以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<制御装置の構成例>
図1は、第1実施形態の制御装置を含む通信端末の一例を示すブロック図である。図1において、通信端末10は、GPS(Global Positioning System)信号受信部11と、記憶部12と、制御部(制御装置)13と、送信部14とを有する。通信端末10は、例えば、監視対象者によって携帯される(使用される)通信端末である。
GPS信号受信部11は、所定の時間間隔でGPS信号を受信し、受信した各GPS信号を、位置を示す情報に変換して、記憶部12へ出力する。これにより、記憶部12は、異なる複数の測定タイミングでそれぞれ測定された、通信端末10の複数の位置(つまり、「測定位置」)に関する情報を記憶することになる。複数の測定位置は、例えば、測定タイミングの順番で記憶され、その順番を維持したまま制御部13によって取得される。
制御部13は、記憶部12に記憶され且つ「判定対象期間」内の異なる複数の測定タイミングでそれぞれ測定された、通信端末10の複数の測定位置を測定タイミングの順番で取得する。そして、制御部13は、取得した複数の測定位置に基づく「移動軌跡パターン」と「パターン条件」とに基づいて、判定対象端末を携帯するユーザの状態(特に、行動に係る状態)を判定し、判定されたユーザの状態に応じて、「通知信号」を送信部14へ出力する。以下では、特に、「パターン条件」が「異常パターン条件」であり、「通知信号」が「緊急事態通知信号」であるケースを例にとり説明する。すなわち、この場合、制御部13は、取得した複数の測定位置に基づく「移動軌跡パターン」と「異常パターン条件」とに基づいて、通信端末10を携帯するユーザが「異常状態」にあるか否かを判定し、異常状態にあると判定された場合、緊急事態通知信号を送信部14へ出力する。ここで、通信端末10は、異常状態の判定対象である「判定対象端末」である。「判定対象期間」、「移動軌跡パターン」、「異常パターン条件」、及び「異常状態」については、後に詳しく説明する。
例えば、制御部13は、算出部(パターン解析部)13Aと、判定部13Bと、通知部13Cとを有している。
第1実施形態において算出部13Aは、記憶部12から取得した通信端末10の各測定位置と、通信端末10の現在位置との各距離を、「移動軌跡パターン」として算出する。ここで、通信端末10の現在位置としては、記憶部12に最も新しく記憶された、通信端末10の測定位置が用いられてもよい。
第1実施形態において判定部13Bは、算出部13Aによって算出された移動軌跡パターン、つまり複数の距離のうちで、「第1閾値」以下である距離の個数をカウントする。そして、判定部13Bは、カウント値が「所定数」以上であるか否かを判定し、カウント値が「所定数」以上である場合、通信端末10を携帯するユーザ(つまり、監視対象者)の状態が通知すべき状態にあると判定する、つまり、ここではユーザが異常状態にあると判定する。一方、判定部13Bは、カウント値が「所定数」未満である場合、通信端末10を携帯するユーザの状態が通知すべき状態にないと判定する、つまり、ユーザが正常状態にあると判定する。すなわち、第1実施形態における「異常パターン条件」は、算出部13Aによって算出された判定対象期間内の複数の距離のうちで、「第1閾値」以下である距離の個数が「所定数」以上である、ことである。このような異常パターン条件を用いる理由は、この異常パターン条件を満たした場合、同じような場所を繰り返し通過しており、ユーザが道に迷っている可能性、つまり危険状態にある可能性が高いと考えられるためである。
通知部13Cは、判定部13Bによって判定されたユーザの状態に応じて、通知信号を送信部14へ出力する。具体的には、通知部13Cは、判定部13Bによって通信端末10を携帯するユーザが異常状態にあると判定された場合、通知対象者に向けた緊急事態通知信号を生成して送信部14へ出力する。通知対象者は、例えば、監視対象者の保護者である。
送信部14は、通知部13Cから緊急事態通知信号を受け取ると、緊急事態通知信号を通知対象者の端末(図示せず)に向けて無線送信する。通知対象者は、自身の端末で緊急通知信号を受信することにより、監視対象者が異常状態にあることを知ることができ、監視対象者の保護を求める等の対処が可能となる。
<制御装置の動作例>
以上の構成を有する第1実施形態の制御装置(制御部)13の処理動作の一例について説明する。図2は、第1実施形態の制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
第1実施形態の制御装置(制御部)13において算出部13Aは、過去の各測定位置と、通信端末10の現在位置との間の各距離を「移動軌跡パターン」として算出する(ステップS11)。例えば、記憶部12において、過去60分間の1分毎の位置に関する情報が記憶されている場合、つまり、60個の位置が記憶されている場合、以下の式(1)に従って、60個の距離L[i](i=1〜60)を算出する。ここで、位置iは、経度X[i]及び緯度Y[i]を含んでいる。また、現在位置(記憶部12に記憶された最新の位置)は、経度X[0]及び緯度Y[0]である。
なお、ここでは、各位置を経度及び緯度によって表しているが、これに限定されるものではなく、経度、緯度、及び高度によって表してもよい。
また、測定位置の時間間隔(周期)は、上述の1分毎に限られるものではなく、例えば、10秒毎や30秒毎など他の値を用いることもできる。また、測定位置の時間間隔は、必ずしも一定である必要はなく、多少の変動があってもよい。また、測定タイミングである測定時刻(測定日時)と、測定位置(緯度、経度)とを対応付けて記憶部12に記憶してもよい。また、測定位置の時間間隔のばらつきが大きい場合には、測定時刻と測定位置とのデータを用いて、実測された測定位置の補間処理を行い、一定周期毎の位置を算出してもよい。
図3は、第1実施形態の移動軌跡パターンの一例を示す図である。図3では、現在時刻を基準ゼロとして各測定タイミング(測定時刻)との時間差Tが横軸であり、算出した各測定位置についての距離L[i]が縦軸であるグラフとして、移動軌跡パターンを図示している。図3では、便宜上、現在時刻に近い20個の測定位置に関する部分だけが示されている。
