[実施例1]
(画像形成装置とプロセスカートリッジの構成と動作の概略)
図1は本実施例における画像形成装置の概略図である。この画像形成装置は、電子写真方式、プロセスカートリッジ着脱式のレーザビームプリンタである。この画像形成装置は、パソコン・画像読取装置等の外部ホスト装置を接続することで、画像情報を受け取りプリントすることができる。
1は画像形成装置におけるプリンタ本体(装置本体)、2は装置本体1に対して着脱可能なプロセスカートリッジである。図2は実施例1に係るプロセスカートリッジの断面図であり、プロセスカートリッジ2についてはこれを用いて説明する。
20は像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光ドラム)である。本実施例では、感光ドラム20と、帯電部材(帯電ローラ)30と、本実施例における現像剤収納部としての現像装置40と、クリーニング部材(クリーニングブレード)50と、の4種のプロセス部材を一体化し、プロセスカートリッジとした。そして、装置本体1に着脱可能としている。
感光ドラム20はプリントスタート信号に基づいて矢印R1の時計方向に200mm/sの周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。感光ドラム20には帯電バイアスが印加される帯電ローラ30を接触させてあり、帯電ローラ30は感光ドラム20に従動して回転駆動される。回転する感光ドラム20の周面がこの帯電ローラ30により所定の極性・電位に一様に帯電される。本実施例では負の所定電位に帯電される。
その帯電面に対して、露光装置(スキャナユニット)3により画像情報のレーザ走査露光がなされる。スキャナユニット3から出力されたレーザ光はカートリッジ内に入光して感光ドラム20の面を露光する。感光ドラム20は接地されており、レーザ光が照射された部分(露光明部)の電位が減衰して画像情報に対応した静電潜像が感光ドラムに形成される。なお、本実施例では画像情報部を露光するイメージ露光方式を用いている。
その静電潜像は、現像装置40の現像剤担持体としての現像スリーブ(現像ローラ)41上の現像剤(トナー)Tによって現像される。
一方、所定の制御タイミングにて、シートトレイ部4のピックアップローラ5が駆動されて、シートトレイ部4に積載収納されている記録媒体である記録材(紙等)が1枚送られる。記録材は転写ガイド6を経由して、転写ローラ7を通過する。この間に、感光ドラム20面のトナー像が記録材の面に順次に静電転写される。その後、トナー像が転写された記録材は、定着装置9に到達する。トナー像が定着装置9によって定着させられた後、記録材は排紙トレイ11に排紙される。記録材分離後の感光ドラムはクリーニングブレード50により転写残トナー等の除去を受けて清掃され、再び、帯電から始まる画像形成に繰り返し用いられる。
また、画像形成装置は、環境検知部100を有している。環境検知部100は、画像形成装置1内に配置され、周囲の温度と湿度を検知する。その検知結果に基づいて、帯電ローラ30および現像ローラ41に印加するバイアス、レーザスキャナユニット3、転写ローラ7、定着装置9などの制御の補正が行われる。さらに、現像ローラ41の回転数からトナーの劣化具合を予測する劣化予測部110が設けられている。
記憶部としてのメモリ120は、プロセスカートリッジ2に設置され、画像形成に必要な現像及び帯電制御に用いるテーブル等を格納する。なお、本実施例ではメモリ120は装置本体1側に設けられても良い。また、プロセスカートリッジ2と装置本体1の両方に設けることもできる。メモリ120は、後述する現像剤検知の際の補正に用いる補正値を記憶している。詳しくは後述する。
(現像装置)
実施例1に係る現像装置について、図3を用いて説明する。図3は実施例1に係る現像装置の断面図である。
本実施例における現像装置40は、トナーTを収納する枠体40aを有する。枠体40aの内部には、仕切り壁40bが備えられている。仕切り壁40bは枠体40aの内部を、現像ローラ41が回転可能に収納される現像室46と、トナーTおよび撹拌部材60を収納した現像剤収納室(以下、現像剤室と称す)47とに仕切っている。仕切り壁40bには、現像室46と、現像剤室47とを連通する開口40cが設けられている。本実施例の現像装置40は、感光ドラム20およびクリーニングブレード50を備えるクリーニングユニットとは別の現像装置(現像ユニット)として構成されている。
トナーTは、磁性一成分の粉砕トナーを用いる。母体と外添剤から成り、母体の中心粒径は7μm、円形度は0.95、比重は、1.8である。外添剤は、流動性と帯電性の観点から小粒径のシリカを0.5重量%使用している。
現像剤室47のトナーTは、攪拌部材60によって、現像剤室47から現像室46へ、開口40cを通じて搬送される。現像室46のトナーTは、現像ローラ41に内包されたマグネットによって現像ローラ41に引き寄せられる。一方、現像ローラ41には、弾性部材からなる層厚規制部材としての現像ブレード42が当接している。トナーTは、現像ローラ41のR2方向への回転に伴って現像ブレード42方向に搬送され、現像ブレード42によってトリボが付与され、層厚が規制される。
ここで、現像ローラ41には、画像形成装置本体の現像バイアス電源45から直流電圧(Vdc=−400V)に交流電圧(ピーク間電圧=1500Vpp、周波数f=2400Hz)を重畳した現像バイアスが印加される。一方、感光ドラム20の表面には、上述したような静電潜像が形成されている。感光ドラム20の現像ローラ41との対向領域では電界が発生するため、前述のトリボを有したトナーTが感光ドラム20の静電潜像が形成された部分に供給される。こうすることで、感光ドラム20表面の静電潜像が現像される。
(現像装置と現像剤検知部)
次に、実施例1における現像剤装置について図3を用いてさらに詳しく説明する。
本実施例では、現像剤室47を形成する枠体40aの中(現像剤室47の内部)に撹拌部材60、面状の第1の電極43、第2の電極44が備えられている。第2の電極44と、現像ローラ41とには、現像バイアス電源45が接続されている。また、第1の電極41には、後述する現像剤検知部70が接続されている。現像剤検知部70は、第2の電極44と現像ローラ41に電圧が印加された時に、第1の電極43と第2の電極44との間の静電容量と、第1の電極43と現像ローラ41との間の静電容量との合成静電容量の変化を元に現像剤量を検知する事ができる。
