前記課題を解決するためになされた第1の発明は、各人が所持する端末装置と管理装置との間で情報を送受信して、各人の周囲の混雑度を測定する混雑測定システムであって、前記端末装置は、各人の歩行速度を取得する歩行速度取得部と、各人の歩行ピッチを取得する歩行ピッチ取得部と、前記歩行速度に基づいて、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態を判定し、前記第1の状態と判定されたとき、前記歩行速度から第1の混雑度情報を取得する第1の混雑度判定部と、前記第1の状態と判定されたとき、前記第1の混雑度情報を前記管理装置に送信し、前記第2の状態と判定されたとき、前記歩行ピッチを前記管理装置に送信する送信部と、を備え、前記管理装置は、前記端末装置から前記歩行ピッチを受信したとき、前記歩行ピッチの分散から第2の混雑度情報を取得する第2の混雑度判定部と、前記端末装置から受信した前記第1の混雑度情報および前記第2の混雑度情報に基づいて、各人の周囲の混雑状況に関する情報を生成する混雑情報生成部と、を備える構成とする。
また、第2の発明は、各人が所持する端末装置と管理装置との間で情報を送受信して、各人の周囲の混雑度を測定する混雑測定システムであって、前記端末装置は、各人の歩行速度を取得する歩行速度取得部と、各人の歩行の加速度を取得する加速度取得部と、前記歩行速度に基づいて、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態を判定し、前記第1の状態と判定されたとき、前記歩行速度から第1の混雑度情報を取得する第1の混雑度判定部と、前記第1の状態と判定されたとき、前記第1の混雑度情報を前記管理装置に送信し、前記第2の状態と判定されたとき、前記加速度を前記管理装置に送信する送信部と、を備え、前記管理装置は、前記端末装置から前記加速度を受信したとき、前記加速度から歩行ピッチを取得する歩行ピッチ取得部と、前記歩行ピッチの分散から第2の混雑度情報を取得する第2の混雑度判定部と、前記端末装置から受信した前記第1の混雑度情報および前記第2の混雑度情報に基づいて、各人の周囲の混雑状況に関する情報を生成する混雑情報生成部と、を備える構成とする。
第1,第2の発明によると、歩行速度に基づく混雑度の判定により、事故の可能性が高くなるような危険な混雑度を精度良く判定することができ、歩行ピッチの分散に基づく混雑度の判定により、比較的低い混雑度を精度良く判定することができる。このため、事故の可能性が高くなるような危険な混雑度も含めて広範囲の混雑度を精度良く判定することができる。そして、歩行速度が一定未満の場合は端末装置のみで混雑度を判定し、歩行速度が一定以上の場合にだけ計算量が多くなる歩行ピッチに関する計算を管理装置で実施することで、端末装置の計算量や通信量を削減して省電力化および通信費の抑制を実現することができる。
特に、第1の発明によると、端末装置において取得した歩行ピッチを端末装置から管理装置に送信すればよいため、端末装置と管理装置との間の通信量を削減することができる。また、第2の発明によると、管理装置において歩行ピッチおよびその分散を算出するため、端末装置での計算量を削減することができる。
また、第3の発明は、前記第1の混雑度判定部は、混雑度が比較的高い前記第1の状態と判定したとき、前記歩行速度を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、前記第1の混雑度情報を取得する構成とする。
これによると、第1の状態では、歩行速度をしきい値と比較することで、精度の高い第1の混雑度情報を簡単に取得することができる。
また、第4の発明は、前記第2の混雑度判定部は、混雑度が比較的低い前記第2の状態において、前記歩行ピッチの分散を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、前記第2の混雑度情報を取得する構成とする。
これによると、第2の状態では、歩行ピッチの分散をしきい値と比較することで、精度の高い第2の混雑度情報を簡単に取得することができる。
また、第5の発明は、前記歩行ピッチは、単位歩数あたりの時間で表される歩行時間間隔である構成とする。
これによると、混雑度を精度良く判定することができる。
また、第6の発明は、前記歩行ピッチの分散値は、前記歩行ピッチのばらつき度合いを表すものである構成とする。
これによると、混雑度に応じて歩行ピッチのばらつき度合いが異なるため、混雑度を精度良く判定することができる。