次いで、判定部13Bは、判定対象期間の移動軌跡パターン、つまり、判定対象期間内の複数の測定位置にそれぞれ対応する複数の距離のうちで、「第1閾値」(所定値)以下である距離の個数をカウントする(ステップS12)。ここで、判定対象期間としては、例えば、−60分≦時間差T≦−5分の期間が用いられる。すなわち、例えば、−60分≦時間差T≦−5分の期間に測定タイミングがある、複数の測定位置が、「判定対象範囲」とされる。このような判定対象期間の場合、異常判定には時間差T=−1,−2,−3,−4(分)に対応する距離は用いられないので、算出部13Aが距離L[i](i=5〜60)だけを算出するようにしてもよい。また、「第1閾値」は、測定位置と現在位置とが十分に近づいたと見なせる距離値であり、例えば、80メートルが用いられる。図3において、水平の一点鎖線は、「第1閾値」を示しており、本図に示した時間範囲においては、「第1閾値」以下である距離は2個である。もちろん上述の判定対象期間および「第1閾値」は、あくまでも一例であって、他の値を用いてもよく、例えば、判定対象期間を、−30分≦時間差T≦−3分としたり、「第1閾値」を30メートルとしてもよい。
次いで、判定部13Bは、カウント値が「所定数」以上であるか否かを判定する(ステップS13)。
カウント値が「所定数」以上である場合(ステップS13YES)、通知部13Cは、緊急事態通知信号を生成して送信部14へ出力する(ステップS14)。これにより、緊急事態通知信号は、送信部14を介して通知対象者の端末に向けて送信される。
カウント値が「所定数」未満である場合(ステップS13NO)、処理ステップは、ステップS11へ戻る。
なお、ステップS12において、「第1閾値」以下の距離の個数をカウント値としたが、それとは別の方法でカウント値を算出してもよい。上述の方法では、現在位置の近くの位置に通信端末10が一定時間以上留まっていたような場合に、異常状態と判定される。そのような状況を異常状態に含めたい場合は、上述の方法を行えばよい。一方、そのような状況を異常状態に含めたくない場合は、時間的に連続する距離L[i]が、連続して「第1閾値」以下である場合、該当箇所のカウント値を「1」にするとよい。例えば、i=30、31、32において、距離L[i]が「第1閾値」以下である場合、この部分のカウント値を「3」ではなく「1」とする。すなわち、判定対象期間において、距離が「第1閾値」以下の極小点の数をカウント値としてもよい。
また、ステップ13において、カウント値が「所定数」以上であるか否かを判定したが、それとは別の判定方法を用いてもよい。例えば、算出部13Aが、ステップS13より前のステップ(図示せず)において、判定対象期間における通信端末10の移動距離の合計値(延べ移動距離)を算出する。そして、判定部13Bが、ステップS13において、その合計値が「所定値」以上であり、かつ、カウント値が「所定数」以上であるか否かを判定する。通信端末10の移動距離の合計が少ない場合、監視対象者の疲労も少ないと考えられるため、そのような状況を異常状態に含めたくない場合は、この方法を用いるとよい。同様に、ステップS13において、判定対象期間における距離L[i]の最大値が「所定値」以上であり、かつ、カウント値が「所定数」以上であるか否かを判定してもよい。この方法は、判定対象期間において、現在位置からあまり遠くに移動していない場合は、異常状態から除外したい場合に適している。
以上のように第1実施形態によれば、制御装置(制御部)13において判定部13Bは、判定対象期間内の異なる複数の測定タイミングでそれぞれ測定された、通信端末10の複数の位置に基づく移動軌跡パターンと、パターン条件とに基づいて、通信端末10を携帯する監視対象者の状態を判定する。
この制御装置(制御部)13の構成により、移動軌跡パターンがパターン条件を満たすか否かによって監視対象者の状態を判定できるので、監視対象者が初めて訪れる場所であっても監視対象者の状態を検知することができる。すなわち、監視対象者の存在位置に関わらず、監視対象者の状態を検知することができる。
具体的には、制御装置(制御部)13において判定部13Bは、判定対象期間内の異なる複数の測定タイミングでそれぞれ測定された、通信端末10の複数の位置に基づく移動軌跡パターンと、異常パターン条件とに基づいて、通信端末10を携帯する監視対象者が異常状態にあるか否かを判定する。
この制御装置(制御部)13の構成により、監視対象者の存在位置に関わらず、監視対象者の異常状態を検知することができる。例えば、監視対象者が初めて訪れる場所等のように生活圏から外れる場所においても、異常状態を検知することができる。
また、制御装置(制御部)13において算出部13Aは、判定対象期間の各測定位置と通信端末10の現在位置との各距離を、移動軌跡パターンとして算出する。そして、異常パターン条件は、算出部13Aによって判定対象期間の各測定位置に関して算出された判定対象期間内の複数の距離のうちで第1閾値以下である距離の個数が所定数以上である、ことである。そして、判定部13Bは、算出された移動軌跡パターンが異常パターン条件を満たす場合、通信端末10を携帯する監視対象者が異常状態にあると判定する。第1実施形態において、移動軌跡パターンは、ある基準となる時点(測定時点)における通信端末10の位置(例えば、現在位置、最新の位置など)と、他の時点における位置との距離に関する変化のパターンである、ともいえる。また、パターン条件は、所定の期間内にある複数の時点それぞれに対応する距離のうち、その値が第1閾値以下である距離の個数が所定数以上、という条件であるともいえる。
この制御装置(制御部)13の構成により、監視対象者が道に迷って同じような場所を繰り返し通過する異常状態を確実に検知することができる。
<変形例>
第1実施形態の制御装置(制御部)13に対して次のような変形を施すこともできる。
<1>以上の説明では、パターン条件を1つ用いることを前提に説明を行ったが、これに限定されるものではなく、パターン条件を複数用いてもよい。この場合、判定部13Bは、移動軌跡パターンが複数のパターン条件のうちのいずれのパターン条件にマッチ(適合)するかについて判定する。そして、通知部13Cは、判定部13Bによって移動軌跡パターンにマッチすると判定されたパターン条件に応じた種別の通知信号を出力してもよい。
