[1]実施例
図1は実施例に係る監視システム1の全体構成を表す。監視システム1は、定められた監視エリアに配置された監視員と監視センタにいるオペレータとが協同してその監視エリアを監視することを支援するシステムである。監視エリアとしては、デパートや遊園地、コンサート会場などの人が集まる施設内のエリアの他、マラソンやパレードのコース及びその周辺といった広域に亘るエリアなどが定められる。また監視員とは、周囲の人や物の安全を確保するなどの目的で監視エリアを現場で監視する役割を与えられた者のことをいう。監視員は本発明の「監視者」の一例である。
監視システム1は、ネットワーク2と、イントラネット3と、複数の固定カメラ4と、複数の監視員端末10と、監視センタサーバ装置20と、オペレータ端末30とを備える。ネットワーク2は、移動体通信網及びインターネット等を含む通信システムであり、自システムに接続される装置同士のデータのやり取りを仲介する。ネットワーク2には、監視員端末10が例えば移動体通信又は無線LAN(Local Area Network)通信等の無線通信により接続され、固定カメラ4が有線通信(無線通信でもよい)により接続される。
イントラネット3は、例えばLAN及びWAN(Wide Area Network)を含む通信システムであり、自システムに接続される装置同士のデータのやり取りを仲介する。イントラネット3は、ネットワーク2に接続されている。また、イントラネット3には、監視センタサーバ装置20及びオペレータ端末30が接続されている。なお、イントラネット3との接続は有線通信及び無線通信のどちらでもよい。
固定カメラ4は、監視エリアの現場に設置されて周囲の映像を撮影する撮影手段であり、本発明の「監視装置」の一例である。固定カメラ4は、撮影した映像を示す映像を監視センタサーバ装置20に送信する。なお、映像を送信するとは、映像を示すデータを送信することを意味する。以下でも、各種の情報に対して送信等の処理を行うことは、それらの情報を示すデータに対して処理を行うことを意味する。また、固定カメラ4は、パン・チルト・ズーム機能を有し、オペレータ端末30や監視員端末10からの遠隔操作により制御可能としてもよい。
監視員端末10は、監視エリアの現場に配置される監視員が所持して持ち運ぶ端末である。監視員端末10は本発明の「携帯端末」の一例である。監視員端末10は、例えばスマートフォンであるが、本システム専用に作られた端末であってもよい。
図2は監視員に装着された監視員端末10を表す。図2では、監視員A1が端末ケース5を身体に固定している。端末ケース5は、監視員端末10を格納する入れ物であり、バンドにより監視員の身体(詳細には胸部)に固定されている。
監視員端末10は、周囲の映像の撮影手段を備えており、端末ケース5は、自ケースに監視員端末10が格納された場合に撮影手段のレンズの位置する部分が透明になっている(孔が空いていてもよい)。監視員の胸部に装着された監視員端末10は、監視員の前方の映像を撮影する。また、監視員端末10は、加速度の測定手段も備えている。監視員端末10は、撮影手段が撮影した映像と、測定手段による加速度の測定結果とを監視センタサーバ装置20に送信する。
監視センタサーバ装置20は、監視エリアの監視状況を管理するための処理を実行する情報処理装置である。監視センタサーバ装置20は、送信されてきた各情報を用いて、監視エリアでの異常事象の発生を検出する。ここでいう異常事象とは、監視エリアにおいて発生する事象のうち、周囲の人の安全を脅かしたり迷惑になったりするなどの理由で、監視員が何らかの対応(関係者への連絡や事態を収束するための対処など)を行う対象となる事象のことであり、単に異常または事案と呼ばれることもある。具体的には、例えば、不審者の出現、不審物の発見、立ち入り禁止エリアへの立ち入り、道路への飛び出し、怪我人の発生、事故の発生及びケンカの発生等が異常事象に含まれる。監視センタサーバ装置20は、異常事象の発生を検出すると、その旨を示す報知情報をオペレータ端末30に送信することで、オペレータへの報知を行う。
オペレータ端末30は、監視センタのオペレータによって使用される端末である。オペレータ端末30は、監視センタサーバ装置20から送信されてきた報知情報を例えば表示手段に表示することで、監視エリアでの異常事象の発生をオペレータに報知する。この報知によって異常事象の発生に気付いたオペレータは、異常事象の発生を監視の責任者に伝えたり、監視員と連絡を取って、発生した異常事象への対応を指示したりする。監視システム1は、このようにして、監視エリアにいる監視員が装着する監視員端末10を用いて監視員の周辺で発生した異常事象を検出し、監視エリアで発生した異常事象を関係者(オペレータ、監視員及び監視の責任者等)に伝達して異常事象に迅速に対応することを支援する。
図3は監視員端末10のハードウェア構成を表す。監視員端末10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信装置14と、入力装置15と、出力装置16と、撮影装置17と、加速度センサ18とを備えるコンピュータである。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ11は、プログラム及びデータ等をストレージ13及び通信装置14からメモリ12に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
メモリ12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体である。ストレージ13は、ハードディスクドライブ及びフラッシュメモリ等のコンピュータが読み取り可能な記録媒体である。通信装置14は、無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行う。通信装置14は、例えば移動体通信又は無線LANの規格に準拠した無線通信を行う。
入力装置15は、外部からの入力を受け付ける入力デバイスであり、監視員端末10においては例えばタッチセンサ、ボタン及びマイクロフォン等である。出力装置16は、外部への出力を実施する出力デバイスであり、例えば、ディスプレイ及びスピーカー等である。なお、監視員端末10は、入力装置15のタッチセンサ及び出力装置16のディスプレイが一体となったタッチスクリーンを備える。
撮影装置17は、レンズ、イメージセンサ及びマイクロフォン等を備え、レンズから入射する光が表す周囲の人物や光景を撮影する。イメージセンサは周囲を撮影した映像を検出するセンサであり、マイクロフォンは周囲の音を示す情報を出力するセンサである。撮影装置17は、撮影した映像をプロセッサ11に供給する。
加速度センサ18は、本実施例では、3軸の加速度センサであり、互いに直交するXYZの3軸の加速度を示す加速度情報をプロセッサ11に供給する。図2の説明で述べたように、監視員端末10は監視員に装着して用いられる。そのため、加速度センサ18は、監視員の動き(行動)に伴い生じた加速度を示す情報を出力するセンサとして機能する。
監視センタサーバ装置20は、プロセッサと、メモリと、ストレージと、通信装置とを備えるコンピュータである。これらはいずれも、図2に表す同名の各装置と共通するハードウェアである。なお、監視センタサーバ装置20においては、通信装置は、有線又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行う。