また、第7の発明は、さらに、各人が存在する位置に関する位置情報を取得する位置情報取得部を備え、前記混雑情報生成部は、前記位置情報に基づいて、対象エリアにおける混雑度の分布状況に関する情報を生成する構成とする。
これによると、対象エリアにおける混雑度の分布状況をユーザに提示することができる。
また、第8の発明は、各人が所持する端末装置と管理装置との間で情報を送受信して、各人の周囲の混雑度を測定する混雑測定方法であって、前記端末装置は、各人の歩行速度を取得するステップと、各人の歩行ピッチを取得するステップと、前記歩行速度に基づいて、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態を判定し、前記第1の状態と判定されたとき、前記歩行速度から第1の混雑度情報を取得するステップと、前記第1の状態と判定されたとき、前記第1の混雑度情報を前記管理装置に送信し、前記第2の状態と判定されたとき、前記歩行ピッチを前記管理装置に送信するステップと、を備え、前記管理装置は、前記端末装置から前記歩行ピッチを受信したとき、前記歩行ピッチの分散から第2の混雑度情報を取得するステップと、前記端末装置から受信した前記第1の混雑度情報および前記第2の混雑度情報に基づいて、各人の周囲の混雑状況に関する情報を生成するステップと、を備える構成とする。
これによると、第1の発明と同様に、端末装置での計算量を削減するとともに、端末装置と管理装置との間の通信量を削減することができ、さらに、事故の可能性が高くなるような危険な混雑度も含めて混雑度を精度良く判定することができる。
また、第9の発明は、各人の周囲の混雑度を測定するために、各人が所持し管理装置との間で情報を送受信可能な端末装置が実行する混雑測定方法であって、各人が所持する端末装置において各人の歩行速度および歩行ピッチを取得するステップと、前記歩行速度に基づいて、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態を判定するステップと、前記第1の状態と判定されたとき、前記歩行速度から第1の混雑度情報を取得するステップと、前記第2の状態と判定されたとき、前記歩行ピッチの分散から第2の混雑度情報を取得するステップと、を備える構成とする。
これによると、第1の状態と第2の状態とで場合分けすることで、精度の高い混雑度情報を取得することができる。
また、第10の発明は、前記端末装置は、前記第1の状態と判定されたとき混雑度が比較的高いとし、前記歩行速度を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、さらに細分化した混雑度を示す前記第1の混雑度情報を取得するステップを備える構成とする。
これによると、第1の状態では、歩行速度をしきい値と比較することで、細分化した混雑度を示す第1の混雑度情報を精度よく取得することができる。
また、第11の発明は、前記端末装置は、前記第2の状態と判定されたとき混雑度が比較的低いとし、前記歩行ピッチの分散を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、さらに細分化した混雑度を示す前記第2の混雑度情報を取得するステップを備える構成とする。
これによると、第2の状態では、歩行ピッチの分散をしきい値と比較することで、細分化した混雑度を示す第2の混雑度情報を精度よく取得することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る混雑測定システムの全体構成図である。この混雑測定システムは、端末装置1と、管理装置2と、表示装置3を備えている。端末装置1および管理装置2はネットワークを介して接続されている。
端末装置1は、各人が所持するものであり、スマートフォンやタブレット端末などの携帯デバイスである。
管理装置2は、端末装置1から各人の歩行情報や位置情報を収集して、各人の周囲の混雑度を測定するとともに、その各人の混雑度に基づいて、対象エリアにおける現在の混雑度の分布状況に関する情報を生成する。この管理装置2で生成した情報は表示装置3に表示され、ユーザが対象エリアの混雑状況を確認することができる。また、管理装置2では、現在の混雑度に関する情報などに基づいて将来の混雑状況を予測し、混雑予測情報が端末装置1に提供され、端末装置1のユーザが将来の混雑状況を確認することができる。
次に、図1に示した端末装置1および管理装置2の概略構成について説明する。図2は、端末装置1および管理装置2の概略構成を示す機能ブロック図である。
