特許文献1に記載のインクジェットプリンタ装置では、キャリッジ移動動作が完了してから、次のキャリッジ移動動作が開始されるまでのキャリッジの停止時間が異なることがある。特に、停止時間が長くなる例として、印字データの転送速度が低い場合、印字データのサイズが大きい場合、印字する画像のデューティが高い場合等が挙げられる。印字する画像の解像度や階調が高いと、印字データのサイズが大きくなり、データの転送に時間がかかる。画像の印字デューティが高いと、インク内の圧力変動が大きくなり、これがある程度減衰するまで時間をかけて待つことになる。
上記停止時間が長いほど、ノズル近傍では、インクの増粘が進む。これを抑制するため、上述のノズル内のインクの振動(メニスカス振動)が有効であるが、これを一律に実施すると不具合が生じることがある。例えば、停止時間が想定よりも長い場合、所定のメニスカス振動だけではインクの攪拌が不足し、インクの増粘を十分に解消できない。一方、上記停止時間が短い場合に、ノズル内のインクを必要以上に振動させてしまい、無駄に電力を消費することになる。
本発明の目的は、上記停止時間の長さに応じて適切にノズル内の液体を振動させて、ノズル内の液体の増粘を解消させることが可能な液体吐出装置を提供することである。
第1の発明に係る液体吐出装置は、ノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、走査方向に関して、両側の停止位置で画定されるキャリッジ移動区間で前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動機構と、前記走査方向における前記キャリッジの位置を検出するエンコーダと、前記液体吐出ヘッド及び前記キャリッジ移動機構を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記キャリッジ移動区間の一方側の停止位置から他方側の停止位置まで、前記キャリッジを移動させるキャリッジ移動について、前記ノズルから液体を吐出させる吐出区間を挟んで、前記一方側の停止位置から前記キャリッジを加速させる加速区間、及び、前記他方側の停止位置まで前記キャリッジを減速させる減速区間の位置を設定し、前記加速区間で、前記エンコーダのカウント数が増加する毎に前記液体吐出ヘッドを駆動させることによって、前記ノズル内の液体を吐出させないように振動させ、前記加速区間及び前記減速区間の位置を設定するときに、あるキャリッジ移動が完了してから次のキャリッジ移動が開始されるまでの、前記キャリッジの停止時間を算出し、前記停止時間が長い場合ほど、前記次のキャリッジ移動における前記一方側の停止位置を、前記走査方向の外側の位置に設定する。
本発明では、キャリッジの停止時間が長い場合ほど、上記次のキャリッジ移動における一方側の停止位置を走査方向の外側の位置にさせる。これにより、次のキャリッジ移動における加速区間が長くなる。その結果、上記次のキャリッジ移動の際に、加速区間でノズル内の液体を振動させる回数を多くして、ノズル内の液体の増粘を確実に解消させることができる。一方で、停止時間が短い場合には、上記次のキャリッジ移動において、一方側の停止位置を走査方向のより内側に位置させる。これにより、上記次のキャリッジ移動の際には、加速区間が短くなり、不必要な液体の振動を行わなくて済む。
第2の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記制御装置は、前記エンコーダのカウント数が増加する毎に前記液体吐出ヘッドを駆動させることによって、前記減速区間で前記ノズル内の液体を吐出させないように振動させる。
本発明では、キャリッジを減速させるときにもノズル内の液体を振動させるため、ノズル内の液体の増粘をより効率よく解消させることができる。
第3の発明に係る液体吐出装置は、第1又は第2の発明に係る液体吐出装置において、装置の周囲の湿度を検出するための湿度センサをさらに備え、前記制御装置は、前記加速区間及び前記減速区間の位置を設定するときに、前記湿度センサからの信号が、湿度が低いことを示している場合ほど、前記次のキャリッジ移動における前記一方側の停止位置を、前記走査方向における外側の位置に設定する。
装置の周囲の湿度が低いほど、ノズル内の液体が増粘しやすい。本発明では、装置の周囲の湿度が低い場合ほど、上記次のキャリッジ移動の加速区間において、キャリッジの停止位置を、走査方向の外側の位置にさせる。これにより、上記次のキャリッジ移動の加速区間の長さが長くなるので、その分だけ、ノズル内の液体を振動させる回数を増やすことができる。その結果、ノズル内の液体が増粘しやすい場合に、ノズル内の液体の増粘を確実に解消させることができる。
第4の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第3のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記制御装置は、前記停止時間に応じて、前記加速区間で、前記キャリッジを、前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから、前記吐出区間での速度まで減速させる。
本発明では、停止時間に応じて、加速区間で、キャリッジを、吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから、吐出区間での速度まで減速させる。これにより、停止時間が長い場合に、加速区間でノズル内の液体を振動させる周期(加速区間での液体吐出ヘッドの駆動周期)を短くして、ノズル内の液体の増粘を確実に解消させることができる。一方で、停止時間が短い場合に、加速区間でノズル内の液体を振動させる周期(加速区間での液体吐出ヘッドの駆動周期)を長くして、ノズル内の液体を必要以上に振動させないようにすることができる。
