JP6878726B2 - 試料前処理器具及び該器具を用いた試料前処理方法 - Google Patents

試料前処理器具及び該器具を用いた試料前処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質などの生体物質や種々の化学物質などの被験物質を質量分析するための前処理を行う際に使用する試料前処理器具及び該器具を用いた試料前処理方法に関する。
生体を構成する基本材料である生体高分子(核酸、タンパク質、多糖)や、これらの構成要素であるヌクレオチドやヌクレオシド、アミノ酸、各種糖などの生体物質研究の一つに、質量分析計(mass spectrometry :MS)を基礎とするプロテオミクスの技術・戦略が利用されている。プロテオミクスとは、生命化学の様々な領域で必要不可欠なテクノロジーであり、最も一般的なタンパク質の同定手順は、被験物質であるタンパク質が含有された溶液内でタンパク質を直接酵素(トリプシン)消化し、その消化ペプチドをショットガンMS分析する方法である。
しかしながら、溶液内でのトリプシンによる消化処理はタンパク質の濃度や混入物よって大きく影響を受ける。例えば、1μM以下の希薄タンパク質溶液では、トリプシン消化の効率は著しく減じられる。また、このような希薄溶液では消化されたペプチドの吸着ロスの原因となる反応容器の表面積が増大する。
さらに、溶液内の様々な変性剤(例えば、高濃度のギ酸や、尿素、塩酸グアニジンなどのカオトロピック試薬、SDS(sodium dodecyl sulfate)などの界面活性剤)の混入もトリプシン消化を阻害することから、消化前に凍結乾燥や透析処理、又は特殊なフィルタや有機溶媒を用いた沈殿法などで除去する必要があるが、何れの操作もタンパク質を大きくロスしてしまうため、多種多様な溶液中の微量タンパク質を、高感度にショットガンMS分析することは現状では難しい状況にある。
上述した問題を解決する方法として、疎水性マイクロビーズ担体を用い、その表面に目的タンパク質を予め吸着・濃縮し、その後ビーズ表面に結合したタンパク質に対してトリプシン消化を行うという方法(オンビース消化法)が考案されている。この方法は、種々のタンパク質の濃縮に適用できる上に、試料に混入される上記変性剤などを洗浄操作によって簡単に除去できる利点も併せ持っている。
しかし、この方法はトリプシン消化の前に、目的タンパク質によってビーズ表面を十分にコーティングする必要があり、多量のタンパク質が必要となり試料が微量である場合に適さない。さらに、トリプシン消化においても、部分的に消化されたペプチド断片しか回収されないという問題点もある。
また、疎水性ビーズに代えて親水性マイクロビーズ担体を利用して、タンパク質をオンビーズ消化する方法も複数考案されている。
しかし、この方法では、被験物質であるタンパク質を濃縮する前に試料溶液の酸性化(pH2〜3)、又は疎水性化する必要があり、これによりタンパク質の変性による凝集化(アグリゲーション)を引き起こす可能性がある。また、凝集したタンパク質はトリプシン消化に対して抵抗性を示すことから、被験物質が微量であると同定は困難となる。さらに、親水性ビーズを使用する方法の中には、特殊な界面活性剤で溶解した試料にしか適用できないものもあり、方法としての一般性に欠けるものも含まれる。
そこで、本願発明者らは、上述した問題点を解決しようとする研究過程で、下記非特許文献1に開示されるように疎水性マイクロビーズ担体に結合したタンパク質が有機―水混合溶媒を使用することで効率よく消化できることを見出した(Microbead-Based Organic Medeia-Assisted proteolysis strategy:BOPs法)。
このBOPs法は、疎水性ビーズ表面を目的タンパク質でコーティングせずに効率よくトリプシン消化を達成できる。さらに、この方法は、上記したような希薄試料又は変性剤混入試料からでもロスなく試料調製することが可能となる。実際、線虫 (C. elegans) の1個体に発現する1000種以上のタンパク質を一回の分析で同定できる性能をもっている。
また、下記特許文献1に開示される連続孔をもつ疎水性マイクロビーズ担体(モノリス担体)を、ピペットチップ先端部に固定した固定化チップを用いて、ピペッティング操作によりタンパク質やペプチドの固相抽出と濃縮、或いは脱塩などを行う装置も開発されている。