オペレータ端末30は、プロセッサと、メモリと、ストレージと、通信装置と、入力装置と、出力装置とを備えるコンピュータである。これらはいずれも、図2に表す同名の各装置と共通するハードウェアである。なお、オペレータ端末30においては、通信装置は、有線又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行い、入力装置としては、キーボード、マウス及びマイクロフォン等が用いられる。
監視システム1が備える各装置のプロセッサがプログラムを実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
図4は監視システム1が実現する機能構成を表す。なお、図4では、固定カメラ4及び監視員端末10がそれぞれ1つしか表されていないが、他の固定カメラ4及び監視員端末10も同じ機能構成を備えている。
固定カメラ4は、撮影部401と、映像送信部402とを備える。監視員端末10は、撮影部101と、映像送信部102と、加速度測定部103と、加速度情報送信部104とを備える。監視センタサーバ装置20は、映像取得部211と、異常検知部212と、第1報知部213と、映像蓄積部214と、映像送信部215と、対応状況記憶部216と、映像取得部221と、加速度情報取得部222と、動き検出部223と、異常判定部224と、第2報知部225と、対応者特定部226とを備える。オペレータ端末30は、報知情報表示部301と、周辺地図表示部302と、映像表示部303と、異常対応操作受付部304とを備える。
固定カメラ4の撮影部401は、監視エリアの映像を撮影し、撮影を続けながら並行して撮影済みの映像を映像送信部402に供給する。固定カメラ4は、監視センタサーバ装置20の宛先(IP(Internet Protocol)アドレス等)と、自装置を識別する識別情報として例えばカメラID(Identification)とを記憶している。映像送信部402は、ストリーミングの技術を用いて、撮影部401から供給される映像を受け取りながら、並行して受け取り済みの映像を自装置のカメラIDに対応付けて監視センタサーバ装置20に送信する。
監視センタサーバ装置20の映像取得部211は、固定カメラ4から送信されてくる映像及びカメラIDを取得する。映像取得部211は、取得した映像及びカメラIDを異常検知部212及び映像蓄積部214に供給する。映像蓄積部214は、映像取得部211から供給された映像、すなわち固定カメラ4によって撮影された映像をカメラIDに対応付けて蓄積する。
異常検知部212は、映像取得部211から供給された映像、すなわち監視エリアに設置された固定カメラ4が撮影した映像(固定カメラ4の設置場所という定点からの映像)に基づいて、映像に映っている監視エリアで発生した異常事象(上述した不審者の出現等)を検知する。異常検知部212は本発明の「異常検知手段」の一例である。異常検知部212は、例えば、特開2002−262282号公報及び特開2012−004720号公報に開示されている技術等を応用して、撮影された映像を解析してこれらの異常事象(後述の「検知異常」)を検知する。
異常検知部212は、異常事象を検知すると、検知した異常事象を識別する検知IDを発行し、発行した検知IDと、異常事象の検知に用いた映像に対応付けられていたカメラIDとを第1報知部213に供給する。また、異常検知部212は、異常事象を検知したときの再生位置を示す情報(再生時刻等)を検知ID及びカメラIDとともに映像蓄積部214に供給する。映像蓄積部214は、同じカメラIDに対応付けて蓄積している映像にこの再生位置を示す情報及び検知IDを対応付けて記憶する。
第1報知部213は、異常検知部212からカメラID及び検知IDが供給されると、供給されたカメラIDの固定カメラ4の周辺で異常事象が発生したことをオペレータに報知する。第1報知部213は、例えばオペレータが認識可能な固定カメラ4の名称(例えば「第1カメラ」、「第2カメラ」など)とカメラIDとを対応付けた情報を記憶しておき、「警告:」+供給されたカメラIDに対応付けられている名称+「の周辺で異常発生!」という文字列とカメラID及び検知IDとを示す情報を報知情報として生成する。第1報知部213は、生成した報知情報をオペレータ端末30に向けて出力することで、オペレータへの報知を行う。
オペレータ端末30の報知情報表示部301は、監視センタサーバ装置20から出力されてきた報知情報を表示する。
図5は表示された報知情報の一例を表す。図5の例では、報知情報表示部301は、監視システム画面に、出力されてきた報知情報が示す「警告:第1カメラの周辺で異常発生!」という文字列E1を表示している。オペレータは、こうして表示された報知情報を見ることで、監視エリアに設置された第1カメラの周辺で異常事象が発生したことを把握することができる。
また、報知情報表示部301は、「周辺地図を表示する」と書かれた表示ボタンB1を表示している。表示ボタンB1を押す操作が行われると、報知情報表示部301は、報知情報が示すカメラIDを周辺地図表示部302に供給する。周辺地図表示部302は、供給されたカメラIDの固定カメラ4の周辺地図を表示する。
図6は表示された周辺地図の一例を表す。図6の例では、周辺地図表示部302は、南北に走るK1通り及びK3通りと、東西に走るK2通り及びK4通りと、K1通り及びK2通りが交わるK5交差点と、K2通り及びK3通りが交わるK6丁字路とが表された地図M1を周辺地図として表示している。また、周辺地図表示部302は、地図M1に、第1カメラの位置を示すカメラ画像C1と、第1カメラの撮影範囲示す範囲画像C2とを表示している。
周辺地図表示部302は、例えば、各固定カメラ4の位置とカメラ画像及び範囲画像とを予め記憶しておき、報知情報表示部301から供給されたカメラIDにより識別される固定カメラ4の位置に対応するカメラ画像及び範囲画像を表示する。オペレータは、こうして表示された周辺地図を見ることで、異常事象が発生した場所を把握することができ、そこに監視員を向かわせる指示を行うことができる。
また、報知情報表示部301は、「映像を表示する」と書かれた表示ボタンB2を表示している。表示ボタンB2を押す操作が行われると、報知情報表示部301は、報知情報が示すカメラID及び検知IDを映像表示部303に供給する。映像表示部303は、供給されたカメラIDの固定カメラ4が撮影した映像を表示する。映像表示部303は、供給されたカメラIDに対応付けられた映像のうち供給された検知IDに対応付けられた情報が示す再生位置を含む部分を要求する要求データを監視センタサーバ装置20に送信する。
監視センタサーバ装置20の映像送信部215は、送信されてきた要求データを受け取ると、その要求データが示すカメラIDに対応付けて蓄積されている映像のうち、その要求データが示す検知IDに対応付けられている情報が示す再生位置を含み且つその再生位置から現在までの部分を映像蓄積部214から読み出る。映像送信部215は、こうして読み出した映像を要求元のオペレータ端末30に送信する。映像表示部303は、送信されてきた映像を表示する。
また、報知情報表示部301は、「対応する監視員を指定する」と書かれた表示ボタンB3を表示している。表示ボタンB3を押す操作が行われると、報知情報表示部301は、監視員を指定するための画面を表示する。