枠体40aの壁面(内壁面40a1、内壁面40a2)には、本実施例における電極対を形成する第1の電極43と、第2の電極44が配置されている。第2の電極44は、第1の電極43との間に間隔をあけ、かつ第1の電極43に対して傾斜して対向するように配置されている。第1の電極43と第2の電極44は、お互いの間隔の最小部X1(壁面上の最小部)が、撹拌部材60の回転中心60aよりも下方(重力方向下方)に形成されるように配置されている。ここで最小部X1は、重力方向における第1の電極43の下部43a1と、第2の電極44の下部44a1の間の間隔である。また、お互いの間隔のうち、最小部X1よりも間隔が大きい遠隔部X2が、最小部X1よりも重力方向上側に形成されるように配置されている。ここで遠隔部X2は、重力方向における第1の電極43の上部43a2と、第2の電極44の上部44a2の間の間隔である。なお、本実施例において、最小部X1の距離は7mmとした。さらに、以下の説明において、第1の電極43と第2の電極44に挟まれた領域であって、間隔の最小部X1と、遠隔部X2を結んだ領域を、領域Aと呼ぶ。すなわち、領域Aは、第1の電極43と第2の電極44が対向する領域であって、下部43a1と下部44a1を結んだ線と、上部43a2と上部44a2とを結んだ線で区画される領域である。
ここで、枠体40aの第1の電極43が配置される内壁面40a1と、第2の電極44が配置される内壁面40a2は、最小部X1に対して水平方向に離れる方向、かつ重力方向上側に向かう方向に傾斜している傾斜面である。本実施例において、内壁面40a1、内壁面40a2は曲面である。また、第1の電極43と第2の電極44は、内壁面40a1、内壁面40a2に沿うように配置され、かつ内壁面40a1、内壁面40a2と接触している。すなわち、最小部X1は現像剤室47における最も下方に配置されており、現像剤室47の底部(重力方向における最下部)を、最小部X1から現像剤室47の内側に向けて露出させている。さらに、本実施例においては、最小部X1は、開口40cおよび現像室46の最下部46aよりも重力方向下側に設けられている。
第1の電極43、第2の電極44、および枠体40aの壁面を、上述のようにすることで、トナーTが残りわずかになった時でも、最小部X1にトナーTが集まりやすい。また、領域Aを広くとることができ、現像剤量が多い時から現像剤量検知ができる。
また、撹拌部材60は、可撓性を有するシート状の撹拌部60bと、回転中心60aを中心に図中矢印R3方向に回転する軸からなる。水平方向において、回転中心60aと、最小部X1の位置は、重なるように配置されている。また、回転中心60aは、開口40cよりも重力方向下側に設けられている。撹拌部60bは、前述の最小部X1を通過するように回転し、最小部X1から露出する壁面40dと摺擦する。そして、最小部X1にあるトナーTを開口40cに向けてくみ上げ、現像室46に供給する。さらに撹拌部材60が回転すると、撹拌部60b上のトナーTは、重力によって撹拌部60bから内壁面40a1、内壁面40a2に落下し、最小部X1に戻される。このような構成により、トナーTが残りわずかになった時でも、最小部X1にトナーTが集まりやすい。また、撹拌部材60によって、最小部X1を含む領域Aにあるトナーを積極的に搬送することができる。
一方、第1の電極43と第2の電極44は導電性を有していれば良く、金属板を用いることもできるが、本実施例では導電性樹脂から成るシート部材を用いている。さらに、本実施例では第1の電極43と第2の電極44は、枠体40aに対して一体的に成型(いわゆるインサート成型)されている。すなわち、第1の電極43と枠体40a(内壁面40a1)、第2の電極44と枠体40a(内壁面40a2)は密着し、間にトナーTが入らない構成である。
なお、本実施例においては、第1の電極43と、第2の電極44は、枠体40aの内壁面に配置したが、枠体40aの外側に配置することもできる。
次に、図4を用いて、実施例1に係る現像装置と、現像剤検知部について説明する。図4は実施例1に係る現像装置と、現像剤検知部の回路構成図である。
現像バイアス電源45から所定のACバイアスが出力されると、リファレンス用コンデンサ54、現像ローラ41、第2の電極44の其々に印加される。これによって、リファレンス用コンデンサ54には電圧V1が発生し、第1の電極43には合成の静電容量に応じた電流に伴って電圧V2が発生する。検出回路55はV1とV2の電圧差から検出電圧V3を生成し、AD変換部56に出力する。AD変換部56はアナログ電圧をデジタル変換した結果を制御部57に出力する。制御部57はこの結果から現像剤量を算出し、その結果をメモリ120に格納し、表示部13で残量表示する。なお、表示部13はメモリ120から上記結果を読み取って表示するように構成しても良い。
すなわち、現像剤検知部70は、第1の電極43と第2の電極44の間の静電容量を検知し、この静電容量を元に現像装置40内(現像剤収納部内)の現像剤量を算出する現像剤検知部である。また、本実施例における現像剤検知部70は、トナーが十分多い時の現像剤量を第1の現像剤量とし、トナーがなくなる時の現像剤量を第2の現像剤量として検知可能である。また、第1の現像剤量よりも少なく、第2の現像剤量よりも多い、第3の現像剤量を検知可能である。すなわち、現像装置40を使用することによって減っていく現像剤量を、遂次算出することができる。静電容量に基づく現像剤量の算出については、後述する。
また、本実施例では、現像剤量検知の為のACバイアスを印加する部材を現像ローラ41と、第2の電極44としている。しかしながら、例えば、現像ローラ41にACバイアスを印加しない場合であっても本実施例の効果は得られる。また、第1の電極43にACバイアスを印加し、第2の電極44に電圧を発生させても良い。本実施例では、第1の電極43を、ACバイアスが印加される現像ローラ41と第2の電極44の間に配置している。そうすることで、現像ローラ41と第1の電極43の間の静電容量の変化、第2の電極44と第1の電極43の間の静電容量の変化を、合成静電容量の変化として検知できる。
また、例えば図5のように撹拌部材と、電極対が複数ある構成であっても良い。この場合、撹拌部材60の下方に最小部X1と領域Aができるように第1の電極43と第2の電極44を配置する。第2の電極44は、内壁面40a2を超えて、内壁面40a3まで延長される。更に撹拌部材85の下方の内壁面40a4に第3の電極84を配置する。このとき、第1の電極43の上部43a2から見た第2の電極44の上部44a2との間隔が、遠隔部X2となる。同様に、第3の電極84の上部84a2から見た第2の電極44の上部44a4との間隔が、遠隔部Y2となる。第3の電極84の下部84a1と、第2の電極44の下部44a3との間隔が、最小部Y1となる。ここで、図5中の領域Bは、領域Aと同様に定義される領域である。また、内壁面40a3は内壁面40a1に相当する。内壁面40a4は内壁面40a2に相当する。
このような構成の場合、トナーTは撹拌部材60と撹拌部材85の回転により、最終的には最小部X1に集められる。また、このように最小部が複数ある構成(X1、Y1)においては、現像室46や開口40cに対して、最も現像室46に近い最小部X1が重力方向下側に位置していれば、最小部X1にトナーが集まる効果を得られやすい。
こうすることで、更に大容量であっても高精度な現像剤量検知が可能となる。また、ここでは第1の電極43と、第3の電極84の合成静電容量を元に現像剤量検知を行う例を示したが、複数の現像剤検知部70を用意し、第1の電極43と第3の電極84の検出値を其々別に処理することで更に詳細な現像剤量検知を行うこともできる。