第5の発明に係る液体吐出装置は、ノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを走査方向に移動させるキャリッジ移動機構と、前記走査方向における前記キャリッジの位置を検出するエンコーダと、前記液体吐出ヘッド及び前記キャリッジ移動機構を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記キャリッジを前記走査方向に移動させる1つのキャリッジ移動において、前記キャリッジの移動方向における、前記ノズルから液体を吐出させる吐出区間よりも上流側に位置する加速区間で前記キャリッジを加速させ、前記吐出区間よりも下流側に位置する減速区間で前記キャリッジを減速させ、前記加速区間で、前記エンコーダのカウント数が増加する毎に前記液体吐出ヘッドを駆動させることによって、前記ノズル内の液体を吐出させないように振動させ、あるキャリッジ移動が完了してから次のキャリッジ移動が開始されるまでの前記キャリッジの停止時間に応じて、前記次のキャリッジ移動において、前記加速区間で、前記キャリッジを、前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから、前記吐出区間での速度まで減速させる。
本発明では、停止時間に応じて、加速区間で、キャリッジを、吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから、吐出区間での速度まで減速させる。これにより、停止時間が長い場合に、加速区間でノズル内の液体を振動させる周期(加速区間での液体吐出ヘッドの駆動周期)を短くして、ノズル内の液体の増粘を確実に解消させることができる。一方で、停止時間が短い場合に、加速区間でノズル内の液体を振動させる周期(加速区間での液体吐出ヘッドの駆動周期)を長くして、ノズル内の液体を必要以上に振動させないようにすることができる。
第6の発明に係る液体吐出装置は、第4又は第5の発明に係る液体吐出装置において、前記制御装置は、前記停止時間が長い場合ほど、前記次のキャリッジ移動において、前記加速区間での、前記キャリッジの速度のピーク値を高く設定する。
本発明では、停止時間が長い場合ほど、加速区間でのキャリッジの速度のピーク値を高くする。これにより、停止時間が長いほど、ノズル内の液体を振動させる周期が短くなる。その結果、停止時間が長い場合に、加速区間でノズル内の液体を振動させる周期を短くして、ノズル内の液体の増粘を確実に解消させることができる。一方で、停止時間が短い場合に、加速区間でノズル内の液体を振動させる周期を長くして、ノズル内の液体を必要以上に振動させないようにすることができる。
第7の発明に係る液体吐出装置は、第4〜第6のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記制御装置は、前記加速区間で、前記キャリッジを前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させるときの前記キャリッジの加速度の大きさを、その後前記キャリッジを前記吐出区間での速度まで減速させるときの前記キャリッジの加速度の大きさよりも大きくする。
本発明では、吐出区間に近い位置でのキャリッジの移動速度の変化を緩やかにすることができる。これにより、ノズルからのインクの吐出が開始されるときの、液体吐出ヘッド内の液体の揺れを抑えることができる。
第8の発明に係る液体吐出装置は、第4〜第6のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記制御装置は、前記加速区間で、前記キャリッジを前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させるときの前記キャリッジの加速度の大きさを、その後前記キャリッジを前記吐出区間での速度まで減速させるときの前記キャリッジの加速度の大きさよりも小さくする。
本発明では、加速区間でノズル内の液体を振動させるときに、吐出区間に近い位置でキャリッジの移動速度を極力速くすることができる。これにより、吐出区間に近い位置でノズル内の液体を振動させる周期が短くなる。振動周期が短いと、増粘の解消効果は高い。その結果、例えば、液体が増粘しやすいものである場合に、ノズルからのインクの吐出が開始される直前に、ノズル内の液体を短い周期で振動させて、ノズル内の液体の増粘を解消させることができる。
第9の発明に係る液体吐出装置は、第4〜第8のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドの駆動周波数が前記液体吐出ヘッド内の液体流路の共振周波数と等しくなるときの、前記キャリッジの速度である共振速度が、前記吐出区間での前記キャリッジの速度よりも速く、前記制御装置は、前記加速区間で、前記キャリッジを前記共振速度以上の速度まで加速させてから、前記吐出区間での速度まで減速させる。
本発明では、加速区間でキャリッジを加速させる間に、液体吐出ヘッドの駆動周波数が、液体吐出ヘッドの液体流路の共振周波数を含む範囲で変化する。これにより、ノズル内の液体を効率よく振動させることができる。
第10の発明に係る液体吐出装置は、第4〜第9のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記制御装置は、前記停止時間が所定時間よりも長い場合には、前記停止時間に応じて、前記次のキャリッジ移動において、前記加速区間で、前記キャリッジを前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから前記吐出区間での速度まで減速させ、
前記停止時間が前記所定時間以下の場合には、前記次のキャリッジ移動において、前記加速区間で、前記キャリッジを前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させることなく、前記吐出区間での速度まで加速させる。
本発明によると、停止時間が短い場合に、ノズル内の液体を必要以上に振動させてしまうのを防止することができる。