図7は監視員の指定画面の一例を表す。図7の例では、報知情報表示部301は、「対応する監視員を指定してください。」という文字列と、「監視員A1」、「監視員A2」、・・・という各監視員を指定するための指定ボタン群B5とを表示している。なお、監視員の指定画面は図7の例に限られるものではなく、例えば、監視員の一覧に現在の状態(例えば、警備中、休憩中、対処中など)や監視員の現在位置を対応付けて表示したり、監視エリアの地図上に各監視員の位置と状態を示すアイコンをプロットして表示させてもよい。
指定ボタン群B5のうちのいずれかを押す操作をオペレータが行うと、異常対応操作受付部304は、この操作を、検知された異常事象に対応するための対応操作として受け付ける。報知情報表示部301は、この異常対応操作受付部304に、報知情報が示すカメラID及び検知IDを供給する。異常対応操作受付部304は、監視員を指定する操作を対応操作として受け付けると、指定された監視員の監視員IDを、供給されたカメラID及び検知IDに対応付けて監視センタサーバ装置20に送信する。
監視センタサーバ装置20の対応状況記憶部216は、送信されてきた各IDを受け取ると、受け取った検知ID、カメラID及び監視員IDと、それらのIDを受け取った時刻とを、検知された異常事象への監視員の対応状況(対応状況を示す情報)として記憶する。対応状況記憶部216は本発明の「記憶手段」の一例である。
図8は記憶された対応状況の一例を表す。図8の例では、対応状況記憶部216は、検知IDと、装置IDと、対応中の監視員IDと、対応開始時刻と、対応終了時刻とを対応状況として記憶している。
装置IDは、カメラIDの他、後述する監視員端末10を識別する端末IDを表している。対応開始時刻は、上記IDを受け取った時刻である。対応状況記憶部216は、対応終了時刻として、対応がまだ終了していなければ「対応中」という文字列情報を記憶しておき、対応を終了する操作がオペレータにより行われると、その操作が行われた時刻を記憶する。
図9は対応終了の操作画面の一例を表す。図9の例では、報知情報表示部301が、「監視員A1による対応が終了しましたか?」という文字列と、はいボタンB6とを表示している。オペレータは、監視員A1から異常事象への対応が終了した旨の連絡を受けると、はいボタンB6を押す操作を行う。異常対応操作受付部304は、この操作を受け付けると、監視員A1が対応していた異常事象に対応する検知ID、カメラID、監視員IDを、操作を受け付けた時刻とともに監視センタサーバ装置20に送信する。対応状況記憶部216は、送信されてきた各IDに対応付けられている対応終了時刻を、送信されてきた時刻に更新する。
監視員端末10の撮影部101は、監視エリアの映像を撮影し、撮影を続けながら並行して撮影済みの映像を映像送信部102に供給する。映像送信部102は、ストリーミングの技術を用いて、撮影部101から供給される映像を受け取りながら、並行して受け取り済みの映像を自端末の端末IDに対応付けて監視センタサーバ装置20に送信する。
監視員端末10の加速度測定部103は、自端末の3軸の加速度を測定し、測定した加速度を示す加速度情報を加速度情報送信部104に供給する。加速度情報送信部104は、供給された加速度情報を自端末の端末IDに対応付けて監視センタサーバ装置20に送信する。加速度測定部103による測定と、加速度情報送信部104による加速度情報の送信は、例えば一定時間の間隔(1秒毎など)で繰り返し行われる。
撮影部101による映像の撮影、映像送信部102による映像の送信、加速度測定部103による加速度の測定、及び、加速度情報送信部104による加速度情報の送信という各処理は、例えば監視員が監視員端末10に対してこれらの処理を開始させる開始操作をすることで、これらの処理を終了させる終了操作をするまでは、監視員が何かの操作をしなくても繰り返し行われる。
監視センタサーバ装置20の映像取得部221は、監視員端末10から送信されてきた映像(監視員端末10で撮影された監視員の周囲の映像)及び端末IDを取得する。監視員が動くとそれに伴って監視員端末10の位置及び向きの一方又は両方が変化するので、この映像に含まれる撮影対象の表示位置等も変化する。つまり、取得された映像は、監視員の動きに伴う監視員端末10の動きを表す情報であり、本発明の「動き情報」の一例である。
この映像を取得する映像取得部221(或いは、撮影部101及び映像送信部102を含む)は、本発明の「動き情報取得手段」の一例である。映像取得部221は、取得した映像を端末IDに対応付けて映像蓄積部214及び動き検出部223に供給する。映像蓄積部214は、映像取得部221から供給された映像、すなわち監視員端末10によって撮影された映像を端末IDに対応付けて蓄積する。
加速度情報取得部222は、監視員端末10から送信されてきた加速度情報(監視員の動きに伴い監視員端末10で検出された加速度)及び端末IDを取得する。この加速度情報は、監視員の動きに伴う監視員端末10の動きを表す情報であり、本発明の「動き情報」の一例である。この加速度情報を取得する加速度情報取得部222(或いは、加速度測定部103及び加速度情報送信部104を含む)は、本発明の「動き情報取得手段」の一例である。加速度情報取得部222は、取得した加速度情報を端末IDに対応付けて動き検出部223に供給する。
前述したように、監視員端末10からの映像の送信と加速度情報の送信が繰り返し行われるので、映像取得部221による映像の取得と、加速度情報取得部222による加速度情報の取得も、繰り返し行われる。動き検出部223は、こうして繰り返し取得される映像及び加速度情報、すなわち、監視員に装着されたセンサの出力に基づいて、監視員端末10の動きを通じて監視員の動きを検出する。
本実施例では、動き検出部223は、正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱する監視員の動きを検出する。動き検出部223は、次の2つの方法でそのような監視員の動きを検出する。第1の方法では、動き検出部223は、取得された加速度情報が示す加速度(監視員端末10が備える加速度センサ18が検出した加速度)が閾値以上である場合に監視員の上記の動きを検出する。
監視員端末10を装着した監視員が周囲で発生した異常事象に気付いて、異常事象の発生地点の方に体の向きを変えたり、その発生地点に駆け寄ったりした場合、監視員端末10の実空間における位置が急激に変化する。そこで、動き検出部223は、加速度情報が示す加速度が閾値以上である場合に、監視員が異常事象に気付いた際の動き、或いは異常事象に対処するための動きにより監視員端末10の位置が急激に変化した、すなわち正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱したとみなし、監視員の上記動きを検出する。
第2の方法では、動き検出部223は、取得された映像(監視員端末10が備えるイメージセンサが検出した周囲の映像)から認識される物体の映像内での位置が移動する際の加速度が閾値以上である場合に監視員の上記動きを検出する。動き検出部223は、例えば、周知の顔認識技術や車両認識技術、標識認識技術、白線認識技術などを用いて、映像内に映っている物体を認識する。
動き検出部223は、認識した物体の映像内での位置を一定期間毎に繰り返し検出し、その位置が移動する際の加速度を算出する。前述したように異常事象に気付いた監視員が異常事象の発生地点の方に体の向きを変えたり、その発生地点に駆け寄ったりした場合、監視員端末10の向きが急激に変化する。そのため、監視員端末10が撮影している映像に映っている物体も、映像の中で急激に位置を変えることになる。