以降の説明においては、撹拌部材と電極対が単数の構成を用いて説明する。
(現像剤量検知)
次に本実施例の現像剤量検知について詳細に説明する。
上述した通り、本実施例において現像装置40は、撹拌部材60を備えている。撹拌部材60は、第1の電極43と第2の電極44の間に挟まれた領域A内を通過するように配置されている。また本実施例は、現像剤量が変化した際に、第1の電極43と第2の電極44の間の静電容量と、第1の電極43と現像ローラ41の間の静電容量の合成静電容量が変化することを利用して、現像剤量を検知する構成である。従って、撹拌部材60の回転駆動よってトナーTが動くと、現像装置40の中の現像剤量が変化していないにも関わらず、現像剤量が変化しているかのような出力が得られる。
そこで本実施例では、一定の時間間隔(サンプリング間隔)ごとに静電容量の出力を取得し、それを撹拌部材60の回転周期の整数倍もしくは、十分大きい時間にわたって続け、その間の静電容量の平均値を出力値として取得する。一方で、出力値と現像剤量との関係を予め求めておき、テーブルや換算式としてメモリ120に記憶させておく。そして、画像形成時に取得された出力値を元に、上記テーブルや換算式を用いて現像剤量を算出する。つまり、本実施例の現像剤量検知方式は、領域A内のトナーが撹拌部材60により撹拌されている状態を元に現像収納容器内全体の現像剤量を算出する方式である。
現像剤量検知は、現像装置40内のトナーTが多い時から、少なくなった時まで、広範囲にわたって検知することが好ましい。一方で、一般に現像剤量検知は、ユーザーがカートリッジや現像装置を交換する目安とすることが主要な目的の一つである為、特に現像剤量が少ない状態での精度が高いことが好ましい。その為、本実施例では、特に現像剤量が少ない時に、トナーの単位変化量あたりの静電容量の変化を大きくすることで、現像剤量が少ない時の現像剤量検知の高精度化を図ったものである。
現像剤量の単位変化量当たりの出力値の変化量、即ち静電容量の変化量が大きい程、高精度に現像剤量検知を行うことができる。また逆に、例えば現像剤量が変化しても静電容量が僅かしか変化しないような場合は、現像剤量検知の精度は低いということができる。
ここで、静電容量Cと2つの電極の面積Sと距離d、誘電率εの関係は次のように記述されることが知られている。
C=ε×S/d 式(1)
このうち、誘電率εは電極間に存在する現像剤量によって変動し、現像剤量が多いと誘電率εが大きくなる。
ここで式(1)によれば、同じ誘電率であっても、距離dが小さい方が、静電容量は大きくなる。すなわち、距離dが小さい領域において生じる誘電率の変化は、全体の静電容量の変化に対する寄与度が大きい。距離dが大きい領域において生じる誘電率の変化は、全体の静電容量の変化に対する寄与度が小さい。
したがって、図3中に記載の最小部X1の近傍は、電極間のトナーTの量の変化によって、誘電率εが変化した際に、静電容量の変化に対する寄与度が大きい。すなわちトナーTの量の変化に対する検知感度が高い部分である。また、領域Aのうち上方は、電極間のトナーTの量の変化によって、誘電率εが変化した際に、静電容量の変化に対する寄与度が比較的小さい部分である。
上述したように、本実施例では現像剤量が残りわずかになったときに、最小部X1にトナーTが集まりやすい構成としている。また、静電容量の変化が大きい最小部X1を撹拌軸よりも下方に配置することで、撹拌部材60が動作していても、トナーが自重で最小部X1近傍に落下する。このため、現像剤量の変化に対して大きく静電容量が変化することになる。
その為、広範囲の現像剤量の変化を検知しながら、特に現像剤量が少ない状態において、現像剤量検知の高精度化を図ることができる。
本実施例の構成は、最小部X1を現像剤室47における最も下方の壁面となるように配置し、撹拌部材60から落下したトナーがごく僅かであっても静電容量が大きく変化する為、より好ましい構成である。しかしながら、最も下方ではなくても撹拌中心60aよりも下方であれば、同様に本発明の効果は得られる。
図6は本実施例における現像剤量と、静電容量の平均値の関係を表した図である。前述したように、本実施例では現像剤量が少ない場合であっても、撹拌動作中に静電容量の寄与度が高い最小部X1にトナーを集め、撹拌する。トナーの残量が領域Aに対して十分多いと、画像形成に従いトナーが減っても、領域Aの現像剤量はほぼ変化しない為、静電容量の変化が少ない。現像剤量が少なくなってくると、静電容量の変化が大きくなってくる。これは撹拌部材60が持ち上げた現像剤量だけ領域Aのトナーが減るためである。しかし、検知感度の高い最小部X1近傍にトナーが残っている状態では、静電容量の変化量はまだ緩やかである。さらに現像剤量が減ると、静電容量が大きく変化する。検知精度の高い最小部X1近傍にあるトナーが減っていくためである。
このように、現像剤量が少量である時に僅かな現像剤量の変化に対して、静電容量が大きく変化する事で、高精度に現像剤量を検知する事が出来る。
(撹拌部材の駆動と静電容量の変化)
本実施例における撹拌部材の駆動と静電容量の変化の詳細を説明する。
図7は本実施例構成において、現像剤量が40gの時に撹拌部材60が60rpmで回転駆動した際の静電容量変化を表した図であり、t1〜T5のタイミングで静電容量の変化が起きていることを表している。また図8は本実施例の断面図であり、撹拌部60bが通過するタイミングをT1〜T5の位置で定義している。
以下、図7と図8の関係の対応をとることで、撹拌部材60の駆動に応じて静電容量の変動が起こる要因を説明する。
また容器内にある40gのトナーのうち、撹拌部材60の回転駆動によって現像剤室47内を動くトナーと動かないトナーに分けられるが、ここでは静電容量の変化を説明する為、動くトナーに限って説明する。
第1に、図8中のT1を撹拌部60bが通過するタイミングにおいて、動くトナーの大半が最小部X1近傍に集められる。式(1)の関係を鑑みると、このタイミングが最も静電容量が大きくなることが分かる。一方で、図8中の静電容量が最も大きくなるタイミングはt1に相当する為、図8中T1は図7中のt1と対応することが分かる。
第2に、図8中のT2を撹拌部60bが通過するタイミングにおいては、動くトナーの大半が最小部X1から遠ざけられることになる為、静電容量は急激に低下することになる。一方、図7中のt2において、静電容量が急激に低下していることから、図8中のT2は、図7中のt2と対応することが分かる。
第3に、図8中のT3を撹拌部60bが通過するタイミングにおいて、動くトナーの大半が持ちあげられ、領域Aから遠ざかる。また現像ローラ41上に保持されたトナーも、撹拌部60bにより掻き取られる為、静電容量が最も小さくなる。一方、図7中のt3において、静電容量が最も小さい値を取っていることから、図8中のT3に図7中のt3が対応することが分かる。