第11の発明に係る液体吐出装置は、第4〜第10のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記制御装置は、前記減速区間で、前記キャリッジを、前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから減速させ、前記ノズル内の液体を吐出させることなく振動させる。
本発明によると、減速区間で、キャリッジを吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから吐出区間での速度まで減速させ、ノズル内の液体を振動させることにより、ノズル内の液体の増粘を効率よく解消させることができる。
第12の発明に係る液体吐出装置は、第4〜第11のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、装置の周囲の湿度を検出するための湿度センサをさらに備え、前記制御装置は、前記湿度センサからの信号が、湿度が低いことを示している場合ほど、前記キャリッジの、前記加速区間での速度のピーク値を高く設定する。
装置の周囲の湿度が低いほど、ノズル内の液体が増粘しやすい。本発明では、装置の周囲の湿度が低い場合ほど、上記次のキャリッジ移動における、加速区間でのキャリッジの速度のピーク値を高くする。これにより、ノズル内の液体が増粘しやすい場合に、ノズル内の液体の増粘を確実に解消させることができる。
第13の発明に係る液体吐出装置は、ノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを走査方向に移動させるキャリッジ移動機構と、前記走査方向における前記キャリッジの位置を検出するエンコーダと、前記液体吐出ヘッド及び前記キャリッジ移動機構を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記キャリッジを前記走査方向に移動させる1つのキャリッジ移動において、前記キャリッジの移動方向における、前記ノズルから液体を吐出させる吐出区間よりも上流側に位置する加速区間で前記キャリッジを加速させ、前記吐出区間よりも下流側に位置する減速区間で前記キャリッジを減速させ、前記加速区間で、前記エンコーダのカウント数が増加する毎に前記液体吐出ヘッドを駆動させることによって、前記ノズル内の液体を吐出させないように振動させ、あるキャリッジ移動が完了してから次のキャリッジ移動が開始されるまでの、前記キャリッジの停止時間を算出し、前記停止時間が長いほど、前記加速区間で、前記キャリッジを、前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから、前記吐出区間での速度まで減速させる。
第14の発明に係る液体吐出装置は、ノズルを有する液体吐出ヘッドと、 前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記キャリッジを前記走査方向に移動させる1つのキャリッジ移動において、前記キャリッジの移動方向における、前記ノズルから液体を吐出させる吐出区間よりも上流側に位置する加速区間で前記キャリッジを加速させ、前記吐出区間よりも下流側に位置する減速区間で前記キャリッジを減速させ、あるキャリッジ移動が完了してから次のキャリッジ移動が開始されるまでの、前記キャリッジの停止時間を算出し、前記停止時間が長いほど、前記加速区間で、前記キャリッジを、前記吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから、前記吐出区間での速度まで減速させる。
本発明では、加速区間で、キャリッジを吐出区間での速度よりも速い速度まで加速させてから、吐出区間での速度まで減速させる。これにより、加速区間でノズル内の液体を振動させるときに、ノズル内の液体を振動させる周期が短くなる。これにより、ノズル内の液体の増粘を効率よく解消させることができる。
本発明によれば、キャリッジ移動間のキャリッジの停止時間に応じて、ノズル内の液体を適切に振動させて、ノズル内の液体の増粘を解消させることができる。
[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
(プリンタの全体構成)
図1に示すように、第1実施形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(本発明の「液体吐出ヘッド」)、搬送ローラ4、5、プラテン6などを備えている。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されている。キャリッジ2は、キャリッジ移動機構に支持され、インクジェットヘッド3と共に走査方向に往復移動する。キャリッジ移動機構は、図1に示すように、2本のガイドレール11、12と、2つのプーリ13、14と、無端状ベルト15と、キャリッジモータ16とを含んで構成され、プラテン6と上下に対向する。2本のガイドレール11、12は、主走査方向に沿って延び、キャリッジ2を移動可能に支持する。ガイドレール12には、両端部にプーリ13、14が設置され、ベルト15が2つのプーリ13、14間に巻き掛けされている。ベルト15にはキャリッジ2が取り付けられ、プーリ13はキャリッジモータ16と接続されているので、キャリッジモータ16が駆動されると、ベルト15が走行し、キャリッジ2がガイドレール11、12に沿って移動する。
また、プリンタ1は、走査方向におけるキャリッジ2の位置を検出するため、リニアエンコーダ17を備えている。リニアエンコーダ17は、エンコーダベルト21とエンコーダセンサ22とを含む。平板部材のエンコーダベルト21は、ガイドレール12の上面部に立設され、走査方向に延びている。エンコーダベルト21には、スリットが等間隔に形成されている。エンコーダセンサ22は、キャリッジ2に取り付けられ、エンコーダベルト21のスリット形成面と所定間隔を介して対向している。キャリッジ2が移動する際、エンコーダセンサ22が、前を横切るスリットの数をカウントする。これにより、走査方向におけるキャリッジ2の位置が検出される。なお、リニアエンコーダ17は、公知のものであるため、ここではこれ以上の詳細な説明は省略する。また、以下では、図1に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