例えば、判定部13Bにおいて、第1所定数及び該第1所定数より大きい第2所定数を記憶しておく。そして、判定部13Bは、第1所定数未満の第1範囲、第1所定数以上第2所定数未満の第2範囲、及び、第2所定数以上の第3範囲のうちで、カウント値が入っている範囲を判定(特定)する。この場合、カウント値が第1範囲に入っていることが第1パターン条件、第2範囲に入っていることが第2パターン条件、第3範囲に入っていることが第3パターン条件である。そして、通知部13Cは、判定部13Bによって特定された範囲に応じた、通知信号を出力する。この通知信号は、例えば、特定された範囲(つまり、満たされパターン条件)に応じた緊急度を示す通知信号であってもよいし、特定された範囲に応じて異なる通知対象者に向けた通知信号であってもよい。
また、複数のパターン条件として、第1実施形態のパターン条件に加えて、後述する第2実施形態以降のパターン条件が用いられてもよい。
<2>上記の「第1閾値」及び「所定数」は、時刻、気温、気圧、場所の状況等(市街地か山間部かなど)に応じて、調整されてもよい。時刻が夜間で気温が低く且つ気圧も低い場合には、「第1閾値」がデフォルト値よりも大きな値に調整され、「所定数」がデフォルト値よりも小さな値に調整されてもよい。これにより、ユーザの状態が通知すべき状態であると判定され易くなる。
<3>上記の「第1閾値」及び「所定数」は、通信端末10の移動速度(つまり、監視対象者の移動速度)に応じて、調整されてもよい。例えば、通信端末10の移動速度が小さくなっていく傾向にある場合、「第1閾値」がデフォルト値よりも大きな値に調整され、「所定数」がデフォルト値よりも小さな値に調整されてもよい。これにより、通信端末10の移動速度が小さくなっていく傾向にある場合には、ユーザの疲労が蓄積していると考えられ、このような場合に、ユーザの状態が通知すべき状態であると判定され易くすることができる。
また、移動速度のばらつき度合いを示す値(例えば、分散)を算出し、この値に応じて、「第1閾値」及び「所定数」が調整されてもよい。例えば、移動速度のばらつき度合いを示す値が所定値よりも大きい場合、「第1閾値」がデフォルト値よりも大きな値に調整され、「所定数」がデフォルト値よりも小さな値に調整されてもよい。また、移動速度のばらつき度合いを示す値が大きいほど、「第1閾値」を大きな値に調整したり、「所定数」を小さな値に調整してもよい。この結果、異常状態がより通知され易くなる。移動速度のばらつき度合いが大きいほど、ユーザの行動がより不規則であり、より混乱した状況にある可能性が高いと考えられる。このため、移動速度のばらつき度合いが大きい場合には、このように、異常状態がより通知され易くすることが望ましい。
<4>上記の「第1閾値」及び「所定数」は、距離L[i]の時系列変化に応じて、調整されてもよい。例えば、距離L[i]が極小となる時間間隔(周期)に応じて、調整されてもよい。具体的には、距離L[i]の各2つの極小点に対応する時刻の間隔(つまり、極小が現れる周期)のばらつき度合いを示す値(例えば、分散)を算出し、この値に応じて、「第1閾値」及び「所定数」を調整する。例えば、上記間隔のばらつき度合いを示す値が所定値よりも大きい場合、「第1閾値」がデフォルト値よりも大きな値に調整され、「所定数」がデフォルト値よりも小さな値に調整されてもよい。また、上記間隔のばらつき度合いを示す値が大きいほど、「第1閾値」を大きな値に調整したり、「所定数」を小さな値に調整してもよい。この結果、異常状態がより通知され易くなる。上記間隔のばらつき度合いが大きいほど、ユーザの行動がより不規則であり、より混乱した状況にある可能性が高いと考えられる。このため、上記間隔のばらつき度合いが大きい場合には、このように、異常状態がより通知され易くすることが望ましい。
また、距離L[i]の最大値と最小値との差に応じて、「第1閾値」及び「所定数」を調整してもよい。例えば、最大値と最小値との差が大きい場合(所定値よりも大きい場合)、ユーザは広範囲に移動しており、疲労が蓄積していると考えられるので、「第1閾値」を大きな値に調整したり、「所定数」を小さな値に調整して、異常状態がより通知され易くする。
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態と異なり、異常パターン条件として、移動軌跡パターンが所定の大きさ以上の円形と見なされる「円形パターン条件」が用いられる。なお、第2実施形態の制御部(制御装置)及び通信端末の基本構成は、第1実施形態の制御部(制御装置)13及び通信端末10と同じなので、図1を参照して説明する。
<制御装置の構成例>
第2実施形態の制御部(制御装置)13において算出部13Aは、通信端末10の各測定位置と通信端末10の現在位置との各距離を算出する。さらに、算出部13Aは、測定タイミングが最も近い各2つの測定位置を用いて、各測定タイミングにおける通信端末10の移動方位(つまり、移動ベクトル)を算出する。すなわち、算出部13Aは、n−1番目の測定位置を始点としn番目の測定位置を終点とするベクトルを、n番目の測定タイミングにおける移動ベクトルとして算出する。
第2実施形態の判定部13Bは、通信端末10の現時位置(最新位置)との距離が「第2閾値」以下である測定位置の測定タイミングと現在との間を判定対象期間として設定する。すなわち、通信端末10の現時位置との距離が「第2閾値」以下である測定位置から現在位置までの複数の位置が、「判定対象範囲」として設定される。「第2閾値」は、上記の第1閾値と同様に、測定位置と現在位置とが十分に近づいたと見なせる距離値である。そして、判定部13Bは、移動軌跡パターンが異常パターン条件を満たすか否かを判定する。ここで、第2実施形態の異常パターン条件は、移動軌跡パターンが所定の大きさ以上の概略円形と見なされる「円形パターン条件」である。このような円形パターン条件を異常パターン条件としている理由は、監視対象者がリングワンダリングの状態にある可能性が高いと考えられるためである。リングワンダリングとは、人が視界の悪い場所で彷徨う場合、無意識のうちに円を描いて元の位置に戻ってしまう現象である。円形の大きさが小さい場合は、監視対象者自身が、同じ場所を繰り返し通過していることを自覚し易いが、円形の大きさが大きい場合には、そのような自覚が難しいため、異常状態として判定するニーズはより高い。