特許第4558382号
Taoka M, Fujii M, Tsuchiya M, Uekita T, Ichimura T. A sensitive microbread-based organic media assisted method for proteomics sample preparation from dilute and denaturing solutions. ACS Appl Mater Interfaces. 2017, 9(49), 42661-42667
しかしながら、非特許文献1に開示される方法(BOPs法)は、多数のハンドリング操作(溶媒抽出、遠心操作の繰り返し)が含まれており、人為的負担に加えて習熟度の違いに起因する作業の煩雑さ、試料の損失によって結果のMSデータにばらつきが生じてしまう。また、多数のハンドリング操作は、細菌や寄生虫などを標的とする分析技術として作業者に感染リスクを増大させる虞もある。
また、特許文献1に開示される固定化チップは、ピペッティング操作により容易に(抵抗を下げて)溶液を出し入れさせるために、ビーズの内部に大きな空洞(死容積)を作っているため試料の負荷量が低く、加えて通常のピペッティング操作の回数では多量の回収ロスが起こり、濃縮効果が実用的でなかった。また、C8やC18ディスクそのものをチップの開放部先端に梱包したものもあるが、その抵抗のためにピペッティング操作による溶液の出し入れが非常に困難である。
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、溶液内に含有される極微量の被験物質の分析用試料を調製するにあたり、習熟度に拘わらず容易に、且つ高精度に行うことのできる試料前処理器具及び該器具を用いた試料前処理方法を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明の第1の態様は、
分注器の先端に装着して溶液内のタンパク質を質量分析するための消化処理の前段階までの一連の工程を一人の作業者が試料容器を移し替ることなく前記分注器のピペッティング操作のみの手動操作で行い、前記消化処理においてインキュベーターで前記タンパク質をインキュベートするための試料前処理器具であって、
一端に前記分注器を装着するための装着口が形成され、他端に前記タンパク質を注入及び排出する吸排出口が形成され、前記装着口と前記吸排出口の間の内部が前記吸排出口から前記タンパク質の流入と流出が繰り返されることにより前記タンパク質の吸着が行なわれる貯留部とされた容器本体と、
平均粒径が20〜100μmであり、前記貯留部内で移動可能に内包され、前記貯留部内に流入した前記タンパク質を吸着する疎水性マイクロビーズと
前記疎水性マイクロビーズの平均粒径を1とした場合の孔寸法が1/3〜1/5であり、前記容器本体の前記吸排出口に設けられて前記疎水性マイクロビーズの流出を防止しつつ前記タンパク質が通過可能で前記タンパク質の吸着が極めて少なく有機溶剤によって変性しない親水化処理された膜状フィルタと
前記消化処理においてインキュベーターでインキュベートする際に貯留する溶液がこぼれたり蒸発したりするのを防止するために、前記容器本体に一体成形されて前記装着口を閉塞するための蓋及び前記吸排出口に取り付けられる蓋と、
を備えることを特徴とする、試料前処理器具である。
本発明の第2の態様は、請求項1に記載の試料前処理器具を分注器の先端に装着した状態で質量分析用の試料調製に関する消化処理の前段階までの一連の工程を一人の作業者が試料容器を移し替ることなく前記分注器のピペッティング操作のみの手動操作で行い、前記消化処理においてインキュベーターで前記タンパク質をインキュベートするための試料前処理方法であって、
前記分注器の先端に前記試料前処理器具を取り付け、ピペッティング操作による懸濁操作により、高濃度の有機溶媒で洗浄した後に水系緩衝液で平衡化する前記前処理と、
前記分注器のピペッティング操作により前記タンパク質を含有した溶液の吸排出を、前記吸排出口を介して所定数繰り返し行って、前記貯留部内で前記タンパク質を前記疎水性マイクロビーズに吸着させて濃縮するステップと、
