密度がより高い構成や、最大寸法Lmaxがより大きい構成と比べて、金属板11がエッチングされたときに、金属板11のなかで孔が形成される領域に介在物12が位置する確率を低くすることができる。それゆえに、蒸着マスクが備える孔における寸法の精度を高めることができ、結果として、蒸着マスクを用いて蒸着対象に形成された層における寸法の精度を高めることができる。
金属板11の母材が圧延される方向が圧延方向DRであり、圧延方向DRと直交する方向が幅方向DWである。母材が圧延されるとき、母材に含まれる各介在物12も母材とともに圧延方向DRに沿って引き延ばされる。そのため、複数の介在物12には、圧延方向DRに沿って延びる形状を有した介在物12が含まれる。以下、蒸着マスク用基材が備える金属板、および、金属板が含む介在物をより詳しく説明する。
[金属板の構成]
金属板11の主成分は、鉄‐ニッケル系合金であり、例えば、34質量%以上50質量%以下のニッケルと、鉄とを含む鉄‐ニッケル合金、すなわちインバー材であることが好ましい。
金属板11の熱膨張係数は、蒸着対象の熱膨張係数と同じ程度であることが好ましい。蒸着対象に例えば有機層を形成するときには、蒸着マスク用基材10を用いて製造した蒸着マスクと蒸着対象とを密着させる。そして、有機層の形成材料である蒸着材料を気化または昇華させるために、蒸着材料を加熱する。これにより、互いに密着した蒸着マスクと蒸着対象とが加熱されるため、蒸着マスクと蒸着対象との各々は、加熱される温度に応じて膨張する。蒸着マスクの熱膨張係数と蒸着対象の熱膨張係数とが大きく乖離していると、蒸着マスクと蒸着対象との加熱に伴って、蒸着マスクに対する蒸着対象の位置にずれが生じる。結果として、蒸着対象において蒸着材料が付着する位置が所定の位置からずれるため、蒸着対象における有機層の位置にずれが生じたり、有機層の形状が所定の形状からずれたりしやすい。
蒸着対象には、例えばガラス基板を用いることができる。蒸着対象がガラス基板であるときには、ガラス基板の熱膨張係数に蒸着マスクの熱膨張係数を近付ける上で、金属板11の熱膨張係数は、1.2×10−6/℃程度であることが好ましい。なお、金属板11中に含まれる酸素の量が所定の量を超えると、金属板11の熱膨張係数が、好ましい熱膨張係数の範囲に含まれなくなる。そのため、金属板11が製造されるときには、金属板11に含まれる酸素の量を所定の量以下に抑えるために、脱酸剤を用いた脱酸処理が行われる。
脱酸剤には、酸素よりもイオン化傾向が高い元素を含む粒子を用いることができる。脱酸剤の主成分には、例えば、マグネシウム、マンガン、および、アルミニウムなどを用いることができる。脱酸剤の主成分は、金属板11の主成分とは異なり、かつ、金属板11の主成分よりも酸素に対する反応性が高い元素を含むことが好ましい。
上述したように、金属板11の厚さは、15μm以上40μm以下である。金属板11の厚さが、15μm以上であることによって、蒸着マスク用基材10を用いて蒸着マスクを形成するときに、金属板11が取り扱いやすい程度に金属板11の機械的な強度を保つことができる。金属板11の厚さが40μm以下であることによって、例えば400ppi以上、さらには700ppi以上の高精細な表示装置を形成するための蒸着マスクを蒸着マスク用基材10によって製造することができる。金属板11の厚さは、15μm以上30μm以下であることが好ましく、これにより、高精細な表示装置を形成するための蒸着マスクが製造しやすくなる。
[介在物の構成]
介在物12は、上述した脱酸処理において、金属板11を形成するための母材に含まれる酸素などと脱酸剤との反応によって生成される反応生成物である。あるいは、介在物は、未反応の脱酸剤である。こうした反応生成物あるいは脱酸剤の大部分は、母材から金属板11を製造する過程において母材から取り除かれる。一方で、反応生成物あるいは脱酸剤の一部は、金属板11中に介在物12として残される。上述したように、介在物12は、金属板11の表面11F、および、金属板11の内部に分散している。すなわち、一部の介在物12は、金属板11の表面11Fに露出している。また、一部の介在物12が、金属板11のなかで蒸着マスクが備えるマスク孔が形成される領域に位置することもある。
金属板11の表面11Fと対向する平面視において、介在物12は、圧延方向DRに沿って延びる形状を有することが好ましいが、複数の介在物12には、幅方向DWに沿って延びる形状を有した介在物12が含まれてもよいし、圧延方向DRと交差する方向に沿って延びる形状を有した介在物12が含まれてもよい。また、金属板11の表面11Fと対向する平面視において、複数の介在物12には、圧延方向DRと幅方向DWとの両方に対して等方的に延びる形状を有した介在物12が含まれてもよい。金属板11の表面11Fと対向する平面視において、介在物12は、例えば、楕円形状、円形状、および、アメーバ形状などを有することができる。介在物12は、三次元空間において、球形状、楕円体状、柱体状、および、錐体状などを有することができる。
各介在物12の最大寸法Lmaxは、各介在物12を楕円と見なしたときの長軸の長さである。各介在物12の画像を撮像し、画像から抽出した複数の点であって、介在物12の輪郭を構成する点に楕円を当てはめることによって、各介在物12の平面構造を楕円に近似することができる。これにより、介在物12の最大寸法Lmaxとして介在物12における長軸の長さと、長軸に直交する短軸の長さとを得ることができる。なお、長軸の長さと短軸の長さとの平均値が、各介在物12における平均寸法である。
介在物12の最大寸法Lmaxは、上述したように10μm以下である。介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下であることによって、介在物12の寸法が、金属板11の厚さよりも小さくなる。そのため、蒸着マスクと蒸着対象とを密着させるときに、介在物12が、蒸着マスクと蒸着対象との密着性に与える影響を小さくすることができる。より詳しくは、介在物12の最大寸法Lmaxが金属板11の厚さよりも小さいときには、介在物12が金属板11から露出しにくくなるため、介在物12によって蒸着マスクの表面に凹凸が形成されることが抑えられる。これにより、蒸着マスクと蒸着対象との間に隙間が形成されることが抑えられる。すなわち、介在物12により形成される凹凸が、蒸着マスクと蒸着対象との密着性に影響する程度に大きくなることが抑えられる。結果として、有機層における寸法の精度や、位置の精度が高められる。
また、金属板11の表面11Fと対向する平面視において、金属板11にエッチングによって形成される孔は、例えば、20μm以上50μm以下の大きさを有する。そのため、介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下であれば、介在物12が、金属板11の表面11Fと対向する平面視において、孔の形成される領域よりも小さくなる。それゆえに、孔の形成される領域において介在物12が占める割合を小さくすることができる。結果として、蒸着マスクのマスク孔における寸法の精度や形状の精度を高めることができる。
