JP6877217B2 - 遮熱コーティング、タービン翼及び遮熱コーティングの製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、遮熱コーティング、タービン翼及び遮熱コーティングの製造方法に関する。
産業用ガスタービンの分野では、翼の形状や翼に設けられた冷却構造を変えずに、耐熱部材への熱負荷を低減することができる遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating,TBC)が知られている。
例えば、特許文献1には、Ybが安定化剤として添加されたジルコニア(ZrO)からなるセラミックス層と、セラミックス層上に設けられ、セラミックス層と同材の腐食成分浸透防止層と、を備えた遮熱コーティングが開示されている。
また、特許文献2には、ジルコニアからなるセラミックス層上に、シリカからなる環境遮蔽層を形成した遮熱コーティングが開示されている。また、特許文献2では、環境遮蔽層の形成方法として、金属アルコキシドのアルコール溶液を用いたゾルゲル法により形成することが記載されている。
特開2003−160852号公報 特開2012−137073号公報
ここで、特許文献1に記載の遮熱コーティングにおける腐食成分浸透防止層は、特許文献2に記載のゾルゲル法や溶射法により、成膜することが考えられる。
しかしながら、腐食成分浸透防止層は成膜時に割れが起こりやすく、信頼性の高い腐食成分浸透防止層を得ることは容易ではない。例えば、腐食成分浸透防止層が高い耐熱性を有するセラミックス(例えば、特許文献1のようにYbが安定化剤として添加されたジルコニア)により形成される場合、腐食成分浸透防止層を溶射により成膜するためには非常に高いプロセス温度条件となり、溶射時における腐食成分浸透防止層の割れのリスクが高まる。あるいは、腐食成分浸透防止層を特許文献2に記載のゾルゲル法により形成しようとすると、ガスタービン運転時の温度条件で発生する熱応力に起因して腐食成分浸透防止層に割れが生じる可能性がある。
腐食成分浸透防止層に割れが生じると、その割れた部分から腐食成分がセラミックス層や基材に浸透してしまうため、腐食成分浸透防止層の割れを防止しつつ、腐食成分浸透防止層を形成することが望まれている。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、遮熱コーティングを構成する多孔質層上に形成される被膜の割れを抑制して、多孔質層及び基材の耐久性を向上することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る遮熱コーティングは、
立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第1ジルコニア安定化元素とを含み、基材上に形成される多孔質層と、
立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第2ジルコニア安定化元素とを含み、前記多孔質層上に形成され、前記多孔質層よりも緻密な緻密層と、
前記緻密層に分散された粒子と、を備える。
上記(1)の構成の遮熱コーティングは、緻密層に分散された粒子を備えるので、緻密層の焼成時に収縮する成分(粒子以外の成分)の比率を下げることができ、収縮力を低減して緻密層の割れを抑制できる。また、焼成時における緻密層の収縮を緻密層中に含まれる粒子が妨げようとするので(即ち、粒子による抗力により緻密層の収縮が抑制されるので)、緻密層の割れを抑制できる。これにより、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。
また、緻密層に粒子を分散させることで、緻密層の厚膜化を図ることができ、腐食成分の浸透防止効果が向上するとともに、緻密層の強度を向上できるので、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記粒子は、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第3ジルコニア安定化元素を含む安定化ジルコニアにより形成される。
上記(2)の構成によれば、粒子が安定化ジルコニアにより形成されているので、粒子の線膨張係数と、立方晶又は正方晶のジルコニアを含む上記多孔質層や緻密層の線膨張係数とを合わせることができるので、ヒートサイクル耐久性に優れた遮熱コーティングを提供できる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記第1ジルコニア安定化元素、前記第2ジルコニア安定化元素及び前記第3ジルコニア安定化元素は、マグネシウム、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかを含む。
上記(3)の構成によれば、前記第1ジルコニア安定化元素、前記第2ジルコニア安定化元素及び前記第3ジルコニア安定化元素は、マグネシウム、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかを含むので、多孔層、緻密層及び粒子の温度が変化しても立方晶又は正方晶のジルコニアの相転移が抑制される。これにより、多孔質層及び緻密層の耐久性を向上できる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、前記粒子は、粒径の異なる少なくとも2種類の粒子を含む。
上記(4)の構成によれば、粒径の大きな粒子が配列された隙間に粒径の小さな粒子が配置されるので、緻密層における粒子の充填密度が高まる。よって、緻密層の焼成時における収縮力を、緻密層中に高密度に充填された粒子によって効果的に低減し、緻密層の割れを適切に抑制できる。
