JP4457236B2 - 担体収容処理装置および担体収容処理方法 - Google Patents

担体収容処理装置および担体収容処理方法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、担体収容処理装置およびその方法に関する。本発明は、遺伝子、免疫系、アミノ酸、蛋白質、糖等の生体高分子、生体低分子の扱いが要求される分野、例えば、工学分野、食品、農産、水産加工等の農学分野、薬学分野、衛生、保健、免疫、疾病、遺伝等の医学分野、化学若しくは生物学等の理学の分野等、あらゆる分野に関係するものである。
本発明は、特に、多数の試薬や物質を用いた一連の処理を所定の順序に連続的に実行する場合に有効な方法である。
背景技術
従来、検査対象となる目的物質について多数の試薬や物質を用いた一連の反応処理を行う場合には、例えば、前記目的物質をビーズ等の微小担体に結合させて試験管に収容する。その後、該試験管に種々の試薬等を注入し、該担体を何らかの方法で分離し、該担体を別容器に移動し、さらに別の試薬等を注入したり、加熱等の処理を行っていた。例えば、該担体が磁性体である場合には、磁場によって、試験管の内壁に吸着させることで分離をおこなっていた。
また、プレパラート等の平面状の担体に、例えば、種々のオリゴヌクレオチドを固定したものを用いて目的物質の検査を行う処理については、該担体自体を、標識化した目的物質が懸濁する懸濁液中に移動させたり、該担体自体に種々の試薬を分注したり、該担体自体を洗浄液中に移動させたり、発光の測定を行うために該担体を測定機の測定位置にまで移動させたりする一連の反応処理を行うことによって、前記目的物質の塩基配列構造を調べていた。
これらの処理を行うには、前記担体自体の分離、および担体自体の移送が必要であり、そのため処理が複雑かつ手間がかかるおそれがあるという問題点を有していた。特に、これらの担体自体を移送する場合については、人手で行う場合には使用者に大きな負担をかけ、またクロスコンタミネーションのおそれもあった。また、担体自体を機械によって移送する場合には大掛かりな装置が必要であった。また、非磁性担体の分離を行う場合には、担体の大きさや比重によって分離を行う必要があり、処理が複雑で手間がかかるという問題点を有していた。
一方、試験管または平面状担体を用いるのではなく、液体の通過が可能な液通過路が設けられたピペットチップ、該ピペットチップが装着されるノズル、前記ピペットチップの液通過路に磁場を及ぼす磁力装置と、該ピペットチップ内に流体を吸引し吐出させる吸引吐出機構を有するピペット装置を用いて反応処理を行うものがあった。この方法によると、表面に各種物質が保持された多数の磁性粒子が懸濁する懸濁液を吸引し、吸引の際に磁場を及ぼすことによって、該磁性粒子を効率的にピペットチップの前記液通過路に吸着させて分離等を行うことができる。
該装置を用いる場合には、磁性粒子が液通過路を通過可能であるため、磁性粒子を前記ピペットチップ内に保持するには磁場をかけて内壁に吸着させておく必要があった。そのために、処理を行うには、吸引吐出制御と、磁場による吸着制御、ピペットチップの移動制御とを複雑に組み合わせる必要があった。また、前記担体が非磁性粒子の場合については、該装置によって分離を行うことはできないという問題点があった。
そこで、本発明の第1の目的は、各種物質が固定されまたは固定可能な担体については、担体収容部内に収容保持したままで、処理を行うことを可能とすることによって、該担体を該収容部に収容し保持するための吸着制御や、吸引制御を不必要にし、複雑な反応処理を簡単化し、かつ小規模の装置構成によって容易に処理を実行することができるようにした担体収容処理装置及び方法を提供することを目的としてなされたものである。
第2の目的は、各種物質が固定されまたは固定可能な担体については、その収容及び除去を、流体または該流体に懸濁する物質の吸引吐出を行う経路とは別個の経路で行うことによって、流体と担体とを分ける処理を不必要にして、複雑な反応処理を簡単化し、かつ小規模の装置構成によって容易に処理を実行することができるようにした担体収容処理装置及び方法を提供することを目的としてなされたものである。
第3の目的は、各種物質が固定されまたは固定可能な担体については、それを収容する担体収容部から簡単に除去することができるようにして、担体の交換、保存、該担体に対する他の処理を容易に実行することができるようにして、処理の効率化、処理の信頼性、処理の確実性を高めることができる担体収容処理装置及び方法を提供することを目的としてなされたものである。
第4の目的は、担体の材料とは無関係に、磁性体の素材に限定することなく、担体の形状や大きさを適当に定めることによって、分離を容易に可能とするので、材料に対する選択の幅が増加し、処理に最適な材料を選ぶことができる担体収容処理装置および方法を提供することを目的としてなされたものである。