インクジェットヘッド3は、その下面が、2本のガイドレール11、12の間に位置し、搬送される記録用紙Pと対向する。下面は、複数のノズル10が形成された吐出面である。複数のノズル10は、4つのノズル群からなる。それぞれ所定数のノズル10が、記録用紙Pの搬送方向に並んでノズル列9を構成し、キャリッジ2の走査方向に配列されている。図1において、右側のノズル列9から順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
搬送ローラ4、5は、搬送方向にキャリッジ2とプラテン6とを挟んで配置されている。搬送ローラ4、5は、搬送モータ18(図2参照)によって駆動され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。プラテン6は、平板部材であって、四角形の平面形状を有する。走査方向に関して、プラテン6の幅は、印刷字のキャリッジ2の移動範囲よりも若干広い。プラテン6は、インクジェットヘッド3の下面と対向し、搬送される記録用紙Pを下から支える。
(制御装置)
図2に示すように、プリンタ1は、上記の構成の他に、湿度センサ19、制御装置50等を備えている。湿度センサ19は、プリンタ1周辺の湿度を検出するためのものである。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)54、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)55等からなり、これらがキャリッジモータ16、インクジェットヘッド3、搬送モータ18などの動作を制御する。また、制御装置50には、エンコーダセンサ22及び湿度センサ19から信号が入力される。
ここで、図2に示すように、1つのCPU51及び1つのASIC55が、対応する処理をそれぞれ一括して行う。しかし、制御装置50の構成は、これに限定すること無く、複数のCPC51で処理を分担する構成でもよい。加えて、制御装置50は、複数のASIC55で処理を分担する構成であってもよい。
(印刷時の制御)
次に、プリンタ1により記録用紙Pに印刷を行う動作について説明する。プリンタ1では、スキャン印刷(本発明の「キャリッジ移動」)と搬送動作を交互に繰り返して、記録用紙Pにカラー印刷を行う。スキャン印刷では、インクを吐出しつつ、キャリッジ2が走査方向に移動される。インクの吐出は、キャリッジ2の等速移動区間(後述の吐出区間K0)で行われ、エンコーダ17の出力に同期する。1つのスキャン印刷で、1つの帯状画像が形成される。搬送動作では、搬送ローラ4、5が駆動され、画像の幅分(例えば、ノズル列9の長さ)だけ記録用紙Pが送られる。この間、キャリッジ2は動かない。
制御装置50の制御について説明する。第1実施形態では、入力された印刷データに対して、図3のフローに沿って処理が行われる。
具体的に説明すると、制御装置50は、まず、スキャン印刷が完了してから次のスキャン印刷が開始されるまでの、キャリッジ2の停止時間Twを算出する(S101)。この停止時間Twは、プリンタ1への印刷データの転送速度、印刷データのデータ量、スキャン印刷におけるデューティ等に基づいて算出される推定値である。
例えば、印刷データの転送速度が遅いと、必要なデータの転送を完了するまでに、より長い時間を要する。データの転送速度が遅くなくても、印刷データのサイズが大きければ、同様である。また、先のインク吐出動作自体が、停止時間Twを長引かせることがある。印刷のデューティが高い場合と、インク内に圧力変動が残る。これは、画質を変化する心配がある。この圧力変動は、時間を掛けて、ある程度まで減衰させる。また、高デューティ印刷は、記録用紙Pに多量の水分を供給するので、乾燥時間を稼ぐ必要も生じる。いずれもスキャン印刷後の出来事で、メニスカスは、大気開放状態のまま乾燥が進む。
次に、制御装置50は、スキャン印刷において、キャリッジ2を減速させて停止させる停止位置を設定する(S102)。このとき、制御装置50は、S101で算出された停止時間Twが長いほど、キャリッジ2の減速後の停止位置を吐出区間K0の終端から離す。停止位置は、停止時間Twが短い場合に比べて、より走査方向の外側となる。
ところで、スキャン印刷は、走査方向に関して、片側のキャリッジ2の停止位置から始まり、反対側の停止位置で終わる。両側の停止位置で区画される範囲が、本発明の「キャリッジ移動区間」である。キャリッジ移動区間は、図4に示すように、中央部の吐出区間K0を挟んで、片側(上流側)の加速区間、反対側(下流側)の減速区間の3つの区間で構成される。吐出区間K0では、キャリッジ2が所定速度Vtで等速移動される。インクジェットヘッド3が駆動され、インクが吐出される。加速区間では、キャリッジ2が停止状態から速度Vtまで加速される。キャリッジ2の速度は、速度Vtまで単調に増加する。インクジェットヘッド3は、非吐出で駆動(メニスカスが振動)される。減速区間では、キャリッジは、速度が速度Vtから単調に減少し、区間の終端で停止する。
本実施の形態では、双方向印刷方式が採用されている。走査方向に往復で、スキャン印刷が行われる。そのため、連続する2つのスキャン印刷では、キャリッジ2が逆に移動する。あるスキャン印刷の減速区間が、次のスキャン印刷の加速区間となる。