また、緻密層における粒子の充填密度が高まることで、緻密層の強度が向上するので、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係るタービン翼は、
タービン翼本体と、
前記タービン翼本体の表面を覆うように設けられた上記(1)乃至(4)の何れかの構成の遮熱コーティングと、を備える。
上記(5)の構成によれば、上述したように緻密層の割れを抑制できるので、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。これにより、タービン翼の耐久性を向上できる。
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係る遮熱コーティングの製造方法は、
基材の表面の少なくとも一部に、立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第1ジルコニア安定化元素とを含む多孔質層が形成された前記基材の前記多孔質層に対して、
ジルコニウムのアルコキシド化合物と、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第2ジルコニア安定化元素とを含む液を塗布するステップと、
前記液が塗布された前記基材を加熱して前記多孔質層上に被膜を生成するステップと、を備える。
上記(6)の方法によれば、基材上に形成された多孔質層に対してジルコニウムのアルコキシド化合物と第2ジルコニア安定化元素とを含む液を塗布し、液が塗布された基材を加熱することで多孔質層上にジルコニアの被膜を生成できる。この方法では、ジルコニアの被膜を溶射で形成する場合に比べて十分に低いプロセス温度条件で成膜することができるので、ジルコニア被膜の割れを抑制することができる。これにより、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の方法において、立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第1ジルコニア安定化元素とを含む多孔質層を基材の表面の少なくとも一部に形成するステップをさらに備える。
上記(7)の方法によれば、立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第1ジルコニア安定化元素とを含む多孔質層を基材の表面の少なくとも一部に形成するステップをさらに備えることで、多孔質層上に上記被膜を生成することを前提として多孔質層を形成できる。これにより、例えば、腐食性物質の浸透抑制の役割を上記被膜に担わせることを前提として、要求される熱伝導性を確保できるような気孔率や厚さとなるように多孔質層を形成できる。したがって、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)または(7)の方法において、前記アルコキシド化合物は、エトキシド、プロポキシド又はブトキシドの少なくとも一つを含む。
上記(8)の方法によれば、上記のアルコキシド化合物がエトキシド、プロポキシド又はブトキシドの少なくとも一つを含むので、ジルコニアの融点よりも十分に低い温度で上記の液からジルコニアの被膜を生成でき、遮熱コーティングの製造コストを抑制できる。即ち、上記の液が塗布された基材を加熱する際の加熱温度を低く抑えることができるので、加熱に要するエネルギーコストや、加熱のための装置のコストを抑制でき、遮熱コーティングの製造コストを抑制できる。また、基材や多孔質層に対する熱処理が必要であった場合、この熱処理と、ジルコニアの被膜を生成するための加熱処理とを兼ねることができるので、遮熱コーティングの製造コストをさらに抑制できる。
(9)幾つかの実施形態では、上記(6)乃至(8)の何れかの方法において、前記液は、前記アルコキシド化合物の分散安定剤をさらに含む。
上記(9)の方法によれば、上記の液がアルコキシド化合物の分散安定剤を含むことで、上記の液の液質が安定し、時間が経過してもアルコキシド化合物が分解や凝集などの変化を起こしにくくなるので、上記の液の取り扱いが容易となり、遮熱コーティングの製造が容易となる。また、上記の液の液質が安定するので、生成されるジルコニアの被膜の品質も安定し、遮熱コーティングの性能が安定する。
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の方法において、前記分散安定剤は、メタノール又はエタノールの少なくとも一方であるアルコールを含む。
上記(10)の方法によれば、メタノールやエタノール等の低級アルコールを分散安定剤として用いることで、アルコキシド化合物を含む液を適切に安定化させることができる。
(11)幾つかの実施形態では、上記(10)の方法において、前記液における前記アルコールのモル比の合計は5%以上である。
上記(11)の方法によれば、液におけるアルコールのモル比の合計を5%以上とすることで、上記の液の液質がより安定するので、上記の液の取り扱いがより容易となり、遮熱コーティングの製造がより容易となる。また、上記の液の液質がより安定するので、生成されるジルコニアの被膜の品質もより安定し、遮熱コーティングの性能がより安定する。
(12)幾つかの実施形態では、上記(9)乃至(11)の何れかの方法において、前記分散安定剤は、酸を含む。
上記(12)の方法によれば、上記の酸によって上記の液の水素イオン濃度を調整することで上記の液の液質が安定するので、上記の液の取り扱いが容易となり、遮熱コーティングの製造が容易となる。また、上記の液の液質が安定するので、生成されるジルコニアの被膜の品質も安定し、遮熱コーティングの性能が安定する。
(13)幾つかの実施形態では、上記(12)の方法において、前記液における前記酸のモル比は1%以上である。