発明の開示
以上の技術的課題を解決するために、第1の発明は、リガンド等の化学物質を固定し又は固定可能な1または2以上の担体と、流体の入出口が設けられ前記担体が収容された担体収容部と、前記入出口を通って流体を前記担体収容部に対して吸引させかつ吐出させる吸引吐出部と、外部に設けた容器に対して該入出口を相対的に移動する移動部と、を有するとともに、前記担体を、前記入出口を通過できない大きさまたは形状に形成するとともに、前記担体の自重、前記担体と前記収容部の内壁との間の摩擦力、または前記担体に対する外部からの遠隔力によって、前記担体を前記収容部内に保持した状態で流体の吸引および吐出を行う担体収容処理装置である。
ここで、「リガンド」とは、例えば、核酸等の遺伝物質、蛋白質、糖、糖鎖、ペプチド等の生体高分子又は低分子等の生体物質を含む化学物質である。該リガンドは、該リガンドに結合性を有する受容体の結合を検出し、捕獲し、分離し、抽出とを行う検出用物質として用いられる。受容体としては、前記核酸等の遺伝物質、蛋白質、糖鎖、ペプチド等に各々結合性を有する核酸等の遺伝物質、蛋白質、糖鎖、ペプチド等の生体高分子又は生体低分子等の化学物質が該当する。「固定」は、例えば、共有結合、化学吸着による場合の他、物理吸着または電気的相互作用による場合等がある。
前記担体は、1種類以上のリガンド等の化学物質を固定しまたは固定可能な部材であり、前記担体収容部内に「前記担体の自重、前記担体と前記収容部の内壁との間の摩擦力、または前記担体に対する外部からの遠隔力」によって保持されるので、担体の自重以上の力で担体を持ち上げたり、摩擦力に抗する力によって動かしたり、遠隔力を除去することによって保持状態を容易に解除することができる。
この場合、前記担体収容部に、前記担体の通過が可能な大きさをもつが、前記流体は通過しない開口部を設けることによって、担体収容部内の担体のみの交換、除去、保存等が可能になる。該担体には、所定のリガンドや受容体等が結合した状態であったり、または、何ら物質が結合していない状態にある場合もある。この前記担体収容部から除去、保存、交換された担体は、さらに、別の処理工程における処理の対象とすることもできる。これによって、種々の処理を可能にして、処理の多様化を図ることができる。
なお、例えば、遠隔力として磁場を用いる場合には、前提として、前記担体自体が磁性体または該担体中に磁性体が含まれ、また、該担体収容部の外部に、該担体収容部内に磁場を及ぼす磁力手段が必要がある。電場を用いる場合には、担体は、電荷を帯びた荷電体である必要がある。また、該担体には、化学物質が化学的、物理的吸着、担体に固定して設けられている結合物質との特異的反応、その他の方法で固定されている。また、該担体は多孔質性部材、凹凸性部材、繊維質状部材で形成することによって、化学物質との反応能力や結合能力を高めるようにしても良い。
前記担体は、前記担体収容部内の流体の存在、該担体収容部内への流体の吸引及び吐出によっては、担体が浮き上がったり、動いたりしない程度の自重、摩擦力、遠隔力によって保持されて、流体の量に応じて担体と十分に接触するのが好ましい。特に、前記リガンド等を前記担体にその化学構造に応じた位置に固定して発光の測定を行う場合には、該担体の位置が変動しないことが好ましい。
本発明によれば、各種物質が固定されまたは固定可能な担体については、担体収容部内に収容したままで処理を行うことが可能となるようにしている。したがって、該担体を該担体収容部に収容し保持するための吸着制御や吸引制御を不必要にし、複雑な反応処理を簡単化し、かつ小規模の装置構成によって容易に処理を実行することができる。
また、本発明によれば、各種物質が固定されまたは固定可能な担体については、その収容及び除去を、流体または該流体に懸濁する物質の吸引吐出を行う経路とは別個の経路で行うようにしている。したがって、流体と担体とを分ける処理を不必要にして、複雑な反応処理を簡単化し、かつ小規模の装置構成によって容易に処理を実行することができる。
さらに、本発明によれば、各種物質が固定されまたは固定可能な担体については、それを収容する担体収容部から簡単に除去することができるようにしている。したがって、担体の交換、保存、該担体に対する他の処理を容易に実行することができ、処理の効率化、処理の信頼性、処理の確実性を高めることができる。
また、本発明によれば、担体を担体収容部に保持したまま、流体を吸引吐出することと、該担体収容部を移動することだけで、種々の処理、例えば、反応、洗浄、温度制御、分離、攪拌、分注、清澄、単離、溶出、抽出を行うことができるので、処理を効率的、迅速かつ容易に行うことができる。
第2の発明は、前記担体収容部は、前記担体を収容する太径部、および、先端に前記入出口を有し外部に設けた容器に挿入可能な細径部を有する担体収容処理装置である。