金属板11の表面11Fと対向する平面視において、介在物12の密度が2.0個/mm以下である。介在物12の密度が2.0個/mm以下であるため、介在物12の密度がより高い構成と比べて、金属板11において孔が形成される領域に介在物12が存在する確率を低くすることができる。結果として、エッチングによって金属板11に形成される孔における寸法の精度を高めることができる。
介在物12は、脱酸剤が脱酸処理において所定の反応を生じることによって生成された反応生成物、または、未反応の脱酸剤である。そのため、介在物12は脱酸剤を構成する元素の少なくとも一部を含んでいる。それゆえに、介在物12の主たる構成元素と、金属板11の主たる構成元素とは互いに異なる。脱酸剤を構成する元素は、例えば、マグネシウム、マンガン、および、アルミニウムなどであるため、介在物12を構成する元素にも、マグネシウム、マンガン、および、アルミニウムなどが含まれる。
このうち、アルミニウムは、マグネシウムおよびマンガンと比べて、強い脱酸力を有するため、脱酸剤として母材から酸素を取り除く機能は高い。一方で、アルミニウムやアルミニウム化合物は、金属板11のエッチングに用いられるエッチャントと反応し、これにより不動態を形成しやすい。アルミニウムを含む不動態は、金属板11のエッチャントに対する耐性が金属板11よりも高いため、エッチングによって金属板11に形成される孔における寸法の精度を低下させる一因となる。
これに対して、金属板11がエッチングされるとき、マグネシウムは、アルミニウムに比べて不動態を形成しにくく、それゆえに、金属板11のエッチングに用いられるエッチング液に溶解しやすい。この点で、1つの介在物12が、マグネシウムを含み、かつ、1つの介在物12において、マグネシウムの含有量よりもアルミニウムの含有量が小さいことが好ましい。介在物12におけるアルミニウムの含有量がマグネシウムの含有量よりも小さいことによって、金属板11がエッチングされるときに、介在物12も金属板11とともにエッチング液に溶解しやすくなる。そのため、金属板11に形成される孔において寸法の精度が低下することが抑えられる。さらに、介在物12中のアルミニウムの含有量が抑えられることによって、不動態の形成により加工の精度が低下することが抑えられる。
介在物12のなかで、マグネシウムが主成分である介在物12が第1介在物12aである。各第1介在物12aにおいて、マグネシウムの含まれる割合が50質量%以上である。最大寸法Lmaxが1μm以上である第1介在物12aの密度は、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度に対して50%以上であることが好ましい。
こうした構成では、介在物12の密度における50%以上がマグネシウムを主成分とする第1介在物12aであるため、金属板11のなかで孔が形成される領域に介在物12が位置したとしても、その介在物12が第1介在物12aである可能性が高められる。介在物12が第1介在物12aであれば、マグネシウムを主成分とするため、孔における寸法の精度を高めることができる。なお、第1介在物12aは、マグネシウムを75質量%以上含むことがより好ましい。
最大寸法Lmaxが1μm以上である全ての介在物12における原子の総質量において、マグネシウムの割合がアルミニウムの割合よりも大きいことが好ましい。すなわち、単位領域11F1において、最大寸法Lmaxが1μm以上である各介在物12を構成する原子を加算した値が、全ての介在物12における原子の総質量である。マグネシウムを含む各介在物12におけるマグネシウムの質量を加算した質量が、原子の総質量におけるマグネシウムの割合である。アルミニウムを含む各介在物12におけるアルミニウムの質量を加算した質量が原子の総質量に占める割合が、原子の総質量におけるアルミニウムの割合である。原子の総質量において、マグネシウムの質量とアルミニウムの質量との比は、2:1以上であることが好ましく、3:1以上であることがより好ましく、5:1以上であることがさらに好ましい。
各介在物12を構成する原子の総和において、金属板11のエッチング液に対する溶解性が高いマグネシウムの割合がアルミニウムの割合よりも大きい。そのため、アルミニウムの割合がマグネシウムの割合よりも大きい構成と比べて、金属板11がエッチングされるときに、介在物12を構成する原子の総和において、エッチング液に溶解する割合を大きくすることができる。それゆえに、金属板11中に介在物12が含まれることによって、金属板11のエッチングが阻害されることが抑えられ、結果として、金属板11に形成される孔における寸法の精度が低下することが抑えられる。
単位領域11F1において、最大寸法Lmaxが1μm以上である第1介在物12aにおける表面11Fと対向する平面視での総面積が、最大寸法Lmaxが1μm以上である全ての介在物12における表面11Fと対向する平面視での総面積の45%以上であることが好ましい。すなわち、金属板11の表面11Fと対向する平面視において、各介在物12が占める面積を加算した値が、介在物12の総面積である第1総面積である。また、金属板11の表面11Fと対向する平面視において、最大寸法Lmaxが1μm以上である各第1介在物12aが占める面積を加算した値が、第1介在物12aの総面積である第2総面積である。そして、第1総面積に対する第2総面積の比が、第1面積比である。第1面積比は、45%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
第1面積比が45%上であるため、第1面積比がより小さい構成と比べて、金属板11の表面11Fに含まれる全ての介在物12のなかで、金属板11のエッチングにおいて、エッチング液に溶解する部分の面積を拡げることができる。それゆえに、金属板11の表面11Fにおいて、金属板11のエッチングが介在物12によって阻害されることが抑えられる。結果として、孔の開口における寸法の精度が低下することが抑えられる。
複数の介在物12のなかで、アルミニウムを主成分とする介在物12が第2介在物12bである。各第2介在物12bにおいて、アルミニウムの含まれる割合が50質量%以上である。単位領域11F1において、最大寸法Lmaxが1μm以上である第2介在物12bにおける金属板11の表面11Fと対向する平面視での総面積が、最大寸法Lmaxが1μm以上である全ての介在物12における表面11Fと対向する平面視での総面積の25%以下であることが好ましい。すなわち、金属板11の表面11Fと対向する平面視において、最大寸法Lmaxが1μm以上である各第2介在物12bが占める面積を加算した値が、第2介在物12bの総面積である第3総面積である。第1総面積に対する第3総面積の比が、第2面積比である。第2面積比は、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
第2面積比が25%以下であるため、第2面積比がより大きい構成と比べて、金属板11の表面11Fに含まれる全ての介在物12のなかで、金属板11のエッチングにおいて、エッチング液に溶解しない部分の面積を縮めることができる。それゆえに、金属板11の表面11Fにおいて、金属板11のエッチングが介在物12によって阻害されることが抑えられ、孔の開口における寸法の精度が低下することが抑えられる。
こうした金属板11によれば、金属板11における介在物12以外を構成する元素と、介在物12を構成する元素とが互いに異なったとしても、元素の違いに起因するエッチング速度の違いが抑えられ、金属板11に形成される孔における寸法の精度が低下することが抑えられる。