前記分注器のピペッティング操作により水系緩衝液と有機溶媒の吸排出を所定数繰り返し行って、前記タンパク質が吸着された前記膜状フィルタを洗浄するステップと、
前記分注器のピペッティング操作により、トリプシンを添加した有機溶媒と水系緩衝液の吸排出を所定数繰り返し行い、さらにこれを吸引する消化処理の前段階の後、前記吸排出口と前記装着口を前記蓋で塞ぎ、前記有機溶媒と水系緩衝液を吸入した状態でインキュベートして前記タンパク質をトリプシン消化させる前記消化処理のステップを含むことを特徴とする、試料前処理方法である。
本発明によれば、分注器の先端に装着可能な容器本体に固定されていない吸着材料が内包されているため、作業者の熟練度に拘わらず、分注器によるピペッティング操作のみでバラつきが少なく極めて再現性の高い分析用試料の作製処理が実施可能となる。
本発明に係る試料前処理器具の概略構成図である。 (a)〜(c)は同器具を用いて被験物質であるタンパク質の分析用試料を調製する手順を示した図である。 実施例1において従来の溶液内消化法により調製した分析用試料と、本発明の試料前処理器具を用いた溶液内消化法により調製した分析用試料のLC−MS分析結果を示すグラフである。 実施例2において熟練度の異なる作業者が調製した分析用試料のLC−MS分析結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。また、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者などによりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
本願発明者らは、従来の分析用試料の調製時における問題点を鑑みて、高精度なMSの分析用試料を容易に、且つ再現性よく調製できる新たな器具及び方法を開発するにあたり、被験物質の損失が可能な限り軽減されるように被験物質を吸着させる材料(吸着材料)を容器内で固定させずに容器内での溶媒との衝突回数を増やすことで被験物質の吸着性が格段に向上することを知得し、本発明の開発に至った。
本発明に係る試料前処理器具1は、主に溶液内の被験物質が数μM以下と微量な希薄試料の被験物質を分析用溶液として調製する際の前処理で使用され、対象となる被験物質を含有する溶液を規定量だけ正確に分注可能なマイクロピペットなどの分注器Dの先端に装着して溶液内の被験物質をピペッティング操作のみで分析用試料の調製を行うための器具である。
試料前処理器具1で吸着分離される被験物質は、例えばタンパク質、糖、脂肪などの生体物質の他、溶液中に含有される金属イオンなどの化学物質が挙げられる。
以下の説明では、被験物質としてタンパク質を使用し、タンパク質を含有する試料溶液に各種処理(タンパク質の濃縮、洗浄、消化処理)を施して質量分析法で使用可能な分析用試料を調製する実施形態を例示する。
まず、本発明に係る試料前処理器具1の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の試料前処理器具1は、容器本体2と、フィルタ3と、吸着材料4とで構成され、分注器Dの先端に取り付けてピペットチップのように使用される。
容器本体2は、例えばポリプロピレンなどの汎用プラスチックやステンレス鋼などの試料が吸着しにくく、また有機溶剤(例えばギ酸、アセトニトリル、アセトン)による洗浄処理などで変性しない材質で形成される。
容器本体2は、内部に液体を貯留する空洞(貯留部2a)を有し、先端には被験物質が含有された試料溶液や各種処理で使用する溶液を吸入及び排出するための吸排出口2bが、終端には分注器Dの先端に嵌合するための装着口2cが形成されている。本実施形態の容器本体2は、装着口2cから吸排出口2bに向かって徐々に貯留部2aの内径寸法が先細るように延びる円錐筒形状を成している。
また、吸排出口2bや装着口2cには、分注器Dから容器本体2を取り外して質量分析計にセットするまでの間やインキュベーターでインキュベートする際に貯留する溶液がこぼれたり蒸発したりするのを防止するための蓋2dを取り付けることもできる。図1では装着口2cを閉塞するための蓋2dが容器本体2に一体成形されている。