図4に、キャリッジ位置とキャリッジ速度の関係を示す。キャリッジ2が右側に移動するスキャン印刷では、図4に示す中央の吐出区間K0に関して、左側に隣接する区間K2が、加速区間である。右側の区間K1は、減速区間である。このとき、区間K2の左端が、本発明の「一方側の停止位置」であり、区間K1の右端が、本発明の「他方側の停止位置」である。一方、キャリッジ2が左側に移動するスキャン印刷では、吐出区間K0に関する区間等の位置関係が、これと逆になる。区間K2が減速区間となり、その左端は、本発明の「他方側の停止位置」である。区間K1は加速区間となり、その右端が、本発明の「一方側の停止位置」となる。
図5に、経過時間とキャリッジ速度との関係を示す。図5に示すように、停止時間Twは、Tw1とする。キャリッジ2が右側に移動するスキャン印刷であれば、図4(a)に示すように、減速区間(該当区間はK1)は、区間幅がW11で、停止位置が位置U11である。このとき、停止時間Tw1を挟んで始まる次のスキャン印刷では、位置U11が、キャリッジ2の加速開始位置となる。キャリッジ2は、区間幅W11の区間K1を使って、速度Vtまで加速される。
これに対して、停止時間Twが、Tw2(>Tw1)と算出された場合、図4(b)に示すように、あるスキャン印刷の減速区間(該当区間はK1)は、区間幅がW12(>W11)で、停止位置が位置U12と設定される。走査方向に関して、位置U12は、位置U11の右側となる。そのため、あるスキャン印刷では、減速区間が長くなる。図5(b)に示すように、停止までの時間も長くなる。次のスキャン印刷では、長い加速区間を持つので、メニスカスの振動回数も増える。
キャリッジ2が左側に移動するスキャン印刷でも、左右の位置関係は逆転するが、上述と同様に説明ができる。
さらに、S102では、制御装置50は、湿度センサ19からの湿度に関する信号に基づいて、キャリッジ2の停止位置を調整する。信号が、より低い湿度を示すほど、停止位置を走査方向外側に設定する。
次に、制御装置50は、キャリッジモータ16を制御して、キャリッジ2を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド3を駆動させて、上記スキャン印刷を行わせるスキャン印刷処理を実行する(S103)。
スキャン印刷では、キャリッジ2が、起点(一方側の停止位置)から移動を始める。キャリッジ2が動くと、エンコーダ17が、横切るスリット毎に検知信号を出力する。制御装置50は、この信号をカウントして、キャリッジ2の位置を知る。この位置情報に基づいて、制御装置50は、キャリッジ2及びインクジェットヘッド3を制御する。
1つのスキャン印刷(スキャン印刷処理;図3のS103に相当)での動作を、図6のフロー図を用いて説明する。本実施の形態では、印刷データが入力されると、記録用紙Pが給紙トレイから繰り出される。搬送は、センターレジ方式である。キャリッジ移動区間の中央が、記録用紙Pの走査方向中央に重なる。記録用紙Pの先端が所定位置で検出されると、それから所定時間後に、搬送が一旦停止される。1つのスキャン印刷用のデータは、それまでに用意される。このとき、減速区間の停止位置及び停止後の停止時間Twも設定されている。
搬送停止と同時に、キャリッジ2が移動を始める(S201)。あるスキャン印刷の開始である。制御装置50は、キャリッジモータ16を制御して、所定の加速度でキャリッジ2を加速(S202)し、インクジェットヘッド3を制御して、非吐出で駆動する(S203)。このとき、エンコーダ出力に同期して、ノズル10のメニスカスが振動する。この加速区間では、振動の周期が単調減少していく。キャリッジ2の加速とインクジェットヘッド3の非吐出駆動は、制御装置50が、スリットのカウント数としてN1を計数するまで続く(S204:N)。
カウント数=N1が計数されると(S204:Y)、制御装置50は、キャリッジモータ16を制御して、加速を停止する。加速区間の終わりであり、続く吐出区間の始まりである。ここからは、キャリッジ2が、加速停止時点の速度(所定速度Vt)で等速移動される(S205)。エンコーダ17からは、検出信号が定期的に出力される。これに同期して、インクジェットヘッド3が駆動される。インクの吐出タイミングは、印刷データ(1つのスキャン印刷用データ)に基づく(S206)。キャリッジ2の等速移動とインクジェットヘッド3の吐出駆動は、制御装置50が、スリットのカウント数としてN2を計数するまで続く(S207:N)。
カウント数=N2が計数されると(S207:Y)、制御装置50は、キャリッジモータ16を制御して、減速を開始する。吐出区間の終わりであり、続く減速区間の始まりである。制御装置50は、キャリッジ2を一定の加速度で減速していく(S208)。減速は、制御装置50が、スリットのカウント数としてN3を計数するまで続く(S210:N)。この間、インクジェットヘッド3は、スタンバイ状態に保たれる(S209)。
カウント数=N3が計数されたとき(S210:Y)、キャリッジ2は減速区間の終点(他方側の停止位置)におり、制御装置50は、キャリッジモータ16を停止する(S211)。この時点で、制御装置50は、次のスキャン印刷の有無を判断する(S212;図3のS104相当)。制御装置50は、次のスキャン印刷がなければ、1つの記録用紙Pへの印刷(全てのスキャン印刷)が完了したと判断し(S212:N;図3のS104:N相当)、次の記録用紙Pの到着を待つ。次のスキャン印刷があるとき(S212:Y;図3のS104:Y相当)、制御装置50は、記録用紙Pを所定距離(例えば、ノズル列長分の距離)だけ移動し(S213;図3のS105相当)、次のスキャン印刷に備える。記録用紙Pの移動完了を待つ間、次のスキャン印刷用データ、次の停止位置及び次の停止時間Twが設定される。
制御装置50は、S213の搬送開始と共に、停止位置でのキャリッジ2の滞在時間を計測する。滞在時間が、停止時間Tw未満であれば(S214:N)、キャリッジ2は滞在し続ける。滞在時間が停止時間Twに達したとき(S214:Y)、記録用紙Pが搬送中であれば、その完了を待つ(S215:N)。
一方、記録用紙Pの搬送が完了すれば(S215:Y)、制御装置50は、キャリッジ2の移動方向の反転を指示する(S216)。これでキャリッジモータ16は、先のスキャン印刷時とは逆に回転する(S201)。あるスキャン印刷に続く次のスキャン印刷の開始である。