なお、介在物12は、上述したマグネシウム、マンガン、および、アルミニウム以外にも、例えば、ナトリウム、ケイ素、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、チタン、および、クロムなどを含んでもよい。
[マスク装置の構成]
図3を参照して蒸着マスクを備えるマスク装置の構成を説明する。
図3が示すように、マスク装置20は、メインフレーム21と、複数の蒸着マスク22とを備えている。メインフレーム21は、複数の蒸着マスク22を支持する枠板状を有し、蒸着を行うための蒸着装置に取り付けられる。メインフレーム21は、各蒸着マスク22が取り付けられる部位のほぼ全体にわたり、メインフレーム21を貫通するメインフレーム孔21Hを有している。
蒸着マスク22は、1つの方向に沿って延びる板状を有し、複数のマスク領域22aと、複数のマスク領域22aの周りに位置する周辺領域22bとを備えている。複数のマスク領域22aには、蒸着マスク22を貫通する複数のマスク孔が位置している。各マスク領域22aにおいて、複数のマスク孔は、所定の規則で並んでいる。周辺領域22bの一部が、メインフレーム21に取り付けられている。
[蒸着マスク用基材の製造方法]
図4から図7を参照して、蒸着マスク用基材10の製造方法を説明する。上述したように、本実施形態の蒸着マスク用基材10は金属板11から構成される。そのため、以下では、金属板11の製造方法を説明する。
金属板11の製造方法は、圧延工程と加熱工程とを含んでいる。圧延工程は、介在物を含む鉄‐ニッケル系合金製の母材を圧延して、金属板の表面および金属板の内部に介在物を含む金属板を形成する工程である。加熱工程は、圧延工程によって形成された金属板を焼鈍する工程である。圧延工程は、金属板11の厚さが15μm以上40μm以下であり、介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下であり、かつ、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度が、金属板11の表面11Fと対向する平面視において2.0個/mm以下となるように、母材を圧延する。以下、図4から図7を参照して、金属板11の製造方法をより詳しく説明する。
金属板11を形成するときには、まず、鋳造工程によって金属板11の母材を形成する。鋳造工程では、鉄‐ニッケル系合金を準備する。上述したように、鉄‐ニッケル系合金は、34質量%以上50質量%以下のニッケルと、鉄とを含む鉄‐ニッケル合金であることが好ましい。鋳造工程では、鉄‐ニッケル合金を溶解し、母材を形成するための型に溶解した合金を流し込んだ後、合金を冷却して母材を形成する。鋳造工程では、溶解した合金を冷却する前に溶解した合金に脱酸剤を添加する。脱酸剤は、母材が形成されるまでの間に合金に含まれる酸素などと反応することによって、反応生成物を形成する。
図4が示すように、母材31は所定の厚さを有する板形を有し、表面31Fと裏面31Rとを含んでいる。母材の厚さは、例えば100μm以上300μm以下である。母材31では、脱酸剤から生成された反応生成物の大部分が、表面31Fの近傍、および、裏面31Rの近傍に位置する。そのため、冷却後の母材31の表面31Fから所定の厚さを有した表層部31Sと、母材31の裏面31Rから所定の厚さを有した表層部31Sとを母材31から取り除くことによって、金属板11の表面に対応する表面を有した母材を形成してもよい。これにより、母材31に含まれる反応生成物の大部分を取り除くことができるが、反応生成物の一部は、母材31中に介在物12として残される。なお、母材31から表層部31Sを取り除いた場合には、表層部31Sを除去した後における母材31において互いに対向する面が、表面31Fおよび裏面31Rである。
なお、鋳造工程では、母材31のうち、表面31Fを含む表層部31Sのみを取り除いてもよいし、裏面31Rを含む表層部31Sのみを取り除いてもよい。また、鋳造工程では、合金の溶解と冷却とを複数回繰り返すとともに、合金を冷却するたびに、母材における表層部の少なくとも一方を取り除く処理を行ってもよい。
図5が示すように、母材31を圧延する圧延工程を行う。圧延工程では、例えば、一対の圧延ロールRを含む圧延装置を用いて、母材を圧延方向DRに沿って圧延する。これにより、母材31の厚さが低減されるとともに、母材31が圧延方向DRに沿って引き伸ばされる。圧延工程は、熱間圧延および冷間圧延の少なくとも一方を含むことができる。
圧延工程では、母材31に含まれる介在物12の少なくとも一部が、介在物12の周りに位置する鉄‐ニッケル系合金とともに圧延される。そのため、上述したように、複数の介在物12には、母材31の表面31Fと対向する平面視において、圧延方向DRと幅方向DWとに等方的に拡がる形状を有した介在物12だけでなく、圧延方向DRに沿って延びる形状を有した介在物12が含まれる。圧延方向DRに沿って延びる形状の一例が、楕円状である。
こうした圧延工程によって、金属板31Aが形成される。金属板31Aは、コアCに巻き付けられた状態で保管される。圧延工程では、上述したように、母材31から形成された金属板11の厚さが15μm以上40μm以下となるように母材31が圧延される。また、圧延工程では、金属板11に含まれる介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下であり、かつ、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度が、2.0個/mmとなるように、母材31が圧延される。
図6が示すように、金属板31Aに対する切断工程を行ってもよい。切断工程では、圧延後の金属板31Aにおいて、金属板31Aの表面31Fと対向する平面視において、金属板31Aが有する4つの辺からそれぞれ所定の範囲である周辺部31Pを切り落とす。幅方向DWにおける金属板31Aの両端には、母材31の圧延によって切れ目や欠けを含む欠陥部が形成されていることがある。切断工程によれば、こうした欠陥部を金属板31Aから取り除くことにより、欠陥部を起点とした金属板31Aの破断を抑えることができる。また、圧延方向DRにおける金属板31Aの両端は、金属板31Aの両端よりも中央部寄りの部分よりも不均一な厚さを有することがある。切断工程によれば、金属板31Aの厚さにおける不均一さを低減することができ、結果として、金属板31Aにおける厚さの均一性を高めることができる。なお、切断工程では、幅方向DWにおける金属板31Aの両端のみを切断してもよい。また、切断工程後の金属板31Aも、圧延工程後の金属板31Aと同様、コアCに巻かれた状態で保管される。
図7が示すように、金属板31Aに対する加熱工程を行う。加熱工程は、金属板31Aを焼鈍することによって、圧延によって金属板31A内に蓄積された残留応力を取り除くための工程である。加熱工程では、加熱装置Hを用いて金属板31Aを加熱する。加熱工程では、圧延方向DRに沿って金属板31Aを引っ張りながら金属板31Aを加熱する。すなわち、繰り出し用のコアCに巻かれた金属板31Aを、繰り出し用のコアCと巻き取り用のコアCとによって圧延方向DRに沿って引っ張りながら搬送し、かつ、金属板31Aを搬送する途中で、金属板31Aを加熱する。なお、加熱工程は、コアCに巻き取られた状態の金属板31Aに対して行われてもよい。金属板31Aを加熱する温度および時間は、金属板31Aの厚さや圧延率などに応じて適宜設定することができる。これにより、蒸着マスク22を形成するための金属板11を得ることができる。