さらに、該担体収容部を、太径部と、太径部よりも細い径をもつ細径部と、太径部および細径部の間に設けられ該細径部と該太径部の中間の径を持つ中間径部とを有するように設けても良い。この場合には前記中間径部に担体を収容するようにする。この場合、中間径部を該担体を収容することができる大きさをもつが、該担体を収容した場合の残余の該中間径部の空間の容量を、該担体の体積よりも十分に小さく形成することによって、吸引すべき流体の体積が前記担体の体積よりも十分に小さい少量の流体についても処理を行うことができる。また、前記太径部の容量を少なくとも、処理の対象となる液体を収容する容器の最大の容量に設定することによって、容器に収容できる最大の容量の液体を扱う処理にも対応することができる。なお、細径部、中間径部、および太径部の境界は、急激に径の大きさが推移する場合のみならず、太径から細径に漸次推移するように形成しても良い。
本発明によれば、外部の容器に挿入可能な細径部を設けることによって、恒温状態に設定された容器を含む容器間を、前記担体を収容したまま移動させて、各容器に収容した種々の試薬、懸濁物等の液体の吸引または吐出等を行って、反応、洗浄、温度制御、分離、攪拌、分注、清澄、単離、溶出、抽出等を行うことができる。したがって、一連の処理を容器間の移動処理に還元することができるので、制御が簡単化される。
第3の発明は、前記担体収容部は、前記担体の通過が可能な大きさをもつ開口部を有するとともに、前記吸引吐出部は、前記開口部と着脱可能に連結するノズルが設けられ、前記担体を、前記開口部は通過できるが前記入出口を通過できない大きさまたは形状に形成した担体収容処理装置である。
ここで、前記担体は、前記ノズルに装着前の前記収容部に予め収容されているようにしても良い。その場合、前記開口部は、蓋体で着脱可能に塞ぐようにして、前記担体を封入するようにしても良い。
本発明によれば、担体を担体収容部に取り出し可能に収容しているので、担体の交換等を行うことによって、クロスコンタミネーションを確実に防止し、また、該担体の保存、更なる処理を行うことができる。
第4の発明は、前記担体は、前記入出口よりも大きい径を持つ粒子、または前記入出口を通過不能の形状をもつブロック状部材、板状材部材、所定の大きさに曲げて形成された針金状部材若しくは不定形状部材である担体収容処理装置である。ここで、ブロック状部材には、球状、円筒状、角柱状等の部材がある。
本発明によれば、種々の材料を用いることができるので、多様な処理を行うことができる。
第5の発明は、前記2以上の担体は、種類が複数である担体収容処理装置である。
本発明によれば、担体を複数収容することによって、複数処理を並行して行うことによって、処理を迅速かつ効率的に行うことが可能である。
第6の発明は、前記担体が前記担体収容部の内壁との密着を避けるための突起部、溝又は凹凸面等の密着防止部を前記担体に設けた担体収容処理装置である。
本発明によれば、担体収容部の内壁との密着を避けるための突起部、溝又は凹凸面等の密着防止部を担体に設けることによって、担体の流体との接触効率を高めることができる。
第7の発明は、前記担体との密着を避ける為の突起部、溝又は凹凸面等の密着防止部を前記担体収容部に設けた担体収容処理装置である。
本発明によれば、担体収容部の内壁との密着を避けるための突起部、溝又は凹凸面等の密着防止部を担体に設けることによって、担体の流体との接触効率を高めることができる。
第8の発明は、前記担体は、前記担体収容部を上下の空間に分割して仕切るように前記担体収容部内の所定位置に保持された流体の通過可能な貫通孔保有部材、透過膜状部材、多孔質性部材又はメッシュ状部材である担体収容処理装置である。
本発明によれば、収容部を上下の空間に分割して仕切るように、担体を設け、流体が通過可能であるため、流体との接触効率が高い。
第9の発明は、前記担体は前記担体収容部の所定位置である底部に自重で保持されるとともに、該底部には、前記担体が前記流体の通過を妨げないように、突起部状、溝状または凹凸面状等の流体通過用の担体保持部を設けた担体収容処理装置である。
本発明によれば、底部に、流体の通過を妨げないような担体保持部を設けているので、担体と流体との接触を確実に行わせ、処理の効率的を図ることができる。
第10の発明は、前記担体収容部を、透光性のある部材で形成するとともに、該担体収容部の外部に前記担体上の発光を測定する測定機を設けた担体収容処理装置である。
本発明によれば、発光を測定する測定機を設けているので、反応のみならず、測定をも含めて一貫して行うことができる。
第11の発明は、前記担体収容部は、前記測定機を設けた側の面が平面状に形成された担体収容処理装置である。これによって、発光を確実に測定することができる。
本発明によれば、発光の測定を確実に行うことができる。