そこで、動き検出部223は、映像に映っている物体の映像内での位置が移動する際の加速度が閾値以上である場合に、監視員が異常事象に気付いた際の動きによりその物体の映像中の位置が急激に変化した、すなわち正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱したとみなし、監視員の上記動きを検出する。すなわち、第2の方法も第1の方法と同様、監視員による対処のための動きを正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱した動きとして検出するものである。動き検出部223は、監視員の上記動きを検出すると、その旨を異常判定部224に通知する。
異常判定部224は、映像取得部221により取得された映像及び加速度情報取得部222により取得された加速度情報(いずれも本発明の「動き情報」の一例)に基づいて表される監視者の動きが、正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱する場合に、その監視者が認知した異常事象が発生したと判定する。上記の動き検出部223及び異常判定部224で実現される機能は本発明の「異常判定手段」の一例であり、判定された異常事象は本発明の「監視者認知異常」の一例である。
本実施例では、動き検出部223により基準動作から逸脱する監視員の動きが検出されるので、異常判定部224は、動き検出部223からの通知を受け取った場合に、監視者の動きが基準動作から逸脱すると判断し、異常事象が発生したと判定する。なお、動き検出部223は、監視員が少しでも動いたときに、その監視員の動きを検出してもよい。その場合、動き検出部223は、監視員が動いた旨と、その動きを表す情報として加速度情報及び映像を異常判定部224に供給する。そして、異常判定部224は、動き検出部223と同じく上述した第1の方法及び第2の方法を用いて、監視者の動きが正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱するか否かを判断し、異常事象が発生したか否かを判定する。
以上のとおり、異常判定部224は、上記の監視員が自ら発見・認知して対処のための行動をとった異常事象(監視者の周辺で発生した異常)の発生を判定する。以下では、異常判定部224が判定する異常事象のことを「認知異常」といい、異常検知部212が検知する異常事象のことを「検知異常」という。
異常判定部224は、認知異常の発生を判定すると、判定した認知異常を識別する判定IDを発行し、発行した判定IDと、異常事象の検知に用いた映像に対応付けられていた端末IDとを第2報知部225に供給する。この端末IDは、認知異常の検知に用いられたセンサの装着者が装着している監視員端末10を識別する識別情報である。
また、異常判定部224は、認知異常の発生を判定したときの映像の再生位置を示す情報(再生時刻等)を判定ID及び端末IDとともに映像蓄積部214に供給する。映像蓄積部214は、同じ端末IDに対応付けて蓄積している映像にこの再生位置を示す情報及び判定IDを対応付けて記憶する。こうして蓄積された映像も、映像送信部215によって送信されて、オペレータ端末30において表示される。
第2報知部225は、異常判定部224から端末ID及び判定IDが供給されると、供給された端末IDの監視員端末10を装着した監視員(装着者)により認知された異常事象が発生したことをオペレータに報知する。第2報知部225は、例えばオペレータが認識可能な監視員の名称(例えば「監視員A1」、「監視員A2」など)と端末IDとを対応付けた情報を記憶しておき、「警告:」+供給された端末IDに対応付けられている名称+「の周辺で異常発生!」という文字列と端末D及び判定IDとを示す情報を報知情報として生成する。第2報知部225は、生成した報知情報をオペレータに向けて出力することで、オペレータへの報知を行う。
オペレータ端末30の報知情報表示部301は、監視センタサーバ装置20から出力されてきた報知情報を表示する。
図10は表示された報知情報の一例を表す。図10の例では、報知情報表示部301は、監視システム画面に、出力されてきた報知情報が示す「警告:監視員A1の周辺で異常発生!」という文字列E3を表示している。
図10に表す報知情報は、監視員の名称が含まれているので、図5に表す報知情報と区別可能な情報となっている。このように、第2報知部225は、異常判定部224により発生したと判定された認知異常を、異常検知部212により検知された検知異常と区別可能に報知する。第2報知部225は本発明の「報知手段」の一例である。オペレータは、こうして表示された認知異常の発生を示す報知情報を見ることで、監視エリアにいる監視員の周辺で異常事象が発生したことを把握することができる。
このように、監視センタサーバ装置20は、異常検知部212により検知された検知異常と、異常判定部224により判定された認知異常とを区別して異常事象を検出し、それぞれを区別可能な内容にてオペレータ端末30へ報知情報を出力する。このため、オペレータは、固定カメラ4の映像に基づき検知された異常事象(検知異常)とは別に、監視員が現場で発見した新たな異常事象(認知異常)であることを、表示された報知情報から把握することができる。
また、報知情報表示部301は、図5の例と同様に、「映像を表示する」と書かれた表示ボタンB2を表示している。表示ボタンB2を押す操作が行われると、映像表示部303及び映像送信部215がカメラIDの代わりに端末IDを用いて図5、図9の例と同様の動作を行う。映像表示部303は、供給された端末IDの監視員端末10が撮影した映像を表示する。これにより、オペレータは、異常事象が検知されたときの監視エリアの様子を映像から確認することができるし、その監視エリアの現在の様子も確認することができる。
なお、第2報知部225は、上述した認知異常の発生が判定された場合でも、常に報知を行うわけではない。第2報知部225は、認知異常の発生が判定された場合でも、その判定に用いられたセンサの装着者が、異常検知部212により検知された検知異常や既に把握されている認知異常に対応中の監視者(以下「対応者」という)であるときには、報知を行わない。つまり、第2報知部225は、検出された異常事象に対処中の監視員の動きが基準動作から逸脱した場合には、その監視員が認知した異常事象を認知異常として報知しない。
第2報知部225は、異常判定部224から端末ID及び判定IDが供給されると、検知された検知異常における対応者を対応者特定部226に問い合わせる。対応者特定部226は、異常検知部212により検知された検知異常における対応者を特定する。対応者特定部226は、第2報知部225からの上記問合せを受け取ると、対応状況記憶部216が記憶している対応状況を参照して、「対応中」という対応終了時刻に対応付けられている監視員IDにより識別される監視員を対応者として特定する。
対応者特定部226は、特定した対応者の監視員IDに対応付けられている装置IDを読み出して(例えば図8の例であれば、「C01」という端末IDを読み出して)、読み出した端末IDを第2報知部225に供給する。第2報知部225は、対応者特定部226から供給された端末IDと、異常判定部224から供給された端末IDとが一致している場合、認知異常の判定に用いられた監視員端末10の装着者が対応者(検知異常に対応中の監視者)と特定されたので、報知を行わない。