端末装置1は、加速度センサ11と、GPSセンサ12と、位置情報取得部13と、歩行速度取得部14と、歩行ピッチ取得部15と、第1の混雑度判定部16と、制御部17と、送信部18と、受信部19と、表示制御部20と、表示部21と、を備えている。
なお、端末装置1の各部は、混雑測定用のアプリケーションをインストールすることで実現される。
加速度センサ11は、端末装置1に発生する加速度を検出するものである。GPSセンサ12は、GPS(Global Positioning System)により端末装置1の位置を測定するものである。
位置情報取得部13は、GPSセンサ12で検出された位置情報を取得する。また、地下通路のようにGPSセンサ12による測位が困難な場所では、携帯電話の基地局や無線LANのアクセスポイントの無線電波や、加速度センサ11で検出された加速度などに基づいて、位置情報を取得する。
歩行速度取得部14では、位置情報取得部で取得した位置情報に基づいて、歩行速度を取得する。
歩行ピッチ取得部15では、制御部17からの指示に応じて、加速度センサ11で検出された加速度に基づいて、歩行ピッチを取得する。この歩行ピッチは、単位歩数あたりの時間(例えば1歩あたりの時間)で表される歩行時間間隔である。加速度センサ11で検出された加速度は、歩行時の身体の揺れを表すものであり、加速度の変化状況に基づいて歩行ピッチを取得することができる。
第1の混雑度判定部16では、制御部17からの指示に応じて、歩行速度取得部14で取得した歩行速度に基づいて混雑度を判定して、その判定結果である第1の混雑度情報を取得する。この第1の混雑度判定部16での混雑度判定により、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態のいずれかが判定される。この第1の状態は、混雑度が比較的高く、歩行速度から混雑度を一義的に求めることができる状態である。
一方、歩行速度が比較的高い第2の状態は、混雑度が比較的低く、歩行速度から混雑度を一義的に求めることができない状態であり、この場合、歩行ピッチ取得部15で取得した歩行ピッチを管理装置2に送信して、管理装置2において歩行ピッチに基づく混雑度判定が行われる。
送信部18は、制御部17からの指示に応じて、第1の状態の場合には、第1の混雑度判定部16で取得した第1の混雑度情報および位置情報取得部13で取得した位置情報を管理装置2に送信し、第2の状態の場合には、歩行ピッチ取得部15で取得した歩行ピッチおよび位置情報取得部13で取得した位置情報を管理装置2に送信する。
制御部17は、歩行速度取得部14で取得した歩行速度に基づいて、歩行ピッチ取得部15、第1の混雑度判定部16、および送信部18を制御して、歩行ピッチ取得部15で取得した歩行ピッチ、または第1の混雑度判定部16で取得した第1の混雑度情報のいずれかを管理装置2に送信する。
すなわち、制御部17では、第1の混雑度判定部16で第1の状態と判定された場合には、第1の混雑度判定部16の判定結果である第1の混雑度情報を管理装置2に送信する処理を送信部18に実施させる。一方、第2の状態と判定された場合には、歩行ピッチ取得部15において歩行ピッチを取得する処理を実施させて、その歩行ピッチを管理装置2に送信する処理を送信部18に実施させる。
受信部19では、管理装置2から送信される混雑予測情報を受信する。
表示制御部20では、表示部21の画面に関する表示情報を生成する。本実施形態では、受信部19で受信した混雑予測情報に基づいて、自装置が存在するエリアまたはユーザが指定したエリアの混雑度の予測結果を表す画面(図7参照)に関する表示情報を生成する。
管理装置2は、受信部31と、制御部32と、統計処理部33と、第2の混雑度判定部34と、情報蓄積部35と、混雑情報生成部36と、混雑予測部37と、表示制御部38と、送信部39と、を備えている。
受信部31では、端末装置1から送信される第1の混雑度情報および位置情報、または歩行ピッチおよび位置情報を受信する。
統計処理部33では、制御部32からの指示に応じて、受信部31で受信した歩行ピッチに基づいて、混雑度を判定するための統計値として、所定の期間における歩行ピッチの分散(ばらつき)を算出する。
第2の混雑度判定部34では、制御部32からの指示に応じて、統計処理部33で算出された歩行ピッチの分散に基づいて混雑度を判定して、その判定結果である第2の混雑度情報を取得する。