第12の発明は、前記担体は、磁性体を含有するとともに、前記担体収容部の外部から及ぼす磁場によって、前記担体を前記担体収容部の所定位置に保持する担体収容処理装置である。
本発明によれば、磁性体によって、前記収容部の所定位置に担体を保持することによって、位置を含めた発光の測定を確実に行うことができる。
第13の発明は、前記担体は、ガラスまたはその表面がガラスによって被覆された担体収容処理装置である。
本発明によれば、ガラスで表面を被覆した担体を用いることによって、簡単にDNA物質を捕獲することができる。
第14の発明は、リガンド等の化学物質を固定し又は固定可能な1又は2以上の担体を収容し、流体の通過は可能であるが前記担体の通過は不能な入出口を有する収容部に対して、前記入出口を通って、吸引吐出部により外部の容器から流体を吸引し、前記担体の自重、前記担体と前記担体収容部の内壁との間の摩擦力、または前記担体に対する外部からの遠隔力によって前記担体収容部内に保持した前記担体と吸引した流体とを接触させる吸引接触工程と、前記担体を前記担体収容部に収容した状態で、前記吸引吐出部によって前記流体のみを前記入出口を通って吐出する吐出工程とを有する担体収容処理方法である。
本発明は、第1の発明で説明したものと同様な効果を奏する。
第15の発明は、前記入出口を外部に設けた容器に対して相対的に移動させる移動工程をさらに有する担体収容処理方法である。
本発明によれば、種々の処理を容器間で前記入出口を移動させることによって行うことができる。
第16の発明は、前記反応工程は、前記担体収容部に対して、流体の吸引吐出を繰り返す工程を有する担体収容処理方法である。
本発明によれば、担体収容部に対して、流体の吸引吐出を繰り返すことによって、効率良く反応を確実に行わせることができる。
第17の発明は、前記担体が通過可能な大きさをもつ開口部から、該担体を前記担体収容部に収容する収容工程をさらに有する担体収容処理方法である。
本発明によれば、担体を担体収容部に取り出し可能に収容しているので、担体の交換等を行うことによって、クロスコンタミネーションを確実に防止し、また、該担体の保存、更なる処理を行うことができる。
第18の発明は、前記担体収容部に設けた前記担体が通過可能な大きさを持つ開口部から、前記担体を前記担体収容部から除去する除去工程をさらに有する担体収容処理方法である。
本発明によれば、担体を担体収容部に取り出し可能に収容しているので、担体の交換等を行うことによって、クロスコンタミネーションを確実に防止し、また、該担体の保存、更なる処理を行うことができる。
発明を実施するための最良の形態
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る担体収容処理装置10について図1に基づいて説明する。各実施の形態の説明は、特に指定のない限り、本発明を制限するものと解釈してはならない。
図1(a)に示すように、本実施例に係る担体収容処理装置10は、リガンドとして所定の塩基配列をもつDNAを表面に固定可能な1個の球形担体11と、流体の入出口12を有するとともに前記球形担体11が収容された略円筒状の担体収容部13と、前記入出口12を通って、流体を前記担体収容部13に対して吸引させかつ吐出させる吸引吐出部14と、外部に設けた容器15〜18に対して、前記担体収容部13の流体の入出口12を相対的に移動させる図示しない移動部とが設けられている。
また、前記担体収容部13は、前記球形担体11を収容する太径部19、及び先端に入出口12を有し前記容器15〜18に挿入可能な前記太径部より細い径をもつ細径部20を有している。前記球形担体11の径は、前記細径部20の内径、したがって、入出口12の口径よりも大きく形成されているので、該球形担体11が前記細径部20を通って、担体収容部13外に排出されることはない。また、前記担体収容部13は前記球形担体11の通過が可能な大きさを持つ開口部21を有している。
前記吸引吐出部14は、先端に前記開口部21と着脱可能に連結するノズル部22と、シリンダ23と、該シリンダ23と前記ノズル部22とを連通させる細管24とを有している。さらに、前記ノズル部22と前記担体収容部13との間には、水密性を保つ為のOリング25が設けられている。
前記担体収容部13にある太径部19の底部には、前記球形担体11を保持するための上方に突出するような担体保持部26が設けられている。該担体保持部26は、例えば、前記太径部19の底部の中心にある孔の周囲3または4箇所に等間隔に配置して設けられている。
前記容器15〜18には、処理の順序に従って必要となる、検体や試薬等が収容されている。容器17は所定温度に保持された恒温ブロック27に収容され、容器17に収容されている液体を所定温度に維持する。