なお、容器本体2の形状は、少なくとも貯留部2aと、吸排出口2bと、装着口2cとを備えていればその形状は特に限定されず、被験物質が含有する溶液を収容する容器の形状に合せて成形すればよい。
フィルタ3は、被験物質の吸着が極めて少なく、有機溶剤(例えばギ酸、アセトニトリル、アセトン)によって変性しない親水化処理された膜状フィルタで構成される。フィルタ3の具体例としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PolyTetra FluoroEthylene:PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride : PVDF)などのフッ素系樹脂からなる膜状フィルタが好適である。
フィルタ3は、容器本体2内に内包した吸着材料4の流出を防止しつつ、被験物質が含有される試料溶液や有機溶媒などを数秒以内で吸入及び排出可能な細孔サイズ、膜厚及び空隙率となるものが適している。よって、フィルタ3を選択する場合は、使用する吸着材料4によって自ずと細孔サイズ、膜厚及び空隙率が規定されることになる。例えば吸着材料4の平均外寸(吸着材料4が粒子状の場合は平均粒子径)を1とすると、フィルタ3の孔寸法は、吸着材料4のサイズよりも概ね1/3〜1/5程度小さいものを使用すれば、吸着材料4がフィルタ3の孔を通過することがなく、また溶液の吸排出にも支障をきたさない。
フィルタ3の仕様例としては、吸着材料4として平均粒径が50μmのマイクロビーズを使用し、容器本体2の吸排出口2bの内径が0. 8mmの場合、細孔サイズ10μm、膜厚85μm、空隙率80%のものが使用できる。
フィルタ3は、容器本体2の吸排出口2bを覆うように設けられていれば特に固定方法は限定されないが、例えば容器本体2の内側からプラスチック製のO−リングによる圧着で固定することができる。
なお、吸着材料4と吸排出口2bのサイズ比や吸着材料4の形状によって、吸排出口2bから吸着材料4が流出しない構成の場合は、フィルタ3を装着しないで使用することも可能である。
吸着材料4は、被験物質が吸着可能な形態を有し、平均粒径が20〜100μm程度の吸着材粒子で構成され、容器本体2の内壁やフィルタ3の膜面などに固定されていない状態で貯留部2a内に収容される。吸着材料4としては、例えば幅広pH領域での使用に安定な合成ポリマー系の逆相ポリマービーズなどの疎水性マイクロビーズや、C8やC18などを結合させたシリカやガラスなどのビーズ担体を使用することができる。
本実施形態において、吸着材料4は疎水性マイクロビーズを水性分散媒(水や有機溶媒)に懸濁したものを使用しているが、容器本体2の貯留部2aに内包されていればよいため、吸着材料4の粒体を直接貯留部2aに収容するなど、その使用形態は特に限定されない。
容器本体2に内包する吸着材料4の量は、溶液中のタンパク含量に依存する。例えば、合成ポリマービーズであるポリスチレン系の逆相ポリマー(POROS R2:アプライドバイオシステムズ社製) を使用した場合は、ビーズ1μlあたり、タンパク質の結合容量が1〜15μg見込まれるため、通常のタンパク溶液では1μlで十分である。
なお、本実施形態では吸着材料4の形状を粒形としているが、吸着効率を考慮して突起部を設けたり、凹凸を設けたりするなど形状を適宜変更することもできる。また、サイズについても、吸排出口2bから流出しない程度のサイズとすることもできる。
次に、上述した試料前処理器具1を用いた分析用試料の調製方法について図2を参照しながら説明する。
なお、本実施形態では、被験物質がタンパク質であるため、一般的に知られているタンパク質の試料調製工程(濃縮処理→洗浄処理→消化処理)と同様の工程を経るが、本発明の試料前処理器具1を用いた場合、前処理〜消化処理の前段階までのハンドリング操作が全て分注器Dのピペッティング操作のみで行える点が、従来の方法と大きく異なる。
まず、前処理として、分注器Dの先端に試料前処理器具1を取り付け、ピペッティング操作による懸濁操作(2〜3回)により、高濃度の有機溶媒で洗浄した後に水系緩衝液で平衡化する。
<濃縮処理>