第4に、図8中のT4を撹拌部が通過するタイミングにおいて、撹拌部60bによって持ち上げられたトナーが下方に落下し、最小部X1近傍に落ちる。これにより静電容量が大きくなる。これ以降は、撹拌部60bがトナーを保持しないまま空中を移動している状態がしばらく続くため、静電容量の変化は僅かになる。一方で、図7中のt4において静電容量が大きくなり、その後T5迄の間静電容量の変化が小さい。よって、図8中のT4は、図7中のt4に対応することが分かる。
第5に、図8中のT5を撹拌部60bが通過するタイミングにおいて、動くトナーが最小部X1に集められることにより、静電容量が大きくなる。図7中のT5とt1の間において、静電容量が大きくなることから、図8中T5が図7中のT5に対応することが分かる。
(現像剤の密度分布の補正)
次に本実施例の特徴である現像剤の密度分布の補正について説明する。
まず、現像剤密度分布について説明する。上述のように、現像剤検知部70は、第1の電極43と、第2の電極44の間の領域AにおけるトナーTの量を検知すると述べた。しかし、領域Aにおける現像剤の密度は一定ではなく、場所によって異なる場合がある。なお、ここで現像剤の密度とは、トナー一粒あたりの密度を指すものではなく、単位空間あたりに存在する現像剤の重さを指す。本実施例では、このような現像剤の密度の分布状態を、現像剤密度分布と称する。
この現像剤密度分布は、様々な要因で変化する。例えば、撹拌部材60の回転速度によって、トナーTの流動性や落下するタイミングが変わった場合や、周囲の温度、周囲の湿度、現像剤の劣化具合によってトナーTの流動性や沈降速度が変わった場合である。電極対の間の現像剤密度分布が異なると、上述した静電容量の変化に影響する。特に本実施例では、静電容量の変化に対する寄与度が大きい最小部X1を設けているため、この部分の現像剤の密度が異なると影響が出やすい。そこで本実施例では、この現像剤密度分布の影響を補正する構成とした。こうすることで、さらに高精度な現像剤量検知が可能になる。
本実施例における現像剤量検知の基本的な処理方法と併せて、この補正について説明する。
ここで、第1の電極43と、第2の電極44との間の静電容量は、各部材の配置のばらつきや製造ばらつき等の影響を受ける。そのため、第1の電極43と第2の電極44の間の静電容量の絶対値から直接現像剤量を算出するようにすると、精度のよい現像剤量検知ができない場合がある。そこで、本実施例の現像剤検知部70は、現像装置40が装置本体1に装着された後、トナーが十分に残っている状態で検知された静電容量を第1の基準値とする。そして、第1の基準値からの第1の差分(静電容量の変化量)に基づいて、現像剤量を算出するようにしている。
図9は、現像剤検知部70が行う現像剤量検知のシーケンスを表したフローチャートである。なお、現像剤検知部70は、図4を用いて説明したように検出電圧V3を元に静電容量を測定する。本実施例では、静電容量が増えると検出電圧が下がるように変換回路を構成した。すなわち、トナーが多い状態から少ない状態になると、検出電圧V3が上がる。図22は、この関係を示した概略図である。なお、本実施例中以下のシーケンス中の動作は、制御部57によって制御される。しかし別途設けた制御部(不図示)を用いても良い。
(S102)
現像ローラ41と第2の電極44とに現像バイアスを印加し、所定の時間の検出電圧の平均値である検出電圧V3を測定する。
(S103)
メモリ120にPAFが記憶されているかを確認する。YESの場合はS104へ進む。NOの場合はS105へ進む。ここでPAFとは、現像装置40内に十分にトナーTが残っている状態(第1の現像剤量)における検出電圧V3(静電容量)である。本実施例においてPAFは検出電圧V3の最小値である。すなわち、PAFは第1の現像剤量(トナーが十分に残っている状態での現像剤量、例えば現像剤量が100%の状態)に対応する静電容量を示している。本実施例ではプロセスカートリッジの出荷時にはPAFが記憶されていないが、出荷時に仮の値を格納しておいてもよい。
(S105)
S103において、PAFが記憶されていなければ、その時の検出電圧V3をPAFとして格納する。
(S104)
検出電圧V3がその時点で記憶されているPAFと比べて小さいかを確認する。YESの場合はS106へ進む。NOの場合はS107へ進む。
ここで、トナーが減ると検出電圧V3は大きくなるため、トナーが減ってくればS106に進むことになる。また、例えば現像装置40内のトナーが偏っており、現像装置40の使用を続けるうちにトナーが安定することもある。その場合には、使用開始直後の検出電圧V3が大きくなるが、その後トナーが安定した時の検出電圧V3は小さくなるため、S107に進むことになる。
(S107)
S104において、検出電圧V3がその時点で記憶されているPAFと比べて小さければ、ここでPAFをその時点の検出電圧V3で更新する。したがって、上述のようなトナーの偏りが解消した時などに、安定した状態での検出電圧V3をPAFとすることができる。
(S106)
第1の現像剤量よりも少ない第2の現像剤量を算出するため、第1の現像剤量から第2の現像剤量までトナーが減少した際に発生するであろう、検出電圧V3の差分δ(第1の差分)を参照する。本実施例では、差分δはメモリ120に記憶された固定値である。本実施例では、第2の現像剤量を示す検出電圧V3(後述するPAE)が、プロセスカートリッジが寿命を迎えるタイミングにおける検出電圧V3となるように、差分δを定めている。
(S108)
第1の現像剤量を示す検出電圧(静電容量)PAFを基準値として、PAFに対して差分δを有する検出電圧(静電容量)を、第2の現像剤量に対応する検出電圧(静電容量)の大きさを示すPAE(第2の基準値)とする。ここでは、PAFに差分δを加えた電圧を、PAEとして算出する。上述のように、PAEはプロセスカートリッジが寿命を迎えるタイミング(例えば、現像剤量が0%)における検出電圧V3の予測値である。
(S109)
第1の現像剤量(例えば現像剤量100%)よりも少なく、かつ第2の現像剤量(例えば現像剤量0%)よりも多い第3の現像剤量を算出するために、以下の処理を行う。
PAFを基準値として、その時の検出電圧V3との差分(第2の差分)を求める。そして、第1の差分(差分δ)に対する第2の差分の割合(PA率)を算出する。すなわち、以下の式(2)の計算を行う。
PA率=(V3−PAF)/(PAE−PAF) 式(2)
すなわち、検出電圧V3は、トナーが減ってくるとPAEに近づいていくため、PA率は大きくなってくる。逆にトナーが多い状態では、PA率は小さくなる。
(S110)
現像剤の密度分布の影響を補正するための補正値Mを参照し、決定する。本実施例において、補正値Mは、少なくとも撹拌部材60の回転速度、周囲の温度、周囲の湿度、現像剤の劣化具合のいずれか一つに基づく補正を行うための補正値である。