監視システム1が備える各装置は、上記の構成に基づいて、監視エリアで発生した検知異常を報知する第1報知処理と、監視エリアで発生した認知異常を報知する第2報知処理とを行う。
図11は第1報知処理における各装置の動作手順の一例を表す。この動作手順は、例えば、固定カメラ4の電源が投入されるとともに、オペレータが監視システム画面を表示させる操作を行うことを契機に開始される。
まず、固定カメラ4(撮影部401)は、自装置の周囲の映像を撮影する(ステップS11)。次に、固定カメラ4(映像送信部402)は、撮影された映像を監視センタサーバ装置20に送信する(ステップS12)。監視センタサーバ装置20(映像取得部211)は、固定カメラ4から送信されてくる映像を取得する(ステップS13)。次に、監視センタサーバ装置20(映像蓄積部214)は、取得された映像を蓄積する(ステップS14)。ステップS11からS14までの動作は繰り返し行われる。
続いて、監視センタサーバ装置20(異常検知部212)は、取得された映像を解析して、映像に映っている監視エリアで発生した異常事象(上述した「検知異常」)を検知する(ステップS21)。但し、ステップS21では異常事象が検知されていない場合もあるので、その場合は、監視センタサーバ装置20は、ステップS12の前に戻って動作を続ける。
ステップS21で異常事象が検知された場合、監視センタサーバ装置20(第1報知部213)は、異常事象が検知された映像を送信してきた固定カメラ4の周辺で異常事象が発生したことをオペレータに報知する報知情報を生成し(ステップS22)、生成した報知情報をオペレータ端末30に向けて出力する(ステップS23)。オペレータ端末30(報知情報表示部301)は、監視センタサーバ装置20から出力されてきた報知情報を表示する(ステップS24)。
その後、オペレータが異常事象に対応する監視員を指定する操作を行うと、オペレータ端末30(異常対応操作受付部304)は、この操作を、検知された異常事象に対応するための対応操作として受け付け(ステップS31)、指定された監視員のID等を監視センタサーバ装置20に送信する(ステップS32)。監視センタサーバ装置20(対応状況記憶部216)は、送信されてきたID等を、検知された異常事象への対応状況として記憶する(ステップS33)。
図12は第2報知処理における各装置の動作手順の一例を表す。この動作手順は、例えば、プログラムを起動させた監視員端末10を監視員が装着するとともに、オペレータが監視システム画面を表示させる操作を行うことを契機に開始される。まず、監視員端末10(撮影部101)は、監視員の周囲の監視エリアの映像を撮影する(ステップS41)。次に、監視員端末10(映像送信部102)は、撮影された周囲の映像を示す映像を監視センタサーバ装置20に送信する(ステップS42)。
監視センタサーバ装置20(映像取得部221)は、監視員端末10から送信されてきた映像を取得する(ステップS43)。次に、監視センタサーバ装置20(映像蓄積部214)は、取得された映像を蓄積する(ステップS44)。監視員端末10(加速度測定部103)は、自端末の3軸の加速度を測定する(ステップS51)。次に、監視員端末10(加速度情報送信部104)は、測定された加速度を示す加速度情報を監視センタサーバ装置20に送信する(ステップS52)。
監視センタサーバ装置20(加速度情報取得部222)は、監視員端末10から送信されてきた加速度情報を取得する(ステップS53)。ステップS41からS53までの動作は繰り返し行われる。なお、ステップS41からS44までの動作と、ステップS51からS53までの動作は、反対の順番で行われてもよいし、並行して行われてもよい。次に、監視センタサーバ装置20(動き検出部223)は、取得された映像及び加速度情報、すなわち、監視員に装着されたセンサの出力に基づいて、監視者の動きを検出する(ステップS61)。続いて、監視センタサーバ装置20(異常判定部224)は、検出された動きに基づいて、監視者の周辺で発生した異常事象(上述した「認知異常」)の発生を判定する(ステップS62)。
但し、ステップS62では異常事象の発生が判定されていない場合もあるので、その場合は、監視センタサーバ装置20は、ステップS52の前に戻って動作を続ける。ステップS61で異常事象の発生が判定された場合、監視センタサーバ装置20(対応者特定部226)は、図11のステップS21で検知された異常事象(上述した「検知異常」)に対応中の監視員がいれば、その監視員を対応者として特定する(ステップS63)。そして、監視センタサーバ装置20(第2報知部225)は、認知異常の判定に用いられた監視員端末10の装着者が検知異常への対応者と特定されたか否かを判断する(ステップS64)。
ステップS63で装着者が対応者と特定された(YES)と判断した場合には、監視センタサーバ装置20は、ステップS52の前に戻って動作を続ける。監視センタサーバ装置20(第2報知部225)は、ステップS63で装着者が対応者と特定されなかった(NO)と判断した場合には、認知異常の判定に用いられた監視員端末10の装着者の周辺で異常事象が発生したことをオペレータに報知する報知情報を生成し(ステップS65)、生成した報知情報をオペレータ端末30に向けて出力する(ステップS66)。オペレータ端末30(報知情報表示部301)は、監視センタサーバ装置20から出力されてきた報知情報を表示する(ステップS67)。
本実施例では、監視員が装着した監視員端末10が備えるセンサ(イメージセンサ、マイクロフォン、加速度センサ)の出力により異常事象の発生が判定されて報知が行われる。その際、監視員は、監視員端末10に対して操作をする必要がない。そのため、例えば異常事象を発見した監視員がその異常事象に至急対応しなければならない場合に、監視員が連絡を取らなくても、監視システム1によって異常事象の発生がオペレータ等の関係者に伝わるようにすることができる。
具体的には、例えばセンサの出力が示す加速度が閾値以上である場合に異常事象の発生が判定される。これにより、監視員が異常事象を発見して急遽その場所に移動を始めたという場合に、異常事象の発生をオペレータに伝えることができる。また、センサの出力が示す映像内の物体の位置の移動の加速度が閾値以上である場合に異常事象の発生が判定される。これにより、異常事象を発見した監視員が移動しなくても、例えば急に体の向きを変えた場合に、異常事象の発生をオペレータに伝えることができる。
ただし、検知異常が検知されて監視員にその異常事象に対応するよう指示がされると、その対応者(検知異常に対応中の監視者)が、異常事象の発生場所に急いで移動したり、異常事象の発生場所の方向に対して急に向きを変えたり、走って異常発生場所に向かったりすることで、対応者のその動きによって認知異常の発生が判定される場合がある。その場合にも報知を行うと、実際には検知異常しか発生していないのに、検知異常の他にさらに別の認知異常が発生したとオペレータが誤解して、適切でない指示(例えば検知異常の発生場所に過剰に監視員を向かわせる指示など)を行うおそれがある。本実施例では、センサの出力に基づく認知異常の発生が判定されても、そのセンサを備える監視員端末10の装着者が検知異常への対応者であれば報知が行われないので、そのような誤解が生じないようにすることができる。