被験物質の濃縮処理は、マイクロチューブに収容された試料溶液をピペッティング操作により懸濁操作を所定回数行う。この処理により、貯留部2a内への試料溶液の流入/流出が繰り返し行われることで、被験物質が吸着材料4の表面に吸着して濃縮される。濃縮処理におけるピペッティング回数は、試料溶液の液量に依存するが、概ね20μlの試料では15〜20回、100μlでは30〜40回程度行う。
また、濃縮処理という観点では、試料溶液が収容されたマイクロチューブに吸着材料4を加え、ミキサーなどの攪拌機を用いて被験物質を吸着させた吸着材料4を容器本体2の貯留部2aに収容することもできる。このようにすると、試料溶液を複数試験する場合に、ピペッティング操作による濃縮処理よりも短時間で行うことができる。
なお、濃縮処理後の吸着材料4を容器本体2に収容する場合は、例えば吸着材料4を装着口2cから入れた後に試料前処理器具1を分注器Dの先端に装着すればよい。
<洗浄処理>
被験物質の洗浄処理は、洗浄液としてマイクロチューブに収容された水系緩衝液を用いて数回(2、3回程度)ピペッティング操作する処理が基本となり、貯留部2a内への洗浄液の流入/流出が繰り返し行われることで洗浄される。る。また、吸着材料4に吸着されてしまう混入物(例えば界面活性剤)が試料溶液内に混和している場合は、タンパク質とともにこれらの混入物も吸着材料4に吸着してMS分析を妨害する虞があるため、洗浄液としてアセトンや酢酸エチルなどの有機溶媒を用いたピペッティング操作(2、3回程度)による洗浄を、水系緩衝液を用いる洗浄操作に前に行う。これにより、混入物の除去が可能となる。
<消化処理>
被験物質の消化処理において、トリプシン消化の溶媒として少量の有機溶媒―水系緩衝液を用いる。有機溶媒と緩衝液の組み合わせは種々考え得るが、例えばアセトニトリルと100mM(最終濃度)とTris−HCl緩衝液(pH8)との組み合わせの場合、概ね60:40〜80:20(V/V)間で調整するのが好ましい。
トリプシン消化は、この混合溶媒にトリプシンを直接添加した溶液を数回(2、3回程度)ピペッティング操作することで開始できる。その後、トリプシン溶液を吸引した試料前処理器具1の吸排出口2b及び装着口2cを塞ぎ、37℃で所定時間インキュベートし消化する。なお、上記混合溶媒を用いた場合、先に吸着材料4に結合していた目的タンパク質が該材料4から解離するので、ピペッティング操作によって溶液を試料前処理器具1から小型のマイクロチューブに移し、その後同チューブ内で消化反応を進めることも可能である。また、トリプシンはその際にチューブに添加してもよい。
このように、濃縮処理、洗浄処理及び消化処理が終了した試料溶液は、ピペッティング操作によって小型のチューブに押し出す。回収した試料溶液は、その適当量を酸性水溶液で希釈又は溶媒乾燥した後に酸性水溶液に再溶解することで、そのまま分析用試料として利用することができる。
以上のように、上述した試料前処理器具1は、固定されていない吸着材料4を内包し、分注器Dによるピペッティング操作のときに吸着材料4の流出を防ぐフィルタ3を備えているため、分注器Dによるピペッティング操作のみで被験物質の分析用試料の調整処理を熟練度によらず容易に行うことができる。例えば、被験物質がタンパク質の場合、試料溶液を移し替ることなく濃縮処理、洗浄処理及び消化処理が行え、精密な試料調製が可能である。
また、試料前処理器具1は、吸着材料4が容器本体2内で自由に移動可能な状態で内包されているため、分散反応を効果的に利用することで、吸着材料4としてビーズを固定した市販品ピペットチップを用いる方法よりも濃縮効率が高く、容易に高精度な試料調製が可能となる。
さらに、容器本体2を分注器Dに装着した状態で試料調整に関する一連の工程が行えるため、作業者や環境に対する試料の感染リスクを最小化できるとともに、自動化にも容易に対応することができる。よって、上述した形態では、分注器Dとして作業者が手動操作を行うマイクロピペットを用いた形態で説明したが、その他の実施形態として、分注器Dを特定の制御信号又は特定の操作により自動で液体の吸引・排出を行う電動式ピペット又はシリンジとした構成を採用してもよい。
次に、本発明に係る試料前処理器具1を用いた実施例について説明する。
なお、下記に示す実施例は本発明を限定するものではなく、前・後記の趣旨に照らし合わせて本発明の構成及び特徴要件を逸脱しない範囲で適宜設計変更することは、何れも本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