上記(13)の方法によれば、液における酸のモル比を1%以上とすることで、上記の液の液質がより安定するので、上記の液の取り扱いがより容易となり、遮熱コーティングの製造がより容易となる。また、上記の液の液質がより安定するので、生成されるジルコニアの被膜の品質もより安定し、遮熱コーティングの性能がより安定する。
(14)幾つかの実施形態では、上記(6)乃至(13)の何れかの方法において、前記第1ジルコニア安定化元素及び前記第2ジルコニア安定化元素は、マグネシウム、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかを含む。
上記(14)の方法によれば、第1ジルコニア安定化元素及び第2ジルコニア安定化元素がマグネシウム、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかを含むので、多孔層及び被膜の温度が変化しても立方晶又は正方晶のジルコニアの相転移が抑制される。これにより、多孔質層及び被膜の耐久性を向上できる。
(15)幾つかの実施形態では、上記(6)乃至(14)の何れかの方法において、前記液における前記第2ジルコニア安定化元素のモル比の合計は、前記液に含まれるジルコニウムに対して5%以上である。
上記(15)の方法によれば、第2ジルコニア安定化元素の添加量を上記範囲とすることで、より優れた結晶安定性と、ヒートサイクル耐久性を備えた遮熱コーティングとすることができる。
(16)幾つかの実施形態では、上記(6)乃至(15)の何れかの方法において、
前記液は、粒子を含み、
前記液が塗布された前記基材を加熱して前記多孔質層上に前記粒子を含む前記被膜を生成する。
上記(16)の方法によれば、被膜中に粒子が含まれるので、被膜の焼成時に収縮する成分(粒子以外の成分)の比率を下げることができ、収縮力を低減して被膜の割れを抑制できる。また、焼成時における被膜の収縮を被膜中に含まれる粒子が妨げようとするので(即ち、粒子による抗力により被膜の収縮が抑制されるので)、被膜の割れを抑制できる。これにより、被膜の割れを抑制できるので、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。
(17)幾つかの実施形態では、上記(16)の方法において、前記粒子は、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第3ジルコニア安定化元素を含む安定化ジルコニアにより形成される。
上記(17)の方法によれば、粒子が安定化ジルコニアにより形成されているので、粒子の線膨張係数と、立方晶又は正方晶のジルコニアを含む上記多孔質層や被膜の線膨張係数とを合わせることができるので、ヒートサイクル耐久性に優れた遮熱コーティングを提供できる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、遮熱コーティングを構成する多孔質層上に形成される被膜の割れを抑制して、多孔質層及び基材の耐久性を向上できる。
一実施形態に係る遮熱コーティングを備えるタービン翼の断面の模式図である。 一実施形態に係る遮熱コーティングを備えるタービン翼の断面の模式図である。 一実施形態に係る遮熱コーティングを備えるタービン翼の断面の模式図である。 図2に示す実施形態における緻密層の近傍を拡大した模式的な断面図である。 図3に示す実施形態における緻密層の近傍を拡大した模式的な断面図である。 幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの製造工程を、その工程順に並べて示す説明図である。 幾つかの実施形態に係る塗布液の調製工程を説明する図である。 スラリーが塗布された多孔質層の近傍を拡大した模式的な断面図である。 幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングを適用可能なガスタービン動翼の構成例を示す斜視図である。 幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングを適用可能なガスタービン静翼の構成例を示す斜視図である。 一実施形態係るガスタービンの部分断面構造を模式的に示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
(遮熱コーティング)
図1〜図3は、実施形態に係る遮熱コーティングを備えるタービン翼の断面の模式図である。幾つかの実施形態では、タービンの動翼、静翼などの耐熱基材11上に、遮熱コーティングとして金属結合層12及びセラミックス層13が順に形成される。即ち、図1〜図3に示すように、幾つかの実施形態では、遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)層10は、金属結合層12及びセラミックス層13を含んでいる。
金属結合層12は、MCrAlY合金(Mは、Ni,Co,Fe等の金属元素またはこれらのうち2種類以上の組合せを示す)などで構成される。
図1〜図3に示した幾つかの実施形態では、セラミックス層13は、多孔質層14と緻密層15とを有する。幾つかの実施形態における多孔質層14及び緻密層15は、それぞれYSZ(イットリア安定化ジルコニア)、即ち、安定化元素としてYを含む立方晶又は正方晶のZrOで構成される。
図1〜図3に示した幾つかの実施形態では、多孔質層14は、気孔16を多く含むポーラスな組織とされる。ここでいう「多く含む」とは、緻密層15と比較して気孔率(体積%)が高いことを意味する。多孔質層14の気孔率及び厚さは、要求される熱伝導性に応じて適宜設定される。