情報蓄積部35では、受信部31で受信した第1の混雑度情報および位置情報、第2の混雑度判定部34で取得した第2の混雑度情報が人物(端末装置1)ごとに蓄積される。
混雑情報生成部36では、情報蓄積部35に蓄積された第1の混雑度情報、第2の混雑度情報、および位置情報に基づいて、対象エリア内の各測定エリアの混雑状況を表す混雑情報を生成する。本実施形態では、対象エリアの現在の混雑度の分布状況を表した混雑マップ(図8参照)を生成する。この混雑マップは、対象エリア内の各測定エリア(ブロック)の混雑度をヒートマップで表したものである。この混雑マップを生成するにあたっては、人物ごとの混雑度を測定エリアごとに集計する統計処理を行って、測定エリアごとの混雑度を取得すればよい。
なお、この統計処理では、測定エリア内に位置する人物ごとの混雑度の最頻値を当該測定エリアの混雑度に採用し、また、異常値を排除する統計処理により適切な混雑度が求められるようにすればよいが、この統計処理の手法は特に限定されるものではない。また、測定エリア内に位置する人物がいない場合には、隣接する測定エリアの値に基づいて補間処理を行うなどの手法も可能である。
また、混雑情報生成部36では、混雑予測部37で取得した混雑予測情報に基づいて、対象エリアの将来の混雑度の分布状況を表した混雑マップを生成するようにしてもよい。混雑情報生成部36で生成された混雑マップは、送信部39により端末装置1あるいは他の装置に送信するようにしてもよい。
混雑予測部37では、情報蓄積部35に蓄積された第1の混雑度情報、第2の混雑度情報、および位置情報に基づいて、測定エリアごとに将来の混雑度を予測して、測定エリアごとの将来の混雑度に関する混雑予測情報を生成する。本実施形態では、測定エリアの将来の混雑度を時間帯ごとに予測する。なお、過去の混雑度の履歴を参考にして予測するようにしてもよいし、または、外部の装置から、運休や遅延などを含む路線運行情報や天候情報などを取得して、これらの情報を加えて、混雑度を予測するようにしてもよい。
表示制御部38では、表示装置3の画面に関する表示情報を生成する。本実施形態では、混雑情報生成部36で生成した混雑マップ(図8参照)を表示する画面に関する表示情報を生成する。
送信部39では、混雑予測部37で生成した混雑予測情報を端末装置1に送信する。本実施形態では、混雑予測情報として、将来の時間帯ごとの混雑度に関する情報が混雑予測部37で生成され、この混雑予測情報を端末装置1に送信することで、端末装置1に混雑予測画面(図7参照)を表示させる。なお、混雑予測情報に限らず、現在の混雑状態を示す情報を端末装置1に表示させてもよい。また、端末装置1が位置するエリアが危険な混雑度である場合には、端末装置1においてアラームを表示または報知させるようにしてもよい。
次に、図2に示した端末装置1および管理装置2で行われる処理の手順について説明する。図3は、端末装置1および管理装置2で行われる処理の手順を示すフロー図であり、図3(A)に、端末装置1で行われる処理の手順を示し、図3(B)に、管理装置2で行われる処理の手順を示す。
図3(A)に示すように、端末装置1では、まず、歩行速度取得部14において、位置情報取得部13で取得した位置情報に基づいて歩行速度を取得する(ST101)。ついで、第1の混雑度判定部16において、歩行速度に基づいて第1の状態(歩行速度が比較的低い状態)および第2の状態(歩行速度が比較的高い状態)のいずれであるかを判定する(ST102)。
ここで、第1の状態である場合には、第1の混雑度判定部16において歩行速度に基づいて混雑度を判定する(ST103)。そして、送信部18において、第1の混雑度判定部16での判定結果である第1の混雑度情報および位置情報を管理装置2に送信する(ST104)。一方、第2の状態である場合には、歩行ピッチ取得部15において、加速度センサで検出された加速度から歩行ピッチを算出する(ST105)。そして、送信部18において、歩行ピッチおよび位置情報を管理装置2に送信する(ST106)。
図3(B)に示すように、管理装置2では、まず、受信部31において、端末装置1から送信される歩行ピッチおよび位置情報を受信すると(ST201)、制御部32からの指示に応じて、統計処理部33において歩行ピッチの分散を算出する(ST202)。ついで、第2の混雑度判定部34において、歩行ピッチの分散に基づいて混雑度を判定する(ST203)。一方、受信部31において、端末装置1から送信される第1の混雑度情報および位置情報を受信すると(ST201)、前記の処理(ST202,ST203)は行われない。