なお、第2実施形態の通知部13Cは、第1実施形態と同様に処理を行うように構成されている。
<制御装置の動作例>
以上の構成を有する第2実施形態の制御装置(制御部)13の処理動作の一例について説明する。図4は、第2実施形態の制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
第2実施形態の制御装置(制御部)13において算出部13Aは、記憶部12に記憶された測定位置のデータを用いて、通信端末10の各測定位置と通信端末10の現在位置との各距離を算出すると共に、測定タイミングが時間的に隣接する各2つの測定位置を用いて、各測定タイミングにおける通信端末10の移動方位(つまり、移動ベクトル)を算出する(ステップS21)。記憶部12には、現在から遡って、少なくとも所定期間の測定位置のデータが格納されている。この所定期間を処理対象期間と称する。記憶部12には、逐次新しいデータが追加されるので、処理対象期間を外れたデータは、削除されてもよい。
例えば、処理対象期間における、最も古い測定位置を始点とし、2番目に古い測定位置を終点として、1番目の移動ベクトルを算出(作成)する。同様に、2番目に古い測定位置を始点とし、3番目に古い測定位置を終点として、2番目の移動ベクトルを算出(作成)する、等の処理を繰り返して、全ての移動ベクトルを算出する。以下の説明においては、処理対象期間にn個の測定位置(測定点)が存在し、n−1個の移動ベクトルが存在するものとする。また、処理対象期間における最も古い測定位置をP1とし、2番目に古い測定位置をP2とし、2番目に新しい測定位置をP(n−1)とし、最も新しい測定位置(現在位置)をPnとする。また、P1からP2に向かう移動ベクトルをV1、P2からP3に向かうベクトルをV2、P(n−1)からPnに向かうベクトルをV(n−1)とする。また、V(n−1)を現在の移動ベクトル、または最新の移動ベクトルと称し、それ以外の移動ベクトルを過去の移動ベクトルと称する。
次いでステップS22において、第2実施形態の判定部13Bは、算出部13Aによって算出された距離(現在位置と過去の位置との距離)に「第2閾値」以下のものが存在するか否かを判定する。存在する場合、「第2閾値」以下である測定位置を「接近位置」として特定し、以下の処理で用いる。なお、「第2閾値」以下である距離(測定位置)が複数ある場合は、そのうちの最も短い距離に対応する測定位置を1つ選択して接近位置とする。すなわち、ステップS22において、判定部13Bは、現在位置との距離が「第2閾値」以下である接近位置を特定できたか否かを判定する。この接近位置から現在位置までが、「判定対象範囲」となり、接近位置の測定タイミングと現在との間が判定対象期間となる。
上記の条件を満たす接近位置を特定できた場合(ステップS22YES)、ステップS23に進む。ステップS23において、判定部13Bは、最新の移動ベクトルと、ステップS22で特定された接近位置に対応する移動ベクトルとがなす角度を算出する。例えば、2番目に古い測定位置P2が接近位置である場合、P2に対応する移動ベクトル(P2を始点とする移動ベクトル)は、V2である。この場合、最新の移動ベクトルV(n−1)とV2とのなす角度θ2を算出する。そして判定部13Bは、角度θ2が、所定の範囲に含まれるか否かを判定する。角度を符号なしで算出する場合は、所定の範囲は、例えば、「30度以下(0度以上30度以下)」となる。また、V(n−1)の向きを基準として、右側に回転する角度をプラス、左側に回転する角度をマイナスなどと定義した符号付きの角度を算出する場合は、この所定の範囲は、例えば、「−30度以上、+30度以下」となる。
すなわち、ステップS23において、判定部13Bは、現在位置に対応する移動ベクトル(最新の移動ベクトル)と、接近位置に対応する移動ベクトルとのなす角度を算出し、その角度が所定の範囲に含まれるか否かを判定する。ここで、所定の範囲は、0度を中心とした比較的狭い範囲(0度に近い範囲)である。すなわち、判定対象期間の移動方位の変化量が所定の範囲に含まれるか否かを判定する。この処理は、判定部13Bが、判定対象期間内に通信端末10がほぼ一周したか否かを判定することに相当する。通信端末10がほぼ一周した場合、現在位置と距離が近い接近位置が存在し、かつ、現在位置に対応する移動ベクトルと、接近位置に対応する移動ベクトルの向きがほぼ同じになる。一方、算出部13Aで算出された距離に「第2閾値」以下のものが存在せず、接近位置が特定できない場合(ステップS22NO)、処理ステップは、ステップS26に進む。ステップS2Xにおいて、制御部13は、処理を所定の時間休止する「スリープ」処理を行う。この所定の時間は、測定位置が更新されるのに必要な時間に基づいて設定すればよい。ステップS26からステップS21へ戻る。すなわち、算出部13Aによる距離及び移動ベクトルの算出処理が引き続き行われる。
次に、現在位置に対応するベクトルと、接近位置に対応するベクトルとの角度が、所定の範囲に含まれると判定された場合(ステップS23YES)、ステップS24に進む。ステップS24において、判定部13Bは、判定対象範囲に含まれる測定位置を対象にして、現在位置との距離が最も大きい測定位置である最遠位置を特定する。そして最遠位置との距離が「第3閾値」以上であるか否かを判定する(ステップS24)。上記のステップS23及びステップS24において、円形パターン条件を用いた判定が行われている。ステップS24の条件判定を満たす場合、監視対象者は、ある程度大きな円形パターンを描いて移動しているため、本人が気付かずに、リングワンダリングの状態に陥っている可能性が高いと判定できる。一方、現在位置に対応するベクトルと、接近位置に対応するベクトルとの角度が、所定の範囲に含まれないと判定された場合(ステップS23NO)、処理ステップは、ステップS26に進み、その次にステップS21へ戻る。
上記の最遠位置と現在位置との距離が「第3閾値」以上である場合(ステップS24YES)、通知部13Cは、緊急事態通知信号を生成して送信部14へ出力する(ステップS25)。これにより、緊急事態通知信号は、送信部14を介して通知対象者の端末に向けて送信される。