図1〜図3に示した幾つかの実施形態では、緻密層15は、多孔質層14よりも緻密な組織とされ、多孔質層14上に形成されている。ここでいう「緻密な組織」とは、具体的には、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11への後述するような腐食成分(腐食性物質)の浸透を、ある程度抑制することができる気孔率を有する組織のことである。
緻密層15の気孔率及び厚さは、腐食性物質の浸透を抑制する効果(以下、浸透抑制効果と呼ぶ)、及びセラミックス層13としたときに要求される熱伝導性などを考慮して適宜設定される。なお、セラミックス層13の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上1mm以下などとされる。
図2及び図3に示す実施形態では、緻密層15には、YSZの粒子(YSZ粒子)17が分散されている。図2に示す実施形態では、図4に示すように、緻密層15には1種類のYSZ粒子、即ち、ある平均径を有する1つの粒子群であるYSZ粒子17aが分散されている。なお、図4は、図2に示す実施形態における、緻密層15の近傍を拡大した模式的な断面図である。
また、図3に示す実施形態では、図5に示すように、緻密層15には粒径の異なる2種類のYSZ粒子17b,17cが分散されている。なお、図5は、図3に示す実施形態における、緻密層15の近傍を拡大した模式的な断面図である。
即ち、図3及び図5に示す実施形態では、緻密層15に分散されたYSZ粒子17は、ある平均径を有する1つの粒子群であるYSZ粒子17bと、YSZ粒子17bよりも平均径が小さい1つの粒子群であるYSZ粒子17cとを含む。なお、上記粒子群のパラメータとして挙げた平均径は、例えば算術平均径であってもよく、最多径や、中央径等であってもよい。また、YSZ粒子17は、粒度分布のピークが1つとなるような粒度分布を有する粒子群に限らず、粒度分布のピークが2つ以上現れるような粒度分布を有する粒子群を含んでいてもよい。
図2及び図4に示す実施形態において緻密層15に分散されたYSZ粒子17aの平均径や、図3及び図5に示す実施形態において緻密層15に分散されたYSZ粒子17b,17cの平均径は、緻密層15の厚さや要求される熱伝導性などに応じて適宜設定される。なお、一例を挙げると、図3及び図5に示す実施形態において緻密層15に分散されたYSZ粒子17b,17cのそれぞれの平均径は、3〜5μm程度、及び0.5μm程度である。即ち、一例として挙げたYSZ粒子17cの平均径は、一例として挙げたYSZ粒子17bの平均径の数分の一から十数分の一程度である。
このような平均径のYSZ粒子17b,17cが分散された緻密層15では、図5に示すように、YSZ粒子17cが複数配置されたYSZ粒子17b同士の隙間に効率的に配置されるので、緻密層15におけるYSZ粒子17の充填密度が高まる。
例えば産業用ガスタービンなどでは、燃焼によって生じた腐食性物質を含有する燃焼ガスと接触する。そのため、腐食性物質がタービン翼の多孔質層14に接触すると、多孔質層14に含まれる気孔16等を介して腐食性物質が金属結合層12や耐熱基材11に浸透して金属結合層12や耐熱基材11を腐食してしまうおそれがある。即ち、多孔質層14に含まれる気孔16が複数連なって連続気孔を形成している場合や、多孔質層14に割れなどが存在する場合、これらを伝って腐食性物質が金属結合層12や耐熱基材11に浸透するおそれがある。
そこで、上述した幾つかの実施形態では、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11へ腐食性物質が浸透するのを抑制するために、多孔質層14上に緻密層15を設けている。
したがって、上述した幾つかの実施形態では、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11へ腐食性物質が浸透するのを緻密層15が抑制するので、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11の耐久性を向上できる。即ち、上述した幾つかの実施形態では、TBC層10の耐久性を向上できるので、タービン翼の耐久性を向上できる。
また、上述した幾つかの実施形態では、多孔質層14の表面が多孔質層14よりも緻密な緻密層15で覆われているので、多孔質層14の強度(セラミックス層13の強度)を向上できる。即ち、上述した幾つかの実施形態では、TBC層10の耐久性を向上できるので、タービン翼の耐久性を向上できる。
上述した幾つかの実施形態では、緻密層15が多孔質層14と同様にYSZで構成されるので、緻密層15の線膨張係数と多孔質層14の線膨張係数とを合わせることができ、TBC層10のヒートサイクル耐久性が良好となる。
また、上述した幾つかの実施形態では、緻密層15にはYSZ粒子17が分散されている。これにより、後述する緻密層15の製造過程において、緻密層15の焼成時に収縮する成分(粒子以外の成分)の比率を下げることができ、収縮力を低減して緻密層15の割れを抑制できる。また、焼成時における緻密層15の収縮を緻密層15中に含まれるYSZ粒子17が妨げようとするので(即ち、YSZ粒子17による抗力により緻密層15の収縮が抑制されるので)、緻密層15の割れを抑制できる。これにより、腐食性物質が緻密層15に浸透しにくくなるので、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11への腐食性物質の浸透を効果的に抑制でき、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11の耐久性をより向上できる。即ち、上述した幾つかの実施形態では、TBC層10の耐久性をより向上できるので、タービン翼の耐久性をより向上できる。