なお、1つの記録用紙Pへの印刷が完了したとき(S212:N;図3のS104:Y相当)、この記録用紙Pは、排紙トレイ(不図示)に向けて搬送される(図3のS106相当)。このとき、印刷データが指示する全ての印刷が完了したならば、プリンタ1全体を待機状態とし、次の印刷データの入力を待つ。記録用紙Pの搬送動作は停止し、インクジェットヘッド3はキャップで封止される。
一般に、インクジェットヘッド3は、インクを吐出しないと、経時的にノズル10内でインクの増粘が進む。時として、インクの吐出特性が劣化し、得られる画品質は低下する。
そこで、本実施の形態では、スキャン印刷の加速区間で、ノズル10からインクを吐出させずに、ノズル10内のインクを振動させる。これにより、印刷データに基づく吐出駆動の前に、インクの増粘を解消させることができる。
本実施の形態では、エンコーダ17が、等間隔に配列したスリットを検出する。加速区間では、このエンコーダ出力に同期して、非吐出の駆動が行われる。加速区間長が固定されていると、湿度が低かったり、停止時間Twが長引いた場合、非吐出駆動は増粘の解消に不十分となる。一方、湿度が高かったり、停止時間Twが短く済めば、非吐出駆動は過剰となる。無駄な電力が消費される。
そこで、第1の実施形態では、あるスキャン印刷において、減速区間(次のスキャン印刷の加速区間)の長さを調整する。停止時間Twが長いほど、又、湿度が低いほど、区間長を長くする。次のスキャン印刷では、加速区間でのカウント数が増え、メニスカス振動の回数が増える。停止時間Twが短いほど、又、湿度が高いほど、区間長を短くする。次のスキャン印刷では、加速区間でのカウント数が減り、メニスカス振動の回数も減る。いずれの場合も、インクの増粘が、過不足無く解消される。
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。ただし、第2実施形態では、印刷時の制御が第1実施形態と異なるだけである。第1実施形態では、停止時間Tw及び湿度に応じて、あるスキャン印刷の加速区間長を調節していた。第2実施形態では、各区間長は固定されている。加速区間では、キャリッジ2が、ピーク速度Vp(>Vt:吐出区間での速度)を持つ点に特徴がある。
印刷時の制御を、図7〜図9を用いて説明する。記録用紙Pが所定位置で一旦停止するまでには、スキャン印刷用データは用意されており、加速区間でのピーク速度Vpも予め設定されている(S301)。例えば、Vp=Vp1である。このとき、湿度に基づいて、ピーク速度Vpを調整してもよい。
記録用紙Pが所定位置に着くと、始めのスキャン印刷が始まる(S302)。吐出区間及び減速区間でのキャリッジ2及びインクジェットヘッド3の動作は、上述の通りである。加速区間では、速度に極大点(この場合、Vp1(>Vt))がある。カウント数=N3が計数されると、制御装置50は、キャリッジモータ16を停止し、次のスキャン印刷の有無を判断する(S303)。
次のスキャン印刷があれば(S303:Y)、制御装置50は、記録用紙Pの移動と、先のスキャン印刷完了時点からの経過時間の計測、及び、次のスキャン印刷用データの準備を始める(S304とS305)。記録用紙Pの移動完了を待つ間、次のスキャン印刷用データが準備され、次のスキャン印刷までの停止時間Tw(≧記録用紙Pの移動時間)が設定される。スキャン印刷用データには、次のスキャン印刷でのピーク速度Vpが含まれる。停止時間Twは、記録用紙Pの所定距離の移動時間に、先のスキャン印刷時の印刷デューティや湿度による調整分を加えて設定される。
さらに、経過時間が、停止時間Twとなるのを待つ(S306:N)。経過時間が、停止時間Twに達すると(S306:Y)、処理がS302にもどされ、次のスキャン印刷が始まる。
制御装置50は、次のスキャン印刷がなければ(S303:N)、次の記録用紙Pの到着を待つ。印刷データが指示する全ての印刷が完了したならば、プリンタ1全体を待機状態とし、次の印刷データの入力を待つ。いずれの場合も、印刷処理済みの記録用紙Pは、排紙トレイ(不図示)に向けて搬送される(S307)。
ところで、図8は、キャリッジ2の位置に対する速度のプロファイルである。加速区間の途中で、キャリッジ2の加速から減速に移行する。速度の極大点までの加速中の加速度α(+)は、極大点からの減速中の加速度α(-)より大きい。図8(a)は、停止位置で停止時間Tw1の滞在をする場合に相当する。例えば、始めのスキャン印刷時や、印刷デューティ及び湿度による影響が無い場合である。図8(b)は、停止時間Tw2(>Tw1)の滞在をする場合に相当する。例えば、印刷デューティ及び湿度による影響がある場合である。停止時間Twに調整が入ると、極大点の速度は、対応するピーク速度Vp=Vp2(>Vp1)に設定される。
ここで、加速区間の加速度について、α(+)=α(-)となる位置では、速度のプロファイルと横軸とのなす角θ(図8参照)について、θ1=θ2が成り立つ。本実施の形態は、常にθ1>θ2となるよう、極大点の位置が設定される。少なくとも、θ1=θ2の場合に比べ、小さな速度変化で、加速区間から吐出区間に切り替わることができる。そのため、吐出区間のインク吐出開始時点において、速度変化に伴う圧力変動が抑制される。
停止時間Twに調整が入った場合、さらにインクの圧力変動を押さえる観点から、極大点の位置が、調整の無い場合よりも加速区間の起点側とするとよい。さらには、減速側のプロファイルについて、角度をθ2‘(<θ2)にするのも、圧力変動の抑制に効果的である。
図9には、変形例(変形例1)が示されている。本変形例は、常にθ1<θ2となるよう、極大点の位置が設定される。少なくとも、θ1=θ2の場合に比べ、キャリッジ2の速度が所定速度Vt以上となる区域が、吐出区間に近づく。この区域は、残余の区域に比べて、エンコーダ出力の周期が短い。ノズル10内のインクが、より短い周期で振動される。この振動周期が短いほど、インクの増粘解消効果は高く、吐出区間のインク吐出開始時点において、インクの増粘が確実に解消される。なお、図9(a)と図9(b)の関係は、図8(a)と図8(b)の関係に対応する。図9(b)には、印刷デューティ及び湿度による影響が表されている。