一方、上記の最遠位置と現在位置との距離が「第3閾値」未満である場合(ステップS24NO)、処理ステップは、ステップS26に進み、その次にステップS21へ戻る。
以上のように第2実施形態によれば、制御装置(制御部)13において判定部13Bは、通信端末10の現時位置との距離が「第2閾値」以下である測定位置(接近位置)の測定タイミングと現在との間を判定対象期間とし、判定対象期間の移動軌跡パターンが異常パターン条件を満たすか否かを判定する。該異常パターン条件は、移動軌跡パターンが所定の大きさ以上の概略円形と見なされる「円形パターン条件」である。ここで、「所定の大きさ以上」であることは、最遠位置と現在位置との距離が「第3閾値」以上であることにより判定され、この距離が概略円形の直径に相当する。また、「概略円形と見なされる」ことは、現在位置に対応するベクトルと、接近位置に対応するベクトルとの角度が、「所定の範囲に含まれる(所定値以下である)」ことにより判定される。従って、第2実施形態の「円形パターン条件」は、判定対象期間の移動方位の変化量が所定の範囲に含まれ、且つ、判定対象期間に対応する測定位置の中で、現在位置から最も離れた測定位置と現在位置との距離が「第3閾値」以上である、という条件ある。
この第2実施形態の制御装置(制御部)13の構成により、監視対象者がリングワンダリングしている異常状態を確実に検知することができる。
<変形例>
第2実施形態の制御装置(制御部)13に対して次のような変形を施すこともできる。
<1>以上の説明では、「円形パターン条件」において、「判定対象期間の移動軌跡パターンに含まれ且つ現在位置から最も離れた測定位置と現在位置との距離が「第3閾値」以上であること」を条件の一部としたが、これに限定されるものではなく、この代わりに、「判定対象期間における通信端末10の移動距離が所定の閾値以上であること」が用いられてもよい。「判定対象期間内の移動距離」としては、判定対象期間内の測定タイミングが最も近い各2つの測定位置間の距離をすべて足し合わせた値(合計値)を用いることができる。
<第3実施形態>
第3実施形態では、第2実施形態と同様に、異常パターン条件として、移動軌跡パターンが所定の大きさ以上の円形と見なされる「円形パターン条件」が用いられる。ただし、第3実施形態の円形パターン条件は、第2実施形態のものと異なっている。なお、第3実施形態の制御部(制御装置)及び通信端末の基本構成は、第1実施形態の制御部(制御装置)13及び通信端末10と同じなので、図1を参照して説明する。
<制御装置の構成例>
第3実施形態の制御部(制御装置)13において算出部13Aは、記憶部12から取得された複数の測定位置について、測定タイミングが隣接する各2つの測定位置間の距離(つまり、n−1番目の測定位置とn番目の測定位置との距離)を算出する。
また、算出部13Aは、記憶部12から取得された各測定位置と通信端末10の現在位置との距離をそれぞれ算出する。
さらに、算出部13Aは、各測定位置(n番目の測定位置)に対して、n番目の測定位置とその直前のn−1番目の測定位置とを結ぶ方向に対し直交する方向に位置し且つn番目の測定位置から所定距離(後述する図6(A)のr1に対応)だけ離れた2点である右境界点(PR)及び左境界点(PL)を算出(記録)する。ここで、n−1番目の測定位置からn番目の測定位置へ向かう方向(つまり、進行方向)に対して右側が右境界点であり左側が左境界点である。右境界点及び左境界点は、通信端末10の移動軌跡における進行方向の曲がり度合いを判定することに用いられることになるため、「右旋回判定点」及び「左旋回判定点」と呼ぶこともできる。
また、算出部13Aは、判定対象期間が設定されると、判定対象期間における通信端末10の移動距離を算出する。「判定対象期間内の移動距離」としては、判定対象期間内の測定タイミングが時間的に隣接する各2つの測定位置間の距離をすべて足し合わせた値(合計値)を用いることができる。
第3実施形態の判定部13Bは、通信端末10の現時位置との距離が「第4閾値」以下である測定位置の測定タイミングと現在との間を判定対象期間として設定する。すなわち、通信端末10の現時位置との距離が「第4閾値」以下である測定位置から現在位置までの複数の位置が、「判定対象範囲」として設定される。「第4閾値」は、上記の第1閾値と同様に、測定位置と現在位置とが十分に近づいたと見なせる距離値である。
そして、判定部13Bは、判定対象期間の移動軌跡パターンが異常パターン条件(ここでは、円形パターン条件)を満たすか否かを判定する。ここで、第3実施形態の円形パターン条件は、判定対象期間における前記判定対象端末の移動距離が「第5閾値」以上であり、且つ、判定対象期間内の各測定位置との間の最短距離が「第6閾値」以上である左境界点が1つ以上存在し、且つ各測定位置との間の最短距離が「第6閾値」以上である右境界点が1つ以上存在する、という条件である。上記「第6閾値」は、後述する図7の半径r2に対応する。ここで、上記のr1とr2とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。
換言すれば、第3実施形態の円形パターン条件では、判定対象期間内にN(Nは2以上の自然数)個の測定位置が含まれる場合、判定対象期間内のK(K=1,…,N)番目の測定位置に対して、K−1番目の測定位置を始点としK番目の測定位置を終点とするベクトル(方向)に対し直交する方向に位置し且つK番目の測定位置から所定距離だけ離れた2点である第1点(PR)及び第2点(PL)がすべてのKに関して設定される。そして、第3実施形態の円形パターン条件は、判定対象期間における前記判定対象端末の移動距離が「第5閾値」以上であり、且つ、M(MはN以下のいずれかの自然数)番目の測定位置に設定された右境界点及び左境界点がM番目以外のいずれの測定位置を基準とした「第6閾値」を半径とする範囲内にも含まれない、M番目の測定位置が存在する、ことである。
なお、第3実施形態の通知部13Cは、第1実施形態と同様に処理を行うように構成されている。
<制御装置の動作例>
以上の構成を有する第3実施形態の制御装置(制御部)13の処理動作の一例について説明する。図5は、第3実施形態の制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。図6は、第3実施形態の制御装置の処理動作の説明に供する図である。図6(A)に示す例では、記憶部12にはP0〜P9の10個の測定位置が記憶されているものとする。