また、上述した幾つかの実施形態では、緻密層15にYSZ粒子17を分散させることで、緻密層15の厚膜化を図ることができ、腐食成分の浸透防止効果が向上するとともに、緻密層15の強度を向上できるので、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11の耐久性をより向上できる。即ち、上述した幾つかの実施形態では、TBC層10の耐久性をより向上できるので、タービン翼の耐久性をより向上できる。
また、上述した幾つかの実施形態では、緻密層15に分散される粒子がYSZ粒子17である。YSZ粒子17以外の緻密層15の部分及び多孔質層14は、YSZから構成される。したがって、YSZ粒子17、YSZ粒子17以外の緻密層15の部分及び多孔質層14が安定化元素としてYを含むので、温度が変化しても立方晶又は正方晶のジルコニアの相転移が抑制される。これにより、TBC層10の耐久性を向上できる。また、YSZ粒子17の線膨張係数と、YSZ粒子17以外の緻密層15の部分及び多孔質層14の線膨張係数とを合わせることができるので、TBC層10のヒートサイクル耐久性が良好となる。
また、図3及び図5に示す一実施形態では、緻密層15には、粒径の異なる2種類のYSZ粒子17b,17cが分散されている。これにより、粒径の大きなYSZ粒子17bが配列された隙間に粒径の小さなYSZ粒子17cが配置されるので、緻密層15におけるYSZ粒子17の充填密度が高まる。よって、後述する緻密層15の製造過程において、緻密層15の焼成時における収縮力を、緻密層15中に高密度に充填されたYSZ粒子17によって効果的に低減し、緻密層15の割れを適切に抑制できる。
また、緻密層15におけるYSZ粒子17の充填密度が高まることで、緻密層15の強度が向上するので、TBC層10の耐久性を向上でき、タービン翼の耐久性を向上できる。
(遮熱コーティングの製造方法)
以下、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの製造方法について図6を参照して以下に説明する。図6は、幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの製造工程を、その工程順に並べて示す説明図である。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの製造方法は、耐熱基材11上に金属結合層12を形成する工程(金属結合層形成工程)と、金属結合層12を形成された耐熱基材11上に多孔質層14を形成する工程(多孔質層形成工程)と、多孔質層14上に緻密層15を形成する工程(緻密層形成工程)と、を備えている。
金属結合層形成工程では、MCrAlY合金の金属溶射粉を用いて、耐熱基材11上に低圧プラズマ溶射法(LPPS)、大気プラズマ溶射法(APS)、高速フレーム溶射(HVOF)などによって金属結合層12を成膜する。
次に、金属結合層12を形成された耐熱基材11上に多孔質層14を形成する。
多孔質層形成工程において、多孔質層14の形成方法としては、例えば、ZrO−Y粉末を用いて、大気圧プラズマ溶射法若しくは電子ビーム物理蒸着法により形成することができる。
なお、ZrO−Y粉末は、以下の手順により製造することができる。まず、ZrO粉末と所定の添加割合のY粉末を用意し、これらの粉末を適当なバインダーや分散剤とともにボールミル中で混合してスラリー状にする。次に、これをスプレードライヤーにより粒状にして乾燥させた後、拡散熱処理により固溶化させ、ZrO−Yの複合粉末を得る。そして、この複合粉末を金属結合層12上に溶射することによりYSZからなる多孔質層14を得ることができる。また、多孔質層14の成膜法として電子ビーム物理蒸着法を用いる場合には、所定の組成を有する原料を焼結又は電融固化して得られるインゴットを使用する。
次に、多孔質層14の表面側に緻密層15を形成する。
緻密層形成工程では、予めジルコニウムのアルコキシド化合物と、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させるジルコニア安定化元素とを含む液(塗布液)を調整し、この塗布液を多孔質層14の表面に塗布する。そして、多孔質層14の表面に塗布した塗布液を加熱処理することで緻密層15を得る。以下、緻密層形成工程について詳細に説明する。
(塗布液の調製)
幾つかの実施形態に係る塗布液は、例えば次のようにして調製される。図7は、幾つかの実施形態に係る塗布液の調製工程を説明する図である。
まず、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させるジルコニア安定化元素を含む塩の水溶液と、分散安定剤との混合物を作製する。ジルコニア安定化元素を含む塩(ジルコニア安定化元素の塩)として、例えばイットリウムの硝酸塩を用いることができる。
なお、ジルコニア安定化元素の塩として、硝酸塩以外の無機塩や有機塩を用いてもよい。また、ジルコニア安定化元素は、イットリウムに限らず、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかであってもよく、これらの中の2種類以上の元素であってもよい。
ジルコニア安定化元素のジルコニウムに対するモル比の合計を5%以上とすることで、より優れた結晶安定性が得られる。
上記の分散安定剤は、後述するジルコニウムのアルコキシド化合物の分散安定剤であり、例えば、メタノールやエタノール等の低級アルコールを用いることができる。また、上記の分散安定剤として、例えば、ギ酸や酢酸などの酸を用いてもよい。分散安定剤として、上記のアルコールと上記の酸の一方だけを用いてもよく、双方を用いてもよい。
なお、塗布液における上記のアルコールのモル比の合計を5%以上とすることで、塗布液の液質がより安定する。また、塗布液における上記の酸のモル比を1%以上とすることで、塗布液の液質がより安定する。