[実施例1]
実施例1は、本発明の試料前処理器具1を用いて溶液内消化法により調製した分析用試料と、従来の溶液内消化法により調整した分析用試料における分析感度を比較した。
本発明の試料前処理器具1を用いた溶液内消化法において、試料前処理器具1の構成は、下記の通りである。
・容器本体2:ピペットチップ(QSPピペットチップ1−200μl クリアー:ThermoFisherScientific社製)
・フィルタ3:PTFEメンブレン(オムニポアメンブレンフィルター:細孔サイズ10. 0μm,Merck社製)
・吸着材料4:R2ビーズ (POROS R2マイクロビーズ:平均粒子径50μm,PerSeptive Biosystems社製)
上記ピペットチップの吸排出口2bに上記PTFEメンブレンを固着させ、懸濁したR2ビーズを収容して本実施例で使用する試料前処理器具1を作製した。
前処理として、100μlの75%アセトニトリル(LCグレード,Millipore社製)/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA: ≧99.0%,nacalai tesque社製)で洗浄後、100μlのトリス塩酸緩衝液(100mM Tris−HCl(pH8)を用いて前記器具1を平衡化した。
次に、濃縮処理として、平衡化した前記器具1を用い、100μlのトリス−塩酸緩衝液(100mM Tris−HCl(pH8)に0. 15μMのウシ血清アルブミン(BSA(Bovine Serum Albumin),富士フイルム和光純薬株式会社製)を含有させた溶液を40回ピペッティング操作し、吸着材料4にBSAを吸着させ濃縮した。
次に、洗浄処理として、100μlのトリス−塩酸緩衝液(100mM Tris−HCl(pH8),富士フイルム和光純薬株式会社製)を洗浄液として用いて3回のピペッティング操作により吸着材料4を洗浄した。
その後、60%のアセトニトリル(LCグレード,Millipore社製)と40%のトリス−塩酸緩衝液(100mM Tris−HCl(pH8)を最終濃度とした混合溶媒20μlに0.5μgのトリプシン(MSグレード:Promega社製)を含有させた溶液を前記器具1内に吸引し、37℃でオーバーナイトインキュベートしてトリプシン消化による分析用試料の調製をした。
一方、従来の溶液内消化として、0.15μMのBSA溶液(100μl, 100mM Tris−HCl,pH8)に0.5μgのトリプシンを直接加えて分析前試料の調製を行った。
それぞれの分析用試料は、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS)システム(LC−MSnanoACQUITY UPLC−Xevo G2−S QTofシステム:Waters社製)で質量分析した。
図3は、従来の溶液内消化法により調製した分析用試料と、本発明の試料前処理器具1を用いた溶液内消化法により調製した分析用試料をそれぞれLC−MS分析(消化物は5ng相当分)した結果を示したグラフである。なお、各グラフ中の縦軸はピーク強度を示し、横軸は保持時間を示す。
図3に示すように、従来の溶液内消化法は、本発明の試料前処理器具1を用いた溶液内消化法と比べて消化効率が著しく減じさられることが明らかとなった。これは、1μM以下の希薄試料ではトリプシン消化がうまく進行しないという過去の報告と一致した。しかしながら、本発明の試料前処理器具1を用いた溶液内消化法では、同濃度のBSAに由来する多数の消化ペプチドを高いシグナル強度で検出した。この結果から、本発明の試料前処理器具1は、希薄タンパク溶液から高精度な分析前試料を正確に調製可能であることが確認された。
[実施例2]
実施例2は、作業者によるデータのばらつきの程度を検討するため、試料調製の習熟度が異なる5人の作業者(作業者1〜5)に試料調製処理を実施させた。
使用した試料前処理器具1は、実験例1で作製した器具と同様であり、実施例1と同様に、前処理、濃縮処理、洗浄処理、消化処理を実施した。なお、実施例2における濃縮処理では、0. 75μMのウシ血清アルブミン溶液(BSA溶液、20μl, 100mM Tris−HCl(pH8),富士フイルム和光純薬株式会社製)を15回ピペッティングする内容に変更した。