まず、判定部13Bは、順番nを1に設定する(ステップS31)。なお、記憶部12に記憶されている最も古い測定位置P0については、上述のベクトルが作成できないため、nを1に設定して、P1から処理を開始する。
算出部13Aは、1(=n)番目の測定位置を記憶部12から取得する(ステップS32)。
算出部13Aは、1(=n)番目の測定位置に対して、右境界点及び左境界点を設定する(ステップS33)。具体的には、図6(A)に示すように、算出部13Aは、測定位置P0を始点とし次の測定位置P1を終点とするベクトルV1を設定する。そして、算出部13Aは、ベクトルV1に直交する方向に位置し且つ測定位置P1から所定距離r1だけ離れた2点である右境界点及び左境界点を設定する。算出部13Aは、このような円形パターン条件の判定に用いられる点を、各測定位置について設定する。
nの値が小さいときには、後述するステップS34における判定処理でNOと判定される可能性が高く、処理ステップはステップS35へ進み、nの値がインクリメントされる(ステップS35)。そして、処理ステップはステップS32へ戻る。すなわち、記憶部12から順次取得される測定位置に対して、右境界点及び左境界点が設定される。
判定部13Bは、n番目の測定位置が過去のいずれかの測定位置から第4閾値以内に存在するか否かを判定する(ステップS34)。すなわち、判定部13Bは、n番目の測定位置と過去のいずれかの測定位置との距離(つまり、直線距離)が「第4閾値」以下であるか否かを判定している。図6(A)の例では、測定位置P9(現在位置)が過去の測定位置P2に近づいており、ステップS34の条件が満たされている。
n番目の測定位置が過去のいずれかの測定位置から第4閾値以内に存在する場合(ステップS34YES)、判定部13Bは、判定対象期間における通信端末10の移動距離が「第5閾値」以上であるか否かを判定する(ステップS36)。ここで、判定部13Bは、ステップS34で近づいたと判定された2つの測定位置にそれぞれ対応する2つの測定タイミング間を、判定対象期間としている。すなわち、図6(A)の例では、測定位置P2から測定位置P9までのすべての測定位置が、判定対象期間(つまり、判定対象範囲)とされている。
判定対象期間における通信端末10の移動距離が「第5閾値」以上である場合(ステップS36YES)、判定部13Bは、判定対象期間内の測定位置に対して設定された右境界点及び左境界点に関して、判定対象期間内のいずれかの測定位置からの距離が「第6閾値」未満である右境界点及び左境界点をすべて削除する(ステップS37)。図6(A)の例では、PL4、PL2がP5、P9にそれぞれ近いので削除されることになる。図6(A)では、PL2、PL4が黒丸で示されている。一方、判定対象期間における通信端末10の移動距離が「第5閾値」未満である場合(ステップS36NO)、処理ステップは、ステップS35へ進む。
判定部13Bは、判定対象期間内の測定位置に対して設定された右境界点及び左境界点に関して、ステップS37で削除されることなく残っている右境界点及び左境界点がそれぞれ1つ以上存在するか否かを判定する(ステップS38)。
判定対象期間内の測定位置に対して設定された右境界点及び左境界点に関して、ステップS37で削除されることなく残っている右境界点及び左境界点がそれぞれ1つ以上存在する場合(ステップS38YES)、通知部13Cは、緊急事態通知信号を生成して送信部14へ出力する(ステップS39)。すなわち、判定対象期間内の測定位置に対して設定された右境界点及び左境界点に関して、1つ以上の右境界点及び1つ以上の左境界点が残っていれば、半径r2の円よりも大きい移動軌跡を描いたと判定され、この場合には、緊急事態通知信号が送出されることとなる。
一方、判定対象期間内の測定位置に対して設定された右境界点及び左境界点の右境界点及び左境界点の一方がすべて削除されて残らない場合の一例を図6(B)に示す。本図に示す例では、P1〜P5の5個の測定位置が判定対象範囲であり、それらに対応する左境界点がPL1〜PL5である。判定対象範囲の左境界点PL1〜PL5は、全て削除されるため、黒丸で示されている。本図に示す例の場合、ステップS38の判定は「NO」となり、ステップS40に進む。すなわち、判定対象期間内の測定位置に対して設定された右境界点及び左境界点に関して、右境界点及び左境界点の一方がすべて削除された場合、半径r2(第6閾値)の円よりも小さい移動軌跡を描いたと判定され、この場合には、緊急事態通知信号は送出されない。ここで、上述の通り、所定距離r1と半径r2とは同じ値であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、r2をr1より少し小さな値にすると、移動軌跡のゆらぎがある程度大きくても、エマージェンシー対象の移動軌跡パターンとして判定できる。
ステップS40において、制御部13は、処理を所定の時間休止する「スリープ」処理を行う。この所定の時間は、測定位置が更新されるのに必要な時間に基づいて設定すればよい。そして、ステップS40からステップS31に戻り、新たな測定位置データを用いて、処理を繰り返す。
図7は、図6(A)と異なる移動軌跡パターンを示す図である。図7では、監視対象者がP0からスタートしてP19まで移動した時にP3に近付いたケースが示されている。図7の例では、P3とP19との直線距離が第4閾値以下(例えば、5m以下)となっている。さらに、判定対象期間内のP3からP19までの17個の測定位置のそれぞれから半径r2の円の内側に存在する右境界点及び左境界点は、すべて削除される。図7の例では、P9やP14の近くに左境界点が存在し、これらの左境界点(図7では、黒丸で示されている)は削除されることになる。また、P11やP12の近くに右境界点が存在し、これらの右境界点(図7では、黒丸で示されている)は削除されることになる。