次に、ジルコニア安定化元素の塩の水溶液と分散安定剤との混合物と、ジルコニウムのアルコキシド化合物とを混合して塗布液を作製する。ジルコニウムのアルコキシド化合物は、ジルコニウムのエトキシド、ジルコニウムのプロポキシド又はジルコニウムのブトキシドの少なくとも1つを含む。
このように、塗布液には、分散安定剤が含まれるので、ジルコニウムのアルコキシド化合物の安定した分散状態が保たれる。
なお、幾つかの実施形態では、上記の塗布液と、上述したYSZ粒子17とを混合してスラリーを作製する。
(塗布液の塗布)
上述のようにして調製された塗布液又はスラリーは、例えば、浸漬や刷毛塗、噴霧などによって多孔質層14の表面に塗布される。
(加熱処理)
上述のようにして多孔質層14の表面に塗布された塗布液又はスラリーを加熱処理(焼成)することで焼結させる。これにより、多孔質層14の表面に塗布された塗布液又はスラリー中のジルコニウムのアルコキシド化合物がジルコニアに変化し、ジルコニアの被膜、即ち上述した緻密層15が得られる。
この加熱処理の条件として、例えば、850℃以上に加熱することが挙げられる。なお、この加熱処理は、耐熱基材11の熱処理を兼ねて施してもよいし、塗布液又はスラリーが塗布されたタービン翼をガスタービンに直接組み込んで燃焼ガスに晒すことで施してもよい。
以上で、耐熱基材11の表面に、金属結合層12及びセラミックス層13が形成されると共に、セラミックス層13に多孔質層14と緻密層15とが形成されたタービン翼が完成する。
このように、幾つかの実施形態では、耐熱基材11に形成された多孔質層14に対してジルコニウムのアルコキシド化合物とジルコニア安定化元素とを含む塗布液を塗布し、塗布液が塗布された耐熱基材11を加熱することで多孔質層14上にジルコニアの被膜である緻密層15を生成できる。この方法では、ジルコニアの被膜を溶射で形成する場合に比べて十分に低いプロセス温度条件である、例えば850℃程度の温度で成膜することができるので、緻密層15の割れを抑制することができる。これにより、腐食性物質が緻密層15に浸透しにくくなるので、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11への腐食性物質の浸透を効果的に抑制でき、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11の耐久性をより向上できる。即ち、上述した幾つかの実施形態では、TBC層10の耐久性をより向上できるので、タービン翼の耐久性をより向上できる。
幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの製造方法では、多孔質層形成工程を備えているので、多孔質層14上に緻密層15を生成することを前提として多孔質層14を形成できる。これにより、例えば、腐食性物質の浸透抑制の役割を緻密層15に担わせることを前提として、要求される熱伝導性を確保できるような気孔率や厚さとなるように多孔質層14を形成できる。したがって、多孔質層14及び耐熱基材11の耐久性を向上できる。
幾つかの実施形態では、ジルコニウムのアルコキシド化合物がジルコニウムのエトキシド、ジルコニウムのプロポキシド又はジルコニウムのブトキシドの少なくとも1つを含むので、ジルコニアの融点よりも十分に低い温度で塗布液からジルコニアの被膜である緻密層15を生成でき、TBC層10の製造コストを抑制できる。即ち、塗布液が塗布された耐熱基材11を加熱する際の加熱温度を低く抑えることができるので、加熱に要するエネルギーコストや、加熱のための装置のコストを抑制でき、遮熱コーティングの製造コストを抑制できる。また、耐熱基材11や多孔質層14に対する熱処理が必要であった場合、この熱処理と、緻密層15を生成するための加熱処理とを兼ねることができるので、TBC層10の製造コストをさらに抑制できる。
幾つかの実施形態では、塗布液が分散安定剤を含むので、塗布液の液質が安定し、時間が経過してもアルコキシド化合物が分解や凝集などの変化を起こしにくくなる。これにより、塗布液の取り扱いが容易となり、TBC層10の製造が容易となる。また、塗布液の液質が安定するので、生成される緻密層15の品質も安定し、TBC層10の性能が安定する。
幾つかの実施形態では、分散安定剤は、メタノール又はエタノールの少なくとも一方であるアルコールを含む。メタノールやエタノール等の低級アルコールを分散安定剤として用いることで、アルコキシド化合物を含む液を適切に安定化させることができる。
幾つかの実施形態では、分散安定剤は、ギ酸や酢酸などの酸を含む。この酸によって塗布液の水素イオン濃度を調整することで塗布液の液質が安定するので、塗布液の取り扱いが容易となり、TBC層10の製造が容易となる。また、塗布液の液質が安定するので、生成される緻密層15の品質も安定し、TBC層10の性能が安定する。
上述した幾つかの実施形態では、図8に示すようにスラリーにYSZ粒子17が含まれているので、以下で説明するように、緻密層15の割れを抑制できる。なお、図8は、スラリーが塗布された多孔質層14の近傍を拡大した模式的な断面図である。
スラリーが加熱処理されると、スラリー中の塗布液18aの揮発成分が揮発すること等により、スラリー中の塗布液18aの体積が減少する。そのため、スラリーの塗膜18の厚さが徐々に薄くなるとともに、塗膜18中に分散しているYSZ粒子17a同士の間隔が小さくなる。このとき、塗膜18(緻密層15)の収縮を塗膜18中に含まれるYSZ粒子17aが妨げようとするので(即ち、YSZ粒子17aによる抗力により緻密層15の収縮が抑制されるので)、緻密層15の割れを抑制できる。
また、塗膜18中にYSZ粒子17aが含まれるので、加熱処理時に収縮する成分即ち、YSZ粒子17a以外の成分である塗布液18aの比率を下げることができ、収縮力を低減して緻密層15の割れを抑制できる。