上述したように、撹拌部材60の回転速度、周囲の温度、周囲の湿度、現像剤の劣化具合は、現像剤の密度分布に影響する。その影響によって、検出電圧V3が本来の値からずれてしまう。したがって、上記のPA率も、本来のものからずれている可能性がある。この影響を補正するために、撹拌部材60の回転速度、周囲の温度、周囲の湿度、現像剤の劣化具合が検出電圧V3に与える影響の傾向を考慮して、その影響を補正する。すなわち、例えば、回転速度が速い場合と遅い場合に、どちらの場合が検出電圧V3が大きくなり、どちらの場合に検出電圧V3が小さくなるか、の傾向を考慮する。現像剤の密度分布の影響を補正する補正値M(現像剤密度分布補正値)は、このような傾向を考慮して定められる補正値である。すなわち、検出電圧(静電容量)またはPA率が本来のものより大きくなるような影響がある(影響する要因がある)場合は、検出電圧(静電容量)またはPA率を小さくするように補正する。検出電圧(静電容量)またはPA率が本来のものより小さくなるような影響がある(影響する要因がある)場合は、検出電圧(静電容量)またはPA率を大きくするように補正する。
なお、撹拌部材60の回転速度、周囲の温度、周囲の湿度、現像剤の劣化具合の各要因の影響の補正に関しては、後ほど詳しく説明する。
(S111)
補正値Mを用いて、PA率を変動させるように補正する。本実施例では、PA率に対して、補正値Mをかけて、補正後のPA率であるPA’率を算出するようにした。なお、密度補正値Mの種類によっては、PA率に補正値Mを加算または減算するようにして補正してもよい。
(S112)
トナー残量テーブルを参照する。トナー残量テーブルとは、PA率(ここでは補正後のPA’率)に対する現像装置40内部の現像剤量の関係を示したものであり、本実施例ではメモリ120に記憶されている。ここで、トナー残量テーブルの一例を図10に示す。縦軸がPA’率であり、横軸が現像剤量を示している。
(S113)
PA’率とトナー残量テーブルを比較することで現像剤量Y[%]を求める。そして、Y[%]を表示部13に表示する。
(S114)
Y[%]をメモリ120に格納する。
(S115)
Y値が0%となるまで、S102からS114を繰り返す。0%になったら現像剤量検知を停止する。
上記シーケンスによると、現像剤密度分布補正をすることで、更なる高精度の現像剤量検知が実現可能となる。
なお、PAF、PAEは必ずしも現像剤量100%、0%に一致させる必要はない。例えば、現像剤量80%をPAFとし、現像剤量20%をPAEとして、その他の区間は別の現像剤検知方法(例えば画像形成にともなって消費される現像剤量の予測値から残量を算出する方法)で現像剤を検知させることもできる。
(撹拌部材の回転速度による現像剤密度分布補正)
以下、撹拌部材の回転速度に関する補正について説明する。本実施例における画像形成装置本体は、画像形成条件に応じて異なるプロセススピードで動作する画像形成モードを有しており、プロセススピードに応じて撹拌部材60の回転速度が変化する構成となっている。すなわち、撹拌部材60が、複数の回転速度で回転可能である。
ここで現像剤密度分布は、撹拌部材60bの回転速度によって異なる場合がある。即ち、トナーの自重による落下と撹拌速度の相対的な関係を考慮した場合、例えば撹拌部材の回転速度が遅い場合は、速い場合に比べて現像剤密度分布は下方において密度が高くなる傾向がある。一方で、本実施例の構成は静電要量の変化に対して、電極対の上方に比べて下方の寄与度を高くしている為、現像剤密度分布の影響を受けてしまうことがある。そこで本実施例の特徴である現像剤密度分布補正制御によると、撹拌部材の回転速度によって変化する現像剤密度分布に応じて、現像剤量検知の補正を行うことで現像剤量検知を更に高精度化することができる。
本実施例ではプロセススピードの異なる画像形成モードに応じて撹拌部材の回転速度が変化する構成としているが、これに限らず撹拌部材60の回転速度が変化する場合であれば、同様の制御を行うことで同様の効果が得られる。本実施例では2つの画像形成モードを設けており、撹拌部材の回転速度は60rpmと、30rpm(半速モード)で回転駆動する。
まず本実施例における撹拌部材の駆動と静電容量の詳細を説明する。上述の、図7、図8を用いた撹拌部材の駆動と静電容量の変化についての説明は、撹拌部材60が60rpmで回転駆動した際の例を説明した。ここでは、撹拌部材60の回転速度が30rpmになった時に起こる現象について説明する。
まず、60rpmで駆動する時に比べて、撹拌周期が2倍になる。しかしこの点については、例えば、静電容量の平均値を得るために測定する時間(サンプリング区間)を倍に広げて平均値を計算することで、同じ撹拌部材60の回転分に相当する出力を得ることができる。
一方で、図8のそれぞれの区間に対応する静電容量が、30rpmになるとどのように変化するかについて図7を用いて説明する。
図8におけるT1〜T3の区間については、凡そ静電容量に変化はない。
図8におけるT3からT4にかけては、撹拌部60bによって持ち上げられたトナーが落下する区間である。ここで、t3〜t4が倍の時間になっているのに対して、トナーの落下速度は変わらない。そのため、60rpmの場合と比べて、撹拌部60bは図8中のT3により近いところで、最小部X1に向けてトナーを落下させることになる。そのため、図7のグラフ上は見かけ上トナーが早く落下するような挙動を示し、60rpmのt3〜t4の静電容量の変化とくらべて、30rpmのt3〜t4では、よりt3に近い部分で静電容量が大きくなるように変化する。
また、図8におけるT4からT5にかけては、撹拌部60bが空中を移動している区間である。しかし、この区間においても静電容量の変化は僅かであるが微増する。この区間は落下したトナーの沈降が進む区間である。そこでは、t4〜t5が倍の時間になるのに比べてトナーの沈降速度は変わらない。そのため、60rpmの場合と比べて、撹拌部60bが図8中のT4により近いところで、最小部X1近傍にトナーが沈降し、密度が高くなる。そのため図7のグラフ上は見かけ上トナーが早く沈降するような挙動を示し、僅かではあるが静電容量が大きくなる。
図8におけるT5からT1にかけては、撹拌部60bの通過の際に動くトナーが最小部X1に集められる区間である。そのため、撹拌部材60の回転速度の影響はないが、T4からT5にかけてトナーの沈降が進んでいる影響を受ける為、僅かではあるが静電容量が大きくなる。
以上のように、撹拌部材の回転速度が60rpmから30rpmになった際のトナーの状態としては、平均の現像剤密度分布が、下方の密度が高くなる傾向にあり、その結果静電容量が大きくなる方向の出力が得られる。そこで本実施例の特徴である現像剤密度分布補正を行うことで、高精度の現像剤量検知を行うことができる。
図11は、撹拌部材60が60rpmの場合と30rpmで駆動する場合における現像剤量と静電容量変化を表す図である。先に述べた通り、現像剤密度分布の違いにより両者には静電容量の違いが認められる。図11には、60rpmと30rpmの静電容量の違いが示されるが、現像剤量によって違いが異なることが分かる。これは例えば現像剤量が十分に多い場合には、領域Aにおける現像剤量が飽和している状態である為に、撹拌部材60の速度による影響が小さくなるためである。飽和状態にある場合は、トナー重量が減ってきても撹拌部材60の速度による変化がない状態が暫く続くが、これを図11中では領域1と示した。次に飽和状態が解消すると徐々に撹拌部材60の速度による変化が起こるようになる。この区間を図11中では領域2とした。次にトナー重量が更に減ると、逆に撹拌部材60の速度による変化が少なくなるようになる。この区間を図11中では領域3と示した。これは例えばトナー重量が0gの場合は現像剤密度分布そのものがゼロである為に、撹拌部材60の速度に依る変化が無くなる為である。