上述の処理は、PR3からPR19までの17個のPRを対象にして、あるPRから処理対象の各P(P3からP19)までの距離を算出し、そのPRからPまでの最短距離が半径r2以上である場合に、有効なPRであると判定しているといえる。同様に、あるPLから処理対象の各P(P3からP19)までの距離を算出し、そのPLからPまでの最短距離が半径r2以上である場合に、有効なPLであると判定しているといえる。そして、有効なPRが1つ以上存在し、かつ有効なPLが1つ以上存在する場合に、エマージェンシー対象の移動軌跡パターンであると判定しているといえる。
以上のように第3実施形態によれば、制御装置(制御部)13において判定部13Bは、通信端末10の現時位置との距離が「第4閾値」以下である測定位置の測定タイミングと現在との間を判定対象期間とし、判定対象期間の移動軌跡パターンが異常パターン条件(ここでは、円形パターン条件)を満たすか否かを判定する。該円形パターン条件は、判定対象期間における通信端末10の移動距離が第5閾値以上であり、且つ、判定対象期間内の各測定位置との間の最短距離が第6閾値以上である左境界点が1つ以上存在し且つ各測定位置との間の最短距離が前記第6閾値以上である右境界点が1つ以上存在する、という条件である。そして、左境界点は、判定対象期間内の各測定位置それぞれについて算出された点であり、2つの隣接する測定位置間の進行方向に直交する方向に位置し且つ進行方向に対して測定位置の左側に所定距離だけ離れた点である。右境界点は、測定位置を基準にして、左境界点と対称になる点である。
この制御装置(制御部)13の構成により、移動軌跡における緩やかなカーブ上に測定位置が存在することを円形パターン条件として、監視対象者がリングワンダリングしている異常状態を確実に検知することができる。
<変形例>
以上の説明では、半径r2はすべての測定位置について一定の値、つまり半径r2は固定であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、条件によって可変にしてもよい。例えば、スタート地点からの距離、又は、スタートしてからの経過時間によって、可変させてもよい。例えば、スタート直後は、ユーザの体力もあり、道に迷う可能性が少ないので、r2を比較的大きな値とし、スタートしてからの時間が経過するにつれてr2を小さくし、経路の小さなゆらぎを許容してエマージェンシー対象と判定するようにしてもよい。
<第4実施形態>
第4実施形態では、第2実施形態及び第3実施形態と同様に、異常パターン条件として、移動軌跡パターンが所定の大きさ以上の概略円形と見なされる「円形パターン条件」が用いられる。ただし、第4実施形態の円形パターン条件は、第2実施形態及び第3実施形態のものと異なっている。なお、第4実施形態の制御部(制御装置)及び通信端末の基本構成は、第1実施形態の制御部(制御装置)13及び通信端末10と同じなので、図1を参照して説明する。
第4実施形態の算出部13Aは、判定対象期間に含まれる複数の測定位置のうちの前後に隣接する各2つの測定位置について一方の測定位置を始点とし前記一方の測定位置よりも測定タイミングが後である他方の測定位置を終点とする移動ベクトルをそれぞれ算出する。図8の例では、まず、測定位置P0を始点とし測定位置P1を終点とする移動ベクトルが算出される。そして、移動ベクトルの始点が、測定位置P1からP8まで順々に切り替えられて、隣接する各2つの測定位置についての移動ベクトルが算出される。
そして、算出部13Aは、算出された複数の移動ベクトルのうちで隣接する各2つの移動ベクトルのなす角度である符号付き角度をそれぞれ算出する。図8の例では、測定位置P0を始点とし測定位置P1を終点とする移動ベクトルに対する、測定位置P1を始点とし測定位置P2を終点とする移動ベクトルのなす角度が、−θ1となっている。また、測定位置P1を始点とし測定位置P2を終点とする移動ベクトルに対する、測定位置P2を始点とし測定位置P3を終点とする移動ベクトルのなす角度が、−θ2となっている。ここでは、時間的に1つ前の移動ベクトルと、1つ後の移動ベクトルがなす角度を算出しており、1つ前の移動ベクトルを基準にして、それより左側に方向を変えた場合に負(マイナス)、それより右側に方向を変えた場合に正(プラス)となる符号を付けている。θ1、θ2は、0以上の数値である。なお、符号の正負の取り方は任意である。
第4実施形態の判定部13Bは、通信端末10の現時位置との距離が「第7閾値」以下である測定位置の測定タイミングと現在との間を判定対象期間として設定する。すなわち、通信端末10の現時位置との距離が「第7閾値」以下である測定位置から現在位置までの複数の測定位置が、「判定対象範囲」として設定される。図8の例では、測定位置P0と測定位置P9とが近くなっており、測定位置P0から測定位置P9までのすべての測定位置が、判定対象期間(つまり、判定対象範囲)とされている。
そして、判定部13Bは、判定対象期間の移動軌跡パターンが異常パターン条件(ここでは、円形パターン条件)を満たすか否かを判定する。具体的には、判定対象期間に含まれる複数の測定位置のうちの前後に隣接する各2つの測定位置について一方の測定位置を始点とし該一方の測定位置よりも測定タイミングが後である他方の測定位置を終点とする移動ベクトルをそれぞれ算出し、算出された複数の移動ベクトルのうちで隣接する各2つの移動ベクトルのなす角度である符号付き角度をそれぞれ算出し、算出された複数の符号付き角度の合計値を算出する。そして、判定対象期間における通信端末10の移動距離が「第8閾値」以上であり、且つ、算出した合計値が「第1角度範囲内」に収まること、を第4実施形態の円形パターン条件とする。ここで、「第1角度範囲」は、移動方位が一周したと見なすことができる範囲であって、例えば、「330°から390°、および、−330°から−390°」である。あるいは、合計値の絶対値を算出した上で、「第1角度範囲」を「330°から390°」にしてもよい。これにより、移動軌跡の微妙なゆらぎを許容することができる。