これにより、腐食性物質が緻密層15に浸透しにくくなるので、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11への腐食性物質の浸透を効果的に抑制でき、多孔質層14や金属結合層12、耐熱基材11の耐久性をより向上できる。即ち、上述した幾つかの実施形態では、TBC層10の耐久性をより向上できるので、タービン翼の耐久性をより向上できる。
(タービン翼及びガスタービン)
上述した幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングは、産業用ガスタービンの動翼や静翼、あるいは燃焼器の内筒や尾筒などの高温部品に適用して有用である。また、産業用ガスタービンに限らず、自動車やジェット機などのエンジンの高温部品の遮熱コーティング膜にも適用することができる。これらの部材に上述した幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングを設けることで、熱サイクル耐久性に優れるガスタービン翼や高温部品を構成することができる。
図9及び図10は、上述した幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングを適用可能なタービン翼の構成例を示す斜視図である。図9に示すガスタービン動翼4は、ディスク側に固定されるタブテイル41、プラットフォーム42、翼部43等を備えて構成されている。また、図10に示すガスタービン静翼5は、内シュラウド51、外シュラウド52、翼部53等を備えて構成されており、翼部53にはシールフィン冷却孔54、スリット55等が形成されている。
次に、図9,10に示すタービン翼4,5を適用可能なガスタービンについて図11を参照して以下に説明する。図11は、一実施形態係るガスタービンの部分断面構造を模式的に示す図である。このガスタービン6は、互いに直結された圧縮機61とタービン62とを備える。圧縮機61は、例えば軸流圧縮機として構成されており、大気又は所定のガスを吸込口から作動流体として吸い込んで昇圧させる。この圧縮機61の吐出口には、燃焼器63が接続されており、圧縮機61から吐出された作動流体は、燃焼器63によって所定のタービン入口温度まで加熱される。そして所定温度まで昇温された作動流体がタービン62に供給されるようになっている。図11に示すように、タービン62のケーシング内部には、上述したガスタービン静翼5が、複数段設けられている。また、上述したガスタービン動翼4が、各静翼5と一組の段を形成するように主軸64に取り付けられている。主軸64の一端は、圧縮機61の回転軸65に接続されており、その他端には、図示しない発電機の回転軸が接続されている。
このような構成により、燃焼器63からタービン62のケーシング内に高温高圧の作動流体を供給すれば、ケーシング内で作動流体が膨張することにより、主軸64が回転し、このガスタービン6と接続された図示しない発電機が駆動される。即ち、ケーシングに固定された各静翼5によって圧力降下させられ、これにより発生した運動エネルギは、主軸64に取り付けられた各動翼4を介して回転トルクに変換される。そして、発生した回転トルクは、主軸64に伝達され、発電機が駆動される。
一般に、ガスタービン動翼に用いられる材料は、耐熱合金(例えばCM247L=キャノン マスケゴン社の市販の合金材料)であり、ガスタービン静翼に用いられる材料は、同様に耐熱合金(例えばIN938=インコ社の市販の合金材料)である。即ち、タービン翼を構成する材料は、上述した幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングにおいて耐熱基材11として採用可能な耐熱合金が使用されている。従って、上述した幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングを、これらのタービン翼に適用すれば、遮熱効果と、耐久性に優れたタービン翼を得ることができるので、より高い温度環境で使用することができ、長寿命のタービン翼を実現することができる。また、より高い温度環境において適用可能であることは、作動流体の温度を高められることを意味し、これによりガスタービン効率を向上させることも可能となる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、緻密層15に分散されている粒子はYSZ粒子17である。しかし、例えば、YSZ以外の物質からなる粒子であっても、緻密層15の粒子以外の部分の線膨張係数に近い線膨張係数を有する物質であって、腐食性物質に対する耐腐食性や強度がYSZと同等の物質からなる粒子であればよい。このような物質の例として、例えば、イットリウム以外の安定化元素を含む安定化ジルコニアなどを挙げることができる。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、多孔質層14、緻密層15及びYSZ粒子17におけるジルコニアの安定化元素はイットリウムであったが、イットリウムに限らず、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかであってもよく、これらの中の2種類以上の元素であってもよい。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、緻密層15に分散させるYSZ粒子17は、1種類、又は粒径の異なる2種類のYSZ粒子17である。しかし、緻密層15に分散させるYSZ粒子17は、粒径の異なる3種類以上のYSZ粒子17であってもよい。