第2実施形態は、少なくとも、ピーク速度Vpを持たない場合に比べ、短い周期でインクが振動され、増粘の解消効果は高い。特に、図8の形態では、α(+)>α(-)かつθ1>θ2の関係があり、吐出区間に切り替わる直前では、インクの振動周期は短いとは言え、吐出区間での駆動周期に近い状態が続く。区間が切り替わるとき、所定速度Vtへの速度変化が小さく済む。つまり、区間の切り替えが滑らかで、印刷始めの画質に乱れがない。図9の形態では、α(+)<α(-)かつθ1<θ2の関係があり、区間が切り替わる直前にて、インクの増粘解消効果を高めてある。乾燥しやすいインク(例えば、顔料系のインク)を用いる場合、この形態が有効である。
次に、第1、第2実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
第2実施形態では、スキャン印刷毎に加速区間及び減速区間の長さを変えることなく、停止時間Twが長いほど、スキャン印刷におけるピーク速度Vpを速い速度に設定したが、これには限られない。第2実施形態において、上記停止時間Twが長いほど、スキャン印刷におけるピーク速度Vpを速い速度に設定するのに加えて、第1実施形態と同様に、スキャン印刷においてキャリッジを減速させて停止させる停止位置を走査方向の外側の位置に設定してもよい。
第2実施形態では、ピーク速度Vpは、これに対応する駆動周波数が、インク流路の共振周波数以上に設定されていることが望ましい。駆動周波数が共振周波数(この前後の周波数を含む)では、インクの振動効率がより高くなる。ここで、所定速度Vtは、これに対応する駆動周波数が、流路の共振周波数よりも低い。共振周波数に対応するキャリッジ2の移動速度を、共振速度Vsとすると、Vs>Vtである。このとき、Vp>Vsの関係があるが、これに限定されない。例えば、停止時間Twが所定時間T0よりも長ければ、Vp>Vsとする。Tw≦T0の場合には、Vs≧Vp>Vtとしてもよい。停止時間Twが短いとき、インクを必要以上に振動しなくて済む。
第2実施形態において、キャリッジ2をピーク速度Vpまで加速させるときのキャリッジ2の加速度の大きさと、キャリッジ2を所定速度Vtまで減速させるときのキャリッジ2の加速度の大きさとが同じであってもよい。
さらには、停止時間Twによらず、ピーク速度Vpを、所定速度Vtよりも速く、且つ、共振速度Vsよりも遅い速度に設定してもよい。
また、第2実施形態では、キャリッジ2の停止時間Twによらず、キャリッジ2を所定速度Vtよりも速いピーク速度Vpまで加速させてから所定速度Vtまで減速させたが、これには限られない。例えば、停止時間Twが所定時間よりも長い場合にのみ、キャリッジ2を所定速度Vtよりも速いピーク速度Vpまで加速させてから所定速度Vtまで減速させる。停止時間Twが所定時間以下の場合には、ピーク速度Vpを持たず、キャリッジ2を単調に所定速度Vtまで加速させるようにしてもよい。この場合には、第2実施形態の場合よりもさらに、停止時間Twが短いときに、ノズル10内のインクを必要以上に振動させないようにすることができる。
また、第2実施形態では、停止時間Twが長いほど、ピーク速度Vpを速い速度に設定したが、これには限られない。例えば、停止時間Twによらずピーク速度Vpを一定の速度とし、停止時間Twに応じて、走査方向における、キャリッジ2がピーク速度Vpとなるときのキャリッジ2の位置を異ならせるようにしてもよい。すなわち、停止時間Twによらずピーク速度Vpを一定の速度とし、停止時間Twに応じて、キャリッジ2をピーク速度Vpまで加速させるときの加速度、及び、キャリッジ2を所定速度Vtまで減速させるときの加速度を異ならせてもよい。停止時間Twが長い場合、インクの増粘がさらに進む。これに対して、インクの高周波振動の時間を長くすればよい。つまり、速度の極大点を、停止時間Twが長いほど、加速区間の起点に近づけて設定する。
また、第2実施形態では、キャリッジ2をピーク速度Vpまで加速させた後、ただちに減速させたが、これには限られない。例えば、キャリッジ2をピーク速度Vpまで加速させた後、キャリッジ2の速度をピーク速度Vpに維持してから所定速度Vtまで減速させてもよい。このとき、停止時間Twの長さにかかわらず、所定時間だけピーク速度Vpを維持するとしてもよいし、停止時間Twが長いほど、ピーク速度Vpに維持する時間を長くしてもよい。さらに、ピーク速度Vpが維持される状態は、停止時間Twが所定の閾値を超した場合に限るとしてもよい。
また、第1、第2実施形態では、キャリッジ2を加速させるときには、ノズル10からインクが吐出されないように、インクジェットヘッド3を駆動させてノズル10内のインクを振動させ、キャリッジ2を減速させるときには、インクジェットヘッド3を駆動させないようにしたが、これには限られない。第1、第2実施形態において、キャリッジ2を減速させるときにも、ノズル10からインクが吐出されないようにインクジェットヘッド3を駆動させて、ノズル10内のインクを振動させてもよい。
第1実施形態では、あるスキャン印刷が完了してから次のスキャン印刷が開始されるまでの停止時間Twが長いほど、あるスキャン印刷における減速区間の長さが長くなるため、キャリッジ2の減速時にもノズル10内のインクを振動させる回数が多くなり、ノズル10内のインクの増粘を効果的に解消させることができる。
また、第2実施形態において、キャリッジ2の減速時にもノズル10内のインクを振動させる場合には、減速区間でキャリッジ2を減速させるときに、図10(a)、(b)に示すように、キャリッジ2を所定速度Vtよりも速い速度まで加速させてから、キャリッジ2を減速させて停止させてもよい(変形例2)。この場合には、減速区間において、インクジェットヘッド3の駆動周波数が一旦高くなり、ノズル10内のインクを振動させる周期を短くすることができる。なお、図10(a)、(b)では、減速区間でのキャリッジ2のピーク速度を、加速区間でのキャリッジ2のピーク速度Vp(Vp1、Vp2)と同じ速度としているが、減速区間でのキャリッジ2のピーク速度は、加速区間でのキャリッジ2のピーク速度Vpとは異なっていてもよい。