なお、加熱工程の後に、洗浄工程を行ってもよい。洗浄工程では、金属板11の表面11Fおよび裏面11Rの各々に付着した汚れなどの不純物を金属板11から取り除く。また、金属板11の製造においては、圧延工程、切断工程、および、アニール工程をこの順に複数回繰り返してもよい。
[蒸着マスクの製造方法]
図8から図16を参照して蒸着マスク22の製造方法を説明する。図8から図14では、図示の便宜上、金属板11に対して1つのマスク孔が形成されるように図示しているが、実際には、複数のマスク孔が金属板11に対して同時に形成される。
蒸着マスク22の製造方法は、板形成工程とエッチング工程とを含んでいる。板形成工程は、上述した金属板11を形成する工程である。エッチング工程は、金属板11の表面11Fにレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いたエッチングによって貫通孔の一例であるマスク孔を形成する工程である。以下、図8から図16を参照して、蒸着マスク22の製造方法をより詳しく説明する。
図8が示すように、金属板11の表面11Fおよび裏面11Rの各々に、レジスト層を位置させる。レジスト層のうち、金属板11の表面11Fに位置するレジスト層が第1レジスト層41であり、金属板11の裏面11Rに位置するレジスト層が第2レジスト層42である。配置工程において各レジスト層を金属板11に位置させるときには、感光性のレジスト材料を含む塗液を金属板11の表面11Fおよび裏面11Rの各々に塗布することによってレジスト層を各面に位置させてもよい。また、感光性のレジスト材料を含むドライフィルムレジストを金属板11から独立して形成し、金属板11の表面11Fおよび裏面11Rの各々にドライフィルムレジストを貼り付けることによって、レジスト層を各面に位置させてもよい。各レジスト層が含む感光性のレジスト材料は、ネガ型のレジスト材料であってもよいし、ポジ型のレジスト材料であってもよい。
金属板11では、介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下に抑えられ、かつ、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度が、2.0個/mmに抑えられている。そのため、金属板11の各面に位置する介在物12によって凹凸が形成されることが抑えられる。それゆえに、配置工程において、各面に配置されるレジスト層としてドライフィルムレジストが用いられたときに、ドライフィルムレジストと金属板11の各面との間の密着度が低下することが抑えられる。
図9が示すように、各レジスト層に光を照射する露光工程を行う。露光工程では、第1レジスト層41のうち、金属板11に接する面とは反対側の面に第1露光マスクM1を位置させ、第2レジスト層42のうち、金属板11に接する面とは反対側の面に第2露光マスクM2を位置させる。各レジスト層がネガ型のレジスト材料を含むとき、各露光マスクは、各レジスト層のなかで金属板11から取り除く領域への光を遮蔽するように構成されている。これに対して、各レジスト層がポジ型のレジスト材料を含むとき、各露光マスクは、各レジスト層のなかで金属板11から取り除く領域に向けて光を透過するように構成されている。各露光マスクを介して各レジスト層に光を照射することによって、各レジスト層を露光する。なお、図9では、各レジスト層がネガ型のレジスト材料を含むときに用いられるマスクが例示されている。
金属板11では、介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下に抑えられ、かつ、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度が、2.0個/mmに抑えられている。そのため、露光工程において、金属板11に光が照射されたときに、金属板11の表面11Fに位置する介在物12に起因して、意図しない散乱が生じることが抑えられる。それゆえに、散乱光が、各レジスト層のなかで本来は光が照射されるべきない部分に入射することが抑えられ、結果として、露光の精度が低下することが抑えられる。
図10が示すように、各レジスト層を現像することによって、第1レジスト層41から第1レジストマスク41Mを形成し、第2レジスト層42から第2レジストマスク42Mを形成する。これにより、金属板11の表面11Fに第1レジストマスク41Mを形成し、裏面11Rに第2レジストマスク42Mを形成する。第1レジストマスク41Mは、第1レジストマスク41Mの厚さ方向に沿って第1レジストマスク41Mを貫通する第1孔41Maを含み、第2レジストマスク42Mは、第2レジストマスク42Mの厚さ方向に沿って第2レジストマスク42Mを貫通する第2孔42Maを含んでいる。
図11が示すように、金属板11の表面11Fに位置する第1レジストマスク41Mを用いて、金属板11を表面11Fからエッチングする。このとき、金属板11をエッチングするよりも前に、第2レジストマスク42Mのうち、金属板11に接する面とは反対側の面に第2保護層43を位置させる。第2保護層43は、第2レジストマスク42Mの全体を覆うように形成されることで、第2レジストマスク42Mが有する第2孔42Maを封止する。第2保護層43の形成材料には、金属板11をエッチングするためのエッチング液に対する耐性を有する材料を用いることができる。
金属板11のエッチング溶液には、酸性のエッチング液を用いることができる。金属板11をエッチングする方式は、ディップ式でもよいし、スプレー式でもよいし、スピン式でもよい。第1レジストマスク41Mの第1孔41Maを介して金属板11の表面11Fにエッチング液が触れることによって、表面11Fの一部が浸食される。これにより、金属板11に第1凹部11c1が形成される。
図12が示すように、金属板11から第1レジストマスク41Mを取り除くとともに、第2レジストマスク42Mから第2保護層43を取り除く。また、金属板11の表面11Fに、第1保護層44を位置させる。第1保護層44は、金属板11における表面11Fの全体を覆うように形成されることで、金属板11が表面11Fからエッチングされることを防ぐ。第1保護層44の形成材料には、第2保護層43と同様、エッチング液に耐性を有する材料を用いることができる。なお、第1レジストマスク41Mを取り除くこと、第2保護層43を取り除くこと、および、第1保護層44を形成することは、第1保護層44が第1レジストマスク41Mを取り除いた後に形成されれば、任意の順番で行うことができる。