次に、混雑情報生成部36において、第2の混雑度判定部34での判定結果である第2の混雑度情報、および受信部31で受信した第1の混雑度情報および位置情報に基づいて、対象エリア内の各測定エリアの混雑状況を表す混雑情報を生成する(ST204)。ついで、表示制御部38において、混雑情報に基づく混雑マップ(図8参照)等を表示装置3に表示する(ST205)。
なお、この他に、管理装置2では、混雑予測部37において、測定エリアごとの将来の混雑度に関する混雑予測情報を生成し、この混雑予測情報が送信部39から端末装置1に送信され、端末装置1では、受信部19において混雑予測情報を受信すると、表示制御部20において混雑予測情報を表示部21に表示する。
次に、図2に示した端末装置1の第1の混雑度判定部16で行われる処理について説明する。図4は、歩行速度と混雑度との相関関係を示す説明図である。
端末装置1の第1の混雑度判定部16では、歩行速度取得部14で取得した歩行速度に基づいて混雑度を判定する。
ここで、歩行速度は混雑度に応じて異なる。すなわち、混雑度が低い場合には、人物は自分のペースで歩行することができるため、歩行速度は高くなる傾向を示す。一方、混雑度が高くなると、周囲の人物に邪魔されて、人物は自分のペースで歩行することができなくなるため、歩行速度は低くなる傾向を示す。したがって、歩行速度に基づいて混雑度を判定することができる。
本実施形態では、低、中、高、および危険の4段階にレベル分けして混雑度を判定する。低の混雑度は、人口密度[人/m2]が0以上〜2.5未満の範囲となり、中の混雑度は、人口密度が2.5以上〜4未満の範囲となり、高の混雑度は、人口密度が4以上〜6未満の範囲となり、危険の混雑度は、人口密度が6以上の範囲となる。
低の混雑度では、歩行速度は領域A1に入り、中の混雑度では、歩行速度は領域A2に入り、高の混雑度では、歩行速度は領域A3に入り、危険の混雑度では、歩行速度は領域A4に入る。
混雑度が比較的低い場合、すなわち、低および中の混雑度に対応する領域A1,A2では、両領域に含まれる歩行速度が重複しているため、歩行速度のみで低および中の各混雑度を細分化して判別することができない。
一方、混雑度が比較的高い場合、すなわち、中および高の混雑度に対応する領域A2,A3は、しきい値Th1より仕切られ、高および危険の混雑度に対応する領域A3,A4は、しきい値Th2より仕切られる。したがって、歩行速度をしきい値Th1,Th2と比較することで、高および危険の各混雑度を細分化して判別することができる。すなわち、歩行速度がしきい値Th1としきい値Th2との間にある場合には、高の混雑度と判定することができ、歩行速度がしきい値Th2より小さい場合には、危険の混雑度と判定することができる。
また、本実施形態では、歩行速度がしきい値Th1未満の場合を第1の状態とし、歩行速度がしきい値Th1以上の場合を第2の状態として、歩行速度をしきい値Th1と比較することで、第1,第2の状態を判別する。そして、第1の状態の場合には、歩行速度をしきい値Th1,Th2と比較することで、高および危険の混雑度を細分化して判別する。一方、第2の状態の場合には、低および中の各混雑度を歩行速度で判別することができないため、歩行ピッチを管理装置2に送信して、その管理装置2の第2の混雑度判定部34で低および中の各混雑度を細分化して判別する。
なお、図4に示す歩行速度と混雑度との相関関係は、過去の測定値やコンピュータシミュレーションなどにより取得することができる。
次に、図2に示した管理装置2の第2の混雑度判定部34で行われる処理について説明する。図5は、歩行ピッチの分散と混雑度との相関関係を示す説明図である。図6は、歩行ピッチの分散を時系列でグラフ化した一例を示す説明図である。
管理装置2では、統計処理部33において、歩行ピッチ(歩行時間間隔)の分散(統計値)を算出し、第2の混雑度判定部34において、統計処理部33で算出された歩行ピッチの分散に基づいて混雑度を判定する。この判定では、歩行速度に基づく判定(図4参照)で判別することができなかった歩行速度が比較的高い第2の状態に該当する低および中の各混雑度を判別する。
ここで、歩行ピッチの分散は混雑度に応じて異なる。すなわち、混雑度が低い場合には、人物は自分に合った一定のペースで歩行することができるため、歩行ピッチの分散(ばらつき)は小さくなる傾向を示す。一方、混雑度が高くなると、周囲の人物に邪魔されて、人物は一定のペースで歩行することができなくなるため、歩行ピッチの分散(ばらつき)は大きくなる傾向を示す。したがって、歩行ピッチの分散に基づいて混雑度を判定することができる。