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず、以下のように変形させてもよい。また、実施例及び各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
[2−1]協同して異常事象に対応
上記の実施例では、オペレータから検知異常に対応するよう指示された監視員が対応者(異常事象に対応中の監視者)として特定された。しかし、例えば異常事象の規模が想定より大きく対応者が自分の判断で他の監視員に応援を頼んだ場合、応援を頼まれた監視員が対応者と協同して異常事象に対応するために急な移動又は体の向きの急な変更を行って、装着したセンサの出力から認知異常が検知されることが起こり得る。そして、応援の依頼は現場の判断で急遽行われるので、オペレータがそのことを把握しておらず、検知異常とは別の異常事象が発生したと誤解する可能性がある。本変形例では、そのような事態を避けるように報知の有無が判断される。
図13は本変形例の監視システム1aが実現する機能構成を表す。図13では、図4に表す定点方式の異常検知に関する機能は省略している。監視システム1aは、複数の監視員端末10a(機能が共通しているので1台だけ記載)と、監視センタサーバ装置20aとを備える。監視員端末10aは、図4に表す各部に加えて、位置測定部105と、位置情報送信部106とを備える。監視センタサーバ装置20aは、図4に表す各部に加えて、位置情報取得部227と、協同者判定部228とを備える。
位置測定部105は、自端末の位置を測定する。位置測定部105は、測定した自端末の位置を示す端末位置情報(例えば緯度及び経度の情報)を位置情報送信部106に供給する。位置情報送信部106は、供給された端末位置情報を自端末の端末IDに対応付けて監視センタサーバ装置20に送信する。位置測定部105による測定と、位置情報送信部106による送信は、実施例の映像及び加速度情報と同様に、監視員が何かの操作をしなくても繰り返し行われる。
位置情報取得部227は、監視員端末10aの位置(詳細にはその位置を示す位置情報)を取得する。位置情報取得部227は本発明の「位置取得手段」の一例である。位置測定部105により測定される監視員端末10aの位置は、その監視員端末10aを装着する監視員の位置を表す。そこで、位置情報取得部227は、複数の監視員端末10aからそれぞれ送信されてきた複数の端末位置情報及び端末IDを、複数の監視員端末10aのそれぞれの位置として取得する。位置情報取得部227は、取得した複数の端末位置情報及び端末IDを協同者判定部228に供給する。
協同者判定部228は、対応者特定部226により検知異常に対応中と特定された監視者(つまり対応者)が認知異常の判定に用いられた監視員端末10aの装着者でない場合に、位置情報取得部227により取得された位置情報に基づいて、それらの対応者及び装着者が協同しているか否かを判定する。
ここでいう協同とは、同じ目的のために力を合わせて事に当たることをいう。特定された対応者は、検知異常に対応中の監視員であるから、検知異常への対応という目的で事に当たっている。以下では、対応者と同じく検知異常への対応を目的として事に当たっている者、すなわち対応者と協同して検知異常に対応する者のことを協同者という。協同者判定部228は、上記の装着者が協同者であるか否かを判定するともいえる。
本変形例では、第2報知部225が、異常判定部224から供給された端末ID(認知異常の検知に用いられたセンサの装着者が使用する監視員端末10aの端末ID)と、対応者特定部226から供給された端末ID(特定された対応者が使用する監視員端末10aの端末ID)とが異なる場合に、それらの端末IDを協同者判定部228に供給する。
まず、第1の判定方法を説明する。協同者判定部228は、位置情報取得部227から供給された最新の複数の端末位置情報のうち、第2報知部225から供給された2つの端末IDと同じ端末IDに対応付けられた端末位置情報が示す位置同士の距離を算出する。こうして算出された距離は、対応者と装着者との現在の距離を示す。協同者判定部228は、算出した距離が所定の距離未満である場合に(すなわち、装着者が対応者の近傍に存在する場合)、対応者及び装着者が協同していると判定する。所定の距離としては、例えば監視員同士が会話できる程度の距離(例えば数m)が定められる。
協同者判定部228は、上記のとおり判定を行うと、判定結果と対応者及び装着者の端末IDとを示す判定結果情報を第2報知部225に供給する。第2報知部225は、認知異常が検知された場合でも、供給された判定結果情報が協同しているという判定結果を示すときには、報知を行わない。つまり、第2報知部225は、異常事象に対処中の監視員と所定の距離よりも近くに存在する監視員端末10aを装着する監視員について、その監視員の動きが正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱した場合には、その監視員が認知した異常事象を認知異常として報知しない。また、第2報知部225は、その判定結果情報が協同していないという判定結果を示すときには、装着者の周辺で異常事象が発生したことをオペレータに報知する。
例えば上述したように対応者が他の監視員に応援を頼んだ場合、対応者と他の監視員とは協同するため会話ができる程度の距離を保って検知異常に対応することがある。本変形例では、その場合に、他の監視員は対応者と協同していると判定されるので、その監視員の動きにより認知異常の発生が判定されても、報知が行われない。その結果、前述したように検知異常とは別の異常事象(認知異常)が発生したとオペレータが誤解するという事態を避けることができる。
次に、第2の判定方法を説明する。協同者判定部228は、最新の複数の端末位置情報から算出した装着者と対応者との距離が第1閾値以上であっても、第2閾値未満であれば、所定の時間が経過してから再び装着者と対応者との距離を算出して、その距離が第1閾値未満である場合に、対応者及び装着者が協同していると判定する。第2閾値としては、例えば監視員同士が大声を出したり手を振ったりすれば相手に気付かせることができる程度の距離(例えば数十m)が定められる。また、所定の時間としては、離れた場所にいる装着者が対応者のところまで移動するのに要する時間(例えば数秒から十数秒)が定められる。
例えば検知異常の発生場所に着いた対応者が離れた場所にいる監視員に大声で呼びかけたり手を振ったりして応援を頼んだ場合、その時点では第1閾値以上離れた位置にいた監視員も、急遽駆けつけて第1閾値未満の距離まで対応者に近づくことになる。その場合に、対応者から第1閾値の距離以上離れた位置で認知異常の発生が判定されても、第2の判定方法であれば、所定の時間の経過後に装着者が第1閾値未満の距離まで対応者に近づくと対応者及び装着者が協同していると判定する。この場合も、上記の誤解が生じる事態を避けることができる。
次に、第3の判定方法を説明する。協同者判定部228は、最新の複数の端末位置情報が示す対応者の位置と装着者の位置とが同じエリア(以下「協同エリア」という)に含まれている場合に、対応者及び装着者が協同していると判定する。協同エリアとしては、例えば、そのエリアで異常事象が発生すればその領域にいる監視員は誰でもその異常事象に気付くことができると考えられるエリアが定められる。