図13が示すように、金属板11の裏面11Rに位置する第2レジストマスク42Mを用いて、金属板11を裏面11Rからエッチングする。金属板11を裏面11Rからエッチングするときには、金属板11を表面11Fからエッチングするときと同様のエッチング液、および、エッチング方式を用いることができる。第2レジストマスク42Mの第2孔42Maを介して金属板11の裏面11Rにエッチング液が触れることによって、裏面11Rの一部が浸食される。これにより、金属板11に第1凹部11c1に繋がる第2凹部11c2が形成される。結果として、第1凹部11c1と第2凹部11c2とを含み、金属板11を貫通する1つのマスク孔が形成される。
金属板11では、最大寸法Lmaxが1μm以上である第1介在物12aの密度が、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度に対して50%以上であることが好ましい。こうした構成によれば、金属板11の母材31を構成する元素と、介在物12を構成する元素とが互いに異なっても、それぞれのエッチング速度が大きく乖離することが抑えられる。それゆえに、金属板11のなかで孔が形成される部分におけるエッチング速度のばらつきが抑えられ、孔における加工の精度が低下することが抑えられる。
また、金属板11では、介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下に抑えられ、かつ、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度が2.0個/mmに抑えられている。そのため、エッチング工程において、介在物12が金属板11から脱離する数を抑えることができる。これにより、脱離した介在物12の体積と同程度の大きさを有した意図しない空隙が金属板11に形成されることが抑えられる。また、空隙が金属板11に形成されたとしても、空隙の大きさを介在物12と同程度の大きさに抑えることができる。結果として、蒸着マスク22を用いて形成される層における寸法の精度や位置の精度が低下することが抑えられる。
図14が示すように、金属板11の表面11Fから第1保護層44が取り除かれ、金属板11の裏面11Rから第2レジストマスク42Mが取り除かれる。第1保護層44を取り除くことと、第2レジストマスク42Mを取り除くこととは、互いに異なるタイミングで行われてもよいし、同時に行われてもよい。例えば、第1保護層44を取り除くときにアルカリ系の剥離液を用いることによって、第1保護層44と第2レジストマスク42Mとを金属板11から同時に取り除くことができる。これにより、複数のマスク孔11cを有した金属板11を得ることができる。
図15が示すように、複数のマスク孔11cが形成された金属板11を切断することによって、1つの金属板11から複数の蒸着マスク22を形成する。金属板11がエッチングされるときには、複数のマスク孔11cを含む領域であって、上述した蒸着マスク22のマスク領域22aに対応する領域が、圧延方向DRに沿って並ぶように、金属板11に複数のマスク孔11cが形成される。そのため、金属板11の切断工程では、圧延方向DRに沿って並ぶ複数のマスク領域22aと、マスク領域22aの周りに位置する周辺領域22bとを含むように金属板11を切断する。これにより、蒸着マスク22の長手方向が圧延方向DRと平行な蒸着マスク22を得ることができる。
図16は、金属板11の表面11Fと対向する平面視におけるマスク孔11cの形状の一例を示している。
図16が示すように、金属板11の表面11Fと対向する平面視において、各マスク孔11cは、圧延方向DRに沿って延びる長方形状を有している。言い換えれば、各マスク孔11cの長手方向が、圧延方向DRと平行な方向である。複数のマスク孔11cは、圧延方向DRに沿って等間隔で並び、かつ、幅方向DWに沿って等間隔で並んでいる。複数のマスク孔11cは、金属板11の表面11Fにおいて矩形格子状に並んでいる。
上述したように、金属板11に含まれる少なくとも一部の介在物12は、母材31の圧延によって、圧延方向DRに沿って引き延ばされる。これにより、圧延方向DRに沿って延びる形状を有している。そのため、蒸着マスク22に形成されたマスク孔11cが圧延方向DRに沿って並ぶ構成であれば、介在物12が、マスク孔11cが形成される領域に含まれやすくなる。結果として、介在物12が、マスク孔11cの寸法の精度に影響しにくくなる。
なお、配置工程において金属板11の表面11Fおよび裏面11Rの各々にレジスト層を位置させているが、第1レジスト層41の配置と、第1レジストマスク41Mの形成と、金属板11における表面11Fのエッチングとが完了した後に、金属板11の裏面11Rに第2レジスト層42を配置してもよい。そして、これに続いて、第2レジストマスク42Mの形成と、金属板11における裏面11Rのエッチングとが行われればよい。
また、金属板11が有するマスク孔11cは、金属板11を表面11Fからエッチングすることのみによって形成されてもよい。この場合には、金属板11の裏面11Rに第2レジストマスク42Mを形成する工程と、金属板11を裏面11Rからエッチングする工程とを省くことができる。なお、金属板11を表面11Fからエッチングするときには、金属板11の裏面11Rに、裏面11Rのエッチングを防ぐ保護層を形成することが必要である。
[表示装置の製造方法]
図17を参照して、表示装置の製造方法を説明する。
表示装置の製造方法は、板形成工程と、マスク形成工程と、蒸着工程とを含んでいる。板形成工程は、上述した金属板11を形成する工程である。マスク形成工程は、上述した蒸着マスク22を形成する工程である。蒸着工程は、蒸着マスク22を用いた蒸着によって蒸着対象に複数の層を形成する工程である。以下、図17を用いて、蒸着工程に用いられる蒸着装置の一例とともに、蒸着工程について説明する。
図17が示すように、蒸着装置50は、蒸着マスク22を含むマスク装置20と、蒸着対象Sとを収容する収容槽51を備えている。収容槽51は、蒸着対象Sとマスク装置20とを収容槽51内における所定の位置に保持するように構成されている。収容槽51内には、蒸着材料Mvdを保持する保持部52と、蒸着材料Mvdを加熱する加熱部53とが位置している。保持部52に保持される蒸着材料Mvdは、例えば有機物である。収容槽51は、蒸着対象Sとマスク装置20とを、蒸着対象Sと保持部52との間にマスク装置20が位置し、かつ、マスク装置20と保持部52とが対向するように、収容槽51内に位置させる。マスク装置20は、蒸着マスク22のマスク領域22aが蒸着対象Sに密着した状態で、収容槽51内に配置される。
蒸着工程では、蒸着材料Mvdが加熱部53によって加熱されることにより、蒸着材料Mvdが気化または昇華する。気化または昇華した蒸着材料Mvdは、蒸着マスク22のマスク領域22aに位置するマスク孔11cを通過して蒸着対象Sに付着する。これにより、蒸着マスク22が有するマスク孔11cの形状および位置に対応した形状を有する有機層が、蒸着対象Sに形成される。
金属板11では、介在物12の最大寸法Lmaxが10μm以下に抑えられ、かつ、最大寸法Lmaxが1μm以上である介在物12の密度が、2.0個/mm以下に抑えられている。そのため、金属板11を用いて形成された蒸着マスク22のなかで、蒸着対象Sに接する面に、介在物12に起因する凹凸が形成されることが抑えられる。それゆえに、蒸着マスク22と蒸着対象Sとの密着度が低下することが抑えられ、蒸着マスク22と蒸着対象Sとの間に隙間が形成されることが抑えられる。結果として、蒸着マスク22と蒸着対象Sとの間の隙間に蒸着材料Mvdが侵入することが抑えられ、有機層の寸法における精度が高められる。