ここで、図9に移動軌跡の別の例を示す。図9の例では、測定位置P0を始点とし測定位置P1を終点とする移動ベクトルに対する、測定位置P1を始点とし測定位置P2を終点とする移動ベクトルのなす角度が、−θ1となっている。これに対して、測定位置P1を始点とし測定位置P2を終点とする移動ベクトルに対する、測定位置P2を始点とし測定位置P3を終点とする移動ベクトルのなす角度が、+θ2となっている。移動軌跡の全体に亘って移動ベクトルがこのような挙動を示す場合に符号付き角度の合計の絶対値を算出すると、プラスとマイナスとで打ち消し合って、合計の絶対値は大きな値にならないため360°に近い値を取らない。このため、上記の第4実施形態の円形パターン条件は、移動軌跡の全体に亘って移動ベクトルがこのような挙動を示すケースを排除できている。一方、移動軌跡の一部においてのみ移動ベクトルがこのような挙動を示している場合には、判定対象期間における符号付き角度の合計値は大きな値を取ることができるため360°に近い値を取り得る。従って、上記の第4実施形態の円形パターン条件は、移動軌跡の微妙なゆらぎを許容することができている。
以上のような第4実施形態によれば、制御装置(制御部)13において判定部13Bは、通信端末10の現時位置との距離が「第7閾値」以下である測定位置の測定タイミングと現在との間を判定対象期間とし、判定対象期間の移動軌跡パターンが異常パターン条件(ここでは、円形パターン条件)を満たすか否かを判定する。該円形パターン条件は、上述したとおりである。
この制御装置(制御部)13の構成により、所定の方向に曲がりながら大きな円を描くように移動することを円形パターン条件として、監視対象者がリングワンダリングしている異常状態を確実に検知することができる。さらに、「算出された複数の符号付き角度の合計値が第1角度範囲内に収まること」を円形パターン条件の一部としているので、移動軌跡の全体に亘って蛇行しているようなケースを確実に排除できる一方で、移動軌跡の一部においてのみ蛇行しているようなケースを円形パターンとして検出することが可能となる。すなわち、上記の円形パターン条件は、移動軌跡の微妙なゆらぎを許容することができている。
<変形例>
第4実施形態の制御装置(制御部)13に対して次のような変形を施すこともできる。
<1>第4実施形態の円形パターン条件は、合計値の算出対象を、「算出された複数の符号付き角度のうちで絶対値が第2角度範囲内に収まる符号付き角度」としてもよい。すなわち、判定対象期間に含まれる複数の測定位置のうちの前後に隣接する各2つの測定位置について一方の測定位置を始点とし該一方の測定位置よりも測定タイミングが後である他方の測定位置を終点とする移動ベクトルをそれぞれ算出し、算出された複数の移動ベクトルのうちで隣接する各2つの移動ベクトルのなす角度である符号付き角度をそれぞれ算出し、算出された複数の符号付き角度のうちで絶対値が「第2角度範囲」内に収まる符号付き角度の合計値を算出する。そして、判定対象期間における通信端末10の移動距離が「第8閾値」以上であり、且つ、算出した合計値が「第1角度範囲内」に収まることを第4実施形態の<変形例1>の円形パターン条件とする。ここで「第2角度範囲」は、例えば、−40°から20°の範囲であり、移動軌跡パターン上の1カ所で極端に方向を変えない(つまり、Uターンしない)という制限として作用する。
<2>以上の説明では、「円形パターン条件」において「判定対象期間における通信端末10の移動距離が第8閾値以上であること」を条件の一部としたが、これに限定されるものではなく、この代わりに、「判定対象期間の移動軌跡パターンに含まれ且つ現在位置から最も離れた測定位置と現在位置との距離が所定の閾値以上であること」が用いられてもよい。例えば、図8の例では、距離r3が所定の閾値に対応し、現在位置P9から最も離れた測定位置P4と現在位置P9との距離は距離r3よりも大きくなっている。
<他の実施形態>
<1>第1実施形態から第4実施形態において「異常パターン条件」として説明した条件は、利用状況によっては、逆に、「正常パターン条件」として用いてもよい。この場合には、「正常パターン条件」が満たされない場合にユーザの状態が通知すべき状態であると判定されることになる。
<2>図10は、通信端末のハードウェア構成例を示す図である。図10において、通信装置100は、GPS信号受信回路101と、メモリ102と、プロセッサ103と、通信回路104とを有する。
第1実施形態から第4実施形態で説明した通信端末10のGPS信号受信部11、記憶部12、及び送信部14は、それぞれ、GPS信号受信回路101、メモリ102、及び通信回路104によって実現される。また、通信端末10の制御部(制御装置)13は、プロセッサ103がメモリ102に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現される。
なお、第1実施形態から第4実施形態において、GPSを用いて通信端末10の位置を取得する例を説明したが、他の方法を用いてもよい。例えば、通信端末10が利用する携帯電話基地局や無線LANアクセスポイントの情報を用いて、通信端末10の位置を取得してもよい。すなわち、GPSはあくまでも位置情報を取得する手段の一例である。通信端末10は、必ずしもGPS信号受信部11やGPS信号受信回路101を備える必要はなく、位置情報を取得できる手段を備えていればよい。従って、GPS信号受信部11は、位置情報取得部ともいえる。また、GPS信号受信回路101は、位置情報取得回路であるともいえる。
<3>第1実施形態から第4実施形態では、制御装置(制御部)13が通信端末10に搭載されることを前提に説明を行ったが、これに限定されるものではなく、制御装置(制御部)13は、判定対象端末である通信端末10と異なる装置(例えば、サーバ)に搭載されてもよい。その場合、判定対象装置(判定対象端末)の位置情報を制御装置(サーバ等)が取得できればよい。判定対象装置と制御装置は一体であっても、別体であってもよい。また、複数の判定対象装置を制御装置が管理し、判定対象装置それぞれについて、通知信号を出力してもよい。
<4>第1実施形態から第4実施形態では、監視対象者が通信端末10を携帯する例を用いて説明を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、自動車、二輪車、船舶などの移動体が判定対象装置(判定対象端末)であってもよく、さらに移動体に制御装置(制御部)が搭載されていてもよい。すなわち、判定対象装置(判定対象端末)は、人間が携帯しなくてもよく、車載装置に組み込まれている等、移動可能な装置であればよい。
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。