図14は協同エリアの例を表す。図14の例では、図6に表した地図M1において、K5交差点の周囲の4つの角を含む協同エリアF1と、K6丁字路の2つの角とその向かいにある歩道を含む協同エリアF2と、K4通りのうちK1通りとの交差点とK3通りとの丁字路とに挟まれた協同エリアF3とが表されている。いずれの協同エリアも、エリア内のどの位置にしてもそのエリアの全体が見渡せるようになっている。なお、協同エリアは、これら以外にも、各交叉点や各通りに定められていてもよい。
第3の判定方法での判定が行われると、第2報知部225は、対応者が所在する協同エリアに存在する監視員端末10aを装着する監視員(対応者以外の監視員)について、その監視員の動きが正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱した場合には、その監視員が認知した異常事象を認知異常として報知しない。
発生した異常事象の内容によっては、対応者が異常事象の発生場所で対応しつつ、離れた位置にいる他の監視員に応援を頼み、異常事象の発生場所に人が近づかないようにさせたり、異常事象の発生場所から逃走する不審者を捕まえさせたりというように、対応者と協同者との距離が、第1の判定方法で用いた所定の距離又は第2の判定方法で用いた第1閾値未満となるまで近づかない場合がある。第3の判定方法を用いれば、その場合でも、協同者を判定することができ、上記の誤解が生じる事態を避けることができる。
また、監視員が発見した異常事象が、既に監視センタで把握している異常事象が発生したエリア内のものであれば、同一の異常事象を対象としているとみなせる。そこで、協同者判定部228は、異常事象が発生したエリアを記憶しておき、監視員の動きが検出された場合にその監視員の位置が記憶した異常発生エリアに含まれていれば、対応者及び装着者が協同していると判定してもよい。
この場合、第2報知部225は、異常事象が検出された異常発生エリアに存在する監視員端末10aを装着する監視員(対応者及びそれ以外の監視員)について、その監視員の動きが正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱した場合には、その監視員による認知異常は新たな異常事象ではないと判断し、その監視員が認知した異常事象を認知異常として報知しない。なお、第2報知部225は、この判断を行った場合に、把握済みの異常事象である旨の内容を含む報知情報を出力して、その旨をオペレータへ報知してもよい。
[2−2]固定カメラの映像の活用
上述したオペレータによる誤解(検知異常とは別の異常事象が発生したという誤解)を避ける方法は、上記のものに限らない。例えば、固定カメラ4が撮影した映像を活用してもよい。
図15は本変形例の監視センタサーバ装置20bが実現する機能構成を表す。監視センタサーバ装置20bは、図4に表す各部に加えて、映像内監視員特定部229を備える。本変形例の異常検知部212は、固定カメラ4によって撮影された映像に基づいて異常事象を検知すると、異常事象を検知した映像を映像内監視員特定部229に供給する。映像内監視員特定部229は、固定カメラ4の映像に映っている監視者を特定する。
映像内監視員特定部229は、例えば、各監視員の顔、身長、体格及び服装等の画像における特徴量をそれぞれ記憶しておく。映像内監視員特定部229は、異常検知部212から映像が供給されると、その映像の各点における特徴量を算出し、いずれかの監視員の特徴量との類似度が閾値を超えた場合に、その監視員を映像に映っている監視員だと特定する。映像内監視員特定部229は、特定した監視員が使用する監視員端末10の端末IDを第2報知部225に供給する。
第2報知部225は、異常判定部224から供給された端末IDと、映像内監視員特定部229から供給された端末IDとが同じ場合、すなわち、検知異常の検知に用いられたカメラの映像から認知異常の判定に用いられた監視員端末10の装着者が特定された場合には、報知を行わない。検知異常の検知に用いられたカメラの映像に映っている監視員は、その映像に映っていない監視員に比べて、検知された検知異常に気付いている可能性が高い。
そのため、映像に映っている監視員のセンサの出力に基づいて認知異常の発生が判定されたとしても、それは、検知異常に気付いたその監視員の動きによって判定されたものと考えられる。本変形例では、この場合に、オペレータが検知異常とは別に認知異常が発生したと誤解するという事態を避けることができる。また、前述した例のように複数の監視員の位置を示す位置情報が取得されなくても、検知異常の検知に用いられた映像を活用して、この事態を避けることができる。
[2−3]認知異常の発生の判定方法
異常判定部224は、上記の実施例とは異なる方法で認知異常の発生を判定してもよい。異常判定部224は、例えば、図13に表す位置情報取得部227により取得される監視員端末10aの位置が所定の監視ポイントから外れた場合に、その監視員端末10aを装着する監視員の動きが正常時の監視中にとり得る基準動作から逸脱すると判断し、認知異常が発生したと判定する。所定の監視ポイントとは、例えば監視員が立哨するよう定められた位置である。
本変形例においては、監視員端末10aの位置が、監視員の動きに伴う監視員端末10aの動きを表す情報であり、本発明の「動き情報」の一例である。また、この位置を取得する位置情報取得部227は本発明の「動き情報取得手段」の一例である。本変形例によれば、例えば立哨中の監視員が加速度や映像の急激な変化を伴わない動きで認知した異常事象の発生場所に向かったとしても、その異常事象の発生を判定することができる。なお、異常判定部224は、上記した加速度、映像(撮影対象の変化)、位置情報など、監視員端末から取得する複数種の情報を組み合わせて認知異常の発生を判定してもよい。
[2−4]監視員端末の所持
監視員は監視員端末を必ずしも装着していなくてもよく、例えば、ポケットに入れたり手で持っていたりしてもよい。要するに、監視員は、監視員端末を所持して持ち運んでいればよい。その場合でも、異常事象を発見した監視員が急な動き・行動を行えば監視員端末も急な動きをすることになるので、監視員端末の動きを通じて監視員の動きを検出することが可能である。
[2−5]監視エリアの監視者
上記の実施例では、監視エリアに配置された監視員が監視エリアの現場で監視の役割を果たす監視者であったが、これに限らない。例えば、監視エリア内で働く監視員以外のスタッフが監視者であってもよい。スタッフとは、具体的には、例えばマラソン会場が監視エリアである場合、会場の案内員、コース整理員、給水スタッフ、観客の誘導員などであり、遊園地やデパートが監視エリアである場合、監視員に相当する警備員の他、チケットの販売員、店舗の店員、清掃員などである。
また、人間に限らず、例えば監視用のカメラが内蔵された自走式のロボットや監視員端末を装着した動物(警察犬のように訓練された犬等)などであってもよい。これらの者は、いずれも、監視エリアにおいて何らかの異常事象が発生した際に、その異常事象が発生したことをしかるべき担当者又は責任者等の関係者に伝える能力及び役割を有しており、監視者としての役割を果たすことができる。
これらの監視者には、監視員端末10のような端末を装着させてもよいし、図11の例のように固定カメラを利用することで、監視員端末10のような端末を装着させなくても監視者としての役割が果たせるようにしてもよい。なお、監視者自身が異常事象の発生を伝える能力を有していなくても、監視員端末10のような端末を装着することで、その端末の機能により異常事象の発生を伝えることができるのであれば、監視者としての役割を果たすことができる。