前記球形担体11には、所定のリガンド、例えば、一本鎖DNAが固定され、又は固定可能であり、該球形担体11自体は、多孔質状に形成されて、リガンドの保持能力を高め、液体が内部を通過可能にして、リガンドと液体との遭遇性を高めている。該球形担体11は、前記担体収容部13に対して、吸引され吐出される液体の比重よりも十分大きい比重をもつように形成して、突起状の部材である担体保持部26に自重で載置させている。
該球形担体11は、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ウレタン、ゴム等を含む樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で形成することができる。また、例えば、内部に金属で形成した錘を入れ外部に樹脂等で形成することによって自重を持たせるようにして材料を組み合わせても良い。
図1(b)には、他の実施例に係る担体収容処理装置を示している。
該装置は、第1の実施例に係る担体収容処理装置10と異なり、球形担体11の代わりに板状担体31が設けられている。板状担体31の幅、長さ、厚さの内の少なくとも2つの長さは、前記細径部20の内径、したがって、前記入出口12の口径よりも大きく形成され、該板状担体31が前記細径部20をとおって、該担体収容部30外に排出されることはない。
また、前記担体収容部30は、前記板状担体31の通過が可能な大きさをもつ開口部21を有している。前記板状担体31の形状から、該板状担体31が前記入出口に通ずる細径部20の通路を塞ぐことはないので、前記担体保持部26は設けられていない。板状担体31の材料は、前述した球形担体11の場合と同様である。
図2(a),(c)には、第2の実施の形態に係る担体収容部30の例を示す。
該担体収容部30は、前記球形担体11が収容された略3段の略円筒状をしており、内部に前記球形担体11を収容している。該担体収容部30は、流体の入出口36を有するとともに、前記入出口36を通って、流体を前記担体収容部30に対して吸引させかつ吐出させる吸引吐出部のノズル部38に装着して取り付けられている。また、該担体収容部30の前記入出口36は、外部に設けた図示しない容器に対して、図示しない移動部によって相対的に移動可能である。
前記担体収容部30は、流体の収容が可能で、前記ノズル部38に対してOリング39を介してその開口部40が取り付けられた太径部33、先端に入出口36を有し前記容器に挿入可能で、前記太径部より小さい径をもつ細径部35、該太径部33と細径部35との間に設けられ、これらの径の中間の径をもち前記球形担体11が収容される中間径部34とを有する。
また、前記太径部33の開口部40の径は、前記球形担体11より大きく形成されて、該球形担体11の入出が可能である。本実施の形態によれば、前記球形担体11が収容された前記中間径部34の残余の空間の体積程度、すなわち、前記球形担体11の体積よりも十分に小さい体積をもつ少量の流体で、反応処理を行うことができる。なお、前記中間径部34の底部には、図2(c)に示すように、前記球形担体11を保持する担体保持部37が上方に突出するようにして複数箇所設けられている。
図2(b),(d)には、第3の実施の形態に係る担体収容部41の例を示す。
該担体収容部41は、2個の球形担体11a,11bが収容された略2段の略円筒状である。該担体収容部41は、流体の入出口44を有するとともに、前記入出口44を通って、流体を前記担体収容部41に対して吸引させ、吐出させる吸引吐出部のノズル部47に装着して取り付けられている。また、該担体収容部41の前記入出口44は、外部に設けた図示しない容器に対して、図示しない移動部によって相対的に移動可能である。
該担体収容部41は、流体の収容が可能で、前記ノズル部47にOリング46を介してその開口部48が取り付けられた太径部42と、先端に入出口44を有し前記容器に挿入可能で、前記太径部より小さい径をもつ細径部43とを有する。また、前記太径部42には、その内部に、空気の通過のみを可能とするフィルター45が該太径部を上下の2つの空間に仕切るように設けられている。これによって、下方の空間内に吸引された液体が上方の空間に侵入する事態を防止し、前記ノズル部47自体の汚染による、クロスコンタミネーションを確実に防止することができる。
また、前記太径部42の底部には、前記球形担体11aを流体の流れが妨げられないように保持する略三角形状の担体保持部49が、中心近傍から半径方向に沿って立ち上がるように放射状に設けられている。
図3には、第4の実施の形態に係る担体収容部50を示す。
該担体収容部50は、流体の収容が可能で、図示しない円筒状の前記ノズル部に対してOリングを介してその開口部55が取り付けられた装着部52と、該装着部52と連通し、内部に板状担体31が収容可能な略角柱状の透明または半透明部材で形成された測定収容部51と、該測定収容部51と連通し、略角錐状の中間部54と、該中間部54に設けられ、外部に設けた容器に挿入可能で、前記太径部より細く形成され先端に流体の入出口56を有する細径部53とを有している。また、該入出口56、したがって、該担体収容部50は、外部に設けた容器に対して、移動部によって相対的に移動可能である。