[実施例]
[金属板の製造]
36質量%のニッケルを含む鉄‐ニッケル合金を準備し、鋳造工程によって鉄‐ニッケル合金製の母材を形成した。鋳造工程では、溶融した状態の鉄‐ニッケル合金に脱酸剤を加えた後、脱酸剤から生じた介在物の一部を取り除きながら、200μmの厚さを有する母材を得た。
次いで、圧延工程において、熱間圧延および冷間圧延をこの順で行った。なお、冷間圧延では、圧延油を用いて母材を冷却しながら母材の圧延を行った。これにより、圧延後の金属板を得た。そして、加熱工程において金属板を加熱した。このとき、金属板を加熱する時間を60秒に設定し、金属板の温度を500℃に設定した。最後に、金属板における幅方向の両端を、同じ長さだけ切り落とした後、洗浄工程において、金属板の表面および裏面を洗浄することによって、厚さが30μmであり、幅が約600mmである蒸着マスク用基材としての金属板を得た。
上述した鋳造工程において、溶融した鉄‐ニッケル合金に加える脱酸剤の量と組成との少なくとも一方を変えることによって、実施例1から実施例4の各々の金属板と、比較例1および比較例2の金属板とを得た。
[介在物の解析]
実施例1から実施例4、比較例1および比較例2の各々の金属板において、金属板の表面に位置する介在物の測定を行った。各金属板の表面を走査型電子顕微鏡(JSM−7001F、日本電子(株)製)を用いて撮像し、1mmの領域であって、互いに異なる領域である100個の領域に対応するSEM画像において、最大寸法が1μm以上である介在物の個数を目視にて計数した。また、各介在物を楕円近似することによって、介在物における長軸の長さ、短軸の長さ、および、平均寸法を算出した。なお、介在物における長軸の長さが、介在物の最大寸法である。さらに、SEM画像に基づいて、各介在物の面積を算出した。
エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて各元素の組成を測定した。測定には、走査型電子顕微鏡(同上)に搭載されたエネルギー分散型X線分析装置(INCA PentaPET×3、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用いた。なお、以下では、介在物の分析の結果において、各元素の割合は、FeとNiとを除く元素における割合である。
[測定結果]
表1から表3を参照して、介在物の測定結果を説明する。
実施例1から実施例4の各々の金属板、および、比較例1および比較例2の各々の金属板について、介在物の密度、平均寸法の平均値、および、最大寸法の最大値を算出した。各金属板における介在物の密度、平均寸法の平均値、および、最大寸法の最大値は、下記の表1に示す通りであった。
Figure 0006879109
表1が示すように、実施例1の金属板において、介在物の密度が1.7個/mmであり、平均寸法の平均値が2.4μmであり、最大寸法の最大値が9.3μmであることが認められた。実施例2の金属板において、介在物の密度が1.6個/mmであり、平均寸法の平均値が2.1μmであり、最大寸法の最大値が8.9μmであることが認められた。実施例3の金属板において、介在物の密度が1.4個/mmであり、平均寸法の平均値が1.9μmであり、最大寸法の最大値が9.5μmであることが認められた。実施例4の金属板において、介在物の密度が1.0個/mmであり、平均寸法の平均値が2.4μmであり、最大寸法の最大値が8.1μmであることが認められた。比較例1の金属板において、介在物の密度が25.7個/mmであり、平均寸法の平均値が2.3μmであり、最大寸法の最大値が15.2μmであることが認められた。比較例2の金属板において、介在物の密度が19.3個/mmであり、平均寸法の平均値が4.0μmであり、最大寸法の最大値が17.9μmであることが認められた。
このように、実施例1から実施例4の各々における金属板では、最大寸法の最大値が10μm以下であること、すなわち、各介在物の最大寸法が10μm以下であることが認められた。また、実施例1から実施例4の各々における金属板では、最大寸法が1μm以上10μm以下である介在物の密度が2.0個/mm以下であることが認められた。これに対して、比較例1および比較例2の各々における金属板では、最大寸法の最大値が10μmよりも大きいこと、また、比較例1および比較例2の両方の金属板において、介在物の密度が2.0個/mmよりも大幅に大きいことが認められた。
各金属板において、各介在物を構成する元素の総和を算出したところ、全ての介在物を構成する元素の総量において、各元素が表2に記載の割合で含まれることが認められた。なお、表2には、介在物に含まれる主たる元素のみが示されている。
Figure 0006879109
表2が示すように、実施例1の金属板において、Alが6質量%、Mgが32質量%、Mnが17質量%それぞれ含まれることが認められた。実施例2の金属板において、Alが11質量%、Mgが31質量%、Mnが11質量%それぞれ含まれることが認められた。実施例3の金属板において、Alが4質量%、Mgが42質量%、Mnが14質量%それぞれ含まれていることが認められた。実施例4の金属板において、Alが10質量%、Mgが19質量%、Mnが14質量%それぞれ含まれていることが認められた。
比較例1の金属板において、Alが30質量%、Mgが19質量%、Mnが20質量%それぞれ含まれていることが認められた。比較例2の金属板において、Alが19質量%、Mgが8質量%、Mnが18質量%それぞれ含まれていることが認められた。
このように、実施例1から実施例4の金属板の各々では、全ての介在物を構成する元素の総量において、Mgの割合がAlの割合よりも大きいことが認められた。また、Mgの割合とAlの割合との比が、実施例1ではおよそ5:1であり、実施例2ではおよそ3:1であり、実施例3ではおよそ10:1であり、実施例4ではおよそ2:1であることが認められた。これに対して、比較例1および比較例2の金属板の各々では、全ての介在物を構成する元素の総量において、Alの割合がMgの割合よりも大きいことが認められた。また、Mgの割合とAlの割合との比が、比較例1ではおよそ2:3であり、比較例2では1:2であることが認められた。
各介在物を構成する元素の組成に基づいて各金属板に含まれる介在物を分類し、分類Aおよび分類Bに属する介在物において、介在物の密度、平均寸法の平均値(μm)、最大寸法の最大値(μm)、および、面積比(%)を算出した。なお、面積比を算出する際には、1μm以上の最大寸法を有した各介在物の面積の総和である第1の値と、各分類に属する各介在物の面積の総和である第2の値とを算出した。そして、第1の値に対する第2の値の比を面積比(%)として算出した。
各金属板における解析の結果は、表3に記載の通りであった。
Figure 0006879109
表3における介在物Aおよび介在物Bの組成は、それぞれ以下の通りであった。介在物Aは、Mgを主成分とする介在物、すなわちMgを50質量%以上含む介在物であった。介在物Aは、AlおよびMnの少なくとも一方を含み、Alは10質量%以下であった。介在物Bは、Alを主成分とする介在物、すなわちAlを50質量%以上含む介在物であった。介在物Bは、さらにMgを20質量%以上40質量%以下の範囲で含み、介在物Bの一部はMnを含んでいた。すなわち、介在物Aが第1介在物の一例であり、介在物Bが第2介在物の一例である。