また、このとき撹拌部材の回転速度が60rpmと30rpmの其々の静電容量の差分も図中に示しているが、この差分が必要な補正量を表している。その為、本実施例では現像剤密度分布補正は現像剤量に応じて補正量(補正値M1)を変えている。すなわち、現像剤量が多い時は補正量が小さく、現像剤量が減るにつれて補正量を大きくし、その後現像剤量がゼロに近づくにつれて補正量を小さくする制御としている。すなわち、この補正で用いる補正値は、現像装置40の現像剤量が減ると大きくなる補正値であり、補正値が大きくなった後、さらに現像装置40の現像剤が減ると、小さくなる補正値である。なお、この補正値はメモリ120に格納され、回転速度に応じて補正値を参照するようになっている。
実際の補正については、図9を用いて説明する。
(S110)において、メモリ120に格納された、PA率と密度分布補正値の関係を表したテーブルを参照し、撹拌部材60の回転速度に応じた補正値M1(密度分布補正値)を決定する。上述したように、現像装置40内の現像剤量によって、必要な補正値が異なっている。このため、本実施例ではPA率(現像装置40内の現像剤量)に基づいて、補正値M1が変動するようなテーブルを用いた。次に(S111)において、この求めた補正値M1をPA率に乗じて、PA’率を算出した。これ以外の部分は、図9に示したものと同じ処理を行った。
上記シーケンスによると、現像剤密度分布補正をすることで、撹拌部材の速度による現像密度分布の違いを補正することが可能となり、更なる高精度の現像剤量検知が実現可能となる。
本実施例では、密度分布補正値テーブルから得られる密度分布補正値M1を用いてPA率を補正しているが、これ以外の方法であっても良い。例えば、予め密度分布補正式を用意しておき、M1を算出する方法であっても良いし、密度分布補正値や密度分布補正式を元にトナー残量テーブルやV3値、または検出結果であるY値を補正しても良い。また更に単純化の為に、Y=0%近傍のみ現像剤密度分布補正を行うことで、現像剤量が少ない領域の高精度化を図ることができる。例えば、Y=0%近傍に最適化した密度分布補正値を元にトナー残量テーブルやV3値、または検出結果であるY値を補正することでも実現できる。また、Y=0%近傍に最適化した密度分布補正値を元にS106に記載されているδ値を直接補正することでも実現できる。
[実施例2]
本実施例は、撹拌部材60の回転速度が異なる(撹拌部材60を異なる速度で回転させる駆動部をもつ)複数種類の画像形成装置の装置本体に対して、プロセスカートリッジ2が共通して着脱可能な例について説明する。本実施例では異なるプロセススピードで動作する画像形成装置本体モデルAと画像形成装置本体モデルBの2種類の画像形成装置本体に同一のプロセスカートリッジを挿入可能としている。本実施例では、プロセススピードが異なる為に、モデルAでは感光ドラム20が200mm/sの速度で回転するのに対して、モデルAでは感光ドラム20が100mm/sの速度で回転する。それに伴い、モデルAは撹拌部材60が60rpmで回転し、モデルBは撹拌部材60が30rpmで回転する。
なお、本実施例ではプロセススピードが異なる2つのモデルに挿入可能な構成としたが、これに限るものではない。少なくとも撹拌部材60を駆動する為の画像形成装置本体の駆動伝達手段が異なる駆動伝達速度で駆動することで、撹拌部材60が異なる速度で駆動すれば良い。例えばモデルAとモデルBとでプロセススピードは変わらないが、撹拌部材60の回転速度のみが異なるような構成であっても良い。
ここで、密度分布補正値は、実施例1で述べた撹拌部材60の回転速度に応じた補正値M1と同様のものとなる。
実際の補正については、図9を用いて説明する。
(S110)において、メモリ120に格納された、PA率と密度分布補正値の関係を表したテーブルを参照し、画像形成装置のモデル(撹拌部材60の回転速度)に応じた補正値M2(密度分布補正値)を決定する。次に(S111)において、この求めた補正値M2をPA率に乗じて、PA’率を算出した。これ以外の部分は、図9に示したものと同じ処理を行った。
上記シーケンスによると、現像剤密度分布補正をすることで、撹拌部材の速度による現像密度分布の違いを補正することが可能となり、更なる高精度の現像剤量検知が実現可能となる。
[実施例3]
本実施例は、実施例においては、使用時の温度、湿度によって変化する流動性起因のトナー密度分布の変化を、前記環境検知手段の検知結果を基に補正することで、検知精度を向上させる例について説明する。
図1に示したように、装置本体1は環境検知部100を有している。環境検知部100は、装置本体1に配置され、周囲の温度と湿度(少なくともいずれか一方)を検知するセンサである。
実施例1においても述べたように、最小部X1近傍のトナーの密度には、領域Aにおける撹拌された後のトナーの沈降速度と、撹拌部材で持ち上げられたトナーが領域Aに落ちてくるまでの落下速度が関係する。沈降速度が速いと、t4〜t1にかけて最小部X1近傍の現像剤量が増える(現像剤の密度があがる)為、静電容量が上がる。また、トナーが、撹拌部材60で搬送しきれないほど残っている場合においては、搬送されなかったトナーは撹拌部材60が通過した後も領域Aに留まる為、t2〜t3の静電容量が上がる。落下速度が速いと、図6のt4で検知できる現像剤量が増えるので、t4の静電容量が上がる。
落下速度は、例えばトナーが重く安息角が低いと速くなる。トナーの重さは、例えば磁性体が多く密度が高いトナー、粒径が大きいトナーで重くなる。安息角は、例えば外添剤の粒径大、外添剤の量が多い、球形度が高い、静電的または水架橋の影響で流動性が高くなる。また、撹拌部材60に対して吸着しやすい仕事関数の関係にある、撹拌部材60の表面性が粗く接触面積が小さいときに、流動性が低くなる。沈降速度は、例えばトナーが重く、トナーの含む空気の量が少ないと速くなる。トナーの含む空気の量は、例えば前述のトナーの流動性が低い場合に少なくなる。
以上のうち、ユーザーの使用状態によって変動してしまうものを補正することで現像剤量の検知精度をさらに向上させることが出来る。本実施例においては、使用時の温度、湿度によって変化する流動性起因のトナー密度分布の変化を、前記環境検知手段の検知結果を基に補正することで、検知精度を向上させる。
図12は、以降の説明中に用いる、現像装置40内の現像剤量に関する領域Z1、領域Z2、領域Z3の状態を示した概略図である。点線が領域Z1のトナー剤面、実線が領域Z2のトナー剤面、太線が領域Z3のトナー剤面である。