前記中間部54は、前記板状担体31を保持する担体保持部としての役割をも果たす。前記測定収容部51の側面には、光測定装置の発光部または受光部が設けられ、前記測定収容部51内に収容された前記板状担体31から、前記側面を垂直に透過する発光を測定することができる。これによって、より確実で信頼性のある測定を行うことができる。
図4には、各種の担体11、31、57、58、59、60が収容された担体収容部13、30を有する担体収容処理装置を用いて、細胞からDNAを抽出する処理を行う場合について説明する。
図4(a)は球形担体11を担体収容部13に収容した場合であり、前述した通りである。図4(b)は、ヒモ状担体57を担体収容部30を収容した場合を示す。該ヒモ状担体57は、ある程度の力を加えなければ変形しない針金状部材であって、前記細径部20、したがって、前記入出口12を通らないような形状に曲げられ、自重で前記担体収容部30内に保持されている。
図4(c)は、板状担体31を担体収容部30に収容した場合であり、該板状担体31については、図1で説明した通りである。
一方、図4(d)は、円筒形担体58を担体収容部13に収容した場合である。該円筒形担体58の径は、前記細径部20の内径、したがって、前記入出口12の口径よりも大きく形成され、該円筒形担体58が前記細径部20を通って、該担体収容部13外に排出されることはない。該円筒形担体58の自重で、または、担体収容部13の内壁との間の摩擦力によって、該担体収容部30内に保持する。該円筒形担体58の材料は、前記球形担体11で説明したものと同様である。
図4(e)は、多孔質担体59を担体収容部13に収容した場合である。該多孔質担体59は、多孔質の材料で形成され、または図に示すような多数の貫通孔が設けられているので内部を液体が通過可能である。また、ここでは、該多孔質担体59が円筒形をしている例を示している。該径は、前記細径部20の内径、したがって、前記入出口12の口径よりも大きく形成されている。これによって、表面積が増加するので、対象物質を結合する捕獲能力を高めることができる。
さらに、図4(f)は、不定形担体60を担体収容部13に収容した場合を示す。この場合、該不定形担体60は、前記細径部20、したがって、前記入出口12を通過できない形状または大きさをもち、該不定形担体60が前記細径部20を通って、該担体収容部13外に排出されることはない。該不定形担体60の自重で、または、担体収容部13の内壁との間の摩擦力によって、該担体収容部30内に保持する。
図4(a)の場合について説明する。
ステップS1においては、例えば、菌体等の細胞を破壊するために、高濃度のグアニジンイソチオシアネート(タンパク変成剤)や界面活性剤で可溶化させて細胞内に閉じ込められているDNAを剥き出しの状態にした細胞溶解液を容器15に収容しておく。
また、該液中にあるDNAを捕獲するために、該DNA物質を結合可能な材質、例えば、ガラス、シリカゲルで被覆された前記球形担体11を前記担体収容部13に前記開口部21から挿入して収容しておく。
ステップS2で、前記細胞を溶解した細胞溶解液を収容した容器15にまで相対的に移動した前記担体収容部13の細径部20を、該容器15内に挿入する。そして、前記吸引吐出部14によって、該容器15内にある、前記溶解液を前記球形担体11が収容された前記担体収容部13に、該球形担体11が溶解液内に完全に浸るまで吸引し、その後吐出する。この動作を数回繰り返す。すると、該担体収容部13に収容された前記球形担体11と該溶解液が接触し、該溶解液中にあるDNAが該球形担体11に吸着する。これは、溶液中の水和水を脱水する役割のあるチオシアネートイオン(カオトロピックイオンまたはカオトロープイオンともいう)の存在下なので、DNAは前記シリカ表面に吸着しやすい状態になっているからである。吸着しやすい状態となっている理由は、一般には、シリカゲルの吸着能は水和水の量に従って減少するので、水和水を奪うことにより吸着する能力が高まるからである。
ステップS3で、前記溶解液の残液を該担体収容部13から前記容器15に吐出して、溶解液を担体収容部13から排出し、該球形担体11によってDNAを分離した状態で、該担体収容部13を種々の容器が載置されている領域に対して、洗浄のための試薬液を収容している容器16にまで相対的に移動させる。この分離の状態では、DNAの他にタンパク質も完全に除去されずに吸着されている状態にある。