実施例1において、介在物Aの密度が1.43個/mmであり、介在物Bの密度が0.10個/mmであることが認められた。実施例2において、介在物Aの密度が1.23個/mmであり、介在物Bの密度が0.17個/mmであることが認められた。実施例3において、介在物Aの密度が1.23個/mmであり、介在物Bの密度が0.03個/mmであることが認められた。実施例4において、介在物Aの密度が0.67個/mmである一方で、介在物Bが認められなかった。比較例1において、介在物Aの密度が2.57個/mmであり、介在物Bの密度が17.63個/mmであることが認められた。比較例2において、介在物Aの密度が0.40個/mmであり、介在物Bの密度が16.57個/mmであることが認められた。
このように、全ての実施例において、全介在物の密度に対する介在物Aの密度の比が、50%以上であることが認められた。これに対して、全ての比較例において、全介在物の密度に対する介在物Aの密度の比が、50%未満であることが認められた。また、全ての比較例では、全介在物の密度に対する介在物Bの密度の比が、50%以上であることが認められた。
また、全ての介在物が占める面積に対して介在物Aが占める面積の比が、実施例1では69%であり、実施例2では48%であり、実施例3では91%であり、実施例4では74%であることが認められた。このように、実施例1から実施例4の各々の金属板では、単位領域において全ての介在物が占める面積に対して介在物Aが占める面積の比が、45%以上であることが認められた。これに対して、全ての介在物が占める面積に対して介在物Aが占める面積の比が、比較例1では14%であり、比較例2では1%であることが認められた。すなわち、比較例1および比較例2の各々の金属板では、全ての介在物が占める面積に対して第1介在物が占める面積の比が45%未満であることが認められた。
また、単位領域において全ての介在物が占める面積に対する介在物Bが占める面積の比が、実施例1では21%であり、実施例2では8%であり、実施例3では1%であることが認められた。このように、全ての実施例において、全ての介在物が占める面積に対する介在物Bが占める面積の比が、25%以下であることが認められた。これに対して、単位領域において全ての介在物が占める面積に対する介在物Bが占める面積の比が、比較例1では65%であり、比較例2では93%であることが認められた。このように、全ての比較例において、全ての介在物が占める面積に対する介在物Bが占める面積の比が、25%を超えることが認められた。
[評価]
実施例1から実施例4、比較例1、および、比較例2の各々の金属板を用いて、上述した配置工程、露光工程、現像工程、および、エッチング工程を経て、複数のマスク孔が形成された蒸着マスクを製造した。配置工程では、ネガ型のレジスト材料を含むドライフィルムレジストを金属板に貼り付けることでレジスト層を形成した。マスク孔の設計寸法において、金属板の表面と対向する平面視での圧延方向に沿う長さを40μmとし、幅方向に沿う長さを40μmとした。
配置工程、露光工程、現像工程、および、エッチング工程の各々が終了したときにおける各実施例の金属板および各比較例の金属板の状態を評価した。配置工程、露光工程、および、現像工程の各々が終了したときには、金属板とドライフィルムレジストとの間で剥離が生じたか否かを目視により評価した。エッチング工程が終了したときには、金属板の表面を走査型電子顕微鏡(同上)によりそれぞれ撮影し、SEM画像を生成した。走査型電子顕微鏡における倍率を10000倍に設定し、加速電圧を10.0kVに設定し、作動距離を9.7mmに設定した。SEM画像を用いてマスク孔における寸法の精度を評価した。
配置工程、露光工程、および、現像工程のいずれが終了したときでも、各実施例の金属板とドライフィルムレジストとの間には剥離が認められず、金属板とドライフィルムレジストとが密着していることが認められた。これに対して、各比較例の金属板とドライフィルムレジストとの間の一部には剥離が生じていることが認められ、また、金属板においてドライフィルムレジストの剥離が生じた部分には、介在物が位置していることが認められた。各実施例の金属板では、金属板の表面に介在物に起因する凹凸が形成されにくいため、ドライフィルムレジストと金属板との間における密着の度合いが高められたと考えられる。
また、各実施例の金属板では、設計寸法どおりに複数のマスク孔が形成されていることが認められた。これに対して、各比較例の金属板では、一部のマスク孔が設計寸法どおりに形成されていないことが認められ、設計寸法どおりに形成されていないマスク孔の近傍には介在物が位置することが認められた。各実施例の金属板では、露光工程において、介在物による照射光の散乱が抑えられることによって、露光の精度が高められ、かつ、エッチング工程において、鉄‐ニッケル合金と介在物との間において、エッチング速度の乖離が緩和されるため、マスク孔における形状の精度が高められたと考えられる。
実施例1から実施例4、比較例1、および、比較例2の各々の金属板によって製造した蒸着マスクを用いて、蒸着によって有機層をガラス基板に形成した。このとき、蒸着マスクをガラス基板に密着させた。蒸着後のガラス基板における表面を走査型電子顕微鏡(同上)により撮影し、SEM画像を生成した。走査型電子顕微鏡における撮像条件を上述と同じ条件に設定した。各実施例の蒸着マスクを用いた蒸着では、複数の有機層が設計寸法どおりに蒸着されていることが認められた。一方で、各比較例の蒸着マスクを用いた蒸着では、一部の有機層が設計寸法どおりに蒸着されていないことが認められた。各実施例の蒸着マスクによれば、蒸着マスクの表面に位置する介在物によって凹凸が形成されることが抑えられ、これによって、ガラス基板と蒸着マスクの間に隙間が生じることが抑えられたため、有機層における形状の精度が高められたと考えられる。
以上説明したように、蒸着マスク用基材、蒸着マスク用基材の製造方法、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)介在物の密度がより高い構成や、最大寸法Lmaxがより大きい構成と比べて、金属板11がエッチングされたときに、金属板11のなかで孔が形成される領域に介在物12が位置する確率を低くすることができる。それゆえに、蒸着マスクが備える孔における寸法の精度を高めることができ、結果として、蒸着マスクを用いて蒸着対象に形成された層における寸法の精度を高めることができる。
(2)介在物12の密度における50%以上がマグネシウムを主成分とする第1介在物12aであるため、金属板11のなかで孔が形成される領域に介在物12が位置したとしても、その介在物12が第1介在物である可能性が高められる。介在物12が第1介在物であれば、アルミニウムをマグネシウムよりも多く含むため、孔における寸法の精度を高めることができる。
(3)アルミニウムの割合がマグネシウムの割合よりも大きい構成と比べて、金属板11がエッチングされるときに、介在物12を構成する原子の総和において、エッチング液に溶解する割合を大きくすることができる。それゆえに、金属板11中に介在物12が含まれることによって、金属板11のエッチングが阻害されることが抑えられ、結果として、金属板11に形成される孔における寸法の精度が低下することが抑えられる。