具体的には、図5に示すように、低の混雑度では、歩行ピッチの分散は小さくなるため、領域B1に入り、中の混雑度では、歩行ピッチの分散は大きくなるため、領域B2に入り、この領域B1,B2はしきい値Th3より仕切られる。したがって、歩行ピッチの分散をしきい値Th3と比較することで、低および中の各混雑度を判別することができる。すなわち、歩行ピッチの分散がしきい値Th3未満の場合には、低の混雑度と判定することができ、歩行ピッチの分散がしきい値Th3以上の場合には、中の混雑度と判定することができる。
図5に示した歩行ピッチの分散と混雑度との相関関係は、過去の測定値やコンピュータシミュレーションなどにより取得することができ、図6には、その元になる歩行ピッチの分散の時系列データを示している。ここでは、1人の人物の歩行ピッチを単位歩数(例えば10歩)ずつサンプリングして、歩行ピッチの分散を求めている。図6(A)は、混雑度が「低」の場合であり、この場合、歩行ピッチの分散は小さいため、グラフの上下の振幅は小さくなる。図6(B)は、混雑度が「中」の場合であり、この場合、歩行ピッチの分散は大きいため、グラフの上下の振幅は大きくなる。この歩行ピッチの分散の時系列データにより、図5に示した、低および中の各混雑度での歩行ピッチの分散の範囲をそれぞれ表す領域B1,B2を求めることができる。
なお、図5に示す例では、混雑度が高い状態で、歩行ピッチの分散により混雑度を判定することはできない、すなわち、歩行ピッチの分散が大きい(しきい値Th3以上)状態では、中、高および危険の混雑度を区別することはできないが、領域B2にしきい値をさらに設けて、中、高および危険の混雑度を区別できるようにしてもよい。
また、本実施形態では、混雑度を低、中、高、および危険の4段階にレベル分けして、低および中の混雑度を歩行ピッチの分散で判別するようにしたが、混雑度が低い領域では、より細かくレベル分けした混雑度を歩行ピッチの分散で判別することも可能である。例えば、低の混雑度を1.5の人口密度[人/m2]で2つにレベル分けして、この2つの混雑度を歩行ピッチの分散で判別するようにしてもよい。
次に、図2に示した端末装置1の表示部21に表示される画面について説明する。図7は、端末装置1の表示部21に表示される画面の一例を示す説明図である。
端末装置1では、管理装置2から提供される混雑予測情報に基づいて、自装置が存在するエリアまたはユーザが指定したエリアの将来の混雑状況に関する画面が表示される。この画面では、将来の混雑状況に関するコメント、例えば事故の可能性が高くなるような危険な混雑状況に関して端末装置1のユーザに注意を促すコメントと、時間帯ごとの混雑度の予測結果と、が表示される。
次に、図2に示した管理装置2に接続された表示装置3に表示される画面について説明する。図8は、管理装置2に接続された表示装置3に表示される画面の一例を示す説明図である。
管理装置2では、混雑情報生成部(図2参照)で生成された混雑情報、すなわち、対象エリアの現在の混雑状況を表した混雑マップが表示装置3に表示される。この混雑マップでは、混雑度の分布状況を表すヒートマップが、対象エリアの状態を表す地図画像上に重ねて表示されている。ヒートマップでは、対象エリアが矩形の複数のブロック(測定エリア)に分割され、各ブロックに混雑度に応じた着色が施されている。なお、図8に示す例では、駅の地下通路を対象エリアとしている。
次に、混雑測定システムの別例について説明する。図9は、混雑測定システムの別例において端末装置1および管理装置2で行われる処理の手順を示すフロー図である。
図3に示した例では、歩行速度が比較的高い第2の状態の場合に、端末装置1で加速度から歩行ピッチを算出して、その歩行ピッチを管理装置2に送信するようにしたが、図9に示す例では、加速度センサ11で検出された加速度を直接、端末装置1から管理装置2に送信して、管理装置2で加速度から歩行ピッチを算出するようにしている。この構成では、端末装置1に設けられていた歩行ピッチ取得部15(図2参照)が管理装置2に設けられる。
具体的には、端末装置1では、第1の混雑度判定部16において、歩行速度に基づいて第2の状態と判定された場合に(ST102)、送信部18において、加速度センサ11で検出された加速度および位置情報を管理装置に送信する(ST301)。