ステップS4で、該容器16内に前記細径部20を挿入し、洗浄のための試薬である、前記ステップS1と同様の作用をもつタンパク質変成剤およびエタノールを用いて、前記DNAを前記球形担体11からはがさずに、タンパク質を除去する洗浄を行う。すなわち、前記タンパク質変成剤で、タンパク質を変成させてタンパク質を破壊し、エタノールによりDNAとの水和性を奪って沈澱をおこさせる。その際、70%エタノールなので、沈澱を起こす作用と、前記吸着液、洗浄液として含まれていた成分の脱塩を行い、低塩濃度の溶液に置き換えていく。すると、同時に前記DNAも水和性が奪われていく。
ステップS5で、洗浄されたDNAを吸着した前記球形担体11を収容した状態で、該担体収容部13を、さらに、種々の容器が載置されている領域に対して、相対的に移動し、溶出液が収容されている容器18にまで移動し、前記細径部20を該容器18に挿入し、吸引吐出を繰り返すことによって、前記球形担体11に捕獲されていたDNAを溶出液中に溶出する。ここで溶出液は、例えば、miliQやTE(Tris−EDTA)バッファ液を用いて行う。すると、ステップS4で脱水されていたDNAは再び水和し、溶解する。同時にシリカ表面もカオトロープイオンがない状態となり水和しやすくなる。もともとDNAとシリカの相互作用は少なからずあるので、温度を高くしたり、攪拌しながら溶出を行うとより効果的である。
ステップS6で、前記担体収容部13中にある液体をすべて該容器18中に吐出することによって、該容器18中に前記DNAを得る。
なお、ステップS5とステップS6の溶出工程をたどることなく、DNAを前記球形担体11に結合したまま、前記担体収容部13から取り出して、他の処理等に使用することもできる。
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解させる為に具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、前記実施の形態では、球形担体11の場合のみについて具体的に説明したが、この場合に限られず、針金等のヒモ状担体57、板状担体31、円筒形担体58、多孔質担体59または不定形担体60にも適用できる。
さらに、本発明では、その側面において1種以上のリガンド等の化学物質が固定されまたは固定可能に設けられた可撓性のあるひも状または糸状等の細長部材であっても、該部材を円筒形状等のコア等の支持体を用いまたは用いずに巻装し、積層しまたは整列して集積化した集積化細長部材を、前記入出口を通過できない大きさまたは形状に形成されかつ前記担体収容部内に保持した状態で流体の吸引および吐出を行うことができるようにしたものであれば、前記担体として用いることができる。
可撓性のある細長部材または針金状部材の場合、その長手方向に垂直な周方向に沿って生体物質を含む前記化学物質を固定しまたは固定可能とすることによって、そのいずれの方向から見た側面においても、該化学物質について正確でかつ容易に同一の配列を行うことができ、したがって、そのいずれの方向から見た側面においても反応および測定処理を行うことができる。さらに、前記細長部材の全側面に対するリガンド等を含む化学物質について密度を低く抑えることによって、製造を容易化しかつその信頼性を高める一方、処理時においては、前記集積化細長部材を収容することによって処理効率を高めることができる。また、測定時においては化学物質の配列を1次元経路に沿って確実に対応させることができるので、測定の信頼性が高い。可撓性のある細長部材としては、例えば、ナイロン等の化学繊維により形成されたものがある。
前記担体には、1種類以上の化学物質を間隔を空けてその位置が特定できるように配列するもの、および、位置が特定できるように配列せずに固定しまたは固定可能とするものを含む。
また、以上の各構成要素、各担体、各担体収容部、担体保持部、容器、吸引吐出部、細径部、太径部、中間径部、中間部、ノズル部等、または各装置は、適当に変形しながら任意に組み合わせることができる。
さらに、以上の例では、DNAの抽出の場合についてのみ説明したが、担体にリガンド等を固定して目的物質を検出するようにしても良い。また、リガンドとしてもDNAに限られず、オリゴヌクレオチド、RNA等の遺伝物質、免疫物質、タンパク質、糖鎖、さらにフェロモン、アロモン、ミトコンドリア、ウィルス、プラスミド等をも含む。
また、前述した試薬や物質は1つの例を示すものであって、他の試薬や物質を使用することも可能である。また、DNA等を捕獲した担体を前記担体収容部から取り出して、保存、他の処理の対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る担体収容反応装置の概略図である。
図2は、本発明の第2および第3の実施の形態に係る担体収容反応部の概略図である。
図3は、本発明の第4の実施の形態に係る担体収容反応部を示す透過斜視図である。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る担体収容反応装置を用いた処理例を示す図である。

Claims (15)