(4)第1面積比が45%上であるため、第1面積比がより小さい構成と比べて、金属板11の表面11Fに含まれる全ての介在物12のなかで、金属板11のエッチングにおいて、エッチング液に溶解する部分の面積を拡げることができる。それゆえに、金属板11の表面11Fにおいて、金属板11のエッチングが介在物12によって阻害されることが抑えられる。結果として、孔の開口における寸法の精度が低下することが抑えられる。
(5)第2面積比が25%以下であるため、第2面積比がより大きい構成と比べて、金属板11の表面11Fに含まれる全ての介在物12のなかで、金属板11のエッチングにおいて、エッチング液に溶解しない部分の面積を縮めることができる。それゆえに、金属板11の表面11Fにおいて、金属板11のエッチングが介在物12によって阻害されることが抑えられ、孔の開口における寸法の精度が低下することが抑えられる。
10…蒸着マスク用基材、11,31A…金属板、11c…マスク孔、11c1…第1凹部、11c2…第2凹部、11F,31F…表面、11F1…単位領域、11R,31R…裏面、12…介在物、12a…第1介在物、12b…第2介在物、20…マスク装置、21…メインフレーム、21H…メインフレーム孔、22…蒸着マスク、22a…マスク領域、22b…周辺領域、31…母材、31P…周辺部、31S…表層部、41…第1レジスト層、41M…第1レジストマスク、41Ma…第1孔、42…第2レジスト層、42M…第2レジストマスク、42Ma…第2孔、43…第2保護層、44…第1保護層、50…蒸着装置、51…収容槽、52…保持部、53…加熱部、C…コア、H…加熱装置、M1…第1露光マスク、M2…第2露光マスク、Mvd…蒸着材料、R…圧延ロール、S…蒸着対象。

Claims (8)

  1. 鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって複数の貫通孔を有した蒸着マスクを製造するために用いられる前記金属板を備える蒸着マスク用基材であって、
    前記金属板は、前記金属板の表面および前記金属板の内部に介在物を含み、
    前記金属板の厚さは、15μm以上40μm以下であり、
    前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法は、10μm以下であり、
    前記平面視において前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度は、2.0個/mm以下である
    蒸着マスク用基材。
  2. 複数の前記介在物のなかで、マグネシウムが主成分である前記介在物が第1介在物であり、
    前記最大寸法が1μm以上である前記第1介在物の密度は、前記介在物の密度に対して50%以上である
    請求項1に記載の蒸着マスク用基材。
  3. 前記最大寸法が1μm以上である全ての前記介在物における原子の総質量において、マグネシウムの割合がアルミニウムの割合よりも大きい
    請求項2に記載の蒸着マスク用基材。
  4. 単位領域において、前記最大寸法が1μm以上である前記第1介在物における前記平面視での総面積が、前記最大寸法が1μm以上である全ての前記介在物における前記平面視での総面積の45%以上である
    請求項2または3に記載の蒸着マスク用基材。
  5. 複数の前記介在物のなかで、アルミニウムが主成分である前記介在物が第2介在物であり、
    単位領域において、前記最大寸法が1μm以上である前記第2介在物における前記平面視での総面積が、前記最大寸法が1μm以上である全ての前記介在物における前記平面視での総面積の25%以下である
    請求項2から4のいずれか一項に記載の蒸着マスク用基材。
  6. 鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって複数の貫通孔を有した蒸着マスクを製造するために用いられる前記金属板を備えた蒸着マスク用基材の製造方法であって、
    介在物を含む鉄‐ニッケル系合金製の母材を圧延して、前記金属板の表面および前記金属板の内部に前記介在物を含む前記金属板を形成する圧延工程と、
    前記圧延工程によって形成された前記金属板を焼鈍する加熱工程とを含み、
    前記圧延工程は、
    前記金属板の厚さが15μm以上40μm以下であり、前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法が10μm以下であり、かつ、前記平面視において前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度が、2.0個/mm以下となるように、前記母材を圧延する
    蒸着マスク用基材の製造方法。
  7. 鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって複数の貫通孔を有した蒸着マスクを製造する蒸着マスクの製造方法であって、
    介在物を含む鉄‐ニッケル系合金製の母材の圧延によって、前記金属板の表面および前記金属板の内部に前記介在物を含む前記金属板を形成する板形成工程と、
    前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成し、前記レジストマスクを用いたエッチングによって前記貫通孔を形成するエッチング工程と、を含み、
    前記板形成工程は、
    前記金属板の厚さが、15μm以上40μm以下であり、
    前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法が、10μm以下であり、
    前記平面視において前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度が、2.0個/mm以下となる金属板を形成する
    蒸着マスクの製造方法。
  8. 鉄‐ニッケル系合金製の金属板のエッチングによって製造された蒸着マスクであって、複数の貫通孔を有した前記蒸着マスクを用いて形成される複数の層を備える表示装置の製造方法であって、
    介在物を含む鉄‐ニッケル系合金製の母材の圧延によって、前記金属板の表面および前記金属板の内部に前記介在物を含む前記金属板を形成する板形成工程と、
    前記金属板の前記表面にレジストマスクを形成し、前記レジストマスクを用いたエッチングによって前記貫通孔を形成することによって前記蒸着マスクを形成するマスク形成工程と、
    前記蒸着マスクを用いた蒸着によって蒸着対象に複数の前記層を形成する蒸着工程と、を含み、
    前記板形成工程は、
    前記金属板の厚さが、15μm以上40μm以下であり、
    前記表面と対向する平面視において、前記介在物の最大寸法が、10μm以下であり、
    前記平面視における前記最大寸法が1μm以上である前記介在物の密度が、2.0個/mm以下である金属板を形成する
    表示装置の製造方法。
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