図13は、現像剤量に対する静電容量の推移である。実線は常温常湿環境、破線は高温高湿環境、太線は低温低湿環境を示している。本実施例においては、常温常湿を23℃/50%Rh、高温高湿を30℃/80%Rh、低温低湿を15℃/10%Rhとした。各環境で現像剤量に対する静電容量値が異なるのは、環境によりトナーの流動性が変わるためである。例えば、高温高湿下において、水架橋が進むと、撹拌されている時でも比較的トナーの密度が高い状態になる。よって沈降速度も相対的に速くなり、特に領域Z2のような最小部X1近傍のトナーが常にあるような領域で顕著に高くなる。逆に、低温低湿化においては、水架橋の影響が少なくなってくるので、撹拌されることによりトナー間に含まれる空気が増え流動性が増す。含まれる空気の量が多くなるので、沈降速度は遅くなり、特に領域Z2で顕著に最小部X1近傍のトナーの密度が相対的に低くなる。このように検知感度の高い最小部X1近傍のトナーの密度が変わる為、静電容量が変動する。
また、各環境において、静電容量の環境変動分は、領域Z2≫領域Z1>領域Z3となっている。現像剤量の多い領域Z1においては、領域Aを撹拌部材60が通過しても、撹拌部材60が通過した後に出来たスペースにはトナーが入り、最小部X1近傍のトナーの密度分布はあまり変わらない。よって、環境が変動してトナーの流動性が変化したとしても、静電容量の変化量としては小さい。現像剤量の少ない領域Z3においては、トナー間に空気を含んで密度が減ったとしても、ほぼすべてのトナーが検知感度の高い最小部X1近傍にあるため、静電容量の変化の幅は小さくなる。よって、環境が変わってトナーの流動性が変わっても静電容量はあまり変動しない。領域Z1とZ3の間の領域Z2は、領域Aを撹拌部材60が通過直後に、トナー間に空気が含まれ最小部X1近傍のトナーの密度が大きく変動する。よって、環境により沈降速度に差がある場合は、一番顕著に静電容量が変動する。尚、本実施例においては、現像剤量が30%で一番環境差が大きくなった。
本実施例においては、外添剤の量が少ない粉砕トナーを用いている為、トナーの親水性が比較的高く、上記のように高温高湿下で流動性が低下した。逆に、例えば外添剤の量を多くし、疎水性を高めていくと高温高湿下の流動性は上がるが、低温低湿下でトリボが上がってしまい静電凝集して流動性が低くなる。このようなトナーの場合は、図13の破線と太線の関係は逆転するため、後述の補正方向も逆になる。
また、本実施形態においては、領域Z1は100%≧現像剤量>40%、領域Z2は40%≧現像剤量>10%、領域Z3は10%≧現像剤量≧0%であったが、現像容器の形状、電極対の配置や形状で異なる場合がある。
本実施例に用いられる補正値M3は、PA率と環境検知手段100の検知結果(温度や湿度に基づき、使用されている環境を判断した結果)に基づき、密度分布補正値テーブルを参照して得られる。密度分布補正値テーブルは図14の通りである。縦軸は、補正値M3、横軸はPA率である。破線は高温高湿、太線は低温低湿の密度分布補正値テーブルである。本実施形においては、水蒸気量≦5g/m3を破線の密度分布補正値テーブル、15g/m3≦水蒸気量を太線の密度分布補正値テーブルを使用して補正を行う。精度を上げたい場合は、水蒸気量の水準を増やせばよいが、テーブルの容量が増加する為、メモリ120に負荷がかかる。効率的に検知精度向上させる為に、本実施例では二つの水準とした。
なお、この補正で用いる補正値M3も、現像装置40の現像剤量が減ると大きくなる補正値であり、補正値が大きくなった後、さらに現像装置40の現像剤が減ると、小さくなる補正値である。
実際の補正については、図9を用いて説明する。
(S110)において、メモリ120に格納された、PA率と密度分布補正値の関係を表した上記テーブルを参照し、使用環境に応じた補正値M3(密度分布補正値)を決定する。次に(S111)において、この求めた補正値M3をPA率に乗じて、PA’率を算出した。これ以外の部分は、図9に示したものと同じ処理を行った。
(上記以外の現像剤量検知精度向上手段)
密度分布補正値テーブルは各PA率、各温湿度、後述するが各第2の電極44配置により異なる。全てをメモリ120に格納できることが理想だが、容量の観点で出来ないことがある。その場合、例えば一番変動の大きい領域Z2だけ補正するようにしてもよい。少ない容量で精度向上が見込める。具体的には、図15に示す参照テーブルを使用する。尚、補正範囲外のPA率が得られた時は密度分布補正値を1とする。
また、本実施例においては、環境検知手段100は温度湿度共に検知しているが、スペースやコストの観点で、温度しか検知しないセンサを使う場合もある。その場合は、例えば帯電ローラ2や転写ローラ7にバイアスを印加し電流量を検知することで抵抗を検知し、その抵抗値から湿度を算出した上で補正を行うこともできる。また、温度、湿度、どちらかしか検出できない場合も、検出可能な情報に基づいて図14、15に示したようなテーブルを作成し、補正を行うことができる。
また、図5に示すような大容量のプロセスカートリッジ2の場合、現像剤量に対するPA率の各環境間の変化が異なってくる。これを図16に示す。実線、破線、太線が対応する環境は、図13に示したものと同じである。領域Z4は領域A及び領域Bにトナーがあり、現像剤量に対してPA率の変化が少ない領域である。領域Z5は領域Bのトナーが減っていくため現像剤量に対するPA率の変化が少し出てくる領域である。ただし、現像ローラ41からは遠い為、PA率の変化は少ない。領域Z6は領域Bのトナーが無くなり領域Aのトナーが減り始める領域である。現像ローラ41に近い為、PA率の変化量は一番大きくなる。環境変動は、上述の通り領域Aのトナーの密度分布の影響が大きい為、領域Z6の変動が大きくなる。現像剤量に対する環境起因のPA率の変動量が異なる為、密度分布補正値テーブルは異なるものを使用する必要がある。
例えば各プロセスカートリッジにメモリ120を配置し、トナー充填量や第2の電極44の配置、数や形状毎に異なる残検テーブル、密度分布補正値テーブルを格納する。そうすることで、トナー充填量の異なるプロセスカートリッジ2を装着した場合においても、精度良く現像剤量を報知することが出来る。
<比較例1の構成>
比較例1の構成は、密度分布補正値テーブルを有さず、環境により静電容量値が変動してしまう構成となっている。
<本実施例の構成と比較例1の構成における残検精度比較>
現像剤量に対するPA率の推移を図17に示す。横軸は現像剤量、縦軸はPA率、実線は本実施例の構成(補正あり)と常温常湿における比較例1(補正なし)の推移、太線は低温低湿における比較例1の推移、破線は高温高湿における比較例1の推移である。比較例1の構成においては、環境によっては実際の現像剤量とは異なる現像剤量を報知していた。一方、実施例1の構成においては、どの環境においても精度良く報知が出来た。
[実施例4]
本実施例は、実施例1に対して密度分布補正を行う際の検知手段が、環境検知手段100ではなく劣化予測部110となる例を説明する。
<本体構成>
図1に示したように、装置本体1は、劣化予測部110を有している。本実施例における劣化予測部110は、現像ローラ41の回転数からトナーの劣化具合を予測するものである。