  1. リガンド等の化学物質を固定し又は固定可能な1または2以上の担体と、流体の入出口が設けられ前記担体が収容された担体収容部と、前記入出口を通って流体を前記担体収容部に対して吸引させかつ吐出させる吸引吐出部と、外部に設けた容器に対して該入出口を相対的に移動する移動部と、を有するとともに、
    前記担体を、前記入出口を通過できない大きさまたは形状に形成するとともに、前記担体の自重によって、前記担体を前記担体収容部内に保持した状態で流体の吸引および吐出を行うとともに、
    前記担体収容部は、前記担体の通過が可能な大きさをもつ開口部をさらに有するとともに、前記吸引吐出部は、前記開口部と着脱可能に連結するノズルが設けられ、
    前記担体を、前記開口部は通過できるが前記入出口を通過できない大きさまたは形状に形成するとともに、
    前記担体が前記担体収容部の内壁との密着を避けるための突起部、溝又は凹凸面等の密着防止部を前記担体または前記担体収容部に設けた担体収容処理装置。
  2. 前記担体収容部は、前記担体を収容する太径部、および、先端に前記入出口を有し外部に設けた容器に挿入可能な細径部を有する請求項1に記載の担体収容処理装置。
  3. 前記担体は、前記入出口よりも大きい径を持つ粒子、または前記入出口を通過不能の形状をもつブロック状部材、板状部材、所定の大きさに曲げて形成された針金状部材若しくは不定形状部材である請求項1または請求項2のいずれかに記載の担体収容処理装置。
  4. 前記2以上の担体は、種類が複数である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の担体収容処理装置。
  5. 前記担体は、前記担体収容部を上下の空間に分割して仕切るように前記担体収容部内の所定位置に保持された流体の通過可能な貫通孔保有部材、透過膜状部材、多孔質性部材又はメッシュ状部材である請求項1ないし請求項のいずれかに記載の担体収容処理装置。
  6. 前記担体は前記担体収容部の所定位置である底部に自重で保持されるとともに、該底部には、前記担体が前記流体の通過を妨げないように、突起部、溝または凹凸面等の流体通過用の担体保持部を設けた請求項1ないし請求項のいずれかに記載の担体収容処理装置。
  7. 前記担体収容部を、透光性のある部材で形成するとともに、該担体収容部の外部に前記担体上の発光を測定する測定機を設けた請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の担体収容処理装置。
  8. 前記担体収容部は、前記測定機を設けた側の面が平面状に形成された請求項に記載の担体収容処理装置。
  9. 前記担体は、磁性体を含有するとともに、前記担体収容部の外部から及ぼす磁場によって、前記担体を前記担体収容部の所定位置に保持する請求項1ないし請求項のいずれかに記載の担体収容処理装置。
  10. 前記担体は、ガラスまたはその表面がガラスによって被覆された請求項1ないし請求項のいずれかに記載の担体収容処理装置。
  11. リガンド等の化学物質を固定し又は固定可能な1または2以上の担体を収容し、流体の通過は可能であるが前記担体の通過は不能な入出口と、前記担体の通過が可能な大きさをもつ開口部とを有するとともに、前記担体を、前記開口部は通過できるが前記入出口を通過できない大きさまたは形状に形成し、担体収容部に対し、前記入出口を通って、前記開口部と着脱可能に連結するノズルが設けられた吸引吐出部により外部の容器から流体を吸引し、前記担体の自重によって前記担体収容部内に保持した前記担体と吸引した流体とを前記担体が前記担体収容部の内壁との密着が避けられた状態で接触させる吸引接触工程と、
    前記担体を前記担体収容部に収容した状態で、前記吸引吐出部によって前記流体のみを前記入出口を通って吐出する吐出工程とを有する担体収容処理方法。
  12. 前記入出口を外部に設けた容器に対して相対的に移動させる移動工程をさらに有する請求項11に記載の担体収容処理方法。
  13. 前記吸引接触工程は、前記担体収容部に対して、流体の吸引吐出を繰り返す工程を有する請求項11または請求項12のいずれかに記載の担体収容処理方法。
  14. 前記担体が通過可能な大きさをもつ開口部から、該担体を前記担体収容部に収容する収容工程をさらに有することを特徴とする請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の担体収容処理方法。
  15. 前記担体収容部に設けた前記担体が通過可能な大きさを持つ開口部から、前記担体を前記担体収容部から除去する除去工程をさらに有することを特徴とする請求項11ないし請求項14のいずれかに記載の担体収容処理方法。
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