例えば、上述した幾つかの実施形態に係る遮熱コーティングの製造方法は、金属結合層形成工程と、多孔質層形成工程と、緻密層形成工程と、を備えている。しかし、既に金属結合層12及び多孔質層14が形成された耐熱基材11に対して、上述した緻密層形成工程によって多孔質層14の表面側に緻密層15を形成するようにしてもよい。
これにより、例えば、多孔質層14と同様の多孔質層を有する従来のタービン翼に対して、緻密層15を形成できる。また、上述した幾つかの実施形態に係るTBC層10を有するタービン翼4,5のメンテナンスに際し、古い緻密層15を除去した後に新たな緻密層15を形成できる。
例えば、上述した幾つかの実施形態に係るTBC層10は、耐熱基材11の表面全体に設けられていてもよく、耐熱基材11の表面の一部にだけ設けられていてもよい。
4 ガスタービン動翼(タービン翼、動翼)
5 ガスタービン静翼(タービン翼、静翼)
6 ガスタービン
10 遮熱コーティング(Thermal Barrier Coating : TBC)層
11 耐熱基材
12 金属結合層
13 セラミックス層
14 多孔質層
15 緻密層
16 気孔
17,17a,17b,17c YSZ粒子
18 塗膜
18a 塗布液

Claims (15)

  1. 立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第1ジルコニア安定化元素とを含み、基材上に形成される多孔質層と、
    立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第2ジルコニア安定化元素とを含み、前記多孔質層上に形成され、前記多孔質層よりも緻密な緻密層と、
    ピークが少なくとも2つ存在する粒度分布を有し、前記緻密層に分散された粒子と、
    を備える、遮熱コーティング。
  2. 前記粒子は、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第3ジルコニア安定化元素を含む安定化ジルコニアにより形成される、請求項1に記載の遮熱コーティング。
  3. 前記第1ジルコニア安定化元素、前記第2ジルコニア安定化元素及び前記第3ジルコニア安定化元素は、マグネシウム、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかを含む、請求項2に記載の遮熱コーティング。
  4. タービン翼本体と、
    前記タービン翼本体の表面を覆うように設けられた請求項1乃至の何れか一項に記載の遮熱コーティングと、
    を備えるタービン翼。
  5. 基材の表面の少なくとも一部に、立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第1ジルコニア安定化元素とを含む多孔質層が形成された前記基材の前記多孔質層に対して、
    ジルコニウムのアルコキシド化合物と、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第2ジルコニア安定化元素と、ピークが少なくとも2つ存在する粒度分布を有する粒子とを含む液を塗布するステップと、
    前記液が塗布された前記基材を加熱して前記多孔質層上に前記粒子が分散された被膜を生成するステップと、を備える、遮熱コーティングの製造方法。
  6. 立方晶又は正方晶のジルコニアと、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第1ジルコニア安定化元素とを含む多孔質層を基材の表面の少なくとも一部に形成するステップ、
    をさらに備える、請求項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  7. 前記アルコキシド化合物は、エトキシド、プロポキシド又はブトキシドの少なくとも一つを含む、請求項又はに記載の遮熱コーティングの製造方法。
  8. 前記液は、前記アルコキシド化合物の分散安定剤をさらに含む、請求項乃至の何れか一項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  9. 前記分散安定剤は、メタノール又はエタノールの少なくとも一方であるアルコールを含む、請求項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  10. 前記液における前記アルコールのモル比の合計は5%以上である、請求項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  11. 前記分散安定剤は、酸を含む、請求項乃至10の何れか一項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  12. 前記液における前記酸のモル比は1%以上である、請求項11に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  13. 前記第1ジルコニア安定化元素及び前記第2ジルコニア安定化元素は、マグネシウム、アルカリ土類金属元素、又は希土類元素の何れかを含む、請求項乃至12の何れか一項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  14. 前記液における前記第2ジルコニア安定化元素のモル比の合計は、前記液に含まれるジルコニウムに対して5%以上である、請求項乃至13の何れか一項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
  15. 前記粒子は、立方晶又は正方晶のジルコニアを安定化させる第3ジルコニア安定化元素を含む安定化ジルコニアにより形成される、請求項5乃至14の何れか一項に記載の遮熱コーティングの製造方法。
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