また、第1実施形態では、湿度センサ19によって検出された湿度が低い場合ほど、減速区間でキャリッジの停止位置を走査方向の外側にすることで、上記あるスキャン印刷における減速区間の長さ(次のスキャン印刷における加速区間の長さ)を長くしたが、これには限られない。減速区間における停止位置は、プリンタ1の周囲の湿度によっては変わらないものであってもよい。同様に、第2実施形態において、キャリッジ2のピーク速度Vp、ピーク速度Vpまで加速させるときの加速度、及び、ピーク速度Vpから所定速度Vtまで減速させるときの加速度は、プリンタ1の周囲の湿度によっては変わらないものであってもよい。また、これらの場合には、プリンタ1に湿度センサ19は設けられていなくてもよい。
また、第1実施形態では、停止時間Twが長いほど、上記あるスキャン印刷における減速区間での停止位置を走査方向の外側の位置に設定することで、上記あるスキャン印刷における減速区間の長さ(次のスキャン印刷における加速区間の長さ)を長くしたが、これには限られない。例えば、停止時間Twによらず、上記あるスキャン印刷における減速区間での停止位置を同じ位置とし、上記停止時間Twが長いほど、次のスキャン印刷において、キャリッジ2を吐出区間K0と反対側に大きく移動させて(次のスキャン印刷における一方側の停止位置を外側の位置に設定して)から、キャリッジ2を加速させつつ、吐出区間K0に向けて移動させるようにしてもよい。この場合でも、上記停止時間Twが長いほど、次のスキャン印刷における加速区間の長さを長くすることができる。
つまり、制御装置は、キャリッジ移動区間の一方側の停止位置から他方側の停止位置まで、キャリッジを移動させるキャリッジ移動について、ノズルから液体を吐出させる吐出区間を挟んで、一方側の停止位置からキャリッジを加速させる加速区間、及び、他方側の停止位置までキャリッジを減速させる減速区間の位置を設定するものであって、加速区間及び減速区間の少なくとの一方の区間で、エンコーダからのカウント数が増加する毎にインクジェットヘッドを駆動させることによって、ノズル内の液体を吐出させないように振動させ、加速区間及び減速区間の位置を設定するときに、あるキャリッジ移動が完了してから次のキャリッジ移動が開始されるまでの、キャリッジの停止時間を算出し、停止時間が長い場合ほど、次のキャリッジ移動における一方側の停止位置を、走査方向の外側の位置に設定することに特徴がある。
また、第1、第2実施形態では、吐出区間K0においてキャリッジ2を所定速度Vtで定速移動させたが、吐出区間K0でキャリッジ2を定速移動させることには限られない。例えば、キャリッジ2を加速区間と吐出区間K0の一部で加速させてもよい。あるいは、例えば、キャリッジ2を減速区間と吐出区間K0の一部で減速させてもよい。
また、第2実施形態では、加速区間でキャリッジ2を所定速度Vtよりも速いピーク速度Vpまで加速させてから所定速度Vtまで減速させ、さらに停止時間Twに応じて、加速区間でのキャリッジ2の加速のさせ方を異ならせたが、これには限られない。停止時間によらず、キャリッジ2を加速区間において一律に、同じピーク速度Vpまで加速させてから所定速度Vtまで減速させるようにしてもよい。この場合でも、キャリッジ2を加速区間で所定速度Vtよりも速い速度まで加速させることなく所定速度Vtまで加速させる場合と比較して、加速区間でのインクジェットヘッド3の駆動周波数を高くすることができる。これにより、加速区間において、ノズル10内のインクを振動させる周期を短くすることができる。
また、以上の例では、エンコーダセンサ22によりスリットがカウントされる毎にインクジェットヘッド3を駆動して、複数のノズル10からのインクの吐出、及び、複数のノズル10内のインクの振動を行わせたが、これには限られない。複数のノズル10からインクを吐出させるためのインクジェットヘッド3の駆動については、エンコーダセンサ22からの信号とは別の信号によって行われるようになっていてもよい。
第1実施の形態において、キャリッジ2の停止時間Twにより、あるスキャン印刷の減速区間における停止位置を設定する場合、停止時間Twに対する閾値Twsを設けてもよい。Tw<Twsの場合、停止位置は新たに設定せず、予め決められた位置とする。Tw≧Twsであれば、停止時間Twの長さに対応した停止位置が設定される。これにより、停止位置を設定する処理が簡素化され、印刷処理の開始に不必要な遅れを生じさせない。なお、Twsは、これ以上停止時間Twが長くなると、画質劣化が識別可能となる時間にすればよい。
第1の実施形態では、停止時間Twが長く設定された場合、あるスキャン印刷での減速区間長が長くなり、次のスキャン印刷の加速区間長も長くしていた。同時に、α(-)やα(+)を下げていた。しかし、全体的に高いスループットの観点から、停止時間Twの長短にかかわらず、減速度及び加速度は一定でよい。この場合、あるスキャン印刷の減速区間では、一定の減速度α(-)で所定速度Vtから設定された停止位置で停止するまでに必要な区間を残して、キャリッジ2が速度Vtで停止位置に向かって移動する。一方、次のスキャン印刷の加速区間では、一定の加速度α(+)で設定された停止位置から速度Vtまで加速するのに必要な区間を残して、キャリッジ2が速度Vtで吐出区間に向かって移動する。
また、以上では、ノズルからインクを吐出させて記録用紙に印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ノズルからインク以外の液体を吐出させる、プリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。