[2−6]センサ
監視者が装着する監視員端末が備えるセンサは、上述したもの(イメージセンサ及び加速度センサ)に限らない。例えば、角速度センサ、地磁気センサ、測位センサ(GPS(Global Positioning System)等)などが装着されてもよい。また、これら以外にも、異常事象に気付いた監視者が急な動きをした場合に、出力に急な変化が現われるセンサであれば、どのようなセンサが用いられてもよい。いずれの場合も、異常判定部224は、例えばセンサの出力の変化量が閾値以上である場合に認知異常の発生を判定する。
[2−7]検知異常の検知方法
上記の実施例では、固定カメラによって撮影された映像(定点の映像)に基づいて検知異常が検知されたが、検知異常の検知方法はこれに限らない。例えば、検知異常の検知部(本発明の「第2検知部」の一例)が、立ち入り禁止エリアに設けられた赤外線センサの出力に基づいて検知異常(例えば立ち入り禁止エリアへの立ち入り)を検知する。
[2−8]対応者の特定方法
対応者特定部226は、実施例とは異なる方法で対応者を特定してもよい。例えば、検知異常への対応を指示された監視員が対応開始の操作を行うと、監視員端末10が自端末の端末IDと対応を開始した旨を示す対応開始情報を監視センタサーバ装置20に送信し、その監視員が対応終了の操作を行うと、監視員端末10が自端末の端末IDと対応を終了した旨を示す対応終了情報を監視センタサーバ装置20に送信する。
対応者特定部226は、これらの情報を受け取って、対応開始情報を受け取ったが対応終了情報をまだ受け取っていない監視員端末10を装着した監視員を対応者として特定する。また、対応者特定部226は、図13に表す位置情報取得部227から各監視員の位置情報を取得し、検知異常が検知された映像を撮影した固定カメラ4の位置又はその撮影範囲に含まれる領域との距離が閾値未満である監視員を、対応者として特定してもよい。
また、監視センタサーバ装置20から受けた対応指示を対応中は監視員端末10に記憶しておき、対応者特定部226は、監視センタサーバ装置20が認知異常を検出(判定)した際、対応する監視員端末10に対処指示を受けている状態か問い合わせることで、監視員が対応者であるかを特定してもよい。さらに、上記の実施例では、異常事象を発見した監視員が対応者の場合に、第2報知部225がその認知異常に対する異常報知を行わない構成としたが、異常判定部224で認知異常の発生の判定を行う段階で監視員が対応者であるかを判定し、対応者でない場合に新たな異常事象(すなわち認知異常)の発生を判定する構成としてもよい。
[2−9]報知情報
第1報知部213及び第2報知部225が出力する報知情報は、実施例で述べたものに限らない。例えば、第1報知部213及び第2報知部225は、報知する内容を音声で示す情報を報知情報として出力してもよい。その場合、オペレータ端末30は、報知情報をスピーカーから音声で出力する。
また、オペレータ端末30が音又は光で警報を発する警報器を備えている場合に、第1報知部213及び第2報知部225は、その警報器を動作させる指示を示す情報を報知情報として出力してもよい。その場合、オペレータ端末30は、報知情報を受け取ると、警報器を動作指させて音又は光を発生させる。この警報器の動作が異常事象の発生を示していることをオペレータが知っていれば、オペレータは異常事象の発生に気付いて、監視員に対応を指示することができる。このように、第1報知部213及び第2報知部225は、異常事象の発生をオペレータに気付かせることができる情報を報知情報として出力すればよい。
[2−10]報知情報の出力先
第1報知部213及び第2報知部225による報知情報の出力先は、オペレータ端末に限らない。例えば、監視員端末が報知情報の出力先であってもよい。その場合、監視員端末が報知情報を表示して、監視員はこの表示により異常事象の発生に気付くことになる。また、監視センタサーバ装置がディスプレイ等を有する出力装置を備えている場合には、その出力装置を出力先としてもよい。
また、オペレータではなく、監視の責任者のメールアドレス又はこの責任者が使用する端末を出力先としてもよい。いずれの場合も、オペレータ、監視員又は監視責任者等の監視の関係者に異常事象の発生を気付かせて、その異常事象に迅速に対応できるようになっていれば、どこを報知情報の出力先としてもよい。
[2−11]各機能を実現する装置
図4等に表す機能を実現する装置は、上述した各装置に限らない。例えば、監視センタサーバ装置が入力装置及び出力装置を備えておいて、オペレータ端末30が備える各部を実現してもよい。また、反対に、監視センタサーバ装置20が備える各部をオペレータ端末が実現してもよい。
また、監視センタサーバ装置が実現する機能を、複数の情報処理装置が分担して実現してもよい。例えば、第1装置が映像取得部211から対応状況記憶部216までの機能を実現し、第2装置が映像取得部221から対応者特定部226までの機能を実現するという具合である。また、動き検出部223及び異常判定部224と、第2報知部225及び対応者特定部226とを別の情報処理装置が実現してもよい。いずれの場合も、監視システムが備える装置全体で、上述した機能を実現していればよい。
また、動き検出部223を監視員端末が備えてもよい。この場合、監視員端末の動き検出部223は、撮影部101が撮影した映像及び加速度測定部103による測定値に基づいて監視員の動き(正常時の監視中にとり得る行動を逸脱する動き・行動)を検出し、検出した異常行動を監視センタサーバ装置20に送信する。異常行動が検出された旨の通報を受けた監視センタサーバ装置20は、送信元の監視員端末10を装着する監視員が異常対応中であるかを判定し、対応中でない場合に認知異常の発生を判定する。
なお、監視員端末10に監視員の対応状態まで記憶させ、対応者であるか否かの判定、認知異常の発生の判定まで監視員端末で行う構成としてもよい。また、検知異常を検出する機能(異常検知部212の機能の少なくとも一部)を固定カメラ4に持たせる構成としてもよい。この場合、固定カメラ4は、撮影部401により撮影された映像を解析して監視エリアで発生した異常事象を検知し、検知した異常事象を監視センタサーバ装置20に送信する。
[2−12]指示の自動化
実施例では、オペレータ端末30を使用するオペレータが監視員に対して指示を行ったが、将来は、この指示を含むオペレータの作業が自動化されてもよい。例えば、AI(Artificial Intelligence、人工知能)を活用して、固定カメラ4が撮影した映像に基づいて異常事象が検知された場合に、その異常事象に対応可能な監視員の中から対応者を選定して、選定した監視員に必要な情報(異常事象の発生場所を示す情報等)を伝達する。その際、図8に表す対応状況に「対応中」という状況を反映し、対応者から異常事象への対応が終了した旨の連絡があると、対応終了時刻を反映する。このように、一定のルールに基づく処理で実現可能な作業については、自動化されてもよい。
[2−13]発明のカテゴリ
本発明は、監視員端末10、監視センタサーバ装置20及びオペレータ端末30の他、それらの装置及び固定カメラ4を備える監視システムとしても捉えられる。また、本発明は、各装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられる。また、各装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。