各作業者が調製した分析用試料は、実施例1と同様の液体クロマトグラフィー/質量分析(LC−MS)システムを用いて質量分析した。
図4は、熟練度の異なる作業者が調製した分析用試料をそれぞれLC−MS分析(消化物は5ng相当分)した結果を示したグラフである。なお、各グラフ中の縦軸はピーク強度を示し、横軸は保持時間を示す。
図4に示すように、各作業者のMSデータを比較したところ、全てのLC−MSクロマトグラムはほぼ同一の消化パターンを示すことが明らかとなった。これにより、本発明の試料前処理器具1を使用することで、習熟度の有無に拘わらず同一精度の分析用試料を調製できることが確認された。
以上、実施例1、2の結果を考察すると、本発明の試料前処理器具1を用いて分析用試料を調製すれば、バラつきが少なく極めて再現性の高い試料作製処理が実施可能であることが明らかとなった。こうしたローハンドリング操作によるMSデータの取得は、極めて実用的であることから、生命科学の様々な研究に幅広く適用できるものと期待される。また本発明は、作業者の実験リスクを低減させ、今後の操作自動化を達成するための基盤技術としても極めて有用であると考えられる。
1…試料前処理器具
2…容器本体(2a…貯留部、2b…吸排出口、2c…装着口、2d…蓋)
3…フィルタ
4…吸着材料
D…分注器

Claims (2)

  1. 分注器の先端に装着して溶液内のタンパク質を質量分析するための消化処理の前段階までの一連の工程を一人の作業者が試料容器を移し替ることなく前記分注器のピペッティング操作のみの手動操作で行い、前記消化処理においてインキュベーターで前記タンパク質をインキュベートするための試料前処理器具であって、
    一端に前記分注器を装着するための装着口が形成され、他端に前記タンパク質を注入及び排出する吸排出口が形成され、前記装着口と前記吸排出口の間の内部が前記吸排出口から前記タンパク質の流入と流出が繰り返されることにより前記タンパク質の吸着が行なわれる貯留部とされた容器本体と、
    平均粒径が20〜100μmであり、前記貯留部内で移動可能に内包され、前記貯留部内に流入した前記タンパク質を吸着する疎水性マイクロビーズと
    前記疎水性マイクロビーズの平均粒径を1とした場合の孔寸法が1/3〜1/5であり、前記容器本体の前記吸排出口に設けられて前記疎水性マイクロビーズの流出を防止しつつ前記タンパク質が通過可能で前記タンパク質の吸着が極めて少なく有機溶剤によって変性しない親水化処理された膜状フィルタと
    前記消化処理においてインキュベーターでインキュベートする際に貯留する溶液がこぼれたり蒸発したりするのを防止するために、前記容器本体に一体成形されて前記装着口を閉塞するための蓋及び前記吸排出口に取り付けられる蓋と、
    を備えることを特徴とする試料前処理器具。
  2. 請求項1に記載の試料前処理器具を分注器の先端に装着した状態で質量分析用の試料調製に関する消化処理の前段階までの一連の工程を一人の作業者が試料容器を移し替ることなく前記分注器のピペッティング操作のみの手動操作で行い、前記消化処理においてインキュベーターで前記タンパク質をインキュベートするための試料前処理方法であって、
    前記分注器のピペッティング操作により前記タンパク質を含有した溶液の吸排出を、前記吸排出口を介して所定数繰り返し行って、前記貯留部内で前記タンパク質を前記疎水性マイクロビーズに吸着させて濃縮するステップと、
    前記分注器のピペッティング操作により水系緩衝液と有機溶媒の吸排出を所定数繰り返し行って、前記タンパク質が吸着された前記膜状フィルタを洗浄するステップと、
    前記分注器のピペッティング操作により、トリプシンを添加した有機溶媒と水系緩衝液の吸排出を所定数繰り返し行い、さらにこれを吸引する消化処理の前段階の後、前記吸排出口と前記装着口を前記蓋で塞ぎ、前記有機溶媒と水系緩衝液を吸入した状態でインキュベートして前記タンパク質をトリプシン消化させる前記消化処理のステップを含むことを特徴とする試料前処理方法。
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