<劣化予測と現像剤量検知の関係>
図18は、現像ローラ41の回転数とトナーの流動性との関係を示している。横軸は現像ローラ41の回転数、縦軸はトナーの凝集度である。トナーの凝集度は、100μm開口のメッシュの上に現像ローラ41近傍のトナーを2g乗せ、振幅2mm50Hzで振動させた後、メッシュ上に残ったトナーの重さを測定した。回転数が多くなると、凝集度が上がっていくのが判る。これは、回転数が増えると、トナーが現像ブレード42で規制される回数が増える。現像ブレード42で規制される際、高い圧力で摺擦される為、トナーは外添剤が剥がれる又は外添剤が母体に埋め込まれて劣化が促進される。このように劣化が促進すると、トナーの流動性が低下してくる。流動性が低下してくると、現像ブレード42近傍に送りこむ現像剤量が減って現像ローラ41表面にあるトナーの量が減る。トナーが減ると、規制部においてトナー1粒にかかる圧が増えていく為、さらに劣化が促進される。よって、図18より、現像ローラ41の回転数が判ればトナーの凝集度即ち劣化具合が予測できるのである。
本実施例の構成において、トナーの流動性が変わると上述の通り現像剤検知部70による検知結果がずれてしまう。図19は、印字率を変えた場合の現像剤量とPA率との関係である。横軸は現像剤量、縦軸はPA率となっている。実線は印字率5%、破線は印字率1%、太線は印字率30%となっている。領域Z1〜領域Z3は実施例3と同じである。印字率が下がっていくと、現像剤量に対するPA率が上がっていく。これは、同じ現像剤量においても、規制部通過する回数が多くなり、トナーの劣化が促進された状態でトナーを消費している為、トナーの流動性が下がり、最小部X1近傍のトナー密度が上がっていくためである。領域Z2の影響が大きいのも、トナーの流動性がかわり、実施例1等と同様のことが起こっているためである。
本実施例で用いる補正値M4は、現像剤の劣化具合に関する補正に用いる現像剤の密度分布補正値(トナー劣化補正値)である。劣化予測部110で検知した現像ローラ41の回転数を基に、メモリ120に格納されているトナー劣化補正値テーブルを参照して得られる。図20は、トナー劣化補正値テーブルである。横軸はPA率、縦軸はトナー劣化補正値Rである。破線は現像ローラ41の回転数が少ない場合のトナー劣化補正値テーブルであり、本実施例においては回転数<192000の場合の補正に用いる。太線は現像ローラ41の回転数が多い場合のトナー劣化補正値テーブルであり、回転数≧296000の場合の補正に用いる。
精度を上げたい場合は、回転数閾値の水準を増やせばよいが、テーブルの容量が増加する為、メモリ120に負荷がかかる。効率的に検知精度向上させる為に、2水準とした。
なお、この補正で用いる補正値M4も、現像装置40の現像剤量が減ると大きくなる補正値であり、補正値が大きくなった後、さらに現像装置40の現像剤が減ると、小さくなる補正値である。
実際の補正については、図9を用いて説明する。
(S110)において、メモリ120に格納された、PA率と密度分布補正値の関係を表したテーブルを参照し、現像ローラ41の回転数に応じた補正値M4を決定する。次に(S111)において、この求めた補正値M4をPA率に乗じて、PA’率を算出した。これ以外の部分は、図9に示したものと同じ処理を行った。
<上記以外の現像剤量検知精度向上手段>
本実施例においては、トナー劣化具合予測手段で現像ローラ41の回転数をカウントしているが、スキャナユニット30の累積露光時間に基づいたものであっても良い。露光時間が少なければ、印字率が低く、同じ現像剤量が消費された時に現像ブレード42で摺擦される回数が増え、劣化が促進されてしまうためである。また、直近の累積露光時間を考慮すれば、トナー劣化の予測精度の向上が見込める。直近の累積露光時間が少ない場合の現像ローラ41上のトナーは、累積露光時間が多い場合の現像ローラ41上のトナーに比べて、入替りが少ない為に規制部における摺擦回数が多くなり劣化が促進される。そのトナーが領域Aに戻った場合、そのトナーを消費するまで領域Aにおけるトナーの流動性が低くなり、静電容量値が大きくなる。よって、直近の累積露光時間が少ない場合はトナー劣化補正値を静電容量値が少なくなる方向に設定し、逆に直近の累積露光時間が多い場合はトナー劣化補正値を静電容量値が大きくなる方向に設定する。そうすることでトナー劣化予測精度が向上し、残量検知精度の向上が見込める。
さらに、現像ローラ41の回転数とスキャナユニット30の累積露光時間の両方を用いて劣化予測を行うことで、より残量検知精度の向上が見込める。これは、現像ローラ41の回転数が多くなると、現像ローラ41のトナーの搬送性が低下し、現像ローラ41上の単位面積当たりの現像剤量が低下する。規制部を通過する現像剤量が減るのでトナー一粒に対する圧力が上がり、累積露光時間に依らず、トナー劣化を相対的に促進してしまうためである。
容器形状の異なるプロセスカートリッジ2が装着される場合には、メモリ120をプロセスカートリッジ2に配置し、各形状に最適化したトナー劣化補正値テーブルを格納することで、残量検知精度の向上を見込める。
また、領域Z1及び領域Z3のトナー劣化に対する変動が少ない場合、メモリ120の容量負荷軽減の観点で、トナー劣化補正値テーブルのZ1及びZ3に相当する部分は格納しないようにもできる。その場合、領域Z1及びZ3におけるM4を全て1にすることで、効率的に残量検知精度の向上が見込める。
<比較例2の構成>
比較例2の構成は、トナー劣化補正値テーブルを有さず、トナーの劣化具合によりPA値が変動してしまう構成となっている。
<本実施例の構成と比較例2の構成における残検精度比較>
現像剤量に対するPA率の推移を図21に示す。横軸は現像剤量、縦軸はPA率、実線は本実施例と比較例2の印字率5%の推移、太線は印字率30%における比較例2の推移、破線は印字率1%における比較例2の推移である。比較例2の構成においては、トナーの劣化具合によっては実際の現像剤量とは異なる現像剤量を報知していた。一方、実施例2の構成においては、トナーの劣化具合に依らず精度良く報知が出来た。
以上実施例1から4で示したように、現像剤密度分布の補正を行うことにより、より精度の高い現像剤量検知を行うことができた。上記実施例では撹拌部材60の速度、周囲の温度、周囲の湿度、現像剤の劣化具合に応じた補正の例を示した。必要に応じて、複数の要因の補正を同時に行っても良く、その場合は単独の要因の補正よりも、精度の高い現像剤量検知が期待できる。
また、画像形成装置の装置本体1に、第1の電極43、第2の電極44の配置もしくは形状、それら電極対の数、または枠体40aに充填される現像剤の量や種類のうち、少なくとも一つが異なる複数種類の現像装置40を着脱可能とすることもできる。この場合、上述したような補正値は、1の電極43、第2の電極44の配置もしくは形状、それら電極対の数、または枠体40aに充填される現像剤の量や種類によって最適化した異なるものとすることが望ましい。そして、そのような補正値をメモリ120に記憶させておくことで、現像剤検知の精度をさらに向上させることができる。