管理装置2では、受信部31において、端末装置1から送信される加速度および位置情報を受信すると(ST401)、歩行ピッチ取得部15において、加速度から歩行ピッチを算出する(ST402)。これ以降は、図3に示した例と同様である。また、歩行速度が比較的低い第1の状態の場合も、図3に示した例と同様である。
このように構成すると、端末装置1と管理装置2との間の通信量が多くなるが、端末装置1の計算量を削減することができる。
以上のように、本実施形態では、端末装置1が、各人の歩行速度を取得する歩行速度取得部14と、各人の歩行ピッチを取得する歩行ピッチ取得部15と、歩行速度に基づいて、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態を判定し、第1の状態と判定されたとき、歩行速度から第1の混雑度情報を取得する第1の混雑度判定部16と、第1の状態と判定されたとき、第1の混雑度情報を管理装置に送信し、第2の状態と判定されたとき、歩行ピッチを管理装置2に送信する送信部18と、を備え、管理装置2が、端末装置1から歩行ピッチを受信したとき、歩行ピッチの分散から第2の混雑度情報を取得する第2の混雑度判定部34と、端末装置1から受信した第1の混雑度情報および第2の混雑度情報に基づいて、各人の周囲の混雑状況に関する情報を生成する混雑情報生成部36と、を備えるものとした。
また、本実施形態では、端末装置1が、各人の歩行速度を取得する歩行速度取得部14と、各人の歩行の加速度を取得する加速度取得部(加速度センサ)11と、歩行速度に基づいて、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態を判定し、第1の状態と判定されたとき、歩行速度から第1の混雑度情報を取得する第1の混雑度判定部16と、第1の状態と判定されたとき、第1の混雑度情報を管理装置2に送信し、第2の状態と判定されたとき、加速度を管理装置2に送信する送信部18と、を備え、管理装置2が、端末装置1から加速度を受信したとき、加速度から歩行ピッチを取得する歩行ピッチ取得部15と、歩行ピッチの分散から第2の混雑度情報を取得する第2の混雑度判定部34と、端末装置1から受信した第1の混雑度情報および第2の混雑度情報に基づいて、各人の周囲の混雑状況に関する情報を生成する混雑情報生成部36と、を備えるものとした。
これによると、歩行速度に基づく混雑度の判定により、事故の可能性が高くなるような危険な混雑度を精度良く判定することができ、歩行ピッチの分散に基づく混雑度の判定により、比較的低い混雑度を精度良く判定することができる。このため、事故の可能性が高くなるような危険な混雑度も含めて広範囲の混雑度を精度良く判定することができる。そして、歩行速度が一定未満の場合は端末装置1のみで混雑度を判定し、歩行速度が一定以上の場合にだけ計算量が多くなる歩行ピッチに関する計算を管理装置2で実施することで、端末装置1の計算量や通信量を削減して省電力化および通信費の抑制を実現することができる。
特に、端末装置1において歩行ピッチを取得して、その歩行ピッチを端末装置1から管理装置2に送信するようにすると、端末装置1と管理装置2との間の通信量を削減することができる。また、管理装置2において歩行ピッチおよびその分散を取得するようにすると、端末装置1での計算量を削減することができる。
また、本実施形態では、第1の混雑度判定部16において、混雑度が比較的高い第1の状態と判定したとき、歩行速度を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、第1の混雑度情報を取得するものとした。これによると、第1の状態では、歩行速度をしきい値と比較することで、精度の高い第1の混雑度情報を簡単に取得することができる。
また、本実施形態では、第2の混雑度判定部34において、混雑度が比較的低い第2の状態において、歩行ピッチの分散を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、第2の混雑度情報を取得するものとした。これによると、第2の状態では、歩行ピッチの分散をしきい値と比較することで、精度の高い第2の混雑度情報を簡単に取得することができる。
また、本実施形態では、歩行ピッチが、単位歩数あたりの時間で表される歩行時間間隔であるものとした。これによると、混雑度を精度良く判定することができる。
また、本実施形態では、歩行ピッチの分散値が、歩行ピッチのばらつき度合いを表すものとした。これによると、混雑度に応じて歩行ピッチのばらつき度合いが異なるため、混雑度を精度良く判定することができる。
また、本実施形態では、位置情報取得部13において、各人が存在する位置に関する位置情報を取得し、混雑情報生成部36において、位置情報に基づいて、対象エリアにおける混雑度の分布状況に関する情報を生成するものとした。これによると、対象エリアにおける混雑度の分布状況をユーザに提示することができる。
また、本実施形態では、各人が所持する端末装置1において各人の歩行速度および歩行ピッチを取得し、歩行速度に基づいて、歩行速度が比較的低い第1の状態または歩行速度が比較的高い第2の状態を判定し、第1の状態と判定されたとき、歩行速度から第1の混雑度情報を取得し、第2の状態と判定されたとき、歩行ピッチの分散から第2の混雑度情報を取得し、第1の混雑度情報および第2の混雑度情報に基づいて、各人の周囲の混雑状況に関する情報を生成する構成とする。これによると、第1の状態と第2の状態とで場合分けすることで、精度の高い混雑度情報を取得することができる。
また、本実施形態では、第1の状態と判定されたとき混雑度が比較的高いとし、歩行速度を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、さらに細分化した混雑度を示す第1の混雑度情報を取得する構成とする。これによると、第1の状態では、歩行速度をしきい値と比較することで、細分化した混雑度を示す第1の混雑度情報を精度よく取得することができる。
また、本実施形態では、第2の状態と判定されたとき混雑度が比較的低いとし、歩行ピッチの分散を所定のしきい値と比較した結果に基づいて、さらに細分化した混雑度を示す第2の混雑度情報を取得する構成とする。これによると、第2の状態では、歩行ピッチの分散をしきい値と比較することで、細分化した混雑度を示す第2の混雑度情報を精度よく取得することができる。
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態に示した本発明に係る混雑測定システムおよび混雑測定方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
例えば、本実施形態では、歩行ピッチを、単位歩数あたりの時間(例えば1歩あたりの時間)で表される歩行時間間隔としたが、この歩行時間間隔の逆数、すなわち、単位時間あたりの歩数で表されるものを歩行ピッチとしてもよい。
また、本実施形態では、歩行時の身体の揺れを検出する揺れ検出部として、加速度センサ11を端末装置1に設けたが、ジャイロセンサ(角速度センサ)や振り子を用いた揺れ検出機構で歩行時の身体の揺れを検出するようにしてもよい。
また、本実施形態では、混雑度の情報として、低、中、高、および危険の4段階にレベル分けした混雑度(混雑レベル)を求めるようにしたが、この混雑度のレベル分けは4段階に限定されるものではなく、例えば5段階以上にレベル分けするようにしてもよい。さらに、このレベル分けを細かくすることで、混雑度の情報を人口密度[人/m2]として出力することもできる。
また、本実施形態では、歩行速度および歩行ピッチに基づいて混雑度を判定するようにしたが、歩行速度および歩行ピッチの他に、無線通信を確立するためにクライアントとアクセスポイントとの間でやりとりする信号(ビーコン)に基づいて、周辺の端末装置の数に関する無線通信情報を取得するようにしてもよい。このような無線通信情報を取得すると、第1の混雑度判定部16および第2の混雑度判定部34での判定結果の検証に用いることができるため、混雑度の判定精度を高めることができる。
また、端末装置1において人物が歩行する際に発する歩行音を集音して、その歩行音に関する情報、例えば歩行音の時間間隔に関する情報を取得するようにしてもよい。このような歩行音に関する情報を取得すると、第1の混雑度判定部16および第2の混雑度判定部34での判定結果の検証に用いることができるため、混雑度の判定精度を高めることができる。
また、本実施形態では、歩行ピッチの分散を算出して、その分散を所定のしきい値と比較して混雑度を判定するようにしたが、歩行ピッチの標準偏差を算出して、その標準偏差を所定のしきい値と比較して混雑度を判定するようにしてもよい。また、歩行ピッチの最頻値を取得して、その最頻値を所定のしきい値と比較して混雑度を判定するようにしてもよい。また、歩行ピッチごとの出現回数(度数)を表すヒストグラムを生成して、このヒストグラムにおける出現回数の分布状況に基づいて混雑度を判定するようにしてもよい。